JPH1159376A - 液圧制御装置 - Google Patents

液圧制御装置

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JPH1159376A
JPH1159376A JP9217903A JP21790397A JPH1159376A JP H1159376 A JPH1159376 A JP H1159376A JP 9217903 A JP9217903 A JP 9217903A JP 21790397 A JP21790397 A JP 21790397A JP H1159376 A JPH1159376 A JP H1159376A
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pressure
valve
hydraulic
hydraulic pressure
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JP9217903A
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Yoshinori Sasaki
良典 佐々木
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Toyota Motor Corp
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Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 減圧弁の電磁付勢装置の容量を大きくするこ
となく、減圧時の減圧勾配を大きくする。 【解決手段】 急減圧が必要であると検出された場合に
は、急減圧モードが選択される。減圧弁としての電磁開
閉弁42,44,72が開状態に切り換えられるととも
に、増圧弁としての電磁開閉弁58,84,86が開状
態に、減圧リニアバルブが開状態に、増圧リニアバルブ
が閉状態にそれぞれ切り換えられる。ホイールシリンダ
の作動液は、減圧弁を経て流出させられるとともに増圧
弁,減圧リニアバルブを経て流出させられることにな
る。減圧弁と増圧弁との両方を経て流出させることがで
きれば、流路面積が大きくなり、流出流量を大きくし得
る。減圧弁の電磁付勢装置の容量を大きくすることな
く、減圧勾配を大きくし、ホイールシリンダ液圧を急減
圧させることが可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ホイールシリンダ
の液圧を制御する液圧制御装置に関するものであり、特
に減圧勾配の増大に関するものである。
【0002】
【従来の技術】特開平6─92213号公報には、(a)
減圧弁, (b) 増圧弁, (c) ホイールシリンダ液圧制御手
段を含む液圧制御装置が記載されている。減圧弁は、ホ
イールシリンダからの作動液の流出を許容したり阻止し
たりするものであり、増圧弁は、ホイールシリンダへの
作動液の流入を許容したり阻止したりするものである。
これら減圧弁および増圧弁はホイールシリンダ液圧制御
手段によって制御される。減圧弁においてホイールシリ
ンダの作動液の流出が許容されれば、ホイールシリンダ
液圧が減圧させられ、増圧弁において流入が許容されれ
ば、増圧させられる。このように、ホイールシリンダ液
圧の減圧は、減圧弁によって作動液の流出が許容される
ことによって行われるのであり、その減圧速度(減圧勾
配)は、減圧弁における作動液の流量に応じた大きさと
なる。
【0003】この従来の液圧制御装置においては、ホイ
ールシリンダと、減圧弁および増圧弁とが直接接続され
ているわけではなく、これらの間に液圧伝達装置が設け
られている。液圧伝達装置は、シリンダおよびピストン
を備えたもので、ピストンの一方の端面側に形成された
入力室には減圧弁および増圧弁がそれぞれ接続され、他
方の端面側に形成された出力室にはホイールシリンダが
接続されている。したがって、減圧弁において作動液の
流出が許容されれば、入力室の容積が減少させられ、出
力室の容積が増加させられるため、ホイールシリンダか
ら作動液が流出させられる。この場合は、ホイールシリ
ンダの作動液が減圧弁を経て直接流出させられるわけで
はないが、減圧弁を経て流出させられる入力室の作動液
の流量に応じた流量で流出させられることになる。その
ため、本明細書においては、ホイールシリンダの作動液
が減圧弁を経て直接流出させられる状態のみならず、上
述の状態も、「ホイールシリンダの作動液が減圧弁を経
て流出させられる状態」と称することとする。増圧弁に
ついても同様に、ホイールシリンダには、増圧弁を経て
入力室に流入させられる作動液の流量に応じた流量で作
動液が流入させられるため、この状態も、「ホイールシ
リンダに増圧弁を経て作動液が流入させられる状態」と
称することとする。
【0004】この従来の液圧制御装置を含む液圧制御装
置においては、ホイールシリンダの液圧を減圧させる際
の減圧速度を十分大きくすることが困難であるという問
題があった。上述のように、減圧速度は減圧弁における
作動液の流量で決まり、作動液の流量は減圧弁における
流路面積に基づいて決まるが、減圧弁の流路面積を十分
大きくすることが困難なのである。減圧弁の流路面積を
大きくすれば、減圧弁のソレノイド,フォースモータ等
電磁駆動装置を容量の大きなものとすることが必要にな
り、重量,コストおよびエネルギ消費量が大きくなって
しまうからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題,解決手段,作用および
効果】本発明は、以上の事情を背景として、減圧弁の電
磁駆動装置の容量の大きなものとすることなく、ホイー
ルシリンダ液圧の減圧速度を大きくすることを課題とし
てなされたものである。この課題は、下記各態様の液圧
制御装置によって解決される。なお、以下の説明におい
て、本発明の各態様をそれぞれ項に分け、項番号を付
し、必要に応じて他の項の番号を引用して請求項と同じ
形式で記載する。各項に記載の特徴を組み合わせて採用
することの可能性を明示するためである。 (1)ホイールシリンダからの作動液の流出を許容した
り、阻止したりする減圧弁と、前記ホイールシリンダへ
の作動液の流入を許容したり、阻止したりする増圧弁
と、これら増圧弁と減圧弁とを制御することによりホイ
ールシリンダ液圧を制御するホイールシリンダ液圧制御
手段とを含む液圧制御装置において、前記増圧弁を高圧
源に連通させる増圧可能状態と、増圧弁を低圧源に連通
させる減圧可能状態とに切り換え可能な状態切換手段を
設け、かつ、前記ホイールシリンダ液圧制御手段に、前
記状態切換手段を減圧可能状態に切り換えるとともに、
前記ホイールシリンダの作動液を減圧弁および増圧弁を
経て流出させる急減圧手段を設けたことを特徴とする液
圧制御装置(請求項1)。状態切換手段が減圧可能状態
に切り換えられれば、増圧弁には低圧源が連通させられ
るため、ホイールシリンダの作動液を増圧弁を経て流出
させることが可能となる。その結果、ホイールシリンダ
の作動液を減圧弁と増圧弁との両方を経て流出させるこ
とが可能となり、減圧弁のみを経て流出させる場合よ
り、流路面積が大きくなり、流出流量を大きくし得る。
それによって減圧勾配、すなわち、減圧速度が大きくな
り、急減圧が可能となる。この意味において、急減圧手
段は、減圧勾配増大手段,減圧速度増大手段,流出流量
増大手段等と称することも可能である。状態切換手段
は、例えば、増圧弁を高圧源と低圧源とのいずれか一方
に選択的に連通させる方向切換弁としたり、(4) 項に記
載のように、増圧状態用制御弁および減圧状態用制御弁
を含むものとしたりすることができる。 (2)前記ホイールシリンダ液圧制御手段に、急減圧が
必要な状態にあることを検出する急減圧必要状態検出手
段を設けた(1) 項に記載の液圧制御装置。急減圧は、例
えば、摩擦係数μが高い路面において制動が行われてい
る状態で、摩擦係数μが低い路面に移った場合に必要に
なる。摩擦係数μが高い路面においては、大きな操作力
でブレーキ操作部材を操作することが可能で、その場合
にはホイールシリンダ液圧が高くなるが、その後、摩擦
係数μが低い路面に移った場合には、ホイールシリンダ
液圧が路面の摩擦係数との関係において過大となり、制
動スリップが大きくなる。そのため、ホイールシリンダ
液圧を早急に減圧する必要が生じるのである。具体的に
は、制動スリップが大きく(アンチロック制御中、また
は、アンチロック制御開始条件が満たされた場合)、か
つ、ホイールシリンダ液圧が設定液圧より大きい場合
に、急減圧が必要な状態にあると検出されるようにする
ことができる。また、ホイールシリンダ液圧が路面摩擦
係数との関係で過大である程度が大きいほど車輪速度の
落込みが大きくなるため、車輪速度の減少量が設定減少
量より大きい場合に、急減圧が必要な状態にあると検出
されるようにすることもできる。車輪速度の減少量の取
得時間を短くすれば、車輪速度の減少量を車輪減速度
(車輪速度の落込み速度)とみなすことができ、車輪減
速度が設定減速度より大きい(車輪加速度が負でその絶
対値が設定値より大きい)場合に、急減圧が必要な状態
にあるとすることができる。また、車輪速度の減少量の
取得時間を比較的長くすれば、車輪速度の減少量は車輪
速度の落込みを表すことになり、車輪速度の落込み量が
設定落込み量より大きい場合に、急減圧が必要な状態で
あるとすることができる。前者のように、車輪減速度が
設定減速度より大きい場合に急減圧が必要な状態である
とされるようにすれば、急減圧を直ちに開始することが
でき、制動安定性を良好に保つことができる。後者のよ
うに、車輪速度の落込み量が設定落込み量より大きい場
合に急減圧が必要な状態であるとされるようにすれば、
本来急減圧が必要でない場合に急減圧が行われることを
良好に回避することができる。換言すれば、急減圧が必
要な状態か否かが、ホイールシリンダ液圧と車輪速度の
減少量との少なくとも一方と、アンチロック制御中か否
かとに基づいて検出できるのである。見方を換えれば、
急減圧必要状態検出手段が、ホイールシリンダ液圧取得
手段と制動スリップ状態取得手段(車輪速度減少量取得
手段やアンチロック制御中か否かを検出するアンチロッ
ク制御検出手段を含む)とを含むものとされることにな
る。また、急減圧は、摩擦係数μが低い路面においても
必要となる。摩擦係数μが低い路面においては、ブレー
キ操作部材が大きな操作力で操作されることは少ないた
め、ホイールシリンダ液圧は比較的低いのであるが、そ
れでも路面の摩擦係数μとの関係において著しく過大と
なることはあり得、急減圧が必要な状態となる場合があ
るのである。この状態は、例えば、上記車輪速度減少量
取得手段により検出することができる。ホイールシリン
ダ液圧制御手段に、上述の急減圧手段の他、状態切換手
段が増圧可能状態にある状態において、ホイールシリン
ダの作動液を減圧弁を経て流出させる緩減圧手段(通常
減圧手段)も含まれる場合には、例えば、上記急減圧必
要状態検出手段によって急減圧が必要な状態であると検
出された場合に、急減圧手段の制御によりホイールシリ
ンダ液圧が急減圧させられ、必要な状態であると検出さ
れない場合に、緩減圧手段の制御により通常勾配で減圧
させられるようにすることができる。このように、急減
圧必要状態にあるか否かに基づいて、急減圧と緩減圧と
を選択的に行い得るようにするために、ホイールシリン
ダ液圧制御手段に、急減圧手段と緩減圧手段とのいずれ
か一方を選択する減圧手段選択手段を設けたり、急減圧
手段による制御と緩減圧手段による制御とを切り換える
減圧制御切換手段を設けたりすることが望ましい。 (3)前記ホイールシリンダ液圧制御手段に、前記状態
切換手段、増圧弁および減圧弁を、車輪の制動スリップ
状態がほぼ適正状態に保たれるように制御するアンチロ
ック制御手段を設けた(1) 項または(2) 項に記載の液圧
制御装置。本項に記載の液圧制御装置においては、減圧
弁がアンチロック制御用減圧弁とされ、増圧弁がアンチ
ロック制御用増圧弁とされる。緩減圧,増圧,保持が行
われる場合には、状態切換手段が増圧可能状態にある状
態において、増圧弁と減圧弁とが制御される。 (4)前記状態切換手段が、前記高圧源と増圧弁との間
に設けられ、これらを連通させる連通状態とこれらを遮
断する遮断状態とに切り換え可能な増圧状態用制御弁
と、前記低圧源と増圧弁との間に設けられ、これらを連
通させる連通状態とこれらを遮断する遮断状態とに切り
換え可能な減圧状態用制御弁とを含み、前記急減圧手段
が、前記増圧状態用制御弁を遮断状態に、減圧状態用制
御弁を連通状態に切り換える弁切換手段を含むことを特
徴とする(1) 項ないし(3) 項のいずれか1つに記載の液
圧制御装置(請求項2)。増圧状態用制御弁を遮断状態
に、減圧状態用制御弁を連通状態に切り換えれば、増圧
弁に低圧源が連通させられ、高圧源から遮断される。そ
のため、ホイールシリンダの作動液を増圧弁を経て流出
させることが可能となる。また、増圧状態用制御弁を連
通状態に、減圧状態用制御弁を遮断状態に切り換えれ
ば、増圧弁に高圧源が連通させられ、高圧源の作動液を
増圧弁を経て流入させることができる。なお、増圧状態
用制御弁を連通状態に、減圧状態用制御弁を遮断状態に
切り換える手段を増圧時弁切換手段と称し、増圧状態用
制御弁を遮断状態に、減圧状態用制御弁を連通状態に切
り換える手段を減圧時弁切換手段と称することもでき
る。いずれにしても、本態様の状態切換手段の制御によ
りホイールシリンダ液圧を制御することが可能であり、
ホイールシリンダ液圧をマスタシリンダ液圧とは無関係
な大きさに制御することが可能となる。また、アンチロ
ック制御,トラクション制御手段,ビークルスタビリテ
ィ制御等を行うことも可能となり、その場合には、増圧
弁,減圧弁等は不可欠ではない。 (5)前記ホイールシリンダ液圧制御手段に、前記状態
切換手段を、回生制動力と液圧制動力との和が所要制動
力となるように制御する回生制動協調制御手段を設けた
(1) 項ないし(4) 項のいずれか1つに記載の液圧制御装
置。この液圧制御装置は、液圧制動装置および回生制動
装置を含む車両制動装置の液圧制動装置において発生さ
せられる液圧制動力を制御する液圧制御装置に適用する
ことができる。回生制動装置は、電動モータの回生制動
により車輪に加えられる回生制動力を発生させる装置で
あり、回生制動装置と液圧制動装置とを含む車両制動装
置においては、通常、回生制動力と液圧制動力との和
が、運転者の意図する所要制動力となるように制御され
る。(4) 項において説明したように、状態切換手段を制
御することにより、ホイールシリンダの液圧をマスタシ
リンダの液圧とは無関係に制御することが可能となり、
回生制動力と液圧制動力との和が運転者が意図する所要
制動力になるように液圧制動力を制御することも可能と
なる。それに対して、増圧弁,減圧弁は、回生制動力と
は無関係に、例えば、アンチロック制御手段,トラクシ
ョン制御手段,ビークススタビリティ制御手段等によっ
て、車輪のスリップ状態,車両の走行状態等に基づいて
制御されるようにすることができる。その場合には、ホ
イールシリンダには、回生制動協調制御により制御され
た大きさの液圧が、さらに、アンチロック制御手段等に
より制御されて供給されることになる。 (6)前記高圧源が、前記低圧源とは別の低圧源の作動
液を加圧して前記ホイールシリンダに供給するものであ
る(1) 項ないし(4) 項のいずれか1つに記載の液圧制御
装置(請求項3)。ホイールシリンダの作動液は増圧
弁、減圧可能状態にある状態切換手段を経て低圧源に流
出させられるが、本態様においては、この低圧源に流出
させられた作動液が再び加圧されてホイールシリンダに
供給されるようにする必要がない。したがって、増圧弁
を経て流出させられた作動液を収容する低圧源は、大気
に開放された状態に保つことも可能で、ホイールシリン
ダと低圧源との液圧差を大きく保つことができ、大きな
減圧勾配で減圧することが可能となる。例えば、還流型
アンチロック制御装置においては、ホイールシリンダの
作動液が減圧弁を経て低圧源に流出させられるが、その
低圧源に収容された作動液がポンプによって加圧されて
マスタシリンダに戻される。このように、低圧源の作動
液がマスタシリンダに戻されるようにされている場合に
は、低圧源を大気に開放させることは望ましくない。そ
れに対して、本項に記載の液圧制御装置においては、高
圧源が、急減圧時にホイールシリンダから流出させらる
作動液を収容する低圧源とは別の低圧源の作動液を加圧
するものであるため、低圧源を大気に開放することが可
能なのである。別の低圧源をマスタリザーバとし、高圧
源をマスタシリンダを含むものとすることもできる。こ
の場合には、ホイールシリンダから流出させられた作動
液を収容する低圧源をマスタリザーバと区別するために
減圧用低圧源と称することができる。また、高圧源をマ
スタシリンダではなくポンプを含むものとし、別の低圧
源に収容された作動液をポンプにより加圧してホイール
シリンダに供給するようにすることも可能であり、この
場合には、トラクション制御やビークルスタビリティ制
御も可能となる。 (7)主リザーバに収容された作動液を加圧してホイー
ルシリンダに供給可能な高圧源と、前記主リザーバとホ
イールシリンダとの間に設けられ、これらを連通させる
連通状態と遮断する遮断状態とに切り換え可能な減圧弁
と、前記高圧源とホイールシリンダとの間に設けられ、
これらを連通させる連通状態と遮断する遮断状態とに切
り換え可能な増圧弁と、これら増圧弁と減圧弁とを、そ
れぞれ連通状態と遮断状態とに切り換えることにより、
ホイールシリンダ液圧を制御するホイールシリンダ液圧
制御手段とを含む液圧制御装置において、副リザーバ
と、その副リザーバと、前記高圧源と、増圧弁との間に
設けられ、増圧弁と高圧源とを連通させて副リザーバか
ら遮断する増圧可能状態と、増圧弁と副リザーバとを連
通させて高圧源から遮断する減圧可能状態とに切り換え
可能な状態切換手段とを設け、かつ、前記ホイールシリ
ンダ液圧制御手段に、前記減圧弁を連通状態に切り換え
るとともに、前記状態切換手段を減圧可能状態に、前記
増圧弁を連通状態に切り換えることにより、ホイールシ
リンダの液圧を急減圧させる急減圧手段を設けた液圧制
御装置。減圧弁が連通状態に切り換えられれば、ホイー
ルシリンダは減圧弁を介して主リザーバに連通させら
れ、増圧弁が連通状態に、状態切換手段が減圧可能状態
に切り換えられれば、ホイールシリンダが増圧弁,状態
切換手段を介して副リザーバに連通させられることにな
る。このように、ホイールシリンダは、減圧弁を経て主
リザーバに連通させられるとともに、増圧弁,状態切換
手段を経て副リザーバに連通させられることになるた
め、ホイールシリンダから流出させられる作動液の流出
流量を大きくすることができ、減圧勾配を大きくするこ
とができる。なお、副リザーバは主リザーバとは別個の
ものとすることが望ましいが、主リザーバに副リザーバ
を兼ねさせることも可能である。 (8)1つのホイールシリンダから延び出させられた2
つの液通路の途中に各々設けられた2つの開閉弁と、前
記液通路にそれぞれ接続された低圧源と、前記2つの開
閉弁のうち、いずれか一方の開閉弁を開状態に切り換え
る緩減圧手段と、両方の開閉弁を開状態に切り換える急
減圧手段とを含むホイールシリンダ液圧減圧手段とを含
む液圧制御装置。緩減圧手段によって一方の開閉弁が開
状態に切り換えられれば、ホイールシリンダの作動液が
1つの開閉弁を経て低圧源に流出させられることになる
が、急減圧手段によって2つの開閉弁が開状態に切り換
えられれば、2つの開閉弁を経て流出させられることに
なる。したがって、ホイールシリンダから流出させられ
る作動液流量が大きくなり、急減圧が可能となる。2つ
の液通路が接続される低圧源は、共通のものであって
も、別個のものであてもよく、2つの液通路には、共通
部分があってもよいが、少なくとも開閉弁は並列に設け
ることが必要である。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態である
液圧制御装置を含む液圧ブレーキ装置について図面に基
づいて詳細に説明する。図1において、本液圧ブレーキ
装置は、駆動源として内燃機関と電動モータとを共に含
むハイブリッド車両に用いられるものである。本実施形
態のハイブリッド車両の制動は、本液圧ブレーキ装置に
よる制動と、図示しない回生制動システムによる回生制
動とによって行われる。回生制動システムは、上記電動
モータを発電機として機能させ、それによって発生させ
られた電気エネルギを蓄電池に蓄積することによって、
車両を制動するシステムである。電動モータの回転軸が
外部からの力によって強制的に回転させられる際に、電
動モータに発生する起電力により蓄電池を充電すれば、
電動モータが上記外部の力に対して負荷となり、制動力
が発生する。制動中の車両の運動エネルギの一部が電気
エネルギに変換され、蓄電池内に蓄えられるのであり、
このことによって車両を制動し得るのみならず、蓄電池
内の電気的エネルギの消費を低減させることができ、無
充電で走行できる距離を延ばすことができる。
【0007】回生による制動力(回生制動力と称する)
の大きさは、常に一定であるわけではない。例えば、車
両の走行速度が極めて小さい場合は、回生制動力はほと
んど0になる。また、蓄電池の容量が完全に満たされて
いる場合に、過充電による蓄電池の劣化を防止するため
にエネルギの回生を禁止する制御が行なわれることが多
く、この場合、回生が禁止されている期間中は回生制動
力は0になる。一方、車両の制動力の大きさは、回生制
動力の大きさとは直接関係のない操縦者の意図に応じた
大きさに制御される必要がある。したがって、液圧ブレ
ーキ装置によって発生させるべき液圧制動力の大きさ
は、操縦者の意図に応じた所要制動力から回生制動力を
減じた大きさであることになる。このような液圧ブレー
キ装置の制御を回生制動協調制御と称する。所要制動力
の大きさは、ブレーキ操作部材の操作力,操作ストロー
ク,操作時間等ブレーキ操作状況から容易に知ることが
できる。また、回生制動力の大きさに関する情報は回生
制動システムから得ることができる。
【0008】図3に操縦者の意図に応じた所要制動力
と、回生制動システムによる回生制動力と、液圧ブレー
キ装置による液圧制動力との関係の一例を概念的に示
す。図から明らかなように、ブレーキ操作状況から取得
される所要制動力が増大するにつれて、液圧制動力およ
び回生制動力が増大させられる。図においては、回生制
動力が液圧制動力よりやや遅れて増大を開始することと
されているが、これは不可欠なことではない。回生制動
力が車速等に応じて決まる最大値に達した後は、所要制
動力の増大は液圧制動力の増大により実現される。本実
施形態においては、回生制動システムが回生制動力をで
きる限り有効に利用するように構成されているのであ
る。制動が行われれば車速が漸減するため、回生制動力
も漸減するのであるが、図は、単純化のために回生制動
力が一定であるとして描かれている。車速が小さくな
り、所要制動力が減少すれば、回生制動力が減少させら
れる。車速が小さくなり、電動モータの回転数が小さく
なった場合には、大きな回生制動力を得るために多くの
電力が必要になったり、回生制動力の制御ハンチングが
大きくなったりするため、回生制動力が減少させられ0
とされるのである。回生制動力が0にされた後は液圧制
動力が所要制動力とほぼ等しい大きさを保って減少する
ことになる。
【0009】図1に示すように、液圧ブレーキ装置は、
マスタシリンダ12と、ポンプ14と、そのポンプ14
から供給される高圧の作動液を蓄積するアキュムレータ
16とを含んでいる。マスタシリンダ12およびポンプ
14には、マスタリザーバ18から作動液が供給され
る。マスタシリンダ12は、2つの加圧室F,Rを含む
ものであり、2つの加圧室には、ブレーキペダル19の
踏み込みに応じてほぼ同じ大きさの液圧が発生させられ
るようにされている。加圧室Rには、上記ポンプ14,
アキュムレータ16およびマスタリザーバ18等を含む
定液圧源20が接続され、ブレーキペダル19の踏込み
に伴って、定液圧源20から作動液が供給される。それ
により、ブレーキペダル19のストロークを軽減させる
ことが可能となる。アキュムレータ16には、ポンプ1
4の作動によって、設定圧力範囲(本実施形態において
は、17MPa〜18MPa≒174〜184kgf/
cm2 の範囲)の作動液が常時蓄えられるようにされて
いる。アキュムレータ16には図示しない圧力スイッチ
が取り付けられており、この圧力スイッチのヒステリシ
スを有するON,OFFに応じてポンプ14が起動,停
止させられるようになっているのであり、ポンプ14お
よびアキュムレータ16によって、ほぼ一定の液圧が供
給可能とされている。
【0010】マスタシリンダ12の加圧室Fには液通路
22を介して、左前輪23のホイールシリンダ24(F
Lシリンダ24と略称する)と、右前輪25のホイール
シリンダ26(FRシリンダ26と略称する)とが接続
されている。液通路22の加圧室Fの近傍には、液圧セ
ンサ28が設けられ、液圧センサ28によってマスタシ
リンダ圧Pmcが検出される。液通路22には、常開の電
磁開閉弁30,電磁開閉弁32が設けられ、ホイールシ
リンダ24,26とマスタリザーバ18とを接続する液
通路40の途中には、それぞれアンチロック制御用減圧
弁としての電磁開閉弁42,44が設けられている。
【0011】一方、加圧室Rには、液通路48を介し
て、左後輪49のホイールシリンダ50(RLシリンダ
50と略称する)と、右後輪51のホイールシリンダ5
2(RRシリンダ52と略称する)とが接続されてい
る。液通路48の途中には、加圧室R側から順に、リニ
アバルブ装置56,アンチロック制御用増圧弁としての
電磁開閉弁58およびプロポーショニングバルブ60
(Pバルブ60と略称する)が設けられている。液通路
48の、マスタシリンダ12とリニアバルブ装置56と
の間の部分には液圧センサ62が、また、リニアバルブ
装置56と電磁開閉弁58との間の部分には液圧センサ
64が設けられている。液圧センサ62によって取得さ
れる液圧を入力液圧Pin,液圧センサ64によって取得
される液圧を出力液圧Pout1と称する。これら液圧セン
サ62,64によって、リニアバルブ装置56の両側の
液圧が検出可能とされている。液圧センサ28,62お
よび64の出力信号は、コントローラ66に供給され、
マスタシリンダ液圧Pmc,入力液圧Pinおよび出力液圧
Pout1が取得される。後述するように、コントローラ6
6は、液圧センサ64によって検出された出力液圧Pou
t1に基づいて、リニアバルブ装置56の状態を制御す
る。ホイールシリンダ50,52とマスタリザーバ18
とを接続する液通路70の途中にアンチロック制御用減
圧弁としての電磁開閉弁72が設けられている。
【0012】液通路48のリニアバルブ装置56と電磁
開閉弁58との間の部分には、液通路76が接続されて
いる。液通路76は、リニアバルブ装置56とホイール
シリンダ24,26とを接続する通路であり、液通路7
6の途中には、常閉の電磁開閉弁80が設けられてい
る。また、電磁開閉弁80のホイールシリンダ24,2
6側には、それぞれアンチロック制御用増圧弁としての
電磁開閉弁84,86が設けられている。液通路76
の、電磁開閉弁80と電磁開閉弁84および電磁開閉弁
86との間の部分には、液圧センサ88が接続されてい
る。液圧センサ88による測定結果を、出力液圧Pout2
と称する。出力液圧Pout2は、液圧センサ64の出力が
正常か否かの監視に使用される。電磁開閉弁80が開状
態にある場合に、液圧センサ64により検出された出力
液圧Pout1の値が出力液圧Pout2の値から離れている場
合に液圧センサ64の出力が異常である可能性があると
判定されるのである。これは、電磁開閉弁80が開状態
にあれば、液圧センサ64と液圧センサ88とが互いに
連通した状態となり、液圧センサ64,88が共に正常
であれば、出力液圧Pout1と出力液圧Pout2とがほぼ同
じになるはずであるからである。本実施形態において
は、この判定結果に基づいて操縦者に液圧センサ異常が
報知されるが、この報知と共に、あるいは報知に代え
て、コントローラ66によるリニアバルブ装置の制御が
禁止されるようにしてもよい。これら複数の各電磁開閉
弁30,32,42,44,58,72,80,84お
よび86のソレノイドは、コントローラ66からの指令
に基づいて制御される。
【0013】上記、常開の電磁開閉弁58をバイパスす
るバイパス通路の途中には、逆止弁90が設けられ、電
磁開閉弁84,86をそれぞれバイパスするバイパス通
路の途中には、それぞれ逆止弁92,94が設けられて
いる。これらの逆止弁90,92および94は、対応す
るホイールシリンダからマスタシリンダ12に向かう作
動液の流れは許容するが、その逆向きの流れは阻止する
向きに取り付けられており、これら逆止弁により、ブレ
ーキペダル19の踏込みが緩められた場合にホイールシ
リンダの作動液をマスタシリンダ12に早急に戻すこと
が可能となる。なお、本液圧ブレーキ装置には、ホイー
ルシリンダ24,26の液圧をそれぞれ検出する液圧セ
ンサ110,112が設けられるとともに、ホイールシ
リンダ50,52の液圧を共通に検出する液圧センサ1
14が設けられている。また、各車輪23,25,4
9,51の車輪速度を各々検出する車輪速センサ116
〜122が設けられ、これら車輪速センサ116〜12
2の出力信号に基づいて各車輪の制動スリップ状態が取
得される。
【0014】図2は、図1に示したリニアバルブ装置5
6の構成を概略的に示す系統図である。リニアバルブ装
置56は、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバルブ
152,減圧用リザーバ154および逆止弁156,1
58を含んでいる。増圧リニアバルブ150は、液通路
48の途中に設けられ、減圧リニアバルブ152は、液
通路48と減圧用リザーバ154とを接続する液通路1
60の途中に設けられている。増圧リニアバルブ150
をバイパスするバイパス通路の途中には、上述の逆止弁
156が、ホイールシリンダからマスタシリンダ12に
向かう作動液の流れは許容するが、その逆の流れは阻止
する向きに設けられている。減圧リニアバルブ152を
バイパスするバイパス通路の途中には、上記逆止弁15
8が減圧用リザーバ154からマスタシリンダ12に向
かう作動液の流れは許容するが、その逆の流れは阻止す
る向きに設けられている。
【0015】減圧用リザーバ154は、ハウジング18
2と、そのハウジング182内に液密かつ摺動可能に嵌
合されたピストン184とを備えている。それらハウジ
ング182とピストン184との間に、ピストン184
の移動につれて容積が変化する液収容室186が形成さ
れており、ピストン184は排出付勢手段としての圧縮
コイルスプリング188の弾性力によって液収容室18
6の容積が減少する向きに付勢されている。液収容室1
86内に収容された作動液は圧縮コイルスプリング18
8の弾性力によって加圧されることとなるが、圧縮コイ
ルスプリング188の弾性力は比較的小さく、上記加圧
に基づく液収容室186内の液圧は、制動時にマスタシ
リンダ12やホイールシリンダ24,26,50,52
に発生させられる液圧に対して無視し得る程度の大きさ
である。したがって、減圧時にホイールシリンダから流
出させられた作動液が圧縮コイルスプリング188の付
勢力に抗して液収容室186の容積を増大させつつ減圧
用リザーバ154に流入することが可能となるのであ
る。本実施形態においては、制動終了直前に、増圧リニ
アバルブ150,減圧リニアバルブ152が共に開状態
に切り換えられ、一制動中に液収容室186に収容され
た作動液が、増圧リニアバルブ150,減圧リニアバル
ブ152を経てマスタシリンダ12に戻されるようにさ
れている。このように、制動終了直前、あるいは、非制
動時(制動終了時)に増圧リニアバルブ150,減圧リ
ニアバルブ152を開状態にすれば、圧縮コイルスプリ
ング188のセット荷重を大きくしなくても、液収容室
186の殆どすべてをマスタシリンダ12に戻すことが
可能となり、ブレーキ解除時に作動液が残ることを回避
することが可能となる。換言すれば、圧縮コイルスプリ
ング188の付勢力を小さくすることができ、液収容室
186に作動液が残っていることに起因して減圧し難く
なることを良好に回避することが可能となるのである。
【0016】増圧リニアバルブ150は、シーティング
弁190と、電磁付勢装置194とを含んでいる。シー
ティング弁190は、弁子200と、弁座202と、弁
子200と一体的に移動する被電磁付勢体204と、弁
子200が弁座202に着座する向きに被電磁付勢体2
04を付勢する付勢手段としての弾性部材としてのスプ
リング206とを含んでいる。また、電磁付勢装置19
4は、ソレノイド210と、そのソレノイド210を保
持する樹脂製の保持部材212と、第一磁路形成体21
4と、第二磁路形成体216とを含んでいる。ソレノイ
ド210の巻線の両端に電圧が印加されると、ソレノイ
ド210の巻線に電流が流れ、磁界が形成される。磁束
は、その多くが、第一磁路形成体214,被電磁付勢体
204,第二磁路形成体216と被電磁付勢体204と
の間のエアギャップおよび第二磁路形成体216を通
る。ソレノイド210の巻線に印加される電圧を変化さ
せれば、被電磁付勢体204と第二磁路形成体216と
の間に作用する磁気力も変化する。この磁気力の大きさ
は、ソレノイド210の巻線に印加される電圧の大きさ
と共に増加し、それら印加する電圧と磁気力との関係は
予め知ることができる。したがって、印加電圧をその関
係に従って連続的に変化させることにより、被電磁付勢
体204を付勢する力(上述の磁気力のうちの被電磁付
勢体204を第二磁路形成体216に接近させる方向の
力のことであり、以下、スプリング206の付勢力と区
別するために電磁駆動力と称する。電磁駆動力は、スプ
リングの付勢力とは反対向きの力であり、弁子200を
弁座202から離間する方向の力である。)の大きさを
任意に変更することができる。なお、被電磁付勢体20
4の第一磁路形成体216に対向する面には、係合突部
220が形成され、それに対する第一磁路形成体216
の被電磁付勢体204に対向する部分には、係合凹部2
22が形成されており、被電磁付勢体204と第一磁路
形成体216との相対位置の変化に応じて係合突部22
0と係合凹部222との間の対向部の面積が変化させら
れる。
【0017】被電磁付勢体204と第二磁路形成体21
6とによって形成される磁路の磁気抵抗は、被電磁付勢
体204と第二磁路形成体216との軸方向の相対的な
位置に依存して変化する。具体的には、被電磁付勢体2
04と第二磁路形成体216との軸方向の相対位置が変
化すれば、被電磁付勢体204の嵌合突部220と第二
磁路形成体216の嵌合凹部222との微小間隙を隔て
て互いに対向する円筒面(嵌合突部220の外周面と嵌
合凹部222の内周面とのうち互いに対向する部分)の
面積が変化する。もし、被電磁付勢体204と第二磁路
形成体216とが単純に端面同士で微小間隙を隔てて対
向しているのであれば、被電磁付勢体204と第二磁路
形成体216との軸方向の距離の減少、すなわち接近に
伴って磁気抵抗が加速度的に減少し、両者の間に作用す
る磁気力が加速度的に増大する。それに対し、本実施形
態の増圧リニアバルブ150においては、被電磁付勢体
204と第二磁路形成体216との接近に伴って、嵌合
突部220と嵌合凹部222との上記円筒面の面積が増
加し、この円筒面を通る磁束が増加する一方、被電磁付
勢体204の端面と第二磁路形成体216の端面とのエ
アギャップを通る磁束が減少する。その結果、ソレノイ
ド210に印加される電圧が、それほど大きくない範囲
内において一定であれば、被電磁付勢体204を第二磁
路形成体216方向へ付勢する磁気力(電磁駆動力)
が、被電磁付勢体204と第二磁路形成体216との軸
方向の相対的な位置に関係なくほぼ一定となる。一方、
スプリング206による被電磁付勢体204を第二磁路
形成体216から離間する方向へ付勢する付勢力は、被
電磁付勢体204と第二磁路形成体216との接近に伴
って増大する。したがって、弁子200に液圧差に基づ
く付勢力が作用していない状態では、被電磁付勢体20
4の第二磁路形成体216方向への移動が、上記スプリ
ング206の付勢力と電磁駆動力とが等しくなることに
より停止することとなる。
【0018】減圧リニアバルブ152も、基本的には増
圧リニアバルブ150と同じものであるが、後述するよ
うに、弾性部材としてのスプリング224の付勢力が増
圧リニアバルブ150のスプリング206と異なってい
る。減圧リニアバルブ152の構成のうち、増圧リニア
バルブ150と同様であるものには、同じ符号を付して
示して説明を省略する。
【0019】図4に示すように、増圧リニアバルブ15
0には、スプリング206の付勢力Fp ,それの前後の
液圧差に応じた差圧作用力Fd ,電磁駆動力Fs が作用
する。増圧リニアバルブ150の前後の液圧差は、液圧
センサ62,64によって各々検出される入力液圧Pi
n,出力液圧Pout1の差として検出することができる。
差圧作用力Fd と電磁駆動力Fs との和が、スプリング
206の付勢力Fp より大きくなると弁子200が弁座
202から離間させられる。電磁駆動力Fs が0の場合
には、差圧作用力Fd がスプリング206の付勢力Fp
より大きくなれば離間させられるが、この時の差圧の大
きさを開弁圧と称する。本実施形態においては、増圧リ
ニアバルブ150の開弁圧は、約3MPa(約30.6
kgf/cm2 )とされている。
【0020】減圧リニアバルブ152についても同様で
あり、スプリング224の付勢力Fp ,それの前後の液
圧差に応じた差圧作用力Fd ,電磁駆動力Fs が作用す
る。また、減圧リニアバルブ152の開弁圧は、18M
Pa(≒184kgf/cm 2 。定液圧源20により供
給される作動液の最大液圧)よりも大きくされている。
スプリング224による付勢力が、スプリング206に
よるそれよりも大きく(約6倍)されている。本実施形
態の液圧ブレーキ装置においては、減圧リニアバルブ1
52における弁子200に作用する作動液の液圧の最大
値は、ポンプ14により供給され、また、アキュムレー
タ16に蓄えられる最大の液圧である。したがって、操
縦者の踏力による液圧がこの最大液圧を上回って、減圧
リニアバルブ152に作用する作動液の液圧が、減圧リ
ニアバルブ152の開弁圧を上回ることは事実上ないと
考えてよい。また、減圧リニアバルブ152の前後の液
圧差は、出力液圧Pout1と減圧用リザーバ154におけ
る液圧Pres との差として求められる。
【0021】液通路22にはストロークシミュレータ2
30(図1参照)が接続され、電磁開閉弁30および3
2が共に閉状態とされた状態においてブレーキペダル1
9のストロークが殆ど0になることが回避されている。
ストロークシミュレータ230は、プランジャ232の
移動によって容積が変化する容器である。プランジャ2
32はスプリング234によって内容積が減少する向き
に付勢されているので、ストロークシミュレータ230
の作動液の蓄積量は、加圧室Fが供給する作動液の液圧
(マスタシリンダ液圧Pmc)が増加するほど多くなる。
このことにより、電磁開閉弁30および32が共に閉状
態とされた場合においても、ブレーキペダル19のスト
ロークがほぼ0になり、操縦者に違和感を与えることが
回避される。また、ストロークシミュレータ230のス
プリング234が配設されている空間は、液通路236
によって液通路40に連通させられており、プランジャ
232と容器との間の隙間から作動液が漏れた場合にお
いても、その漏れ出た作動液がマスタリザーバ18に戻
される。これによって、液圧ブレーキ装置内の作動液量
が減少することが回避される。
【0022】液圧ブレーキ装置が正常に作動している状
態において、回生制動協調制御が行なわれている通常制
動時においては、電磁開閉弁30,32が閉状態、電磁
開閉弁80が開状態とされ、また、他の電磁開閉弁は図
1に示した状態とされる。FLシリンダ24およびFR
シリンダ26への作動液の供給が、マスタシリンダ12
の加圧室Fから液通路22を経て行なわれるのではな
く、加圧室Rから液通路48,76を経て行なわれるの
であって、RLシリンダ50およびRRシリンダ52と
同様にリニアバルブ装置56によって制御された作動液
が供給されるのである。すべてのホイールシリンダの液
圧が、リニアバルブ装置56の増圧リニアバルブ150
および減圧リニアバルブ152の制御により制御される
ことになる。減圧時においては、ホイールシリンダから
作動液が流出させられ、減圧用リザーバ154に収容さ
れる。
【0023】回生制動協調制御とアンチロック制御とが
共に行なわれる場合には、リニアバルブ装置56と、電
磁開閉弁との両方が制御される。原則として、リニアバ
ルブ装置56は、回生制動力と液圧制動力との和が運転
者の意図する所要制動力となるように制御され、電磁開
閉弁は、制動スリップ状態がほぼ適正状態に保たれるよ
うに制御されるが、後述するが、急減圧を行う必要があ
る特殊な場合には、リニアバルブ装置56が制御される
こともある。アンチロック制御においては、電磁開閉弁
30および32が閉状態、電磁開閉弁80が開状態とさ
れた上で、電磁開閉弁42,44,58,72,84お
よび86が、必要に応じてそれぞれ独立に制御される。
本実施形態においては、左右後輪のホイールシリンダの
液圧と、FLシリンダ24の液圧と、FRシリンダ26
の液圧との三者が、互いに独立に制御される。ホイール
シリンダ液圧を減圧する場合には、ホイールシリンダの
作動液は、電磁開閉弁42,44,72を経てマスタリ
ザーバ18に流出させられるが、急減圧が必要な場合に
は、後輪側のホイールシリンダ50,52の作動液は、
電磁開閉弁58を経て、前輪側のホイールシリンダ2
4,26の作動液は、電磁開閉弁84,86および80
を経て減圧用リザーバ154にも流出させられる。アン
チロック制御については、後述する。
【0024】本液圧ブレーキ装置のコントローラ66が
故障して電磁開閉弁やリニアバルブ装置56を制御し得
ない状態になれば、各電磁開閉弁が図1に示した状態に
なり、かつ、リニアバルブ装置56の増圧リニアバルブ
150および減圧リニアバルブ152のソレノイド21
0の巻線に電圧が印加されない状態とされる。この際、
コントローラ66が定液圧源20を作動させるようにし
ても、作動させないようにしてもよい。定液圧源20か
ら作動液が供給されなくても、マスタシリンダ12が通
常のタンデム式マスタシリンダと同様に機能して加圧室
FおよびRからほぼ等しい液圧を供給するからである。
各電磁開閉弁が図1に示した状態になれば、加圧室Fか
らの作動液がFLシリンダ24およびFRシリンダ26
に、また、加圧室Rからの作動液が増圧リニアバルブ5
0を経てRLシリンダ50およびRRシリンダ52に供
給される。ただし、FLシリンダ24およびFRシリン
ダ26に供給される作動液の液圧は、加圧室Fから供給
される液圧にほぼ等しいのに対して、RLシリンダ50
およびRRシリンダ52に供給される作動液の液圧は、
加圧室Rから供給される作動液の液圧よりも、増圧リニ
アバルブ150の開弁圧約3MPaだけ小さくなる。こ
のように、前輪と後輪とでホイールシリンダに供給され
る作動液の液圧は異なることになるが、前輪と後輪との
両方のホイールシリンダに液圧が供給され、しかも、前
輪のホイールシリンダに供給される作動液の液圧が減少
することはないので、コントローラ66が故障した場合
の制動性能の低下が小さくて済む。また、供給される作
動液の液圧が減少するのが後輪側であるので、制動中の
車両の姿勢安定性が良好に保たれる。
【0025】なお、本実施形態においては、定液圧源2
0が故障して加圧室Rに液圧が供給されなくなった場合
には、コントローラ66がすべての電磁開閉弁およびリ
ニアバルブ装置56に電流を供給しない状態になるよう
に構成されている。そのため、定液圧源20の故障時に
は、本液圧ブレーキ装置は上記コントローラ66の故障
時であって、定液圧源20が作動させられない場合と同
様に作動する。しかし、定液圧源20が故障しても、コ
ントローラ66が正常であれば、コントローラ66が通
常通り電磁開閉弁およびリニアバルブ装置56を制御す
るように構成することも可能であり、その場合には、定
液圧源20から作動液が供給されない分だけブレーキペ
ダル19の操作ストロークが通常より長くなるのみで済
む。ただし、この場合には、ブレーキペダル19の操作
ストロークをできる限り小さくするために、液通路22
とストロークシミュレータ230との間に常閉の電磁開
閉弁を設け、定液圧源20の故障時にはこの電磁開閉弁
が閉状態とされて、ストロークシミュレータ230に作
動液が流入しないようにすることが望ましい。
【0026】コントローラ66は、ROM,RAMおよ
びPU(プロセッシングユニット)等を備えたコンピュ
ータを主体とするものであり、ROMには図6,7、図
10,図17,18および図20に示すフローチャート
で表される処理を始めとする種々の制御プログラム、図
14に示すテーブル等が記憶されている。図5は、コン
トローラ66によって、制御対象としてのリニアバルブ
装置56にフィードフォワード制御とフィードバック制
御とが行われる場合の概要を示す機能ブロック図であ
る。制御の目標値は目標液圧Pref であり、出力は出力
液圧Pout1である。なお、本実施形態においては、目標
液圧Pref は液圧センサ28の出力値であるマスタシリ
ンダ液圧Pmc(操縦者の意志に対応する)から、回生制
動による制動力に対応する液圧を減じた値として取得さ
れる。また、後述するが、リニアバルブ装置56には、
フィードフォワード制御やフィードバック制御とは別の
制御が行われる場合もある。
【0027】フィードフォワード制御部300は、目標
液圧Pref に基づいて、フィードフォワード増圧電圧V
Fapply およびフィードフォワード減圧電圧VFreleas
e を算出する。また、フィードバック制御部302は、
目標液圧Pref から出力液圧Pout1を減じた値である偏
差errorを0に近づけるための電圧として、フィー
ドバック増圧電圧VBapply およびフィードバック減圧
電圧VBrelease を算出する。本実施形態におけるコン
トローラ66の制御は、フィードフォワード制御とフィ
ードバック制御とを共に含んでいる。
【0028】図6は、コントローラ66のROMに記憶
された制御プログラムのメイン処理の主要部を示すフロ
ーチャートである。まず、ステップ10(以下、S10
と略記する。他のステップについても同じ)において、
フィードフォワード増圧電圧VFapply およびフィード
フォワード減圧電圧VFrelease を算出するサブルーチ
ンであるVFapply ,VFrelease 算出処理がコールさ
れる。この処理は、上述のフィードフォワード制御部3
00の処理に相当する(内容は後述する)。つぎに、S
12において、フィードバック増圧電圧VBapply およ
びフィードバック減圧電圧VBrelease を、偏差err
orに基づいて算出するVBapply ,VBrelease 算出
処理がコールされる。この処理は、上述のフィードバッ
ク制御部302の処理に相当するものであり、例えば、
一般的なPID制御や、PID制御をさらに簡略化した
I制御等によって、偏差errorを0に近づける。こ
の処理が完了すれば、S14において、増圧リニアバル
ブ150のソレノイド210に印加する電圧(増圧側印
加電圧Vapply と称する)と、減圧リニアバルブ152
のソレノイド210に印加する電圧(減圧側印加電圧V
release と称する)とを算出するサブルーチンであるV
apply ,Vrelease 算出処理がコールされる。このサブ
ルーチンVapply ,Vrelease 算出処理において、増圧
側印加電圧Vapply の値は、主として、フィードフォワ
ード増圧電圧VFapply およびフィードバック増圧電圧
VBapply の和の値(少なくとも一方が0の場合も含
む)とされるが、それ以外の値とされる場合もある。減
圧側印加電圧Vrelease の値も同様に、主として、フィ
ードフォワード減圧電圧VFrelease およびフィードバ
ック減圧電圧VBrelease の和の値(少なくとも一方が
0の場合も含む)とされるが、それ以外の値とされる場
合もある。詳細は後述する。
【0029】S14に続いて、S15において、アンチ
ロック制御において急減圧モードが選択されているか否
かが判定される。アンチロック制御中でない場合、また
は、アンチロック制御中であっても急減圧モードが選択
されていない場合には、S16は実行されないで、S1
8において上述の増圧側印加電圧Vapply と減圧側印加
電圧Vrelease とが、それぞれ増圧リニアバルブ150
および減圧リニアバルブ152のソレノイド210に印
加される。アンチロック制御中において急減圧モードが
選択されている場合には、S16において、増圧側印加
電圧Vapply が0とされ、減圧側印加電圧Vrelease が
後述する最大印加電圧Vmax とされる。S18におい
て、増圧リニアバルブ150のソレノイド210には電
圧は印加されず、減圧リニアバルブ152のソレノイド
210には、最大印加電圧Vmax が印加されることにな
る。急減圧モードが設定された場合には、電磁開閉弁5
8,84,86に減圧用リザーバ154が連通させら
れ、ホイールシリンダの作動液を電磁開閉弁72,4
2,44を経てマスタリザーバ18に戻すだけでなく、
電磁開閉弁58,84,86および減圧リニアバルブ1
52を経て減圧用リザーバ154にも戻される。
【0030】図7は、図6のS10においてコールされ
るVFapply ,VFrelease 算出処理の内容を示すフロ
ーチャートであり、上述のようにフィードフォワード制
御部300の処理に相当するものである。まず、S20
において、ある一定時間(後述するように、本実施形態
においては6msとされている)ごとの目標液圧Pref
(これの算出については後述する)の変化分である目標
液圧変化dPref が正であるか否か、つまり、目標液圧
Pref が増加中であるか否かが判定される。増加中であ
る場合は、S22において、変数startFlag の値が0で
あるか否かが判定される。変数startFlag の値が0であ
れば、S24において増圧側初期値変数Pinita に目標
液圧Pref の値が代入され、かつ、変数startFlag に1
が代入された後に、また、変数startFlag の値が0でな
ければS24をバイパスして初期値設定処理が終了す
る。なお、メイン処理の図示を省略する初期設定におい
て、変数startFlag は0に設定されている。S20の判
定結果がNOである場合(目標液圧変化dPref が正で
ない場合)は、S26において、目標液圧変化dPref
が負であるか否かが判定される。この判定結果がYES
であれば、S28において、変数startFlag が1である
か否かが判定される。S28の判定結果がYESであれ
ば、S30において、減圧側初期値変数Pinitr に目標
液圧Pref の値が代入され、かつ、変数startFlag に0
が代入される。S22,S26若しくはS28の判定結
果がNOであるか、または、S24若しくはS30の処
理が終了した場合に、S40の処理が実行される。
【0031】S40においては、減圧側印加電圧Vrele
ase が正であるか否か、つまり、リニアバルブ装置56
において減圧が行われているか否かが判定される。減圧
中であれば、S42において、フィードフォワード増圧
電圧一定値VFcaが、次式に基づいて算出される。 VFca←MAPa (Pin−Pout1) ・・・(1) ここで、関数MAPa は、Pin−Pout1(これを、増圧
側液圧差Pdiffa と称する)を引数として、フィードフ
ォワード増圧電圧一定値VFcaを返す関数である。図8
に関数MAPa の一例を示す。この図に示すように、関
数MAPa は、増圧側液圧差Pdiffa の増加とともに、
直線的に減少する値としてフィードフォワード増圧電圧
一定値VFcaを返す。増圧側液圧差Pdiffa が0のとき
のフィードフォワード増圧電圧一定値VFcaはフィード
フォワード増圧最大電圧VFmaxaであり、増圧側液圧差
Pdiffa が最大液圧差Pdiffmaxaのときのフィードフォ
ワード増圧電圧一定値VFcaはフィードフォワード増圧
最小電圧VFminaである。ここで、最大液圧差Pdiffma
xaは増圧リニアバルブ152の開弁圧(3MPa)に等
しく、フィードフォワード増圧最大電圧VFmaxaは、そ
れを増圧リニアバルブ150のソレノイド210に印加
した場合に発生する磁界によって、被電磁付勢体204
が付勢される電磁駆動力Fs が、弁子200が弁座20
2に着座した状態におけるスプリング206の付勢力F
p に等しくなるようにされている。このようにして、S
40の判定結果がYESである状態、つまり、減圧中
に、つぎの増圧時(もしそれが行なわれるならば)に使
用されるフィードフォワード増圧電圧一定値VFcaが予
め算出される。
【0032】S40の判定結果がNOである場合は、S
44において、増圧側印加電圧Vapply が正であるか否
か、つまり、リニアバルブ装置56において増圧が行わ
れているか否かが判定される。増圧中であれば、S46
において、フィードフォワード減圧電圧一定値VFcrが
次式に基づいて算出される。 VFcr←MAPr (Pout1−Pres ) ・・・(2) ここで、関数MAPr は、Pout1−Pres (これを、減
圧側液圧差Pdiffr と称する。また、リザーバ液圧Pre
s は減圧用リザーバ154の液圧であり、大気圧に等し
い)を引数として、フィードフォワード減圧電圧一定値
VFcrを返す関数である。図9にその一例を示す。図か
ら明らかなように、関数MAPr は、減圧側液圧差Pdi
ffr の増加とともに直線的に減少する値としてフィード
フォワード減圧電圧一定値VFcrを返す。減圧側液圧差
Pdiffr が0のときのフィードフォワード減圧電圧一定
値VFcrはフィードフォワード電圧減圧最大値VFmaxr
であり、減圧側液圧差Pdiffr が最大液圧差Pdiffmaxr
のときのフィードフォワード減圧電圧一定値VFcrは0
である。ここで、最大液圧差Pdiffmaxrは減圧リニアバ
ルブ152の開弁圧(18MPaよりも大きい)に等し
く、フィードフォワード電圧減圧最大値VFmaxrは、そ
れを減圧リニアバルブ152のソレノイド210に印加
した場合に、発生する電磁駆動力Fs が、弁子200が
弁座202に着座した状態におけるスプリング224の
付勢力Fp に等しくなるようにされている。このよう
に、S44の判定結果がYESである状態、つまり、増
圧中に、つぎの減圧時に使用されるフィードフォワード
減圧電圧一定値VFcrが予め算出される。
【0033】S44の判定結果がNOであるか、また
は、S42若しくはS46の処理が終了した場合に、S
47において、目標液圧変化dPref が正でかつ目標液
圧Pref がしきい値Pth未満であるか否かによって、初
期増量が必要であるか否かの判定が行われ、判定結果が
YESであれば、S48において、増量電圧VFcainc
がフィードフォワード増圧電圧一定値VFcaに代入され
る。初期増量および増量電圧VFcainc の物理的な意味
については後に説明する。これらS47,48の実行後
に、S50において、以下に示す式に基づいてフィード
フォワード増圧電圧VFapply またはフィードフォワー
ド減圧電圧VFrelease が算出された後に、VFapply
,VFrelease 算出処理が終了する。 VFapply ←GAINa ・(Pref −Pinita )+VFca ・・・(3) VFrelease ←GAINr ・(Pinitr −Pref )+VFcr ・・・(4) ここで、係数GAINa および係数GAINr は、予め
設定される正の一定値である。
【0034】図10は、上記目標液圧Pref と目標液圧
変化dPref とを算出するために実行されるタイマ割込
処理の内容を示すフローチャートである。まず、S80
において、液圧センサ28の出力値であるマスタシリン
ダ液圧Pmcから、現在の回生制動力の大きさに相当する
液圧を減じた値として、目標液圧Pref が取得される。
つぎに、S82において、目標液圧変化dPref が、次
式に基づいて算出される。 dPref ←Pref −prevPref ・・・(5) ここで、前回目標液圧prevPref の値は、前回のタイマ
割込処理が実行された時点における目標液圧Pref の値
である。つぎに、S84において、次回のタイマ割込処
理に備えるために、前回目標液圧prevPref に今回のタ
イマ割込処理における目標液圧Pref の値が代入された
後に、タイマ割込処理が終了する。このタイマ割込処理
は、制動期間中、6msごとに繰り返しコールされるも
のであり、前述のように、目標液圧Pref と目標液圧変
化dPref とは、制動期間中、6msごとに最新の値に
更新されることになる。
【0035】上記フィードフォワード減圧電圧VFrele
ase の物理的な意味は、減圧中において、減圧側液圧差
Pdiffr の値が徐々に小さくなり、減圧リニアバルブ1
52の弁子200を弁座202から離間させようとする
力が小さくなっても、フィードフォワード制御によっ
て、減圧リニアバルブ152を開いた状態にし、減圧を
続行できる電圧にすることである。つまり、減圧側液圧
差Pdiffr が比較的大きい場合には、減圧を行うために
必要なフィードフォワード減圧電圧VFreleaseの値は
比較的小さくてよいのであるが、減圧側液圧差Pdiffr
が小さくなった場合には、減圧リニアバルブ152が開
いた状態にするために、減圧リニアバルブ152のソレ
ノイド210に、より大きな電圧を印加する必要があ
る。本実施形態においては、これを、フィードフォワー
ド減圧電圧VFrelease の値を大きくすることによって
実現しているのである。
【0036】図11には、初期の減圧側液圧差Pdiffr
の値が異なる二つの減圧例が、(a)および(b)に示
されている。これらは、それぞれ出力液圧Pout1が各値
から各減少率で減少し、最終的に出力液圧Pout1が大気
圧になって減圧が完了する例である。これら二つの例に
おいて、図中一点鎖線で示すように、減圧側液圧差Pdi
ffr の値が互いに等しい場合は、フィードフォワード減
圧電圧VFrelease の値も等しくなる。そして、最終的
に減圧が完了した時点では、減圧側液圧差Pdiffr の値
が0になり、フィードフォワード減圧電圧VFrelease
の値は前記フィードフォワード減圧最大電圧VFmaxrに
等しい値になっている。フィードフォワード増圧電圧V
Fapply の物理的な意味も、上記フィードフォワード減
圧電圧VFrelease と実質的に同じである。ただし、減
圧リニアバルブ152のリザーバ側の液圧が一定値(リ
ザーバ液圧Pres )であるのに対して、増圧リニアバル
ブ150のマスタシリンダ側およびホイールシリンダ側
の液圧は、それぞれ入力液圧Pinおよび出力液圧Pout1
であり、制動期間中において共に変動する点において異
なる。
【0037】なお、関数MAPa および関数MAPr は
それぞれ増圧側液圧差Pdiffa および減圧側液圧差Pdi
ffr に対して線型であるとして、図8および図9のグラ
フが共に直線で示されている。これは、増圧リニアバル
ブ150および減圧リニアバルブ152において、被電
磁付勢体204に作用する磁気力がそれぞれのソレノイ
ド210に印加される電圧にほぼ比例すると考えてよい
ためである。一般に、この磁気力は、ソレノイド210
に印加される電圧の2乗に比例するのであるが、本実施
形態の増圧リニアバルブ150および減圧リニアバルブ
152においては、磁気力の変化が、ソレノイド210
の印加電圧にほぼ比例していると見なし得る領域におい
て使用されているのである。磁気力がソレノイド210
に印加される電圧に比例すると見なし得ない場合には、
図7に示したS40ないしS46の処理を省略し、S5
0において(3)式または(4)式に基づいて算出され
るフィードフォワード増圧電圧VFapply またはフィー
ドフォワード減圧電圧VFrelease を、それぞれ、以下
に示す(6)式または(7)式に基づいて算出するよう
に変更すればよい。 VFapply ←GAINa ′・√(Pdiffmaxa−Pdiffa )+VFmaxa ・・・( 6) VFrelease ←GAINr ′・√(Pdiffmaxa−Pdiffa ) ・・・(7)
【0038】さらに付言すれば、フィードフォワード増
圧電圧が(3)式に基づいて算出される際、フィードフ
ォワード増圧電圧一定値VFcaの値は、図8から明らか
なように制動中に変化する可能性のある値である。しか
し、実際上は増圧側液圧差Pdiffa の変化は比較的小さ
いことが多い。したがって、フィードフォワード増圧電
圧一定値VFcaの値を特定の値(例えば、フィードフォ
ワード増圧電圧最大VFmaxa)に固定しても、制御性能
が著しく損なわれることはない。
【0039】図12は、目標液圧Pref の変化の一例
と、その目標液圧Pref の変化に基づいて算出されたフ
ィードフォワード増圧電圧VFapply およびフィードフ
ォワード減圧電圧VFrelease の値の変化を定性的に示
すグラフである。目標液圧Pref は、時刻t1 において
0から増加を開始し、時刻t1 と時刻t2 との間の期間
(期間t1-2 と称する。他の期間についても同じ)にお
いて増加し、期間t2-3において一定となり、期間t3-4
において減少し、時刻t4 において再び0になってい
る。図12においては、フィードフォワード増圧電圧V
Fapply は、期間t1-2 においてのみ0でない値とされ
ており、また、フィードフォワード減圧電圧VFreleas
e は、期間t3-4 においてのみ0でない値とされてい
る。
【0040】これらの値は、実際には、期間t2-3 にお
いても0でない値を取り得るのであるが(図7参照)、
後述するように、期間t2-3 のように、目標液圧Pref
の値が一定である場合における増圧側印加電圧Vapply
および減圧側印加電圧Vrelease は、共に0とされる場
合が多く、その場合、フィードフォワード増圧電圧VF
apply およびフィードフォワード減圧電圧VFrelease
が0以外の値となっても、その値が実際の制御に使用さ
れることがない。図12はそのような場合の一例を示す
ものであり、期間t2-3 におけるフィードフォワード増
圧電圧VFapply およびフィードフォワード減圧電圧V
Frelease の値は、実際の制御に使用されないため、0
で示してある。
【0041】目標液圧Pref が図12に示すように変化
する場合は、増圧側初期値変数Pinita には、時点t1
における目標液圧Pref の値がセットされる。これは、
時点t1 において、図7のS20およびS22の判定結
果がYESとなり、S24が実行されるためである。ま
た、減圧側初期値変数Pinitr の値には、その後の時点
t3 に、S20の判定結果がNO、S26の判定結果が
YESとなることにより目標液圧Pref の値がセットさ
れる。図12のフィードフォワード増圧電圧VFapply
のグラフにおいて、(3)式の右辺第二項の値(フィー
ドフォワード増圧電圧一定値VFcaの値)がハッチング
付きの領域の高さで示され、右辺第一項の値がハッチン
グなしの領域の高さで示されている。一方、フィードフ
ォワード減圧電圧VFrelease のグラフには、(4)式
の右辺第二項の値(フィードフォワード減圧電圧一定値
VFcrの値)がハッチング付きの長方形領域の高さで示
され、右辺第一項の値がハッチングなしの三角形の領域
の高さで示されている。なお、目標液圧Pref の値が、
図12に一点鎖線で示したような変化を示す場合には、
フィードフォワード増圧電圧VFapply およびフィード
フォワード減圧電圧VFrelease の値は、二点鎖線で示
したように変化する。(3)式および(4)式の右辺第
一項によって算出される値が、目標液圧Pref の変化に
対応してそのように変化するからである。
【0042】以上説明したフィードバック制御とフィー
ドフォワード制御とによって、安定性と応答性とを一応
両立させる得るのであるが、まだ増圧と減圧とが頻繁に
繰り返される恐れがある。リニアバルブ装置56による
増減圧の繰返しの頻度が大きくなり、増圧リニアバルブ
150と減圧リニアバルブ152とのソレノイド210
に供給される電気エネルギが多くなって、蓄電池の蓄電
量が無駄に減少してしまう可能性があるのである。つま
り、電動モータを使用しての走行可能距離が短くなって
しまい、ハイブリッド車両としての性能が損なわれるこ
とになるのである。目標液圧Pref の周辺に不感帯を設
け、出力液圧Pout1がその不感帯内の値である場合には
リニアバルブ装置56が保持状態にされるようにすれ
ば、増減圧の繰返頻度を低減させることができる。しか
し、その場合でも、応答性をよくするためにフィードバ
ック制御のゲインを大きくすれば、制御遅れに起因し
て、図13に示すように、不感帯の幅を超えて増減圧を
繰り返すハンチングが生じる。このハンチングを防止す
るために不感帯の幅を大きくし、あるいはフィードバッ
ク制御のゲインを小さくすれば、液圧制御精度が不十分
となる。つまり、不感帯を設けることのみによっては、
液圧制御精度を維持しつつ増減圧の繰返頻度を十分に低
減させることは困難なのである。
【0043】本実施形態の液圧制御装置は、以下に説明
する処理を付加することによって上記問題点を解決し、
液圧制御精度を維持しつつ増減圧の繰返頻度を十分に低
減させることに成功したものである。図14は、その処
理の内容の一例を示す図表であり、図6のS14に示し
たVapply ,Vrelease 算出処理の内容の一例を示すも
のである。この図に示すように、偏差errorと目標
液圧変化dPref との値に基づいて、リニアバルブ装置
56の制御状態が決定される。具体的には、目標液圧変
化dPref が予め設定された正の液圧変化しきい値dP
th1 を越える場合(この状態をで示し、以下状態と
称する)においては、偏差errorの符号に応じて増
圧または保持とされる。目標液圧変化dPref が液圧変
化しきい値dPth1 以下であり、かつ、負の液圧変化し
きい値dPth2 以上である場合(状態と称する)にお
いては、偏差errorが予め設定された上限液圧偏差
err1より大きい場合に増圧が行なわれ、予め設定さ
れた下限液圧偏差err2未満である場合に減圧が行な
われ、それ以外の場合に保持が行なわれる。また、目標
液圧変化dPref が液圧変化しきい値dPth2 未満であ
る場合(状態と称する)においては、偏差error
の符号に基づいて保持または減圧が行なわれる。
【0044】上記状態は、目標液圧Pref が広義の増
加傾向(変化しない場合を含む)を示す状態であり、そ
の目標液圧Pref に出力液圧Pout1を追従させるため
に、増圧および保持のみで制御される。状態は、目標
液圧Pref が狭義の減少傾向(変化しない場合は含まな
い)を示す場合であり、この場合は減圧と保持とによっ
て制御される。状態においては、出力液圧Pout1が目
標液圧Pref を上回ることがあっても、目標液圧変化d
Pref が0以上であるので、出力液圧Pout1を一定の液
圧に保持していれば、やがて目標液圧Pref が出力液圧
Pout1を上回るように変化するので、減圧する必要がな
いことになる。逆に、状態においては増圧の必要がな
いのである。このように、状態および状態において
は、従来行われていたように増圧と減圧をと繰り返す場
合に比較して、増圧および減圧の機会を減少させ、全体
として各リニアバルブのソレノイド210への供給電力
を節減することができる。なお、上記上限液圧偏差er
r1,err2は保持状態において発生することが許容
される偏差errorの上限と下限とを規定する値であ
り、これらの絶対値を小さくすれば、偏差errorが
小さくて済むが、増圧リニアバルブ150または減圧リ
ニアバルブ152が作動する頻度が高くなり、逆にこれ
らの絶対値を大きくすれば、バルブの作動頻度は低くな
るが、偏差errorが大きくなる。したがって、バル
ブの作動頻度と偏差errorとの両方を勘案して適切
な値に決定されるべきである。
【0045】本液圧制御装置においては、以上説明した
対策によってリニアバルブ装置56への供給電力の節減
が図られているが、さらに、以下の処理によって、(i)
ブレーキの効き遅れの低減、(ii)引きずりの低減、(ii
i) リザーバ残液戻し、(iv)増圧リニアバルブ150,
減圧リニアバルブ152に含まれるシーティング弁19
0における衝撃(当接速度)の低減が図られている。
【0046】まず、(i) の効き遅れの低減について説明
する。図15は、目標液圧Pref が0である状態(制動
が行われていない状態)から、時刻ti において制動が
開始され、目標液圧Pref が直線的に増加する状態を示
している。また、その目標液圧Pref の変化に伴う出力
液圧Pout1およびホイールシリンダ液圧Pwcの変化も示
している。図から明らかなように、液圧センサ64によ
って取得される出力液圧Pout1がたとえ目標液圧Pref
とよく一致していても、ホイールシリンダ液圧Pwcは、
制動開始直後において目標液圧Pref から大きく外れ
る。これは、制動開始直後はホイールシリンダの液圧を
単位量増大させるのに必要な作動液量が多く、リニアバ
ルブ装置56とホイールシリンダ24等とを接続してい
る液通路内の作動液流量が大きいために、出力液圧Pou
t1とホイールシリンダ液圧Pwcとの間に大きな差が生じ
るためである。また、作動液流量が多い制動開始直後に
おける増圧リニアバルブ56の流路面積が、作動液流量
が多くない通常の増圧時と同じである場合には、出力液
圧Pout1自体を目標液圧Pref に精度よく追従させるこ
とができない場合も生じる。
【0047】そこで、本実施形態においては、以下に説
明する方法によって、各ホイールシリンダに供給される
作動液の流量が制動初期には特別に増量されるようにさ
れている。これが前述の初期増量である。初期増量は、
目標液圧変化dPref が正であり、かつ、目標液圧Pre
f があるしきい値Pth未満である場合に、フィードフォ
ワード増圧電圧一定値VFcaの値を、前述の関数MAP
a によって与えられる電圧よりも大きくすることによっ
て実現される。この大きくされた電圧が前述の増量電圧
VFcainc である。ここでは、増量電圧VFcainc は、
予め与えられた一定値とする。初期増量が行われるため
の上述の条件が成立する場合は、増圧側液圧差Pdiffa
の値は小さいので関数MAPa の値も大きい。そこで、
増量電圧VFcainc の値は、フィードフォワード増圧最
大電圧VFmaxa(図8参照)よりも大きくされる。目標
液圧変化dPref が0以下になるか、または、目標液圧
Pref が上記しきい値Pth以上になった場合には、初期
増量が終了させられる。つまり、フィードフォワード増
圧電圧一定値VFcaの値が、関数MAPa の値に戻され
る。ただし、初期増量が終了する時点において、関数M
APa の値と増量電圧VFcainc の値との差が大きい場
合には、フィードフォワード増圧電圧一定値VFcaの値
は、関数MAPa の値に徐々に近づけられる処理が行わ
れることが望ましい。フィードフォワード増圧電圧一定
値VFcaの値が急激に変化すると、制動力が急激に変化
してしまうからである。
【0048】次に、(ii)のブレーキの引きずり低減につ
いて説明する。前述の制御のみでは、制動終了後、出力
液圧Pout1が完全に0にならない。この0でない出力液
圧Pout1を残圧と称する。残圧が0でないと、ブレーキ
ペダル19の踏込みが完全に解除された状態において
も、各ブレーキがわずかに作用している状態(これがブ
レーキの引きずりである)となり、操縦者に違和感(引
きずり感)を与えるとともに、ブレーキパッドを不要に
摩耗させ、無駄なエネルギ消費を生じさせてしまう。し
たがって、何等かの方法で残圧を0にすることが望まし
い。この残圧を0にすることを残圧抜きと称する。残圧
抜きを行なうには、実際に制動が終了したか、あるい
は、制動が終了する直前において液通路48のリニアバ
ルブ装置56よりRLシリンダ50,RRシリンダ52
側の部分を、マスタシリンダ12側の部分に連通させれ
ばよい。そこで、本実施形態においては、減圧または保
持が行われている状態において、目標液圧Pref がある
小さな液圧しきい値δ未満になれば、増圧リニアバルブ
150のソレノイド210に期間Δtだけ、印加可能な
最大の電圧である最大印加電圧Vmax が印加されてホイ
ールシリンダとマスタシリンダとが連通させられる。こ
のように、残圧抜きが行われる場合に増圧リニアバルブ
150のソレノイド210に印加される増圧側印加電圧
Vapply は、フィードフォワード制御部300において
決定されたフィードフォワード増圧電圧VFapply とフ
ィードバック制御部302において決定されたフィード
バック増圧電圧VBapply との和の大きさではなく、こ
れらとは別個に決定された大きさである。以下、(iii)
のリザーバ残液戻し、(iv)の当接速度低減において印加
される電圧も同様に、フィードフォワード制御部30
0,フィードバック制御部302において決定された大
きさではない。
【0049】なお、本実施形態においては、上述の残圧
抜きと、(iii) のリザーバ残液戻しとの両方を同時に行
うために、減圧リニアバルブ152のソレノイド210
にも、期間Δtだけ最大印加電圧Vmax が印加される。
増圧リニアバルブ150と減圧リニアバルブ152とが
開状態にされれば、減圧用リザーバ154とマスタシリ
ンダ12とが逆止弁156,158を経なくても連通さ
せられるため、圧縮コイルスプリング188の付勢力を
大きくしなくても、減圧用リザーバ154の作動液の殆
どすべてをマスタシリンダ12に戻すことが可能とな
る。制動終了直前においては、マスタシリンダ12の液
圧はほぼ大気圧であるため、液収容室186の作動液を
液圧がほぼ大気圧になるまで流出させ得る。このよう
に、制動終了直前に、減圧用リザーバ154における残
存作動液量を殆ど0にすることができるため、次の制動
時にホイールシリンダの減圧を良好に行い得る。また、
逆止弁158,156を経て戻す場合に比較して作動液
を早急に戻すことが可能となる。さらに、寒冷地におい
て、作動液の粘度が大きくなり流れ難くなっても、確実
に戻すことが可能となる。また、残圧抜きとリザーバ残
液戻しとの両方が同時に行われるため、別個に行われる
場合に比較して効率よく処理を行うことができる。
【0050】さらに、減圧用リザーバ154における圧
縮コイルスプリング188の付勢力を小さくできるた
め、減圧時にホイールシリンダから流出させられた作動
液を収容し難くなることを回避することができる。セッ
ト荷重を逆止弁158,156の開弁圧以上にすれば、
減圧リニアバルブ152を開状態にしなくても、減圧用
リザーバ154の液収容室186の残液を殆ど0にする
ことが可能であるが、セット荷重を大きくすると、ホイ
ールシリンダから流出させられた作動液が収容できなく
なるおそれがある。それに対して、本実施形態における
ように、減圧用リザーバ154とマスタシリンダ12と
を逆止弁156,158を経ないで連通させれば、減圧
用リザーバ154の液収容室186に収容された作動液
の殆どすべてを迅速にマスタシリンダ12に戻すことが
可能となるため、圧縮コイルスプリング188のセット
荷重を小さくすることができるのである。
【0051】図16は、図14に示した処理と上述の初
期増量、残圧抜きおよびリザーバ残液戻しとを行なった
場合の、目標液圧Pref ,出力液圧Pout1,目標液圧変
化dPref ,増圧側印加電圧Vapply および減圧側印加
電圧Vrelease の変化の一例を示すグラフである。状
態においては増圧が行われるが、制動開始直後、すなわ
ち目標液圧Pref がしきい値Pth未満の間は、初期増量
の実行により増圧側印加電圧Vapply が通常の増圧時
(目標液圧Pref がしきい値Pth以上の場合)よりも特
別に大きくされて、制動液流量の不足による出力液圧P
out1(ひいてはホイールシリンダ液圧Pwc)の目標液圧
Pref からの外れが小さくされている。状態において
は、出力液圧Pout1が図16における斜線で示した領域
(不感帯)内に含まれる値である場合は、保持が行なわ
れる。しかし、矢印bで示した個所では出力液圧Pout1
にオーバーシュートが生じ、偏差errorの絶対値が
大きくなったために減圧が行なわれている。状態にお
いては、目標液圧Pref の減少に伴って出力液圧Pout1
が減圧と保持とによって減少させられる。しかし、車速
が小さくなり、電動モータの回転数が小さくなると回生
制動力は0とされ、目標液圧制動力が所要制動力とほぼ
等しい大きさとされる。
【0052】制動終了直前に目標液圧Pref が液圧しき
い値δ未満となった時点で、増圧側印加電圧Vapply お
よび減圧側印加電圧Vrelease が、それぞれ、最大印加
電圧Vmax とされることにより、残圧抜きおよびリザー
バ残液戻しが行われる。増圧側印加電圧Vapply が最大
印加電圧Vmax とされるため、ホイールシリンダの作動
液をマスタシリンダ12に早急に戻すことが可能とな
る。目標液圧Pref が大きい状態でほぼ一定に保たれた
場合、すなわち目標液圧変化dPref が0に保たれた場
合には、目標液圧Pref と出力液圧Pout1との間にある
程度の偏差errorが残ったままとなることがあるの
に対し、目標液圧Pref が0になる制動終了時には、残
圧抜きの実行によって出力液圧Pout1が0とされ、偏差
errorが残らないのである。また、減圧側印加電圧
Vrelease も最大印加電圧Vmax とされるため、減圧用
リザーバ154に蓄えられた作動液が、減圧リニアバル
ブ152,増圧リニアバルブ150を経てマスタシリン
ダ12に流出させられる。制動終了直前においては、マ
スタシリンダ12の液圧はほぼ大気圧であるため、減圧
用リザーバ154に収容された作動液の殆どすべてを戻
すことが可能となる。また、逆止弁158,156のみ
を経て戻す場合に比較して、早急に戻すことが可能とな
る。
【0053】最後に、(iv)の当接速度低減について説明
する。上述のように、増圧リニアバルブ150,減圧リ
ニアバルブ152のシーティング弁190のソレノイド
210に印加される電圧は、0より大きい場合と0の場
合とがある。図14のテーブルに基づいて、増圧が選択
された場合には、増圧リニアバルブ150においては増
圧側印加電圧Vapply が0より大きい値とされて、減圧
リニアバルブ152においては減圧側印加電圧Vreleas
e が0とされ、減圧が選択された場合には、減圧リニア
バルブ152において減圧側印加電圧Vrelease が0よ
り大きい値とされて、増圧リニアバルブ150において
は増圧側印加電圧Vapply が0とされる。また、保持が
選択された場合には、増圧側印加電圧Vapply も、減圧
側印加電圧Vrelease も0とされる。増圧,減圧から保
持にされた場合、すなわち、弁子200が弁座202か
ら離間させられている状態において、印加電圧が0とさ
れた場合には、弁子200がスプリング(206,22
4)の付勢力により弁座202に加速度的に接近させら
れる。弁子200は弁座202に大きな当接速度で着座
させられ、当接時に大きな衝撃が生じる。そのため、大
きな衝撃音が発せられたり、耐久性が低下させられたり
する。そこで、本実施形態においては、増圧,減圧から
保持にされた場合に印加電圧を直ちに0にしないで、設
定期間の間だけ0より大きい値とされた後、0とされ
る。
【0054】ここで、増圧リニアバルブ150における
場合には、図19に示すように、増圧側印加電圧Vappl
y が設定時間Tg の間だけ、式 V(k)=α・V(k)・・・(8) によって求められた大きさとされる。ここで、定数αは
1より小さい値であり、今回値は前回値にαを乗じた値
とされるのであり、増圧側印加電圧Vapply が指数関数
的に減らされることになる。印加電圧が、指数関数的に
減らされるため、弁子200は弁座202に直ちに当接
しないが、早急に、接近させることができ、当接するま
での間、これら弁子200と弁座202との間から流れ
る作動液量を少なくすることができる。その結果、ホイ
ールシリンダ液圧の制御精度の低下を抑制し得る。設定
時間およびその間に印加される電圧(設定値αの大きさ
に応じて決定され、当接速度低減用印加電圧と称するこ
とができる)が、当接速度を小さくし得、かつ、ホイー
ルシリンダ液圧の制御精度の低下を抑制し得る大きさに
決定されるのである。減圧リニアバルブ152において
も同様に、減圧側印加電圧Vrelease が(8)式によっ
て求められた大きさとされ、指数関数的に減らされる。
【0055】図17は、図6に示したメイン処理のS1
4に示したVapply ,Vrelease 算出処理の内容の一例
を示すフローチャートである。この処理は、増圧側印加
電圧Vapply および減圧側印加電圧Vrelease を、前記
図14に示した処理,(i) の初期増圧,(ii)の残圧抜
き,(iii) のリザーバ残液戻し,(iv)の当接速度低減を
共に実現できるように決定する処理である。まず、S1
00において偏差errorが算出され、S102にお
いて、目標液圧変化dPref が液圧変化しきい値dPth
1 より大きいか否かが判定される。結果がYESであれ
ば、S104において、偏差errorが0以上である
か否かが判定され、0以上であればS106において増
圧のための印加電圧v1 が増圧側印加電圧Vapply とし
てセットされ、減圧側印加電圧Vrelease が0とされ
る。ここで、印加電圧v1 の値は、図7に示したS50
において算出されるフィードフォワード増圧電圧VFap
ply と、図6のS12において算出されるフィードバッ
ク増圧電圧VBapply との和として算出される。つぎ
に、S108において、変数flagに増圧を表す値が代入
された後にVapply ,Vrelease 算出処理が終了する。
以上の経路で増圧のための印加電圧が算出されること
は、図14の状態において、増圧が行なわれることに
相当する。上記経路の他に、S102の判定結果がNO
であり、続くS110の判定結果がNOであり、さら
に、続くS112の判定結果がYESである場合におい
ても増圧が行なわれる。S110は、目標液圧変化dP
ref が目標液圧しきい値dPth2 未満であるか否かの判
定処理であり、S112は、偏差errorが上限液圧
偏差err1より大きいか否かの判定処理である。つま
り、この経路によりS106およびS108の処理が行
なわれることは、図14の状態において、増圧が行な
われる場合に相当することになる。
【0056】ここで、変数flagは、増圧を表す値
(1)、減圧を表す値(2)、保持を表す値(3)、増
圧および減圧を表す値(4)の1〜4のいずれか1つの
値に設定される。増圧を表す値1は、増圧リニアバルブ
150のソレノイド210に印加される増圧側印加電圧
Vapply が0より大きいことを表しており、必ずしも増
圧制御を行うことを表しているとは限らない。減圧を表
す値2についても同様である。したがって、変数flagが
4の場合には、増圧リニアバルブ150と減圧リニアバ
ルブ152との両方のソレノイド210にそれぞれ印加
される増圧側印加電圧Vapply ,減圧側印加電圧Vrele
ase が共に0より大きい値であることを表すことにな
る。また、変数flagが3の場合には保持であるため、増
圧側印加電圧Vapply ,減圧側印加電圧Vrelease は共
に0である。
【0057】S110の判定結果がYESであり、か
つ、続くS114の判定結果がYESである場合には、
S116において増圧側印加電圧Vapply に0がセット
されるとともに、減圧側印加電圧Vrelease に減圧のた
めの印加電圧v2 がセットされる。印加電圧v2 の値
は、図7のS50において算出されるフィードフォワー
ド減圧電圧VFrelease と、図6のS12においてフィ
ードバック制御によって算出されるフィードバック減圧
電圧VBrelease との和として算出される。つぎに、S
118において、変数flagに減圧を表す値が代入された
後にVapply ,Vrelease 算出処理が終了する。以上の
経路で減圧のための印加電圧が算出されることは、図1
4の状態において、減圧が行なわれることに相当す
る。上記経路の他に、S112の判定結果がNOであ
り、かつ、続くS120の判定結果がYESである場合
においても減圧が行なわれる。S120は、偏差err
orが下限液圧偏差err2未満であるか否かの判定処
理である。この経路によりS116およびS118の処
理が行なわれることは、状態において、減圧が行なわ
れる場合に相当する。
【0058】S104,S114およびS120のいず
れかの判定処理が行なわれ、その結果がNOであれば、
保持が行われる場合に対応し、S121およびS122
の判定処理が行なわれる。S121においては、変数Fl
agC が1であるか否かの判定が行われるが、最初は判定
結果がNOであり、S122において、下記の式で算出
される変数condition の値がTRUEであるかFALS
Eであるか否かが判定される。 condition ←((flag=“減圧”)∨(flag=“保持”))∧(Pref <δ) ・・・(9) 結果がFALSEであれば、S124において後述する
当接速度低減が行われる。S122の判定結果がTRU
Eである場合は、S127以降において、残圧抜きおよ
びリザーバ残液戻しが行われる。S127において、co
unter <Cthが成立するか否かが判定される。ここで、
Cthは、予め設定される設定カウント数であり、この値
を変更することによって、前述の残圧抜きおよびリザー
バ残液戻し時間を変更できる。最初はS127の判定結
果はYESであるため、S128において増圧側印加電
圧Vapply ,減圧側印加電圧Vrelease に最大印加電圧
Vmax がセットされ、続くS130において、変数flag
に増圧および減圧を表す値4が代入されるとともに、変
数counter の値がインクリメントされる。S128およ
びS130が一定時間繰り返された後に、S127の判
定結果がNOになり、S131において、変数FlagC お
よびcounter が共に0とされて、Vapply ,Vrelease
算出処理が終了する。
【0059】次に、S124における当接速度低減制御
について図18に示すフローチャートに基づいて説明す
る。S151において、変数flagが表す値が増圧,保
持,減圧のいずれであるかが判定される。すなわち、今
回保持が選択される以前に、増圧,保持,減圧のいずれ
が選択されていたかが判定されるのである。変数flag
が、増圧を表す値1である場合には、S152以降が実
行され、減圧を表す値2である場合にはS153以降が
実行され、保持を表す値3である場合には、S154以
降が実行される。ここでは、増圧および減圧を表す値4
であるか否かを判定しないのは、4の場合には、変数fl
agCがセットされているため、S121における判定が
YESとなり、S124が実行されることはないのであ
る。
【0060】増圧を表す値1である場合には、S152
において、変数flagの値は1のままとされる。保持が行
われるべきであるが、保持を表す値3にセットすると、
増圧リニアバルブ150のソレノイド210に印加され
る増圧側印加電圧が0とされてしまうからである。次
に、S155において当接速度低減用counter のカウン
ト値が設定カウント値Th より小さいか否かが判定され
る。設定カウント値は、当接速度低減を行う時間に対応
するカウント値に設定されている。最初にS155が実
行される場合には、設定カウント値に達していないた
め、判定はYESとなり、S156において、増圧側印
加電圧Vapply の今回値が前回値に1より小さい設定値
αを乗じた大きさとされ、S157において、当接速度
低減用counter がカウントアップされる。増圧側印加電
圧Vapply が直ちに0にされるわけではなく漸減させら
れるのである。本実施形態においては、増圧側印加電圧
Vapply が指数関数的に、すなわち、印加電圧の低減速
度が低減させられるように漸減させられるのである。
【0061】増圧側印加電圧Vapply が漸減させられる
うちに、設定時間に達すれば、S155における判定が
NOとなり、S158,159において、増圧側印加電
圧Vapply が0とされ、変数flagの値が保持を表す値3
に設定され、当接速度低減用counter が0とされる。増
圧リニアバルブ150において弁子200が弁座202
に着座させられる。このように、増圧側印加電圧Vappl
y が直ちに0にされるわけではないため、弁子200が
弁座202に着座する際の当接速度が、増圧から保持に
切り換えられた際に直ちに0にされる場合に比較して小
さくなり、衝撃を小さくすることができる。なお、増圧
から保持に切り換わった場合には、減圧側印加電圧Vre
lease は0に保たれたままである。
【0062】減圧を表す値2である場合には、S153
において、変数flagの値は2のままとされる。前述のよ
うに、保持制御が行われるべきであるが、保持を表す値
3にセットすると、減圧リニアバルブ152に電圧が印
加されなくなってしまうからである。その後、同様に、
S160以降が実行される。減圧側印加電圧Vrelease
の今回値が前回値に1より小さい設定値αを乗じた大き
さとされるのであり、減圧側印加電圧が、それの低減速
度が低減させられるように、漸減させられる。設定時間
に達すれば、S163,164において、減圧側印加電
圧Vrelease が0とされ、変数flagの値が保持を表す値
3に設定され、当接速度低減用counterが0とされる。
【0063】保持を表す値3である場合には、S15
4,165において、増圧側印加電圧Vapply および減
圧側印加電圧Vrelease が0とされ、変数flagの値が保
持を表す値3とされる。この場合には、変数flagの値が
すでに3であるため、ステップ154は不可欠ではな
い。
【0064】このように、増圧から保持に切り換わった
場合に増圧リニアバルブ150において弁子200が弁
座202に着座する際の衝撃が小さくされ、減圧から保
持に切り換わった場合に減圧リニアバルブ152におけ
る衝撃が小さくされる。本実施形態においては、増圧,
保持,減圧が図14のテーブルに従って選択されるた
め、増圧と減圧との間で切換えが行われることはない。
そのため、保持に切り換わった場合にのみ、当接速度低
減が行われるようにすればよい。また、図14のテーブ
ルに従って制御されない場合には、増圧から減圧、減圧
から増圧に直接切り換えられる場合もあるが、その場合
には、増圧と減圧との切り換え時においても当接速度低
減が行われるようにすることもできる。増圧から減圧に
切り換えられた場合には、増圧側印加電圧Vapply が指
数関数的に漸減させられ、減圧側印加電圧Vrelease が
v2 とされる。また、変数flagが増圧および減圧を表す
値4に設定されるが、設定時間が経過した後は、減圧を
表す値2に設定される。同様に、減圧から増圧に切り換
えられた場合には、増圧側印加電圧Vapply がv1 とさ
れ、減圧側印加電圧Vrelease が指数関数的に漸減させ
られる。また、当接速度低減が終了した後は、増圧を表
す値1に設定される。ここで、減圧から増圧に切り換え
られた場合、増圧から減圧に切り換えられた場合におい
て、高い制御応答性が要求される場合、すなわち、ホイ
ールシリンダ液圧を早急に減圧させたり、増圧させたり
する必要がある場合には、当接速度低減制御が行われな
いようにすることができる。また、必要に応じて中止さ
せることも可能である。
【0065】次に、本実施形態における車両用制動装置
においてアンチロック制御が行われる場合について説明
する。アンチロック制御は、回生制動協調制御と並行し
て行われる場合が多い。前述のように、リニアバルブ装
置56における増圧リニアバルブ150および減圧リニ
アバルブ152のソレノイド210に、液圧センサ64
によって検出された出力液圧Pout1が目標液圧Pref に
近づくように、増圧側印加電圧Vapply ,減圧側印加電
圧Vrelease が印加される状態において、各電磁開閉弁
が開状態と閉状態とに切り換えられることにより、各ホ
イールシリンダ24,26,50,52の液圧が、車輪
23,25,49,51の制動スリップ状態がほぼ適正
状態に保たれるように制御される。ホイールシリンダ2
4,26,50,52の液圧を減圧する際には、電磁開
閉弁42,44,72が開状態に切り換えられて、作動
液がマスタリザーバ18に流出させられるのであるが、
急減圧を行う必要が生じた場合には、電磁開閉弁58,
85,86および減圧リニアバルブ152を経て減圧用
リザーバ154へも流出させられる。このように、減圧
弁としての電磁開閉弁72,42,44を経て流出させ
られるだけでなく、増圧弁としての電磁開閉弁58,8
4,86を経ても流出させられるようにすれば、流出面
積を大きくし、流出流量を大きくすることができる。そ
の結果、減圧速度、すなわち、減圧勾配を大きくするこ
とができ、急減圧が可能となるのである。急減圧が可能
となれば、制動スリップ状態が悪化することを良好に回
避することができる。
【0066】急減圧が必要な状態の一例としては、高μ
路において制動が行われた後、低μ路に移った場合があ
る。高μ路においては、ブレーキペダル19が大きな踏
力が踏み込まれることが可能で、その場合には、ホイー
ルシリンダ液圧が高くなるが、その後に、低μ路に移っ
た場合には、ホイールシリンダ液圧が路面μとの関係に
おいて過大となり、制動スリップが過大となり、急減圧
が必要となるのである。したがって、アンチロック制御
中またはアンチロック制御開始条件が満たされた場合
に、ホイールシリンダ液圧が設定液圧以上である場合に
は、急減圧が必要な状態であると検出することができ
る。また、ホイールシリンダ液圧が路面μとの関係で過
大である程度が大きいほど車輪速度の落込みが大きくな
るため、車輪速度の減少量が設定減少量より大きい場合
に、急減圧が必要な状態にあると検出されるようにする
こともできる。本実施形態においては、アンチロック制
御中において、ホイールシリンダ液圧が設定液圧以上
で、かつ、車輪速度の減少量(落込み量)が設定減少量
より大きい場合に、急減圧が必要な状態であると検出さ
れるようにされている。ホイールシリンダ液圧は、液圧
センサ110〜114の出力信号に基づいて検出され
る。また、低μ路においても、ホイールシリンダ液圧が
路面μとの関係において著しく過大となり、急減圧が必
要な状態となる場合もある。この場合には、車輪速度の
減少量が設定減少量より大きい場合に急減圧が必要な状
態であると検出することができる。
【0067】本実施形態においては、車輪速度の減少量
が、車輪速度の前回値と今回値との差として求められ
る。この差の値は、車輪速度の減少速度(車輪減速度)
とみなすことができ、車輪減速度が設定減速度より大き
いか否かが検出される。車輪速度の減少量が、比較的長
い時間における差として求めることもでき、この場合に
は、車輪速度の落込み量が設定落込み量より大きいか否
かが検出されることになる。前者の場合には、必要時に
直ちに急減圧を行うことが可能となるため、車両の制動
安定性を良好に保つことができる。後者の場合には、本
来急減圧が不要である場合に急減圧が行われることを良
好に回避し得る。
【0068】さらに、急減圧時には、上述のように、減
圧側印加電圧Vrelease が最大印加電圧Vmax とされ、
増圧側印加電圧Vapply が0とされるが、この制御は、
回生制動協調制御とは無関係に行われる。すなわち、回
生制動協調制御において決定された減圧側印加電圧Vre
lease や増圧側印加電圧Vapply の大きさとは異なる大
きさに決定される場合もあるが、その場合には、急減圧
処理が優先的に行われる。急減圧は長時間継続して行わ
れるわけではないため、回生制動協調制御に対する影響
は小さい。
【0069】本実施形態におけるアンチロック制御は、
アンチロック開始条件が満たされると開始され、終了条
件が満たされると終了させられる。アンチロック開始条
件は、車輪減速度Gw が設定減速度以上となり、かつ、
制動スリップ量が設定スリップ量ΔV1 より大きくなっ
た場合に満たされ、終了条件は、ブレーキペダル19の
踏込みが解除された場合や推定車体速度Vsoがアンチロ
ック制御禁止速度以下となった場合に満たされる。ま
た、パルス増圧モードが設定された場合において、パル
スが所定回数発せられた場合にも終了させられる。ここ
で、設定スリップ量ΔV1 は、車輪減速度Gw が設定減
速度G1 以下になった時点におけるスリップ量ΔVSN
に、その時点における推定車体速度Vsoに基づいて決定
された基準スリップ量ΔVR (ΔVR =A・Vso+B
A,Bは共に定数)を加えた大きさである(ΔV1 =Δ
VSN+ΔVR )。また、アンチロック制御中において
は、車輪減速度Gw と制動スリップ量ΔVとに基づいて
増圧,保持,減圧モードがそれぞれ選択される。制動ス
リップ量が設定スリップ量ΔV1 より大きい場合におい
て、車輪減速度Gw が設定減速度G1 以上の場合に、減
圧モードが選択され、設定減速度G2 より小さい場合に
保持モードが選択される。また、制動スリップ量が設定
スリップ量ΔV1 以下で、かつ、車輪減速度Gw が設定
減速度G2 より小さい場合には、パルス増圧モードが選
択される。それ以外の場合には、選択されたモードが維
持される。また、モードには、通常制動モードも含まれ
る。
【0070】アンチロック制御は、図20のフローチャ
ートで表されるアンチロック制御プログラムの実行に従
って行われる。S170において、フローチャートの図
示を省略する車体速度等推定プログラムの実行等によっ
て求められた各車輪の車輪速度Vw ,推定車体速度Vs
o,基準スリップ量ΔVr 等が読み込まれる。推定車体
速度Vsoが車輪速度Vw の最大値等に基づいて求めら
れ、基準スリップ量ΔVr が推定車体速度Vsoに基づい
て求められる。S171において、各車輪の車輪減速度
Gw ,制動スリップ量ΔVwが演算により求められ、S
172において、終了条件が満たされるか否かが判定さ
れる。満たされない場合には、S173において、車輪
減速度Gw が設定減速度G1 以上か否かが判定される。
設定減速度G1 より小さい場合には、S174におい
て、アンチロック制御フラグがセットされているか否か
が判定される。アンチロック制御フラグは、アンチロッ
ク制御が行われている間セットされるフラグである。ア
ンチロック制御フラグがセットされていない場合には、
S175において選択されているモードが維持される。
ここでは、車輪減速度がそれほど小さくなく、アンチロ
ック制御が行われていない状態であるため、通常制動モ
ードが維持され、通常制動が継続して行われるのであ
る。
【0071】それに対して、アンチロック制御が開始さ
れていない状態において、車輪減速度が設定減速度G1
以上になった場合には、スリップ量ΔVSNが決定され
る。スリップ量ΔVSNは、前述のように、車輪減速度が
設定減速度G1 に達した時点におけるスリップ量であ
り、その値は、アンチロック制御中は一定に保たれる。
スリップ量ΔVSNが決定されれば、スリップ量決定フラ
グFSNがセットされ、S178が2回以上実行されない
ようにされている。S177が最初に実行される場合に
は、スリップ量決定フラグFSNはセットされていないた
め、判定はNOとなり、S178において、スリップ量
ΔVSNが決定される。その後、S179において制動ス
リップ量ΔVが設定スリップ量ΔV1 より大きいか否か
が判定される。最初にS179が実行される場合には、
制動スリップ量はスリップ量ΔVSNと同じ大きさである
ため、判定はNOとなり、S175において、通常制動
モードが維持される。アンチロック制御は開始されない
のである。
【0072】次に、S173における判定がYES、S
176における判定がNO、S177における判定がY
ESとなり、S179において、制動スリップ量ΔVが
設定スリップ量V1 より大きいか否かが判定される。制
動スリップ状態が悪化し、制動スリップ量が設定スリッ
プ量V1 より大きくなれば、S180においてアンチロ
ック制御フラグがセットされ、S181において、急減
圧が必要な状態にあるか否かが判定される。急減圧が必
要な状態でない場合には、判定がNOとなり、S182
において減圧モードが選択され、急減圧が必要な状態で
あると検出された場合には、判定がYESとなり、S1
83において急減圧モードが設定される。
【0073】減圧モードが選択された場合には、減圧弁
としての電磁開閉弁72,42,44が開状態にされ、
ホイールシリンダの作動液は、減圧弁を経てマスタリザ
ーバ18に流出させられる。急減圧モードが選択された
場合には、S15における判定がYESとなり、S16
において、増圧側印加電圧Vapply が0とされ、減圧側
印加電圧Vrelease が最大印加電圧Vmax とされ、S1
8において、リニアバルブ装置56に出力される。ま
た、減圧弁としての電磁開閉弁72,42,44が開状
態とされ、かつ、増圧弁としての電磁開閉弁58,8
4,86が開状態とされる。その結果、ホイールシリン
ダの作動液は、減圧弁を経てマスタリザーバ18に流出
させられるとともに、増圧弁,減圧リニアバルブ152
を経て減圧用リザーバ154に流出させられる。このよ
うにすれば、ホイールシリンダから流出させられる作動
液流量が大きくなり、減圧速度(減圧勾配)を大きくす
ることができる。
【0074】また、減圧により、スリップ状態が回復
し、車輪減速度が設定減速度G1 より小さくなれば、S
173における判定がNOとなる。S184において、
さらに、設定減速度G2 より小さいか否かが判定され、
S185において、制動スリップ量が設定スリップ量V
1 以下か否かが判定される。これらの判定結果に基づい
て、減圧モード、急減圧モードが維持されたり、保持モ
ードが選択されたり、パルス増圧モードが選択されたり
する。前述のように、車輪減速度Gw が設定減速度G2
より小さく、かつ、制動スリップ量ΔVが設定スリップ
量ΔV1 以下の場合には、S186においてパルス増圧
モードが選択され、設定スリップ量ΔV1より大きい場
合には、S187において保持モードが選択される。ま
た、ぞれ以外の場合には、選択されたモードが維持され
る。ここで、S186においてパルス増モードが選択さ
れて、所定回数のパルスが発せられた後には、アンチロ
ック制御は終了させられる。S189,190におい
て、通常制動モードが選択され、アンチロック制御フラ
グおよびスリップ量決定フラグFSNがリセットされる。
S189,190は、S172において終了条件が満た
された場合にも実行される。
【0075】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、電磁付勢装置190によって駆動力付与
装置が構成される。電磁付勢装置190は、液圧差に応
じた差圧作用力により、弁子200が弁座202から離
間し易い方向に駆動力を付与することによって、開弁を
付勢する装置であるため、電磁付勢装置と称するが、駆
動力の方向は、弁子200がスプリング202(22
4)の付勢力により弁座202に接近する方向とは逆方
向であり、接近を付勢するわけではないため、単に駆動
力付与装置と称することが適当な場合もある。電磁付勢
装置190は、広く、電磁駆動装置,電気的駆動装置と
称することもできる。コントローラ66の増圧側印加電
圧,減圧側印加電圧を決定する部分(S10,12,1
4,16)等によりシーティング弁制御装置が構成さ
れ、そのうちの、S124を実行する部分等により当接
速度低減手段が構成される。当接速度低減手段は、当接
音低減手段,衝撃低減手段等と称したり、当接速度低減
駆動力発生手段、当接速度低減電圧印加手段等と称した
りすることもできる。また、当接速度低減手段のうち、
印加電圧を指数関数的に漸減させる部分(S156,1
61を実行する部分)等により、駆動力低減速度漸減手
段が構成される。駆動力低減速度漸減手段は、閉作動時
駆動力漸減手段,駆動力減衰手段,印加電圧減衰手段等
と称することもできる。また、コントローラ66のS1
27〜131を実行する部分等によりリザーバ残液戻し
手段が構成される。また、本実施形態においては、増圧
リニアバルブ150および減圧リニアバルブ152等に
よって制御弁装置が構成され、減圧用リザーバ154に
よってリザーバが構成されることになる。さらに、増圧
リニアバルブ150,減圧リニアバルブ152等によっ
て状態切換手段が構成され、S181,183,15,
16,18を実行する部分等により急減圧手段が構成さ
れる。急減圧手段には、急減圧必要時に減圧リニアバル
ブ152を開状態に切り換える弁切換手段が含まれる。
【0076】なお、上記実施形態においては、当接速度
低減処理においては、設定時間の間、印加電圧の今回値
が、前回値に設定値αを乗じることにより決定された大
きさとされており、設定値αの大きさは、減圧側印加電
圧と増圧側印加電圧とで同じ大きさとされていたが、互
いに異なる大きさとすることもできる。減圧リニアバル
ブ152における方がスプリング224による付勢力が
大きいため、当接速度を増圧リニアバルブ150におけ
る場合とほぼ同じにする場合には、減圧側印加電圧を大
きくする方が望ましく、設定値αを大きくすれば、設定
時間の間に印加される電圧が相対的に大きくなる。ま
た、増圧,減圧から保持に切り換えられてから設定時間
の間、図26に示すように、一定の大きさの電圧が印加
されるようにしてもよい。この場合に印加される電圧の
大きさは、弁子200と弁座202との間の距離、すな
わち、弁子200のストロークxおよび増圧リニアバル
ブ150,減圧リニアバルブ152の前後における液圧
差Pdiffa ,液圧差Pdifferに応じた差圧作用力Fd に
基づいて決定することができる。例えば、図25に示す
ように、スロトークxが大きいほど大きく、差圧が小さ
いほど大きい値とすることができる。
【0077】この場合についての制御について図21に
示すフローチャートに基づいて説明する。S202,2
03において、液圧センサ62,64によって検出され
た液圧がそれぞれ読み取られ、増圧リニアバルブ15
0,減圧リニアバルブ152の各々の前後における液圧
差に基づく差圧作用力Fd.A ,Fd.R が求められる。増
圧リニアバルブ150においては、差圧作用力Fd.A は
入力液圧Pin,出力液圧Pout1およびシーティング弁1
90における受圧面積Aに基づいて求められ、減圧リニ
アバルブ152においては、出力液圧Pout1,減圧用リ
ザーバ154における液圧Pres および受圧面積Aに基
づいて求められる。S204において、図14に示すマ
ップに従って、増圧,減圧,保持のいずれかが選択され
る。
【0078】増圧が選択された場合には、S205,2
06において、増圧側印加電圧Vapply がv1 とされ、
減圧側印加電圧Vrelease が0とされて、変数flagが増
圧を表す値1にセットされる。その後、S207におい
て、その時点におけるストロークxが求められる。減圧
が選択された場合にも同様に、S208〜210におい
て、増圧側印加電圧Vapply が0とされ、減圧側印加電
圧Vrelease がv2 とされ、変数flagが2にセットされ
た後、その時点におけるストロークxが求められる。保
持が選択された場合には、S211において当接速度低
減が実行される。
【0079】増圧リニアバルブ150における弁子20
0の弁座202に対するストロークxは、S207の実
行によって推定される。図4から明かなように、ストロ
ークxとシーティング弁190に作用する力とは、式 Mx″+Cx′+Kx=Fs +Fd +Fp +Ff ・・・(10) で表される関係があり、この式に基づいて弁子200の
位置(ストロークx)が推定されるのである。ここで、
Mはシーティング弁190の弁子200の質量、Cは減
衰係数、Kはスプリング206の弾性係数であり、Fs
,Fd ,Fp ,Ff は、それぞれ、電磁駆動力,差圧
作用力,スプリング202の付勢力,流体力である。流
体力は他の力の比較して非常に小さいため、0とする。
ここで、差圧作用力Fd は、電磁駆動力Fs ,スプリン
グの付勢力Fp とは逆向きの力である。差圧作用力Fd.
A ,Fd.R はS203において求められ、スプリング2
02の付勢力Fp は前回のストロークx(k-1)に基づい
て求めることができる。また、電磁駆動力Fs は、前回
のストロークx(k-1)と、増圧側印加電圧Vapply とに
基づいて図24のグラフで表されるテーブルに従って推
定することができる。弁子200の質量M、減衰係数
C、スプリング206の弾性係数Kは、予めわかってい
る値である。
【0080】S251において、電磁駆動力Fs が求め
られる。最初にS207が実行される場合には、前回の
ストロークx(k-1) は0である。同様に、前回の速度
x′(k-1) も前回の加速度x″(k-1) も0である。これ
らストロークx,速度x′,加速度x″の初期値は、後
述するが、保持が選択された場合(印加電圧が0の場
合)に0にセットされるようにされている。したがっ
て、ブレーキ解除時に0とされるのである。S252に
おいて、加速度が(10)式に従って求められ、S25
3において、今回の速度x′(k) が前回の速度x′(k-
1) に今回の加速度x″(k) を加えることによって求め
られ、S254において、今回のストロークxが、前回
のストロークx(k-1) に今回の速度x′(k) を加えるこ
とによって求められるのである。減圧が選択された場合
においても同様にして、ストロークxが求められる。増
圧側印加電圧Vapply の代わりに減圧側印加電圧Vrele
ase に基づいてストロークxが求められることになる
が、それ以外の処理は同じである。
【0081】このようにして求められたストロークxに
従って、当接速度低減時に印加される増圧側印加電圧V
apply が決定される。当接速度低減は、上記実施形態に
おける場合と同様に、増圧,減圧から保持に切り換えら
れた場合に行われ、増圧リニアバルブ150において
は、設定時間の間0より大きい一定の大きさの増圧側印
加電圧が印加されるが、その大きさは、S274におい
て、ストロークxと、差圧作用力Fd とに基づいて図2
5に示すテーブルに従って決定されるのである。設定時
間経過後は、S276,277において、増圧側印加電
圧,減圧側印加電圧が共に0とされ、変数flagは保持を
表す値3とされる。また、印加電圧が0とされた場合に
は、ストロークx,速度x′,加速度x″が0となる。
弁子200は弁座202に着座させられるからである。
保持が選択された場合も同様に、S279において、ス
トロークx,速度x′,加速度x″が0とされる。
【0082】なお、上記実施形態においては、増圧,減
圧から保持に切り換わった時点、すなわち、弁子200
が弁座202に接近し始めた時点から当接する直前まで
電圧が印加させられていたが、弁子200が弁座202
に接近する途中から当接する直前まで印加させられるよ
うにしてもよい。また、接近する途中において、電圧を
複数回に分けて印加させることも可能であり、当接直前
において、停止させればよい。
【0083】さらに、上記実施形態においては、制動終
了直前に、残圧抜きおよびリザーバ残液戻しが行われて
いたが、制動終了後に行われるようにしてもよい。ま
た、残圧抜きおよびリザーバ残液戻しを別個に行うこと
もでき、残圧抜きを制動終了直前に、リザーバ残液戻し
を制動終了後に行うこともできる。その場合には、図2
7に示すフローチャートに従って、非制動時に、増圧リ
ニアバルブ150,減圧リニアバルブ152の両方が開
状態とされる。非制動時に行われるため、変数flagを4
にセットする必要はないが、上記実施形態においては不
要であった前回回生制動実行フラグが必要となる。前回
回生制動実行フラグは、制動時に回生制動が行われたか
否かを表すフラグであり、換言すれば、回生制動協調制
御が行われたか否かを表すフラグである。本実施形態に
おいては、S14において、制動開始から終了までの間
に、増圧側印加電圧Vapply ,減圧側印加電圧Vreleas
e が0より大きい値に決定されたことがある場合にセッ
トされ、0より大きい値に決定されることがなかった場
合にリセットされる。前回回生制動実行フラグは、リザ
ーバ残液戻しが終了すればリセットされる。前回の制動
時に、回生制動協調制御が行われた場合には、減圧用リ
ザーバ154には作動液が残っている可能性が高いた
め、リザーバ残液戻しが行われるが、回生制動協調制御
が行われなかった場合には、残っている可能性が低いた
め行われないのである。
【0084】S301,302において、制動中か否
か、前回制動時に回生制動が行われたか否かが判定され
る。制動中でなく、前回制動時に回生制動が行われた場
合には、いずれのステップにおける判定もYESとな
り、S303以降が実行される。設定時間の間、増圧リ
ニアバルブ150,減圧リニアバルブ152のソレノイ
ド210に最大印加電圧Vmax が印加され、増圧リニア
バルブ150,減圧リニアバルブ152が共に開かれ
る。減圧用リザーバ154の作動液が、減圧リニアバル
ブ152,増圧リニアバルブ150を経てマスタシリン
ダ12に戻される。設定時間に達した場合には、S30
6,307において、印加電圧が0とされ、回生制動実
行フラクがリセットされる。非制動中に一回リザーバ残
液戻しが行われれば十分だからである。また、設定時間
を計測するタイマは、最大印加電圧Vmax が印加されて
いる間タイムアップされ、S308において制動中に0
にリセットされる。
【0085】なお、上記実施形態においては、非制動中
には、リザーバ残液戻しが一回行われるようにされてい
たが、複数回行われるようにしてもよい。その場合に
は、リザーバ残液戻しが終了した後に、前回回生制動実
行フラグがリセットされないようにすればよい。また、
上記タイマは、S307において、前回回生制動実行フ
ラグがリセットされた場合にリセットされるようにする
こともできる。
【0086】また、リザーバ残液戻しが、図28のフロ
ーチャートで表されるプログラムに従って実行されるよ
うにすることもできる。すなわち、リザーバ残液戻し中
にブレーキペダル19が踏み込まれた場合には、リザー
バ残液戻しは中断させられるが、再度、踏込みが解除さ
れた場合に、設定時間の残りだけ続行されるようにする
のである。S320,321において、図27に示すフ
ローチャートにおける場合と同様に、制動中か否か、前
回回生制動実行フラグがセットされているか否かが判定
される。いずれの判定もYESの場合には、S322に
おいて、リザーバ残液戻しが行われている(途中)か否
かが判定される。すなわち、増圧,減圧リニアバルブ1
50,152が全開か否か、増圧側,減圧側印加電圧V
apply , Vreleaseが共に最大印加電圧Vmax であるか
否かが判定されるのである。リザーバ残液戻しが行われ
ている場合には、S324以降において、リザーバ残液
戻しが継続して行われるが、行われていない場合には、
S323においてタイマが0とされた後、リザーバ残液
戻しが開始される。タイマは、リザーバ残液戻しが行わ
れている間、すなわち、増圧側,減圧側印加電圧Vappl
y , Vrelease が共に最大印加電圧Vmax である間のみ
カウントする。
【0087】リザーバ残液戻し中にブレーキペダル19
が踏み込まれた場合には、リザーバ残液戻しは行われ
ず、タイマによるカウントも行われない。その後、ブレ
ーキペダル19の踏み込みが解除された場合には、S3
21において、前回回生制動実行フラグがセットされて
いるか否かが判定される。リザーバ残液戻しが中断され
る原因となった制動において、回生制動が行われた場合
には、S321における判定がYESとなり、S322
において、リザーバ残液戻し途中か否かが判定される
が、そうではないため、判定はNOとなり、タイマが0
にされた後、設定時間の間、増圧リニアバルブ150,
減圧リニアバルブ152が全開状態に保たれる。回生制
動が行われなかった場合には、S321における判定が
NOとなり、S330において、タイマのカウント値が
0より大きいか否かが判定される。0より大きい場合に
は、S324以降においてリザーバ残液戻しが継続して
残り時間だけ行われる。したがって、ソレノイド210
への電圧印加によって消費される電力の無駄を少なくす
ることができる。0の場合には、リザーバ残液戻しは行
われない。リザーバ残液戻しを行う必要はないのであ
る。
【0088】また、回生制動実行フラグを設ける必要は
必ずしもない。回生制動が行われない場合にリザーバ残
液戻しが行われても差し支えない。回生制動が行われな
くても、減圧用リザーバ154には、減圧リニアバルブ
152や逆止弁158における液漏れ等により、作動液
が溜まる可能性があるからである。リザーバ残液戻しの
効果は、リザーバ容量が小さい減圧用リザーバ154を
含む液圧ブレーキ装置において、特に享受し得るが、本
実施形態におけるように、通常の大きさのリザーバ容量
の減圧用リザーバ154を含むものにおいても、上述の
ように、有効である。
【0089】また、上記実施形態においては、アンチロ
ック制御において、急減圧が必要か否かが、ホイールシ
リンダ液圧と、車輪速度減少量(落ち込み量)との両方
に基づいて検出されていたが、ホイールシリンダ液圧と
車輪速度減少量とのいずれか一方に基づいて検出するこ
ともできる。さらに、ホイールシリンダと、減圧弁とし
ての電磁開閉弁,増圧弁としての電磁開閉弁との間にシ
リンダとピストンを含む液圧伝達装置が設けられている
液圧ブレーキ装置にも適用することができる。ピストン
の一方の液圧室には、減圧弁および増圧弁が接続され、
他方の液圧室にはホイールシリンダが接続される。作動
液が減圧弁を経て流出させられると、ピストンの一方の
液圧室の作動液が流出させられ、他方の液圧室の容積が
増大させられるため、ホイールシリンダから作動液が流
出させられることになるが、この場合においても、増圧
弁と減圧弁との両方を経て作動液が流出させられれば、
容積の増加量が大きくなり、減圧速度を大きくすること
ができる。また、アンチロック制御において、減圧,増
圧,保持が選択される基準は、上記実施形態における場
合に限らない。開始条件,終了条件も上記実施形態にお
ける場合に限定されるわけではない。
【0090】さらに、上記実施形態においては、ホイー
ルシリンダの液圧をそれぞれ検出する液圧センサ11
0,112,114が設けられていたが、これら液圧セ
ンサ110〜114を設けることは不可欠ではなく、ア
ンチロック制御における増圧時間,減圧時間,急減圧時
間等に基づいて推定することも可能である。また、上記
実施形態においては、増圧側印加電圧Vapply と減圧側
印加電圧Vrelease とが、フィードフォワード制御とフ
ィードバック制御とによって決定されていたが、いずれ
か一方によって決定されるようにしてもよい。
【0091】さらに、上記実施形態においては、回生制
動システムを備えた車両用の液圧ブレーキ装置の液圧制
御装置に本発明が適用されていたが、回生制動システム
を備えない車両用の液圧ブレーキ装置の液圧制御装置に
本発明を適用することも可能である。所要制動力から回
生制動力を差し引いて液圧制動力を決定する処理が不要
になる点以外は同様に本発明を実施し得る。また、リニ
アバルブ装置56の代わりに、電磁方向切換弁や電磁開
閉弁を含む液圧制御弁装置を使用して本発明を実施する
ことも可能である。さらに、残圧抜きが、ブレーキペダ
ル等のブレーキ操作部材が非操作位置まで復帰させられ
たことが、検知スイッチ等の検知手段により検知された
際に行われるようにすることも可能である。また、減圧
用リザーバ154を大気に開放させることも可能であ
る。その他、本発明は特許請求の範囲を逸脱することな
く種々の変形,改良を施した態様で実施することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である液圧制御装置を含む
液圧ブレーキ装置の構成を示す系統図である。
【図2】上記液圧ブレーキ装置におけるリニアバルブ装
置の構成を概略的に示す系統図である。
【図3】上記液圧ブレーキ装置における制動力制御の概
略を示すグラフである。
【図4】上記リニアバルブ装置を模式的に示す図であ
る。
【図5】上記液圧ブレーキ装置のコントローラの液圧制
御に関する機能ブロック図である。
【図6】上記コントローラによって実行されるメイン処
理の内容の一例を示すフローチャートである。
【図7】図6のS10においてコールされるVFapply
,VFrelease 算出処理の内容を示すフローチャート
である。
【図8】図7のS42において使用される関数MAPa
を示すグラフである。
【図9】図7のS46において使用される関数MAPr
を示すグラフである。
【図10】目標液圧Pref と目標液圧変化dPref とを
算出するために実行されるタイマ割込処理の内容を示す
フローチャートである。
【図11】図6,図7および図10に示した各処理によ
って行われる2つの減圧例を示すグラフである。
【図12】目標液圧Pref の変化の一例と、その目標液
圧Pref の変化に基づいて、図6,図7および図10に
示した処理によって算出される、フィードフォワード増
圧電圧VFapply およびフィードフォワード減圧電圧V
Frelease の値の変化を示すグラフである。
【図13】目標液圧Pref の変化の一例と、その目標液
圧Pref の変化に基づいて、図6,図7および図10に
示した処理によって出力される出力液圧Pout1の変化の
一例を示すグラフである。
【図14】図6のS14においてコールされるVapply
,Vrelease 算出処理の内容の一例を説明するための
図表である。
【図15】上記初期増量の必要性を説明するためのグラ
フである。
【図16】図15にその内容を示した処理と初期増量お
よび残圧抜きとを行なった場合の、目標液圧Pref の変
化の一例と、それにともなう出力液圧Pout1,目標液圧
変化dPref ,増圧側印加電圧Vapply および減圧側印
加電圧Vrelease の変化を概念的に示すグラフである。
【図17】図6のS14に示したVapply ,Vrelease
算出処理の内容の一例を示すフローチャートである。
【図18】図17のS124に示した当接速度低減処理
の内容の一例を示すフローチャートである。
【図19】上記当接速度低減処理によって印加電圧が減
少された状態を示す図である。
【図20】上記コントローラによって処理されるアンチ
ロック制御プログラムを表すフローチャートである。
【図21】本発明の別の一実施形態である液圧制御装置
を含む液圧ブレーキ装置のコントローラによって実行さ
れるリニアバルブ装置制御プログラムを表すフローチャ
ートである。
【図22】図21のS207に示したストローク推定の
内容の一例を示すフローチャートである。
【図23】図21のS211に示す当接速度低減処理の
一例を示すフローチャートである。
【図24】図22のS251において利用されたストロ
ークおよびソレノイドへの印加電圧に基づいて電磁付勢
力の大きさを求めるためのマップである。
【図25】図23のS274において利用されたストロ
ークおよび差圧に基づいて当接速度低減時の印加電圧を
求めるためのマップである。
【図26】上記当接速度低減処理によって印加電圧が減
少させられた一例を示す図である。
【図27】本発明のさらに別の一実施形態である液圧制
御装置を含む液圧ブレーキ装置のコントローラによって
実行される非制動時リザーバ残液戻し制御を示すフロー
チャートである。
【図28】本発明のさらに別の一実施形態である液圧制
御装置を含む液圧ブレーキ装置のコントローラによって
実行される非制動時リザーバ残液戻し制御を示すフロー
チャートである。
【符号の説明】
30,32,42,44,58,72,80,84,8
6:電磁開閉弁 56:リニアバルブ装置 66:コントローラ 150:増圧リニアバルブ 152:減圧リニアバルブ 154:減圧用リザーバ 190:シーティング弁 192:電磁付勢装置

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ホイールシリンダからの作動液の流出を許
    容したり、阻止したりする減圧弁と、 前記ホイールシリンダへの作動液の流入を許容したり、
    阻止したりする増圧弁と、 これら増圧弁と減圧弁とを制御することによりホイール
    シリンダ液圧を制御するホイールシリンダ液圧制御手段
    とを含む液圧制御装置において、 前記増圧弁を高圧源に連通させる増圧可能状態と、増圧
    弁を低圧源に連通させる減圧可能状態とに切り換え可能
    な状態切換手段を設け、かつ、前記ホイールシリンダ液
    圧制御手段に、前記状態切換手段を減圧可能状態に切り
    換えるとともに、前記ホイールシリンダの作動液を減圧
    弁および増圧弁の両方を経て流出させる急減圧手段を設
    けたことを特徴とする液圧制御装置。
  2. 【請求項2】前記状態切換手段が、前記高圧源と増圧弁
    との間に設けられ、これらを連通させる連通状態とこれ
    らを遮断する遮断状態とに切り換え可能な増圧状態用制
    御弁と、前記低圧源と増圧弁との間に設けられ、これら
    を連通させる連通状態とこれらを遮断する遮断状態とに
    切り換え可能な減圧状態用制御弁とを含み、前記急減圧
    手段が、前記増圧状態用制御弁を遮断状態に、減圧状態
    用制御弁を連通状態に切り換える弁切換手段を含むこと
    を特徴とする請求項1に記載の液圧制御装置。
  3. 【請求項3】前記高圧源が、前記低圧源とは別の低圧源
    の作動液を加圧して前記ホイールシリンダに供給するも
    のである請求項1または2に記載の液圧制御装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010042743A (ja) * 2008-08-11 2010-02-25 Toyota Motor Corp ブレーキ制御装置
US7708354B2 (en) 2005-11-18 2010-05-04 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Brake control apparatus and control method thereof

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