JPH10265457A - インドキシル硫酸誘導体、抗原、抗体及びそれを用いるインドキシル硫酸の検出方法 - Google Patents

インドキシル硫酸誘導体、抗原、抗体及びそれを用いるインドキシル硫酸の検出方法

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JPH10265457A
JPH10265457A JP9085621A JP8562197A JPH10265457A JP H10265457 A JPH10265457 A JP H10265457A JP 9085621 A JP9085621 A JP 9085621A JP 8562197 A JP8562197 A JP 8562197A JP H10265457 A JPH10265457 A JP H10265457A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 体液中のインドキシル硫酸を免疫学的手法に
よる簡便かつ正確に検出する方法の提供。 【解決手段】 一般式(I) で示されるインドキシル硫酸
誘導体をハプテンとし、これと蛋白質とを結合して抗原
を作製する。この抗原で哺乳動物を免疫し、血清を採取
するか、その脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合し、そ
の産生するモノクローナル抗体を採取する。この血清
(ポリクローナル抗体) あるいはモノクローナル抗体を
用い酵素免疫的方法で体液中のインドキシル硫酸含量を
測定し、腎不全の状況を簡便かつ正確に把握する。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なインドキシ
ル硫酸誘導体(ハプテン)、該ハプテンと蛋白質との複
合体である抗原、該抗原で免疫することにより得られ、
インドキシル硫酸に特異的に結合する抗体を用いるイン
ドキシル硫酸の検出法及びこの検出に用いる測定キット
に関する。
【0002】
【従来の技術】尿毒症(uremia)は、急性あるいは慢性に
腎機能が低下する疾病である。尿毒症発症の原因のひと
つとして尿毒症毒素と考えられている物質があり、イン
ドキシル硫酸もその一つである(Seminars in Nephrolog
y,16 (3) 167〜182 (1996)) 。実際に、慢性腎不全患者
において、血清中インドキシル硫酸が正常者の約60倍と
著明に増加していることが報告されている (日本透析療
法学会誌、21 (10)951〜956(1988))。従って、体液中、
特に血清中の尿毒症毒素濃度を測定することは疾患の診
断や検査にとって、極めて有用であり、さらにその測定
方法は、治療効果の判定、予後の推測あるいは食事療法
のマーカーなどに適用することが可能である。従来、血
清中尿毒症毒素は主に、ガスクロマトグラフィーや高速
液体クロマトグラフィーを用いて分析している。それら
の方法は、感度や精度の点で優れているものの、分析に
熟練を要すること、測定装置や設備に高額な費用を必要
とする等の問題点があった。更に、尿毒症毒素、例えば
インドキシル硫酸の測定は、臨床との対応で迅速性及び
精度を要求され、併せて簡便性や経済性も必要であっ
た。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、尿毒症
毒素のこのような現状を考慮して、尿毒症毒素を迅速
で、しかも、高い精度でかつ簡便に測定する方法につい
て検討した。その結果、インドキシル硫酸に対する新規
な抗体を調製し、これを用いてインドキシル硫酸を免疫
学的測定法で測定すると尿毒症の診断及び検査を迅速
に、しかも高い精度でかつ簡便に行なうことができるこ
とを見出して本発明をなすに至った。すなわち、本発明
の課題は、インドキシル硫酸に対する抗原の作製に用い
られるインドキシル硫酸誘導体(ハプテン)及びこのハ
プテンを用いた抗原を提供することにある。次に、本発
明は、このような抗原を用いて作製したインドキシル硫
酸に対する抗体を提供する。さらに、本発明は、このよ
うな抗体を用いてインドキシル硫酸を酵素免疫測定法で
測定する方法及びこの方法に用いられる測定キットを提
供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、体液中の
インドシキル硫酸の簡便で迅速な測定法として、インド
キシル硫酸に対する特異的抗体を用いる免疫化学的検出
の適用を試みた。インドキシル硫酸自身は分子量約 213
の低分子化合物であり、分子量からみて抗原性(免疫原
性) がなく、生体に抗体産生をうながさない。また、文
献検索でも抗体産生の報告はなかった。しかも、インド
キシル硫酸は、反応性が低く、そのままではアルブミン
等の他の分子と強く結合しない。これらのことから、イ
ンドキシル硫酸に対する特定のリンカーを作製し、リン
カー付与インドキシル硫酸とし、これをハプテンとして
蛋白質と複合体を形成させ、抗原として用いた。このよ
うに本発明者らは、鋭意研究を重ねて、インドキシル硫
酸に対する特異的な抗体の産生に用いうるハプテン及び
抗原、そしてインドキシル硫酸に対して特異的な抗体を
見出し、ついに発明を完成するに至った。すなわち、本
発明は、次の一般式(I) で表される新規なインドキシル
硫酸誘導体 (リンカー付与インドキシル硫酸) に関す
る。
【0005】
【化2】 ただし、式中の L1, L2 及び L3 は、次の一般式(II)で
表される。 X−(CH2)n −Y1 −(CH2)m−Y2 − (CH2)p −Z (II)
【0006】式(II)中Xは、酸素原子、硫黄原子、窒素
原子、カルボニル基、カルボキシル基、又は単結合を示
す。Y1及びY2はそれぞれ独立に5員もしくは6員の複素
環を含む芳香環、単結合、-CHR- を示す。Zはエポキシ
基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、無
置換又は1置換されているアミノ基若しくはハロゲン原
子を示す。Rはヒドロキシル基、チオール基、カルボキ
シル基、無置換又は1〜2置換アミノ基、ハロゲン原
子、アルコキシル基を示す。n,m及びpはそれぞれ独
立に0〜5の整数を示す。この置換基L1〜L3はインドキ
シル硫酸誘導体一分子中に同時に一つのみ存在し、それ
以外の場合L1及びL2は水素分子、L3は水素原子、または
ナトリウム、カリウム、アンモニウム等の許容される公
知の塩を形成する原子または分子を表す。また、上記5
員若しくは6員の複素環を含む芳香環はベンゼン環、ナ
フタレン環、ピリジン環、キノリン環などの化合物を示
すが、本発明では、これらのみに限定されるものではな
い。
【0007】本発明のインドキシル硫酸誘導体(I) にお
いて、好ましい化合物は、前記式(I) において、置換基
L1のみが前記と同様の意味を有し、置換基L2が水素原子
であり置換基L3が水素原子、またはナトリウム、カリウ
ム、アンモニウム等の許容される公知の塩であるもので
ある。さらに、本発明において好ましい化合物は、イン
ドキシル硫酸誘導体(I) において、置換基L1が 2, 3-エ
ポキシプロピル基、パラオキシカルボニルベンジル基、
3-ベンジルアミノ-2- ヒドロキシプロピル基又は3-アミ
ノ-2- ヒドロキシプロピル基であり、これらがインドー
ル環窒素原子上に存在しており、置換基L2及びL3が前記
L2及びL3と同様の意味をもつものである。本発明のこれ
らのインドキシル硫酸誘導体(I) はハプテンとなる。
【0008】また、本発明は、このようなハプテンと蛋
白質とが結合した複合体よりなる抗原に関する。本発明
の抗原 (免疫原) は、一般式(I) で示されるインドキシ
ル硫酸誘導体よりなるハプテンを、担体である動物由来
蛋白質又は植物由来蛋白質に結合させることによって製
造される。さらに、本発明は、このような抗原から調製
された、インドキシル硫酸に対して特異的な抗体に関す
る。抗体にはポリクローナル抗体あるいはモノクローナ
ル抗体がある。これらの抗体は通常の抗体製造法で製造
される。また、さらに本発明はこのような抗体を用いる
インドキシル硫酸の免疫学的な検出法及びその検出に用
いる測定キットに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】次に、本発明について詳細に説明
する。本発明の前記一般式(I) で示されるインドキシル
硫酸誘導体は、種々の方法で合成されるが、一般に次の
合成スキーム1〜3のいずれかで合成することが好まし
い。 (1) 合成スキーム1
【0010】
【化3】
【0011】製造法1-1 化合物1-1 (P1 は公知の水酸基保護基を示し、例えば t
- ブチルジメチルシリル基(TBS基) 、アセチル基などで
あり、P2は公知のアミノ基保護基であり、例えば、ベン
ジルオキシカルボニル基(Cbz基) 、アセチル基などであ
り、また、X1はハロゲン原子などを示す。) をジメチル
ホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル
などの有機溶媒中に溶解して-78 ℃から室温付近でL2X
2(L2は前記クレームと同じ意味で用いられ、X2はハロゲ
ン原子、トシル基などの脱離基を示す) 必要に応じて金
属ナトリウム、アルキルリチウムなどの塩基やテトラキ
ストリフェニルフォスフインパラジウム等の触媒と共に
反応させることにより反応させて化合物1-2 を得る。
【0012】製造法1-2 化合物1-2 を保護基P1を除去する公知の方法、例えばP1
が TBS基の場合にはフッ化テトラブチルアンモニウムを
用いて、アセチル基の場合には亜硫酸水素ナトリウム水
溶液中での反応を用いることにより化合物1-3 を得る。
【0013】製造法1-3 化合物1-3 をジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラ
ンなどの有機溶媒中に溶解し、硫酸又はその誘導体、例
えばクロル硫酸や硫酸テトラブチルアンモニウム等を用
いて、必要に応じてトリエチルアミン、ジメチルアミノ
ピリジンなどの塩基やジシクロヘキシルカルボジイミド
等の縮合剤を用いて硫酸エステル化することによって化
合物1-4 を得る。
【0014】製造法1-4 化合物1-4 を保護基 P2 を除去する公知の方法、例えば
P2 が Cbz基の場合には水素雰囲気下パラジウム- カー
ボン触媒によって、アセチル基の場合にはメタノール中
水酸化ナトリウム水溶液を用いることにより、さらに置
換基L2に保護基が存在する場合には同時、又は別個にそ
れを除去して化合物1-5 を得る。
【0015】(2) 合成スキーム2
【化4】
【0016】製造法2-1 化合物2-1 をジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキ
シドなどの有機溶媒中に溶解し、L3-OSO3X3(X3は水素原
子、ハロゲン、アルキルアンモニウム塩などを示し、L3
は前述のとおりである。)と必要に応じてトリエチルア
ミン、ジメチルアミノピリジンなどの塩基やジシクロヘ
キシルカルボジイミド等の縮合剤を用いて硫酸エステル
化することによって化合物2-2 を得る。
【0017】製造法2-2 化合物2-1 をジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラ
ンなどの有機溶媒中に溶解し、硫酸又はその誘導体、例
えばクロル硫酸や硫酸テトラブチルアンモニウム等を用
いて、必要に応じてトリエチルアミン、ジメチルアミノ
ピリジンなどの塩基やジシクロヘキシルカルボジイミド
等の縮合剤を用いて硫酸エステル化することによって化
合物2-3 を得る。
【0018】製造法2-3 化合物2-3 をジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキ
シドなどの有機溶媒中に溶解し、L3X4 (X4は水素原子、
ハロゲン原子、p-トルイルスルホニルオキシ基、カルボ
ニルハライドなどを示し、またL3は前述のとおりであ
る。) と必要に応じてジメチルアミノピリジン、ジアザ
ビシクロウンデセン等の塩基を用いて-20〜120 ℃の間
で1〜72時間反応させることによって化合物2-2 を得
る。
【0019】製造法2-4 化合物2-2 を前述の製造法1-4 と同様の操作によって保
護基を除去し化合物2-4 を得る。
【0020】(3) 合成スキーム3
【化5】
【0021】製造法3-1 化合物3-1 (Mは水素原子、又はナトリウム、カリウムな
どの原子またはアンモニウムなどの分子を示す) をジメ
チルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機溶
媒に溶解し、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどを
加えて -78℃〜室温で 5〜120 分間反応させる。次いで
前述の L1X2(L1及びX2は前述のとおり)を加えて -78〜1
20 ℃の間で反応させることによって化合物3-2 を得
る。また、L1に反応性の官能基が存在する場合にはそこ
から任意の試薬によって延長させることができる。例え
ばエポキシ基が存在する場合には1級アミノ基を持つ化
合物によってアミノ基を介して側鎖を延長させることが
できる。さらにL1中に保護基が存在する場合には公知の
方法によって除去し、目的化合物を得る。
【0022】本発明のインドキシル硫酸誘導体の具体的
製造例は、実施例1に示した。ここに示される化合物は
いずれもハプテンとして使用できる。好ましい化合物
は、置換基L1が前記と同様の意味を有し、置換基L2が水
素原子であり、置換基L3がナトリウム、カリウム、アン
モニウム等の公知の原子又は分子である化合物である。
さらに好ましい化合物は、置換基L1が2, 3- エポキシプ
ロピル基、パラオキシカルボニルベンジル基、3-ベンジ
ルアミノ-2- ヒドロキシプロピル基又は3-アミノ-2- ヒ
ドロキシプロピル基であり、これらがインドール環窒素
原子上に存在しており、置換基L2及びL3が前記L2及びL3
と同様の意味を持つ化合物である。
【0023】これらの化合物を例示すると次の化合物が
ある。1-(2', 3'-エポキシプロピル) インドキシル硫酸
ナトリウム (以下、エポキシ体インドキシル硫酸とい
う) 、1-(3'-アミノ -2'- ヒドロキシプロピル) インド
キシル硫酸ナトリウム (以下、アミノ基導入インドキシ
ル硫酸という) 、1-〔(4'-カルボキシフェニル) メチ
ル〕インドキシル硫酸ビスナトリウム (以下、カルボキ
シル基導入インドキシル硫酸という) 。また、表1で示
されるいずれの化合物もハプテンとして好ましい。
【0024】本発明の一般式(I) のリンカー付与インド
キシル硫酸 (ハプテン) と蛋白質との複合体よりなる抗
原 (免疫原) は一般式(I) のハプテンを、担体である動
物あるいは植物由来の蛋白質に結合させることにより製
造できる。動物由来蛋白質としては、この分野で常用さ
れるものをいずれも使用できるが、その中ではスカシガ
イのヘモシアニン、卵白アルブミン、ウシ血清アルブミ
ン、トランスフェリン等が好ましく、特にウシ血清アル
ブミン、トランスフェリンが好ましい。また、植物由来
蛋白質としては、カボチャ種子のグロブリン、大麻種子
のグロブリン等が用いられる。ハプテンと蛋白質の結合
物は、前記ハプテンと蛋白質とをpH6〜8の緩衝液ある
いは水中で混合し、室温で数時間〜20時間程度反応さ
せ、その後、透析を行ない、内液を遠心して不溶物を除
去することによって得ることができる。この抗原を含む
溶液をほ乳動物に免疫することによりモノクローナル抗
体及びポリクローナル抗体が調製される。ほ乳動物とし
ては、モノクローナル抗体の場合には、常用する骨髄腫
細胞との適性を考慮して、選択することが好ましく、例
えば、マウス、ラット等を挙げることができ、ポリクロ
ーナル抗体の場合は、この分野で常用されるものであれ
ばいずれも使用でき、例えば、ウサギ、ヤギ等を挙げる
ことができる。
【0025】このモノクローナル抗体は、例えば、次の
ようにして調製することができる。10原を含む生理食
塩水を等量のフロイント氏完全アジュバンド又は不完全
アジュバント、あるいはその等価物、例えば、Hunter's
TiterMaxTM (フナコシCat.No.YT001-00)と乳化混合し
て、マウスの皮下、腹腔内、筋肉内のいずれかに投与す
る(初回免疫) 。以後、2〜4週間の間隔で同様の操作
を行ない、数回免疫する。最終免疫を抗原液のみで行な
い、数日後にマウス脾臓を無菌的に取出し、脾細胞を調
製する。この脾細胞を用いて、細胞融合を行なう。細胞
融合のもう一方の親細胞である骨髄腫細胞は公知の細胞
株、例えば、P3X63-Ag 8(X63)(Nature, 256, 495-497
(1975)), P3 X63-Ag 8 U1(P3U1)(Current Topics in M
icrobiology and Immunology, 81, 1-7(1978))、P3X63
Ag8.653 (ATCC 受託番号 CRL-1580)等を使用できる。
細胞融合は、公知の方法に従い、例えば、ミルシュタイ
ンらの方法 (Methodsin Enzymology,73, 3(1981))等に
準じて行なうことができる。得られたハイブリドーマを
培養した培養液又はハイブリドーマを移植したマウスの
腹水から目的とするモノクローナル抗体を分離精製す
る。分離精製には硫酸アンモニウムによる塩析イオン交
換クロマトグラフィー、プロテインAまたはプロテイン
G結合多糖類担体や抗マウスイムノグロブリン抗体結合
多糖類担体を用いた親和性カラムクロマトグラフィー、
透析、凍結乾燥等の公知の方法が用いられる。
【0026】一方、ポリクローナル抗体は、例えば、抗
原を含む生理食塩水を等量のフロインド氏完全アジュバ
ンド又は不完全アジュバンド、あるいはその等価物、例
えば、Hunter's TiterMaxTM (フナコシCat.No.YT001-0
0)と乳化混合して、ウサギの皮下、腹腔内、筋肉内のい
ずれかに投与する(初回免疫) 。以後、2〜4週間の間
隔で同様の操作を行ない、数回免疫する。最終免疫後、
1〜2週間後にウサギの頸動脈または心臓から血液を採
取して血清を硫酸アンモニウムによって塩析することで
調製する。モノクローナル抗体は、特定の抗体産生細胞
を選択増殖させる手法で得られた単一分子の抗体である
が、選択の際に、特定のイムノグロブリンを産生する細
胞を得ることが可能であり、IgG が概ね最良の選択と考
えられる。ポリクローナル抗体はIgG であるが、そのよ
うなIgG タイプの抗体を用いることで高い精度の測定が
可能となると考えられる。
【0027】この様にして得られた本発明のモノクロー
ナル抗体及びポリクローナル抗体は、インドキシル硫酸
に対して特異的に結合するのでこれらを用いることによ
り試料中のインドキシル硫酸濃度の測定や検出を行なう
ことができる。本発明の測定法や検出法は、上記のモノ
クローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体を用いる
以外は公知の方法に従って行なうことができる。該公知
の方法としては、例えば、酵素免疫測定法(EIA)、
ラテックス凝集法、免疫組織染色法、放射免疫測定法
(RIA)等の免疫学的手段を挙げることができる。
【0028】酵素免疫測定法に従って行なう場合は、例
えば、(a) ハプテンと蛋白質との複合体である抗原を担
体に固相化し、(b) ブロッキングを行ない、(c) これに
インドキシル硫酸を含む試料及びモノクローナル抗体
(及び/又はポリクローナル抗体) を加え、該抗体を抗
原及びインドキシル硫酸に競合的に結合させ、抗体- 抗
原免疫複合体及び抗体- インドキシル硫酸免疫複合体を
生成させ、(d) 抗体- 抗原免疫複合体の量を測定するこ
とにより、予め作製した検量線から試料中のインドキシ
ル硫酸の量を決定することができる。
【0029】(a) 工程において、抗原を固相化する担体
としては、特に制限されず、EIAにおいて常用される
ものをいずれも使用できる。例えば、抗原液を含む緩衝
液を担体上に載せ、予め、固相化し、ブロッキングした
後に抗原液を載せてインキュベーションして抗原を捕捉
することも可能である。緩衝液としては、公知のものが
使用できる。
【0030】(b) 工程のブロッキングは固相化した抗原
の担体に結合している部位以外に、担体に後に添加する
抗体あるいは試料中成分を吸着しうる部位が存在する場
合があり、検出感度が低下するおそれがあるので行なわ
れる。具体的には2%スキムミルク溶液を適量加え、25
℃で1時間インキュベーションした後、緩衝液で洗浄す
ることで行なわれる。緩衝液としては、特に制限はない
が、150mM リン酸緩衝生理食塩水(pH7.2) を挙げること
ができる。
【0031】(c) 工程においては、インドキシル硫酸を
含む試料及びモノクローナル抗体(及び/又はポリクロ
ーナル抗体) を加えることで、抗体を担体に固相化され
た抗原及びインドキシル硫酸に結合させて、抗体- 抗原
免疫複合体及び抗体- インドキシル硫酸免疫複合体を生
成させる。この際に抗体としては、モノクローナル抗体
及び/又はポリクローナル抗体を第一抗体、さらにこれ
らの抗体に、標識酵素を結合した第一抗体に対する抗体
(第二抗体) を順次加えて反応させる。その変法とし
て、第一抗体を酵素で標識して用い、第二抗体を用いな
い方法、あるいは第一抗体をビオチンで標識して第二抗
体の代わりに、アビジン又はストレプトアビジンに酵素
を結合したものを用いることもできる。
【0032】第一抗体は緩衝液に含ませて添加する。反
応は25℃で1時間行ない、反応終了後、緩衝液で担体を
洗浄し、未反応の第一抗体を除去する。緩衝液として
は、特に制限はないが、150mM リン酸緩衝生理食塩水
(pH7.2)を挙げることができる。第一抗体の濃度は広い
範囲から選択できる。次いで、第二抗体を添加する。例
えば、第一抗体として、マウスのモノクローナル抗体を
用いる場合は、酵素 (例えば、ペルオキシダーゼ又はア
ルカリホスファターゼ等) を結合した抗マウスIgG ヤギ
(又はウサギ) 抗体画分を用いることが適切である。加
える第二抗体としては最終吸光度が 1.0乃至1.5 となる
様に希釈することが望ましい。希釈には緩衝液あるいは
2 %スキムミルクを含む緩衝液を使用できる。反応は25
℃で1時間インキュベーションした後、緩衝液で洗浄す
ることで行なわれる。この反応により、第二抗体が第一
抗体に結合する。なお、インドキシル硫酸−抗体免疫複
合体は2度の洗浄で抗体上から除去され、抗原−免疫複
合体のみが担体上に残り、その免疫複合体に第二抗体が
結合している。
【0033】次いで、(d) 工程で、担体に結合した第二
抗体の酵素と基質との反応によって発色する試薬を加
え、吸光度を測定することで検量線からインドキシル硫
酸の量を算出することができる。第二抗体に結合する酵
素としてペルオキシダーゼを使用する場合には、基質と
して過酸化水素、発色試薬としてo- フェニレンジアミ
ンを使用することが望ましい。発色溶液を加え25℃で30
分反応させた後、2Nの硫酸を加えることにより酵素反応
を停止させる。o-フェニレンジアミンを使用する場合
は、492nm の吸光度を測定する。アルカリホスファター
ゼを使用する場合は、p-ニトロフェニル リン酸を基質
として発色させ、2NのNaOHを加えて酵素反応を止め、41
5nm の吸光度を測定する方法が適している。インドキシ
ル硫酸を添加しない反応液の吸光度に対して、インドキ
シル硫酸を添加して抗体と反応させた溶液の吸光度の減
少率を競合率として計算する。既知の濃度のインドキシ
ル硫酸を添加した反応液の競合率により予め作成してお
いた検量線を用いて試料中のインドキシル硫酸の濃度を
算出できる。
【0034】酵素免疫測定法(EIA)をキット化する
試みとして、EIAに係わる要素(担体、抗原、抗体、
酵素標識第二抗体、基質、発色試薬等)を予め保存可能
な状態とする事で、日内、日差の変動のデータのとれる
キットとすることができる。保存可能な状態とするため
の、試薬の安定化剤として、アルブミン、オボアルブミ
ン、グロブリン、カゼイン等を溶解した液やスキムミル
クなどの蛋白質を含む液を用いることができる。好まし
くは、アルブミン液、スキムミルク液を挙げることがで
きる。蛋白質のかわりにトレハロース、グリセリン、ポ
リビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、α- シ
クロデキストリンなどを用いて凍結乾燥して保持するこ
ともできる。好ましくは、トレハロース、グリセリンを
挙げることができる。保存は冷蔵条件(4℃から10℃)
や冷凍条件(-10℃から-80 ℃) を用いる。
【0035】次に本発明を実施例を挙げて具体的に説明
する。
【実施例1】リンカー付与インドキシル硫酸の調製 ; (1) 1-(2',3'- エポキシプロピル) インドキシル硫酸ナ
トリウム(1)(表1の化合物番号を示す。以下、同じ)の
調製 市販のインドキシル硫酸カリウム塩1.00g をジメチルホ
ルムアミド (以下、DMFという) 20mlに溶解し水素化ナ
トリウム(60 %、油性物) 222 mgを加え、室温で1 時間
攪拌した。混合物にエピクロロヒドリン934 μl を加え
て室温で5.5時間攪拌した。反応終了後、蒸留水を加え
て反応を停止した後に溶媒を留去した。残渣にメタノー
ルを加え、不溶分を除去した。濾液の溶媒を留去し、シ
リカゲルカラムクロマトグラフィー (Kieselgel 60,40
g, クロロホルム/ メタノール=10/1〜10/2) によって
精製し、標記の化合物(1) 749mg(64%) を淡黄色泡状物
として得た。 MS(FAB., negative) m/z= 268[M-23]- 1 H-NMR(CDCl3) δ(ppm) : 2.59(dd,1H), 2.77(dd,1H),
3.17(m,1H), 4.11 (dd,1H), 4.43(dd,1H), 6.96(t,1H),
7.08(t,1H), 7.16(s,1H), 7.44(d,1H), 7.50(d,1H).
【0036】(2) [(3'-N- ベンジルアミノ-2'-ヒドロキ
シ) プロピル] インドキシル硫酸ナトリウム(3) の調製 前記実施例1で調製した1-(2',3'- エポキシプロピル)
インドキシル硫酸ナトリウム(1) 200 mg(0.687mmol) を
メタノール1 mlに溶解しベンジルアミン110 mgを加え
た。室温で19時間攪拌した後に溶媒を留去し、残渣をシ
リカゲルカラムクロマトグラフィー (Kieselgel 60,10
g, クロロホルム/ メタノール=15/1〜10/1.5) によっ
て精製し、標記の化合物(3) 149mg を白色固体として得
た。 MS(FAB., negative) m/z= 399[M+1] + 1 H-NMR(DMSO-d6) δ(ppm) : 2.80(dd,1H), 2.95(dd,1
H), 4.0-4.3(m,5H), 5.73 (br,1H), 6.97(t,1H), 7.10
(t,1H), 7.17(s,1H), 7.3-7.6(m,7H), 8.46 (br,1H).
【0037】(3) 1-(3'-アミノ-2'-ヒドロキシプロピ
ル) インドキシル硫酸ナトリウム塩(4)の調製 前記実施例2で調製した[(3'-N- ベンジルアミノ-2'-ヒ
ドロキシ) プロピル]インドキシル硫酸ナトリウム(3) 1
31 mgをDMF 6.5 mlに溶解し、10%パラジウム- カーボ
ン92mgを加えた後に水素雰囲気下で3時間攪拌した。反
応終了後、セライトを通して濾過し、反応液を濃縮し
た。残渣をメタノール/クロロホルムに溶解し、不溶物
を除去した後に濃縮し標記の化合物(4) 66mg (64%) を
淡緑色固体として得た。 MS(FAB., negative) m/z= 285[M-23]- 1 H-NMR(DMSO-d6) δ(ppm) : 2.68(dd,1H), 2.84(dd,1
H), 4.01(m,1H), 4.15 (m,2H),5.73(br,1H), 6.97(t,1
H), 7.10(t,1H), 7.17(s,1H), 7.43(d,1H), 7.51(d,1
H),7.73(br,2H).
【0038】(4) 1- 〔(4'-メトキシカルボニルフェニ
ル) メチル〕インドキシル硫酸ナトリウム塩の調製 市販のインドキシル硫酸カリウム塩125mg を DMF2ml に
溶解した後、水素化ナトリウム (60%、油性物) 28mgを
加え室温で20分間攪拌した。反応液にメチル4-ブロモメ
チルベンゾエート 120mgを加えて室温で18時間攪拌し
た。反応終了後、蒸留水を加えた後に溶媒を留去し、残
渣にメタノールを加えた。不溶分を除去し、濃縮した
後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (Kies
elgel 60,10g,クロロホルム/ メタノール=50/3〜10/2)
によって精製し、標記の化合物(2') 64mg を白色固体
として得た。 MS(FAB., Positive) m/z=384[M+1]+ 1 H-NMR(DMSO-d6) δ(ppm) :3.82(s,3H), 5.44(s,2H),
6.97(t,1H), 7.05(t,1H), 7.26(s,1H), 7.28-7.35(m,3
H), 7.52(d,1H), 7.89(d,2H).
【0039】(5) 1-〔(4'-カルボキシフェニル) メチ
ル〕インドキシル硫酸ビスナトリウム塩(2) の調製 前記(4) で調製した 1- 〔(4'-メトキシカルボニルフェ
ニル) メチル〕インドキシル硫酸ナトリウム塩 103mgに
1N-NaOH 水溶液 800μl 及びメタノール 3mlを加え、室
温で3日間攪拌した。反応終了後溶媒を留去し、残渣を
メタノールに溶解した後に不溶分を除去した。これを濃
縮した後にシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Kiese
lgel 60, 3g,クロロホルム/ メタノール=10/1〜2/1)に
よって精製し、更にこれをメタノール/ クロロホルムか
ら再沈殿して標記の化合物(2) 36mgを白色固体として得
た。 MS(FAB., Positive) m/z=368[M-23] - 1 H-NMR(DMSO-d6: δ(ppm) :5.35(s,2H), 6.53(t,1H),
7.04(t,1H), 7.16(d,2H), 7.26(s,1H), 7.34(d,1H), 7.
52(d,1H), 7.84(d,2H).
【0040】(6) 1-(3'-カルボキシエチル) カルボニル
インドキシル硫酸ビスナトリウム塩(5) の調製 市販のインドキシル硫酸カリウム塩100mg を DMF2ml に
溶解した後、水素化ナトリウム (60%、油性物) 24mgを
加え室温で20分間攪拌した。反応液に昇華精製した無水
琥珀酸40mgを加えて室温で 2時間攪拌し、さらに無水琥
珀酸40mgを追加して室温で30分間攪拌した。反応終了
後、蒸留水を加えた後に溶媒を留去し、残渣にメタノー
ルを加えた。不溶分を除去し、濃縮した後、メタノール
中にクロロホルムを加えて再沈殿により精製し、標記の
化合物(5) 82mgを白色固体として得た。 MS(FAB., negative) m/z= 334[M-23]- ,312 [M-23×2]
- 1 H-NMR(DMSO-d6) δ(ppm) : 2.26(t,2H), 2.97(t,2H),
6.92(t,1H), 7.04 (t,1H), 7.05(s,1H), 7.48(d,2H),
7.52(d,2H) 本発明で得られたリンカー付与インドキシル硫酸の物性
値等を表1に示した。これらの化合物は、本発明のハプ
テンとなる。
【0041】
【表1】
【0042】
【実施例2】リンカー付与インドキシル硫酸(ハプテン)と蛋白質と
が結合して複合体となった抗原 (1) エポキシ体インドキシル硫酸とアルブミン (牛血清
由来、Miles Lab Cat.No.82-21981)との結合は両者をモ
ル比50:1(2.2mg-10mg/2.1ml リン酸緩衝液、0.05M,
pH7.4) で混合して、4時間室温で行なった。反応後、
ダルベッコ リン酸緩衝生理食塩水(Ca++Mg++不含、pH
7.4)に対して透析を24時間、4 ℃で行ない、内液を遠心
(5000Xg 、10分) して不溶物を除去した。 (2) エポキシ体インドキシル硫酸とトランスフェリン
(ヒト血清由来、SigmaCat. T-2252)との結合はあらかじ
めトランスフェリンに N-succimidyl-3-(2-pyridyldith
io) propionate (フナコシ Cat.No.FM-0185-31) を用い
てスルフヒドリル基を導入して、両者をモル比90:1
(58.5mg-160mg/14mlリン酸緩衝液、0.1M,pH6.0, 2.5mM
EDTA)で混合して、96時間4℃で行ない、反応後、ダル
ベッコリン酸緩衝生理食塩水(Ca++Mg++不含、pH7.4)に
対して透析を24時間、4 ℃で行ない、内液を遠心(5000X
g,10分) して不溶物を除去した。蛋白質への結合量は推
定でアルブミンでは2.5 分子、トランスフェリンでは2
分子であった。結合数の推定は蛋白質1mg/ml当りの275n
m の吸収増加からの計算で行なった。蛋白質の定量は色
素法 (プロテインアッセイキットI 、日本バイオ・ラッ
ド ラボラトリーズ、Cat.No.500-0001)で行ない、275n
m は1mg/mlの値をアルブミンで 0.6、トランスフェリン
では 0.9、エポキシ体インドキシル硫酸では20で計算し
た。
【0043】(3) アミノ基導入インドキシル硫酸とアル
ブミンとの結合は両者をモル比87:1 (8mg-20mg/12ml
蒸留水) で混合して、10mgの1-ethyl-3-(3-dimethyl-am
inopropyl)carbodiimide( 和光純薬 Cat.No.348-03631)
存在下で18時間、室温、暗所で反応後、蒸留水に対して
透析を24時間、4℃で行なった。内液を遠心(5000xg,10
分) して不溶物を除去した。アミノ基導入インドキシル
硫酸とトランスフェリンとの結合も同様の条件で行なっ
た。モル比は 100:1で行なった。蛋白質への結合量は
推定でアルブミンでは4分子、トランスフェリンでは2
分子であった。結合数の推定はアミノ基導入インドキシ
ル硫酸の1mg/ml液の 275nmを16.6で行なった。
【0044】(4) カルボキシル基導入インドキシル硫酸
とアルブミン及びカルボキシル基導入インドキシル硫酸
とトランスフェリンとの結合も同様の条件で行なった。
モル比はそれぞれ、67:1と77:1で行なった。蛋
白質への結合量は推定でアルブミンでは23分子、トラン
スフェリンでは28分子であった。結合数の推定はカルボ
キシル基導入インドキシル硫酸1mg/ml液の275nm を12.5
で計算して行なった。
【0045】
【実施例3】インドキシル硫酸に特異的なモノクローナル抗体の調製 (1) 脾細胞の調製 Hunter's TiterMaxTM (フナコシ Cat.No.YT-001-00)で
乳化させたエポキシ体インドキシル硫酸とアルブミンと
の結合物をBALB/cマウス (雌、10週齢) の大腿部筋肉内
に免疫した。インドキシル硫酸換算でマウス1 匹当り 3
μg を用い、更に、3週間後と5週間後に追加免疫をし
た。初回免疫から10週間後に、結合物のみの免疫を行な
い、その4日後にマウスから脾臓を取出し、赤血球を除
去した脾細胞懸濁液を調製した。アミノ基導入インドキ
シル硫酸とアルブミンとの結合物やカルボキシル基導入
インドキシル硫酸とアルブミンとの結合物、インドキシ
ル硫酸換算でそれぞれ、マウス1 匹当り 4μg 、18μg
を免疫し、それぞれ脾細胞懸濁液を調製した。
【0046】(2) 細胞融合 上記調製の脾細胞懸濁液とマウス骨髄腫細胞 P3X63 Ag
8.653 (ATCC 受託番号CRL-1580)をケーラーとミルスタ
インの細胞融合技術(文献)により融合した。脾細胞 1
×107 個とマウス骨髄腫細胞 2×106 個を混合した後、
遠心して細胞をペレットとした。そのペレットに50% P
EG-1500 を含む HEPES緩衝液(75 mmol/L,pH8.0)を1 m
l、攪拌しながら徐々に加えた。RPMI 1640 培地を加え
て希釈した後、遠心で細胞を集め、HAT培地に懸濁さ
せて、48穴マイクロプレートに 1×106cells 0.5ml/ ウ
エルで分注した。7日間培養した後、HT培地を0.25ml
添加し、更に3 日後、7 日後にもHT培地を0.25ml添加
した。
【0047】(3) スクリーニング 上記細胞融合により得られたハイブリドーマ培養上清の
抗インドキシル硫酸抗体活性を酵素免疫測定法(EI
A)で調べた。トランスフェリンにインドキシル硫酸を
結合した上記の結合物を抗原として固相化し、上清と反
応させた後にペルオキシダーゼ標識抗マウス IgG抗体で
抗原- 抗体複合体を検出してオルソフェニルジアミンを
基質として発色反応させ、492nm の吸光度を測定した。
エポキシ体インドキシル硫酸を用いた実験では793 ウエ
ルのうち399 ウエルが抗体活性を示し、更に再現性のあ
る活性を示した2 ウエルを選択した。アミノ基導入イン
ドキシル硫酸を用いた実験では 151ウエルのうち11ウエ
ルが抗体活性を示し、さらに1 ウエルを選択した。カル
ボキシル基導入インドキシル硫酸を用いた実験では 384
ウエルのうち148 ウエルが抗体活性を示し、さらに1 ウ
エルを選択した。
【0048】(4) クローニング 選択した6ウエル中のハイブリドーマを限界希釈法でク
ローン化し、ハイブリドーマ 12-46-B9, 22-40-B5, 24-
40-B7, 33-47-3を得た。
【0049】(5) モノクローナル抗体の精製 ハイブリドーマ培養上清から抗インドキシル硫酸モノク
ローナル抗体を以下の操作で得た。ハイブリドーマ 12-
46-B9 の培養上清をヤギ抗マウスIgG 抗体結合アガロー
スによるアフィニティカラムにアプライした。吸着画分
を溶出させて精製した。又、マウスにハイブリドーマ12
-46-B9 1×107 個を注射して腹水を採取した。33%硫酸
アンモニウム塩析法で粗精製した後に上記カラムで精製
した。他の5種類の抗体も同様の操作で精製した。
【0050】
【実施例4】モノクローナル抗体の理化学的性質及び免疫学的性質 実施例3で得られたモノクローナル抗体の理化学的性質
及び免疫学的性質を検討した。 (1)免疫グロブリンクラスの同定 マウス イムノグロブリン アイソタイピング キット
(生化学工業、Code No. 230005)を用いて免疫グロブリ
ンのタイプを決定した。ハイブリドーマ12-46-B9, 22-4
0-B5, 24-40-B7, 33-47-3 の産生する抗体は、IgG2a,Ig
G2a, IgG1, IgG1 で、軽鎖はいずれもκであった。 (2)分子量 抗インドキシル硫酸モノクローナル抗体分子量はSDS
−PAGEによる評価で15万から17万ダルトンであっ
た。 (3)特異性 抗インドキシル硫酸モノクローナル抗体の特異性を検討
する為に競合EIAを行った。スクリーングに使用した
EIAと同様の方法であるが、抗体含有培養上清を反応
させるステップで競合物を共存させた。エポキシ体イン
ドキシル硫酸を用いた実験、アミノ基導入インドキシル
硫酸を用いた実験、カルボキシル基導入インドキシル硫
酸を用いた実験の結果を表2に示す。492nm の吸光度が
共存させた競合物で50%に低下する競合物濃度を計算す
ると、インドキシル硫酸以外は 500μg/ml以上であり、
一方、インドキシル硫酸は0.17μg/mlから 3.7μg/mlで
あったことよりインドキシル硫酸に対して特異的に結合
する事がわかった。2.5 %トレハロース液を添加して凍
結乾燥した後、分析用サンプルを調製した。このサンプ
ルについても同様の結果を得た。
【0051】
【表2】
【0052】
【実施例5】モノクロール抗体の応用例 定量測定系への応用 ヒト血清中にインドキシル硫酸を既知量添加して検量線
を作成した。その結果を図1に示した。図1に示すよう
に、インドキシル硫酸0.1 μg/mlから100 μg/mlの測定
範囲で検量線が作成できた。定量法は特異性検討に用い
た競合法を適用した。ラット血清でも同様の検量線であ
った。2.5 %トレハロース液を添加して凍結乾燥した
後、分析用サンプルを調製した。このサンプルについて
も同様の結果を得た。
【0053】
【実施例6】ポリクローナル抗体の作製 (1)動物の感作 完全フロイントアジュバンドに乳化させたカルボキシル
基導入インドキシル硫酸とアルブミンの結合物を、New
Zealand White(雌、3kg)に皮下投与した。インドキシル
硫酸換算で100 μg をウサギ1羽に投与して、更に1週
間後、2週間後、7週間後、10週間後に追加免疫した。
12週間後に全採血した。 (2)ポリクローナル抗体精製 ウサギ血清35mlより硫安塩析法で抗体を粗精製した後、
プロテインA結合アガロースによるアフィニティカラム
にアプライした。吸着画分を溶出させて精製した。約50
mgの抗体を回収した。
【0054】
【実施例7】ポリクローナル抗体の理化学的性質及び免疫学的性質 (1)免疫グロブリンクラスの同定 オクタローニー法を用いて免疫グロブリンのタイプを決
定したが、IgG であった。 (2)分子量 分子量はSDS−PAGEによる評価で15万−17万ダル
トンであった。 (3)特異性 結果を表3に示す。492nm の吸光度が共存させた競合物
で50%に低下する競合物濃度を計算すると、インドキシ
ル硫酸以外は 500μg/ml以上であり、一方、インドキシ
ル硫酸は6.9 μg/mlであったことよりインドキシル硫酸
に対して特異的に結合することがわかった。
【0055】
【表3】
【0056】
【実施例8】ポリクロール抗体の応用例 ヒト血清中にインドキシル硫酸を既知量添加して検量線
を作成した。図2に示すように、いずれの液中でも 0.1
μg/mlから 100μg/mlの測定範囲で検量線が作成でき
た。定量は特異性検討に用いた競合法を適用した。
【0057】
【実施例9】疾患動物血清の分析 7/8腎結紮ラット(Sprague-Dawley 系雌ラット、実験
開始時210-250g、各群n=10) の血清中のインドキシル
硫酸濃度(モデル作成後9週)を抗体22-40-B5を用いて
測定した。腎疾患モデルラットでは平均値±標準偏差は
10±2.1 μg/mlであり、sham-operationの対照ラットで
は0.5 ±0.1 μg/mlであった。この値は、日本腎臓学会
28(6), 695-701(1990)に記載される腎疾患モデルラ
ットの血清中のインドキシル硫酸濃度のHPLCによる測定
値約10μg/ml、 sham-operation の対照ラットのそれの
測定値約 0.5μg/mlとほぼ一致した。
【0058】
【実施例10】 (1) 測定系キット 次のパーツよりなる血清中のインドキシル硫酸測定用キ
ットを作製した。 (A) 抗原結合プレート: 96穴プレート(EIA用) に抗
原を固相化し、ブロッキング後、下記の安定化剤を加え
て、凍結乾燥したもの。 (B) 標準抗原液: 既知濃度のインドキシル硫酸液 (C) 酵素標識抗体: 抗体22-40-B5を酵素 (ペルオキシダ
ーゼ) 標識して、下記の安定化剤を加えて凍結乾燥した
もの。ベルオキシダーゼ標識は Nakane らの方法に準じ
て行なった(J.Histochem. Cytochem., 14, 929, 1966)
。 (D) 発色用試薬: 基質 (オルソフェニレンジアミン) 、
緩衝液 (クエン酸- リン酸緩衝液、0.1M, pH5.0)、H2O2 (A)-(D) は冷蔵して保存した。安定化剤として、2 %ス
キムミルクをリン酸緩衝液生理食塩水に懸濁した液を用
いた。
【0059】(2) キットの使用方法 酵素免疫測定法(EIA)をキット化する試みとして、
保存24時間後に、トランスフェリンにインドキシル硫酸
を結合した上記の結合物を抗原として固相化した96穴プ
レート(A) に蒸留水を添加して、再構成した後に液を捨
て、インドキシル硫酸(B) と同じく蒸留水で再構成した
酵素標識抗体22-40-B5(C) とを共存させた条件で、固相
化抗原と反応させた後に、標識抗体と固相化抗原の複合
体を緩衝液にオルソフェニルジアミンを溶解し、H2O2
添加した基質液(D) を用いた発色反応で検出し、492nm
の吸光度を測定した。なお、オルソフェニルジアミンと
H2O2は市販品を使用した。
【0060】
【実施例11】実施例10の測定系キットのパーツ (A)
−(D) の安定化剤として2%スキムミルクの代りに 2.5
%トレハロースを用いてインドキシル硫酸測定系キット
とした。
【0061】
【発明の効果】本発明によって、哺乳類(ヒト、ラッ
ト、マウス等)の体液(血清、血漿、尿、リンパ液な
ど)や組織等に含まれるインドキシル硫酸の量を簡便、
且つ迅速に精度よく測定することができ尿毒症等の腎疾
患の検査をきわめて容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例5のモノクローナル抗体によるインドキ
シル硫酸の検量線を示す。
【図2】実施例8のポリクローナル抗体によるインドキ
シル硫酸の検量線を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI A61K 39/395 A61K 39/395 J C12N 5/10 G01N 33/53 S 15/02 33/577 B G01N 33/53 C12P 21/08 33/577 G01N 33/50 T // C12P 21/08 C12N 5/00 B G01N 33/50 15/00 C

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次の一般式(I) で表されるインドキシル
    硫酸誘導体 【化1】 ただし、式中の置換基 L1, L2 及びL3H:次の一般式(II)
    で表される。 X−(CH2)n −Y1 −(CH2)m−Y2 − (CH2)p −Z (II) (一般式(II)中のXは、酸素原子、硫黄原子、窒素原
    子、カルボニル基、カルボキシル基又は単結合を示す。
    Y1及びY2は、それぞれ独立に5員若しくは6員の複素環
    を含む芳香環、単結合、-CHR- を示す。Zはエポキシ
    基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、無
    置換又は1置換されているアミノ基若しくはハロゲン原
    子を示す。R はヒドロキシル基、チオール基、カルボキ
    シル基、無置換又は1〜2置換アミノ基、ハロゲン原
    子、アルコキシル基を示す。n,m及びpはそれぞれ独
    立に0〜5の整数を示す。この置換基L1〜 L3 はインド
    キシル硫酸誘導体一分子中に同時に1つのみ存在し、そ
    れ以外の場合、L1及びL2は水素原子、L3は水素原子、ま
    たはナトリウム、カリウム、アンモニウム等の許容され
    る公知の塩を形成する原子、または分子を示す) 。
  2. 【請求項2】 置換基L1が請求項1と同じであり、置換
    基L2が水素原子であり、置換基L3が水素原子、またはナ
    トリウム、カリウム、アンモニウム等の許容される公知
    の塩である請求項1記載のインドキシル硫酸誘導体。
  3. 【請求項3】 置換基L1が、2,3 - エポキシプロピル
    基、パラオキシカルボニルベンジル基、3-ベンジルアミ
    ノ-2- ヒドロキシプロピル基又は3-アミノ-2-ヒドロキ
    シプロピル基であり、これらがインドール環窒素原子上
    に存在しており、置換基L2及びL3が水素原子、またはナ
    トリウム、カリウム、アンモニウム等の許容される公知
    の塩である請求項2記載のインドキシル硫酸誘導体。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかのインドキシル
    硫酸誘導体と蛋白質との複合体であるインドキシル硫酸
    を抗原決定基とする抗原。
  5. 【請求項5】 蛋白質がアルブミン又はトランスフェリ
    ンである請求項4記載の抗原。
  6. 【請求項6】 請求項4又は5の抗原から調製される、
    インドキシル硫酸に対して特異的に結合する抗体。
  7. 【請求項7】 次の性質をもつポリクローナル抗体であ
    る請求項6記載の抗体。 1) 免疫グロブリンクラス IgG 2) 分子量 15〜17万ダルトン(SDS-PAG
    E による)
  8. 【請求項8】 次の性質をもつモノクローナル抗体であ
    る請求項6記載の抗体。 1) 免疫グロブリンクラス IgG 2) 分子量 15〜17万ダルトン(SDS-PAG
    E による)
  9. 【請求項9】 請求項6〜8のいずれかに記載のインド
    キシル硫酸に対して特異的に結合する抗体を用い、イン
    ドキシル硫酸含有試料中のインドキシル硫酸を免疫学的
    に検出するインドキシル硫酸の検出法。
  10. 【請求項10】 試料が血清、血漿又は尿である請求項
    9記載の検出法。
  11. 【請求項11】 請求項6〜8のいずれかに記載のイン
    ドキシル硫酸に対して特異的に結合する抗体及び検出試
    薬よりなるインドキシル硫酸検出のための測定キット。
  12. 【請求項12】 請求項4に記載の抗原を用いて動物の
    免疫を行ない、抗体産生細胞を動物より分離して、継代
    可能な細胞株との融合を行なう事で作出される、インド
    キシル硫酸に特異的に結合するモノクローナル抗体を産
    生するハイブリドーマからなる継代可能な細胞株。
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