JPH10226075A - インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 被記録媒体上にインクおよびこれを不溶化さ
せる処理液を重ねて着弾させて記録を行う装置におい
て、被記録媒体からはね返えりインク等がヘッドに付着
することを防止する。 【解決手段】 ヘッド３において走査方向に所定の間隔
を有して配されるそれぞれの吐出口から、処理液滴１６
およびブラックインク滴１７を、それぞれ同じ位置で、
走査方向とは、反対の方向に傾けた方向に順次吐出す
る。これにより、被記録媒体の位置Ｘに先行して着弾し
た処理液滴１６に後続のブラックインク滴１７が着弾す
ることによって生じるはね返えり液滴１９はヘッド３の
走査方向とは反対の方向に飛翔することになり、ヘッド
３のフェイス面２にはね返えり液滴が付着することを防
止できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、インクを吐出して
インクの液滴を形成し、それを紙等の被記録材に付着さ
せて記録を行うインクジェット記録装置およびインクジ
ェット記録方法に関し、詳しくは被記録材上で生じる吐
出インク滴のはね返えりに起因したインクジェットヘッ
ドの吐出不良を防止する構成に関するものである。

【０００２】

【背景技術】インクジェット記録装置は、ノンインパク
ト記録法であることから記録時における静粛性に優れ、
また、高速記録が可能である等の種々の利点を有し、ま
た、特に彩度の高いカラー画像が得られるという点で注
目を集めつつある。このようなインクジェット記録装置
の中でも熱エネルギーを利用してインクを吐出する記録
装置は、インクジェットヘッドを半導体デバイスと同様
の製造工程により製造できることからコンパクト化、マ
ルチオリフィス化、高密度オリフィス化等が容易に達成
できるものである。

【０００３】このように比較的多くの利点を有するイン
クジェット記録装置においてカラー画像を記録しようと
する場合には、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブ
ラック等の複数種類のインクそれぞれのヘッドから、記
録しようとする色に応じた種類のインクを吐出しそれら
インクが被記録媒体上の実質的に同一の位置で重なるよ
うにすることにより所望の色ドットを形成することが一
般的に行われている。

【０００４】また、記録画像の耐水性もしくはプリント
品位を向上させることを目的として、インク中の色材を
不溶化又は凝集させる処理液（プリント性向上液ともい
う）をインクに重ねて吐出する記録装置が本願人によっ
て提案されている。この構成によれば、被記録媒体上で
インクと処理液とが混合することにより、インク中の染
料等の色材を不溶化させ耐水性を向上させることができ
るとともに、インクの滲み防止や、濃度上昇等によるプ
リント品位の向上が可能となる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ようにカラー記録を行う場合、又は処理液を用いる場合
のいずれの場合でも被記録媒体上に先行して着弾したイ
ンク又は処理液に後続のインク等が重ねて着弾するた
め、被記録媒体自体に着弾する場合よりも跳ね返りが生
じ易く、また、その量も多くなる。そして、このような
跳ね返りインクもしくは処理液又はインクと処理液が混
合したものはインクジェットヘッドのフェイス面（吐出
口が配設された面）にミスト状となって付着し、これに
よって吐出方向が偏向したり、不吐出を生じる等の問題
が生じ画像品位に悪影響を及ぼすことがあった。

【０００６】特に、インクと処理液とが混合したものが
フェイス面に付着する場合には、フェイス面上で不溶化
し、ワイピングや予備吐出等の回復処理によっても除去
し難いものとなり、より重大な吐出不良等を引き起こす
おそれがある。

【０００７】本発明は、上述の問題点を解消するために
なされたものであり、その目的とするところは、インク
ジェットヘッドのインク又は処理液の跳ね返り量を低減
することにより吐出不良等を防止することが可能なイン
クジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提
供することにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】そのために本発明では、
少なくとも２つの吐出口から液体を吐出するインクジェ
ットヘッドを用い、該インクジェットヘッドの走査に伴
ない前記少なくとも２つの吐出口から順次に吐出される
液体を被記録媒体上に重ねて着弾させることにより記録
を行うインクジェット記録装置であって、前記少なくと
も２つの吐出口の少なくとも一方の吐出口から吐出され
る液体の速度ベクトルは、前記インクジェットヘッドの
走査方向に対して逆方向の速度ベクトル成分を有するこ
とを特徴とする。

【０００９】他の形態では、前記少なくとも２つの吐出
口から順次に吐出される液体のうち、後続の液体の速度
ベクトルは、先行の液体の速度ベクトルよりも、より大
きな前記走査方向に対する逆方向の速度ベクトル成分を
有することを特徴とする。

【００１０】また、少なくとも２つの吐出口から液体を
吐出するインクジェットヘッドを用い、該インクジェッ
トヘッドの走査に伴ない前記少なくとも２つの吐出口か
ら順次に吐出される液体を被記録媒体上に重ねて着弾さ
せることにより記録を行うインクジェット記録方法であ
って、前記少なくとも２つの吐出口の少なくとも一方の
吐出口から吐出される液体の速度ベクトルは、前記イン
クジェットヘッドの走査方向に対して逆方向の速度ベク
トル成分を有することを特徴とする。

【００１１】他の形態では、前記少なくとも２つの吐出
口から順次に吐出される液体のうち、後続の液体の速度
ベクトルは、先行の液体の速度ベクトルよりも、より大
きな前記走査方向に対する逆方向の速度ベクトル成分を
有することを特徴とする。

【００１２】以上の構成によれば、インクジェットヘッ
ドの走査に伴なって、その２つの吐出口から順次に吐出
される液体の少なくとも一方の速度ベクトルが、上記走
査方向とは逆方向の速度ベクトル成分を有するので、後
続して吐出される液体の吐出方向を、被記録媒体に関し
て、上記走査方向とは逆方向側に傾けたものとすること
ができ、これにより、先行の着弾液滴に後続の液滴が着
弾することによって生じるはね返えり液の方向を、イン
クジェットヘッドから遠ざかる方向とすることが可能と
なる。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施形態を詳細に説明する。

【００１４】（第１実施形態）図１は本発明の一実施形
態に係るインクジェットカートリッジを示し、このカー
トリッジはインクジェットヘッドとインクタンクとから
成る。また、図２は図１に示したインクジェットヘッド
の一方の吐出口列に関する部分を一部断面で示す斜視図
である。さらに、図３は上記インクジェットカートリッ
ジを着脱可能に搭載するインクジェット記録装置を示す
斜視図である。

【００１５】図１に示すように、インクジェットカート
リッジ１０はインクジェットヘッド３とインクタンク５
を一体に形成したものである。インクジェット３は２列
の吐出口列を有し、一方の列の各吐出口１Ｂからはブラ
ックインクを吐出し、また他方の列の各吐出口１Ｓから
は上記ブラックインク中の染料を不溶化又は凝集させる
処理液（「プリント性向上液」ともいう）を吐出する。
すなわち、インクジェットヘッド３は構造上２つの部分
に分けられ、それぞれにおいて独立した吐出のための駆
動がなされる。また、インクタンク５においても、ブラ
ックインクおよび処理液をそれぞれ貯留する２つの室が
形成されている。

【００１６】図２は、図１に示したインクジェットヘッ
ド３のうちブラックインクを吐出する部分の構造を詳細
に示す図であり、処理液を吐出する部分も同様の構造で
ある。インクタンク５から供給されるインクは共通液室
２０および各吐出口１ＢＫに対応して設けられる各イン
ク路９に満たされ、インク吐出に伴なって共通液室２０
から吐出に係るインク路９にインクが供給される。各イ
ンク路９において、電極８を介してヒータ７に記録信
号、すなわちヘッド駆動回路からの電気信号が印加さ
れ、これによりヒータ７は発熱しその熱エネルギーがヒ
ータ７近傍のインク路９内に存在するインクに対して付
与される。この熱エネルギーの付与によりインクに膜沸
騰を生じて気泡が発生しその圧力により吐出口１ＢＫか
らインクが吐出される。この吐出口１ＢＫ等の構造は、
インク吐出方向がフェイス面２に対して垂直ではなく図
５にて詳述されている所定の角度となるよう定められ
る。なお、処理液についても同様の構造および原理によ
り吐出が行われる。

【００１７】上述のインクジェットカートリッジは、図
３に示すインクジェット記録装置に着脱自在に搭載され
て用いられる。すなわちインクジェットカートリッジ１
０はキャリッジ２２において着脱自在に装着され、一
方、キャリッジ２２は２本のガイド軸２１により案内さ
れながらベルト２５を介して伝達されるキャリッジモー
タ２４の駆動により走査のための移動をすることができ
る。

【００１８】この移動に伴ないインクジェットヘッド１
０には、装置制御部よりフレキシブルプリント基板１３
を介して記録信号が転送され、これに基づき上述のよう
にヘッド駆動が行われ、インク吐出による記録が行われ
る。この際、ブラックインクが吐出される個所には、処
理液が重ねて吐出される。なお、本発明においては、必
ずしもブラックインクが吐出される個所全てに処理液が
吐出される必要はなく、一部において重なる場合にも本
発明の所定の効果を得ることができる。また、ブラック
インクと処理液の吐出される順序は、はね返えり液の内
容が異なる場合があるとしても、いずれの場合にも本発
明を適用することができる。

【００１９】インクジェットカートリッジ１０の移動範
囲の一方の端部にはヘッド３のフェイス面２と当接して
２列の吐出口列をそれぞれキャッピングするための２つ
のキャップ１１が設けられ、また、キャップ１１には回
復用ポンプ１２が連結し、これにより吸引回復処理を行
うことができる。

【００２０】上記装置において、インクジェットヘッド
３は、その主走査方向に対してほぼ垂直な２列の吐出口
列を並列に１．２７ｃｍの間隔で配置し、各列の複数の
吐出口は４２．５μｍ間隔で配設されている。第一列目
の吐出口からは１滴あたり１５ｎｇの処理液が吐出され
る。一方、第二列目の吐出口からは１滴あたり３０ｎｇ
のブラックインクが吐出される。

【００２１】上述のインク染料を不溶化する処理液は、
一例として以下のようにして得ることができる。

【００２２】すなわち、下記の成分を混合溶解した後、
さらにポアサイズが０．２２μｍのメンブレンフィルタ
（商品名：フロロポアフィルタ、住友電気工業株式会社
製）にて加圧濾過した後、ＮａＯＨでｐＨを４．８に調
整し、処理液Ａ１を得ることができる。

【００２３】 ［Ａ１の成分］ カチオン性化合物の低分子成分 ステアリルトリメチルアンモニウム塩 ２．０部 （商品名；エレクトロストリッパＱＥ、花王株式会社製） または、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド （商品名；ユータミン８６Ｐ、花王株式会社製） カチオン性化合物の高分子成分 ジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウとの共重合体 ３．０部 （平均分子量；５０００） （商品名；ポリアミンスルホンＰＡＳ−９２、 日東紡績株式会社製） チオジグリコール １０部 水 残部 また、上記処理液と混合し不溶化するインクの好適な例
として以下のものを挙げることができる。

【００２４】すなわち、下記の成分を混合し、さらにポ
アサイズが０．２２μｍのメンブレンフィルタ（商品
名：フロロポアフィルタ、住友電気工業株式会社製）に
て加圧濾過してイエロー，マゼンタ，シアン，ブラック
のインクＹ１，Ｍ１，Ｃ１，Ｋ１を得ることができる。

【００２５】 Ｙ１ Ｃ．Ｉ．ダイレクトイエロー１４２ ２部 チオジグリコール １０部 商品名；アセチレノールＥＨ ０．０５部 （川研ファインケミカル株式会社製） 水 残部 Ｍ１ 染料をＣ．Ｉ．アシッドレッド２８９；２．５部に代えた以外はＹ１と 同じ組成 Ｃ１ 染料をＣ．Ｉ．アシッドブルー９；２．５部に代えた以外はＹ１と同じ 組成 Ｋ１ 染料をＣ．Ｉ．フードブラック２；３部に代えた以外は
Ｙ１と同じ組成以上示したそれぞれ処理液（液体組成
物）とインクとの混合において、本発明では、上述した
処理液とインクが被プリント材上あるいは被プリント材
に浸透した位置で混合する結果、反応の第１段階として
処理液中に含まれているカチオン性物質の内、低分子量
の成分またはカチオン性オリゴマーとインクに使用して
いるアニオン性基を有する水溶性染料とがイオン的相互
作用により会合を起こし、瞬間的に溶液相から分離を起
こす。

【００２６】次に、反応の第２段階として、上述した染
料と低分子カチオン性物質またはカチオン性オリゴマー
との会合体が処理液中に含まれる高分子成分により吸着
されるために、会合で生じた染料の凝集体のサイズがさ
らに大きくなり、被プリント材の繊維間の隙間に入り込
みにくくなり、その結果として固液分離した液体部分の
みが記録紙中にしみこむことにより、プリント品位と定
着性との両立が達成される。同時に上述したようなメカ
ニズムにより生成したカチオン物質の低分子成分または
カチオン性オリゴマーとアニオン性染料で形成される凝
集体は粘性が大きくなり、液媒体の動きとともに移動す
ることがないので、フルカラーの画像形成時のように隣
接したインクドットが異色のインクで形成されていたと
しても互いに混じり合うようなことはなく、ブリーデイ
ングも起こらない。また、上記凝集体は本質的に水不溶
性であり形成された画像の耐水性は完全なものとなる。
また、ポリマーの遮蔽効果により形成された画像の耐光
堅牢性も向上するという効果も有する。

【００２７】本明細書において使用される「不溶化」ま
たは「凝集」の用語は、前記第１段階のみの現象また
は、第１段階と第２段階の両方を含んだ現象を意味す
る。

【００２８】また、本発明の実施にあたっては、従来技
術のように分子量の大きいカチオン性高分子物質や多価
の金属塩を使用する必要がないか、あるいは使用する必
要があっても本発明の効果をさらに向上させるために補
助的に使用するだけで良いので、その使用量を最小限に
抑えることができる。その結果として、従来のカチオン
性高分子物質や多価金属塩を使用して耐水化効果を得よ
うとした場合の問題点であった染料の発色性の低下がな
くなるということを本発明の別の効果として挙げること
ができる。

【００２９】なお、本発明を実施するにあたって使用す
る被プリント材については特に制限されるものではな
く、従来から使用されているコピー用紙、ボンド紙等の
いわゆる普通紙を好適に用いることができる。もちろん
インクジェットプリント用に特別に作製したコート紙や
ＯＨＰ用透明フィルムも好適に使用でき、また、一般の
上質紙や光沢紙も好適に使用可能である。

【００３０】本実施形態のインク吐出を説明する前に、
比較のため、本発明者の実験により観察された従来のイ
ンクジェット記録装置におけるインク吐出の様子を図４
を参照して説明する。インクジェットヘッド３が駆動周
波数９．６ｋＨｚで駆動され、これによりヘッドから
１．５ｍｍ離れた被記録媒体上に走査方向において６０
０ｄｐｉの密度でドットを形成する場合、図中位置
（ａ）において処理液滴１６は第一吐出口列１４からヘ
ッドから見て相対的に垂直方向に吐出速度１２ｍ／ｓで
吐出され、１２５μｓ後に、被記録媒体１８上の位置Ｘ
に着弾する。次に、この処理液滴１６の吐出から３１２
５０μｓｅｃ後に、同じ位置（ａ）においてブラックイ
ンク滴１７が処理液滴と同一の吐出方向に吐出速度１２
ｍ／ｓで第二吐出口列１５から吐出され、１２５μｓ後
に被記録媒体１８上の位置Ｘに処理液滴１６に重なって
着弾する。

【００３１】この場合、駆動周波数が９．６ｋＨｚであ
るから記録時のヘッドの移動速度は０．４０６４ｍ／ｓ
となり、これが図４に示すキャリッジ速度ｖ２に相当す
る。また、ｖ１は吐出速度１２ｍ／ｓ、ｖ３は上記２つ
の速度ｖ１，ｖ２を合成して得られる、被記録媒体１８
に対する吐出速度及び吐出方向である。このとき、図４
においてθ＝１．９°となる。

【００３２】図４に示す位置（ｂ）はブラックインク滴
１７が処理液滴１６上に着弾した後の状態を示したもの
である。すなわち、位置Ｘの処理液滴１６上に（９０°
〜θ）＝８８．１°の入射角度でブラックインク滴１７
が着弾すると、入射角度と等しい反射角度８８．１°で
インク（又は処理液が混入したもの）の跳ね返りが発生
する。この跳ね返りインク１９は図中に示した軌跡で走
査中のヘッド３のフェイス面２に付着する。

【００３３】以上示した従来装置における跳ね返りイン
クの付着を解消するための本実施形態の構成を図５を参
照して説明する。

【００３４】図５に示すインクジェットヘッドの解像
度、駆動条件、記録密度、紙間距離は上述の図４に示し
たものと同様である。図５に示す位置（ａ）で、最初に
処理液滴１６は第一吐出口列１４からヘッドに対して相
対的に垂直方向から角度θ（＝３０°）だけ走査方向と
は反対側に傾けた方向に吐出速度ｖ１′に１２ｍ／ｓで
吐出され、１４４μｓｅｃ後に被記録媒体１８上の位置
Ｘに着弾する。次に、処理液滴１６が吐出されてから３
１２５０μｓ経過した後、同位置（ａ）でブラックイン
ク滴１７が吐出される。ブラックインク滴１７のヘッド
に相対的な吐出方向および吐出速度は、上記処理液滴１
６の場合に等しく、従って、１４４μｓｅｃ後に被記録
媒体１８上の位置Ｘに着弾する。

【００３５】この場合において、ヘッドの走査速度ｖ′
２＝０．４０６４ｍ／ｓであるから、ブラックインク滴
の被記録媒体１８に対する吐出方向は速度ｖ′１とｖ′
２の合成により図中ｖ′３で示す方向となり、処理液滴
着弾後３１２５０μｓｅｃ後に被記録媒体１８に対して
６１．７°の角度で処理液滴１６に重なって着弾するこ
とになる。そして、この着弾によるインクの跳ね返りも
被記録媒体１８に対して６１．７°の方向に跳ね返り、
跳ね返りインク滴１９がヘッドのフェイス面２の高さに
到達する時点では、図５に示すとおりヘッド３はその位
置から走査方向に１７３２μｍ進んだ位置（ｂ）に達
し、跳ね返りインク滴はフェイス面２には付着しない。

【００３６】以上のように、本実施形態ではインクおよ
び処理液それぞれに対応する２つの吐出口列を有するイ
ンクジェットヘッドにおいて、インク滴および処理液滴
をヘッドに対してその走査方向とは反対の方向に吐出
し、インク滴の着弾角度を変えることによって、インク
の跳ね返り方向をヘッドのフェイス面から逸らすことが
できる。

【００３７】この結果、インクおよび処理液の跳ね返り
をヘッドのフェイス面に付着することを防止でき、簡潔
な構成で良好に吐出不良の発生を低減することが可能と
なる。

【００３８】（第２実施形態）本実施形態は、上記実施
形態とは異なり、ブラックインクのみその吐出方向を走
査方向とは反対側に傾け、また、処理液およびブラック
インクの吐出位置を相互に異ならせたものである。

【００３９】すなわち、上記第１実施例と同様の駆動条
件で、まず処理液滴１６を第一吐出口列１４からヘッド
に対して相対的に垂直方向に吐出速度１２ｍ／ｓで吐出
する。これにより、１２５μｓｅｃ後に図５に示される
被記録媒体１８上の位置Ｘに着弾させる。次に、ブラッ
クインク滴の吐出角度（図５中のθ）を１５．０°とし
て上記処理液の吐出位置よりもさらに進んだ位置で吐出
を行う。この結果、跳ね返りインク滴１９がヘッド３の
フェイス面２の高さに到達する時点では、ヘッド３はブ
ラックインクの吐出位置から走査方向に８０３．８μｍ
進むため、跳ね返りインク滴はフェイス面には付着せ
ず、また、被記録媒体１８上のＸ位置での処理液とブラ
ックインクとの着弾時間差は３２２３５μｓｅｃとな
る。この着弾時間差は、従来ヘッドでの時間差又は上記
実施形態で述べたヘッドでの着弾時間差に比べて９８５
μｓｅｃ長くなる。

【００４０】更に、処理液滴の吐出角度はそのまま（ヘ
ッドに対して垂直）で、ブラックインク滴の吐出角度
（図５中のθ）を３０．０°にする場合には、跳ね返り
インク滴１９がヘッドのフェイス面２の高さに到達する
時点では、ヘッド３はブラックインクの吐出位置から走
査方向に１７３２μｍ進み、跳ね返りインク滴はフェイ
ス面には付着せず、被記録媒体１８上のＸ位置での処理
液とブラックインクとの着弾時間差は３３３６２μｓｅ
ｃとなる。この着弾時間差は、従来ヘッドでの時間差又
は上記実施形態で述べた着弾時間差に比べて２１１２μ
ｓｅｃ長くなる。

【００４１】以上のように、ブラックインク滴の吐出角
度（θ）をより大きくすることによって、着弾時間差を
長くでき処理液滴の被記録媒体への浸透を更に進めて後
に着弾するブラックインク滴のドットの跳ね返りを低減
することが可能となる。

【００４２】なお、以上の各実施形態の説明から明らか
なように、本発明の適用は必ずしも処理液を用いる場合
に限らず、例えばカラー記録を行う装置において各種の
インクが重ねて吐出される場合等に本発明を適用できる
ことは明らかである。

【００４３】また、本発明を実施するにあたって、使用
するインクは特に染料インクに限るものではなく、顔料
を分散させた顔料インクを用いることもできるし、使用
する処理液はその顔料を凝集させるものを用いることが
できる。前記した無色液体Ａ１と混合して凝集を引き起
こす顔料インクの一例として以下のものを挙げることが
できる。すなわち、下記に述べるようにして、それぞれ
顔料とアニオン性化合物とを含むイエロー，マゼンタ，
シアン，ブラックの各色インク、Ｙ２，Ｍ２，Ｃ２およ
びＫ２を得ることができる。

【００４４】ブラックインクＫ２ アニオン系高分子Ｐ−１（スチレン−メタクリル酸−エ
チルアクリレート、酸価４００、重量平均分子量６，０
００、固形分２０％の水溶液、中和剤：水酸化カリウ
ム）を分散剤として用い、以下に示す材料をバッチ式縦
型サンドミル（アイメックス株式会社製）に仕込み、１
ｍｍ径のガラスビーズをメディアとして充填し、水冷し
つつ３時間分散処理を行った。分散後の粘度は９ｃｐ
ｓ、ｐＨは１０．０であった。この分散液を遠心分離機
にかけ粗大粒子を除去し、重量平均粒径１００ｎｍのカ
ーボンブラック分散体を作製した。

【００４５】 （カーボンブラック分散体の組成） ・Ｐ−１水溶液（固形分２０％） ４０部 ・カーボンブラック ２４部 （商品名；Ｍｏｇｕｌ Ｌ、キャブラック株式会社製） ・グリセリン １５部 ・エチレングリコールモノブチルエーテル ０．５部 ・イソプロピルアルコール ３部 ・水 １３５部 次に、上記で得られた分散体を充分に拡散して顔料が含
有されたインクジェット用のブラックインクＫ２を得
た。最終調製物の固形分は、約１０％であった。

【００４６】イエローインクＹ２ アニオン系高分子Ｐ−２（スチレン−アクリル酸−メチ
ルメタアクリレート、酸価２８０、重量平均分子量１
１，０００、固形分２０％の水溶液、中和剤：ジエタノ
ールアミン）を分散剤として用い、以下に示す材料を用
いて、ブラックインクＫ２の作製の場合と同様に分散処
理を行い、重量平均粒径１０３ｎｍのイエロー色分散体
を作製した。

【００４７】 （イエロー分散体の組成） ・Ｐ−２水溶液（固形分２０％） ３５部 ・Ｃ．Ｉ．ピグメントイエロー１８０ ２４部 （商品名；ノバパームイエロー ＰＨ−Ｇ、 Hoechst Aktiengesellschaft製） ・トリエチレングリコール １０部 ・ジエチレングリコール １０部 ・エチレングリコールモノブチルエーテル １．０部 ・イソプロピルアルコール ０．５部 ・水 １３５部 上記で得られたイエロー分散体を充分に拡散して、顔料
が含有されたインクジェット用のイエローインクＹ２を
得た。最終調製物の固形分は、約１０％であった。

【００４８】シアンインクＣ２ ブラックインクＫ２の作製の際に使用したアニオン系高
分子Ｐ−１を分散剤として用い、以下に示す材料を用い
て、前記したカーボンブラック分散体の場合と同様の分
散処理を行い、重量平均粒径１２０ｎｍのシアン色分散
体を作製した。

【００４９】 （シアン色分散体の組成） ・Ｐ−１水溶液（固形分２０％） ３０部 ・Ｃ．Ｉ．ビグメントブルー１５：３ ２４部 （商品名；ファストゲンブル−ＦＧＦ、 大日本インキ化学工業株式会社製） ・グリセリン １５部 ・ジエチレングリコールモノブチルエーテル ０．５部 ・イソプロピルアルコール ３部 ・水 １３５部 上記で得られたシアン色分散体を充分に攪拌して、顔料
が含有されたインクジェット用のシアンインクＣ２を得
た。最終調製物の固形分は、約９．６％であった。

【００５０】マゼンタインクＭ２ ブラックインクＫ２の作製の際に使用したアニオン系高
分子Ｐ−１を分散剤として用い、以下に示す材料を用い
て、前記したカーボンブラック分散体の場合と同様の分
散処理を行い、重量平均粒径１１５ｎｍのマゼンタ色分
散体を作製した。

【００５１】 （マゼンタ色分散体の組成） ・Ｐ−１水溶液（固形分２０％） ２０部 ・Ｃ．Ｉ．ピグメントレッド１２２ ２４部 （大日本インキ化学工業株式会社製） ・グリセリン １５部 ・イソプロピルアルコール ３部 ・水 １３５部 上記で得られたマゼンタ色分散体を充分に拡散して、顔
料が含有されたインクジェット用のマゼンタインクＭ２
を得た。最終調製物の固形分は、約９．２％であった。

【００５２】（その他）なお、本発明は、特にインクジ
ェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために
利用されるエネルギとして熱エネルギを発生する手段
（例えば電気熱変換体やレーザ光等）を備え、前記熱エ
ネルギによりインクの状態変化を生起させる方式の記録
ヘッド、記録装置において優れた効果をもたらすもので
ある。かかる方式によれば記録の高密度化，高精細化が
達成できるからである。

【００５３】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第４７２３１２９号明細書，同第４７４０
７９６号明細書に開示されている基本的な原理を用いて
行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型，
コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特
に、オンデマンド型の場合には、液体（インク）が保持
されているシートや液路に対応して配置されている電気
熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急
速な温度上昇を与える少なくとも１つの駆動信号を印加
することによって、電気熱変換体に熱エネルギを発生せ
しめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結
果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体（インク）
内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成
長，収縮により吐出用開口を介して液体（インク）を吐
出させて、少なくとも１つの滴を形成する。この駆動信
号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長収縮が
行われるので、特に応答性に優れた液体（インク）の吐
出が達成でき、より好ましい。このパルス形状の駆動信
号としては、米国特許第４４６３３５９号明細書，同第
４３４５２６２号明細書に記載されているようなものが
適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する
発明の米国特許第４３１３１２４号明細書に記載されて
いる条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことが
できる。

【００５４】記録ヘッドの構成としては、上述の各明細
書に開示されているような吐出口，液路，電気熱変換体
の組合せ構成（直線状液流路または直角液流路）の他に
熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開示す
る米国特許第４５５８３３３号明細書，米国特許第４４
５９６００号明細書を用いた構成も本発明に含まれるも
のである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通
するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示
する特開昭５９−１２３６７０号公報や熱エネルギの圧
力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開示す
る特開昭５９−１３８４６１号公報に基いた構成として
も本発明の効果は有効である。すなわち、記録ヘッドの
形態がどのようなものであっても、本発明によれば記録
を確実に効率よく行うことができるようになるからであ
る。

【００５５】さらに、記録装置が記録できる記録媒体の
最大幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録
ヘッドに対しても本発明は有効に適用できる。そのよう
な記録ヘッドとしては、複数記録ヘッドの組合せによっ
てその長さを満たす構成や、一体的に形成された１個の
記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。

【００５６】加えて、上例のようなシリアルタイプのも
のでも、装置本体に固定された記録ヘッド、あるいは装
置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や
装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチ
ップタイプの記録ヘッド、あるいは記録ヘッド自体に一
体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの
記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。

【００５７】また、本発明の記録装置の構成として、記
録ヘッドの吐出回復手段、予備的な補助手段等を付加す
ることは本発明の効果を一層安定できるので、好ましい
ものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに
対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧或
は吸引手段、電気熱変換体或はこれとは別の加熱素子或
はこれらの組み合わせを用いて加熱を行う予備加熱手
段、記録とは別の吐出を行なう予備吐出手段を挙げるこ
とができる。

【００５８】また、搭載される記録ヘッドの種類ないし
個数についても、例えば単色のインクに対応して１個の
みが設けられたものの他、記録色や濃度を異にする複数
のインクに対応して複数個数設けられるものであっても
よい。すなわち、例えば記録装置の記録モードとしては
黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘ
ッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによるか
いずれでもよいが、異なる色の複色カラー、または混色
によるフルカラーの各記録モードの少なくとも一つを備
えた装置にも本発明は極めて有効である。

【００５９】さらに加えて、以上説明した本発明実施例
においては、インクを液体として説明しているが、室温
やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化もし
くは液化するものを用いてもよく、あるいはインクジェ
ット方式ではインク自体を３０℃以上７０℃以下の範囲
内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあ
るように温度制御するものが一般的であるから、使用記
録信号付与時にインクが液状をなすものを用いてもよ
い。加えて、熱エネルギによる昇温を、インクの固形状
態から液体状態への状態変化のエネルギとして使用せし
めることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発
を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化す
るインクを用いてもよい。いずれにしても熱エネルギの
記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状イ
ンクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点では
すでに固化し始めるもの等のような、熱エネルギの付与
によって初めて液化する性質のインクを使用する場合も
本発明は適用可能である。このような場合のインクは、
特開昭５４−５６８４７号公報あるいは特開昭６０−７
１２６０号公報に記載されるような、多孔質シート凹部
または貫通孔に液状又は固形物として保持された状態
で、電気熱変換体に対して対向するような形態としても
よい。本発明においては、上述した各インクに対して最
も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するもので
ある。

【００６０】さらに加えて、本発明インクジェット記録
装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の
画像出力端末として用いられるものの他、リーダ等と組
合せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシ
ミリ装置の形態を採るもの等であってもよい。

【００６１】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によればイ
ンクジェットヘッドの走査に伴なって、その２つの吐出
口から順次に吐出される液体の少なくとも一方の速度ベ
クトルが、上記走査方向とは逆方向の速度ベクトル成分
を有するので、後続して吐出される液体の吐出方向を、
被記録媒体に関して、上記走査方向とは逆方向側に傾け
たものとすることができ、これにより、先行の着弾液滴
に後続の液滴が着弾することによって生じるはね返えり
液の方向を、インクジェットヘッドから遠ざかる方向と
することが可能となる。

【００６２】この結果、跳ね返りインク等がヘッドのフ
ェイス面の特に吐出口近傍に付着することを防止でき、
良好なインクの吐出を可能にし高品位画像の記録を行う
ことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態に係るインクジェットカー
トリッジを示す斜視図である。

【図２】上記インクジェットカートリッジを構成するイ
ンクジェットヘッドの内部構造を一部断面で示す斜視図
である。

【図３】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録
装置を示す斜視図である。

【図４】インクとこれを不溶化する処理液を重ねて吐出
する場合のはね返えりインクの挙動を説明する図であ
る。

【図５】本発明の一実施形態に関し、インクと処理液を
重ねて吐出する場合のはね返えりインクの挙動を説明す
る図である。

【符号の説明】

１ＢＫ，１Ｓ 吐出口 ２ フェイス面 ３ インクジェットヘッド ５ インクタンク ６ Ｓｉ基板 ７ ヒーター ８ 電極 ９ インク路 １０ インクジェットカートリッジ １１ 吸引キャップ １２ 回復ポンプ １３ フレキシブルプリント基板 １４ 第一吐出口列 １５ 第二吐出口列 １６ 処理液滴 １７ ブラックインク滴 １８ 被記録媒体 １９ 跳ね返りインク滴

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも２つの吐出口から液体を吐出
   するインクジェットヘッドを用い、該インクジェットヘ
   ッドの走査に伴ない前記少なくとも２つの吐出口から順
   次に吐出される液体を被記録媒体上に重ねて着弾させる
   ことにより記録を行うインクジェット記録装置であっ
   て、 前記少なくとも２つの吐出口の少なくとも一方の吐出口
   から吐出される液体の速度ベクトルは、前記インクジェ
   ットヘッドの走査方向に対して逆方向の速度ベクトル成
   分を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
2. 【請求項２】 前記少なくとも２つの吐出口から順次に
   吐出される液体のうち、後続の液体の速度ベクトルは、
   先行の液体の速度ベクトルよりも、より大きな前記走査
   方向に対する逆方向の速度ベクトル成分を有することを
   特徴とする請求項１に記載のインクジェット記録装置。
3. 【請求項３】 前記インクジェットヘッドの構造によっ
   て、前記走査方向に対して逆方向の速度ベクトル成分を
   有することを特徴とする請求項１または２に記載のイン
   クジェット記録装置。
4. 【請求項４】 前記少なくとも２つの吐出口の一方から
   吐出される液体はインクであり、他方から吐出される液
   体は前記インクの色材を不溶化又は凝集させる処理液で
   あることを特徴とする請求項１ないし３のいずれかに記
   載のインクジェット記録装置。
5. 【請求項５】 前記インクジェットヘッドは、熱エネル
   ギーを利用してインクに気泡を生じさせ、該気泡の圧力
   によってインクを吐出するものであることを特徴とする
   請求項１ないし４のいずれかに記載のインクジェット記
   録装置。
6. 【請求項６】 少なくとも２つの吐出口から液体を吐出
   するインクジェットヘッドを用い、該インクジェットヘ
   ッドの走査に伴ない前記少なくとも２つの吐出口から順
   次に吐出される液体を被記録媒体上に重ねて着弾させる
   ことにより記録を行うインクジェット記録方法であっ
   て、 前記少なくとも２つの吐出口の少なくとも一方の吐出口
   から吐出される液体の速度ベクトルは、前記インクジェ
   ットヘッドの走査方向に対して逆方向の速度ベクトル成
   分を有することを特徴とするインクジェット記録方法。
7. 【請求項７】 前記少なくとも２つの吐出口から順次に
   吐出される液体のうち、後続の液体の速度ベクトルは、
   先行の液体の速度ベクトルよりも、より大きな前記走査
   方向に対する逆方向の速度ベクトル成分を有することを
   特徴とする請求項６に記載のインクジェット記録方法。