JPH08199428A - 二酸化チタン含有ポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents

二酸化チタン含有ポリエステル繊維の製造方法

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JPH08199428A
JPH08199428A JP2087695A JP2087695A JPH08199428A JP H08199428 A JPH08199428 A JP H08199428A JP 2087695 A JP2087695 A JP 2087695A JP 2087695 A JP2087695 A JP 2087695A JP H08199428 A JPH08199428 A JP H08199428A
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titanium dioxide
polyester
polyester fiber
slurry
weight
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JP2087695A
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Hiroshi Fujita
寛 藤田
Shinji Owaki
新次 大脇
Toshimasa Kuroda
俊正 黒田
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Teijin Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 接触走行摩耗特性、紡糸、仮撚加工、製織等
の特性に優れたポリエステル繊維の製法の提供。 【構成】 一般式(I) X―Y―Z―Y′―X′ …(I) (式中、Zは2価のヒドロキシ基含有化合物残基、Yお
よびY′はポリオキシアルキレングリコール残基、Xお
よびX′は1価の脂肪族または芳香族アルキル基を示
す。)で表わされるポリ(オキシアルキレン)グリコー
ル誘導体を用い且つ、下記A〜Cの条件を同時に満足す
るように、スラリーを、ポリエステル融液に添加し、溶
融紡糸する。 A) 0.65≦A+B≦10 B) 0.5≦B≦5 C) 0.25B≦A≦10B (式中、Aはグリコール誘導体の、Bは二酸化チタンの
重量%を表わす。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、二酸化チタン含有ポリ
エステル繊維の製造方法に関する。更に詳しくは、本発
明は紡糸、仮撚加工、製織などの工程通過性が改善され
且つ粘度低下、黄変がなく、しかも実用に供し得る物性
を有する高品質の二酸化チタン含有ポリエステル繊維の
製造に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル繊維に、艶消、防透・隠蔽
性、紫外線遮蔽性、織物ドレープ性、耐光性などの付加
的効果を付与する為に、二酸化チタンを配合することが
一般におこなわれている。
【0003】そして、二酸化チタンのポリマー内での分
散状態の良否が、重合工程や製糸工程の操業性に大きく
影響を及ぼすこともよく知られている。特に、二酸化チ
タンを添加したポリエステル系繊維は、二酸化チタンが
繊維表面に存在するために、製糸工程、後加工工程にお
ける金属接糸部が摩耗(以下、接触走行摩耗と称するこ
とがある。)しやすく、製糸時の毛羽発生、製糸時の操
業性が悪化する。
【0004】このことは近年の紡糸速度、仮撚加工速
度、製糸速度の高速化に伴い、特に深刻な問題となって
いる。
【0005】上記の問題を解決するために、例えば、顔
料などの着色剤を液状分散媒に分散させた液状分散液
を、ポリエステルの融液に添加する所謂原液着色法を、
二酸化チタンなどの機能付与剤の添加に応用することが
提案されている。
【0006】ポリエステル用の液状分散媒としては、ト
リビフェニルホスフェートのようなリン系分散媒(特公
昭62―241号公報)、ジペンタエリスリトール飽和
脂肪酸エステルのような多価アルコールと有機酸からの
エステル(特公昭63―64531号公報)、ポリオキ
シエチレンアルキルフェニルエーテル(特公昭63―4
857号公報)、ポリ(1,3―ブチレンアジペート)
のような液状ポリエステル(特開昭60―45689号
公報、特公平5―72428号公報)、エポキシ化植物
油(特開昭62―167349号公報)、末端をアルコ
ールで封鎖した脂肪族ポリエステル(特公平5―731
46号公報、特開平5―59613号公報等)、両末端
をエステル封鎖したポリエーテル、ポリオキシエチレン
アルキルエーテルのエステル封鎖物、ポリエーテルエス
テル、脂肪族ジイソシアナート変性ポリエステル等(特
開昭63―120767号公報、特開平1―18678
号公報)が提案されている。
【0007】二酸化チタン等の微粒子をこれらの液状分
散媒に均一に分散混合させた液状分散液をポリエステル
の融液に添加する方法は、該分散液と該融液との液液混
合であるため、微粒子を凝集させることなく均一に分散
でき、また熱履歴を小さくできるので、安定した物性確
保が容易である点では有利である。
【0008】しかし上記の分散媒はいずれも、ポリエス
テルとの親和性が比較的良好でそれ自体の耐熱性もある
程度有するものの、ポリエステルに混合した際には、溶
融紡糸時の熱でポリエステルと反応し、ポリエステルの
固有粘度低下や分解物による着色、機械的物性の低下を
招くという新たな問題が生じる。
【0009】更に、上記の分散媒はポリエステルへの微
粒子の分散向上効果は認められるものの、接触走行摩耗
による損傷の低減効果は認められないか極めて小さい。
即ち、ポリエステル繊維中に二酸化チタン微粒子を凝集
させることなく均一に分散させるだけでは、繊維が走行
する金属接糸部の損傷の低減させる効果は実質的に奏さ
れない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、二酸
化チタンを高濃度に含有したポリエステル繊維の接触走
行摩耗特性(例えば紡糸、仮撚加工、製織などの工程通
過性)を改善し、且つ粘度低下、黄変がなくしかも実用
に供し得る強度を有する高品質なポリエステル繊維が得
られる製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決すべ
く、本発明者等は鋭意研究を重ねた。その結果、従来提
案されている様な分散媒を使用した際のポリマーの固有
粘度の低下や、該分散媒の分解物による着色は、該分散
媒の化学構造中に存在するポリエステルとの反応性基
(エステル基、水酸基等)に起因していることを究明し
た。そこで、耐熱性を確保しつつ、且つ二酸化チタン微
粒子のポリマー内での分散性を向上させる分散媒につい
て、更に研究を重ねた。
【0012】その結果分散媒として2価のヒドロキシ基
含有化合物残基にポリオキシアルキレンを付加させ、両
末端を脂肪族アルキル基または芳香族アルキル基で封鎖
したポリ(オキシアルキレン)グリコール誘導体を用
い、且つ該誘導体を分散媒とした二酸化チタンのスラリ
ーを、ポリエステルの重合完了後から紡糸直前までの任
意の段階でポリエステルの融液に添加し、製糸すること
により、該ポリマーの紡糸中の固有粘度の低下や分解物
による着色を抑制するのみならず、接触走行摩耗特性を
も改善されることを見出し、本発明を完成させるに至っ
た。
【0013】即ち本発明は、二酸化チタン微粒子を、分
散媒中に分散させてからポリエステルの融液に添加する
方法において、該分散媒として、下記一般式(I) X―Y―Z―Y′―X′ …(I) (式中、Zはビスフェノール類、2価のフェノール、炭
素数5〜10の脂肪族ジオール、及び炭素数3〜15の
脂環式ジオールよりなる群から選ばれた2価のヒドロキ
シ基含有化合物残基、YおよびY′は同一または互いに
異なるオキシアルキレン基からなるポリオキシアルキレ
ングリコール残基、XおよびX′は同一または互いに異
なる1価の脂肪族または芳香族アルキル基を示す。)で
表わされるポリ(オキシアルキレン)グリコール誘導体
を用いてスラリー化し、下記A〜Cの条件を同時に満足
するように、該スラリーを、重合完了後から紡糸直前ま
でいずれかの段階でポリエステル融液に添加し、溶融紡
糸することを特徴とする二酸化チタン含有ポリエステル
繊維の製造方法を提供するものである。
【0014】A) 0.65≦A+B≦10 B) 0.5≦B≦5 C) 0.25B≦A≦10B (式中、Aはポリ(オキシアルキレン)グリコール誘導
体のポリエステル繊維に占める重量%を、Bは二酸化チ
タン微粒子のポリエステル繊維に占める重量%を表わ
す。) 本発明において、ポリエステル繊維を構成するポリエス
テルとしては、芳香族基を有するポリエステルであれば
よく、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン―2,
6―ジカルボン酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン
酸、および/またはそのエステル類と、エチレングリコ
ール、ジエチレングリコール、1,4―ブタンジオー
ル、ネオペンチルグリコールなどのジオール化合物とか
ら合成されるポリエステルが挙げられるが、特に反復構
造単位の80%以上をポリエチレンテレフタレート単位
が占めるポリエステルが好ましい。
【0015】具体的な例としては、ポリエチレンテレフ
タレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン
ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートとポリテト
ラメチレングリコールブロック共重合体などのポリエス
テル、およびポリテトラエーテルエラストマーなどを挙
げることができる。
【0016】本発明において、分散媒として用いるポリ
(オキシアルキレン)グリコール誘導体(以下、PAG
誘導体と称することがある。)は、上記一般式(I)で
示されるように、両末端が1価の脂肪族または芳香族ア
ルキル基で封鎖されていることが重要である。
【0017】一般式(I)において、Zで示される、ビ
スフェノール類、2価のフェノール、炭素数5〜10の
脂肪族ジオール、及び炭素数3〜15の脂環式ジオール
よりなる群から選ばれる2価のヒドロキシル基含有化合
物残基とは、上記のヒドロキシル基含有化合物両末端の
水酸基から水素原子を除いた2価の残基をいう。
【0018】この残基を構成するヒドロキシル基含有化
合物の具体例として、ビスフェノール類としてはビス
(4―ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4―ヒドロ
キシフェニル)フェニルメタン、ビス(4―ヒドロキシ
フェニル)フェニルエタン、2,2―ビス(4―ヒドロ
キシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、ビス
(4―ヒドロキシフェニル)スルホン[ビスフェノール
S]、2,2―ビス(4―ヒドロキシ―3,5―ジブロ
モフェニル)プロパンなど、2価フェノールとしてはハ
イドロキノン、カテコール、レゾルシンなど、炭素数5
〜10の脂肪族ジオールとしては、ペンタン―1,5―
ジオール、ヘキサン―1,6―ジオールなど、炭素数3
〜15の脂環式ジオールとしてはシクロヘキサン―1,
4―ジメタノールなどが挙げられる。
【0019】ポリエステル中に微分散することが可能
で、且つ耐熱性を確保された分散媒を得るには、上記の
ヒドロキシル基含有化合物のうち、芳香環を有するビス
フェノール類、または2価のフェノールが好ましく、特
に好ましいのはビスフェノールAである。
【0020】一般式(I)において、YおよびY′で示
されるポリオキシアルキレングリコール残基は、複数こ
のオキシアルキレン基が付加されたものであり、複数個
あるオキシアルキレン基は同一でも異なっていてもよく
その付加形式はブロック付加型、ランダム付加型あるい
は両者の混合型のいずれでもよい。オキシアルキレン基
としては、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシ
ブチレン、オキシスチレンなどが挙げられる。ポリオキ
シアルキレン基の例としては、ポリオキシエチレン、ポ
リオキシプロピレン、ポリオキシブチレン、ポリオキシ
プロピレンとポリオキシエチレンとのブロック型ポリオ
キシアルキレン、ポリオキシプロピレンとポリオキシエ
チレンとのランダム型ポリオキシアルキレン、ポリオキ
シブチレンとポリオキシエチレンとのブロック型ポリオ
キシアルキレン、ポリオキシブチレンとポリオキシエチ
レンとのランダム型ポリオキシアルキレン、ポリオキシ
スチレンとポリオキシエチレンとのブロック型ポリオキ
シアルキレンなどが挙げられる。
【0021】ポリオキシアルキレングリコール残基の分
子量は200〜3000の範囲が好ましい。該ポリオキ
シアルキレングリコール残基の分子量が3000を越え
ると耐熱性が悪くなり、逆に200未満になると無機系
の機能付与剤の分散性が悪くなり、本発明の効果が得難
くなる。特に、この分子量が300〜2000の範囲内
にあることが望ましい。
【0022】また1価の脂肪族または芳香族アルキル基
XおよびX′としては、メチル基、エチル基、プロピル
基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、
オクチル基、ノニル基、ベンジル基、フェニル基、p―
メチルフェニル基等を挙げることができるが、なかでも
合成の容易さから、メチル基またはベンジル基が好まし
い。
【0023】このようなポリ(オキシアルキレン)グリ
コール誘導体の一種または二種以上を用いて分散媒が構
成されるが、その際、該分散媒の水酸基価は30mgK
OH/g以下が好ましく、特に10mgKOH/g以下
が好ましい。該分散媒の水酸基価が30mgKOH/g
を越えると、添加後の芳香族ポリエステルの熱的安定性
が低下してしまうので避けなければならない。また該分
散媒の粘度に特に制限はなく、融点が室温以上のもの
は、適宜加熱して添加剤を分散できる。
【0024】これらのPAG誘導体からなる分散媒は単
独で用いても、異なる構造または異なる分子量のものを
混合して用いてもよい。
【0025】本発明で用いる二酸化チタンとしては、従
来から合成樹脂用に用いられてきた公知のものがいずれ
も使用できる。しかし、平均粒径が0.5μm以下と小
さくても、粒度分布がブロードで粗大粒子の多いもの
は、繊維中の粗大粒子による応力集中が発生して、紡
糸、延伸、仮撚加工中、繊維の破断に至りやすく、特
に、紡糸速度が高速になる程、また延伸倍率が大になる
ほど、或いは単繊維デニールが小さくなるほど、応力集
中が大きくなるので、平均粒子径が0.5μm以下で、
且つ1μm以上の粗大粒子ができるだけ少ないことが好
ましい。
【0026】本発明において、PAG誘導体からなる分
散媒と、二酸化チタンを均一に分散混合させる、スラリ
ーの調製方法は、通常の混合方法でよい。例えば、常温
ないし約70℃の加熱状態で、所定量の二酸化チタンと
該PAG誘導体とを、ホモミキサー、ディスパースミル
等の混合機、ボールミル、サンドミル、3本ロール、ニ
ーダー、コロイドミル、ダイノミル等の混練機を単独ま
たは組み合わせて混合混練すればよい。
【0027】さらに、二酸化チタン微粒子とPAG誘導
体からなるスラリー中には、ヒンダードフェノール系、
チオエーテル系などの酸化防止剤を添加することがで
き、酸化防止剤を添加することは、該PAG誘導体自体
の耐熱安定性を向上せしめる上で好ましいことである。
【0028】また、二酸化チタン微粒子の分散性を向上
せしめるために、必要に応じてカルボン酸塩などの分散
助剤を混合することもできる。さらに、該スラリーの粘
度が小さすぎる場合には、通常用いられるシリカ、アル
ミナ、モンモリロナイト、多糖類、カゼイン、アクリル
酸ポリマー、マルチトールジステアリン酸エステルなど
の増粘剤を必要に応じて混合してもよい。
【0029】本発明では、該スラリーを、紡糸直前のポ
リエステル融液に添加混合することが必要である。紡糸
直前とは、実質的に重合反応が完了した後から、該ポリ
マー融液を紡糸ノズルから吐出するまでの任意の段階を
意味する。
【0030】ポリエステル重合の原料仕込み時や重合反
応途中に該スラリーを添加した場合には、二酸化チタン
微粒子のポリエステル中の分散性向上効果は認められる
ものの、得られる繊維の接触走行摩耗抵抗効果は認めら
れないか極めて小さくなるばかりか繊維が黄変し、更に
強度も若干低下する。
【0031】該スラリーをポリエステルに添加混合する
方法としては、重合反応槽で重合完了後に添加する方
法、重合反応槽からの出口ラインの途中に添加する方
法、該スラリーをポリエステル中に高濃度に分散させた
マスターバッチを製造して紡糸する方法、ポリエステル
チップと混合チップ表面に均一付着させて紡糸する方法
のほか、押出機のスクリュー圧縮ゾーンまたは計量ゾー
ンへ注入添加してスクリューで動的混練する方法、溶融
ポリマー紡糸前に注入添加した後スタティックミキサー
等で静的混練する方法などが挙げられる。中でも、スク
リュー型押出機を用いる方法が特に好ましい。
【0032】これらの方法で、該スラリーはポリエステ
ルポリマー中に十分分散することができ、ポリマーの固
有粘度の低下や、分散媒の分解による着色、ポリマーと
分散媒、ポリマーと二酸化チタンとの反応等による着色
を防止でき、しかも得られた繊維は接触走行摩耗低減効
果を発現する。二酸化チタンの、ポリマー中での2次凝
集を防止し、分散性を向上する点で、スラリー添加後ス
クリューで動的混練する方法がより好ましい。
【0033】さらに、本発明において重要なことは、分
散媒として使用するPAG誘導体、及び機能付与剤とし
て使用する二酸化チタン微粒子の、ポリエステル繊維中
で占める重量パーセントをそれぞれA及びBとした時、
0.65≦(A+B)≦10、0.5≦B≦5、0.2
5B≦A≦10Bの三つの条件を同時に満足しなければ
ならないことである。
【0034】二酸化チタンとPAG誘導体からなるスラ
リーのポリエステル繊維中への添加割合(A+B)は、
多すぎると、紡糸延伸性の低下や、PAG誘導体のブリ
ードアウトなどによるポリエステル繊維の機械的物性や
染色堅牢度の低下を招くため、10重量%以下であるこ
とが好ましく、特に5重量%以下であることが好まし
い。
【0035】二酸化チタン微粒子のポリエステル繊維中
の含有量Bは、多すぎると二酸化チタンのポリエステル
繊維中での2次凝集が起こり易く均一な分散状態を得る
ことが困難であり、紡糸時のパック内濾過フィルター詰
まりによるパック圧力が上昇し、紡糸、仮撚加工、製織
時の工程通過性が悪化するのみならず、繊維物性の低下
などの問題が生じるため、5重量%以下、特に3重量%
以下であることが好ましい。逆に0.5%重量より少な
い場合には、繊維が走行する金属接糸部の損傷が小さい
ので本発明の製造方法を必要としない。
【0036】二酸化チタンと該PAG誘導体からなるス
ラリー中の二酸化チタンの割合は、大きすぎると、二酸
化チタンのスラリー中の2次凝集が起こり易く均一な分
散状態を得ることが困難であり、更にスラリーの流動性
が低くなって取り扱いが不便になるため、80重量%以
下、特に65重量%以下であることが好ましい。逆に小
さすぎると、該PAG誘導体をポリエステル繊維中に多
量に添加しなければならず、紡糸延伸性の低下や、PA
G誘導体のブリードアウトなどによるポリエステル繊維
の機械的物性や染色堅牢度の低下を招くため、10重量
%以上、特に20重量%以上であることが好ましい。す
なわち、0.25B≦A≦10Bの範囲内にあることが
好ましく、特に0.5B≦A≦4Bの範囲内にあること
が好ましい。
【0037】以上のことを言い換えれば、二酸化チタン
の割合が10〜80重量%、特に好ましくは30〜65
重量%であるPAG誘導体からなるスラリーを、ポリエ
ステル繊維中に、10重量%以下、特に好ましくは5重
量%以下、紡糸直前までに添加することにより、本発明
の接触走行摩耗特性の改善されたポリエステル繊維が得
られる。
【0038】本発明のポリエステル繊維を溶融紡糸する
にあたっては、格別の方法、条件を採用する必要はな
く、任意の方法、条件でよい。
【0039】
【作用】本発明において分散媒として使用するPAG誘
導体自体は、特開平6―184927号公報に開示され
ているように、ポリエステルポリマー中に単独で添加し
た後、例えばアルカリ化合物の水溶液で処理することに
より、該PAG誘導体の除去痕と、該誘導体の周辺のポ
リエステル非晶部の除去痕からなる特殊な微細孔が形成
されて、良好な深色性、鮮明性、耐摩擦変色性、耐フィ
ブリル性などを示す効果を奏することが知られている。
しかし、二酸化チタン微粒子を、該PAG誘導体を分散
媒としてポリエステル中に分散せしめた場合には、上記
の意図する効果は奏されなくなる。
【0040】すなわち、本発明においては、前掲の特開
平で単に深色剤(つまり、アルカリ減量により除去され
る剤)として開示されているだけにすぎないPAG誘導
体をして、これを分散媒とする二酸化チタン微粒子スラ
リーを紡糸直前に添加したポリエステル繊維の接触走行
摩耗の低減効果を見い出したものである。したがってこ
の特開平の公報に開示された発明と本発明(つまり、該
分散媒が繊維中に残存したまま使用される繊維)は、そ
の技術思想を全く異にするものである。
【0041】さらに言えば該公報には、PAG誘導体か
らなるスラリーが紡糸温度においても分解変質せず、ポ
リエステル固有粘度の低下、分解物による着色、機械的
物性の低下を招くことがないこと、さらにPAG誘導体
と艶消剤を両方配合する際に、別々に配合する場合と、
同時に配合する場合との差については記載も示唆もな
い。すなわち上記の発明においては、PAG誘導体と二
酸化チタンを混合させて、耐熱性を確保しつつ、且つ二
酸化チタンの分散性を向上させるという本発明の技術思
想を認識していないことは明らかである。
【0042】さらに、二酸化チタンと該PAG誘導体と
を、別々にポリエステルに含有せしめるだけでは、二酸
化チタンのポリエステル中の分散性向上効果と、得られ
る繊維の接触走行摩耗低減効果は認められない。二酸化
チタンを該PAG誘導体に分散せしめたスラリーをいっ
たん調製し、該スラリーをポリエステル中に分散せしめ
た場合にのみ、二酸化チタンの分散性と繊維の接触走行
摩耗低減に格段の効果が奏される。
【0043】この二酸化チタンの含有繊維の接触走行摩
耗低減効果は従来見いだされていなかった事実であり、
その理由はいまだ明確ではない。
【0044】しかし後掲の図1および2に示すように、
二酸化チタンを重合添加したポリエステル繊維を、例え
ばアルカリ化合物の水溶液で処理すると、二酸化チタン
の周辺のポリエステルポリマー非晶部の除去痕は通常細
孔のエッジが鋭利で、深い細孔となるのに対して(図
1)、本発明に従って紡糸直前に二酸化チタンを添加し
てなるポリエステル繊維では細孔のエッジが滑らかで、
浅い細孔が得られる(図2)。この事実は二酸化チタン
周辺のポリエステルポリマー非晶部のアルカリ分解速度
が本発明のポリエステル繊維では小さくなっていること
を裏付けている。
【0045】このことから、重合中に二酸化チタンを添
加したポリエステル繊維は、二酸化チタンによる局所的
分解により二酸化チタン周辺のポリエステルポリマー非
晶部の分子量が局所的に低下しているため、繊維表面上
に二酸化チタン微粒子が裸で存在しやすく繊維走行時の
金属接糸部の損傷が大きいのに対して、本発明の方法に
より得られたポリエステル繊維では二酸化チタン周辺の
ポリエステルポリマー非晶部の熱分解が抑制され、繊維
表面の二酸化チタンが大部分ポリマーで被覆されている
ため繊維走行時の金属接糸部の損傷が小さくなっている
ものと推定される。
【0046】すなわち、該PAG誘導体は二酸化チタン
微粒子に対して、界面活性を有する分散剤として作用し
ているのみならず、二酸化チタン表面に熱安定性の高い
吸着層を形成しており、二酸化チタンによるポリエステ
ルの局所的分解を抑制していると考えられる。
【0047】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、二酸化チタ
ンを高濃度に添加した場合でも、繊維が走行する、紡糸
口金、糸導ガイド、仮撚装置、筬等の接糸部が損傷が少
なく、紡糸、仮撚加工、製織などの工程通過性に優れた
ポリエステル繊維が得られる。また、紡糸時のポリマー
の固有粘度の低下、分解物による着色、機械的物性の低
下などを招かず、加えて紡糸直前に添加されるために銘
柄切り替えやコンタミネーションの点で洗浄が極めて容
易でありコスト的に有利であるという利点もある。
【0048】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に具体的に
説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるも
のではない。実施例中「部」は重量部を表す。
【0049】尚、実施例中の各物性値、及び電子顕微鏡
写真図は以下の操作により測定を行なった。
【0050】(1)スラリー中の二酸化チタンの分散
性:ごく少量のペースト状のスラリーをカーボン上支持
台上に載せ、60℃のアセトン溶媒中に8時間浸漬する
ことによりポリ(オキシアルキレン)グリコール誘導体
を除去し、乾燥した後、常法により走査型電子顕微鏡
(日本電子データム社製JSM―5300)で観察し
た。二次凝集粒子が認められないものを5級とし、5段
階で評価した。実用上4級が必要である。
【0051】(2)スラリーを配合したポリエステル繊
維断面中の二酸化チタンの分散性:常法によりポリエス
テル系繊維を切断した断面を、X線マイクロアナライザ
ー(日本電子データム社製JSM―5300およびフィ
リップス社製PV9900)で観察し、繊維断面に凝集
粒子が認められないものを5級とし、5段階で評価し
た。実用上4級以上が必要である。
【0052】(3)PAG誘導体の水酸基価(mgKO
H/g):試料1g中に含まれる遊離の水酸基を無水酢
酸によりアセチル化し、アセチル化に要した無水酢酸
を、中和するために必要なKOHのmg数を測定した。
【0053】(4)未延伸糸の固有粘度(IV):試料
0.6gをO―クロロフェノール50m/中に溶解して
溶液となし、35℃中で測定した。単位はdl/gで表
示した。
【0054】(5)延伸筒編の白度指数(W):延伸糸
を2本合糸して150deの筒編となし、JIS―Z8
722及びJIS―Z8727に規定されている明度指
数L及びクロマテック指数b値を測定し、次式
【0055】
【数1】W=L−b に従って白度指数Wを求めた。PAG誘導体自体の分解
によるb値の上昇があるためにW値の変化は、殆んど
値の変化に基づくものである。PAG誘導体の分子
量が増加すると、PAG誘導体自体の分解がやや促進さ
れてL値が変化せずにb値が増加する。
【0056】(6)延伸筒編の不透明性:延伸糸を2本
合糸して150deの筒編となし、マクベスMS―20
20(インスルメンタルカラーシステムLtd社製)を
用いて、500nmにおける黒板反射率bと白板反射率
wを測定し、TAPPI T 425m―44に規定さ
れる次式
【0057】
【数2】不透明度=(b/w)×100(%) に従ってTAPPI不透明度を求めた。
【0058】(7)延伸糸の接触走行摩耗特性:75d
e/36filの延伸フィラメント糸を5gの張力をか
けながら直径2mmφの銅線上を接触角180°、走行
速度300m/分で、5分間慣らし走行した後、走行位
置を変えて20分間走行させ、銅線走行中央位置の摩耗
凹部の深さを求めた。同じ操作を3回繰り返して平均値
を求めた。摩耗凹部の深さが15μm以下であれば実用
上問題なく使用できる。
【0059】(8)アルカリ減量処理後の繊維側面の走
査型電子顕微鏡写真図:延伸糸を2本合糸して150d
eのメリヤス編地となし、常法により精練、プリセット
(180℃×1分)した後、更に30g/Lの水酸化ナ
トリウム水溶液中、沸騰温度でアルカリ減量処理してア
ルカリ減量率を20%とし、ミカロンネイビーブルーS
―2GL(住友化学社製)4%owf、ディスパーVG
(明成化学工業社製)0.5g/Lおよび酢酸0.3g
/Lを含む染浴中で浴比1:50にて130℃で60分
間染色後、水酸化ナトリウム1g/L、ハイドロサルフ
ァイト1g/Lを含む水溶液にて70℃で20分還元洗
浄し、更に常法によりファイナルセット(160℃×1
分)を施して、アルカリ減量染色編地を得た。常法によ
り走査型電子顕微鏡(日本電子データム社製JSM―5
300)で、繊維の側面を観察した。
【0060】[参考例1] ポリエチレンテレフタレートの合成:テレフタル酸ジメ
チル100部、エチレングリコール60部、酢酸カルシ
ウム1水塩0.063部(テレフタル酸ジメチルに対し
て0.069モル%)及び整色剤として酢酸コバルト4
水塩0.009部(テレフタル酸ジメチルに対して0.
007モル%)をエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰
囲気下4時間かけて140℃から220℃まで昇温して
生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換
反応させた。その後220℃で20分間攪拌した後、安
定剤としてリン酸トリメチル0.058部(テレフタル
酸ジメチルに対して0.008モル%)を添加し、同時
に過剰エチレングリコールの昇温追出しを開始した。1
0分後重縮合触媒として三酸化アンチモン0.04部
(テレフタル酸ジメチルに対して0.027モル%)を
添加した。続いて内温が240℃に到達した時点でエチ
レングリコールの追出しを終了し、反応生成物を重合缶
に移した。次いで昇温しながら内温が260℃に到達す
るまで常圧反応させた後、1時間かけて760mmHg
から1mmHgまで減圧し、同時に1時間30分かけて
内温を280℃まで昇温した。1mmHg以下の減圧
下、重合温度280℃で固有粘度が0.64dl/gに
なるまで反応を続けた。得られたポリマーを吐出し、水
冷後切断して、二酸化チタンを含有しないポリエチレン
テレフタレートのチップを得た。
【0061】得られたポリエステルチップを、160℃
で5時間熱風乾燥した後、押出機で290℃で溶融させ
た。該ポリマーを融液をギヤポンプで計量して285℃
のダイ部に導き、孔径0.3mmφ、ランド長0.60
mmの丸孔押出ノズルホール数36個を有する口金から
押出し、紡糸速度3500m/分で引き取った。その
後、未延伸糸を、最終的に得られる延伸糸の伸度が30
%になる延伸倍率で、90℃の供給ローラと130℃の
加熱ローラを使って、延伸、熱処理して、75de/3
6filの延伸マルチフィラメント糸を得た。
【0062】未延伸の固有粘度は0.62dl/g、延
伸糸筒編の白度指数Wは89.7、延伸糸強度は4.7
g/de、延伸糸筒編の不透明度は54%、繊維の銅線
走行摩耗凹部の深さは0μmであり摩耗は認められなか
った。
【0063】[参考例2] 二酸化チタン低濃度含有ポリエチレンテレフタレートの
合成:平均一次粒子径0.2μmの二酸化チタン(チタ
ン工業社製KA―35WS)30部とエチレングリコー
ル70部とを攪拌しながら投入し、ホモゲナイザーを用
いてスラリー化した。次にサンドグラインダー粉砕機、
高速回転するデカンター分級機により処理し、続いて公
称目開き1μmのフィルターにて濾過してエチレングリ
コールスラリーを作成した。
【0064】テレフタル酸ジメチル100部、エチレン
グリコール70部、テレフタル酸ジメチルに対して酢酸
マンガン0.025モル%をエステル交換缶に仕込み、
窒素ガス雰囲気下4時間かけて150℃から250℃ま
で昇温して生成するメタノールを系外へ留去しながらエ
ステル交換反応させた。その際、上記の操作で調製した
二酸化チタンのエチレングリコールスラリーをポリエス
テルあたり二酸化チタンが0.5重量%になるように添
加した。エステル交換反応終了後、安定剤としてリン酸
トリメチル25部とエチレングリコール75部を密閉系
で150℃、5時間加熱還流させ調製したリン酸トリメ
チルのエチレングリコール溶液を、リン酸トリメチル換
算でテレフタル酸ジメチルに対して0.030モル%を
添加し、同時に過剰エチレングリコールの昇温追出しを
開始した。10分後重縮合触媒として三酸化アンチモン
をテレフタル酸ジメチルに対して0.030モル%を加
え、ついで得られた反応生成物を重合缶に移した。23
0℃から280℃まで徐々に昇温するとともに常圧から
徐々に減圧に移行し、1mmHg以下の高真空下で重縮
合反応をおこなった。得られたポリマーを吐出し、水冷
後切断して、二酸化チタン0.5重量%含有ポリエチレ
ンテレフタレートのチップを得た。
【0065】得られたポリエステルチップを用い、参考
例1と同様の操作をおこなって75de/36fiの延
伸糸を得た。
【0066】未延伸糸の固有粘度は0.62dl/g、
延伸糸筒編の白度指数Wは88.7、延伸糸強度は4.
6g/de、延伸糸断面中の二酸化チタンの分散性は5
級、延伸糸筒編の不透明度は59%、繊維の銅線走行摩
耗凹部の深さは10μmであった。
【0067】[比較例1]参考例2において二酸化チタ
ンのエチレングリコールスラリーをポリエステルあたり
二酸化チタンが2.5重量%になるように添加すること
以外は、参考例2と同様の操作を行ない、二酸化チタン
を2.5重量%含有するポリエチレンテレフタレートの
チップを得た。
【0068】得られたポリエステルチップを用い、参考
例1と同様の操作を行なって、75de/36fiの延
伸マチルフィラメント糸を得た。結果を表2に示す。
【0069】またアルカリ減量処理を行なった繊維側面
の走査型電子顕微鏡写真図を図1に示す。
【0070】[実施例1]参考例1において得たポリエ
ステルチップを、160℃で5時間熱風乾燥した後、押
出機で290℃溶融させた。
【0071】一方、表1に示したPAG誘導体、PAG
―1に酸化防止剤としてチバガイギー社製イルガノクス
1010を2重量部添加したものを分散媒とし、該分散
媒50重量部と平均一次粒子径0.2μmの二酸化チタ
ン(チタン工業社製KA―35WS)50重量部とを、
ハイスピードインペラーにて80℃で混合攪拌し、二酸
化チタンのPAGスラリーを得た。該スラリー中の二酸
化チタンの分散性は5級であった。
【0072】上記スラリーを100℃で真空脱泡後、8
0℃に加熱したタンクに入れ、80℃に加熱した配管を
経由しギヤポンプで計量して、押出機の圧縮ゾーンに設
けた注入口より、混合ポリマー溶液に対して5.0重量
%(二酸化チタンとして2.5重量%)を占めるよう
に、押出機中のポリマー溶液に加圧注入して混練した。
混合ポリエステルポリマー融液をギヤポンプで計量して
285℃のダイ部に導き、孔径0.3mmφ、ランド長
0.60mmの丸孔押出ノズルホール数36個を有する
口金から押出し、紡糸速度3500m/分で引き取っ
た。その後、未延伸糸を、最終的に得られる延伸糸の伸
度が30%になる延伸倍率で、90℃の供給ローラと1
30℃の加熱ローラを使って、延伸、熱処理して、二酸
化チタン2.5重量%とPAG―1 2.5重量%含有
する75de/36fiの延伸マルチフィラメント糸を
得た。結果を表2に示す。
【0073】またアルカリ減量処理を行なった繊維側面
の走査型電子顕微鏡写真図を図2に示す。
【0074】二酸化チタンを添加したポリエステル繊維
のアルカリ減量20%の処理後の、二酸化チタンの周辺
のポリエステル非晶部の除去痕は、比較例1(図1)で
は細孔のエッジが鋭利で深い細孔となっているのに対し
て、実施例1(図2)では細孔のエッジが滑らかで浅い
細孔が得られており、実施例1では比較例1に比べ、二
酸化チタン周辺のポリエステル非晶部のアルカリ分解速
度が小さくなっていることを裏付けている。
【0075】[比較例2]表1に示したPAG誘導体P
AG―3に酸化防止剤としてチバガイギー社製イルガノ
クス1010を2重量部添加したものを分散媒とし、該
分散媒50重量部と平均一次粒子径0.2μmの二酸化
チタン(チタン工業社製KA―35WS)50重量部と
を、ハイスピードインペラーにて80℃で混合攪拌し、
二酸化チタンのPAGスラリーを得て、100℃で真空
脱泡後、80℃に加熱したタンクに入れた。該スラリー
中の二酸化チタンの分散性は5級であった。
【0076】参考例1において、エステル交換反応終了
後、反応生成物を重合缶に移す際に、上記の操作によっ
て調製したスラリーを、ポリエステルあたり5重量部添
加すること以外は、参考例1と同様に行ない、二酸化チ
タンを2.5重量%とPAG―1を2.5重量%とを含
有するポリエチレンテレフタレートのチップを得た。
【0077】得られたポリエステルチップを用い、参考
例1と同様に操作を実施して二酸化チタン2.5重量%
とPAG―1を2.5重量%とを含有する75de/3
6fiの延伸マルチフィラメント糸を得た。結果を表2
に示す。
【0078】またアルカリ減量処理を行なった繊維側面
の走査型電子顕微鏡写真図を図3に示す。
【0079】[実施例2〜5、および比較例3〜5]P
AG誘導体の種類を、表1に示したPAG―2からPA
G―8のいずれか一種に代える以外は、実施例1と同様
の操作をおこなって75de/36fiの延伸糸を得
た。二酸化チタンのPAGスラリー中の二酸化チタンの
分散性、延伸マルチフィラメント糸を得た。結果を表2
に、実施例1、参考例1および2、比較例1〜3の結果
と併せて示す。
【0080】[比較例6]実施例1において、分散媒を
PAG―1から代えて、末端をアルコールで封鎖した分
子量2000のアジピン酸系ポリエステルポリオール
(以下、PAG―9と称することもある。)を用いるこ
と以外は、実施例1と同様の操作を実施して75de/
36fiの延伸マルチフィラメント糸を得た。結果を表
2に示す。
【0081】液状組成物を注入しなかった参考例1なら
びに参考例2として比較して、実施例1〜5で得られ
た、二酸化チタンのPAGスラリーをブレンドした繊維
は、溶融紡糸に伴う固有粘度の低下が小さく、延伸糸筒
編の白度指数、延伸糸強度も良好で、実用上問題ないレ
ベルであった。実施例1〜5のPAGスラリー中の二酸
化チタンの分散性、延伸糸断面中の二酸化チタン分散性
はいずれも5級で繊維中の凝集粒子は認められず、PA
Gスラリーの良好な分散性が、延伸糸中でも維持されて
いる。しかも繊維の接触走行摩耗の低減に格別の効果が
奏されることが明らかである。
【0082】一方、比較例4のような、両末端に水酸基
を有するPAG誘導体を分散媒としたPAGスラリーを
ブレンドした繊維では、溶融紡糸に伴い、固有粘度と延
伸糸強度の低下が大きく、PAGスラリー中の二酸化チ
タンの分散性、延伸糸断面中の二酸化チタン分散性とも
3級で凝集粒子が混在していた。比較例7のような、水
酸基価の高いPAG誘導体を分散媒としたPAGスラリ
ーをブレンドした繊維でも、溶融紡糸に伴い、固有粘度
と延伸糸強度の低下が大きい。
【0083】また、比較例5〜6、ならびに比較例8の
ような、エステル基を有するPAG誘導体を分散媒とし
たPAGスラリーをブレンドした繊維では、PAGスラ
リー中の二酸化チタンの分散性、延伸糸断面中の二酸化
チタン分散性とも5級で凝集粒子は認められないもの
の、溶融紡糸に伴う固有粘度と延伸糸強度、および延伸
糸の白度指数が大きく悪化している。
【0084】これらの比較例の態様ではいずれも、繊維
の接触走行摩耗の低減効果が認められないことが明らか
である。
【0085】[実施例6]実施例1で調製した、PAG
―1を分散媒とした二酸化チタンのPAGスラリーを、
100℃で真空脱泡後、80℃に加熱したタンクに入れ
た。
【0086】参考例1において、重合温度280℃で固
有粘度が0.64dl/gになるまで反応を続けた後、
ポリマー吐出前の重合缶に上記スラリーを、ポリエステ
ルあたり5重量部添加すること以外は、参考例1と同様
にの操作を実施して、二酸化チタン2.5重量%とPA
G―1 2.5重量%とを含有するポリエチレンテレフ
タレートのチップを得た。得られたポリエステルチップ
を用いて、参考例1と同様の操作をおこなって、二酸化
チタン2.5重量%とPAG―1 2.5重量%とを含
有する75de/36fiの延伸マルチフィラメント糸
を得た。結果を表2に示す。
【0087】このポリエステル繊維断面中に凝集粒子が
やや混在しているが、スラリーを押出機途中でブレンド
した繊維(実施例1)と比較して、繊維の接触走行摩耗
の低減効果は実用上遜色ないレベルであった。
【0088】[実施例7〜10、ならびに比較例7〜
9]実施例1において、PAG―1の添加割合及び、二
酸化チタンの添加割合を変えること以外は、実施例1と
同様の操作も実施して75de/36fiの延伸糸を得
た。結果を表2に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の公知方法(比較例1)により得られたポ
リエステル繊維20%減量のアルカリ処理した後の繊維
側面一部の走査型電子顕微鏡写真図(×13000)で
ある。
【図2】本発明の製造方法(実施例1)により得られた
ポリエステル繊維を20%減量アルカリ処理した後の繊
維側面一部の走査型電子顕微鏡写真図(×13000)
である。
【図3】本発明の製造方法で特定された分散媒と二酸化
チタンとのスラリーをエステル交換反応終了後、重縮合
反応開始前に添加する方法(比較例2)により得られた
ポリエステル繊維を20%減量アルカリ処理した後の繊
維側面一部の走査型電子顕微鏡写真図(×13000)
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08L 67/00 KJW D01F 1/10

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 二酸化チタン微粒子を、分散媒中に分散
    させてなるスラリーをポリエステルの融液に添加する方
    法において、 該分散媒として、下記一般式(I) X―Y―Z―Y′―X′ …(I) (式中、Zはビスフェノール類、2価のフェノール、炭
    素数5〜10の脂肪族ジオール、及び炭素数3〜15の
    脂環式ジオールからなる群から選ばれた2価のヒドロキ
    シ基含有化合物残基、YおよびY′は同一または互いに
    異なるオキシアルキレン基からなるポリオキシアルキレ
    ングリコール残基、XおよびX′は同一または互いに異
    なる1価の脂肪族または芳香族アルキル基を示す。)で
    表わされるポリ(オキシアルキレン)グリコール誘導体
    を用い且つ、下記A〜Cの条件を同時に満足するよう
    に、該スラリーを、重合完了後から紡糸直前までいずれ
    かの段階でポリエステル融液に添加し、溶融紡糸するこ
    とを特徴とする二酸化チタン含有ポリエステル繊維の製
    造方法。 A) 0.65≦A+B≦10 B) 0.5≦B≦5 C) 0.25B≦A≦10B (式中、Aはポリ(オキシアルキレン)グリコール誘導
    体のポリエステル繊維に占める重量%を、Bは二酸化チ
    タン含有ポリエステル繊維に占める重量%を表わす。)
  2. 【請求項2】 スクリュー型押出機により、紡糸口金に
    移送されつつあるポリマー融液にスラリーを添加し、該
    押出機により両者を混合しながら溶融紡糸する、請求項
    1記載の二酸化チタン含有ポリエステル繊維の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 2価のヒドロキシル基含有化合物がビス
    フェノールAである、請求項1または2記載のポリエス
    テル繊維の製造方法。
  4. 【請求項4】 ポリオキシアルキレングリコール残基が
    ポリオキシエチレン残基である、請求項3記載のポリエ
    ステル繊維の製造方法。
  5. 【請求項5】 ポリオキシアルキレングリコール残基が
    オキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック型ポリ
    オキシアルキレングリコール残基である、請求項3記載
    のポリエステル繊維の製造方法。
  6. 【請求項6】 1価のアルキル基がメチル基である、請
    求項1〜5のいずれか一項記載のポリエステル繊維の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 1価のアルキル基がベンジル基である、
    請求項1〜5のいずれか一項記載のポリエステル繊維の
    製造方法。
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