JPH0910357A - ゴルフボール及びその製法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 多重層ゴルフボール８及びその製法を提供す
ることにある。 【解決手段】 本発明多重層ゴルフボール８は、コア１
０と、イオノマーから成り約６５以下のシヨアＤ硬さを
持つ内側カバー層１４と、この内側カバー層１４とは異
なる組成を持ちイオノマーから成り約６５より大きいシ
ヨアＤ硬さを持つ外側カバー層１６とを備えている。内
側カバー層１４の厚さと外側カバー層１６の厚さとの和
は０．０９０ｉｎより大きい。このゴルフボールを作る
製法も得られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、一般にゴルフボール、
ことに多重層のイオノマーカバーを持つゴルフボールに
関する。

【０００２】

【背景技術】ゴルフボールは従来、互いに異なる３種の
群すなわちワンピース、ツーピース及びスリーピースの
ボールに類別されている。従来のツーピースゴルフボー
ルは、異なる種類の材料から成るカバ−をまわりに成形
した中実の弾性コアを備えている。スリーピースゴルフ
ボールは従来、液体又は固体の中心部とこの中心部のま
わりのエラストマー質巻線と成形カバーとを備えてい
る。ツーピースボール及びスリーピースボールの中実の
コアは、ポリブタジエンから作ることが多く、又成形カ
バーは一般に天然、バラタ、合成バラタ又はイオノマー
樹脂から作る。

【０００３】イオノマー樹脂は、インターチェーンイオ
ン結合を含む重合体である。イー・アイ・デュポン・ド
・ヌムーアズ・エンド・カムパニ（Ｅ．Ｉ．ＤｕＰｏｎ
ｔｄｅ Ｎｅｍｏｕｒｓ ＆ Ｃｏｍｐａｎｙ）から商
品名「サーリン^TM（Ｓｕｒｌｙｎ^TM」として又エクソン
・コーポレイション（Ｅｘｘｏｎ Ｃｏｒｐｏｒａｔｉ
ｏｎ）から商標「エスコア^TM（Ｅｓｃｏｒ^TM）そして商
品名「イオテク（Ｉｏｔｅｋ）」（米国特許第４，９１
１，４５１号明細書参照）として市販されている種種の
イオノマ−樹脂は、それぞれの靱性、耐久性及び飛び特
性によって、伝統的「バラタ」（トランスポリイソプレ
ン、天然又は合成）ゴムより勝った、ゴルフボールカバ
ーの構成のための選択材料になっている。一層柔らかい
バラタカバーは、プレイ可能性は向上するが、反復プレ
イに必要な耐久性（耐切断性及び耐摩耗性、耐疲労性
等）に欠ける。

【０００４】イオノマー樹脂は、一般にエチレンのよう
なオレフインとアクリル酸、メタクリル酸又はマレイン
酸のような不飽和カルボン酸の金属塩とのイオン共重合
体である。ナトリウム又は亜鉛のような金属のイオン
は、共重合体内の酸基の若干の部分を中性化するのに使
われ、バラタに勝ったゴルフボールカバー構成に対し性
質の向上したすなわち耐久性にすぐれた熱可塑性エラス
トマーが得られる。

【０００５】基体樹脂の金属陽イオンの種類及び量、分
子量及び組成（すなわちエチレンとメタクリル酸基及び
／又はアクリル酸基との相対含量）と補強剤等のような
付加的成分とによって変る広範囲の性質を持つ、エクソ
ン及びデュポン製のイオノマーには現在５０以上の商業
等級のものがあるが、所望の組合せのプレイ可能特性を
持つゴルフボールカバー組成を開発するのに多くの研究
が継続して行われている。

【０００６】ゴルフボールは、典型的にはその寸法、重
量、組成、デインプルパターン、圧縮性、硬さ、耐久
性、スピン速度及び反発係数（ＣＯＲ）によって表示す
る。ゴルフボールのＣＯＲを測定する１方法では、ボー
ルを与えられた速度で硬い大きい表面に向かい推進しこ
のボールの出入速度を測定する。ＣＯＲは出速度の入速
度に対する比率であり０及び１の間の小数として表示さ
れる。

【０００７】ゴルフボールのＣＯＲには米国ゴルフ協会
の制限はないが、ゴルフボールの初期速度は２５０±５
ｆｔ／ｓｅｃを越えてはならない。従って初期速度に対
する工業的目標は２５５ｆｔ／ｓｅｃであり、工業界で
はこの制限を破らないでＣＯＲを最大にするようにして
いる。

【０００８】米国特許第４，４３１，１９３号及び同第
４，９１９，４３４号の各明細書には多重層ゴルフボー
ルについて記載してある。米国特許第４，４３１，１９
３号明細書には、硬い内側カバー層及び柔らかい外側カ
バー層を持つ多重層ボールについて記載してある。米国
特許第４，９１９，４３４号明細書には２重の熱可塑性
カバー層から作った０．４ないし２．２ｍｍの厚さのカ
バ−を持つゴルフボールについて記載してある。

【０００９】

【発明の開示】本発明の目的は、柔軟な圧縮性を持つと
共に良好な耐久性及び高い反発係数を保持するゴルフボ
ールを提供することにある。

【００１０】本発明の他の目的は、同様な圧縮性及び表
面硬さを持つ他のゴルフボールに比べて良好な反発係数
を持つゴルフボールを提供することにある。

【００１１】さらに本発明の目的は、柔軟な圧縮性及び
適度なスピン速度を持つ大形寸法のゴルフボールを提供
することにある。

【００１２】なお本発明の他の目的は、適度なスピン速
度及び良好な搬送距離を持つと共に比較的柔軟な圧縮性
を保持する柔軟なゴルフボールを提供することにある。

【００１３】本発明の他の目的は、前記した性質を持つ
ゴルフボールを作る方法を提供することにある。

【００１４】好適な形の本発明は、コアと、イオノマー
から成り約６５以下のシヨアＤ硬さを持つ内側カバー層
と、イオノマーから成り内側カバー層のシヨアＤ硬さよ
り硬く少なくとも約６０のシヨアＤ硬さを持つ外側カバ
ー層とにより構成したゴルフボールにある。内側カバー
層の厚さと外側カバー層の厚さとの和は少なくとも０．
０９０ｉｎである。

【００１５】本発明のゴルフボールは、少なくとも０．
７８０、なおなるべくは少なくとも０．７９０、又最も
なるべくは少なくとも約０．８００のＣＯＲを持つのが
よい。本発明のとくに好適な形では、ゴルフボールは少
なくとも１．７０ｉｎの直径を持つ最大寸法のボールで
ある。本ゴルフボールは４３．０ないし４６．０ｇの範
囲の重量を持つ。内側カバー層及び外側層の厚さの和に
対する本ボールの直径の比率は、１９対１より小さくな
おなるべくは約１８対１より小さいのがよい。本発明の
好適な実施例によるゴルフボールのＰＧＡ圧縮性は約１
１０に過ぎなくなるべくは約１０７に過ぎなくなおなる
べくは約１００に過ぎない。

【００１６】本発明の好適な形は、多重層ゴルフボール
を作る方法にある。本方法は、（１）ゴルフボールコア
を用意し、（２）イオノマーから成り約８０以下のシヨ
アＤ硬さを持つ内側カバー層を前記コアのまわりに形成
し、（３）少なくとも約６０のシヨアＤ硬さを持ち前記
内側カバー層より硬い外側カバー層を前記内側カバー層
のまわりに形成することから成っている。内側カバー層
の厚さと外側カバー層の厚さとの和は少なくとも０．０
９０ｉｎである。

【００１７】従って本発明は、複数の工程と、このよう
な工程のうちの１つ又は複数の工程のその他の各工程に
対する関係と以下に詳細に述べる説明で表示した各要素
の特長、性質及び関係を処理する項目とにある。

【００１８】

【実施例】本発明によるゴルフボールは、中心のコアと
少なくとも２重のイオノマー層から成る或る厚さのカバ
ーとを持つ。内側カバー層は外側カバー層より柔らか
い。この種の構造により柔軟な圧縮性及び低いスピンの
好適な組合わせを持つと良好なＣＯＲを保持するゴルフ
ボールが得られる。

【００１９】添付図面には本発明によるゴルフボール８
を示してある。ボール８は少なくとも１．６８ｉｎの直
径を持つのがよい。本発明は１．７０ｉｎ又はそれ以上
の直径を持つゴルフボールの場合にとくに有用である。

【００２０】本ゴルフボールは中心の中実コア１０と多
重層カバー１２とを備えている。多重層カバー１２は、
内側カバー層１４とデインプル１８を持つ外側カバー層
１６とを備える。内側カバー層１４は、イオノマーから
成り外側カバー層１６より柔らかい。内側カバー層１４
を形成するのに使われるイオノマーは、単一の種類のイ
オノマー又は２種類或いはそれ以上の種類のイオノマー
の配合物でよい。硬化及び／又は軟化改質剤をイオノマ
ーと配合することができる。内側カバー層は、約６５又
はそれ以下、なるべるは２０ないし６３又は最もなるべ
くは４０ないし６０のショアＤ硬さ（ＡＳＴＭＤー２２
４０）を持つ。

【００２１】本発明の好適な形では、内側カバー層は少
なくとも１０％だけ中性化した平均１５重量％又はそれ
以下の酸含量を持つイオノマーから成っている。本発明
のとくに好適な形では、内側カバー層１４は２種類のイ
オノマーから成る配合体から成る。この配合体の一方の
成分は、陽イオンで少なくとも部分的に中性化された≧
１５重量％の酸基を含む、エチレンーアクリル酸又はエ
チレン−メタクリル酸共重合体であり、又他方の種類の
イオノマーは、エチレンとアクリル酸又はメタクリル酸
と、ブチルアクリレート又はメチルアクリレートのよう
な軟化三元モノマーとから成り約１５以下の全重量％の
酸含量を生ずる三元ポリマーである。

【００２２】外側カバー層１６もまたイオノマーから成
っている。外側層１６は、単一の種類のイオノマー、又
は２種類或はそれ以上のイオノマーの配合体を含むこと
ができる。さらに硬化及び／又は軟化改質剤を加えるこ
とができる。外側カバー層は、内側カバー層より硬くそ
して約６０以上、なるべくは６５以上、又最もなるべく
は６８以上のシヨアＤ硬さ（ＡＳＴＭ Ｄー２２４０）
を持つ。本発明のとくに好適な形では、外側カバー層
は、少なくとも部分的に中性化した少なくとも１６重量
％の酸基を持つイオノマーを含む。

【００２３】内側層及び外側層は一緒に、０．０９０な
いし０．２５０ｉｎ、なるべくは約０．１０ないし０．
２０ｉｎ、又最もなるべくは約０．１１ないし０．１５
ｉｎの厚さを持つカバーを形成する。内側カバー層は
０．０２５ないし０．２００ｉｎ、なるべくは０．０５
０ないし０．１００ｉｎの厚さを持つのがよい。外側カ
バー層は約０．０２５ないし０．２００ｉｎ又なるべく
は０．０５０ないし０．１００ｉｎの厚さを持つのがよ
い。ボール直径のカバー厚さ、すなわち内側カバー層及
び外側カバー層の厚さの和に対する比率は、約１９対１
を越えずなるべくは１７対１を越えず又は最もなるべく
は１５対１を越えない。

【００２４】内側及び外側のカバー層の硬さとこれ等の
層の組成及び厚さとは、少なくとも０．７８０なるべく
は少なくとも０．７９０最もなるべくは少なくとも０．
８００のＣＯＲを持つゴルフボールを得るのに適当であ
る。本発明ゴルフボールは、３０ないし１１０、なるべ
くは５０ないし１０７、最もなるべくは６０ないし９０
の全ＰＧＡ圧縮性を持つ。ゴルフボールのスピン速度
は、ツーピース硬質カバーボール［１９９４年製トップ
・フライト（Ｔｏｐ−Ｆｌｉｔｅ）ＺＬ］に対し約７１
００ｒｐｍのスピン速度を生じ又同じクラブを使い糸巻
きバラタ被覆ボール［１９９４年製タイトリスト．ツア
ー（Ｔｉｔｌｅｉｓｔ−Ｔｏｕｒ）１００］に対し約９
７００ｒｐｍのスピン速度を生ずる、打撃角、ボール速
度及びティー位置の条件のもとで９番アイアンで打った
ときに約８０００ｒｐｍに過ぎないのがよい。この比較
的低いスピン速度により、向上した精度に対し減小した
側方スピンと向上したころがり距離に対し減小したバッ
クスピンとの利点が得られる。

【００２５】本ゴルフボールのコアは、架橋不飽和エラ
ストマ−から作るのがよく、ポリブタジエンのような熱
硬化性ゴムから構成するのがよいが、又十分なＣＯＲを
生ずる他のコア材料から作ってもよい。コアの直径は、
所望の全ボ−ル直径から内側及び外側のカバ−層の組合
せた厚さを差引いた値に基づいて定める。コアのＣＯＲ
は、仕上がりのゴルフボ−ルに少なくとも０．７８０な
るべくは少なくとも０．７９０のＣＯＲを与えるのに適
当である。コアは典型的には、約１．０ないし１．６ｉ
ｎなるべくは１．４ないし１．６ｉｎの直径と８０ない
し１００のＰＧＡ圧縮性と０．７７０ないし０．８３０
の範囲のＣＯＲとを持つ。

【００２６】従来の中実コアは典型的には、高シス含量
のポリブタジエンと、亜鉛モノアクリレ−ト又は亜鉛ジ
アクリレ−ト或は亜鉛メタクリレ−トのようにα、β、
エチレン不飽和カルボン酸の金属塩とから成る未硬化の
又は軽く硬化したエラストマ−組成物のスラグから圧縮
成形する。コアに一層高い反発係数を得るのに、製造業
者は、少量の金属酸化物たとえば酸化亜鉛のような充て
ん材を使う。さらに従来のコアでは、所望の反発係数を
得るのに必要とする量より多い量の金属酸化物を含ませ
てコア重量を増し仕上がりのボ−ルが１６２０ｏｚの
Ｕ．Ｓ．Ｇ．Ａ．重量上限に一層密接に近づくようにす
ることが多い。コア組成には、他の材料たとえば相溶性
ゴム又はイオノマー及びステアリン酸のような低分子量
の脂肪酸を使ってもよい。過酸化物のような遊離基重合
開始剤をコア組成物と混合し熱及び圧力を加えたとき
に、複合加硫架橋反応が生ずるようにすることができ
る。

【００２７】内側カバー層は、少なくとも１０％中性化
した平均約１５重量％以下の酸含量を持つイオノマーを
含むのがよい。内側カバー層１４は、限定するわけでは
ないが米国特許第４，８８４，８１４号及び同第５，１
２０，７９１号の各明細書に記載してあるものをこれ等
に限定するわけではないが含む硬い又柔らかい各イオノ
マー樹脂の配合体を含んでいる。これ等の明細書は共に
本説明に参照してある。たとえば混合物内の高モジュラ
スのイオノマー（すなわち硬いイオノマー）と低モジュ
ラスのイオノマー（すなわち柔らかいイオノマー）とか
ら成る配合体を使うことができる。高モジュラスのイオ
ノマーは、ＡＳＴＭ方法Ｄ−７９０で測って約１５，０
００ないし７０，０００ｐｓｉ以上の曲げモジュラスを
持つものである。この種のイオノマーの硬さはＡＳＴＭ
方法Ｄ−２２４０で測ってシヨアＤ硬さが少なくとも５
０である。内側層を形成するのに高モジュラスイオノマ
ーと配合する低モジュラスイオノマーは、約１，０００
ないし約１５，０００ｐｓｉ（ＡＳＴＭ Ｄ−７９０）
の曲げモジュラスとシヨアＤ硬さ（ＡＳＴＭ Ｄ−２２
４０）で約２０ないし４０の硬さを持つ。

【００２８】内側カバー層１４を形成するのに配合体に
使う硬いイオノマー樹脂は、２ないし８個の炭素原子を
持つオレフインと３ないし８個の炭素原子を持つ不飽和
モノカルボシ酸との反応を生成物のたとえばナトリウ
ム、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、マンガン、ニッ
ケル、カリウム又はリチウム等の塩又はその配合物であ
るイオン共重合体を含む。これ等の共重合体によりＣＯ
Ｒ、圧縮性及び内側カバー層硬さの所望の組合わせを持
つボールが得られる。共重合体のカルボン酸基は、全部
又は一部がすなわち１０ないし１００％が中性化してあ
る。硬いイオノマー樹脂は典型的にはエチレンとアクリ
ル酸及び／又はメタクリル酸との共重合体である。２種
類又はそれ以上の硬いイオノマー樹脂を配合することが
できる。

【００２９】本発明に利用される金属陽イオン塩は、高
い酸性共重合体のカルボン酸基を種種の程度に中性化す
ることのできる金属陽イオンを生ずる塩である。これ等
の塩は、たとえばリチウム、カルシウム、亜鉛、ナトリ
ウム、カリウム、ニッケル、マグネシウム、及びマンガ
ン等の酢酸塩、酸化物又は水酸化物の塩である。

【００３０】このようなリチウムイオン源の例には、水
酸化リチウムモノハイドレート、水酸化リチウム、酸化
リチウム及び酢酸リチウムがある。カルシウムイオンの
源は、水酸化カルシウム、酢酸カルシウム及び酸化カル
シウムである。適当な亜鉛イオン源は、酢酸亜鉛ジハイ
ドレート及び酢酸亜鉛と、酸化亜鉛及び酢酸の配合物と
である。ナトリウムイオン源の例は、水酸化ナトリウム
及び酢酸ナトリウムである。カリウムイオンの源は、水
酸化カリウム及び酢酸カリウムである。適当なニッケル
イオン源は、酢酸ニッケル、酸化ニッケル及び水酸化ニ
ッケルである。マグネシウム源は酸化マグネシウム、水
酸化マグネシウム及び酢酸マグネシウムを含む。マンガ
ンの源は酢酸マンガン及び酸化マンガンを含む。

【００３１】金属陽イオン中性化高酸イオノマー樹脂
は、約１０ｐｓｉないし１０，０００ｐｓｉの圧力で高
いせん断条件のもとで約２００°Ｆないしで約５００°
Ｆなるべくは約２５０°Ｆないし約３５０°Ｆの温度に
おけるように共重合体結晶融点以上で高酸基体共重合体
を種種の量の金属陽イオン塩と反応させることにより生
成することができる。又他の配合法を使ってもよい。新
たな金属陽イオン中性化高酸基体イオノマー樹脂を生成
するのに利用される金属陽イオン塩の量は、高酸共重合
体内の所望の１００分率のカルボン酸基を中性化するの
に十分な量の金属陽イオンを生ずる量である。中性化の
程度は一般に約１０％ないし約９０％である。

【００３２】内側カバー層１４を形成するのに配合物に
使うことのできる工業的に利用できる硬いイオノマー樹
脂の例は、商品名サーリン^TM８９４０として市販されて
いる硬いナトリウムイオン共重合体と商品名サーリン^TM
９９１０として市販されている硬い亜鉛イオン共重合体
とを含む。サーリン^TM８９４０は、ナトリウムイオンで
約２９％中性化される約１５重量％の酸を含むエチレン
及びメタクリン酸の共重合体である。この樹脂は平均
２．８のメルトフローインデツクスを持つ。サーリン^TM
９９１０は、亜鉛イオンで約５８％中性化する約１５重
量％の酸を含むエチレン及びメタクリン酸の共重合体で
ある。サーリン^TM９９１０の平均メルトフローインデツ
クスは約０．７である。付加的な例は、エクソン・コー
ポレイシヨンから市販されるイオテク４０００、イオテ
ク４０１０、イオテク８０００、イオテク８０２０、イ
オテク８０３０、イオテク７０１０及びイオテク７０３
０を含む。前記各例は、例示のためのものであり限定し
ようとするものではないのはもちろんである。

【００３３】本発明ゴルフボールの内側カバー層１４を
形成するように前記した硬いイオノマーと配合しようと
する柔らかいイオノマーの制限しない例は、約２ないし
８個の炭素原子を持つオレフインとアクリル酸又はメタ
クリル酸と１ないし２１個の炭素原子を持つアクリル酸
エステルクラスの不飽和モノマーである硬化コモノマー
とから成る三元重合体のナトリウム、亜鉛、マグネシウ
ム、カルシウム、マンガン、ニッケル、カリウム又はリ
チウム等の塩から成る。柔らかいイオノマーは、アクリ
ル酸基体重合体とアクリル酸エステルクラスの不飽和モ
ノマーとから生成するイオノマーがよい。柔らかい（低
モジュラス）イオノマ−は、シヨアＤ硬さで測り約２０
ないし４０の硬さとＡＳＴＭ方法Ｄ−７９０により測り
約１，０００ないし約１５，０００の曲げモジュラスと
を持つ。

【００３４】エクソン・コーポレイションから「イオテ
ク７６１０」の名称で開発された若干のエチレン・アク
リル酸基体軟質イオノマー樹脂は、内側カバ−を生成す
るのに前記したような公知の硬いイオノマーと組合せれ
ばよい。この組合せにより、全原料が比較的少なく歩ど
まりの向上したことによって、他の公知の硬質・軟質の
イオノマー配合体によって得られる多重層ボールの外層
とは異なって、等しい又は一層低いレベルの硬さにおけ
る一層高いＣＯＲと一層高いメルトフロー（向上した一
層有効な成形すなわち一層少ない不合格品に相当する）
と共に著しい費用節約とが得られる。さらにイオテク７
５２０、サーリン^TM３２０及びサーリン^TM８１２０も又
使うことができる。

【００３５】硬質・軟質のイオノマー配合体を内側カバ
ー層に使うときはこの相対組合せが約９０ないし約１０
％の硬いイオノマーと約１０ないし約９０％の柔らかい
イオノマーとの範囲内にあると良好な結果が得られる。
これ等の結果は、この範囲を約７５ないし２５％の硬い
イオノマーと２５ないし７５％の柔らかいイオノマーと
に調整することによって改良される。約６０ないし４０
％の硬いイオノマー樹脂と約４０ないし６０％の柔らか
いイオノマー樹脂との相対範囲でなお一層よい結果が得
られる。

【００３６】カバー組成に使われる特定の組織は、米国
特許第５，１２０，７９１号及び同第４，８８４，８１
４号の各明細書に述べてある例に記載してある。本発明
はこれ等の例に限定するものではない。

【００３７】本ゴルフボールの外側カバー層１６は、内
側カバー層より硬く、又一般に、必ずしもではないが、
内側カバー層とは異なる化学的組成を持つ。外側カバー
層１６は、１０重量％以上の酸基が中性化される高酸イ
オノマー樹脂又は高酸イオノマー酸合体を含むのがよ
い。外側カバー層１６は、互いに異なる金属陽イオンを
使い互いに異なる程度に中性化される２種類又はそれ以
上の高酸イオノマー樹脂の配合体から形成するのがよ
い。軟化改質材は所望のシヨア硬さの外側カバ−層を得
るのに使うことができる。

【００３８】ゴルフボールの外側カバー層を形成するの
に使うことのできる高酸イオノマーは、約２ないし８個
の炭素原子を持つオレフィンと約３ないし８個の炭素原
子を持つ不酸和モノカルボン酸との反応生成物の金属塩
であるイオン共重合体である。限定しない例として、ナ
トリウム、亜鉛、マグネシウム、マンガン、カリウム、
カルシウム、ニッケル及びリチウムを中性化陽イオンと
して使うことができる。イオノマー樹脂は、エチレンと
アクリル酸又はメタクリル酸との共重合体がよい。若干
の場合にアクリル酸エステルのような付加的コモノマー
たとえばイソ−ｎ−ブチルアクリレ−ト等もいくぶん一
層柔らかい三元重合体を生成するのに使うことができ
る。この共重合体のカルボン酸基は、金属イオンにより
部分的にすなわち約１０ないし７５％又はなるべくは約
３０ないし７０％中性化される。外側カバー層組成物に
含まれる各高酸イオノマ−樹脂は、１６重量％以上のカ
ルボン酸、なるべくは１７ないし２５重量％のカルボン
酸、なおなるべくは約１８．５ないし２１．５重量％の
カルボン酸を含むのがよい。本発明に使うことのできる
工業的に利用できる高酸メタクリル酸基体イオノマ−の
例には、サーリン^TMＡＤ−８４２２（ナトリウム陽イオ
ン）とサーリン^TM８１６２（亜鉛陽イオン）とサーリン
^TMＳＥＰ−５０３−１（亜鉛陽イオン）とサーリン^TMＳ
ＥＰ−５０３−２（マグネシウム陽イオン）とがある。
デュポン社によればこれ等のイオノマーはすべて約１
８．５ないし約２１重量％のメタクリル酸を含む。

【００３９】本発明に使うことのできる高酸アクリル酸
基体イオノマーの例には又、イオテクＥＸ−９５９及び
イオテクＥＸ−９６０を含むエクソン社製のエスコア^TM
（Ｅｓｃｏｒ^TM）又はイオテク高酸エチレンイオノマー
がある。さらに、マンガン、リチウム、カリウム、カル
シウム及びニッケルを含む互いに異なる種類の金属陽イ
オンにより種種の程度に中性化した若干の他の高酸イオ
ノマーと複数の新たな高酸イオノマ−及び／又はナトリ
ウム、亜鉛及びマンガン以外の高酸イオノマー配合物を
この場合ゴルフボールカバー生成のために利用できる。

【００４０】前記したように軟化コモノマーは内側及び
／又は外側のイオノマーカバー層に含めてもよい。軟化
コモノマーの限定しない例には、２ないし１０個の炭素
原子を持つ脂肪族カルボン酸のビニルエステルとアルキ
ル基が１ないし１０個の炭素原子を含むビニルエーテル
とアルキル基が１ないし１０個の炭素原子を含むアルキ
ルアクリレート又はアルキルメタクリレートとがある。
適当な軟化コモノマーには、酢酸ビニル、メチルアクリ
レート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、
エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメ
タクリレート又は類似物がある。

【００４１】本発明に使う高酸イオノマーを生成するの
に適当な若干の共重合体の例には限定するものではない
が、エチレン／アクリル酸共重合体、エチレン／メタク
リル酸共重合体、エチレン／イタコン酸共重合体、エチ
レン／マレイン酸共重合体、エチレン／メタクリル酸／
酢酸ビニル共重合体、エチレン／アクリル酸／ビニルア
ルコ−ル共重合体等がある。基体共重合体は一般に、１
６重量％以上の不飽和カルボン酸と約３０ないし約８３
重量％のエチレンと０ないし約４０重量％の軟化共重合
体とを含む。この共重合体は、約２０重量％の不飽和カ
ルボン酸と約８０重量％のエチレンとを含むのがよい。
又この共重合体は約２０％のアクリル酸を含み残りをエ
チレンとするのが最もよい。

【００４２】前記したように内側カバー層１４及び／又
は外側カバー層１６は、場合により、米国特許第５，３
０６，７６０号及び同第５，３１２，８５７号の各明細
書に記載してあるようにステアリン酸亜鉛のような金属
ステアリン酸塩又は他の脂肪酸塩を限定しない例として
含む硬化改質剤又は軟化改質剤を含んでよい。金属ステ
アリン酸塩又はその他の脂肪酸塩の１つの目的は、仕上
がりボ−ルの全性能に影響を及ぼさないでこのボールの
生産費を低減することである。さらに極性基改質ゴム
は、たとえば米国特許第４，９８６，５４５号、同第
５，０９８，１０５号、同第５，１８７，０１３号、同
第５，３３０，８３７号及び同第５，３３８，６１０号
の各明細書に記載してあるようにイオノマ−と配合する
ことができる。硬化剤又は軟化剤として作用しポリウレ
タンとデュポン社からハイトレル^TM（Ｈｙｔｒｅｌ^TM）
として市販されているようなポリエステルエラストマー
とビー・エフ・グッドリッチ・カムパニ（Ｂ．Ｆ．Ｇｏ
ｏｄｒｉｔｃｈ Ｃｏｍｐａｎｙ）のエステイン^TM（Ｅ
ｓｔａｎｅ^TM）ポリエステルポリウレタンＸ−４５１７
のようなポリエステルポリウレタンとエルフ・アトケム
・エス・エイ（Ｅｌｆ Ａｔｏｃｈｅｍ Ｓ．Ａ．）か
ら商品名ペバックス^TM（Ｐｅｂａｘ^TM）として市販され
ているようなポリエステルアミドとを含む熱可塑性エラ
ストマーを加えることができる。エクソン社から商品名
イグザクト^TM（Ｅｘａｃｔ^TM）たとえばイグザクト^TM４
０８９として市販されているようなプラストマーを含め
ることができる。種種の可塑化剤及び処理助剤も又使う
ことができる。

【００４３】本発明のゴルフボールが２つより多いカバ
ーを層を持つときは、上記説明で述べた内側カバー層は
２層又はそれ以上の層から形成することができる。これ
等の層は協働して、内側カバー層と称する１層又は複数
層として、柔らかさ、厚さ及び圧縮性の要求に適応する
ことになる。同様に外側カバー層は、２層又はそれ以上
の層から形成することができる。これ等の層は協働し
て、外側カバー層と称する１層又は複数層として、硬
さ、厚さ及び圧縮性の要求に適応することになる。さら
に１層又は複数層の付加的な極めて薄いイオノマー層又
は非イオノマー層を本発明の目的が達成される限りは内
側カバー層のいずれかの側に加えることができる。

【００４４】以上本発明を大体述べたが、次の各例は本
発明をなお一層分かりやすくしとくに断わらない限り発
明の範囲を限定しないように例示したものである。

【００４５】例１ 従来の組成と９３のＰＧＡ圧縮性と０．７８２のＣＯＲ
と１．４７ｉｎの直径とを持つ約２ダースの熱硬化性ポ
リブタジェン製ゴルフボールコアを普通の方法で成形し
た。軟化コモノマーを含む柔らかいアクリル酸基体イオ
ノマーと硬いアクリル酸基体イオノマーとから形成され
０．０５０ｉｎの厚さと５５のシヨアＤ硬さとを持ちイ
オノマー１と称する第１のイオノマーから成る内側カバ
ー層を各コアのまわりに射出成形した。得られる被覆コ
アは９４のＰＧＡ圧縮性と０．７８９のＣＯＲとを持っ
ていた。

【００４６】イオノマー２と称する２つの硬いアクリル
酸基体イオノマーから成る配合体から形成した外側カバ
ー層を内側カバ−層のまわりに射出成形した。この外側
カバー層は０．０５５ｉｎの厚さと６８のシヨアＤ硬さ
とを持っていた。各ボールは一様に下塗りし透明な被覆
を行った。２部分カバーを持つボールは約９９の平均圧
縮性と約８０３のＣＯＲとを持っていた。各ボールのス
ピン速度は、互いに同じクラブを使いツーピース硬質カ
バー付きボール（１９９４年製トップ・フライトＸＬ）
に対しては約７１００ｒｐｍのスピン速度を又糸巻きバ
ルタ被覆ボール（１９９４年製タイトリスト・ツアー１
００）に対しては９７００ｒｐｍのスピン速度を生じ
た、打撃角、ボール速度及びティー位置の条件のもとで
９番アイアンによりボールを打つことにより定めた。

【００４７】ボール、コア及び各カバー層の性質は表１
に示してある。

【００４８】例２〜４ 例１の手順を、同じカバー層厚さで内側及び外側のカバ
ー層材料の互いに異なる３種類の組合わせを使い反復し
た。これ等の結果は表１に示してある。

【００４９】比較例１〜２ 例１の手順を、特定のボールの内側及び外側のカバー層
に対し同じ材料を使ったことを除いて反復した。比較例
１ではイオノマー２からなる２層を使った。比較例２で
はイオノマー４から成る２層を使った。この結果は表１
に示してある。

【００５０】比較例１及び２のボールは好ましいＣＯＲ
を示したが、これ等のボールのＰＧＡ圧縮性は好ましく
ないほど高かった。又例１〜３のボールは、良好なＣＯ
Ｒを保持すると共に好ましい柔軟な圧縮性を持ってい
た。例４のボールは、良好なＣＯＲを保持すると共に適
度に良好な圧縮性を持っていた。又例１〜２のボールは
比較例１のボールよりいくぶん高いスピン速度を持って
いた。そして例３〜４のボ−ルは比較例２のボールより
いくぶん高いスピン速度を持っていた。わずかに一層高
いスピンは、各比較例のボールに対し柔軟なカバー付き
ボールに比べてスピンはなお比較的低いがプレイ特性及
び感触の向上に役立つ。

【００５１】比較例３〜６ １．５７ｉｎの直径と８８のＰＧＡ圧縮性と７８０のＣ
ＯＲとを持つ従来の熱硬化性ポリブタジエン製ゴルフボ
−ルコアを０．０５５ｉｎの厚さを持つ単一層のカバー
材料で覆った。互いに異なる４種類のイオノマーカバー
を使った。これ等のボールは次いで例１〜４のボールと
同じ方法で下塗りし透明な被覆を行った。得られるツー
ピースゴルフボールは表１に示すようなＰＧＡ圧縮性、
ＣＯＲ，ショアＤカバー硬さ及びスピンの測定値を持っ
ていた。

【００５２】比較例３〜６に示すように、これ等のゴル
フボールのＣＯＲはボールの硬さの増加に伴って増大し
た。比較例６により示すようにイオノマー１は外側カバ
−層として単独に使うには柔らかすぎＣＯＲは不充分に
なる。比較例５により示すようにイオノマー３も又柔ら
かくて最低限に承認できるＣＯＲと比較的硬い圧縮性と
を持つボールを生ずる。比較例３及び４のボールは、例
１ないし４のボールに劣る。その理由は、与えられたＣ
ＯＲに対して、コア圧縮性は例１〜４の圧縮性より柔軟
（カバー成形に先だって）であっても比較例３及び４の
ボールのＰＧＡ圧縮性は比較的硬い。

【００５３】例５〜６ 例１の手順を、１．４３ｉｎ及び１．５４５ｉｎの寸法
を持つコアを使ったことを除いて反復した。さらに互い
に異なる厚さを持つ内側及び外側のカバー層を使った。
カバー層の厚さ及び性質と共に得られるゴルフボールの
性質は表１に示してある。

【００５４】比較例７ 例５の手順を内側及び外側のカバー層を同じ材料から形
成したことを除いて反復した。その結果は表１に示して
ある。

【００５５】例５及び比較例７は共に同じ全厚さを持つ
イオノマーカバー層を持っていたが、例５のボールは、
比較例７のボ−ルの圧縮性が高すぎる点でこの比較例７
のボールより勝っている。又例５のスピン速度は比較例
７よりいくぶん高く、このことは、あまり熟練していな
いゴルファーに問題（スライス／フック）を生ずる（柔
軟なカバー付きボールの場合のように）ほどスピン速度
が高くなくて感触及びプレイ特性を高めるのに役立つ。
比較例３の場合のように、外側層厚さを減らさないで圧
縮性を低減するように、例５は、一層柔軟な内側層及び
一層硬い外側層を持つ多重層イオノマーカバーを使うこ
とにより比較的柔軟な圧縮性及び良好な反発係数の好適
な組み合わせを持つゴルフボールの得られることを示
す。

【００５６】例６により示すように全イオノマーカバー
材料の厚さのわずかな減小はボールの圧縮性には実質的
に影響しなくてＣＯＲの好適な値に役立つ。

【００５７】

【表１】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の好適な実施例によるゴルフボールの横
断面図である。

【図２】図１のゴルフボールをコア及び内層の一部と共
に示す正面図である。

【符号の説明】

８ ゴルフボール １０ コア １４ 内側カバー層 １６ 外側カバー層

Claims (20)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 コアと、 イオノマーから成り約６５以下のシヨアＤ硬さを持つ内
   側カバー層と、 イオノマーから成り前記内側カバー層より硬く少なくと
   も約６０のシヨアＤ硬さを持つ外側カバー層とを備え、 前記内側カバー層の厚さと前記外側カバー層の厚さとの
   和を少なくとも０．０９０ｉｎにして成るゴルフボー
   ル。
2. 【請求項２】 少なくとも０．７８０の反発係数を持つ
   ようにした請求項１のゴルフボール。
3. 【請求項３】 前記内側カバー層が約０．０２５ないし
   ０．２００ｉｎの厚さを持つようにした請求項１のゴル
   フボール。
4. 【請求項４】 前記外側カバー層が約０．０２５ないし
   ０．２００ｉｎの厚さを持つようにした請求項３のゴル
   フボール。
5. 【請求項５】 前記内側カバー層が６３以下のシヨアＤ
   硬さを持つようにした請求項１のゴルフボール。
6. 【請求項６】 前記外側カバー層が少なくとも６５のシ
   ヨアＤ硬さを持つようにした請求項５のゴルフボール。
7. 【請求項７】 前記内側カバー層を、約１５以下の平均
   重量％の酸含量を持ちその少なくとも１０％を中性化し
   てあるイオノマーにより構成した請求項１のゴルフボー
   ル。
8. 【請求項８】 前記外側カバー層を、約１６又はそれ以
   上の平均重量％の酸含量を持ちその少なくとも１０％を
   中性化してあるイオノマーにより構成した請求項１のゴ
   ルフボール。
9. 【請求項９】 少なくとも１．７０ｉｎの直径を持つよ
   うにした請求項１のゴルフボール。
10. 【請求項１０】 前記コアを熱硬化性ゴムにより構成し
    た請求項１のゴルフボール。
11. 【請求項１１】 前記内側カバー層を、硬いイオノマー
    と柔らかいイオノマーとの配合体により構成した請求項
    １のゴルフボール。
12. 【請求項１２】 ボールＰＧＡ圧縮性が約１１０を越え
    ないようにした請求項１のゴルフボール。
13. 【請求項１３】 ボールＰＧＡ圧縮性が約１００を越え
    ないようにした請求項１のゴルフボール。
14. 【請求項１４】 コアと、 イオノマーから成り約６５を越えないシヨアＤ硬さを持
    つ内側カバー層と、 イオノマーから成り少なくとも６０のシヨアＤ硬さを持
    ち前記内側層より硬い外側カバー層とを備え、わずかに
    約１１０を越えないＰＧＡ圧縮性と少なくとも０．７８
    ０の反発係数とを持ち前記内側カバー層の厚さと前記外
    側カバー層の厚さとの和に対するボール直径の比率を１
    ９対１より小さくして成るゴルフボール。
15. 【請求項１５】 ゴルフボールコアを用意し、 イオノマーから成り約６５以下のシヨアＤ硬さを持つ内
    側カバー層を前記コアのまわりに形成し、 少なくとも約６０のシヨアＤ硬さを持ち前記内側カバー
    層より硬い外側カバー層を前記内側カバー層のまわりに
    形成し前記の内側カバー層及び外側カバー層の組合せた
    厚さを少なくとも０．０９０ｉｎとすることから成る、
    多重層ゴルフボールの製法。
16. 【請求項１６】 前記のコア、内側カバー層及び外側カ
    バー層を、ボールＰＧＡ圧縮性が約１０７を越えないよ
    うに形成する請求項１５の製法。
17. 【請求項１７】 前記のコア、内側カバー層及び外側カ
    バー層を前記ボールが少なくとも０．７８０の反発係数
    を持つように形成する請求項１５の製法。
18. 【請求項１８】 前記内側カバー層を約０．０２５ない
    し０．２００ｉｎの厚さに形成する請求項１５の製法。
19. 【請求項１９】 前記外側カバー層を約０．０２５ない
    し０．２００ｉｎの厚さに形成する請求項１８の製法。
20. 【請求項２０】 前記コアの直径と前記の内側カバー層
    及び外側カバー層の各厚さとを少なくとも１．７０ｉｎ
    の直径を持つゴルフボールを形成するように選定する請
    求項１５の製法。