JP2004008865A - 脱リン方法、及び熔融固化体の製造方法 - Google Patents
脱リン方法、及び熔融固化体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】汚泥処理返流水から効率よく脱リンする方法を提供すると共に、当該脱リン方法においてリン吸着材料として用いられる転炉スラグを用いて、肥料として有用な熔融固化体を製造する方法を提供することを課題とする。
【解決手段】汚泥処理返流水のpHを予め調整し、その後に転炉スラグをリン吸着材料として用いることで脱リンを行う。また、前記脱リンに用いた転炉スラグを原料とし、さらに汚泥及や汚泥焼却灰を原料として、これらを熔融固化することにより肥料として有用な熔融固化体を製造する。
【解決手段】汚泥処理返流水のpHを予め調整し、その後に転炉スラグをリン吸着材料として用いることで脱リンを行う。また、前記脱リンに用いた転炉スラグを原料とし、さらに汚泥及や汚泥焼却灰を原料として、これらを熔融固化することにより肥料として有用な熔融固化体を製造する。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、転炉スラグを有効に利用して汚泥処理返流水からリン成分を除去する方法、及び脱リン方法においてリン吸着材料として用いた転炉スラグをさらに有効に利用して、肥料として有用な熔融固化体を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
汚泥を処理するためには、濃縮工程、消化工程、脱水工程等の様々な工程を要する。各工程においては分離液、脱離液、脱水ろ液等の排液がそれぞれ生じるが、これらの排液は各工程にフィードバックさせて数回にわたって処理が行われている。(以下、フィードバックさせる排液を「汚泥処理返流水」とする場合がある。)。この汚泥処理返流水中には、多量のリン成分が含有されていることが知られており、これを除去することが必要であった。
【0003】
また、これとは別に、製鉄所から生じる転炉スラグについては、これを有効利用する方法が模索されていた。
【0004】
このような状況において、転炉スラグ中に含有されるカルシウムがリンを吸着する性質に着目し、当該転炉スラグをリン吸着材料として用い、汚水処理の際に生じる処理水などのリン含有排水から脱リンする方法が開発されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、単純に転炉スラグ中に含有されるカルシウムを利用して汚泥処理返流水から脱リンする場合においては、汚泥処理返流水に含まれている炭酸ガスがリンよりも先にカルシウムと反応して炭酸カルシウムを形成してしまい、その結果、カルシウムがリン吸着材料として機能しなくなったり(カルシウムとリンとが反応しなくなる。)、機能したとしてもその機能が著しく低下する場合があった。また、汚泥処理返流水中には一般的な処理水に比して多量のリン成分が含有されているため、汚泥処理返流水に適した脱リン方法が必要である。
【0006】
一方、リン成分は植物の肥料として有用な物質であり、従って汚泥処理返流水中から除去したリン成分を有効に利用すること、特に熔融固化体(例えば熔性リン肥)として利用することができれば肥料のコストを下げることができリサイクルの観点から好ましい。
【0007】
本発明は、このような状況においてなされたものであり、汚泥処理返流水から効率よく脱リンする方法を提供すると共に、脱リン方法においてリン吸着材料として用いられた転炉スラグを用いて、肥料として有用な熔融固化体を製造する方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1において、汚泥処理返流水からリン成分を除去する脱リン方法であって、汚泥処理返流水に硫酸及び/又は塩酸を加えてpH3.5以下に調整する第一pH調整工程と、前記第一pH調整工程後の汚泥処理返流水に苛性ソーダ水溶液を加えてpH8.0以上に調整する第二pH調整工程と、前記第二pH調整工程終了後の汚泥処理返流水に塩化カルシウム水溶液を加える塩化カルシウム添加工程と、転炉より発生するスラグの粉砕物をリン吸着材料として用い、これを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記第二pH調整工程後の汚泥処理返流水を通水する脱リン工程と、からなることを特徴とする脱リン方法を提供する。
【0009】
この発明によれば、汚泥処理返流水からリン成分を除去する脱リン方法であって、転炉により発生するスラグ(以下、単に「転炉スラグ」とする場合がある。)の粉砕物をリン吸着材料として用い、汚泥処理返流水から脱リンを行う前処理として、汚泥処理返流水に硫酸及び/又は塩酸を加えてpH3.5以下に調整する第一pH調整工程を行うので、汚泥処理返流水中に含まれている酸性イオン(特に炭酸イオン)を酸性ガス(炭酸ガス)として除去することができ、その結果、酸性イオンとカルシウムとの反応を防止することができる。転炉スラグ中に含有されるカルシウムは、リン成分を吸着するために必要不可欠な物質であり、当該カルシウムと酸性イオンとが反応してカルシウム塩(例えば炭酸カルシウム)が形成されてしまうと、リン成分を吸着するカルシウムが不足し、効率よく脱リンを行うことができなくなってしまうが、本発明によればこのような不都合が生じることがない。
【0010】
なおここで、本発明においてリン成分とは、リン原子を含有する化合物全般を示すものであり、例えば排水中に溶存しているリン酸イオン等のことである。
【0011】
また、この発明は、前記第一pH調整工程に続いて、汚泥処理返流水に苛性ソーダ水溶液を加えてpH8.0以上に調整する第二pH調整工程を行うことに特徴を有している。このように、酸性イオンを除去するために前記第一pH調整工程において酸性側にシフトさせた汚泥処理返流水のpHを8.0以上、つまりアルカリ性側にシフトさせるのは、汚泥処理返流水のpHをアルカリ性とすることにより、リン成分と転炉スラグ中に含有されるカルシウムとの反応を促進し、効率よく脱リンを行うことができるからである。
【0012】
カルシウムをリン吸着材料として用い、これにより下水や屎尿などの汚水を処理した放流前の処理水中のリン成分を除去しようとした場合には、溶液のpHを9.0以上とすることが知られている。一方、本発明の方法において脱リンすべき溶液は汚泥処理返流水であり、当該返流水中のリン成分濃度は処理水に比べ非常に高い場合が多く(例えば、15.6〜40ppm)、また、後述するように本発明の方法においては、塩化カルシウム添加工程を行ことからリン吸着材料としてのカルシウムの量が十分であるといえ、その結果、排水のpHを強いアルカリ性(pH9.0以上)とする必要はなく、第二pH調整工程において使用する苛性ソーダ水溶液を大幅に減少することができ、本発明の方法のコストを削減することができる。
【0013】
さらにまた、本発明の方法は、前記第二pH調整工程終了後の汚泥処理返流水に塩化カルシウム水溶液を加える塩化カルシウム添加工程を行うことにも特徴を有している。このように、塩化カルシウム添加工程を行うことにより、リン吸着材料としてのカルシウムの量を増加することができるので、効率よく脱リンすることができる。
【0014】
そして、本発明の方法は、転炉より発生するスラグの粉砕物をリン吸着材料として用い、これを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記第二pH調整工程後の汚泥処理返流水を通水する脱リン工程を行うことで、排水中に含有されているリン成分を効率よく除去することができる。
【0015】
請求項1に記載する発明においては、請求項2に記載するように、前記脱リン工程において、充填層を用いるのではなく、転炉により発生するスラグを細粒化したものをリン吸着材料として用い、前記第二pH調整工程後の汚泥処理返流水中に、当該リン吸着材料を流動浮遊させることにより排水中のリンを除去してもよい。
【0016】
この発明は、転炉スラグをリン吸着材料として用い、これを脱リンすべき排水中に流動浮遊させることに特徴を有しており、このようにすることで、流動浮遊するスラグの表面でスラグ中に含有されているカルシウムと、排水中に含有されているリン成分とが反応して、スラグ表面にリン成分が吸着されるので、脱リンを行うことができる。また、この発明は、前記請求項1と同様に、第一pH調整工程と、第二pH調整工程と、塩化カルシウム添加工程と、を有しているため、これら各工程における前記作用効果の全てを奏することができる。
【0017】
ここで、「スラグ表面にリン成分が吸着する」とは、スラグ表面にアパタイト状のリン酸カルシウムが晶析する現象をも含む概念である。
【0018】
また、本発明は、上記課題を解決するために、請求項3に記載するように、前記請求項1又は請求項2に記載の脱リン方法においてリン吸着材料として使用した転炉スラグの粉砕物と、リン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰と、酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩とを混合する混合工程と、前記混合工程において形成された混合物を酸素の存在下で1350℃以上で熔融する熔融工程と、前記熔融工程で形成された熔融物を冷却固化することにより熔融固化体を形成する冷却固化工程と、を有することを特徴とする熔融固化体の製造方法を提供する。
【0019】
この発明によれば、前述の脱リン方法においてリン吸着材料として使用した転炉スラグを原料とし、肥料として有用な熔融固化体を製造することができる。前述の脱リン方法において使用した転炉スラグには、植物の肥料として有用なリンが大量に含まれているため、他に必要な成分を混合工程により加えることで、その処理が問題となっていた転炉スラグを有用な肥料として再生することができる。
【0020】
また、本発明は、上記課題を解決するために、請求項4に記載するように、汚水の処理により生じる処理水に硫酸及び/又は塩酸を加えて、pH3.5以下に調整する第一pH調整工程と、前記第一pH調整工程後の処理水に苛性ソーダ水溶液を加えて、pH9.0以上に調整する第二pH調整工程と、前記第二pH調整工程終了後の処理水に塩化カルシウム水溶液を加える塩化カルシウム添加工程と、転炉より発生するスラグの粉砕物をリン吸着材料として用い、これを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記第二pH調整工程後の処理水を通水する脱リン工程と、からなる脱リン方法において、リン吸着材として使用した転炉スラグを用いて溶融固化体を製造する方法であって、前記脱リン方法においてリン吸着材料として使用した転炉スラグの粉砕物と、リン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰と、酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩とを混合する混合工程と、前記混合工程において形成された混合物を酸素の存在下で1350℃以上で熔融する熔融工程と、前記熔融工程で形成された熔融物を冷却固化することにより熔融固化体を形成する冷却固化工程と、を有することを特徴とする熔融固化体の製造方法を提供する。
【0021】
そしてさらに、前記請求項4に記載する発明においては、請求項5に記載するように、前記脱リン工程が、充填層を用いるのではなく、転炉により発生するスラグを細粒化したものをリン吸着材料として用い、前記第二pH調整工程後の汚泥処理返流水中に、当該リン吸着材料を流動浮遊させることにより排水中のリンを除去する工程であってもよい。
【0022】
これらの発明によれば、汚泥処理返流水のみならず、下水や屎尿などの汚水を処理する際に生じる一般の処理水を対象にした従来からの脱リン方法を行った場合であっても、リン吸着材として用いられた転炉スラグを有効に利用することができる。
【0023】
さらに、前記請求項3乃至請求項5のいずれか一の請求項に記載の発明においては、請求項6に記載するように、前記混合工程において、最終製造物たる熔融固化体の成分が、CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分が40%以上、く溶性苦土が12%以上、く溶性リン酸が17%以上となるようにそれぞれを混合することが好ましい。
【0024】
この発明によれば、前記混合工程において、最終製造物たる熔融固化体の成分をこのような割合とすることにより、製造された熔融固化体を肥料取締法における熔性リン肥として利用することができる。溶成リン肥は、酸性土壌の多い日本の農業事情に適したリン酸質質料として広く使用されており、したがって、本発明により、従来廃棄物であった転炉スラグをリン吸着材料として用い、さらにその後、これを原料として熔性リン肥を製造することができるので熔性リン肥の原料コストを大幅に削減することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の脱リン方法、及び熔融固化体の製造方法についてそれぞれ具体的に説明する。
【0026】
(A)脱リン方法
図1は、本発明の脱リン方法を示すフローチャート図である。本発明の脱リン方法は、(1)第一pH調整工程と、(2)第二pH調整工程と、(3)塩化カルシウム添加工程と、(4)脱リン工程と、からなることに特徴を有している。以下にそれぞれの工程毎に説明する。
【0027】
(1)第一pH調整工程
本発明の脱リン方法における第一pH調整工程とは、被処理液である汚泥処理返流水に硫酸及び/又は塩酸を加えて、pHを3.5以下に調整する工程をいう。このようにpHを調整するのは、汚泥処理返流水に含まれている酸性イオン(具体的には炭酸イオンなど)を除去するためである。このとき、エア・レーションすることにより効率的に炭酸ガスを除去することができる。
【0028】
また、本工程で使用する硫酸及び塩酸は特に限定されるものではなく、市販されているものを適宜希釈等して用いて良い。
【0029】
(2)第二pH調整工程
本発明の方法における第二pH調整工程とは、前記第一pH調整工程終了後の汚泥処理返流水に苛性ソーダ水溶液を加えて、pHを8.0以上に調整する工程をいう。
【0030】
本工程で使用する苛性ソーダは特に限定されるものではなく、市販されているものを適宜希釈等して用いて良い。
【0031】
(3)塩化カルシウム添加工程
本発明の方法における塩化カルシウム添加工程とは、前記第二pH調整工程終了後の汚泥処理返流水に塩化カルシウム水溶液を添加する工程をいう。
【0032】
本工程で使用する塩化カルシウム水溶液も特に限定されるものではなく、市販されているものを適宜希釈等して用いて良い。
【0033】
(4)脱リン工程
本発明の方法における脱リン工程とは、製鉄所の転炉より発生するスラグの粉砕物をリン吸着材料として用い、これを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記第二pH調整工程後の汚泥処理返流水を通水する工程をいう。
【0034】
製鉄所の転炉より発生するスラグの一般的な成分組成は以下の表1に示す通りである。
【0035】
【表1】
表1に示すように、転炉スラグの50%前後が酸化カルシウムであり、一方汚泥処理返流水のリン成分はその大部分がリン酸イオン(PO4 3−)の形態で存在していることが一般的に知られている。そうすると、リン酸イオンの形態で存在しているリン成分が前記表1に示すような成分組成の転炉スラグと接触すると、該転炉スラグ主成分であるカルシウムと反応して難溶性の組成物、例えばヒドロキシアパタイト〔Ca5(PO4)3(OH)〕を形成することが考えられ、このヒドロキシアパタイトが転炉スラグ表面において晶析することで汚泥処理返流水中のリンが除去されると推定できる。
【0036】
従って、本発明の方法においてリン吸着材料として用いる転炉スラグの成分は、厳密に限定されることはないが、前記推定からするとカルシウムを多く含有していることが好ましい。
【0037】
また、前記推定からすると、転炉スラグは、その表面積を大きくして汚泥処理返流水との接触確率を高めることが好ましく、従って転炉スラグを粉砕して用いるのがよいが、処理すべき返流水が多量の場合においてはそれなりの通水速度が必要となり、通水速度は転炉スラグの微細化によって低下する傾向がある。このため、転炉スラグの粉砕に際しては、上記傾向を考慮し、粒径10mm以下において適当な粒径組成を選択するのが良い。リン吸着材料として使用する転炉スラグの粒径は、統一する必要はなく、大小さまざまな粒径のものを混合して用いることも可能である。
【0038】
本発明の脱リン工程において用いられる充填槽は、特に限定されるものではなく従来公知の充填槽を任意に選択して用いることができる。
【0039】
また、脱リン工程は、転炉により発生するスラグを細粒化したものをリン吸着材料として用い、前記第二pH調整工程後の汚泥処理返流水中に、当該リン吸着材料を流動浮遊させるようにしてもよい(図2参照)。汚泥処理返流水を通水させるのではなく、返流水を予めタンクなどに貯水しておき、そこで転炉スラグを流動浮遊させることにより、前記通水する場合と同様の効果を得ることができる。
【0040】
本発明においてこの脱リン工程を施すための装置、つまり処理すべき汚泥処理返流水を貯水するための装置は特に限定されることはなく、返流水中で転炉スラグが流動浮遊するような環境を作ることができればいかなる装置であってもよい。例えば、図3に示すように、撹拌装置31を装備したタンク30を用いることにより、流動浮遊している転炉スラグ32と排水中のリンとの接触回数を増加することができ、効率良くリンの除去をすることができるので好ましい。
【0041】
(B)熔融固化体の製造方法
次に、本発明の熔融固化体の製造方法について図面を用いて説明する。
【0042】
図4は、本発明の熔融固化体の製造方法を示すフローチャート図である。本発明の熔融固化体の製造方法は、(1)混合工程と、(2)熔融工程と、(3)冷却固化工程と、からなることに特徴を有している。以下にそれぞれの工程毎に説明する。
【0043】
(1)混合工程
本発明の熔融固化体の製造方法における混合工程とは、前述の脱リン方法においてリン吸着材料として使用された転炉スラグの粉砕物を原料として、これとリン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰と、酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩とを混合して、以下で説明する熔融工程で用いる混合物を形成するための工程である。脱リン方法においてリン吸着材料として使用された転炉スラグは、前記表1に示した成分組成に加え、その表面には汚泥処理返流水中に溶存していたリン成分が吸着していることから、植物の肥料として有用な熔融固化体を製造する際の原料として好適に用いることができる。
【0044】
本工程で使用することが好ましい転炉スラグとしては、前記脱リン方法において吸着材として使用されてリン成分が吸着されたものであれば特に限定されることはなく、転炉スラグを細粒化して用いることも可能である。例えば、粒径0.5〜1.2nmの転炉スラグを充填したカラムに120日間、1〜5mg/lのリンを含有する汚泥処理返流水を通水したところ、転炉スラグ1kg当たりリン含有量はP2O5で15〜45g増加した。
【0045】
また、本工程でリン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰を混合するのは、これらは通常廃棄物として処理されているものであるところ、これらにも肥料として有用な熔融固化体を製造するために必要なリン成分が含まれており、本発明に用いることにより廃棄物を有効利用することが可能となるからである。
【0046】
本工程で混合可能なリン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰は特に限定されるものではない。例えば、下水処理に高分子凝集剤を使用した高分子系下水汚泥、または高分子系下水汚泥を焼却して得られる高分子系下水汚泥焼却灰がリン含有量が多く望ましい。
【0047】
また、本工程で酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩を混合するのは、熔融固化体を製造するために必要な成分であるマグネシウムを補充するためである。
【0048】
(2)熔融工程
次に熔融工程について説明する。本発明の熔融固化体の製造方法における熔融工程とは、前記混合工程において形成された混合物を酸素の存在下で1350℃以上で熔融することにより熔融物を形成する工程である。
【0049】
本発明における熔融工程については、上記の条件下で熔融物を形成することができればよく、その他を特に限定されるものではない。したがって、従来公知の溶融炉を用いることが可能である。
【0050】
また、本発明の方法における熔融工程においては、1350以上で溶融するため、廃棄物中の病原菌やウィルスを死滅せしめることができるため、衛生的にも優れた熔融固化体を製造することができる。
【0051】
(3)冷却固化工程
次に冷却固化工程について説明する。本発明の熔融固化体の製造方法における冷却固化工程とは、前記熔融工程において形成された熔融物を冷却固化することにより、本発明の最終目的物たる熔融固化体を製造するための工程である。
【0052】
本発明における冷却固化工程については、上記目的を達成することができればよく、その具体的方法や装置について特に限定されるものではない。例えば、熔融物を冷却固化する方法としては、水中に熔融物を導入する水冷法が単純かつ安価であるため好ましく、水冷法を用いた場合には、冷却され固化した熔融固化体を乾燥機により乾燥し、その後粉砕機により、肥料として用いる際に好適な大きさに粉砕してもよい。
【0053】
ここで、本発明の方法においては、前記で説明した混合工程において、混合物を形成する際に、最終生成物たる熔融固化体の成分として、CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分が40%以上、く溶性苦土が12%以上、く溶性リン酸が17%以上となるように混合することが好ましい。このような成分を有する熔融固化体は熔性リン肥として用いることができるからである。
【0054】
溶成リン肥の成分は、肥料取締法によって、く溶性燐酸17%以上、アルカリ分40%以上、く溶性苦土12%以上と定められているが、本発明の方法における混合工程において、当該成分となるように調整して混合することにより熔性リン肥を熔性リン肥を製造することができる。
【0055】
ここで、上記の成分に調整する方法としては、原料として用いるリン吸着材料として用いられた後の転炉スラグ中にに含有されている各成分(CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分、く溶性苦土、く溶性リン酸)の量を予め測定しておき、不足分を補充する方法がある。
【0056】
例えば、CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分40%以上、く溶性苦土12%以上となるように補充する物質としては、CaO、MgOおよび/またはその塩の材料として、製鉄所等で発生するマグネシア系耐火物の廃材、ドロマイト系耐火物の廃材および転炉滓を利用しすることができる。一方、く溶性リン酸が17%以上となるように補充する物質としては、リン酸および/またはその塩の材料として、金属の表面処理等に使用した廃リン酸または廃リン酸塩を利用することができる。
【0057】
以上の説明は、本発明の熔融固化体の製造方法のうち、上述した本発明の脱リン方法(A)を行った後、その際に用いた転炉スラグの粉砕物を用いる場合についてのものであるが、これに限定されることはない。
【0058】
図5に示すように、汚泥処理返流水のみならず、下水や屎尿などの汚水を処理する際に生じる一般の処理水を対象にした脱リン方法を行った後、その際に用いた転炉スラグの粉砕物を用いて行うことも可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、製鉄所の転炉から生じる転炉スラグを有効に利用して、汚泥処理返流水中からリンを除去することができる。さらに、本発明によれば、前記返流水又は処理水中からリンを除去するために用いた転炉スラグや、従来からその処分が問題となっていた汚泥及び/又は汚泥焼却灰を原料として、植物の肥料として有用な熔融固化体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の脱リン方法を示すフローチャート図である。
【図2】本発明の他の脱リン方法を示すフローチャート図である。
【図3】本発明の脱リン方法における脱リン工程をおこなう装置の概略断面図である。
【図4】本発明の熔融固化体の製造方法を示すフローチャート図である。
【図5】本発明の他の熔融固化体の製造方法を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
30…タンク
31…撹拌装置
32…転炉スラグ
【発明の属する技術分野】
この発明は、転炉スラグを有効に利用して汚泥処理返流水からリン成分を除去する方法、及び脱リン方法においてリン吸着材料として用いた転炉スラグをさらに有効に利用して、肥料として有用な熔融固化体を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
汚泥を処理するためには、濃縮工程、消化工程、脱水工程等の様々な工程を要する。各工程においては分離液、脱離液、脱水ろ液等の排液がそれぞれ生じるが、これらの排液は各工程にフィードバックさせて数回にわたって処理が行われている。(以下、フィードバックさせる排液を「汚泥処理返流水」とする場合がある。)。この汚泥処理返流水中には、多量のリン成分が含有されていることが知られており、これを除去することが必要であった。
【0003】
また、これとは別に、製鉄所から生じる転炉スラグについては、これを有効利用する方法が模索されていた。
【0004】
このような状況において、転炉スラグ中に含有されるカルシウムがリンを吸着する性質に着目し、当該転炉スラグをリン吸着材料として用い、汚水処理の際に生じる処理水などのリン含有排水から脱リンする方法が開発されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、単純に転炉スラグ中に含有されるカルシウムを利用して汚泥処理返流水から脱リンする場合においては、汚泥処理返流水に含まれている炭酸ガスがリンよりも先にカルシウムと反応して炭酸カルシウムを形成してしまい、その結果、カルシウムがリン吸着材料として機能しなくなったり(カルシウムとリンとが反応しなくなる。)、機能したとしてもその機能が著しく低下する場合があった。また、汚泥処理返流水中には一般的な処理水に比して多量のリン成分が含有されているため、汚泥処理返流水に適した脱リン方法が必要である。
【0006】
一方、リン成分は植物の肥料として有用な物質であり、従って汚泥処理返流水中から除去したリン成分を有効に利用すること、特に熔融固化体(例えば熔性リン肥)として利用することができれば肥料のコストを下げることができリサイクルの観点から好ましい。
【0007】
本発明は、このような状況においてなされたものであり、汚泥処理返流水から効率よく脱リンする方法を提供すると共に、脱リン方法においてリン吸着材料として用いられた転炉スラグを用いて、肥料として有用な熔融固化体を製造する方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1において、汚泥処理返流水からリン成分を除去する脱リン方法であって、汚泥処理返流水に硫酸及び/又は塩酸を加えてpH3.5以下に調整する第一pH調整工程と、前記第一pH調整工程後の汚泥処理返流水に苛性ソーダ水溶液を加えてpH8.0以上に調整する第二pH調整工程と、前記第二pH調整工程終了後の汚泥処理返流水に塩化カルシウム水溶液を加える塩化カルシウム添加工程と、転炉より発生するスラグの粉砕物をリン吸着材料として用い、これを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記第二pH調整工程後の汚泥処理返流水を通水する脱リン工程と、からなることを特徴とする脱リン方法を提供する。
【0009】
この発明によれば、汚泥処理返流水からリン成分を除去する脱リン方法であって、転炉により発生するスラグ(以下、単に「転炉スラグ」とする場合がある。)の粉砕物をリン吸着材料として用い、汚泥処理返流水から脱リンを行う前処理として、汚泥処理返流水に硫酸及び/又は塩酸を加えてpH3.5以下に調整する第一pH調整工程を行うので、汚泥処理返流水中に含まれている酸性イオン(特に炭酸イオン)を酸性ガス(炭酸ガス)として除去することができ、その結果、酸性イオンとカルシウムとの反応を防止することができる。転炉スラグ中に含有されるカルシウムは、リン成分を吸着するために必要不可欠な物質であり、当該カルシウムと酸性イオンとが反応してカルシウム塩(例えば炭酸カルシウム)が形成されてしまうと、リン成分を吸着するカルシウムが不足し、効率よく脱リンを行うことができなくなってしまうが、本発明によればこのような不都合が生じることがない。
【0010】
なおここで、本発明においてリン成分とは、リン原子を含有する化合物全般を示すものであり、例えば排水中に溶存しているリン酸イオン等のことである。
【0011】
また、この発明は、前記第一pH調整工程に続いて、汚泥処理返流水に苛性ソーダ水溶液を加えてpH8.0以上に調整する第二pH調整工程を行うことに特徴を有している。このように、酸性イオンを除去するために前記第一pH調整工程において酸性側にシフトさせた汚泥処理返流水のpHを8.0以上、つまりアルカリ性側にシフトさせるのは、汚泥処理返流水のpHをアルカリ性とすることにより、リン成分と転炉スラグ中に含有されるカルシウムとの反応を促進し、効率よく脱リンを行うことができるからである。
【0012】
カルシウムをリン吸着材料として用い、これにより下水や屎尿などの汚水を処理した放流前の処理水中のリン成分を除去しようとした場合には、溶液のpHを9.0以上とすることが知られている。一方、本発明の方法において脱リンすべき溶液は汚泥処理返流水であり、当該返流水中のリン成分濃度は処理水に比べ非常に高い場合が多く(例えば、15.6〜40ppm)、また、後述するように本発明の方法においては、塩化カルシウム添加工程を行ことからリン吸着材料としてのカルシウムの量が十分であるといえ、その結果、排水のpHを強いアルカリ性(pH9.0以上)とする必要はなく、第二pH調整工程において使用する苛性ソーダ水溶液を大幅に減少することができ、本発明の方法のコストを削減することができる。
【0013】
さらにまた、本発明の方法は、前記第二pH調整工程終了後の汚泥処理返流水に塩化カルシウム水溶液を加える塩化カルシウム添加工程を行うことにも特徴を有している。このように、塩化カルシウム添加工程を行うことにより、リン吸着材料としてのカルシウムの量を増加することができるので、効率よく脱リンすることができる。
【0014】
そして、本発明の方法は、転炉より発生するスラグの粉砕物をリン吸着材料として用い、これを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記第二pH調整工程後の汚泥処理返流水を通水する脱リン工程を行うことで、排水中に含有されているリン成分を効率よく除去することができる。
【0015】
請求項1に記載する発明においては、請求項2に記載するように、前記脱リン工程において、充填層を用いるのではなく、転炉により発生するスラグを細粒化したものをリン吸着材料として用い、前記第二pH調整工程後の汚泥処理返流水中に、当該リン吸着材料を流動浮遊させることにより排水中のリンを除去してもよい。
【0016】
この発明は、転炉スラグをリン吸着材料として用い、これを脱リンすべき排水中に流動浮遊させることに特徴を有しており、このようにすることで、流動浮遊するスラグの表面でスラグ中に含有されているカルシウムと、排水中に含有されているリン成分とが反応して、スラグ表面にリン成分が吸着されるので、脱リンを行うことができる。また、この発明は、前記請求項1と同様に、第一pH調整工程と、第二pH調整工程と、塩化カルシウム添加工程と、を有しているため、これら各工程における前記作用効果の全てを奏することができる。
【0017】
ここで、「スラグ表面にリン成分が吸着する」とは、スラグ表面にアパタイト状のリン酸カルシウムが晶析する現象をも含む概念である。
【0018】
また、本発明は、上記課題を解決するために、請求項3に記載するように、前記請求項1又は請求項2に記載の脱リン方法においてリン吸着材料として使用した転炉スラグの粉砕物と、リン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰と、酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩とを混合する混合工程と、前記混合工程において形成された混合物を酸素の存在下で1350℃以上で熔融する熔融工程と、前記熔融工程で形成された熔融物を冷却固化することにより熔融固化体を形成する冷却固化工程と、を有することを特徴とする熔融固化体の製造方法を提供する。
【0019】
この発明によれば、前述の脱リン方法においてリン吸着材料として使用した転炉スラグを原料とし、肥料として有用な熔融固化体を製造することができる。前述の脱リン方法において使用した転炉スラグには、植物の肥料として有用なリンが大量に含まれているため、他に必要な成分を混合工程により加えることで、その処理が問題となっていた転炉スラグを有用な肥料として再生することができる。
【0020】
また、本発明は、上記課題を解決するために、請求項4に記載するように、汚水の処理により生じる処理水に硫酸及び/又は塩酸を加えて、pH3.5以下に調整する第一pH調整工程と、前記第一pH調整工程後の処理水に苛性ソーダ水溶液を加えて、pH9.0以上に調整する第二pH調整工程と、前記第二pH調整工程終了後の処理水に塩化カルシウム水溶液を加える塩化カルシウム添加工程と、転炉より発生するスラグの粉砕物をリン吸着材料として用い、これを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記第二pH調整工程後の処理水を通水する脱リン工程と、からなる脱リン方法において、リン吸着材として使用した転炉スラグを用いて溶融固化体を製造する方法であって、前記脱リン方法においてリン吸着材料として使用した転炉スラグの粉砕物と、リン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰と、酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩とを混合する混合工程と、前記混合工程において形成された混合物を酸素の存在下で1350℃以上で熔融する熔融工程と、前記熔融工程で形成された熔融物を冷却固化することにより熔融固化体を形成する冷却固化工程と、を有することを特徴とする熔融固化体の製造方法を提供する。
【0021】
そしてさらに、前記請求項4に記載する発明においては、請求項5に記載するように、前記脱リン工程が、充填層を用いるのではなく、転炉により発生するスラグを細粒化したものをリン吸着材料として用い、前記第二pH調整工程後の汚泥処理返流水中に、当該リン吸着材料を流動浮遊させることにより排水中のリンを除去する工程であってもよい。
【0022】
これらの発明によれば、汚泥処理返流水のみならず、下水や屎尿などの汚水を処理する際に生じる一般の処理水を対象にした従来からの脱リン方法を行った場合であっても、リン吸着材として用いられた転炉スラグを有効に利用することができる。
【0023】
さらに、前記請求項3乃至請求項5のいずれか一の請求項に記載の発明においては、請求項6に記載するように、前記混合工程において、最終製造物たる熔融固化体の成分が、CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分が40%以上、く溶性苦土が12%以上、く溶性リン酸が17%以上となるようにそれぞれを混合することが好ましい。
【0024】
この発明によれば、前記混合工程において、最終製造物たる熔融固化体の成分をこのような割合とすることにより、製造された熔融固化体を肥料取締法における熔性リン肥として利用することができる。溶成リン肥は、酸性土壌の多い日本の農業事情に適したリン酸質質料として広く使用されており、したがって、本発明により、従来廃棄物であった転炉スラグをリン吸着材料として用い、さらにその後、これを原料として熔性リン肥を製造することができるので熔性リン肥の原料コストを大幅に削減することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の脱リン方法、及び熔融固化体の製造方法についてそれぞれ具体的に説明する。
【0026】
(A)脱リン方法
図1は、本発明の脱リン方法を示すフローチャート図である。本発明の脱リン方法は、(1)第一pH調整工程と、(2)第二pH調整工程と、(3)塩化カルシウム添加工程と、(4)脱リン工程と、からなることに特徴を有している。以下にそれぞれの工程毎に説明する。
【0027】
(1)第一pH調整工程
本発明の脱リン方法における第一pH調整工程とは、被処理液である汚泥処理返流水に硫酸及び/又は塩酸を加えて、pHを3.5以下に調整する工程をいう。このようにpHを調整するのは、汚泥処理返流水に含まれている酸性イオン(具体的には炭酸イオンなど)を除去するためである。このとき、エア・レーションすることにより効率的に炭酸ガスを除去することができる。
【0028】
また、本工程で使用する硫酸及び塩酸は特に限定されるものではなく、市販されているものを適宜希釈等して用いて良い。
【0029】
(2)第二pH調整工程
本発明の方法における第二pH調整工程とは、前記第一pH調整工程終了後の汚泥処理返流水に苛性ソーダ水溶液を加えて、pHを8.0以上に調整する工程をいう。
【0030】
本工程で使用する苛性ソーダは特に限定されるものではなく、市販されているものを適宜希釈等して用いて良い。
【0031】
(3)塩化カルシウム添加工程
本発明の方法における塩化カルシウム添加工程とは、前記第二pH調整工程終了後の汚泥処理返流水に塩化カルシウム水溶液を添加する工程をいう。
【0032】
本工程で使用する塩化カルシウム水溶液も特に限定されるものではなく、市販されているものを適宜希釈等して用いて良い。
【0033】
(4)脱リン工程
本発明の方法における脱リン工程とは、製鉄所の転炉より発生するスラグの粉砕物をリン吸着材料として用い、これを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記第二pH調整工程後の汚泥処理返流水を通水する工程をいう。
【0034】
製鉄所の転炉より発生するスラグの一般的な成分組成は以下の表1に示す通りである。
【0035】
【表1】
表1に示すように、転炉スラグの50%前後が酸化カルシウムであり、一方汚泥処理返流水のリン成分はその大部分がリン酸イオン(PO4 3−)の形態で存在していることが一般的に知られている。そうすると、リン酸イオンの形態で存在しているリン成分が前記表1に示すような成分組成の転炉スラグと接触すると、該転炉スラグ主成分であるカルシウムと反応して難溶性の組成物、例えばヒドロキシアパタイト〔Ca5(PO4)3(OH)〕を形成することが考えられ、このヒドロキシアパタイトが転炉スラグ表面において晶析することで汚泥処理返流水中のリンが除去されると推定できる。
【0036】
従って、本発明の方法においてリン吸着材料として用いる転炉スラグの成分は、厳密に限定されることはないが、前記推定からするとカルシウムを多く含有していることが好ましい。
【0037】
また、前記推定からすると、転炉スラグは、その表面積を大きくして汚泥処理返流水との接触確率を高めることが好ましく、従って転炉スラグを粉砕して用いるのがよいが、処理すべき返流水が多量の場合においてはそれなりの通水速度が必要となり、通水速度は転炉スラグの微細化によって低下する傾向がある。このため、転炉スラグの粉砕に際しては、上記傾向を考慮し、粒径10mm以下において適当な粒径組成を選択するのが良い。リン吸着材料として使用する転炉スラグの粒径は、統一する必要はなく、大小さまざまな粒径のものを混合して用いることも可能である。
【0038】
本発明の脱リン工程において用いられる充填槽は、特に限定されるものではなく従来公知の充填槽を任意に選択して用いることができる。
【0039】
また、脱リン工程は、転炉により発生するスラグを細粒化したものをリン吸着材料として用い、前記第二pH調整工程後の汚泥処理返流水中に、当該リン吸着材料を流動浮遊させるようにしてもよい(図2参照)。汚泥処理返流水を通水させるのではなく、返流水を予めタンクなどに貯水しておき、そこで転炉スラグを流動浮遊させることにより、前記通水する場合と同様の効果を得ることができる。
【0040】
本発明においてこの脱リン工程を施すための装置、つまり処理すべき汚泥処理返流水を貯水するための装置は特に限定されることはなく、返流水中で転炉スラグが流動浮遊するような環境を作ることができればいかなる装置であってもよい。例えば、図3に示すように、撹拌装置31を装備したタンク30を用いることにより、流動浮遊している転炉スラグ32と排水中のリンとの接触回数を増加することができ、効率良くリンの除去をすることができるので好ましい。
【0041】
(B)熔融固化体の製造方法
次に、本発明の熔融固化体の製造方法について図面を用いて説明する。
【0042】
図4は、本発明の熔融固化体の製造方法を示すフローチャート図である。本発明の熔融固化体の製造方法は、(1)混合工程と、(2)熔融工程と、(3)冷却固化工程と、からなることに特徴を有している。以下にそれぞれの工程毎に説明する。
【0043】
(1)混合工程
本発明の熔融固化体の製造方法における混合工程とは、前述の脱リン方法においてリン吸着材料として使用された転炉スラグの粉砕物を原料として、これとリン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰と、酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩とを混合して、以下で説明する熔融工程で用いる混合物を形成するための工程である。脱リン方法においてリン吸着材料として使用された転炉スラグは、前記表1に示した成分組成に加え、その表面には汚泥処理返流水中に溶存していたリン成分が吸着していることから、植物の肥料として有用な熔融固化体を製造する際の原料として好適に用いることができる。
【0044】
本工程で使用することが好ましい転炉スラグとしては、前記脱リン方法において吸着材として使用されてリン成分が吸着されたものであれば特に限定されることはなく、転炉スラグを細粒化して用いることも可能である。例えば、粒径0.5〜1.2nmの転炉スラグを充填したカラムに120日間、1〜5mg/lのリンを含有する汚泥処理返流水を通水したところ、転炉スラグ1kg当たりリン含有量はP2O5で15〜45g増加した。
【0045】
また、本工程でリン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰を混合するのは、これらは通常廃棄物として処理されているものであるところ、これらにも肥料として有用な熔融固化体を製造するために必要なリン成分が含まれており、本発明に用いることにより廃棄物を有効利用することが可能となるからである。
【0046】
本工程で混合可能なリン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰は特に限定されるものではない。例えば、下水処理に高分子凝集剤を使用した高分子系下水汚泥、または高分子系下水汚泥を焼却して得られる高分子系下水汚泥焼却灰がリン含有量が多く望ましい。
【0047】
また、本工程で酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩を混合するのは、熔融固化体を製造するために必要な成分であるマグネシウムを補充するためである。
【0048】
(2)熔融工程
次に熔融工程について説明する。本発明の熔融固化体の製造方法における熔融工程とは、前記混合工程において形成された混合物を酸素の存在下で1350℃以上で熔融することにより熔融物を形成する工程である。
【0049】
本発明における熔融工程については、上記の条件下で熔融物を形成することができればよく、その他を特に限定されるものではない。したがって、従来公知の溶融炉を用いることが可能である。
【0050】
また、本発明の方法における熔融工程においては、1350以上で溶融するため、廃棄物中の病原菌やウィルスを死滅せしめることができるため、衛生的にも優れた熔融固化体を製造することができる。
【0051】
(3)冷却固化工程
次に冷却固化工程について説明する。本発明の熔融固化体の製造方法における冷却固化工程とは、前記熔融工程において形成された熔融物を冷却固化することにより、本発明の最終目的物たる熔融固化体を製造するための工程である。
【0052】
本発明における冷却固化工程については、上記目的を達成することができればよく、その具体的方法や装置について特に限定されるものではない。例えば、熔融物を冷却固化する方法としては、水中に熔融物を導入する水冷法が単純かつ安価であるため好ましく、水冷法を用いた場合には、冷却され固化した熔融固化体を乾燥機により乾燥し、その後粉砕機により、肥料として用いる際に好適な大きさに粉砕してもよい。
【0053】
ここで、本発明の方法においては、前記で説明した混合工程において、混合物を形成する際に、最終生成物たる熔融固化体の成分として、CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分が40%以上、く溶性苦土が12%以上、く溶性リン酸が17%以上となるように混合することが好ましい。このような成分を有する熔融固化体は熔性リン肥として用いることができるからである。
【0054】
溶成リン肥の成分は、肥料取締法によって、く溶性燐酸17%以上、アルカリ分40%以上、く溶性苦土12%以上と定められているが、本発明の方法における混合工程において、当該成分となるように調整して混合することにより熔性リン肥を熔性リン肥を製造することができる。
【0055】
ここで、上記の成分に調整する方法としては、原料として用いるリン吸着材料として用いられた後の転炉スラグ中にに含有されている各成分(CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分、く溶性苦土、く溶性リン酸)の量を予め測定しておき、不足分を補充する方法がある。
【0056】
例えば、CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分40%以上、く溶性苦土12%以上となるように補充する物質としては、CaO、MgOおよび/またはその塩の材料として、製鉄所等で発生するマグネシア系耐火物の廃材、ドロマイト系耐火物の廃材および転炉滓を利用しすることができる。一方、く溶性リン酸が17%以上となるように補充する物質としては、リン酸および/またはその塩の材料として、金属の表面処理等に使用した廃リン酸または廃リン酸塩を利用することができる。
【0057】
以上の説明は、本発明の熔融固化体の製造方法のうち、上述した本発明の脱リン方法(A)を行った後、その際に用いた転炉スラグの粉砕物を用いる場合についてのものであるが、これに限定されることはない。
【0058】
図5に示すように、汚泥処理返流水のみならず、下水や屎尿などの汚水を処理する際に生じる一般の処理水を対象にした脱リン方法を行った後、その際に用いた転炉スラグの粉砕物を用いて行うことも可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、製鉄所の転炉から生じる転炉スラグを有効に利用して、汚泥処理返流水中からリンを除去することができる。さらに、本発明によれば、前記返流水又は処理水中からリンを除去するために用いた転炉スラグや、従来からその処分が問題となっていた汚泥及び/又は汚泥焼却灰を原料として、植物の肥料として有用な熔融固化体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の脱リン方法を示すフローチャート図である。
【図2】本発明の他の脱リン方法を示すフローチャート図である。
【図3】本発明の脱リン方法における脱リン工程をおこなう装置の概略断面図である。
【図4】本発明の熔融固化体の製造方法を示すフローチャート図である。
【図5】本発明の他の熔融固化体の製造方法を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
30…タンク
31…撹拌装置
32…転炉スラグ
Claims (6)
- 汚泥処理返流水からリン成分を除去する脱リン方法であって、
汚泥処理返流水に硫酸及び/又は塩酸を加えて、pH3.5以下に調整する第一pH調整工程と、
前記第一pH調整工程後の汚泥処理返流水に苛性ソーダ水溶液を加えて、pH8.0以上に調整する第二pH調整工程と、
前記第二pH調整工程終了後の汚泥処理返流水に塩化カルシウム水溶液を加える塩化カルシウム添加工程と、
転炉より発生するスラグの粉砕物をリン吸着材料として用い、これを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記塩化カルシウム添加工程後の汚泥処理返流水を通水する脱リン工程と、
からなることを特徴とする脱リン方法。 - 前記脱リン工程において、充填層を用いるのではなく、転炉により発生するスラグを細粒化したものをリン吸着材料として用い、前記塩化カルシウム添加工程後の汚泥処理返流水中に、当該リン吸着材料を流動浮遊させることにより排水中のリンを除去することを特徴とする請求項1に記載の脱リン方法。
- 前記請求項1又は請求項2に記載の脱リン方法においてリン吸着材料として使用した転炉スラグの粉砕物又は微粒化したものと、リン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰と、酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩とを混合する混合工程と、
前記混合工程において形成された混合物を酸素の存在下で1350℃以上で熔融する熔融工程と、
前記熔融工程で形成された熔融物を冷却固化することにより熔融固化体を形成する冷却固化工程と、
を有することを特徴とする熔融固化体の製造方法。 - 汚水の処理により生じる処理水に硫酸及び/又は塩酸を加えて、pH3.5以下に調整する第一pH調整工程と、前記第一pH調整工程後の処理水に苛性ソーダ水溶液を加えて、pH8.0以上に調整する第二pH調整工程と、前記第二pH調整工程終了後の処理水に塩化カルシウム水溶液を加える塩化カルシウム添加工程と、転炉より発生するスラグの粉砕物をリン吸着材料として用い、これを槽内に充填することにより形成した充填槽中に、前記塩化カルシウム添加工程後の処理水を通水する脱リン工程と、からなる脱リン方法においてリン吸着材として使用した転炉スラグを用いて溶融固化体を製造する方法であって、
前記脱リン方法においてリン吸着材料として使用した転炉スラグの粉砕物と、リン酸根を含有する汚泥及び/又は汚泥焼却灰と、酸化マグネシウム及び/又はマグネシウム塩とを混合する混合工程と、
前記混合工程において形成された混合物を酸素の存在下で1350℃以上で熔融する熔融工程と、
前記熔融工程で形成された熔融物を冷却固化することにより熔融固化体を形成する冷却固化工程と、
を有することを特徴とする熔融固化体の製造方法。 - 前記脱リン工程が、充填層を用いるのではなく、転炉により発生するスラグを細粒化したものをリン吸着材料として用い、前記塩化カルシウム添加工程後の汚泥処理返流水中に、当該リン吸着材料を流動浮遊させることにより排水中のリンを除去する工程であることを特徴とする請求項4に記載の熔融固化体の製造方法。
- 前記混合工程において、最終製造物たる熔融固化体の成分が、CaO、MgO等のアルカリ土類のアルカリ成分が40%以上、く溶性苦土が12%以上、く溶性リン酸が17%以上となるようにそれぞれを混合することを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか一の請求項に記載の熔融固化体の製造方法。
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JP2007283223A (ja) * | 2006-04-18 | 2007-11-01 | Nippon Steel Corp | 汚泥からのりんの回収方法 |
JP5020397B1 (ja) * | 2011-06-28 | 2012-09-05 | 株式会社アサカ理研 | 水処理システム及び水処理方法 |
CN110267920A (zh) * | 2016-12-14 | 2019-09-20 | 日铁工程技术株式会社 | 被处理水中的磷的回收方法 |
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2002
- 2002-06-04 JP JP2002163481A patent/JP2004008865A/ja active Pending
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