JP2014062918A - 応力検出素子、触覚センサー、および把持装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】剪断力検出素子200は、矩形状の剪断力検出用開口部111、剪断力検出用開口部111の外周縁に設けられる枠部を有するセンサー基板11と、センサー基板11上に形成されて剪断力検出用開口部111を閉塞する可撓性を有する支持膜14と、センサー平面視において、剪断力検出用開口部111の長辺に沿い、剪断力検出用開口部111の内側および外側に跨って、前記支持膜14上に設けられるとともに、湾曲することで電気信号を出力する剪断力検出用圧電体210と、剪断力検出用圧電体210および支持膜14を覆う弾性膜15と、を具備した。
【選択図】図1
Description
このような剪断力検出素子では、弾性膜に対象物が接触し、開口部の一方向と直交する方向に力が加わると、弾性層に歪みが生じる。そして、この弾性層の歪みによりメンブレン全体が撓み、圧電体部から電気信号(電流)が出力される。したがって、例えばこのような剪断力検出素子を、対象物を把持するための把持面に設けることで、剪断力検出素子から出力される電気信号により、接触した対象物から把持面に加えられる剪断力を測定することが可能となる。
また、本発明の剪断力検出素子では、支持体上に支持膜、圧電体部、弾性層を積層するだけの構成であるため、例えば磁場を加えて一部の構成を加工するなどの煩雑な製造方法が不要であり、各構成を積層するだけの簡単な方法により製造することができる。したがって、剪断力検出素子の生産性が良好となり、製造に要するコストも低減させることができる。また、例えばカンチレバー形状の構造体を立設させる構成では、構造体を立設させる分、厚み寸法が増大するが、本発明では、支持体上に膜状の支持膜、圧電体部、弾性層を積層する構成であるため、厚み寸法の増大を抑えることができ、剪断力検出素子の小型化を図ることができる。
この時、開口部の長手方向に沿った一側縁に圧電体部を設け、開口部長手方向と圧電体部長手方向とを一致させることで、メンブレンのどの位置が撓んだとしても、圧電体部によりその撓みを検出することができる。また、圧電体部を、その長手方向が、開口部の長手方向に対して直交する方向となるように配置した場合、圧電体部が支持膜の撓みを阻害するおそれもあり、精度の高い剪断力の検出が困難となる。これに対して、上記のように、圧電体部の長手方向と開口部の長手方向とを一致させる構成では、圧電体部により支持膜の撓みを阻害することがなく、支持膜は、対象物からの剪断力に応じて撓むことができる。したがって、剪断力の検出精度をより向上させることが可能となる。
ここで、コンプライアンス部としては、例えば、支持膜上に剪断方向の中心位置に直線部と平行に溝を形成するなどして、メンブレンの他部よりも厚み寸法が薄くすることで形成されていてもよく、また支持膜上に形成される例えば圧電体部や補強膜など積層体の形成位置により、積層体が設けられていない部分をコンプライアンス部とする構成としてもよい。さらには、支持膜上に形成される例えば圧電体部や補強部などの積層体と、支持膜とのトータル膜厚に差を生じさせることでコンプライアンス部を形成する構成などとしてもよい。すなわち、コンプライアンス部は、メンブレンに変曲点を生じさせる構成であればいかなる構成であってもよい。
ここで、直線部の直線方向に沿って剪断力検出素子を見た断面視において、メンブレンの撓みが、第一辺側と第二辺側とで点対称とならない場合では、例えば、第一辺側の撓みが小さいと、第一辺に沿って設けられる圧電体部から出力される電気信号が弱くなり、剪断力の検出精度が低下する。これに対して、本発明では、支持補強部により、コンプライアンス部が定位置に保持され、メンブレンの撓みを、コンプライアンス部を挟んで略点対称とすることができるため、第一辺側および第二辺側の撓み量が同一値となる。したがって、圧電体部が第一辺側に形成される場合であっても、第二辺側に形成される場合であっても、メンブレンの撓み量を精度良く検出することができる。
上記のようにコンプライアンス部が形成される場合、直線部の直線方向に沿って見る断面視において、コンプライアンス部を変曲点として、メンブレンの第一辺側と第二辺側とで、より点対称に近似する撓み形状が形成される。したがって、第一辺および第二辺に対して圧電体部を設け、これらの2つの圧電体部により撓みを検出することで、メンブレンの撓みに対する正確な電気信号を得ることができる。
上記のように第一辺および第二辺にそれぞれ圧電体部が形成される場合、剪断力が加わると、メンブレンの第一辺側と第二辺側とで略点対称となる撓みが形成される。したがって、第一辺に設けられる圧電体部および第二辺に設けられる圧電体部からそれぞれ撓み量に対する電気信号が出力されることとなる。したがって、これらの圧電体部から出力される電気信号の絶対値を加算することで、より大きな電気信号を得ることができ、より精度の高い剪断力検出を実施することが可能となる。
ここで、各圧電体部から出力される電子信号の絶対値の和を得るためには、加算回路を用いてもよく、減算回路を用いてもよい。
圧電体部は、圧電膜と、膜上面に形成される上部電極と、膜下面に形成される下部電極とにより形成される。ここで、加算回路を用いる場合、第一辺側の圧電体部の上部電極と第二辺側の圧電体部の下部電極を第一の接続線により接続し、第一辺側の圧電体部の下部電極と第二辺側の圧電体部の上部電極を第二の接続線により接続し、これら第一接続線および第二の接続線を加算回路に接続する。また、減算回路を用いる場合では、第一辺側の圧電体部の上部電極と第二辺側の圧電体部の上部電極を第一の接続線により接続し、第一辺側の圧電体部の下部電極と第二辺側の圧電体部の下部電極を第二の接続線により接続し、これら第一接続線および第二の接続線を減算回路に接続する。
各圧電体部では、上述したように、撓み方向が逆となるため、第一辺側の圧電体部から出力される電気信号と、第二辺側の圧電体部から出力される電気信号とでは、正負符号が逆となる。これに対して、上記のような加算回路や減算回路を用いることで、各電気信号の正負符号を揃えて、各電器信号の絶対値の和を演算することが可能となる。
ここで、弾性部材は、板状に形成され、板面方向が前記直線部の直線方向と平行で、かつ板厚み方向が検出方向となるように配設されるものであってもよく、棒状部材がメンブレン内に複数立設される構成などとしてもよい。
このような弾性部材を用いる構成では、弾性部材に対象物が接触して剪断力が働くと、モーメント力により各弾性部材が傾斜する。そして、弾性部材の傾斜により、弾性部材と支持膜との連結部が傾斜し、メンブレンに撓みが発生する。このような構成では、モーメント力を利用してメンブレンの撓み量を大きくすることができ、圧電体部からより大きな電気信号を出力させることが可能となる。
この発明では、センサー面に作用する剪断力に加えて、前記センサー面に対して直交する方向の圧力(以降、正圧と称す)をも検出することができる。また、このような触覚センサーを用いることで、例えば物体を把持する装置などにおいて、把持時に正圧と滑り力とを計測することができ、触覚センサーから出力される電気信号に基づいて把持動作を制御することで、把持対象物を破損させず、かつ落とさないように把持することが可能となる。さらに、正圧検出部は、剪断力検出素子と同様に、支持体に支持膜、正圧検出量圧電体、および弾性層を設ける構成であり、上述した剪断力検出素子と同様の簡単な積層構造を有している。したがって、剪断力検出素子の製造と同時に正圧検出部を製造することもでき、触覚センサーの製造効率をより効率化することができる。
また、上述したように、把持装置を構成する触覚センサーは、支持体に支持膜、圧電体部、および弾性層を積層させただけの簡単な構成の剪断力検出素子を備える簡単な構成を有するものであり、容易に製造可能であるため、このような触覚センサーを用いた把持装置においても、同様に簡単な構成とすることができ、製造も容易となる。
以下、本発明に係る第一実施形態の剪断力検出素子について、図面に基づいて説明する。
(1.剪断力検出素子の構成)
図1は、本実施形態の剪断力検出素子200の概略構成を示す断面図であり、図2は、剪断力検出素子200の平面図である。
また、本実施形態では、この剪断力検出用開口部111は、長辺寸法Lが500μm、短辺寸法Wが100μmに形成されている。なお、剪断力検出用開口部111の寸法は、長辺寸法Lおよび短辺寸法Wの比がL/W≧2となるように形成されていればよく、上記寸法には限られない。すなわち、例えば剪断力検出素子200において、長辺寸法Lおよび短辺寸法Wの比がL/W<2となるように剪断力検出用開口部111を形成した場合、弾性膜15のY方向への撓みにより、支持膜14もY方向に対して撓みが生じてしまい、X方向のみの撓み検出が困難となる。これに対して、長辺寸法Lおよび短辺寸法Wの比がL/W≧2とすることで、支持膜14のY方向への撓みを軽減することができ、X方向に対する剪断力を精度よく検出することができる。
また、以降の説明において、図2に示すようなセンサー平面視において、支持膜14のうち、剪断力検出用開口部111を閉塞する領域を剪断力検出用メンブレン141と称す。
剪断力検出用圧電膜211は、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛:lead zirconatetitanate)を厚み寸法が例えば500nmとなる膜状に成膜することで形成される。なお、本実施形態では、剪断力検出用圧電膜211としてPZTを用いるが、膜の応力変化により電荷を発生することが可能な素材であれば、いかなる素材を用いてもよく、例えばチタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb、La)TiO3)、窒化アルミ(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などを用いてもよい。この剪断力検出用圧電膜211は、剪断力により支持膜が撓むと、その撓み量に応じて剪断力検出用下部電極212および剪断力検出用上部電極213の間で電位差が発生する。これにより、剪断力検出用下部電極212および剪断力検出用上部電極213に剪断力検出用圧電膜211からの電流が流れ、電気信号が出力される。
剪断力検出用下部電極212は、厚み寸法が例えば200nmに形成される膜状の電極である。この剪断力検出用下部電極212としては、導電性を有する導電薄膜であれば、いかなるものであってもよいが、本実施形態では、例えば、Ti/Ir/Pt/Tiの積層構造膜を用いる。
また、剪断力検出用上部電極213は、厚み寸法が例えば50nmに形成される膜状の電極である。この剪断力検出用上部電極213としても、導電性薄膜であれば、いかなる素材を用いてもよいが、本実施形態では、Ir薄膜を用いる。
ここで、圧電積層部214は、Y方向に長手となる矩形状に形成され、図2に示すようなセンサー平面視において、Y方向の長さ寸法Lpが剪断力検出用開口部111の長辺111Aの長さ寸法Lより小さく、かつ、X方向に沿う端縁(下部電極側縁2122)から剪断力検出用開口部111の短辺111Bまでの距離寸法LGが、少なくとも剪断力検出用開口部111の短辺寸法Wよりも大きく形成されている。なお、本実施形態では、距離寸法LGは120μmに形成されている。
これは、距離寸法LGが剪断力検出用開口部111の短辺寸法W以下となる場合、X方向の撓み検出精度が低下するおそれがあるためである。すなわち、長方形状の剪断力検出用メンブレン141において、剪断力検出用開口部111の短辺111B上の支持膜14は、基板部113に固定されているため、弾性膜15の撓んだとしても変位しない。したがって、短辺111B近傍では、剪断力に対して撓みが生じないため、この領域の支持膜14の撓みを検出した場合、正確な剪断力の測定が困難となる。これに対して、上記のように、距離寸法LGが剪断力検出用開口部111の短辺寸法Wより大きくなる場合、剪断力に応じた撓みを支持膜14に生じさせることができ、かつ、X方向の剪断力により支持膜14にY方向の撓みが発生しないため、精度の高い剪断力測定を実施することが可能となる。
ここで、圧電積層部214の剪断力検出用メンブレン141の外部におけるX方向に沿う寸法Wp2が、支持膜14および圧電積層部214の膜厚総和の5倍よりも小さい寸法である場合、次のような問題がある。すなわち、剪断力検出用メンブレン141が剪断力により変形する際、各層が剪断力により剪断力検出用開口部111内に入り込もうとするモーメント力、または剪断力検出用開口部111から離れる方向に浮き上がろうとするモーメント力が発生する。これらのモーメント力は、支持膜14、剪断力検出用下部電極212、剪断力検出用圧電膜211、および剪断力検出用上部電極213のそれぞれに作用して、剪断力検出用メンブレン141および剪断力検出用圧電体210を変形させる。この時、剪断力検出用圧電体210における圧電積層部214の剪断力検出用メンブレン141の外部の領域において、剪断力検出用開口部111の縁(長辺111A)から離れるに従って剪断力検出用メンブレン141の変形に係る応力も小さくなる。ここで、圧電積層部214における剪断力検出用メンブレン141の外部に形成される部分のX方向寸法Wp2がWp2<5t(tは、膜厚総和)となる場合、剪断力検出用メンブレン141の変形に係る応力を十分に受けることができないため、安定した剪断力検出用メンブレン141の変形が得られない。また、剪断力検出用圧電体210を構成する各膜311,312,313が剥離するおそれもある。これに対して、寸法Wp2がWp2≧5tとなるように剪断力検出用圧電体210を形成することで、剪断力検出用メンブレン141の変形を安定させることができ、剥離などの不都合も回避することができる。
この弾性膜15は、剪断力検出用圧電体210の保護膜として機能するとともに、当該弾性膜15に加わる剪断力を剪断力検出用メンブレン141に伝達して撓ませる。そして、この弾性膜15の撓みにより、剪断力検出用メンブレン141が撓むことで、剪断力検出用圧電体210も撓み、その撓み量に応じた電気信号が出力される。
次に上記のような剪断力検出素子の動作について、図面に基づいて説明する。
図3は、剪断力検出素子に把持対象物Aが接触し、矢印P1の方向に応力(剪断力)が加えられた状態を示す図であり、(A)は、剪断力検出用メンブレン141の変形前の状態を示す図、(B)は、剪断力により剪断力検出用メンブレン141が変形した状態を示す図である。
すなわち、弾性膜15に剪断力が発生すると、剪断力検出用メンブレン141の−X側の面では、矢印M1に示すように、剪断力検出用開口部111内に入り込むモーメント力が発生し、+X側の面では、矢印M2に示すように、剪断力検出用開口部111から浮き上がろうとするモーメント力が発生する。
この時、剪断力検出用メンブレン141の中心位置には、剪断力検出用メンブレン141の他部よりも膜厚寸法が小さく、柔らかく形成されるコンプライアンス部143が形成されているため、このコンプライアンス部143が変曲点となり、1波長分のsin波形状に剪断力検出用メンブレン141が撓む。
上記のような剪断力検出素子200により剪断力を検出するためには、予め剪断力検出用上部電極213および剪断力検出用下部電極212間に電圧を印加し、図4(A)に示すように、分極させておく。この状態で、図3(B)に示すように、剪断力検出用メンブレン141に撓みが発生すると、剪断力検出用圧電膜211に電位差が発生する。
具体的には、図3(A)の矢印P1に示すような剪断力が加わった場合、図3(B)の−X方向側の剪断力検出用圧電体210の剪断力検出用圧電膜211は、剪断力検出用メンブレン141と同様に、矢印M1に示すようなモーメント力が加わるため、図4(B)に示すように、剪断力検出用圧電膜211に引っ張り応力が発生し、膜厚も小さくなる。これにより、剪断力検出用圧電膜211では、分極モーメント量が低下し、剪断力検出用上部電極213との接触面に正電荷、剪断力検出用下部電極212との接触面に負電荷が発生する。このため、剪断力検出用下部電極212から剪断力検出用上部電極213に向かう方向に電流が流れ、電気信号として出力される。
また、上記のような剪断力検出素子200は、−X方向側の剪断力検出用圧電体210から出力される剪断力検出信号、および+X方向側の剪断力検出用圧電体210から出力される剪断力検出信号を加算する演算回路220を備えている。
この演算回路220は、例えばセンサー基板11上に形成されていてもよく、センサー基板11とは別体として設けられ、センサー基板11上に形成される剪断力検出用下部電極212および剪断力検出用上部電極213に接続される構成などとしてもよい。なお、センサー基板11と別体として設けられる場合では、例えば剪断力検出素子200が取り付けられる装置などに収納される構成などとしてもよい。
本実施形態の剪断力検出素子200の演算回路220では、−X方向側の剪断力検出用圧電体210Aの剪断力検出用下部電極212、および+X方向側の剪断力検出用圧電体210Bの剪断力検出用上部電極213を接続した接続線221Aと、−X方向側の剪断力検出用圧電体210Aの剪断力検出用上部電極213、および+X方向側の剪断力検出用圧電体210Bの剪断力検出用下部電極212を接続した接続線221Bと、をそれぞれ増幅器(Amp)222に出力する。
ここで、図3(B)に示すように、剪断力検出用圧電体210Aと剪断力検出用圧電体210Bとでは、撓み方向が逆となるため、これらの剪断力検出用圧電体210Aおよび剪断力検出用圧電体210Bから出力される電流は、正負が逆転する。したがって、上記のように、剪断力検出用圧電体210Aの剪断力検出用上部電極213と、剪断力検出用圧電体210Bの剪断力検出用下部電極212とを接続し、剪断力検出用圧電体210Aの剪断力検出用下部電極212と、剪断力検出用圧電体210Bの剪断力検出用上部電極213とを接続することで、剪断力検出用圧電体210A,210Bから出力される電流の正負符号を揃えることができる。
図6(A)は、図5中の点Saでの発信波形を示す図であり、(B)は、図5中の点Sbでの発信波形を示す図である。
剪断力検出素子200は、弾性膜15に対象物Aが当接してX方向に剪断力が発生するタイミングt1で、図6(A)に示すように、例えば正の電気信号が出力される。また、例えば対象物Aが弾性膜15から離れて剪断力がなくなるタイミングt2で、弾性膜15が弾性により元の位置に戻るため、剪断力検出用メンブレン141も元の位置に戻り、この時発生する剪断力検出用圧電体210の変形により、負の電気信号が出力される。このような電気信号を積分器223に入力することで、図6(B)に示すような、剪断力検出信号が得られる。この剪断力検出信号では、剪断力が作用している期間中、剪断力に応じた信号が連続的に出力される。
上述したように、上記第一実施形態の剪断力検出素子200は、剪断力検出用開口部111が形成されるセンサー基板11上に、支持膜14を積層する。そして、この支持膜14上に、剪断力検出用開口部111の長辺111Aに沿って剪断力検出用メンブレン141の内外に跨って配置される剪断力検出用圧電体210を積層し、さらに、その上層に弾性膜15を積層形成している。このような構成の剪断力検出素子では、弾性膜15に剪断力が加わると、剪断力検出用メンブレン141がモーメント力により撓み、剪断力検出用圧電体210から剪断力に応じた電気信号が出力される。したがって、このような電気信号を検出することで、容易に剪断力を測定することが可能となる。
また、センサー基板11上に、支持膜14、剪断力検出用圧電体210、および弾性膜15を積層するだけの簡単な構造であるため、各層を例えばスパッタリングなどによる積層、エッチングなどによるパターニングにより容易に形成することができる。したがって、例えば、基板の一部を剪断力の方向に合わせて折り曲げるなどの加工が不要であり、簡単な製造工程により剪断力検出素子を製造することができ、製造効率を向上させることができる。
このような剪断力検出用開口部111上に形成される剪断力検出用メンブレン141は、長辺方向への撓みが生じにくくなる。したがって、剪断力検出用圧電体210から出力される電気信号としても、長辺方向の撓みによるノイズを除去でき、検出方向である短辺方向(X方向)の剪断力を精度よく検出することができる。
したがって、剪断力検出用メンブレン141は、剪断力検出用開口部111の短辺方向に沿って断面した図4(B)に示すような断面視において、コンプライアンス部143を中心に点対称となる撓み、すなわち1波長分のsin波状の撓みが発生する。これにより、剪断力検出用メンブレン141内の撓み部分における傾斜角度が大きくなり、剪断力検出用圧電体210の撓み量も大きくなる。したがって、剪断力検出信号としてより大きな電気信号を出力することができ、剪断力検出精度を向上させることができる。
次に本発明に係る第二実施形態の剪断力検出素子200Aについて、図面に基づいて説明する。
図7は、第二実施形態の剪断力検出素子200Aを示す図であり、(A)は、剪断力検出用開口部111の短辺方向に沿って断面した断面図、(B)は、剪断力検出素子200Aの平面図である。なお、以降の実施形態の説明において、上記第一実施形態と同様の構成については同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
すなわち、第二実施形態の剪断力検出素子200Aは、第一実施形態と同様にセンサー基板11上に、支持膜14、剪断力検出用圧電体210(210A,210B)、および弾性膜15を積層することにより構成される。
ここで、第二実施形態の剪断力検出素子200Aのセンサー基板11に形成される剪断力検出用開口部111は、短辺方向(X方向)の中心位置に、長辺111Aに平行する支持補強部114が形成されている。
すなわち、剪断力検出用メンブレン141に剪断力が加わると、支持補強部114が形成される位置は定位置となり、この支持補強部114上の支持膜14を中心として、−X方向側および+X方向側にsin波形状の撓みが形成される。
また、補強膜230が設けられない構成としてもよいが、この場合、支持補強部114近傍において、剪断力検出用メンブレン141の撓み量が大きくなり、正常なsin波形状の撓みが形成されない場合がある。これに対して、補強膜230が設ける構成とすることで、支持補強部114近傍の剪断力検出用メンブレン141の撓み量を抑えることができ、支持補強部114を挟んで−X方向側と+X方向側とにおいて、撓み形状を略同一に揃えることができる。
このような剪断力検出素子200Aでは、剪断力検出用圧電体210Aから出力される電気信号と、剪断力検出用圧電体210Bから出力される電気信号とが、符号が異なるが絶対値が略同一値となり、信頼性の高い剪断力を検出することができる。
次に、本発明に係る第三実施形態の剪断力検出素子について、図面に基づいて説明する。
図8は、第三実施形態の剪断力検出素子200Bを剪断力検出用開口部111の短辺方向に沿って断面した断面図であり、(A)は、剪断力が加わっていない状態を示す図、(B)は、剪断力が加えられた状態を示す図である。
第三実施形態は、第一実施形態の剪断力検出素子200において、弾性膜15を変形したものであるため、センサー基板11、支持膜14、剪断力検出用圧電体210の構成については、その説明を省略する。
この弾性部材151は、板状部材であり、剪断力が加わっていない状態において、図8(A)に示すように、板面方向が支持膜14の面方向および剪断力検出用開口部111の短辺方向(剪断力検出方向)に対して直交するように、支持膜14および剪断力検出用圧電体210上に立設されている。そして、複数の弾性部材151が平行に、かつ剪断力検出方向に沿って敷き詰められることで本発明の弾性層を形成している。
なお、弾性部材151としては、棒状に形成され、支持膜14に対して直交する方向に立設される構成としてもよいが、この場合、Y方向に対する剪断力をも支持膜14に伝達してしまい、X方向に対する剪断力のみを検出する場合には不適切となる。これに対して、本実施形態のように、板状の弾性部材151を、X方向に複数並設することで、X方向に対する剪断力のみを良好に支持膜14に伝達することが可能となる。
次に、上述したような剪断力検出素子の応用例として、第一実施形態の剪断力検出素子200を備えた触覚センサーについて、図面に基づいて説明する。
図9は、第四実施形態の触覚センサーの一部を拡大した平面図である。
図9に示すように、触覚センサー10は、正圧検出部12と、上記第一実施形態の剪断力検出素子200が配置される第一剪断力検出部13Aおよび第二剪断力検出部13Bと、を複数備えている。
正圧検出部12は、例えば正方形状に形成されるセンサー素子であり、触覚センサー10のセンサー平面に対して直交する圧力を検出する。
第一剪断力検出部13Aは、上述した第一実施形態と同様に、Y方向に沿って長手となる剪断力検出素子200であり、X方向に対して発生する剪断力を検出する。
第二剪断力検出部13Bは、上述した剪断力検出素子200の配置方向を変更したものであり、X方向に沿って長手となる剪断力検出素子200であり、Y方向に対して発生する剪断力を検出する。
具体的には、図2に示すように、センサー基板11の面内の所定の矩形範囲内において、正圧検出部12は、矩形範囲の角部に相当する位置および矩形対角線上に配置され、これらの正圧検出部12に隣接する位置に所定の一方向に沿って長手となる第一剪断力検出部13Aおよび第一剪断力検出部13Aの長手方向と直交する方向に長手となる第二剪断力検出部13Bが配置されている。すなわち、センサー基板11の面内にX方向、Y方向の座標軸を設定した場合、正圧検出部12は、n,mを自然数として、(X,Y)=(4n,4m),(4n,4m+3),(4n+1,4m+1),(4n+1,4m+2),(4n+2,4m+1),(4n+2,4m+2),(4n+3,4m),(4n+3,4m+3)となる位置に配置される。また、第一剪断力検出部13Aは、(X,Y)=(4n,4m+1),(4n+1,4m+3),(4n+2,4m),(4n+3,4m+2)の位置に配置され、第二剪断力検出部13Bは、(X,Y)=(4n,4m+2),(4n+1,4m),(4n+2,4m+3),(4n+3,4m+1)となる位置に配置される。このように、センサー基板11の面内に一様に正圧検出部12、第一剪断力検出部13Aおよび第二剪断力検出部13Bを設けることで、センサー基板11上のどの位置に対象物Aが当接した場合でも、正圧および剪断力を検出することが可能となる。
図10は、触覚センサーにおける正圧検出部12、および剪断力検出部13の他の配置例を示す図である。
すなわち、図10に示す触覚センサー10では、センサー基板11上の所定位置に正圧検出部12を配置され、この正圧検出部12の外周に、放射状に例えば45度間隔で剪断力検出部13が配置されている。この場合、X方向の剪断力を検出する第一剪断力検出部13A、Y方向の剪断力を検出する第二剪断力検出部13Bに加え、傾きが+1となる方向の剪断力を検出する第三剪断力検出部13C、および傾きが−1となる方向の剪断力を検出する第四剪断力検出部13Dが設けられる構成となる。
次に、触覚センサー10を構成する正圧検出部12の構成について、図面に基づいて説明する。図11は、正圧検出部12の概略構成を示す図であり、(A)は、正圧検出部12をセンサー基板11の基板厚み方向で断面した際の断面図、(B)は、センサー平面視における正圧検出部12の平面図である。
ここで、正圧検出部12を構成するセンサー基板11、支持膜14、および弾性膜15は、剪断力検出部13A,13Bを構成する剪断力検出素子200を構成するセンサー基板11、支持膜14、および弾性膜15と共通である。すなわち、1つのセンサー基板11上に、剪断力検出素子200を構成する前記剪断力検出用開口部111、および正圧検出用開口部である正方形状の正圧検出用開口部112が形成されている。また、このセンサー基板11上を覆うように、センサー基板11の全面に支持膜14および弾性膜15が形成されている。したがって、ここでのセンサー基板11、支持膜14、および弾性膜15の詳細な説明は省略する。
また、以降の説明において、図11(B)に示すようなセンサー平面視において、正圧検出用開口部112の内周側領域に重なる支持膜14を正圧検出用メンブレン142と称する。
そして、これらの正圧検出用上部電極313および正圧検出用下部電極312は、それぞれ支持膜14上に形成される図示しないパターン電極に接続されて、例えばフレキシブル基板などの導通部材を介して、例えば触覚センサー10からの信号を処理する制御装置などに接続されている。
上記のような正圧検出部12では、予め正圧検出用上部電極313および正圧検出用下部電極312間に電圧を印加し、分極させておく。この状態で、触覚センサー10に基板厚み方向の圧力(正圧)が加えられると、その正圧により正圧検出用メンブレン142が正圧検出用開口部112側に撓む。これにより、正圧検出用メンブレン142上に形成される正圧検出用圧電体310も撓み、正圧検出用圧電膜311に電位差が発生する。したがって、正圧検出用上部電極313および正圧検出用下部電極312に電位差に基づいた電流が流れ、触覚センサー10から正圧検出信号として出力される。
上述したような第四実施形態の触覚センサー10では、上記第一実施形態の剪断力検出素子200が配置されている。このような剪断力検出素子200は、上述したように、各層を例えばスパッタリングなどによる積層、エッチングなどによるパターニングにより容易に形成することができる。したがって、剪断力検出素子200を図9や図10に示すようなアレイ構造に配置した触覚センサー10においても、上記剪断力検出素子200と同様の作用効果が得られ、簡単な構成で、薄型化および小型化を図ることができ、製造効率も向上させることができる。
このような触覚センサー10では、X方向およびY方向の双方に対して剪断力を検出することができる。すなわち、触覚センサー10のセンサー面に沿って作用するあらゆる方向の剪断力を検出することができる。
次に、第四実施形態の触覚センサー10の応用例として、触覚センサー10を備えた把持装置について、図面に基づいて説明する。
図12において、把持装置1は、少なくとも一対の把持アーム2を備え、この把持アーム2により、把持対象物Aを把持する装置である。この把持装置1としては、例えば製品を製造する製造工場などにおいて、ベルトコンベアーなどにより搬送された対象物を把持して持ち上げる装置である。そして、この把持装置1は、前記把持アーム2と、把持アーム2を駆動するアーム駆動部3と、アーム駆動部3の駆動を制御する制御装置4と、を備えて構成されている。
保持部材6は、例えば把持アーム2の移動方向に沿う案内溝を備え、この案内溝内で把持アーム2を保持することで、把持アーム2を移動可能に保持する。また、保持部材6は、鉛直方向に移動可能に設けられている。
駆動源7は、例えば駆動モーターであり、制御装置4から入力される駆動制御信号に応じて駆動力を発生させる。
駆動伝達部8は、例えば複数のギアにより構成され、駆動源7で発生した駆動力を把持アーム2および保持部材6に伝達させ、把持アーム2および保持部材6を移動させる。
なお、本実施形態では、一例として上記構成を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、把持アーム2を保持部材6の案内溝に沿って移動させる構成に限らず、把持アームを回動可能に保持する構成などとしてもよい。駆動源7としても駆動モーターに限られず、例えば油圧ポンプなどにより駆動される構成としてもよく、駆動伝達部8としても、例えば駆動力を歯車により伝達する構成に限らず、ベルトやチェーンにより伝達する構成、油圧などにより駆動されるピストンを備えた構成などとしてもよい。
具体的には、制御装置4は、図12に示すように、アーム駆動部3および触覚センサー10に接続され、把持装置1の全体動作を制御する。この制御装置4は、触覚センサー10から入力される剪断力検出信号、および正圧検出信号を読み取る信号検出手段41、対象物Aの滑り状態を検出する把持検出手段42、およびアーム駆動部3に把持アーム2の駆動を制御するための駆動制御信号を出力する駆動制御手段43を備えている。また、この制御装置4としては、例えばパーソナルコンピューターなどの汎用コンピューターを用いることもでき、例えばキーボードなどの入力装置や、対象物Aの把持状態を表示させる表示部などを備える構成としてもよい。
また、信号検出手段41、把持検出手段42、および駆動制御手段43は、プログラムとして例えばメモリーなどの記憶部に記憶され、CPUなどの演算回路により適宜読み出されて実行されるものであってもよく、例えばICなどの集積回路により構成され、入力された電気信号に対して所定の処理を実施するものであってもよい。
ここで、図13に、把持装置1の把持動作における触覚センサーに作用する正圧および剪断力の関係を示す図を示す。
図13において、正圧が所定値に達するまでは、正圧の増加に応じて剪断力が増加する。この状態は、対象物Aと把持面5との間に動摩擦力が作用している状態であり、把持検出手段42は、対象物Aが把持面5から滑り落ちている滑り状態で、把持が未完了であると判断する。一方、正圧が所定値以上となると、正圧を増大させても剪断力が増加しない状態となる。この状態は、対象物Aと把持面5との間に静摩擦力が作用している状態であり、把持検出手段42は、対象物Aが把持面5により把持された把持状態である判断する。
具体的には、剪断力検出信号の値が、静摩擦力に対応した所定の閾値を越える場合に、把持が完了したと判断する。
図14は、制御装置4の制御による把持装置1の把持動作を示すフローチャートである。図15は、把持装置1の把持動作時において、アーム駆動部3への駆動制御信号、触覚センサー10から出力される検出信号の発信タイミング示すタイミング図である。
駆動制御手段43は、把持検出手段42において、正圧検出信号を検出すると、把持アーム2の近接移動(対象物Aへの押圧)を停止させる(図14:ステップS3、図15:タイミングT2)。また、駆動制御手段43は、アーム駆動部3に駆動制御信号を出力し、把持アーム2を上方に持ち上げる動作(持上げ動作)を実施させる(図14:ステップS4、図15:タイミングT2〜T3)。
把持検出手段42は、信号検出手段41に入力される剪断力検出信号に基づいて、滑りがあるか否かを判断する(ステップS5)。
すなわち、制御装置4は、図15におけるタイミングT3において、駆動制御手段43にて把持動作を実施させ、対象物Aへの正圧を増大させ、信号検出手段41にて、再び剪断力検出部13A,13Bから出力される剪断力検出信号を検出する。以上のような滑り検知動作(タイミングT2〜T6)を繰り返し、剪断力検出信号が、所定の閾値S1以上となった場合(タイミングT6)に、ステップS5において、滑りがない、すなわち把持が完了したと判断し、滑り検知動作を停止させる。
上述したような第五実施形態の把持装置1では、上記第四実施形態の触覚センサー10を備えている。このような触覚センサー10は、上述したように、簡単な構成で、薄型化および小型化を図ることができ、製造効率も向上させることができるものであるため、把持装置1においても同様の作用効果を得ることができる。
そして、上記のような把持装置1の把持面5には、触覚センサー10が設けられている。したがって、触覚センサー10にて、対象物Aを把持した際の正圧および剪断力を精度よく検出することができ、これらの検出された正圧および剪断力に基づいて、対象物Aの破損や滑りをなくした精度のよい把持動作を実施することができる。
また、このような触覚センサー10では、X方向およびY方向の双方に対して剪断力を検出することができる。したがって、上記実施形態では、対象物Aを持ち上げる際の剪断力を測定したが、例えばベルトコンベアー上で搬送される対象物に対して把持を実施する際に、搬送方向への剪断力をも測定することができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
この場合、各剪断力検出素子200の短辺方向の寸法をより小さく形成でき、剪断力検出素子200、および触覚センサー10をより小型にすることが可能となる。
具体的には、剪断力検出素子200Cでは、剪断力検出用開口部111の一対の長辺111Aのうち、例えば−X方向側の長辺111Aに沿って剪断力検出用圧電体210Cが形成されている。このような剪断力検出用圧電体210Cは、支持膜14上に剪断力検出用下部電極212、第一層圧電膜215、中間電極216、第二層圧電膜217、剪断力検出用上部電極213を順に積層することで容易に形成可能である。また、第一層圧電膜215および第二層圧電膜217からそれぞれ電気信号が出力されるため、剪断力検出素子200Cから出力される剪断力検出信号としても、これらの電気信号の和が出力されるため、大きな信号値を得ることができる。したがって、図16に示すような1つの剪断力検出用開口部111に対して、図17に示すような1つの剪断力検出用圧電体210Cを設けることで、剪断力検出精度を低下させることなく、剪断力検出素子200Cおよび触覚センサー10の小型化を図ることができる。
また、図17に示すような剪断力検出素子200Cを用いた場合には、図5で示したような、2つの剪断力検出用圧電体210A,210Bの電極を接続する演算回路220が不要となり、回路構成をより簡略化することができる。
ここで、−X方向側に配置される剪断力検出用下部電極212Aは、剪断力検出用圧電膜211Aよりも+X方向側に突出して形成されている。一方、+X方向側に配置される剪断力検出用下部電極212Bの−X方向側端縁は、剪断力検出用圧電膜211Bの−X方向側端縁よりも+X方向側に位置している。すなわち、剪断力検出用下部電極212Bの−X方向側端縁は、剪断力検出用圧電膜211Bにより覆われている。そして、この剪断力検出用下部電極212Bの−X方向側端部には、±Y方向に剪断力検出用メンブレン141の外側領域まで延びる第一電極接続部212B1が連続して形成されている。
すなわち、図19に示すように、センサー基板11に正方形状の剪断力検出用開口部111Cを形成し、この剪断力検出用開口部111Cを閉塞する支持膜14を形成する。そして、剪断力検出用開口部111Cの各辺に対して、それぞれ剪断力検出用メンブレン141の内側および外側に跨る剪断力検出用圧電体210C,210D,210E,210Fを形成する。このような構成の剪断力検出素子200Eでは、Y方向と平行な辺に沿って形成される剪断力検出用圧電体210C,210DによりX方向の剪断力を検出し、X方向と平行な辺に沿って形成される剪断力検出用圧電体210E,210FによりY方向の剪断力を検出する。
このような構成の剪断力検出素子200では、X方向およびY方向に対する剪断力を1つの剪断力検出素子200Eにより検出することが可能となるので、触覚センサー10の小型化を図ることができる。
また、第三実施形態において、板状の弾性部材151をX方向に沿って並設させる構成を例示したが、この板状の弾性部材151におけるY方向の寸法は、例えば剪断力検出用開口部111の長辺111Aと同一長さ寸法に形成されるものであってもよく、長辺111Aよりも短く形成され、Y方向に沿って並設される構成などとしてもよい。
1B間の中心位置で、長辺111Aに平行する凹溝を形成する構成としてもよい。この場合、この凹溝部分の厚み寸法が支持膜14の他の領域に比べて薄く、柔らかくなることでコンプライアンス部143が構成される。
力検出用開口部、111A…長辺、114…支持補強部、143…コンプライアンス部、151…弾性層を構成する弾性部材、200…剪断力検出素子、210…圧電体部である剪断力検出用圧電体、220…演算回路、310…正圧検出用圧電体、A…対象物。
このような応力検出素子では、弾性膜に対象物が接触し、開口部の一方向と直交する方向に力が加わると、弾性層に歪みが生じる。そして、この弾性層の歪みによりメンブレン全体が撓み、圧電体部から電気信号(電流)が出力され、出力回路で増幅されて出力される。したがって、例えばこのような応力検出素子を、対象物を把持するための把持面に設けることで、応力検出素子から出力される電気信号により、接触した対象物から把持面に加えられる応力を測定することが可能となる。
また、本発明の応力検出素子では、支持体上に支持膜、圧電体部、弾性層を積層するだけの構成であるため、例えば磁場を加えて一部の構成を加工するなどの煩雑な製造方法が不要であり、各構成を積層するだけの簡単な方法により製造することができる。したがって、応力検出素子の生産性が良好となり、製造に要するコストも低減させることができる。また、例えばカンチレバー形状の構造体を立設させる構成では、構造体を立設させる分、厚み寸法が増大するが、本発明では、支持体上に膜状の支持膜、圧電体部、弾性層を積層する構成であるため、厚み寸法の増大を抑えることができ、応力検出素子の小型化を図ることができる。
この時、開口部の長手方向に沿った一側縁に圧電体部を設け、開口部長手方向と圧電体部長手方向とを一致させることで、メンブレンのどの位置が撓んだとしても、圧電体部によりその撓みを検出することができる。また、圧電体部を、その長手方向が、開口部の長手方向に対して直交する方向となるように配置した場合、圧電体部が支持膜の撓みを阻害するおそれもあり、精度の高い応力の検出が困難となる。これに対して、上記のように、圧電体部の長手方向と開口部の長手方向とを一致させる構成では、圧電体部により支持膜の撓みを阻害することがなく、支持膜は、対象物からの応力に応じて撓むことができる。したがって、応力の検出精度をより向上させることが可能となる。
ここで、コンプライアンス部としては、例えば、支持膜上に応力が作用する方向の中心位置に直線部と平行に溝を形成するなどして、メンブレンの他部よりも厚み寸法が薄くすることで形成されていてもよく、また支持膜上に形成される例えば圧電体部や補強膜など積層体の形成位置により、積層体が設けられていない部分をコンプライアンス部とする構成としてもよい。さらには、支持膜上に形成される例えば圧電体部や補強部などの積層体と、支持膜とのトータル膜厚に差を生じさせることでコンプライアンス部を形成する構成などとしてもよい。すなわち、コンプライアンス部は、メンブレンに変曲点を生じさせる構成であればいかなる構成であってもよい。
ここで、直線部の直線方向に沿って応力検出素子を見た断面視において、メンブレンの撓みが、第一辺側と第二辺側とで点対称とならない場合では、例えば、第一辺側の撓みが小さいと、第一辺に沿って設けられる圧電体部から出力される電気信号が弱くなり、応力の検出精度が低下する。これに対して、本発明では、支持補強部により、コンプライアンス部が定位置に保持され、メンブレンの撓みを、コンプライアンス部を挟んで略点対称とすることができるため、第一辺側および第二辺側の撓み量が同一値となる。したがって、圧電体部が第一辺側に形成される場合であっても、第二辺側に形成される場合であっても、メンブレンの撓み量を精度良く検出することができる。
上記のようにコンプライアンス部が形成される場合、直線部の直線方向に沿って見る断面視において、コンプライアンス部を変曲点として、メンブレンの第一辺側と第二辺側とで、より点対称に近似する撓み形状が形成される。したがって、第一辺および第二辺に対して圧電体部を設け、これらの2つの圧電体部により撓みを検出することで、メンブレンの撓みに対する正確な電気信号を得ることができる。
上記のように第一辺および第二辺にそれぞれ圧電体部が形成される場合、応力が加わると、メンブレンの第一辺側と第二辺側とで略点対称となる撓みが形成される。したがって、第一辺に設けられる圧電体部および第二辺に設けられる圧電体部からそれぞれ撓み量に対する電気信号が出力されることとなる。したがって、これらの圧電体部から出力される電気信号の絶対値を加算することで、より大きな電気信号を得ることができ、より精度の高い応力検出を実施することが可能となる。
ここで、各圧電体部から出力される電子信号の絶対値の和を得るために、出力回路は、加算回路を備えていてもよく、減算回路を備えていてもよい。
圧電体部は、圧電膜と、膜上面に形成される上部電極と、膜下面に形成される下部電極とにより形成される。ここで、加算回路を用いる場合、第一辺側の圧電体部の上部電極と第二辺側の圧電体部の下部電極を第一の接続線により接続し、第一辺側の圧電体部の下部電極と第二辺側の圧電体部の上部電極を第二の接続線により接続し、これら第一接続線および第二の接続線を加算回路に接続する。また、減算回路を用いる場合では、第一辺側の圧電体部の上部電極と第二辺側の圧電体部の上部電極を第一の接続線により接続し、第一辺側の圧電体部の下部電極と第二辺側の圧電体部の下部電極を第二の接続線により接続し、これら第一接続線および第二の接続線を減算回路に接続する。
各圧電体部では、上述したように、撓み方向が逆となるため、第一辺側の圧電体部から出力される電気信号と、第二辺側の圧電体部から出力される電気信号とでは、正負符号が逆となる。これに対して、上記のような加算回路や減算回路を用いることで、各電気信号の正負符号を揃えて、各電器信号の絶対値の和を演算することが可能となる。
ここで、弾性部材は、板状に形成され、板面方向が前記直線部の直線方向と平行で、かつ板厚み方向が検出方向となるように配設されるものであってもよく、棒状部材がメンブレン内に複数立設される構成などとしてもよい。
このような弾性部材を用いる構成では、弾性部材に対象物が接触して応力が働くと、モーメント力により各弾性部材が傾斜する。そして、弾性部材の傾斜により、弾性部材と支持膜との連結部が傾斜し、メンブレンに撓みが発生する。このような構成では、モーメント力を利用してメンブレンの撓み量を大きくすることができ、圧電体部からより大きな電気信号を出力させることが可能となる。
この発明では、センサー面に作用する応力に加えて、前記センサー面に対して直交する方向の圧力(以降、正圧と称す)をも検出することができる。また、このような触覚センサーを用いることで、例えば物体を把持する装置などにおいて、把持時に正圧と滑り力とを計測することができ、触覚センサーから出力される電気信号に基づいて把持動作を制御することで、把持対象物を破損させず、かつ落とさないように把持することが可能となる。さらに、正圧検出部は、応力検出素子と同様に、支持体に支持膜、正圧検出量圧電体、および弾性層を設ける構成であり、上述した応力検出素子と同様の簡単な積層構造を有している。したがって、応力検出素子の製造と同時に正圧検出部を製造することもでき、触覚センサーの製造効率をより効率化することができる。
また、上述したように、把持装置を構成する触覚センサーは、支持体に支持膜、圧電体部、および弾性層を積層させただけの簡単な構成の応力検出素子を備える簡単な構成を有するものであり、容易に製造可能であるため、このような触覚センサーを用いた把持装置においても、同様に簡単な構成とすることができ、製造も容易となる。
Claims (10)
- 剪断力を検出する剪断力検出素子であって、
前記剪断力の検出方向に直交し、互いに平行する一対の直線部を有する開口部を備えた支持体と、
前記支持体上に形成されて前記開口部を閉塞するとともに、可撓性を有する支持膜と、
前記支持体を基板厚み方向から見る平面視において、前記開口部の一対の前記直線部のうち少なくともいずれか一方の直線部に沿い、前記開口部の内外に跨って、前記支持膜上に設けられるとともに、湾曲することで電気信号を出力する圧電体部と、
前記圧電体部および前記支持膜を覆う弾性層と、
を具備したことを特徴とする剪断力検出素子。 - 請求項1に記載の剪断力検出素子において、
前記圧電体部および前記開口部は、前記平面視において、長辺の長さ寸法が短辺の長さ寸法以上となる長方形状に形成され、
前記開口部の前記直線部は、当該開口部の長辺であり、
前記圧電体部の長辺に沿う圧電体長手方向と、前記開口部の長辺に沿う開口部長手方向は、同一方向である
ことを特徴とする剪断力検出素子。 - 請求項1または請求項2に記載の剪断力検出素子において、
前記開口部の前記検出方向の中心部において、前記直線部と平行に設けられるとともに、前記直線部の直線方向に沿って当該剪断力検出素子を見る断面視において、前記検出方向に沿って前記剪断力が加えられた際の前記支持膜の変形状態に変曲点を生じさせるコンプライアンス部が設けられる
ことを特徴とする剪断力検出素子。 - 請求項3に記載の剪断力検出素子において、
前記支持体は、前記開口部の前記検出方向の中心部に前記直線部と平行に設けられる支持補強部を備え、
前記コンプライアンス部は、前記支持補強部上に設けられる
ことを特徴とする剪断力検出素子。 - 請求項3または請求項4に記載の剪断力検出素子において、
前記圧電体部は、前記開口部の一対の直線部の双方に対してそれぞれ設けられる
ことを特徴とする剪断力検出素子。 - 請求項5に記載の剪断力検出素子において、
2つの前記圧電体部から出力される前記電気信号の差および和の少なくともいずれか一方を出力する演算回路を備える
ことを特徴とする剪断力検出素子。 - 請求項1から請求項6のいずれかに記載の剪断力検出素子において、
前記弾性層は、前記検出方向に沿って複数配設されるとともに、前記支持膜よりも剛性が大きい複数の弾性部材を備える
ことを特徴とする剪断力検出素子。 - 請求項1から請求項7のいずれかに記載の剪断力検出素子を複数備えた触覚センサーであって、
前記剪断力検出素子の前記直線部が、所定の第一方向に沿って設けられる第一方向剪断力検出部と、
前記剪断力検出素子の前記直線部が、前記第一方向とは異なる第二方向に沿って設けられる第二方向剪断力検出部と、
を備えることを特徴とする触覚センサー。 - 請求項8に記載の触覚センサーにおいて、
対象物に接触した際の前記支持膜の面方向に対して直交する接触方向の圧力を検出する正圧検出部を備え、
前記正圧検出部は、
前記支持体に開口形成される正圧検出用開口部と、
この正圧検出用開口部を閉塞するとともに、可撓性を有する支持膜と、
前記支持体を基板厚み方向から見る平面視において、前記正圧検出用開口部の内側で、前記支持膜上に設けられるとともに、湾曲することで電気信号を出力する正圧検出用圧電体と、
前記正圧検出用圧電体および前記支持膜を覆う弾性層と、
を有することを特徴とする触覚センサー。 - 請求項8または請求項9の触覚センサーを備えて、前記対象物を把持する把持装置であって、
前記対象物を把持するとともに、前記対象物に接触する接触面に前記触覚センサーが設けられる少なくとも一対の把持アームと、
前記触覚センサーから出力される前記電気信号に基づいて、前記対象物のすべり状態を検出する把持検出手段と、
前記すべり状態に基づいて、前記把持アームの駆動を制御する駆動制御手段と、
を備えることを特徴とする把持装置。
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