JPH0891971A - 肥料の製造方法 - Google Patents

肥料の製造方法

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JPH0891971A
JPH0891971A JP19180395A JP19180395A JPH0891971A JP H0891971 A JPH0891971 A JP H0891971A JP 19180395 A JP19180395 A JP 19180395A JP 19180395 A JP19180395 A JP 19180395A JP H0891971 A JPH0891971 A JP H0891971A
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plating
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 リン成分が溶解されためっき廃液からリン成
分を分離して肥料を製造することができる肥料の製造方
法を提供する。 【構成】 リン成分が溶解された無電解ニッケルめっき
廃液からリン成分を分離してリン酸肥料を製造する際
に、該めっき廃液に含有されている重金属成分を除去す
ると共に、前記めっき廃液中の亜リン酸成分等のリン成
分に対し酸化処理を施してリン酸(H3PO4)とした後、前
記リン酸を溶液に対して不溶性であるリン酸カルシウム
等の不溶性化合物にしてから分離することを特徴とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は肥料の製造方法に関
し、更に詳細にはリン成分が溶解されためっき廃液から
リン成分を分離して肥料を製造する肥料の製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、めっき廃液の大半は、海洋投入処
分されているが、陸上処理される場合には、通常、生物
処理や化学処理等が施された後、回収された重金属成分
や種々の化合物等の沈殿物は埋立処分され、水は下水や
河川等に放流される。ところで、この様な海洋投入処分
は、海洋汚染防止の観点から国際的に禁止の方向にある
ため、海洋投入処分をしていためっき廃液も陸上処理す
ることが必要になってきた。一方、埋立処分は、国内に
おいて埋立処分可能な場所が年々少なくなるため、埋立
処分量を可及的に少なくすることが必要である。また、
めっき廃液に含有されている化合物には、肥料等に有用
な化合物が含有されているため、かかる化合物の回収利
用を図ることが省資源の観点からも必要である。このた
め、本発明者等は、肥料等に有用な化合物が多量に含有
されているめっき廃液を調査したところ、無電解ニッケ
ルめっき廃液には、肥料に有用なリン成分が多量に溶解
されていることが判明した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者等は、かかる
無電解ニッケルめっき廃液に溶解されているリン成分を
肥料として回収利用すべく、めっき廃液から重金属成分
を除去しためっき廃液に、石灰乳を加えて沈殿させた沈
殿物を脱水・乾燥した。次いで、得られた乾燥物の肥効
を確認すべく、栽培実験を行ったところ、焼成リン肥料
に比較して肥効が著しく劣ると共に、発芽後の成育支障
も見られた。この様に、めっき廃液から重金属成分を除
去したのみでは、肥料として使用することはできない
が、得られた乾燥物中にはリン酸全量(P2O5)が30重量
%を越えるため、リン肥料として回収利用できれば、め
っき廃液の有効利用を図ることができる。そこで、本発
明の目的は、リン成分が溶解されためっき廃液からリン
成分を分離して肥料を製造することができる肥料の製造
方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前記目的
を達成すべく検討した結果、めっき廃液に溶解されてい
るリン成分に酸化処理を施してリン酸とした後、リン酸
をリン酸カルシウムとして回収することによって、リン
肥料が得られることを見出し、本発明に到達した。すな
わち、本発明は、リン成分が溶解されためっき廃液から
リン成分を分離して肥料を製造する際に、該めっき廃液
に含有されている重金属成分を除去すると共に、前記め
っき廃液中のリン成分に対し酸化処理を施してリン酸
(H3PO4)とした後、記リン酸をめっき廃液に対して不溶
である不溶性リン化合物にしてから分離することを特徴
とする肥料の製造方法にある。かかる構成を有する本発
明において、めっき廃液として、無電解ニッケルめっき
廃液を使用することによって、リン成分が多量に溶解さ
れためっき廃液を原料とすることができる。また、酸化
剤をめっき廃液に添加して酸化処理を行うことによっ
て、リン成分の酸化処理を効率よく行うことができる。
更に、酸化処理が施されためっき廃液にカルシウム化合
物を添加し、リン酸をめっき廃液に対して不溶性のリン
酸カルシウムとすることによって、リン酸成分を容易に
回収できる。この際に、めっき廃液へのカルシウム化合
物は、[Ca2+ ]/[PO4 3-] が3以下となる添加量とするこ
とが、得られる肥料中のく溶性リン酸成分の比率を向上
させることができ好ましい。
【0005】本発明によれば、めっき廃液中に含有され
ている重金属を除去すると共に、めっき廃液中に溶解さ
れているリン成分を酸化処理することによってリン酸
(H3PO 4)とする。その後、このリン酸をめっき廃液に不
溶である不溶性リン化合物、例えばリン酸カルシウムと
してから分離する。このため、得られた肥料は、肥効が
良好で且つ成育支障のないリン酸肥料である。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明において、原料として使用
するリン成分が溶解されためっき廃液としては、多量の
リン成分が溶解されている無電解ニッケルめっき廃液が
好適である。この無電解ニッケルめっき廃液に溶解され
ているリン成分は、大部分が亜リン酸成分である。本発
明では、めっき廃液中に含有されている重金属を除去す
ると共に、めっき廃液中に溶解されているリン成分を酸
化処理することによってリン酸(H3PO4)とする。かかる
重金属除去とリン成分の酸化処理とを行う際に、めっき
廃液中に含有されている重金属を除去した後、めっき廃
液中に溶解されているリン成分を酸化処理してもよく、
或いは、めっき廃液中に溶解されているリン成分を酸化
処理した後、めっき廃液中に含有されている重金属を除
去してもよい。いずれにおいても、めっき廃液中に溶解
されている重金属成分を除去することが肝要である。こ
の重金属成分の除去によって、最終的に得られる肥料の
成育障害等を解消できるからである。
【0007】先ず、めっき廃液中に含有されている重金
属を除去した後、めっき廃液中に溶解されているリン成
分を酸化処理する場合について説明する。かかる重金属
成分の除去には、めっき廃液を中和(pH値;7〜7.
5程度)してから水硫化ナトリウム(NaSH)、硫化ナト
リウム(Na2S)、硫化アンモニウム〔(NH4)2S〕等の薬
剤を添加して重金属を不溶化する。この薬剤のうち、操
作性、反応性、及び臭気等の観点から水硫化ナトリウム
(NaSH)を好適に使用できる。尚、中和剤としては、Na
OH、KOH 等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、Ca(O
H)2 、Mg(OH)2 等のアルカリ土類金属の水酸化物は不適
当である。
【0008】また、水硫化ナトリウム(NaSH)等の薬剤
を添加する際に、薬剤の添加量は酸化還元電位の変曲点
を観測することによって調整することが好ましい。この
酸化還元電位の変曲点は、大部分のめっき廃液について
は−300〜−400mmVの範囲に存在する。但し、
めっき廃液成分によっては、酸化還元電位の変曲点が−
700mmV付近となる場合があるため、原料として使
用するめっき廃液について、予め酸化還元電位の変曲点
を実験的に求めておこくことが好ましい。尚、不溶化し
た重金属は、脱水濾過して別途処理する
【0009】水硫化ナトリウム(NaSH)等の薬剤を添加
して重金属を除去した濾液中には、薬剤の添加によって
も除去できない微量の重金属が存在することがある。こ
の様な場合には、キレート樹脂に濾液を接触させて微量
の重金属の除去を行うことが好ましい。かかる微量重金
属の除去によって、最終的に得られる肥料の成育支障を
完全に解消することができる。このキレート樹脂処理
は、濾液中に含有されている重金属とキレート結合を形
成するキレート樹脂が充填されたカラムに濾液を通過さ
せるカラム通過方式であってもよく、前記キレート樹脂
と濾液とを攪拌する攪拌方式であってもよい。但し、攪
拌方式では、前記キレート樹脂と濾液とを分離する固液
分離操作を必要とする。
【0010】この様に、重金属が除去されためっき廃液
中に含有されている亜リン酸成分等のリン成分に対して
酸化処理を行うことによって、リン酸(H3PO4)とする。
この酸化処理には、NaOH、Ca(OH)2 等を添加して濾液の
pH値を調整した後、次塩素酸カルシウム〔Ca(Cl
O)2〕、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、又は過酸化水
素(H2O2)等の酸化剤を添加して酸化処理を行う。かかる
酸化剤のうち、過酸化水素(H2O2)を使用する場合には、
濾液のpH値を4〜5の酸性にしてから添加する。この
際に、反応性を高めるため、塩化第一鉄(FeCl2) や塩化
第二銅(CuCl2) を添加してもよい。また、次亜塩素酸ナ
トリウム(NaClO)を酸化剤として使用する場合には、濾
液のpH値を7〜8として添加する。
【0011】かかる酸化処理の際に、次塩素酸カルシウ
ム〔Ca(ClO)2〕、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、過酸
化水素(H2O2)等の酸化剤の添加量は、予め濾液中の次亜
リン酸、亜リン酸をヨウ素法等で測定し、正リン酸への
酸化当量の0.5〜1の範囲で添加してもよいが、酸化
還元電位の変曲点を観測することによって酸化剤の添加
量を調整することが好ましい。この酸化還元電位の変曲
点の観測の際には、酸化反応速度を安定させて酸化還元
電位の指示値の安定を図るべく、pH値を7〜8に調整
する。かかる酸化還元電位の変曲点は、+200〜+3
00mmVの範囲に存在する。尚、酸化剤として次亜塩
素酸ナトリウム(NaClO)を採用するとき、水硫化ナトリ
ウム(NaSH)等の薬剤添加前に、めっき廃液のpHを7
〜8に調整して次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を添加し
てもよい。
【0012】かかる酸化処理によって生成されたリン酸
(H3PO4)が溶解されためっき廃液に、塩酸等の酸を添加
して、めっき廃液のpH値を3以下として脱炭酸処理を
行うことが好ましい。炭酸イオンが存在すると、得られ
た肥料の品位が低下する傾向があるためである。この脱
炭酸処理には、塩酸が好適である。塩酸に変えて硫酸を
使用すると、硫酸カルシウム(CaSO4) が沈殿して肥料の
品位を低下させる傾向があり、フッ酸も同様に肥料の品
位を低下させる傾向がある。また、硝酸を使用すると、
肥料による成育障害を惹起し易い傾向がある。
【0013】次に、めっき廃液中に溶解されているリン
成分を酸化処理した後、めっき廃液中に含有されている
重金属を除去する場合について説明する。この場合にお
いて、めっき廃液中のリン成分の酸化処理には、塩化銅
(CuCl2)等の第二銅塩を添加することによって行うこと
ができる。この様に、第二銅塩を添加することによっ
て、Cu+2がCu+1に還元されてリン成分が酸化されるもの
と考えられる。かかる第二銅塩を添加した後、めっき廃
液のpH値を2以下、好ましくは1以下とすることが好
ましい。めっき廃液のpH値調整は、塩酸等の酸を添加
して行うことが好ましい。このpH値調整には、塩酸が
好適である。塩酸に代えて硫酸を使用すると、硫酸化合
物が沈殿して肥料の品位を低下させる傾向があり、フッ
酸も同様に肥料の品位を低下させる傾向がある。また、
硝酸を使用すると、肥料による成育障害を惹起し易い傾
向がある。尚、塩化銅(CuCl2) 等の第二銅塩に代えて塩
化第二鉄塩を使用すると、汚泥状で濾過し難いリン酸鉄
ができ、後処理が困難となり易い。
【0014】この第二銅塩の添加量は、めっき廃液中に
含有されているリン成分1モルに対して0.1〜2モル
とすることが好ましい。また、酸化処理は、室温下で行
うことができるが、液温が高いほど酸化処理速度を向上
できる。特に、作業性等との観点から70℃以下、特に
50℃以下に加温して行うことが好ましい。更に、めっ
き廃液を攪拌又はめっき廃液中に空気を吹き込む曝気を
することによっても酸化処理速度を向上することがで
き、特に、めっき廃液中に空気を吹き込む曝気を行うこ
とが好ましい。かかる知見から酸化処理速度を向上する
ためには、めっき液を50℃程度に保持しつつ、めっき
廃液中に空気を吹き込む曝気を行うことが好ましい。
尚、この酸化処理の際には、塩化銅(CuCl2) 等の第二銅
塩と、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)及び/又は過酸化
水素水(H2O2)とを併用してもよい。
【0015】この様に、リン化合物の酸化処理が完了し
ためっき廃液は、液中に含有する重金属を除去する。か
かる重金属成分の除去には、先に説明したと同様に、め
っき廃液を中和(pH値;7〜7.5程度)してから水
硫化ナトリウム(NaSH)、硫化ナトリウム(Na2S)、硫
化アンモニウム〔(NH4)2S〕等の薬剤を添加する。この
場合も、操作性、反応性、及び臭気等の観点から水硫化
ナトリウム(NaSH)を好適に使用でき、酸化処理におい
て添加した第二銅塩の銅成分も沈殿物として除去でき
る。尚、中和剤としては、NaOH、KOH 等のアルカリ金属
の水酸化物が好ましく、Ca(OH)2 、Mg(OH)2 等のアルカ
リ土類金属の水酸化物は不適当である。
【0016】また、水硫化ナトリウム(NaSH)等の薬剤
を添加する際に、薬剤の添加量は酸化還元電位の変曲点
を観測することによって調整することが好ましい。この
酸化還元電位の変曲点は、大部分のめっき廃液について
は−300〜−400mmVの範囲に存在する。但し、
めっき廃液成分によっては、酸化還元電位の変曲点が−
700mmV付近となる場合があるため、原料として使
用するめっき廃液について、予め酸化還元電位の変曲点
を実験的に求めておこくことが好ましい。尚、不溶化し
た重金属は、脱水濾過して別途処理する
【0017】水硫化ナトリウム(NaSH)等の薬剤を添加
して重金属を除去した濾液中には、薬剤の添加によって
も除去できない微量の重金属が存在することがある。こ
の様な場合には、キレート樹脂に濾液を接触させて微量
の重金属の除去を行うことが好ましい。かかる微量重金
属の除去によって、最終的に得られる肥料の成育支障を
完全に解消することができる。このキレート樹脂処理
は、濾液中に含有されている重金属とキレート結合を形
成するキレート樹脂が充填されたカラムに濾液を通過さ
せるカラム通過方式であってもよく、前記キレート樹脂
と濾液とを攪拌する攪拌方式であってもよい。但し、攪
拌方式では、前記キレート樹脂と濾液とを分離する固液
分離操作を必要とする。
【0018】本発明においては、かかる一連の処理を経
ためっき廃液に溶解されたリン酸(H3PO4)を、めっき廃
液に対して不溶性の不溶性化合物に変換した後、常法に
よって固液分離して得られたケークを乾燥してリン肥料
とすることができる。かかる不溶性化合物への変換は、
めっき廃液のpH値が4以上、好ましくは4.5以上、
特に好ましくは5以上となるように、めっき廃液に石灰
乳を添加してめっき廃液中のリン酸(H3PO4)をリン酸カ
ルシウムとすることによって容易に行うことができる。
この様に石灰乳の添加を、めっき廃液pH値が4以上に
なった時点で終了すると、得られる肥料中に可溶性リン
酸塩を増加することができる。但し、固液分離しためっ
き廃液側にも可溶性リン酸塩が多量に含有される場合が
あるため、再度、めっき廃液中の可溶性リン酸塩を不溶
性リン化合物に変換して固液分離を行うことが必要であ
る。この点、[Ca2+ ]/[PO4 3-] の比を3以下、特に1〜
3とするように石灰乳をめっき廃液に添加すると、得ら
れる肥料中のく溶性リン酸を更に一層向上することがで
き、且つめっき廃液側に含有される可溶性リン酸塩を少
量とすることができるため、固液分離操作を一回で完了
できる。この場合においても、石灰乳の添加が完了した
ときのめっき廃液pH値が4以上、好ましくは4.5以
上、特に好ましくは5以上となるように、めっき廃液p
H値を調整することが好ましい。この様にして得られた
リン肥料は、肥効が良好で且つ成育支障のないリン酸肥
料である。
【0019】
【実施例】
実施例1 pH値が4.2の無電解ニッケルめっき廃液に水酸化ナ
トリウム(NaOH)を添加してpH値を7.1とした。この
めっき廃液に、水硫化ナトリウム(NaSH)を添加した。
水硫化ナトリウム(NaSH)の添加は、酸化還元電位の変
曲点(−360mmV)が観測された時点で停止した。
このときのめっき廃液のpH値は、8.3であった。水
硫化ナトリウム(NaSH)の添加によって発生した沈殿物
を脱水濾過し、得られた濾液を、ニッケル等の重金属と
キレート結合を形成するキレート樹脂が充填されたカラ
ムに通過させて微量の重金属を除去した後、石灰乳〔Ca
(OH)2 〕を添加して濾液のpH値を7.6に調整した。
その後、酸化剤としての次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)
を添加して酸化処理を行った。次亜塩素酸ナトリウム
(NaClO)の添加は、酸化還元電位の変曲点(+280m
mV)が観測された時点で停止した。更に、酸化処理を
施しためっき廃液に、含有リンに対して当量の塩酸を添
加して脱炭酸処理を行った。脱炭酸処理後の溶液pH値
は2以下であった。次いで、脱炭酸処理を施しためっき
廃液に、めっき廃液のpH値が4.6に到達するまで石
灰乳〔Ca(OH)2 〕を添加し、発生した沈殿物を脱水濾過
してから乾燥した。得られた肥料の分析結果を下記の表
1に示す。
【表1】
【0020】実施例2 pH値が4.2の無電解ニッケルめっき廃液に水酸化ナ
トリウム(NaOH)を添加してpH値を7.2とした。この
めっき廃液に、水硫化ナトリウム(NaSH)を添加した。
水硫化ナトリウム(NaSH)の添加は、酸化還元電位の変
曲点(−360mmV)が観測された時点で停止した。
このときのめっき廃液のpH値は、8.4であった。水
硫化ナトリウム(NaSH)の添加によって発生した沈殿物
を脱水濾過し、得られた濾液を、ニッケル等の重金属と
キレート結合を形成するキレート樹脂が充填されたカラ
ムに通過させて微量の重金属を除去した後、水酸化ナト
リウム(NaOH)を添加して濾液のpH値を7.5に調整し
た。その後、酸化剤としての次塩素酸カルシウム〔Ca(C
lO)2〕を添加して酸化処理を行った。次塩素酸カルシウ
ム〔Ca(ClO)2〕の添加は、酸化還元電位の変曲点(+2
40mmV)が観測された時点で停止した。この様に、
酸化処理を施しためっき廃液に、含有リンに対して2倍
当量の塩酸を添加して脱炭酸処理を行った。脱炭酸処理
後のめっき廃液pH値は2以下であった。次いで、脱炭
酸処理を施しためっき廃液に、めっき廃液のpH値が
8.2に到達するまで石灰乳〔Ca(OH)2 〕を添加し、発
生した沈殿物を脱水濾過してから乾燥した。得られた肥
料の分析結果を下記の表2に示す。
【表2】 本実施例において得られた肥料においては、実施例1で
得られた肥料に比較してリン酸全量が低下する傾向があ
る。
【0021】比較例 pH値が4.2の無電解ニッケルめっき廃液に水酸化ナ
トリウム(NaOH)を添加してpH値を7.5とした。この
めっき廃液に、水硫化ナトリウム(NaSH)を添加した。
水硫化ナトリウム(NaSH)の添加は、酸化還元電位の変
曲点(−350mmV)が観測された時点で停止した。
このときのめっき廃液のpH値は、8.6であった。水
硫化ナトリウム(NaSH)の添加によって発生した沈殿物
を脱水濾過し、得られた濾液に、塩酸を添加して脱炭酸
処理を行った。脱炭酸処理後のめっき廃液pH値は2以
下であった。次いで、脱炭酸処理を施しためっき廃液
に、めっき廃液のpH値が8.4に到達するまで石灰乳
を添加し、発生した沈殿物を脱水濾過してから乾燥し
た。得られた肥料の分析結果を下記の表3に示す。
【表3】
【0022】実施例3 実施例1〜2、及び比較例で得られたリン酸肥料につい
ての肥効試験及び肥料の植物に対する害に関する栽培試
験を、財団法人日本肥糧検定協会によって行った。尚、
肥効試験及び肥料の植物に対する害に関する栽培試験の
各試験条件を下記表に示す。
【表4】
【表5】
【0023】肥効試験結果 実施例1において得られた肥料を使用した水準−1で
は、対照に用いた焼成リン酸肥料を使用した対照水準と
比較して、初期成育においては、両者に成育差は見られ
なかった。但し、成育が進むに従って、水準−1の成育
は、対照水準よりも勝り、地上部成育重量並びに作物体
によるリン酸の吸収量においても同等以上であった。ま
た、実施例2において得られた肥料を使用した水準−2
でも、対照水準と同等の成育並びに地上部生体重量を示
し、作物体によるリン酸の吸収においても同等であっ
た。これに対し、比較例において得られた肥料を使用し
た水準−3では、対照水準に比較して、成育並びに地上
部生体重において大幅に下回っており、リン酸の肥効が
殆ど認められなかった。
【0024】植物に対する害に関する栽培試験結果 実施例1及び実施例2において得られた肥料を使用した
水準−1及び水準−2の各水準では、対照に用いた三井
東圧肥料株式会社生産のリン酸肥料を使用した対照水準
と比較して、発芽並びに発芽後の成育は、対照水準と同
等であって有害物によると考えられる植物の成育上の異
常症状は認められなかった。これに対して、比較例にお
いて得られた肥料を使用した水準−3では、対照水準と
発芽開始日の差は見られなかったが、発芽後の成育は対
照水準よりも大幅に遅れ、生体重量においても明らかに
下回っていた。
【0025】実施例4 pH値が4.2の無電解ニッケルめっき廃液に水酸化ナ
トリウム(NaOH)を添加してpH値を7.2とした。この
めっき廃液に、水硫化ナトリウム(NaSH)を添加した。
水硫化ナトリウム(NaSH)の添加は、酸化還元電位の変
曲点(−390mmV)が観測された時点で停止した。
このときのめっき廃液のpH値は、7.8であった。水
硫化ナトリウム(NaSH)の添加によって発生した沈殿物
を脱水濾過し、得られた濾液を、ニッケル等の重金属と
キレート結合を形成するキレート樹脂が充填されたカラ
ムに通過させて微量の重金属を除去した後、石灰乳〔Ca
(OH)2 〕を添加して濾液のpH値を7.6に調整した。
その後、酸化剤としての次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)
を添加して酸化処理を行った。次亜塩素酸ナトリウム
(NaClO)の添加は、酸化還元電位の変曲点(+240m
mV)が観測された時点で停止した。
【0026】更に、酸化処理を施しためっき廃液を二分
割し、分割めっき廃液の一方に塩酸を添加して脱炭酸処
理を行った。脱炭酸処理後のめっき廃液pH値は2以下
であった。次いで、脱炭酸処理を施しためっき廃液に、
めっき廃液中の[Ca2+ ]/[PO4 3-]が2となるように、石
灰乳〔Ca(OH)2 〕を添加した。石灰乳の添加が完了した
ときのめっき廃液のpH値は、5.8であり、発生した
沈殿物を脱水濾過してから乾燥した。得られた肥料中の
く溶性リン酸を33%(P2O5換算)とすることができ、
肥料の品位を充分なものとすることができた。一方、他
方の分割めっき廃液に、分割めっき廃液の一方に添加し
たよりも多量の塩酸を添加した後、めっき廃液中の[Ca
2+ ]/[PO4 3-] が4となるように、石灰乳〔Ca(OH)2
を添加した。石灰乳の添加が完了したときのめっき廃液
のpH値は、5.8であったが、得られた肥料中のく溶
性リン酸は22%(P2O5換算)であり、やや肥料の品位
が低いものとなった。
【0027】実施例5 無電解ニッケルめっき廃液に、めっき廃液中に含有され
ているリン成分1モルに対して塩化銅(CuCl2) を2モル
量添加した後、塩酸等の酸を添加してpH値を1以下に
調整した。更に、pH値を調整しためっき廃液を50℃
に加温しつつ空気を曝気して酸化処理を行った。この酸
化処理は、約1時間行った。次いで、酸化処理を行った
めっき廃液に、水酸化ナトリウム(NaOH)を添加してpH
値を7.3とした後、水硫化ナトリウム(NaSH)を添加
した。水硫化ナトリウム(NaSH)の添加は、酸化還元電
位の変曲点(−360mmV)が観測された時点で停止
した。このときのめっき廃液のpH値は、8.0であっ
た。水硫化ナトリウム(NaSH)の添加によって発生した
沈殿物を脱水濾過し、得られた濾液を、ニッケル等の重
金属とキレート結合を形成するキレート樹脂が充填され
たカラムに通過させて微量の重金属を除去した。この様
に、酸化処理を施しためっき廃液に、含有リンに対して
1倍当量の塩酸を添加して脱炭酸処理を行った。その
後、脱炭酸処理を施しためっき廃液に、めっき廃液のp
H値が6.0に到達するまで石灰乳〔Ca(OH)2 〕を添加
し、発生した沈殿物を脱水濾過してから乾燥した。得ら
れた肥料中のく溶性リン酸は35%(P2O5換算)であ
り、良好な品位を呈するリン酸肥料が得られた。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、めっき廃液中のリン成
分から肥料を製造することができ、産業廃棄物であるめ
っき廃液の有効利用を図ることが可能となった。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン成分が溶解されためっき廃液からリ
    ン成分を分離して肥料を製造する際に、 該めっき廃液に含有されている重金属成分を除去すると
    共に、前記めっき廃液中のリン成分に対し酸化処理を施
    してリン酸(H3PO4)とした後、 前記リン酸をめっき廃液に対して不溶である不溶性リン
    化合物にしてから分離することを特徴とする肥料の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 めっき廃液として、無電解ニッケルめっ
    き廃液を使用する請求項1記載の肥料の製造方法。
  3. 【請求項3】 めっき廃液に含有されている重金属成分
    を除去した後、前記めっき廃液に酸化剤を添加し、リン
    酸の酸化処理を施す請求項1又は請求項2記載の肥料の
    製造方法。
  4. 【請求項4】 めっき廃液にカルシウム化合物を添加
    し、リン酸をめっき廃液に対して不溶性のリン酸カルシ
    ウムとする際に、めっき廃液中の[Ca2+ ]/[PO4 3-] が3
    以下となるように、カルシウム化合物を添加する請求項
    1〜3のいずれか一項記載の肥料の製造方法。
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