JPH0949856A - 加速度センサ - Google Patents

加速度センサ

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JPH0949856A
JPH0949856A JP8044120A JP4412096A JPH0949856A JP H0949856 A JPH0949856 A JP H0949856A JP 8044120 A JP8044120 A JP 8044120A JP 4412096 A JP4412096 A JP 4412096A JP H0949856 A JPH0949856 A JP H0949856A
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annular
substrate
acceleration sensor
central
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JP8044120A
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Kazuhiro Okada
和廣 岡田
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Wako KK
Original Assignee
Wako KK
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    • G01P2015/084Measuring acceleration; Measuring deceleration; Measuring shock, i.e. sudden change of acceleration by making use of inertia forces using solid seismic masses with conversion into electric or magnetic values being provided with a particular type of spring-mass-system for defining the displacement of a seismic mass due to an external acceleration for defining out-of-plane movement of the mass the mass being suspended at more than one of its sides, e.g. membrane-type suspension, so as to permit multi-axis movement of the mass

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 所定の一平面に含まれる方向を向いた加速度
の大きさを電気信号として検出する。 【解決手段】 固定基板10と変位基板20とが平行に
設置される。固定基板10は円筒状の筐体内に固着さ
れ、変位基板20はその周囲を支持手段30によって円
筒状の筐体内に弾性支持される。変位基板20の上面に
は、環状変位電極E21と中央部変位電極E22とが形
成され、下面には重錘体40が固着される。固定基板1
0の下面には、E21,E22に対向した環状固定電極
および中央部固定電極が形成されており、対向配置され
た一対の電極により、環状容量素子C1および中央部容
量素子C2が形成される。地震等の振動により、重錘体
40が揺れ、変位基板20は固定基板10に対して変位
する。環状容量素子C1の静電容量値の変動により横揺
れの大きさが検出でき、中央部容量素子C2の静電容量
値の変動により縦揺れの大きさが検出できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は加速度センサ、特
に、地震や自動車の衝突に基く加速度を検出するのに適
した加速度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】物体の運動を把握する上で、加速度の検
出は重要な意味をもつ。このため、従来から種々の加速
度センサが提案されている。特に、最近では、二次元あ
るいは三次元の加速度を各方向成分ごとに検出すること
が可能な多次元加速度センサが注目を集めている。たと
えば、特許協力条約に基く国際公開公報第WO88/0
8522号には、ピエゾ抵抗素子を用いた三次元加速度
センサが開示されている。このセンサでは、複数のピエ
ゾ抵抗素子を半導体基板上の特定の位置に形成すること
により、XYZ三次元座標系における各座標軸方向の加
速度成分をそれぞれ独立して検出することができる。ま
た、国際公開公報第WO91/10118号や同第WO
92/17759号公報には、静電容量素子を用いた三
次元加速度センサが開示されており、国際公開公報第W
O93/02342号公報には、圧電素子を用いた三次
元加速度センサが開示されている。これらのセンサで
は、複数の電極を特定の位置に形成することにより、や
はりXYZ三次元座標系における各座標軸方向の加速度
成分をそれぞれ独立して検出することができる。
【0003】このような三次元加速度センサでは、単一
のセンサによって、作用した加速度の各座標軸方向成分
のすべてをそれぞれ独立して検出することができるた
め、検出対象となる加速度を三次元空間内でのベクトル
量として特定することができる。したがって、このよう
な三次元加速度センサは、三次元空間内を移動中の物
体、走行中の車両、飛行中の航空機、などに作用する加
速度を、その方向を含めて正確に検出する用途に広く利
用可能であり、今後も、その利用価値は高まってゆくも
のと期待されている。
【0004】一方、加速度センサは、地震計や衝撃計と
しても利用可能である。たとえば、都市ガスの制御弁や
エレベータの制御装置には、地震計として機能する加速
度センサが内蔵されており、地震の振動に基く加速度が
所定のしきい値を越えた場合には、ガスの供給を停止さ
せたり、エレベータの運転を中止させたりする制御が行
われている。また、最近急速に普及し始めたエアバッグ
付きの自動車では、衝撃計として機能する加速度センサ
が搭載されており、衝撃に基く加速度が所定のしきい値
を越えた場合には、エアバッグを瞬時に膨らませてドラ
イバーを保護する機能が働くようなしくみになってい
る。ただ、このような地震計や衝撃計として現在のとこ
ろ用いられている加速度センサは、上述した三次元加速
度センサではなく、たとえば、鋼鉄球が椀状容器から飛
び出すか否かによって、しきい値以上の加速度が作用し
たか否かを判断するような機械式のセンサが主流であ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、地震
計や衝撃計として利用されている加速度センサは、現在
のところ機械式のものが主流であるが、このような機械
式の加速度センサは検出精度や信頼性が低く、また、検
出結果を電気的に取り出すことが困難であるという問題
がある。一方、ピエゾ抵抗素子、容量素子、圧電素子を
用いた三次元加速度センサは、高い検出精度および信頼
性をもち、かつ、電気的に検出結果を取り出すことが可
能である。しかしながら、地震計や衝撃計としての用途
では、必ずしもこのような三次元の加速度センサが必要
とされるものではなく、逆に、従来の三次元の加速度セ
ンサでは使いにくい場合さえある。
【0006】たとえば、地震の震度を測定する用途で
は、地震によるいわゆる「横揺れ(水平方向の振動)」
と「縦揺れ(垂直方向の振動)」とをそれぞれ独立して
検出する機能があれば十分である。このとき、「横揺
れ」の大きさおよび「縦揺れ」の大きさが直接的に検出
できることが望ましい。一般に、地震における「横揺
れ」はS波と呼ばれている振動波に起因する揺れであ
り、「縦揺れ」はP波と呼ばれている振動波に起因する
揺れであることが知られており、S波の大きさとP波の
大きさとをそれぞれ独立して検出することさえできれ
ば、地震計として十分に機能するのである。すなわち、
ある測定地点において、水平面上にXY平面を、鉛直方
向にZ軸を、それぞれ有するXYZ三次元座標系を定義
すれば、地震計としては、XY平面に沿った方向の振動
(横揺れ)の大きさとZ軸に沿った方向の振動(縦揺
れ)の大きさとが測定できれば十分である。
【0007】もちろん、従来提案されている三次元加速
度センサを用いても、このような測定は可能である。従
来の三次元加速度センサを用いれば、たとえば、「北北
東の方向を向いた横揺れ」というように、同じ横揺れで
あっても、その方向までも特定した検出が可能になる。
しかしながら、都市ガスの供給制御やエレベータの運転
制御を行う上では、横揺れの方位までも特定する必要は
ない。「北北東の方向を向いた横揺れ」であろうが、
「南東の方向を向いた横揺れ」であろうが、その横揺れ
の大きさが所定のしきい値以上であった場合には、都市
ガスの供給やエレベータの運転を停止する必要があり、
横揺れの大きささえ検出できれば、地震計に用いる加速
度センサとしての機能を十分に果たすことができる。ま
た、従来の三次元加速度センサでは、XYZ三次元座標
系における加速度について、X軸方向成分αx、Y軸方
向成分αy、Z軸方向成分αzが、それぞれ別個独立し
て検出されるため、たとえば、XY平面に沿った横揺れ
の大きさを得るには、αxとαyとの和を求め、こ
の和の平方根を求める演算が必要になる。
【0008】このように、従来の三次元加速度センサ
を、地震計として用いることは可能ではあるが、構造が
複雑で、また、地震計として利用するための演算回路な
どが必要になるため、全体的にコストが高くなるという
問題が生じる。特に、都市ガスの供給制御やエレベータ
の運転制御への利用を考えると、各家庭のガスメータや
各エレベータの制御装置内にそれぞれ設置する必要性が
あり、単純な構造をもった低コストの加速度センサが望
まれる。
【0009】このような事情は、自動車のエアバッグを
動作させるための衝撃計として用いる加速度センサにお
いても同様である。自動車の走行面をXY平面とすれ
ば、自動車の衝突によって生じる衝撃は、XY平面に沿
った加速度成分を主とするものであり、Z軸に沿った加
速度成分は無視してよい。また、正面衝突であろうが、
側面衝突であろうが、ドライバーを危険にさらす衝撃が
加わる点では同じであり、どのような方向の衝突であろ
うとも、エアバッグを膨らませてドライバーを保護する
必要があることに変わりはない。したがって、XY平面
に沿った方向の加速度の大きさが検出できれば十分であ
り、その方向までも正確に検出する必要はない。
【0010】そこで本発明は、所定の一平面に含まれる
方向を向いた加速度の大きさを電気信号として検出する
のに適した加速度センサを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、加速度センサにおいて、
センサ筐体と、このセンサ筐体に固着された固定基板
と、この固定基板の下方に所定距離をおいて、かつ固定
基板に対向するように配置された変位基板と、この変位
基板の周囲をセンサ筐体に対して弾力性をもって支持す
る支持手段と、変位基板に固着され、検出対象となる加
速度の作用により、支持手段に弾性変形を誘発させるの
に十分な質量をもった重錘体と、固定基板の下面に形成
され、環状形状をした環状固定電極と、変位基板の上面
に形成され、環状固定電極に対する対向電極として機能
する環状変位電極と、環状固定電極と環状変位電極とに
よって形成される環状容量素子の静電容量値の変動分V
1に基いて、固定基板の主面に平行な方向に作用する加
速度の大きさを示す電気信号を出力する検出回路と、を
設けたものである。
【0012】(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1
の態様に係る加速度センサにおいて、固定基板下面の環
状固定電極の内側領域内に配置された中央部固定電極
と、変位基板上面の環状変位電極の内側領域内に配置さ
れ、中央部固定電極に対する対向電極として機能する中
央部変位電極と、を更に設け、検出回路が、中央部固定
電極と中央部変位電極とによって形成される中央部容量
素子の静電容量値の変動分V2を用いて、環状容量素子
の静電容量値の変動分V1に対する補正を行い、補正後
の値に基いて、固定基板の主面に平行な方向に作用する
加速度の大きさを示す電気信号を出力するようにしたも
のである。
【0013】(3) 本発明の第3の態様は、上述の第2
の態様に係る加速度センサにおいて、検出回路が、更
に、中央部容量素子の静電容量値の変動分V2に基い
て、固定基板の主面に垂直な方向に作用する加速度の大
きさを示す電気信号を出力するようにしたものである。
【0014】(4) 本発明の第4の態様は、上述の第2
または第3の態様に係る加速度センサにおいて、環状固
定電極、環状変位電極、中央部固定電極、中央部変位電
極のそれぞれを、重錘体の重心を通り固定基板の主面に
対して垂直な中心軸に関してほぼ回転対称となるような
形状としたものである。
【0015】(5) 本発明の第5の態様は、上述の第2
〜4の態様に係る加速度センサにおいて、環状容量素子
を構成する一対の電極の電極間距離d1と、中央部容量
素子を構成する一対の電極の電極間距離d2と、が等し
くなるような構造とし、環状容量素子を構成する各電極
の面積S1と、中央部容量素子を構成する各電極の面積
S2と、を用いて、環状容量素子の静電容量値の変動分
V1に対して、 Vs = V1 − (S1/S2)・V2 なる補正演算を行うことによって得られる値Vsに基い
て、固定基板の主面に平行な方向に作用する加速度の大
きさを示す電気信号を出力するようにしたものである。
【0016】(6) 本発明の第6の態様は、上述の第2
〜4の態様に係る加速度センサにおいて、環状容量素子
を構成する一対の電極の電極間距離d1と、中央部容量
素子を構成する一対の電極の電極間距離d2と、環状容
量素子を構成する各電極の面積S1と、中央部容量素子
を構成する各電極の面積S2と、の間に、 S1 / (d1) = S2 / (d2) なる関係が成り立つ構造とし、環状容量素子の静電容量
値の変動分V1に対して、 Cs = V1 − V2 なる補正演算を行うことによって得られる値Vsに基い
て、固定基板の主面に平行な方向に作用する加速度の大
きさを示す電気信号を出力するようにしたものである。
【0017】(7) 本発明の第7の態様は、上述の第6
の態様に係る加速度センサにおいて、環状容量素子を構
成する一対の電極の電極間距離d1と、中央部容量素子
を構成する一対の電極の電極間距離d2と、が等しくな
り、かつ、環状容量素子を構成する各電極の面積S1
と、中央部容量素子を構成する各電極の面積S2と、が
等しくなるような構造としたものである。
【0018】(8) 本発明の第8の態様は、上述の第2
〜4の態様に係る加速度センサにおいて、検出回路が、
環状容量素子の静電容量値の変動分V1に対して所定の
定数K11を乗じて(K11・V1)を得る回路および
所定の定数K21を乗じて(K21・V1)を得る回路
と、中央部容量素子の静電容量値の変動分V2に対して
所定の定数K12を乗じて(K12・V2)を得る回路
および所定の定数K22を乗じて(K22・V2)を得
る回路と、(K11・V1)−(K12・V2)なる演
算を行って値Vsを得る回路と、(K21・V1)−
(K22・V2)なる演算を行って値Vpを得る回路
と、を有し、値Vsに基いて、固定基板の主面に平行な
方向に作用する加速度の大きさを示す電気信号を出力
し、値Vpに基いて、固定基板の主面に垂直な方向に作
用する加速度の大きさを示す電気信号を出力するように
したものである。
【0019】(9) 本発明の第9の態様は、上述の第2
または第3の態様に係る加速度センサにおいて、環状固
定電極および環状変位電極を、重錘体の重心を通り固定
基板の主面に対して垂直な中心軸に関して非回転対称と
なるような環状形状としたものである。
【0020】(10) 本発明の第10の態様は、上述の第
2〜9の態様に係る加速度センサにおいて、環状変位電
極および中央部変位電極を物理的に単一の共通電極によ
って構成したものである。
【0021】(11) 本発明の第11の態様は、上述の第
10の態様に係る加速度センサにおいて、変位基板を導
電性材料によって構成し、この変位基板の一部を単一の
共通電極として用いるようにしたものである。
【0022】(12) 本発明の第12の態様は、上述の
第2〜9の態様に係る加速度センサにおいて、環状固定
電極および中央部固定電極を物理的に単一の共通電極に
よって構成したものである。
【0023】(13) 本発明の第13の態様は、上述の第
12の態様に係る加速度センサにおいて、固定基板を導
電性材料によって構成し、この固定基板の一部を単一の
共通電極として用いたものである。
【0024】(14) 本発明の第14の態様は、上述の第
1〜13の態様に係る加速度センサにおいて、可撓性基
板に複数のスリットを形成することによりダイヤフラム
を構成し、このダイヤフラムを変位基板および支持手段
として用いるようにしたものである。
【0025】(15) 本発明の第15の態様は、上述の第
14の態様に係る加速度センサにおいて、可撓性基板の
中心点を取り囲む環状線に沿って形成された複数のスリ
ットと、可撓性基板の中心点から外方へ向かう放射線に
沿って形成された複数のスリットと、を設け、スリット
相互の間隙部分によって、ダイヤフラムの各部が物理的
に接続されるような構造とし、ダイヤフラムの周囲部分
をセンサ筐体に固着し、スリット相互の間隙部分の弾性
変形に基いて、ダイヤフラムの中央部分に変位が生じる
構造としたものである。
【0026】(16) 本発明の第16の態様は、上述の第
14または第15の態様に係る加速度センサにおいて、
可撓性基板を、その主面を含む平面内で所定角θ°回転
させたときに、スリットのパターンが、回転前のパター
ンにほぼ一致するように、各スリットを形成するように
したものである。
【0027】
【発明の実施の形態】本発明に係る加速度センサでは、
筐体内に固定基板と変位基板とが設けられ、固定基板側
には環状固定電極が、変位基板側には環状変位電極が、
それぞれ形成される。両環状電極は、互いに対向するよ
うに配置され、環状容量素子が形成される。変位基板の
周囲は支持手段によって弾性支持されており、力を加え
ることにより、変位基板は固定基板に対して傾斜した
り、平行移動したりして変位可能である。変位基板には
重錘体が固着されており、センサ筐体全体に加速度が作
用すると、この加速度に基く力が重錘体に作用し、支持
手段に弾性変形が生じることになる。その結果、変位基
板は固定基板に対して変位する。
【0028】いま、固定基板の主面に対して平行な方向
(横方向)の加速度が作用したとすると、変位基板が固
定基板に対して傾斜することになり、環状容量素子の静
電容量値に変化が生じる。よって、この静電容量値の変
化に基いて、作用した加速度の大きさを検出することが
できる。ここで、各環状電極を、中心軸に関してほぼ回
転対称となる形状にしておけば、この静電容量値の変化
現象は、固定基板の主面に平行なあらゆる方向について
等価な現象となる。したがって、固定基板の主面に平行
などのような方向の加速度が作用したとしても、その大
きさを等しく検出することが可能になる。また、各環状
電極を意図的に非回転対称となる形状にしておけば、固
定基板の主面に平行な方向によって検出感度が異なる加
速度センサが実現できる。
【0029】ただ、固定基板の主面に対して垂直な方向
(縦方向)の加速度が作用した場合、両環状電極間の距
離が変化するため、この場合にも環状容量素子の静電容
量値に変化が生じることになる。したがって、縦方向の
加速度も作用する可能性のある環境下で、横方向の加速
度のみを正確に検出するためには、得られた静電容量値
の変化から、縦方向の加速度に基く変化分を除去する補
正を行う必要がある。そのために、環状固定電極の内側
領域内に中央部固定電極が設けられ、環状変位電極の内
側領域内に中央部変位電極が設けられる。これら一対の
電極により、中央部容量素子が形成される。縦方向の加
速度が作用すると、固定基板と変位基板との間の距離に
変化が生じるため、中央部容量素子の静電容量値がこの
距離変化に応じて変化することになる。したがって、中
央部容量素子の静電容量値の変動分に基いて、環状容量
素子の静電容量値に対する補正を行えば、縦方向の加速
度成分を含まない横方向の加速度成分のみの出力が可能
になる。もちろん、中央部容量素子の静電容量値の変動
分を縦方向の加速度成分として出力すれば、縦横両方向
の加速度検出が可能になる。
【0030】なお、各電極は、必ずしもそれぞれが物理
的に独立した電極である必要はないので、たとえば、環
状変位電極および中央部変位電極を物理的に単一の共通
電極によって構成したり、あるいは、環状固定電極およ
び中央部固定電極を物理的に単一の共通電極によって構
成したりすれば、構造を単純化することができる。更
に、変位基板あるいは固定基板を導線性材料から構成す
れば、これらの基板の一部を共通電極として利用するこ
とができ、構造を更に単純化することができる。
【0031】なお、変位基板および支持手段として、複
数のスリットが形成されたダイヤフラムを用いると、構
造を単純化し製造コストを低減させることができる。特
に、中心点を取り囲む環状線に沿って形成された複数の
スリットと、中心点から外方へ向かう放射線に沿って形
成された複数のスリットと、を設けることにより、ダイ
ヤフラムの撓みに関する方向性を均一化することが可能
になり、横方向のあらゆる加速度をほぼ均等に検出する
ことができるようになる。また、スリットのパターン
が、所定角θ°回転させたパターンにほぼ一致するよう
にしても、ダイヤフラムの撓みに関する方向性を均一化
することが可能になり、横方向のあらゆる加速度をほぼ
均等に検出することができるようになる。
【0032】
【実施例】以下、本発明を図示する実施例に基いて説明
する。
【0033】§1. 本発明の基本的な実施例の構造 図1に、本発明の基本的な実施例に係る加速度センサの
主要部分の斜視図を示し、図2には、その側断面図を示
す。図1に示されているように、この加速度センサは、
円盤状の固定基板10と、同じく円盤状の変位基板20
とを有し、変位基板20の周囲には支持手段30が取り
付けられている。また、変位基板20の下面には、円柱
状の重錘体40が固着されている。これらの構成要素
は、いずれも円筒状のセンサ筐体50(図1には示され
ていない)内に収容されている。図2の側断面図は、こ
れらの構成要素を重錘体40の重心Gを通る中心軸Wを
含む平面で切断した断面を示すものである。この図2で
は、図1では示されていないセンサ筐体50も示されて
いる。図2を参照すればわかるように、固定基板10の
周囲は、センサ筐体50の内側に嵌合固着されている。
別言すれば、円盤状の固定基板10の周囲は、その全周
にわたって、円筒状のセンサ筐体50の内側に固着され
ていることになる。一方、変位基板20は、その周囲に
取り付けられた支持手段30によって、センサ筐体50
の内側に支持されている。支持手段30は、変位基板2
0の周囲をセンサ筐体50に対して弾力性をもって支持
する機能を有する。この基本的な実施例では、支持手段
30として8本のばねを用いた例を示したが、実用上
は、後述するように、スリットを有するダイヤフラムな
どを用いて、変位基板20および支持手段30を構成す
るのが好ましい。
【0034】このセンサ筐体50に対して加速度が作用
していない状態においては、図2に示すように、固定基
板10と変位基板20とは、互いに所定距離をおいてほ
ぼ平行な状態を保っている。ところが、センサ筐体50
に対して加速度が作用すると、重錘体40の重心Gに加
速度に基く力が作用し、この力により支持手段30が弾
性変形し、変位基板20は固定基板10に対して変位す
るようになる。たとえば、この加速度センサを所定の地
震観測地点に設置しておけば、地震が発生したときに、
地震観測地点の振動に基いて重錘体40に対して加速度
が作用し、変位基板20が固定基板10に対して変位す
るような振動が生じることになる。もちろん、重錘体4
0は、検出対象となる加速度の作用により、支持手段3
0に弾性変形を誘発させるのに十分な質量をもっていな
ければならない。この加速度センサの感度は、支持手段
30の弾性係数と重錘体40の質量とを適当に選択する
ことにより調整可能である。
【0035】なお、説明の便宜上、ここでは図1の左下
に示したようなXYZ三次元座標系を定義する。固定基
板10および変位基板20の主面は、いずれもこの座標
系におけるXY平面に平行な面になる。また、ここで
は、図2に示すように、重錘体40の重心Gを通りZ軸
に平行な中心軸Wを定義しておく。この実施例では、固
定基板10、変位基板20、重錘体40、センサ筐体5
0は、いずれもこの中心軸Wに関して回転対称体となっ
ている。理想的には、支持手段30も中心軸Wに関して
回転対称となるような構造を採るのが好ましいが、この
実施例では、8本のばねによって支持手段30を形成
し、できるだけ回転対称に近い挙動が得られるようにし
ている。
【0036】さて、この加速度センサにおいて重要な点
は、固定基板10の下面および変位基板20の上面に、
それぞれ電極が形成されている点である。図3に固定基
板10の下面図を、図4に変位基板20の上面図をそれ
ぞれ示す。図3に示されているように、固定基板10の
下面には、環状固定電極E11および中央部固定電極E
12が形成されている。また、図4に示されているよう
に、変位基板20の上面には、環状変位電極E21およ
び中央部変位電極E22が形成されている。環状固定電
極E11および環状変位電極E21は、いずれも円環状
(いわゆるワッシャ状、ドーナツ状)の電極であり、図
2に示す中心軸Wに関して回転対称となる形状を有し、
回転対称となる位置に配置されている。一方、中央部固
定電極E12および中央部変位電極E22は、いずれも
円盤状の電極であり、やはり図2に示す中心軸Wに関し
て回転対称となる形状を有し、回転対称となる位置に配
置されている。環状固定電極E11と環状変位電極E2
1とは同一形状をしており、互いに対向する位置に配置
されており、これら一対の電極により容量素子が形成さ
れている。ここでは、この容量素子を、環状容量素子C
1と呼ぶことにする。一方、中央部固定電極E12と中
央部変位電極E22とは同一形状をしており、互いに対
向する位置に配置されており、これら一対の電極により
容量素子が形成されている。ここでは、この容量素子
を、中央部容量素子C2と呼ぶことにする。
【0037】なお、図3および図4において、各電極の
部分にハッチングを施して示してあるが、これは電極の
形状を把握しやすくするための配慮であり、断面を示す
ためのハッチングではない。これは他の図においても同
様であり、本願における平面図において電極部分に施さ
れたハッチングは、いずれも断面を示すためのものでは
ない。
【0038】また、この基本的な実施例に示す構造をも
った加速度センサを構成する各部分の材質については、
これまで特に述べなかったが、少なくとも各電極E1
1,E12,E21,E22は、金属などの導電性材料
によって構成する必要がある。また、固定基板10、変
位基板20は、導電性材料で構成してもよいし、絶縁性
材料で構成してもよいが、導電性材料で構成する場合に
は、その上に形成される2つの電極が短絡しないよう
に、基板と電極との間に絶縁膜を形成する必要がある。
もっとも、§6で述べる共通電極を構成する場合は、そ
の必要はない。
【0039】§2. 本発明の基本的な実施例の横揺れ
検出動作 続いて、§1で述べた実施例の検出動作について説明す
る。本発明に係る加速度センサの特徴は、「横揺れ」と
「縦揺れ」とを区別して検出できる点にある。ここで、
「横揺れ」とは、XYZ三次元座標系におけるXY平面
に沿った方向への振動を意味し、「縦揺れ」とは、Z軸
に沿った方向への振動を意味するものとする。一般に、
地震における「横揺れ」はS波に基く振動であり、「縦
揺れ」はP波に基く振動であることが知られており、地
震計では、これら両波に基く振動をそれぞれ独立して検
出できることが望ましい。ここでは、まず、S波に基く
振動、すなわち「横揺れ」の検出動作を説明しよう。§
1で述べた実施例では、環状固定電極E11と環状変位
電極E21とによって構成される環状容量素子C1の静
電容量値に基いて、「横揺れ」の振幅が検出される。
【0040】いま、図2に示すような構造をもった加速
度センサを、所定の地震観測地点に設置したものとす
る。このとき、この地震観測地点がX軸方向に振動した
としよう。このような振動は、S波に基く「横揺れ」の
振動である。観測地点がX軸の正負両方向に往復振動す
ると、重錘体40は、センサ筐体50内でX軸方向に揺
すられる。すなわち、重錘体40には、X軸方向の加速
度αxが作用することになる。このため、質量mをもっ
た重錘体40の重心Gには、Fx=m・αxなる力が作
用することになる。前述したように、このような力の作
用によって、支持手段30は弾性変形を生じ、変位基板
20は固定基板10に対して傾斜する。図5の側断面図
は、X軸正方向に力Fxが作用したときの変位基板20
の傾斜の様子を示すものである。もちろん、地震による
「横揺れ」の振動は、X軸正方向への加速度とX軸負方
向への加速度とを交互に生じさせるので、重錘体40に
対しては、X軸正方向への力FxとX軸負方向への力−
Fxとが交互に加えられることになり、図5は、そのよ
うな振動における瞬時の状態を示すものである。
【0041】さて、図5に示すように変位基板20が傾
斜したときに、環状容量素子C1の静電容量値がどのよ
うに変化するか考えてみる。一般に、容量素子の静電容
量値Cは、 C = ε (S/d) で表される。ここで、εは、容量素子を形成する両電極
間に存在する媒体(この実施例では空気)の誘電率であ
り、Sは電極の面積、dは電極間距離である。変位基板
20が図2に示すような状態から、図5に示すような状
態に変化すると、環状容量素子C1については、電極間
距離dに関して大きな変化が生じる。すなわち、図5に
おいて、右側の半分については電極間距離dが小さくな
り、左側の半分については電極間距離dが大きくなる。
なお、電極自体が傾斜するため、電極の実効面積にも若
干の変化が生じるが、電極間距離の変化に比べて微小で
あるため、ここでは電極の面積変化については無視する
ことにする。
【0042】図6は、このような電極間距離dの変化の
分布を示すための変位基板20の上面図である。Y軸に
沿って描かれた一点鎖線を境界線として、図の右側半分
では電極間距離dが小さくなり、図の左側半分では電極
間距離dが大きくなる。したがって、上述した静電容量
値Cの式を考慮すれば、図の右側半分では静電容量値は
増加し、図の左側半分では静電容量値は減少することに
なる。ところで、環状変位電極E21は中心軸Wに関し
て回転対称形(この実施例では、中心軸Wを中心とした
円環状)をしているので、当然、図の一点鎖線に関して
環状変位電極E21は線対称になる。したがって、図の
右側半分で静電容量値が増加しても、図の左側半分では
静電容量値が減少するので、環状容量素子C1全体の静
電容量値の変化は左右で相殺され、図2に示す状態と図
5に示す状態とでは、環状容量素子C1の静電容量値に
差は生じないようにみえる。しかしながら、実際には、
この2つの状態では、環状容量素子C1の静電容量値に
差が生じるのである。その理由を以下に述べる。
【0043】いま、図6に示すように、環状変位電極E
21の右側半分に微小領域Qaを定義し、左側半分に微
小領域Qbを定義する。ここで、微小領域Qaと微小領
域Qbとは、Y軸(一点鎖線)に関して線対称の位置に
存在し、同一形状、同一面積Sqをもっているものとす
る。そして、これら微小領域Qa,Qbと、これらに対
向する環状固定電極E11内の微小領域とによって形成
される容量素子Ca,Cbの静電容量値がどうなるかを
考える。
【0044】まず、固定基板10と変位基板20とが、
図2に示すように、互いに平行な状態にあったとしよ
う。このとき、環状固定電極E11と環状変位電極E2
1との距離をd0とすれば、容量素子Caの静電容量値
Ca(0)および容量素子Cbの静電容量値Cb(0)
は、 Ca(0)=Cb(0)= ε (Sq/d0) となり、両者は等しくなる。次に、図5に示すように、
X軸正方向の力Fxが重錘体40に作用したために、変
位基板20が固定基板10に対して傾斜し、その結果、
微小領域Qaと環状固定電極E11との距離がΔdだけ
短くなり、微小領域Qbと環状固定電極E11との距離
がΔdだけ長くなったとする。この場合、容量素子Ca
の静電容量値Ca(+x)は、電極間距離の差Δdに対
応するΔCaだけ増加したものになる。一方、容量素子
Cbの静電容量値Cb(+x)は、電極間距離の差Δd
に対応するΔCbだけ減少したものになる。すなわち、
容量素子Caの静電容量値はΔCaだけ増加するのに対
し、容量素子Cbの静電容量値はΔCbだけ減少するの
で、両者の増減分は相殺され、容量素子Caと容量素子
Cbとの合計静電容量値には変化がないようにみえる。
【0045】しかしながら、このような考え方は誤りで
ある。なぜなら、静電容量値の変化分であるΔCaとΔ
Cbとは、等しくならないからである。これは、図7の
グラフをみれば容易に理解できる。前述したように、容
量素子を構成する電極対の電極間距離dと静電容量値C
との間には反比例の関係が成り立ち、両者間の関係をグ
ラフにすると、たとえば、図7のグラフのようになる。
ここで、図2に示すように、両基板が互いに平行な状態
にあったとすると、容量素子Ca,Cbの電極間距離は
いずれもd0と等しくなり、容量素子Ca,Cbの静電
容量値Ca(0),Cb(0)は等しくなる。ところ
が、図5に示すように、X軸正方向の力Fxが重錘体4
0に作用したために、変位基板20が固定基板10に対
して傾斜すると、容量素子Caの電極間隔はd0−Δd
と小さくなり、その結果、静電容量値はΔCaだけ増加
したCa(+x)となる。一方、容量素子Cbの電極間
隔はd0+Δdと大きくなり、その結果、静電容量値は
ΔCbだけ減少したCb(+x)となる。ここで、両容
量素子Ca,Cbにおいて、電極間隔の変化分Δdは等
しいにもかかわらず、静電容量値の変化分ΔCa,ΔC
bは等しくならない点は重要である。
【0046】結局、図2に示す状態から図5に示す状態
に変化した場合、右側の微小領域Qaによって構成され
る容量素子Caの静電容量値はΔCaだけ増加し、左側
の微小領域Qbによって構成される容量素子Cbの静電
容量値はΔCbだけ減少するが、ΔCaとΔCbとは等
しくならず(ΔCa>ΔCb)、両容量素子のトータル
の静電容量値に着目すれば、図2に示す状態から図5に
示す状態に変化することにより、静電容量値が(ΔCa
−ΔCb)の分だけ増加することになる。
【0047】これまで、図6に示す右側半分の微小領域
Qaの静電容量値と左側半分の微小領域Qbの静電容量
値とについて議論してきたが、このような現象が、環状
変位電極E21の右側半分の全領域と左側半分の全領域
とについても同様に生じていることを考慮すれば、環状
変位電極E21と環状固定電極E11とによって構成さ
れる環状容量素子C1全体の静電容量値は、図2に示す
状態に比べて、図5に示す状態の方が増加することが理
解できるであろう。
【0048】以上、図5に示すように、重錘体40に対
してX軸正方向の力Fxが作用した瞬間の状態について
検討したが、逆に、重錘体40に対してX軸負方向の力
−Fxが作用した瞬間の状態についても同様の現象が生
じる。すなわち、X軸負方向の力−Fxが作用した場合
は、図5に示す状態とは左右が逆の状態になり、環状容
量素子C1の左側半分における静電容量値はΣΔCaだ
け増加し、右側半分における静電容量値はΣΔCbだけ
減少する(Σは各微小領域についての変動分の和を意味
する)。したがって、環状容量素子C1全体の静電容量
値は、図2に示す状態に比べて、やはり増加することに
なる。
【0049】結局、環状固定電極E11と環状変位電極
E21とによって構成される環状容量素子C1の静電容
量値の変化分が、X軸方向に作用した加速度±αx、別
言すれば、X軸方向に作用した力±Fxの大きさを示す
ものになる。したがって、この環状容量素子C1の静電
容量値を、センサ出力として電気的に取り出せば、X軸
方向に作用した加速度±αxの大きさを電気信号として
出力する加速度センサが実現できる。図8は、作用した
加速度とセンサ出力との関係を示すグラフである。地震
によって、X軸方向に関する横揺れが生じた場合、X軸
方向の加速度αxは、図8の上段のグラフに示すよう
に、正負の値を交互にとる。これに対して、センサ出力
(すなわち、環状容量素子C1の静電容量値)は、加速
度αxがX軸の正方向に作用しても、負方向に作用して
も、いずれにしても基準値R(加速度が全く作用してい
ない状態の出力値)から増加することになるので、図8
の下段のグラフに示すようなものになる。そこで、環状
容量素子C1の静電容量値を電圧として出力できるよう
な変換回路を用意し、環状容量素子C1の静電容量値の
変動幅を電圧として出力できるような検出回路を構成し
ておけば、この検出回路の出力電圧をそのままX軸方向
に作用した加速度±αxの絶対値として利用することが
できる。また、図8の下段に示すようなセンサ出力を平
滑化すれば、振動の平均的な値を得ることができるし、
このセンサ出力を積分すれば、振動の累積エネルギー値
を得ることもできる。
【0050】ところで、これまでX軸方向の加速度±α
xが作用した場合について、この加速度センサの動作を
説明してきたが、このような検出動作は、X軸方向の加
速度±αxについてのみ行われるものではない。前述し
たように、固定基板10、変位基板20、環状固定電極
E11、環状変位電極E21は、いずれも中心軸Wに関
して回転対称形をしているため、Y軸方向の加速度±α
yが作用した場合にも、全く同様の検出動作によって、
この加速度の絶対値を検出することができる。もちろ
ん、X軸やY軸に限定されるわけではなく、XY平面に
含まれる任意の方向に関する加速度が作用した場合につ
いて、全く同様の検出が行われることになる。別言すれ
ば、この加速度センサはXY平面上の360°のいずれ
の方向の加速度に対しても同じ感度で検出が可能であ
り、XY平面に関しては指向性を有しない。これは地震
計や衝撃計として用いるには理想的な性質である。
【0051】たとえば、この加速度センサを、XY平面
が水平面に一致するように地震観測地点に設置しておけ
ば、この地震観測地点におけるあらゆる方向の横揺れの
大きさを、環状容量素子C1の静電容量値に基いて検出
することが可能になる。また、この加速度センサを、X
Y平面が走行面に一致するように車両に搭載しておけ
ば、この車両に対して走行面に沿った方向に加わるあら
ゆる衝撃の大きさを、環状容量素子C1の静電容量値に
基いて検出することが可能になる。
【0052】従来の三次元加速度センサでは、横揺れに
関してその方向までも特定することができたが、既に述
べたように、都市ガスの供給制御やエレベータの運転制
御を行う上では、所定のしきい値以上の横揺れが発生し
たか否かが検出できる加速度センサがあれば十分であ
り、また、自動車におけるエアバッグの作動制御を行う
上では、所定のしきい値以上の衝撃が正面、背面、側面
から加わったか否かが検出できる加速度センサがあれば
十分である。本発明に係る加速度センサは、このような
条件を十分に満たしており、しかも、その検出出力は、
環状容量素子C1の静電容量値として直接的に得ること
ができ、非常に単純な構成で必要十分な加速度検出が可
能である。
【0053】§3. 本発明の基本的な実施例の縦揺れ
検出動作 上述した基本的な実施例の加速度センサは、「横揺れ」
だけではなく「縦揺れ」をも検出する機能がある。既に
述べたように、地震計として利用する場合には、S波に
基く「横揺れ」とP波に基く「縦揺れ」とをそれぞれ独
立して検出できることが望ましい。ここでは、このP波
に基く「縦揺れ」の検出動作を説明しよう。この実施例
では、中央部固定電極E12と中央部変位電極E22と
によって構成される中央部容量素子C2の静電容量値に
基いて、「縦揺れ」の振幅が検出される。
【0054】いま、図2に示すような構造をもった加速
度センサを、所定の地震観測地点に設置したとき、この
地震観測地点がZ軸方向に振動したとしよう。このよう
な振動は、P波に基く「縦揺れ」の振動である。観測地
点がZ軸の正負両方向に往復振動すると、重錘体40
は、センサ筐体50内でZ軸方向に揺すられる。すなわ
ち、重錘体40には、Z軸方向の加速度αzが作用する
ことになる。このため、質量mをもった重錘体40の重
心Gには、Fz=m・αzなる力が作用することにな
る。前述したように、このような力の作用によって、支
持手段30は弾性変形を生じ、変位基板20は固定基板
10に対して変位する。図9の側断面図は、Z軸正方向
に力Fzが作用したときの変位基板20の変位の様子を
示すものである。もちろん、地震による「縦揺れ」の振
動は、Z軸正方向への加速度とZ軸負方向への加速度と
を交互に生じさせるので、重錘体40に対しては、Z軸
正方向への力FzとZ軸負方向への力−Fzとが交互に
加えられることになり、図9は、そのような振動におけ
る瞬時の状態を示すものである。
【0055】さて、図9に示すように変位基板20が変
位したときに、中央部固定電極E12と中央部変位電極
E22とによって構成される中央部容量素子C2の静電
容量値がどのように変化するか考えてみる。図2に示す
ような状態から、図9に示すような状態に変化すると、
中央部容量素子C2については、電極間距離dが小さく
なるので、静電容量値C2は大きくなる。逆に、重錘体
40に対して、Z軸負方向の力−Fzが作用した場合に
は、重錘体40は図の下方へと変位し、中央部容量素子
C2の電極間距離dが大きくなるので、静電容量値C2
は小さくなる。したがって、地震による「縦揺れ」の振
動が伝わると、重錘体40は図9における図の上下方向
に振動し、中央部容量素子C2の電極間距離dは、小さ
くなったり大きくなったり周期的に変化し、中央部容量
素子C2の静電容量値は、大きくなったり小さくなった
り周期的に変化する。この変化の振幅は、「縦揺れ」の
振動の振幅を示すものになる。
【0056】結局、中央部固定電極E12と中央部変位
電極E22とによって構成される中央部容量素子C2の
静電容量値の変動分が、Z軸方向に作用した加速度±α
z、別言すれば、Z軸方向に作用した力±Fzの大きさ
を示すものになる。したがって、この中央部容量素子C
2の静電容量値を、センサ出力として電気的に取り出せ
ば、Z軸方向に作用した加速度±αzの大きさ、すなわ
ち「縦揺れ」の大きさを電気信号として出力する加速度
センサが実現できる。このセンサ出力を平滑化すれば、
振動の平均的な値を得ることができるし、このセンサ出
力を積分すれば、振動の累積エネルギー値を得ることも
できる。
【0057】§4. 本発明の基本的な実施例における
補正 これまで、本発明の基本的な実施例に係る加速度センサ
について、§1ではその構造を、§2では横揺れ検出動
作を、§3では縦揺れ検出動作を、それぞれ説明した。
そして、これまでの説明では、環状固定電極E11と環
状変位電極E21とによって構成される環状容量素子C
1によって横揺れ検出動作を行い、中央部固定電極E1
2と中央部変位電極E22とによって構成される中央部
容量素子C2によって縦揺れ検出動作を行うことを述べ
た。しかしながら、理論的には、この逆の検出動作も可
能である。すなわち、中央部容量素子C2によって横揺
れ検出動作を行い、環状容量素子C1によって縦揺れ検
出動作を行うことも、理論的には可能である。ここで
は、まず、この逆の検出動作について触れておく。
【0058】まず、中央部容量素子C2によっても、横
揺れ検出動作を行うことが可能であることを示そう。た
とえば、重錘体40にX軸正方向の力Fxが作用した状
態では、変位基板20は図5に示すように傾斜する。こ
のとき、中央部固定電極E12と中央部変位電極E22
とによって構成される中央部容量素子C2の静電容量値
の変化について検討すると、やはり右側半分では電極間
距離が小さくなり静電容量値が増加し、左側半分では電
極間距離が大きくなるので静電容量値が減少する。しか
も、図7のグラフで示したように、静電容量値の増加分
は減少分よりも大きくなるため、中央部容量素子C2全
体としての静電容量値は、図2に示す状態よりも図5に
示す状態の方が大きくなるのである。別言すれば、中央
部容量素子C2は、環状容量素子C1と同様に、「横揺
れ」の振動を検出する機能を有していることになる。
【0059】しかしながら、このような「横揺れ」の振
動検出に関しては、中央部容量素子C2の検出感度は、
環状容量素子C1の検出感度に比べて非常に小さいもの
になる。なぜなら、図5を見ればわかるとおり、「横揺
れ」に基いて変位基板20が傾斜した場合、変位基板2
0の外側領域に配置されている環状容量素子C1の電極
間距離dの変動分Δdに比べて、変位基板20の内側領
域に配置されている中央部容量素子C2の電極間距離d
の変動分Δdは小さくなり、全体的な静電容量値の変化
も小さくなるためである。したがって、中央部容量素子
C2の静電容量値の変動分として得られるセンサ出力
は、「縦揺れ」の大きさを示す信号に、「横揺れ」の大
きさを示す信号が重畳されたものになるが、前者に比べ
て後者は非常に小さく、実用上は、このセンサ出力を
「縦揺れ」の大きさを示す信号として取り扱っても支障
は生じないのである。
【0060】次に、環状容量素子C1によっても、縦揺
れ検出動作を行うことが可能であることを示そう。たと
えば、重錘体40にZ軸正方向の力Fzが作用した状態
では、変位基板20は図9に示すように変位する。この
とき、環状固定電極E11と環状変位電極E21とによ
って構成される環状容量素子C1の静電容量値の変化に
ついて検討すると、やはり電極間距離dが小さくなるた
め、静電容量値は増加することになる。逆に、重錘体4
0にZ軸負方向の力−Fzが作用した状態では、変位基
板20は図9における図の下方に変位するので、環状容
量素子C1は、電極間距離dが大きくなるため、静電容
量値は減少することになる。したがって、環状容量素子
C1の静電容量値の変動分は、「縦揺れ」の大きさを示
すものになり、環状容量素子C1は、中央部容量素子C
2と同様に、「縦揺れ」の振動を検出する機能を有して
いることになる。
【0061】したがって、環状容量素子C1の静電容量
値の変化として得られるセンサ出力は、「横揺れ」の大
きさを示す信号に、「縦揺れ」の大きさを示す信号が重
畳されたものになる。ここで、前者に比べて後者が無視
できるほど小さくなれば、このセンサ出力を「横揺れ」
の大きさを示す信号として取り扱っても支障は生じない
のであるが、残念ながら、実際には、後者を無視するこ
とはできないのである。すなわち、図9に示すような変
位状態を考えればわかるように、「縦揺れ」に基いて生
じる変位基板20の変位量は、環状容量素子C1も中央
部容量素子C2も全く同じであり、中央部容量素子C2
において「縦揺れ」の大きさを示す信号が十分に得られ
たのと同様に、環状容量素子C1においても「縦揺れ」
の大きさを示す信号が十分に得られることになる。した
がって、環状容量素子C1の静電容量値の変動分として
得られるセンサ出力は、「横揺れ」の大きさを示す信号
と、「縦揺れ」の大きさを示す信号とを重畳したものと
なり、両者はともに無視できない信号になる。このた
め、環状容量素子C1の静電容量値の変動分として得ら
れるセンサ出力を、「横揺れ」の大きさを示す信号とし
て取り扱うためには、「縦揺れ」の大きさを示す信号分
を差し引く補正を行わねばならない。
【0062】このような事情から、§2で述べた横揺れ
検出動作は、実は、「縦揺れ」が存在しない環境下にお
いては、「横揺れ」の大きさを正しく検出することはで
きるが、「縦揺れ」が存在する環境下においては、正し
い検出を行うことができないことになる。これに対し
て、§3で述べた縦揺れ検出動作は、たとえ「横揺れ」
が存在する環境下においても、実用上は十分な精度で、
「縦揺れ」の大きさを検出することができる。したがっ
て、「縦揺れ」と「横揺れ」との両方が存在する環境下
において、本発明に係る加速度センサを用いる場合に
は、§2で述べた横揺れ検出動作に対する補正を行う必
要がある。以下に、その補正方法の一例を示す。
【0063】この補正の基本概念は非常に単純である。
すなわち、環状容量素子C1の静電容量値の変動分は、
「横揺れ」の振幅を示す成分と「縦揺れ」の振幅を示す
成分との和になる。一方、中央部容量素子C2の静電容
量値の変動分は、理論的には、「縦揺れ」の振幅を示す
成分と「横揺れ」の振幅を示す成分との和になるが、後
者は前者に比べて非常に小さいために無視することがで
き、実用上は、「縦揺れ」の振幅を示す成分のみとして
取り扱っても支障は生じない。そこで、環状容量素子C
1の静電容量値の変動分として検出された、「横揺れ」
の振幅を示す成分と「縦揺れ」の振幅を示す成分との和
から、中央部容量素子C2の静電容量値の変動分として
検出された「縦揺れ」の振幅を示す成分を差し引く補正
を行えば、「横揺れ」の振幅を示す成分のみを得ること
ができる。
【0064】図10は、このような基本概念に基いて、
補正演算を行う機能をもった検出回路の一例を示す回路
図である。この図10において、左端に示された可変容
量素子C1およびC2は、それぞれ環状容量素子C1お
よび中央部容量素子C2を示す等価回路である。また、
C/V変換回路61およびC/V変換回路62は、それ
ぞれ環状容量素子C1および中央部容量素子C2の静電
容量値を電圧値に変換する回路である。ここで、「縦揺
れ」および「横揺れ」がない状態、すなわち、加速度が
零の状態でのC/V変換回路61,62の出力電圧が0
ボルトになるようなキャリブレーションがなされている
ので、この出力電圧は、実際には静電容量値の変動分を
示すことになる。したがって、C/V変換回路61の出
力電圧V1は、環状容量素子C1の静電容量値の変動分
を示し、C/V変換回路62の出力電圧V2は、中央部
容量素子C2の静電容量値の変動分を示す。そして、上
述したように、出力電圧V1は、「横揺れ」の振幅を示
す成分と「縦揺れ」の振幅を示す成分との和であるのに
対し、出力電圧V2は、実用上は、「縦揺れ」の振幅を
示す成分として取り扱うことができる。
【0065】C/V変換回路62から出力された電圧V
2は、逓倍回路63によってk倍に増幅され、差動増幅
器64のマイナス側の入力端子に与えられる。ここで、
kは、環状固定電極E11(もしくは環状変位電極E2
1)の面積をS1、中央部固定電極E12(もしくは中
央部変位電極E22)の面積をS2としたときに、 k = S1/S2 で与えられる面積比の値である。一方、差動増幅器64
のプラス側の入力端子には、C/V変換回路61から出
力された電圧V1が与えられている。したがって、差動
増幅器64において、 Vs=V1−k・V2 なる演算が行われ、電圧Vsが出力端子T1に出力され
ることになる。また、逓倍回路63から出力された電圧
(k・V2)は、バッファ回路65を通して出力電圧V
pとして出力端子T2に出力されることになる。なお、
図10の回路では、逓倍回路63の出力信号kV2をバ
ッファ回路65の入力端子に与えているが、C/V変換
回路62の出力信号V2を直接バッファ回路65の入力
端子に与えてもよい。
【0066】こうして出力端子T2に出力された電圧V
pは、この加速度センサによって検出された「縦揺れ」
の大きさを示すものになり、地震計として用いた場合に
は、P波の大きさを示すものになる。これは、この電圧
Vpが、中央部容量素子C2の静電容量値の変動分に比
例した電圧になるためである。一方、出力端子T1に出
力された電圧Vsは、この加速度センサによって検出さ
れた「横揺れ」の大きさを示すものになり、地震計とし
て用いた場合には、S波の大きさを示すものになる。な
ぜなら、電圧V1は、この加速度センサによって検出さ
れた「横揺れ」の大きさを示す成分と「縦揺れ」の大き
さを示す成分との和であり、電圧(k・V2)は、この
加速度センサによって検出された「縦揺れ」の大きさを
示す成分であるので、電圧V1と電圧(k・V2)との
差として求まる電圧Vsは、「横揺れ」の大きさを示す
成分のみに対応した電圧になるためである。
【0067】なお、ここで、電圧V2に電極の面積比k
を乗じているのは、面積の違いによる検出感度を補正す
るためである。すなわち、図3および図4に示すよう
に、環状容量素子C1を構成する電極E11,E21
と、中央部容量素子C2を構成する電極E12,E22
とでは、互いに面積が異なる(図示の例では、前者>後
者)。したがって、図9に示す原理に基いて、「縦揺
れ」の大きさを検出した場合であっても、環状容量素子
C1による検出値と中央部容量素子C2による検出値と
の間には、面積比kに応じた差が生じることになる。す
なわち、電極面積がより大きい容量素子の方が、より大
きい検出電圧が得られることになる。そこで、逓倍回路
63によって、一方の検出値に面積比kを乗じることに
より、電極面積の差に基く検出感度の差を補正している
のである。なお、図10の回路では、C/V変換回路6
2の後段に逓倍回路63を設けて、電圧V2をk倍する
処理を行っているが、逆に、C/V変換回路61の後段
に逓倍回路63を設けて、電圧V1を(1/k)倍する
処理を行ってもかまわない。
【0068】§5. 補正をより単純化するための工夫 上述の§4では、図10に示す検出回路によって、「縦
揺れ」と「横揺れ」とが混在する環境下において、「横
揺れ」の大きさを正確に検出するための補正処理を行う
ことができることを説明した。ただ、この図10に示す
検出回路における逓倍回路63は、必ずしも必要なもの
ではなく、電極の構成を工夫することによって、この逓
倍回路63を省略することも可能である。すなわち、容
量素子の静電容量値Cが、 C = ε (S/d) で表されることを考慮すれば、環状容量素子C1を構成
する一対の電極の電極間距離d1と、中央部容量素子C
2を構成する一対の電極の電極間距離d2と、環状容量
素子C1を構成する各電極E11,E21の面積S1
と、中央部容量素子C2を構成する各電極E21,E2
2の面積S2と、の間に、 S1 / (d1) = S2 / (d2) なる関係が成り立つような電極構造を採れば、環状容量
素子C1と中央部容量素子C2との「縦揺れ」の検出感
度を等しくすることができるので、図10に示す検出回
路における逓倍回路63は省略することができる。
【0069】念のために、上式が導かれる根拠を示して
おけば、次のとおりである。いま、電極面積S,電極間
距離d、電極間の誘電率εをもった静電容量素子を考え
る。ここで、この静電容量素子の電極間距離dがΔdだ
け広がった場合、静電容量値は、次式で表されるΔCだ
け減少する。
【0070】 ΔC=ε(S/d)−ε(S/(d+Δd)) =εS(1/d)・(1−(1+Δd/d)−1) ここで、Δdがdに比べて十分小さいとすれば、 (1+Δd/d)−1 = (1−Δd/d) なる近似が成り立つので、結局、 ΔC=εS(1/d)・(1−(1−Δd/d)) =εS(1/d)・(Δd/d) =ε(S/d)・Δd となる。したがって、(S/d)の値が同一となるよ
うな複数の容量素子を用意すれば、電極間距離dがΔd
だけ変化しても、各容量素子の静電容量値の変化分ΔC
はほぼ同じになる。そこで、 S1 / (d1) = S2 / (d2) なる式を満足するような電極によって、環状容量素子C
1および中央部容量素子C2を構成すれば、「縦揺れ」
の検出感度を等しくすることができ、逓倍回路63を省
略することができる。
【0071】図11に側断面図を示す実施例は、上式を
満たすような電極構造をもった加速度センサの一例であ
る。すなわち、環状容量素子C1を構成する電極E1
1,E21の面積S1と、中央部容量素子C2を構成す
る各電極E21,E22の面積S2と、の間には、S1
>S2の関係があるが、環状容量素子C1を構成する電
極E11,E21の電極間距離d1と、中央部容量素子
C2を構成する各電極E21,E22の電極間距離d2
と、の間にも、d1>d2の関係が成り立つようにし、
両容量素子C1,C2の「縦揺れ」の検出感度が等しく
なるようにしているのである。
【0072】このように、両容量素子C1,C2につい
て電極間距離を変えるような構造を採る場合には、図1
1に示す例のように、変位基板20側の電極形成面に段
差を設けるか、あるいは逆に、固定基板10側の電極形
成面に段差を設ける必要がある。このような段差構造を
避けるには、環状容量素子C1を構成する各電極E1
1,E21の面積S1と、中央部容量素子C2を構成す
る各電極E21,E22の面積S2と、が等しくなるよ
うな構造にすればよい。たとえば、図12に上面図を示
すように、変位基板20の上面に面積の等しい環状変位
電極E23と中央部変位電極E24とを形成し、固定基
板10の下面にも、これに応じた対向電極を形成するよ
うにすれば、環状容量素子C1と中央部容量素子C2と
は、電極間距離も電極面積も等しくなり、「縦揺れ」の
検出感度は等しくなる。ただし、図12に示すように、
中央部変位電極E24の径をあまり大きくしすぎると、
中央部容量素子C2の静電容量値の変動分に含まれる
「横揺れ」の成分が無視できなくなるおそれがあるので
注意する必要がある。できるだけ効率的なかつ正確な加
速度検出を行うためには、各環状電極をできるだけ基板
の外周近傍に配置し、各中央部電極をできるだけ小さく
するのが望ましい。
【0073】§6. 共通電極を用いた実施例 以上、本発明を基本的な実施例に基いて説明したが、こ
こでは構造をより単純化するために、共通電極を用いた
実施例を説明しよう。上述した基本的な実施例では、図
3に示すように、固定基板10の下面にそれぞれ物理的
に独立した環状固定電極E11および中央部固定電極E
12を形成し、また、図4に示すように、変位基板20
の上面にそれぞれ物理的に独立した環状変位電極E21
および中央部変位電極E22を形成していた。すなわ
ち、物理的に独立した合計4枚の電極層が形成されてい
る。しかしながら、必ずしもこのように4枚の電極層を
形成する必要はない。
【0074】たとえば、図10に示す検出回路におい
て、図の左端に示す可変容量C1およびC2は、それぞ
れ環状容量素子C1および中央部容量素子C2に対応す
るものであるが、いずれも一方の電極は接地されてい
る。したがって、前述した原理に基いて加速度検出を行
う上では、固定基板10側に形成される2枚の電極E1
1,E12か、変位基板20側に形成される2枚の電極
E21,E22か、のいずれか一方は、物理的に単一の
共通電極としてもかまわない。この場合、共通電極側を
接地すれば、図10に示す検出回路を構成することが可
能である。たとえば、固定基板10側に形成される2枚
の電極E11,E12を共通電極とするには、環状固定
電極E11の外径と同じ直径をもった円盤状の共通電極
1枚を用意すれば、この共通電極1枚によって、2枚の
電極E11,E12と同等の機能を果たすことができ
る。同様に、変位基板20側に形成される2枚の電極E
21,E22を共通電極とするには、環状変位電極E2
1の外径と同じ直径をもった円盤状の共通電極1枚を用
意すれば、この共通電極1枚によって、2枚の電極E2
1,E22と同等の機能を果たすことができる。
【0075】このような共通電極を用いるようにすれ
ば、加速度センサ全体の構造をより単純化することがで
きるが、更に単純化を図るには、固定基板10もしくは
変位基板20の一部を共通電極として用いればよい。た
とえば、図3に示す固定基板10として、金属などの導
電性材料からなる基板を用いるようにすれば、環状固定
電極E11や中央部固定電極E12を形成する必要はな
くなる。このような導電性材料からなる1枚の固定基板
10を、図4に示す変位基板20に対向させれば、環状
変位電極E21に向かい合った固定基板10の一部分が
環状固定電極E11としての機能を果たし、中央部変位
電極E22に向かい合った固定基板10の一部分が中央
部固定電極E12としての機能を果たすことになる。
【0076】あるいは、逆に、図4に示す変位基板20
として、金属などの導電性材料からなる基板を用いるよ
うにすれば、環状変位電極E21や中央部変位電極E2
2を形成する必要はなくなる。このような導電性材料か
らなる1枚の変位基板20を、図3に示す固定基板10
に対向させれば、環状固定電極E11に向かい合った変
位基板20の一部分が環状変位電極E21としての機能
を果たし、中央部固定電極E12に向かい合った変位基
板20の一部分が中央部変位電極E22としての機能を
果たすことになる。実は、以下に述べる§7および§8
に示す実施例は、このタイプの実施例である。
【0077】§7. 本発明の実用的な実施例(その
1) これまで、§1において説明した基本的な実施例に係る
加速度センサについて、その動作や変形例を述べてき
た。この加速度センサでは、変位基板20の周囲が8本
のばねからなる支持手段30で支持されている。しかし
ながら、このような構造は、量産に適した実用的な加速
度センサを実現する上では、必ずしも最適なものではな
い。ここでは、可撓性基板に複数のスリットを形成する
ことによりダイヤフラムを構成し、このダイヤフラムを
変位基板20および支持手段30として用いたより実用
的な実施例を示す。
【0078】まず、図13に平面図を示すようなダイヤ
フラム120を用意する。このダイヤフラム120は、
円盤状の可撓性基板121(この実施例では薄い金属
板)に多数のスリット122を形成したものである。こ
の多数のスリットは、2つのグループに分類できる。第
1のグループに属するスリットは、中心点Oを取り囲む
円周状の環状線に沿って形成された円弧状のスリット1
22a,122bであり、第2のグループに属するスリ
ットは、中心点Oから外方へ向かう放射線に沿って形成
された直線状のスリット122c,122dである。そ
して、第1のグループに属するスリット122a,12
2bと、第2のグループに属するスリット122c,1
22dとは、その端部もしくは端部近傍において互いに
接続している。特に、図13に示す実施例では、円弧状
のスリットは中心点Oを取り囲む二重同心円に沿って配
された外側の円弧状スリット122aと内側の円弧状ス
リット122bによって構成されており、また、直線状
のスリットは平行に並んで配された2本のスリット12
2c,122dによって構成されている。
【0079】ダイヤフラム120上にこのようなパター
ンをもった多数のスリット122を形成すると、スリッ
ト相互の間隙部分によって、ダイヤフラム120の各部
が物理的に接続されるような構造になる。すなわち、ス
リットによって周囲すべてが包囲されるような閉領域部
分は決して存在せず、各部分はスリット相互の間隙部分
によって必ず他の部分に物理的に接続されていることに
なり、全体として、1枚の物理的なダイヤフラムの形態
を維持している。このダイヤフラム120の周囲部分を
固定し、中心点Oに力を作用させると、スリット相互の
間隙部分の弾性変形に基いて、中央部分に変位が生じる
ことになる。このようなダイヤフラム120は、本発明
において変位基板20と支持手段30との双方の機能を
果たすことになる。しかも、ダイヤフラム120は導電
性材料(金属板)から構成されているため、更に、この
ダイヤフラム120は、環状変位電極E21および中央
部変位電極E22を兼ねた共通電極としての機能も併せ
もつことになる。
【0080】このようなダイヤフラム120を用いて構
成した加速度センサの一実施例を、図14の側断面図に
示す。この実施例において、固定基板110は、絶縁性
の剛体からなる円盤状の基板であり、その下面には、環
状固定電極E111および中央部固定電極E112が形
成されている。図15は、この固定基板110の下面図
であり、環状固定電極E111および中央部固定電極E
112の形状が明瞭に示されている。ダイヤフラム12
0は、この固定基板110の下方に所定距離をおいて配
置され、その下面には、重錘体140が固着される。固
定基板110の周囲およびダイヤフラム120の周囲
は、いずれも円筒状のセンサ筐体150の内側に嵌合支
持されている。加速度が作用していない状態では、固定
基板110とダイヤフラム120とは平行に保たれてお
り、環状容量素子C1と中央部容量素子C2とが形成さ
れることになる。すなわち、ダイヤフラム120のう
ち、環状固定電極E111に対向する部分が環状変位電
極としての機能を果たし、これら両電極によって環状容
量素子C1が形成され、同様に、ダイヤフラム120の
うち、中央部固定電極E112に対向する部分が中央部
変位電極としての機能を果たし、これら両電極によって
中央部容量素子C2が形成されることになる。
【0081】この加速度センサの動作は、既に述べた基
本的実施例に係るセンサの動作と全く同様である。たと
えば、重錘体140の重心Gに対して、X軸正方向の力
Fxが作用すると、ダイヤフラム120は図16に示す
ように撓み、環状容量素子C1および中央部容量素子C
2の静電容量値に変化が生じ、この変化を利用して「横
揺れ」および「縦揺れ」が検出できる。すなわち、この
ダイヤフラム120において、内側の円弧状スリット1
22bによって囲まれた部分が、§1で述べた加速度セ
ンサにおける変位基板20としての機能と、環状変位電
極E21および中央部変位電極E22としての機能と、
を果たすことになり、その外側の部分が、支持手段30
としての機能を果たすことになる。なお、図16では、
図面が繁雑になるのを避けるため、ダイヤフラム120
の変形状態を単純化して描いたが、実際には、図13に
示すスリット122aとスリット122bとの間に位置
するビーム部分、およびスリット122cとスリット1
22dとの間に位置するビーム部分が、かなり複雑な変
形状態をとる。
【0082】このように、円弧状のスリット122a,
122bと直線状のスリット122c,122dとを組
み合わせて形成すると、非常に単純な構造ながら、本発
明に係る加速度センサの検出動作に適した変位が可能に
なり、また、比較的小さな加速度の作用によっても十分
な変位が可能になる。このため、安価で感度の高い加速
度センサを実現できる。
【0083】本発明に係る加速度センサにおいて、あら
ゆる方向についての「横揺れ」の検出感度を均一にする
ためには、理想的には、ダイヤフラム120の構造を中
心点Oに関して完全な回転対称形にするのが好ましい。
しかしながら、物理的なスリット122を形成する以
上、完全な回転対称形にすることはできない。そこで、
この実施例では、この可撓性基板121を、その主面を
含む平面内で90°回転させたときに、スリットのパタ
ーンが、回転前のパターンにほぼ一致するように、各ス
リット122が形成されている。このような構成を採る
ことにより、少なくとも、X軸方向の「横揺れ」が作用
したときの変位状態と、Y軸方向の「横揺れ」が作用し
たときの変位状態とが、ほぼ同じになる。これに対し、
X軸に対して45°の方向の「横揺れ」が作用したとき
の変位状態は、厳密に言えば、X軸方向の「横揺れ」が
作用したときの変位状態とは若干異なることになる。た
だ、実用上は、円弧状のスリット122a,122bが
形成されているため、中心点Oのまわり360°のいず
れの方向に関しても、ほぼ均等な変位が得られるものと
みて支障はなく、いずれの方向の「横揺れ」もほぼ均一
な感度で検出が可能である。
【0084】このような「横揺れ」感度の方向に関する
無指向性を確保するには、この可撓性基板121を、そ
の主面を含む平面内でθ°回転させたときに、スリット
のパターンが、回転前のパターンにほぼ一致するよう
に、各スリット122を形成するようにすればよく、無
指向性を高めるためには、θ(図13の例ではθ=90
°)をより小さくすればよい。
【0085】また、レーザー加工やエッチングなどの手
法を用いれば、100μm程度の幅をもったスリットを
形成することが可能であり、このような微細幅のスリッ
ト形成により、無指向性を更に向上させることができ
る。
【0086】§8. 本発明の実用的な実施例(その
2) 図17は、本発明の実用的な実施例の更に別な形態を示
す側断面図である。この加速度センサは、ガラス製の固
定基板210と、シリコン製の変位基板220と、ガラ
ス製の台座230と、同じくガラス製の重錘体240
と、シリコン製の底板基板250と、を有する。変位基
板220は、周囲に設けられた固定部221と、この固
定部221の内側に設けられた可撓部222と、この可
撓部222によって囲まれた作用部223と、の3つの
部分から構成されている。変位基板220の下面には、
下面から見ると方環状をした溝224が掘られており、
この溝224が形成されている部分は厚みが小さくなっ
ている。可撓部222は、この溝224の形成領域に相
当する部分であり、厚みが小さいために可撓性を有して
いる。しかも、この可撓部222には、多数のスリット
225が形成されている。
【0087】図18は、変位基板220の上面図であ
り、スリット225のパターンが明瞭に示されている。
この図18に示すスリット225のパターンは、図13
に示すスリット122のパターンと共通性をもってい
る。すなわち、中心点Oを取り囲む方環状線に沿って形
成された第1のグループに属するスリットと、中心点O
から外方へ向かう放射線に沿って形成された第2のグル
ープに属するスリットと、によって構成され、第1のグ
ループに属するスリットと、第2のグループに属するス
リットとは、その端部もしくは端部近傍において互いに
接続している。しかも、この変位基板220を、その主
面を含む平面内で90°回転させたときに、スリットの
パターンが、回転前のパターンにほぼ一致するように、
各スリット225が形成されている。
【0088】可撓部222は、溝224の形成により厚
みが小さくなった部分であり、しかも、図18に示すよ
うなスリット225が形成された部分であるため、十分
な可撓性を有することになる。作用部223は、周囲を
この可撓部222によって支持された部分であり、重錘
体240に作用した力が伝達される部分でもある。した
がって、重錘体240に加速度が作用すると、この加速
度に起因して生じた力が作用部223に伝達され、可撓
部222が弾性変形を生じることになる。
【0089】変位基板220の上面のうち、可撓部22
2および作用部223に相当する領域には、浅い溝が掘
られており、固定基板210の下面との間にわずかな空
間が形成されている。固定基板210の下面には、環状
固定電極E211および中央部固定電極E212が形成
されており、これらの電極に対して、空間を隔てて対向
している変位基板220の上面の一部分が、それぞれ環
状変位電極および中央部変位電極として機能することに
なり、環状容量素子C1および中央部容量素子C2が形
成される。
【0090】結局、この実施例に係る加速度センサにお
いては、作用部223および可撓部222が、§1で述
べた加速度センサの変位基板20としての機能を果た
し、可撓部222および固定部221が、§1で述べた
加速度センサの支持手段30としての機能を果たしてい
ることになる。なお、この加速度センサにおける重錘体
240は、周囲を台座230によって囲まれており、下
面には底板基板250が配置されているため、過度の加
速度が作用した場合であっても、重錘体240の過度の
変位は、台座230の内側面もしくは底板基板250の
上面との接触によって抑制される。このため、過度の加
速度の作用によって、重錘体240が過度の変位を生
じ、その結果、可撓部222に過度の応力が加わって損
傷が生じるのを防ぐことができる。
【0091】この図17に示す実施例は、量産に非常に
適した加速度センサである。各基板はガラスあるいはシ
リコンからなり、製造プロセスは、既存の半導体の製造
技術やマイクロマシニング技術を利用して行うことがで
きる。また、台座230と重錘体240とは、もともと
1枚の基板を切断することによって形成することが可能
である。それから、固定基板210の下面に形成される
電極は、たとえば、アルミニウムなどの金属を蒸着させ
る工程によって形成可能であり、各基板相互の接着は、
陽極接合などの技術を用いて行うことが可能である。ま
た、図10に示すような検出回路は、シリコンからなる
変位基板220あるいは底板基板250内に半導体回路
として形成することができるので、1チップ内に検出回
路までをも内蔵した加速度センサを実現することも可能
である。
【0092】§9. より厳密な補正 既に§4において説明したように、本発明に係る加速度
センサでは、図10に示すような回路を用いることによ
り、出力端子T1に「横揺れ」を示す電圧Vsが得ら
れ、出力端子T2に「縦揺れ」を示す電圧Vpが得られ
ることになる。そして、§5において述べたように、特
定の電極構成を採れば、逓倍回路63を省略することも
可能である。しかしながら、この図10に示す回路は、
中央部容量素子C2の静電容量の変動分に相当する電圧
V2が、「縦揺れ」の振幅を示す成分のみからなるとい
う前提において成り立つ検出回路である。理論的には、
環状容量素子C1の静電容量の変動分V1も、中央部容
量素子C2の静電容量の変動分V2も、いずれも「横揺
れ」の振幅を示す成分と「縦揺れ」の振幅を示す成分と
の和になる。ただ、中央部容量素子C2の静電容量の変
動分を示す電圧V2では、「横揺れ」の振幅を示す成分
は、「縦揺れ」の振幅を示す成分に比べて非常に小さい
ために、前者を無視して後者のみからなると近似しても
大きな問題は生じないため、電圧V2をそのまま「縦揺
れ」の振幅値として用い、この電圧V2に基いて、電圧
V1に対する補正を行うようにしたのが、図10の回路
である。
【0093】しかしながら、より厳密な検出を行う場合
には、やはり電圧V2には「横揺れ」の振幅を示す成分
も含まれているものとして取り扱う必要がある。このよ
うな厳密な検出を行う場合には、図10に示す回路の代
わりに図19に示す回路を用いればよい。この図19に
示す回路において、図の左端に示された可変容量素子C
1およびC2は、図10に示す回路と同様に、それぞれ
環状容量素子C1および中央容量素子C2を示す等価回
路である。また、C/V変換回路61および62も、図
10に示す回路と同様に、各静電容量値を電圧値に変換
する回路であり、検出対象となる加速度が零のときに、
出力電圧が0ボルトになるようにキャリブレーションさ
れている。したがって、電圧V1は環状容量素子C1の
静電容量値の変化を示し、電圧V2は中央部容量素子C
2の静電容量値の変化を示す。そして、理論的には、電
圧V1,V2ともに、「横揺れ」の振幅を示す成分と
「縦揺れ」の振幅を示す成分との和からなる。
【0094】いま、ここで、「横揺れ」の振幅のみを示
す出力電圧を電圧Vsとし、「縦揺れ」の振幅のみを示
す出力電圧を電圧Vpとすれば、この検出回路の目的
は、電圧V1,V2に対して何らかの演算を行い、電圧
Vs,Vpを求め、これらを出力端子T1,T2に出力
することである。図19に示す検出回路では、逓倍回路
71〜74および差動増幅器75,76によって、この
ような演算がなされていることになる。以下、この演算
について説明する。
【0095】前述したように、電圧V1,V2ともに、
「横揺れ」の振幅を示す成分(電圧Vsに対応)と「縦
揺れ」の振幅を示す成分(電圧Vpに対応)との和から
なるので、 V1=M11・Vs + M12・Vp V2=M21・Vs + M22・Vp なる2本の式が成り立つことになる。ここで、M11,
M12,M21,M22は、それぞれ所定の比例定数で
ある。§4で述べた補正は、比例定数M21がM22に
比べて非常に小さいために、M21=0と近似し、 V1=M11・Vs + M12・Vp V2=M22・Vp なる2本の式に基いて、電圧Vs,Vpを出力するよう
にしたものである。すなわち、この2本の式から、 V1=M11・Vs + (M12/M22)・V2 なる関係が得られるので、 Vs=(V1−(M12/M22)・V2)/M11 Vp=V2/M22 なる式が得られる。そこで、図10に示す検出回路にお
いて、k=(M12/M22)に設定した逓倍回路63
を用い、差動増幅器64のゲインを(1/M11)にキ
ャリブレーションし、バッファ回路65のゲインを(1
/M22)にキャリブレーションすれば、出力端子T1
に電圧Vsが得られ、出力端子T2に電圧Vpが得られ
ることになる。
【0096】ここでは、比例定数M11,M12,M2
1,M22がいずれも零でないとする取扱いを行うこと
により、厳密な検出値を得る方法を述べる。この場合、 V1=M11・Vs + M12・Vp V2=M21・Vs + M22・Vp なる2本の連立方程式において、電圧値V1,V2は実
測値として得られる値であり、M11,M12,M2
1,M22は所定の値をもった比例定数であるから、未
知数はVs,Vpの2つだけである。したがって、この
2本の連立方程式を解けば、未知数の解は得られること
になる。これをアナログ回路による演算で行うために
は、具体的には、次のようにすればよい。いま、上述の
2本の連立方程式を行列式で表すと、
【0097】
【数1】 のようになる。この行列式を、Vs,Vpについて解く
と、
【0098】
【数2】 のような行列式が得られる。ここで、K11,K12,
K21,K22は、M11,M12,M21,M22を
要素とする行列に対する逆行列の要素である。そこで、
演算によりこの逆行列を求め、その要素K11,K1
2,K21,K22の各値を求める。そして、これらの
値K11,K12,K21,K22をそれぞれ逓倍定数
とする逓倍回路71〜74を用意し、図19に示すよう
に、これらの逓倍回路71〜74と差動増幅器75,7
6によって検出回路を組めば、 Vs=K11・V1 − K12・V2 Vp=K21・V1 − K22・V2 なる演算が行われることになる。これは、逆行列を用い
た上述の行列式の演算に他ならない。よって、図19に
示すアナログ演算回路によれば、出力端子T1に得られ
る電圧Vsは、「横揺れ」の厳密な振幅値を示し、出力
端子T2に得られる電圧Vpは、「縦揺れ」の厳密な振
幅値を示すものになる。
【0099】§10. その他の変形例 以上、本発明に係る加速度センサをいくつかの実施例に
基いて説明したが、本発明はこれらの実施例に限定され
るものではなく、この他にも種々の態様で実施可能であ
る。たとえば、これまでの実施例は、いずれも環状容量
素子C1と中央部容量素子C2との双方を備えていた
が、「横揺れ」のみが生じるような環境で用いるのであ
れば、環状容量素子C1のみを形成しておけば足りる。
たとえば、自動車に搭載する衝撃計として利用する場
合、自動車同士の衝突あるいは自動車と建造物との衝突
などでは、通常、「横揺れ」の衝撃成分のみしか発生せ
ず、「縦揺れ」の衝撃成分は無視しうる。このような使
用環境であれば、「縦揺れ」成分についての補正を行う
必要はないため、環状容量素子C1のみを形成するだけ
で十分である。
【0100】また、上述の実施例において各電極はいず
れも中心軸Wに関して完全に回転対称形をしていたが、
実用上は完全な回転対称形でなくてもかまわない。もち
ろん、「横揺れ」検出をできるだけ無指向性にする上で
は、環状電極はできるだけ回転対称形にするのが好まし
く、「縦揺れ」検出の値に「横揺れ」検出の値をできる
だけ干渉させないようにする上では、中央部電極はでき
るだけ回転対称形にするのが好ましい。
【0101】ただ、用途によっては、「横揺れ」加速度
に対する検出感度に指向性をもたせた方が好ましい場合
もある。たとえば、自動車におけるエアバッグの作動制
御を行うための衝撃センサとして用いる場合、正面衝突
による衝撃の検出感度と、側面衝突による衝撃の検出感
度と、に差をもたせた方が好ましい。これは、図20に
示すように、運転席が受ける衝撃加速度は、一般に、正
面衝突よりも側面衝突の方が大きくなる傾向にあるため
である。具体的には、自動車搭載用の加速度センサとし
ては、正面衝突による衝撃加速度のフルスケールが50
G程度で十分であるのに対し、側面衝突による衝撃加速
度のフルスケールは200G程度が必要であると考えら
れている。このような要望に応えるためには、正面から
作用する加速度に対する検出感度よりも、側面から作用
する加速度に対する検出感度を低く設定する必要があ
る。
【0102】このような「横揺れ」加速度に対する検出
感度に指向性をもたせるには、一対の環状電極の形状
を、中心軸Wに関して非回転対称形にすればよい。たと
えば、前述した基本的な実施例では、図3に示すよう
に、固定基板10上に環状固定電極E11が設けられて
いるが、この環状固定電極E11は、内側輪郭線も外側
輪郭線もいずれも完全な円である。別言すれば、中心軸
Wに関して完全な回転対称形となっている。この環状固
定電極E11に対向する環状変位電極E21も、図4に
示すように、完全な回転対称形となっている。このよう
に、完全な回転対称形をした一対の環状電極を用いる
と、XY平面に平行な「横揺れ」加速度についての検出
感度は無指向性となり、X軸方向を向いた加速度に対し
ても、Y軸方向を向いた加速度に対しても、同じ感度の
検出値が得られる。
【0103】ところが、図21に示すように、固定基板
10上に非回転対称形をした環状固定電極E31を形成
し、変位基板20上にも、これに対向するように同じ形
状の環状変位電極(図示省略)を形成すれば、XY平面
に平行な「横揺れ」加速度に関して指向性をもった加速
度センサが実現できる。この環状固定電極E31は、外
側輪郭線は完全な円であるが、内側輪郭線はY軸方向に
長軸をもった楕円になっており、X軸と交差する部分の
電極幅は、Y軸と交差する部分の電極幅よりも広くなっ
ている。このため、同じ大きさの加速度が作用した場合
であっても、X軸方向に作用したときの静電容量値の変
化は、Y軸方向に作用したときの静電容量値の変化より
も大きくなる。別言すれば、X軸方向の検出感度は、Y
軸方向の検出感度よりも高くなる。したがって、この加
速度センサを、X軸が正面に向くようにして自動車に搭
載すれば、図20に示すように、正面衝突による衝撃加
速度のフルスケールよりも、側面衝突による衝撃加速度
のフルスケールが大きくなるような設定ができる。
【0104】図22は、別な非回転対称形をした環状固
定電極E41を固定基板10上に形成した実施例を示す
図である。この環状固定電極E41は、内側輪郭線は完
全な円であるが、外側輪郭線はX軸方向に長軸をもった
楕円になっており、やはりX軸と交差する部分の電極幅
は、Y軸と交差する部分の電極幅よりも広くなってい
る。したがって、変位基板20上にも、これに対向する
ように同じ形状の環状変位電極(図示省略)を形成して
おけば、Y軸検出感度よりもX軸検出感度の方が高い指
向性をもった加速度センサが実現できる。
【0105】図23は、更に別な非回転対称形をした環
状固定電極E51を固定基板10上に形成した実施例を
示す図である。この環状固定電極E51は、内側輪郭線
も外側輪郭線もともにX軸方向に長軸をもった楕円にな
っている。このため、電極の幅は各部において若干異な
るものの大きな差はない。しかし、電極の形成位置分布
に関しては、X軸と交差する部分と、Y軸と交差する部
分とではかなり差が生じている。すなわち、X軸と交差
する部分は中心からかなり隔たった位置に分布している
のに対し、Y軸と交差する部分は比較的中心に近い位置
に分布している。したがって、変位基板20上にも、こ
れに対向するように同じ形状の環状変位電極(図示省
略)を形成しておけば、同じ大きさの加速度が作用した
場合であっても、X軸方向に作用したときの電極間距離
の変化は、Y軸方向に作用したときの電極間距離の変化
よりも大きくなり、X軸方向の検出感度は、Y軸方向の
検出感度よりも高くなる。
【0106】図24は、矩形状の環状固定電極E61と
中央部固定電極E62とを固定基板10上に形成した実
施例を示す図である。ここで、環状固定電極E61は、
内側輪郭線は正方形であるが、外側輪郭線はX軸方向に
細長い長方形になっており、中央部固定電極E62は、
正方形状をしている。この環状固定電極E61では、X
軸と交差する部分の電極幅は、Y軸と交差する部分の電
極幅よりも広くなっており、また、X軸と交差する部分
は中心からかなり隔たった位置に分布しているのに対
し、Y軸と交差する部分は比較的中心に近い位置に分布
している。したがって、変位基板20上にも、これに対
向するように同じ形状の環状変位電極(図示省略)を形
成しておけば、やはりX軸方向の検出感度がY軸方向の
検出感度よりも高い指向性をもった加速度センサが実現
できる。
【0107】
【発明の効果】以上のとおり本発明に係る加速度センサ
によれば、環状容量素子の静電容量値の変化に基いて作
用した加速度を検出するようにしたため、所定の一平面
に含まれる方向を向いた加速度の大きさを電気信号とし
て効率良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本的な実施例に係る加速度センサの
主要部分の斜視図である。
【図2】図1に示す加速度センサの側断面図である。
【図3】図1に示す加速度センサの固定基板10の下面
図である。
【図4】図1に示す加速度センサの変位基板20の上面
図である。
【図5】図1に示す加速度センサにX軸正方向の力Fx
が作用したときの動作を説明する側断面図である。
【図6】図5に示す状態における静電容量値の変化を示
すための変位基板20の上面図である。
【図7】静電容量素子における電極間距離dと静電容量
値Cとの一般的な関係を示すグラフである。
【図8】図1に示す加速度センサに作用した加速度αx
とセンサ出力との関係を示すグラフである。
【図9】図1に示す加速度センサにZ軸正方向の力Fz
が作用したときの動作を説明する側断面図である。
【図10】図1に示す加速度センサに用いる検出回路の
一例を示す回路図である。
【図11】図1に示す加速度センサの変形例の構造を示
す側断面図である。
【図12】図1に示す加速度センサの変形例における変
位基板20の上面図である。
【図13】本発明の実用的な実施例に係る加速度センサ
に用いるダイヤフラム120の上面図である。
【図14】図13に示すダイヤフラム120を用いた実
施例に係る加速度センサの側断面図である。
【図15】図14に示す加速度センサにおける変位基板
110の下面図である。
【図16】図14に示す加速度センサにX軸正方向の力
Fxが作用したときの動作を説明する側断面図である。
【図17】本発明の別な実用的な実施例に係る加速度セ
ンサの側断面図である。
【図18】図17に示す加速度センサに用いる変位基板
220の上面図である。
【図19】図1に示す加速度センサに用いる検出回路の
別な一例を示す回路図である。
【図20】自動車衝突時の衝撃センサとして用いる場合
の検出感度の指向性を説明する図である。
【図21】本発明に係る指向性をもった第1の実施例に
係る加速度センサの固定基板10の下面図である。
【図22】本発明に係る指向性をもった第2の実施例に
係る加速度センサの固定基板10の下面図である。
【図23】本発明に係る指向性をもった第3の実施例に
係る加速度センサの固定基板10の下面図である。
【図24】本発明に係る指向性をもった第4の実施例に
係る加速度センサの固定基板10の下面図である。
【符号の説明】
10…固定基板 20…変位基板 25…変位基板 30…支持手段 40…重錘体 50…センサ筐体 61,62…C/V変換回路 63…逓倍回路 64…差動増幅器 65…バッファ回路 71〜74…逓倍回路 75,76…差動増幅器 110…固定基板 120…ダイヤフラム 121…可撓性基板 122…スリット 122a…外側の円弧状スリット 122b…内側の円弧状スリット 122c,122d…直線状スリット 140…重錘体 150…センサ筐体 210…ガラス製の固定基板 220…シリコン製の変位基板 221…固定部 222…可撓部 223…作用部 224…溝 225…スリット 230…ガラス製の台座 240…ガラス製の重錘体 250…シリコン製の底板基板 C1…環状容量素子 C2…中央部容量素子 E11…環状固定電極 E12…中央部固定電極 E21…環状変位電極 E22…中央部変位電極 E23…環状変位電極 E24…中央部変位電極 E31,E41,E51,E61…環状固定電極 E62…中央部固定電極 E111…環状固定電極 E112…中央部固定電極 E211…環状固定電極 E212…中央部固定電極 G…重錘体の重心 O…中心点 Qa,Qb…微小領域 W…中心軸
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年6月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図19
【補正方法】変更
【補正内容】
【図19】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0098
【補正方法】変更
【補正内容】
【0098】
【数2】 のような行列式が得られる。ここで、K11,K12,
K21,K22は、M11,M12,M21,M22を
要素とする行列に対する逆行列の要素である。そこで、
演算によりこの逆行列を求め、その要素K11,K1
2,K21,K22の各値を求める。そして、これらの
値K11,K12,K21,K22をそれぞれ逓倍定数
とする逓倍回路71〜74を用意し、図19に示すよう
に、これらの逓倍回路71〜74と差動増幅器75,7
6によって検出回路を組めば、 Vs=K11・V1 − K12・V2Vp=−K21・V1 + K22・V2 なる演算が行われることになる。これは、逆行列を用い
た上述の行列式の演算に他ならない。よって、図19に
示すアナログ演算回路によれば、出力端子T1に得られ
る電圧Vsは、「横揺れ」の厳密な振幅値を示し、出力
端子T2に得られる電圧Vpは、「縦揺れ」の厳密な振
幅値を示すものになる。

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 センサ筐体と、 このセンサ筐体に固着された固定基板と、 この固定基板の下方に所定距離をおいて、前記固定基板
    に対向するように配置された変位基板と、 この変位基板の周囲を前記センサ筐体に対して弾力性を
    もって支持する支持手段と、 前記変位基板に固着され、検出対象となる加速度の作用
    により、前記支持手段に弾性変形を誘発させるのに十分
    な質量をもった重錘体と、 前記固定基板の下面に形成され、環状形状をした環状固
    定電極と、 前記変位基板の上面に形成され、前記環状固定電極に対
    する対向電極として機能する環状変位電極と、 前記環状固定電極と前記環状変位電極とによって形成さ
    れる環状容量素子の静電容量値の変動分V1に基いて、
    前記固定基板の主面に平行な方向に作用する加速度の大
    きさを示す電気信号を出力する検出回路と、 を備えることを特徴とする加速度センサ。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の加速度センサにおい
    て、 固定基板下面の環状固定電極の内側領域内に配置された
    中央部固定電極と、 変位基板上面の環状変位電極の内側領域内に配置され、
    前記中央部固定電極に対する対向電極として機能する中
    央部変位電極と、 を更に設け、 検出回路が、前記中央部固定電極と前記中央部変位電極
    とによって形成される中央部容量素子の静電容量値の変
    動分V2を用いて、環状容量素子の静電容量値の変動分
    V1に対する補正を行い、補正後の値に基いて、固定基
    板の主面に平行な方向に作用する加速度の大きさを示す
    電気信号を出力することを特徴とする加速度センサ。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の加速度センサにおい
    て、 検出回路が、更に、中央部容量素子の静電容量値の変動
    分V2に基いて、固定基板の主面に垂直な方向に作用す
    る加速度の大きさを示す電気信号を出力することを特徴
    とする加速度センサ。
  4. 【請求項4】 請求項2または3に記載の加速度センサ
    において、 環状固定電極、環状変位電極、中央部固定電極、中央部
    変位電極のそれぞれを、重錘体の重心を通り固定基板の
    主面に対して垂直な中心軸に関してほぼ回転対称となる
    ような形状としたことを特徴とする加速度センサ。
  5. 【請求項5】 請求項2〜4のいずれかに記載の加速度
    センサにおいて、 環状容量素子を構成する一対の電極の電極間距離d1
    と、中央部容量素子を構成する一対の電極の電極間距離
    d2と、が等しくなるような構造とし、環状容量素子を
    構成する各電極の面積S1と、中央部容量素子を構成す
    る各電極の面積S2と、を用いて、環状容量素子の静電
    容量値の変動分V1に対して、 Vs = V1 − (S1/S2)・V2 なる補正演算を行うことによって得られる値Vsに基い
    て、固定基板の主面に平行な方向に作用する加速度の大
    きさを示す電気信号を出力することを特徴とする加速度
    センサ。
  6. 【請求項6】 請求項2〜4のいずれかに記載の加速度
    センサにおいて、 環状容量素子を構成する一対の電極の電極間距離d1
    と、中央部容量素子を構成する一対の電極の電極間距離
    d2と、環状容量素子を構成する各電極の面積S1と、
    中央部容量素子を構成する各電極の面積S2と、の間
    に、 S1 / (d1) = S2 / (d2) なる関係が成り立つ構造とし、環状容量素子の静電容量
    値の変動分V1に対して、 Vs = V1 − V2 なる補正演算を行うことによって得られる値Vsに基い
    て、固定基板の主面に平行な方向に作用する加速度の大
    きさを示す電気信号として出力することを特徴とする加
    速度センサ。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の加速度センサにおい
    て、 環状容量素子を構成する一対の電極の電極間距離d1
    と、中央部容量素子を構成する一対の電極の電極間距離
    d2と、が等しくなり、かつ、環状容量素子を構成する
    各電極の面積S1と、中央部容量素子を構成する各電極
    の面積S2と、が等しくなるような構造としたことを特
    徴とする加速度センサ。
  8. 【請求項8】 請求項2〜4のいずれかに記載の加速度
    センサにおいて、 検出回路が、環状容量素子の静電容量値の変動分V1に
    対して所定の定数K11を乗じて(K11・V1)を得
    る回路および所定の定数K21を乗じて(K21・V
    1)を得る回路と、中央部容量素子の静電容量値の変動
    分V2に対して所定の定数K12を乗じて(K12・V
    2)を得る回路および所定の定数K22を乗じて(K2
    2・V2)を得る回路と、(K11・V1)−(K12
    ・V2)なる演算を行って値Vsを得る回路と、(K2
    1・V1)−(K22・V2)なる演算を行って値Vp
    を得る回路と、を有し、 前記値Vsに基いて、固定基板の主面に平行な方向に作
    用する加速度の大きさを示す電気信号を出力し、 前記値Vpに基いて、固定基板の主面に垂直な方向に作
    用する加速度の大きさを示す電気信号を出力することを
    特徴とする加速度センサ。
  9. 【請求項9】 請求項2または3に記載の加速度センサ
    において、 環状固定電極および環状変位電極を、重錘体の重心を通
    り固定基板の主面に対して垂直な中心軸に関して非回転
    対称となるような環状形状としたことを特徴とする加速
    度センサ。
  10. 【請求項10】 請求項2〜9のいずれかに記載の加速
    度センサにおいて、 環状変位電極および中央部変位電極を物理的に単一の共
    通電極によって構成したことを特徴とする加速度セン
    サ。
  11. 【請求項11】 請求項10に記載の加速度センサにお
    いて、 変位基板を導電性材料によって構成し、この変位基板の
    一部を単一の共通電極として用いたことを特徴とする加
    速度センサ。
  12. 【請求項12】 請求項2〜9のいずれかに記載の加速
    度センサにおいて、 環状固定電極および中央部固定電極を物理的に単一の共
    通電極によって構成したことを特徴とする加速度セン
    サ。
  13. 【請求項13】 請求項12に記載の加速度センサにお
    いて、 固定基板を導電性材料によって構成し、この固定基板の
    一部を単一の共通電極として用いたことを特徴とする加
    速度センサ。
  14. 【請求項14】 請求項1〜13のいずれかに記載の加
    速度センサにおいて、 可撓性基板に複数のスリットを形成することによりダイ
    ヤフラムを構成し、このダイヤフラムを変位基板および
    支持手段として用いることを特徴とする加速度センサ。
  15. 【請求項15】 請求項14に記載の加速度センサにお
    いて、 可撓性基板の中心点を取り囲む環状線に沿って形成され
    た複数のスリットと、可撓性基板の中心点から外方へ向
    かう放射線に沿って形成された複数のスリットと、を設
    け、スリット相互の間隙部分によって、ダイヤフラムの
    各部が物理的に接続されるような構造とし、 ダイヤフラムの周囲部分をセンサ筐体に固着し、前記間
    隙部分の弾性変形に基いて、ダイヤフラムの中央部分に
    変位が生じる構造としたことを特徴とする加速度セン
    サ。
  16. 【請求項16】 請求項14または15に記載の加速度
    センサにおいて、 可撓性基板を、その主面を含む平面内で所定角θ°回転
    させたときに、スリットのパターンが、回転前のパター
    ンにほぼ一致するように、各スリットが形成されている
    ことを特徴とする加速度センサ。
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