JP3549590B2 - 加速度・角速度センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、加速度・角速度センサ、特に、多次元の各成分ごとに加速度および角速度を検出することのできるセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車産業や機械産業などでは、加速度や角速度といった物理量を正確に検出できるセンサの需要が高まっている。特に、二次元あるいは三次元の各成分ごとにこれらの物理量を検出しうる小型のセンサが望まれている。
【0003】
このような小型のセンサとして、特開平5−26744号公報には、本願と同一発明者によって開発された新規なセンサが開示されている。この新規なセンサは、圧電素子からなる検出子を複数組用意し、これを可撓性基板上に配置したものである。可撓性基板には作用体が取り付けられており、この作用体に外力を作用させると、可撓性基板に撓みが生じるような構造となっている。この撓みは圧電素子へと伝達され、圧電素子では撓みに応じた電荷が発生する。そこで、この発生した電荷に基づいて、作用した外力を検出するのが、この新規なセンサの基本原理である。撓みの生じ方は、作用した外力の方向によって異なるため、所定の各位置に配置された複数の圧電素子についての電荷の発生状態を検出することにより、作用した外力の大きさと方向とを検出することが可能になる。また、特開平7−43226号公報には、より少ない検出子によって、同様の検出を可能にする技術が開示されている。
【0004】
一方、特許協力条約に基づく国際公開公報第WO94/23272号には、同じく複数の圧電素子を可撓性基板上に配置することにより、三次元の各軸まわりの角速度を検出する角速度センサが開示されている。これは、X軸まわりの角速度ωxが作用している状態において、この物体をY軸方向に振動させると、Z軸方向にコリオリ力が作用するという原理を利用したものである。すなわち、可撓性基板上に配置された所定の圧電素子に交流電圧を印加し、可撓性基板に取り付けられた作用体をY軸方向に振動させる。ここで、X軸まわりの角速度ωxが作用していると、作用体にはZ軸方向にコリオリ力が働くので、作用体はZ軸方向へ変位することになる。この変位を圧電素子が発生する電荷により検出することにより、作用した角速度ωxを間接的に検出するのである。
【0005】
また、特開平8−35981号公報には、上述のような加速度および角速度センサの新規な構造が開示されており、更に、特開平8−68636号公報には、単一のセンサによって加速度と角速度の双方を効率的に検出する新規な技術が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
単一のセンサによって三次元方向に関する加速度と角速度の双方を検出する場合、これまで提案されてきた技術では、多数の電極を所定位置に配置する必要があり、全体的に構造が複雑になるという問題があった。このような複雑な構造をもったセンサでは、小形化が困難になり、量産性に欠けるという問題が生じる。
【0007】
そこで本発明は、構造が単純で、小形化、量産性に適し、しかも多次元方向に関する加速度と角速度との双方を検出することができる加速度・角速度センサを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、XYZ三次元座標系における所定の座標軸方向の加速度成分および所定の座標軸まわりの角速度成分を検出するための加速度・角速度センサにおいて、
上面のほぼ中心位置にXYZ三次元座標系の原点を定義したときに、上面がXY平面に沿って延び、原点の周囲を取り囲むように可撓性をもった可撓部が形成され、この可撓部に囲まれた部分である中心部と、この可撓部の周囲の部分である周囲部とは、可撓部の撓みにより相互に変位を生じるように構成された板状構造体を設け、
中心部および周囲部のいずれか一方は固定部としてセンサ筐体に固定され、他方は作用部として各座標軸方向に加えられた力により変位可能な状態に支持されるようにし、
作用部を所定方向に振動させる励振手段と、作用部に加えられた所定方向の力を検出する力検出手段と、
を更に設け、
所定軸方向の加速度検出を行うときには、この所定軸方向についての力検出手段による検出値を用い、
所定軸まわりの角速度検出を行うときには、励振手段により、この所定軸に直交する方向に作用部を振動させた状態において、この所定軸方向および振動方向の双方に直交する第3の方向についての力検出手段による検出値を用いるようにしたものである。
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係る加速度・角速度センサにおいて、
励振手段が、一対の電極間に所定の交流電圧を印加することにより、作用部を振動させるようにしたものである。
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係る加速度・角速度センサにおいて、
力検出手段が、一対の電極の相互間の変位に起因してこの一対の電極間に生じ る電気信号を検出することにより、作用部に加えられた力を検出するようにしたものである。
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1〜第3の態様に係る加速度・角速度センサにおいて、
板状構造体として機能する板状の圧電素子と、この圧電素子の上面に形成された5枚の上部電極と、この圧電素子の下面において各上部電極のそれぞれに対して向かい合う位置に形成された下部電極と、を設け、圧電素子の上面のほぼ中心位置にXYZ三次元座標系の原点を定義したときに、
圧電素子は、その上面がXY平面に沿って延び、原点の周囲を取り囲むように可撓性をもった可撓部が形成され、この可撓部に囲まれた部分である中心部と、この可撓部の周囲の部分である周囲部とは、可撓部の撓みにより相互に変位を生じるように構成され、
中心部および周囲部のいずれか一方は固定部としてセンサ筐体に固定され、他方は作用部として各座標軸方向に加えられた力により変位可能な状態に支持され、
5枚の上部電極は、X軸に関して負の領域に形成されかつX軸に関して線対称な形状をもった第1の上部電極と、X軸に関して正の領域に形成されかつX軸に関して線対称な形状をもった第2の上部電極と、Y軸に関して負の領域に形成されかつY軸に関して線対称な形状をもった第3の上部電極と、Y軸に関して正の領域に形成されかつY軸に関して線対称な形状をもった第4の上部電極と、原点の周囲を取り囲む領域に形成された第5の上部電極と、によって構成され、これらの各上部電極の少なくとも一部分は、いずれも可撓部に形成されるようにし、
励振手段は、所定の上部電極と下部電極との間に所定の交流電圧を印加することにより、作用部を所定方向に振動させる機能を有し、
力検出手段は、所定の上部電極に発生した電荷に基づいて、作用部に加えられた所定方向の力を検出する機能を有するようにしたものである。
【0009】
(5) 本発明の第5の態様は、上述の第4の態様に係る圧電素子を用いた加速度・角速度センサにおいて、
板状の圧電素子の下面に、原点の周囲を取り囲むような環状溝を形成し、この環状溝の形成部分の肉厚が他の部分の肉厚よりも薄くなるようにし、この肉厚の薄い部分を可撓部として用いるようにしたものである。
【0010】
(6) 本発明の第6の態様は、XYZ三次元座標系における各座標軸方向の加速度成分および各座標軸まわりの角速度成分を検出するための圧電素子を用いた加速度・角速度センサにおいて、
板状の圧電素子と、この圧電素子の上面に形成された5枚の上部電極と、この圧電素子の下面において各上部電極のそれぞれに対して向かい合う位置に形成された下部電極と、この下部電極を下方から支持する板状の起歪体と、を設け、起歪体の上面のほぼ中心位置にXYZ三次元座標系の原点を定義したときに、
起歪体は、その上面がXY平面に沿って延び、原点の周囲を取り囲むように可撓性をもった可撓部が形成され、この可撓部に囲まれた部分である中心部と、この可撓部の周囲の部分である周囲部とは、可撓部の撓みにより相互に変位を生じるように構成され、
中心部および周囲部のいずれか一方は固定部としてセンサ筐体に固定され、他方は作用部として各座標軸方向に加えられた力により変位可能な状態に支持され、
可撓部に撓みが生じると圧電素子にこの撓みが伝達し、逆に、圧電素子に撓みが生じると可撓部にこの撓みが伝達するように、圧電素子の板面が起歪体の板面にほぼ平行になるような状態で、起歪体の上面と下部電極の下面とが固着され、
5枚の上部電極は、X軸に関して負の領域に形成されかつX軸に関して線対称な形状をもった第1の上部電極と、X軸に関して正の領域に形成されかつX軸に関して線対称な形状をもった第2の上部電極と、Y軸に関して負の領域に形成されかつY軸に関して線対称な形状をもった第3の上部電極と、Y軸に関して正の領域に形成されかつY軸に関して線対称な形状をもった第4の上部電極と、原点の周囲を取り囲む領域に形成された第5の上部電極と、によって構成され、これらの各上部電極の少なくとも一部分は、いずれも可撓部の上方位置に形成されるようにし、
所定の上部電極と下部電極との間に所定の交流電圧を印加することにより、作用部を所定方向に振動させる励振手段と、
所定の上部電極に発生した電荷に基づいて、作用部に加えられた所定方向の力を検出する力検出手段と、
を更に設け、
所定軸方向の加速度検出を行うときには、この所定軸方向についての力検出手段による検出値を用い、
所定軸まわりの角速度検出を行うときには、励振手段により、この所定軸に直交する方向に作用部を振動させた状態において、この所定軸方向および振動方向の双方に直交する第3の方向についての力検出手段による検出値を用いるようにしたものである。
【0011】
(7) 本発明の第7の態様は、上述の第6の態様に係る圧電素子を用いた加速度・角速度センサにおいて、
起歪体の少なくとも上面部分を導電性の材料によって構成し、この上面部分によって下部電極を構成するようにしたものである。
【0012】
(8) 本発明の第8の態様は、上述の第6または第7の態様に係る圧電素子を用いた加速度・角速度センサにおいて、
板状の起歪体の下面に、原点の周囲を取り囲むような環状溝を形成し、この環状溝の形成部分の肉厚が他の部分の肉厚よりも薄くなるようにし、この肉厚の薄い部分を可撓部として用いるようにしたものである。
【0013】
(9) 本発明の第9の態様は、上述の第4〜第8の態様に係る圧電素子を用いた加速度・角速度センサにおいて、
XY平面上に、原点を周囲から囲むような内側環状領域と、この内側環状領域を更に周囲から囲むような外側環状領域と、を定義し、
第1の上部電極を、外側環状領域内の、XY座標系の第2象限および第3象限に渡る領域に配置し、
第2の上部電極を、外側環状領域内の、XY座標系の第1象限および第4象限に渡る領域に配置し、
第3の上部電極を、外側環状領域内の、XY座標系の第3象限および第4象限に渡る領域に配置し、
第4の上部電極を、外側環状領域内の、XY座標系の第1象限および第2象限に渡る領域に配置し、
第5の上部電極を、内側環状領域内に配置したものである。
【0014】
(10) 本発明の第10の態様は、上述の第4〜第8の態様に係る圧電素子を用いた加速度・角速度センサにおいて、
XY平面上に、原点を周囲から囲むような内側環状領域と、この内側環状領域を更に周囲から囲むような外側環状領域と、を定義し、
第1の上部電極を、内側環状領域内の、XY座標系の第2象限および第3象限に渡る領域に配置し、
第2の上部電極を、内側環状領域内の、XY座標系の第1象限および第4象限に渡る領域に配置し、
第3の上部電極を、内側環状領域内の、XY座標系の第3象限および第4象限に渡る領域に配置し、
第4の上部電極を、内側環状領域内の、XY座標系の第1象限および第2象限に渡る領域に配置し、
第5の上部電極を、外側環状領域内に配置したものである。
【0015】
(11) 本発明の第11の態様は、上述の第4〜第10の態様に係る圧電素子を用いた加速度・角速度センサにおいて、
第1の上部電極が形成された圧電素子の部分と、第2の上部電極が形成された圧電素子の部分とでは、逆の分極特性が得られるように、
第3の上部電極が形成された圧電素子の部分と、第4の上部電極が形成された圧電素子の部分とでは、逆の分極特性が得られるように、
圧電素子の各部分に対して所定の分極処理を行うようにしたものである。
【0016】
(12) 本発明の第12の態様は、上述の第4〜第11の態様に係る圧電素子を用いた加速度・角速度センサにおいて、
第1の上部電極と下部電極との間および第2の上部電極と下部電極との間に交流電圧を印加することにより、作用部をX軸方向に振動させるX軸方向励振手段と、
第3の上部電極と下部電極との間および第4の上部電極と下部電極との間に交流電圧を印加することにより、作用部をY軸方向に振動させるY軸方向励振手段と、
第5の上部電極と下部電極との間に交流電圧を印加することにより、作用部をZ軸方向に振動させるZ軸方向励振手段と、
の3つの励振手段を設け、
第1の上部電極に発生した電荷および第2の上部電極に発生した電荷に基づいて、作用部に加えられたX軸方向の力を検出するX軸方向力検出手段と、
第3の上部電極に発生した電荷および第4の上部電極に発生した電荷に基づいて、作用部に加えられたY軸方向の力を検出するY軸方向力検出手段と、
第5の上部電極に発生した電荷に基づいて、作用部に加えられたZ軸方向の力を検出するZ軸方向力検出手段と、
の3つの力検出手段を設けるようにしたものである。
【0017】
(13) 本発明の第13の態様は、XYZ三次元座標系における各座標軸方向の加速度成分および各座標軸まわりの角速度成分を検出するための圧電素子を用いた加速度・角速度センサにおいて、
板状の圧電素子と、この圧電素子の上面に形成された5枚の上部電極と、この圧電素子の下面において各上部電極のそれぞれに対して向かい合う位置に形成された下部電極と、を設け、圧電素子の上面のほぼ中心位置にXYZ三次元座標系の原点を定義したときに、
圧電素子は、その上面がXY平面に沿って延び、原点の周囲を取り囲むように可撓性をもった可撓部が形成され、この可撓部に囲まれた部分である中心部と、この可撓部の周囲の部分である周囲部とは、可撓部の撓みにより相互に変位を生じるように構成され、
中心部および周囲部のいずれか一方は固定部としてセンサ筐体に固定され、他方は作用部として各座標軸方向に加えられた力により変位可能な状態に支持され、
5枚の上部電極は、XY座標系の第1象限に配置された第1の上部電極と、第2象限に配置された第2の上部電極と、第3象限に配置された第3の上部電極と、第4象限に配置された第4の上部電極と、原点の周囲を取り囲む領域に配置された第5の上部電極と、によって構成され、これらの各上部電極の少なくとも一部分は、いずれも可撓部に形成されるようにし、
所定の上部電極と下部電極との間に所定の交流電圧を印加する励振手段と、
所定の上部電極に発生した電荷に基づいて、作用部に加えられた所定方向の力を検出する力検出手段と、
を更に設け、
所定軸方向の加速度検出を行うときには、この所定軸方向についての力検出手段による検出値を用い、
所定軸まわりの角速度検出を行うときには、励振手段により、この所定軸に直交する直交軸に作用部を振動させた状態において、この所定軸および直交軸の双方に直交する第3の軸についての力検出手段による検出値を用いるようにしたものである。
【0018】
(14) 本発明の第14の態様は、XYZ三次元座標系における各座標軸方向の加速度成分および各座標軸まわりの角速度成分を検出するための圧電素子を用いた加速度・角速度センサにおいて、
板状の圧電素子と、この圧電素子の上面に形成された5枚の上部電極と、この圧電素子の下面において各上部電極のそれぞれに対して向かい合う位置に形成された下部電極と、この下部電極を下方から支持する板状の起歪体と、を設け、起歪体の上面のほぼ中心位置にXYZ三次元座標系の原点を定義したときに、
起歪体は、その上面がXY平面に沿って延び、原点の周囲を取り囲むように可撓性をもった可撓部が形成され、この可撓部に囲まれた部分である中心部と、この可撓部の周囲の部分である周囲部とは、可撓部の撓みにより相互に変位を生じるように構成され、
中心部および周囲部のいずれか一方は固定部としてセンサ筐体に固定され、他方は作用部として各座標軸方向に加えられた力により変位可能な状態に支持され、
可撓部に撓みが生じると圧電素子にこの撓みが伝達し、逆に、圧電素子に撓みが生じると可撓部にこの撓みが伝達するように、圧電素子の板面が起歪体の板面にほぼ平行になるような状態で、起歪体の上面と下部電極の下面とが固着され、
5枚の上部電極は、XY座標系の第1象限に配置された第1の上部電極と、第2象限に配置された第2の上部電極と、第3象限に配置された第3の上部電極と、第4象限に配置された第4の上部電極と、原点の周囲を取り囲む領域に配置された第5の上部電極と、によって構成され、これらの各上部電極の少なくとも一部分は、いずれも可撓部の上方位置に形成されるようにし、
所定の上部電極と下部電極との間に所定の交流電圧を印加する励振手段と、
所定の上部電極に発生した電荷に基づいて、作用部に加えられた所定方向の力を検出する力検出手段と、
を更に設け、
所定軸方向の加速度検出を行うときには、この所定軸方向についての力検出手段による検出値を用い、
所定軸まわりの角速度検出を行うときには、励振手段により、この所定軸に直交する直交軸に作用部を振動させた状態において、この所定軸および直交軸の双方に直交する第3の軸についての力検出手段による検出値を用いるようにしたものである。
【0019】
(15) 本発明の第15の態様は、上述の第14の態様に係る圧電素子を用いた加速度・角速度センサにおいて、
起歪体の少なくとも上面部分を導電性の材料によって構成し、この上面部分によって下部電極を構成するようにしたものである。
【0020】
【作 用】
本発明に係るセンサでは、板状構造体自身もしくはこの板状構造体に接合された起歪体に、可撓性をもった可撓部が形成される。このような可撓部を形成することにより、可撓部に囲まれた部分である中心部と、可撓部の周囲の部分である周囲部とが、可撓部の撓みにより相互に変位を生じるようになる。したがって、中心部を固定した場合は、周囲部が錘りとして機能し、加速度が作用すると可撓部に撓みが生じることになる。逆に、周囲部を固定した場合は、中心部が錘りとして機能し、加速度が作用するとやはり可撓部に撓みが生じることになる。板状構造体として圧電素子を用いれば、加速度の作用によって、圧電素子に撓みが生じ、特定の上部電極に特定の極性の電荷が発生することになる。こうして発生した電荷を検出することにより、作用した加速度の方向と大きさを測定することが可能になる。
【0021】
一方、特定の上部電極と下部電極との間に所定の交流電圧を印加すると、圧電素子の内部に特定の撓みが生じ、その結果、錘りとして機能する部分が振動子として所定方向に振動することになる。ところが、振動子を第1の軸方向に振動させた状態において、この振動子に第2の軸まわりの角速度が作用すると、この振動子には第3の軸方向のコリオリ力が発生する現象が知られている。このコリオリ力は、圧電素子に別な撓みを生じさせることになり、特定の上部電極に特定の極性の電荷が発生することになる。こうして発生した電荷を検出することにより、作用した角速度の方向と大きさを測定することが可能になる。
【0022】
本発明の実施形態に係るセンサは、板状の圧電素子と、その上面に配された5枚の上部電極と、これらに対向して圧電素子の下面に設けられた1枚の共通下部電極と、からなる単純な構成であるが、上述した原理に基づいて、XYZ三次元座標系における各軸方向の加速度成分および各軸まわりの角速度成分のすべてを検出することができる。こうして、本発明によれば、構造が単純で、小形化、量産性に適し、しかも三次元方向に関する加速度と角速度との双方を検出することができる加速度・角速度センサを実現することが可能になる。
【0023】
【実施例】
§1. 角速度および加速度検出の基本原理
まず、本発明に係るセンサにおける角速度検出の基本原理を説明する。本発明に係るセンサでは、二軸あるいは三軸まわりの角速度を検出することが可能であるが、ここでは、はじめに、一軸の角速度検出原理を簡単に説明しておく。図1は、雑誌「発明(THE INVENTION)」、vol.90,No.3(1993年)の60頁に開示されている角速度センサの基本原理を示す図である。いま、角柱状の振動子110を用意し、図示するような方向にX,Y,Z軸を定義したXYZ三次元座標系を考える。このような系において、振動子110がZ軸を回転軸として角速度ωで回転運動を行っている場合、次のような現象が生じることが知られている。すなわち、この振動子110をX軸方向に往復運動させるような振動Uを与えると、Y軸方向にコリオリ力Fが発生する。別言すれば、振動子110を図のX軸に沿って振動させた状態で、この振動子110をZ軸を中心軸として回転させると、Y軸方向にコリオリ力Fが生じることになる。この現象は、フーコーの振り子として古くから知られている力学現象であり、発生するコリオリ力Fは、
F=2m・v・ω
で表される。ここで、mは振動子110の質量、vは振動子110の振動についての瞬時の速度、ωは振動子110の瞬時の角速度である。
【0024】
前述の雑誌に開示された一軸の角速度センサは、この現象を利用して角速度ωを検出するものである。すなわち、図1に示すように、角柱状の振動子110の第1の面には第1の圧電素子111が、この第1の面と直交する第2の面には第2の圧電素子112が、それぞれ取り付けられる。圧電素子111,112としては、ピエゾエレクトリックセラミックからなる板状の素子が用いられている。そして、振動子110に対して振動Uを与えるために圧電素子111が利用され、発生したコリオリ力Fを検出するために圧電素子112が利用される。すなわち、圧電素子111に交流電圧を与えると、この圧電素子111は伸縮運動を繰り返しX軸方向に振動する。この振動Uが振動子110に伝達され、振動子110がX軸方向に振動することになる。このように、振動子110に振動Uを与えた状態で、振動子110自身がZ軸を中心軸として角速度ωで回転すると、上述した現象により、Y軸方向にコリオリ力Fが発生する。このコリオリ力Fは、圧電素子112の厚み方向に作用するため、圧電素子112の両面にはコリオリ力Fに比例した電圧Vが発生する。そこで、この電圧Vを測定することにより、角速度ωを検出することが可能になる。
【0025】
上述した従来の角速度センサは、Z軸まわりの角速度を検出するためのものであり、X軸あるいはY軸まわりの角速度の検出を行うことはできない。本発明に係るセンサでは、図2に示すように、所定の物体120について、XYZ三次元座標系におけるX軸まわりの角速度ωx、Y軸まわりの角速度ωy、Z軸まわりの角速度ωz、のそれぞれを別個独立して検出することができる。その基本原理を、図3〜図5を参照して説明する。いま、XYZ三次元座標系の原点位置に振動子130が置かれているものとする。この振動子130のX軸まわりの角速度ωxを検出するには、図3に示すように、この振動子130にZ軸方向の振動Uzを与えたときに、Y軸方向に発生するコリオリ力Fyを測定すればよい。コリオリ力Fyは角速度ωxに比例した値となる。また、この振動子130のY軸まわりの角速度ωyを検出するには、図4に示すように、この振動子130にX軸方向の振動Uxを与えたときに、Z軸方向に発生するコリオリ力Fzを測定すればよい。コリオリ力Fzは角速度ωyに比例した値となる。更に、この振動子130のZ軸まわりの角速度ωzを検出するには、図5に示すように、この振動子130にY軸方向の振動Uyを与えたときに、X軸方向に発生するコリオリ力Fxを測定すればよい。コリオリ力Fxは角速度ωzに比例した値となる。
【0026】
結局、XYZ三次元座標系におけるX軸まわりの角速度ωx、Y軸まわりの角速度ωy、Z軸まわりの角速度ωz、をそれぞれ検出するには、図6に示すように、振動子130にX軸方向の振動Uxを与えるX軸方向励振手段141、Y軸方向の振動Uyを与えるY軸方向励振手段142、Z軸方向の振動Uzを与えるZ軸方向励振手段143、のそれぞれと、振動子130に作用するX軸方向のコリオリ力Fxを検出するX軸方向力検出手段151、Y軸方向のコリオリ力Fyを検出するY軸方向力検出手段152、Z軸方向のコリオリ力Fzを検出するZ軸方向力検出手段153のそれぞれと、を用意すればよいことになる。
【0027】
一方、加速度の検出原理はより単純である。すなわち、静止状態の振動子(単なる質量mをもった錘りとして機能する)に、所定方向の加速度αが作用すると、この加速度αと同じ方向に、f=m・αなる力fが作用することになる。したがって、静止状態の振動子130に作用する各軸方向の力fx,fy,fzを検出すれば、質量mを用いた演算により、各軸方向の加速度αx,αy,αzを検出することができる。
【0028】
結局、XYZ三次元座標系におけるX軸方向の加速度αx、Y軸方向の加速度αy、Z軸方向の加速度αz、をそれぞれ検出するには、図7に示すように、振動子130に作用するX軸方向の力fxを検出するX軸方向力検出手段151、Y軸方向の力fyを検出するY軸方向力検出手段152、Z軸方向の力fzを検出するZ軸方向力検出手段153のそれぞれを用意すればよいことになる。
【0029】
さて、図6には三次元角速度センサの構成要素をブロック図として示し、図7には三次元加速度センサの構成要素をブロック図として示したが、両者を比べてみると、前者の構成は後者の構成を含んでいることがわかる。すなわち、図7に示す加速度センサに、更に、各軸方向についての励振手段141,142,143を付加すれば、図6に示す角速度センサが得られることになり、図6に示す角速度センサは、図7に示す加速度センサとしても機能するのである。
【0030】
§2. 基本的実施例に係るセンサの構造
本発明に係るセンサは、上述した基本原理に基づいて、XYZ三次元座標系の各軸方向の加速度および各軸まわりの角速度を検出するものである。以下、基本的実施例に基づいて、その具体的な構造の一例を説明する。
【0031】
図8は、この基本的実施例に係るセンサを斜め上方から見た斜視図、図9は、このセンサを斜め下方から見た斜視図である。このセンサは、円盤状の圧電素子10の上面に5枚の上部電極A1〜A5を形成するとともに、下面に1枚の下部電極Bを形成したものである。ここでは説明の便宜上、XYZ三次元座標系の原点Oを、円盤状の圧電素子10の上面の中心位置に定義し、X軸およびY軸をこの圧電素子10の上面に沿った方向に定義し、Z軸をこの上面に対して垂直上方に向かう方向に定義することにする。したがって、この圧電素子10の上面は、XY平面に含まれることになる。
【0032】
圧電素子10の構造的な特徴は、図9に示されているように、下面に環状溝15が形成されている点である。この実施例では、環状溝15は原点Oを取り囲むような円形をしている。下部電極Bは、1枚の単一の電極層であり、この環状溝15の内部をも含めた圧電素子10の下面全面に形成されている。
【0033】
一方、図10の上面図に明瞭に示されているように、上部電極A1〜A4は、いずれも原点Oを中心とした円弧に沿った帯状をしており、X軸あるいはY軸に関して線対称な形状をしている。すなわち、圧電素子10の上面にXY平面を定義すれば、上部電極A1は、X軸に関して負の領域にX軸に関して線対象な形状をもつように、XY座標系の第2象限および第3象限に渡る領域に配置され、上部電極A2は、X軸に関して正の領域にX軸に関して線対象な形状をもつように、XY座標系の第1象限および第4象限に渡る領域に配置され、上部電極A3は、Y軸に関して負の領域にY軸に関して線対象な形状をもつように、XY座標系の第3象限および第4象限に渡る領域に配置され、上部電極A4は、Y軸に関して正の領域にY軸に関して線対象な形状をもつように、XY座標系の第1象限および第2象限に渡る領域に配置されている。また、上部電極A5は、原点Oの周囲を取り囲む領域に形成され、この実施例では、原点Oについて点対称な形状をもった電極である。より具体的には、原点Oの周囲を取り囲むような環状構造をもった、いわゆるワッシャ状の電極である。もっとも、この上部電極A5は、必ずしもワッシャ状にする必要はなく、中央の開口部を埋めた円盤状のものにしてもかまわない。また、上部電極A5の形状を原点について点対称としているのは、後述するように各座標軸方向の力を検出するときに他軸成分が干渉しないようにするためであり、このような他軸成分の干渉のない形状が実現できれば、必ずしも点対称にする必要はない。
【0034】
このセンサの構造は、図11を参照すると、より明らかになる。図11は、このセンサをXZ平面で切った側断面図である。圧電素子10の環状溝15が形成された部分は、他の部分に比べて肉厚が薄くなっており、可撓性を有する。ここでは、圧電素子10の中の環状溝15の上方に位置する部分を可撓部12と呼び、この可撓部12によって囲まれた中心の部分を中心部11と呼び、可撓部12の外周に位置する部分を周囲部13と呼ぶことにする。これら3つの部分の相対的な位置関係は、図12の下面図に明瞭に示されている。すなわち、中心部11の周囲の環状溝15が形成された部分に可撓部12が形成され、この可撓部12の周囲に周囲部13が形成されていることになる。
【0035】
ここで、たとえば、周囲部13だけをセンサ筐体に固定し、センサ筐体全体を揺らすと、中心部11にはその質量により加速度に基づく力が作用し、この力により可撓部12に撓みが生じることになる。すなわち、中心部11は、可撓性をもった可撓部12によって周囲から支持された状態になっており、X軸、Y軸、Z軸方向にある程度の変位を生じることが可能である。結局、このセンサにおける中心部11は、図6に示すセンサにおける質量を有する振動子130として機能するのである。
【0036】
なお、図11の側断面図に示されているように、5枚の上部電極A1〜A5は、いずれもほぼ可撓部12の上面に形成されている。これは、後述するように、上部電極A1〜A5に要求される基本的な機能が、可撓部12に生じた撓みに基づいて電荷を発生させる機能と、可撓部12に所定の交流電圧を印加することにより振動を生じさせる機能と、の2つの機能であり、この2つの機能を効率的に果たすためには、これらの上部電極A1〜A5を可撓部12上に形成することが好ましいためである。もちろん、各上部電極は少なくともその一部が可撓部12上の領域にあれば十分であり、この基本的実施例のセンサでも、各上部電極A1〜A5の一部分は可撓部12上に位置するが、別な一部分は可撓部12上の領域から食み出している。したがって、上部電極A5の形状も、上述したように必ずしもワッシャ状にする必要はなく、少なくとも一部が可撓部12上に存在する構造を有していればよい。
【0037】
§3. 基本的実施例に係るセンサの動作原理
図6に示すセンサでは、振動子130の他に、各軸方向の励振手段141,142,143と、各軸方向の力検出手段151,152,153が必要である。この基本的実施例に係るセンサでは、励振手段141,142,143および力検出手段151,152,153は、上部電極A1〜A5と、下部電極Bと、これらの間に挟まれている圧電素子10と、によって構成されることになる。
【0038】
このように、上下の電極と、その間に挟まれた圧電素子10とによって、励振手段や力検出手段を構成できることを説明するために、まず、圧電素子10の基本的な性質について確認しておく。一般に、圧電素子は、機械的な応力の作用により分極現象を生じる。すなわち、ある特定の方向に応力が加わると、一方には正の電荷が発生し、他方には負の電荷が発生する性質を有する。この実施例のセンサでは、圧電素子10として、図13に示すような分極特性をもった圧電セラミックスを用いている。すなわち、図13(a) に示すように、XY平面に沿って伸びる方向の力が作用した場合には、上部電極A側に正の電荷が、下部電極B側に負の電荷が、それぞれ発生し、逆に、図13(b) に示すように、XY平面に沿って縮む方向の力が作用した場合には、上部電極A側に負の電荷が、下部電極B側に正の電荷が、それぞれ発生するような分極特性をもっている。逆に、上下の電極に所定の電圧を印加すると、圧電素子10の内部には機械的な応力が作用することになる。すなわち、図13(a) に示すように、上部電極A側に正の電荷を、下部電極B側に負の電荷を、それぞれ与えるように電圧を印加すると、XY平面に沿って伸びる方向の力が発生し、図13(b) に示すように、上部電極A側に負の電荷を、下部電極B側に正の電荷を、それぞれ与えるように電圧を印加すると、XY平面に沿って縮む方向の力が発生するのである。
【0039】
上述した基本的実施例に係るセンサは、このような圧電素子の性質を利用して、各励振手段および各力検出手段を構成しているのである。すなわち、上下の電極に電圧を印加することにより圧電素子内部に応力を発生させることができる性質を利用して各励振手段を構成し、圧電素子内部に応力が作用した場合に上下の電極に電荷が発生する性質を利用して各力検出手段を構成している。以下、これらの各手段について、その構成と動作を説明する。
【0040】
<X軸方向励振手段>
図6に示す構成要素のうち、X軸方向励振手段141は、上部電極A1,A2と、これに対向する下部電極Bの一部分と、これらに挟まれた圧電素子10の一部分と、所定の交流供給手段と、によって構成されている。いま、下部電極Bを基準電位に保ちながら、上部電極A1に正の電圧を与え、上部電極A2に負の電圧を与えた場合を考える。すると、図14の側断面図に示すように、電極A1の下の圧電素子には図の左右に伸びる方向の応力が生じ、電極A2の下の圧電素子には図の左右に縮む方向の応力が生じる(図13の分極特性を参照)。このため、圧電素子10全体としては、図14に示すように変形することになり、中心部11の重心Pは、X軸方向にDxだけ変位することになる。ここで、上部電極A1,A2に与える電圧の極性を逆転させ、上部電極A1に負の電圧を与え、上部電極A2に正の電圧を与えると、図14とは逆に、電極A1の下の圧電素子には図の左右に縮む方向の応力が生じ、電極A2の下の圧電素子には図の左右に伸びる方向の応力が生じ、結果的に、中心部11の重心Pは、X軸の方向に−Dxだけ変位することになる。
【0041】
そこで、下部電極Bと上部電極A1との間に第1の交流電圧を印加するとともに、下部電極Bと上部電極A2との間には、第1の交流電圧とは逆位相になるような第2の交流電圧を印加するようにすれば、重心Pは、X軸方向に沿って、Dxなる変位と−Dxなる変位とを交互に生じるようになり、中心部11はX軸に沿って振動することになる。既に述べたように、中心部11は図6に示す構成要素における振動子130に対応するものである。したがって、上述した交流電圧の印加により、振動子130に対してX軸方向の振動Uxを与えることが可能になる。この振動Uxの周波数は、与える交流電圧の周波数によって制御可能であり、この振動Uxの振幅は、与える交流電圧の振幅値によって制御可能である。結局、上部電極A1,A2、下部電極B、圧電素子10、および図示されていない交流電圧を供給する手段、によって、図6に示すX軸方向励振手段141が構成されていることになる。
【0042】
<Y軸方向励振手段>
図6に示す構成要素のうち、Y軸方向励振手段142は、上部電極A3,A4と、これに対向する下部電極Bの一部分と、これらに挟まれた圧電素子10の一部分と、所定の交流供給手段と、によって構成されている。その動作原理は、上述したX軸方向励振手段141の動作原理と全く同様である。すなわち、図10の上面図に示されているように、上部電極A1,A2がX軸上に配されていたのに対し、上部電極A3,A4はY軸上に配されている。したがって、上部電極A1,A2に互いに位相が逆転した交流電圧を供給することにより、中心部11(振動子)をX軸方向に振動させることができたのと同じ原理により、上部電極A3,A4に互いに位相が逆転した交流電圧を供給することにより、中心部11(振動子)をY軸方向に振動させることができる。
【0043】
すなわち、上述した交流電圧の印加により、振動子130に対してY軸方向の振動Uyを与えることが可能になる。この振動Uyの周波数は、与える交流電圧の周波数によって制御可能であり、この振動Uyの振幅は、与える交流電圧の振幅値によって制御可能である。結局、上部電極A3,A4、下部電極B、圧電素子10、および図示されていない交流電圧を供給する手段、によって、図6に示すY軸方向励振手段142が構成されていることになる。
【0044】
<Z軸方向励振手段>
図6に示す構成要素のうち、Z軸方向励振手段143は、上部電極A5と、これに対向する下部電極Bの一部分と、これらに挟まれた圧電素子10の一部分と、所定の交流供給手段と、によって構成されている。いま、下部電極Bを基準電位に保ちながら、上部電極A5に正の電圧を与えた場合を考える。すると、図15の側断面図に示すように、電極A5の下の圧電素子には、XY平面に沿って伸びる方向の応力が生じ(図13の分極特性を参照)、この部分が上方へと盛り上がるように変形することになり、中心部11の重心Pは、Z軸方向にDzだけ変位することになる。ここで、上部電極A5に与える電圧の極性を逆転させ、負の電圧を与えると、図15とは逆に、電極A5の下の圧電素子には図の左右方向に縮む方向の応力が生じ、結果的に、中心部11の重心Pは、Z軸の方向に−Dzだけ変位することになる。
【0045】
そこで、下部電極Bと上部電極A5との間に、所定の交流信号を供給するようにすれば、重心Pは、Z軸方向に沿って、Dzなる変位を生じたり、−Dzなる変位を生じたりするようになり、中心部11はZ軸に沿って振動することになる。既に述べたように、中心部11は図6に示す構成要素における振動子130に対応するものである。したがって、上述した交流電圧の印加により、振動子130に対してZ軸方向の振動Uzを与えることが可能になる。この振動Uzの周波数は、与える交流電圧の周波数によって制御可能であり、この振動Uzの振幅は、与える交流電圧の振幅値によって制御可能である。結局、上部電極A5、下部電極B、圧電素子10、および図示されていない交流電圧を供給する手段、によって、図6に示すZ軸方向励振手段143が構成されていることになる。
【0046】
<X軸方向力検出手段>
図6に示す構成要素のうち、X軸方向力検出手段151は、上部電極A1,A2と、これに対向する下部電極Bの一部分と、これらに挟まれた圧電素子10の一部分と、後述する検出回路と、によって構成されている。いま、このセンサの周囲部13を筐体に固定した状態において、中心部11(振動子130)の重心Pに加速度に基く力fxが作用した場合に、どのような現象が起こるかを説明する。まず、重心PにX軸方向の加速度αxが加えられた結果、図16に示すように、重心Pに対してX軸方向の力fxが作用した場合を考える。このような力fxの作用により、可撓部12に撓みが生じ、図16に示すような変形が起こる。この結果、X軸に沿って配置された上部電極A1はX軸方向に伸び、同じくX軸に沿って配置された上部電極A2はX軸方向に縮むことになる。また、上部電極A5の図16における左側部分はX軸方向に縮み、同じ上部電極A5の図16における右側部分はX軸方向に伸びることになる。これらの上部電極の下方に位置する圧電素子は、図13に示すような分極特性を有するので、各上部電極には、図16に示すような極性の電荷が発生する。ただ、上部電極A5は、原点Oに関して点対称な形状をした単一の電極であるから、図16の左側部分に「−」、右側部分に「+」の電荷がそれぞれ発生しても、両者は相殺され、トータルでの電荷の発生はない。同様に、下部電極Bは単一の共通電極となっているので、部分的に「+」または「−」の極性の電荷が発生しても相殺され、トータルでの電荷の発生はない。
【0047】
そこで、上部電極A1に発生した電荷と上部電極A2に発生した電荷との差を求めれば、X軸方向に作用した力fxが得られることになる。なお、上述の説明では、加速度に起因して作用した力fxを検出する場合を例にとったが、角速度に起因して作用するコリオリ力Fxも、全く同様にして検出可能である。実際には、重心Pに作用したX軸方向の力としては、加速度に起因する力fxも角速度に起因するコリオリ力Fxも同等であり、瞬時瞬時に検出される力としては区別できない。
【0048】
<Y軸方向力検出手段>
図6に示す構成要素のうち、Y軸方向力検出手段152は、上部電極A3,A4と、これに対向する下部電極Bの一部分と、これらに挟まれた圧電素子10の一部分と、後述する検出回路と、によって構成されている。その検出原理は、上述したX軸方向力検出手段151の検出原理と同様である。すなわち、このセンサの周囲部13を筐体に固定した状態において、中心部11(振動子130)の重心Pに加速度に基く力fyが作用した場合に、どのような現象が起こるかを考えればよい。重心PにY軸方向の加速度αyが加えられた結果、Y軸方向の力fyが作用すると、上部電極A3には負の電荷が生じ、上部電極A4には正の電荷が生じることになる。そこで、上部電極A3に発生した電荷と上部電極A4に発生した電荷との差を求めれば、Y軸方向に作用した力fyが得られることになる。角速度に起因して作用するコリオリ力Fyの検出も全く同様である。
【0049】
<Z軸方向力検出手段>
図6に示す構成要素のうち、Z軸方向力検出手段153は、上部電極A5と、これに対向する下部電極Bの一部分と、これらに挟まれた圧電素子10の一部分と、後述する検出回路と、によって構成されている。いま、このセンサの周囲部13を筐体に固定した状態において、中心部11(振動子130)の重心Pに加速度に基く力fzが作用した場合に、どのような現象が起こるかを説明する。まず、重心PにZ軸方向の加速度αzが加えられた結果、図17に示すように、重心Pに対してZ軸方向の力fzが作用した場合を考える。このような力fzの作用により、可撓部12に撓みが生じ、図17に示すような変形が起こる。この結果、外側環状領域に配置された上部電極A1〜A4は縮むために上部電極側に「−」の電荷が発生し、内側環状領域に配置された上部電極A5は伸びるために上部電極側に「+」の電荷が発生することになる。このとき、下部電極Bは単一の共通電極となっているので、部分的に「+」または「−」の極性の電荷が発生しても相殺され、トータルでの電荷の発生はない。
【0050】
そこで、上部電極A5に発生した電荷により、Z軸方向に作用した力fzが得られることになる。もちろん、上部電極A1〜A4に発生した電荷によっても、力fzを検出することができるが、前述したように、上部電極A1,A2は力fxの検出に用いられ、上部電極A3,A4は力fyの検出に用いられるので、本発明では、上部電極A5を力fzの検出用電極として用いている。なお、角速度に起因して作用するコリオリ力Fzも、全く同様にして検出可能である。
【0051】
§4. 基本的実施例に係るセンサに用いる検出回路
上述した基本的実施例に係るセンサにおいて、中心部11に力fx,fy,fzのそれぞれが作用した場合に、各上部電極に発生する電荷の極性をまとめると、図18に示す表が得られる。表中「0」と記されているのは、圧電素子が部分的には伸びるが部分的には縮むため、正負が相殺されてトータルとして電荷は発生しないことを示す。前述したように、各上部電極は、X軸またはY軸に関して線対称な形状をしているため、力fxの作用により電荷を発生する上部電極には、力fyが作用しても電荷は発生せず、逆に、力fyの作用により電荷を発生する上部電極には、力fxが作用しても電荷は発生しないのである。このように、他軸干渉を避ける上では、電極形状を線対称にしておくことが重要である。なお、図18の表は、いずれも各軸の正方向の力+fx,+fy,+fzが作用した場合の極性を示すものであるが、各軸の負方向の力−fx,−fy,−fzが作用したときは、それぞれこの表とは逆の極性の電荷が現われることになる。このような表が得られることは、図16および図17に示す変形状態と、図10に示す各上部電極の配置とを参照すれば、容易に理解できよう。また、作用した力の大きさは、発生した電荷量として検出することが可能である。
【0052】
このような原理に基いて、力fx,fy,fz(あるいはコリオリ力Fx,Fy,Fz)の検出を行うためには、たとえば図19に示すような検出回路を用意すればよい。この検出回路において、Q/V変換回路31〜35は、各上部電極A1〜A5に発生する電荷量を、下部電極Bの電位を基準電位としたときの電圧値に変換する回路である。この回路からは、たとえば、上部電極に「+」の電荷が発生した場合には、発生した電荷量に応じた正の電圧(基準電位に対して)が出力され、逆に、上部電極に「−」の電荷が発生した場合には、発生した電荷量に応じた負の電圧(基準電位に対して)が出力される。こうして出力された電圧V1〜V5は、演算器41,42に与えられ、これら演算器41,42の出力が端子Tx,Tyに得られる。ここで、端子Txの基準電位に対する電圧値が力fx(またはコリオリ力Fx)の検出値となり、端子Tyの基準電位に対する電圧値が力fy(またはコリオリ力Fy)の検出値となり、端子Tzの基準電位に対する電圧値が力fz(またはコリオリ力Fz)の検出値となる。
【0053】
各出力端子Tx,Ty,Tzに得られる電圧値が、力fx,fy,fzの検出値になることは、図18の表を参照すればわかる。たとえば、力fxが作用した場合、上部電極A1には「+」の電荷が発生し、上部電極A2には「−」の電荷が発生する。したがって、V1は正、V2は負の電圧となる。そこで、演算器41によって、V1−V2なる演算を行うことにより、電圧V1,V2の絶対値の和が求まり、これが力fxの検出値として端子Txに出力されることになる。同様に、力fyが作用した場合は、上部電極A3には「+」の電荷が発生し、上部電極A4には「−」の電荷が発生する。したがって、V3は正、V4は負の電圧となる。そこで、演算器42によって、V3−V4なる演算を行うことにより、電圧V3,V4の絶対値の和が求まり、これが力fyの検出値として端子Tyに出力されることになる。また、力fzが作用した場合は、上部電極A5には「+」の電荷が発生する。したがって、V5は正の電圧となり、これが力fzの検出値としてそのまま端子Tzに出力されることになる。
【0054】
ここで注目すべき点は、各出力端子Tx,Ty,Tzに得られる検出値は、他軸成分を含まないということである。これは、各上部電極が各座標軸について線対称あるいは原点について点対称な形状をしているためである。たとえば、図18の表に示されているように、力fxだけが作用した場合、力fy検出用の上部電極A3,A4や、力fz検出用の上部電極A5には電荷の発生はなく、端子Tyや端子Tzには検出電圧は得られない。力fyだけが作用した場合も同様に、端子Ty以外には検出電圧は得られない。また、力fzだけが作用した場合は、上部電極A1〜A4にも電荷は発生するが、いずれも同じ極性の同じ量の電荷となるため、演算器41,42の演算によって相殺され、端子Tx,Tyには検出電圧は得られない。こうして、XYZの3軸方向成分が独立して検出できる。
【0055】
§5. 基本的実施例に係るセンサによる検出手順
以上の説明により、図8〜図12に示す基本的実施例に係るセンサが、図6のブロック図に示された各励振手段および各力検出手段を備えていることが理解できるであろう。ただし、各電極は、これらの各手段について兼用されている。たとえば、上部電極A1,A2は、X軸方向励振手段141の構成要素でもあるし、X軸方向力検出手段151の構成要素でもある。このセンサは、各軸方向の加速度αx,αy,αzと、各軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzと、を検出する機能を有するが、上述のように個々の電極が複数の手段について兼用されているため、検出対象に応じて各電極を使い分ける必要がある。
【0056】
まず、各軸方向の加速度αx,αy,αzの検出手順を述べる。加速度の検出を行うには、振動子130を振動させる必要はなく、図7のブロック図に示すように、各軸方向の力検出手段151〜153が構成できればよい。したがって、図19に示す検出回路を用意しておけば、各軸方向の加速度αx,αy,αzの検出が可能になる。図19に示す検出回路の端子Tx,Ty,Tzに、中心部11に作用した力fx,fy,fzの検出値が得られることは既に述べたとおりであり、加速度に起因した力fと加速度αとの間には、中心部11の質量mに基づいて、f=m・αの関係があるので、得られた力fx,fy,fzに基づき、各軸方向の加速度αx,αy,αzを検出することができる。
【0057】
次に、X軸まわりの角速度ωxの検出手順を述べる。図3に示す検出原理によれば、振動子130に対してZ軸方向の振動Uzを与えた状態で、Y軸方向に作用するコリオリ力Fyを検出することができれば、Fy=2m・vz・ωxなる式に基づいて、X軸まわりの角速度ωxを得ることができる。ここで、mは振動子130の質量であり、vzは振動子130のZ軸方向の瞬間速度である。そこで、上部電極A5と下部電極Bとの間に交流電圧を印加して、中心部11をZ軸方向に励振した状態にし、このとき上部電極A3,A4に発生する電荷を、図19に示す検出回路における端子Tyの出力値(Y軸方向に作用したコリオリ力Fyの検出値)として得れば、X軸まわりの角速度ωxを演算により求めることができる。
【0058】
続いて、Y軸まわりの角速度ωyの検出手順を述べる。図4に示す検出原理によれば、振動子130に対してX軸方向の振動Uxを与えた状態で、Z軸方向に作用するコリオリ力Fzを検出することができれば、Fz=2m・vx・ωyなる式に基づいて、Y軸まわりの角速度ωyを得ることができる。ここで、mは振動子130の質量であり、vxは振動子130のX軸方向の瞬間速度である。そこで、上部電極A1と下部電極Bとの間、および上部電極A2と下部電極Bとの間に、それぞれ逆位相の交流電圧を印加して、中心部11をX軸方向に励振した状態にし、このとき上部電極A5に発生する電荷を、図19に示す検出回路における端子Tzの出力値(Z軸方向に作用したコリオリ力Fzの検出値)として得れば、Y軸まわりの角速度ωyを演算により求めることができる。
【0059】
最後に、Z軸まわりの角速度ωzの検出手順を述べる。図5に示す検出原理によれば、振動子130に対してY軸方向の振動Uyを与えた状態で、X軸方向に作用するコリオリ力Fxを検出することができれば、Fx=2m・vy・ωzなる式に基づいて、Z軸まわりの角速度ωzを得ることができる。ここで、mは振動子130の質量であり、vyは振動子130のY軸方向の瞬間速度である。そこで、上部電極A3と下部電極Bとの間、および上部電極A4と下部電極Bとの間に、それぞれ逆位相の交流電圧を印加して、中心部11をY軸方向に励振した状態にし、このとき上部電極A1,A2に発生する電荷を、図19に示す検出回路における端子Txの出力値(X軸方向に作用したコリオリ力Fxの検出値)として得れば、Z軸まわりの角速度ωzを演算により求めることができる。
【0060】
以上のように、この基本的実施例に係るセンサは、各軸方向の加速度αx,αy,αzと、各軸まわりの角速度ωx,ωy,ωzと、のすべてを検出する機能を有する。
【0061】
§6. 別な原理に基づく角速度検出手順
上述した§5の角速度検出手順は、図3〜図5に示す原理に基づくものであるが、角速度の別な検出原理として、図20〜図22に示す原理も有効である。すなわち、コリオリ力を利用した角速度の検出は、「第1の座標軸方向に振動を与えたときに、第2の座標軸方向に発生するコリオリ力を検出すれば、第3の座標軸まわりの角速度が得られる」という基本原理に基くものであり、この基本原理における第1,第2,第3の各座標軸を、XYZ三次元座標系におけるX軸,Y軸,Z軸の各座標軸に、どのように対応させてもかまわないのである。したがって、図3〜図5に示す原理と、図20〜図22に示す原理とを組み合わせれば、次のような合計6とおりの角速度検出手順が可能になり、このうちの3とおりを選択することにより、3軸まわりの角速度の検出が可能になる。
【0062】
(1) 上部電極A5と下部電極Bとの間に交流電圧を印加して、Z軸方向の振動Uzを与えた状態で、上部電極A3,A4に発生する電荷に基づき、Y軸方向のコリオリ力Fyを検出し、X軸まわりの角速度ωxを求める(図3の原理)。
【0063】
(2) 上部電極A1と下部電極Bとの間、および上部電極A2と下部電極Bとの間に、それぞれ逆位相の交流電圧を印加して、X軸方向の振動Uxを与えた状態で、上部電極A5に発生する電荷に基づき、Z軸方向のコリオリ力Fzを検出し、Y軸まわりの角速度ωyを求める(図4の原理)。
【0064】
(3) 上部電極A3と下部電極Bとの間、および上部電極A4と下部電極Bとの間に、それぞれ逆位相の交流電圧を印加して、Y軸方向の振動Uyを与えた状態で、上部電極A1,A2に発生する電荷に基づき、X軸方向に作用したコリオリ力Fxを検出し、Z軸まわりの角速度ωzを求める(図5の原理)。
【0065】
(4) 上部電極A3と下部電極Bとの間、および上部電極A4と下部電極Bとの間に、それぞれ逆位相の交流電圧を印加して、Y軸方向の振動Uyを与えた状態で、上部電極A5に発生する電荷に基づき、Z軸方向のコリオリ力Fzを検出し、X軸まわりの角速度ωxを求める(図20の原理)。
【0066】
(5) 上部電極A5と下部電極Bとの間に交流電圧を印加して、Z軸方向の振動Uzを与えた状態で、上部電極A1,A2に発生する電荷に基づき、X軸方向のコリオリ力Fxを検出し、Y軸まわりの角速度ωyを求める(図21の原理)。
【0067】
(6) 上部電極A1と下部電極Bとの間、および上部電極A2と下部電極Bとの間に、それぞれ逆位相の交流電圧を印加して、X軸方向の振動Uxを与えた状態で、上部電極A3,A4に発生する電荷に基づき、Y軸方向に作用したコリオリ力Fyを検出し、Z軸まわりの角速度ωzを求める(図22の原理)。
【0068】
§7. 圧電素子に異なる分極処理を行う実施例
本発明に係るセンサによって加速度や角速度を検出するには、各上部電極に所定の交流電圧を印加したり、各上部電極に発生する電荷を検出したりする必要がある。このため、各上部電極に対して電圧供給のための配線を行ったり、図19に示すような検出回路を用意したりする必要がある。ところが、このセンサを大量生産する場合、製品の全コストに比べて配線や検出回路のためのコストが無視できなくなる。ここで述べる実施例は、圧電素子の分極特性を部分的に変えることにより、配線や検出回路を単純化し製造コストを低減するようにしたものである。
【0069】
圧電セラミックスなどでは、任意の分極特性をもった素子を製造することが可能である。たとえば、上述した基本的実施例に係るセンサにおいて用いられている圧電素子10は、図13に示すようなタイプ▲1▼の分極特性をもったものであった。これに対して、図23に示すようなタイプ▲2▼の分極特性をもった圧電素子20を製造することも可能である。すなわち、図23(a) に示すように、XY平面に沿って伸びる方向の力が作用した場合には、上部電極Aに負の電荷が、下部電極Bに正の電荷が、それぞれ発生し、逆に、図23(b) に示すように、XY平面に沿って縮む方向の力が作用した場合には、上部電極Aに正の電荷が、下部電極Bに負の電荷が、それぞれ発生するような分極特性をもった圧電素子20を製造することが可能である。また、1つの圧電素子の一部分にタイプ▲1▼の分極特性をもたせ、別な一部分にタイプ▲2▼の分極特性をもたせることも可能である。ここに述べる実施例は、このような局在的な分極処理を施した圧電素子を用いることにより、センサの構造を単純化するものである。
【0070】
図24に上面図を示すセンサは、このような局在的な分極処理を施した圧電素子25を用いたセンサである。この圧電素子25は、機械的な構造は上述した基本的実施例のセンサにおいて用いられている圧電素子10と全く同じであり、円盤状の圧電素子の下面に環状溝を設けたものである。しかしながら、その分極特性は圧電素子10とは異なっている。圧電素子10は、前述したように、すべての部分がタイプ▲1▼の分極特性をもつ素子であった。これに対し、圧電素子25は、図24に示すように、5枚の上部電極A1〜A5に対応する各領域においてタイプ▲1▼またはタイプ▲2▼のいずれかの分極特性をもつ。すなわち、上部電極A1,A3,A5の領域においてはタイプ▲1▼の分極特性を示し、上部電極A2,A4の領域においてはタイプ▲2▼の分極特性を示す。
【0071】
このように、図24に示すセンサは、圧電素子10の代わりに、局在的な分極処理を施した圧電素子25を用いたセンサであるが、このセンサにおいて、各上部電極に発生する電荷の極性がどのように変わるかを考えてみると、タイプ▲2▼の分極特性をもった領域に形成されている上部電極に発生する電荷の極性が前述のセンサとは逆になることがわかる。すなわち、図18に示す表のうち、上部電極A2,A4に関する極性が反転することになり、図25に示す表のような結果が得られることになる(表中、上部電極の名前の上に付されたバーは、その上部電極の極性が逆転していることを示す)。ここで注目すべき点は、表中太線で囲った部分である。これらの部分は、力fxの検出、力fyの検出、力fzの検出に関与する部分であるが、いずれも上部電極に発生する電荷の極性は「+」となっている。このため、各上部電極に対して、図26に示すような検出回路を用意しておけば、力fx,fy,fzの検出値を、それぞれ端子Txx,Tyy,Tzzにそのまま得ることができるようになる。別言すれば、図19に示したような演算器41,42は一切不要になる。
【0072】
図26に示す検出回路において、下部電極Bはもともと単一の共通電極であるため、特に外部における配線を行う必要はない。また、上部電極A1〜A5については、圧電素子25の上面に導電パターンを形成しておけば、相互の配線は非常に簡単になる。
【0073】
このような局在的な分極処理を施した圧電素子25を用いると、励振のための交流電圧供給回路も単純化される。たとえば、前述した基本的実施例のセンサでは、X軸方向の振動Uxを発生させるためには、上部電極A1とA2とに逆位相の交流信号を供給する必要があり、Y軸方向の振動Uyを発生させるためには、上部電極A3とA4とに逆位相の交流信号を供給する必要があった。ところが、局在的な分極処理を施した圧電素子25を用いると、上部電極A2およびA4が形成された領域の分極特性が反転しているため、上部電極A1とA2とに同一の交流信号を供給するだけでX軸方向の振動Uxを発生させることが可能になり、上部電極A3とA4とに同一の交流信号を供給するだけでY軸方向の振動Uyを発生させることが可能になる。したがって、X軸方向の振動Ux,Y軸方向の振動Uy,Z軸方向の振動Uzを発生させるために、図27(a) ,(b) ,(c) に示すような単純な回路を用意し、単一の交流電源50で発生した交流電圧を共通して用いることができる。
【0074】
以上のように、圧電素子に異なる分極処理を行うことにより、各電極に対する配線を単純化することができるようになる。要するに、上部電極A1が形成された圧電素子の部分と上部電極A2が形成された圧電素子の部分とでは逆の分極特性が得られるように、また、上部電極A3が形成された圧電素子の部分と上部電極A4が形成された圧電素子の部分とでは逆の分極特性が得られるように、それぞれ圧電素子の各部分に対して所定の分極処理を行うようにすれば、配線を単純化することができる。
【0075】
§8. 上部電極配置の内外を逆にした実施例
前述した基本的実施例のセンサでは、図10の上面図に示されているように、X軸方向およびY軸方向に関する励振や検出を行う上部電極A1〜A4が外側環状領域に配され、Z軸方向に関する励振や検出を行う上部電極A5が内側環状領域に配されていた。ここで述べる実施例は、この上部電極配置の内外を逆にしたものである。すなわち、図28の上面図および図29の側断面図に明瞭に示されているように、X軸方向およびY軸方向に関する励振や検出を行う上部電極A11〜A14は内側環状領域に配され、Z軸方向に関する励振や検出を行う上部電極A15が外側環状領域に配されている。ここで、上部電極A11〜A15は、それぞれ前述した基本的実施例における上部電極A1〜A5と全く同じ機能を果たすものである。ただし、内側環状領域と外側環状領域とでは、撓みが生じたときの変形状態(伸縮状態)が異なるため、前述した基本的実施例の励振回路や検出回路を、この実施例に適用するためには、極性を反転させるなど、若干の修正を施す必要がある。
【0076】
§9. 圧電素子とは別個の起歪体を用いる実施例
これまで述べた実施例は、いずれも圧電素子自身に可撓部を形成することにより撓みが生じるようにしていた。しかしながら、一般に圧電素子は脆弱であり、大きな応力が加わるとクラックが生じて破損するおそれがある。このため、上述の実施例のセンサは、比較的大きな加速度や角速度が加わった場合に破損する可能性がある。
【0077】
ここで述べる実施例は、このような大きな加速度や角速度の測定に適した構造を提供するものであり、その側断面図を図30に示す。この実施例の大きな特徴は、起歪体60を用いた点にある。起歪体60は、この実施例では金属製の円盤であり、下面に環状溝65が形成されている。この環状溝65の形成部分は、肉厚の薄い可撓部62となり、可撓性を有する部分になる。この可撓部62の撓みにより、内側の中心部61と外側の周囲部63との間に変位を生じさせることができる。周囲部63をセンサ筐体に固定すれば、中心部61は周囲から宙吊りの状態となり、錘りあるいは振動子として機能することになる。
【0078】
一方、板状の圧電素子70は、この実施例では、中央部に開口部71を有するいわゆるワッシャ状の構造をしており、その上面には5枚の上部電極A21〜A25が形成され、下面には1枚の下部電極BBが形成されている。ここで、上部電極A21〜A25の配置パターンは、図10に示す基本的実施例における上部電極A1〜A5の配置パターンと全く同じである。また、下部電極BBは、この上部電極A21〜A25のすべてに向かい合うようなワッシャ状の形状をしている。下部電極BBの下面は、起歪体60の上面に固着されており、起歪体60の板面と圧電素子70の板面とはほぼ平行な状態を保っている。したがって、起歪体60の可撓部62に撓みが生じると、この撓みは圧電素子70に伝達され、逆に、圧電素子70に撓みが生じると、この撓みは起歪体60の可撓部62に伝達されるような構造になっている。
【0079】
この実施例に係るセンサの動作は、前述した基本的実施例の動作と全く同様である。ただし、基本的実施例のセンサでは、圧電素子の一部が錘りや振動子として機能するのに対し、この実施例では、起歪体60の中心部61が錘りあるいは振動子としての機能を果たすことになる。すなわち、中心部61に加速度やコリオリ力が作用すると、可撓部62に撓みが生じ、この撓みが圧電素子70まで伝達されて、各上部電極A21〜A25に所定の電荷が発生することになり、逆に、各上部電極A21〜A25に所定の交流信号を供給すると、圧電素子70に撓みが生じ、この撓みが可撓部62に伝達されて、中心部61が振動することになる。
【0080】
起歪体60は金属などの頑丈な材料で構成することができるので、かなり大きな加速度や角速度が作用しても、破損することはない。また、センサ全体の検出感度は、起歪体60側の可撓部62の厚みによって調節することができるので、同一規格の圧電素子70を大量生産しておき、これに可撓部62の厚みが異なる種々の起歪体60を接合することによって、感度の異なる複数種類のセンサを製造することが可能になる。
【0081】
§10. 起歪体の上面を下部電極として用いる実施例
上述した図30に示すセンサを更に単純化した実施例の側断面図を図31に示す。図30に示すセンサとの相違点は、下部電極BBを省略した点だけである。前述したように、起歪体60は金属などの導電性材料によって構成することができるので、あえて下部電極BBを設けなくても、起歪体60の少なくとも上面部分を導電性材料で構成しておけば、この起歪体60の上面部分を下部電極BBの代わりに用いることができる。
【0082】
§11. 作用部と固定部を逆にした実施例
これまでの説明では、圧電素子の周囲部13あるいは起歪体の周囲部63をセンサ筐体に固定し、圧電素子の中心部11あるいは起歪体の中心部61を錘りあるいは振動子として用いていた。別言すれば、周囲部を固定部として利用し、中心部を作用部として利用し、作用部の固定部に対する変位として、作用部に作用した力(加速度に基づく力およびコリオリ力)を検出し、作用部の固定部に対する変位として振動を発生させていた。しかしながら、逆に、中心部をセンサ筐体に固定して固定部として用い、周囲部を変位可能な作用部として用いることも可能である。特に、周囲部は中心部に比べて体積を大きく確保することが容易であるため、周囲部を作用部(錘り/振動子)として利用すると、錘りや振動子としての質量を大きく確保することができ、感度の高いセンサを実現することができる。
【0083】
§12. 電極配置を45°回転させた実施例
これまで述べてきた実施例では、X軸に関して線対称な一対の上部電極を用いて、X軸方向への励振やX軸方向に作用した力検出を行い、Y軸に関して線対称な一対の上部電極を用いて、Y軸方向への励振やY軸方向に作用した力検出を行っていた。ここで述べる実施例は、XY座標系における第1象限〜第4象限のそれぞれに第1の上部電極〜第4の上部電極を配置し、X軸方向への励振やX軸方向に作用した力検出を行う場合にも、また、Y軸方向への励振やY軸方向に作用した力検出を行う場合にも、この4枚の上部電極を用いるものである。
【0084】
この実施例に係るセンサの上面図を図32に示す。このセンサと、図10に示した基本的実施例のセンサとの相違は、上部電極の配置だけである。この図32に示す電極配置を、図10に示す基本的実施例の電極配置と比較すると、この実施例の電極配置の特徴が明確になる。この図32に示す実施例では、XY座標系における第1象限の位置に第1の上部電極A31が、第2象限の位置に第2の上部電極A32が、第3象限の位置に第3の上部電極A33が、第4象限の位置に第4の上部電極A34が、それぞれ配置されている。なお、第5の上部電極A35については、基本的実施例と同様に、原点を取り囲む位置に配されている。結局、この図32に示す実施例の電極配置は、図10に示す基本的実施例の電極配置を45°回転させたものに他ならない。もっとも、XYZ三次元座標系における各軸の向きは、概念上定義されたものであって、圧電素子10や各上部電極自体に各軸方向を示す何らかの物理的な指標があるわけではないので、機械的な構造という意味では、図32に示すセンサは、図10に示すセンサと全く同じである。ただ、各座標軸の向きが45°ずれて定義されているため、センサの動作手法は若干異なったものとなる。
【0085】
すなわち、図32に示すセンサにおいて、振動子/錘りとして機能する中心部をX軸方向に振動させるには、上部電極A32,A33に所定の交流信号を与え、上部電極A31,A34に位相が逆の別な交流信号を与えればよい。また、Y軸方向に振動させるには、上部電極A31,A32に所定の交流信号を与え、上部電極A33,A34に位相が逆の別な交流信号を与えればよい。このように、X軸方向に励振する場合も、Y軸方向に励振する場合も、4枚の上部電極A31〜A34のすべてが用いられることになるので、振動エネルギーを効率良く供給することが可能になる。なお、Z軸方向に振動させる場合は、図10に示す基本的実施例のセンサと同様に、上部電極A35に交流信号を供給することになる。
【0086】
続いて、図32に示すセンサにおける各軸方向の力検出の手法を説明する。まず、振動子/錘りとして機能する中心部に作用したX軸方向の力fxを検出する方法を示そう。圧電素子10は、図13に示すタイプ▲1▼の分極特性を有するので、X軸方向の力fxが加わると、上部電極A32,A33には正の電荷が発生し、上部電極A31,A34には負の電荷が発生する。したがって、上部電極A32,A33に発生した電荷の和と、上部電極A31,A34に発生した電荷の和と、を求め、これらの絶対値の和(すなわち差)を求めれば、X軸方向の力fxが検出できる。また、Y軸方向の力fyが加わると、上部電極A33,A34には正の電荷が発生し、上部電極A31,A32には負の電荷が発生する。したがって、上部電極A33,A34に発生した電荷の和と、上部電極A31,A32に発生した電荷の和と、を求め、これらの絶対値の和(すなわち差)を求めれば、Y軸方向の力fyが検出できる。なお、Z軸方向の力fzについては、図10に示す基本的実施例のセンサと同様に、上部電極A35に発生した電荷によって検出することができる。
【0087】
結局、図32に示すセンサを用いて各軸方向に作用した力を検出するには、図33に示す検出回路を用意しておけばよい。X軸方向の力fxは、端子Txxxにおいて、電圧(V2+V3)と電圧(V1+V4)との差として検出され、Y軸方向の力fyは、端子Tyyyにおいて、電圧(V3+V4)と電圧(V1+V2)との差として検出され、Z軸方向の力fzは、端子Tzzzにおいて、電圧(V5)として検出されることになる。このように、X軸方向の力fxを検出する場合も、Y軸方向の力fyを検出する場合も、4枚の上部電極A31〜A34のすべてが用いられることになるので、作用した力を効率良く検出することが可能になり、図10に示した基本的実施例に比べて、検出感度を向上させることができる。
【0088】
以上、本発明をいくつかの実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、この他にも種々の態様で実施可能である。たとえば、上述の実施例ではいずれも物理的に単一の下部電極を用いているが、同じ機能を果たす複数枚の下部電極を用いてもかまわない。もちろん、これまでに述べたいくつかの実施例を相互に組み合わせれば、用途に適した種々の形態のセンサを実現することができる。
【0089】
【発明の効果】
以上のとおり本発明に係るセンサによれば、板状構造体を利用して変位可能な作用部を形成し、この作用部を振動させる手段と、この作用部に作用する力を検出する手段とを設けるようにしたため、単純で、小形化、量産性に適した構造をもちながら、加速度と角速度との双方を検出することができる。特に、圧電素子により板状構造体を構成し、この圧電素子の上面に5枚の上部電極を配置し、下面に下部電極を配置し、必要に応じてこれらの電極間に交流電圧を印加し、作用した加速度やコリオリ力をこれらの電極に発生した電荷として検出するようにすれば、より量産性に適したセンサが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来提案されているコリオリ力を利用した一次元角速度センサの基本原理を示す斜視図である。
【図2】角速度センサにおける検出対象となるXYZ三次元座標系における各軸まわりの角速度を示す図である。
【図3】本発明に係るセンサを用いてX軸まわりの角速度ωxを検出する基本原理を説明する図である。
【図4】本発明に係るセンサを用いてY軸まわりの角速度ωyを検出する基本原理を説明する図である。
【図5】本発明に係るセンサを用いてZ軸まわりの角速度ωzを検出する基本原理を説明する図である。
【図6】本発明に係るセンサにおける角速度検出を行う構成要素を示すブロック図である。
【図7】本発明に係るセンサにおける加速度検出を行う構成要素を示すブロック図である。
【図8】本発明の基本的実施例に係るセンサを斜め上方から見た斜視図である。
【図9】図8に示すセンサを斜め下方から見た斜視図である。
【図10】図8に示すセンサの上面図である。
【図11】図8に示すセンサをXZ平面で切断した側断面図である。
【図12】図8に示すセンサの下面図である。
【図13】図8に示すセンサにおける圧電素子10の分極特性を示す図である。
【図14】図8に示すセンサの重心Pに対してX軸方向の変位Dxを誘起した状態を示す側断面図である。
【図15】図8に示すセンサの重心Pに対してZ軸方向の変位Dzを誘起した状態を示す側断面図である。
【図16】図8に示すセンサの重心Pに対してX軸方向の力fxが作用した状態を示す側断面図である。
【図17】図8に示すセンサの重心Pに対してZ軸方向の力fzが作用した状態を示す側断面図である。
【図18】図8に示すセンサに、加速度に基づく各軸方向の力fx,fy,fzが作用したときの各上部電極A1〜A5に発生する電荷の極性を示す表である。
【図19】図8に示すセンサに用いる検出回路の一例を示す回路図である。
【図20】本発明に係るセンサを用いてX軸まわりの角速度ωxを検出する別な基本原理を説明する図である。
【図21】本発明に係るセンサを用いてY軸まわりの角速度ωyを検出する別な基本原理を説明する図である。
【図22】本発明に係るセンサを用いてZ軸まわりの角速度ωzを検出する別な基本原理を説明する図である。
【図23】圧電素子10とは別な圧電素子20の分極特性を示す図である。
【図24】局在的な分極特性をもった圧電素子25を利用した実施例に係るセンサの上面図である。
【図25】図24に示すセンサに、加速度に基づく各軸方向の力fx,fy,fzが作用したときの各上部電極A1〜A5に発生する電荷の極性を示す表である。
【図26】図24に示すセンサに用いる検出回路の一例を示す回路図である。
【図27】図24に示すセンサに用いる励振回路の一例を示す回路図である。
【図28】図8に示すセンサにおいて、上部電極の配置を内外入れ替えた実施例に係るセンサの上面図である。
【図29】図28に示すセンサの側断面図である。
【図30】圧電素子の他に起歪体を用いた実施例に係るセンサの側断面図である。
【図31】導電性の起歪体の上面を下部電極として利用した実施例に係るセンサの側断面図である。
【図32】電極配置を45°回転させた実施例に係るセンサの上面図である。
【図33】図32に示すセンサに用いる検出回路の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
10…圧電素子
11…中心部
12…可撓部
13…周囲部
15…環状溝
20…圧電素子
25…局在的な分極処理を施した圧電素子
31〜38…Q/V変換回路
41,42…演算器
50…交流電源
60…起歪体
61…中心部
62…可撓部
63…周囲部
65…環状溝
70…圧電素子
71…開口部
110…振動子
111,112…圧電素子
120…物体
130…振動子
141…X軸方向励振手段
142…Y軸方向励振手段
143…Z軸方向励振手段
151…X軸方向力検出手段
152…Y軸方向力検出手段
153…Z軸方向力検出手段
A,A1〜A5,A11〜A15,A21〜A25,A31〜A35…上部電極
B,BB…下部電極
O…原点
P…重心
Tx,Ty,Tz,Txx,Tyy,Tzz,Txxx,Tyyy,Tzzz…出力端子

Claims (15)

  1. XYZ三次元座標系における所定の座標軸方向の加速度成分および所定の座標軸まわりの角速度成分を検出するための加速度・角速度センサであって、
    上面のほぼ中心位置に前記XYZ三次元座標系の原点を定義したときに、前記上面がXY平面に沿って延び、前記原点の周囲を取り囲むように可撓性をもった可撓部が形成され、この可撓部に囲まれた部分である中心部と、この可撓部の周囲の部分である周囲部とは、前記可撓部の撓みにより相互に変位を生じるように構成された板状構造体を有し、
    前記中心部および前記周囲部のいずれか一方は固定部としてセンサ筐体に固定され、他方は作用部として各座標軸方向に加えられた力により変位可能な状態に支持され、
    前記作用部を所定方向に振動させる励振手段と、前記作用部に加えられた所定方向の力を検出する力検出手段と、
    を更に備え、
    所定軸方向の加速度検出を行うときには、この所定軸方向についての前記力検出手段による検出値を用い、
    所定軸まわりの角速度検出を行うときには、前記励振手段により、この所定軸に直交する方向に前記作用部を振動させた状態において、この所定軸方向および振動方向の双方に直交する第3の方向についての前記力検出手段による検出値を用いることを特徴とする加速度・角速度センサ。
  2. 請求項1に記載の加速度・角速度センサにおいて、
    励振手段が、一対の電極間に所定の交流電圧を印加することにより、作用部を振動させることを特徴とする加速度・角速度センサ。
  3. 請求項1または2に記載の加速度・角速度センサにおいて、
    力検出手段が、一対の電極の相互間の変位に起因して前記一対の電極間に生じる電気信号を検出することにより、作用部に加えられた力を検出することを特徴とする加速度・角速度センサ。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の加速度・角速度センサにお いて、
    板状構造体として機能する板状の圧電素子と、この圧電素子の上面に形成された5枚の上部電極と、この圧電素子の下面において前記各上部電極のそれぞれに対して向かい合う位置に形成された下部電極と、を備え、前記圧電素子の上面のほぼ中心位置に前記XYZ三次元座標系の原点を定義したときに、
    前記圧電素子は、その上面がXY平面に沿って延び、前記原点の周囲を取り囲むように可撓性をもった可撓部が形成され、この可撓部に囲まれた部分である中心部と、この可撓部の周囲の部分である周囲部とは、前記可撓部の撓みにより相互に変位を生じるように構成され、
    前記中心部および前記周囲部のいずれか一方は固定部としてセンサ筐体に固定され、他方は作用部として各座標軸方向に加えられた力により変位可能な状態に支持され、
    前記5枚の上部電極は、X軸に関して負の領域に形成されかつX軸に関して線対称な形状をもった第1の上部電極と、X軸に関して正の領域に形成されかつX軸に関して線対称な形状をもった第2の上部電極と、Y軸に関して負の領域に形成されかつY軸に関して線対称な形状をもった第3の上部電極と、Y軸に関して正の領域に形成されかつY軸に関して線対称な形状をもった第4の上部電極と、前記原点の周囲を取り囲む領域に形成された第5の上部電極と、によって構成され、これらの各上部電極の少なくとも一部分は、いずれも前記可撓部に形成され、
    励振手段は、所定の上部電極と前記下部電極との間に所定の交流電圧を印加することにより、前記作用部を所定方向に振動させる機能を有し、
    力検出手段は、所定の上部電極に発生した電荷に基づいて、前記作用部に加えられた所定方向の力を検出する機能を有することを特徴とする圧電素子を用いた加速度・角速度センサ。
  5. 請求項に記載のセンサにおいて、
    板状の圧電素子の下面に、原点の周囲を取り囲むような環状溝を形成し、この環状溝の形成部分の肉厚が他の部分の肉厚よりも薄くなるようにし、この肉厚の薄い部分を可撓部として用いるようにしたことを特徴とする圧電素子を用いた加速度・角速度センサ。
  6. XYZ三次元座標系における各座標軸方向の加速度成分および各座標軸まわりの角速度成分を検出するための加速度・角速度センサであって、
    板状の圧電素子と、この圧電素子の上面に形成された5枚の上部電極と、この圧電素子の下面において前記各上部電極のそれぞれに対して向かい合う位置に形成された下部電極と、この下部電極を下方から支持する板状の起歪体と、を備え、前記起歪体の上面のほぼ中心位置に前記XYZ三次元座標系の原点を定義したときに、
    前記起歪体は、その上面がXY平面に沿って延び、前記原点の周囲を取り囲むように可撓性をもった可撓部が形成され、この可撓部に囲まれた部分である中心部と、この可撓部の周囲の部分である周囲部とは、前記可撓部の撓みにより相互に変位を生じるように構成され、
    前記中心部および前記周囲部のいずれか一方は固定部としてセンサ筐体に固定され、他方は作用部として各座標軸方向に加えられた力により変位可能な状態に支持され、
    前記可撓部に撓みが生じると前記圧電素子にこの撓みが伝達し、逆に、前記圧電素子に撓みが生じると前記可撓部にこの撓みが伝達するように、前記圧電素子の板面が前記起歪体の板面にほぼ平行になるような状態で、前記起歪体の上面と前記下部電極の下面とが固着され、
    前記5枚の上部電極は、X軸に関して負の領域に形成されかつX軸に関して線対称な形状をもった第1の上部電極と、X軸に関して正の領域に形成されかつX軸に関して線対称な形状をもった第2の上部電極と、Y軸に関して負の領域に形成されかつY軸に関して線対称な形状をもった第3の上部電極と、Y軸に関して正の領域に形成されかつY軸に関して線対称な形状をもった第4の上部電極と、前記原点の周囲を取り囲む領域に形成された第5の上部電極と、によって構成され、これらの各上部電極の少なくとも一部分は、いずれも前記可撓部の上方位置に形成され、
    所定の上部電極と前記下部電極との間に所定の交流電圧を印加することにより、前記作用部を所定方向に振動させる励振手段と、
    所定の上部電極に発生した電荷に基づいて、前記作用部に加えられた所定方向の力を検出する力検出手段と、
    を更に備え、
    所定軸方向の加速度検出を行うときには、この所定軸方向についての前記力検出手段による検出値を用い、
    所定軸まわりの角速度検出を行うときには、前記励振手段により、この所定軸に直交する方向に前記作用部を振動させた状態において、この所定軸方向および振動方向の双方に直交する第3の方向についての前記力検出手段による検出値を用いることを特徴とする圧電素子を用いた加速度・角速度センサ。
  7. XYZ三次元座標系における各座標軸方向の加速度成分および各座標軸まわりの角速度成分を検出するための加速度・角速度センサであって、
    板状の圧電素子と、この圧電素子の上面に形成された5枚の上部電極と、この圧電素子を下方から支持する板状の起歪体と、を備え、前記起歪体の少なくとも上面部分は導電性の材料から構成され、この上面部分によって、前記各上部電極のそれぞれに対して向かい合う下部電極が構成され、前記起歪体の上面のほぼ中心位置に前記XYZ三次元座標系の原点を定義したときに、
    前記起歪体は、その上面がXY平面に沿って延び、前記原点の周囲を取り囲むように可撓性をもった可撓部が形成され、この可撓部に囲まれた部分である中心部と、この可撓部の周囲の部分である周囲部とは、前記可撓部の撓みにより相互に変位を生じるように構成され、
    前記中心部および前記周囲部のいずれか一方は固定部としてセンサ筐体に固定され、他方は作用部として各座標軸方向に加えられた力により変位可能な状態に支持され、
    前記可撓部に撓みが生じると前記圧電素子にこの撓みが伝達し、逆に、前記圧電素子に撓みが生じると前記可撓部にこの撓みが伝達するように、前記圧電素子の板面が前記起歪体の板面にほぼ平行になるような状態で、前記起歪体の上面と前記圧電素子の下面とが固着され、
    前記5枚の上部電極は、X軸に関して負の領域に形成されかつX軸に関して線対称な形状をもった第1の上部電極と、X軸に関して正の領域に形成されかつX軸に関して線対称な形状をもった第2の上部電極と、Y軸に関して負の領域に形成されかつY軸に関して線対称な形状をもった第3の上部電極と、Y軸に関して正の領域に形成されかつY軸に関して線対称な形状をもった第4の上部電極と、前記原点の周囲を取り囲む領域に形成された第5の上部電極と、によって構成され、これらの各上部電極の少なくとも一部分は、いずれも前記可撓部の上方位置に形成され、
    所定の上部電極と前記下部電極との間に所定の交流電圧を印加することにより、前記作用部を所定方向に振動させる励振手段と、
    所定の上部電極に発生した電荷に基づいて、前記作用部に加えられた所定方向の力を検出する力検出手段と、
    を更に備え、
    所定軸方向の加速度検出を行うときには、この所定軸方向についての前記力検出手段による検出値を用い、
    所定軸まわりの角速度検出を行うときには、前記励振手段により、この所定軸に直交する方向に前記作用部を振動させた状態において、この所定軸方向および振動方向の双方に直交する第3の方向についての前記力検出手段による検出値を用いることを特徴とする圧電素子を用いた加速度・角速度センサ。
  8. 請求項6または7に記載のセンサにおいて、
    板状の起歪体の下面に、原点の周囲を取り囲むような環状溝を形成し、この環状溝の形成部分の肉厚が他の部分の肉厚よりも薄くなるようにし、この肉厚の薄い部分を可撓部として用いるようにしたことを特徴とする圧電素子を用いた加速度・角速度センサ。
  9. 請求項4〜8のいずれかに記載のセンサにおいて、
    XY平面上に、原点を周囲から囲むような内側環状領域と、この内側環状領域を更に周囲から囲むような外側環状領域と、を定義し、
    第1の上部電極を、前記外側環状領域内の、XY座標系の第2象限および第3象限に渡る領域に配置し、
    第2の上部電極を、前記外側環状領域内の、XY座標系の第1象限および第4象限に渡る領域に配置し、
    第3の上部電極を、前記外側環状領域内の、XY座標系の第3象限および第4象限に渡る領域に配置し、
    第4の上部電極を、前記外側環状領域内の、XY座標系の第1象限および第2象限に渡る領域に配置し、
    第5の上部電極を、前記内側環状領域内に配置したことを特徴とする圧電素子を用いた加速度・角速度センサ。
  10. 請求項4〜8のいずれかに記載のセンサにおいて、
    XY平面上に、原点を周囲から囲むような内側環状領域と、この内側環状領域を更に周囲から囲むような外側環状領域と、を定義し、
    第1の上部電極を、前記内側環状領域内の、XY座標系の第2象限および第3象限に渡る領域に配置し、
    第2の上部電極を、前記内側環状領域内の、XY座標系の第1象限および第4象限に渡る領域に配置し、
    第3の上部電極を、前記内側環状領域内の、XY座標系の第3象限および第4象限に渡る領域に配置し、
    第4の上部電極を、前記内側環状領域内の、XY座標系の第1象限および第2象限に渡る領域に配置し、
    第5の上部電極を、前記外側環状領域内に配置したことを特徴とする圧電素子を用いた加速度・角速度センサ。
  11. 請求項4〜10のいずれかに記載のセンサにおいて、
    第1の上部電極が形成された圧電素子の部分と、第2の上部電極が形成された圧電素子の部分とでは、逆の分極特性が得られるように、
    第3の上部電極が形成された圧電素子の部分と、第4の上部電極が形成された圧電素子の部分とでは、逆の分極特性が得られるように、
    圧電素子の各部分に対して所定の分極処理を行うようにしたことを特徴とする圧電素子を用いた加速度・角速度センサ。
  12. 請求項4〜11のいずれかに記載のセンサにおいて、
    第1の上部電極と下部電極との間および第2の上部電極と下部電極との間に交流電圧を印加することにより、作用部をX軸方向に振動させるX軸方向励振手段と、
    第3の上部電極と下部電極との間および第4の上部電極と下部電極との間に交流電圧を印加することにより、作用部をY軸方向に振動させるY軸方向励振手段と、
    第5の上部電極と下部電極との間に交流電圧を印加することにより、作用部をZ軸方向に振動させるZ軸方向励振手段と、
    の3つの励振手段を備え、
    第1の上部電極に発生した電荷および第2の上部電極に発生した電荷に基づいて、作用部に加えられたX軸方向の力を検出するX軸方向力検出手段と、
    第3の上部電極に発生した電荷および第4の上部電極に発生した電荷に基づいて、作用部に加えられたY軸方向の力を検出するY軸方向力検出手段と、
    第5の上部電極に発生した電荷に基づいて、作用部に加えられたZ軸方向の力を検出するZ軸方向力検出手段と、
    の3つの力検出手段を備えることを特徴とする圧電素子を用いた加速度・角速度センサ。
  13. XYZ三次元座標系における各座標軸方向の加速度成分および各座標軸まわりの角速度成分を検出するための加速度・角速度センサであって、
    板状の圧電素子と、この圧電素子の上面に形成された5枚の上部電極と、この圧電素子の下面において前記各上部電極のそれぞれに対して向かい合う位置に形成された下部電極と、を備え、前記圧電素子の上面のほぼ中心位置に前記XYZ三次元座標系の原点を定義したときに、
    前記圧電素子は、その上面がXY平面に沿って延び、前記原点の周囲を取り囲むように可撓性をもった可撓部が形成され、この可撓部に囲まれた部分である中心部と、この可撓部の周囲の部分である周囲部とは、前記可撓部の撓みにより相互に変位を生じるように構成され、
    前記中心部および前記周囲部のいずれか一方は固定部としてセンサ筐体に固定され、他方は作用部として各座標軸方向に加えられた力により変位可能な状態に支持され、
    前記5枚の上部電極は、XY座標系の第1象限に配置された第1の上部電極と、第2象限に配置された第2の上部電極と、第3象限に配置された第3の上部電極と、第4象限に配置された第4の上部電極と、前記原点の周囲を取り囲む領域に配置された第5の上部電極と、によって構成され、これらの各上部電極の少なくとも一部分は、いずれも前記可撓部に形成され、
    所定の上部電極と前記下部電極との間に所定の交流電圧を印加する励振手段と、
    所定の上部電極に発生した電荷に基づいて、前記作用部に加えられた所定方向の力を検出する力検出手段と、
    を更に備え、
    所定軸方向の加速度検出を行うときには、この所定軸方向についての前記力検出手段による検出値を用い、
    所定軸まわりの角速度検出を行うときには、前記励振手段により、この所定軸に直交する直交軸に作用部を振動させた状態において、この所定軸および前記直交軸の双方に直交する第3の軸についての前記力検出手段による検出値を用いることを特徴とする圧電素子を用いた加速度・角速度センサ。
  14. XYZ三次元座標系における各座標軸方向の加速度成分および各座標軸まわりの角速度成分を検出するための加速度・角速度センサであって、
    板状の圧電素子と、この圧電素子の上面に形成された5枚の上部電極と、この圧電素子の下面において前記各上部電極のそれぞれに対して向かい合う位置に形成された下部電極と、この下部電極を下方から支持する板状の起歪体と、を備え、前記起歪体の上面のほぼ中心位置に前記XYZ三次元座標系の原点を定義したときに、
    前記起歪体は、その上面がXY平面に沿って延び、前記原点の周囲を取り囲むように可撓性をもった可撓部が形成され、この可撓部に囲まれた部分である中心部と、この可撓部の周囲の部分である周囲部とは、前記可撓部の撓みにより相互に変位を生じるように構成され、
    前記中心部および前記周囲部のいずれか一方は固定部としてセンサ筐体に固定され、他方は作用部として各座標軸方向に加えられた力により変位可能な状態に支持され、
    前記可撓部に撓みが生じると前記圧電素子にこの撓みが伝達し、逆に、前記圧電素子に撓みが生じると前記可撓部にこの撓みが伝達するように、前記圧電素子の板面が前記起歪体の板面にほぼ平行になるような状態で、前記起歪体の上面と前記下部電極の下面とが固着され、
    前記5枚の上部電極は、XY座標系の第1象限に配置された第1の上部電極と、第2象限に配置された第2の上部電極と、第3象限に配置された第3の上部電極と、第4象限に配置された第4の上部電極と、前記原点の周囲を取り囲む領域に配置された第5の上部電極と、によって構成され、これらの各上部電極の少なくとも一部分は、いずれも前記可撓部の上方位置に形成され、
    所定の上部電極と前記下部電極との間に所定の交流電圧を印加する励振手段と、
    所定の上部電極に発生した電荷に基づいて、前記作用部に加えられた所定方向の力を検出する力検出手段と、
    を更に備え、
    所定軸方向の加速度検出を行うときには、この所定軸方向についての前記力検出手段による検出値を用い、
    所定軸まわりの角速度検出を行うときには、前記励振手段により、この所定軸に直交する直交軸に作用部を振動させた状態において、この所定軸および前記直交軸の双方に直交する第3の軸についての前記力検出手段による検出値を用いることを特徴とする圧電素子を用いた加速度・角速度センサ。
  15. XYZ三次元座標系における各座標軸方向の加速度成分および各座標軸まわりの角速度成分を検出するための加速度・角速度センサであって、
    板状の圧電素子と、この圧電素子の上面に形成された5枚の上部電極と、この圧電素子を下方から支持する板状の起歪体と、を備え、前記起歪体の少なくとも上面部分は導電性の材料から構成され、この上面部分によって、前記各上部電極のそれぞれに対して向かい合う下部電極が構成され、前記起歪体の上面のほぼ中心位置に前記XYZ三次元座標系の原点を定義したときに、
    前記起歪体は、その上面がXY平面に沿って延び、前記原点の周囲を取り囲むように可撓性をもった可撓部が形成され、この可撓部に囲まれた部分である中心部と、この可撓部の周囲の部分である周囲部とは、前記可撓部の撓みにより相互に変位を生じるように構成され、
    前記中心部および前記周囲部のいずれか一方は固定部としてセンサ筐体に固定され、他方は作用部として各座標軸方向に加えられた力により変位可能な状態に支持され、
    前記可撓部に撓みが生じると前記圧電素子にこの撓みが伝達し、逆に、前記圧電素子に撓みが生じると前記可撓部にこの撓みが伝達するように、前記圧電素子の板面が前記起歪体の板面にほぼ平行になるような状態で、前記起歪体の上面と前記圧電素子の下面とが固着され、
    前記5枚の上部電極は、XY座標系の第1象限に配置された第1の上部電極と、第2象限に配置された第2の上部電極と、第3象限に配置された第3の上部電極と、第4象限に配置された第4の上部電極と、前記原点の周囲を取り囲む領域に配置された第5の上部電極と、によって構成され、これらの各上部電極の少なくとも一部分は、いずれも前記可撓部の上方位置に形成され、
    所定の上部電極と前記下部電極との間に所定の交流電圧を印加する励振手段と、
    所定の上部電極に発生した電荷に基づいて、前記作用部に加えられた所定方向の力を検出する力検出手段と、
    を更に備え、
    所定軸方向の加速度検出を行うときには、この所定軸方向についての前記力検出手段による検出値を用い、
    所定軸まわりの角速度検出を行うときには、前記励振手段により、この所定軸に直交する直交軸に作用部を振動させた状態において、この所定軸および前記直交軸の双方に直交する第3の軸についての前記力検出手段による検出値を用いることを特徴とする圧電素子を用いた加速度・角速度センサ。
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