JPH0812346A - 連結シリカ球状粒子からなる三次元網状構造体と樹脂とによる相互貫入型複合体およびその製造方法 - Google Patents

連結シリカ球状粒子からなる三次元網状構造体と樹脂とによる相互貫入型複合体およびその製造方法

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JPH0812346A
JPH0812346A JP6177534A JP17753494A JPH0812346A JP H0812346 A JPH0812346 A JP H0812346A JP 6177534 A JP6177534 A JP 6177534A JP 17753494 A JP17753494 A JP 17753494A JP H0812346 A JPH0812346 A JP H0812346A
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裕子 田中
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宗明 山口
Hiromasa Ogawa
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Katsutoshi Tanaka
勝敏 田中
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    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
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    • C08K9/06Ingredients treated with organic substances with silicon-containing compounds

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】シリカ含有量が高いにも拘わらず、ガラス転移
点以上の温度においても剛性が急激に低下せず、且つ高
温での安定性に優れた新規なシリカ−樹脂系複合体を提
供する。 【構成】1.下記の構造的特性と力学的特性とを備えた
シリカ球状粒子からなる三次元網状構造体と樹脂とによ
る相互貫入型複合体: (1)三次元的に相互に結合した直径6〜30μmシリ
カ球状粒子からなる; (2)シリカ球状粒子は表面に半径5〜10nmの細孔
を有し、その比表面積は300〜400m2/gであ
る; (3)シリカ粒子相互間の結合部はくびれており、結合
部の断面積は粒子の最大断面積の1/2〜1/4の範囲
にある; (4)シリカ粒子表面のほとんどの部分が水溶性高分子
により覆われている; (5)網状構造体の内部には連通する空孔部が形成され
ており、網状構造体における空孔率は40〜60%の範
囲にある; (6)シリカ含有率は60〜80重量%の範囲にある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な構造のシリカ−
樹脂系三次元相互貫入型複合体およびその製造方法に関
する。
【0002】
【従来技術とその問題点】一般に、シリカ粒子は、給油
量が大きく高充填し難いので、シリカ充填量の高いシリ
カ−樹脂系複合材料の製造は、困難であり、仮に製造で
きたとしても、物性の点で、実用性に欠けている。例え
ば、石英ガラス粉或いはフレークを用いてランダム最密
充填した複合体の最大充填量は、77重量%となる。ゾ
ル・ゲル法を利用した相溶性高分子ブレンド系から相分
離システムにより合成された三次元構造体のシリカ高充
填複合体のシリカ含有量は、最大80重量%である。し
かしながら、一般に、ガラス或いはシリカなどの無機充
填物複合材料は、無機物の充填率が増大するとともに、
剛性(弾性率)は増加するが、衝撃強さなどは低下し、
硬くてもろい材料となる。また、シリカ、ガラスなどの
無機物を充填した公知のエポキシ樹脂系複合材料は、樹
脂のガラス転移点を上回る温度においては、剛性を急激
に失ってしまい、高温での安定性にも欠けている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、シ
リカ含有量が高いにも拘わらず、ガラス転移点以上の温
度においても剛性が急激に低下せず、且つ高温での安定
性に優れた新規なシリカ−樹脂系複合体を提供すること
を主な目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記のよう
な技術の現状に鑑みてさらに研究を重ねた結果、アルコ
キシシランの低重合体と水溶性高分子とを含む水とアル
コールとの混合溶媒中で、酸触媒の存在下にアルコキシ
シランの低重合体の加水分解反応と重合反応とを行わせ
る場合には、新規な構造および特異な物性を有するシリ
カ粒子からなる三次元網目構造体が得られることを見出
した。さらに、この様にして合成された三次元網目状構
造体に樹脂を含浸させる場合には、連結シリカ球状粒子
の三次元網状構造体と樹脂とからなる新規な相互貫入型
シリカ球状粒子−樹脂複合体が得られることを見出し
た。
【0005】すなわち、本発明は、下記の相互貫入型シ
リカ球状粒子−樹脂複合体およびその製造方法を提供す
るものである: 1.下記の構造的特性と力学的特性とを備えたシリカ球
状粒子からなる三次元網状構造体とこの網状三次元構造
体内部の空孔部内に存在する樹脂とによる相互貫入型複
合体: (1)三次元的に相互に結合した直径6〜30μmシリ
カ球状粒子からなっている; (2)シリカ球状粒子は表面に半径5〜10nmの細孔
を有し、その比表面積は300〜400m2/gであ
る; (3)シリカ粒子相互間の結合部はくびれており、結合
部の断面積は粒子の最大断面積の1/2〜1/4の範囲
にある; (4)シリカ粒子表面のほとんどの部分が水溶性高分子
により覆われている; (5)網状構造体の内部には連通する空孔部が形成され
ており、網状構造体における空孔率は40〜60%の範
囲にある; (6)シリカ含有率は60〜80重量%の範囲にある; (7)空気中600℃で5時間或いは800℃で3時間
保持しても、網目構造自体は変化しない; (8)構造体は機械的加工が可能であり、ガラス転移点
以下の温度では1.5〜2.0GPaの弾性率を有し、
ガラス転移点と300℃との間の温度では0.18〜
0.25GPaの弾性率を有する。
【0006】2.アルコキシシランの低重合体と水溶性
高分子とを含む水とアルコールとの混合溶媒中で、酸触
媒の存在下にアルコキシシランの低重合体の加水分解反
応と重合反応とを行わせて、下記の構造的特性と力学的
特性とを備えたシリカ球状粒子からなる三次元網状構造
体を形成させた後、その連通する空孔部に樹脂を含浸さ
せることを特徴とする連結シリカ球状粒子からなる三次
元網状構造体とこの網状三次元構造体内部の空孔部内に
存在する樹脂とによる相互貫入型複合体の製造方法; (1)三次元的に相互に結合した直径6〜30μmシリ
カ球状粒子からなっている; (2)シリカ球状粒子は表面に半径5〜10nmの細孔
を有し、その比表面積は300〜400m2/gであ
る; (3)シリカ粒子相互間の結合部はくびれており、結合
部の断面積は粒子の最大断面積の1/2〜1/4の範囲
にある; (4)シリカ粒子表面のほとんどの部分が水溶性高分子
により覆われている; (5)網状構造体の内部には連通する空孔部が形成され
ており、網状構造体における空孔率は40〜60%の範
囲にある; (6)シリカ含有率は60〜80重量%の範囲にある; (7)空気中600℃で5時間或いは800℃で3時間
保持しても、網目構造自体は変化しない; (8)構造体は機械的加工が可能であり、ガラス転移点
以下の温度では1.5〜2.0GPaの弾性率を有し、
ガラス転移点と300℃との間の温度では0.18〜
0.25GPaの弾性率を有する。
【0007】本発明のシリカ球状粒子からなる三次元網
状構造体と樹脂とからなる特異な構造を有する相互貫入
型複合体は、以下のような方法により、製造できる。
【0008】即ち、本発明方法においては、連結シリカ
球状粒子からなる三次元網状構造体を製造した後、その
空孔部に樹脂を含浸させる。
【0009】(a)三次元網状構造体の製造 まず、アルコキシシランの低重合体と水溶性高分子とを
含む水とアルコールとの混合溶媒中で、酸触媒の存在下
にアルコキシシランの低重合体の加水分解反応と重合反
応とを行わせる。重合反応の進行とともに、まず準安定
領域で相分離が起こって、シリカ粒子の核生成が始ま
り、その成長過程で不安定領域(スピノーダル分解域)
へ移行し、シリカ粒子の成長とともに粒子間の結合が行
われて、最終的にシリカ球状粒子からなる三次元網目構
造体(以下三次元網目構造体或いは三次元構造体という
ことがある)が形成される。
【0010】中西和樹ら{Jounal of Non-Crystaline S
olids 139(1992)pp1-13}において、テトラエトキシ
シランモノマーまたはテトラメトキシシランモノマー、
ポリアクリル酸、水、メタノールまたはエタノール、硝
酸からなる均一混合溶液を60℃でゲル化させ、シリカ
相とポリマー相との相分離をスピノーダル線に囲まれた
不安定領域で行わせた後、ポリマー相を洗い出して、シ
リカの絡合構造体を得たことを報告している。しかしな
がら、本発明におけるシリカ粒子からなる三次元構造体
の形成は、アルコキシシランモノマーを出発原料とする
上記文献記載の方法とは異なり、核生成と成長が起こる
準安定領域でシリカ球状粒子がある程度成長したところ
で不安定領域へ移行する様に、溶媒の濃度の変化を制御
することにより行われるものであり、シリカ球状粒子が
三次元的に連結した構造を示す。
【0011】上記の反応においては、一定量の水溶性高
分子の存在が必須である。則ち、相溶性のある高分子の
ブレンド系または高分子とモノマーとのブレンド系の中
で、臨界相溶温度曲線を境に1相に相溶している相と2
相に相溶している相とを持つ系において、ある組成で相
溶しているブレンド物に温度の急変化を与えた後、等温
処理すると、それぞれ同じ高分子(成分)が集合し始
め、相分離が始まるが、その過程で絡み合い構造(三次
元相互貫入型構造)を形成する。この段階で重合反応、
ゲル化などにより系を固定することにより、三次元網目
構造を得る。本発明方法においては、水溶性高分子は、
反応系組成の必須の成分であり、その粘度乃至分子量お
よび配合量は、生成する三次元構造体の性質に影響す
る。
【0012】反応系に水溶性高分子が存在しないか或い
はその存在量が少なすぎる場合には、シリカの破砕片が
形成されるのみで、球状シリカ粒子が相互に連結した三
次元網目構造体は形成されないに対し、水溶性高分子の
存在量が多すぎる場合には、水溶性高分子の膨潤体中に
シリカ微粒子が分散した塊状物が形成される。
【0013】アルコキシシランの低重合体の原料となる
モノマーとしては、テトラメトキシシラン、テトラエト
キシシランなどのアルコキシ基の炭素数1〜4個のもの
が例示される。低重合体としては、この様なモノマーが
4〜10個程度つながったものが好ましい。この様な低
重合体は、公知であり、一部市販されている。
【0014】水溶性高分子としては、水溶性で且つアル
コールとの相溶性を有するものであれば、特に限定され
ず、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリビ
ニルアルコールなどが例示される。水溶性高分子は、予
め水溶液とした形態で使用しても良い。
【0015】混合溶媒において使用されるアルコールと
しては、メチルアルコール、エチルアルコールなどの炭
素数1〜4の低級アルコールが挙げられる。混合溶媒中
での水とアルコールとの混合割合は、通常水40〜60
%とアルコール60〜40%程度であり、より好ましく
は水53〜57%とアルコール47〜43%程度であ
る。なお、水溶性高分子を水溶液の形態で使用する場合
には、溶媒としての水も、混合溶媒中の水含有量に含め
る。
【0016】低重合体と水溶性高分子との配合割合は、
前者100重量部に対し、通常後者10〜40重量部程
度、より好ましくは25〜35重量部程度である。水溶
性高分子の配合量が少なすぎる場合には、球状のシリカ
粒子が相互に連結した三次元網目構造体は形成されず、
シリカガラス中に球状の水溶性高分子が分散した状態に
あり、乾燥とともにガラスが小片に分かれて割れ、1〜
2mm程度の粒状物となる。水溶性高分子が過剰となる
場合には、水溶性高分子中にシリカ粒子が分散した本発
明とは全く異なる構造体が形成される。
【0017】混合溶媒中でのアルコキシシラン低重合体
と水溶性高分子とからなる固形分濃度は、通常40〜6
0重量%程度であり、より好ましくは42〜46重量%
程度である。
【0018】触媒として使用する酸としては、塩酸、硝
酸、酢酸などが例示される。酸触媒の使用量は、通常反
応系全成分の0.5〜2重量%程度であり、より好まし
くは1〜1.2重量%程度である。
【0019】本発明による連結シリカ粒子三次元構造体
は、アルコキシシラン低重合体と水溶性高分子とを均一
に溶解した混合溶媒に酸触媒を添加し、撹拌した後、1
0〜35日間程度静置熟成することにより、製造しう
る。
【0020】上記で得られた三次元構造体内に存在する
球状シリカ粒子表面のほとんどの部分(通常90%以
上)は、水溶性高分子により覆われている。水溶性高分
子は、必要ならば、構造体が固定安定化した後、水洗す
るか或いは加熱分解することにより、除去することもで
きる。
【0021】この工程で得られる連結したシリカ球状粒
子からなる三次元網目構造体は、請求項1の(1)〜
(8)に示した様な物性を備えている。
【0022】特に、本発明による三次元網目構造体の一
例とエポキシ樹脂硬化体の一例(ビスフェノールF型エ
ポキシ樹脂を無水ハイミック酸で硬化したもの)の常温
および高温における弾性率と高温における安定性を対比
すると、以下の通りである。
【0023】 本 発 明 品 エポキシ樹脂品 常 温 弾 性 率 1.5 GPa 3.0 GPa 高 温 弾 性 率 0.18GPa 0.019GPa (ガラス転移点以上) 高 温 安 定 性 300℃で安定 250℃で破壊 さらに、本発明による三次元網目構造体は、600〜9
00℃程度で熱処理することにより、ガラス化が進んで
高密度となり(焼き締まり)、その強度がさらに一層向
上する。
【0024】(b)連結シリカ粒子三次元網目構造体と
樹脂とからなる相互貫入型複合体の製造 次いで、上記で得た三次元網目構造体内に熱可塑性樹脂
または熱硬化性樹脂を形成しうるモノマーおよび/また
はプレポリマーを含浸させた後、硬化させるか、或いは
加熱により低粘度化する(例えば、40ポイズ以下とな
る)熱可塑性樹脂を含浸させた後、硬化させることによ
り、所望の複合体を得る。
【0025】含浸用樹脂材料としては特に限定されず、
上記の様な構造的な特徴を有する三次元構造体内に含浸
し、硬化し得る限り任意のものが使用できる。より具体
的には、例えば、樹脂硬化体を形成しうるモノマーおよ
び/またはプレポリマーとその硬化剤との混合物中に三
次元構造体を浸漬し、三次元構造体中に混合物を含浸さ
せ、十分に脱ガスを行った後、必要ならば加熱して、含
浸した混合物を硬化させることにより製造できる。或い
は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどの
熱可塑性樹脂を加熱し、低粘度化させた状態で、これに
三次元構造体を浸漬し、冷却し、硬化させても良い。
【0026】含浸用の樹脂形成成分として、熱硬化性樹
脂プレポリマーを使用する場合には、エポキシ樹脂、ポ
リイミド、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂な
どのプレポリマーが例示される。これらの熱硬化性樹脂
プレポリマーは、それぞれ公知の硬化剤と組合せて使用
する。また、熱可塑性樹脂のモノマーを使用する場合に
は、メチルメタクリル酸、酢酸ビニル、ジクロロジフェ
ニルスルホンなどが例示される。
【0027】本発明により得られるシリカ球状粒子三次
元網目構造体とこの構造体内部の連通孔に充填された樹
脂とからなる相互貫入型複合体には、連通孔が樹脂によ
り完全に充たされた複合体(完全充填複合体)および連
通孔表面が樹脂に覆われているものの、径の小さくなっ
た連通孔が少なくとも一部残存する複合体(不完全充填
複合体)とが包含される。
【0028】完全充填複合体は、シリカ球状粒子三次元
網目構造体を含浸用樹脂形成成分に浸漬した状態で樹脂
の硬化を行うことにより得られる。
【0029】これに対し、不完全充填複合体は、シリカ
球状粒子三次元網目構造体を含浸用樹脂形成成分に浸漬
した後、樹脂形成成分から取り出し、硬化させる。この
場合には、シリカ粒子表面の細孔(半径5〜10nm)
に侵入したり、或いは連通孔表面に付着乃至吸着された
以外の樹脂形成成分は、硬化前に三次元構造体外に抜け
出るので、硬化後には、連通孔の少なくとも一部が残存
する不完全充填複合体が形成される。不完全充填複合体
は、完全充填複合体に比して、シリカ成分(無機質)/
樹脂成分(有機質)の比が高い材料であり、軽量で、高
強度且つ高耐熱性の材料となる。不完全充填複合体にお
ける樹脂含有量(換言すれば、その物性)は、使用する
樹脂の種類、分子量、粘度などを調整することにより、
制御可能である。
【0030】
【発明の効果】まず、本発明による複合体の骨格相を形
成するシリカ粒子の構造体は、三次元網目状構造を有し
ているので、シリカ含量が非常に高いにも拘わらず、ガ
ラス転移点よりも低い温度域では、その剛性(弾性率)
は、無機物粒子を充填しないエポキシ樹脂よりも小さ
く、しかも可撓性があるので、それ自体を曲げたり、切
削加工、切り出し加工などの機械的加工に供することも
可能である。しかも、この三次元網目構造体を加熱処理
することにより、ガラス化が進んで、高密度で且つ高強
度の材料が得られる。
【0031】本発明による連結球状シリカ粒子骨格相と
樹脂相とからなる相互貫入型複合体は、両材料の絡み合
いで構成されているので、有機物が熱分解乃至焼失する
様な高温においても、その強度が保持される。
【0032】また、上記の熱処理を経た三次元構造体を
骨格とする複合体は、従来の無機粒子充填型の複合体と
異なり、樹脂のガラス転移点での弾性率の低下がかなり
少なく、さらに高温度域においては、弾性率がかえって
上昇するという極めて特異な性質を発揮する。
【0033】さらに、本発明による複合体は、シリカ粒
子骨格相が連通多孔体であるため、樹脂成分が分解しな
い温度域では、無機質の充填率が高いにも拘わらず、柔
軟性を示す。
【0034】本発明によるシリカ粒子と樹脂とからなる
複合体は、耐熱性材料、航空機材料、宇宙開発材料、自
動車用材料などとして有用である。
【0035】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明の特徴とすると
ころをより一層明確にする。
【0036】実施例1 (a)三次元網目構造体の製造 テトラメトキシシランの低重合体(三菱化成(株)製、
商標“MS51”)14部に25℃で特級エチルアルコ
ール10部および25%ポリアクリル酸水溶液(30℃
で8000〜12000cps)16部を混合した後、
36%塩酸0.5部を加えて10分間撹拌し、25℃で
静置して加水分解および重合させた。反応混合物は、約
2週間の放置後にブロック状に固化した。
【0037】得られた三次元網目状構造体の物性は、以
下のとおりである。
【0038】(1)三次元的に相互に結合した直径6〜
8μmシリカ球状粒子からなっている; (2)シリカ球状粒子は表面に半径5〜7nmの細孔を
有し、その比表面積は32〜350m2/gである; (3)シリカ粒子相互間の結合部の断面積は粒子の最大
断面積の1/3〜1/4の範囲にある; (4)シリカ粒子表面のほとんどの部分(約98%)
は、ポリアクリル酸により覆われている; (5)網状構造体における空孔率は約44%である; (6)シリカ含有率が65重量%である; (7)空気中600℃で5時間或いは800℃で3時間
保持しても、網目構造自体は変化しない。
【0039】(8)切削加工、切り出し加工などの機械
加工が可能であり、常温(25℃)における弾性率は
1.5〜2.0GPaであり、250〜300℃におけ
る弾性率は0.18〜0.25GPaである。
【0040】なお、上記で得られた三次元網目状構造体
の粒子構造のSEM写真を図1に示す。
【0041】(b)シリカ粒子骨格と樹脂とからなる複
合体の製造 上記の様にして得た三次元網状構造体をエポキシ樹脂
(商標“エピコート807”、シェル石油化学(株)
製)50部と硬化剤としての無水メチルハイミック酸5
4部に3級アミン硬化促進剤1mlを加えた混合液に浸
漬し、気泡がでなくなるまで50℃で3時間脱ガスを行
った後、100℃で2時間、次いで200℃で2時間硬
化させ、徐冷してシリカ−エポキシ樹脂からなる薄黄色
の相互貫入型複合体を得た。
【0042】得られた複合体の動的粘弾性および破壊温
度をシリカ微粒子(平均粒径1μm)を充填した公知の
エポキシ樹脂複合体(シリカ微粒子:エポキシ樹脂=5
3部:47部)の動的粘弾性および破壊温度と比較して
下記に示す。
【0043】 本 実 施 例 品 従 来 品 弾性率(25℃) 4.42GPa 6.51GPa 弾性率(250℃) 0.17GPa 0.036GPa 弾性率(370℃) 0.40GPa − 破 壊 温 度 400℃以上 約280℃ 本発明による相互貫入型複合体は、ガラス転移点で弾性
率が低下し、250℃程度まではその弾性率を保持する
が、その後昇温に伴って弾性率が増大し、370℃にお
いて最大弾性率を示し、この弾性率を400℃以上まで
保持するという特異な性質を備えていることが明らかで
ある。
【0044】実施例2 実施例1と同様にして得た三次元網状構造体をエポキシ
樹脂(商標“エピコート807”、シェル石油化学
(株)製)150部と硬化剤としての無水メチルハイミ
ック酸162部とにジメチルベンジルアミン1mlを加
えた混合液に浸漬し、60℃で3時間脱ガスを行って、
シリカ粒子の細孔中にエポキシ樹脂を十分に含浸させた
後、三次元網状構造体を混合液から取り出し、100℃
で2時間、次いで200℃で2時間硬化させ、徐冷し
た。
【0045】得られた薄褐色の複合体においては、骨格
である連結シリカ粒子三次元構造体の連通孔の表面がエ
ポキシ樹脂により覆われており、エポキシ樹脂層の厚さ
だけ連通孔が小さくなっていた。
【0046】実施例3 ノボラック型エポキシ樹脂(商標“エピコート15
2”、シェル石油化学(株)製)100部と硬化剤とし
てのジフェニルアミノスルフォン34部とからなる混合
液を60℃に加熱し、これに実施例1と同様にして得た
三次元網状構造体を浸漬し、60℃で約2時間脱気し、
ガスが出なくなった時点で混合液から取り出し、175
℃で18時間硬化して、エポキシ樹脂で覆われた連通孔
を持つダークブラウンの相互貫入型複合体を得た。
【0047】実施例4 実施例1と同様にして得た三次元網状構造体を800℃
で3時間熱処理して焼き締めた後、実施例1と同様にし
て、エポキシ樹脂−無水メチルハイミック酸混合液に浸
漬し、気泡がでなくなるまで50℃で約1時間脱ガスし
た後、混合液に浸漬したまま実施例1と同様にして、硬
化させた。
【0048】得られた薄黄色の複合体は、硬く、剛性が
大きくて、焼き締まったシリカ系三次元網状構造体の性
質が優勢であることが分かった。また、SEM写真から
は、エポキシ樹脂でシリカ粒子三次元構造体が充たさ
れ、空隙のない相互貫入型複合体であることが明らかと
なった。
【0049】実施例5 実施例1と同様にして得た三次元網状構造体を600℃
で5時間熱処理することにより、一次元的に約10%収
縮したが、三次元構造はそのまま維持されていた。この
熱処理三次元構造体と実施例1と同様にしてエポキシ樹
脂−無水メチルハイミック酸混合液に浸漬し、50℃で
約2時間脱ガスした後、混合液から取り出し、硬化させ
て、連絡シリカ粒子表面がエポキシ樹脂で覆われた薄黄
色のシリカ−エポキシ樹脂三次元複合体を得た。この複
合体にも、連通孔が残存していることが、SEM写真か
ら確認された。
【0050】実施例6 実施例1と同様にして得た三次元網状構造体を、脱ガス
装置付きの容器内で230℃で溶融させたポリアミド
(ナイロン6)に浸漬した後、放冷しつつ約30分間脱
ガスを行い、その後常圧で冷却して、シリカ−ポリアミ
ドからなる白薄黄色の相互貫入型の完全充填複合体を得
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られた三次元網目状構造体の粒子
構造を示すSEM写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 勝敏 大阪府池田市緑丘1丁目8番31号 工業技 術院大阪工業技術研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の構造的特性と力学的特性とを備えた
    シリカ球状粒子からなる三次元網状構造体とこの網状三
    次元構造体内部の空孔部内に存在する樹脂とによる相互
    貫入型複合体: (1)三次元的に相互に結合した直径6〜30μmシリ
    カ球状粒子からなっている; (2)シリカ球状粒子は表面に半径5〜10nmの細孔
    を有し、その比表面積は300〜400m2/gであ
    る; (3)シリカ粒子相互間の結合部はくびれており、結合
    部の断面積は粒子の最大断面積の1/2〜1/4の範囲
    にある; (4)シリカ粒子表面のほとんどの部分が水溶性高分子
    により覆われている; (5)網状構造体の内部には連通する空孔部が形成され
    ており、網状構造体における空孔率は40〜60%の範
    囲にある; (6)シリカ含有率は60〜80重量%の範囲にある; (7)空気中600℃で5時間或いは800℃で3時間
    保持しても、網目構造自体は変化しない; (8)構造体は機械的加工が可能であり、ガラス転移点
    以下の温度では1.5〜2.0GPaの弾性率を有し、
    ガラス転移点と300℃との間の温度では0.18〜
    0.25GPaの弾性率を有する。
  2. 【請求項2】アルコキシシランの低重合体と水溶性高分
    子とを含む水とアルコールとの混合溶媒中で、酸触媒の
    存在下にアルコキシシランの低重合体の加水分解反応と
    重合反応とを行わせて、下記の構造的特性と力学的特性
    とを備えたシリカ球状粒子からなる三次元網状構造体を
    形成させた後、その連通する空孔部に樹脂を含浸させる
    ことを特徴とする連結シリカ球状粒子からなる三次元網
    状構造体とこの網状三次元構造体内部の空孔部内に存在
    する樹脂とによる相互貫入型複合体の製造方法; (1)三次元的に相互に結合した直径6〜30μmシリ
    カ球状粒子からなっている; (2)シリカ球状粒子は表面に半径5〜10nmの細孔
    を有し、その比表面積は300〜400m2/gであ
    る; (3)シリカ粒子相互間の結合部はくびれており、結合
    部の断面積は粒子の最大断面積の1/2〜1/4の範囲
    にある; (4)シリカ粒子表面のほとんどの部分が水溶性高分子
    により覆われている; (5)網状構造体の内部には連通する空孔部が形成され
    ており、網状構造体における空孔率は40〜60%の範
    囲にある; (6)シリカ含有率は60〜80重量%の範囲にある; (7)空気中600℃で5時間或いは800℃で3時間
    保持しても、網目構造自体は変化しない; (8)構造体は機械的加工が可能であり、ガラス転移点
    以下の温度では1.5〜2.0GPaの弾性率を有し、
    ガラス転移点と300℃との間の温度では0.18〜
    0.25GPaの弾性率を有する。
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