JP3586271B2 - 角速度センサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は角速度センサに関し、特に、XYZ三次元座標系における所定軸まわりの角速度を検出することのできる角速度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車産業や機械産業などでは、運動する物体の加速度や角速度を正確に検出できるセンサの需要が高まっている。一般に、三次元空間内において自由運動をする物体には、任意の向きの加速度および任意の回転方向の角速度が作用する。このため、この物体の運動を正確に把握するためには、XYZ三次元座標系における各座標軸方向ごとの加速度と各座標軸まわりの角速度とをそれぞれ独立して検出する必要がある。
【0003】
従来から多次元の加速度センサは種々のものが提案されている。たとえば、特許協力条約に基づく国際公開第WO88/08522号公報(米国特許第4967605号/同第5182515号)には、半導体基板上に形成された抵抗素子を用い、作用した加速度を各座標軸方向ごとに検出する加速度センサが開示されている。また、特許協力条約に基づく国際公開第WO91/10118号公報(米国特許出願第07/761771号)には、自己診断機能をもった多軸加速度センサが開示されている。更に、特許協力条約に基づく国際公開第WO92/17759号公報(米国特許出願第07/952753号)には、静電容量素子あるいは圧電素子を用い、作用した加速度を各座標軸方向ごとに検出する加速度センサが開示されている。また、特願平2−274299号および特願平2−416188号明細書(米国特許出願第07/764159号)にも、同様の多軸加速度センサが開示されている。特願平3−306587号明細書(米国特許出願第07/960545号)には、同様の多軸加速度センサにおける新規な電極配置が開示されており、特許協力条約に基づく国際出願PCT/JP92/00882号明細書には、また別なタイプの圧電素子を用いた多軸加速度センサが開示されている。これらの加速度センサの特徴は、複数の抵抗素子/静電容量素子/圧電素子を、可撓性をもった基板の所定位置に配置し、抵抗素子の抵抗値の変化/静電容量素子の容量値の変化/圧電素子の発生電圧の変化に基づいて、作用した加速度を検出する点にある。可撓性をもった基板には、重錘体が取り付けられており、加速度が作用するとこの重錘体に力が加わり、可撓性基板に撓みが生じる。この撓みを上述した抵抗値/容量値/発生電荷の変化に基づいて検出すれば、加速度の各軸方向成分を求めることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、三次元空間内において自由運動する物体についての角速度を検出するには、XYZ三次元座標系における所定軸まわりの角速度を効率よく検出する必要がある。しかしながら、従来利用されている一次元の角速度センサは、全体としての構造は複雑になり、コストも高いものになる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、比較的単純な構造をもち、XYZ三次元座標系における所定軸まわりの角速度を独立して検出することができる新規な角速度センサを提供することにある。
【0006】
本発明において利用されている基本原理は、XYZ三次元座標系に置かれた振動子に対して第1の座標軸まわりの角速度ωが作用している場合、この振動子を第2の座標軸方向に振動させると、角速度ωの大きさに比例したコリオリ力が第3の座標軸方向に発生するという原理である。この原理を利用して角速度ωを検出するには、振動子を所定の座標軸方向に振動させる手段と、コリオリ力の作用により振動子に生じた所定の座標軸方向の変位を検出する手段と、が必要になる。本発明は、このような手段を備えたセンサを提供するものであり、次のような特徴をもっている。
【0007】
(1) 本発明の第1の特徴は、XYZ三次元座標系におけるX軸まわりの角速度を検出する角速度センサにおいて、
センサ筐体に固定され、XY平面に平行な基板面を有する第1の基板と、
この第1の基板の基板面に対して所定の距離を保って平行に配置された基板面を有し、中心部分と周囲部分とのうち、少なくとも周囲部分が可撓性を有し、周囲部分を介してセンサ筐体に固定されている第2の基板と、
第2の基板の中心部分からZ軸に沿った方向に突出するように、第2の基板に接続された振動子と、
を設け、
振動子に対して外力が作用した場合に、周囲部分に撓みが生じることにより、中心部分が第1の基板に対して変位を生じるように構成し、
第2の基板の中心部分には、第1の変位電極、第2の変位電極、第3の変位電極をXY平面に平行となるように形成し、第1の基板における第1の変位電極、第2の変位電極、第3の変位電極に対向する位置に、それぞれ第1の固定電極、第2の固定電極、第3の固定電極をXY平面に平行となるように形成し、第1の固定電極と第1の変位電極とにより第1の容量素子を形成し、第2の固定電極と第2の変位電極とにより第2の容量素子を形成し、第3の固定電極と第3の変位電極とにより第3の容量素子を形成し、
第1の容量素子と第2の容量素子を、振動子がY軸方向に変位を生じた際に、一方の電極間隔が増加し、他方の電極間隔が減少するような位置に配置し、第3の容量素子を、振動子がZ軸方向に変位を生じた際に電極間隔が変化するような位置に配置し、
第3の容量素子を構成する一対の電極間に交流信号を供給することによりクーロン力を作用させ、作用したクーロン力によって振動子をZ軸方向に振動させる手段と、
第1の容量素子の静電容量値と第2の容量素子の静電容量値との差に基づいて、X軸まわりの角速度を示す値を出力する手段と、
を更に設けるようにしたものである。
【0008】
(2) 本発明の第2の特徴は、上述した第1の特徴に係る角速度センサにおいて、
第1の容量素子をY軸の正の領域上に配置し、第2の容量素子をY軸の負の領域上に配置し、第3の容量素子をZ軸と交差する位置に配置するようにしたものである。
【0009】
(3) 本発明の第3の特徴は、XYZ三次元座標系におけるY軸まわりの角速度を検出する角速度センサにおいて、
センサ筐体に固定され、XY平面に平行な基板面を有する第1の基板と、
この第1の基板の基板面に対して所定の距離を保って平行に配置された基板面を有し、中心部分と周囲部分とのうち、少なくとも周囲部分が可撓性を有し、周囲部分を介してセンサ筐体に固定されている第2の基板と、
第2の基板の中心部分からZ軸に沿った方向に突出するように、第2の基板に接続された振動子と、
を設け、
振動子に対して外力が作用した場合に、周囲部分に撓みが生じることにより、中心部分が第1の基板に対して変位を生じるように構成し、
第2の基板の中心部分に、第1の変位電極、第2の変位電極、第3の変位電極をXY平面に平行となるように形成し、第1の基板における第1の変位電極、第2の変位電極、第3の変位電極に対向する位置に、それぞれ第1の固定電極、第2の固定電極、第3の固定電極をXY平面に平行となるように形成し、第1の固定電極と第1の変位電極とにより第1の容量素子を形成し、第2の固定電極と第2の変位電極とにより第2の容量素子を形成し、第3の固定電極と第3の変位電極とにより第3の容量素子を形成し、
第1の容量素子と第2の容量素子を、振動子がX軸方向に変位を生じた際に、一方の電極間隔が増加し、他方の電極間隔が減少するような位置に配置し、第3の容量素子を、振動子がZ軸方向に変位を生じた際に電極間隔が変化するような位置に配置し、
第1の容量素子を構成する一対の電極間および第2の容量素子を構成する一対の電極間に互いに位相が異なる交流信号を供給することによりクーロン力を作用させ、作用したクーロン力によって振動子をX軸方向に振動させる手段と、
第3の容量素子の静電容量値に基づいて、Y軸まわりの角速度を示す値を出力する手段と、
を更に設けるようにしたものである。
【0010】
(4) 本発明の第4の特徴は、上述した第3の特徴に係る角速度センサにおいて、
第1の容量素子をX軸の正の領域上に配置し、第2の容量素子をX軸の負の領域上に配置し、第3の容量素子をZ軸と交差する位置に配置するようにしたものである。
【0029】
【発明の実施の形態】
<<< Section 0 基本原理 >>>
<0.1> 一軸の角速度センサ
【0030】
はじめに、本発明に係る一軸の角速度センサによる角速度の検出原理を簡単に説明しておく。第1図は、日本国特許庁監修の雑誌「発明(THE INVENTION)」、vol.90,No.3(1993年)の60頁に開示されている角速度センサの基本原理を示す図である。いま、角柱状の振動子10を用意し、図示するような方向にX,Y,Z軸を定義したXYZ三次元座標系を考える。このような系において、振動子10がZ軸を回転軸として角速度ωで回転運動を行っている場合、次のような現象が生じることが知られている。すなわち、この振動子10をX軸方向に往復運動させるような振動Uを与えると、Y軸方向にコリオリ力Fが発生する。別言すれば、振動子10を図のX軸に沿って振動させた状態で、この振動子10をZ軸を中心軸として回転させると、Y軸方向にコリオリ力Fが生じることになる。この現象は、フーコーの振り子として古くから知られている力学現象であり、発生するコリオリ力Fは、
F=2m・v・ω
で表される。ここで、mは振動子10の質量、vは振動子10の振動についての瞬時の速度、ωは振動子10の瞬時の角速度である。
【0031】
前述の雑誌に開示された一軸の角速度センサは、この現象を利用して角速度ωを検出するものである。すなわち、第1図に示すように、角柱状の振動子10の第1の面には第1の圧電素子11が、この第1の面と直交する第2の面には第2の圧電素子12が、それぞれ取り付けられる。圧電素子11,12としては、ピエゾエレクトリックセラミックからなる板状の素子が用いられている。そして、振動子10に対して振動Uを与えるために圧電素子11が利用され、発生したコリオリ力Fを検出するために圧電素子12が利用される。すなわち、圧電素子11に交流電圧を与えると、この圧電素子11は伸縮運動を繰り返しX軸方向に振動する。この振動Uが振動子10に伝達され、振動子10がX軸方向に振動することになる。このように、振動子10に振動Uを与えた状態で、振動子10自身がZ軸を中心軸として角速度ωで回転すると、上述した現象により、Y軸方向にコリオリ力Fが発生する。このコリオリ力Fは、圧電素子12の厚み方向に作用するため、圧電素子12の両面にはコリオリ力Fに比例した電圧Vが発生する。そこで、この電圧Vを測定することにより、角速度ωを検出することが可能になる。
【0032】
<0.2> 多軸の角速度センサ
上述した従来の角速度センサは、Z軸まわりの角速度を検出するためのものであり、X軸あるいはY軸まわりの角速度の検出を行うことはできない。本発明は、第2図に示すように、所定の物体20について、XYZ三次元座標系におけるX軸まわりの角速度ωx、Y軸まわりの角速度ωy、Z軸まわりの角速度ωz、のうちの必要な所定軸まわりの角速度をそれぞれを必要に応じて検出することのできる角速度センサを提供するものである。その基本原理を、第3図〜第5図を参照して説明する。いま、XYZ三次元座標系の原点位置に振動子30が置かれているものとする。この振動子30のX軸まわりの角速度ωxを検出するには、第3図に示すように、この振動子30にZ軸方向の振動Uzを与えたときに、Y軸方向に発生するコリオリ力Fyを測定すればよい。コリオリ力Fyは角速度ωxに比例した値となる。また、この振動子30のY軸まわりの角速度ωyを検出するには、第4図に示すように、この振動子30にX軸方向の振動Uxを与えたときに、Z軸方向に発生するコリオリ力Fzを測定すればよい。コリオリ力Fzは角速度ωyに比例した値となる。更に、この振動子30のZ軸まわりの角速度ωzを検出するには、第5図に示すように、この振動子30にY軸方向の振動Uyを与えたときに、X軸方向に発生するコリオリ力Fxを測定すればよい。コリオリ力Fxは角速度ωzに比例した値となる。
【0033】
結局、XYZ三次元座標系における各軸ごとの角速度を検出するには、振動子30をX軸方向に振動させる機構、Y軸方向に振動させる機構、Z軸方向に振動させる機構、のそれぞれと、振動子30に作用するX軸方向のコリオリ力Fxを検出する機構、Y軸方向のコリオリ力Fyを検出する機構、Z軸方向のコリオリ力Fzを検出する機構、のそれぞれとが必要になる。
【0034】
<0.3> 振動機構/検出機構
上述したように、本発明に係る角速度センサでは、振動子を特定の座標軸方向に振動させるための機構と、振動子に作用した特定の座標軸方向のコリオリ力を検出するための機構とが必要になる。振動機構としては、次のような各機構を利用することができる。
【0035】
(1) クーロン力を利用した機構:振動子側に第1の電極を、センサ筐体側に第2の電極を、それぞれ形成し、これら一対の電極を対向させるように配置する。両電極に同じ極性の電荷を供給すれば反発力が作用し、異なる極性の電荷を供給すれば吸引力が作用する。そこで、両電極間に反発力と吸引力とを交互に作用させるようにすれば、振動子はセンサ筐体に対して振動する。
【0036】
(2) 圧電素子を利用した機構:第1図に示す一軸の角速度センサに用いられている機構である。圧電素子11に交流電圧を供給することにより、振動子10を振動させる。
【0037】
(3) 電磁力を利用した機構:磁性材料からなる振動子を用い、センサ筐体側にコイルを配置し、このコイルに電流を流して電磁力を作用させ、振動子を振動させる。
【0038】
一方、コリオリ力の検出機構としては、次のような各機構を利用することができる。
【0039】
(1) 静電容量の変化を利用する機構:振動子側に第1の電極を、センサ筐体側に第2の電極を、それぞれ形成し、これら一対の電極を対向させるように配置する。振動子にコリオリ力が作用して変位が生じると、両電極の間隔が変化するため、両電極によって構成される静電容量素子の静電容量値が変化する。この容量値の変化を測定することにより、作用したコリオリ力を検出する。
【0040】
(2) 圧電素子を利用した機構:第1図に示す一軸の角速度センサに用いられている機構である。圧電素子12にコリオリ力Fが作用すると、圧電素子12はコリオリ力Fに比例した電圧を発生する。この発生電圧を測定することにより、作用したコリオリ力を検出する。
【0041】
(3) 差動トランスを利用した機構:磁性材料からなる振動子を用い、センサ筐体側にコイルを配置する。振動子にコリオリ力が作用して変位が生じると、振動子とコイルとの距離が変化するため、コイルのインダクタンスが変化する。このインダクタンスの変化を測定することにより、作用したコリオリ力を検出する。
【0042】
(4) ピエゾ抵抗素子を利用した機構:コリオリ力の作用により撓みが生じるような基板を設けておく。この基板上にピエゾ抵抗素子を形成しておき、基板に生じた撓みをピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化として検出する。すなわち、抵抗値の変化を測定することにより、作用したコリオリ力を検出する。
【0043】
以上、本発明に係る角速度センサの基本原理について簡単に述べたが、このような基本原理に基づいて動作する単純な構造をもったセンサの具体例を以下に詳述する。なお、本発明は、XYZ三次元座標系におけるX軸まわりの角速度ωx、Y軸まわりの角速度ωy、Z軸まわりの角速度ωz、のうちの必要な所定軸まわりの角速度を検出することのできる一軸角速度センサに関するものであるが、この一軸角速度センサを共通の構造体に組み込めば、複数の軸まわりの角速度を検出することが可能な多軸角速度センサを実現することができる。そこで、以下の実施例では、本発明に係る一軸角速度センサを複数組み合わせることにより、多軸角速度センサを実現した実施例を述べることにする。
【0044】
<<< Section 1 第1の実施例 >>>
<1.1> 第1の実施例に係るセンサの構造
まず、本発明の第1の実施例に係る多軸角速度センサについて説明する。この第1の実施例は、振動機構としてクーロン力を利用した機構を用い、検出機構として静電容量の変化を利用する機構を用いたセンサである。
【0045】
第6図は、この第1の実施例に係る多軸角速度センサの側断面図である。可撓基板110および固定基板120は、いずれも円盤状の基板であり、所定の間隔を保って互いに平行に配置されている。可撓基板110の下面には、円柱状の振動子130が固着されている。また、可撓基板110の外周部分および固定基板120の外周部分は、いずれもセンサ筐体140によって支持されている。固定基板120の下面には、5枚の上部電極層E1〜E5(第6図には、その一部だけが示されている)が形成され、同様に可撓基板110の上面には、5枚の下部電極層F1〜F5(やはり、その一部だけが示されている)が形成されている。ここで、固定基板120は十分な剛性をもち、撓みを生じることはないが、可撓基板110は可撓性をもち、いわゆるダイヤフラムとして機能する。振動子130は、安定した振動を生じるのに十分な重量をもった材質で構成されており、ここでは、説明の便宜上、この振動子130の重心位置Oを原点としたXYZ三次元座標系を考えることにする。すなわち、図の右方向にX軸、上方向にZ軸、そして紙面に垂直な方向にY軸を定義する。第6図は、このセンサをXZ平面で切った断面図ということになる。なお、この実施例では、可撓基板110および固定基板120は、いずれも絶縁性の材料によって構成されている。これらの基板を金属などの導電性の材料で構成したい場合には、絶縁膜を介して各電極層の形成を行い、電極層同士が短絡しないようにすればよい。
【0046】
下部電極層F1〜F5の形状および配置は、第7図に明瞭に示されている。第7図は、可撓基板110の上面図であり、扇状の下部電極層F1〜F4と円形の下部電極層F5が配置されている様子が明瞭に示されている。一方、上部電極層E1〜E5の形状および配置は、第8図に明瞭に示されている。第8図は、固定基板120の下面図であり、扇状の上部電極層E1〜E4と円形の上部電極層E5が配置されている様子が明瞭に示されている。上部電極層E1〜E5と下部電極層F1〜F5とは、それぞれ同じ形状をしており、互いに向かい合った位置に形成されている。したがって、対向する一対の電極層により静電容量素子が形成され、合計5組の静電容量素子が形成される。ここでは、これらをそれぞれ静電容量素子C1〜C5と呼ぶことにする。たとえば、上部電極層E1と下部電極層F1とによって形成される素子を、静電容量素子C1と呼ぶ。
【0047】
<1.2> 振動子の振動機構
いま、このセンサの所定の電極層間に電圧を供給した場合にどのような現象が起こるかを検討する。まず、電極層E1,F1間に所定の電圧を印加した場合を考える。たとえば、第9図に示すように、電極層E1側が正、F1側が負となるように電圧を供給すると、両電極層間にはクーロン力に基づく吸引力が作用する。前述したように、可撓基板110は可撓性をもった基板であり、このような吸引力により撓みが生じることになる。すなわち、第9図に示すように、電圧を印加した電極層E1,F1間の距離が縮まるように、可撓基板110は機械的に変形する。可撓基板110にこのような機械的変形が生じると、振動子130はX軸の正の方向にΔXだけ変位を生じることになる。
【0048】
今度は、電極層E2,F2間に所定の電圧を印加した場合を考える。たとえば、第10図に示すように、電極層E2側が正、F2側が負となるように電圧を供給すると、これらの間に吸引力が作用し、電極層E2,F2間の距離が縮まるように可撓基板110は機械的に変形する。この結果、振動子130はX軸の負の方向にΔXだけ変位を生じることになる。結局、電極層E1,F1間に電圧を印加すれば、振動子130はX軸の正の方向に変位し、電極層E2,F2間に電圧を印加すれば、振動子130はX軸の負の方向に変位することになる。したがって、電極層E1,F1間への電圧印加と、電極層E2,F2間への電圧印加と、を交互に行えば、振動子130をX軸方向に往復運動させることができる。
【0049】
ところで、第7図および第8図に示されているように、上述した電極層E1,F1,E2,F2はX軸上に配置された電極層である。これに対し、電極層E3,F3,E4,F4はY軸上に配置されている。したがって、電極層E3,F3間への電圧印加と、電極層E4,F4間への電圧印加と、を交互に行えば、振動子130をY軸方向に往復運動させることができることは、容易に理解できるであろう。
【0050】
続いて、電極層E5,F5間に所定の電圧を印加した場合を考える。たとえば、第11図に示すように、電極層E5側が正、F5側が負となるように電圧を供給すると、これらの間に吸引力が作用し、電極層E5,F5間の距離が縮まるように可撓基板110は機械的に変形する。電極層E5,F5はいずれも各基板の中央に位置するため、可撓基板110は傾くことなく、Z軸方向へ平行移動するような変位を生じることになる。この結果、振動子130はZ軸の正の方向にΔZだけ変位を生じることになる。両電極層E5,F5への電圧印加をやめれば、振動子130はもとの位置(第6図に示す位置)へ復帰する。したがって、両電極層E5,F5への電圧印加を断続的に行えば、振動子130をZ軸方向に往復運動させることができる。
【0051】
以上のように、特定の電極層の組に対して、特定のタイミングで電圧印加を行えば、振動子130をX軸,Y軸,Z軸に沿って振動させることができる。なお、上述の説明では、上部電極層E1〜E5側に正、下部電極層F1〜F5側に負の電圧を印加しているが、極性を逆にしてもやはり吸引力が作用するため同じ現象が起こる。
【0052】
結局、振動子130についてX軸方向の振動Uxを起こさせるには、第12図に示すような波形をもった電圧V1を電極層E1,F1間に供給するとともに、電圧V2を電極層E2,F2間に供給すればよい。このような波形の電圧を供給すれば、期間t1,t3,t5において振動子130には第9図に示すような変位ΔXが生じ、期間t2,t4において振動子130には第10図に示すような変位−ΔXが生じることになる。同様に、振動子130についてY軸方向の振動Uyを起こさせるには、第13図に示すような波形をもった電圧V3を電極層E3,F3間に供給するとともに、電圧V4を電極層E4,F4間に供給すればよい。また、振動子130についてZ軸方向の振動Uzを起こさせるには、第14図に示すような波形をもった電圧V5を電極層E5,F5間に供給すればよい。このような波形の電圧V5を供給すれば、期間t1,t3,t5において振動子130には第11図に示すような変位ΔZが生じ、期間t2,t4において振動子130は、可撓基板110の復元力により第6図に示す位置に復帰する(このとき、慣性力に応じた変位−ΔZが発生する)。
【0053】
<1.3> コリオリ力の検出機構
1.3.1 X軸まわりの角速度ωxに基づくコリオリ力
続いて、このセンサに作用するコリオリ力を、静電容量の変化を利用して検出する機構について説明する。はじめに、このセンサにX軸まわりの角速度ωxが作用した場合の現象について考える。たとえば、第2図に示す物体20が、X軸まわりに角速度ωxで回転運動している場合、この物体20にこのセンサを搭載しておけば、振動子130に対してX軸まわりの角速度ωxが作用することになる。ところで、第3図で説明したように、X軸まわりの角速度ωxが作用している状態において、振動子に対してZ軸方向の振動Uzを与えると、Y軸方向にコリオリ力Fyが発生する。したがって、このセンサの電極層E5,F5間に、第14図に示すような波形をもった電圧V5を供給し、振動子130にZ軸方向の振動Uzを与えれば、Y軸方向にコリオリ力Fyが発生するはずである。
【0054】
第15図は、このコリオリ力Fyによって、可撓基板110に機械的変形が生じた状態を示す側断面図である。このセンサ全体が、X軸(図の紙面に垂直な方向)まわりに角速度ωxで回転している状態において、振動子130をZ軸方向に振動させると、Y軸方向にコリオリ力Fyが発生し、振動子130をY軸方向に動かす力が加わる。この力により、可撓基板110は図のように変形する。このようなY軸方向に偏った変形は、電極層間のクーロン力によるものではなく、コリオリ力Fyに起因したものである。電極層間の印加電圧に関しては、上述したように、電極層E5,F5間に第14図に示すような電圧V5が供給されているだけであり、他の電極層間には何ら電圧供給は行われていない。ここで、発生したコリオリ力Fyは角速度ωxに比例したものになるので、コリオリ力Fyの値を測定することができれば、角速度ωxを検出することができる。
【0055】
そこで、静電容量の変化を利用して、次のような方法でこのコリオリ力Fyを測定する。いま、上部電極層E1〜E5と、下部電極層F1〜F5と、の距離について考える。振動子130は第15図の上下方向に振動しているので、両電極層間の距離は縮んだり広がったりを周期的に繰り返すことになる。したがって、上部電極層E1〜E5と下部電極層F1〜F5とで構成される容量素子C1〜C5の容量値(同じ符号C1〜C5で表すことにする)は、いずれも周期的に増えたり減ったりを繰り返すことになる。ところが、コリオリ力Fyの作用により、可撓基板110には常にY軸方向に偏った変形が生じることになり、このような変形を保ったまま振動子130は上下に振動することになる。すなわち、容量素子C3の電極間隔は、容量素子C4の電極間隔よりも常に小さくなり、容量値C3と容量値C4との間には、常にC3>C4の関係が保たれる。この容量値C3とC4との差ΔC34は、Y軸方向への偏りの程度に依存するため、コリオリ力Fyの大きさを示す量となる。別言すれば、コリオリ力Fyが大きければ大きいほど、差ΔC34も大きくなる。
【0056】
以上述べたX軸まわりの角速度ωxの検出手順をまとめると次のようになる。まず、電極層E5,F5間に第14図に示すような波形の電圧V5を供給して振動子130にZ軸方向の振動Uzを与え、その時点での容量素子C3,C4の容量値の差ΔC34を求める。こうして求めた差ΔC34が求める角速度ωxの検出値となる。振動を与えるために用いる電極層E5,F5と、容量値の差を測定するために用いる電極層E3,F3,E4,F4とは、電気的に完全に独立しているため、振動機構と検出機構との間に干渉が生じることはない。
【0057】
1.3.2 Y軸まわりの角速度ωyに基づくコリオリ力
次に、このセンサにY軸まわりの角速度ωyが作用した場合の現象について考える。第4図で説明したように、Y軸まわりの角速度ωyが作用している状態において、振動子に対してX軸方向の振動Uxを与えると、Z軸方向にコリオリ力Fzが発生する。したがって、このセンサの電極層E1,F1間および電極層E2,F2間に、第12図に示すような波形をもった電圧V1および電圧V2を供給し、振動子130にX軸方向の振動Uxを与えれば、Z軸方向にコリオリ力Fzが発生するはずである。
【0058】
第16図は、このコリオリ力Fzによって、可撓基板110に機械的変形が生じた状態を示す側断面図である。このセンサ全体が、Y軸(図の紙面に垂直な方向)まわりに角速度ωyで回転している状態において、振動子130をX軸方向に振動させると、Z軸方向にコリオリ力Fzが発生し、振動子130をZ軸方向に動かす力が加わる。この力により、可撓基板110は図のように変形する。このようなZ軸方向に偏った変形は、電極層間のクーロン力によるものではなく、コリオリ力Fzに起因したものである。電極層間の印加電圧に関しては、上述したように、電極層E1,F1,E2,F2間に第12図に示すような電圧V1,V2が供給されているだけであり、他の電極層間には何ら電圧供給は行われていない。ここで、発生したコリオリ力Fzは角速度ωyに比例したものになるので、コリオリ力Fzの値を測定することができれば、角速度ωyを検出することができる。
【0059】
コリオリ力Fzの値は、上部電極層E5および下部電極層F5によって形成される容量素子C5の容量値C5に基づいて求めることができる。なぜなら、コリオリ力Fzが大きくなれば、両電極層間の距離は縮まり容量値C5は大きくなり、逆に、コリオリ力Fzが小さくなれば、両電極層間の距離は広がり容量値C5は小さくなる関係が得られるからである。なお、振動子130はX軸方向に振動しているが、この振動Uxは容量値C5の測定に何ら影響を及ぼさない。振動子130がX軸の正方向または負方向に変位を生じると、上部電極層E5と下部電極層F5とは非平行の状態になるが、両電極層間の距離は、部分的に縮まり部分的に広がるため、全体としては振動Uxは容量値C5に影響を与えないのである。
【0060】
以上述べたY軸まわりの角速度ωyの検出手順をまとめると次のようになる。まず、電極層E1,F1,E2,F2間に第12図に示すような波形の電圧V1および電圧V2を供給して振動子130にX軸方向の振動Uxを与え、その時点での容量素子C5の容量値を求める。こうして求めた容量値C5が求める角速度ωyの検出値となる。振動を与えるために用いる電極層E1,F1,E2,F2と、容量値を測定するために用いる電極層E5,F5とは、電気的に完全に独立しているため、振動機構と検出機構との間に干渉が生じることはない。
【0061】
1.3.3 Z軸まわりの角速度ωzに基づくコリオリ力
最後に、このセンサにZ軸まわりの角速度ωzが作用した場合の現象について考える。第5図で説明したように、Z軸まわりの角速度ωzが作用している状態において、振動子に対してY軸方向の振動Uyを与えると、X軸方向にコリオリ力Fxが発生する。したがって、このセンサの電極層E3,F3間および電極層E4,F4間に、第13図に示すような波形をもった電圧V3,V4を供給し、振動子130にY軸方向の振動Uyを与えれば、X軸方向にコリオリ力Fxが発生するはずである。
【0062】
第17図は、このコリオリ力Fxによって、可撓基板110に機械的変形が生じた状態を示す側断面図である。このセンサ全体が、Z軸まわりに角速度ωzで回転している状態において、振動子130をY軸方向(紙面に垂直な方向)に振動させると、X軸方向にコリオリ力Fxが発生し、振動子130をX軸方向に動かす力が加わる。この力により、可撓基板110は図のように変形する。このようなX軸方向に偏った変形は、電極層間のクーロン力によるものではなく、コリオリ力Fxに起因したものである。このコリオリ力Fxは角速度ωzに比例したものになるので、コリオリ力Fxの値を測定することができれば、角速度ωzを検出することができる。
【0063】
このコリオリ力Fxは、コリオリ力Fyと同様に、静電容量の変化を利用して測定することができる。すなわち、前述したコリオリ力Fyは容量値C3とC4との差ΔC34によって求めることができたが、これと全く同じ原理により、コリオリ力Fxは容量値C1とC2との差ΔC12によって求めることができる。
【0064】
以上述べたZ軸まわりの角速度ωzの検出手順をまとめると次のようになる。まず、電極層E3,F3間および電極層E4,F4間に第13図に示すような波形の電圧V3および電圧V4を供給して振動子130にY軸方向の振動Uyを与え、その時点での容量素子C1,C2の容量値の差ΔC12を求める。こうして求めた差ΔC12が求める角速度ωzの検出値となる。振動を与えるために用いる電極層E3,F3,E4,F4と、容量値の差を測定するために用いる電極層E1,F1,E2,F2とは、電気的に完全に独立しているため、振動機構と検出機構との間に干渉が生じることはない。
【0065】
<1.4> コリオリ力の検出回路
上述したように、この第1の実施例に係るセンサでは、X軸まわりの角速度ωxは容量値C3とC4との差ΔC34を求めることにより検出され、Y軸まわりの角速度ωyは容量値C5を求めることにより検出され、Z軸まわりの角速度ωzは容量値C1とC2との差ΔC12を求めることにより検出される。そこで、ここではこのような容量値あるいは容量値の差を測定するのに適した回路の一例を開示しておく。
【0066】
第18図は、容量素子Cの容量値を測定するための回路の一例である。入力端子T1に与えられた信号は2つの経路に分岐し、インバータ151および152を通る。下の経路では、インバータ152を通った信号は、抵抗153と容量素子Cとによって構成される遅延回路を経て、排他的OR回路154の一方の入力信号となる。上の経路では、インバータ151を通った信号は、そのまま排他的OR回路154の他方の入力信号となる。排他的OR回路154の論理出力は、出力端子T2に与えられる。ここで、インバータ152は、抵抗153と容量素子Cとによって構成される遅延回路に対する十分な駆動能力を与える目的で設けられた素子である。また、インバータ151は、上下の経路を同じ条件にする目的で設けられた素子であり、インバータ152と同じ動作特性をもった素子である。
【0067】
このような回路において、入力端子T1に所定周期の交流信号を供給した場合に、出力端子T2にどのような信号が得られるかを考える。第19図は、入力端子T1に半周期fの矩形交流信号を供給した場合に、各部に表れる波形を示すタイミングチャートである(実際には、矩形波になまりが生じるが、ここでは説明の便宜上、純粋な矩形波として示してある)。排他的OR回路154の一方の入力端であるノードN1における波形は、入力端子T1に与えた波形に対して、インバータ151を通過するために必要な時間aだけ遅延した反転波形となる。一方、排他的OR回路154のもう一方の入力端であるノードN2における波形は、入力端子T1に与えた波形に対して、インバータ152を通過するために必要な時間aと、抵抗153および容量素子Cによって構成される遅延回路を通過するために必要な時間bと、の合計時間(a+b)だけ遅延した反転波形となる。この結果、出力端子T2に得られる排他的OR回路154の出力波形は、図に示すように、パルス幅b、周期fをもった波形となる。ここで、容量素子Cの容量値が変化すると、抵抗153と容量素子Cとによって構成される遅延回路の遅延時間bに変化が生じる。したがって、得られるパルス幅bは、容量素子Cの容量値を示す値となる。
【0068】
第20図は、2つの容量素子C1,C2の容量値の差ΔCを測定するための回路の一例である。入力端子T3に与えられた信号は2つの経路に分岐し、インバータ161および162を通る。上の経路では、インバータ161を通った信号は、抵抗163と容量素子C1とによって構成される遅延回路を経て、排他的OR回路165の一方の入力信号となる。下の経路では、インバータ162を通った信号は、抵抗164と容量素子C2とによって構成される遅延回路を経て、排他的OR回路165のもう一方の入力信号となる。排他的OR回路165の論理出力は、出力端子T4に与えられる。ここで、インバータ161,162は、後段の遅延回路に対する十分な駆動能力を与える目的で設けられた素子であり、両者は同じ動作特性をもつ。
【0069】
このような回路において、入力端子T3に所定周期の交流信号を供給した場合に、出力端子T4にどのような信号が得られるかを考える。第21図に示すように、入力端子T3に矩形交流信号を供給すると、排他的OR回路165の一方の入力端であるノードN3における波形は、所定の遅延時間d1をもった反転波形となる。同様に、もう一方の入力端であるノードN4における波形は、所定の遅延時間d2をもった反転波形となる。この結果、出力端子T4に得られる排他的OR回路165の出力波形は、図に示すように、パルス幅dをもった波形となる。ここで、パルス幅dは、遅延時間d1とd2との差に相当する値であり、2つの容量素子C1,C2の容量値の差ΔCに対応する値となる。こうして、容量値の差ΔCをパルス幅dとして得ることができる。
【0070】
<1.5> 変形例1
上述した第1の実施例に係るセンサでは、クーロン力に基づく吸引力を作用させて振動子130を振動させている。たとえば、振動子130をX軸方向に振動させる場合は、第9図に示すように両電極層E1,F1に逆極性の電荷を供給して吸引力を作用させた第1の状態と、第10図に示すように両電極層E2,F2に逆極性の電荷を供給して吸引力を作用させた第2の状態と、が交互に繰り返されるようにすればよい。しかしながら、このような振動をより安定させるには、吸引力とともに排斥力を作用させるのが好ましい。たとえば、第22図に示すように、上部電極層E1に正の電荷を、下部電極層F1に負の電荷を、それぞれ供給して、両電極層間に吸引力を作用させるのと同時に、上部電極層E2および下部電極層F2の両方に負の電荷を供給し(両方に正の電荷を供給してもよい)、両電極層間に排斥力を作用させると、振動子130をX軸の正方向にΔXだけ変位させる動作をより安定して行うことができる。第9図に示す状態と、第22図に示す状態とは、振動子130に変位ΔXを生じさせるという点では同じであるが、前者は1か所に作用する力に依存しているのに対し、後者は2か所に作用する力に依存しており、後者の方が前者より安定する。
【0071】
同様に、第10図に示すように、振動子130をX軸の負方向に−ΔXだけ変位させる場合にも、第23図に示すように、上部電極層E2に正の電荷を、下部電極層F2に負の電荷を、それぞれ供給して、両電極層間に吸引力を作用させるのと同時に、上部電極層E1および下部電極層F1の両方に負の電荷を供給し(両方に正の電荷を供給してもよい)、両電極層間に排斥力を作用させると、動作をより安定させることができる。結局、第22図に示す第1の状態と、第23図に示す第2の状態と、が交互に繰り返されるように、各電極層に所定の極性の電荷を所定のタイミングで供給するようにすれば、振動子130をX軸方向に安定して振動させることができるようになる。振動子130をY軸方向に振動させる場合も全く同様である。
【0072】
次に、振動子130をZ軸方向に振動させる場合を考える。前述した実施例では、第11図に示すように、上部電極層E5に正の電荷を、下部電極層F5に負の電荷を、それぞれ供給して両電極層間に吸引力を作用させた第1の状態と、第6図に示すように、いずれの電極層にも電荷供給を行わない中立の状態と、が交互に繰り返されるようにして振動Uzを発生させていた。この場合にも、両電極層間の排斥力を利用すると、動作をより安定させることができる。すなわち、第24図に示すように、上部電極層E5および下部電極層F5の両方に正の電荷を供給し(両方に負の電荷を供給してもよい)、両電極層間に排斥力を作用させると、振動子130はZ軸の負の方向に変位−ΔZを生じることになる。そこで、第11図に示す第1の状態と、第24図に示す第2の状態と、が交互に繰り返されるように、各電極層に所定の極性の電荷を所定のタイミングで供給するようにすれば、振動子130をZ軸方向に安定して振動させることができるようになる。
【0073】
しかしながら、対向する一対の電極層に逆極性の電荷を供給することは容易にできるが、同極性の電荷を供給するには工夫が必要である。すなわち、逆極性の電荷を供給するには、両電極層間に所定の電圧を印加すればよいが、同極性の電荷を供給するには、そのような方法は適用できない。この問題を解決するためには、各電極層を誘電体を介した二層構造にする方法が利用できる。第25図は、このような構造を採ったセンサの側断面図である。下部電極層F1〜F5は、誘電体基板171の上面に形成され、この誘電体基板171と可撓基板110との間には、補助電極層F1a〜F5aが形成されている。補助電極層F1a〜F5aは、それぞれ下部電極層F1〜F5と同じ形状をしており同じ位置に配置されている。同様に、上部電極層E1〜E5は、誘電体基板172の下面に形成され、この誘電体基板172と固定基板120との間には、補助電極層E1a〜E5aが形成されている。補助電極層E1a〜E5aは、それぞれ上部電極層E1〜E5と同じ形状をしており同じ位置に配置されている。
【0074】
このような二層構造にしておけば、特定の電極層間に吸引力を作用させることも、排斥力を作用させることも、自由にできるようになる。これを具体例で示す。第26図は、第25図に示すセンサにおける各電極層および各誘電体基板の部分のみを抽出して示した図である。たとえば、電極層E1,F1間に吸引力を作用させたい場合には、図に示すように、両電極層間に電圧Vを印加して逆極性の電荷を供給すればよい。これに対して、電極層E2,F2間に排斥力を作用させたい場合には、図に示すように、補助基板E2a,F2aと電極層E2,F2との間に電圧Vを印加すればよい。誘電体基板171を挟んで電圧Vが印加されるため、電極層F2に負の電荷が、補助電極層F2aに正の電荷が発生し、同様に、誘電体基板172を挟んで電圧Vが印加されるため、電極層E2に負の電荷が、補助電極層E2aに正の電荷が発生する。こうして結果的に、両電極層E2,F2に同極性の電荷が供給されることになり、両者間に排斥力を作用させることができる。
【0075】
<1.6> 変形例2
上述の変形例1は、第6図に示すセンサに比べて構造はやや複雑になる。これに対して、ここに述べる変形例2は、第6図に示すセンサの構造をより単純化したものである。すなわち、この変形例2のセンサでは、第27図に示すように、上部電極層E1〜E5の代わりに単一の共通電極層E0が形成されている。この共通電極層E0は、下部電極層F1〜F5のすべてに対向するような大きさの円盤状の電極層である。このように、一方の電極層を1枚の共通電極層にしても、常にこの共通電極層側を基準電位にとるようにすれば、このセンサの動作には何ら支障は生じない。たとえば、振動子130に振動を与えるために、特定の電極層間に電圧を印加する場合、共通電極層E0側をアースにして、下部電極層F1〜F5のうちの所定の電極層に電圧を供給すればよい。また、容量値の変化に基づいてコリオリ力の検出を行う場合も同様に、共通電極層E0側をアースにして各容量素子C1〜C5を取り扱うようにすればよい。
【0076】
このように、5枚の上部電極層E1〜E5を単一の共通電極層E0に置き換えることにより、センサの機械的な構造や、必要な配線はより単純になる。また、固定基板120を金属などの導電性の材料で構成するようにすれば、固定基板120の下面を共通電極層E0として用いることができるため、わざわざ固定基板120の下面に別体として共通電極層E0を形成する必要がなくなり、構造は更に単純になる。
【0077】
以上は、上部電極層E1〜E5側を共通電極層E0に置き換えた例であるが、逆に、下部電極層F1〜F5側を共通電極層F0に置き換えることも可能である。
【0078】
<<< Section 2 第2の実施例 >>>
<2.1> 第2の実施例に係るセンサの構造
続いて、本発明の第2の実施例に係る多軸角速度センサについて説明する。この第2の実施例も、振動機構としてクーロン力を利用した機構を用い、検出機構として静電容量の変化を利用する機構を用いた点において、前述した第1の実施例のセンサと同様である。ただ、その構造は複数の基板を積層したものになっており、より大量生産に向いたものとなっている。
【0079】
第28図は、この第2の実施例に係る多軸角速度センサの側断面図である。このセンサの主たる構成要素は、第1の基板210、第2の基板220、第3の基板230である。この実施例では、第1の基板210はシリコン基板から構成されており、第2の基板220および第3の基板230はガラス基板から構成されており、各基板は互いに陽極接合によって接合されている。。第1の基板210は、このセンサの中枢をなす役割を果たす基板であり、第29図はこの第1の基板210の上面図である。第29図に明瞭に示されているように、第1の基板210には、L字型の開口部H1〜H4が設けられている。各開口部H1〜H4は、下面にゆくほど幅が広がるようなテーパ状になっている。第29図における切断線28−28に沿って切った側断面図が第28図であり、切断線30−30に沿って切った側断面図が第30図である。第30図には、開口部H3,H4のテーパ状の断面が示されている。第29図において、4つのL字型開口部H1〜H4によって囲まれた内側の正方形状の部分が振動子211を構成し、L字型開口部H1〜H4の外側部分がこの振動子211についての支持枠213を構成している。振動子211は、支持枠213に対して4か所で連結されている。この4か所の連結部分が架橋部212である。別言すれば、正方形状の振動子211は、4か所で架橋部212によって吊られた状態になっている。しかも架橋部212は、第28図あるいは第30図に示されているように、第1の基板210の本来の厚みに比べて非常に薄い板状の部材であり、可撓性を有する。このため、振動子211は架橋部212に吊られた状態で、ある程度の自由度をもって動くことができる。振動子211の上面には、第29図に示されているように、5枚の下部電極層G1〜G5が形成されている。これらの下部電極層G1〜G5は、前述した第1の実施例のセンサにおける下部電極層F1〜F5と同様に、振動子211に対して振動を発生させる機能と、振動子211に作用するコリオリ力を検出する機能とを果たすことになる。
【0080】
第2の基板220は、第1の基板210の周囲部分を支えるための台座として機能する。そのため、第2の基板220の上面の周囲以外の部分には、窪み221が形成されている。この窪み221の形成により、振動子211は第2の基板に接触することなしに宙吊りの状態を保つことができる。
【0081】
第3の基板230は、第1の基板210の上面を覆う蓋として機能している。この第3の基板230の下面図を第31図に示す。この第3の基板230の下面は、周囲のわずかな部分を除いて切削されており、切削面231には上部電極層G0が形成されている。上部電極層G0は正方形状をしており、第28図あるいは第30図の側断面図に示されているように、下部電極層G1〜G5のすべてに対して向かい合った状態となる。この下部電極層G0は、前述した第1の実施例において変形例2として示した第27図のセンサの共通電極層E0に相当する。
【0082】
このような3枚の基板からなるセンサは、大量生産に適している。すなわち、各基板に対してそれぞれ別個に機械加工(あるいは、エッチングなどの化学加工)を施し、電極層や配線層を形成した後、これらを接合して組み立てればよい。第1の基板210としてシリコン基板を用いれば、電極層G1〜G5は拡散層で形成することができる。また、電極層G0はアルミニウムなどの蒸着層で形成すればよい。このようにして、電極層や配線層は一般的な半導体プレーナプロセスによって形成することができる。
【0083】
<2.2> 振動子の振動機構
さて、振動子211上に形成された5枚の下部電極層G1〜G5と、これに対向する上部電極層G0と、の間に所定のタイミングで所定の電圧を供給することにより、両電極層間にクーロン力を作用させ、その結果として、振動子211を所定の方向に振動させることができる点は、前述の第1の実施例のセンサと同様である。ただ、この第2の実施例のセンサと、前述した第1の実施例のセンサとでは、電極層の配置が若干異なっている。第1の実施例のセンサでは、第7図に示すように、X軸上に電極層F1,F2が配され、Y軸上に電極層F3,F4が配されている。これに対して、ここで述べる第2の実施例のセンサでは、第29図に示すように、電極層G1〜G4はいずれもX軸上あるいはY軸上には配されていない。すなわち、電極層G1〜G4は、それぞれXY平面についての第1象限〜第4象限に配されている。このため、振動子211を特定の方向に振動させるために必要な電圧の印加方法は、前述の例とは若干異なる。以下、これを具体的に説明する。
【0084】
振動子211をX軸方向に振動させるには、次のようにする。ここでは、上部電極層G0の電位を基準電位としてアースにとり、この基準電位に対して所定の電圧(たとえば、+5V)を下部電極層G1〜G5に印加することにする。まず、下部電極層G1とG4との両方にそれぞれ+5Vの電圧を印加すれば、電極層G1,G0間および電極層G4,G0間にそれぞれ吸引力が作用することになる。これにより、振動子211はX軸の正の方向に変位ΔXを生じた状態になる。次に、下部電極層G1,G4の電位を基準電位に戻し、下部電極層G2とG3との両方にそれぞれ+5Vの電圧を印加する。すると、電極層G2,G0間および電極層G3,G0間にそれぞれ吸引力が作用することになる。これにより、振動子211はX軸の負の方向に変位−ΔXを生じた状態になる。この2つの状態が交互に繰り返されるように、各電極層へ所定の電圧を所定のタイミングで印加すれば、振動子211をX軸方向に振動させることができるようになる。
【0085】
振動子211をY軸方向に振動させる場合も同様である。まず、下部電極層G1とG2との両方にそれぞれ+5Vの電圧を印加すれば、電極層G1,G0間および電極層G2,G0間にそれぞれ吸引力が作用することになる。これにより、振動子211はY軸の正の方向に変位ΔYを生じた状態になる。次に、下部電極層G1,G2の電位を基準電位に戻し、下部電極層G3とG4との両方にそれぞれ+5Vの電圧を印加する。すると、電極層G3,G0間および電極層G4,G0間にそれぞれ吸引力が作用することになる。これにより、振動子211はY軸の負の方向に変位−ΔYを生じた状態になる。この2つの状態が交互に繰り返されるように、各電極層へ所定の電圧を所定のタイミングで印加すれば、振動子211をY軸方向に振動させることができるようになる。
【0086】
また、振動子211をZ軸方向に振動させるには、前述した第1の実施例のセンサと同じ方法を採ればよい。すなわち、下部電極層G5に+5Vを供給したり、0Vに戻したり、という操作を繰り返し行えばよい。
【0087】
<2.3> コリオリ力の検出機構
この第2の実施例に係るセンサにおいて、振動子211に作用したコリオリ力を検出する原理は、前述の第1の実施例に係るセンサと同様に、静電容量の変化を利用するものである。ただ、電極層の配置に若干の相違があるため、検出対象として用いる容量素子の組み合わせに若干の違いがある。以下、これを具体的に説明する。なお、ここでは、説明の便宜上、下部電極層G1〜G5と上部電極層G0との組み合わせによって構成される5組の容量素子を、それぞれ容量素子C1〜C5と呼び、これら容量素子の容量値も同じくC1〜C5と呼ぶことにする。
【0088】
まず、X軸方向に作用するコリオリ力Fxを検出する方法を検討する。第29図に示す電極層配置によれば、振動子211にX軸正方向へのコリオリ力Fxが作用すると、容量素子C1,C4の電極層間隔は縮み、容量素子C2,C3の電極層間隔は広がることが容易に想像できる。したがって、容量値C1,C4は増え、容量値C2,C3は減ることになる。そこで、(C1+C4)−(C2+C3)なる差を求めれば、この差がコリオリ力Fxに対応した値となる。
【0089】
次に、Y軸方向に作用するコリオリ力Fyを検出する方法を検討する。第29図に示す電極層配置によれば、振動子211にY軸正方向へのコリオリ力Fyが作用すると、容量素子C1,C2の電極層間隔は縮み、容量素子C3,C4の電極層間隔は広がることが容易に想像できる。したがって、容量値C1,C2は増え、容量値C3,C4は減ることになる。そこで、(C1+C2)−(C3+C4)なる差を求めれば、この差がコリオリ力Fyに対応した値となる。
【0090】
Z軸方向に作用するコリオリ力Fzを検出する方法は、前述した第1の実施例のセンサにおける検出方法と同様である。すなわち、容量素子C5の容量値C5が、コリオリ力Fzを示す値となる。
【0091】
なお、この実施例のセンサでは、同一の電極層を振動機構と検出機構との両方に同時に用いることになるため、振動を与えるための電圧供給回路と、コリオリ力に基づいて変化する容量値を検出する回路とは、互いに干渉しないようにする必要がある。
【0092】
<2.4> 変形例1
第32図に示すセンサは、第28図に示した第2の実施例に係るセンサの変形例である。この変形例では、第1の基板210、第2の基板220、第3の基板230、の他に、更に第4の基板240が用いられている。第4の基板240は、振動子241と台座242とによって構成されている。振動子241は上から見ると正方形状をしたブロックであり、台座242はその周囲を囲うような形状をしたフレームである。第4の基板の振動子241は第1の基板の振動子211に接合されており、振動子211および241は全体が1つの振動子として機能する。このように第4の基板240を付加することにより、振動子の質量を増加させることができ、より感度の高い検出が可能になる。なお、この変形例では、5つの下部電極層G1〜G5に対向する電極層として、共通の上部電極層G0を設ける代わりに、5つの上部電極層G6〜G10が設けられている。
【0093】
<2.5> 変形例2
第33図に示すセンサは、第28図に示した第2の実施例に係るセンサのまた別な変形例である。このセンサの中枢として機能する基板は可撓基板250である。第34図は、この可撓基板250の上面図である。図に破線で示されているように、可撓基板250の下面には、円環状の溝が形成されており、この溝が形成された部分は肉厚が薄いために可撓性をもっている(第33図に、可撓部252として示されている)。ここでは、この円環状の可撓部252に囲まれた内側の部分を作用部251と呼び、可撓部252の外側の部分を固定部253と呼ぶことにする。作用部251の下面には、ブロック状の振動子260が固着されている。また、固定部253は、台座270によって支持されており、台座270はベース基板280に固定されている。結局、振動子260は、台座270によって囲まれた空間内において宙吊りの状態となっている。肉厚の薄い可撓部252が可撓性をもっているため、振動子260は、ある程度の自由度をもってこの空間内で変位できる。また、可撓基板250の上部には、蓋基板290が所定の空間を確保しながら覆うように取り付けられている。
【0094】
第34図に示すように、可撓基板250の上面には、5枚の下部電極層F1〜F5が形成されている。これらの電極層は、第6図に示す第1の実施例に係るセンサにおける下部電極層F1〜F5と同形状、同配置のものである。また、蓋基板290の下面には、この5枚の下部電極層F1〜F5のすべてに対向する共通の上部電極層E0が形成されている。なお、このセンサの動作は、第27図に示すセンサの動作と同等であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0095】
<<< Section 3 第3の実施例 >>>
<3.1> 第3の実施例に係るセンサの構造
続いて、本発明の第3の実施例に係る多軸角速度センサについて説明する。この第3の実施例は、振動機構としてクーロン力を利用した機構を用いる点においては、前述した第1の実施例および第2の実施例のセンサと同様であるが、検出機構としてはピエゾ抵抗素子を利用した機構を用いている点に特徴がある。
【0096】
第35図は、この第3の実施例に係る多軸角速度センサの側断面図である。このセンサの主たる構成要素は、第1の基板310、第2の基板320、第3の基板330、第4の基板340である。この実施例では、第1の基板310と第3の基板330とはシリコン基板で構成され、第2の基板320と第4の基板340とはガラス基板で構成されている。このような4層の基板からなる構造は、前述した第2の実施例における第32図に示す変形例と実質的に同じものである。第1の基板310は、このセンサの中枢をなす役割を果たす基板であり、第36図はこの第1の基板310の上面図である。図に破線で示されているように、第1の基板310の下面には、円環状の溝が形成されており、この溝が形成された部分は肉厚が薄いために可撓性をもっている(第35図に、可撓部312として示されている)。ここでは、この円環状の可撓部312に囲まれた内側の部分を作用部311と呼び、可撓部312の外側の部分を固定部313と呼ぶことにする。第2の基板320は、ブロック状の振動子321と、その周囲を取り囲むようなフレーム状の台座322とによって構成されている。振動子321は、作用部311の底面に固着されている。また、台座322は固定部313の底面に固着されている。
【0097】
第3の基板330は、台座322を支持するためのベース基板としての役割を果たす。そのため、第3の基板330の上面の周囲以外の部分には、窪み331が形成されている。この窪み331の形成により、振動子321は第3の基板330に接触することなしに支持される。結局、振動子321は、台座322によって囲まれた空間内において宙吊りの状態となっている。第1の基板310において肉厚の薄い可撓部312が可撓性をもっているため、振動子321は、ある程度の自由度をもってこの空間内で変位できる。また、第1の基板310の上部には、第4の基板340が所定の空間を確保しながら覆うように取り付けられている。
【0098】
第36図に示すように、第1の基板310の上面には、5枚の下部電極層F1〜F5が形成されている。これらの電極層は、第6図に示す第1の実施例に係るセンサにおける下部電極層F1〜F5と等価のものである。ただし、後述するように、この第1の基板310の上面には、複数のピエゾ抵抗素子Rが形成されており、下部電極層F1〜F4の形状は、これらピエゾ抵抗素子Rの形成領域を避けるために、第6図に示すセンサにおける下部電極層F1〜F4の形状とは若干異なっている。また、第4の基板340の下面には、この5枚の下部電極層F1〜F5のすべてに対向する共通の上部電極層E0が形成されている。
【0099】
ピエゾ抵抗素子Rは、シリコンからなる第1の基板310の上面の所定位置に、不純物を注入することによって形成された素子であり、機械的な応力の作用により電気抵抗が変化する性質を有する。第36図に示すように、このピエゾ抵抗素子Rは、X軸に沿って4個、Y軸に沿って4個、そしてY軸に対して45°の傾きをもった斜方軸に沿って4個、合計で12個が配置されている。いずれも、肉厚の薄い可撓部312の部分に配置されており、振動子321の変位により可撓部312に撓みが生じると、この撓みに応じて抵抗値が変化するようになっている。なお、第35図の側断面図においては、図が繁雑になるのを避けるためこれらピエゾ抵抗素子Rの図示は省略している。ここでは、第37図に示すように、この12個の抵抗素子について、X軸に沿って配置された4個をRx1,Rx2,Rx3,Rx4と呼び、Y軸に沿って配置された4個をRy1,Ry2,Ry3,Ry4と呼び、斜方軸に沿って配置された4個をRz1,Rz2,Rz3,Rz4と呼ぶことにする。
【0100】
<3.2> 振動子の振動機構
このセンサにおいて、振動子321を所定の軸方向に振動させる機構は、第6図に示した第1の実施例に係るセンサと全く同様である。第36図に示す5枚の下部電極層F1〜F5は、第7図に示す5枚の下部電極層F1〜F5と、形状に若干の違いはあるものの本質的な機能の点では全く等価である。したがって、この5枚の下部電極層F1〜F5と、これに対向する共通の上部電極層E0と、の間に所定のタイミングで所定の電圧を供給することにより、両電極層間にクーロン力を作用させ、その結果として、振動子321をXYZ三次元座標系におけるX軸,Y軸,Z軸のいずれの方向にも振動させることができる。
【0101】
<3.3> コリオリ力の検出機構
この第3の実施例に係るセンサの特徴は、ピエゾ抵抗素子を用いてコリオリ力の検出を行う点にある。この検出方法を以下に説明する。いま、第38図に示すように、振動子321にX軸正方向のコリオリ力Fxが作用した場合を考える(図が繁雑になるのを避けるため、この図では、各電極層は図示を省略してある)。コリオリ力Fxが作用すると、第1の基板310の可撓部312に図のような撓みが生じる。そして、このような撓みは、X軸に沿って配置された4個のピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4の抵抗値を変化させる。具体的には、ピエゾ抵抗素子Rx1,Rx3の抵抗値は増え(図には“+”符号で示す)、ピエゾ抵抗素子Rx2,Rx4の抵抗値は減る(図には“−”符号で示す)。しかも増減の程度は、作用したコリオリ力Fxの大きさに比例する。また、X軸負方向のコリオリ力−Fxが作用した場合は、増減の関係が逆転する。したがって、これら各ピエゾ抵抗素子の抵抗値の変化を検出すれば、作用したコリオリ力Fxを求めることができる。
【0102】
実際には、4個のピエゾ抵抗素子Rx1〜Rx4によって、第39図に示すようなブリッジ回路を形成し、電源350によって所定の電圧を供給する。そして、電圧計361によってブリッジ電圧Vxを測定するようにする。ここで、コリオリ力が作用しない基準状態(第35図に示す状態)において、このブリッジ回路が平衡する(ブリッジ電圧Vxが零になる)ように設定しておけば、電圧計361によって測定されたブリッジ電圧Vxがコリオリ力Fxを示すことになる。
【0103】
一方、Y軸方向のコリオリ力Fyが作用すると、Y軸に沿って配置された4個のピエゾ抵抗素子Ry1〜Ry4について同様の抵抗値変化が起こる。したがって、これら4個のピエゾ抵抗素子によって、第40図に示すようなブリッジ回路を形成し、電源350によって所定の電圧を供給すれば、電圧計362によって測定されたブリッジ電圧Vyがコリオリ力Fyを示すことになる。
【0104】
また、Z軸方向のコリオリ力Fzが作用すると、斜方軸に沿って配置された4個のピエゾ抵抗素子Rz1〜Rz4について抵抗値変化が起こる。たとえば、Z軸正方向のコリオリ力が作用すると、ピエゾ抵抗素子Rz1,Rz4の抵抗値は減り、ピエゾ抵抗素子Rz2,Rz3の抵抗値は増える。したがって、これら4個のピエゾ抵抗素子によって、第41図に示すようなブリッジ回路を形成し、電源350によって所定の電圧を供給すれば、電圧計363によって測定されたブリッジ電圧Vzがコリオリ力Fzを示すことになる。
【0105】
このように、コリオリ力の検出をピエゾ抵抗素子を用いて行うようにすれば、振動子321を所定の軸方向に振動させる機構(電極層間のクーロン力を利用)と、コリオリ力を検出する機構と、が完全に独立した機構となり、相互の干渉は全く生じることがない。
【0106】
<3.4> 変形例
上述したセンサにおける各下部電極層F1〜F4は、前述した第1の実施例に係るセンサと同様に、X軸およびY軸上に配されている。これに対し、第29図に示した第2の実施例に係るセンサにおける下部電極層G1〜G4のように、XY平面についての第1象限〜第4象限に配置することも可能である。また、4個のピエゾ抵抗素子Rz1〜Rz4を配置する軸の向きは任意でよく、X軸あるいはY軸に平行な軸に沿って配置してもかまわない。
【0107】
<<< Section 4 第4の実施例 >>>
<4.1> 第4の実施例に係るセンサの構造
ここでは、本発明の第4の実施例に係る多軸角速度センサについて説明する。この第4の実施例は、振動機構および検出機構の双方に圧電素子を利用した機構を用いたセンサである。
【0108】
第42図は、この第4の実施例に係る多軸角速度センサの側断面図である。このセンサは、第6図に示した第1の実施例に係るセンサと非常によく似た構造をもち、次のような各構成要素からなる。すなわち、基本的には、円盤状の可撓基板410および円盤状の固定基板420の間に、同じく円盤状をした圧電素子430が介挿された構造となっている。可撓基板410の下面には、円柱状の振動子440が固着されている。また、可撓基板410の外周部分および固定基板420の外周部分は、いずれもセンサ筐体450によって支持されている。圧電素子430の上面には、5枚の上部電極層E1〜E5(図42には、その一部だけが示されている)が形成され、同様に下面には5枚の下部電極層F1〜F5(やはり、その一部だけが示されている)が形成されており、上部電極層E1〜E5の上面は固定基板420の下面に固着され、下部電極層F1〜F5の下面は可撓基板410の上面に固着されている。ここで、固定基板420は十分な剛性をもち、撓みを生じることはないが、可撓基板410は可撓性をもち、いわゆるダイヤフラムとして機能する。ここでは、説明の便宜上、振動子440の重心位置Oを原点としたXYZ三次元座標系を考えることにする。すなわち、図の右方向にX軸、上方向にZ軸、そして紙面に垂直な方向にY軸を定義する。図42は、このセンサをXZ平面で切った断面図ということになる。なお、上部電極層E1〜E5および下部電極層F1〜F5の形状および配置は、第6図に示す第1の実施例のセンサと全く同じである(第7図および第8図参照)。また、この実施例では、可撓基板410および固定基板420は、いずれも絶縁性の材料によって構成されている。これらの基板を金属などの導電性の材料で構成したい場合には、これらの基板と各電極層との間に絶縁膜を形成し、電極層同士が短絡しないようにすればよい。
【0109】
一般に、圧電素子には、外部から圧力を加えると、圧電素子内部の所定方向に電圧が発生する第1の性質と、逆に、外部から電圧を加えると、圧電素子内部の所定方向に圧力が発生する第2の性質と、が備わっている。この2つの性質は表裏一体の関係にある。どの方向に圧力/電圧を加えると、どの方向に電圧/圧力が発生するかは、個々の圧電素子によって固有のものであり、ここでは、このような方向性の性質を「分極特性」と呼ぶことにする。この実施例のセンサに用いられている圧電素子430は、第43図に示すような分極特性をもった圧電セラミックスが用いられている。すなわち、前述した第1の性質の観点からみれば、第43図(a) に示すように、厚み方向に伸ばす方向の力が作用した場合には、上部電極層E側に正の電荷が、下部電極層F側に負の電荷が、それぞれ発生し、第43図(b) に示すように、厚み方向に縮める方向の力が作用した場合には、上部電極層E側に負の電荷が、下部電極層F側に正の電荷が、それぞれ発生するような分極特性をもっている。逆に、前述した第2の性質の観点からみれば、第43図(a) に示すように、上部電極層E側に正の電荷を、下部電極層F側に負の電荷を、それぞれ供給すれば、厚み方向に伸ばす方向の力が発生し、第43図(b) に示すように、上部電極層E側に負の電荷を、下部電極層F側に正の電荷を、それぞれ供給すれば、厚み方向に縮める方向の力が発生するような分極特性をもっている。
【0110】
<4.2> 振動子の振動機構
いま、このセンサの所定の電極層に所定の極性をもった電荷を供給した場合にどのような現象が起こるかを検討する。電極層E1に負、F1に正の電荷を供給すると、第43図(b) に示す性質により、この両電極層に挟まれた圧電素子の一部分には、厚み方向に縮む方向の力が発生する。また、電極層E2に正、F2に負の電荷を供給すると、第43図(a) に示す性質により、この両電極層に挟まれた圧電素子の一部分には、厚み方向に伸びる方向の力が発生する。この結果、圧電素子430は、第44図に示すように変形し、振動子440はX軸正方向に変位することになる。ここで、電極層E1,F1,E2,F2に供給していた電荷の極性を逆転させると、圧電素子の伸縮状態も逆転することになり、振動子440はX軸負方向に変位する。この2つの変位状態が交互に起こるように、供給電荷の極性を交互に反転させてやれば、振動子440をX軸方向に往復運動させてやることができる。別言すれば、振動子440に対して、X軸方向に関する振動Uxを与えることができる。
【0111】
このような電荷供給は、対向する電極層間に交流信号を印加することにより実現できる。すなわち、電極層E1,F1間に第1の交流信号を印加し、電極層E2,F2間に第2の交流信号を印加する。そして、第1の交流信号および第2の交流信号として、互いに周波数は同じで位相が反転した信号を用いるようにすれば、振動子440をX軸方向に振動させることができる。
【0112】
振動子440に対して、Y軸方向に関する振動Uyを与える方法も全く同様である。すなわち、電極層E3,F3間に第1の交流信号を印加し、電極層E4,F4間に第2の交流信号を印加すればよい。
【0113】
次に、振動子440に対して、Z軸方向に関する振動Uzを与える方法について考えてみる。いま、電極層E5に負、F5に正の電荷を供給すると、第43図(b) に示す性質により、この両電極層に挟まれた圧電素子の一部分には、厚み方向に縮む方向の力が発生する。この結果、圧電素子430は、第45図に示すように変形し、振動子440はZ軸正方向に変位することになる。ここで、電極層E5,F5に供給していた電荷の極性を逆転させると、圧電素子の伸縮状態も逆転することになり、振動子440はZ軸負方向に変位する。この2つの変位状態が交互に起こるように、供給電荷の極性を交互に反転させてやれば、振動子440をZ軸方向に往復運動させてやることができる。別言すれば、振動子440に対して、Z軸方向に関する振動Uzを与えることができる。このような電荷供給は、対向する電極層E5,F5間に交流信号を印加することにより実現できる。
【0114】
以上のように、特定の電極層の組に対して、所定の交流信号を供給すれば、振動子430をX軸,Y軸,Z軸に沿って振動させることができる。
【0115】
<4.3> コリオリ力の検出機構
続いて、この第4の実施例に係るセンサにおいて各軸方向に作用したコリオリ力の検出方法について説明する。なお、紙面を節約する上で、前述した振動子の振動方法の説明に用いた第44図および第45図を、このコリオリ力の検出方法の説明においても用いることにする。
【0116】
まず、第44図に示すように、振動子440に対してX軸方向のコリオリ力Fxが作用した場合を考える(第5図に示す原理によれば、このようなコリオリ力Fxの測定は、Y軸方向への振動Uyを与えた状態で行われるため、振動子440は第44図における紙面に垂直な方向に振動していることになるが、このようなY軸方向への振動現象は、X軸方向のコリオリ力Fxの測定には影響を与えない)。このようなコリオリ力Fxの作用により、ダイヤフラムの機能を果たす可撓基板410に撓みが生じ、圧電素子430の右半分には厚み方向に縮む力が、左半分には厚み方向に伸びる力が、それぞれ作用することになる。Y軸方向のコリオリ力Fyが作用した場合も、軸の方向が90°ずれるだけで、これと同様の現象が起こることになる。また、Z軸方向のコリオリ力Fzが作用した場合は、第45図に示すように、圧電素子430が全体的に厚み方向に縮む力を受けることになる。
【0117】
圧電素子430に上述したような圧力が加わると、第43図に示す性質により、各電極層に所定の極性の電荷が発生する。そこで、この発生した電荷を検出すれば、作用したコリオリ力を検出することができる。具体的には、各電極層に対して、第46図〜第48図に示すような配線を施すことにより、作用したコリオリ力Fx,Fy,Fzを検出することができる。たとえば、X軸方向のコリオリ力Fxは、第46図に示すように、端子Tx1と端子Tx2との間に生じる電圧差Vxとして検出することができる。この理由は、第44図に示すような撓みにより、各電極層に発生する電荷の極性を考えれば容易に理解できる。すなわち、電極層E2,F2に関しては、これらに挟まれた圧電素子430の一部分が厚み方向に伸びる力を受けているので、第43図(a) に示したように、上部電極層E2には正の電荷が、下部電極層F2には負の電荷が、それぞれ発生する。一方、電極層E1,F1に関しては、これらに挟まれた圧電素子430の一部分が厚み方向に縮む力を受けているので、第43図(b) に示したように、上部電極層E1には負の電荷が、下部電極層F1には正の電荷が、それぞれ発生する。したがって、第46図に示すような配線を施しておけば、正の電荷はすべて端子Tx1に集まり、負の電荷はすべて端子Tx2に集まり、両端子間の電位差Vxがコリオリ力Fxを示すものになる。全く同様に、Y軸方向のコリオリ力Fyは、上部電極層E3,E4および下部電極層F3,F4に対して、第47図に示すような配線を施せば、端子Ty1と端子Ty2との間の電位差Vyとして検出することができる。また、Z軸方向のコリオリ力Fzは、第48図に示すように、端子Tz1と端子Tz2との間に生じる電位差Vzとして検出することができる。この理由は、第45図に示すような撓みにより、各電極層に発生する電荷の極性を考えれば容易に理解できる。すなわち、電極層E5,F5に関しては、これらに挟まれた圧電素子430の一部分が厚み方向に縮む力を受けているので、第43図(b) に示したように、上部電極層E5には負の電荷が、下部電極層F5には正の電荷が、それぞれ発生する。そこで、第48図に示すように、正の電荷を端子Tz1に集め、負の電荷を端子Tz2に集めるような配線を施しておけば、両端子間の電位差VzがZ軸方向のコリオリ力Fzを示すものになる。
【0118】
<4.4> 角速度の検出
本発明に係る多軸角速度センサの目的は、§0において説明したように、第1の軸まわりの角速度ωを検出するために、振動子に対して第2の軸方向の振動Uを与え、そのときに第3の軸方向に発生するコリオリ力Fを検出することにある。上述したように、この第4の実施例に係るセンサでは、所定の電極層間に交流信号を印加することにより、振動子430をX軸,Y軸,Z軸のいずれかの軸方向に沿って振動させることができ、そのときに発生した各軸方向のコリオリ力Fx,Fy,Fzを、それぞれ電位差Vx,Vy,Vzとして検出することができる。したがって、第3図〜第5図に示す原理により、X軸,Y軸,Z軸のいずれかの軸まわりの角速度ωを検出することができる。
【0119】
ただ、この実施例に係るセンサでは、振動機構および検出機構の双方に圧電素子を利用した機構が用いられている。別言すれば、同一の電極層が、振動を発生させるための電荷を供給する役割(振動機構としての役割)を果たすこともあれば、コリオリ力によって発生した電荷を検出する役割(検出機構としての役割)を果たすこともある。同一の電極層によって、同時にこれら2つの役割を果たすことができるようにすることは比較的困難である。しかしながら、このセンサでは、各電極層について次のような役割分担が行われるため、同一の電極層に同時に2つの役割が与えられることはない。
【0120】
まず、第3図に示す原理に基づいて、X軸まわりの角速度ωxを検出する動作について考えてみよう。この場合、振動子に対してZ軸方向の振動Uzを与えたときに、Y軸方向に発生するコリオリ力Fyを検出する必要がある。第42図に示すセンサにおいて、振動子430に振動Uzを与えるには、電極層E5,F5間に交流信号を供給すればよい。また、振動子430に作用するコリオリ力Fyを検出するには、第47図の回路図に示されているように、電極層E3,F3,E4,F4に発生する電荷を検出すればよい。残りの電極層E1,F1,E2,F2は、この検出動作では使用されない。
【0121】
続いて、第4図に示す原理に基づいて、Y軸まわりの角速度ωyを検出する動作について考えてみよう。この場合、振動子に対してX軸方向の振動Uxを与えたときに、Z軸方向に発生するコリオリ力Fzを検出する必要がある。第42図に示すセンサにおいて、振動子430に振動Uxを与えるには、電極層E1,F1間およびE2,F2間にそれぞれ位相が逆転した交流信号を供給すればよい。また、振動子430に作用するコリオリ力Fzを検出するには、第48図の回路図に示されているように、電極層E5,F5に発生する電荷を検出すればよい。残りの電極層E3,F3,E4,F4は、この検出動作では使用されない。
【0122】
最後に、第5図に示す原理に基づいて、Z軸まわりの角速度ωzを検出する動作について考えてみよう。この場合、振動子に対してY軸方向の振動Uyを与えたときに、X軸方向に発生するコリオリ力Fxを検出する必要がある。第42図に示すセンサにおいて、振動子430に振動Uyを与えるには、電極層E3,F3間およびE4,F4間にそれぞれ位相が逆転した交流信号を供給すればよい。また、振動子430に作用するコリオリ力Fxを検出するには、第46図の回路図に示されているように、電極層E1,F1,E2,F2に発生する電荷を検出すればよい。残りの電極層E5,F5は、この検出動作では使用されない。
【0123】
以上のように、このセンサを用いて角速度ωx,ωy,ωzのいずれか1つを検出する場合、各電極層についての役割分担が都合よくなされ、支障なく検出が行われることがわかる。もっとも、角速度ωx,ωy,ωzのうちの複数を同時に検出することはできないので、3つの角速度を検出する場合には、後述するように時分割処理を行い、1つずつ順に検出を行う必要がある。
【0124】
<4.5> 変形例1
上述した第4の実施例に係るセンサによれば、XYZ三次元座標系におけるコリオリ力Fx,Fy,Fzを、それぞれ電位差Vx,Vy,Vzとして求めることができる。そして、これらの電位差に基づいて角速度の検出が可能である。しかしながら、これらの電位差を検出するためには、各電極層に対して、第46図〜第48図の回路図に示すような配線を行う必要がある。この配線は、上部電極層と下部電極層とが入り乱れたものとなっており、このセンサを大量生産する場合、製品の全コストに比べて配線のためのコストが無視できなくなる。この変形例1は、圧電素子の分極特性を部分的に変えることにより、配線を単純化し製造コストを低減するようにしたものである。
【0125】
一般に、任意の分極特性をもった圧電素子を製造することは、現在の技術で可能である。たとえば、上述した第4の実施例に係るセンサにおいて用いられている圧電素子430は、第43図に示すような分極特性をもったものであった。これに対して、第49図に示すような分極特性をもった圧電素子460を製造することも可能である。すなわち、第49図(a) に示すように、厚み方向に伸ばす方向の力が作用した場合には、上部電極層E側に負の電荷が、下部電極層F側に正の電荷が、それぞれ発生し、逆に、第49図(b) に示すように、厚み方向に縮める方向の力が作用した場合には、上部電極層E側に正の電荷が、下部電極層F側に負の電荷が、それぞれ発生するような分極特性をもっている。ここでは、便宜上、第43図に示すような分極特性をタイプI、第49図に示すような分極特性をタイプIIと呼ぶことにする。タイプIの分極特性をもった圧電素子430と、タイプIIの分極特性をもった圧電素子460とは、上面および下面に発生する電荷の符号が逆転していることになる。もっとも、圧電素子430の上下を逆にすれば圧電素子460になるので、両者は単体としてみれば全く同じ圧電素子ということができ、両者を区別する意味はあまりない。しかしながら、1つの圧電素子の一部分にタイプIの分極特性をもたせ、別な一部分にタイプIIの分極特性をもたせることも可能である。ここで述べる変形例は、このような局在的な分極処理を施した圧電素子を用いることにより、多軸角速度センサの構造を単純化することに特徴がある。
【0126】
いま、第50図に示すような圧電素子470を考える。この圧電素子470は、形状は上述した第42図のセンサにおいて用いられている圧電素子430と全く同じ円盤状をした素子である。しかしながら、その分極特性は圧電素子430とは異なっている。圧電素子430は、前述したように、すべての部分がタイプIの分極特性をもつ素子であった。これに対し、圧電素子470は、第50図に示すように、5つの領域A1〜A5においてタイプIまたはタイプIIのいずれかの分極特性をもつ。すなわち、領域A2,A4においてはタイプIの分極特性を示し、領域A1,A3,A5においてはタイプIIの分極特性を示す。ここで、領域A1〜A5は、それぞれ上部電極層E1〜E5あるいは下部電極層F1〜F5が形成される領域に対応する。
【0127】
さて、第42図のセンサにおいて、圧電素子430の代わりに、第50図に示すような局在的分極特性をもった圧電素子470を用いた場合、各電極層に発生する電荷の極性がどのように変わるかを考えてみる。すると、タイプIIの分極特性をもった領域に形成されている上部電極層E1,E3,E5、および下部電極層F1,F3,F5に発生する電荷の極性が、圧電素子430を用いたセンサに対して反転することが理解できよう。このため、各電極層に対して、第51図〜第53図に示すような配線を施しておけば、コリオリ力Fx,Fy,Fzを、それぞれ電位差Vx,Vy,Vzとして求めることができるようになる。たとえば、X軸方向のコリオリ力Fxに関しては、電極層E1,F1に発生する電荷の極性が前述の例に対して逆転するため、第46図に示す配線は第51図に示す配線に置き換えられる。同様に、Y軸方向のコリオリ力Fyに関しては、電極層E3,F3に発生する電荷の極性が逆転するため、第47図に示す配線は第52図に示す配線に置き換えられる。更に、Z軸方向のコリオリ力Fzに関しては、電極層E5,F5に発生する電荷の極性が逆転するため、第48図に示す配線は第53図に示す配線に置き換えられる。
【0128】
なお、局在的分極特性をもった圧電素子470を用いた場合、振動子430を振動させるために印加する交流信号の極性も、必要に応じて変えねばならない。すなわち、第50図に示す分極特性分布をもった圧電素子470を用いた場合、領域A1に形成された電極層E1,F1と、領域A2に形成された電極層E2,F2と、に対して位相が同じ交流信号を与えれば、振動子430をX軸方向に振動させることができ、同様に、領域A3に形成された電極層E3,F3と、領域A4に形成された電極層E4,F4と、に対して位相が同じ交流信号を与えれば、振動子430をY軸方向に振動させることができることが理解できよう。
【0129】
第46図〜第48図に示す配線に対して、第51図〜第53図に示す配線は、実際のセンサを製造する上で重大なメリットを有する。第51図〜第53図に示す配線の特徴は、X軸,Y軸,Z軸のいずれの方向のコリオリ力が作用した場合であっても、各軸の正方向にコリオリ力が作用したのであれば、必ず上部電極層側に正の電荷が、下部電極層側に負の電荷が、それぞれ発生する点にある。この特徴を利用すれば、センサ全体の配線を単純化することが可能になる。たとえば、第51図〜第53図における端子Tx2,Ty2,Tz2を、センサ筐体450に接続して基準電位(アース)にとった場合を考える。この場合、5枚の下部電極層F1〜F5は互いに導通状態になる。このようにしても、X軸方向のコリオリ力Fxを示す電位差Vxは端子Tx1のアースに対する電圧として得られ、Y軸方向のコリオリ力Fyを示す電位差Vyは端子Ty1のアースに対する電圧として得られ、Z軸方向のコリオリ力Fzを示す電位差Vzは端子Tz1のアースに対する電圧として得られるので、このセンサは何ら支障なく動作する。しかも5枚の下部電極層F1〜F5についての配線は、互いに導通させるだけでよいので、非常に単純な配線ですむ。
【0130】
<4.6> 変形例2
上述した変形例1のように、局在的な分極特性をもった圧電素子470を用いた場合、5枚の下部電極層F1〜F5を導通させる配線が可能になる。このように、下部電極層F1〜F5を導通させることができるのであれば、あえてこれら5枚の電極層を、それぞれ独立した電極層にしておく必要はない。すなわち、第54図の側断面図に示されているように、共通の下部電極層F0を1枚だけ設けるようにすればよい。共通の下部電極層F0は、1枚の円盤状の電極層であり、5枚の上部電極層E1〜E5のすべてに対向した電極となる。
【0131】
<4.7> 変形例3
上述した変形例2の構造を更に単純化するには、可撓基板410の代わりに、導電性の材料(たとえば、金属)からなる可撓基板480を用いればよい。こうすれば、第55図の側断面図に示されているように、特別な下部電極層F0を用いずに、圧電素子470の下面を可撓基板480の上面に直接接合した構造が実現できる。この場合、可撓基板480自身が共通の下部電極層F0として機能することになる。
【0132】
また、上述の変形例2,3では、下部電極層側を共通の単一電極層としているが、逆に上部電極層側を共通の単一電極層とすることも可能である。
【0133】
<4.8> その他の変形例
上述したセンサは、いずれも物理的に単一の圧電素子430あるいは470を用いているが、これらを物理的に複数の圧電素子で構成してもかまわない。たとえば、第50図において、領域A1〜A5のそれぞれを別個独立した圧電素子で構成し、合計で5個の圧電素子を用いるようにしてもかまわない。このように、物理的にいくつの圧電素子を用いるかは、設計上適宜変更できる事項である。
【0134】
また、上述したセンサでは、可撓基板410,480の外周部分はセンサ筐体450によって支持されているが、可撓基板は必ずしもセンサ筐体に固着する必要はない。たとえば、第56図に示すように、可撓基板480の代わりに直径が少し小さな可撓基板490を用い、可撓基板490の周囲を自由端としておくことも可能である。
【0135】
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<5.1> 第5の実施例に係るセンサの構造
ここでは、本発明の第5の実施例に係る多軸角速度センサについて説明する。この第5の実施例も、前述した第4の実施例と同様に、振動機構および検出機構の双方に圧電素子を利用した機構を用いたセンサである。
【0136】
第57図は、この第5の実施例に係る多軸角速度センサの上面図である。可撓基板510はいわゆるダイヤフラムとして機能する可撓性をもった円盤状の基板であり、この可撓基板510の上には、いわゆるドーナツ盤状をした圧電素子520が配置されている。この圧電素子520の上面には、それぞれ図示したような形状をした16枚の上部電極層L1〜L16が、それぞれ図示した位置に形成されている。また、この圧電素子520の下面には、上部電極層L1〜L16のそれぞれと全く同じ形状をした16枚の下部電極層M1〜M16(第57図には示されていない)が、上部電極層L1〜L16のそれぞれと対向する位置に形成されている。第58図は、このセンサの側断面図である(図が繁雑になるのを避けるため、各電極層については、断面切り口部分のみを描いてある。以下の側断面図も同様)。この図に明瞭に示されているように、ドーナツ盤状の圧電素子520は、16枚の上部電極層L1〜L16(第58図には、L1〜L4のみ示されている)と、16枚の下部電極層M1〜M16(第58図には、M1〜M4のみ示されている)と、によって挟まれ、いわゆるサンドイッチの状態になっている。そして、下部電極層M1〜M16の下面が可撓基板510の上面に固着されている。一方、可撓基板510の下面には、振動子550が固着されており、可撓基板510の周囲部分はセンサ筐体560によって固着支持されている。この実施例では、可撓基板510は絶縁性の材料によって構成されている。可撓基板510を金属などの導電性の材料によって構成した場合には、その上面に絶縁膜を形成することにより、16枚の下部電極層M1〜M16が短絡するのを防ぐようにする。
【0137】
ここでは、説明の便宜上、可撓基板510の中心位置Oを原点としたXYZ三次元座標系を考えることにする。すなわち、第57図の右方向にX軸、下方向にY軸、そして紙面に垂直な方向にZ軸を定義する。第58図は、このセンサをXZ平面で切った断面図ということになり、可撓基板10、圧電素子20、各電極層L1〜L16,M1〜M16は、いずれもXY平面に平行に配置されていることになる(この第5の実施例では、説明の便宜上、側断面図における下方向をZ軸の正方向にとってある)。また、第57図に示すように、XY平面上において、X軸あるいはY軸と45°の角をなす方向にW1軸およびW2軸を定義する。W1軸およびW2軸はいずれも原点Oを通る。このような座標系を定義すると、上部電極層L1〜L4および下部電極層M1〜M4は、X軸の負方向から正方向に向かって順に配置されており、上部電極層L5〜L8および下部電極層M5〜M8は、Y軸の負方向から正方向に向かって順に配置されており、上部電極層L9〜L12および下部電極層M9〜M12は、W1軸の負方向から正方向に向かって順に配置されており、上部電極層L13〜L16および下部電極層M13〜M16は、W2軸の負方向から正方向に向かって順に配置されていることになる。
【0138】
さて、圧電素子の上面および下面にそれぞれ電極層を形成し、この一対の電極層間に所定の電圧を印加すると、この圧電素子内部に所定の圧力が発生し、逆に、この圧電素子に所定の力を加えると、一対の電極層間に所定の電圧が発生する性質があることは、既に述べたとおりである。そこで、上述した16枚の上部電極層L1〜L16と、16枚の下部電極層M1〜M16と、これらによって挟まれた圧電素子520の16個の部分と、によって、それぞれ16組の局在素子D1〜D16が形成されたものと考えることにする。たとえば、上部電極層L1と下部電極層M1と、これらに挟まれた圧電素子520の一部分と、によって局在素子D1が形成されることになる。結局、16組の局在素子D1〜D16は、第59図の上面図に示されるように配置されていることになる。
【0139】
ここで、このセンサにおける圧電素子520としては、第60図に示すような分極特性をもった圧電セラミックスが用いられている。すなわち、第60図(a) に示すように、XY平面に沿って伸びる方向の力が作用した場合には、上部電極層L側に正の電荷が、下部電極層M側に負の電荷が、それぞれ発生し、逆に、第60図(b) に示すように、XY平面に沿って縮む方向の力が作用した場合には、上部電極層L側に負の電荷が、下部電極層M側に正の電荷が、それぞれ発生するような分極特性をもっている。ここでは、このような分極特性をタイプIIIと呼ぶことにする。このセンサにおける16組の局在素子D1〜D16は、いずれもタイプIIIの分極特性をもった圧電素子を有することになる。
【0140】
<5.2> 振動子の振動機構
続いて、このセンサの所定の電極層に所定の極性をもった電荷を供給した場合にどのような現象が起こるかを検討する。いま、X軸上に配置された4つの局在素子D1〜D4を構成する各電極層に、第61図に示すような極性の電荷を供給した場合を考える。すなわち、電極層L1,M2,L3,M4には正の電荷を、電極層M1,L2,M3,L4には負の電荷を、それぞれ供給する。すると、局在素子D1およびD3については、第60図(a) に示す性質によりXY平面に沿って伸びることになる。逆に、局在素子D2およびD4については、第60図(b) に示す性質によりXY平面に沿って縮むことになる。その結果、可撓基板510は、第61図に示すように変形し、振動子550はX軸正方向に変位することになる。ここで、各電極層に供給していた電荷の極性を逆転させると、圧電素子の伸縮状態も逆転することになり、振動子550はX軸負方向に変位する。この2つの変位状態が交互に起こるように、供給電荷の極性を交互に反転させてやれば、振動子550をX軸方向に往復運動させてやることができる。別言すれば、振動子550に対して、X軸方向に関する振動Uxを与えることができる。
【0141】
このような電荷供給は、対向する電極層間に交流信号を印加することにより実現できる。すなわち、電極層L1,M1間および電極層L3,M3間に第1の交流信号を印加し、電極層L2,M2間および電極層L4,M4間に第2の交流信号を印加する。そして、第1の交流信号および第2の交流信号として、互いに周波数は同じで位相が反転した信号を用いるようにすれば、振動子550をX軸方向に振動させることができる。
【0142】
振動子550に対して、Y軸方向に関する振動Uyを与える方法も全く同様である。すなわち、電極層L5,M5間および電極層L7,M7間に第1の交流信号を印加し、電極層L6,M6間および電極層L8,M8間に第2の交流信号を印加する。そして、第1の交流信号および第2の交流信号として、互いに周波数は同じで位相が反転した信号を用いるようにすれば、振動子550をY軸方向に振動させることができる。
【0143】
次に、振動子550に対して、Z軸方向に関する振動Uzを与える方法について考えてみる。いま、W1軸上に配置された4つの局在素子D9〜D12を構成する各電極層に、第62図に示すような極性の電荷を供給した場合を考える。すなわち、電極層L9,M10,M11,L12には正の電荷を、電極層M9,L10,L11,M12には負の電荷を、それぞれ供給する。すると、局在素子D9およびD12については、第60図(a) に示す性質によりXY平面に沿って伸びることになる。逆に、局在素子D10およびD11については、第60図(b) に示す性質によりXY平面に沿って縮むことになる。その結果、可撓基板510は、第62図に示すように変形し、振動子550はZ軸正方向に変位することになる。ここで、各電極層に供給していた電荷の極性を逆転させると、圧電素子の伸縮状態も逆転することになり、振動子550はZ軸負方向に変位する。この2つの変位状態が交互に起こるように、供給電荷の極性を交互に反転させてやれば、振動子550をZ軸方向に往復運動させてやることができる。別言すれば、振動子550に対して、Z軸方向に関する振動Uzを与えることができる。
【0144】
このような電荷供給も、対向する電極層間に交流信号を印加することにより実現できる。すなわち、電極層L9,M9間および電極層L12,M12間に第1の交流信号を印加し、電極層L10,M10間および電極層L11,M11間に第2の交流信号を印加する。そして、第1の交流信号および第2の交流信号として、互いに周波数は同じで位相が反転した信号を用いるようにすれば、振動子550をZ軸方向に振動させることができる。
【0145】
第59図に示されているように、このセンサには、更に、W2軸に沿った4つの局在素子D13〜D16が設けられている。この4つの局在素子は、必ずしも必要なものではないが、この実施例では、Z軸方向の振動動作をより安定させ、後述するZ軸方向のコリオリ力Fzの検出精度をより高める目的で設けてある。この4つの局在素子D13〜D16は、上述した4つの局在素子D9〜D12と全く同じ機能を果たす。すなわち、局在素子D9〜D12に供給するのと同じ交流信号を、局在素子D13〜D16に供給すれば、Z軸方向の振動動作を8個の局在素子D9〜D16によって行うことができるようになるので、より安定した振動動作が可能になる。
【0146】
以上のように、特定の局在素子に対して、所定の交流信号を供給すれば、振動子550をX軸,Y軸,Z軸に沿って振動させることができる。
【0147】
<5.3> コリオリ力の検出機構
続いて、この第5の実施例に係るセンサにおいて各軸方向に作用したコリオリ力の検出方法について説明する。なお、紙面を節約する上で、前述した振動子の振動方法の説明に用いた第61図および第62図を、このコリオリ力の検出方法の説明においても用いることにする。
【0148】
まず、第61図に示すように、振動子550の重心Gに対してX軸方向のコリオリ力Fxが作用した場合を考える(第5図に示す原理によれば、このようなコリオリ力Fxの測定は、Y軸方向への振動Uyを与えた状態で行われるため、振動子550は第61図における紙面に垂直な方向に振動していることになるが、このようなY軸方向への振動現象は、X軸方向のコリオリ力Fxの測定には影響を与えない)。このようなコリオリ力Fxの作用により、ダイヤフラムの機能を果たす可撓基板510に撓みが生じ、第61図に示すような変形が起こる。この結果、X軸に沿って配置された局在素子D1,D3はX軸方向に伸び、同じくX軸に沿って配置された局在素子D2,D4はX軸方向に縮むことになる。これら各電極層に挟まれた圧電素子は、第60図に示すような分極特性を有するので、これら各電極層には、第61図に小円で囲った記号「+」または「−」で示すような極性の電荷が発生する。また、Y軸方向のコリオリ力Fyが作用した場合は、Y軸に沿って配置された局在素子D5〜D8を構成する各電極層について、同様に所定の極性をもった電荷が発生する。
【0149】
次に、Z軸方向のコリオリ力Fzが作用した場合を考える。この場合は、ダイヤフラムの機能を果たす可撓基板510が第62図に示すように変形し、W1軸に沿って配置された局在素子D9,D12はW1軸方向に伸び、同じくW1軸に沿って配置された局在素子D10,D11はW1軸方向に縮むことになる。このため、局在素子D9〜D12を構成する各電極層には、第62図に小円で囲った記号「+」または「−」で示すような極性の電荷が発生する。W2軸に沿って配置された局在素子D13〜D16を構成する各電極層にも、同様に所定の極性をもった電荷が発生する。
【0150】
このような現象を利用すれば、各電極層に対して、第63図〜第65図に示すような配線を施すことにより、コリオリ力Fx,Fy,Fzの検出を行うことができる。たとえば、X軸方向のコリオリ力Fyは、第63図に示すように、端子Tx1と端子Tx2との間に生じる電圧差Vxとして検出することができる。この理由は、第61図に示すような撓みにより、各電極層に発生する電荷の極性を考えれば容易に理解できる。第63図のような配線を施しておけば、正の電荷はすべて端子Tx1に集まり、負の電荷はすべて端子Tx2に集まり、両端子間の電位差VxがX軸方向のコリオリ力Fxを示すものになる。全く同様に、Y軸方向のコリオリ力Fyは、局在素子D5〜D8を構成する各電極層に対して、第64図に示すような配線を施せば、端子Ty1と端子Ty2との間の電位差Vyとして検出することができる。また、Z軸方向のコリオリ力Fzは、局在素子D9〜D16を構成する各電極層に対して、第65図に示すような配線を施せば、端子Tz1と端子Tz2との間に生じる電圧差Vzとして検出することができる。もっとも、局在素子D13〜D16は必ず必要なものではなく、局在素子D9〜D12の4つだけを用いても、Z軸方向のコリオリ力Fzの検出は可能である。
【0151】
<5.4> 角速度の検出
以上述べたように、この第5の実施例に係る多軸角速度センサでは、所定の局在素子に交流信号を印加することにより、振動子550をX軸,Y軸,Z軸のいずれかの軸方向に沿って振動させることができ、そのときに発生した各軸方向のコリオリ力Fx,Fy,Fzを、それぞれ電位差Vx,Vy,Vzとして検出することができる。したがって、第3図〜第5図に示す原理により、X軸,Y軸,Z軸のいずれかの軸まわりの角速度ωを検出することができる。
【0152】
ただ、この第5の実施例に係るセンサは、前述した第4の実施例に係るセンサと同様に、振動機構および検出機構の双方に圧電素子(局在素子)を利用した機構が用いられている。そこで、各角速度の検出動作における各局在素子の役割分担を検討しておく。
【0153】
まず、第3図に示す原理に基づいて、X軸まわりの角速度ωxを検出する動作について考えてみよう。この場合、振動子に対してZ軸方向の振動Uzを与えたときに、Y軸方向に発生するコリオリ力Fyを検出する必要がある。振動子550に振動Uzを与えるには、W1軸およびW2軸上に配された局在素子D9〜D16に交流信号を供給すればよい。また、振動子550に作用するコリオリ力Fyを検出するには、Y軸上に配された局在素子D5〜D8に発生する電圧を検出すればよい。残りの局在素子D1〜D4は、この検出動作では使用されない。
【0154】
続いて、第4図に示す原理に基づいて、Y軸まわりの角速度ωyを検出する動作について考えてみよう。この場合、振動子に対してX軸方向の振動Uxを与えたときに、Z軸方向に発生するコリオリ力Fzを検出する必要がある。振動子550に振動Uxを与えるには、X軸上に配された局在素子D1〜D4に交流信号を供給すればよい。また、振動子550に作用するコリオリ力Fzを検出するには、W1軸およびW2軸上に配された局在素子D9〜D16に発生する電圧を検出すればよい。残りの局在素子D5〜D8は、この検出動作では使用されない。
【0155】
最後に、第5図に示す原理に基づいて、Z軸まわりの角速度ωzを検出する動作について考えてみよう。この場合、振動子に対してY軸方向の振動Uyを与えたときに、X軸方向に発生するコリオリ力Fxを検出する必要がある。振動子550に振動Uyを与えるには、Y軸上に配された局在素子D5〜D8に交流信号を供給すればよい。また、振動子550に作用するコリオリ力Fxを検出するには、X軸上に配された局在素子D1〜D4に発生する電圧を検出すればよい。残りの局在素子D9〜D16は、この検出動作では使用されない。
【0156】
以上のように、このセンサを用いて角速度ωx,ωy,ωzのいずれか1つを検出する場合、各局在素子についての役割分担が都合よくなされ、支障なく検出が行われることがわかる。もっとも、角速度ωx,ωy,ωzのうちの複数を同時に検出することはできないので、3つの角速度を検出する場合には、後述するように時分割処理を行い、1つずつ順に検出を行う必要がある。
【0157】
<5.5> 変形例1
上述した第5の実施例に係るセンサによれば、XYZ三次元座標系におけるコリオリ力Fx,Fy,Fzを、それぞれ電位差Vx,Vy,Vzとして求めることができる。そして、これらの電位差に基づいて角速度の検出が可能である。しかしながら、これらの電位差を検出するためには、各電極層に対して、第63図〜第65図の回路図に示すような配線を行う必要がある。この配線は、上部電極層と下部電極層とが入り乱れたものとなっており、このセンサを大量生産する場合、製品の全コストに比べて配線のためのコストが無視できなくなる。この変形例1は、圧電素子の分極特性を部分的に変えることにより、配線を単純化し製造コストを低減するようにしたものである。
【0158】
既に述べたように、任意の分極特性をもった圧電素子を製造することは、現在の技術で可能である。たとえば、上述した第5の実施例に係るセンサにおいて用いられている圧電素子520は、第60図に示すようなタイプIIIの分極特性をもったものであった。これに対して、第66図に示すようなタイプIVの分極特性をもった圧電素子530を製造することも可能である。すなわち、第66図(a) に示すように、XY平面に沿って伸びる方向の力が作用した場合には、上部電極層L側に負の電荷が、下部電極層M側に正の電荷が、それぞれ発生し、逆に、第66図(b) に示すように、XY平面に沿って縮む方向の力が作用した場合には、上部電極層L側に正の電荷が、下部電極層M側に負の電荷が、それぞれ発生するような分極特性をもった圧電素子530を製造することが可能である。また、1つの圧電素子の一部分にタイプIIIの分極特性をもたせ、別な一部分にタイプIVの分極特性をもたせることも可能である。ここに述べる変形例は、このような局在的な分極処理を施した圧電素子を用いることにより、センサの構造を単純化するものである。
【0159】
いま、第67図に示すような圧電素子540を考える。この圧電素子540は、形状は上述した第57図のセンサにおいて用いられている圧電素子520と全く同じドーナツ盤状をした素子である。しかしながら、その分極特性は圧電素子520とは異なっている。圧電素子520は、前述したように、すべての部分がタイプIIIの分極特性をもつ素子であった。これに対し、圧電素子540は、第67図に示すように、16個の各領域においてタイプIIIまたはタイプIVのいずれかの分極特性をもつ。すなわち、局在素子D1,D3,D5,D7,D9,D12,D13,D16の領域においてはタイプIIIの分極特性を示し、局在素子D2,D4,D6,D8,D10,D11,D14,D15の領域においてはタイプIVの分極特性を示す(第59図と第67図とを参照)。
【0160】
さて、前述した第57図のセンサにおいて、圧電素子520の代わりに、第67図に示すような分極特性をもった圧電素子540を用いた場合、各電極層に発生する電荷の極性がどのように変わるかを考えてみると、タイプIVの分極特性をもった領域に形成されている上部電極層L2,L4,L6,L8,L10,L11,L14,L15,および下部電極層M2,M4,M6,M8,M10,M11,M14,M15に発生する電荷の極性が反転することがわかる。たとえば、X軸方向のコリオリ力Fxが作用した場合、前述した第57図のセンサでは第61図に示すような極性の電荷が発生するのに対し、この変形例のセンサでは第68図に示すような極性の電荷が発生する。また、Z軸方向のコリオリ力Fzが作用した場合、前述した第57図のセンサでは第62図に示すような極性の電荷が発生するのに対し、この変形例のセンサでは第69図に示すような極性の電荷が発生する。このため、各電極層に対して、第70図〜第72図に示すような配線を施しておけば、コリオリ力Fx,Fy,Fzを、それぞれ電位差Vx,Vy,Vzとして求めることができるようになる。
【0161】
たとえば、X軸方向のコリオリ力Fxの検出動作に関しては、電極層L2,M2およびL4,M4に発生する電荷の極性が逆転するため、第63図に示す配線は第70図に示す配線に置き換えられる。同様に、Y軸方向のコリオリ力Fyの検出動作に関しては、電極層L6,M6およびL8,M8に発生する電荷の極性が逆転するため、第64図に示す配線は第71図に示す配線に置き換えられる。更に、Z軸方向のコリオリ力Fzの検出動作に関しては、電極層L10,M10、L11,M11、L14,M14、およびL15,M15に発生する電荷の極性が逆転するため、第65図に示す配線は第72図に示す配線に置き換えられる。
【0162】
なお、局在的分極特性をもった圧電素子540を用いた場合、振動子550を振動させるために印加する交流信号も単純化される。すなわち、X軸方向に振動させる場合には、第68図に示すように、局在素子D1〜D4のすべてに同相の交流信号を供給すればよく、同様に、Y軸方向に振動させる場合には、局在素子D5〜D8のすべてに同相の交流信号を供給すればよい。また、Z軸方向に振動させる場合には、第69図に示すように、局在素子D9〜D16のすべてに同相の交流信号を供給すればよい。
【0163】
第63図〜第65図に示す配線に対して、第70図〜第72図に示す配線は、実際のセンサを製造する上で重大なメリットを有する。第70図〜第72図に示す配線の特徴は、X軸,Y軸,Z軸のいずれの方向にコリオリ力が作用した場合であっても、各軸の正方向にコリオリ力が作用したのであれば、必ず上部電極層側に正の電荷が、下部電極層側に負の電荷が、それぞれ発生する点にある。この特徴を利用すれば、センサ全体の配線を単純化することが可能になる。たとえば、第70図〜第72図における端子Tx2,Ty2,Tz2を、センサ筐体560に接続して基準電位(アース)にとった場合を考える。この場合、16枚の下部電極層M1〜M16は互いに導通状態になる。このようにしても、X軸方向のコリオリ力Fxを示す電位差Vxは端子Tx1のアースに対する電圧として得られ、Y軸方向のコリオリ力Fyを示す電位差Vyは端子Ty1のアースに対する電圧として得られ、Z軸方向のコリオリ力Fzを示す電位差Vzは端子Tz1のアースに対する電圧として得られるので、このセンサは何ら支障なく動作する。しかも16枚の下部電極層M1〜M16についての配線は、互いに導通させるだけでよいので、非常に単純な配線ですむ。
【0164】
<5.6> 変形例2
上述した変形例1のように、局在的な分極特性をもった圧電素子540を用いた場合、16枚の下部電極層M1〜M16を導通させる配線が可能になる。このように、下部電極層M1〜M16を導通させることができるのであれば、あえてこれら16枚の電極層を、それぞれ独立した電極層にしておく必要はない。すなわち、第73図の側断面図に示されているように、共通の下部電極層M0を1枚だけ設けるようにすればよい。共通の下部電極層M0は、1枚のドーナツ盤状の電極層であり、16枚の上部電極層L1〜L16のすべてに対向した電極となる。
【0165】
<5.7> 変形例3
上述した変形例2の構造を更に単純化するには、可撓基板510の代わりに、導電性の材料(たとえば、金属)からなる可撓基板570を用いればよい。こうすれば、第74図の側断面図に示されているように、特別な下部電極層M0を用いずに、圧電素子540の下面を可撓基板570の上面に直接接合した構造が実現できる。この場合、可撓基板570自身が共通の下部電極層M0として機能することになる。
【0166】
また、上述の変形例2,3では、下部電極層側を共通の単一電極層としているが、逆に上部電極層側を共通の単一電極層とすることも可能である。
【0167】
<5.8> その他の変形例
上述したセンサは、いずれも物理的に単一の圧電素子520あるいは540を用いているが、これらを物理的に複数の圧電素子で構成してもかまわない。たとえば、第59図において、局在素子D1〜D16のそれぞれを別個独立した圧電素子を用いて構成し、合計で16個の圧電素子を用いるようにしてもかまわない。また、たとえば、局在素子D1,D2について単一の圧電素子を用い、局在素子D3,D4について別な圧電素子を用いる、というように、2つの局在素子について1つの局在素子を用い、合計8個の圧電素子を用いるようにすることもできる。このように、物理的にいくつの圧電素子を用いるかは、設計上適宜変更できる事項である。
【0168】
<<< Section 6 第6の実施例 >>>
<6.1> 第6の実施例に係るセンサの原理
ここで述べる第6の実施例に係る多軸角速度センサは、振動機構として電磁力を利用した機構を用い、検出機構として差動トランスを利用した機構を用いたセンサである。はじめに、第75図に基づいて、その原理を簡単に説明する。いま、磁性材料からなる振動子610の重心位置に原点Oをとり、XYZ三次元座標系を定義する。そして、この振動子610を挟むように、X軸上に一対のコイルJ1,J2を設け、Y軸上に一対のコイルJ3,J4を設け、Z軸上に一対のコイルJ5,J6を設ける。
【0169】
このように6個のコイルを配置しておけば、磁性材料からなる振動子610を、X軸,Y軸,Z軸の任意の軸方向に振動させることが可能である。たとえば、X軸方向の振動Uxを与えるためには、X軸上に配されたコイルJ1,J2に交互に通電すればよい。コイルJ1に通電されたときは、振動子610はコイルJ1の発生する磁力によりX軸正方向に移動し、コイルJ2に通電されたときは、振動子610はコイルJ2の発生する磁力によりX軸負方向に移動する。したがって、交互に通電を行えば、振動子610はX軸方向に往復運動をすることになる。同様に、Y軸方向の振動Uyを与えるためには、Y軸上に配されたコイルJ3,J4に交互に通電すればよく、Z軸方向の振動Uzを与えるためには、Z軸上に配されたコイルJ5,J6に交互に通電すればよい。
【0170】
一方、このように配置された6個のコイルにより、磁性材料からなる振動子610の変位を検出することも可能である。たとえば、振動子610がX軸の正方向に変位した場合、振動子610とコイルJ1との距離は近付き、振動子610とコイルJ2との距離は離れる。一般に、コイルに対する磁性材料の距離に変化が生じると、そのコイルのインダクタンスに変化が生じる。したがって、コイルJ1のインダクタンス変化と、コイルJ2のインダクタンス変化とを検出すれば、振動子610のX軸方向の変位を認識することができる。同様に、コイルJ3のインダクタンス変化と、コイルJ4のインダクタンス変化とにより、振動子610のY軸方向の変位を認識することができ、コイルJ5のインダクタンス変化と、コイルJ6のインダクタンス変化とにより、振動子610のZ軸方向の変位を認識することができる。そこで、コリオリ力によって振動子610に変位が生じるような構造にしておけば、各コイルのインダクタンス変化により、各軸方向のコリオリ力を検出することができる。
【0171】
このように、コイルJ1〜J6は振動子610を振動させる役割と振動子610の変位を検出する役割とを兼ねることになるが、振動用コイルと検出用コイルとを別々に設けるようにしてもよい。
【0172】
<6.2> 具体的なセンサの構造と動作
第76は、上述した原理に基づく多軸角速度センサの具体的な構造を示す側断面図である。鉄などの磁性材料からなる円柱状の振動子610は、センサ筐体620内に収容されている。センサ筐体620の上面には、仕切り板630が接合されており、この仕切り板630の上面には、皿状のダイヤフラム640が伏せた状態で取り付けられている。このダイヤフラムの中心には、連結棒650の上端が固着されている。仕切り板630の中央には貫通孔が形成されており、連結棒650はこの貫通孔を挿通している。連結棒650の下端には、振動子610が取り付けられており、振動子610はセンサ筐体620内において、連結棒650によって宙吊りの状態になっている。また、仕切り板630の上方には、ダイヤフラム640を覆うように保護カバー660が取り付けられている。
【0173】
ここで、振動子610の重心位置に原点Oをとり、第76図の右方にY軸を、上方にZ軸を、紙面に垂直な方向にX軸をとる。そして、センサ筐体620の内側に、6個のコイルJ1〜J6を図のように配置する(コイルJ1,J2は第76図には示されていないが、振動子610の手前側にコイルJ1が、向こう側にコイルJ2が、それぞれ配置される)。この配置は、第75図に示す配置と同じである。
【0174】
上述したように、所定のコイルに通電を行うことにより、振動子610を所定の軸方向に振動させることができ、また、所定のコイルのインダクタンス変化を検出することにより、所定の軸方向に作用したコリオリ力を検出することができる。したがって、第3図〜第5図に示す基本原理に基づき、所定の軸まわりの角速度を検出することが可能になる。
【0175】
<<< Section 7 検出動作 >>>
<7.1> 加速度の検出
以上述べてきた種々の実施例は、いずれも多軸角速度センサであるが、実はこれらのセンサは、多軸加速度センサとしての機能も兼ね備えている。これを第1の実施例のセンサについて示そう。第15図は、この第1の実施例のセンサにおいて、X軸まわりの角速度ωxを検出する動作を説明する図である。角速度ωxを検出するには、振動子130に対してZ軸方向の振動Uzを与えた状態で、Y軸方向に作用するコリオリ力Fyを測定すればよい。ところで、このようなY軸方向のコリオリ力Fyが発生するのは、角速度ωxが作用した状態において、振動子130をZ軸方向に意図的に振動させたためである。もし、振動子130を振動させなかったら、コリオリ力Fyは発生しない。しかしながら、振動子130を振動させていないにもかかわらず、振動子130をY軸方向に動かそうとする力Fyが発生する場合がある。これは、振動子130にY軸方向の加速度が作用した場合である。力学の基本法則によれば、質量をもった物体に加速度が作用すると、この加速度と同じ方向に、物体の質量に比例した力が作用する。したがって、振動子130に対して、Y軸方向の加速度が作用した場合には、この振動子130の質量に比例した大きさをもったY軸方向の力Fyが作用することになる。このように加速度に起因した力Fyも、コリオリ力Fyも、力としては全く同じであり、コリオリ力の検出方法と全く同様の方法により加速度に起因した力を検出することができる。
【0176】
結局、上述した各実施例のセンサにおいて、振動子を所定の軸方向に意図的に振動させた状態で所定の軸方向に検出される力は、コリオリ力であり、このコリオリ力の大きさは所定の軸まわりの角速度に対応した値となる。ところが、振動子を振動させない状態で所定の軸方向に検出される力は、その軸方向に作用している加速度に基づく力であり、この力の大きさはその軸方向の加速度に対応した値となる。このように、上述した各実施例のセンサは、振動子を振動させた状態で測定を行えば角速度センサとして機能するが、振動子を振動させない状態で測定を行えば加速度センサとして機能することになる。
【0177】
<7.2> 時分割検出動作
上述したように、本発明に係るセンサは、多軸角速度センサとしての機能と多軸加速度センサとしての機能を兼ね備えている。そこで、実際には、第77図の流れ図に示すような時分割検出動作を行うことにより、X軸方向の加速度αx,Y軸方向の加速度αy,Z軸方向の加速度αz,X軸まわりの角速度ωx,Y軸まわりの角速度ωy,Z軸まわりの角速度ωz、という6つの成分の検出を行うことができる。
【0178】
まず、ステップS1において、各軸方向の加速度αx,αy,αzの検出を同時に行う。すなわち、振動子を振動させないで、コリオリ力の検出と同等の検出処理を行えばよい。このときに検出された力は、実はコリオリ力ではなく、加速度に基づいて発生した力である。加速度については、3軸成分を同時に検出することが可能である。なぜなら、振動子に振動を与える作業を行う必要がないので、各電極層は、振動機構としての役割を果たす必要はなく、検出機構としての役割だけを果たせばよいからである。たとえば、第42図に示す第4の実施例に係るセンサの場合、コリオリ力の検出のために、第46図〜第48図に示すような回路が形成されている。加速度の検出を行う場合には、振動を与えるための交流信号の供給は必要ないため、これらの回路に示された電極層E1〜E5およびF1〜F5のいずれに対しても、交流信号を与える必要はない。したがって、これらの回路によって検出された電位差Vx,Vy,Vzが、そのまま加速度αx,αy,αzを示すことになる。
【0179】
続いて、ステップS2において角速度ωxの検出を行い、次のステップS3において角速度ωyの検出を行い、続くステップS4において角速度ωzの検出を行う。角速度については、既に述べたように、3軸まわりの各角速度を同時に検出することはできない。したがって、このような時分割により各角速度の検出を順に行うことになる。
【0180】
最後に、ステップS5から再びステップS1へと戻り、検出動作を継続して実行する限り、同様の動作が繰り返し実行されることになる。
【0181】
<7.3> 検出回路
続いて、前述のような時分割検出動作を行うための検出回路の基本構成を第78図に示す。ここで、ブロック700は、これまで述べてきた多軸角速度センサの種々の実施例に対応するものであり、機能の観点から、振動部710と検出部720との2つの部分に分けて示してある。振動部710は、内蔵した振動子を所定の軸方向に振動させる機能をもった部分であり、図にX,Y,Zと示した各端子に駆動信号を供給すると、振動子はそれぞれX軸,Y軸,Z軸方向に振動する。また、検出部720は、内蔵した振動子の変位を示す検出信号を出力する機能をもった部分であり、図にX,Y,Zと示した各端子から、それぞれX軸,Y軸,Z軸方向についての変位の検出信号が出力される。実際のセンサにおいては、1つの電極層が振動部710側の機能と、検出部720側の機能とを兼ねる場合もあり、センサを構成する各部を、振動部710か検出部720かのいずれかにはっきりと分類することは困難であるが、ここでは便宜上、このセンサを機能的にとらえることによりブロック700のような単純なモデルで表現することにする。
【0182】
振動発生回路711は、振動部710の各端子X,Y,Zに供給する駆動信号を発生する回路であり、具体的には、たとえば交流信号を発生する装置である。マルチプレクサ712は、スイッチSW1,SW2,SW3を有し、振動発生回路711で発生した駆動信号を、振動部710のいずれの端子X,Y,Zへ供給するかを制御する。一方、検出部720の各端子X,Y,Zから出力された検出信号は、マルチプレクサ722を経て、変位検出回路721へ与えられる。マルチプレクサ722は、スイッチSW4,SW5,SW6を有し、変位検出回路721へ与える検出信号の選択を行う。変位検出回路721は、与えられた検出信号に基づいて、具体的な変位量を検出し、これを検出値出力回路730へ与える。コントローラ740は、マルチプレクサ712,722の動作を制御するとともに、検出値出力回路730に対して制御信号を与える。
【0183】
以上が、この検出回路の構成である。なお、この第78図は、実際の電流経路を示す具体的な回路図ではなく、検出回路の構成の概略を示した図である。したがって、図に示された1本の線は、ひとまとまりの制御信号あるいは検出信号の経路を示しているものであり、電流経路そのものを示しているわけではない。たとえば、スイッチSW1と振動部710の端子Xとの間には1本の制御信号線が描かれているだけであるが、実際には、振動子をX軸方向に振動させるためには複数の電極層に所定の位相をもった交流信号を供給する必要があり、複数の電流経路が必要になる。
【0184】
さて、このような検出回路を構成しておけば、第77図の流れ図に示す検出動作は、次のように実行される。まず、コントローラ740は、ステップS1として、加速度αx,αy,αzを検出する処理を行う。すなわち、コントローラ740は、スイッチSW1,SW2,SW3をいずれもOFFにし、スイッチSW4,SW5,SW6をいずれもONにする指示を、マルチプレクサ712,722に与える。その結果、振動部710には駆動信号は供給されず、振動子に対する意図的な励振は行われない。したがって、このとき検出部720の各端子X,Y,Zから出力される検出信号は、コリオリ力ではなく加速度の作用に基づく力によって生じた変位を示す信号となる。スイッチSW4,SW5,SW6はいずれもONとなっているので、3つの信号がすべて変位検出回路721に与えられ、ここで、X,Y,Zの3軸方向の変位量が検出される。コントローラ740は、検出値出力回路730に対して、検出された3つの変位量を加速度の値として出力するよう指示する。こうして、変位検出回路721において検出された3軸方向の変位量は、検出値出力回路730から、それぞれ加速度値αx,αy,αzとして出力される。
【0185】
続いて、コントローラ740は、ステップS2として、角速度ωxを検出する処理を行う。すなわち、コントローラ740は、第3図に示す原理に基づき、
スイッチSW1:OFF スイッチSW4:OFF
スイッチSW2:OFF スイッチSW5:ON
スイッチSW3:ON スイッチSW6:OFF
とする指示を、マルチプレクサ712,722に与える。その結果、振動部710は振動子にZ軸方向の振動Uzを与え、検出部720はこのとき発生するコリオリ力Fyの作用による振動子のY軸方向の変位を示す検出信号を端子Yから出力する。変位検出回路721は、この検出信号に基づきY軸方向の変位量を検出する。コントローラ740は、検出値出力回路730に対して、検出された変位量をX軸まわりの角速度ωxの値として出力するよう指示する。こうして、変位検出回路721において検出されたY軸方向の変位量は、検出値出力回路730から、角速度ωxとして出力される。
【0186】
次に、コントローラ740は、ステップS3として、角速度ωyを検出する処理を行う。すなわち、コントローラ740は、第4図に示す原理に基づき、
スイッチSW1:ON スイッチSW4:ON
スイッチSW2:OFF スイッチSW5:OFF
スイッチSW3:OFF スイッチSW6:OFF
とする指示を、マルチプレクサ712,722に与える。その結果、振動部710は振動子にX軸方向の振動Uxを与え、検出部720はこのとき発生するコリオリ力Fzの作用による振動子のZ軸方向の変位を示す検出信号を端子Zから出力する。変位検出回路721は、この検出信号に基づきZ軸方向の変位量を検出する。コントローラ740は、検出値出力回路730に対して、検出された変位量をY軸まわりの角速度ωyの値として出力するよう指示する。こうして、変位検出回路721において検出されたZ軸方向の変位量は、検出値出力回路730から、角速度ωyとして出力される。
【0187】
更に、コントローラ740は、ステップS4として、角速度ωzを検出する処理を行う。すなわち、コントローラ740は、第5図に示す原理に基づき、
スイッチSW1:OFF スイッチSW4:OFF
スイッチSW2:ON スイッチSW5:OFF
スイッチSW3:OFF スイッチSW6:ON
とする指示を、マルチプレクサ712,722に与える。その結果、振動部710は振動子にY軸方向の振動Uyを与え、検出部720はこのとき発生するコリオリ力Fxの作用による振動子のX軸方向の変位を示す検出信号を端子Xから出力する。変位検出回路721は、この検出信号に基づきX軸方向の変位量を検出する。コントローラ740は、検出値出力回路730に対して、検出された変位量をZ軸まわりの角速度ωzの値として出力するよう指示する。こうして、変位検出回路721において検出されたX軸方向の変位量は、検出値出力回路730から、角速度ωzとして出力される。
【0188】
以上の処理が、ステップS5を経て繰り返し実行される。したがって、このセンサを運動する物体に搭載しておけば、各時点における3軸方向の加速度および3軸まわりの角速度を連続的に検出することが可能になる。
【0189】
<7.4> 角速度の別な検出原理
多軸角速度の検出に関するこれまでの説明は、いずれも、第3図〜第5図に示す基本原理に基づくものであった。これに対し、第79図〜第81図に示す基本原理に基づく検出も可能である。たとえば、X軸まわりの角速度ωxを検出する場合、第3図に示す基本原理によれば、振動子にZ軸方向の振動Uzを与えたときにY軸方向に発生するコリオリ力Fyを検出することになるが、第79図に示す基本原理によれば、振動子にY軸方向の振動Uyを与えたときにZ軸方向に発生するコリオリ力Fzを検出すればよい。同様に、Y軸まわりの角速度ωyを検出する場合、第4図に示す基本原理によれば、振動子にX軸方向の振動Uxを与えたときにZ軸方向に発生するコリオリ力Fzを検出することになるが、第80図に示す基本原理によれば、振動子にZ軸方向の振動Uzを与えたときにX軸方向に発生するコリオリ力Fxを検出すればよい。また、Z軸まわりの角速度ωzを検出する場合、第5図に示す基本原理によれば、振動子にY軸方向の振動Uyを与えたときにX軸方向に発生するコリオリ力Fxを検出することになるが、第81図に示す基本原理によれば、振動子にX軸方向の振動Uxを与えたときにY軸方向に発生するコリオリ力Fyを検出すればよい。
【0190】
要するに、本発明に係る多軸角速度センサは、互いに直交する3軸の原点に位置する振動子について、第1の軸まわりに角速度ωが作用している場合、第2の軸方向の振動Uを与えれば、第3の軸方向にコリオリ力が作用する、という自然法則を利用したものであり、第3図〜第5図に示すような軸の選択を行っても、第79図〜第81図に示すような軸の選択を行っても、いずれでもかまわないのである。したがって、これまで述べてきたすべての実施例について、第79図〜第81図に示す基本原理を適用した検出を行うことが可能である。
【0191】
<7.5> 基本原理の組み合わせによる検出
上述したように、本発明による角速度検出においては、第3図〜第5図に示す基本原理に基づく検出と、第79図〜第81図に示す基本原理に基づく検出と、のいずれも可能であるが、更に、両者を組み合わせた検出も可能である。ここで、理解を容易にするために、各基本原理を整理してみると、次の表に示すような6とおりの検出動作が可能であることがわかる。
Figure 0003586271
ここで、Uの欄は振動子を励振する軸方向を示し、Fの欄は振動子に作用するコリオリ力を検出する軸方向を示し、ωの欄は検出対象となる角速度に関する軸を示す。第3図〜第5図に示す基本原理に基づく検出は、上掲の表の偶数番目の3つの検出動作を行うものであり、第79図〜第81図に示す基本原理に基づく検出は、奇数番目の3つの検出動作を行うものである。このような3つの検出動作により、XYZの3つの軸まわりの角速度が検出できることは既に述べたとおりである。
【0192】
ところで、このような3軸まわりの角速度を検出するための組み合わせは、偶数番目および奇数番目の組み合わせだけに限らない。たとえば、前半の検出動作1〜3という組み合わせでもXYZの3軸まわりの角速度が検出できるし、後半の検出動作4〜6という組み合わせでもXYZの3軸まわりの角速度が検出できる(上掲の表のωの欄参照)。しかも、このような組み合わせを採ると、振動機構および検出機構の一部を省略することができる。たとえば、上掲の表における検出動作1〜3を実行するには、振動子の励振軸はX軸およびY軸だけでよい(Uの欄参照)。別言すれば、振動子をZ軸方向に振動させる必要はないのである。また、コリオリ力の検出軸はY軸およびZ軸だけでよい(Fの欄参照)。別言すれば、X軸方向のコリオリ力を検出する必要はないのである。結局、振動機構としては、X軸およびY軸の2つの軸方向に振動させることができれば十分であり、検出機構としては、Y軸およびZ軸の2つの軸方向の検出ができれば十分である。これまでに述べてきた種々の実施例は、いずれも、XYZの3軸方向に振動させる振動機構と、XYZの3軸方向のコリオリ力を検出する検出機構と、を備えることを前提としたものであったが、このように基本原理をうまく組み合わせることにより、2軸方向の振動機構と2軸方向の検出機構とによって、3軸についての角速度の検出が可能である。
【0193】
また、これまでの実施例は、いずれもXYZの3軸についての角速度を検出する三次元角速度センサについてのものであったが、これら3軸のうちの特定の2軸についての角速度だけを検出すれば足りる場合には、振動機構あるいは検出機構の一部を更に省略した二次元角速度センサを用いることができる。たとえば、上掲の表における検出動作1および検出動作2だけを考えてみる。これら2つの検出動作を行うためには、X軸方向への振動機構と、Y軸およびZ軸方向についての検出機構とがあれば十分であり、その結果として、Z軸まわりの角速度とY軸まわりの角速度とが検出できる。したがって、1軸方向への振動機構と2軸についての検出機構とによって、二次元角速度センサが実現できることになる。
【0194】
あるいは、次のような組み合わせも可能である。今度は、上掲の表における検出動作2および検出動作3だけを考えてみる。これら2つの検出動作を行うためには、X軸およびY軸方向への振動機構と、Z軸方向についての検出機構とがあれば十分であり、その結果として、Y軸まわりの角速度とX軸まわりの角速度とが検出できる。したがって、2軸方向への振動機構と1軸についての検出機構とによって、二次元角速度センサが実現できることになる。
【0195】
なお、本発明に係る角速度センサにおいて振動子を振動させる場合、各振動子のもつ固有の共振周波数で振動させるのが好ましい。上述の実施例における各振動子130,211,241,260,321,440,550,610は、いずれもそれぞれ固有の共振周波数をもっている。各振動子を、このような固有の共振周波数で振動させることにより、小さな供給エネルギーで大きな振動を生じさせることができ、非常に効率が良くなる。
【0196】
【発明の効果】
本発明に係る角速度センサは、XYZ三次元座標系で運動する物体について、X軸まわりの角速度ωx、Y軸まわりの角速度ωy、Z軸まわりの角速度ωz、のうちの必要な所定軸まわりの角速度を検出することができる。したがって、産業用機械、産業用ロボット、自動車、航空機、船舶などに搭載し、運動状態の認識、あるいは運動に対するフィードバック制御を行う上でのセンサとして広く利用できるものである。また、カメラの撮影時における手振れを補正する制御にも利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来提案されているコリオリ力を利用した一次元角速度センサの基本原理を示す斜視図である。
【図2】本発明の検出対象となるXYZ三次元座標系における各軸まわりの角速度を示す図である。
【図3】本発明によってX軸まわりの角速度ωxを検出する基本原理を説明する図である。
【図4】本発明によってY軸まわりの角速度ωyを検出する基本原理を説明する図である。
【図5】本発明によってZ軸まわりの角速度ωzを検出する基本原理を説明する図である。
【図6】本発明の第1の実施例に係る多軸角速度センサの構造を示す側断面図である。
【図7】図6に示す多軸角速度センサの可撓基板110の上面図である。
【図8】図6に示す多軸角速度センサの固定基板120の下面図である。
【図9】図6に示す多軸角速度センサにおける振動子130をX軸方向に変位させた状態を示す側断面図である。
【図10】図6に示す多軸角速度センサにおける振動子130を−X軸方向に変位させた状態を示す側断面図である。
【図11】図6に示す多軸角速度センサにおける振動子130をZ軸方向に変位させた状態を示す側断面図である。
【図12】図6に示す多軸角速度センサにおける振動子130に対して、X軸方向の振動Uxを与えるための供給電圧波形を示す図である。
【図13】図6に示す多軸角速度センサにおける振動子130に対して、Y軸方向の振動Uyを与えるための供給電圧波形を示す図である。
【図14】図6に示す多軸角速度センサにおける振動子130に対して、Z軸方向の振動Uzを与えるための供給電圧波形を示す図である。
【図15】図6に示す多軸角速度センサにおいて、振動子130に振動Uzを与えたときに、角速度ωxに基づいてコリオリ力Fyが発生する現象を示す側断面図である。
【図16】図6に示す多軸角速度センサにおいて、振動子130に振動Uxを与えたときに、角速度ωyに基づいてコリオリ力Fzが発生する現象を示す側断面図である。
【図17】図6に示す多軸角速度センサにおいて、振動子130に振動Uyを与えたときに、角速度ωzに基づいてコリオリ力Fxが発生する現象を示す側断面図である。
【図18】静電容量素子Cの容量値の変化を検出するための回路の一例を示す回路図である。
【図19】図18に示す回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図20】一対の静電容量素子C1,C2の容量値の変化を検出するための回路の一例を示す回路図である。
【図21】図20に示す回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図22】図6に示す多軸角速度センサの第1の変形例の原理を説明する側断面図である。
【図23】図6に示す多軸角速度センサの第1の変形例の原理を説明する別な側断面図である。
【図24】図6に示す多軸角速度センサの第1の変形例の原理を説明する更に別な側断面図である。
【図25】図6に示す多軸角速度センサの第1の変形例の具体的な構造を示す側断面図である。
【図26】図25に示す多軸角速度センサの各電極への電圧の印加方法の一例を示す図である。
【図27】図6に示す多軸角速度センサの第2の変形例の具体的な構造を示す側断面図である。
【図28】本発明の第2の実施例に係る多軸角速度センサの構造を示す側断面図である。
【図29】図28に示す多軸角速度センサの可撓基板210の上面図である。
【図30】図28に示す多軸角速度センサの別な位置における断面を示す側断面図である。
【図31】図28に示す多軸角速度センサの固定基板230の下面図である。
【図32】図28に示す多軸角速度センサの第1の変形例を示す側断面図である。
【図33】図28に示す多軸角速度センサの第2の変形例を示す側断面図である。
【図34】図33に示す多軸角速度センサの可撓基板250の上面図である。
【図35】本発明の第3の実施例に係る多軸角速度センサの構造を示す側断面図である。
【図36】第35図に示す多軸角速度センサの可撓基板310の上面図である。
【図37】図36に示されている抵抗素子Rの配置を示す図である。
【図38】図35に示す多軸角速度センサにコリオリ力Fxが作用した状態を示す側断面図である。
【図39】図35に示す多軸角速度センサに作用したX軸方向のコリオリ力Fxを検出する回路の一例を示す回路図である。
【図40】図35に示す多軸角速度センサに作用したY軸方向のコリオリ力Fyを検出する回路の一例を示す回路図である。
【図41】図35に示す多軸角速度センサに作用したZ軸方向のコリオリ力Fzを検出する回路の一例を示す回路図である。
【図42】本発明の第4の実施例に係る多軸角速度センサの構造を示す側断面図である。
【図43】図42に示す多軸角速度センサに用いられている圧電素子の分極特性を示す図である。
【図44】図42に示す多軸角速度センサにX軸方向の変位を生じさせた状態を示す側断面図である。
【図45】図42に示す多軸角速度センサにZ軸方向の変位を生じさせた状態を示す側断面図である。
【図46】図42に示す多軸角速度センサに作用したX軸方向のコリオリ力Fxを検出するための配線を示す配線図である。
【図47】図42に示す多軸角速度センサに作用したY軸方向のコリオリ力Fyを検出するための配線を示す配線図である。
【図48】図42に示す多軸角速度センサに作用したZ軸方向のコリオリ力Fzを検出するための配線を示す配線図である。
【図49】図43に示す分極特性とは逆の分極特性を示す図である。
【図50】図42に示す多軸角速度センサの第1の変形例に用いられる圧電素子の分極特性の分布を示す平面図である。
【図51】図50に示す圧電素子を用いた多軸角速度センサに作用したX軸方向のコリオリ力Fxを検出するための配線を示す配線図である。
【図52】図50に示す圧電素子を用いた多軸角速度センサに作用したY軸方向のコリオリ力Fyを検出するための配線を示す配線図である。
【図53】図50に示す圧電素子を用いた多軸角速度センサに作用したZ軸方向のコリオリ力Fzを検出するための配線を示す配線図である。
【図54】図42に示す多軸角速度センサの第2の変形例の構造を示す側断面図である。
【図55】図42に示す多軸角速度センサの第3の変形例の構造を示す側断面図である。
【図56】図42に示す多軸角速度センサの第4の変形例の構造を示す側断面図である。
【図57】本発明の第5の実施例に係る多軸角速度センサの構造を示す上面図である。
【図58】図57に示す多軸角速度センサの構造を示す側断面図である。
【図59】図57に示す多軸角速度センサにおいて定義された局在素子の配置を示す上面図である。
【図60】図57に示す多軸角速度センサに用いられている圧電素子の分極特性を示す図である。
【図61】図57に示す多軸角速度センサにX軸方向の変位を生じさせた状態を示す側断面図である。
【図62】図57に示す多軸角速度センサにZ軸方向の変位を生じさせた状態を示す側断面図である。
【図63】図57に示す多軸角速度センサに作用したX軸方向のコリオリ力Fxを検出するための配線を示す配線図である。
【図64】図57に示す多軸角速度センサに作用したY軸方向のコリオリ力Fyを検出するための配線を示す配線図である。
【図65】図57に示す多軸角速度センサに作用したZ軸方向のコリオリ力Fzを検出するための配線を示す配線図である。
【図66】図60に示す分極特性とは逆の分極特性を示す図である。
【図67】図57に示す多軸角速度センサの第1の変形例に用いられる圧電素子の分極特性の分布を示す平面図である。
【図68】図67に示す圧電素子を用いた多軸角速度センサにX軸方向のコリオリ力Fxが作用した状態を示す側断面図である。
【図69】図67に示す圧電素子を用いた多軸角速度センサにZ軸方向のコリオリ力Fzが作用した状態を示す側断面図である。
【図70】図67に示す圧電素子を用いた多軸角速度センサに作用したX軸方向のコリオリ力Fxを検出するための配線を示す配線図である。
【図71】図67に示す圧電素子を用いた多軸角速度センサに作用したY軸方向のコリオリ力Fyを検出するための配線を示す配線図である。
【図72】図67に示す圧電素子を用いた多軸角速度センサに作用したZ軸方向のコリオリ力Fzを検出するための配線を示す配線図である。
【図73】図57に示す多軸角速度センサの第2の変形例の構造を示す側断面図である。
【図74】図57に示す多軸角速度センサの第3の変形例の構造を示す側断面図である。
【図75】本発明の第6の実施例に係る多軸角速度センサの基本原理を示す斜視図である。
【図76】本発明の第6の実施例に係る多軸角速度センサの具体的な構造を示す側断面図である。
【図77】本発明に係る多軸角速度センサにおける検出動作の手順を示す流れ図である。
【図78】本発明に係る多軸角速度センサにおける検出動作を行うための具体的な回路構成例を示す図である。
【図79】本発明によってX軸まわりの角速度ωxを検出する別な基本原理を説明する図である。
【図80】本発明によってY軸まわりの角速度ωyを検出する別な基本原理を説明する図である。
【図81】本発明によってZ軸まわりの角速度ωzを検出する別な基本原理を説明する図である。
【符号の説明】
10…振動子
11,12…圧電素子
20…物体
30…振動子
110…可撓基板
120…固定基板
130…振動子
140…センサ筐体
151,152…インバータ
153…抵抗
154…排他的OR回路
161,162…インバータ
163,164…抵抗
165…排他的OR回路
171,172…誘電体基板
210…第1の基板
211…振動子
212…架橋部
213…支持枠
220…第2の基板
221…窪み
230…第3の基板
231…切削面
240…第4の基板
241…振動子
242…台座
250…可撓基板
251…作用部
252…可撓部
253…固定部
260…振動子
270…台座
280…ベース基板
290…蓋基板
310…第1の基板
311…作用部
312…可撓部
313…固定部
320…第2の基板
321…振動子
322…台座
330…第3の基板
331…窪み
340…第4の基板
350…電源
361〜363…電圧計
410…可撓基板
420…固定基板
430…圧電素子
440…振動子
450…センサ筐体
460…圧電素子
470…圧電素子
480…可撓基板
490…可撓基板
510…可撓基板
520…圧電素子
530…圧電素子
540…圧電素子
550…振動子
560…センサ筐体
570…可撓基板
610…振動子
620…センサ筐体
630…仕切板
640…ダイヤフラム
650…連結棒
660…保護カバー
700…角速度センサを示すブロック
710…振動部
711…振動発生回路
712…マルチプレクサ
720…検出部
721…変位検出回路
722…マルチプレクサ
730…検出値出力回路
740…コントローラ
a…遅延時間
b…パルス幅/遅延時間
C1〜C5…容量素子/容量値
ΔC,ΔC12,ΔC34…容量値の差
D1〜D16…局在素子
d…パルス幅/遅延時間
d1,d2…遅延時間
E0,E1〜E5…上部電極層
E1a〜E5a…補助電極層
F0,F1〜F5…下部電極層
F1a〜F5a…補助電極層
F,Fx,Fy,Fz…コリオリ力
f…周期
G…重心
G0…上部電極層
G1〜G5…下部電極層
G6〜G10…上部電極層
H1〜H4…開口部
J1〜J6…コイル
L1〜L16…上部電極層
M0,M1〜M16…下部電極層
N1〜N4…ノード
R…ピエゾ抵抗素子
Rx1〜Rx4…ピエゾ抵抗素子
Ry1〜Ry4…ピエゾ抵抗素子
Rz1〜Rz4…ピエゾ抵抗素子
SW1〜SW6…スイッチ
T1〜T4,Tx1,Ty1,Tz1,Tx2,Ty2,Tz2…端子
t1〜t5…期間
U,Ux,Uy,Uz…振動
V,V1〜V5…電圧
Vx,Vy,Vz…ブリッジ電圧
W1,W2,X,Y,Z…座標軸
α,αx,αy,αz…加速度
ω,ωx,ωy,ωz…角速度

Claims (4)

  1. XYZ三次元座標系におけるX軸まわりの角速度を検出する角速度センサであって、
    センサ筐体に固定され、XY平面に平行な基板面を有する第1の基板と、
    前記第1の基板の基板面に対して所定の距離を保って平行に配置された基板面を有し、中心部分と周囲部分とのうち、少なくとも周囲部分が可撓性を有し、前記周囲部分を介して前記センサ筐体に固定されている第2の基板と、
    前記第2の基板の前記中心部分からZ軸に沿った方向に突出するように、前記第2の基板に接続された振動子と、
    を備え、
    前記振動子に対して外力が作用した場合に、前記周囲部分に撓みが生じることにより、前記中心部分が前記第1の基板に対して変位を生じるように構成され、
    前記第2の基板の前記中心部分には、第1の変位電極、第2の変位電極、第3の変位電極がXY平面に平行となるように形成されており、前記第1の基板における前記第1の変位電極、前記第2の変位電極、前記第3の変位電極に対向する位置には、それぞれ第1の固定電極、第2の固定電極、第3の固定電極がXY平面に平行となるように形成されており、前記第1の固定電極と前記第1の変位電極とにより第1の容量素子が形成され、前記第2の固定電極と前記第2の変位電極とにより第2の容量素子が形成され、前記第3の固定電極と前記第3の変位電極とにより第3の容量素子が形成されており、
    前記第1の容量素子と前記第2の容量素子は、前記振動子がY軸方向に変位を生じた際に、一方の電極間隔が増加し、他方の電極間隔が減少するような位置に配置されており、前記第3の容量素子は、前記振動子がZ軸方向に変位を生じた際に電極間隔が変化するような位置に配置されており、
    前記第3の容量素子を構成する一対の電極間に交流信号を供給することによりクーロン力を作用させ、作用したクーロン力によって前記振動子をZ軸方向に振動させる手段と、
    前記第1の容量素子の静電容量値と前記第2の容量素子の静電容量値との差に基づいて、X軸まわりの角速度を示す値を出力する手段と、
    を更に備えることを特徴とする角速度センサ。
  2. 請求項1に記載の角速度センサにおいて、
    第1の容量素子をY軸の正の領域上に配置し、第2の容量素子をY軸の負の領域上に配置し、第3の容量素子をZ軸と交差する位置に配置したことを特徴とする角速度センサ。
  3. XYZ三次元座標系におけるY軸まわりの角速度を検出する角速度センサであって、
    センサ筐体に固定され、XY平面に平行な基板面を有する第1の基板と、
    前記第1の基板の基板面に対して所定の距離を保って平行に配置された基板面を有し、中心部分と周囲部分とのうち、少なくとも周囲部分が可撓性を有し、前記周囲部分を介して前記センサ筐体に固定されている第2の基板と、
    前記第2の基板の前記中心部分からZ軸に沿った方向に突出するように、前記第2の基板に接続された振動子と、
    を備え、
    前記振動子に対して外力が作用した場合に、前記周囲部分に撓みが生じることにより、前記中心部分が前記第1の基板に対して変位を生じるように構成され、
    前記第2の基板の前記中心部分には、第1の変位電極、第2の変位電極、第3の変位電極がXY平面に平行となるように形成されており、前記第1の基板における前記第1の変位電極、前記第2の変位電極、前記第3の変位電極に対向する位置には、それぞれ第1の固定電極、第2の固定電極、第3の固定電極がXY平面に平行となるように形成されており、前記第1の固定電極と前記第1の変位電極とにより第1の容量素子が形成され、前記第2の固定電極と前記第2の変位電極とにより第2の容量素子が形成され、前記第3の固定電極と前記第3の変位電極とにより第3の容量素子が形成されており、
    前記第1の容量素子と前記第2の容量素子は、前記振動子がX軸方向に変位を生じた際に、一方の電極間隔が増加し、他方の電極間隔が減少するような位置に配置されており、前記第3の容量素子は、前記振動子がZ軸方向に変位を生じた際に電極間隔が変化するような位置に配置されており、
    前記第1の容量素子を構成する一対の電極間および前記第2の容量素子を構成する一対の電極間に互いに位相が異なる交流信号を供給することによりクーロン力を作用させ、作用したクーロン力によって前記振動子をX軸方向に振動させる手段と、
    前記第3の容量素子の静電容量値に基づいて、Y軸まわりの角速度を示す値を出力する手段と、
    を更に備えることを特徴とする角速度センサ。
  4. 請求項3に記載の角速度センサにおいて、
    第1の容量素子をX軸の正の領域上に配置し、第2の容量素子をX軸の負の領域上に配置し、第3の容量素子をZ軸と交差する位置に配置したことを特徴とする角速度センサ。
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