JP3973453B2 - 改質ポリエステル組成物及びその製造方法並びにそれよりなる繊維 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はカチオン染料に染色可能な改質ポリエステル組成物及びそれよりなる繊維に関し、更に詳しくは、カチオン染料に染色可能な極細繊維を製造する際に良好な曳糸性を呈する改質ポリエステル組成物及びその製造方法並びに強度等の物理的性質が格段に改善された繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルは多くの優れた特性を有しているため繊維やフイルムとして広く用いられている。しかしポリエステルは分散染料以外の染料には染色困難であり、その染色性については改善が求められていた。
【0003】
染色性を改良する方法として、例えばポリエステル主鎖中に5−ナトリウムスルホイソフタル酸のようなスルホン酸金属塩基を有するイソフタル酸成分を共重合することによってカチオン染料で染色する方法が古くから知られている(特公昭34−10497号公報参照)。
【0004】
しかしこの方法では、該成分の共重合によってポリマーの溶融粘度が著しく増大するため、撹拌負荷が大きいこと、5時間を超える重合時間を要すること、から重合度を十分に上げることが困難であり、このため紡糸等の成形が困難になるという欠点があった。また、スルホン酸塩基を有することから、組成物中の水分率が高くなるため、紡糸等の成形加工時に固有粘度が一層落ちてしまい、強度等の物性が十分でない問題があった。
【0005】
このようなカチオン染料可染性ポリエステルの欠点を解消するため、スルホン酸ホスホニウム塩基を有するイソフタル酸成分を共重合した改質ポリエステルの製造方法及び改質ポリエステル繊維が提案されている(特公平3−61766号公報参照)。この方法によればポリマーの増粘作用が抑制されるため、高重合度でかつ低溶融粘度のポリエステルが製造できる。
【0006】
しかしながら、この方法では異形断面糸や1dtex以下の極細繊維とした時には、5−ナトリウムスルホイソフタル酸共重合対比、繊維表面での光の反射が増大し、カチオン染料で染色した際の濃色性や鮮明発色性が不足するようになり、また強度等の物理的性質も不十分となる傾向があった。
【0007】
一方、前記したスルホン酸金属塩基を有するイソフタル酸成分を共重合したポリエステルにアルキルスルホン酸やアルキルベンゼンスルホン酸の金属塩のような、該共重合ポリエステルとは非反応性の有機スルホン酸金属塩を配合した組成物に関する提案もいくつかなされている。
【0008】
例えば、米国特許第4336307号明細書には、上記組成物を中空繊維として、これをアルカリ減量処理することによって形成させた、繊維表面から中空部まで連通した多数の微細孔を有するポリエステル吸水性ポリエステル繊維が提案されている。更に、特開平4−264126号公報には、このような組成物から高強力のカチオン染料可染性ポリエステル繊維が得られることが示されている。しかしながら、これらの方法によって得られる繊維では、繊維の強度等の物理的性質とカチオン染料で染色した際の濃染性、鮮明発色性とが二律背反的な関係にあり、両者を同時に満足させることはできなかった。
【0009】
更にアルキルスルホン酸やアルキルベンゼンスルホン酸の金属塩を使用すると紡糸口金に熱分解したスルホン酸塩に起因する汚れがたまりやすく、極細繊維等の紡糸が困難であるという問題もあった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術が有していた問題点を解消し、カチオン染料に染色可能で、十分な強度を有し、しかも改善された極細繊維曳糸性を呈する改質ポリエステル組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、上記改質ポリエステル組成物の簡便な製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来技術に鑑み、カチオン染料での濃染性と強度等の物理的性質とを両立させるため、固有粘度を上げるべく鋭意検討を行ったが、従来の溶融重合法では、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分の増粘効果のため撹拌電力が極めて高くなり、重合反応が困難であった。
【0013】
本発明者は、これに替えて、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分を高濃度に共重合させたポリエチレンテレフタレート系ポリエステルを調製し、これと5−ナトリウムスルホイソフタル酸が共重合されていないポリエチレンテレフタレートとをベント付2軸押出機に供給し、該押出機内で再分配反応を進めるにあたり、2軸押出機のスクリューから組成物へ付与する混練エネルギーを設定することによって、固有粘度の高いカチオン染料可染性ポリエステルを容易に得ること、その際、特定の成分を含有させると製糸等の成形時の成形性が向上することを見出し、本発明に到達した。
【0014】
すなわち、本発明の目的は、
エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位の80モル%以上を占め、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分が全酸成分を基準として1〜5モル%共重合された、固有粘度が0.5〜0.9の範囲にある改質ポリエステルであって、該改質ポリエステルを含む組成物の全重量を基準として100〜2000ppmの範囲で安息香酸成分を含有することを特徴とする改質ポリエステル組成物によって達成することができる。
【0015】
また、本発明の他の目的は、
エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位の80モル%以上を占め、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分が全酸成分を基準として5モル%を超え20モル%以下の範囲で共重合された、固有粘度が0.3〜0.6の範囲にあるポリエステル(A)(以下「共重合マスター」と称することがある。)と、エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位の80%以上を占め、実質的に5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分が共重合されていない、固有粘度が0.4〜1.0のポリエステル(B)とを、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分の含有量が改質ポリエステルの全酸成分を基準として1〜5モル%となる割合でベント付き2軸混練押出機に供給し、溶融混練して改質ポリエステル組成物を製造するに際し、安息香酸成分の含有量が改質ポリエステル組成物の重量を基準として100〜2000ppmとなるように、予めポリエステル(A)及び/又はポリエステル(B)に含有させるか、又は、溶融混練が完了する以前の任意の段階で添加すると共に、2軸押出機のスクリューから改質ポリエステル組成物へ付与する混練エネルギーを0.1〜2.0kWh/kgの範囲に制御することを特徴とする改質ポリエステル組成物の製造方法によって達成される。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の改質ポリエステル組成物は、全繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位で構成される。エチレンテレフタレート単位が80モル%未満であると、ポリエチレンテレフタレート特有の強度等の物性が得られなくなるため、好ましくない。本発明の改質ポリエステル組成物は、全繰り返し単位の少なくとも80モル%がエチレンテレフタレート単位である限り、他の成分が含まれていても問題はなく、例えばテレフタル酸以外の酸成分として、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような芳香族、脂肪族又は脂環族カルボン酸が共重合されていてもよく、また、エチレングリコール以外のグリコール成分として、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSのような脂環族、脂肪族又は芳香族のジオール化合物が共重合されていてもよい。
【0017】
更に、本発明の目的を損なわない範囲であれば、トリメリット酸、ピロメリット酸のようなポリカルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールのようなポリオールが共重合されていてもよい。
【0018】
本発明の改質ポリエステル組成物においては、共重合成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸が全酸成分を基準として1〜5モル%共重合されていることが必要である。該共重合量が1モル%未満であると染色鮮明性に劣り、他方共重合量が5モル%を超えるとカチオン染料による鮮明性はそれほど向上しないのに対して加水分解しやすくなり、強度等の物性が劣るようになる。
【0019】
本発明における改質ポリエステル組成物の固有粘度は0.5〜0.9の範囲にあることが必要である。固有粘度が0.5未満であると十分な強度が得られず、ポリエステルの耐磨耗性に劣るようになるため好ましくない。一方、0.9を超えると増粘効果のため、製糸時の曳糸性が劣るようになり、断糸や紡糸品質斑が大きくなる。
【0020】
本発明における改質ポリエステル組成物には、更に安息香酸成分を改質ポリエステル組成物の全重量を基準として100〜2000ppm含有する必要がある。該含有量が100ppm未満であると5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分の分解による口金異物の発生量が多くなり、特に極細繊維の紡糸を行うとき断糸の原因となるので好ましくない。一方、2000ppmを超えると、剤自身が昇華したり、紡糸時のポリエステルの分解を逆に促進したりしてしまい、強度等の物性が不十分となる。
【0021】
また、本発明の改質ポリエステル組成物は、その水分含有率が該改質ポリエステル組成物の全重量を基準として0.06%未満であることが好ましい。この範囲にあると、紡糸中の加水分解は更に抑止され、繊維強度の低下がほとんど生じなくなるため好ましい。
【0022】
以上に説明した本発明の改質ポリエステル組成物を製造するには、例えば5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分をポリエステルの合成が完了する以前の任意の段階で全酸成分を基準として6〜20モル%の範囲で添加して共重合させた、エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位の80モル%以上を占めるポリエステル(A)(「共重合マスター」)と、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を実質的に共重合していない、全繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエステル(B)とをベント付2軸混練押出機で溶融混練する。
【0023】
ここでポリエステル(A)の5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合量が6モル%未満であると、2軸押出機で混練する際に多量のポリエステル(A)を添加する必要があり、2軸押出機の装置が過大となるため好ましくなく、逆に20モル%を超えると、増粘効果のため共重合マスターの製造が困難となるため好ましくない。共重合マスターの2軸混練機への投入は溶融ポリマーのまま直接添加してもよく、チップ化又はフレーク化して2軸混練機へ供給してもよい。また、チップ化した共重合マスターを固相重合等の手段によって固有粘度を上げて使用しても一向に差し支え無い。共重合マスターの固有粘度は、従来紡糸に必要とされていたほどには限定する必要はなく、撹拌電力に問題ない範囲で、かつチップ又はフレーク状となって得られる範囲であればよく、好ましい固有粘度の範囲としては0.3〜0.6である。0.3以下ではフレーク状にも成形することが困難であり、0.6を超えると溶融粘度が高くなり、重合反応及び/又は吐出成形が困難となるため好ましくない。
【0024】
共重合マスターは溶融重合等既知の方法で製造することができる。通常テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルのようなテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる第一段階の反応と、第一段階の反応生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第二段階の反応によって製造される。また、固相重合法によって更に高重合度とすることも可能である。5−ナトリウムイソフタル酸はこの任意の段階で添加してよいが、反応を十分に進行させるため、好ましくは反応初期より投入しておくことが最も好ましい。
【0025】
他方ポリエステル(B)の固有粘度も特に限定する必要はないが、あまりに低すぎると一旦チップ等に成形する際の成形性が低下し、他方高すぎると製造が困難になったり溶融混練時の作業性が低下したりするので、好ましい範囲としては0.4〜1.0、特に0.5〜0.9が適当である。
【0026】
本発明においては、共重合マスターと5−ナトリウムスルホイソフタル酸を含有しないポリエステル(B)とを2軸混練機で混練することによって、再分配反応を行う。2軸混練機には真空機構を具備したベント機構を有することが必要である。ベントより脱気することによって、水分率を低下させ、好ましくは0.06%未満とすることが可能となり、この範囲にあると、例えばそのまま溶融紡糸に供給しても紡糸中の加水分解は抑止され、繊維強度の低下がほとんど生じなくなるため好ましい。
【0027】
ベント機構が無い場合、得られる共重合マスターのスルホン酸成分が親水性であるため、該共重合マスターを一旦チップ等に成形する際に吸水して水分率が増加するため、溶融混練時にポリエステルの加水分解が進行して得られる改質ポリエステルの固有粘度が低下するだけでなく、残留水分率も高くなるので好ましくない。
【0028】
また、2軸混練機のスクリューから改質ポリエステルへ付与する混練エネルギーは再分配反応の促進力となっているため、スクリューの回転動力(kW)を2軸押出機中の樹脂通過量(kg/h)で除した比エネルギー値(Esp)を制御するが、Espの範囲は0.1〜2.0kWh/kgの範囲に制御すればよい。
【0029】
Espが0.1以下であると再分配反応が完結せず、いわば、共重合マスターとポリエステル(B)とが共重合せず、単に物理的に混合しているだけの状態となり、染色鮮明性、染色耐久性に劣るため好ましくない。一方、2.0を超えると付与するエネルギーが過大となり、ポリエステルの分解が起こるようになる。Espの好ましい制御範囲は、0.1〜1.3kWh/kgである。
【0030】
本発明の製造方法においては、安息香酸成分を含有させる時期は、その効果が熱劣化や真空飛散により失われない範囲であれば、予め共重合マスター及び/又はポリエステル(B)の製造中に添加しても、2軸混練機中へ添加しても差し支えない。なお、これらの物質は昇華性を有することから、固体(粉体)で添加するより溶液又はスラリーとして添加することが好ましく、この点で共重合マスター及び/又はポリエステル(B)の製造中に添加することが比較的容易に実施でき好ましいが、2軸押出機に液体添加装置を設置して供給することも可能である。
【0031】
なお、本発明の改質ポリエステル組成物には、必要に応じてその他の酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色剤、その他の添加剤等を配合してもよい。
【0032】
次に、本発明の改質ポリエステル組成物から繊維を製造する場合には、任意の製糸条件を何等の支障なく採用することができる。例えば500〜2500m/分の速度で溶融紡糸し、延伸・熱処理する方法、1500〜5000m/分の速度で溶融紡糸し、延伸と仮撚加工とを同時に又は続いて行う方法、5000m/分以上の高速で溶融紡糸し、用途によっては延伸を省略する方法、などの任意の製糸条件を採用することができる。
【0033】
この際、得られる繊維の断面形状及び繊度は任意でよいが、このようにして得られた繊維の固有粘度は0.48〜0.9の範囲にあることが好ましい。
【0034】
なかでも断面形状が円形以外の異形断面である場合や単繊維繊度が1.0dtex以下、特に0.3〜1.0dtexの極細繊維である場合に、本発明の効果が特に顕著に発揮される。
【0035】
また、本発明の改質ポリエステル組成物は固有粘度が高いため、上記のような極細繊維としたときにも、強度2.8〜4.0cN/dtexといった高強度の繊維を提供することができる。
【0036】
また、本発明の改質ポリエステル組成物は、フイルムやシートの製造にも使用することができ、この際任意の成形条件を何等の支障なく採用することができる。例えば製膜後一方向のみに張力を作用させて異方性膜を製造する方法、同時に又は任意の順序で膜を二方向に延伸する方法、2段以上に多段延伸する方法等を任意の条件で採用することができる。
【0037】
【実施例】
本発明を具体的な実施例を挙げて、更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお実施例中の部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を示す。また実施例中の各値は以下の方法に従って求めた。
固有粘度:35℃のオルソクロルフェノール溶液で測定した値から、常法に従って求めた。
水分率:サンプル中の水分を無水メタノールへ抽出し、カールフィッシャー法にて測定した。
紡糸断糸:サンプルを24時間連続で紡糸を行って、断糸した回数を測定した。
強度、伸度:JIS L1070に記載された方法に準拠して求めた。
染色性評価(明度、彩度):染色布のL、a、b値をミノルタ(株)製色彩色差計(CR−200)を用いて測定し、深色度(L)及び彩度(a2+b2)1/2を求めた。深色度が小さいほど深色性が大きく、彩度が大きいほど鮮明発色性が大きいことを示す。
【0038】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル90部、エチレングリコール50部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル15部、酢酸ナトリウムを0.4部、エステル交換反応触媒として酢酸マンガン0.03部をエステル交換反応缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下3時間かけて140℃から240℃まで昇温して生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応させた。
【0039】
安定剤としてリン酸トリメチルの25%エチレングリコール溶液0.03部添加した後、得られた反応物を重合反応缶に移し、重縮合触媒として三酸化アンチモンを0.035部投入し、同時に過剰のエチレングリコールを留去しながら260℃に到達するまで常圧で反応させた後、30分かけて常圧から133Paまで減圧し、同時に1時間かけて内温を285℃まで昇温した。
【0040】
引き続き100Pa以下に減圧し、更に重合反応を続け、回転速度35rpmの一定速度で回転する撹拌翼のモーター電力値が所定値に到達した時点で重合反応を終了し、窒素ガス加圧下にて、生成したポリマーを吐出し、冷却してチップ化した。得られた共重合マスターの固有粘度は0.38であった。
【0041】
一方、上記共重合マスターの製造において、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを含有せず、安息香酸を300ppm及びp−オキシ安息香酸を700ppmをエステル交換反応終了後に添加したこと以外は同様の方法で、固有粘度0.65のポリエステル(B)チップを得た。
【0042】
得られた共重合マスターチップ13kg/hおよびポリエステル(B)チップ37kg/hで真空ベントを2箇所具備した(株)神戸製鋼所製2軸混練押出機「HYPERKTX46MX」へ供給し、スクリュー回転数400rpm、ベント真空度133Paにて押し出した、固有粘度0.53の改質ポリエステル組成物のチップを得た。チップ水分率は0.05%であった。この時、Espは1.0kWh/kgを示した。
【0043】
このチップを常法に従って乾燥させた後、孔径0.15mmの円形吐出孔を144個穿設した紡糸口金を使用して285℃、紡糸速度2800m/分で溶融紡糸し、未延伸糸で巻き取ることなく、そのまま第1ローラー90℃、第2ローラー130℃、延伸速度3300m/分で延伸して40dtex/144filament(単繊維繊度0.3dtex)の極細繊維糸条を得た。
【0044】
この時の紡糸調子は良好であり、糸の固有粘度は0.51、糸の破断強度は3.0cN/dtex、糸の破断伸度は44%であった。この糸条はカチオン染料(Cathilon Blue CD−FRLH/CathilonBlue CD−FBLH=1/1(保土谷化学(株)製))で鮮やかな青色に染色することができた。結果を表1、表2に示す。
【0045】
[実施例2及び3]
実施例1において、共重合マスターの混練押出機への添加量を変更したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、表2に示す。
【0046】
[実施例4]
実施例1において、安息香酸及びp−オキシ安息香酸の添加時期を2軸押出機中へとするとともに、添加量を表1に記載した値に変更したこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、表2に示す。
【0047】
[比較例1]
テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール60部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル5.4部、エステル交換触媒として酢酸マンガン0.025部をエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下3時間かけて140℃から240℃まで昇温して生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換させた。
【0048】
安定剤として正リン酸0.03部添加した後、得られた反応物を重合反応缶に移し、重縮合触媒として三酸化アンチモンを0.04部投入し、同時に過剰のエチレングリコールを追出した。反応生成物を重合缶に移して昇温しながら内温が260℃に到達するまで常圧で反応させた後、1時間30分かけて常圧から133Paまで減圧し、同時に3時間30分かけて内温を285℃まで昇温した。
【0049】
引き続き100Pa以下に減圧し、更に重合反応を続け、回転速度35rpmの一定速度で回転する撹拌翼のモーター電力値が所定値に到達した時点で重合反応を終了し、窒素ガス加圧下にて、生成したポリマーを吐出し、冷却してチップ化した。得られたポリマーの固有粘度は0.49であった。このチップを実施例1と同様に紡糸・染色評価した。結果を表1、表2に示す。
【0050】
[実施例5]
テレフタル酸ジメチル90kg/h、エチレングリコール50kg/h、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル15kg/h、酢酸ナトリウムを0.4kg/h、エステル交換反応触媒として酢酸マンガン0.03kg/hの割合で連続式エステル交換反応機に供給し、窒素ガス雰囲気下140℃から240℃まで昇温して生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換させた。安定剤としてリン酸トリメチルの25%エチレングリコール溶液0.03kg/h添加した後、得られた反応物を連続式重合反応缶に移し、重縮合触媒として三酸化アンチモンを0.035kg/h投入し、常圧から100Paまで順次減圧し、内温を285℃まで昇温し、固有粘度は0.38の共重合マスターを得た。ポリマーをサンプルリングし、水分率を測定した結果、0.006%であった。
【0051】
得られた共重合マスターを溶融状態のまま90kg/h、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを含有しない固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート溶融ポリマーを別の連続反応機より260kg/h移送し、真空ベントを2箇所具備した(株)神戸製鋼所製2軸混練押出機「HYPERKTX73MX」へ供給し、回転数800rpmにて押し出し、チップを得た。チップ水分率は0.008%であった。常法に従って乾燥させた後、孔径0.15mmの円形吐出孔を144個穿設した紡糸口金を使用して285℃、紡糸速度2800m/分で溶融紡糸し、未延伸糸で巻き取ることなく、そのまま第1ローラー90℃、第2ローラー130℃、延伸速度3300m/分で延伸して40dtex/144filament(単繊維繊度0.3dtex)の極細繊維糸条を得た。結果を表1、表2に示す。
【0052】
[実施例6]
実施例1において、実施例1で得られた共重合マスターチップを更に固相重合して固有粘度0.75として用いたこと以外は同様の操作を行った。結果を表1、表2に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、カチオン染料への染色性を維持しながら、固有粘度が高く強度に優れ、しかも極細繊維の曳糸性にも優れた改質ポリエステルを提供することができ、これらの特性を生かして、スポーツ、資材用途、更には新規スウェード調素材、ファッション化対応素材として極めて有用である。
【0056】
また、本発明の改質ポリエステル組成物から得られるフイルムやシートとしても適用することができ、強度と耐摩耗性とに優れるとともに優れた制電性、吸水性、印刷性、接着性等を有するので非常に有用である。
Claims (5)
- エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位の80モル%以上を占め、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分が全酸成分を基準として1〜5モル%共重合された、固有粘度が0.5〜0.9の範囲にある改質ポリエステルであって、該改質ポリエステルを含む組成物の全重量を基準として100〜2000ppmの範囲で安息香酸成分を含有することを特徴とする改質ポリエステル組成物。
- 水分含有率が改質ポリエステルの重量を基準として0.06%未満である、請求項1記載の改質ポリエステル組成物。
- エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位の80モル%以上を占め、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分が全酸成分を基準として5モル%を超え20モル%以下の範囲で共重合された、固有粘度が0.3〜0.6の範囲にあるポリエステル(A)と、エチレンテレフタレート単位が全繰り返し単位の80%以上を占め、実質的に5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分が共重合されていない、固有粘度が0.4〜1.0のポリエステル(B)とを、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分の含有量が改質ポリエステルの全酸成分を基準として1〜5モル%となる割合でベント付き2軸混練押出機に供給し、溶融混練して改質ポリエステルを製造するに際し、安息香酸成分の含有量が改質ポリエステル組成物の重量を基準として100〜2000ppmとなるように、予めポリエステル(A)及び/又はポリエステル(B)に含有させるか、又は、溶融混練が完了する以前の任意の段階で添加すると共に、2軸押出機のスクリューから改質ポリエステル組成物へ付与する混練エネルギーを0.1〜2.0kWh/kgの範囲に制御することを特徴とする改質ポリエステル組成物の製造方法。
- 請求項1記載の改質ポリエステル組成物を溶融紡糸してなり、固有粘度が0.48〜0.9の範囲にある繊維。
- 単繊維繊度が0.3〜1.0dtex、強度が2.8〜4.0cN/dtexである、請求項4記載の繊維。
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