JPH10168660A - 発色鮮明性に優れたポリエステル繊維およびその製造法 - Google Patents

発色鮮明性に優れたポリエステル繊維およびその製造法

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JPH10168660A
JPH10168660A JP32662596A JP32662596A JPH10168660A JP H10168660 A JPH10168660 A JP H10168660A JP 32662596 A JP32662596 A JP 32662596A JP 32662596 A JP32662596 A JP 32662596A JP H10168660 A JPH10168660 A JP H10168660A
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polyester
polyester fiber
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holes
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JP32662596A
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Jinichiro Kato
仁一郎 加藤
Tadashi Tanabe
忠 田辺
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた発色鮮明性、深色性、耐磨耗性、ドラ
イタッチな風合いを有する、生産性に優れたポリエステ
ル繊維とその製造法を提供する。 【解決手段】 式(1)で示されるホスホン酸塩を0.
01〜3重量%を含み、全カルボン酸成分の85モル%
以上がテレフタル酸で構成されたポリエステル繊維であ
って、アルカリ性水溶液により繊維表面が粗面化された
発色鮮明性に優れたポリエステル繊維。 (O=PR(OR’)(O-))n ・M ・・・式(1) (ここで、R、R’は、水素原子または、炭素数が1〜
7までの1価の有機基を示し、Mはアルカリ金属、また
はアルカリ土類金属を示し、nはMのイオンの価数に相
当する自然数である。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた発色鮮明
性、深色性、耐磨耗性、ドライタッチな風合いを有す
る、生産性に優れたポリエステル繊維とその製造法に関
するものである。更に詳しくは、繊維表面が粗面化さ
れ、極めて優れた分散度で分散した、特定の塩を含有す
る発色鮮明性に優れたポリエステル繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル繊維はその優れた特性故
に、最も多く使用されている合成繊維であるが、その反
面、大きな欠点も有する。とりわけ、発色性に関わる問
題は深刻である。近年の婦人アウターにおけるカラート
レンドは鮮明性を強く要求しており、フォーマルウエア
ーにおける黒や、婦人アウターにおける有彩色の深色性
もまた強く望まれている。しかしながら、ポリエステル
繊維はウール、絹等の天然繊維、レーヨン、アセテート
等の再生繊維、アクリル繊維等の合成繊維に比べて、鮮
明性(染色物が鮮やかな色を示す特性)、深色性(染色
物の色に深みがある特性)に劣る。既存ポリエステルポ
リマーは、屈折率が高く、得られる繊維の表面が平滑な
ため、入射光が繊維内部に入りにくく、繊維表面で反射
しやすいためである。
【0003】鮮明深色性の欠点を解消するために、これ
までに多くの改善技術が提案されている。中でも、特に
繊維表面に微細な凹凸を有する鮮明深色糸が開発されて
きた。この技術は、繊維表面の凹凸内で光を繰り返し反
射させることで、正反射光を減らすと同時に、染料への
光の吸収量を増加させることで、鮮明深色性を向上させ
ることを狙ったものである。
【0004】また、ポリエステル繊維は溶融紡糸で作ら
れるために、表面が非常に平滑な構造をしており、特有
のワキシー感(ろうの様なぬめりのある感触)がある。
ワキシー感は、絹のドライ感や、木綿、セルロース繊維
のさらっとした肌ざわりといった天然由来の繊維の風合
いと比較して、一般消費者には好まれない特性である。
そこで、ポリエステル繊維のワキシー感も変えたいとい
う要求もある。その対策の一つとして、ドライタッチの
繊維が提案されている。
【0005】このように、鮮明深色性の向上を狙った凹
凸を有する繊維に関する提案がいくつか知られている。
特開昭55−107512号公報には、粒子径が100
μm以下のシリカゾル、酸化チタン、炭酸カルシウム等
を重合過程で添加し、得られた微粒子を含むポリエステ
ル繊維をアルカリ減量することにより、繊維表面に0.
2〜0.7μmの不規則な凹凸が存在し、その孔の内部
に更に50〜200nmの微細な凹凸を有する繊維が開
示されている。しかしながら、この繊維は微粒子が大き
いために、孔が一つ一つきれいに独立しており、しか
も、比較的大きな径の孔が多く存在するために、鮮明深
色性の効果が小さい。更に、摩擦等の外力によって表面
を覆う凹凸がはがれ、その部分が白くなったり、毛羽に
なったりする欠点を有する。更に、添加された微粒子が
研磨剤として働き、走行糸がガイドを削ったりする問題
が起こる。
【0006】一方、別の微粒子を含有するポリエステル
繊維について、同様の検討がなされている。例えば、特
開昭57−143523号公報には、シリカ表面の水酸
基をメチル基等のアルキル基で封鎖したシリカを含有す
るポリエステル繊維が開示されており、最大幅が0.0
5〜1.5μm、長さ/最大幅の比が1.5以上である
孔を繊維表面に有している。特開平3−16510号公
報には、シリカ、カオリンとポリアルキレングリコール
を含有するポリエステル繊維が知られている。これらの
繊維についても、やはり、孔が実質独立しているため
に、達成される鮮明深色性の程度は不十分であり、摩擦
によって白茶ける問題があった。更に、これらの場合、
乾式法で作られたシリカを用いるために、凝集しやすく
紡糸過程で紡口パックの圧力が上昇しやすい傾向があ
る。パック圧が高い状態で紡糸を続けると、毛羽や糸切
れの頻度が高くなり、生産性が極端に低下する欠点を有
する。
【0007】また、エステル交換触媒として使用するア
ルカリ金属やアルカリ土類金属とトリメチルホスフェー
ト、トリメチルホスファイト等のリン酸エステルや亜リ
ン酸エステルをポリエステルの重合系内で反応せしめて
析出させた、リン酸エステル金属塩や亜リン酸エステル
金属塩の微粒子を含有するポリエステル繊維をアルカリ
減量処理する方法等が多数提案されている(特開昭56
−132039号公報、特開昭57−139118号公
報、特開昭58−13717号公報、特開昭58−13
719号公報、特開昭58−104215号公報等)。
この方法で得られた繊維の表面には実質的に独立した、
繊維軸方向の長さが0.1〜5μm、繊維軸の直角方向
の幅が0.1〜0.3μmの孔が存在する。しかしなが
ら、この繊維の場合も、実質的に孔が一つ一つ独立して
存在するために、発現される鮮明深色性の高さは十分で
はない。また、金属塩を生成させる反応は、温度、水分
量、試薬調整方法や調整してからの保存時間によって極
めて大きな影響を受け、生成する微粒子の量、分散状態
の再現性が極めて悪い。その結果、バッチごとに重合反
応性、鮮明深色性が変化することがわかった。また、重
合釜中でスケールが生じやすく、重合回数を重ねると、
釜の汚れがポリマーに移行する現象が見られた。
【0008】更に、上記の内部析出法による提案の問題
を解決するために、ジルコニウム化合物とトリメチルホ
スフェート等のリン化合物をポリエステル反応系内で反
応せしめて析出させた、リン酸エステルのジルコニウム
塩等の微粒子を含有するポリエステル繊維をアルカリ減
量処理する方法が提案されている(特開昭61−124
673号公報、特開昭61−179367号公報)。こ
の場合、ジルコニウム化合物としては、酢酸ジルコニウ
ムを用いている。ところが、酢酸ジルコニウムは非常に
不安定な化合物なために、酢酸等に代表される酸溶媒に
溶解した状態でしか安定に存在しない。酢酸ジルコニウ
ムを単離しようとすると部分的に分解がおこり、安定な
重合を行うことが極めて困難である。酢酸等の溶媒に溶
解して重合系に添加することはできるが、重合系に酸溶
剤が入ると、重合速度が低下したり、エチレングリコー
ルが二量化したジエチレングリコールがポリマー内に共
重合されるために、耐熱性が低下し、着色したり融点が
低下する等の問題が生じる。また、ジルコニウム化合物
は一般に高価であり、製造コストの点からも好ましくは
ない。
【0009】以上のように、既存の凹凸を有する繊維
は、鮮明深色性の達成度、重合安定性、繊維生産性等に
問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】前記の問題を解決する
ために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、従来知ら
れていない、極めて特殊な微粒子を含有するポリエステ
ル繊維がアルカリ減量を施すことで繊維表面に独特の凹
凸が形成され、その結果、優れた鮮明性、深色性、耐磨
耗性、ドライタッチな風合いを発現する、生産性に優れ
たポリエステル繊維になることを見出した。そして、更
に検討を重ねた結果、従来の鮮明深色繊維における種々
の問題をすべて解決できるポリエステル繊維を見いだす
ことに成功し、本発明に到達した。
【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の第一
は、下式(1)で示されるホスホン酸塩を0.01〜3
重量%を含み、全カルボン酸成分の85モル%以上がテ
レフタル酸で構成されたポリエステルであることを特徴
とするポリエステル繊維であって、アルカリ性水溶液に
より繊維表面が粗面化された発色鮮明性に優れたポリエ
ステル繊維であり、 (O=PR(OR’)(O-))n ・M ・・・式(1) (ここで、R、R’は、水素原子または、炭素数が1〜
7までの1価の有機基を示し、Mはアルカリ金属、また
はアルカリ土類金属を示し、nはMのイオンの価数に相
当する自然数である。) 本発明の第二は、テレフタル酸を主体とするジカルボン
酸または、そのエステル形成性誘導体と少なくとも1種
のグリコールエステルおよびその低重合体を生成させる
第1段階の反応及び、該反応生成物を重縮合させる第2
段階の反応とによって合成されたポリエステルからなる
繊維を製造するに当たり、該ポリエステルの合成が完了
するまでの任意の段階で、水または有機溶剤中でO=P
R(OR’)2と金属塩を完全に、または部分的に反応
させて得られる式(1)で示された化合物を含む溶液を
添加し、その後ポリエステルの重合を行い、溶融紡糸
し、得られたポリエステル繊維をアルカリ水溶液で減量
することを特徴とする上記の発色鮮明性に優れたポリエ
ステル繊維の製造法である。
【0012】本発明で言うポリエステルは、全カルボン
酸成分の85モル%以上がテレフタル酸で構成されたポ
リエステルであり、好ましくは、エチレングリコール、
トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールか
ら選ばれた少なくとも1種類のアルキレングリコールを
主たるグリコール成分とするポリエステルである。ま
た、テレフタル酸成分を15モル%未満の範囲で他のジ
カルボン酸成分で置換したポリエステルであってもよ
く、グリコール成分の一部を主成分以外のグリコールで
置換したポリエステルであってもよい。
【0013】テレフタル酸成分以外のジカルボン酸成
分、主成分以外のグリコール成分としては、得られるポ
リマーの特性を考慮して適宜選択することができる。例
えば、カチオン染料可染性を与えるためには、5−ナト
リウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフ
タル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、5−(テト
ラブチルホスホニウム)スルホイソフタル酸等を0.5
〜10モル%、好ましくは0.5〜3モル%共重合する
ことができる。易染性を付与するためには、アジピン
酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸
を3〜10モル%共重合したり、ポリエチレングリコー
ルや炭素数3〜10程度のジオールを共重合することが
できる。高収縮性を付与するためには、イソフタル酸、
ビス(オキシエチル)ビスフェノールA、ビス(オキシ
エチル)ビスフェノールS等を5〜15モル%共重合す
ることができる。その他に、シクロヘキサン−1、4−
ジメタノール、1、4−シクロヘキサンジカルボン酸、
ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等、
ポリエステルに共重合できるモノマーであれば、特に制
限はない。
【0014】更に、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、
熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外
線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤などを
必要に応じて共重合、または混合してもよい。本発明の
ポリエステル繊維は、下記式(1)で示されるホスホン
酸塩を0.01〜3重量%を含み、全カルボン酸成分の
85モル%以上がテレフタル酸で構成されたものであ
る。
【0015】 (O=PR(OR’)(O-))n ・M ・・・式(1) ここで、R、R’は、水素原子または、炭素数が1〜7
までの1価の有機基を示し、Mはアルカリ金属、または
アルカリ土類金属を示し、nはMのイオンの価数に相当
する自然数である。本発明のポリエステル繊維は、繊維
表面のポリマーとホスホン酸塩を部分的に溶出させるこ
とにより、繊維の表面が粗面化され、鮮明性、深色性、
耐磨耗性、ドライタッチな風合いを有する。これは、本
発明におけるホスホン酸塩が溶出される時に極めて特殊
な表面構造を生成するからである。これらのホスホン酸
塩の構造において、R、R’は、水素原子または、炭素
数が1〜7までの1価の有機基を示す。炭素数が1〜7
までの1価の有機基としては、メチル基、エチル基、n
−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブ
チル基、ターシャリーブチル基、n−ブチル基、n−ペ
ンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、フェニル
基、ベンジル基等の炭化水素基が挙げられ、これらの水
素原子の一部、もしくは全部がハロゲン原子、エステル
基、エーテル基、カルボニル基、スルホン基等で置換さ
れていてもよい。これらのRの内、フェニル基、エチル
基が鮮明深色性の到達度、ホスホン酸の毒性の低さ、入
手のしやすさから最も好ましい。また、同じ理由でR’
は、水素原子、メチル基、エチル基が最も好ましい。M
はアルカリ金属、またはアルカリ土類金属を示し、その
具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ル
ビジウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ス
トロンチウム等が挙げられる。この内、鮮明深色性の到
達度、得られたポリマーの着色性の低さ、熱安定性の観
点から、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムが最も
好ましい。
【0016】これらのホスホン酸塩のポリマーに含有さ
れる割合は、0.01〜3重量%である必要がある。
0.01重量%よりも小さい場合には、鮮明深色性を高
めるのに有効な繊維表面の凹凸を形成することはできな
い。また、3重量%よりも大きい場合には、紡糸収率の
低下が起こる。好ましい含有率の範囲は0.1〜1.5
重量%、更に好ましくは0.2〜1.0重量%である。
【0017】本発明に用いるポリエステルの重合法は特
に限定されるものではない。例えば、テレフタル酸とエ
チレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テ
レフタル酸ジメチルの様なテレフタル酸と低級アルコー
ルのエステルとエチレングリコールとをエステル交換反
応し、テレフタル酸ビス(オキシエチル)及び、その低
重合体を生成させる第1段階の反応と、第1段階の反応
生成物を減圧下加熱して所望する重合度になるまで重縮
合を進める第2段階の反応によって製造される。
【0018】ホスホン酸塩のポリマーへの添加方法とし
ては、重合過程の任意の段階で固体のまま、あるいは溶
剤に溶解または分散させて添加する方法、ポリエステル
チップにブレンドする方法等がある。得られた繊維が十
分な鮮明性、深色性を発現するためには、ホスホン酸塩
の微分散化が必要である。しかしながら、上記の方法で
はホスホン酸塩を微分散させるためには、ホスホン酸塩
の超微粉末化、攪拌の高速化、チップブレンド等の余分
な操作等、煩雑な操作が必要となる。
【0019】そこで、本発明者らは容易にホスホン酸塩
の微分散化、再現性のよさを達成する方法を見いだし
た。その方法がテレフタル酸を主体とするジカルボン酸
または、そのエステル形成性誘導体と少なくとも1種の
グリコールエステルおよびその低重合体を生成させる第
1段階の反応及び、該反応生成物を重縮合させる第2段
階の反応とによって合成されたポリエステルからなる繊
維を製造するに当たり、該ポリエステルの合成が完了す
るまでの任意の段階で、水または有機溶剤中でO=PR
(OR’)2と金属塩を完全に、または部分的に反応さ
せて得られる式(1)で示されたホスホン酸塩を含む溶
液を添加し、その後ポリエステルの重合を完結させる方
法である。この方法は、重合の途中でO=PR(O
R’)2と金属塩を水または有機溶剤中で完全に、また
は部分的に反応させて得られるホスホン酸塩を溶液状
態、あるいは部分的に溶液から析出したまま重合系に添
加するものである。この場合、重合が終了するまでに、
ホスホン酸塩の生成反応が実質的に完結してもよく、未
反応のものが残ってもよい。生成したホスホン酸塩はそ
の重合過程のいずれかの段階で、あるいは、重合が終了
しポリマーが冷却されポリマー層から相分離する形で、
微粒子として析出するのである。この場合、生成する微
粒子は、一次粒子と一次粒子が凝集した二次粒子から構
成されるが、驚くべきことに、いずれの種類の微粒子も
極めて優れた分散状態を示す。尚、二次粒子とは、一次
粒子が識別できる程度に拡大された電子顕微鏡写真で見
て、隣接する一次粒子の重心間距離が一次粒子の長軸の
長さ以内に少なくとも4個存在する粒子群を言う。例え
ば、繊維内部に存在する一次粒子は長軸方向の両端の距
離が1〜100nm、その幅が0.001〜15nmで
あり、一次粒子の数は、50〜3000個/μm2とな
る。
【0020】O=PR(OR’)2と金属塩とを水また
は有機溶剤中で反応させる際に用いる有機溶剤として
は、特に制限はないが、対象ポリエステルの原料として
用いるグリコールが最も好ましい。反応温度としては、
特に制限はないが、通常は室温〜溶剤の沸点であり、発
熱が激しい時は冷却しながら反応させてもよい。O=P
R(OR’)2と金属塩のモル比は通常1:2〜2:1
である。O=PR(OR’)2と金属塩とのモル比がこ
の範囲よりも小さいと鮮明深色性が小さくなってしまう
と同時に、ポリマーが着色してしまう。逆に大きくなる
と、鮮明深色性が小さくなってしまうと同時に、重合触
媒の活性が低下し、重合時間が長くなる。重合時間が長
くなると、ポリマーの熱劣化が激しくなり、生産性も低
下する。好ましくは1:1.3〜1.3:1である。用
いる金属塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金
属塩であり、ぎ酸塩、酢酸塩、しゅう酸塩、安息香酸
塩、フタル酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩、硫酸
塩、硝酸塩、けい酸塩、炭酸塩、硼酸塩、重炭酸塩、塩
化物、臭化物、フッ化物、メチラート、エチラート、グ
リコレート、フェノラート等が挙げられる。特に好まし
くは、酢酸塩、ぎ酸塩、炭酸塩である。これらの金属塩
は1種のみ単独で使用しても、また、2種以上併用して
もよい。
【0021】尚、O=PR(OR’)2と金属塩を水ま
たは有機溶剤中で反応させずに重合系に添加させると、
達成される鮮明深色性の程度がばらついたり、ホスホン
酸塩が凝集したりして紡口パックの急激な圧力上昇を起
こしたりする。鮮明深色性の再現性、到達度、凝集の観
点から、重合系に添加するO=PR(OR’)2と金属
塩の反応率は5〜100%が好ましく、特に、好ましく
は20〜80%である。
【0022】こうして得られたポリエステルは公知の方
法によって繊維化される。形態については、中空部のな
い中実繊維であっても、中空繊維であってもよい。ま
た、断面構造は、丸、それ以外の異形糸や、鞘芯糸、サ
イドバイサイドの一部に用いられてもよい。紡糸方法と
しては、巻き取り速度1500m/min程度で未延伸
糸を、2〜3.5倍程度、延撚する通常法、あるいは、
紡糸−延撚工程を直結した直延法、5000m/min
以上の巻き取り速度の高速紡糸方法を適用することがで
きる。
【0023】本発明のポリエステル繊維は、布帛形成、
精練、熱セット、仮撚加工等を施した後、アルカリ性水
溶液中、その2重量%以上を溶出することで、ポリマ
ー、上述のホスホン酸塩が溶出され、繊維の表面に独特
の形態の凹凸を生成し、優れた鮮明性、深色性、耐磨耗
性、ドライタッチな風合いを発現する。ここで用いるア
ルカリ性水溶液に用いるアルカリ化合物としては、水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニ
ウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウ
ム、次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。好ましくは
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムで
ある。
【0024】アルカリ水溶液の濃度は通常0.01〜4
0重量%であり、好ましくは、0.1〜30重量%であ
る。処理温度は常温〜100℃が好ましく、処理時間は
1分〜4時間である。アルカリ減量時の減量率は、本発
明で示された表面構造を形成させるためには、少なくと
も2重量%溶出させることが必要である。減量率が10
重量%を越えると、繊維あるいは布帛のソフトさが増
し、風合いがよくなる。しかし、減量率が40重量%を
越えると、繊維が細くなりすぎ布帛の強力が低下する。
好ましい範囲としては5〜40重量%であり、更に好ま
しくは10〜30重量%である。
【0025】本発明の発色鮮明性に優れたポリエステル
繊維は、独特の凹凸表面構造を有する。(以下、この繊
維を凹凸繊維と称する) 凹凸繊維の側面全体を3000倍の倍率で見た時、糸幅
を3等分した両側端部は、独立した孔がほとんど観測さ
れず、多数の小さな畝が連なって筋状を呈しており、繊
維の表面を8000倍の倍率で見た時、不規則な凹凸と
共に繊維軸方向に0.001〜5.0μm、繊維軸と直
交する方向に0.001〜3.0μm、最大深さ0.0
1〜0.5μmの、大きさと深さの異なる孔が存在して
おり、繊維の横断面中、含まれる一次粒子の数は50〜
3000個/μm2である。
【0026】この表面構造を達成することで、優れた鮮
明性、深色性、耐磨耗性、ドライタッチな風合いを有す
る繊維となる。上記の表面構造によってこれらの特徴を
発現する理由については定かではないが、不規則な凹凸
がある構造が、可視光が当たる面積を広くし、更に微小
な孔が存在することで、凹凸に入った可視光が更にその
孔内で繰り返し反射し、可視光が染料に吸収される割合
を増やして鮮明深色性が向上されるものと考えている。
また、摩擦に対しての耐久性については、以下のように
その理由を推定している。摩擦による繊維表面のはがれ
は、孔の端部がとがっているために、端部に摩擦物がひ
っかかることで起こるものと考えられる。本発明のポリ
エステル繊維を用いると、大きな凹凸があるために、孔
の端部が表面に飛び出しておらず、そのために、優れた
耐磨耗性を発現するものと思われる。
【0027】凹凸繊維の側面全体を3000倍の倍率で
見た時に糸幅を3等分した両側端部に観察される多数の
小さな畝は、繊維の表面を8000倍の倍率で見た時に
見える不規則な凹凸を斜めから見た状態に相当し、その
畝は凹凸と共に存在する孔よりも大きい。また、孔の大
きさは繊維軸方向に0.001〜5.0μm、繊維軸と
直交する方向に0.01〜3.0μmである。孔の大き
さの測定は、繊維の表面を走査型電子顕微鏡で観察し
(×8000倍)、任意の5か所の25μm2の面に観
察される孔の繊維軸方向、繊維軸と直交する方向の大き
さを測定し、その平均値を算出する。繊維軸方向に0.
001μmより小さい場合や5.0μmより大きい場合
は鮮明深色性の効果が小さい。好ましくは、鮮明深色
性、耐摩擦性、ドライタッチの観点から、繊維軸方向に
0.1〜3.0μm、繊維軸と直交する方向に0.01
〜1.0μmである。
【0028】孔の最大の深さは0.01〜0.5μmで
ある。孔の最大深さの測定は、繊維の断面を透過型電子
顕微鏡で観察し(倍率は、繊維の外周の凹凸の大きさが
肉眼にて十分判別できる値に設定する)、繊維の外周を
観察し、最も深い部分の深さを測定する。0.01μm
より浅いと、鮮明深色性やドライタッチの風合いが十分
達せされず、0.5μmより深いと耐摩擦性が大きく低
下し、毛羽が発生したりする。好ましくは、鮮明深色
性、耐摩擦性、ドライタッチのバランスがよい点で、
0.01〜0.2μm、特に好ましくは、0.01〜
0.1μmである。
【0029】本発明のポリエステル繊維において、微粒
子の好ましい分散状態を以下説明する。これらの分散
は、例えば、本発明請求項2に示した方法で達成され
る。繊維内部に存在する一次粒子の長軸方向の両端の距
離が1〜100nm、その幅が0.001〜15nmで
あり、繊維の横断面中、一次粒子の数が50〜3000
個/μm2である。一次粒子の長軸方向、幅方向の大き
さは、一つ一つの一次粒子が確認できる程度に拡大した
繊維の断面写真(透過型電子顕微鏡による)を取り、5
か所の1μm2の面に観察される個々の一次粒子の長軸
方向及びその幅の平均値から求める。一次粒子の長軸方
向の両端の距離が100nmを越えたり、一次粒子の幅
が15nmを越えると本発明のポリエステル繊維を得る
ことができない。鮮明深色性の観点から、長軸方向の両
端の距離は、好ましくは1〜50nm、その幅は好まし
くは、0.5〜12nmである。また、一次粒子の数
は、50〜3000個/μm2であり、50個/μm2
満では鮮明深色性の効果が低く、3000個/μm2
越える場合は、紡糸時、紡口パックのフィルターに微粒
子が詰まり、安定な紡糸ができなくなる。鮮明深色性と
紡糸安定性の観点から好ましくは、50〜1000個/
μm2である。更に、好ましい微粒子の形態は、二次粒
子が存在し、その二次粒子の数が繊維横断面10μm2
当たり、3〜1000個である。特に好ましくは繊維横
断面10μm2当たり、20〜70である。この二次粒
子は一次粒子が凝集して生成したものであるが、その大
きさが隣接する一次粒子の重心間距離が一次粒子の長軸
の長さ以内のものであるため、二次粒子の最大長は10
0nm、好ましくは50nm未満であり、二次粒子であ
っても十分に細かい粒子群である。
【0030】このように、ある程度の大きさを持った二
次粒子の存在した繊維をアルカリ減量することによっ
て、深い大きな孔が形成される。また、同時には微細な
一次粒子が存在するために、浅い小さな孔が多くでき、
大きな孔と小さな孔が部分的に繋がることで、畝状の凹
凸と孔が共存する本発明の特有の表面構造が形成される
のである。
【0031】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説
明するが、言うまでもなく実施例のみに本発明は限定さ
れるものでない。尚、実施例中の主な測定値は以下の方
法で測定した。 (1)鮮明度(鮮明性を表す尺度)の評価 得られたポリエステル繊維の一口編地を、スコアロール
400を2g/L含む温水を用いて、70℃、20分間
精練処理した。次に、5重量%の水酸化ナトリウム水溶
液に精練した編地を加え、沸騰状態で重量減少率が20
%になるまで、アルカリ減量を行った。
【0032】減量後、ミケロンポリエステルレッドFL
(三井東圧社製)を用い、ニッカサンソルト7000
(日華化学社製)0.5g/L、酢酸0.25mL/L
と酢酸ナトリウム1g/Lを加え、浴比1:50で13
0℃、60分間染色を行った。この場合、染料濃度を
2、4、8、16%owfの4点変えて染色を行った。
染色後、常法により還元洗浄を行い、乾燥後測色した。
【0033】スガ試験機社製カラーコンピュータ(SM
ー4)を用い、染料濃度を変えて得られた4種の染色物
の色濃度C*と鮮明度B*を測定した。測定結果を縦軸に
*、横軸にC*を取り、縦軸、横軸の目盛りをそれぞれ
2〜6、9〜15とするグラフを作成した。この際に縦
軸と横軸の長さをそれぞれ12cm、20cmとした。
得られた4点のデータをプロットして得られる曲線は、
右上に凸となる形状を示すが、この曲線(縦軸の目盛
り、横軸の目盛り)から(2、9)の点までがもっとも
長くなる距離(単位:cm)を鮮明度と定義する。鮮明
度は数字が大きいほど鮮明性が高いことを示す。こうし
て得られる鮮明度は、人が見て感じる鮮明性と極めてよ
い相関がある。 (2)深色度(深色性を表す尺度)の評価 (1)と同様に精練とアルカリ減量を行った一口編地を
スミカロンブラックSーBF(住友化学社製)を用い、
(1)と同じ処方の染色助剤を使用して染色を行った。
染色後、常法により、還元洗浄を行い、乾燥後測色し
た。本発明においては、このL値を深色度と定義する。
深色度は数字が小さいほど深色性が高いことを示す。こ
うして得られる深色度は、人が見て感じる深色性と極め
てよい相関がある。 (3)耐磨耗性の評価 (2)で得られた染色物を学振式摩擦試験機を用い、当
て布として、JIS−L−0803記載の呼番号10番
のポリエステル繊維の平織物を用い、700gの加重を
掛けて200回摩擦した。処理前後の染色物の退色度を
1〜5級(級が高いほど良い)で評価した。 (4)ドライタッチの評価 固定した5名が(2)の染色物をさわって、ドライタッ
チを1〜5級(級が高いほど良い)で評価した。
【0034】
【実施例1】テレフタル酸ジメチル1294部、エチレ
ングリコール777部、エステル交換触媒として、酢酸
カルシウム1水和塩1.04部を仕込み、150℃から
240℃に徐々に加熱し、3時間を要してメタノールを
留出しつつ、エステル交換反応を行った。ついで、予め
フェニルホスホン酸ジメチル6.32部と酢酸カルシウ
ム1水和塩2.30部をエチレングリコール90部中、
120℃で4時間反応させて得られた溶液(以下、ホス
ホン酸誘導体と金属塩をエチレングリコールで反応させ
た溶液をA液と呼ぶ)を添加し、更に重縮合触媒として
三酸化アンチモン0.64部を添加した。30分間攪拌
した後、徐々に減圧していき、最終的には0.1Tor
rで、290℃、2時間40分反応を行い、ηsp/c
=0.73の改質ポリエステルをチップ形態で得た。A
液をガスクロマトグラフィーとNMRを用いて分析した
ところ、仕込んだフェニルホスホン酸ジメチルに対し、
フェニルホスホン酸モノメチルのカルシウム塩が78%
含まれていることがわかった。 得られたポリマーチッ
プを160℃で100L/minの窒素気流下、20時
間乾燥させた後、24個の丸断面の孔を持つ紡口を用
い、紡糸温度290℃、紡糸速度1500m/minで
未延伸糸を作成した。次いで、得られた未延伸糸をホッ
トロール80℃、ホットプレート160℃、延伸倍率
3.2倍、延伸速度800m/minで延撚を行い、5
0d/24fの延伸糸を得た。強度は4.5g/d、伸
度は38%であった。この繊維のNMR分析により、フ
ェニルホスホン酸モノメチルのカルシウム塩が、0.5
重量%含まれていることがわかった。
【0035】得られた染色物の鮮明度、深色度は、1
9.3、17.3であり、極めて優れた鮮明深色性を示
した。これらの鮮明深色性はバッチ数を重ねてもほとん
ど変化はなかった。また、耐摩擦性、ドライタッチは共
に5級であった。染色後の糸の表面と輪切りした断面を
走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡を用いて観察し
た。繊維の側面全体を3000倍の倍率で見た時、糸幅
を3等分した両側端部は、独立した孔がほとんど観測さ
れず、多数の小さな畝が連なって筋状を呈していた。8
000倍で観察すると繊維の表面には、繊維軸方向に
0.01〜3μm、繊維軸と直交する方向に0.01〜
0.4μm、最大深さ0.05〜0.4μmの大きさと
深さの異なる孔が実質的に独立することなく互いに繋が
った連続した孔が認められた。こうした孔はほぼ繊維全
面を覆っていた。また、断面写真を拡大したところ、針
状の一次粒子が微分散していることが認められた。一次
粒子は長軸方向に1〜40nm、その幅は4.5nmで
あった。二次凝集粒子が繊維横断面10μm2当たり、
123個であった。これらを表1にまとめて記載する。
【0036】
【比較例1】実施例1で、フェニルホスホン酸モノメチ
ルのカルシウム塩を含まないポリエチレンテレフタレー
ト繊維を用い、実施例1と同様の測定を行った。得られ
た染色物の鮮明度、深色度は17.2、19.7であ
り、鮮明深色性に乏しいものであった。繊維の側面全体
を3000倍の倍率で見た時、糸幅を3等分した両側端
部は、独立した孔がまばらに観測されたが、実施例1の
ような畝は見えなかった。8000倍で観察すると繊維
の表面には、繊維軸方向に0.2〜2.5μm、繊維軸
と直交する方向に0.1〜0.6μm、最大深さ0.0
6μm以下の大きさと深さの異なる孔が独立に3個/μ
2以下存在していた。また、耐磨耗性は5級である
が、ドライタッチは1級であった。
【0037】
【比較例2】フェニルホスホン酸ジメチルの代わりに、
トリメチルホスフェートを用い、実施例1と同様の製法
によりポリマーを得た。このポリマーから実施例1と同
様の製法によりポリエステル繊維を得、実施例1と同様
に測定すると、得られた染色物の鮮明度、深色度はそれ
ぞれ19.0、17.6であった。耐磨耗性は3級、ド
ライタッチは共に4級であった。同様の実験を繰り返し
たところ、耐磨耗性の再現性はあったが、鮮明度、深色
度はそれぞれ19.3〜18.5、17.3〜17.
8、とある範囲にばらつくことが解った。また、重合し
ない場合もあった。この理由については以下のように推
定している。トリメチルホスフェートは沸点が197℃
である。通常、エステル交換反応終了後の温度は、20
0℃を越えるために、未反応のトリメチルホスフェート
が部分的に蒸発するために、その蒸発程度がバッチごと
に変わるために、得られる染色物の鮮明深色性が変化す
るものと考えられる。鮮明度、深色度がそれぞれ19.
0、17.6の場合、繊維中に含まれるリンの量を蛍光
X線で調べたところ、理論量の55%しかなかった。こ
の結果はトリメチルホスフェートの蒸発を裏付けるもの
である。ちなみに、実施例1のポリマー中のリン量は理
論値通りであった。これはフェニルホスホン酸ジメチル
の沸点が270℃と高いために、蒸発が起こらないこと
による。
【0038】繊維の側面全体を3000倍の倍率で見た
時、糸幅を3等分した両側端部は、独立した孔が観測さ
れ、多数の小さな畝が連なって筋状を呈していた。ま
た、8000倍で観察すると、繊維軸方向に0.3〜
6.0μm、繊維軸と直交する方向に0.1〜0.5μ
m、最大深さ0.08〜0.5μmの大きさと深さの異
なる孔が実質的に独立して存在していた。こうした孔は
繊維全面の50%程度覆っていた。また、断面写真を拡
大したところ針状の一次粒子は微分散していることが認
められた。一次粒子は長軸方向に5〜120nm、その
幅は0.01〜10nm程度であった。二次凝集粒子は
ほとんど認められなく、実施例1に比べて大きな針状結
晶がまばらに存在していた。
【0039】
【比較例3】酢酸カルシウムの代わりに、酢酸ジルコニ
ウム(15%酢酸溶液を蒸留して得られたもの)を用い
て実施例1と同様の製法によりポリマーを得た。このポ
リマーから実施例1と同様の製法によりポリエステル繊
維を得、実施例1と同様に測定すると、得られた染色物
の鮮明度、深色度は18.3、18.3であった。ま
た、耐磨耗性、ドライタッチは共に4級であった。
【0040】繊維の側面全体を3000倍の倍率で見た
時、糸幅を3等分した両側端部は、独立した孔が観測さ
れ、多数の小さな畝が連なって筋状を呈していた。ま
た、8000倍で観察すると、繊維の表面には、繊維軸
方向に0.3〜5μm、繊維軸と直交する方向に0.1
〜0.4μm、最大深さ0.1〜0.4μmの大きさと
深さの異なる孔が実質的に独立して存在した。こうした
孔はぼ繊維全面の60%を覆っていた。
【0041】
【比較例4】乾式法で作った一次粒子径16nmのシリ
カを0.5重量%含むポリエステル繊維を実施例1に準
じて作成した。得られた染色物の鮮明度、深色度は1
7.9、18.1であり、耐磨耗性、ドライタッチは共
に2級であった。繊維の側面全体を3000倍の倍率で
見た時、糸幅を3等分した両側端部は、独立した孔が観
測され、実施例1のような多数の小さな畝は観測できな
かった。また、8000倍で観察すると、繊維の表面に
は、繊維軸方向に0.3〜8.0μm、繊維軸と直交す
る方向に0.1〜0.5μm、最大深さ0.08〜0.
2μmの大きさと深さの異なる浅くて大きな孔が独立し
て存在していた。こうした孔は繊維全面の50%程度覆
っていた。一次粒子は球状に凝集しており、その径は5
0〜100nmと大きなものであった。
【0042】
【実施例2〜4】微粒子の種類、量を変えて実施例1を
繰り返した。その結果を表1に示す。いずれの場合も良
好な鮮明深色性、耐磨耗性、ドライタッチを示した。ま
た、繊維の側面全体を3000倍の倍率で見た時、糸幅
を3等分した両側端部は、独立した孔が観測され、多数
の小さな畝が連なって筋状を呈していた。
【0043】
【実施例5】実施例1において、A液の代わりにベンジ
ルホスホン酸モノメチルのナトリウム塩の0.1重量%
エチレングリコール溶液をエステル交換反応終了後添加
した。この場合、ホスホン酸塩がポリマーに対して0.
7重量%になるように添加した。このポリマーから実施
例1記載の製法で繊維を得、実施例1と同様の方法で測
定すると、得られた染色物の鮮明度、深色度は18.
8、17.6であり、耐磨耗性は5級、ドライタッチは
共に4級であった。
【0044】
【実施例6】テレフタル酸ジメチル1500部、エチレ
ングリコール900部、酢酸カルシウム1水和塩0.9
部を用い、常法によりエステル交換反応を行った。フェ
ニルホスホン酸ジメチル5.2部、酢酸カルシウム1水
和塩15.5部をエチレングリコール200部に溶解
し、さらに熱安定剤としてトリメチルホスフェート4.
9部を加え、これをA液として実施例1を繰り返した。
A液中には、フェニルホスホン酸モノメチルのカルシウ
ム塩が85%含まれていた。得られた糸の白度は極めて
優れていた。
【0045】得られたポリマーから50d/24fの繊
維を作成した。この繊維を実施例1と同様の方法で測定
すると、鮮明度は19.4、深色度は17.0であっ
た。また、耐磨耗性、ドライタッチは共に5級であっ
た。繊維の側面全体を3000倍の倍率で見た時、糸幅
を3等分した両側端部は、独立した孔がほとんど観測さ
れず、多数の小さな畝が連なって筋状を呈していた。8
000倍で観察すると、繊維の表面には繊維軸方向に
0.01〜3μm、繊維軸と直交する方向に0.01〜
0.3μm、最大深さ0.05〜3μmの大きさの大き
さと深さの異なる孔が存在し、いくつかの孔が互いに繋
がった、連続した凹凸がほぼ繊維全体を覆っていた。一
次粒子の密度は120個/μm2であった。
【0046】
【実施例7】テレフタル酸ジメチルの2モル%を5−ナ
トリウムスルホイソフタル酸ジメチルに置き換えた以外
は実施例1を繰り返した。得られたポリマーはカチオン
染料に対して良好な染色性を示した。得られたポリマー
から50d/24fの繊維を作成した。この繊維を実施
例1と同様の方法で測定すると、鮮明度は19.4、深
色度は17.5であった。また、耐磨耗性、ドライタッ
チは共に5級であった。
【0047】繊維の側面全体を3000倍の倍率で見た
時、糸幅を3等分した両側端部は、独立した孔がほとん
ど観測されず、多数の小さな畝が連なって筋状を呈して
いた。8000倍で観察すると、繊維の表面は、繊維軸
方向に0.1〜5μm、繊維軸と直交する方向に0.0
1〜0.3μm、最大深さ0.5〜3μmの大きさと深
さの異なる孔が存在し、いくつかの孔が互いに繋がっ
た、連続した孔がほぼ繊維全体を覆っていた。一次粒子
の密度は150個/μm2であった。一次粒子の形状は
実施例1と同じであった。二次凝集粒子は繊維横断面1
0μm2当たり150個であった。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】本発明は、特定のホスホン酸塩が優れた
分散度で分散したポリエステル繊維であって、繊維の表
面に特異なミクロクレーターが形成され、優れた発色鮮
明性、深色性、耐磨耗性、ドライタッチな風合いを有す
る、生産性に優れたポリエステル繊維とその製造法を提
供するものである。エステル100%、あるいはセルロ
ース繊維との混用織編物として、特に婦人アウター分野
への応用へ極めて有用である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】式(1)で示されるホスホン酸塩を0.0
    1〜3重量%を含み、全カルボン酸成分の85モル%以
    上がテレフタル酸で構成されたポリエステルであること
    を特徴とするポリエステル繊維であって、アルカリ性水
    溶液により繊維表面が粗面化された発色鮮明性に優れた
    ポリエステル繊維。 (O=PR(OR’)(O-))n ・M ・・・式(1) (ここで、R、R’は、水素原子または、炭素数が1〜
    7までの1価の有機基を示し、Mはアルカリ金属、また
    はアルカリ土類金属を示し、nはMのイオンの価数に相
    当する自然数である。)
  2. 【請求項2】テレフタル酸を主体とするジカルボン酸ま
    たは、そのエステル形成性誘導体と少なくとも1種のグ
    リコールエステルおよびその低重合体を生成させる第1
    段階の反応及び、該反応生成物を重縮合させる第2段階
    の反応とによって合成されたポリエステルからなる繊維
    を製造するに当たり、該ポリエステルの合成が完了する
    までの任意の段階で、水または有機溶剤中でO=PR
    (OR’)2と金属塩を完全に、または部分的に反応さ
    せて得られる式(1)で示された化合物を含む溶液を添
    加し、その後ポリエステルの重合を行い、溶融紡糸し、
    得られたポリエステル繊維をアルカリ水溶液で減量する
    ことを特徴とする請求項1記載の発色鮮明性に優れたポ
    リエステル繊維の製造法。
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