JP4335354B2 - 排水処理装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、排水処理装置に関し、詳しくは、生物学的脱リン法を採用した排水処理設備におけるリンの除去を効率よく行うとともに、リンを有用なリン酸マグネシウムアンモニウム六水和物として回収するための排水処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、図3の系統図に示すように、沈砂池11,除塵機12,最初沈殿池13,処理槽14及び最終沈殿池15により形成される標準活性汚泥法の処理槽14として、流入側から嫌気槽16,脱窒槽17及び好気槽18を連設し、最終沈殿池15から嫌気槽16に返送汚泥Aを循環させるとともに、好気槽18から脱窒槽17へ硝化液Bを循環させることにより、BOD等の除去だけでなく、リンや窒素も除去するようにした排水処理設備が採用されている。
【0003】
リンの除去は、嫌気−好気状態で体内にポリリン酸を蓄積する細菌を利用した生物脱リン法により行われるが、この方法では、余剰汚泥を濃縮する工程及び汚泥の貯留時に汚泥からリン酸塩(オルトリン酸イオン)が放出されるので、これらからの返流水中に高濃度のリンが溶出した状態になり、これが水処理系に戻されることになるため、設備全体で見たリン除去率は必ずしも良いとはいえなかった。
【0004】
さらに、流入水中のリン負荷が高い場合、返送汚泥中の含有リン量が4〜6%にもなり、リンを放出し易い状態となる。これらの一部は最終沈殿池でリンを放出することがあるため、二次処理水中にリンが漏出するおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、流入水中に含まれるリンを効率よく除去することができ、リン負荷が高い場合でも二次処理水中にリンが漏出することを確実に防止できる排水処理装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の排水処理装置は、最初沈澱池からの流入水を浄化処理する嫌気槽、脱窒槽及び好気槽を連設した処理槽と、該処理槽で浄化処理された処理水から汚泥を分離する最終沈澱池とを備え、該最終沈澱池から抜き出された前記汚泥の少なくとも一部を返送汚泥として前記嫌気槽に循環させる排水処理装置において、前記流入水の一部に含まれるアンモニア性窒素を吸着して、吸着処理後の脱アンモニア水を前記流入水に合流させるイオン交換手段段と、前記返送汚泥の少なくとも一部を固液分離によりリン放出汚泥と分離水とに分離する固液分離手段と、前記イオン交換手段の再生排水と前記固液分離手段の前記分離水とを導入して再生排水中のアンモニア及び分離水中のリンをリン酸マグネシウムアンモニウム六水和物として除去する脱リン手段とを備えていることを特徴としている。また、当該排水処理装置おいて、前記返送汚泥を前記嫌気槽に循環させる循環路から分岐して前記固液分離手段に向かう経路に、汚泥濃縮槽とリン放出槽とを設けたことを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の排水処理装置の一形態例を示す系統図である。この排水処理装置は、従来と同様の、沈砂池11と、除塵機12と、最初沈殿池13と、嫌気槽16,脱窒槽17及び好気槽18を連設した処理槽14と、最終沈殿池15とを備えるとともに、流入水中のアンモニア性窒素を吸着するイオン交換手段21と、最終沈殿池15からの返送汚泥の固液分離を行う固液分離手段22と、前記イオン交換手段21の再生排水と前記固液分離手段22の分離水とを導入して再生排水中のアンモニア及び分離水中のリンをリン酸マグネシウムアンモニウム六水和物として除去する脱リン手段23とを備えたものである。
【0008】
イオン交換手段21は、例えばナトリウムとアンモニアとをイオン交換させるイオン交換剤を用いたものであり、ナトリウムイオンを流入水中に放出することによって流入水中のアンモニウムイオン(アンモニア性窒素)を吸着する。アンモニウムイオンを吸着したイオン交換剤の再生は、ナトリウムイオン含有水、通常は水酸化ナトリウム又は塩化ナトリウムの水溶液、あるいは海水を再生液として使用することにより行われ、イオン交換剤に吸着しているアンモニウムイオンを再生排水中に放出し、イオン交換剤はナトリウムイオンを吸着した状態に再生される。
【0009】
固液分離手段22は、汚泥濃縮工程や汚泥貯留時に汚泥から放出されたリン酸塩を含む分離水と、リン酸塩を放出した汚泥とを分離するものであって、例えば膜分離装置を使用することにより効率よく固液分離を行うことができる。
【0010】
また、脱リン手段23は、前記イオン交換手段21からの再生排水中に含まれるアンモニウムイオンと、固液分離手段22からの分離水中のリン酸イオンと、必要に応じて添加されるマグネシウム化合物のマグネシウムイオンとを、所定のpHで反応させることによって結晶状態のリン酸マグネシウムアンモニウム六水和物(MAP:ストラバイト:MgNH4PO4・6H2O)を生成させ、これを分離回収するものである。
【0011】
以下、処理手順に基づいて説明する。まず、流入水Cは、沈砂池11で沈砂Dが、除塵機12でしさEが、さらに、最初沈殿池13で初沈汚泥Fがそれぞれ分離された後、処理槽14に向かう流れGと、イオン交換手段21に向かう流れHとに分岐する。処理槽14に向かった流れGは、嫌気槽16で返送汚泥Aと混合し、脱窒槽17で硝化液Bと混合した後、好気槽18に流入する。この各槽を経ることにより、リンがポリリン酸を蓄積する細菌の体内に取り込まれて流入水中から除去され、硝化脱窒作用により流入水中の窒素も除去される。処理槽14で所定の浄化処理が行われ、最終沈殿池15で汚泥を分離した処理水Jが殺菌後に河川等に放流される。
【0012】
また、イオン交換手段21に向かった流れHは、必要に応じて設けられる夾雑物除去手段24でイオン交換手段21に悪影響を与える夾雑物がしさKとして分離除去された後、イオン交換手段21に流入し、流入水中のアンモニア性窒素のアンモニウムイオンをイオン交換剤に吸着させてナトリウムイオンを取り込んだ脱アンモニア水Lとなり、処理槽14に向かう前記流れGに合流して処理される。
【0013】
また、イオン交換手段21は、ナトリウムイオン含有水Mの導入により再生され、イオン交換剤からアンモニウムイオンを脱着するとともに、イオン交換剤にナトリウムイオンを吸着させてイオン交換剤の再生を終えた再生排水Nは、アンモニウムイオンを多量に取り込んだ状態で脱リン手段23に送り込まれる。なお、イオン交換手段21の処理量は、脱リン手段23のアンモニウムイオン必要量により適宜設定することができる。
【0014】
一方、最終沈殿池15から抜き出された汚泥Pは、その一部が返送汚泥Aとして循環し、残部が余剰汚泥Qとして処理される。返送汚泥Aの一部Rは、固液分離手段22に分岐して固液分離されることにより濃縮し、一部はリン放出汚泥Sとして返送汚泥Aに戻され、残部は余剰汚泥Tとして処理される。固液分離手段22で汚泥から分離した分離水Uは、リン酸イオンを多量に含有した状態で脱リン手段23に送り込まれる。
【0015】
アンモニウムイオンを含む再生排水Nとリン酸イオンを含む分離水Uとが流入した脱リン手段23では、前述のMAPの生成反応に不足するマグネシウムイオンが添加され、また、pH調整剤が添加されて所定のpHに調節されることによりMAPが生成する。沈殿したMAPは、回収物Vとして取り出され、MAPの生成反応でアンモニウムイオン及びリン酸イオンが除去された脱リン水Wは、最初沈殿池13に戻されて再処理される。
【0016】
このとき、MAPの生成反応に必要なアンモニウムイオンを、下水等の流入水中に含まれているアンモニア性窒素から得るようにしているため、アンモニウムイオンを別途添加する必要がなくなるので、リンの除去に要するコスト(薬品費)を削減することができる。さらに、イオン交換手段21の再生液として海水を使用すると、再生液としてのナトリウムイオン含有水Mを特別に用意する必要がなくなるだけでなく、海水中に含まれるマグネシウムイオンをMAP生成用として利用することができるので、脱リン手段23で添加するマグネシウムイオン量を少なくあるいは無くすことができ、より経済的な運転を行うことができる。また、固液分離手段22として膜分離を採用した場合は、脱リン水Wとして固形物をほとんど含まないものが得られるので、これを処理槽14に戻すことができ、最初沈殿池13の負担を軽減することができる。
【0017】
脱リン手段23から回収したMAPは、例えば緩効性肥料として使用することができ、さらに、カリウム塩を混合して造粒等の加工を施すことにより、植物の三大栄養素を含む肥料として有効に利用することができる。
【0018】
また、汚泥から分離した分離水Uは、リン酸塩を高濃度で含んでいるため、この分離水Uに対して脱リン操作を行うことにより、効果的な脱リン処理を行うことができる。
【0019】
そして、固液分離手段22でリン酸塩を分離水U中に放出したリン放出汚泥Sを返送汚泥として循環させるとともに、脱リン手段23で脱リン処理された脱リン水Wを水処理系に戻すようにしたことにより、微生物中のポリリン酸塩蓄積量を減少させることができるので、安定した生物脱リン運転を行うことができ、流入水中のリン負荷が高い場合でも、二次処理水中にリンが漏出することを確実に防止することができる。
【0020】
図2は、本発明の排水処理装置の他の形態例を示す系統図である。この排水処理装置は、図1に示す装置において、返送汚泥Aから分岐して固液分離手段22に向かう汚泥Rの経路に、汚泥濃縮槽25とリン放出槽26とを設けたものである。
【0021】
汚泥濃縮槽25は、流入した汚泥Rを濃縮してリン放出槽26でのリンの放出を促進するためのものであって、適宜な濃縮手段を用いることができるが、濃縮分離液中へのリンの放出が少ないものが好ましく、例えば、濃縮時間の短い遠心濃縮法を使用することができる。汚泥濃度を、例えば3%程度に濃縮された濃縮汚泥Xはリン放出槽26に送られ、濃縮分離液Yは最初沈殿池13に戻される。
【0022】
リン放出槽26は、濃縮汚泥Xを緩やかな撹拌状態あるいは静置状態に保持することによって濃縮汚泥Xからリン酸塩を放出させるものであって、十分にリン酸塩を放出した状態の汚泥Zが固液分離手段22に送られて固液分離される。
【0023】
このように形成することにより、前記図1に示した形態例に比べて、返送汚泥Aが低濃度である場合や、固液分離手段22での滞留時間が長くとれない場合でも、効率よくリンを除去することができる。
【0024】
さらに、最終沈殿池15から抜き取った汚泥Pから余剰汚泥Qを取り出すことなく、全量を返送汚泥A及びリン放出槽26へ送る汚泥Xとして処理することにより、リン含有量の少ない余剰汚泥Tを固液分離手段22から取り出すことができるので、汚泥処理先でのリンの処理が不要となる。
【0025】
また、リン放出槽26において、例えば3%程度に濃縮した汚泥を、DO,ORP,水温,撹拌強度等の環境を概ね一定とした状態に長時間保持することにより、微生物の自己酸化作用で固形物量を減少させることもできる。すなわち、高濃度で安定した生活環境下ではあるが、栄養源には乏しい環境におくことにより、活性汚泥中の微生物が自己酸化を行い、これによって汚泥量が減少するとともに、汚泥中の有機物は、微生物の自己酸化により消費されて水と二酸化炭素とになり、リン酸塩が液中に放出されることになる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の排水処理装置によれば、安定した生物脱リン運転を行うことができ、流入水中のリン負荷が高い場合でも、二次処理水中にリンが漏出することを確実に防止することができる。しかも、回収したリンをそのまま肥料として利用することができ、さらに、リンを除去するための反応に必要な薬品のコストも最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の排水処理装置の一形態例を示す系統図である。
【図2】 本発明の排水処理装置の他の形態例を示す系統図である。
【図3】 生物脱リン法による排水処理設備の一例を示す系統図である。
【符号の説明】
11…沈砂池、12…除塵機、13…最初沈殿池、14…処理槽、15…最終沈殿池、16…嫌気槽、17…脱窒槽、18…好気槽、21…イオン交換手段、22…固液分離手段、23…脱リン手段、24…夾雑物除去手段、25…汚泥濃縮槽、26…リン放出槽
Claims (2)
- 最初沈澱池からの流入水を浄化処理する嫌気槽、脱窒槽及び好気槽を連設した処理槽と、該処理槽で浄化処理された処理水から汚泥を分離する最終沈澱池とを備え、該最終沈澱池から抜き出された前記汚泥の少なくとも一部を返送汚泥として前記嫌気槽に循環させる排水処理装置において、前記流入水の一部に含まれるアンモニア性窒素を吸着して、吸着処理後の脱アンモニア水を前記流入水に合流させるイオン交換手段段と、前記返送汚泥の少なくとも一部を固液分離によりリン放出汚泥と分離水とに分離する固液分離手段と、前記イオン交換手段の再生排水と前記固液分離手段の前記分離水とを導入して再生排水中のアンモニア及び分離水中のリンをリン酸マグネシウムアンモニウム六水和物として除去する脱リン手段とを備えていることを特徴とする排水処理装置。
- 前記返送汚泥を前記嫌気槽に循環させる循環路から分岐して前記固液分離手段に向かう経路に、汚泥濃縮槽とリン放出槽とを設けたことを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
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