JPH06346363A - 深色性に優れたポリエステル繊維及びその製造法 - Google Patents

深色性に優れたポリエステル繊維及びその製造法

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JPH06346363A
JPH06346363A JP5130098A JP13009893A JPH06346363A JP H06346363 A JPH06346363 A JP H06346363A JP 5130098 A JP5130098 A JP 5130098A JP 13009893 A JP13009893 A JP 13009893A JP H06346363 A JPH06346363 A JP H06346363A
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JP
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fiber
polyester fiber
carbon atoms
residue
polyester
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JP5130098A
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English (en)
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Hironori Yamada
裕憲 山田
Hiroshi Fujita
寛 藤田
Tokuo Tamura
篤男 田村
Toshimasa Kuroda
俊正 黒田
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Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 優れた深色性及び鮮明性を呈するとともに、
その摩擦耐久性も良好なポリエステル繊維及びその製造
方法を提供すること。 【構成】 下記一般式で表わされる両末端を封鎖したポ
リオキシアルキレングリコール誘導体を0.1〜10重
量%含有するポリエステル繊維を、アルカリ化合物の水
溶液で減量処理して繊維表面に微細孔を形成する。 Z[−O−(AO)m−X]2 (式中、Zは炭素数5〜10の脂肪族ジオール、炭素数
3〜15の脂環族ジオール、ビスフェノール類及び2価
フェノールの群から選ばれる2価のヒドロキシ基含有化
合物残基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、mは正の
整数、Xは1価のヒドロキシ基含有化合物残基を示
す。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、深色性に優れたポリエ
ステル繊維及びその製造法に関する。さらに詳細には、
繊維表面に特殊な形態の微細孔を有し、着色した際には
改善された色の深みと鮮明性とを呈し、且つその摩擦耐
久性も良好なポリエステル繊維及びその製造法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルは多くの優れた特性を有す
るがゆえに合成繊維として広く使用されている。しかし
ながら、ポリエステル繊維は羊毛や絹の如き天然繊維、
レーヨンやアセテートの如き繊維素系繊維、アクリル系
繊維等に比較して、着色した際に色に深みがないため発
色性、鮮明性に劣る欠点がある。
【0003】従来、この欠点を解消せんとして、染料の
改善やポリエステルの化学改質等が試みられてきたが、
いずれも充分な効果は得られていない。また、ポリエス
テル繊維表面に透明薄膜を形成させる方法(特開昭53
―111192号公報)や織編物表面に80〜500m
A・sec/cm2 のプラズマ照射を施して繊維表面に微
細な凹凸を形成させる方法(特公昭59―11709号
公報)等が提案されている。しかしながら、これらの方
法によっても、色の深みを改善する効果は不充分であ
り、その上繊維表面に形成された透明薄膜は洗濯等によ
って容易に脱落し、その耐久性も不充分であり、プラズ
マ照射を施す方法では、照射面の影になる繊維部分の繊
維の表面に凹凸が生じないため、着用中に生じる繊維組
織内での糸の転び等によって平滑繊維面が表面にでて色
斑になる欠点がある。
【0004】他方、ポリエステル繊維の表面に凹凸を付
与する方法として、ポリオキシエチレングリコール又は
ポリオキシエチレングリコールとスルホン酸化合物を配
合したポリエステルよりなる繊維をアルカリ水溶液で処
理することにより繊維軸方向に配列した皺状の微細孔を
繊維表面に形成させる吸湿性繊維の製造法、又は酸化亜
鉛、リン酸カルシウム等の如き不活性無機質物質の微粒
子をポリエステル反応系内に添加配合せしめてなるポリ
エステル繊維を、アルカリ水溶液で処理して無機微粒子
を溶出することにより微細孔を形成させる吸湿性繊維の
製造法等が提案されている。しかしながら、これらの方
法によって得られる繊維には、色の深みを改善する効果
は認められず、かえって視感濃度の低下が認められる。
即ち、これらの方法において、アルカリ水溶液による処
理が充分でないときは、色の深みを改善する効果は全く
認められず、逆に、アルカリ水溶液による処理が充分な
ときは色の深みを改善するどころか、微細孔による光の
乱反射によるためか、視感濃度が低下し、濃色に着色し
ても白っぽく見えるようになり、その上得られる繊維の
強度が著しく低下し、また容易にフィブリル化するよう
になり、実用に耐えない。
【0005】また、粒子径80mμ以下のシリカの如き
無機微粒子を配合したポリエステルよりなる繊維をアル
カリ減量処理して、繊維表面に0.2〜0.7μの不規
則な凹凸を付与すると共にこの凹凸内に50〜200m
μの微細な凹凸を存在せしめることによって色の深みを
改善する方法(特公昭59―24233号公報)が提案
されている。しかしながら、この方法によっても、色の
深みを改善する効果は不充分であり、その上かかる極め
て複雑な凹凸形態によるためか、摩擦等の外部からの物
理作用により凹凸が破壊され、破壊された部分が他の破
壊されていない部分と比べて大きく変色したり光沢の差
を生じたり(通常アタリと呼ばれる)、更には容易にフ
ィブリル化するという欠点がある。
【0006】また別の方法として、分子量1000以下
のイミド化合物を主体とする有機低分子化合物を配合し
たポリエステルよりなる繊維をアルカリ減量することに
よって色彩を改良する方法が提案されている。しかしな
がら、かかるイミド化合物はポリエステルと相溶性が良
いため微分散され、形成される繊維表面の凹凸が微細に
すぎるため深色性に劣り、しかも摩擦等外部からの物理
作用によって凹凸が破壊されやすいという欠点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の問題点を解消するためになされたもので、その目的
は、深色性に優れると共に、摩擦による褪色、光沢への
影響が極めて小さく、且つ耐フィブリル性の良好なポリ
エステル繊維及びその製造法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するため鋭意検討した結果、アルカリ減量処理時
にはポリエステル繊維から溶出除去され難い特定のポリ
アルキレンオキシドグリコール誘導体を配合したもの
は、アルカリ減量処理時に繊維表面に微細凹凸が形成さ
れて色の深みと鮮明性とか改善されると共に、染色処理
時に該改質剤が溶出されても繊維内部には実質的に微細
孔が形成されないので摩擦による褪色及びフィブリルも
発生し難く、さらには摩擦による凹凸の破壊も少ないの
で光沢の変化(アタリ)も発生し難くなることを知り、
本発明に到達した。
【0009】すなわち、本発明によれば、 1. 下記一般式(I)で表わされるポリオキシアルキ
レングリコール誘導体を含有する、繰り返し単位が実質
的にエチレンテレフタレート単位からなるポリエステル
繊維であって、該繊維表面には前記ポリオキシアルキレ
ングリコール誘導体の除去痕で形成された微細孔が存在
することを特徴とする深色性に優れたポリエステル繊
維、
【0010】
【化3】
【0011】(式中、Zは炭素数5〜10の脂肪族ジオ
ール、炭素数3〜15の脂環族ジオール、ビスフェノー
ル類、及び2価フェノールの群から選ばれた少なくとも
1種の2価のヒドロキシ基含有化合物の残基、Aは炭素
数2〜4のアルキレン基、Xは1価のヒドロキシ基含有
化合物の残基、mは正の整数を示す。) 2. 繊維表面の密度(レーザーラマンマイクロプロー
ブ分析法により測定)が1.380g/cm3 以上である
上記1記載の深色性に優れたポリエステル繊維、 3. ポリオキシアルキレングリコール誘導体の平均分
子量が1000〜5000である上記1記載の深色性に
優れたポリエステル繊維、 4. 下記一般式(I)で表わされるポリオキシアルキ
レングリコール誘導体を0.1〜10重量%含有する、
繰り返し単位が実質的にエチレンテレフタレート単位か
らなるポリエステル繊維を、アルカリ化合物の水溶液で
減量処理し、繊維表面に微細孔を形成せしめることを特
徴とする深色性に優れたポリエステル繊維の製造法、
【0012】
【化4】
【0013】(式中、Zは炭素数5〜10の脂肪族ジオ
ール、炭素数3〜15の脂環族ジオール、ビスフェノー
ル類、及び2価フェノールの群から選ばれた少なくとも
1種の2価のヒドロキシ基含有化合物の残基、Aは炭素
数2〜4のアルキレン基、Xは1価のヒドロキシ基含有
化合物の残基、mは正の整数を示す。)が提供される。
【0014】本発明においては、繰り返し単位が実質的
にエチレンテレフタレートであるポリエステルを主たる
対象とする。ここで「実質的に」とは繰り返し単位の9
0モル%以上、好ましくは95モル%以上を言い、10
モル%以下であれば第3成分を共重合したポリエステル
であっても良い。好ましく用いられる共重合成分として
は、イソフタル酸、5―ナトリウムスルホイソフタル
酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン
酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、メチルテレフタ
ル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸
等の如き脂肪族ジカルボン酸、トリメチレングリコー
ル、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコ
ール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリ
コール、デカメチレングリコール等の如き脂肪族グリコ
ール、1,4―シクロヘキサンジメタノール等の如き脂
環族グリコール、ハイドロキノン、ビスフェノールA等
の芳香族ジオール、その他オキシ安息香酸、オキシナフ
トエ酸、β―ヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシカ
ルボン酸を例示することができる。また少量(通常ポリ
エステルに対して10重量%以下)のポリオキシアルキ
レングリコールが共重合されていても良いし、更にポリ
エステルが実質的に線状である範囲(通常1モル%以
下)でトリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボ
ン酸、もしくはグリセリン、トリメチロールプロパン、
ペンタエリスリトール等のポリオールが共重合されてい
ても差し支えない。
【0015】上記ポリエステルに配合するポリオキシア
ルキレングリコール誘導体(以下、改質PAG剤と称す
ることがある)は、下記一般式(I)で示されるごと
く、末端の水酸基が1価のヒドロキシル基含有化合物残
基で封鎖されたポリ(オキシアルキレン)グリコール誘
導体であることが大切である。
【0016】
【化5】
【0017】(式中、Zは炭素数5〜10の脂肪族ジオ
ール、炭素数3〜15の脂環族ジオール、ビスフェノー
ル類、及び2価フェノールの群から選ばれる少なくとも
1種の2価のヒドロキシ基含有化合物の残基、Aは炭素
数2〜4のアルキレン基、mは正の整数、Xは1価のヒ
ドロキシ基含有化合物の残基を示す。)
【0018】一般式(I)において、Zは炭素数5〜1
0の脂肪族ジオール、炭素数3〜15の脂環族ジオー
ル、ビスフェノール類及び2価フェノールの群から選ば
れる2価のヒドロキシル基含有化合物の残基であると
は、上記2価のヒドロキシル基含有化合物から2価のヒ
ドロキシル基を除いた残基をいう。この残基を構成する
2価のヒドロキシル基含有化合物の具体例としては以下
のものが挙げられる。炭素数5〜10の脂肪族ジオール
としては、ペンタン―1,5―ジオール、ヘキサン―
1,6―ジオールなど、炭素数3〜15の脂環族ジオー
ルとしてはシクロヘキサン―1,4―ジメタノールな
ど、ビスフェノール類としてはビス(4―ヒドロキシフ
ェニル)メタン、2,2―ビス(4―ヒドロキシフェニ
ル)プロパン:[ビスフェノールA]、ビス(4―ヒド
ロキシフェニル)スルホン:[ビスフェノールS]、
2,2―ビス(4―ヒドロキシ―3,5―ジブロモフェ
ニル)プロパンなど及び2価フェノールとしてはハイド
ロキノン、カテコール、レゾルシン等が挙げられる。
【0019】上記2価のヒドロキシル基含有化合物のう
ち好ましいのはビスフェノール類であり、特に好ましい
のは2,2―ビス(4―ヒドロキシフェニル)プロパン
であって、アタリ現象の発生が特に抑制される。。
【0020】一般式(I)において、Aのアルキレン基
としては、炭素数2〜4のアルキレン基、例えばエチレ
ン、プロピレン、ブチレン基等;ならびにそれらの混合
基(例えばエチレンとプロピレンの混合基など)が挙げ
られる。
【0021】アルキレン基Aは酸素原子Oとともにオキ
シアルキレン基(AO)を形成する。一分子内に存在す
る複数個のオキシアルキレン基(AO)は同一であって
も異なっていてもよく、その付加形式はブロック付加
型、ランダム付加型あるいは両者の混合型のいずれでも
よい。
【0022】ポリオキシアルキレングリコール誘導体の
平均分子量は1000〜5000、なかでも2000〜
4000であることが好ましい。平均分子量が1000
に満たない場合には、例えば強撚織物ではアルカリ減量
処理に先立って100℃以上の熱水処理が通常施される
ので、ポリオキシアルキレングリコール誘導体の相当量
が溶出してしまい、続くアルカリ減量において繊維表面
の効果的な微細孔を形成し難くなる。一方平均分子量が
5000を越える場合には、アルカリ減量によって得ら
れる繊維表面多孔状態が実質的に筋状となり易く、深色
性を改善する効果が低下するのみならず、耐フィブリル
性等も低下する傾向が認められる。
【0023】また1価ヒドロキシル基含有化合物の残基
とは、1価のヒドロキシ基含有化合物からヒドロキシル
基を除いた残基をいう。この残基を構成するヒドロキシ
含有化合物の具体例としては、メタノール、エタノール
等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノ
ール類を挙げることができる。
【0024】本発明のポリエステル繊維は、上述の改質
PAG剤を含有するポリエステルからなることが必要で
ある。ポリエステルに改質PAG剤を含有せしめるに
は、前記ポリエステルの合成が完了するまでの任意の段
階において、例えばポリエステルの原料中や重合反応混
合物中へ添加混合した後ポリエステルの合成を完了して
もよいし、またポリエステルのチップと改質PAG剤と
を単にドライブレンドしてもよく、予め溶融押出機中で
溶融混合してもよい。また、融点以上に加熱溶融した改
質PAG剤をポリエステルのチップと混合後、該融点以
下に冷却することによって得られる改質PAG剤がポリ
エステルのチップ表面上に付着したものも好ましく用い
られる。更には、改質PAG剤を液状又は溶融分散媒体
に分散させた後、紡糸直前にポリエステル溶融体に注
入、混合後、直ちに紡糸を行っても良い。
【0025】かくして得られる組成物中には他の成分と
して、必要に応じて任意の添加剤、例えば触媒、酸化防
止剤、紫外線安定剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、着
色剤等が含まれていてもよく、また溶融紡糸時の高重合
度化又は重合度低下を抑制する観点から2,2′―ビス
(2―オキサゾリン)、2,2′―ビス(3,1―ベン
ゾオキサジン―4―オン)等の鎖伸長剤も好ましく配合
することができる。
【0026】このようにして得られたポリエステル組成
物を溶融紡糸して繊維とするには、格別な方法を採用す
る必要はなく、通常のポリエステル繊維の溶融紡糸方法
が任意に採用される。ここで紡出する繊維は中空部を有
しない中実繊維であっても、中空部を有する中空繊維で
あってもよい。また紡出する繊維の横断面における外形
や中空部の形状は、円形であっても異形であってもよ
い。
【0027】また本発明のポリエステル繊維表面には、
前述のポリオキシアルキレングリコール誘導体の除去痕
で形成された微細孔が存在している必要がある。このた
め、上述の方法により得られた繊維は必要に応じて仮撚
加工もしくは捲縮加工を施した後、又はさらに布帛とな
した後に、例えばアルカリ化合物の水溶液で処理され
る。かくすることにより、ポリエステルとともに前記P
AG剤が除去され、該改質PAG剤除去痕に加えてポリ
エステル非晶部の溶出痕からなる微細孔も形成される。
この場合には、前述の改質PAG剤の配合量は0.1〜
10重量%、特に0.5〜5重量%としておくことが好
ましく、0.1重量%未満の場合には、アルカリ化合物
水溶液で処理しても得られるポリエステル繊維表面に微
細孔が形成され難く、深色性は不充分なものとなる。一
方10重量%を超える場合には、深色性及び鮮明性が最
早著しい向上を示さず、逆に摩擦耐久性が低下するのみ
ならず溶融粘度の低下が大きくなって溶融紡糸が困難と
なる。
【0028】好ましく使用されるアルカリ化合物として
は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチル
アンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭
酸カリウム等を挙げることができる。なかでも水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。
【0029】かかるアルカリ化合物の水溶液の濃度は、
アルカリ化合物の種類、処理条件等によって異なるが、
通常0.01〜40重量%の範囲が好ましく、特に0.
1〜30重量%の範囲が好ましい。処理温度は常温〜1
00℃の範囲が好ましく、処理時間は1分〜4時間の範
囲で通常行われる。また、このアルカリ化合物の水溶液
の処理によって溶出除去する量は、繊維重量に対して2
重量%以上の範囲にするべきである。このようにアルカ
リ化合物の水溶液で処理することによって、繊維表面及
びその近傍に改質PAG剤除去痕からなる特殊な楕円状
微細孔を多数形成せしめることができる。
【0030】本発明のポリエステル繊維は、上記要件に
加えて、レーザーラマンマイクロプローブ法(A.J.
Helveger,J.Polym.Sci.,10
317(1972))で求めた繊維表面の密度が1.3
80g/cm3 以上であることが好ましい。繊維表面の密
度が1.380g/cm3 未満の場合には、結晶化が不充
分なため、耐摩擦変色性あるいは耐フィブリル性といっ
た特性が低下する傾向がある。
【0031】なお、ここで用いられるレーザーラマンマ
イクロプローブ法とは、上記の如くA.J.Helve
gerによってポリエチレンテレフタレート系ポリエス
テルについて開発された結晶化度を求める新規な方法を
応用したもので、位置分解能1μmのオーダーでレーザ
ーを照射した時に観測されるラマンスペクトルの、波数
1730cm-1の炭素・酸素二重結合の伸縮振動によるラ
マンバンドの半値幅から、下記式により密度が求められ
る。 D=−0.004785H+1.45995 (式中、Dは密度、Hは波数約1730cm-1のラマンバ
ンドの半値幅を示す) 上述の本発明のポリエステル繊維を染色するには、特別
な染色条件を採る必要はなく、通常ポリエステル繊維を
染色するに採用されている条件、すなわち130℃の高
圧下で染色すればよい。このように染色処理するに際し
て、繊維内部中に残存する改質PAG剤の一部が除去さ
れても、繊維内部に微細孔を形成することなく除去され
るので耐フィブリル性は低下することがない。
【0032】本発明においては、さらに、かくして得ら
れるポリエステル繊維を該繊維より低屈折率を有する重
合体で被覆することによって、深色・鮮明性を一段と改
善することができる。ここで用いられる低屈折率の重合
体の例としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラ
フルオロエチレン―プロピレンコポリマー、テトラフル
オロエチレン―ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、
テトラフルオロエチレン―エチレンコポリマー、テトラ
フルオロエチレン―テトラフルオロプロピレンコポリマ
ー、ポリフルオロビニリデン、ポリペンタデカフルオロ
オクチルアクリレート、ポリフルオロエチルアクリレー
ト、ポリトリフルオロイソプロピルメタアクリレート、
ポリトリフルオロエチルメタアクリレート等の含フッ素
系重合体、ポリジメチルシラン、ポリメチルハイドロジ
エンシロキサン、ポリジメチルシロキサン等の含ケイ素
化合物、エチレン―酢ビコポリマー、ポリエチルアクリ
レート、ポリエチルメタアクリレート等のポリアクリル
酸エステル、ポリウレタン系重合体等があげられるがこ
れらに限定されるものではない。これらの重合体から適
宜繊維製品を構成する繊維基質よりも屈折率の小さいも
のを選び使用すればよい。この場合できるだけ基質繊維
との屈折率差が大きいものを選ぶことが望ましい。
【0033】ポリエステル繊維の表面部を被覆する低屈
折率重合体は通常、有機溶剤の溶液あるいは水系エマル
ジョンの形で市販されているが、染色後、表面部を被覆
する工程を経ることから、水系エマルジョンの形の方が
好ましい。
【0034】低屈折率重合体エマルジョンで本発明から
なるポリエステル繊維の表面部を被覆する方法として
は、好ましくはポリエステル繊維より形成される織編物
に対し、パッディング法、スプレー法、キスロール法、
ナイフコーティング法、浴中吸着法等任意の方法が可能
である。もちろん、トウ、フィラメント、ヤーン織編
物、不織布等のあらゆる形態の繊維製品に適用すること
もできる。
【0035】
【発明の作用・効果】本発明で用いられる前記改質PA
G剤はポリエステルとの相溶性が適度に優れているため
と推定され、ポリエステル分子鎖の運動性が向上して結
晶化速度が向上する。その結果、特に延伸時の熱セット
等によって、繊維表面部の結晶化を高めることができ
る。このようにして得られたポリエステル繊維は、例え
ばアルカリ化合物の水溶液で減量処理すると、高結晶性
のポリマー部分が残り、一部析出したPAG剤を中心と
して、非晶性のポリエステルが効果的に溶解除去され、
繊維軸方向の長さが短い微細凹凸が形成されると共に、
高い結晶化度(高密度)よりなる繊維表面を形成するこ
とができる。
【0036】そして、次いで施される染色処理工程で
は、上記減量処理工程で抽出されずに残存している改質
PAG剤が一部抽出除去されても、改質PAG剤の分散
状態に起因するものと考えられ、繊維径はそのままでし
かも繊維内部には空隙が実質的に形成されない。さら
に、従来ポリエチレングリコール等の両末端が未封鎖の
ものを用いた場合には相溶性が低いために縦長の凹凸が
繊維表面に形成されるとともに繊維内部に存在する剤が
溶出して多数の空隙が形成されるのに対して、本発明は
繊維軸方向の長さが短い凹凸が形成されるとともに繊維
内部に形成される空隙が少なくなる。したがって、本発
明にかかるポリエステル繊維は、深色性及び鮮明性に優
れるとともに耐摩擦変色性及び耐フィブリル性も良好で
あるといった極めて顕著な効果を奏し、また改質PAG
剤の残存量が多い場合には、制電性も向上するといった
効果も奏するのである。
【0037】
【実施例】以下に実施例を挙げて更に具体的に説明す
る。実施例中の部及び%は重量部及び重量%を示し、得
られるポリエステル繊維をアルカリ減量及び染色した際
の繊維中に残存する改質PAG剤の量及び得られた染色
布の色の深み、摩擦変色等は以下の方法で測定した。
【0038】改質PAG剤残存量 サンプル布をクロロホルムで処理して抽出量を求め、改
質PAG剤を添加せずに同様に処理して得た抽出量との
差より、残存改質PAG剤を求めた。
【0039】色の深み(深色性) 色の深みを示す尺度としては、深色度(K/S)を用い
た。この値はサンプル布の分光反射率(R)を島津RC
―330型自記分光光度計にて測定し、次に示すクベル
カームンク(Kubelka-Munk)の式から求めた。この値が
大きいほど深色効果が大きいことを示す(測定波長50
0mμ)。 K/S=(1−R)2 /2R なお、Kは吸収係数、Sは散乱係数を示す。
【0040】耐摩擦変色性 摩擦堅牢度試験用の学振型平面摩耗機を使用して、摩擦
布としてポリエチレンテレフタレート100%からなる
ジョーゼットを用い、試験布を500gの加重下で50
0回平面摩耗して、変色の発生の程度を変褪色用グレー
スケールで判定した。耐摩耗性が極めて低い場合を1級
とし、極めて高い場合を5級とした。実用上4級以上が
必要である。
【0041】繊維表面密度 Jobin―Yvon製レーザーラマンマイクロプロー
ブを用い、位置分解能1μmのオーダーで繊維表面(一
部については繊維横断面の中心部)のラマンスペクトル
を測定した。約1730cm-1のラマンバンドの半値幅を
求め、下式 D=−0.004785H+1.45995 (式中、Dは密度(g/cm3 )、Hは波数1730cm-1
のラマンバンドの半値幅を示す)から密度を算出した。
【0042】ポリマー結晶化速度 示差走査熱量計(Du Pont 社製 1090型)を使用し、昇
温速度20℃/分で昇温時の結晶化ピーク温度Tci、
及び300℃まで昇温後3分間該温度に保持し、次いで
自然降温させた時の結晶化ピーク温度Tcdを求め、Δ
T=Tcd−Tciの大きさを結晶化速度のパラメータ
ーとした(この値が大きい程、結晶化速度が速いことを
示す)。
【0043】耐アタリ性 アルカリ減量後の布帛に厚さ0.1mm程度のポリエチレ
ンテレフタレートフイルムをはさみ、130℃のカレン
ダーロール(線圧力10kg/cm)を通した後に染色、フ
ァイナルセットを施し、減量染色布帛(A)を得た。カ
レンダーロールを通さずに得た減量染色布帛(B)と前
記AのL*値(明度指数)をマクベスMS―2020
(Instrumental Color System Limited 製)を用いて測
定し、両者のL*値の差(ΔL*)で耐アタリ性を評価
した。 ΔL*=L*(編地A)−L*(編地B) 耐アタリ性として実用上ΔL*が1.7以下である必要
がある。
【0044】
【実施例1〜12、比較例1〜6】テレフタル酸ジメチ
ル100部、エチレングリコール60部、酢酸カルシウ
ム1水塩0.063部(テレフタル酸ジメチルに対して
0.069モル%)及び整色剤として酢酸コバルト4水
塩0.009部(テレフタル酸ジメチルに対して0.0
07モル%)をエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰囲
気下3時間かけて140℃から220℃まで昇温して生
成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反
応させた。その後220℃で20分間攪拌した後、安定
剤としてリン酸トリメチル0.058部(テレフタル酸
ジメチルに対して0.080モル%)を添加し、同時に
過剰エチレングリコールの昇温追出しを開始した。10
分後重縮合触媒として三酸化アンチモン0.04部(テ
レフタル酸ジメチルに対して0.027モル%)を添加
した。続いて得られた生成物に表3に示されたポリオキ
シアルキレングリコール誘導体を表1に示す割合で添加
し、内温が240℃に到達した時点でエチレングリコー
ルの追出しを終了し、反応生成物を重合缶に移した。次
いで昇温しながら内温が260℃に到達するまで常圧反
応させた後、1時間かけて760mmHgから1mmHgまで減
圧し、同時に1時間30分かけて内温を280℃まで昇
温した。1mmHg以下の減圧下、重合温度280℃で固有
粘度[IV]が略0.64になるまで反応を続けた。
【0045】このポリマーを常法に従ってチップ化し、
乾燥して、孔径0.3mmの円形紡糸孔を36個穿設した
紡糸口金を使用して285℃で溶融紡糸した。次いで得
られた未延伸糸を、最終的に得られる延伸糸の伸度が3
0%になる延伸倍率で、84℃の供給ローラと180℃
のプレートヒーターを使って延伸、熱処理して75デニ
ール/36フィラメントの延伸糸を得た。この原糸にS
撚2500T/m又はZ撚2500T/mの強撚を施
し、続いて該強撚糸を80℃で30分間蒸熱処理して撚
止めを行なった。該撚止め強撚糸を経密度47本/cm、
緯密度32本/cmでS、Z撚を2本交互に配して梨地ジ
ョーゼット織物を製織した。
【0046】得られた生機をロータリーワッシャーにて
沸騰温度で20分間リラックス処理を施し、シボ立てを
行ない、常法によりプリセット後、3.5%の水酸化ナ
トリウム水溶液で沸騰温度にて処理し、減量率が20%
の布帛を得た。このアルカリ処理後の布帛をDianix Bla
ck HG―FS(三菱化成工業(株)製品)15%ow
fで130℃で60分間染色後、水酸化ナトリウム1g
/リットル及びハイドロサルファイト1g/リットルを
含む水溶液にて70℃で20分間還元洗浄して黒染布を
得た。得られた処理布の深みと鮮明性を表2に示した。
更に黒染布については摩耗500回後の耐摩耗変色性も
あわせて示した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
【実施例13】実施例4において、撚止めを高圧ワッシ
ャー中130℃1時間熱水処理する以外は実施例4と同
様にして染色布を得た。この布帛の耐アタリ性は1.5
と良好であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3の染色後のポリエステル繊維の形状を
表わす走査型電子顕微鏡写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D06P 3/52 Z 9356−4H 5/00 DBC 9356−4H 101 9356−4H (72)発明者 黒田 俊正 大阪府茨木市耳原3丁目4番1号 帝人株 式会社大阪研究センター内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(I)で表わされるポリオキ
    シアルキレングリコール誘導体を含有する、繰り返し単
    位が実質的にエチレンテレフタレート単位からなるポリ
    エステル繊維であって、該繊維表面には前記ポリオキシ
    アルキレングリコール誘導体の除去痕で形成された微細
    孔が存在することを特徴とする深色性に優れたポリエス
    テル繊維。 【化1】 (式中、Zは炭素数5〜10の脂肪族ジオール、炭素数
    3〜15の脂環族ジオール、ビスフェノール類、及び2
    価フェノールの群から選ばれた少なくとも1種の2価の
    ヒドロキシ基含有化合物の残基、Aは炭素数2〜4のア
    ルキレン基、Xは1価のヒドロキシ基含有化合物の残
    基、mは正の整数を示す。)
  2. 【請求項2】 繊維表面の密度(レーザーラマンマイク
    ロプローブ分析法により測定)が1.380g/cm3
    上である請求項1記載の深色性に優れたポリエステル繊
    維。
  3. 【請求項3】 ポリオキシアルキレングリコール誘導体
    の平均分子量が1000〜5000である請求項1記載
    の深色性に優れたポリエステル繊維。
  4. 【請求項4】 下記一般式(I)で表わされるポリオキ
    シアルキレングリコール誘導体を0.1〜10重量%含
    有する、繰り返し単位が実質的にエチレンテレフタレー
    ト単位からなるポリエステル繊維を、アルカリ化合物の
    水溶液で減量処理し、繊維表面に微細孔を形成せしめる
    ことを特徴とする深色性に優れたポリエステル繊維の製
    造法。 【化2】 (式中、Zは炭素数5〜10の脂肪族ジオール、炭素数
    3〜15の脂環族ジオール、ビスフェノール類、及び2
    価フェノールの群から選ばれた少なくとも1種の2価の
    ヒドロキシ基含有化合物の残基、Aは炭素数2〜4のア
    ルキレン基、Xは1価のヒドロキシ基含有化合物の残
    基、mは正の整数を示す。)
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