JPH08226931A - 角速度センサ - Google Patents

角速度センサ

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JPH08226931A
JPH08226931A JP7056690A JP5669095A JPH08226931A JP H08226931 A JPH08226931 A JP H08226931A JP 7056690 A JP7056690 A JP 7056690A JP 5669095 A JP5669095 A JP 5669095A JP H08226931 A JPH08226931 A JP H08226931A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 3つの軸についての角速度を、高い応答性を
もって検出する。 【構成】 重錘体40を、筐体内において所定の自由度
をもって移動可能となるように支持した状態で、原点O
を中心としてXY平面内で円軌道41に沿って円運動さ
せる。点Pxにおいて重錘体40がX軸を通過する瞬間
に、重錘体40に対してZ軸方向に作用するコリオリ力
Fcoを検出することにより、X軸まわりの角速度ωxを
検出する。点Pyにおいて重錘体40がY軸を通過する
瞬間に、重錘体40に対してZ軸方向に作用するコリオ
リ力Fcoを検出することにより、Y軸まわりの角速度ω
yを検出する。また、点Pxにおいて重錘体40に対し
てX軸方向に作用する力を検出し、この力から遠心力を
除去することにより得られたコリオリ力に基いて、Z軸
まわりの角速度ωzを検出する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、角速度センサ、特に、
多次元の各成分ごとに角速度を検出することのできるセ
ンサに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車産業や機械産業などでは、加速度
や角速度といった物理量を正確に検出できるセンサの需
要が高まっている。一般に、三次元空間内において自由
運動をする物体には、任意の向きの加速度および任意の
回転方向の角速度が作用する。このため、この物体の運
動を正確に把握するためには、XYZ三次元座標系にお
ける各座標軸方向ごとの加速度と各座標軸まわりの角速
度とをそれぞれ独立して検出する必要がある。このた
め、小型で精度が高く、しかも製造コストを抑えること
ができる多次元加速度センサや多軸角速度センサの需要
が高まっている。
【0003】従来から多次元の加速度センサは種々のも
のが提案されている。たとえば、特許協力条約に基づく
国際公開第WO88/08522号公報(米国特許第4
967605号/同第5182515号)、特許協力条
約に基づく国際公開第WO91/10118号公報(米
国特許出願第07/761771号)、特許協力条約に
基づく国際公開第WO92/17759号公報(米国特
許出願第07/952753号)などには、作用した加
速度を各座標軸方向ごとに検出する加速度センサが開示
されている。これらの加速度センサの特徴は、複数の抵
抗素子/静電容量素子/圧電素子を、可撓性をもった基
板の所定位置に配置し、抵抗素子の抵抗値の変化/静電
容量素子の容量値の変化/圧電素子の発生電圧の変化に
基づいて、作用した加速度を検出する点にある。可撓性
をもった基板には、重錘体が取り付けられており、加速
度が作用するとこの重錘体に力が加わり、可撓性基板に
撓みが生じる。この撓みを上述した抵抗値/容量値/発
生電荷の変化に基づいて検出すれば、加速度の各軸方向
成分を求めることができる。
【0004】これに対して、多軸の角速度センサについ
ての記述は、これまでの文献にはほとんど記述が見られ
ず、実用化もされていない。通常、角速度センサは車両
の動力軸などの角速度を検出するために利用されてお
り、ある特定の一軸まわりの角速度を検出する機能しか
もたない。このような動力軸の回転速度を求めるような
場合には、一次元の角速度センサを用いれば十分であ
る。しかしながら、三次元空間内において自由運動する
物体についての角速度を検出するには、XYZ三次元座
標系におけるX軸,Y軸,Z軸の各軸まわりの角速度を
それぞれ独立して検出する必要がある。従来利用されて
いる一次元の角速度センサを用いてX軸,Y軸,Z軸の
各軸まわりの角速度を検出するには、この一次元角速度
センサを3組用意し、それぞれを各軸まわりの角速度を
検出できるような特定の方向に取り付ける必要がある。
このため、全体としての構造は複雑になり、コストも高
いものになる。
【0005】このような状況において、本願発明者は、
小型で精度が高く、しかも製造コストを抑えることがで
きる新規な多軸角速度センサを提案し、特許協力条約に
基づく国際公開第WO94/23272号公報において
開示した。また、特願平6−191081号明細書、特
願平6−225894号明細書、特願平6−25890
9号明細書には、その改良案をいくつか開示した。これ
らの新規なセンサによれば、三次元の各軸まわりの角速
度を検出することができる。これは、X軸まわりの角速
度ωxが作用している状態において、この物体をZ軸方
向に振動させると、Y軸方向にコリオリ力が作用すると
いう原理を利用したものである。たとえば、可撓性基板
上に配置された所定の圧電素子に交流電圧を印加し、可
撓性基板に取り付けられた重錘体をZ軸方向に振動させ
る。ここで、X軸まわりの角速度ωxが作用している
と、重錘体にはY軸方向にコリオリ力が働くので、重錘
体はY軸方向へ変位することになる。この変位を圧電素
子が発生する電荷により検出すれば、作用した角速度ω
xを間接的に検出することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述した多軸角速度セ
ンサでは、二軸まわりの角速度検出は比較的容易に行う
ことができる。たとえば、上述のように、重錘体をZ軸
方向に振動させた状態において、Y軸方向に作用するコ
リオリ力を検出できれば、X軸まわりの角速度ωxを求
めることができ、逆に、X軸方向に作用するコリオリ力
を検出できれば、Y軸まわりの角速度ωyを求めること
ができる。すなわち、重錘体を同じZ軸方向に振動させ
た状態のまま、X軸まわりの角速度ωxと、Y軸まわり
の角速度ωyとの双方を求めることができることにな
る。ところが、重錘体をZ軸方向に振動させた状態のま
までは、Z軸まわりの角速度ωzを求めることはできな
い。Z軸まわりの角速度ωzを求めるためには、重錘体
の振動方向をX軸もしくはY軸に変える必要がある。
【0007】ところが、ある程度の質量をもった重錘体
が振動している場合に、その振動方向を、これまでの振
動方向とは直交する別な方向に変えるためには、一度、
重錘体の振動を停止させてから、あらためて新たな振動
方向に振動させてやる必要がある。通常、振動物体を停
止させるには、ある程度の時間が必要であり、また、こ
の物体を別な方向に振動させ、安定した振動状態にもっ
てゆくにも、ある程度の時間が必要になる。このため、
三軸まわりの角速度検出を行う場合に、応答性が低下す
るという問題があった。
【0008】そこで本発明は、複数の異なる軸について
の角速度を、高い応答性をもって検出することのできる
角速度センサを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、角速度センサにおいて、
質量をもった重錘体と、この重錘体を収容する筐体と、
筐体に対して所定の自由度をもって移動可能となるよう
に重錘体を支持する支持手段と、重錘体を移動可能な自
由度の範囲内で所定の周回軌道に沿って周回運動させる
駆動手段と、この周回運動の接線方向に対して垂直な第
1の軸方向について重錘体に作用するコリオリ力を検出
する検出手段と、重錘体の周回運動接線速度とコリオリ
力とに基いて接線方向および第1の軸方向の双方に垂直
な第2の軸まわりの角速度を演算によって求める演算手
段と、を設けたものである。
【0010】(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1
の態様に係る角速度センサにおいて、重錘体を所定平面
内で円運動させ、この平面に対して垂直な方向に第1の
軸をとり、円運動の半径方向に第2の軸をとり、重錘体
に作用する力の第1の軸方向成分をコリオリ力として検
出し、第2の軸まわりの角速度を求めるようにしたもの
である。
【0011】(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1
の態様に係る角速度センサにおいて、重錘体を所定平面
内で円運動させ、この円運動の半径方向に第1の軸をと
り、円運動の所定平面に対して垂直な方向に第2の軸を
とり、重錘体に作用する力の第1の軸方向成分から円運
動に基く遠心力成分を除去することによりコリオリ力を
検出し、第2の軸まわりの角速度を求めるようにしたも
のである。
【0012】(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1
の態様に係る角速度センサにおいて、XYZ三次元座標
系のXY平面内で重錘体を円運動させ、重錘体がX軸お
よびY軸を通過する瞬間にそれぞれコリオリ力の検出を
行い、XYZ三次元座標系における少なくとも2軸まわ
りの角速度を求めるようにしたものである。
【0013】(5) 本発明の第5の態様は、上述の第4
の態様に係る角速度センサにおいて、重錘体がY軸方向
に沿った所定の瞬時速度をもってX軸を通過する瞬間
に、この重錘体に作用する力のZ軸方向成分をコリオリ
力として検出し、X軸通過の瞬時速度と検出したコリオ
リ力とに基いてX軸まわりの角速度を求め、重錘体がX
軸方向に沿った所定の瞬時速度をもってY軸を通過する
瞬間に、この重錘体に作用する力のZ軸方向成分をコリ
オリ力として検出し、Y軸通過の瞬時速度と検出したコ
リオリ力とに基いてY軸まわりの角速度を求め、重錘体
がY軸方向に沿った所定の瞬時速度をもってX軸を通過
する瞬間に、この重錘体に作用する力のX軸方向成分を
検出し、検出したX軸方向成分から円運動に基く遠心力
成分を除去することによりコリオリ力を検出し、Y軸通
過の瞬時速度と検出したコリオリ力とに基いてZ軸まわ
りの角速度を求め、X軸、Y軸、Z軸の3軸まわりの角
速度を求めるようにしたものである。
【0014】(6) 本発明の第6の態様は、上述の第1
〜第5の態様に係る角速度センサにおいて、重錘体が原
点に位置するXYZ三次元座標系を定義し、重錘体に対
してX軸の正方向に力を作用させる第1の力発生器と、
重錘体に対してY軸の正方向に力を作用させる第2の力
発生器と、重錘体に対してX軸の負方向に力を作用させ
る第3の力発生器と、重錘体に対してY軸の負方向に力
を作用させる第4の力発生器と、によって駆動手段を構
成し、第1〜第4の力発生器を周期的に動作させること
により、重錘体をXY平面内で周回運動させるようにし
たものである。
【0015】(7) 本発明の第7の態様は、上述の第1
〜第5の態様に係る角速度センサにおいて、可撓性をも
った可撓性基板によって支持手段を構成し、この可撓性
基板の周囲部を筐体に固定し、可撓性基板の中心部に重
錘体を固着し、可撓性基板の所定箇所に対して所定方向
の力を作用させる力発生器を、可撓性基板上に複数配置
することにより駆動手段を構成し、可撓性基板の所定箇
所の所定方向への変位を検出する変位検出器を、可撓性
基板上に複数配置することにより検出手段を構成したも
のである。
【0016】(8) 本発明の第8の態様は、上述の第7
の態様に係る角速度センサにおいて、板状の基板の周囲
部と中心部との間に環状の溝を掘ることにより肉厚の薄
い可撓部を形成し、この可撓部の撓みによって、中心部
が周囲部に対して変位を生じるような構造にし、この板
状の基板によって可撓性基板を構成したものである。
【0017】(9) 本発明の第9の態様は、上述の第7
または第8の態様に係る角速度センサにおいて、可撓性
基板の表面がXY平面に平行になるようなXYZ三次元
座標系を定義し、X軸の正の領域および負の領域、なら
びに、Y軸の正の領域および負の領域に、Z軸に沿った
方向に力を作用させる力発生器をそれぞれ配置し、これ
らの力発生器を周期的に動作させることにより、重錘体
をXY平面内で周回運動させるようにしたものである。
【0018】(10) 本発明の第10の態様は、上述の第
7または第8の態様に係る角速度センサにおいて、可撓
性基板の表面がXY平面に平行になるようなXYZ三次
元座標系を定義し、X軸の正の領域および負の領域、な
らびに、原点近傍領域に、Z軸に沿った方向に力を作用
させる力発生器をそれぞれ配置し、これらの力発生器を
周期的に動作させることにより、重錘体をXZ平面内で
周回運動させるようにしたものである。
【0019】(11) 本発明の第11の態様は、上述の第
7または第8の態様に係る角速度センサにおいて、可撓
性基板の表面がXY平面に平行になるようなXYZ三次
元座標系を定義し、X軸の正の領域および負の領域に、
X軸に沿った方向に力を作用させる力発生器をそれぞれ
配置し、Y軸の正の領域および負の領域に、Y軸に沿っ
た方向に力を作用させる力発生器をそれぞれ配置し、こ
れらの力発生器を周期的に動作させることにより、重錘
体をXY平面内で周回運動させるようにしたものであ
る。
【0020】(12) 本発明の第12の態様は、上述の第
7または第8の態様に係る角速度センサにおいて、可撓
性基板の表面がXY平面に平行になるようなXYZ三次
元座標系を定義し、可撓性基板上に原点近傍の内側領域
とその周囲の外側領域とを定義し、X軸の正方向の内側
領域および外側領域、ならびに、X軸の負方向の内側領
域および外側領域に、X軸に沿った方向に力を作用させ
る力発生器をそれぞれ配置し、これらの力発生器を周期
的に動作させることにより、重錘体をXZ平面内で周回
運動させるようにしたものである。
【0021】(13) 本発明の第13の態様は、上述の第
7または第8の態様に係る角速度センサにおいて、可撓
性基板の表面がXY平面に平行になるようなXYZ三次
元座標系を定義し、X軸の正の領域および負の領域、な
らびに、Y軸の正の領域および負の領域に、Z軸に沿っ
た方向への変位を検出する変位検出器をそれぞれ配置
し、X軸の正負両領域に配置された変位検出器を用いて
重錘体のX軸方向に作用するコリオリ力を検出し、Y軸
の正負両領域に配置された変位検出器を用いて重錘体の
Y軸方向に作用するコリオリ力を検出するようにしたも
のである。
【0022】(14) 本発明の第14の態様は、上述の第
7または第8の態様に係る角速度センサにおいて、可撓
性基板の表面がXY平面に平行になるようなXYZ三次
元座標系を定義し、X軸の正の領域および負の領域に、
X軸に沿った方向への変位を検出する変位検出器をそれ
ぞれ配置し、Y軸の正の領域および負の領域に、Y軸に
沿った方向への変位を検出する変位検出器をそれぞれ配
置し、X軸の正負両領域に配置された変位検出器を用い
て重錘体のX軸方向に作用するコリオリ力を検出し、Y
軸の正負両領域に配置された変位検出器を用いて重錘体
のY軸方向に作用するコリオリ力を検出するようにした
ものである。
【0023】(15) 本発明の第15の態様は、上述の第
7または第8の態様に係る角速度センサにおいて、可撓
性基板上に形成された第1の電極と、この可撓性基板に
対向して設けられた固定基板上に形成された第2の電極
と、の一対の電極からなる容量素子によって、力発生器
および変位検出器を構成したものである。
【0024】(16) 本発明の第16の態様は、上述の第
7または第8の態様に係る角速度センサにおいて、可撓
性基板上に形成された第1の電極と、この第1の電極上
に可撓性基板の撓みが伝達されるように固着された圧電
素子と、この圧電素子の上の第1の電極に対向する位置
に形成された第2の電極と、によって、力発生器および
変位検出器を構成したものである。
【0025】(17) 本発明の第17の態様は、上述の第
7または第8の態様に係る角速度センサにおいて、可撓
性基板上に形成された第1の電極と、この可撓性基板に
対向して設けられた固定基板上に形成された第2の電極
と、これら一対の電極間に設けられた圧電素子と、によ
って、力発生器および変位検出器を構成したものであ
る。
【0026】(18) 本発明の第18の態様は、上述の第
7または第8の態様に係る角速度センサにおいて、力発
生器としての機能と変位検出器としての機能とを併せも
った兼用器を用いることにより、駆動手段の一部分と検
出手段の一部分とを物理的に同一の要素によって構成し
たものである。
【0027】(19) 本発明の第19の態様は、上述の第
1〜第5の態様に係る角速度センサにおいて、筐体に固
着された固定基板と、この固定基板の下方に固定された
圧電素子と、により支持手段を構成し、圧電素子の下方
に重錘体を固着し、圧電素子の所定位置に電荷を供給す
る手段によって駆動手段を構成し、圧電素子の所定位置
に発生する電荷を測定する手段によって検出手段を構成
したものである。
【0028】
【作 用】これまでの角速度センサでは、重錘体を第1
の方向に振動(往復運動)させた状態において、第2の
方向に作用するコリオリ力を検出することにより、第3
の軸まわりの角速度を求めていた。このため、異なる軸
まわりの角速度を求めるためには、振動方向やコリオリ
力の検出方向を変える必要があった。本発明の基本思想
は、重錘体を振動させる代わりに、周回運動させる点に
ある。周回運動する物体を、瞬時瞬時でとらえれば、こ
の周回運動の接線方向に速度成分をもっている。したが
って、この瞬時において、接線方向に対して垂直な第1
の軸方向について、重錘体に作用するコリオリ力を検出
することができれば、上述の基本原理によって、接線方
向と第1の軸方向との双方に垂直な第2の軸まわりの角
速度を演算によって求めることができる。振動運動は、
常に1つの軸に沿っての往復運動であり、運動の速度成
分の向きは常にこの1軸方向に沿ったものになる。これ
に対し、周回運動の速度成分の向きは、周回運動軌跡の
接線に沿ったものになり、瞬時瞬時で変化するものにな
る。このため、コリオリ力の検出時点を適宜設定すれ
ば、非常に多様な方向についての角速度検出が可能にな
る。
【0029】理論的には、重錘体にどのような周回運動
をさせてもよいが、実用上は、代表的な周回運動として
の円運動を行わせるのが好ましい。円運動は、比較的単
純な機構で実現することができ、非常に安定した運動に
なる。しかも、速度成分の向き(接線方向)が規則的に
変化するため、コリオリ力の検出処理も単純になる。特
に、XYZ三次元座標系のXY平面内で重錘体を円運動
させ、重錘体がX軸およびY軸を通過する瞬間にそれぞ
れコリオリ力の検出を行えば、XYZ三次元座標系にお
ける各軸まわりの角速度を簡単な演算で求めることがで
きるようになる。
【0030】重錘体を周回運動させるために、重錘体は
筐体内において、所定の自由度をもって移動可能となる
ように支持される。特に、周囲部が筐体に固定された可
撓性基板を支持手段として用い、この可撓性基板の中心
部に重錘体を固着するようにすれば、この可撓性基板の
平面内あるいはそれに直交する平面内における周回運動
を容易に行うことができる。すなわち、この可撓性基板
の所定箇所に対して所定方向の力を作用させる力発生器
を、可撓性基板上に複数配置し、これら力発生器を交互
に動作させるようにすれば、重錘体を周回運動させるこ
とができる。また、コリオリ力の検出は、この可撓性基
板の所定箇所の所定方向への変位を検出する変位検出器
を、可撓性基板上に複数配置しておけば、所定方向に作
用したコリオリ力の検出が可能になる。なお、周回運動
による遠心力が作用している場合には、この遠心力に基
く力を除去してコリオリ力のみを検出する必要がある
が、予め一定の周回運動を行わせるようにすれば、作用
する遠心力は既知の値となるので、コリオリ力のみを検
出することは容易である。
【0031】力発生器や変位検出器は、容量素子や圧電
素子を用いて構成することができる。たとえば、一対の
電極からなる容量素子は、両電極間に所定の電圧を印加
することによりクーロン力を発生させる力発生器として
利用することができる。また、一方の電極の変位によっ
て電極間距離が変化すれば、この容量素子の静電容量が
変化するので、これを電気的に検出することも可能であ
る。したがって、この容量素子を変位検出器として利用
することもできる。同様に、圧電素子は、所定の電荷を
供給することにより所定方向への応力を発生させる力発
生器として利用することができる。また、変位によって
圧電素子に応力が加わると、この圧電素子に電荷が発生
するので、これを電気的に検出することにより、変位検
出器として利用することもできる。
【0032】
【実施例】以下、本発明を図示する実施例に基いて説明
する。
【0033】§1 角速度の検出原理 はじめに、本発明に係る多軸角速度センサの基本となる
一軸の角速度センサによる角速度の検出原理を簡単に説
明しておく。図1は、日本国特許庁監修の雑誌「発明
(THE INVENTION)」、vol.90,No.3(1993年)の6
0頁に開示されている角速度センサの基本原理を示す図
である。いま、角柱状の振動子10を用意し、図示する
ような方向にX,Y,Z軸を定義したXYZ三次元座標
系を考える。このような系において、振動子10がZ軸
を回転軸として角速度ωで回転運動を行っている場合、
次のような現象が生じることが知られている。すなわ
ち、この振動子10をX軸方向に往復運動させるような
振動Uを与えると、Y軸方向にコリオリ力Fが発生す
る。別言すれば、振動子10を図のX軸に沿って運動さ
せた状態で、この振動子10をZ軸を中心軸として回転
させると、Y軸方向にコリオリ力Fが生じることにな
る。この現象は、フーコーの振り子として古くから知ら
れている力学現象であり、発生するコリオリ力Fは、 F=2m・v・ω で表される。ここで、mは振動子10の質量、vは振動
子10の運動についての瞬時の速度、ωは振動子10の
瞬時の角速度である。
【0034】前述の雑誌に開示された一軸の角速度セン
サは、この現象を利用して角速度ωを検出するものであ
る。すなわち、図1に示すように、角柱状の振動子10
の第1の面には第1の圧電素子11が、この第1の面と
直交する第2の面には第2の圧電素子12が、それぞれ
取り付けられる。圧電素子11,12としては、ピエゾ
エレクトリックセラミックからなる板状の素子が用いら
れている。そして、振動子10に対して振動Uを与える
ために圧電素子11が利用され、発生したコリオリ力F
を検出するために圧電素子12が利用される。すなわ
ち、圧電素子11に交流電圧を与えると、この圧電素子
11は伸縮運動を繰り返しX軸方向に振動する。この振
動Uが振動子10に伝達され、振動子10がX軸方向に
振動することになる。このように、振動子10に振動U
を与えた状態で、振動子10自身がZ軸を中心軸として
角速度ωで回転すると、上述した現象により、Y軸方向
にコリオリ力Fが発生する。このコリオリ力Fは、圧電
素子12の厚み方向に作用するため、圧電素子12の両
面にはコリオリ力Fに比例した電圧Vが発生する。そこ
で、この電圧Vを測定することにより、角速度ωを検出
することが可能になる。
【0035】上述した角速度センサは、Z軸まわりの角
速度を検出する1軸の角速度センサであり、X軸あるい
はY軸まわりの角速度の検出を行うことはできない。現
在、産業界において需要が望まれている多軸角速度セン
サは、図2に示すように、所定の物体20について、X
YZ三次元座標系におけるX軸まわりの角速度ωx、Y
軸まわりの角速度ωy、Z軸まわりの角速度ωz、のそ
れぞれを別個独立して検出することのできる多軸角速度
センサである。このような多軸角速度センサを実現する
ための検出原理を、図3〜図5を参照して説明する。い
ま、XYZ三次元座標系の原点位置に振動子30が置か
れているものとする。この振動子30のX軸まわりの角
速度ωxを検出するには、図3に示すように、この振動
子30にZ軸方向の振動Uzを与えたときに、Y軸方向
に発生するコリオリ力Fyを測定すればよい。コリオリ
力Fyは角速度ωxに比例した値となる。また、この振
動子30のY軸まわりの角速度ωyを検出するには、図
4に示すように、この振動子30にX軸方向の振動Ux
を与えたときに、Z軸方向に発生するコリオリ力Fzを
測定すればよい。コリオリ力Fzは角速度ωyに比例し
た値となる。更に、この振動子30のZ軸まわりの角速
度ωzを検出するには、図5に示すように、この振動子
30にY軸方向の振動Uyを与えたときに、X軸方向に
発生するコリオリ力Fxを測定すればよい。コリオリ力
Fxは角速度ωzに比例した値となる。
【0036】結局、XYZ三次元座標系における各軸ご
との角速度を検出するには、振動子30をX軸方向に振
動させる機構、Y軸方向に振動させる機構、Z軸方向に
振動させる機構、のそれぞれと、振動子30に作用する
X軸方向のコリオリ力Fxを検出する機構、Y軸方向の
コリオリ力Fyを検出する機構、Z軸方向のコリオリ力
Fzを検出する機構、のそれぞれとを用意すればよいこ
とになる。もっとも、3軸まわりについての角速度を検
出するためには、これらの機構がすべて必要かという
と、必ずしもそうではない。上述した図3〜図5に示す
原理の代わりに、図6〜図8に示す原理を用いた検出も
可能である。すなわち、振動子30のX軸まわりの角速
度ωxは、図6に示すように、この振動子30にY軸方
向の振動Uyを与えたときに、Z軸方向に発生するコリ
オリ力Fzを測定しても検出できるし、振動子30のY
軸まわりの角速度ωyは、図7に示すように、この振動
子30にZ軸方向の振動Uzを与えたときに、X軸方向
に発生するコリオリ力Fxを測定しても検出できるし、
振動子30のZ軸まわりの角速度ωzは、図8に示すよ
うに、この振動子30にX軸方向の振動Uxを与えたと
きに、Y軸方向に発生するコリオリ力Fyを測定しても
検出できる。
【0037】したがって、2軸まわりの角速度を検出す
るのであれば、1つの振動機構と2つの検出機構があれ
ば足りる。たとえば、図3に示す原理でX軸まわりの角
速度ωxを検出し、図7に示す原理でY軸まわりの角速
度ωyを検出するのであれば、Z軸方向に振動させる機
構と、Y軸方向のコリオリ力Fyを検出する機構と、X
軸方向のコリオリ力Fxを検出する機構と、があればよ
く、振動子30をZ軸方向に振動させた状態のまま、X
軸およびY軸まわりの角速度が検出できる。ところが、
振動子30をZ軸方向に振動させた状態のままでは、Z
軸まわりの角速度ωzを検出することはできない。Z軸
まわりの角速度ωzを検出するためには、振動子30の
振動方向をX軸(図8)もしくはY軸(図5)に変える
必要がある。
【0038】このように、従来提案されている角速度セ
ンサにおいて、3軸まわりの角速度を検出するために
は、少なくとも振動子30を2方向に振動させる必要が
ある。しかしながら、実際には、振動子の振動方向を変
えるには、重錘体の振動を停止させてから、あらためて
新たな振動方向に振動させてやる必要があるため、ある
程度の時間が必要になる。特に、精度良い検出値を得る
には、振動状態が安定するまで待つ必要があり、応答性
はかなり低下せざるを得ない。たとえば、上述の例で
は、振動子をZ軸方向に振動させた状態において、X軸
まわりの角速度ωxとY軸まわりの角速度ωzとを検出
することは可能であるが、続いて、Z軸まわりの角速度
ωzを検出するには、一度、振動子を静止させた後、あ
らためて、たとえばX軸方向に振動させる必要がある。
しかも、このX軸方向の振動が安定するまで、Z軸まわ
りの角速度ωzを検出することはできない。したがっ
て、3軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzをリアルタイ
ムで逐次検出する必要がある場合には、かなり応答性の
悪いものになってしまう。
【0039】本発明の目的は、このような従来技術の問
題点を解決し、複数の異なる軸についての角速度を、高
い応答性をもって検出することのできる角速度センサを
提供することにある。
【0040】§2 本発明に係る角速度センサの検出原
続いて、本発明に係る角速度センサの検出原理を説明す
る。いま、図9に示すように、所定の質量mをもった物
体40(以下、本明細書では重錘体と呼ぶ)が、所定の
周回軌道41に沿って周回運動を行っているものとす
る。ここで、周回運動とは、閉ループからなる周回軌道
に沿った運動であれば、どのような運動でもかまわな
い。したがって、楕円運動や、放物線・双曲線・自由曲
線を含む軌道上の運動でもかまわないが、実用上は円運
動が最も単純で好ましい。そこで、以下の実施例では、
いずれも重錘体を円運動させる例について述べるが、本
発明は、この円運動だけに限定されるものではない。
【0041】重錘体40が円運動をしている場合、周回
軌道41は中心O、半径rの円軌道となる。ここで、瞬
時における重錘体40の速度成分を考えると、図9に示
すように、円軌道41の接線方向Dtを向いていること
になる。このとき、この接線方向Dtに対して垂直な2
つの方向を考える。この図9の例では、重錘体40が円
運動をしているので、円運動の半径方向Drと、円軌道
41を含む平面に対して垂直な方向Duと、を考えるこ
とにする。ここで、2軸Dt,Drは、ある瞬時におい
てのみ定義される軸であり、時間が経過すれば、重錘体
40が円軌道41に沿って移動してしまうため、各軸の
向きは変化してしまうことになる。したがって、以下に
説明する2つの検出原理における各物理量は、いずれも
瞬時における物理量である。
【0042】図10は、本発明の第1の検出原理を説明
するための原理図である。上述のように、質量mをもっ
た重錘体40が、円軌道41に沿って円運動していると
き、重錘体40の速度ベクトルVtは、接線方向Dtを
向く。このとき、もしこの検出系全体に対して、半径方
向Drを向いた軸まわりに角速度ωが作用していたとす
ると、円軌道41に対して垂直な方向(円を含む平面に
対して垂直な方向)Duに沿って、コリオリ力Fcoが発
生することになり、このコリオリ力Fcoと、重錘体40
の質量mと、重錘体40の接線方向速度Vtと、作用し
た角速度ωと、の間には、 Fco=2m・Vt・ω なる関係が成り立つことになる。ここで、mは重錘体4
0の質量として知ることのできる値である。また、速度
Vtも測定可能な値であり、特に、重錘体40を所定の
駆動機構によって等速円運動させておけば、常に一定の
値となる。したがって、コリオリ力Fcoを検出すること
ができれば、上述の式に基いて、角速度ωを演算によっ
て求めることができる。この例のように、重錘体40
が、円軌道41に沿った円運動を行っている場合には、
この円軌道41に対して垂直な方向Duについては、遠
心力のような円運動のための力は作用しない。したがっ
て、重錘体40に対して、加速度、電磁気力などの外力
の作用がないとすれば、重錘体40に対して方向Duの
向きに加わっている力Fuは、コリオリ力Fcoに等し
い。そこで、この方向Duを向いた力Fuを検出するこ
とにより、コリオリ力Fcoを得ることができる。
【0043】結局、この第1の検出原理は、重錘体40
を円運動させた状態において、重錘体40にDu方向に
作用する力Fuを求め、この力Fuをコリオリ力Fcoと
して、上述の関係式を用いれば、円運動の半径方向Dr
に沿った軸まわりの角速度ωが得られることを示してい
る。ここで、円運動の半径方向Drは、中心点Oから外
側を指す矢印で示される方向であり、円軌道41を含む
平面内において時事刻々と変化してゆく方向である。し
たがって、この第1の検出原理に基く角速度検出を行え
ば、重錘体40が円軌道41を一周運動する間に、この
平面内のあらゆる方向を向いた軸まわりの角速度を検出
することが可能になる。
【0044】一方、図11は、本発明の第2の検出原理
を説明するための原理図である。前述の第1の検出原理
と同様に、質量mをもった重錘体40を、円軌道41に
沿って円運動させれば、重錘体40の速度ベクトルVt
は、接線方向Dtを向く。このとき、もしこの検出系全
体に対して、円軌道41に対して垂直な方向Duに沿っ
た軸まわりに角速度ωが作用していたとすると、円運動
の半径方向Drに沿って、コリオリ力Fcoが発生するこ
とになり、このコリオリ力Fcoと、重錘体40の質量m
と、重錘体40の接線方向速度Vtと、作用した角速度
ωと、の間には、やはり Fco=2m・Vt・ω なる関係が成り立つことになる。したがって、上述した
第1の検出原理と同様に、コリオリ力Fcoを検出するこ
とができれば、上述の式に基いて、角速度ωを演算によ
って求めることができる。ただ、第1の検出原理と異な
る点は、半径方向Drには、円運動に基く遠心力Fceが
作用する点である。すなわち、重錘体40に対して、加
速度、電磁気力などの外力の作用がないとすると、重錘
体40に対して半径方向Drに加わっている力Frは、
遠心力Fceにコリオリ力Fcoを合成したものになる。た
だ、遠心力Fceの大きさは、円運動が特定できれば、計
算によって求めることができる。すなわち、重錘体の質
量をm、円運動の半径をr、円運動の角速度をΩとすれ
ば、 Fce=m・r・Ω によって求めることができる。そこで、半径方向Drを
向いた力Frを検出し、そこから遠心力Fceの成分を除
去すれば、コリオリ力Fcoを得ることができる。
【0045】結局、この第2の検出原理は、重錘体40
を円運動させた状態において、重錘体40に対して半径
方向Drに作用する力Frを求め、この力Frから遠心
力の成分Fceを除去したものをコリオリ力Fcoとして、
上述の関係式を用いれば、円軌道41に対して垂直な方
向Duに沿った軸まわりの角速度ωが得られることを示
している。
【0046】なお、この検出系全体に対して、加速度や
電磁気力(重錘体40が磁性体の場合に影響を受ける)
などの外力が更に作用していた場合には、この角速度セ
ンサとは別に、加速度センサや磁気センサなどを併用し
て加速度や磁気力を検出し、この検出値に基く補正を行
えばよい。たとえば、第1の検出原理に基く検出を行う
場合には、Du方向に作用する力Fuから、加速度や磁
気力に基く成分を除去してコリオリ力Fcoを求めるよう
にすればよいし、第2の検出原理に基く検出を行う場合
には、Dr方向に作用する力Frから、遠心力Fceを除
去するとともに、加速度や磁気力に基く成分を除去して
コリオリ力Fcoを求めるようにすればよい。
【0047】図12は、上述した原理によって、角速度
検出を行う角速度センサの基本構成を示すブロック図で
ある。質量をもった重錘体40を、所定の周回軌道41
に沿って周回運動させる必要があるため、実用的なセン
サとして利用するためには、この周回運動が阻害されな
いように、重錘体40を筐体42内に収容する必要があ
る。このとき、重錘体40を筐体42によって支持する
必要があるが、重錘体40を筐体42に固着してしまう
と周回運動ができなくなるので、所定の自由度をもって
移動可能となるように支持する支持手段43が必要にな
る。また、重錘体40を周回運動させるための駆動手段
44と、上述した検出原理に不可欠なコリオリ力を検出
するための検出手段45と、上述した検出原理に基く演
算を実行する演算手段46と、が必須の構成要素とな
る。これらの各構成要素を、具体的にどのように実現す
るかという点については、後述する具体的な実施例にお
いて詳述する。
【0048】§3 XYZ三次元座標系における3軸ま
わりの角速度検出 上述した基本原理によれば、任意の軸まわりの角速度検
出が可能であるが、実用上は、XYZ三次元座標系にお
けるX軸まわりの角速度ωx、Y軸まわりの角速度ω
y、Z軸まわりの角速度ωz、の3成分を検出できれば
必要十分である。そこで、ここでは、このような3軸ま
わりの角速度検出を行うための原理を説明する。
【0049】いま、図13に示すように、XYZ三次元
座標系を定義し、原点Oを中心としてXY平面に含まれ
るような円からなる周回軌道41を考え、この周回軌道
に沿って重錘体40が円運動をしているものとする。結
局、重錘体40はXY平面内において、原点Oの周囲を
まわるように円運動することになる。そこで、円運動中
の重錘体40が、X軸を通過する瞬間およびY軸を通過
する瞬間に、§2で述べた基本原理に基く角速度検出を
行うのである。
【0050】まず、§2で述べた第1の検出原理による
検出を考えてみよう。図13に示すように、重錘体40
は点PxにおいてX軸を通過する。このときの重錘体4
0の瞬時速度ベクトルVyは、点Pxにおける円軌道4
1の接線方向を向いているためY軸に平行になる。そし
て、この時点において、重錘体40に作用するZ軸方向
の力Fzを求めれば、この力Fzは、この検出系全体に
作用しているX軸まわりの角速度ωxに基いて生じるコ
リオリ力Fcoに等しい。したがって、点Pxにおいて、
重錘体40に作用する力Fzを検出すれば、重錘体40
の質量をmとして、 Fz=Fco=2m・Vy・ωx なる関係式を用いて、X軸まわりの角速度ωxを求める
ことができる。また、重錘体40は点PyにおいてY軸
を通過する。このときの重錘体40の瞬時速度ベクトル
Vxは、点Pyにおける円軌道41の接線方向を向いて
いるためX軸に平行になる。そして、この時点におい
て、重錘体40に作用するZ軸方向の力Fzを求めれ
ば、この力Fzは、この検出系全体に作用しているY軸
まわりの角速度ωyに基いて生じるコリオリ力Fcoに等
しい。したがって、点Pyにおいて、重錘体40に作用
する力Fzを検出すれば、重錘体40の質量をmとし
て、 Fz=Fco=2m・Vx・ωy なる関係式を用いて、Y軸まわりの角速度ωyを求める
ことができる。結局、§2で述べた第1の検出原理を用
いれば、重錘体40がX軸を通過する瞬間においてX軸
まわりの角速度ωxを検出することができ、重錘体40
がY軸を通過する瞬間においてY軸まわりの角速度ωy
を検出することができる。
【0051】続いて、§2で述べた第2の検出原理によ
る検出を考えてみよう。図14に示すように、重錘体4
0が点PxにおいてX軸を通過する瞬間において、重錘
体40に作用するX軸方向の力Fxを求めれば、この力
Fxは、この検出系全体に作用しているZ軸まわりの角
速度ωzに基いて生じるコリオリ力Fcoと重錘体40に
作用する遠心力Fceとの合成力に等しい。したがって、
点Pxにおいて、重錘体40に作用する力Fxを検出す
れば、重錘体40の質量をmとして、 Fx−Fce=Fco=2m・Vy・ωz なる関係式を用いて、Z軸まわりの角速度ωzを求める
ことができる。また、重錘体40が点PyにおいてY軸
を通過する瞬間において、重錘体40に作用するY軸方
向の力Fyを求めれば、この力Fyは、この検出系全体
に作用しているZ軸まわりの角速度ωzに基いて生じる
コリオリ力Fcoと重錘体40に作用する遠心力Fceとの
合成力に等しい。したがって、点Pyにおいて、重錘体
40に作用する力Fyを検出すれば、重錘体40の質量
をmとして、 Fy−Fce=Fco=2m・Vx・ωz なる関係式を用いて、Z軸まわりの角速度ωzを求める
ことができる。結局、§2で述べた第2の検出原理を用
いれば、重錘体40がX軸を通過する瞬間あるいはY軸
を通過する瞬間において、Z軸まわりの角速度ωzを検
出することができる(もっとも、この第2の検出原理に
よれば、どの瞬間においても、Z軸まわりの角速度ωz
が検出できる)。
【0052】このように、XYZ三次元座標系のXY平
面内で重錘体40を円運動させ、重錘体がX軸およびY
軸を通過する瞬間にそれぞれコリオリ力の検出を行え
ば、第1の検出原理あるいは第2の検出原理に基いて、
X軸まわりの角速度ωx、Y軸まわりの角速度ωy、Z
軸まわりの角速度ωz、の3成分を検出することが可能
になる。具体的には、たとえば、図13に示すように、
点Pxおよび点Pyを通過するたびに、それぞれZ軸方
向の力Fzを検出するようにしておけば、それぞれ角速
度ωxおよびωyを求めることができ、更に、図14に
示すように、点Pxを通過するたびに、X軸方向の力F
xを検出するようにしておけば、遠心力Fceによる補正
を行うことにより角速度ωzを求めることができる(こ
の場合、点Px通過時には、力Fzと力Fxとの双方を
検出する必要があるが、それぞれ別個の力センサを用い
るようにすれば、何ら問題はない)。結局、重錘体40
が円軌道41上を一周回転する間に、3軸についての角
速度ωx,ωy,ωzをそれぞれ得ることができる。重
錘体40の円運動速度は、比較的高速に維持することが
可能であるから、3軸角速度センサとしての応答性は極
めて高くなる。もちろん、図示されていないX軸あるい
はY軸の負の領域を通過したときにも同様の検出を行う
ようにすれば、応答性は更に向上する。
【0053】§4 駆動手段と検出手段 本発明に係る角速度センサでは、重錘体を周回運動させ
る駆動手段と、重錘体に作用するコリオリ力を検出する
検出手段とが必須の構成要素となる。そこで、ここで
は、重錘体をXY平面内において円運動させる場合に適
した駆動手段および検出手段の構成および配置を簡単に
述べておく。
【0054】まず、駆動手段の構成および配置の一例を
図15に示す。この例では、XY平面の原点位置に重錘
体40が示されており、その周囲に4つの力発生器G1
〜G4が配置されている。X軸の正領域に配置された第
1の力発生器G1は、重錘体40に対してX軸の正方向
に力を作用させる機能を有し、Y軸の正領域に配置され
た第2の力発生器G2は、重錘体40に対してY軸の正
方向に力を作用させる機能を有し、X軸の負領域に配置
された第3の力発生器G3は、重錘体40に対してX軸
の負方向に力を作用させる機能を有し、Y軸の負領域に
配置された第4の力発生器G4は、重錘体40に対して
Y軸の負方向に力を作用させる機能を有する。そして、
重錘体40は、これら4つの力発生器G1〜G4が動作
していない中立状態においては、図の原点Oの位置に静
止状態となるように、筐体に対して支持されている。た
だし、所定の自由度をもって移動可能となるように支持
されており、4つの力発生器G1〜G4を動作させるこ
とにより、たとえば、図16に示す位置a〜eに示すよ
うに変位することが可能である。具体的には、たとえ
ば、ばねなどの弾力性部材によって、重錘体40を筐体
に取り付ければよい。
【0055】力発生器G1〜G4は、たとえば、電磁石
によって構成することができる。この場合、重錘体40
は、磁気的な吸引力を受けることができるように、鉄な
どの磁性体で構成しておく必要がある。4つの電磁石に
よって、重錘体40に円運動をさせるには、図17に示
すように位相がπ/2ずつずれた4つの正弦波半波整流
信号S1〜S4を用意し、これらをそれぞれ力発生器G
1〜G4に与えて周期的に動作させればよい。図17の
グラフの下に示したa〜eの文字は、図16に示した位
置a〜eに対応しており、各時点における重錘体40の
位置を示すものである。時間軸に示す0〜πの期間に、
重錘体40は位置a〜位置eに至るまでの円軌道上を移
動することになる。なお、実用上は、この図16に示す
ように、重錘体40の円運動の半径を、重錘体40その
ものの半径よりも小さくした方が角速度センサとして設
計がしやすい(重錘体40の重心の軌跡をみれば、重錘
体40が円運動していることが理解できよう)。
【0056】以上、重錘体に吸引力を作用させて円運動
させる例を説明したが、逆に斥力を作用させて円運動さ
せることも可能である。また、吸引力と斥力との双方を
作用させる機能をもった力発生器を用いれば、2組の力
発生器(たとえば、図16においてX軸上に配置された
力発生器G1とY軸上に配置された力発生器G2)だけ
で重錘体を円運動させることが可能になる。もちろん、
吸引力と斥力との双方を作用させる機能をもった力発生
器を4組用意し、図16に示すように配置すれば、重錘
体をより効率よく円運動させることができる。
【0057】続いて、上述した力発生器G1〜G4(駆
動手段)に加えて、更に検出手段として、6つの変位検
出器を配置した例を図18に示す。既に述べたように、
本発明における検出手段は、重錘体40に作用した所定
方向のコリオリ力を検出する構成要素であるが、ここで
は、重錘体40の変位を検出することにより、間接的
に、重錘体40に作用した力を検出し、(必要があれ
ば、遠心力、加速度に基づく力、磁気力などを除去する
補正を行い)コリオリ力を検出するような構成をとって
いる。すなわち、変位検出器D1は、重錘体40のX軸
正方向への変位を検出し、変位検出器D2は、重錘体4
0のY軸正方向への変位を検出し、変位検出器D3は、
重錘体40のX軸負方向への変位を検出し、変位検出器
D4は、重錘体40のY軸負方向への変位を検出し、変
位検出器D5は、重錘体40のZ軸正方向への変位を検
出し、変位検出器D6は、重錘体40のZ軸負方向への
変位を検出する。
【0058】重錘体40が筐体に対してばねによって支
持されていた場合には、重錘体40に作用した力と生じ
る変位との間には、ばね定数を介した線形関係が維持さ
れるので、変位検出器によって検出した各方向への変位
は、各方向に作用した力と等価な量として扱うことがで
きる。また、力と変位との間に、このような線形関係が
維持されなくても、両者の間の関係は、実際に試作した
角速度センサについて実測することができるので、この
実測した関係に基いて対応づけることができ、いずれに
せよ、変位検出器によって検出した変位を作用した力と
して取り扱うことが可能になる。したがって、変位検出
器D1によってX軸正方向の力+Fxが検出され、変位
検出器D2によってY軸正方向の力+Fyが検出され、
変位検出器D3によってX軸負方向の力−Fxが検出さ
れ、変位検出器D4によってY軸負方向の力−Fyが検
出され、変位検出器D5によってZ軸正方向の力+Fz
が検出され、変位検出器D6によってZ軸負方向の力−
Fzが検出されることになる。
【0059】また、所定軸について正負両方向の変位を
検出できる機能をもった変位検出器を用いれば、3組の
変位検出器によって、±Fx,±Fy,±Fzのすべて
の力を検出することが可能になる。もちろん、このよう
な変位検出器を6組用意し、図18に示すように配置し
て、X軸方向の力±Fxを検出器D1,D3の双方の出
力により、Y軸方向の力±Fyを検出器D2,D4の双
方の出力により、Z軸方向の力±Fzを検出器D5,D
6の双方の出力により、それぞれ検出するようにすれ
ば、より高精度の検出が可能になる。
【0060】この図18に示す構成要素をもった角速度
センサによって、各軸まわりの角速度ωx,ωy,ωz
を検出するには、次のような検出動作を行えばよい。ま
ず、力発生器G1〜G4に対して、既に説明したよう
に、図17に示す信号S1〜S4を与えることにより、
重錘体40を円運動させる。そして、たとえば、図17
のグラフの時間軸における位相0の時点(重錘体40
は、図16の位置aにくることになり、X軸を通過する
瞬間となる)において、変位検出器D5あるいはD6に
よって、Z軸方向の力+Fzあるいは−Fzを検出すれ
ば、図13に示す点Pxにおける検出原理に基いて、X
軸まわりの角速度ωxを求めることができる。また、こ
の同じ時点において、変位検出器D1あるいはD3によ
って、X軸方向の力+Fxあるいは−Fxを検出すれ
ば、図14に示す点Pxにおける検出原理に基いて、Z
軸まわりの角速度ωzを求めることができる。更に、図
17のグラフの時間軸における位相π/2の時点(重錘
体40は、図16の位置cにくることになり、Y軸を通
過する瞬間となる)において、変位検出器D5あるいは
D6によって、Z軸方向の力+Fzあるいは−Fzを検
出すれば、図13に示す点Pyにおける検出原理に基い
て、Y軸まわりの角速度ωyを求めることができる。な
お、この同じ時点において、変位検出器D2あるいはD
4によって、Y軸方向の力+Fyあるいは−Fyを検出
すると、図14に示す点Pyにおける検出原理に基い
て、やはりZ軸まわりの角速度ωzを求めることができ
る。
【0061】ここで、図14に示す点Pxあるいは点P
yにおける検出原理(第2の検出原理)を用いる場合に
は、検出した力FxやFyから遠心力Fceの成分を除外
する補正が必要になるが、具体的な重錘体40の構成お
よび筐体に対する支持構造、力発生器G1〜G4の構
成、そしてこれらに与える信号S1〜S4の周期や大き
さが定まれば、重錘体40の質量m、円運動の半径r、
円運動の角速度Ωは定まるので、 Fce=m・r・Ω なる演算によって、遠心力Fceを計算することが可能で
ある。
【0062】なお、上述の検出動作において、重錘体4
0に作用する力を検出するときに符号(すなわち、各軸
の正方向か負方向か)を考慮しているが、この符号は、
求める角速度ωの回転方向を決定するために必要な情報
となる。また、図18の構成例では、合計6個の変位検
出器D1〜D6を設け、同じ軸方向の力でも正方向の力
検出と、負方向の力検出とを別個の変位検出器で検出す
るようにしているが、前述したように、単一の変位検出
器によって、特定の軸方向に作用した正負両方向の力検
出を行うようにしてもかまわない。
【0063】続いて、本発明に係る角速度センサのより
具体的な構成を示すいくつかの実施例を、§5以下に示
しておくことにする。これらの実施例は、主として、可
撓性をもった可撓性基板によって支持手段を構成し、こ
の可撓性基板の周囲部を筐体に固定し、可撓性基板の中
心部に重錘体を固着した構造を有するものである。この
ような構造を採ると、可撓性基板の基板面に平行な平面
内で重錘体を円運動させたり、あるいは、この基板面に
垂直な平面内で重錘体を円運動させたりすることを、比
較的簡単に行うことができ、また、重錘体の各方向への
変位を比較的簡単に検出することができるようになる。
すなわち、可撓性基板上の複数の所定箇所に力発生器を
配置し、これらを周期的に動作させれば、可撓性基板に
時事刻々と変化する撓みを生じさせることができ、重錘
体を円運動させることができるのである。また、可撓性
基板上の複数の所定箇所に変位検出器を配置しておけ
ば、各変位検出器によって可撓性基板の各部の変位を検
出することができ、結果的に、重錘体の変位を検出する
ことができるようになるのである。各力発生器や各変位
検出器の効果的な配置については、個々の実施例におい
て述べることにする。
【0064】なお、以下の実施例では、力発生器および
変位検出器として、容量素子や圧電素子を用いている。
たとえば、容量素子は、両電極間に所定の電圧を印加す
ることによりクーロン力を発生させる力発生器として利
用することもできるし、一方の電極の変位によって電極
間距離が変化すれば、この容量素子の静電容量が変化す
るので、これを変位検出器としても利用できる。同様に
圧電素子は、所定の電圧を印加することにより所定方向
への応力を発生させる力発生器として利用することもで
きるし、変位によって圧電素子に応力が加わると、この
圧電素子に電荷が発生するので、これを電気的に検出す
ることにより、変位検出器として利用することもでき
る。
【0065】§5 容量素子を利用した角速度センサの
実施例 図19に側断面を示す角速度センサ100は、容量素子
によって、力発生器および変位検出器を構成した実施例
である。この角速度センサ100の中枢として機能する
基板は可撓性基板110である。図20に、この可撓性
基板110の上面図を示す。図20に示す可撓性基板1
10を、X軸に沿って切った断面が、図19に示されて
いることになる。図20において破線で示されているよ
うに、可撓性基板110の下面には、円環状の溝が形成
されており、この溝が形成された部分は肉厚が薄いため
に可撓性をもっている(第19図には、可撓部112と
して示されている)。ここでは、この円環状の可撓部1
12に囲まれた内側の部分を作用部111と呼び、可撓
部112の外側の部分を固定部113と呼ぶことにす
る。作用部111の下面には、ブロック状の重錘体12
0が固着されており、固定部113は、台座130によ
って支持されている(図20では、重錘体120および
台座130の位置を破線で示してある)。また、台座1
30はベース基板140に固定されている。結局、重錘
体120は、台座130によって囲まれた空間内におい
て宙吊りの状態となっている。ここで、肉厚の薄い可撓
部112が可撓性をもっているため、重錘体120は、
ある程度の自由度をもってこの空間内で変位できる。す
なわち、固定部113、台座130、ベース基板140
からなる装置筐体の中に、支持手段として機能する可撓
部112および作用部111を介して、重錘体120
が、所定の自由度をもって移動可能になるように支持さ
れていることになる。また、可撓性基板110の上部に
は、蓋基板150が所定の空間を確保しながら覆うよう
に取り付けられている。
【0066】第20図に示すように、可撓性基板110
の上面には、力発生器として機能する4枚の電極層G1
1〜G14と、変位検出器として機能する5枚の電極層
D11〜D15が形成されている。なお、図20では、
これらの電極層の部分にハッチングを施して示してある
が、これは、各電極層のパターン認識が容易になるよう
にするための配慮であり、断面部分を示すためのハッチ
ングではない。また、力発生器として機能する電極層
と、変位検出器として機能する電極層とでは、異なるハ
ッチングパターンを施した。これは、電極の平面パター
ンを示す他の図についても同様である。一方、蓋基板1
50の下面には、これらの各電極層G11〜G14およ
びD11〜D15のすべてに対向するように、1枚の大
きな円盤状の共通電極層E10が形成されており、これ
ら上下に対向する電極層によって、合計9組の容量素子
が構成されることになる。ここでは、図19に示すよう
に、重錘体120の重心位置に原点OをもつXYZ三次
元座標系を定義し、以後の説明を行うことにする。図2
0に示されているように、電極層G11〜G14および
電極層D11〜D14は、いずれもこの座標系における
X軸上もしくはY軸上に位置し、しかもこれらの軸に関
して線対称な形状をしている。
【0067】なお、この実施例では、可撓性基板110
側に9枚の個々の電極層G11〜G14,D11〜D1
5を形成し、蓋基板150側に単一の共通電極層E10
を形成したが、逆に、可撓性基板110側に単一の共通
電極層10を形成し、蓋基板150側に9枚の個々の電
極層G11〜G14,D11〜D15を形成するように
してもかまわない。あるいは、共通電極層を用いずに、
可撓性基板110側にも、蓋基板150側にも、それぞ
れ9枚の個々の電極層を形成し、対向する電極層ごとに
物理的に独立した容量素子を構成してもかまわない。
【0068】さて、はじめに、電極層G11と共通電極
層E10との間に、何らかの電圧を印加した場合に起こ
る現象を考えると、電極層G11/E10間には、クー
ロン力による引力が作用する。このとき、電極層G11
は、肉厚の薄い可撓部112上に位置するため、この引
力に基いて、電極層G11/E10の間隔がやや小さく
なるように、可撓性基板110は撓みを生じることにな
る。このような撓みは、重錘体120について、X軸正
方向への変位を生じさせる。要するに、共通電極層E1
0の電位を基準電位として、電極層G11に所定の電圧
を印加すると、重錘体120がX軸方向に変位すること
になる。したがって、この電極層G11および共通電極
層E10からなる容量素子は、図18に示した構成例に
おける力発生器G1として機能することになる。同様
に、電極層G12および共通電極層E10からなる容量
素子、電極層G13および共通電極層E10からなる容
量素子、電極層G14および共通電極層E10からなる
容量素子、はそれぞれ図18に示した構成例における力
発生器G2,G3,G4として機能することになる。そ
こで、共通電極層E10の電位を基準電位として、電極
層G11〜G14に、図17に示す信号S1〜S4に対
応する電圧を印加すれば、重錘体120は、ほぼXY平
面上において円運動をすることになる。
【0069】以上の動作説明では、各電極層G11〜G
14と共通電極層E10との間にクーロン引力を作用さ
せて、重錘体120を円運動させているが、逆に、クー
ロン斥力を作用させて円運動させることも可能である。
また、クーロン引力とクーロン斥力との両方を利用すれ
ば、更に効率的な円運動が可能になる。たとえばX軸正
方向に変位させるのであれば、電極層G11/E10間
にクーロン引力を作用させるとともに電極層G13/E
10間にクーロン斥力を作用させればよい。
【0070】結局、この実施例では、X軸の正の領域お
よび負の領域、ならびに、Y軸の正の領域および負の領
域に、Z軸に沿った方向に力を作用させる力発生器(各
容量素子)をそれぞれ配置し、これらの力発生器を周期
的に動作させることにより、重錘体120をXY平面内
で周回運動させる構成を採っていることになる。
【0071】既に述べた検出原理によれば、このように
重錘体120を円運動させた状態において、重錘体12
0に作用する各軸方向の力±Fx,±Fy,±Fzを検
出することができれば、各軸まわりの角速度±ωx,±
ωy,±ωz(符号は回転方向を示す)を求めることが
できる。ここで、重錘体120に作用する各軸方向の力
±Fx,±Fy,±Fzは、図18に示す変位検出器D
1〜D6によって、各軸方向への変位として検出できる
ことは既に述べたとおりである。図20に示す電極層D
11〜D15および共通電極層E10からなる5組の容
量素子は、この変位検出器D1〜D6として機能するこ
とになる。たとえば、重錘体120がX軸の正方向に変
位した場合、可撓部112が撓むことにより、電極層D
11/E10間の距離が縮まることになり、これら2枚
の電極層によって構成される容量素子の静電容量値に変
化が生じることになる。したがって、電極層D11/E
10間の静電容量値を測定することにより、重錘体12
0のX軸正方向への変位を求めることができる。具体的
には、試作品について、実際に重錘体120に種々の変
位を生じさせたときに、静電容量値がどのように変化す
るかを実測しておけば、この実測値に基いて、静電容量
値と変位量との関係を得ることができる。
【0072】同様に、電極層D12/E10間の静電容
量値を測定することにより、重錘体120のY軸正方向
の変位を求めることができ、電極層D13/E10間の
静電容量値を測定することにより、重錘体120のX軸
負方向の変位を求めることができ、電極層D14/E1
0間の静電容量値を測定することにより、重錘体120
のY軸負方向の変位を求めることができる。また、電極
層D15/E10間の静電容量値を測定することによ
り、重錘体120のZ軸方向の変位を求めることができ
る。なお、この実施例では、この電極層D15/E10
間の静電容量値によって、Z軸の正負両方向の変位を検
出するようにしている。すなわち、所定の基準容量値に
対して容量値が大きくなれば、電極間距離が縮まったこ
とを示すので、Z軸の正方向への変位が生じたと判断で
き、所定の基準容量値に対して容量値が小さくなれば、
電極間距離が広がったことを示すので、Z軸の負方向へ
の変位が生じたと判断できる。
【0073】なお、実際には、X軸およびY軸方向の変
位については、一対の容量素子の容量値の差として検出
するのが効率的で好ましい。たとえば、X軸方向の変位
は電極層D11/E10間の容量値と電極層D13/E
10間の容量値との差として検出するとよい。X軸正方
向に変位した場合には、前者の容量値は大きくなるのに
対し、後者の容量値は小さくなるため、両者の差を求め
ればより高精度の検出が可能になる。逆に、X軸負方向
に変位した場合には、前者の容量値は小さくなるのに対
し、後者の容量値は大きくなり、両者の差は符号が反転
することになる。同様に、Y軸方向の変位は電極層D1
2/E10間の容量値と電極層D14/E10間の容量
値との差として検出すれば、やはり高精度の検出が可能
になる。
【0074】このように、容量素子から構成される各変
位検出器は、いずれも直接的には、可撓性基板110の
上面の所定箇所についてのZ軸方向の変位(すなわち、
容量素子を構成する上下一対の電極のうちの下方電極の
上下方向に関する変位)を検出しているにすぎないが、
可撓性基板110上に配置された位置に応じて、重錘体
120のXYZ各軸方向への変位を間接的に検出してい
ることになる。なお、図20に示すように、変位検出器
を構成する各電極層D11〜D14は、いずれもX軸も
しくはY軸に関して線対象となっているため、各軸方向
の変位検出を行う上で他軸成分の影響を受けることがな
い。たとえば、X軸方向の変位検出に用いられる電極層
D11は、X軸に関して線対称となっているため、Y軸
方向の変位が生じた場合に、その半分の領域は共通電極
層E10に近付くが、別な半分の領域は共通電極層E1
0から遠ざかるため、全体的には変位が相殺されること
になる。
【0075】結局、この実施例では、X軸の正の領域お
よび負の領域、ならびに、Y軸の正の領域および負の領
域に、Z軸に沿った方向への変位を検出する変位検出器
(各容量素子)をそれぞれ配置し、X軸の正負両領域に
配置された変位検出器を用いて重錘体のX軸方向に作用
するコリオリ力を検出し、Y軸の正負両領域に配置され
た変位検出器を用いて重錘体のY軸方向に作用するコリ
オリ力を検出する構成を採っていることになる。
【0076】以上のような角速度センサ100によっ
て、各軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzを検出するに
は、次のような検出動作を行えばよい。まず、共通電極
層E10の電位を基準電位として、電極層G11〜G1
4に、図17に示す信号S1〜S4に対応する電圧を印
加し、重錘体120をXY平面上において円運動させ
る。そして、たとえば、図17のグラフの時間軸におけ
る位相0の時点(重錘体40が円軌道を移動しながら、
X軸を通過する瞬間となる)において、電極層D15/
E10間の静電容量値に基いて、重錘体120のZ軸方
向の変位を検出すれば、この変位は、重錘体120に対
してZ軸方向に作用した力Fzに対応したものになり、
図13に示す点Pxにおける検出原理に基いて、X軸ま
わりの角速度ωxを求めることができる。また、この同
じ時点において、電極層D11/E10間の静電容量値
もしくは電極層D13/E10間の静電容量値(あるい
は、両静電容量値の差)に基いて、重錘体120のX軸
方向の変位を検出すれば、この変位は、重錘体120に
対してX軸方向に作用した力Fxに対応したものにな
り、図14に示す点Pxにおける検出原理に基いて、Z
軸まわりの角速度ωzを求めることができる。更に、図
17のグラフの時間軸における位相π/2の時点(重錘
体40が円軌道を移動しながら、Y軸を通過する瞬間と
なる)において、電極層D15/E10間の静電容量値
に基いて、重錘体120のZ軸方向の変位を検出すれ
ば、この変位は、重錘体120に対してZ軸方向に作用
した力Fzに対応したものになり、図13に示す点Py
における検出原理に基いて、Y軸まわりの角速度ωyを
求めることができる。あるいは、この同じ時点におい
て、電極層D12/E10間の静電容量値もしくは電極
層D14/E10間の静電容量値(あるいは、両静電容
量値の差)に基いて、重錘体120のY軸方向の変位を
検出すれば、この変位は、重錘体120に対してY軸方
向に作用した力Fyに対応したものになり、図14に示
す点Pyにおける検出原理に基いて、やはりZ軸まわり
の角速度ωzを求めることができる。
【0077】§6 容量素子を利用した角速度センサの
別な実施例 続いて、上述した角速度センサ100の変形例に相当す
る角速度センサ180の構造および検出動作を、図21
の側断面図および図22の上面図を参照しながら説明す
る。図22は、図21に示す角速度センサ180の構成
要素の中の可撓性基板110を上面から見た図を示して
おり、ここに示す可撓性基板110をX軸に沿って切っ
た断面が図21に示されていることになる。図19およ
び図20に示す角速度センサ100と、図21および図
22に示す角速度センサ180と、の構造上の相違は、
可撓性基板110上の各電極層の配置だけである。すな
わち、角速度センサ180では、角速度センサ100に
おいて設けられていた電極層G12およびG14が図2
2に示すように省略されており、また、角速度センサ1
00においては変位検出器として機能していた電極層D
15が、角速度センサ180では、力発生器として機能
する電極G15となっている。
【0078】角速度センサ100と角速度センサ180
との動作上の大きな相違は、前者が、重錘体120をX
Y平面内で円運動させているのに対し、後者は、重錘体
120をXZ平面内で円運動させる点である。前述した
ように、電極層G11/E10間に所定の電圧を印加す
ると、両電極間にクーロン引力が作用し、可撓性基板1
10が撓みを生じ、重錘体120がX軸正方向に変位す
ることになる。同様に、電極層G15/E10間に所定
の電圧を印加すると、両電極間にクーロン引力が作用
し、重錘体120はZ軸正方向に変位することになる。
更に、電極層G13/E10間に所定の電圧を印加する
と、両電極間にクーロン引力が作用し、可撓性基板11
0が撓みを生じ、重錘体120がX軸負方向に変位する
ことになる。したがって、上記各電極層に位相が少しず
つずれた正弦波電圧を与えるようにすれば、図21にお
いて、重錘体120は右方位置から徐々に上方位置へと
円弧を描いて移動し、更に左方位置へと円弧を描いて移
動し、半円軌道上を移動することになる。また、上述の
ように両電極間に電圧を印加する操作は、両電極にそれ
ぞれ異なる極性をもった電荷を供給する操作になるが、
逆に、両電極に同じ極性の電荷が供給されるように工夫
すれば、両電極間にはクーロン斥力が作用することにな
る。そこで、電極層G15と電極層E10とに、同極性
の電荷を供給してクーロン斥力を作用させれば、今度
は、重錘体120は、図21における下方位置へと移動
することになる。このように、電極層G11,G13,
G15にそれぞれ適当な電圧信号を供給するようにすれ
ば、図21に矢印で示したような円軌道121に沿っ
て、重錘体120を円運動させることが可能になる。ま
た、前述したように、クーロン引力とクーロン斥力との
両方を組み合わせて用いれば、更に効率的な円運動が可
能になる。
【0079】結局、この角速度センサ180では、X軸
の正の領域および負の領域、ならびに、原点近傍領域
に、Z軸に沿った方向に力を作用させる力発生器(各容
量素子)をそれぞれ配置し、これらの力発生器を周期的
に動作させることにより、重錘体120をXZ平面内で
周回運動させる構成を採っていることになる。
【0080】一方、変位検出器として機能する電極層D
11〜D14の配置については、前述した角速度センサ
100の配置と全く同様であるから、これらを用いて、
X軸方向の力±FxおよびY軸方向の力±Fyを検出す
ることができる。こうして、重錘体120をXZ平面内
で円運動させながら、重錘体120がX軸あるいはZ軸
を通過する瞬時において、重錘体120に作用するX軸
方向の力±FxおよびY軸方向の力±Fyを検出すれ
ば、前述の検出原理に基いて、3軸まわりの角速度ω
x,ωy,ωzのすべてを検出することが可能である。
【0081】§7 圧電素子の一般的な性質 続いて、駆動手段および検出手段として、圧電素子を用
いた実施例を述べる。一般に、圧電素子は、所定方向に
力を加えると所定極性の電荷が発生する性質を有し、逆
に、所定極性の電荷を供給すると所定方向に力が発生す
る性質を有する。力の方向や電荷の極性は、個々の圧電
素子のもつ分極特性によってそれぞれ異なる。ここで
は、図23に示す圧電素子51および図24に示す圧電
素子52について、その固有の性質を説明する。いずれ
も、図には側断面図が示されており、各圧電素子の上面
には上部電極層Aが形成され、下面には下部電極層Bが
形成されている。
【0082】圧電素子51は、図23(a) に矢印で示す
ように、横に伸びる方向の力を外部から加えた場合に
は、上部電極層A側に正の電荷が、下部電極層B側に負
の電荷が、それぞれ発生し、逆に、図23(b) に矢印で
示すように、横に縮む方向の力を外部から加えた場合に
は、上部電極層A側に負の電荷が、下部電極層B側に正
の電荷が、それぞれ発生する。以上は、所定方向に力を
加えたときに所定極性の電荷が発生する性質を示したも
のであるが、逆に、所定極性の電荷を供給すると所定方
向に力が発生する性質も有する。すなわち、この圧電素
子51について、上部電極層A側に正の電荷を供給し、
下部電極層B側に負の電荷を供給すると、図23(a) に
矢印で示すように、横に伸びる方向の力が発生し、逆
に、上部電極層A側に負の電荷を供給し、下部電極層B
側に正の電荷を供給すると、図23(b) に矢印で示すよ
うに、横に縮む方向の力が発生する。ここでは、このよ
うな分極特性をもった圧電素子をタイプIの圧電素子と
呼ぶことにする。
【0083】一方、図24に示す圧電素子52は、上述
の圧電素子51とはやや異なった性質をもっている。す
なわち、この圧電素子52は、図24(a) に矢印で示す
ように、縦に伸びる方向の力を外部から加えた場合に
は、上部電極層A側に正の電荷が、下部電極層B側に負
の電荷が、それぞれ発生し、逆に、図24(b) に矢印で
示すように、縦に縮む方向の力を外部から加えた場合に
は、上部電極層A側に負の電荷が、下部電極層B側に正
の電荷が、それぞれ発生する。以上は、所定方向に力を
加えたときに所定極性の電荷が発生する性質を示したも
のであるが、逆に、所定極性の電荷を供給すると所定方
向に力が発生する性質も有する。すなわち、この圧電素
子52について、上部電極層A側に正の電荷を供給し、
下部電極層B側に負の電荷を供給すると、図24(a) に
矢印で示すように、縦に伸びる方向の力が発生し、逆
に、上部電極層A側に負の電荷を供給し、下部電極層B
側に正の電荷を供給すると、図24(b) に矢印で示すよ
うに、縦に縮む方向の力が発生する。ここでは、このよ
うな分極特性をもった圧電素子をタイプIIの圧電素子
と呼ぶことにする。
【0084】このような圧電素子としては、たとえば圧
電セラミックスなどが広く利用されており、最近の技術
では、特定の分極処理を施すことにより、所望の分極特
性をもった圧電セラミックスを自由に製造することが可
能である。また、物理的に単一の圧電セラミックスにつ
いて、部分ごとに異なる分極処理を施すことにより、そ
れぞれ部分ごとに分極特性が異なる圧電素子を得ること
も可能である。
【0085】このように、圧電素子には、「力→電荷」
という変換を行う機能と、「電荷→力」という変換を行
う機能とが備わっている。以下に示す実施例では、前者
の機能をコリオリ力の検出手段(変位検出器)として利
用し、後者の機能を重錘体を周回運動させるための駆動
手段(力発生器)として利用したものである。
【0086】§8 タイプIの圧電素子を利用した角速
度センサの実施例 図25に側断面を示す角速度センサ200は、上述した
タイプIの分極特性をもった圧電素子によって、力発生
器および変位検出器を構成した実施例である。この角速
度センサ200の基本部分の構成は、図19に示す角速
度センサ100とほぼ同じである。すなわち、可撓性基
板210の下面には、円環状の溝が形成されており、こ
の溝が形成された部分は肉厚が薄いために可撓性をもっ
た可撓部212を形成しており、この可撓部212に囲
まれた内側の部分が作用部211を形成し、可撓部21
2の外側の部分が固定部213を形成している。作用部
211の下面には、ブロック状の重錘体220が固着さ
れており、固定部213は、台座230によって支持さ
れている。また、台座230はベース基板240に固定
されている。ただ、可撓性基板210の上面に形成され
た構成要素が、前述した角速度センサ100のものとは
異なる。すなわち、可撓性基板210の上面には、ワッ
シャ状の共通電極層E20が固着され、その上に、同じ
くワッシャ状の圧電素子250が固着され、この圧電素
子250の上面に、12枚の電極層G21〜G24,D
21〜D28が形成されている。ここで、圧電素子25
0は、図23に示すタイプIの分極特性をもった圧電セ
ラミックスよりなる。
【0087】図26に、この可撓性基板210の上面図
を示す。図26に示す可撓性基板210を、X軸に沿っ
て切った断面が、図25に示されていることになる。図
26では、ワッシャ状の圧電素子250の上に、12枚
の電極層のパターンが明瞭に示されている。圧電素子2
50の中央部分には、円形の開口部があり、可撓性基板
210の中心部211が覗いている。この圧電素子25
0の下面には、ワッシャ状の共通電極層E20が配置さ
れているが、図26には示されていない。なお、図26
においては、各電極層の部分にハッチングを施して示し
てあるが、これは、各電極層のパターン認識が容易にな
るようにするための配慮であり、断面部分を示すための
ハッチングではない。図26に示す12枚の電極層のう
ち、電極層G21〜G24は、力発生器として利用する
ためのものであり、電極層D21〜D28は、変位検出
器として利用するためのものである。すなわち、圧電素
子250および共通電極層E20はいずれも単一のもの
であるが、圧電素子250の上面に形成されている12
枚の電極層がそれぞれ別個独立したものであるため、動
作を考える上では、12組の独立した圧電素子として取
り扱うことができる。ここでは、図25に示すように、
重錘体220の重心位置に原点OをもつXYZ三次元座
標系を定義し、以後の説明を行うことにする。図26に
示されているように、電極層G21〜G24および電極
層D21〜D28は、いずれもこの座標系におけるX軸
上もしくはY軸上に位置し、しかもこれらの軸に関して
線対称な形状をしている。
【0088】さて、はじめに、この角速度センサ200
において、電極層G21〜G24に周期的に電荷の供給
を行えば、重錘体220をXY平面内において円運動さ
せることができることを示そう。前述したように、圧電
素子250は、図23に示すような分極特性をもったタ
イプIの圧電素子である。そこで、たとえば、電極層G
21に負の電荷が、共通電極層E20に正の電荷が、そ
れぞれ発生するように電圧供給を行えば、圧電素子25
0のうちの電極層G21の下方に位置する一部分には、
図23(b) に示すように、横方向に縮む力が発生するこ
とになる。一方、電極層G23に正の電荷が、共通電極
層E20に負の電荷が、それぞれ発生するように電圧供
給を行うと、圧電素子250のうちの電極層G23の下
方に位置する一部分には、図23(a) に示すように、横
方向に伸びる力が発生することになる。このように、電
極層G21の下方部分においては縮む力が、電極層G2
3の下方部分においては伸びる力が、それぞれ発生する
と、可撓性基板210には、重錘体220をX軸の正方
向に変位させるような撓みが生じることになる。また、
各電極層に対する供給電荷の極性を逆転させれば、逆
に、重錘体220をX軸の負方向に変位させるような撓
みを生じさせることができる。
【0089】このように、X軸上に配置された電極層G
21,G23に対する所定電荷の供給は、図18に示す
モデルにおいて、力発生器G1もしくはG3を動作させ
ることと等価になる。同様に、Y軸上に配置された電極
層G22,G24に対する所定電荷の供給は、図18に
示すモデルにおいて、力発生器G2もしくはG4を動作
させることと等価になる。したがって、電極層G21〜
G24に、位相がずれた周期的な動作信号を与えれば、
重錘体220を、XY平面内において円運動させること
が可能になる。なお、実際には、圧電素子250の分極
特性を部分ごとに反転させると(上下に発生する電荷の
極性が逆転するようにする)、円運動させるための電圧
供給が簡便になる。
【0090】結局、この実施例では、X軸の正の領域お
よび負の領域に、X軸に沿った方向に力を作用させる力
発生器(圧電素子の各部分)をそれぞれ配置し、Y軸の
正の領域および負の領域に、Y軸に沿った方向に力を作
用させる力発生器(圧電素子の各部分)をそれぞれ配置
し、これらの力発生器を周期的に動作させることによ
り、重錘体220をXY平面内で周回運動させる構成を
採っていることになる。
【0091】既に述べた検出原理によれば、このように
重錘体220を円運動させた状態において、重錘体22
0に作用する各軸方向の力±Fx,±Fy,±Fzを検
出することができれば、各軸まわりの角速度±ωx,±
ωy,±ωz(符号は回転方向を示す)を求めることが
できる。また、重錘体220に作用する各軸方向の力±
Fx,±Fy,±Fzは、各軸方向への変位として検出
できることは既に述べたとおりである。図26に示す電
極層D21〜D28および共通電極層E20によって狭
まれた8組の圧電素子は、この各軸方向への変位検出器
として機能することになる。この実施例では、電極層D
21,D23を、X軸方向に関する変位(力±Fxに相
当)を検出するために用いており、電極層D26,D2
8を、Y軸方向に関する変位(力±Fyに相当)を検出
するために用いており、電極層D22,D24,D2
5,D27を、Z軸方向に関する変位(力±Fzに相
当)を検出するために用いている。
【0092】たとえば、重錘体220がX軸の正方向に
変位した場合、可撓性基板210の撓みが圧電素子25
0へと伝達され、圧電素子250のうち電極層D21の
下方に位置する一部分は横方向に縮むように変形し、電
極層D23の下方に位置する一部分は横方向に伸びるよ
うに変形する。したがって、図23に示す分極特性か
ら、電極層D21には負の電荷が発生し、電極層D23
には正の電荷が発生することになる。これらの発生電荷
を測定することにより、重錘体220のX軸正方向への
変位を求めることができる。また、重錘体220がX軸
の負方向に変位した場合には、発生電荷の極性が上述の
場合と比べて逆転することになる。こうして、電極層D
21,D23についての発生電荷を測定することによ
り、重錘体220のX軸方向への変位量を検出すること
が可能になる。具体的には、試作品について、実際に重
錘体220を変位させたときに、どの程度の電荷が発生
するかを実測しておけば、この実測値に基いて、発生電
荷量と変位量との関係を得ることができる。
【0093】同様に、電極層D26,D28についての
発生電荷を測定することにより、重錘体220のY軸方
向への変位量を検出することが可能になる。なお、この
実施例において、Y軸方向の検出に、外側に配置された
電極層D22,D24を用いずに、内側に配置された電
極層D26,D28を用いるのは、次に述べるZ軸方向
への変位量検出において、外側に配置された電極層D2
2,D24を用いる必要があるためであり、原理的に
は、外側に配置された電極層D22,D24を用いてY
軸方向の検出を行っても何ら問題はない。
【0094】さて、Z軸方向への変位量の検出には、こ
の実施例では4枚の電極層D22,D24,D25,D
27を用いている。ここで、図26に示されているよう
に、電極層D22,D24は外側に配置された電極層で
あるのに対し、電極層D25,D27は内側に配置され
た電極層である。Z軸方向への変位量の検出には、この
ように、外側に配置された電極層と内側に配置された電
極層とを組み合わせて用いるのが好ましい。これは、角
速度センサ200においては、重錘体220が、+Z軸
方向(図25における上方)に変位すると、圧電素子2
50の内側部分は横方向に伸び、外側部分は横方向に縮
むことになるからである。したがって、図23に示す分
極特性から、内側に配置されている電極層D25,D2
7には正の電荷が発生し、外側に配置されている電極層
D22,D24には負の電荷が発生する。逆に、重錘体
220が、−Z軸方向(図25における下方)に変位す
ると、圧電素子250の内側部分は横方向に縮み、外側
部分は横方向に伸びることになる。したがって、図23
に示す分極特性から、内側に配置されている電極層D2
5,D27には負の電荷が発生し、外側に配置されてい
る電極層D22,D24には正の電荷が発生する。こう
して、電極層D22,D24,D25,D27について
の発生電荷を測定することにより、重錘体220のZ軸
方向への変位量を検出することが可能になる。
【0095】なお、図26に示すように、変位検出器を
構成する各電極層D21〜D28は、いずれもX軸もし
くはY軸に関して線対象となっているため、各軸方向の
変位検出を行う上で他軸成分の影響を受けることがな
い。たとえば、X軸方向の変位検出に用いられる電極層
D21,D23は、X軸に関して線対称となっているた
め、Y軸方向の変位が生じた場合に、その半分の領域は
横方向に伸びるが、別な半分の領域は横方向に縮むた
め、全体的には発生電荷が相殺されることになる。
【0096】結局、この実施例では、X軸の正の領域お
よび負の領域、ならびに、Y軸の正の領域および負の領
域に、各軸に沿った方向への変位を検出する変位検出器
(圧電素子の各部分)をそれぞれ配置し、X軸の正負両
領域に配置された変位検出器を用いて重錘体のX軸方向
に作用するコリオリ力を検出し、Y軸の正負両領域に配
置された変位検出器を用いて重錘体のY軸方向に作用す
るコリオリ力を検出する構成を採っていることになる。
【0097】以上のような角速度センサ200によっ
て、各軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzを検出するに
は、電極層G21〜G24に、それぞれ位相をずらして
周期的に所定の電荷を供給して、重錘体220をXY平
面上において円運動させる。そして、重錘体220がX
軸を通過する瞬間において、電極層D22,D24,D
25,D27の発生電荷を測定して、重錘体220のZ
軸方向の変位を検出すれば、この変位は、重錘体220
に対してZ軸方向に作用した力Fzに対応したものにな
り、図13に示す点Pxにおける検出原理に基いて、X
軸まわりの角速度ωxを求めることができる。また、こ
の同じ時点において、電極層D21,D23の発生電荷
を測定して、重錘体220のX軸方向の変位を検出すれ
ば、この変位は、重錘体220に対してX軸方向に作用
した力Fxに対応したものになり、図14に示す点Px
における検出原理に基いて、Z軸まわりの角速度ωzを
求めることができる。更に、重錘体220がY軸を通過
する瞬間において、電極層D22,D24,D25,D
27の発生電荷を測定して、重錘体220のZ軸方向の
変位を検出すれば、この変位は、重錘体220に対して
Z軸方向に作用した力Fzに対応したものになり、図1
3に示す点Pyにおける検出原理に基いて、Y軸まわり
の角速度ωyを求めることができる。あるいは、この同
じ時点において、電極層D26,D28の発生電荷を測
定して、重錘体220のY軸方向の変位を検出すれば、
この変位は、重錘体220に対してY軸方向に作用した
力Fyに対応したものになり、図14に示す点Pyにお
ける検出原理に基いて、やはりZ軸まわりの角速度ωz
を求めることができる。
【0098】なお、上述の実施例では、圧電素子250
の上面に12枚の個々の電極層G21〜G24,D21
〜D28を形成し、下面に単一の共通電極層E20を形
成したが、逆に、上面に単一の共通電極層E20を形成
し、下面に12枚の個々の電極層G21〜G24,D2
1〜D28を形成するようにしてもかまわない。あるい
は、共通電極層を用いずに、圧電素子250の上面にも
下面にも、それぞれ12枚の個々の電極層を形成するよ
うにしてもかまわない。ただし、配線を単純化する上で
は、共通電極層を形成するのが好ましい。
【0099】§9 タイプIの圧電素子を利用した角速
度センサの別な実施例 続いて、上述した角速度センサ200の変形例に相当す
る角速度センサ280の構造および検出動作を、図27
の側断面図および図28の上面図を参照しながら説明す
る。図28は、図27に示す角速度センサ280の構成
要素の中の可撓性基板210を上面から見た図を示して
おり、ここに示す可撓性基板210をX軸に沿って切っ
た断面が図27に示されていることになる。図25およ
び図26に示す角速度センサ200と、図27および図
28に示す角速度センサ280と、の構造上の相違は、
圧電素子250上の各電極層の配置だけである。すなわ
ち、角速度センサ280では、角速度センサ200にお
いて設けられていた内側の電極層G22,G24,D2
5〜D28が、図28に示すように単一の電極層G25
に置き換えられている。なお、外側の電極層G21,G
23,D21〜D24については、若干形状が異なって
いるが、本質的には変わりはない。この角速度センサ2
80では、電極層G21,G23,G25が、力発生器
として機能し、電極層D21〜D24が、変位検出器と
して機能することになる。
【0100】角速度センサ200と角速度センサ280
との動作上の大きな相違は、前者が、重錘体220をX
Y平面内で円運動させているのに対し、後者は、重錘体
220をXZ平面内で円運動させる点である。前述した
ように、共通電極層E20を基準として、電極層G2
1,G23に所定電荷を供給すると、重錘体220をX
軸方向に変位させることができる。この角速度センサ2
80では、更に、電極層G25に所定電荷を供給するこ
とによって、重錘体220をZ軸方向にも変位させるこ
とができるようにしている。すなわち、電極層G25に
正の電荷を供給すると、図23(a) に示す分極特性か
ら、この電極層G25の下方の圧電素子部分には横方向
に伸びる力が発生し、結果的に、重錘体220を+Z軸
方向(図27における上方)に変位させるような撓みが
生じることになり、逆に、電極層G25に負の電荷を供
給すると、図23(b) に示す分極特性から、この電極層
G25の下方の圧電素子部分には横方向に縮む力が発生
し、結果的に、重錘体220を−Z軸方向(図27にお
ける下方)に変位させるような撓みが生じることにな
る。したがって、電極層G21,G23,G25にそれ
ぞれ適当に電荷供給を行えば、図27に矢印で示したよ
うな円軌道221に沿って、重錘体220を円運動させ
ることが可能になる。
【0101】結局、この角速度センサ280では、X軸
の正の領域および負の領域、ならびに、原点近傍領域
に、X軸に沿った方向に力を作用させる力発生器(各圧
電素子)をそれぞれ配置し、これらの力発生器を周期的
に動作させることにより、重錘体220をXZ平面内で
周回運動させる構成を採っていることになる。一方、変
位検出器として機能する電極層D21〜D24の配置に
ついては、前述した角速度センサ200の配置とほぼ同
様であるから、これらを用いて、X軸方向の力±Fxお
よびY軸方向の力±Fyを検出することができる。こう
して、重錘体220をXZ平面内で円運動させながら、
重錘体220がX軸あるいはZ軸を通過する瞬時におい
て、重錘体220に作用するX軸方向の力±Fxおよび
Y軸方向の力±Fyを検出すれば、前述の検出原理に基
いて、3軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzのすべてを
検出することが可能である。
【0102】もちろん、この実施例でも、§8で述べた
実施例と同様に、圧電素子250の上面側を単一の共通
電極層としてもよいし、上面下面ともに個々の独立した
電極層を形成するようにしてもよい。
【0103】§10 タイプIIの圧電素子を利用した
角速度センサの実施例 図29に側断面を示す角速度センサ300は、図24に
示したタイプIIの分極特性をもった圧電素子によっ
て、力発生器および変位検出器を構成した実施例であ
る。この角速度センサ300は、円盤状の可撓性基板3
10と円盤状の固定基板320との間に、タイプIIの
分極特性をもつ円盤状の圧電素子330が介挿された構
造となっている。可撓性基板310の下面には、円柱状
の重錘体340が固着されている。また、可撓性基板3
10の外周部分および固定基板320の外周部分は、い
ずれも筐体350によって支持されている。圧電素子3
30の上面には、5枚の上部電極層E31〜E35(図
29には、その一部だけが示されている)が形成され、
同様に下面には、5枚の下部電極層E36〜E40(や
はり、その一部だけが示されている)が形成されてお
り、上部電極層E31〜E35の上面は固定基板320
の下面に固着され、下部電極層E36〜E40の下面は
可撓性基板310の上面に固着されている。ここで、固
定基板320は十分な剛性をもち、撓みを生じることは
ないが、可撓性基板310は可撓性をもち、いわゆるダ
イヤフラムとして機能する。ここでは、図29に示すよ
うに、重錘体340の重心位置に原点OをもつXYZ三
次元座標系を定義し、以後の説明を行うことにする。図
29は、この角速度センサをXZ平面で切った側断面図
に相当する。
【0104】図30は、圧電素子330の上面および上
部電極層E31〜E35を示す上面図であり、図31
は、圧電素子330の下面および下部電極層E36〜E
40を示す下面図である。図30に示されているよう
に、上部電極層E31〜E34は、いずれも扇状をして
おり、この座標系におけるX軸上もしくはY軸上に位置
し、しかもこれらの軸に関して線対称な形状をしてい
る。また、上部電極層E35は、円形をしており、ちょ
うど原点の位置に配置されている。一方、下部電極層E
36〜E40は、図31に示されているように、それぞ
れ上部電極層E31〜E35と同じ形状をしており、対
向する位置に配置されている。なお、下部電極層E36
〜E40は、単一の共通電極層にしてもかまわない。ま
た、可撓性基板310を導電性の材料によって構成して
おけば、可撓性基板310自身を単一の共通電極層とし
て用いることができ、下部電極層を物理的に構成する必
要はなくなる。
【0105】前述したように、圧電素子330は、図2
4に示すような分極特性をもったタイプIIの圧電素子
である。そこで、たとえば、電極層E31に負の電圧を
与え、電極層E36に正の電圧を与えれば、図24(b)
に示すように、縦方向に縮む力が発生する。また、電極
層E33に正の電圧を与え、電極層E38に負の電圧を
与えれば、図24(a) に示すように、縦方向に伸びる力
が発生する。したがって、これらの電圧供給操作のいず
れか一方あるいは双方を行うことにより、重錘体340
をX軸に沿った方向に変位させることができる。すなわ
ち、X軸上に配置された各電極層E31,E33,E3
6,E38に所定の電圧を印加することにより、重錘体
340に対してX軸方向に沿った変位を生じさせること
ができる。同様に、Y軸上に配置された各電極層E3
2,E34,E37,E39に所定の電圧を印加するこ
とにより、重錘体340に対してY軸方向に沿った変位
を生じさせることもできる。そこで、これらの各電極
に、位相がずれた周期的な電圧を印加するようにすれ
ば、重錘体340をXY平面内において円運動させるこ
とが可能になる。
【0106】結局、この角速度センサ300では、X軸
の正の領域および負の領域、ならびに、Y軸の正の領域
および負の領域に、Z軸に沿った方向に力を作用させる
力発生器(圧電素子の各部分)をそれぞれ配置し、これ
らの力発生器を周期的に動作させることにより、重錘体
340をXY平面内で周回運動させる構成を採っている
ことになる。
【0107】また、この角速度センサ300では、重錘
体340をXZ平面内において円運動させることも可能
である。たとえば、電極層E35に負の電圧を与え、電
極層E40に正の電圧を与えれば、図24(b) に示すよ
うに、縦方向に縮む力が発生するので、重錘体340
は、+Z軸方向(図29における上方)に変位する。逆
に、電極層E35に正の電圧を与え、電極層E40に負
の電圧を与えれば、図24(a) に示すように、縦方向に
伸びる力が発生するので、重錘体340は、−Z軸方向
(図29における下方)に変位する。結局、原点位置に
配置された電極層E35,E40に所定の電圧を印加す
ることにより、重錘体340に対してZ軸方向に沿った
変位を生じさせることもできる。そこで、X軸上に配置
された各電極層E31,E33,E36,E38と、原
点位置に配置された電極層E35,E40とに、位相が
ずれた周期的な電圧を印加するようにすれば、重錘体3
40をXZ平面内において円運動させることも可能にな
る。
【0108】この場合、この角速度センサ300では、
X軸の正の領域および負の領域、ならびに、原点近傍領
域に、Z軸に沿った方向に力を作用させる力発生器(圧
電素子の各部分)をそれぞれ配置し、これらの力発生器
を周期的に動作させることにより、重錘体340をXZ
平面内で周回運動させる構成を採っていることになる。
【0109】一方、これらの電極層に発生する電荷を測
定することにより、重錘体340に生じた変位(重錘体
340に作用した力)を検出することも可能である。た
とえば、重錘体340に対してX軸の正方向の力+Fx
が作用し、X軸の正方向に変位した場合、図29に示す
圧電素子330の右側部分は上下に押しつぶされ、左側
部分は上下に引き伸ばされる。したがって、図24に示
す分極特性から、電極層E33,E36には正の電荷が
発生し、電極層E31,E38には負の電荷が発生する
ことになる。結局、X軸上に配置された各電極層E3
1,E33,E36,E38に発生する電荷を測定する
ことにより、重錘体340のX軸方向の変位(重錘体3
40に作用したX軸方向の力±Fx)を検出することが
できる。同様に、Y軸上に配置された各電極層E32,
E34,E37,E39に発生する電荷を測定すること
により、重錘体340のY軸方向の変位(重錘体340
に作用したY軸方向の力±Fy)を検出することができ
る。また、Z軸方向の変位(力±Fz)については、原
点位置に配置された電極層E35,E40に発生する電
荷を測定することにより検出が可能である。すなわち、
重錘体340に対して、Z軸方向の力±Fzが作用すれ
ば、電極層E35,E40間の圧電素子は、上下に押し
つぶされるか(+Fzの場合)、上下に引き伸ばされる
(−Fzの場合)ので、両電極層に発生する電荷量およ
び極性に基いて、作用した力±Fzを検出することが可
能である。
【0110】このように、角速度センサ300の各電極
層は、重錘体340を円運動させるための力発生器の構
成要素としての役割と、重錘体340に作用したコリオ
リ力を検出するための変位検出器の構成要素としての役
割と、を兼ね備えることになる。
【0111】ここで、電極層E31〜E34,E36〜
E39には、力発生器としての役割を与え、電極層E3
5,E40には、変位検出器としての役割を与えるよう
にすれば、重錘体340をXY平面内で円運動させた状
態において、X軸まわりの角速度ωxとY軸まわりの角
速度ωyとを検出する2軸まわりの角速度センサが実現
できる。すなわち、重錘体340がX軸を通過する瞬間
において、電極層E35,E40における発生電荷を測
定して、重錘体340のZ軸方向の変位を検出すれば、
この変位は、重錘体340に対してZ軸方向に作用した
力Fzに対応したものになり、図13に示す点Pxにお
ける検出原理に基いて、X軸まわりの角速度ωxを求め
ることができる。同様に、重錘体340がY軸を通過す
る瞬間において、電極層E35,E40における発生電
荷を測定して、重錘体340のZ軸方向の変位を検出す
れば、この変位は、重錘体340に対してZ軸方向に作
用した力Fzに対応したものになり、図13に示す点P
yにおける検出原理に基いて、Y軸まわりの角速度ωy
を求めることができる。
【0112】また、電極層E31,E36,E33,E
38,E35,E40には、力発生器としての役割を与
え、電極層E32,E37,E34,E39には、変位
検出器としての役割を与えるようにすれば、重錘体34
0をXZ平面内で円運動させた状態において、X軸まわ
りの角速度ωxとZ軸まわりの角速度ωzとを検出する
2軸まわりの角速度センサが実現できる。すなわち、重
錘体340がX軸を通過する瞬間において、電極層E3
2,E37,E34,E39おける発生電荷を測定し
て、重錘体340のY軸方向の変位を検出すれば、この
変位は、重錘体340に対してY軸方向に作用した力F
yに対応したものになり、X軸まわりの角速度ωxを求
めることができる。同様に、重錘体340がZ軸を通過
する瞬間において、電極層E32,E37,E34,E
39おける発生電荷を測定して、重錘体340のY軸方
向の変位を検出すれば、この変位は、重錘体340に対
してY軸方向に作用した力Fyに対応したものになり、
Z軸まわりの角速度ωzを求めることができる。
【0113】なお、3軸まわりの角速度ωx,ωy,ω
zのすべてを検出するためには、力発生器としての役割
を担う電極層と変位検出器としての役割を担う電極層と
を分割した構成とすればよい。たとえば、図32に示す
例は、図30における電極層E31を、E31GとE3
1Dとに分割し、電極層E33を、E33GとE33D
とに分割し、電極層E32,E34の形状をE32D,
E34Dのように変更したものである。なお、電極層E
32D,E34Dの形状は、電極層E31D,E33D
の形状と同一にしてあり、X軸方向とY軸方向との検出
感度が揃うようにしてある。ここで、電極層E31G,
E33G,E35Gは、力発生器としての役割を果た
し、重錘体340をXZ平面内で円運動させる機能を果
たす。また、電極層E31D,E32D,E33D,E
34Dは、変位検出器としての役割を果たし、重錘体3
40のX軸方向およびY軸方向の変位(すなわち、力F
x,Fy)を検出する機能を果たす。
【0114】このような構成の角速度センサでは、重錘
体340をXZ平面内で円運動させ、重錘体340がX
軸を通過する瞬間において、重錘体340のY軸方向の
変位を検出してX軸まわりの角速度ωxを求めることが
でき、同時点において、重錘体340のX軸方向の変位
を検出してY軸まわりの角速度ωyを求めることができ
る。更に、重錘体340がZ軸を通過する瞬間におい
て、重錘体340のY軸方向の変位を検出してZ軸まわ
りの角速度ωzを求めることができる。
【0115】なお、図29に示す角速度センサ300で
は、圧電素子330の上面には図30に示すように5枚
の個々の電極層E31〜E35が形成され、下面には図
31に示すように5枚の個々の電極層E36〜E40が
形成されているが、いずれか一方は単一の共通電極層に
してもかまわない。
【0116】図33に側断面図を示す角速度センサ36
0は、図29に示す角速度センサ300の変形例であ
る。角速度センサ300との相違点は、可撓性基板31
0の代わりに、導電性の可撓性基板315が用いられて
いる点と、下部電極層E36〜E40が省略されている
点である。可撓性基板315は、可撓性基板310より
も直径が若干小さな円盤状の基板であり、その外周部分
は、筐体350には支持されておらず、自由になってい
る。重錘体340は、この可撓性基板315と、圧電素
子330と、上部電極層E31〜E35と、固定基板3
20とによって、筐体350に支持された状態になって
おり、図のように宙吊りの状態になっている。したがっ
て、重錘体340は、筐体350内において、ある程度
の自由度をもって移動可能である。また、可撓性基板3
15は導電性をもっているため、共通電極層としての機
能を果たし、下部電極層E36〜E40は不要になって
いる。このように、図33に示す角速度センサ360
は、図29に示す角速度センサ300と比べて、構造
上、若干の違いはあるが、その動作は全く同じである。
【0117】§11 駆動手段と検出手段との兼用 既に述べてきたように、本発明に係る角速度センサで
は、重錘体を円運動させるための駆動手段と、円運動中
の重錘体に作用するコリオリ力を検出する検出手段とが
必要である。たとえば、図18に示すモデルでは、重錘
体40をXY平面内において円運動させるための力発生
器(駆動手段)G1〜G4と、この重錘体40に対し
て、各座標軸方向に作用するコリオリ力を検出するため
の変位検出器(検出手段)D1〜D6とをそれぞれ別個
独立して設けている。これまでに説明した種々の実施例
においても、力発生器と変位検出器とをそれぞれ別個独
立して設けた構造のものを主として例示した。
【0118】しかしながら、これまでの実施例を見れば
わかるように、力発生器と変位検出器とは物理的には全
く同一の構造をもった要素で構成することができる。た
とえば、静電容量素子は、電圧を印加することにより一
対の電極間にクーロン引力/斥力を発生する性質をもっ
ているため、力発生器として用いることもできるし、両
電極間の距離の変化を電気信号として取り出すことがで
きるため、変位検出器として用いることもできる。同様
に、圧電素子は、電圧を印加することにより応力を発生
する性質をもっているため、力発生器として用いること
もできるし、変位によって加えられた応力を電気信号と
して取り出すことができるため、変位検出器として用い
ることもできる。
【0119】このように、これまでの実施例では、力発
生器としての構成要素と変位検出器としての構成要素と
を別個のものとして取り扱ってきたが、実際には、両者
間には物理的な構造の差はなく、角速度センサとして動
作させる上で、便宜的にこれらを別個の要素として取り
扱っただけのことである。したがって、両者は互いに可
換性をもった構成要素であり、動作態様によって、同一
の構成要素を力発生器として利用することも、変位検出
器として利用することもできるものである。たとえば、
図29〜図31に示す角速度センサでは、既に§10に
おいて述べたように、電極層E31〜E34,E36〜
E39に力発生器としての役割を与え、電極層E35,
E40に変位検出器としての役割を与えれば、重錘体3
40をXY平面内で円運動させた状態において、Z軸方
向に作用するコリオリ力を検出することができ、X軸ま
わりの角速度ωxとY軸まわりの角速度ωyとを検出す
ることができるが、一方で、電極層E31,E36,E
33,E38,E35,E40に力発生器としての役割
を与え、電極層E32,E37,E34,E39に変位
検出器としての役割を与えれば、重錘体340をXZ平
面内で円運動させた状態において、Y軸方向に作用する
コリオリ力を検出することができ、X軸まわりの角速度
ωxとZ軸まわりの角速度ωzとを検出することができ
る。
【0120】ただ、この§10で述べた動作方法は、個
々の構成要素を、力発生器として用いるか、変位検出器
として用いるか、いずれか一方を選択して用いるもので
あって、同一の構成要素を力発生器として用いながら同
時に変位検出器としても用いるものではない。実は、検
出回路を少し工夫すれば、同一の構成要素に対して、力
発生器の役割と変位検出器の役割とを同時に兼務させる
ことが可能になるのである。ここでは、このように、同
一の構成要素を駆動手段および検出手段として同時に兼
用する利用態様を述べることにする。
【0121】図34は、力発生と変位検出の兼用器GD
1〜GD6を用いた角速度センサの構成例を示す概念図
である。ここで、兼用器GD1〜GD6は、力発生器と
しての機能と変位検出器としての機能とを同時に果たす
ことになる。まず、これら兼用器GD1〜GD6の力発
生器としての機能に着目してみると、兼用器GD1は、
駆動信号g1を受けて重錘体40をX軸正方向に移動さ
せる力を発生し、兼用器GD2は、駆動信号g2を受け
て重錘体40をY軸正方向に移動させる力を発生し、兼
用器GD3は、駆動信号g3を受けて重錘体40をX軸
負方向に移動させる力を発生し、兼用器GD4は、駆動
信号g4を受けて重錘体40をY軸負方向に移動させる
力を発生し、兼用器GD5は、駆動信号g5を受けて重
錘体40をZ軸正方向に移動させる力を発生し、兼用器
GD6は、駆動信号g6を受けて重錘体40をZ軸負方
向に移動させる力を発生する。一方、これら兼用器GD
1〜GD6の変位検出器としての機能に着目してみる
と、兼用器GD1は、重錘体40がX軸正方向に変位す
ると検出信号d1を出力し、兼用器GD2は、重錘体4
0がY軸正方向に変位すると検出信号d2を出力し、兼
用器GD3は、重錘体40がX軸負方向に変位すると検
出信号d3を出力し、兼用器GD4は、重錘体40がY
軸負方向に変位すると検出信号d4を出力し、兼用器G
D5は、重錘体40がZ軸正方向に変位すると検出信号
d5を出力し、兼用器GD6は、重錘体40がZ軸負方
向に変位すると検出信号d6を出力する。
【0122】さて、ここで駆動信号g1〜g4として、
たとえば、図17に示す駆動信号S1〜S4のような互
いに位相のずれた周期信号を用いれば、重錘体40はX
Y平面内において円運動を行うことになる。そこで、全
く角速度が作用していない環境において、重錘体40を
このように円運動させ、そのときにどのような検出信号
が得られるかを測定しておく。たとえば、このとき、各
兼用器GD1〜GD6から、所定の検出信号d1〜d6
が出力されたものとする。重錘体40が正確にXY平面
内において円運動しているのであれば、当然、検出信号
d1〜d4はこの円運動の周期に合わせた周期信号とな
り、検出信号d5,d6は定常信号となる。ここで、外
界から何らかの角速度が作用した場合を考える。この角
速度は、円運動している重錘体40に対してコリオリ力
を作用させることになる。たとえば、ある瞬間におい
て、この作用した角速度に基づいてX軸正方向のコリオ
リ力が発生したとしよう。この場合、兼用器GD1の検
出信号には、発生したコリオリ力に基づく信号成分Δα
が加わることになり、兼用器GD1からは、(d1+Δ
α)なる検出信号が得られることになる。
【0123】すなわち、全く角速度が作用していない環
境においては、兼用器GD1に駆動信号g1を与える
と、検出信号d1が得られていたのに、角速度が作用し
た環境においては、同じ駆動信号g1を与えているの
に、検出信号(d1+Δα)が得られたことになる。し
たがって、全く角速度が作用していない環境において、
検出信号d1を予め測定しておけば、実際に角速度が作
用している環境において得られた検出信号(d1+Δ
α)に基づいて、X軸正方向のコリオリ力に基づく信号
成分Δαを求めることが可能になる。これは、他の兼用
器GD2〜GD6についても全く同様である。別言すれ
ば、兼用器GD1〜GD6は、駆動信号g1〜g6を受
けて力発生器としての機能を果たしながら、同時に、コ
リオリ力の成分を含んだ検出信号を出力する変位検出器
としての機能を果たしていることになる。
【0124】このように、兼用器を用いた角速度センサ
では、センサ本体の構成要素の数を低減させることがで
きるため、センサ本体の構造を単純化できるというメリ
ットが得られる。ただ、信号処理回路は、これまでの実
施例で述べてきた力発生器と変位検出器とを別個独立し
て設けたセンサに比べて若干複雑になるというデメリッ
トはある。したがって、実用上は、これらのメリットや
デメリットを考慮して、用途に応じて、力発生器と変位
検出器とを別個独立した構造にするか、兼用器を用いた
構造にするかを適宜使い分けるのが好ましい。
【0125】以下、この§11で述べた基本思想に基づ
いて、兼用器を用いたいくつかの実施例を、信号処理回
路とともに説明することにする。すなわち、§12で
は、§5,6で述べた容量素子を利用した角速度センサ
に兼用器を適用した実施例について述べ、§13では、
§8,9で述べたタイプIの圧電素子を利用した角速度
センサに兼用器を適用した実施例について述べ、§1
4,§15では、§10で述べたタイプIIの圧電素子
を利用した角速度センサに兼用器を適用した実施例につ
いて述べる。
【0126】§12 兼用容量素子を利用した角速度セ
ンサの実施例 図35に側断面を示す角速度センサ190は、図19に
示す容量素子を利用した角速度センサに兼用器を適用す
ることにより、必要な電極層の枚数を低減させ、全体構
造を単純化した実施例である。図19に示すセンサとの
相違は、可撓性基板110の上面に配置された電極層お
よび蓋基板150の下面に配置された電極層の構成だけ
である。そこで、以下、この電極層の構成のみを説明
し、その他の構成要素の説明は省略する。
【0127】可撓性基板110の上面には、図36に示
されているように、4枚の扇形の下部電極層L11〜L
14が配置されている。下部電極層L11はX軸の正の
領域上、L12はY軸の正の領域上、L13はX軸の負
の領域上、L14はY軸の負の領域上、にそれぞれ配置
されており、いずれも各座標軸に関して対称形をしてい
る。一方、蓋基板150の下面にも、上部電極層U11
〜U14が、それぞれ各下部電極層L11〜L14に対
向する位置に配置されている。ここで、上部電極層U1
1〜U14は、下部電極層L11〜L14と全く同一形
状をしている。こうして、電極層L11/U11、電極
層L12/U12、電極層L13/U13、電極層L1
4/U14、によってそれぞれ1組ずつの容量素子が形
成されていることになる。
【0128】さて、このような構成の角速度センサを動
作させるために、図37に示すような信号処理回路を用
意する。この回路図において、左端に示されている各容
量素子は、蓋基板150の下面に形成された上部電極層
と可撓性基板110の上面に形成された下部電極層とに
よって構成される容量素子であり、U11〜U14およ
びL11〜L14は、各上部電極層および下部電極層を
示している。L11〜L14は共通の接地レベルに接続
され、互いに導通している。ここで、B11〜B18は
バッファ回路であり、R11〜R18は抵抗である。ま
た、C1〜C4は、容量/電圧変換回路であり、各容量
素子の静電容量値を電圧値に変換して出力する機能を有
する。駆動信号入力端子T11,T13,T15,T1
7は、それぞれ上部電極層U11,U12,U13,U
14に印加するための駆動電圧V11,V13,V1
5,V17を入力する端子であり、検出信号出力端子T
12,T14,T16,T18は、それぞれ容量/電圧
変換回路C1,C2,C3,C4から出力された検出電
圧V12,V14,V16,V18を出力する端子であ
る。
【0129】このような信号処理回路を用いて、重錘体
120をXY平面に沿って円運動させるには、たとえ
ば、駆動信号入力端子T11,T13,T15,T17
に、それぞれ図17に示す駆動信号S1〜S4を与えれ
ばよい。4組の容量素子には、それぞれ位相をずらして
順々にクーロン引力が作用することになり、重錘体12
0はXY平面に沿って円運動する。
【0130】一方、このような信号処理回路を用いれ
ば、重錘体120の各軸方向への変位を検出することが
できる。たとえば、重錘体120がX軸の正方向に変位
すると、電極層U11/L11間の距離は短く、電極層
U13/L13間の距離は長くなるため、前者における
静電容量値は増加し、後者における静電容量値は減少す
る。したがって、図37の回路において、検出電圧V1
2は上昇し、検出電圧V16は下降する。そこで、両検
出電圧の差(V12−V16)によって、重錘体120
のX軸正方向の変位検出が可能になる。逆に、重錘体1
20がX軸の負方向に変位すると、上述の場合と増減が
逆になるため、両検出電圧の差(V12−V16)の符
号が逆転することになる。結局、出力端子T12,T1
6に得られる検出電圧の差(V12−V16)によっ
て、X軸の正負両方向の変位検出が可能になる。全く同
様に、出力端子T14,T18に得られる検出電圧の差
(V14−V18)によって、Y軸の正負両方向の変位
検出が可能になる。更に、この信号処理回路では、Z軸
の正負両方向の変位検出も可能である。たとえば、重錘
体120がZ軸の正方向に変位すると、4組の容量素子
はいずれも電極間距離が短くなり静電容量値が増加し、
逆にZ軸の負方向に変位すると、4組の容量素子はいず
れも電極間距離が長くなり静電容量値が減少する。した
がって、4つの出力端子T12,T14,T16,T1
8に得られる電圧の総和(V12+V14+V16+V
18)の増加または減少により、Z軸の正負両方向の変
位検出が可能になる(2つの電圧の和(V12+V1
6)あるいは(V14+V18)によっても、Z軸方向
の変位検出は可能であるが、効率良い安定した検出を行
うためには、上述のように4つの電圧の総和を用いるの
が好ましい)。
【0131】なお、各電極層L11〜L14,U11〜
U14はいずれもX軸またはY軸に関して線対称な形状
をしているため、上述の検出結果には、他軸成分が干渉
することはない。たとえば、重錘体120がX軸方向に
変位した場合、電極層U11/L11間と電極層U13
/L13間の距離は一方が短く他方は長くなるため、検
出電圧の差(V12−V16)としてX軸方向の変位を
求めることができる。ところが、重錘体120がY軸方
向に変位した場合は、電極層U11/L11間の距離
も、電極層U13/L13間の距離も、部分的に短くな
ったり長くなったりするが、全体的には相殺されて電圧
差は発生しない。また、重錘体120がZ軸方向に変位
した場合は、電極層U11/L11間の距離も、電極層
U13/L13間の距離も、双方ともに短くなったり長
くなったりするので、検出電圧の差(V12−V16)
をとると相殺されることになる。
【0132】以上の説明により、この角速度センサ19
0では、たった4組の電極対U11/L11,U12/
L12,U13/L13,U14/L14を利用して、
重錘体120をXY平面に沿って円運動させる機能と、
重錘体120のX軸,Y軸,Z軸の正負両方向に関する
変位を別個に検出する機能と、を備えていることがわか
る。そこで、これらの電極対を、§11において説明し
た兼用器として利用すれば、各軸まわりの角速度ωx,
ωy,ωzの検出が可能になる。すなわち、まず全く角
速度が作用しない環境において、入力端子T11,T1
3,T15,T17に、それぞれ図17に示す駆動信号
S1〜S4を与え、重錘体120をXY平面に沿って円
運動させた状態にする。そして、このときに、出力端子
T12,T14,T16,T18に出力される電圧V1
2,V14,V16,V18を予め測定しておく。もち
ろん、これらの電圧値は駆動信号S1〜S4と同じ周期
で変化する周期信号となる。続いて、この角速度センサ
190を、実際に角速度が作用する環境におき、やはり
入力端子T11,T13,T15,T17に、それぞれ
駆動信号S1〜S4を与え、重錘体120をXY平面に
沿って円運動させた状態にし、そのときに、出力端子T
12,T14,T16,T18に出力される電圧を測定
する。これらの電圧値が、予め測定した値と異なれば、
その差分は作用した角速度に基づくコリオリ力の成分と
いうことになる。たとえば、X軸方向への変位を示す検
出電圧差(V12−V16)が予め測定した値よりもΔ
αだけ増えていれば、X軸の正方向にΔαに相当する大
きさのコリオリ力が作用していることになる。
【0133】結局、この角速度センサ190では、重錘
体120をXY平面に沿って円運動させた状態で、X軸
方向のコリオリ力、Y軸方向のコリオリ力、Z軸方向の
コリオリ力、をそれぞれ別個独立して検出できることに
なる。したがって、既に述べた原理により、作用した角
速度を、X軸まわりの角速度ωx,Y軸まわりの角速度
ωy,Z軸まわりの角速度ωz、と各軸ごとに検出する
ことが可能になる。
【0134】なお、上述の説明では、互いに向かい合う
上部電極層と下部電極層との間に電圧を印加し、両電極
層にそれぞれ極性の異なる電荷を供給してクーロン引力
を作用させ、重錘体120を駆動していたが、互いに向
かい合う上部電極層と下部電極層とに、それぞれ同極性
の電荷を供給できるような構造にしておけば、クーロン
斥力によって重錘体120を駆動することも可能であ
る。また、たとえば、電極対U11/L11にクーロン
引力を作用させると同時に、電極対U13/L13にク
ーロン斥力を作用させるようにすれば、重錘体120を
X軸の正方向により効率的に変位させることが可能にな
る。このように、一方で引力、他方で斥力を作用させる
ようにして重錘体120を円運動させると、より効率的
な駆動動作が可能になる。
【0135】また、4組の電極対のすべてに、あるい
は、同一座標軸上に配置された2組の電極対にクーロン
引力を作用させれば、重錘体120をZ軸の正方向に変
位させることができ、4組の電極対のすべてに、あるい
は、同一座標軸上に配置された2組の電極対にクーロン
斥力を作用させれば、重錘体120をZ軸の負方向に変
位させることができるので、このZ軸の正負両方向への
駆動操作と、たとえば、既に述べたX軸の正負両方向へ
の駆動操作とを組み合わせれば、重錘体120をXZ平
面に沿って円運動させることも可能である。
【0136】更に、上述の説明では、重錘体120のX
軸方向の変位を、検出電圧の差(V12−V16)によ
り求め、重錘体120のY軸方向の変位を、検出電圧の
差(V14−V18)により求めているが、このような
差分をとっているのは、検出精度を向上させる意味と、
Z軸方向の変位成分が検出結果に干渉しないようにする
ためである。したがって、たとえば、Z軸方向へのコリ
オリ力が作用しないような検出環境で用いることを前提
とするのであれば、たとえば、電圧値V12あるいはV
16をX軸方向の変位を示す値として単独で用いること
も可能であるし、同様に、電圧値V14あるいはV18
をY軸方向の変位を示す値として単独で用いることも可
能である。
【0137】また、上述の実施例では、上部電極層U1
1〜U14も、下部電極層L11〜L14も、いずれも
物理的に独立した個別の電極層となっているが、いずれ
か一方は、物理的には単一の共通電極層(この例の場合
は、4枚の扇形の電極層のすべてに対向するような円盤
状の共通電極層)としてもかまわない。電極層間の配線
を単純化するには、このような共通電極層を形成してお
くのが好ましい。図37に示される回路ではL11〜L
14が共通接地され、電気的には共通電極となってい
る。
【0138】なお、図35および図19〜図22に示す
ような構造の角速度センサ190は、一般的な半導体装
置の製造プロセスの技術やマイクロマシニング技術を適
用できる材料によって構成することにより、安価で高性
能なものを大量生産することが可能になる。たとえば、
図35において、可撓性基板110,重錘体120,台
座130,蓋基板150といった部材を、シリコン基板
やガラス基板を用いて構成するようにすれば、ガラス基
板とシリコン基板との接合には陽極接合技術などを利用
することができ、シリコン基板同士の接合にはシリコン
・ダイレクトボンディング技術などを利用することがで
きる。ただ、シリコン基板上に物理的に異なる個別の電
極層を隣接して配置すると、シリコン基板中の容量によ
る結合により、互いに干渉が起こるおそれがあるので、
個別の電極層はできるだけガラス基板上に形成するのが
好ましい。物理的に単一の共通電極層であれば、シリコ
ン基板上に形成しても問題はない。
【0139】§13 タイプIの兼用圧電素子を利用し
た角速度センサの実施例 図38に側断面を示す角速度センサ290は、図25に
示すタイプIの圧電素子を利用した角速度センサに兼用
器を適用することにより、必要な電極層の枚数を低減さ
せ、全体構造を単純化した実施例である。図25に示す
センサとの相違は、圧電素子250の上下両面に配置さ
れた電極層の構成だけである。そこで、以下、この電極
層の構成のみを説明し、その他の構成要素の説明は省略
する。
【0140】圧電素子250の上面には、図39に示さ
れているように、4枚の扇形の上部電極層U21〜U2
4が配置されている。上部電極層U21はX軸の正の領
域上、U22はY軸の正の領域上、U23はX軸の負の
領域上、U24はY軸の負の領域上、にそれぞれ配置さ
れており、いずれも各座標軸に関して対称形をしてい
る。また、圧電素子250の下面には、上部電極層U2
1〜U24のすべてに対向するようなワッシャ状の共通
下部電極層L20が配置されている。こうして、電極層
U21/L20、電極層U22/L20、電極層U23
/L20、電極層U24/L20、によってそれぞれ挟
まれた4組の部分圧電素子が形成されることになる。
【0141】一方、図40に側断面を示す角速度センサ
295は、図38に示す角速度センサ290の電極層の
配置を若干変えた実施例である。すなわち、この角速度
センサ295における圧電素子250の上面には、図4
1に示されているように、4枚の扇形の上部電極層U2
6〜U29が配置されている。上部電極層U26はX軸
の正の領域上、U27はY軸の正の領域上、U28はX
軸の負の領域上、U29はY軸の負の領域上、にそれぞ
れ配置されており、いずれも各座標軸に関して対称形を
している。また、圧電素子250の下面には、上部電極
層U26〜U29のすべてに対向するようなワッシャ状
の共通下部電極層L25が配置されている。こうして、
電極層U26/L25、電極層U27/L25、電極層
U28/L25、電極層U29/L25、によってそれ
ぞれ挟まれた4組の部分圧電素子が形成されることにな
る。
【0142】図38および図39に示す角速度センサ2
90と、図40および図41に示す角速度センサ295
との相違は、各電極層が内側領域に配置されているか、
外側領域に配置されているか、という点だけである。こ
の配置領域の意味するところを図42の側断面図を用い
て説明しよう。いま、可撓性基板210の固定部213
を固定した状態において、作用部211に上方への力F
zを作用させると、可撓部212に図のような撓みが生
じる。このとき、可撓部212の内部に生じている応力
は、個々の部位によって異なる。いま、図の横に伸びる
方向の応力を正、横に縮む方向の応力を負で表すことに
すると、図42の下方の応力分布図に示すように、内側
のエッジ位置P1において応力は正の最大値となり、外
側のエッジ位置P2において応力は負の最大値となる。
そして、位置P1〜P2間で応力は徐々に変化し、変極
点P3において応力は零になる。ここで、内側のエッジ
位置P1から変極点P3までの領域を内側領域A1、変
極点P3から外側のエッジ位置P2までの領域を外側領
域A2、と定義すると、内側領域A1においては正の応
力が発生し、外側領域A2においては負の応力が発生す
ることになる。図43は、この内側領域A1と外側領域
A2との分布を示すための可撓性基板210の上面図で
ある。
【0143】このような応力分布を考慮すれば、内側領
域A1に配置された電極層と、外側領域A2に配置され
た電極層とでは、作用部211が全く同じ方向に変位し
ているにもかかわらず、全く正反対の現象が生じること
が理解できよう。たとえば、内側領域A1に配置された
電極層には正の電荷が発生しているのに、外側領域A2
に配置された電極層には負の電荷が発生することにな
る。したがって、内側領域A1と外側領域A2とに跨が
るような単一の電極層を配置するのは、作用部211の
変位を検出する上では好ましくない。このように跨がっ
た電極層では、内側領域A1の部分で起こる現象と外側
領域A2の部分で起こる現象とが、互いに打ち消し合う
ように働くため、力発生器として利用する場合には駆動
効率が低下し、変位検出器として利用する場合には検出
感度が低下することになる。図25および図26に示し
た角速度センサ200(§8で述べた角速度センサ)
は、内側領域A1内に配置した電極層G22,G24,
D25〜D28と、外側領域A2内に配置した電極層G
21,G23,D21〜D24と、において正反対の現
象が起こることを考慮し、両方を巧妙に組み合わせるこ
とにより効率的な検出を可能にしたセンサということに
なる。
【0144】図38および図39に示す角速度センサ2
90は、すべての電極を内側領域A1内に配置した実施
例であり、内側領域A1内に応力を発生させて重錘体2
20を駆動し、内側領域A1内に発生する応力に基づい
て重錘体220の変位を検出することになる。このセン
サ290では、外側領域A2の応力は利用されないこと
になる。一方、図40および図41に示す角速度センサ
295は、すべての電極を外側領域A2内に配置した実
施例であり、外側領域A2内に応力を発生させて重錘体
220を駆動し、外側領域A2内に発生する応力に基づ
いて重錘体220の変位を検出することになる。このセ
ンサ295では、内側領域A1の応力は利用されないこ
とになる。上述したように、各電極層が、内側領域A1
内にあるか、外側領域A2内にあるか、によって、具体
的に生じる現象は異なることになるが、センサの検出原
理は基本的には同じである。そこで、以下、図38およ
び図39に示す角速度センサ290を代表として、その
動作を説明することにし、角速度センサ295の動作説
明は省略する。
【0145】さて、図38および図39に示す角速度セ
ンサ290を動作させるために、図44に示すような信
号処理回路を用意する。この回路図において、左端に示
されているU21〜U24およびL20は、圧電素子2
50の上面に形成された上部電極層および下面に形成さ
れた下部電極層であり、それぞれ一対の電極層間には、
タイプIの圧電素子が挟まれていることになる。また、
B21〜B28はバッファ回路であり、R21〜R28
は抵抗である。駆動信号入力端子T21,T23,T2
5,T27は、それぞれ上部電極層U21,U22,U
23,U24に印加するための駆動電圧V21,V2
3,V25,V27を入力する端子であり、検出信号出
力端子T22,T24,T26,T28は、それぞれ上
部電極層U21,U22,U23,U24の実際の電位
を示す検出電圧V22,V24,V26,V28を出力
する端子である。
【0146】このような信号処理回路を用いて、重錘体
220をXY平面に沿って円運動させるには、たとえ
ば、駆動信号入力端子T21,T23,T25,T27
に、それぞれ図17に示す駆動信号S1〜S4を与えれ
ばよい。4組の各圧電素子の一部分には、それぞれ位相
をずらして順々に電圧が供給され、所定方向への変位が
生じることになり、重錘体220はXY平面に沿って円
運動する。
【0147】一方、このような信号処理回路を用いれ
ば、重錘体220の各軸方向への変位を検出することが
できる。たとえば、重錘体220がX軸の正方向に変位
すると、上部電極層U21の形成領域にはX軸に沿って
伸びる方向の応力が作用し、上部電極層U23の形成領
域にはX軸に沿って縮む方向の応力が作用するため、図
23に示すタイプIの圧電素子の分極特性を考慮すれ
ば、検出電圧V22としては正の電圧が、検出電圧V2
6としては負の電圧が、それぞれ得られることがわか
る。そこで、両検出電圧の差(V22−V26)によっ
て、重錘体220のX軸正方向の変位検出が可能にな
る。逆に、重錘体220がX軸の負方向に変位すると、
上述の場合と電圧極性が逆になるため、両検出電圧の差
(V22−V26)の符号が逆転することになる。結
局、出力端子T22,T26に得られる検出電圧の差
(V22−V26)によって、X軸の正負両方向の変位
検出が可能になる。全く同様に、出力端子T24,T2
8に得られる検出電圧の差(V24−V28)によっ
て、Y軸の正負両方向の変位検出が可能になる。更に、
この信号処理回路では、Z軸の正負両方向の変位検出も
可能である。たとえば、重錘体220がZ軸の正方向に
変位すると、図42に示すように、内側領域A1には横
に伸びる方向の応力が発生するため、内側領域A1上に
形成された上部電極層U21〜U24のすべてについて
正の電荷が発生することになる。このため、4組の検出
電圧V22,V24,V26,V28はいずれも正の値
になる。逆に、重錘体220がZ軸の負方向に変位する
と、4組の検出電圧V22,V24,V26,V28は
いずれも負の値になる。したがって、4つの出力端子T
22,T24,T26,T28に得られる電圧の総和
(V22+V24+V26+V28)の増加または減少
により、Z軸の正負両方向の変位検出が可能になる(2
つの電圧の和(V22+V26)あるいは(V24+V
28)によっても、Z軸方向の変位検出は可能である
が、効率良い安定した検出を行うためには、上述のよう
に4つの電圧の総和を用いるのが好ましい)。
【0148】なお、各上部電極層U21〜U24はいず
れもX軸またはY軸に関して線対称な形状をしているた
め、上述の検出結果には、他軸成分が干渉することはな
い。たとえば、重錘体220がX軸方向に変位した場
合、X軸上に配置された上部電極層U21,U23の形
成領域にはX軸に沿って伸びる方向もしくは縮む方向の
応力が作用し、この応力は、検出電圧の差(V22−V
26)として求めることができる。ところが、重錘体2
20がY軸方向に変位した場合は、X軸上に配置された
上部電極層U21,U23の形成領域は、それぞれ部分
的に伸びたり縮んだりするが、全体的には発生電荷は各
電極層ごとに相殺されてしまい、検出電圧V22,V2
6には影響を与えない。また、重錘体220がZ軸方向
に変位した場合は、内側領域A1上の上部電極層にはい
ずれも正電荷が発生し、検出電圧V22,V26はいず
れも正の同じ値になるので、検出電圧の差(V22−V
26)をとると相殺されることになる。
【0149】以上の説明により、この角速度センサ29
0では、たった4組の電極対U21/L20,U22/
L20,U23/L20,U24/L20(L20は単
一の共通電極層)を利用して、重錘体220をXY平面
に沿って円運動させる機能と、重錘体220のX軸,Y
軸,Z軸の正負両方向に関する変位を別個に検出する機
能と、を備えていることがわかる。そこで、これらの電
極対を、§11において説明した兼用器として利用すれ
ば、各軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzの検出が可能
になる。すなわち、まず全く角速度が作用しない環境に
おいて、入力端子T21,T23,T25,T27に、
それぞれ図17に示す駆動信号S1〜S4を与え、重錘
体220をXY平面に沿って円運動させた状態にする。
そして、このときに、出力端子T22,T24,T2
6,T28に出力される電圧V22,V24,V26,
V28を予め測定しておく。もちろん、これらの電圧値
は駆動信号S1〜S4と同じ周期で変化する周期信号と
なる。続いて、この角速度センサ290を、実際に角速
度が作用する環境におき、やはり入力端子T21,T2
3,T25,T27に、それぞれ駆動信号S1〜S4を
与え、重錘体220をXY平面に沿って円運動させた状
態にし、そのときに、出力端子T22,T24,T2
6,T28に出力される電圧を測定する。これらの電圧
値が、予め測定した値と異なれば、その差分は作用した
角速度に基づくコリオリ力の成分ということになる。た
とえば、X軸方向への変位を示す検出電圧差(V22−
V26)が予め測定した値よりもΔαだけ増えていれ
ば、X軸の正方向にΔαに相当する大きさのコリオリ力
が作用していることになる。
【0150】結局、この角速度センサ290では、重錘
体220をXY平面に沿って円運動させた状態で、X軸
方向のコリオリ力、Y軸方向のコリオリ力、Z軸方向の
コリオリ力、をそれぞれ別個独立して検出できることに
なる。したがって、既に述べた原理により、作用した角
速度を、X軸まわりの角速度ωx,Y軸まわりの角速度
ωy,Z軸まわりの角速度ωz、と各軸ごとに検出する
ことが可能になる。
【0151】また、電圧V21,V23,V25,V2
7として、同じ値の正の電圧を同時に供給すれば、4組
の上部電極層U21〜U24に対して正の電荷を同時に
供給することができ、各電極層の形成領域は同時に横方
向に伸びるため、図42に示すように、重錘体220を
Z軸の正方向に変位させることができる。逆に、同じ値
の負の電圧を同時に供給すれば、4組の上部電極層U2
1〜U24に対して負の電荷を同時に供給することがで
き、各電極層の形成領域は同時に横方向に縮むため、重
錘体220をZ軸の負方向に変位させることができる
(上部電極層U21,U23だけに、あるいは、上部電
極層U22,U24だけに上述のような電荷供給を行っ
ても、同様にZ軸方向へ変位させることは可能である
が、効率良い安定した変位を行わせるためには、上述の
ように4枚の電極層U21〜U24のすべてに電荷供給
を行うのが好ましい)。このようなZ軸の正負両方向へ
の駆動操作と、たとえば、既に述べたX軸の正負両方向
への駆動操作とを組み合わせれば、重錘体220をXZ
平面に沿って円運動させることも可能である。
【0152】更に、上述の説明では、重錘体220のX
軸方向の変位を、検出電圧の差(V22−V26)によ
り求め、重錘体220のY軸方向の変位を、検出電圧の
差(V24−V28)により求めているが、このような
差分をとっているのは、検出精度を向上させる意味と、
Z軸方向の変位成分が検出結果に干渉しないようにする
ためである。したがって、たとえば、Z軸方向へのコリ
オリ力が作用しないような検出環境で用いることを前提
とするのであれば、たとえば、電圧値V22あるいはV
26をX軸方向の変位を示す値として単独で用いること
も可能であるし、同様に、電圧値V24あるいはV28
をY軸方向の変位を示す値として単独で用いることも可
能である。
【0153】また、上述の実施例では、上部電極層U2
1〜U24をそれぞれ物理的に独立した個別の電極層と
し、下部電極層L20をこれら4枚の上部電極層のすべ
てに対向するような物理的に単一の共通電極層としてい
るが、逆に、下部電極層を物理的に独立した個別の4枚
の電極層とし、上部電極層を物理的に単一の共通電極層
としてもかまわない。あるいは、共通電極層を用いず
に、上部電極層、下部電極層ともに、それぞれ物理的に
独立した個別の電極層としてもよい。ただ、電極層間の
配線を単純化するには、いずれか一方を共通電極層にす
るのが好ましい。
【0154】§14 タイプIIの兼用圧電素子を利用
した角速度センサの実施例 既に§10において、図29に示すようなタイプIIの
圧電素子を利用した角速度センサ300の構成および動
作を説明した。ただ、§10では、3つの軸まわりの角
速度ωx,ωy,ωzのすべてを検出するには、図32
に示すように、力発生器としての役割を担う電極層E3
1G,E33G,E35Gと、変位検出器としての役割
を担う電極層E31D〜E34Dと、を別個独立して設
ければよいという説明を行った。もちろん、このような
分担を行えば、信号処理回路は簡単になるが、逆に、必
要な電極層の枚数は増えるため、センサ本体の構造は複
雑になる。ここでは、まず、図29〜図31に示した角
速度センサ300について、§11で述べた兼用器の概
念を適用することによって、3つの軸まわりの角速度ω
x,ωy,ωzのすべてを検出する動作方法を説明す
る。
【0155】いま、図45に示すような信号処理回路を
用意してみる。この回路図において、左側に示されてい
る構成要素は、図29に示す角速度センサ300のう
ち、圧電素子330およびその両面に形成されている電
極層E31,E33,E35,E36,E38,E40
の部分だけを抜き出して描いたものである。ここで、B
31〜B38はバッファ回路であり、R31〜R38は
抵抗である。駆動信号入力端子T31,T32,T3
3,T34は、それぞれ電極層E33,E31,E3
6,E38に印加するための駆動電圧V31,V32,
V33,V34を入力する端子であり、検出信号出力端
子T35,T36,T37,T38は、それぞれ電極層
E33,E31,E36,E38に実際に発生する電圧
を、検出電圧V35,V36,V37,V38として出
力する端子である。
【0156】ここで、駆動電圧V31,V33として正
の電圧を、駆動電圧V32,V34として負の電圧を印
加すると、電極層E33,E36には正の電荷が供給さ
れ、電極層E31,E38には負の電荷が供給されるこ
とになる。ここで圧電素子330が、図24に示すタイ
プIIの分極特性を有することを考慮すれば、図45に
示す圧電素子330の右側部分は縦方向に縮み、左側部
分は縦方向に伸びることが理解できよう。これにより、
図45には図示されていない重錘体340(図29参
照)は、X軸正方向に変位することになる。
【0157】いま、全く角速度が作用しない環境におい
て、上述したように、重錘体340をX軸正方向に変位
させたときに、出力端子T35〜T38に出力される検
出電圧V35〜V38を予め測定しておく。続いて、こ
の角速度センサ300を、実際に角速度が作用する環境
におき、やはり入力端子T31〜T34に、それぞれ所
定の極性の駆動電圧を与え、重錘体340をX軸正方向
に変位させた状態にし、そのときに、出力端子T35〜
T38に出力される電圧を測定する。これらの電圧値
が、予め測定した値と異なれば、その差分は作用した角
速度に基づくコリオリ力の成分ということになる。
【0158】以上は、X軸方向に関する駆動および変位
検出についての説明であるが、Y軸およびZ軸方向に関
する駆動および変位検出についても全く同様に、図45
に示した信号処理回路に準じた回路を用意しておけば、
各電極層に力発生器としての役割と変位検出器としての
役割とを同時に担わせることが可能になる。
【0159】§15 タイプIIの兼用圧電素子を利用
した角速度センサの別な実施例 図46に側断面を示す角速度センサ390は、図29に
示す容量素子を利用した角速度センサ300に兼用器を
適用することにより、必要な電極層の枚数を低減させ、
全体構造を単純化した実施例である。図29に示すセン
サとの相違は、圧電素子330の上面および下面に配置
された電極層の構成だけである。そこで、以下、この電
極層の構成のみを説明し、その他の構成要素の説明は省
略する。
【0160】圧電素子330の上面には、図47に示さ
れているように、4枚の扇形の上部電極層U41〜U4
4が配置されている。上部電極層U41はX軸の正の領
域上、U42はY軸の正の領域上、U43はX軸の負の
領域上、U44はY軸の負の領域上、にそれぞれ配置さ
れており、いずれも各座標軸に関して対称形をしてい
る。一方、圧電素子330の下面にも、上部電極層U4
1〜L44と全く同一形状をした下部電極層L41〜L
44が、それぞれ各上部電極層U41〜U44に対向す
る位置に配置されている。こうして、電極層U41/L
41、電極層U42/L42、電極層U43/L43、
電極層U44/L44、によってそれぞれ1組ずつの部
分圧電素子が形成されていることになる。
【0161】さて、このような構成の角速度センサを動
作させるために、図48に示すような信号処理回路を用
意する。この回路図において、左端に示されている各電
極層U41〜U44,L41〜L44は、それぞれ上述
した上部電極層U41〜U44および下部電極層L41
〜L44であり、各電極層間には、圧電素子330の一
部分が挟まれていることになる。ここで、B41〜B4
8はバッファ回路であり、R41〜R48は抵抗であ
る。駆動信号入力端子T41,T43,T45,T47
は、それぞれ上部電極層U41,U42,U43,U4
4に印加するための駆動電圧V41,V43,V45,
V47を入力する端子であり、検出信号出力端子T4
2,T44,T46,T48は、それぞれ上部電極層U
41,U42,U43,U44の実際の電圧を、検出電
圧V42,V44,V46,V48として出力する端子
である。
【0162】このような信号処理回路を用いて、重錘体
340をXY平面に沿って円運動させるには、たとえ
ば、駆動信号入力端子T41,T43,T45,T47
に、それぞれ図17に示す駆動信号S1〜S4を与えれ
ばよい。4組の部分圧電素子には、それぞれ位相をずら
して順々に所定方向の応力が作用することになり、重錘
体340はXY平面に沿って円運動する。
【0163】一方、このような信号処理回路を用いれ
ば、重錘体340の各軸方向への変位を検出することが
できる。たとえば、重錘体340がX軸の正方向に変位
すると、電極層U41/L41間は縦方向に縮み、電極
層U43/L43間は縦方向に伸びるため、検出電圧V
42としては負の電圧が、検出電圧V46としては正の
電圧が、それぞれ出力されることになる。そこで、両検
出電圧の差(V46−V42)によって、重錘体340
のX軸正方向の変位検出が可能になる。逆に、重錘体3
40がX軸の負方向に変位すると、上述の場合と極性が
逆になるため、両検出電圧の差(V46−V42)の符
号が逆転することになる。結局、出力端子T42,T4
6に得られる検出電圧の差(V46−V42)によっ
て、X軸の正負両方向の変位検出が可能になる。全く同
様に、出力端子T44,T48に得られる検出電圧の差
(V48−V44)によって、Y軸の正負両方向の変位
検出が可能になる。更に、この信号処理回路では、Z軸
の正負両方向の変位検出も可能である。たとえば、重錘
体340がZ軸の正方向に変位すると、圧電素子330
には、いずれの箇所においても縦方向に縮む方向の応力
が作用するため、検出電圧V42,V44,V46,V
48としては、いずれも負の電圧が出力される。逆に、
重錘体340がZ軸の負方向に変位すると、圧電素子3
30には、いずれの箇所においても縦方向に伸びる方向
の応力が作用するため、検出電圧V42,V44,V4
6,V48としては、いずれも正の電圧が出力される。
したがって、4つの出力端子T42,T44,T46,
T48に得られる電圧の総和(V42+V44+V46
+V48)の増加または減少により、Z軸の正負両方向
の変位検出が可能になる(2つの電圧の和(V42+V
46)あるいは(V44+V48)によっても、Z軸方
向の変位検出は可能であるが、効率良い安定した検出を
行うためには、上述のように4つの電圧の総和を用いる
のが好ましい)。
【0164】なお、各電極層U41〜U44,L41〜
L44はいずれもX軸またはY軸に関して線対称な形状
をしているため、上述の検出結果には、他軸成分が干渉
することはない。たとえば、重錘体340がX軸方向に
変位した場合、電極層U41/L41間は縮み、電極層
U43/U43間は伸びるため、検出電圧の差(V46
−V42)としてX軸方向の変位を求めることができ
る。ところが、重錘体340がY軸方向に変位した場合
は、電極層U41/L41間も、電極層U43/L43
間も、それぞれ部分的に縮んだり伸びたりするため、発
生電荷は相殺されてしまい検出電圧V42,V46には
変化は生じない。また、重錘体340がZ軸方向に変位
した場合は、電極層U41/L41間も、電極層U43
/L43間も、双方ともに縮んだりあるいは双方ともに
伸びたりするので、検出電圧の差(V46−V42)を
とると相殺されることになる。
【0165】以上の説明により、この角速度センサ39
0では、たった4組の電極対U41/L41,U42/
L42,U43/L43,U44/L44を利用して、
重錘体340をXY平面に沿って円運動させる機能と、
重錘体340のX軸,Y軸,Z軸の正負両方向に関する
変位を別個に検出する機能と、を備えていることがわか
る。そこで、これらの電極対を、§11において説明し
た兼用器として利用すれば、各軸まわりの角速度ωx,
ωy,ωzの検出が可能になる。すなわち、まず全く角
速度が作用しない環境において、入力端子T41,T4
3,T45,T47に、それぞれ図17に示す駆動信号
S1〜S4を与え、重錘体340をXY平面に沿って円
運動させた状態にする。そして、このときに、出力端子
T42,T44,T46,T48に出力される電圧V4
2,V44,V46,V48を予め測定しておく。もち
ろん、これらの電圧値は駆動信号S1〜S4と同じ周期
で変化する周期信号となる。続いて、この角速度センサ
390を、実際に角速度が作用する環境におき、やはり
入力端子T41,T43,T45,T47に、それぞれ
駆動信号S1〜S4を与え、重錘体340をXY平面に
沿って円運動させた状態にし、そのときに、出力端子T
42,T44,T46,T48に出力される電圧を測定
する。これらの電圧値が、予め測定した値と異なれば、
その差分は作用した角速度に基づくコリオリ力の成分と
いうことになる。たとえば、X軸方向への変位を示す検
出電圧差(V46−V42)が予め測定した値よりもΔ
αだけ増えていれば、X軸の正方向にΔαに相当する大
きさのコリオリ力が作用していることになる。
【0166】結局、この角速度センサ390では、重錘
体340をXY平面に沿って円運動させた状態で、X軸
方向のコリオリ力、Y軸方向のコリオリ力、Z軸方向の
コリオリ力、をそれぞれ別個独立して検出できることに
なる。したがって、既に述べた原理により、作用した角
速度を、X軸まわりの角速度ωx,Y軸まわりの角速度
ωy,Z軸まわりの角速度ωz、と各軸ごとに検出する
ことが可能になる。
【0167】また、電圧V41,V43,V45,V4
7として、同じ値の正の電圧を同時に供給すれば、4組
の上部電極層U41〜U44に対して正の電荷を同時に
供給することができ、圧電素子330は全域にわたって
縦方向に伸びるため、重錘体340をZ軸の負方向に変
位させることができる。逆に、同じ値の負の電圧を同時
に供給すれば、4組の上部電極層U41〜U44に対し
て負の電荷を同時に供給することができ、圧電素子33
0は全域にわたって縦方向に縮むため、重錘体340を
Z軸の負方向に変位させることができる(上部電極層U
41,U43だけに、あるいは、上部電極層U42,U
44だけに上述のような電荷供給を行っても、同様にZ
軸方向へ変位させることは可能であるが、効率良い安定
した変位を行わせるためには、上述のように4枚の電極
層U41〜U44のすべてに電荷供給を行うのが好まし
い)。このようなZ軸の正負両方向への駆動操作と、た
とえば、既に述べたX軸の正負両方向への駆動操作とを
組み合わせれば、重錘体340をXZ平面に沿って円運
動させることも可能である。
【0168】更に、上述の説明では、重錘体340のX
軸方向の変位を、検出電圧の差(V46−V42)によ
り求め、重錘体340のY軸方向の変位を、検出電圧の
差(V48−V44)により求めているが、このような
差分をとっているのは、検出精度を向上させる意味と、
Z軸方向の変位成分が検出結果に干渉しないようにする
ためである。したがって、たとえば、Z軸方向へのコリ
オリ力が作用しないような検出環境で用いることを前提
とするのであれば、たとえば、電圧値V42あるいはV
46をX軸方向の変位を示す値として単独で用いること
も可能であるし、同様に、電圧値V44あるいはV48
をY軸方向の変位を示す値として単独で用いることも可
能である。
【0169】また、上述の実施例では、上部電極層U4
1〜U44も、下部電極層L41〜L44も、いずれも
物理的に独立した個別の電極層となっているが、いずれ
か一方は、物理的には単一の共通電極層(この例の場合
は、4枚の扇形の電極層のすべてに対向するような円盤
状の共通電極層)としてもかまわない。電極層間の配線
を単純化するには、このような共通電極層を形成してお
くのが好ましい。
【0170】最後に、タイプIIの圧電素子を用いたよ
り単純な角速度センサ395の側断面図を図49に示し
ておく。図46に示す角速度センサ390との相違点
は、可撓性基板310および重錘体340の代わりに、
導電性の重錘体345が用いられている点と、下部電極
層L41〜L44が省略されている点である。導電性の
重錘体345は、金属などの円盤状の塊であり、その外
周部分は筐体350に接することなく自由になってい
る。別言すれば、重錘体345は、圧電素子330と、
上部電極層U41〜U44と、固定基板320とによっ
て、筐体350に支持された状態になっており、図のよ
うに宙吊りの状態になっている。したがって、重錘体3
45は、筐体350内において、ある程度の自由度をも
って移動可能である。図46に示す角速度センサ390
における重錘体340は、可撓性基板310の周囲部分
が筐体350に固定されていたため、あまり直径を大き
くすることができなかったが、図49に示す角速度セン
サ395における重錘体345は、変位によって筐体3
45に接しない程度の空間を十分に確保できる範囲内
で、直径を大きくとることが可能であり、質量を大きく
して感度を高める上では、この角速度センサ395の構
造は優れている。また、重錘体345自身が導電性の材
料であるため、共通電極層としての機能を果たし、下部
電極層L41〜L44は不要になり、全体の構成は非常
に単純化されている。このように、図49に示す角速度
センサ395は、図46に示す角速度センサ390に比
べて、構造上、若干の違いはあるが、その動作は全く同
じである。
【0171】
【発明の効果】以上のとおり本発明に係る角速度センサ
によれば、重錘体を筐体内で周回運動させた状態におい
てコリオリ力を検出し、角速度を演算によって求めるよ
うにしたため、複数の異なる軸についての角速度を、高
い応答性をもって検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来提案されているコリオリ力を利用した一軸
角速度センサの基本原理を示す斜視図である。
【図2】角速度センサにおける検出対象となるXYZ三
次元座標系における各軸まわりの角速度を示す図であ
る。
【図3】本発明に係る角速度センサを用いてX軸まわり
の角速度ωxを検出する基本原理を説明する図である。
【図4】本発明に係る角速度センサを用いてY軸まわり
の角速度ωyを検出する基本原理を説明する図である。
【図5】本発明に係る角速度センサを用いてZ軸まわり
の角速度ωzを検出する基本原理を説明する図である。
【図6】本発明に係る角速度センサを用いてX軸まわり
の角速度ωxを検出する別な基本原理を説明する図であ
る。
【図7】本発明に係る角速度センサを用いてY軸まわり
の角速度ωyを検出する別な基本原理を説明する図であ
る。
【図8】本発明に係る角速度センサを用いてZ軸まわり
の角速度ωzを検出する別な基本原理を説明する図であ
る。
【図9】重錘体40を円軌道41に沿って円運動させた
場合に、角速度の検出に関与する各軸を示す図である。
【図10】本発明の第1の検出原理を説明するための原
理図である。
【図11】本発明の第2の検出原理を説明するための原
理図である。
【図12】本発明に係る角速度センサの基本構成を示す
ブロック図である。
【図13】XYZ三次元座標系における本発明の第1の
検出原理を説明するための原理図である。
【図14】XYZ三次元座標系における本発明の第2の
検出原理を説明するための原理図である。
【図15】図12に示す駆動手段の構成および配置の一
例を示す図である。
【図16】図15に示す駆動手段によって、重錘体を円
運動させる動作を説明する図である。
【図17】図15に示す駆動手段を構成する力発生器G
1〜G4に与える電流信号S1〜S4を示す波形図であ
る。
【図18】図12に示す駆動手段および検出手段につい
ての構成および配置の一例を示す図である。
【図19】容量素子によって、力発生器および変位検出
器を構成した角速度センサの一実施例を示す側断面図で
ある。
【図20】図19に示す角速度センサにおける可撓性基
板110の上面図である。この図20に示す可撓性基板
110を、X軸に沿って切った断面が、図19に示され
ている。
【図21】容量素子によって、力発生器および変位検出
器を構成した角速度センサの別な一実施例を示す側断面
図である。
【図22】図21に示す角速度センサにおける可撓性基
板110の上面図である。この図22に示す可撓性基板
110を、X軸に沿って切った断面が、図21に示され
ている。
【図23】本発明に係る角速度センサに利用されるタイ
プIの圧電素子の分極特性を説明する図である。
【図24】本発明に係る角速度センサに利用されるタイ
プIIの圧電素子の分極特性を説明する図である。
【図25】図23に示すタイプIの圧電素子によって、
力発生器および変位検出器を構成した角速度センサの一
実施例を示す側断面図である。
【図26】図25に示す角速度センサにおける可撓性基
板210の上面図である。この図26に示す可撓性基板
210を、X軸に沿って切った断面が、図25に示され
ている。
【図27】図23に示すタイプIの圧電素子によって、
力発生器および変位検出器を構成した角速度センサの別
な一実施例を示す側断面図である。
【図28】図27に示す角速度センサにおける可撓性基
板210の上面図である。この図28に示す可撓性基板
210を、X軸に沿って切った断面が、図27に示され
ている。
【図29】図24に示すタイプIIの圧電素子によっ
て、力発生器および変位検出器を構成した角速度センサ
の一実施例を示す側断面図である。
【図30】図29に示す角速度センサにおける圧電素子
330の上面図である。
【図31】図29に示す角速度センサにおける圧電素子
330の下面図である。
【図32】図29に示す角速度センサの変形例における
圧電素子330の上面図である。
【図33】図29に示す角速度センサの別な変形例の側
断面図である。
【図34】力発生と変位検出の兼用器を用いた角速度セ
ンサの構成の一例を示す概念図である。
【図35】図19に示す容量素子を用いた角速度センサ
に兼用器を適用することにより構造を単純化した実施例
を示す側断面図である。
【図36】図35に示す角速度センサにおける可撓性基
板110の上面図である。この図36に示す可撓性基板
110を、X軸に沿って切った断面が、図35に示され
ている。
【図37】図35に示す角速度センサを動作させるため
に用いる信号処理回路の一例を示す回路図である。
【図38】図25に示すタイプIの圧電素子を用いた角
速度センサに兼用器を適用することにより構造を単純化
した実施例を示す側断面図である。
【図39】図38に示す角速度センサにおける可撓性基
板210の上面図である。この図39に示す可撓性基板
210を、X軸に沿って切った断面が、図38に示され
ている。
【図40】図25に示すタイプIの圧電素子を用いた角
速度センサに兼用器を適用することにより構造を単純化
した別な実施例を示す側断面図である。
【図41】図40に示す角速度センサにおける可撓性基
板210の上面図である。この図41に示す可撓性基板
210を、X軸に沿って切った断面が、図40に示され
ている。
【図42】本発明に係る角速度センサを構成する可撓性
基板210に撓みを与えたときに生じる応力分布を示す
側断面図である。
【図43】図42に示す応力分布に基づいて定まる内側
領域A1と外側領域B2とを示す平面図である。
【図44】図38に示す角速度センサを動作させるため
に用いる信号処理回路の一例を示す回路図である。
【図45】図29に示す角速度センサを動作させるため
に用いる信号処理回路の一例を示す回路図である。
【図46】図29に示すタイプIIの圧電素子を用いた
角速度センサに兼用器を適用することにより構造を単純
化した実施例を示す側断面図である。
【図47】図46に示す角速度センサにおける圧電素子
330の上面図である。この図47に示す圧電素子33
0を、X軸に沿って切った断面が、図46に示されてい
る。
【図48】図46に示す角速度センサを動作させるため
に用いる信号処理回路の一例を示す回路図である。
【図49】図46に示す角速度センサの変形例の側断面
図である。
【符号の説明】
10…振動子 11,12…圧電素子 20…物体 30…振動子 40…重錘体 41…円軌道(周回軌道) 42…筐体 43…支持手段 44…駆動手段 45…検出手段 46…演算手段 51…タイプIの圧電素子 52…タイプIIの圧電素子 100…角速度センサ 110…可撓性基板 111…作用部 112…可撓部 113…固定部 120…重錘体 130…台座 140…ベース基板 150…蓋基板 180…角速度センサ 190…角速度センサ 200…角速度センサ 210…可撓性基板 211…作用部 212…可撓部 213…固定部 220…重錘体 230…台座 240…ベース基板 250…圧電素子 280…角速度センサ 290…角速度センサ 295…角速度センサ 300…角速度センサ 310…可撓性基板 315…導電性の可撓性基板 320…固定基板 330…圧電素子 340…重錘体 345…導電性の重錘体 350…筐体 360…角速度センサ 390…角速度センサ 395…角速度センサ a〜e…円運動の各位置 d1〜d6…検出信号 g1〜g6…駆動信号 A…上部電極層 A1…内側領域 A2…外側領域 B…下部電極層 B11〜B48…バッファ回路 C1〜C4…容量/電圧変換回路 D1〜D6…変位検出器 D11〜D15,D21〜D28…変位検出器用の電極
層 Dt…円運動の接線方向 Dr…円運動の半径方向 Du…円運動を含む平面に垂直な方向 E10,E20…共通電極層 E31〜E40…電極層 E31G,E33G,E35G…力発生器用の電極層 E31D,E32D,E33D,E34D…変位検出器
用の電極層 Fu…Du方向に作用する力 Fx…X軸方向に作用する力 Fy…Y軸方向に作用する力 Fco…コリオリ力 Fce…遠心力 G1〜G4…力発生器 G11〜G15,G21〜G25…力発生器用の電極層 GD1〜GD6…力発生と変位検出の兼用器 L11〜L44…下部電極層 O…円軌道の中心点、座標系の原点 P1…内側エッジの位置 P2…外側エッジの位置 P3…応力の変極点 Px…円軌道上の重錘体がX軸を通過する点 Py…円軌道上の重錘体がY軸を通過する点 R11〜R48…抵抗 r…円軌道の半径 S1〜S4…力発生器に与える駆動信号 T11〜T48…端子 U11〜U44…上部電極層 V11〜V48…電圧値 Vt…重錘体の接線方向速度ベクトル Vx…重錘体のX軸方向速度ベクトル Vy…重錘体のY軸方向速度ベクトル ω,ωx,ωy,ωz…軸まわりの角速度

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量をもった重錘体と、この重錘体を収
    容する筐体と、前記筐体に対して所定の自由度をもって
    移動可能となるように前記重錘体を支持する支持手段
    と、前記重錘体を前記自由度の範囲内で所定の周回軌道
    に沿って周回運動させる駆動手段と、前記周回運動の接
    線方向に対して垂直な第1の軸方向について前記重錘体
    に作用するコリオリ力を検出する検出手段と、前記重錘
    体の周回運動接線速度と前記コリオリ力とに基いて前記
    接線方向および前記第1の軸方向の双方に垂直な第2の
    軸まわりの角速度を演算によって求める演算手段と、を
    備えることを特徴とする角速度センサ。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の角速度センサにおい
    て、 重錘体を所定平面内で円運動させ、前記平面に対して垂
    直な方向に第1の軸をとり、前記円運動の半径方向に第
    2の軸をとり、前記重錘体に作用する力の前記第1の軸
    方向成分をコリオリ力として検出し、前記第2の軸まわ
    りの角速度を求めるようにしたことを特徴とする角速度
    センサ。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の角速度センサにおい
    て、 重錘体を所定平面内で円運動させ、前記円運動の半径方
    向に第1の軸をとり、前記平面に対して垂直な方向に第
    2の軸をとり、前記重錘体に作用する力の前記第1の軸
    方向成分から前記円運動に基く遠心力成分を除去するこ
    とによりコリオリ力を検出し、前記第2の軸まわりの角
    速度を求めるようにしたことを特徴とする角速度セン
    サ。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の角速度センサにおい
    て、 XYZ三次元座標系のXY平面内で重錘体を円運動さ
    せ、重錘体がX軸およびY軸を通過する瞬間にそれぞれ
    コリオリ力の検出を行い、前記XYZ三次元座標系にお
    ける少なくとも2軸まわりの角速度を求めるようにした
    ことを特徴とする角速度センサ。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の角速度センサにおい
    て、 重錘体がY軸方向に沿った所定の瞬時速度をもってX軸
    を通過する瞬間に、この重錘体に作用する力のZ軸方向
    成分をコリオリ力として検出し、前記瞬時速度と前記コ
    リオリ力とに基いてX軸まわりの角速度を求め、 重錘体がX軸方向に沿った所定の瞬時速度をもってY軸
    を通過する瞬間に、この重錘体に作用する力のZ軸方向
    成分をコリオリ力として検出し、前記瞬時速度と前記コ
    リオリ力とに基いてY軸まわりの角速度を求め、 重錘体がY軸方向に沿った所定の瞬時速度をもってX軸
    を通過する瞬間に、この重錘体に作用する力のX軸方向
    成分を検出し、検出したX軸方向成分から円運動に基く
    遠心力成分を除去することによりコリオリ力を検出し、
    前記瞬時速度と前記コリオリ力とに基いてZ軸まわりの
    角速度を求め、 X軸、Y軸、Z軸の3軸まわりの角速度を求めるように
    したことを特徴とする角速度センサ。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の角速度
    センサにおいて、 重錘体が原点に位置するXYZ三次元座標系を定義し、
    前記重錘体に対してX軸の正方向に力を作用させる第1
    の力発生器と、前記重錘体に対してY軸の正方向に力を
    作用させる第2の力発生器と、前記重錘体に対してX軸
    の負方向に力を作用させる第3の力発生器と、前記重錘
    体に対してY軸の負方向に力を作用させる第4の力発生
    器と、によって駆動手段を構成し、前記第1〜第4の力
    発生器を周期的に動作させることにより、前記重錘体を
    XY平面内で周回運動させるようにしたことを特徴とす
    る角速度センサ。
  7. 【請求項7】 請求項1〜5のいずれかに記載の角速度
    センサにおいて、 可撓性をもった可撓性基板によって支持手段を構成し、
    前記可撓性基板の周囲部を筐体に固定し、前記可撓性基
    板の中心部に重錘体を固着し、 前記可撓性基板の所定箇所に対して所定方向の力を作用
    させる力発生器を、前記可撓性基板上に複数配置するこ
    とにより駆動手段を構成し、 前記可撓性基板の所定箇所の所定方向への変位を検出す
    る変位検出器を、前記可撓性基板上に複数配置すること
    により検出手段を構成したことを特徴とする角速度セン
    サ。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載の角速度センサにおい
    て、 板状の基板の周囲部と中心部との間に環状の溝を掘るこ
    とにより肉厚の薄い可撓部を形成し、この可撓部の撓み
    によって、前記中心部が前記周囲部に対して変位を生じ
    るような構造にし、前記板状の基板によって可撓性基板
    を構成したことを特徴とする角速度センサ。
  9. 【請求項9】 請求項7または8に記載の角速度センサ
    において、 可撓性基板の表面がXY平面に平行になるようなXYZ
    三次元座標系を定義し、X軸の正の領域および負の領
    域、ならびに、Y軸の正の領域および負の領域に、Z軸
    に沿った方向に力を作用させる力発生器をそれぞれ配置
    し、これらの力発生器を周期的に動作させることによ
    り、重錘体をXY平面内で周回運動させるようにしたこ
    とを特徴とする角速度センサ。
  10. 【請求項10】 請求項7または8に記載の角速度セン
    サにおいて、 可撓性基板の表面がXY平面に平行になるようなXYZ
    三次元座標系を定義し、X軸の正の領域および負の領
    域、ならびに、原点近傍領域に、Z軸に沿った方向に力
    を作用させる力発生器をそれぞれ配置し、これらの力発
    生器を周期的に動作させることにより、重錘体をXZ平
    面内で周回運動させるようにしたことを特徴とする角速
    度センサ。
  11. 【請求項11】 請求項7または8に記載の角速度セン
    サにおいて、 可撓性基板の表面がXY平面に平行になるようなXYZ
    三次元座標系を定義し、X軸の正の領域および負の領域
    に、X軸に沿った方向に力を作用させる力発生器をそれ
    ぞれ配置し、Y軸の正の領域および負の領域に、Y軸に
    沿った方向に力を作用させる力発生器をそれぞれ配置
    し、これらの力発生器を周期的に動作させることによ
    り、重錘体をXY平面内で周回運動させるようにしたこ
    とを特徴とする角速度センサ。
  12. 【請求項12】 請求項7または8に記載の角速度セン
    サにおいて、 可撓性基板の表面がXY平面に平行になるようなXYZ
    三次元座標系を定義し、前記可撓性基板上に原点近傍の
    内側領域とその周囲の外側領域とを定義し、X軸の正方
    向の内側領域および外側領域、ならびに、X軸の負方向
    の内側領域および外側領域に、X軸に沿った方向に力を
    作用させる力発生器をそれぞれ配置し、これらの力発生
    器を周期的に動作させることにより、重錘体をXZ平面
    内で周回運動させるようにしたことを特徴とする角速度
    センサ。
  13. 【請求項13】 請求項7または8に記載の角速度セン
    サにおいて、 可撓性基板の表面がXY平面に平行になるようなXYZ
    三次元座標系を定義し、X軸の正の領域および負の領
    域、ならびに、Y軸の正の領域および負の領域に、Z軸
    に沿った方向への変位を検出する変位検出器をそれぞれ
    配置し、X軸の正負両領域に配置された変位検出器を用
    いて重錘体のX軸方向に作用するコリオリ力を検出し、
    Y軸の正負両領域に配置された変位検出器を用いて重錘
    体のY軸方向に作用するコリオリ力を検出することを特
    徴とする角速度センサ。
  14. 【請求項14】 請求項7または8に記載の角速度セン
    サにおいて、 可撓性基板の表面がXY平面に平行になるようなXYZ
    三次元座標系を定義し、X軸の正の領域および負の領域
    に、X軸に沿った方向への変位を検出する変位検出器を
    それぞれ配置し、Y軸の正の領域および負の領域に、Y
    軸に沿った方向への変位を検出する変位検出器をそれぞ
    れ配置し、X軸の正負両領域に配置された変位検出器を
    用いて重錘体のX軸方向に作用するコリオリ力を検出
    し、Y軸の正負両領域に配置された変位検出器を用いて
    重錘体のY軸方向に作用するコリオリ力を検出すること
    を特徴とする角速度センサ。
  15. 【請求項15】 請求項7または8に記載の角速度セン
    サにおいて、 可撓性基板上に形成された第1の電極と、この可撓性基
    板に対向して設けられた固定基板上に形成された第2の
    電極と、の一対の電極からなる容量素子によって、力発
    生器および変位検出器を構成したことを特徴とする角速
    度センサ。
  16. 【請求項16】 請求項7または8に記載の角速度セン
    サにおいて、 可撓性基板上に形成された第1の電極と、この第1の電
    極上に前記可撓性基板の撓みが伝達されるように固着さ
    れた圧電素子と、この圧電素子の上の前記第1の電極に
    対向する位置に形成された第2の電極と、によって、力
    発生器および変位検出器を構成したことを特徴とする角
    速度センサ。
  17. 【請求項17】 請求項7または8に記載の角速度セン
    サにおいて、 可撓性基板上に形成された第1の電極と、この可撓性基
    板に対向して設けられた固定基板上に形成された第2の
    電極と、これら一対の電極間に設けられた圧電素子と、
    によって、力発生器および変位検出器を構成したことを
    特徴とする角速度センサ。
  18. 【請求項18】 請求項7または8に記載の角速度セン
    サにおいて、 力発生器としての機能と変位検出器としての機能とを併
    せもった兼用器を用いることにより、駆動手段の一部分
    と検出手段の一部分とを物理的に同一の要素によって構
    成したことを特徴とする角速度センサ。
  19. 【請求項19】 請求項1〜5のいずれかに記載の角速
    度センサにおいて、 筐体に固着された固定基板と、この固定基板の下方に固
    定された圧電素子と、により支持手段を構成し、前記圧
    電素子の下方に重錘体を固着し、 前記圧電素子の所定位置に電荷を供給する手段によって
    駆動手段を構成し、 前記圧電素子の所定位置に発生する電荷を測定する手段
    によって検出手段を構成したことを特徴とする角速度セ
    ンサ。
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