JP4153267B2 - 脱リン・脱アンモニア方法、アンモニア肥料の製造方法、及び熔融固化体の製造方法 - Google Patents

脱リン・脱アンモニア方法、アンモニア肥料の製造方法、及び熔融固化体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、転炉スラグを有効に利用して被処理水からリンを除去すると同時に、当該被処理水中に含有されるアンモニアも除去する脱リン・脱アンモニア方法、及び当該方法を利用したアンモニア肥料の製造方法、さらに熔融固化体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、屎尿や下水などの汚水処理での有機性汚泥物質(例えば、BODやCOD等)の問題や、河川、湖沼、海などの水域での富栄養化の問題の原因となる物質の一つとして、これらの水溶液中に含有するリンが挙げられており、したがって、近年においては、これらの水溶液中からの脱リン方法が種々開発されている。
【0003】
一方、下水処理等の際には、上記リンとは別にアンモニアについても除去が必要である。アンモニアもリンと同様に公害問題の原因物質の一つだからである。
【0004】
このような状況において、溶液中のリンとアンモニアとを同時に除去する方法としては、被処理水(リンとアンモニアとを含有する溶液)中にマグネシウムイオンを注入してリン酸マグネシウムアンモニウム(いわゆるMAP)を形成させて、リン酸マグネシウムアンモニウムとして被処理水中からリンとアンモニアとを同時に除去する方法が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように被処理水中からリン酸マグネシウムアンモニウムを形成することによりリンとアンモニアとを除去する場合には、リン酸マグネシウムアンモニウムを形成するリンとアンモニアのモル比は1:1であるため、被処理水中のリンとアンモニアのモル濃度が同じ程度である場合には特に問題となることはないが、例えば、被処理水が屎尿処理水などの場合には、アンモニアの方がリンに比べ過剰に含有されているため、リン酸マグネシウムアンモニウムを形成するためのリンが不足してしまい、リンを除去することはできても、アンモニアを充分除去することができなかった。
【0006】
一方、リンや窒素は植物の肥料として有用な物質であり、従って被処理水中から除去したリンやアンモニアを有効に利用すること、特に熔融固化体(例えば熔成リン肥)として、又は硫安等のアンモニア性窒素質肥料(以下、「アンモニア肥料」という。)として利用することができれば肥料のコストを下げることができ非常に好ましい。
【0007】
本発明は、このような状況においてなされたものであり、リン成分およびアンモニア成分を含有する被処理水、特に汚泥処理返流水から効率よくリンとアンモニアを除去する方法を提供すると共に、当該方法において被処理水から除去したアンモニアを用いてアンモニア肥料を製造する方法、および脱リン・脱アンモニア方法においてリン吸着材料として用いられた転炉スラグを用いて、肥料として有用な熔融固化体を製造する方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1において、被処理水からリン成分とアンモニア成分とを除去する脱リン・脱アンモニア方法であって、被処理水に硫酸及び/又は塩酸を加えて、pH3.5以下に調整する、第一pH調整工程と、前記第一pH調整工程後の被処理水に苛性ソーダ水溶液を加えて、pH9.0以上に調整する、第二pH調整工程と、前記第二pH調整工程終了後の被処理水に塩化カルシウム水溶液を加える、塩化カルシウム添加工程と、転炉より発生するスラグの粉砕物をリン吸着材料として用いこれを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記塩化カルシウム添加工程後の被処理水を通水する、脱リン工程と、により被処理水からリンを除去し、さらに、前記脱リン工程において脱リン処理された後の被処理水にアンモニアストリッピング法を施す、脱アンモニア工程、により被処理水からアンモニアを除去する、ことを特徴とする脱リン・脱アンモニア方法を提供する。
【0009】
この発明によれば、先ず被処理水から脱リンが行われる。
【0010】
つまり、転炉により発生するスラグ(以下、単に「転炉スラグ」とする場合がある。)の粉砕物をリン成分吸着材料として用い、被処理水から脱リンを行う前処理として、被処理水に硫酸及び/又は塩酸を加えてpH3.5以下に調整する第一pH調整工程を行うので、被処理水中に含まれている酸性イオン(特に炭酸イオン)を酸性ガス(炭酸ガス)として除去することができる。その結果、酸性イオンとカルシウムとの反応を防止することができる。転炉スラグ中に含有されるカルシウムは、リン成分を吸着するために必要不可欠な物質であり、当該カルシウムと酸性イオンとが反応してカルシウム塩(例えば炭酸カルシウム)が形成されてしまうと、リン成分を吸着するカルシウムが不足し、効率よく脱リンを行うことができなくなってしまうが、本発明によればこのような不都合が生じることがない。また、この発明は、前記第一pH調整工程に続いて、被処理水に苛性ソーダ水溶液を加えてpH9.0以上に調整する第二pH調整工程を行うことに特徴を有している。このように、酸性イオンを除去するために前記第一pH調整工程において酸性側にシフトさせた被処理水を、pH9.0以上、つまりアルカリ性側にシフトさせるのは、被処理水のpHをアルカリ性とすることにより、リン成分と転炉スラグ中に含有されるカルシウムとの反応を促進し、効率よく脱リンを行うことができるからである。さらにまた、本発明の方法は、前記第二pH調整工程終了後のリン成分含有排水に塩化カルシウム水溶液を加える塩化カルシウム添加工程を行うことにも特徴を有している。このように、塩化カルシウム添加工程を行うことにより、リン吸着材料としてのカルシウムの量を増加することができるので、効率よく脱リンすることができる。そして、本発明の方法は、転炉より発生するスラグの粉砕物をリン成分吸着材料として用い、これを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記塩化カルシウム添加工程後のリン成分含有排水を通水する脱リン工程を行うことにより、排水中に含有されているリン成分を効率よく除去することができる。
【0011】
続いて、本発明によれば、脱リンされた被処理水から脱アンモニア工程が行われる。
【0012】
つまり、被処理水にアンモニアストリッピング法が施される。アンモニアストリッピング法により被処理水中からアンモニアを除去する場合には、アンモニアの除去(ストリッピング)効率は、被処理水の温度とpHに依存することが知られており、温度は高ければ高いほど、またpHも高ければ高いほど、効率よくアンモニアをストリッピングすることができる。本発明によれば、前述したように被処理水から脱リンをするために被処理水のpHを9.0以上としているため、アンモニアストリッピング法を単独で行う場合のようにpHを高くする必要がなく、脱リン工程を終えた被処理水をそのまま用いることができる。
【0013】
前記請求項1に記載の発明においては、請求項2に記載するように、前記脱リン工程において、充填槽を用いるのではなく、転炉により発生するスラグを細粒化したものをリン吸着材として用い、前記塩化カルシウム添加工程後の被処理水中に、当該リン吸着材料を流動浮遊させることにより被処理水中のリンを除去してもよい。
【0014】
この発明は、転炉スラグをリン吸着材料として用い、これを脱リンすべき排水中に流動浮遊させることに特徴を有しており、このようにすることにより、流動浮遊するスラグの表面でスラグ中に含有されているカルシウムと、排水中に含有されているリン成分とが反応して、スラグ表面にリン成分が吸着されるので、脱リンを行うことができる。また、この発明は、前記請求項1と同様に、第一pH調整工程と、第二pH調整工程と、塩化カルシウム添加工程と、を有し、さらに脱アンモニア工程と有しているため、これら各工程における前記作用効果の全てを奏することができる。
【0015】
前記請求項1又は請求項2に記載の脱リン・脱アンモニア方法においては、請求項3に記載するように、前記被処理水が汚泥処理返流水であることが好ましい。
【0016】
本発明で言う汚泥処理返流水とは、リン酸根若しくはリンの有機化合物を含む下水若しくは屎尿などの汚水を処理した処理水、又は汚泥処理工程で発生する汚泥スラリを汚泥処理する際に濃縮、消化、脱水する工程で生じる分離液、脱離液、脱水ろ液等を汚泥処理工程へ返流する前の水のことをいう。当該汚泥処理返流水は、アンモニア濃度、リン濃度ともに高く、また消化槽から排出される汚泥処理返流水の場合には、水温が約35℃であるため、このような場合においては、アンモニアストリッピング法を行う際の被処理水のpHは9.0以上あれば、空気を利用して量的に多くのアンモニアを放散することができ、本発明の方法を好適に用いることができる。
【0017】
また、本発明は、上記課題を解決するために、請求項4に記載するように、前記請求項1乃至請求項3のいずれか一の請求項に記載の脱リン・脱アンモニア方法より被処理水から放散させたアンモニアガスを回収し、当該アンモニアガスを硫酸、硝酸、リン酸のいずれかにより洗浄してアンモニア肥料とすることを特徴とするアンモニア肥料の製造方法を提供する。
【0018】
この発明によれば、本発明の脱リン・脱アンモニア方法において被処理水にアンモニアストリッピング法を施した際に放散されるアンモニアガスをアンモニア肥料として有効に利用することができる。
【0019】
さらに、本発明は、上記課題を解決するために、請求項5に記載するように、前記請求項1乃至請求項3のいずれか一の請求項に記載の脱リン・脱アンモニア方法においてリン吸着材料として使用した転炉スラグの粉砕物と、リン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰と、酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩とを混合する混合工程と、前記混合工程において形成された混合物を酸素の存在下で1350℃以上で熔融する熔融工程と、前記熔融工程で形成された熔融物を冷却固化することにより熔融固化体を形成する冷却固化工程と、を有することを特徴とする熔融固化体の製造方法を提供する。
【0020】
この発明によれば、前述の脱リン・脱アンモニア方法においてリン吸着材料として使用した転炉スラグを原料として、肥料として有用な熔融固化体を製造することができる。前述の脱リン方法において使用した転炉スラグには、植物の肥料として有用なリンが大量に含まれているため、他に必要な成分を混合工程により加えることで、その処理が問題となっていた転炉スラグを有用な肥料として再生することができる。
【0021】
さらに、前記請求項5に記載の発明においては、請求項6に記載するように、前記混合工程において、最終製造物たる熔融固化体の成分が、CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分が40%以上、く溶性苦土が12%以上、く溶性リン酸が17%以上となるようにそれぞれを混合することが好ましい。
【0022】
この発明によれば、前記混合工程において、最終製造物たる熔融固化体の成分をこのような割合とすることにより、製造された熔融固化体は、肥料取締法における熔成リン肥として利用することができる。熔成リン肥は、酸性土壌の多い日本の農業事情に適したリン酸質質料として広く使用されており、したがって、本発明により、従来廃棄物であった転炉スラグをリン吸着材料として用い、さらにその後、これを原料として熔成リン肥を製造することができるので熔成リン肥の製造コストを大幅に削減することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の脱リン・脱アンモニア方法、アンモニア肥料の製造方法、及び熔融固化体の製造方法についてそれぞれ具体的に説明する。
【0024】
(A)脱リン・脱アンモニア方法
図1は、本発明の脱リン・脱アンモニア方法を示すフローチャート図である。本発明の脱リン・脱アンモニア方法は、(1)第一pH調整工程と、(2)第二pH調整工程と、(3)塩化カルシウム添加工程と、(4)脱リン工程と、(5)脱アンモニア工程と、からなることに特徴を有している。以下にそれぞれの工程毎に説明する。
【0025】
(1)第一pH調整工程
本発明の脱リン・脱アンモニア方法における第一pH調整工程とは、被処理水に硫酸及び/又は塩酸を加えて、pHを3.5以下に調整する工程をいう。このようにpHを調整するのは、被処理水中に含まれている酸性イオン(具体的には炭酸イオンなど)を除去するためである。この時、エア・レーションすることにより効率的に炭酸ガスを除去することができる。
【0026】
本発明の方法における被処理水としては、特に限定されることはなく、リン酸イオンなどのリン成分とアンモニウムイオンなどのアンモニア成分を含有しており、脱リン・脱アンモニアが必要な水溶液であればいかなる水溶液であってもよく、特にリン酸とアンモニウムイオンとを含有した排水の代表例である下水二次処理水や、汚泥処理水などには、本発明の方法を好適に用いることができる。
【0027】
また、本工程で使用する硫酸及び塩酸は特に限定されるものではなく、市販されているものを適宜希釈等して用いて良い。
【0028】
(2)第二pH調整工程
本発明の方法における第二pH調整工程とは、前記第一pH調整工程終了後の被処理水に苛性ソーダ水溶液を加えて、pHを9.0以上に調整する工程をいう。
【0029】
本工程で使用する苛性ソーダは特に限定されるものではなく、市販されているものを適宜希釈等して用いて良い。
【0030】
(3)塩化カルシウム添加工程
本発明の方法における塩化カルシウム添加工程とは、前記第二pH調整工程終了後の被処理水に塩化カルシウム水溶液を添加する工程をいう。
【0031】
本工程で使用する塩化カルシウム水溶液も特に限定されるものではなく、市販されているものを適宜希釈等して用いて良い。
【0032】
(4)脱リン工程
本発明の方法における脱リン工程とは、製鉄所の転炉より発生するスラグの粉砕物をリン成分吸着材料として用い、これを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記塩化カルシウム添加工程後の被処理水を通水する工程をいう。
【0033】
製鉄所の転炉より発生するスラグの一般的な成分組成は以下の表1に示す通りである。
【0034】
【表1】
Figure 0004153267
表1に示すように、転炉スラグの50%前後が酸化カルシウムであり、一方、被処理水中のリン成分はその大部分がリン酸イオン(PO4 3-)の形態で存在していることが一般的に知られている。そうすると、リン酸イオンの形態で存在しているリン成分が前記表1に示すような成分組成の転炉スラグと接触すると、該転炉スラグ主成分であるカルシウムと反応して難熔成の、例えばヒドロキシアパタイト〔Ca5(PO43(OH)〕を形成することが考えられ、このヒドロキシアパタイトが転炉スラグ表面において晶析することでリン含有排水中のリンが除去されると推定できる。
【0035】
従って、本発明の方法においてリン成分吸着材料として用いる転炉スラグの成分は、厳密に限定されることはないが、前記推定からするとカルシウムを多く含有していることが好ましい。
【0036】
また、前記推定からすると、転炉スラグは、その表面積を大きくしてリン含有排水との接触確率を高めることが好ましく、従って転炉スラグを粉砕して用いるのがよいが、被処理水が多量の場合においてはそれなりの通水速度が必要となり、通水速度は転炉スラグの微細化によって低下する傾向がある。このため、転炉スラグの粉砕に際しては、上記傾向を考慮し、粒径10mm以下において適当な粒径組成を選択するのが良い。リン吸着材料として使用する転炉スラグの粒径は、統一する必要はなく、大小さまざまな粒径のものを混合して用いることも可能である。
【0037】
本発明の脱リン工程において用いられる充填槽は、特に限定されるものではなく従来公知の充填槽を任意に用いることができる。
【0038】
また、脱リン工程は、転炉により発生するスラグを細粒化したものをリン吸着材料として用い、前記塩化カルシウム添加工程後のリン含有排水中に、当該リン吸着材料を流動浮遊させるようにしてもよい(図2参照)。処理すべきリン含有排水を通水させるのではなく、リン含有排水を予めタンクなどに貯水しておき、そこで転炉スラグを流動浮遊させることにより、前記通水する場合と同様の効果を得ることができる。
【0039】
本発明においてこの脱リン工程を施すための装置、つまり被処理水を貯水するための装置は特に限定されることはなく、被処理水中で転炉スラグが流動浮遊するような環境を作ることができればいかなる装置であってもよい。例えば、図3に示すように、撹拌装置31を装備したタンク30を用いることにより、流動浮遊している転炉スラグ32と被処理水中のリンとの接触回数を増加することができ、効率良くリンの除去をすることができるので好ましい。
【0040】
(5)脱アンモニア工程
本発明の方法における脱アンモニア工程とは、アンモニアストリッピング法を用いて、前記脱リン工程後の被処理水中からをアンモニアを除去する工程をいい、本発明においては、従来公知のアンモニアストリッピング法を用いることができる。
【0041】
通常、水中のアンモニア成分は、アンモニウムイオン(NH4 +)と遊離アンモニア(NH3)とが平衡を保って存在しているところ(式1参照)、本発明において用いるアンモニアストリッピング法とは、当該水中に空気を吹き込むことにより、アンモニア成分のうち、遊離アンモニアを気相に放散させることで液中からアンモニアを除去する方法である。従って、式1からも明らかなように、被処理水のpHが高くなるにつれて、平衡は右にずれるので遊離アンモニアのモル比が上昇し、その結果アンモニアの除去を効率よく行うことができる。
【0042】
【式1】
Figure 0004153267
また、水中のアンモニウムイオン(NH4 +)と遊離アンモニア(NH3)とのモル比率は、水温の影響も受けることが知られており、温度が高くなるほど遊離アンモニアの比率が高くなる。
【0043】
図4は、被処理水のpHと温度と遊離アンモニアのモル比との関係を表した図である。例えば、被処理水のpHが9.0で、温度が30℃の場合には、被処理水中の全アンモニア成分のうち約50%が遊離アンモニアであることがわかる。
【0044】
そうすると、本発明の脱アンモニア工程を行う前の段階において被処理水のpHは、前記第二pH調整工程によって9.0以上となっており、しかも例えば、アンモニア濃度の高い脱水ろ液のような汚泥処理工程の排水では35℃前後の水温があるため、被処理水中の遊離アンモニアは60%以上になり、大量のアンモニアがストリッピング可能である。
【0045】
このように、本発明の脱リン・脱アンモニア方法によれば、特に、冬場でも温度が高くアンモニア成分の含有率が高い汚泥処理水から効率よくリンとアンモニアとを除去することができる。
【0046】
(B)アンモニア肥料の製造方法
次に、本発明のアンモニア肥料と製造方法について説明する。
【0047】
本発明のアンモニア肥料の製造方法は、前述してきた本発明の脱リン・脱アンモニア方法よって被処理水から放散させたアンモニアガスを回収し、当該アンモニアガスを硫酸、硝酸、リン酸のいずれかにより洗浄してアンモニア肥料とすることに特徴を有している。このようにアンモニアガスを硫酸、硝酸、リン酸により洗浄することにより、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウムをそれぞれ製造することができ、これらを適宜用いてアンモニア肥料を製造することができる。なお、アンモニアガスの具体的な洗浄方法や、アンモニア肥料の具体的な製造方法については特に限定することはなく、従来公知のいかなる方法をも用いることができる。
【0048】
(C)熔融固化体の製造方法
次に、本発明の熔融固化体の製造方法について図面を用いて説明する。
【0049】
図5は、本発明の熔融固化体の製造方法を示すフローチャート図である。本発明の熔融固化体の製造方法は、(1)混合工程と、(2)熔融工程と、(3)冷却固化工程と、からなることに特徴を有している。以下にそれぞれの工程毎に説明する。
【0050】
(1)混合工程
本発明の熔融固化体の製造方法における混合工程とは、前述の脱リン・脱アンモニア方法においてリン吸着材料として使用された転炉スラグの粉砕物を原料として、これとリン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰と、酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩とを混合して、以下で説明する熔融工程で用いる混合物を形成するための工程である。脱リン・脱アンモニア方法においてリン吸着材料として使用された転炉スラグは、前記表1に示した成分組成に加え、その表面には被処理水中に溶存していたリン成分が吸着していることから、植物の肥料として有用な熔融固化体を製造する際の原料として好適に用いることができる。
【0051】
本工程で使用することが好ましい転炉スラグとしては、前記脱リン方法において吸着材として使用されてリン成分が吸着されたものであれば特に限定されることはない。例えば、粒径0.5〜1.2mmの転炉スラグを充填したカラムに120日間、1〜5mg/lの被処理水を通水したところスラグ1kg当たりリン含有量はP25で15〜45g増加した。
【0052】
また、本工程でリン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰を混合するのは、これらは通常廃棄物として処理されているものであるところ、これらにも肥料として有用な熔融固化体を製造するために必要なリン成分が含まれており、本発明に用いることにより廃棄物を有効利用することが可能となるからである。
【0053】
本工程で混合可能なリン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰は特に限定されるものではない。例えば、下水処理に高分子凝集剤を使用した高分子系下水汚泥、又は高分子系下水汚泥を焼却した高分子系下水汚泥焼却灰などはリン含有量が多く望ましい。
【0054】
また、本工程で酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩を混合するのは、熔融固化体を製造するために必要な成分であるマグネシウムを補充するためである。
【0055】
(2)熔融工程
次に熔融工程について説明する。本発明の熔融固化体の製造方法における熔融工程とは、前記混合工程において形成された混合物を酸素の存在下で1350℃以上で熔融することにより熔融物を形成する工程である。
【0056】
本発明における熔融工程については、上記の条件下で熔融物を形成することができればよく、その他を特に限定されるものではない。したがって、従来公知の溶融炉を用いることが可能である。
【0057】
また、本発明の方法における熔融工程においては、1350℃以上で溶融するため、廃棄物中の病原菌やウィルスを死滅せしめることができるため、衛生的にも優れた熔融固化体を製造することができる。
【0058】
(3)冷却固化工程
次に冷却固化工程について説明する。本発明の熔融固化体の製造方法における冷却固化工程とは、前記熔融工程において形成された熔融物を冷却固化することにより、本発明の最終目的物たる熔融固化体を製造するための工程である。
【0059】
本発明における冷却固化工程については、上記目的を達成することができればよく、その具体的方法や装置について特に限定されるものではない。例えば、熔融物を冷却固化する方法としては、水中に熔融物を導入する水冷法が単純かつ安価であるため好ましく、水冷法を用いた場合には、冷却され固化した熔融固化体を乾燥機により乾燥し、その後粉砕機により、肥料として用いる際に好適な大きさに粉砕してもよい。
【0060】
ここで、本発明の方法においては、前記で説明した混合工程において、混合物を形成する際に、最終生成物たる熔融固化体の成分として、CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分が40%以上、く溶性苦土が12%以上、く溶性リン酸が17%以上となるように混合することが好ましい。このような成分を有する熔融固化体はく溶性リン肥として用いることができるからである。
【0061】
熔成リン肥の成分は、肥料取締法によって、く溶性燐酸17%以上、アルカリ分40%以上、く溶性苦土12%以上と定められているが、本発明の方法における混合工程において、当該成分となるように調整して混合することにより熔成リン肥を製造することができる。
【0062】
ここで、上記の成分に調整する方法としては、原料として用いるリン吸着材料として用いられた後の転炉スラグ中に含有されている各成分(CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分、く溶性苦土、く溶性リン酸)の量を予め測定しておき、不足分を補充する方法がある。
【0063】
例えば、CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分40%以上、く溶性苦土12%以上となるように補充する物質としては、CaO、MgOおよび/またはその塩の材料として、製鉄所等で発生するマグネシア系耐火物の廃材、ドロマイト系耐火物の廃材および転炉滓を利用することができる。一方、く溶性リン酸が17%以上となるように補充する物質としては、リン酸および/またはその塩の材料として、金属の表面処理等に使用した廃リン酸または廃リン酸塩を利用することができる。
【0064】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、製鉄所の転炉から生じる転炉スラグを有効に利用して、被処理水中からリンを除去するとともにアンモニアを除去することができる。さらに、本発明によれば、前記被処理水中から除去したアンモニアを用いてアンモニア肥料を製造することができ、さらに、リンを除去するために用いた転炉スラグや、従来からその処分が問題となっていた汚泥及び/又は汚泥焼却灰を原料として、植物の肥料として有用な熔融固化体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の脱リン・脱アンモニア方法の一例を示すフローチャート図である。
【図2】本発明の脱リン・脱アンモニア方法の他の一例を示すフローチャート図である。
【図3】本発明の脱リン・脱アンモニア方法において、脱リン工程を行う装置の概略断面図である。
【図4】被処理水のpHと温度と遊離アンモニアのモル比との関係を表した図である。
【図5】本発明の熔融固化体の製造方法を示すフローチャート図である。
【符号の簡単な説明】
30 タンク
31 撹拌装置
32 転炉スラグ

Claims (6)

  1. 被処理水からリン成分とアンモニア成分とを除去する脱リン・脱アンモニア方法であって、
    被処理水に硫酸及び/又は塩酸を加えて、pH3.5以下に調整する、第一pH調整工程と、
    前記第一pH調整工程後の被処理水に苛性ソーダ水溶液を加えて、pH9.0以上に調整する、第二pH調整工程と、
    前記第二pH調整工程終了後の被処理水に塩化カルシウム水溶液を加える、塩化カルシウム添加工程と、
    転炉より発生するスラグの粉砕物をリン吸着材料として用いこれを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記塩化カルシウム添加工程後の被処理水を通水する、脱リン工程と、により被処理水からリンを除去し、さらに、
    前記脱リン工程において脱リン処理された後の被処理水にアンモニアストリッピング法を施す、脱アンモニア工程、により被処理水からアンモニアを除去する、
    ことを特徴とする脱リン・脱アンモニア方法。
  2. 前記脱リン工程において、充填槽を用いるのではなく、転炉により発生するスラグを細粒化したものをリン吸着材として用い、前記塩化カルシウム添加工程後の被処理水中に、当該リン吸着材料を流動浮遊させることにより被処理水中のリンを除去することを特徴とする請求項1に記載の脱リン・脱アンモニア方法。
  3. 前記被処理水が汚泥処理返流水であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の脱リン・脱アンモニア方法。
  4. 前記請求項1乃至請求項3のいずれか一の請求項に記載の脱リン・脱アンモニア方法より被処理水から放散させたアンモニアガスを回収し、当該アンモニアガスを硫酸、硝酸、リン酸のいずれかにより洗浄してアンモニア肥料とすることを特徴とするアンモニア肥料の製造方法。
  5. 前記請求項1乃至請求項3のいずれか一の請求項に記載の脱リン・脱アンモニア方法においてリン吸着材料として使用した転炉スラグの粉砕物と、リン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰と、酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩とを混合する混合工程と、
    前記混合工程において形成された混合物を酸素の存在下で1350℃以上で熔融する熔融工程と、
    前記熔融工程で形成された熔融物を冷却固化することにより熔融固化体を形成する冷却固化工程と、
    を有することを特徴とする熔融固化体の製造方法。
  6. 前記混合工程において、最終製造物たる熔融固化体の成分が、CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分が40%以上、く溶性苦土が12%以上、く溶性リン酸が17%以上となるようにそれぞれを混合することを特徴とする請求項5に記載の熔融固化体の製造方法。
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