JP4494522B2 - 抗オフロキサシンモノクローナル抗体、これを用いたオフロキサシンの免疫学的測定方法 - Google Patents

抗オフロキサシンモノクローナル抗体、これを用いたオフロキサシンの免疫学的測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、抗菌化合物であるオフロキサシン及び/又はこれを構成する各光学活性体に反応する抗体であって、これらの主要な代謝物とは反応しない抗体に関するものである。
技術背景
ニューキノロン系抗菌剤は、エノキサシンやノルフロキサシン等のピリドンカルボン酸系抗菌剤の抗菌スペクトルと抗菌力が飛躍的に高められた薬剤で、細菌のDNAジャイレースを阻害することにより高い選択毒性を示す。これまでにオフロキサシン、レボフロキサシン、ノルフロキサシン、シプロフロキサシンなどが各種感染症や化膿性疾患などの治療の目的で臨床において使用され、優れた治療効果を挙げている。
オフロキサシンは、下記化学式(I)
で示され、その化学構造中に1個の不斉炭素を有し、2種類の光学活性体S-(−)体及びR-(+)体を1:1 の組成比で含んでいるラセミ体である。このラセミ体のうち、抗菌活性本体はS-(−)体であるレボフロキサシンである。レボフロキサシンは、オフロキサシンのほぼ2倍の抗菌力を示し、呼吸器感染症、尿路感染症をはじめとする各種感染症に広く奏効して、高い有効性を示すことが知られている。
抗菌剤が効果を十分に発揮するには、有効成分の適切な量が体内に存在していることが重要である。よって、抗菌活性の減弱もしく喪失した代謝物などの化合物(以下、「抗菌活性を失った化合物」などの表現をすることがある)を測り込まず、体内に存在する抗菌活性を有する化合物のみを定量する測定系は、抗菌剤を最も有効に処方するために欠かせない。抗菌活性を有する化合物のみを測定する方法としては、被検抗菌剤を特異的に認識する抗体を用いるイムノアッセイ法、被検抗菌剤の分子量や極性に基づきHPLCで分離・分析する方法、菌との培養によって直接抗菌活性を測定する方法などが汎用されている。このうち、イムノアッセイ法は、高価な機器を用いる必要がなく、短時間での測定が可能な上、感度に優れ、多数の試料の測定に対応できることから有利である。
また、多くの薬物は各種の経路で投与されると生体由来成分、例えばアルブミンなどの血清タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質(以下、総称して血清タンパク質類ということがある)と可逆的な結合をすることが知られている。つまり血中に存在する薬物の濃度は、血清タンパク質類と結合した結合型薬物濃度と血清タンパク質類と結合していない遊離型(非結合型)薬物濃度の和に相当する。抗体を用いたイムノアッセイ法で血中の薬物を正確に測定するためには、使用する抗体が結合型薬物と遊離型薬物の両方に同等に反応する必要があるが、薬物に結合した血清タンパク質類が障害となって抗体が薬物の抗原決定基に結合できず、正確な血中薬物濃度を測定できないことがある。
ニューキノロン系抗菌剤のイムノアッセイ法による検出方法としては、二環性ニューキノロン系抗菌剤を認識するが、オフロキサシンなどの三環性ニューキノロンを認識しないモノクローナル抗体を用いた免疫学的測定方法が公開されている(特許文献1)。しかし、該発明は、家畜や養殖魚介類の感染症予防に用いられる二環性ニューキノロンの残留量を検出することを目的としており、且つオフロキサシンを検出することができない。また、本文献発明は、多種類のニューキノロン系抗菌剤を同時に検出できる抗体(言い換えると多種類のニューキノロン系抗菌剤と交差反応する抗体)の取得を目的としている。
一方、特許文献2では、式(I)で示される化合物のS体であるレボフロキサシンの抗体及び免疫学的測定方法が公開されている。該抗体は、抗菌活性を失った代謝物(レボフロキサシン-N-オキシド、デスメチルレボフロキサシン)とも交差反応性があるポリクローナル抗体である。そのため、抗菌活性を失っていないレボフロキサシンのみを正確に検出することができないという問題があった。
特開2007−63180号公報 特開平7−267999号公報
オフロキサシンをはじめとする、ニューキノロン系抗菌化合物の抗原性は極めて低く、これらの化合物自体を抗体を製造するために用いる抗原(免疫用抗原)として直接免疫に用いても、ニューキノロン系抗菌化合物を認識する抗体を効率良く製造することは困難である。従って、ニューキノロン系抗菌化合物を認識する抗体を製造するための免疫用抗原としては、これらの化合物にキャリアーとしてのタンパク質(キャリアータンパク質)を結合させたものを用いることが適当である。ニューキノロン系抗菌化合物とキャリアータンパク質との結合について従来は、抗原性に影響を与える官能基、例えばキノロン骨格4位のケトン(カルボニル)基や3位のカルボキシ基、あるいはフッ素原子などを損なわずに、ニューキノロン系抗菌化合物とタンパク質とを結合させることが必要であると考えられていた。そのため、特許文献2においては、レボフロキサシンの10位置換基である4-メチル-ピペラジニル基を4-カルボキシメチルピペラジニル基に変換した化合物をキャリアーとしてのウシ血清アルブミン(BSA)と結合させ、免疫用抗原として用いている。
しかしながら、特許文献2の方法で得られた抗体は、レボフロキサシンの代謝物(N-オキシド体、脱メチル体)とも交差反応を示し、レボフロキサシンのみに反応を示す抗体は得られていない。
本発明は、式(I)で示される化合物を認識し、且つその代謝物であるN-オキシド体及び脱メチル体を認識しない(交差反応しない)抗体及びその製造方法を提供することを目的としている。また、それらの抗体を利用したイムノアッセイ法、例えば、ラジオイムノアッセイ法、エンザイムイムノアッセイ法、担体(粒子)凝集阻害イムノアッセイ法及びイムノクロマト法を提供することを目的としている。さらに本発明は、前記の抗体の製造のために有用な免疫用抗原を提供することを目的としている。
本発明者は、レボフロキサシン[(−)-(S)-9-fluoro-2,3-dihydro-3-methyl-10-(4-methyl-1-piperazinyl)-7-oxo-7H-pyrido[1,2,3-de][1,4]benzoxazine-6-carboxylicacid]の6位置換基であるカルボキシ基にウシ血清アルブミンなどのキャリアータンパク質を結合させることによって前記の目的を達成できる優れた免疫用抗原を製造することに成功した。
また、前記の免疫用抗原を用いることにより、式(I)で示される化合物と反応し、且つその代謝物であるN-オキシド体及び脱メチル体を認識しない有用な抗体を提供することができることを見いだした。さらに、前記の免疫用抗原を用いることにより、式(I)で示される化合物のS体であるレボフロキサシンを認識し、且つその代謝物であるレボフロキサシンN‐オキシド体及びレボフロキサシン脱メチル体を認識しない有用な抗体を提供することができることを見いだした。またさらに、前記の免疫用抗原を用いることにより、式(I)で示される化合物のR体を認識し、且つその代謝物であるN-オキシド体及び脱メチル体を認識しない有用な抗体を提供することができることを見いだした。また、該抗体を用い、代謝・分解されていない式(I)で示される化合物を測定するイムノアッセイ法を完成させた。本発明は前記の知見に基づいて完成されたものである。
従って本発明は、式(I)で示される化合物と反応し、且つその代謝物であるN-オキシド体及び脱メチル体を認識しない抗体を提供する。本発明の一態様によれば、式(I)で示される化合物のS体であるレボフロキサシンとキャリアータンパク質との結合物である免疫用抗原を提供する。本発明の一態様によれば、レボフロキサシンの6位置換基であるカルボキシ基にキャリアータンパク質を結合させた免疫用抗原を提供する。また、これらの抗原を用いて動物を免疫することにより、式(I)で示される化合物のR体及びS体、あるいは式(I)で示される化合物のS体であるレボフロキサシンのみ、あるいは式(I)で示される化合物のR体のみをそれぞれ認識し、且つその代謝物であるN-オキシド体及び脱メチル体を認識しない抗体を製造する方法、及び該方法により製造された抗体を提供するものである。さらに、これらの抗体を用いるイムノアッセイ法により試料中における式(I)で示される化合物の濃度を測定する方法を提供するものである。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)下記式(I)で示される化合物と反応し、且つその代謝物であるN-オキシド体及び/又は脱メチル体と交差反応しない抗体。
(2)式(I)で示される化合物のS体に強く反応する抗体である、前記(1)に記載の抗体。
(3)式(I)で示される化合物のR体に強く反応する抗体である、前記(1)に記載の抗体。
(4)式(I)で示される化合物のラセミ体と強く反応する抗体である、前記(1)に記載の抗体。
(5)ジクロフェナクナトリウム、ナブメトン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、オキサプロジン、ナプロキセン、イブプロフェン、カルボシステイン、サリチルアミド、アセトアミノフェン、無水カフェイン、メチレンジサリチル酸、プロメタジン及びテオフィリンからなる群から選ばれるいずれか1以上と交差反応しない、前記(1)に記載の抗体。
(6)式(I)で示される化合物を除くニューキノロン系抗菌剤と交差反応しないか、又は交差反応性が弱い、前記(1)に記載の抗体。
(7)式(I)で示される化合物との反応性が、生物試料由来成分の共存により変化しない、前記(1)から前記(6)のいずれかに記載の抗体。
(8)生物試料由来成分が、血清成分、血漿成分又は唾液成分である、前記(1)から前記(7)のいずれかに記載の抗体。
(9)式(I)で示される化合物との反応性が、式(I)で示される化合物と血清成分との結合により変化しない、前記(1)から前記(6)のいずれかに記載の抗体。
(10)モノクローナル抗体である、前記(1)から前記(9)のいずれかに記載の抗体。
(11)式(I)で示される化合物に特異的なモノクローナル抗体であって、固相に固定化された当該化合物と当該抗体との免疫反応が阻害されるように試料中の当該化合物及び試料中の当該化合物のN-オキシド体及び/又は脱メチル体が存在する反応系において、当該試料中の当該化合物による免疫反応の50%阻害活性が、試料中の当該化合物のN-オキシド体及び/又は脱メチル体による前記免疫反応の50%阻害活性と比較して大きくなる反応条件を満たす、前記(10)に記載のモノクローナル抗体。
(12)前記(10)又は前記(11)に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
(13)式(I)で示される化合物の6位のカルボキシ基を介してキャリアータンパク質と結合させた、前記(1)に記載の抗体を製造するための抗原。
(14)キャリアータンパク質が、BSA又はトランスフェリンである、前記(13)に記載の抗原。
(15)式(I)で示される化合物が、キャリアータンパク質1分子あたり12〜14分子結合されている前記(13)又は前記(14)に記載の抗原。
(16)前記(13)から前記(15)のいずれかに記載の抗原を動物に免疫することを特徴とする、免疫方法。
(17)前記(13)から前記(15)のいずれかに記載の抗原を動物に免疫して得られた抗体を、交差反応性を確認したい化合物の存在下、固相に固定化された式(I)で示される化合物と反応させ、交差反応性を確認したい化合物の非存在下での反応性と比較することにより所望の抗体を選抜する、抗体のスクリーニング方法。
(18)前記(13)から前記(15)のいずれかに記載の抗原を動物に免疫して得られた抗体を、生物試料由来成分の存在下、固相に固定化した式(I)で示される化合物と反応させ、生物試料由来成分の非存在下での反応性と比較することにより所望の抗体を選抜する、抗体のスクリーニング方法。
(19)前記(1)から前記(11)のいずれかに記載の抗体を使用することを特徴とする、試料中の式(I)で示される化合物の免疫学的測定方法。
(20)固相に固定化した前記(1)から前記(11)のいずれかに記載の抗体に対し、合成多価抗原及び試料中の式(I)で示される化合物を競合的に反応させることを特徴とする、試料中の式(I)で示される化合物の免疫学的測定方法。
(21)前記(1)から前記(11)のいずれかに記載の抗体に対し、固相化合成多価抗原及び試料中の式(I)で示される化合物を競合的に反応させることを特徴とする、試料中の式(I)で示される化合物の免疫学的測定方法。
(22)固相に固定化した前記(1)から前記(11)のいずれかに記載の抗体に対し、固相化合成多価抗原及び試料中の式(I)で示される化合物を競合的に反応させることを特徴とする、試料中の式(I)で示される化合物の免疫学的測定方法。
(23)固相がラテックス粒子である、前記(19)から前記(22)のいずれかに記載の免疫学的測定方法。
(24)競合反応を凝集阻害法によって測定することを特徴とする、前記(19)から前記(23)のいずれかに記載の免疫学的測定方法。
(25)試料が、生物由来の血液、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、涙液、耳漏又は前立腺液である、前記(19)から前記(24)のいずれかに記載の免疫学的測定方法。
(26)試料が、式(I)で示される化合物を投与された患者の試料である前記(25)に記載の免疫学的測定方法。
(27)下記(a)及び(b)から構成されることを特徴とする、試料中の式(I)で示される化合物の免疫学的測定用試薬。
(a)前記(1)から前記(11)のいずれかに記載の抗体又は固相に固定化した(1)から(11)のいずれかに記載の抗体
(b)合成多価抗原又は固相化合成多価抗原
本発明により提供される抗体は式(I)で示される化合物を認識する有用な抗体であり、該抗体を用いたイムノアッセイ法により、各種の試料、例えば生体試料中の式(I)で示される化合物の濃度を高感度で測定することができる。
本発明の抗体は、式(I)で示される化合物と反応し、且つその代謝物であるN-オキシド体及び/又は脱メチル体と交差反応しない抗体であることを要する。式(I)で示される化合物と反応し、その代謝物とは反応しないことから、本発明の抗体をイムノアッセイに用いれば、血中に抗菌剤として有効に存在する式(I)で示される化合物のみを特異的に測定することができ、非常に有用である。
また、本発明の抗体の別の態様は、式(I)で示される化合物のS体であるレボフロキサシンに強く反応する抗体、又は式(I)で示される化合物のR体に強く反応する抗体、R体とS体の両方に反応する抗体である。
また、さらに、本発明の抗体の別の態様は、式(I)で示される化合物の併用薬又は式(I)で示される化合物の類似化合物であるニューキノロン系抗菌剤に反応しない又は反応性が弱い抗体である。
本発明の抗体としては、免疫した動物の血清(抗血清)から得られるポリクローナル抗体でもよく、また、免疫した動物の抗体産生細胞を用いて作製したハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体でもよい。
なお、「交差反応する」、「強く反応する」、「反応しない」、「反応性が弱い」、という用語の意味については後述する。
本発明に従い式(I)で示される化合物のS体及び/又はR体を認識する抗体を製造するために用いる抗原(免疫用抗原)としては、式(I)で示される化合物を認識し、且つその代謝物であるN-オキシド体及び脱メチル体を認識しない抗体を産生させるような抗原であればいずれでもよく、そのうちでも、式(I)で示される化合物の6位置換基であるカルボキシ基にタンパク質などのキャリアー(以下、「キャリアー」ということがある)を結合させることにより製造された抗原を用いるのが適当である。
免疫用抗原のキャリアーとして用いるタンパク質(「キャリアータンパク質」)は、一般に低分子抗原(ハプテン)に対する抗体産生に有用とされている種々のタンパク質から適宜選択して使用すればよく、また、キャリアータンパク質と抗原との結合はそれ自体公知の方法で行うことができる。例えば、キャリアータンパク質としてウシ血清アルブミン、トランスフェリンを用いることができ、キャリアータンパク質と抗原との結合には、ジシクロヘキシルカルボジイミドを使用した縮合反応や活性エステル法を利用することができるが、キャリアーとして用いるタンパク質の種類やキャリアータンパク質と抗原との結合方法はこれらの具体例に限定されることはない。
また、キャリアータンパク質1分子あたりに結合する式(I)で示される化合物の分子の数(結合数)は、免疫する動物において抗原として認識されうる数であればいずれでもよい。抗体産生の効率を考慮すれば例えばキャリアータンパク質1分子あたり12〜14分子の式(I)で示される化合物が結合されている抗原が望ましく用いられるが、前記結合数はこの範囲に限定されることはない。免疫用抗原の調製方法の詳細は後述するが、調製の際に原料として反応に使用する式(I)で示される化合物のキャリアータンパク質に対する量を増減することで、所望の数の式(I)で示される化合物を結合させることが可能である。すなわち、原料として添加する当該化合物量を増加させれば結合数は大きくなり、原料として添加する当該化合物量を減少させれば結合数は小さくなる。なお、本明細書においては「結合数」と同様の意味で「結合比」、「結合量」の表現をすることがある。
また、前記の方法で作成した本発明の免疫用抗原は、ハイブリドーマあるいは抗体のスクリーニング用抗原さらには後述する免疫学的測定方法のための抗原(競合反応用の抗原)としても使用することができる。スクリーニング用抗原や免疫学的測定方法のための抗原として使用する際には、不溶性担体等の固体(固相)上に固定(固相化)して使用したり、後述する当業者に周知慣用の標識物質で標識した標識抗原として使用することができる。このような固定(固相)化抗原や標識抗原はいずれも本発明の範囲に包含される。例えば、不溶性担体に該抗原を物理的に吸着させ、あるいは化学的に結合させることにより固定(固相)化抗原を製造することができる。化学的に結合させる場合には、適当なスペーサーを介していてもよい。
前記不溶性担体としては、ポリスチレン樹脂などの高分子基材、ガラスなどの無機基材、セルロースやアガロースなどの多糖類基材などからなる不溶性担体を用いることができ、その形状は特に限定されず、板状(例えば、マイクロプレートやメンブレン)、ビーズあるいは粒子状(例えば、ラテックス粒子)、筒状(例えば、試験管)など任意の形状を選択できるスクリーニング用抗原として固定化する場合の固相としてはマイクロプレート、免疫学的測定方法のための抗原として固定化する場合の固相としては、マイクロプレートやラテックス粒子を好適な例としてあげることができる。
本発明の抗体は、前記の抗原をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)などの溶媒に溶解し、この溶液を動物に投与して免疫することによりに容易に製造できる。必要に応じて前記溶液に適宜のアジュバントを添加した後、エマルジョンを用いて免疫を行ってもよい。アジュバントとしては、油中水型乳剤、水中油中水型乳剤、水中油型乳剤、リポソーム、水酸化アルミニウムゲルなどの汎用されるアジュバントのほか、生体成分由来のタンパク質やペプチド性物質などを用いてもよい。例えば、フロイントの不完全アジュバント又はフロイントの完全アジュバントなどを好適に用いることができる。アジュバントの投与経路、投与量、投与時期は特に限定されないが、抗原を免疫する動物において所望の免疫応答を増強できるように適宜選択することが望ましい。
免疫に用いる動物の種類も特に限定されないが、哺乳動物が好ましく、例えばマウス、ラット、ウシ、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどを用いることができ、より好ましくはマウスを用いることができる。動物の免疫は当業界で利用可能な方法に従って行えばよく、例えば、抗原の溶液、好ましくはアジュバントとの混合物を動物の皮下、皮内、静脈、又は腹腔内に注射することにより免疫を行うことができる。免疫応答は、一般的に免疫される動物の種類及び系統によって異なるので、免疫スケジュールは使用される動物に応じて適宜設定することが望ましい。抗原投与は最初の免疫後に何回か繰り返し行うことが好ましい。
ポリクローナル抗体を得る場合には、免疫された動物の血清(抗血清)から本発明の抗体を取得することができるが、その方法は特に限定されず、当業者に利用可能な方法であればいかなる方法を用いてもよい。抗体の精製は、例えば、DEAE陰イオン交換クロマトグラフィー、プロテインAなどを用いるアフィニティークロマトグラフィー、硫安分画法、PEG分画法、エタノール分画法などを適宜組み合わせて行うことができる。得られた抗体が本発明の抗体であるか否か、すなわち目的とする式(I)で示される化合物を認識し、且つそれ以外のニューキノロン系抗菌剤又はレボフロキサシンの併用薬(例えば、抗生物質、消炎鎮痛剤、総合感冒剤、気道粘膜調製・粘膜正常化剤、気管支拡張剤など)に対しては反応性が低いか、実質的にそれらを認識しない抗体であることは、当業者が周知の方法を利用して容易に確認することが可能である。本明細書の実施例には本発明の抗体の製造方法について、動物の免疫方法、抗体の精製方法、及び抗体の特性の確認方法が具体的に説明されているので、当業者は前記の一般的説明及び実施例の具体的方法を参照しつつ、必要に応じてそれらの方法に適宜の修飾ないし改変を加えることにより、本発明の抗体を容易に製造することが可能である。
式(I)で示される化合物以外のニューキノロン系抗菌剤としては、式(I)で示される化合物の類似化合物が挙げられ、具体的には、シプロフロキサシン、トスフロキサシン、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン、フレロキサシン、ロメフロキサシン、エノキサシン、モキシフロキサシン、パズフロキサシンなどが挙げられる。
式(I)で示される化合物の併用薬としては、ジクロフェナクナトリウム、ナブメトン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、オキサプロジン、ナプロキセン、イブプロフェン、カルボシステイン、サリチルアミド、アセトアミノフェン、無水カフェイン、メチレンジサリチル酸、プロメタジン、テオフィリンが挙げられる。
本発明の抗体の一態様として、これらの化合物のいずれか1以上と交差反応しないか、交差反応性が弱い抗体が挙げられ、本抗体を式(I)で示される化合物の測定に用いた場合には、当該化合物が試料中に存在しても、式(I)で示される化合物を特異的に測定することができる。
モノクローナル抗体を得る場合、引き続き以下の操作が行われるがそれに限定されることはなく、モノクローナル抗体それ自体の製造方法については当業界で周知されており、かつ汎用されているので当業者は前記の抗原を用いることによって本発明の抗体を容易に製造することが可能である(例えばAntibodies,A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,(1988) 第6章などを参照のこと)。
最終免疫後、免疫した動物から抗体産生細胞である脾臓細胞あるいはリンパ節細胞を摘出し、高い増殖能を有する骨髄腫由来の細胞株と細胞融合することによりハイブリドーマを作製することができる。細胞融合には抗体産生能(質・量)が高い細胞を用いることが好ましく、また骨髄腫由来の細胞株は融合する抗体産生細胞の由来する動物と適合性があることが好ましい。細胞融合は、当該分野で公知の方法に従って行うことができるが、例えば、ポリエチレングリコール法、センダイウイルスを用いた方法、電流を利用する方法などを採用することができる。得られたハイブリドーマは当業界で汎用の条件に従って増殖させることができ、産生される抗体の性質を確認しつつ所望のハイブリドーマを選択することができる。ハイブリドーマのクローニングは、例えば限界希釈法や軟寒天法などの周知の方法により行うことが可能である。
ハイブリドーマの選択は、産生される抗体が実際の測定に用いられる条件を考慮し、選択の段階で効率的に行うこともできる。例えば、動物に免疫して得られた抗体を、交差反応性を確認したい化合物の存在下、固相に固定化した式(I)で示される化合物と反応させ、交差反応性を確認したい化合物の非存在下での反応性と比較することにより所望の抗体を産生するハイブリドーマをより効率よく選抜することができる。また、動物に免疫して得られた抗体を、生物試料由来成分の存在下、固相に固定化した式(I)で示される化合物と反応させ、生物試料由来成分の非存在下での反応性と比較することにより所望の抗体を産生するハイブリドーマをより効率よく選択することもできる。
クローニング工程後、産生される抗体と式(I)で示される化合物の結合能をELISA法、RIA法、蛍光抗体法などの方法を用いてアッセイすることにより、選択されたハイブリドーマが所望の性質を有するモノクローナル抗体を産生するか否かを確認することができる。ここで、式(I)で示される化合物を認識し、その代謝物を認識しない抗体を効率良く得るために、ハイブリドーマのスクリーニングに用いる抗原として、式(I)で示される化合物をタンパク質に結合させたものを用いるのが好ましく、該タンパク質の種類を、免疫用抗原のタンパク質と異なる種類のものを用いる方法がより好ましい。
前記のようにして選別されたハイブリドーマを大量培養することにより、所望の特性を有するモノクローナル抗体を製造することができる。大量培養の方法は特に限定されないが、例えば、ハイブリドーマを適宜の培地中で培養してモノクローナル抗体を培地中に産生させる方法や、哺乳動物の腹腔内にハイブリドーマを注射して増殖させ、腹水中に抗体を産生させる方法などを挙げることができる。モノクローナル抗体の精製は、先述した抗血清からの抗体の精製法、例えばDEAE陰イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、硫安分画法、PEG分画法、エタノール分画法などを適宜組み合わせて行うことができる。
本発明の抗体としては、抗体分子全体のほかに抗原抗体反応活性を有する抗体のフラグメントを使用することも可能であり、前記のように動物への免疫工程を経て得られたもののほか、遺伝子組み換え技術を使用して得られるものやキメラ抗体を用いることも可能である。抗体の断片としては機能性の断片であることが好ましく、例えば、F(ab’)、Fab’などが挙げられ、これらのフラグメントは前記のようにして得られる抗体をタンパク質分解酵素(例えば、ペプシンやパパインなど)で処理することにより製造できる。
また、本発明のモノクローナル抗体は、不溶性担体上に固定された固定(固相)化抗体として使用したり、後述する当業者に周知慣用の標識物質で標識した標識抗体として使用することができる。このような固定化抗体や標識抗体はいずれも本発明の範囲に包含される。例えば、不溶性担体にモノクローナル抗体を物理的に吸着させ、あるいは化学的に結合(適当なスペーサーを介してよい)させることにより固定化抗体を製造することができる。不溶性担体としては、ポリスチレン樹脂などの高分子基材、ガラスなどの無機基材、セルロースやアガロースなどの多糖類基材などからなる不溶性担体を用いることができ、その形状は特に限定されず、板状(例えば、マイクロプレートやメンブレン)、ビーズあるいは粒子状(例えば、ラテックス粒子)、筒状(例えば、試験管)など任意の形状を選択できる。
本発明の抗体と結合可能な標識抗体(二次抗体)を用いることにより、式(I)で示される化合物に結合した本発明の抗体の量を測定することができ、それにより試料中の式(I)で示される化合物を検出することができる。標識抗体を製造するための標識物質としては、例えば酵素、蛍光物質、化学発光物質、ビオチン、アビジン、又は放射性同位体、金コロイド粒子、着色ラテックスなどが挙げられる。標識物質と抗体との結合法としては、当業者に利用可能なグルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法、又は過ヨウ素酸法などの方法を用いることができるが、固定化抗体や標識抗体の種類、及びそれらの製造方法は前記の例に限定されることはない。例えば、ホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)やアルカリホスファターゼ(ALP)などの酵素を標識物質として用いる場合にはその酵素の特異的基質(酵素がHRPの場合には、例えばO-フェニレンジアミン(OPD)あるいは3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、ALPの場合にはp-ニトロフェニル・ホスフェートなど) を用いて酵素活性を測定することができ、ビオチンを標識物質として用いる場合には少なくともアビジンあるいは酵素修飾アビジンを反応させるのが一般的である。
本発明の抗体を用いて、例えば試料中に存在する、式(I)で示される化合物を検出することができる。本明細書において、単に「式(I)で示される化合物」という場合、式(I)で示される化合物の2種類の光学活性体であるS体、R体及びS体とR体の1:1混合物であるラセミ体のいずれをも含む概念で用いられる。従って、「式(I)で示される化合物に反応する抗体」とは、式(I)で示される化合物のR体に反応する抗体、式(I)で示される化合物のS体に反応する抗体、及び式(I)で示される化合物のS体及びR体の両方に反応する抗体を含む概念で用いられることになる。
また、「ラセミ体」と「オフロキサシン」とは同義で用いられ、また、「式(I)で示される化合物のS体」と「レボフロキサシン」とは同義で用いられる。
本明細書において、「不溶性担体」を「固相」、抗原や抗体を不溶性担体に物理的あるいは化学的に担持させることあるいは担持させた状態を「固定」、「固定化」、「固相化」と表現することがある。また、「検出」又は「測定」という用語は、式(I)で示される化合物の存在の証明及び/又は定量などを含めて最も広義に解釈する必要があり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。
本発明の抗体を用いる測定方法における検出対象の「試料」としては、主に生体(生物)由来の体液を挙げることができ、具体的には血液、血清、血漿、尿、唾液、喀痰、涙液、耳漏又は前立腺液を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。例えば、家畜や魚介類の組織から抽出したものや、家畜の飼養、魚介類の養殖過程において使用される飼料や水なども、当然に本発明の試料たりうる。これらの試料のうちでも、オフロキサシンを投与された患者の体液が、治療との関係などから特に望ましく用いられる。
本明細書において、「生物試料由来成分」とは、前記試料を構成している成分をいい、例えば、生物試料が血清である場合の血清成分として、アルブミンやグロブリンなどの血清タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質などの血清タンパク質類を、生物試料が血漿である場合の血漿成分として、血漿タンパク質(血清には含まれない血液凝固因子など含む)、生物試料が唾液である場合の唾液成分として、リゾチームなどの酵素やムコ多糖などをいう。これらは、投与されたオフロキサシンと結合等する場合があり、抗体による抗原決定基の認識に障害を与える可能性があることは本明細書の他の部分においても言及している。
また、本明細書において「抗菌活性を失った」とは、一般に「代謝物」や「分解物」などの名称で呼ばれる、抗菌化合物が変化体になったものを指し、未変化体化合物が有する抗菌スペクトルあるいは抗菌活性の一部が喪失したり、弱まったものをいう。さらに「結合型」とは、測定系内において抗原が試料由来のタンパク質と可逆的あるいは不可逆的に結合していること及び人為的に種々のキャリアーへ結合されていることを表し、「遊離型」とは試料由来タンパク質や種々のキャリアーと結合していないことを表す。
さらにまた、本明細書中において、本発明の抗体が抗原を「認識する」ことは抗原と「反応する」、「交差反応する」ことと同義でありさらに抗原と「結合する」ことと同義であるがこれに限定されることはなく、最も広義に解釈する必要がある。
本発明の抗体とある化合物が「交差反応しない」とは、ある化合物と全く反応しないことをいい、定量的には、実施例1の競合ELISA法における反応の判定基準に従い、交差反応性が1%未満の場合をいう。
また、本発明の抗体とある化合物との「交差反応性が弱い」とは、ある化合物と反応はするもののその交差反応性が他の化合物との交差反応性に比べて低く、他の化合物を十分に区別して認識できるような場合をいい、定量的には、実施例1の競合ELISA法における交差反応性の判定に従い、交差反応性が1%以上40%未満の場合をいう。
「S体に強く反応する」とは、式(I)で示される化合物のR体よりもS体に強く反応することをいい、定量的には、実施例1の競合ELISA法におけるオフロキサシンと抗体との交差反応性の判定に従い、交差反応性が100%未満の場合をいう。「R体に強く反応する」とは、同判定に従い、交差反応性が100%より大きい場合をいう。
「式(I)で示される化合物との反応性が、生物由来試料成分の共存により変化しない」とは、本発明の抗体と遊離型の式(I)で示される化合物との反応を、生物由来試料成分の存在および非存在下に行い、両者の反応性を比較した場合に実質的に変化がないことをいう。共存により反応性が変化する場合としては、薬物動態学でいう薬物との結合のほかに、例えば、唾液中のムコ多糖など粘性の高い物質が式(I)で示される化合物中の抗原決定基への抗体の結合を妨害するような場合を挙げることができる。
「式(I)で示される化合物との反応性が、式(I)で示される化合物と血清成分との結合により変化しない」とは、本発明の抗体を血清試料中の式(I)で示される化合物を測定するために用いるために必要な性質であり、血清アルブミンなどの血清成分と式(I)で示される化合物が結合するなどして、抗体と式(I)で示される化合物との反応性が無くなる、又は弱まることがない状態をいう。定量的には、実施例3の競合ELISA法により、式(I)で示される化合物をヒト血清とインキュベーションすることによる影響をみる試験において、インキュベーション時間0分のときとインキュベーション時間15分の反応性を比較してその差が5%未満をいう。
また、競合ELISA法において本発明の抗体と遊離型の式(I)で示される化合物との反応性を測定する際に、遊離型の式(I)で示される化合物を、血清を用いて調製した場合と血清を用いないで調製した場合とを比較し、その差が5%未満である場合も、「式(I)で示される化合物との反応性が、当該化合物と血清成分との結合により変化しない」といえる。
本発明の抗体を用いた生物試料中の式(I)で示される化合物の検出は公知の方法(例えば、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」、臨床病理刊行会、1983年、石川榮治ら編「酵素免疫測定法」、第3版、医学書院、1987年、北川常廣ら編「蛋白質核酸酵素別冊No.31酵素免疫測定法」、共立出版、1987年などに記載の方法)に従って行うことができる。もっとも、本発明の抗体を用いた式(I)で示される化合物の検出方法は前記に例示したものに限定されることはなく、当業者が目的に応じて適宜選択可であることは言うまでもない。本明細書の実施例には具体的測定方法が示されているので、当業者は実施例の方法を参照しつつ、必要に応じて該方法に適宜の修飾ないし改変を加えることにより、生物試料に含まれる式(I)で示される化合物を簡便かつ確実に検出することができる。
本発明により提供される測定用試薬(キット)の態様としては、(1)式(I)で示される化合物が固相化されている場合、(2)式(I)で示される化合物を認識する抗体(本発明の抗体)が固相化されている場合、(3)式(I)で示される化合物及び式(I)で示される化合物を認識する抗体の双方が固相化されている場合に大別することができる。以下、代表的な標識イムノアッセイ法であるELISAと代表的な粒子凝集阻害イムノアッセイ法であるラテックス凝集阻害法を例にそれぞれを説明する。なおいずれも試料中のオフロキサシンとの競合反応を利用したものである。
<標識イムノアッセイ法:特にELISA法を例として>
(1)式(I)で示される化合物が固相化されている場合は、少なくとも以下の要素:(a)式(I)で示される化合物が固相化された不溶性担体;及び(b)式(I)で示される化合物を認識する抗体により、測定用試薬(キット)を構成することができる。ここで(a)式(I)で示される化合物が固相化された不溶性担体は、キャリアーを介して式(I)で示される化合物を固相化したり、不溶性担体と式(I)で示される化合物に相互結合性の官能基を導入した上で化学反応を行わせ固相化するなどにより得ることができる。なお、ここでいうキャリアーは、式(I)で示される化合物を不溶性担体に固定するために介在させるものを指しており、タンパク質も使用されうるが、前述した免疫用抗原におけるキャリアーのように、低分子抗原(ハプテン)に対する抗体産生に寄与しうることは必要とされない。従って免疫用抗原をキャリアーを含む式(I)で示される化合物として使用することも可能であるし、免疫源性を有しないタンパク質や合成高分子をキャリアーとして使用することも可能である。次に(b)式(I)で示される化合物を認識する抗体は、検出可能な標識がされていても、いなくてもよい。検出可能な標識がされていない場合には、検出可能な標識が付された二次抗体などを使用し、検出可能な標識がされている場合には、該標識に適した検出方法で検出を行うことができる。検出可能な標識が酵素である場合には、酵素反応基質を測定用試薬(キット)にさらに含ませた形態をとることもできる。酵素や基質の好ましい組み合わせなどは前述した。
(2)式(I)で示される化合物を認識する抗体が固相化されている場合には、少なくとも以下の要素:(a)式(I)で示される化合物を認識する抗体が固相化された不溶性担体;及び(b)標識された式(I)で示される化合物により、測定用試薬(キット)を構成することができる。ここで(a)式(I)で示される化合物を認識する抗体が固相化された不溶性担体は、抗体を物理的、化学的に固相化することによって得ることができる。また、(b)標識された式(I)で示される化合物は、当業者にとって周知慣用の技術を使用して得ることができる。検出可能な標識がされている場合には、該標識に適した検出方法で検出を行うことができる。検出可能な標識が酵素である場合には、酵素反応基質を測定用試薬(キット)にさらに含ませた形態をとることもできる。これらは前記(1)の場合と同様である。
(3)式(I)で示される化合物及び式(I)で示される化合物を認識する抗体の双方が固相化されている場合は、少なくとも以下の要素:(a)式(I)で示される化合物が固相化された不溶性担体;及び(b)式(I)で示される化合物を認識する抗体が固相化された不溶性担体により、測定用試薬(キット)を構成することができる。(a)式(I)で示される化合物が固相化された不溶性担体は前記(1)の場合と同様であり、(b)式(I)で示される化合物を認識する抗体が固相化された不溶性担体は前記(2)の場合と同様である。
<粒子凝集阻害イムノアッセイ法:特にラテックス凝集阻害法を例として>
前記標識イムノアッセイ法とは別の、試料中に存在する式(I)で示される化合物を検出するための測定用試薬(キット)の態様として、少なくとも以下の要素:
(1A)(a)式(I)で示される化合物を認識する抗体及び(b)固相化合成多価抗原、
(2A)(a)式(I)で示される化合物を認識する抗体を固定化したラテックス粒子及び(b)合成多価抗原、
(3A)(a)式(I)で示される化合物を認識する抗体を固相化したラテックス粒子及び(b)固相化合成多価抗原、
により構成された測定用試薬(キット)を例示することができる。なお「合成多価抗原」及び「固相化合成多価抗原」の定義は後述する。
これらの測定用試薬(キット)はラテックス凝集阻害法に好適に使用できる。(a)、(b)に使用するラテックス粒子は、感度向上などの所望の性能を得るため、粒径や種類を適宜選択することができる。ラテックスの材質としては、抗原あるいは抗体の担持に適したものなら良く、一般的に用いられるポリスチレンを主成分とするラテックスの他に、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル類ポリマーなどが挙げられる。また、金属コロイド、ゼラチン、リポソーム、マイクロカプセル、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、金属化合物、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなる粒子をラテックス粒子に代えて使用することもできる。
さらに前記とは別の試料中に存在する式(I)で示される化合物を検出するための測定用試薬(キット)の態様として、少なくとも以下の要素:
(a)式(I)で示される化合物を認識する抗体を固相化した不溶性担体;及び(b)標識された式(I)で示される化合物を含むことを特徴とする測定用試薬(キット):
(b)標識された式(I)で示される化合物を認識する抗体;及び(b)式(I)で示される化合物もしくは合成多価抗原を含むことを特徴とする測定用試薬(キット)
であって、イムノクロマト法を測定原理とする測定用試薬(キット)を例示することができる。
前記「合成多価抗原」は、低分子抗原(ハプテン)のイムノアッセイ法、特に粒子凝集イムノアッセイ法において、凝集の程度を向上させるため、ハプテンを多量体化させて多価抗原を構成し凝集素としたもので、ポリハプテンなどと呼ばれるものと同様のものである。合成多価抗原は、オフロキサシンを多量体化した後、凝集素としての機能を発揮できることを限度として製造方法や構成は制限されない。オフロキサシンを適当なタンパク質、ポリアミノ酸、ペプチド、糖の重合物(低分子多糖や高分子多糖など)、水溶性合成ポリマー、スペーサー化合物などのキャリアーを介して多量体化したものを使用できる。本発明の免疫用抗原やスクリーニング用抗原も合成多価抗原に該当する。キャリアー1分子あたりに結合する式(I)で示される化合物の分子の数(結合比)は免疫用抗原やスクリーニング用抗原の製造方法と同様に調整して製造することができる。前記結合比は、多価抗原として認識されうる2以上であればいずれでも良く、凝集素として所望の性能を得られるよう、適宜選択することができる。例えば後述する実施例((a)式(I)で示される化合物を認識する抗体を固相化したラテックス粒子;及び(b)合成多価抗原(キャリアーとしてウシ血清アルブミンを用いた)により構成された測定用試薬(キット)を用いるラテックス凝集阻害法)における前記結合比は、8以上が好ましく、15以上がさらに好ましい値である。この、結合比はキャリアー種や測定試薬及び測定方法の設計に依存して至適な数値が変動する値である。当業者は所望のキャリアーを選択し、各キャリアーに対し最適な結合比を決定した上で、前記測定試薬を構築することができる。
前記「固相化合成多価抗原」は、その目的や機能は前記「合成多価抗原」と同様である。固相化合成多価抗原は、オフロキサシンを2分子以上不溶性担体(ラテックス粒子など)に化学的あるいは物理的に結合させたもの(この場合、キャリアーやスペーサーを介してもよい)や前記合成多価抗原を不溶性担体(ラテックス粒子など)に化学的あるいは物理的に結合させたものが該当する。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
〔実施例1〕ハイブリドーマの作製と抗体の獲得
(I)材料と方法
(1)免疫用抗原及びスクリーニング用抗原の調製
(i)式(I)で示される化合物のS体(以下、単にレボフロキサシン又はLVFXと表すことがある)10mgを2mLの溶解液(0.1mol/Lリン酸バッファー0.4mL、DMSO 0.2mL、 精製水1.4mL)に溶解してLVFX溶液を得た。なお、式(I)で示される化合物のS体として、本願の実施例ではすべてレボフロキサシンの1/2水和物([(−)-(S)-9-fluoro-2,3-dihydro-3-methyl-10-(4-methyl-1-piperazinyl)-7-oxo-7H-pyrido[1,2,3-de][1,4]benzoxazine-6-carboxylicacid hemihydrate])を用いた。
(ii)該LVFX溶液に対し、2mgのBSA粉末又は2mgのトランスフェリン粉末を加え、それぞれ緩やかに回転させながら溶解した後、5分間氷中に静置し、2種類のLVFXタンパク混合液を得た。
(iii)ついで、各LVFXタンパク混合液に対し、架橋剤として水溶性カルボジイミド(WSC) 160mgを添加し、溶解させた後、遮光下、4℃で緩やかに回転させながら70時間インキュベートした。
(iv)その後、4℃で2日間、PBS(pH7.2) 中にて透析を行った。
(v)透析後の液を回収し、330nmにおける吸光度を測定することでLVFXの濃度を求め、カップリング率(LVFX-タンパク質結合比)を確認した。
(2)免疫と試験採血
前記LVFXとBSAのカップリング物(LVFX-BSA)をPBSに溶解し、アジュバントと1:1で混合後、連結シリンジを用いて混和してエマルジョンを作成し、該エマルジョンを免疫用抗原として用いた。
3匹の雌のBALB/cマウス(ML−1、ML−2:ともに7週齢、ML−3:11週齢)それぞれに対し、免疫用抗原を1匹当たりの1回投与量として、10μg(ML−1)、20μg(ML−2)、40μg(ML−3)ずつを皮下投与した。1週間後、同じ投与量で再度皮下投与した。
免疫開始14日後に各マウスの眼底からマウス抗血清を採取し、後述する抗原固相化ELISA法にて該抗血清中の抗体価を確認した。さらに、遊離型のレボフロキサシンに対する抗血清中の抗体の反応性を確認するため、後述する競合ELISA法にて、反応系に遊離型のレボフロキサシンを2μmol/L、10μmol/L、50μmol/L共存させた条件下での各抗血清の反応性を調べた。
なお、いずれのELISA法においても、免疫していないマウスの眼底から採取した正常血清をコントロールとして用いた。
(3)細胞融合
試験採血5日後、マウスML−1について、10μgLVFX-BSAを静注して最終免疫した。該最終免疫の3日後に脾臓を摘出し、ポリエチレングリコールを用いた常法により細胞融合を行った。ミエローマ細胞はSP2/Oを用いた。得られた融合細胞は、脾臓細胞として2.5×10/mLになるようにヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)及び15%ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地に懸濁し、96穴培養プレートに0.2mLずつ分注した。これを5%COインキュベーター中で37℃にて培養した。
(4)スクリーニング
細胞融合11日後に1次スクリーニングとして、培養上清を用いて抗原固相化ELISA法を行い、LVFXとトランスフェリンのカップリング物(LVFX-トランスフェリン)に対し高い反応性を示したwellを1次陽性wellとして選別した。該1次陽性well中の細胞は、48穴プレートにおいて継代した。
継代2日後、2次スクリーニングとして、培養上清を用いて競合ELISA法を行い、遊離型のレボフロキサシンに対し高い反応性を示したwellを2次陽性wellとして選択した。
2次スクリーニングで選択された細胞株は、3次スクリーニングとしてレボフロキサシンの併用薬、類似化合物、及び代謝物との競合ELISA法を行った。さらに3次スクリーニングによって選択された細胞株の培養上清を用い、遊離型レボフロキサシンとの競合ELISA法の反応系にヒト血清が共存した場合及び予めレボフロキサシンを血清とインキュベートした場合に、血清が抗体の反応性に影響を与えるか調べた。
(5)クローニング及びイムノグロブリン(抗体)採取
3次スクリーニングで選別した10株のハイブリドーマを限界希釈法にてクローニングした。次いで各ハイブリドーマが産生するイムノグロブリン(抗体)を採取するため、2週間前にプリスタン0.5mLを腹腔内に注射しておいた12週齢の雌BALB/cマウスに、ハイブリドーマを細胞数0.5×10個の量で腹腔内に投与した。14日後に腹水を採取し、遠心処理して上清を得た。上清を等量の吸着用緩衝液(3mol/LNaCl、1.5mol/L Glycine-NaOH緩衝液、pH8.5)と混和後、濾過した。該ろ液を、吸着用緩衝液で平衡化したプロテインAカラムに通し、ろ液中の抗体をカラムに吸着させた後、0.1mol/Lクエン酸緩衝液(pH3.0)で溶出させた。該溶出液を、1mol/LTris-HCl緩衝液(pH8.0)で中和後、PBSで透析を行い、抗体を採取した。
(6)サブクラスの確認
採取した10種類のイムノグロブリン(抗体)について、サブクラス判定キット(ZYMED社製)を用いサブクラスの確認を行った。
(7)ELISA用プレートの作成
PBSに溶解して1μg/mLの濃度に調製したLVFX-トランスフェリンをスクリーニング用抗原として、50μL/wellずつ96穴プレートに固相化し、4℃で一晩静置した。PBST(0.05%Tween20-PBS)で3回洗浄後(400μL/well)、ブロッキング液(3%スキムミルク-PBST)を100μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置してブロッキングを行い、ELISA用プレートを作成した。該ELISA用プレートは、PBSTで3回洗浄後、各試薬を添加して実施例記載の各ELISA法試験に用いた。
(8)抗原固相化ELISA法
(i)ELISA用プレートに、1%BSA-PBSTにより100倍から5倍ずつ8段階に希釈した各マウス抗血清、あるいは融合細胞の培養上清を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(ii)PBSTで3回洗浄後、HRP-GtF(ab’)-Anti-Mouse Ig’s(Biosource、AMI4404)を1%BSA-PBSTで5000倍希釈した溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(iii)PBSTで3回洗浄後、OPD発色液(OPDを2mg/mL、過酸化水素を0.02%の濃度でpH5.0クエン酸緩衝液に溶解)を分注し(50μL/well)、室温で10分間静置した。
(iv)0.75mol/L硫酸を50μL/wellずつ分注して反応を停止した後、プレートリーダーで492nmの吸光度を測定した。
(9)競合ELISA法に用いる化合物溶液の調製
競合ELISA法に用いる化合物として、レボフロキサシン、後述するレボフロキサシンの併用薬、レボフロキサシンの類似化合物であるニューキノロン系抗菌剤、レボフロキサシンの代謝物及びオフロキサシン(ラセミ体)を選んだ。これらの化合物を容易に溶解可能な溶解液を、精製水、PBST、DMSO、メタノール、0.1mol/L HCl、又は0.1mol/LNaOHの中からそれぞれ選択した。溶解液として0.1mol/L HCl、又は0.1mol/LNaOHを選択した場合には、これらに化合物を溶解した後、直ちに1%BSA-PBSTで50倍希釈し、pH試験紙で中性付近のpHであることを確認した。溶解した化合物は、化合物の濃度が0.01μmol/L、0.1μmol/L、1μmol/L、10μmol/L、100μmol/Lとなるように、1%BSA-PBSTで段階的に希釈し、競合ELISA法に使用した。例えば、レボフロキサシンは、精製水で1mmol/Lに溶解し、さらに1%BSA-PBSTで段階希釈して競合ELISA法に使用した。
<交差反応性を試験したレボフロキサシンの併用薬>
ジクロフェナクナトリウム、ナブメトン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、オキサプロジン、ナプロキセン、イブプロフェン、カルボシステイン、サリチルアミド、アセトアミノフェン、無水カフェイン、メチレンジサリチル酸、プロメタジン、及びテオフィリン
<交差反応性を試験したレボフロキサシンの類似化合物>
シプロフロキサシン、トスフロキサシン、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン、フレロキサシン、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、モキシフロキサシン、及びパズフロキサシン
<交差反応性を試験したレボフロキサシンの代謝物>
N-オキシド体、及び脱メチル体
<オフロキサシン>
式(I)で示される化合物のS体及びR体混在物(組成比1:1)
(10)競合ELISA法
(i)ELISA用プレートに前記(9)競合ELISA法に用いる化合物溶液の調製で調製した各化合物溶液を25μL/wellずつ分注した。
(ii)次いで、1%BSA-PBSTで1000倍希釈した各マウス抗血清、あるいは融合細胞の培養上清を25μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
以降の操作は、前記(8)抗原固相化ELISA法の工程(ii)〜(iv)と同様に行った。
(11)本発明抗体を用いた競合ELISA法における血清の影響の評価
(i)1%BSA-PBSTによりヒト血清を希釈し、5%ヒト血清を作製した。なお、本発明の各実施例で使用したヒト血清、血漿は、いずれも同意を得て採取したボランティアの血液に由来するものである。
(ii)5%ヒト血清を用いて2.0μmol/L、0.2μmol/L、0.02μmol/L レボフロキサシンを調製し、ヒト血清試薬aとした。コントロール試薬として、1%BSA-PBSTを用いて2.0μmol/L、0.2μmol/L、0.02μmol/L レボフロキサシンを調製した。
(iii)ELISA用プレートに、ヒト血清試薬aあるいはコントロール試薬を25μL/wellずつ分注した。
(iv)次いで、融合細胞の培養上清を25μL/well分注して、室温で1時間静置した。
以降の操作は、前記(8)抗原固相化ELISA法の工程(ii)〜(iv)と同様に行った。
(12)予め遊離型レボフロキサシンとヒト血清とをインキュベーションした試料を競合ELISA法で測定した場合の影響の評価
(i)精製水で溶解したレボフロキサシン溶液をヒト血清で100倍希釈して30μmol/L レボフロキサシン溶液を調製し、37℃にて0、15、60分間インキュベートした。
(ii)各時間のインキュベート後、前記30μmol/L レボフロキサシン溶液を1%BSA‐PBSTで15倍、150倍、1500倍に希釈し、ヒト血清試薬bとした。
(iii)ELISA用プレートに、ヒト血清試薬bを25μL/wellずつ分注した。
(iv)次いで、融合細胞の培養上清を25μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
以降の操作は、前記(8)抗原固相化ELISA法の工程(ii)〜(iv)と同様に行った。
(13)反応の数値化
(i)測定された吸光度より、まず各化合物の各添加濃度における反応性(%)を以下の式(1)を用いて算出した。
反応性(%)=[Abs.(x)]/[Abs.(0)]×100・・・式(1)
Abs.(x):
(化合物濃度xμmol/Lでの吸光度)−(抗体0μg/mLでの吸光度)
Abs.(0):
(化合物濃度0μmol/Lでの吸光度)−(抗体0μg/mLでの吸光度)
(ii)次に、各化合物について添加濃度と反応性の関係をプロットしたグラフを作成し、反応性が50%になるときの各化合物の添加濃度を求めた。この濃度を50%阻害濃度(IC50)とした。
(iii)IC50から以下の式にて各抗体の各化合物に対する交差率(%)を求めた。求めた交差率を元に、各抗体の各化合物に対する交差反応性の強さの判定基準を設定した。
交差率(%)=[レボフロキサシンのIC50]/[各化合物のIC50]×100
・・・式(2)
交差反応性強 :交差率80%以上〜100%
交差反応性中 :交差率40%以上〜80%未満
交差反応性弱 :交差率1%以上〜40%未満
交差反応しない:交差率0%以上〜1%未満
また、各抗体のオフロキサシンに対する交差反応性の強さの判定基準は次のように設定した。
S体と強く反応 :交差率が100%未満
S体とR体等価に反応:交差率が100%
R体と強く反応 :交差率が100%超
(II)結果
(1)免疫用抗原及びスクリーニング用抗原の調製
調製した免疫用抗原及びスクリーニング用抗原のLVFX-タンパク質結合比は、LVFX-BSAが12.0、LVFX-トランスフェリンが13.9で、いずれも高い値を示した。なお、結合比の値は、透析後のLVFXの濃度を透析前のBSA又はトランスフェリン濃度で除すことにより算出したもので、BSA又はトランスフェリン1分子当りに結合したLVFXの分子数を表している。
(2)試験採血における抗原固相化ELISA法試験の結果
試験採血を行い、抗原固相化ELISA法により各マウス抗血清中の抗体価を調べた結果、3種のマウス抗血清すべてにおいて高い抗体価が確認された(図1)。ELISA用プレートに固相化したスクリーニング用抗原と免疫用抗原とではカップリングさせたタンパク質が異なるので、各抗体が固相化したスクリーニング用抗原のタンパク質部分(言い換えればキャリアー)へ非特異的に反応する可能性は排除されている。従って本実施例で得られた各マウス抗血清は、免疫用、スクリーニング用抗原中の共通部分であるレボフロキサシンを特異的に認識する抗体を含むと考えられた。
(3)試験採血における競合ELISA法試験の結果
タンパク質と結合していない遊離型のレボフロキサシンを競合ELISA法の反応系に共存させ、固相化抗原と競合させた場合におけるスクリーニング用抗原と各マウス抗血清中の抗体との反応量の変化を調べた結果、3種のマウス抗血清のいずれにおいても反応系へのレボフロキサシンの添加量に応じ、スクリーニング用抗原に対する抗体の反応量が低下した(図2)。従って、本実施例で得られた各マウス抗血清中には、遊離型のレボフロキサシンを認識する抗体が含まれていると考えられた。
(4)スクリーニング
1次スクリーニングの結果、固相化されたLVFX-トランスフェリンに高い反応性を示した63株を1次陽性株として選択した。さらに2次スクリーニングの結果、遊離型のレボフロキサシンと高い反応性を示した32株を2次陽性株として得た。また、3次スクリーニングの結果、レボフロキサシンの併用薬、類似化合物、及び代謝物と交差反応しないか、もしくは交差反応性が比較的弱い10株を選択し、この10株由来の抗体についてさらに試験した。
3次スクリーニングによって選択された前記10種類の抗体について競合ELISA法の反応系にヒト血清を共存させ抗体の反応性に与える血清成分の影響を調べた。血清の添加により、遊離型レボフロキサシンが血清中のタンパク質と結合して結合型レボフロキサシンとなり、抗体の反応に影響を与える可能性が考えられたが、いずれの抗体においてもコントロール(血清非添加)と血清を添加した場合の反応性の差は5%未満であった。
3次スクリーニングによって選択された前記10種類の抗体について、予め遊離型オフロキサシンと血清をインキュベートし、遊離型オフロキサシンが血清タンパク質と結合した結合型オフロキサシンに変換されるようにしたヒト血清試薬bを、競合ELISA法の試料として測定した。競合ELISA法により該抗体の反応性を求めた結果、インキュベーション時間が0分の場合と比較して、インキュベーション時間15分及び60分のときの反応性の差は5%未満であった。
前記、血清の影響をみる2種類の試験結果より、3次スクリーニングによって選択された10種類の抗体は、血清タンパク質と結合した結合型レボフロキサシンであっても、血清タンパク質と結合していない遊離型レボフロキサシンと同様の反応性を示し、試料中の遊離型、結合型を同時に検出可能と考えられた。
(5)クローニング及びイムノグロブリン(抗体)、採取サブクラスの確認
3次スクリーニングで選択された10種類の抗体のサブクラスを調べた結果、10種類中8種類はサブクラスがIgGで、その他2種類の抗体はIgAとIgMであった。これ以降、サブクラスがIgGであった77201〜77207及び77209の8種類のモノクローナル抗体のみ評価を継続した。
また、これら8種類の抗体の中から、実施例2においてレボフロキサシン脱メチル体に対して若干の反応性を示した77203の1種類を除いた7種類について、該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを独立行政法人産業技術総合研究所(日本国茨城県つくば市東一丁目1番地1中央第6)に寄託した。寄託番号は以下のとおりである。
抗体番号 : 寄託番号
77201:FERM BP−11010
77202:FERM BP−11011
77204:FERM BP−11012
77205:FERM BP−11013
77206:FERM BP−11014
77207:FERM BP−11015
77209:FERM BP−11016
〔実施例2〕各ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体の交差反応性評価
(I)材料と方法
(1)試薬の調製
競合ELISA法に用いた各化合物は、実施例1(I)(9)と同様の操作で調製した。
(2)交差反応性の評価(競合ELISA法)
実施例1(I)(10)競合ELISA法と同様に行った。ただし用いた抗体は実施例1(II)(5)で選択した7種類のモノクローナル抗体(精製IgG:0.2μg/mL)である。また、抗体の反応性及び交差反応性の算出も実施例1(I)(13)と同様に行い数値化した。
(II)結果
(1)遊離型のレボフロキサシンに対する各モノクローナル抗体の反応性
図3に示すように、各抗体とも遊離型のレボフロキサシンに対して反応することが確認された。
(2)類似化合物、代謝物及び式(I)で示される化合物のS体(レボフロキサシン)、R体及びS体とR体の1:1混合物であるラセミ体(オフロキサシン)との交差反応性
類似化合物及びレボフロキサシン代謝物及びオフロキサシンに対する各抗体の交差率を表1に示した。
各類似化合物に対する各モノクローナル抗体の交差反応性については、77201、77202、及び77204がモキシフロキサシンに対し交差反応性を示した。77205、77207、及び77209は、フレロキサシンに若干交差反応性を示したものの、その他の類似化合物全てに対して交差反応しないか、弱い交差反応性であった。
オフロキサシンに対する各抗体の交差反応性については、77201、77202、77204、77205、77207の5種類の抗体は、S体への交差反応性とオフロキサシンへの交差反応性が等しかった。77206は、オフロキサシンに対する交差反応性が50%であったので、S体に強く反応する抗体であると判定した。一方、77209はオフロキサシンへの交差率が250%でレボフロキサシン単体よりもオフロキサシンに対する交差反応性の方が強いことから、R体に強く反応する抗体であると判定した。
各抗体のレボフロキサシン代謝物、オフロキサシンに対する交差反応性をまとめると以下のとおりである。
77201、77202、77204、77205、77207:オフロキサシンと反応し、且つその代謝物であるN-オキシド体及び脱メチル体と反応しない抗体で、式(I)で示される化合物のS体(レボフロキサシン)とR体の両方に反応する抗体
77206:オフロキサシンと反応し、且つその代謝物であるN-オキシド体及び脱メチル体と反応しない抗体で、レボフロキサシンと強く反応する抗体
77209:オフロキサシンと反応し、且つその代謝物であるN-オキシド体及び脱メチル体と反応しない抗体で、オフロキサシンR体と強く反応する抗体
さらに、代表的なレボフロキサシン併用薬との交差反応性を調べたが、これらに対する交差反応性はいずれも0.1%未満であった。よって、各抗体はいずれも代表的なレボフロキサシン併用薬に対して反応しないと判定した。
〔実施例3〕血清による影響の評価(競合ELISA法)
(I)方法と手順
(1)血清添加による影響
「実施例1(I)(11)競合ELISA法による本発明抗体への血清の影響の評価」の操作のうち、工程(iv)における融合細胞の培養上清をモノクローナル抗体(精製IgG、0.2μg/mg)に変えた以外は同様に行った。また、反応性及び交差反応性も実施例1(I)(13)に従い数値化して評価した。
(2)予め遊離型レボフロキサシンとヒト血清とをインキュベーションした場合の影響
「実施例1(I)(12)予め遊離型レボフロキサシンとヒト血清とをインキュベーションした試料を競合ELISA法で測定した場合の影響の評価」の操作のうち、融合細胞の培養上清をモノクローナル抗体(精製IgG、0.2μg/mg)に変えた以外は同様に行った。また、反応性及び交差反応性も実施例1(I)(13)に従い数値化して評価した。
(II)結果
(1)血清添加による影響
競合ELISA法の反応系にヒト血清を共存させ抗体の反応性に与える血清成分の影響を調べた。血清の添加により、遊離型レボフロキサシンが血清中のタンパク質と結合して結合型レボフロキサシンとなり、抗体の反応性に影響を与える可能性が考えられたが、いずれの抗体においてもコントロール(血清非添加)と血清を添加した場合の反応性の差は5%未満であった。
(2)予めインキュベーションした遊離型レボフロキサシンとヒト血清の添加による影響
予め遊離型レボフロキサシンと血清をインキュベートし、遊離型レボフロキサシンが血清タンパク質と結合した結合型レボフロキサシンに変換されるようにしたヒト血清試薬bを、競合ELISA法の試料として測定した。競合ELISA法により該抗体の反応性を求めた結果、インキュベーション時間が0分の場合と比較して、インキュベーション時間15分及び60分のときの反応性の差は5%未満であった。
以上(1)及び(2)の結果より、本抗体は抗原抗体反応において血清タンパク質の影響を受けないことがわかった。よって、本抗体は血中薬物濃度測定に利用可能な抗体である。
〔実施例4〕本発明の抗体を用いた試料中のレボフロキサシンの免疫学的測定方法
(I)方法と手順
(1)試薬の調製
レボフロキサシンの粉末を精製水に溶解して1mmol/Lとし、標準品レボフロキサシン溶液(標準品溶液)とした。該標準品溶液は、セラムチューブに分注後、使用時まで−80℃で凍結して保存した。
(2)検量線の作成
(i)標準品溶液を、1%BSA-PBSTで2μmol/Lから0.0625μmol/Lまで6段階に希釈し、標準試料とした。
(ii)ELISA用プレートに前記標準試料を25μL/wellずつ分注し、次いで、77206抗体(精製IgG、0.1μg/mL、1%BSA-PBST)を25μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
以降の操作は、実施例1(I)(8)抗原固相化ELISA法の工程(ii)〜(iv)と同様に行った。
(3)希釈直線性試験
(i)標準品溶液をヒト血清で適当な濃度に希釈し、レボフロキサシン含有ヒト血清を3種類調製した。
(ii)前記レボフロキサシン含有ヒト血清それぞれを、まず1%BSA-PBSTで11倍希釈し、以後これを2倍ずつ704倍まで希釈して希釈直線性試験試料とした。
(iii)ELISA用プレートに、前記希釈直線性試験試料を25μL/wellずつ分注し、次いで、77206抗体(精製IgG、0.1μg/mL、1%BSA-PBST)を25μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
以降の操作は、実施例1(I)(8)抗原固相化ELISA法の工程(ii)〜(iv)と同様に行った。測定した吸光度を検量線を用いて濃度に換算し、血清希釈率をx軸、濃度換算値をy軸とするグラフにプロットした(なお、x軸の血清希釈率は、10倍希釈を10/100のように表記した)。また、濃度換算値と血清希釈率の相関係数を求めた。
(4)同時再現性試験
(i)標準品溶液を1%BSA-PBSTで30μmol/L、10μmol/L、6μmol/Lに希釈し、血清で11倍希釈した後、さらに1%BSA-PBSTで2倍希釈して同時再現性試験用試料(検体A、検体B、検体C)とした。
(ii)ELISA用プレートに前記同時再現性試験用試料を25μL/wellずつ分注し、次いで、77206抗体(精製IgG、0.1μg/mL、1%BSA-PBST)を25μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
以降の操作は、実施例1(I)(8)抗原固相化ELISA法の工程(ii)〜(iv)と同様に行った。測定した吸光度を検量線を用いて濃度に換算した。各同時再現性試験用試料について、それぞれ8回測定を行い、測定値の平均、標準偏差、変動係数を求めた。
(5)添加回収試験
(i)標準品溶液を1%BSA-PBSTで適当な濃度に希釈し、血清で11倍希釈した後、さらに1%BSA-PBSTで2倍希釈して添加回収試験用試料とした。
(ii)ELISA用プレートに前記添加回収試験用試料を25μL/wellずつ分注し、次いで、77206抗体(精製IgG、0.1μg/mL、1%BSA-PBST)を25μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
以降の操作は、実施例1(I)(8)抗原固相化ELISA法の工程(ii)〜(iv)と同様に行った。測定した吸光度を検量線を用いて濃度に換算し、理論値をx軸、濃度換算値をy軸とするグラフにプロットした。また、濃度換算値と理論値の回帰式と相関係数を求めた。
(II)結果
(1)検量線の作成
標準試料を用い、0.0625μmol/Lから2μmol/Lの範囲における検量線を作成した。前記範囲において検量線は良好な直線性を示し、本発明の測定方法が試料中の式(I)で示される化合物の定量測定に使用できることが確認された。(図4)。
(2)希釈直線性試験
3種類の希釈直線性試験試料の濃度換算値と血清希釈率の相関係数は、いずれも0.99以上であり、良好な希釈直線性を示した(図5)。本発明の抗体を使用すると、試料由来の血清成分の影響を受けない測定系を構築できることが示された。
(3)同時再現性試験
3濃度の同時再現性試験用試料について、同時に8回測定を行ったところ、いずれの試料においても変動係数(CV%)10%未満で高い同時再現性を示した(表2)。
(4)濃度既知検体の測定
添加回収試験用試料の理論値と濃度換算値の回帰式はy=1.078x+0.021であり、相関係数は0.993であった(図6)。以上より、本発明の抗体を使用した測定方法は、生物試料中の式(I)で示される化合物の濃度を正確に測定できることが示された。
〔実施例5〕生物由来の試料が唾液の場合
(I)方法と手順
(1)試薬の調製
実施例4(I)(1)で調製した標準品溶液を使用した。
(2)競合ELISA法
(i)1%BSA-PBSTで10%、5%、2%ヒト唾液希釈液を作成した。
(ii)標準品溶液を各濃度のヒト唾液希釈液で0.2μmol/Lに希釈し、ヒト唾液試料とした。ヒト唾液を含まない(0%)試料をコントロールとした。
(iii)ELISA用プレートにヒト唾液試料を25μL/wellずつ分注した。
(iv)次いで、77201抗体(精製IgG、0.2μg/mL、1%BSA-PBST)を25μL/well分注して、室温で1時間静置した。
以降の操作は、実施例1(I)(8)抗原固相化ELISA法の工程(ii)〜(iv)と同様に行った。
(II)結果
(1)生物由来の試料が唾液の場合
測定試料中の唾液濃度が0%の場合と唾液濃度が10%、5%、2%の場合で、反応性の差は5%未満であり唾液成分の影響を受けなかった(図7)。唾液中には、リゾチームやムコ多糖など免疫反応系を阻害する成分が存在し、また該唾液中の成分により遊離型抗原中のエピトープが覆われてしまう可能性などが考えられたが、本発明の抗体を使用した測定方法は、唾液成分の影響を受けずに生物試料中の式(I)で示される化合物の濃度を正確に測定できることが示された。
〔実施例6〕血漿による影響の評価(競合ELISA法)
血清よりも含有タンパク質の種類、量の多い血漿の影響を検討した。
(I)方法と手順
(1)試薬の調製
競合ELISA法に用いた各化合物の調製は、実施例1(I)(9)試薬の調製と同様に行った。
(2)競合ELISA法による血漿の影響の評価
(i)1%BSA-PBSTで10%ヒト血漿を作製した。
(ii)10%ヒト血漿を用いて0.4μmol/L、0.2μmol/L、0.01μmol/Lレボフロキサシンを調製し、ヒト血漿試薬aとした。コントロール試薬として、1%BSA-PBSTを用いて0.4μmol/L、0.2μmol/L、0.01μmol/Lレボフロキサシンを調製した。
(iii)ELISA用プレートにヒト血漿試薬aあるいはコントロール試薬を25μL/wellずつ分注した。
(iv)次いで、77206抗体(精製IgG、0.2μg/mL、1%BSA-PBST)を分注して、室温で1時間静置した。
以降の操作は、実施例1(I)(8)抗原固相化ELISA法の工程(ii)〜(iv)と同様に行った。
(II)結果
(1)血漿添加による影響
血漿の添加により遊離型抗原が血漿タンパク質と結合して結合型抗原になり、競合反応が阻害されることが予想されたが、いずれの抗体においてもコントロール(血漿非添加)と血漿を添加した場合の反応性の差は5%未満であった(図8)。本抗体は、抗原抗体反応において血漿タンパク質の影響を受けず、血中薬物濃度測定に利用可能な抗体である。
〔比較例〕
(1)従来抗体の性質(血漿成分の影響)
(I)方法と手順
特許文献2に記載の方法を一部改変して実施した。
(i)96穴プレートに、0.1mol/L炭酸緩衝液(pH9.5)で20μg/mLに調製したヤギ抗ウサギIgGを100μL/well加え、室温で2時間インキュベートし、1次抗体を固相化した後、プレートを洗浄液(0.05%Tween20、50mmol/L Tris-HCl、pH7.4)で3回洗浄した。
(ii)次に1%BSAを含む50mmol/L Tris-HCl緩衝液(pH7.4)300μL/wellを加えて室温で2時間インキュベートした後、プレートを洗浄液で3回洗浄した。
(iii)次に0.5%BSAを含む50mmol/L Tris-HCl緩衝液(EIA緩衝液)で適切な濃度に希釈した抗レボフロキサシンウサギ抗血清を加えて室温で2時間インキュベートして、前記抗レボフロキサシンウサギ抗血清中の抗レボフロキサシン抗体を1次抗体に捕捉させた。その後、プレートを洗浄液で3回洗浄した。
(iv)さらに各ウェルにEIA緩衝液で50倍希釈したアルカリホスファターゼ標識抗原50μLと10%ヒト血漿を含むEIA緩衝液又はヒト血漿を含まないEIA緩衝液で希釈した10μg/mLレボフロキサシン溶液50μLを加え、室温で2時間インキュベートした。
(v)プレートを洗浄液で3回洗浄し、p-ニトロフェニル・ホスフェート基質液を100μL 加えて室温で30分間インキュベートした後、1.6mol/L水酸化ナトリウム溶液25μLを加えて反応を停止して405nmにおける吸光度を測定した。
(II)結果
血漿が添加されている試料の反応性は、血漿非添加試料の反応性のおよそ2倍になった(図9)。これは、血漿タンパク質が遊離型のレボフロキサシンと結合して結合型のレボフロキサシンになったことにより、抗体がレボフロキサシン中のエピトープを認識できなくなった結果、競合反応が阻害されたためと考えられる。一方、反応液中の酵素標識抗原については、抗原に結合している標識酵素が血漿タンパク質とレボフロキサシンとの結合を妨害するため、抗原抗体反応に影響しなかったと考えられる。
〔実施例7〕競合ELISA法別法(1ステップ競合ELISA法)
実施例1(I)(8)抗原固相化ELISA法の工程に記載した競合ELISA法は、抗体をあらかじめHRP標識することにより検出を1ステップで行う下記の方法で実施することも可能である。
(I)方法と手順
(1)HRP標識抗体の調製
(i)7種類のモノクローナル抗体、抗体77201、77202、77204、77205、77206、77207、77209を4℃で2日間、0.1mol/L炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.3)中にて透析を行った。透析後液を回収し、280nmにおける吸光度を測定することで抗体濃度を確認した。
(ii)HRP(東洋紡、PEO−301)50mgを5mmol/L酢酸緩衝液(pH4.5)5mLに溶解した。ここへ過ヨウ素酸ナトリウム水溶液(100mg/mL)を21.5μL添加し、遮光条件下室温で30分間静置した。
(iii)続いてPD−10カラム(Amersham Biosciences、17−0851−01)(溶出液として5mM酢酸緩衝液(pH4.5)を使用)を用いて精製し、濃緑色溶液画分を回収した。本溶液に含まれる活性化HRPの濃度を、280nmの吸光度を測定することで確認した。
(iv)(i)で調製した抗体および(iii)で調製した活性化HRPを、0.1mol/L炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH9.3)を用いて1mg/mLに希釈した。両溶液を250μLずつ混和し、遮光条件下室温で1時間静置した。
(v)水素化ホウ素ナトリウム水溶液(2mg/mL)を10μL添加し、遮光条件下、室温で15分間静置した。
(vi)続いて飽和硫酸アンモニウム水溶液を510μL添加し、遮光条件下、氷上で1時間静置した。
(vii)得られた溶液を4℃、10000rpmにて10分間遠心分離し、抗体ペレットを得た。
(viii)該抗体ペレットをPBS(pH7.2)500μLを用いて再溶解し、さらに4℃で2日間、PBS(pH7.2)中にて透析を行った。
(ix)透析後の液を回収し、280nmにおける吸光度を測定することでHRP標識抗体の濃度を確認した。
(2)1ステップ競合ELISA法
(i)ELISA用プレートに、実施例1(I)(9)競合ELISA法に用いる化合物溶液の調製と同様の方法で調製した各濃度のレボフロキサシン溶液を25μL/wellずつ分注した。
(ii)次いで前記(1)HRP標識抗体の調製で調製したHRP標識抗体を1%BSA−PBSTで70倍〜3500倍希釈した抗体液を25μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
以降の操作は、実施例1(I)(8)抗原固相化ELISA法の工程(iii)〜(iv)と同様に行った。
(II)結果
タンパク質と結合していない遊離型のレボフロキサシンを1ステップ競合ELISA法の反応系に共存させ、固相化抗原と競合させた結果、いずれのHRP標識抗体においても反応系へのレボフロキサシンの添加量に応じて固相化抗原に対するHRP標識抗体の反応量が低下した(図10)。従って、本実施例に示した1ステップ競合ELISA法は、試料中の式(I)で示される化合物の免疫学的測定方法として有用であると考えられた。
〔実施例8〕ラテックス凝集阻害法(抗体固相化ラテックス系)
本実施例は、本発明(20)、
「固相に固定化した本発明(1)から本発明(11)のいずれかに記載の抗体に対し、合成多価抗原及び試料中の式(I)で示される化合物を競合的に反応させることを特徴とする、試料中の式(I)で示される化合物の免疫学的測定方法。」
に対応するものとして、粒子凝集阻害法のひとつであるラテックス凝集阻害法(抗体固相化ラテックス系)について試験したものである。
(I)方法と手順
(1)試薬の調製
(i)実施例1(I)(1)免疫用抗原及びスクリーニング用抗原の調製に記載した方法で調製したLVFX−BSA(結合比18)を1.0μg/mLとなるよう、20mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0、500mmol/L塩化ナトリウム、1%BSAを含む)で希釈し、第一試薬とした。該第一試薬は上記本発明(20)中の、「固相に固定化した本発明(1)から本発明(11)のいずれかに記載の抗体」を含むものである。
(ii)モノクローナル抗体77209を0.8mg/mL含む20mmol/Lトリス緩衝液(pH8.5)1.5mLに、平均粒径約200nmの1%ラテックス(積水化学工業社製)懸濁液を1.5mL加え、4℃で2時間撹拌した。続いて0.1%BSAを含む20mmol/Lトリス緩衝液(pH8.5)3.0mLを添加し、4℃で1時間撹拌した。4℃、13000rpmで35分間遠心後、上清を除去し、除去量と等量の5mmol/L MOPS緩衝液(pH7.0、0.1%BSAを含む)で再懸濁した。超音波分散(ニッセイUltrasonic Generater)を行った後、得られた溶液を50℃で1時間加熱した。冷却後、波長600nmにおける吸光度が3Absとなるよう、5mmol/L MOPS緩衝液(pH7.0)で希釈し、第二試薬とした。
(iii)実施例1(I)(9)競合ELISA法に用いる化合物溶液の調製と同様の方法で濃度0.0μg/mL、1.0μg/mL、2.5μg/mL、5.0μg/mL、10μg/mL、20μg/mLのレボフロキサシン水溶液を調製した。さらに別途、実施例1(I)(9)競合ELISA法に用いる化合物溶液の調製と同様の方法で濃度0.0μg/mL、10μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、150μg/mL、200μg/mLの濃レボフロキサシン標準品溶液を調製した。該濃レボフロキサシン標準品溶液をヒト血清、ヒト血漿もしくはヒト唾液で10倍希釈し、レボフロキサシン濃度0.0μg/mL、1.0μg/mL、2.5μg/mL、5.0μg/mL、10μg/mL、15μg/mL、20μg/mLのレボフロキサシン含有ヒト血清、ヒト血漿もしくはヒト唾液を調製した。
(2)測定手順
汎用型日立7170S型自動分析装置を用いて、各レボフロキサシン溶液を測定した。具体的には、各試料液2.5μLに第一試薬150μLを添加後37℃で5分間加温し、さらに第二試薬150μLを添加した後、37℃加温下、測光ポイント19〜34における600nmにおける吸光度変化量を測定した。
(II)結果
まず前記レボフロキサシン水溶液を測定し、各レボフロキサシン濃度に対する吸光度変化量をプロットした(図11)。反応系へのレボフロキサシンの添加量に応じて吸光度が低下した。続いてスプライン関数を用いて検量線を作成した後、各濃度の前記レボフロキサシン含有ヒト血清もしくはヒト血漿を測定し、検量線より測定値を計算した。本測定範囲において、レボフロキサシン溶液濃度の理論値と測定値は良好な相関を示した(図12、13)。一方、前記レボフロキサシン含有唾液を測定し、各レボフロキサシン濃度に対する吸光度変化量をプロットした。反応系へのレボフロキサシンの添加量に応じて吸光度が低下した(図14)。
以上より、本実施例に示した抗体固相化ラテックスを使用したラテックス凝集阻害法は、血清、血漿、唾液試料中の式(I)で示される化合物の定量測定に使用できることが確認された。
〔実施例9〕ラテックス凝集阻害法(抗原固相化ラテックス系)
本実施例は本発明(21)、
「本発明(1)から本発明(11)のいずれかに記載の抗体に対し、固相化合成多価抗原及び試料中の式(I)で示される化合物を競合的に反応させることを特徴とする、試料中の式(I)で示される化合物の免疫学的測定方法。」
に対応するものとして、粒子凝集阻害法のひとつであるラテックス凝集阻害法(抗原固相化ラテックス系)について試験したものである。
(I)方法と手順
(1)試薬の調製
(i)モノクローナル抗体77206を5.2mg/mLとなるよう、5mmol/L MOPS緩衝液(pH7.0)で希釈し、第一試薬とした。
(ii)実施例1(I)(1)免疫用抗原及びスクリーニング用抗原の調製に記載した方法で調製したLVFX−BSA(結合比3)を20μg/mL含む10mmol/Lクエン酸−リン酸水素二ナトリウム緩衝液(pH5.5、0.8%BSAを含む)3.0mLに、平均粒径約210nmの1%ラテックス(積水化学工業社製)懸濁液を3.0mL加え、4℃で2時間撹拌した。4℃、13000rpmで30分間遠心後、上清を除去し、除去量と等量の5mmol/L MOPS緩衝液(pH7.0、0.1%BSAを含む)で再懸濁した。超音波分散を行った後、得られた溶液を波長280nmにおける吸光度が1.1Absとなるよう、5mmol/LMOPS緩衝液(pH7.0)で希釈し、第二試薬とした。該第二試薬は上記本発明(21)中の、「(b)式(I)で示される化合物を含有する抗原担体複合物を固相に2分子以上固定化した合成多価抗原」を含むものである。
(iii)実施例1(9)競合ELISA法に用いる化合物溶液の調製と同様の方法で濃度0.0μg/mL、5.0μg/mL、10μg/mL、20μg/mLのレボフロキサシン水溶液を調製した。
(2)測定手順
汎用型日立7170S型自動分析装置を用いて、各濃度のレボフロキサシン水溶液を測定した。具体的には、第一試薬20μLに各濃度のレボフロキサシン水溶液4μLを添加後37℃で5分間加温し、さらに第二試薬180μLを添加した後、37℃、測光ポイント19〜34における700nmにおける吸光度変化量を測定した。
(II)結果
レボフロキサシン水溶液を測定し、各レボフロキサシン濃度に対する吸光度変化量をプロットした。本測定範囲において、プロット近似式は良好な直線性を示し、本発明の測定方法が試料中の式(I)で示される化合物の定量測定に使用できることが確認された(図15)。
〔実施例10〕ラテックス凝集阻害法(抗体固相化ラテックス系)における合成多価抗原(結合比)の検討
本実施例は、本発明(20)、
「固相に固定化した本発明(1)から本発明(11)のいずれかに記載の抗体に対し、合成多価抗原及び試料中の式(I)で示される化合物を競合的に反応させることを特徴とする、試料中の式(I)で示される化合物の免疫学的測定方法。」
において「合成多価抗原」中のオフロキサシン結合比を検討したものである。
(I)方法と手順
(1)試薬の調製
実施例1(I)(1)免疫用抗原及びスクリーニング用抗原の調製に記載した方法におけるレボフロキサシン溶液として2.2、5.4、8.7、11.9、15.2、18.4、21.7mg/2mLの溶液を使用してBSAとのカップリング反応を行った。得られたカップリング物のLVFX−BSA結合比を実施例1(I)(1)(v)の吸光度測定により求めた。
(2)測定手順
各LVFX−BSAをそれぞれ合成多価抗原として用い、実施例8(I)ラテックス凝集阻害法(抗体固相化ラテックス系)記載の方法で、検体として実施例1(I)(9)競合ELISA法に用いる化合物溶液の調製と同様の方法で調製した濃度0.0μg/mL、16.0μg/mLのレボフロキサシン水溶液を測定した。続いてレボフロキサシン濃度0.0μg/mL、16.0μg/mLの場合の各反応の吸光度差を計算した。結合比に対するグラフを作成した。
(II)結果
得られたカップリング物の結合比を、使用したレボフロキサシン溶液濃度(mg/2mL)⇒結合比の形式で示すと以下であった。2.2⇒3.9、5.4⇒5.0、8.7⇒6.2、11.9⇒8.1、15.2⇒10.2、18.4⇒13.0、21.7⇒16.7。これよりBSAキャリアー1分子と反応させるLVFX量に依存して、LVFX−BSA結合比が増加することが確認された(図16)。
次に、レボフロキサシン濃度0.0μg/mLと16.0μg/mLの場合の吸光度の差を求め結合比に対するグラフを作成したところ、LVFX−BSAの結合比の上昇とともに吸光度差も大きくなった。ラテックス凝集阻害法においては、試料中の抗原非存在(濃度0)の場合の吸光度と試料中に抗原が存在する場合の吸光度差が大きいほど、試料中の抗原を高感度に測定できていると言える。本実施例の条件では、結合比が8〜15である場合に良好な感度が得られ、結合比15以上ではさらに良好であることがわかった(図17)。
本発明は、オフロキサシンに対する抗体及びその製造方法に関するものである。また本発明は、それらの抗体を利用したイムノアッセイ法、例えば、ラジオイムノアッセイ法、エンザイムイムノアッセイ法や粒子凝集阻害イムノアッセイ法などに関する。本発明を用いることによって、強力な抗菌剤であるオフロキサシンの体内存在量を、臨床現場において迅速且つ正確に測定することが可能である。
[寄託生物材料への言及]
(1)抗体番号77201
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成19年9月11日(原寄託日)
平成20年9月5日(原寄託によりブタペスト条約に基づく寄託への移管日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP−11010
(2)抗体番号77202
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成19年9月11日(原寄託日)
平成20年9月5日(原寄託によりブタペスト条約に基づく寄託への移管日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP−11011
(3)抗体番号77204
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成19年9月11日(原寄託日)
平成20年9月5日(原寄託によりブタペスト条約に基づく寄託への移管日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP−11012
(4)抗体番号77205
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成19年9月11日(原寄託日)
平成20年9月5日(原寄託によりブタペスト条約に基づく寄託への移管日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP−11013
(5)抗体番号77206
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成19年9月11日(原寄託日)
平成20年9月5日(原寄託によりブタペスト条約に基づく寄託への移管日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP−11014
(6)抗体番号77207
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成19年9月11日(原寄託日)
平成20年9月5日(原寄託によりブタペスト条約に基づく寄託への移管日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP−11015
(7)抗体番号77209
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター
日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6(郵便番号305-8566)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
平成19年9月11日(原寄託日)
平成20年9月5日(原寄託によりブタペスト条約に基づく寄託への移管日)
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
FERM BP−11016
図1は、抗原固相化ELISA法にてマウス抗血清中の抗体価を測定した結果を示す。 図2は、遊離型レボフロキサシンの添加量とマウス抗血清中の抗体の固相化抗原への反応量(Abs.)の関係を競合ELISA法で測定した結果を示す。 図3は、遊離型レボフロキサシンの添加量と各モノクローナル抗体の固相化抗原への反応性の関係(交差率)を競合ELISA法で測定した結果を示す。 図4は、標準品を用いた競合ELISA法による検量線を示す。 図5は、各血清添加濃度における希釈直線性試験の結果を示す。 図6は、濃度既知検体を用いた競合ELISA法による、測定値と理論値の相関関係を示す。 図7は、競合ELISA法測定系への唾液添加の影響を調べた結果を示す。 図8は、競合ELISA法測定系への血漿添加の影響を調べた結果を示す。 図9は、従来抗体を用いた競合ELISA法測定系への血漿添加の影響を調べた結果を示す。 図10は、標準品を用いた1ステップ競合ELISA法による検量線を示す。 図11は、標準品を用いたラテックス凝集阻害法(抗体固相化ラテックス系)による検量線を示す。 図12は、濃度既知であるレボフロキサシン含有ヒト血清を用いたラテックス凝集阻害法(抗体固相化ラテックス系)による、測定値と理論値の相関関係を示す。 図13は、濃度既知であるレボフロキサシン含有ヒト血漿を用いたラテックス凝集阻害法(抗体固相化ラテックス系)による、測定値と理論値の相関関係を示す。 図14は、ラテックス凝集阻害法(抗体固相化ラテックス系)により測定した、濃度既知であるレボフロキサシン含有唾液中のレボフロキサシン濃度と吸光度変化の相関関係を示す。 図15は、標準品を用いたラテックス凝集阻害法(抗原固相化ラテックス系)による検量線を示す。 図16は、キャリアーとしてBSAを用いて合成多価抗原を調製した際の、原料として用いたレボフロキサシン量とBSAへの結合比の相関関係を示す。 図17は、ラテックス凝集阻害法(抗体固相化ラテックス系)により測定した、BSAへのレボフロキサシン結合比と、検体中のレボフロキサシン量が0.0μg/mLおよび16.0μg/mLであった場合の吸光度差の相関関係を示す。

Claims (8)

  1. 下記式(I)で示される化合物と反応するモノクローナル抗体であって、以下(i)〜(iii)の性質を有するモノクローナル抗体。
    (i)下記式(I)で示される化合物の代謝物であるN-オキシド体及び脱メチル体と交差反応しない
    (ii)シプロフロキサシン及びノルフロキサシンと交差反応しない
    (iii)式(I)で示される化合物との反応性が、ヒト血液試料又はヒト唾液試料の共存により変化しない
  2. 式(I)で示される化合物のS体に強く反応する抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
  3. 式(I)で示される化合物のR体に強く反応する抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
  4. ジクロフェナクナトリウム、ナブメトン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、オキサプロジン、ナプロキセン、イブプロフェン、カルボシステイン、サリチルアミド、アセトアミノフェン、無水カフェイン、メチレンジサリチル酸、プロメタジン及びテオフィリンからなる群から選ばれるいずれか1以上と交差反応しない、請求項1〜3のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
  5. さらに、トスフロキサシン、ガチフロキサシン、スパルフロキサシン、フレロキサシン、ロメフロキサシン、エノキサシン、モキシフロキサシン、及びパズフロキサシンからなる群から選ばれるニューキノロン系抗菌剤のいずれか1以上と交差反応しないか、又は交差反応性が弱い、請求項1〜4のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載のモノクローナル抗体を製造する方法において、以下の(a)〜(c)の工程を有することを特徴とする抗体の製造方法
    (a)式(I)で示される化合物の6位のカルボキシ基を介してキャリアータンパク質と結合させた抗原を非ヒト動物に免疫する工程
    (b)(a)により得られた抗体を、式(I)で示される化合物の代謝物であるN-オキシド体及び脱メチル体、シプロフロキサシン、ノルフロキサシンの存在下及び非存在下、固相に固定化された式(I)で示される化合物と反応させ、両反応性を比較することにより所望の抗体を選抜する工程
    (c)(a)により得られた抗体を、血液試料成分又は唾液試料成分の存在下及び非存在下、固相に固定化された式(I)で示される化合物と反応させ、両反応性を比較することにより、所望の抗体を選抜する工程
  8. 以下の工程(a)〜(c)により得られる、下記式(I)で示される化合物と反応するモノクローナル抗体であって、以下(i)〜(iii)の性質を有するモノクローナル抗体。
    (i)下記式(I)で示される化合物の代謝物であるN-オキシド体及び脱メチル体と交差反応しない
    (ii)シプロフロキサシン及びノルフロキサシンと交差反応しない
    (iii)式(I)で示される化合物との反応性が、ヒト血液試料又はヒト唾液試料の共存により変化しない
    (a)式(I)で示される化合物の6位のカルボキシ基を介してキャリアータンパク質と結合させた抗原を非ヒト動物に免疫する工程
    (b)(a)により得られた抗体を式(I)で示される化合物の代謝物であるN-オキシド体及び脱メチル体、シプロフロキサシン、ノルフロキサシンの存在下及び非存在下、固相に固定化された式(I)で示される化合物と反応させ、両反応性を比較することにより所望の抗体を選抜する工程
    (c)(a)により得られた抗体を血液試料成分又は唾液試料成分の存在下及び非存在下、固相に固定化された式(I)で示される化合物と反応させ、両反応性を比較することにより、所望の抗体を選抜する工程
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