JPH0632732A - 徐放性マイクロスフェア製剤の製造方法 - Google Patents

徐放性マイクロスフェア製剤の製造方法

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JPH0632732A
JPH0632732A JP4189181A JP18918192A JPH0632732A JP H0632732 A JPH0632732 A JP H0632732A JP 4189181 A JP4189181 A JP 4189181A JP 18918192 A JP18918192 A JP 18918192A JP H0632732 A JPH0632732 A JP H0632732A
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健彦 鈴木
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、薬物包含率が高く、初期バースト
の小さい水溶性薬物の徐放性マイクロスフェア製剤の製
造方法およびそれに用いる固溶体、ならびにその製造法
を提供するものである。 【構成】 水溶性薬物と水不溶性の生体内分解性ポリマ
ーとをそれらが共に溶解する1種または2種以上の溶媒
に溶解し、ついで溶媒を留去して、水溶性薬物が該生体
内分解性ポリマー中に分子状に分散されてなる固溶体と
し、これを、水に溶解せずかつ沸点が100℃以下の有
機溶媒に溶解し、得られる油相を、乳化補助剤を含む水
相に加えて撹拌してO/W型エマルションを調製し、つ
いで液中乾燥してマイクロスフェア製剤を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は生体内分解性ポリマーに
水溶性薬物を分子レベルで分散させた固溶体およびその
製法、ならびにこの固溶体を用いる徐放性マイクロスフ
ェア製剤の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】生理活性物質の効力を長期間持続させる
剤形として、生体内分解性ポリマーを用いたマイクロス
フェアが極めて有効であり、その製造方法が種々提唱さ
れている。例えば特開昭57−11851号公報には、
コアセルベーション剤を用いた相分離法によるカプセル
型のマイクロスフェアが開示されている。しかし、この
製造方法には、製造の過程で粒子同士の凝集が起こり易
い、分散媒として鉱物油や植物油を使用するため取出し
および洗浄において困難が伴う、しばしば内部に中空を
有する構造になってしまうため一定品質のものが得られ
ない等の問題点がある。これらを克服する方法として、
エマルションを液中乾燥してマイクロスフェアを得る技
術が知られており、特開昭60−100516、特開昭
62−201816にW/O/W型、特開平1−216
918にO/O型、特開昭63−91325および特開
平4−46115にO/W型の技術が開示されている。
【0003】一般に、長期持続性を必要とする生理活性
物質は、水溶性の性質を有する薬物である場合が圧倒的
に多い。そのためW/O型やO/O型より液中乾燥する
方法は生理活性物質を効率よくマイクロスフェア中に取
り込むには有利な方法であるが、マイクロスフェアから
溶媒を完全に取り除くことが困難であり、また作業の安
全性や環境上、多くの問題を残している。またW/O型
やO/O型では外側のO相として鉱物油、植物油を使用
するため取出しおよび洗浄において困難が伴い、作業性
に欠けるうえ、残存油が大きな問題となる。
【0004】W/O/W法およびO/W法は外相が水相
であるため、W/O型やO/O法に付随する問題はない
が、しばしば油相の薬物が水相中に溶出し、マイクロス
フェアの薬物の取り込み率が著しく小さくなるといった
問題があった。この欠点を克服する方法として特開昭6
0−100516、特開昭62−201816には内水
相中にゼラチンを溶解せしめたW/O/W法が開示され
ている。しかしながら、W/O/W型では乳化を2回に
わたって実施する必要があり、操作が繁雑であり、かつ
一定品質の製剤を得るためには製造条件を多岐にわたり
厳密にコントロールする必要がある。加えてこの方法で
は、有効に適用できる薬物には限りがある。また、この
方法では通常薬物保持相の添加物としてゼラチン、アル
ギニン、アラビアゴム等を添加するので、これら添加物
の無菌性および脱パイロジェン化等が問題となる。従っ
て、作業性および安全性の観点からは、O/W型のエマ
ルション系で乳化し、水溶性薬物の取り込み率を低下さ
せない工夫が望まれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、公知の
O/W型エマルションよりマイクロスフェアを製造する
方法、すなわち医薬品粉末を油相に分散させてO/Wエ
マルションとし液中乾燥を行う方法または油相に一部親
水性有機溶媒を加えて水溶性薬物を溶解してO/Wエマ
ルションとし液中乾燥を行う方法は、溶出試験の初期に
多くの薬物が漏出するバースト現象が生じることや、適
用できる医薬品および生体内分解性ポリマーの種類が限
られる等の欠点があった。油相に薬物結晶を分散させて
製する前者の方法においては、水溶性薬物がポリマー溶
液相であるO相に溶解せず、薬物の結晶粒子として不均
一にO相に存在しているため、乳化時に外水相に漏出し
て取り込み率は低下し、かつその際固化しつつあるマイ
クロスフェア表面に小孔をあけるので初期バーストを起
こし易いものと推定される。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問
題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、マイクロスフ
ェアを製するための乳化に先立ち、先ず生体内分解性ポ
リマーおよび水溶性薬物を共に溶解する溶媒に両者を溶
解した後、溶媒を留去すると水溶性薬物が生体内分解性
ポリマー中に分子状態で分散する固溶体が出来ることを
見い出し、さらに得られた固溶体を塩化メチレン等の本
来該医薬品が溶解しない有機溶媒に溶解させると澄明に
溶解するので、これを水相に添加し、乳化せしめてO/
W型のエマルションを調製し、ついで液中乾燥させるこ
とにより、薬物の取り込み率が高く、かつ初期バースト
を伴わない、長期徐放性マイクロスフェアを効率よく得
られることを見い出した。
【0007】本方法は、薬物が甲状腺刺激ホルモン放出
ホルモン(TRH)、黄体ホルモン放出ホルモン(LH−
RH)、カルシトニン、1−メチル−4,5−ジヒドロオ
ロチル−ヒスチジル−プロリンアミド、ニコチン酸アミ
ド等の塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジク
ロロエタンなどの難水溶性の有機溶媒群に溶解しない水
溶性薬物に対して適用可能である。これらの薬物は水以
外にも、アセトニトリル、エタノール、メタノール、1
−または2−プロパノール、1−またはt−ブタノール
などに溶解する性質を持つことが多い。従って、これら
溶媒のうち生体内分解性ポリマーを溶解する性質のもの
はそのまま本法を適用して固溶体を製造することがで
き、また生体内分解性ポリマーがこれら単一の溶媒に溶
解しない場合には、これらの溶媒と難水溶性有機溶媒を
混和して、薬物と生体内分解性ポリマーを溶解して用い
ても有効に固溶体を生成できる。
【0008】上記のとおり、本発明のマイクロスフェア
製剤に含有される薬物としては、塩化メチレン、クロロ
ホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなどの難水溶性の
有機溶媒群に溶解しない水溶性薬物であればいずれも使
用できる。かかる薬物としては、例えば、抗癌剤、抗生
物質、解熱剤、鎮痛剤、免疫賦活剤、免疫抑制剤、抗炎
症剤、抗癲癇剤、脳機能改善剤、抗ヒスタミン剤、降圧
利尿剤、糖尿病治療剤、筋弛緩剤、抗潰瘍剤、抗うつ
剤、抗アレルギー剤、強心剤、不整脈治療剤、血管拡張
剤、抗凝血剤、麻薬拮抗剤、止血剤、抗結核剤、ホルモ
ン剤等が挙げられる。
【0009】マイクロスフェアの基剤として使用される
生体内分解性ポリマーとしては生理活性を有さない、生
体内で分解、消失するポリマーであれば何でもよいが、
塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエ
タンなど難水溶性の有機溶媒群と、アセトニトリル、ア
セトンなどの易水溶性の有機溶媒群いずれにも溶解する
ポリマーを使用することが有効である。例えば、乳酸、
グリコール酸およびヒドロキシ酪酸などの重合体並びに
これらの共重合体であるいはその混合物が挙げられる。
特に分子量5,000〜500,000の乳酸ならびに乳
酸−グリコール酸共重合体が好ましい。これらのポリマ
ーは1種類だけではなく、2種類以上を適宜組み合わせ
て用いることもできる。
【0010】生体内分解性ポリマーに対する水溶性薬物
の含有量は本発明の製造法では任意に選択でき、薬物の
種類、目的とする薬理効果および放出時間によって異な
るが、約0.1〜30%(W/W)、特に約1〜20%(W
/W)が好ましい。
【0011】本発明の固溶体を製造する際に用いる溶媒
としては水およびあらゆる有機溶媒のうちの1種または
2種以上が用いられ、最適の溶媒は生体内分解性ポリマ
ーの種類および水溶性薬物の種類によって異なるが、生
体内分解性ポリマーおよび水溶性薬物を同時に溶解せし
め且つ乾燥時に固溶体を形成させることが必要である。
生体内分解性ポリマーとしてポリ乳酸ならびに乳酸−グ
リコール酸共重合体を用いる場合、ポリマーの溶解に用
いる溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、四塩
化炭素、ジクロロエタンなどの難水溶性の有機溶媒群あ
るいはアセトニトリル、アセトンなどの易水溶性の有機
溶媒群がいずれも有効である。しかしながら、上述した
ように、所望の固溶体を得るには水溶性医薬品および生
体内分解性ポリマーが共にかかる溶媒に溶解する必要が
ある。したがって、両者が共に溶解する溶媒を使用する
場合は、これらの溶媒を単独で用いることによって容易
に固溶体をつくることができるが、生体内分解性ポリマ
ーの溶解に上記難水溶性の有機溶媒群を用いた場合、し
ばしば水溶性薬物の溶解が困難となる。かかる場合に
は、アセトニトリル、エタノール、メタノール、1−ま
たは2−プロパノール、1−またはt−ブタノールなど
の易水溶性でありかつ難水溶性の有機溶媒に相溶する性
質を持つ有機溶媒群を添加することが、水溶性薬物およ
び生体内分解性ポリマーを溶解させて溶媒を留去し固溶
体を作る上で有効である。このように2種類以上の溶媒
を組み合わせて使用する場合には、沸点が近いものを組
み合わせて用いることが好ましい。またそれらの混合割
合は溶解すべき水溶性薬物および生体内分解性ポリマー
の種類および量によって左右されるが、いずれにしても
両者が共に溶解するように適宜調節される。
【0012】なお固溶体を製するに当たり、水溶性医薬
品と生体内分解性ポリマーに加えて、合成高分子、界面
活性剤、糖、アミノ酸、ペプチド、油脂等の添加は、水
溶性医薬品と生体内分解性ポリマーの溶解性の向上やマ
イクロスフェアの製造性および溶出調整を図るために有
効な手段である。
【0013】これらの溶媒を留去することにより固溶体
が得られるが、溶媒留去の方法としては密閉系中で減圧
下に加温する方法および気中乾燥法などが適用される。
この場合、地球環境保全のために全有機溶媒を回収する
装置を付属させることが好ましい。製造された固溶体を
O/W型エマルションの油相とするために使用する有機
溶媒は、難水溶性かつ100℃以下の沸点の有機溶媒で
あればなんでもよく、例えば、塩化メチレン、クロロホ
ルム、四塩化炭素、ジクロロエタンなどが挙げられる。
特に、生体内分解性ポリマーとしてポリ乳酸ならびに乳
酸−グリコール酸共重合体を用いる場合には、塩化メチ
レンが望ましい。
【0014】このようにして得られた油相を水相中に加
え、乳化操作を行い、O/W型のエマルションとする。
ここで用いられる水相には乳化の効率を上げるために凝
集防止剤を添加する。凝集防止剤としては一般に用いら
れているものであれば何でも良いが、例えば、ポリビニ
ールアルコール、ポリエチレングリコールなどの多価ア
ルコール類、界面活性剤、キトサンなどの多糖類、ゼラ
チン、アラビアゴム等が挙げられる。この凝集防止剤の
濃度は0.01〜10%(W/V)、特に0.1〜2%(W
/V)が好ましい。乳化操作は、プロペラ式撹拌機、タ
ービン型の乳化機、超音波分散装置または高圧乳化機な
どにより常法にしたがって行う。
【0015】こうして得られたエマルションを液中乾燥
し、マイクロスフェアを製する。液中乾燥は加熱法、減
圧法のどちらで行ってもよいが、いずれの場合でも密閉
系中で行い、更には有機溶媒を回収することが好まし
い。加熱法における昇温速度および撹拌速度と強度、な
らびに減圧法における減圧速度はマイクロスフェアの収
率および品質に影響するので、適切な条件設定を行う必
要がある。得られたマイクロスフェアは遠心分離あるい
はろ過等の操作により分取し、蒸留水により洗浄した
後、風乾あるいは凍結乾燥等により水を除去することに
よって、本発明のマイクロスフェアが得られる。以上の
方法で得られるマイクロスフェアの平均粒子径は約1〜
100μmである。
【0016】
【実施例】次に実施例をあげて本発明を更に具体的に説
明するが、本発明はもとよりこれらの実施例のみに限定
されるものではない。 実施例1 共重合体比50:50で分子量約20,000の乳酸−グ
リコール酸共重合体(以下PLGA5020と略す)90
0mgと薬物としてTRH誘導体である1−メチル−4,
5−ジヒドロオロチル−ヒスチジル−プロリンアミド1
00mgをエタノール1mlと塩化メチレン2mlの混液に溶
解せしめた後、スピードバックコンセントレーター(サ
バト製)により有機溶媒を留去して固溶体を形成させた
(固溶体1)。これを1.5mlの塩化メチレンに溶解し、
15℃において、0.5%ポリビニルアルコール水溶液
400mlに添加し、ポリトロンホモジナイザー(キネマ
チカ製)にて回転数10,000rpmで2分間乳化し、O
/W型エマルションとした。その後、四枚羽付きパドル
にて400rpmで撹拌しながら、3時間かけて15℃か
ら30℃まで昇温する事により液中乾燥を行い、マイク
ロスフェアを得た。マイクロスフェアは遠心分離により
集め、蒸留水で3回洗浄した後、凍結乾燥を行って水分
を除去した。得られたマイクロスフェアの平均粒子径は
約50μmでそのほとんどは100μm以下であった(製
剤1)。
【0017】実施例2 PLGA5020 900mgと1−メチル−4,5−ジ
ヒドロオロチル−ヒスチジル−プロリンアミド100mg
をアセトニトリル5mlとエタノール1mlの混液に溶解せ
しめた後、スピードバックコンセントレーターにより有
機溶媒を留去して固溶体を形成させた(固溶体2)。これ
を1.5mlのクロロホルムに溶解し、15℃において、
0.5%ポリビニルアルコール水溶液400mlに添加
し、以下実施例1と同様の操作でマイクロスフェアを得
た(製剤2)。
【0018】実施例3 PLGA5020 900mgとTRH100mgをアセト
ニトリル5mlとエタノール1mlの混液に溶解せしめた
後、スピードバックコンセントレーターにより有機溶媒
を留去して固溶体を形成させた(固溶体3)。これを1.
5mlの塩化メチレンに溶解し、15℃において、0.5
%ポリビニルアルコール水溶液400mlに添加し、以下
実施例1と同様の操作でマイクロスフェアを得た(製剤
3)。
【0019】実施例4 PLGA5020 900mgとLH−RH50mgをアセ
トニトリル5mlとエタノール3mlの混液に加温をしなが
ら溶解せしめた後、スピードバックコンセントレーター
により有機溶媒を留去して固溶体を形成させた(固溶体
4)。これを1.5mlの塩化メチレンに溶解し、以下実施
例1と同様の操作でマイクロスフェアを得た(製剤4)。
【0020】実施例5 PLGA5020 900mgと8−ヒドロキシ−5−
[(1R)−1−ヒドロキシ−2−[N−((1R)−2−(p
−メトキシフェニル)−1−メチルエチル)アミノ]エチ
ル]カルボスチリル・塩酸塩100mgをアセトニトリル
5ml、エタノール1mlおよび水0.5mlの混液に溶解せ
しめた後、スピードバックコンセントレーターにより有
機溶媒を留去して固溶体を形成させた(固溶体5)。これ
を1.5mlの塩化メチレンに溶解し、以下実施例1と同
様の操作でマイクロスフェアを得た(製剤5)。
【0021】実施例6 PLGA5020 700mg、TRH100mgおよびポ
リビニルピロリドン200mgをアセトニトリル100ml
に溶解した後、気中懸濁法によりアセトニトリルを留去
し固溶体を得た(固溶体6)。これを1.5mlのクロロホ
ルムに溶解し、以下実施例1と同様の操作でマイクロス
フェアを得た(製剤6)。
【0022】実施例7 PLGA5020 700mg、TRH100mgおよびゼ
ラチン200mgをアセトニトリル100mlに溶解し、こ
れにゼラチン200mgを水1mlに溶解したものを加
えよく混和した後、気中懸濁法によりアセトニトリルを
留去し固溶体を得た(固溶体7)。これを1.5mlのクロ
ロホルムに溶解し、以下実施例1と同様の操作でマイク
ロスフェアを得た(製剤7)。
【0023】実施例8 PLGA5020 700mg、TRH100mgおよびポ
リエチレングリコール200mgをアセトニトリル100
mlに溶解した後、気中懸濁法によりアセトニトリルを留
去し固溶体を得た(固溶体8)。これを1.5mlのクロロ
ホルムに溶解し、以下実施例1と同様の操作でマイクロ
スフェアを得た(製剤8)。
【0024】実施例9 PLGA5020 700mg、TRH100mgおよびポ
リオキシエチレン硬化ヒマシ油(日光ケミカルズ製 H
CO−60)200mgをアセトニトリル100mlに溶解
した後、気中懸濁法によりアセトニトリルを留去し固溶
体を得た(固溶体9)。これを1.5mlのクロロホルムに
溶解し、以下実施例1と同様の操作でマイクロスフェア
を得た(製剤9)。
【0025】実施例10 PLGA5020 800mgと1−メチル−4,5−ジ
ヒドロオロチル−ヒスチジル−プロリンアミド200mg
を塩化メチレン2mlとエタノール1mlの混液に溶解せし
めた後、スピードバックコンセントレーターにより有機
溶媒を留去して固溶体を形成させた(固溶体10)。これ
を1.5mlの塩化メチレンに溶解し、15℃において、
0.5%ポリビニルアルコール水溶液400mlに添加
し、以下実施例1と同様の操作でマイクロスフェアを得
た(製剤10)。
【0026】対照例1 めのう乳鉢で粉砕した1−メチル−4,5−ジヒドロオ
ロチル−ヒスチジル−プロリンアミド粉末100mgを、
PLGA5020 900mgを1.5mlの塩化メチレン
に溶解したポリマー溶液に添加し、なるべく均一に懸濁
させるために超音波を照射して分散させた。これを15
℃において、0.5%ポリビニルアルコール水溶液40
0mlに添加し、以下実施例1と同様な操作を行ってマイ
クロスフェアを得た(製剤1の対照製剤)。
【0027】対照例2 めのう乳鉢で粉砕した1−メチル−4,5−ジヒドロオ
ロチル−ヒスチジル−プロリンアミド粉末100mgを、
PLGA5020 900mgを1.5mlのクロロホルム
に溶解したポリマー溶液に添加し、なるべく均一に懸濁
させるために超音波を照射して分散させた。以下対照例
1と同様な操作を行ってマイクロスフェアを得た(製剤
2の対照製剤)。
【0028】対照例3 めのう乳鉢で粉砕したTRHの粉末100mgを、PLG
A5020 900mgを1.5mlの塩化メチレンに溶解
したポリマー溶液に添加し、なるべく均一に懸濁させる
ために超音波を照射して分散させた。以下対照例1と同
様な操作を行ってマイクロスフェアを得た(製剤3の対
照製剤)。
【0029】対照例4 めのう乳鉢で粉砕したLH−RHの粉末50mgを、PL
GA5020 900mgを1.5mlの塩化メチレンに溶
解したポリマー溶液に添加し、なるべく均一に懸濁させ
るために超音波を照射して分散させた。以下対照例1と
同様な操作を行ってマイクロスフェアを得た(製剤4の
対照製剤)。
【0030】対照例5 めのう乳鉢で粉砕した8−ヒドロキシ−5−[(1R)−
1−ヒドロキシ−2−[N−((1R)−2−(p−メトキシ
フェニル)−1−メチルエチル)アミノ]エチル]カルボ
スチリル・塩酸塩100mgの粉末を、PLGA5020
900mgを1.5mlの塩化メチレンに溶解したポリマ
ー溶液に添加し、なるべく均一に懸濁させるために超音
波を照射して分散させた。以下対照例1と同様な操作を
行ってマイクロスフェアを得た(製剤5の対照製剤)。
【0031】対照例6 めのう乳鉢で粉砕した1−メチル−4,5−ジヒドロオ
ロチル−ヒスチジル−プロリンアミド粉末200mgを、
PLGA5020 800mgを1.5mlの塩化メチレン
に溶解したポリマー溶液に添加し、なるべく均一に懸濁
させるために超音波を照射して分散させた。これを15
℃において、0.5%ポリビニルアルコール水溶液40
0mlに添加し、以下実施例1と同様な操作を行ってマイ
クロスフェアを得た(製剤10の対照製剤)。
【0032】対照例7〜9 PLGA5020 800mgと1−メチル−4,5−ジ
ヒドロオロチル−ヒスチジル−プロリンアミド粉末20
0mgを塩化メチレンとエタノールの混液(混合比:1.3
5ml/0.15ml、1.2ml/0.3ml、1.05ml/0.
45ml)に溶解し、15℃において、0.5%ポリビニル
アルコール水溶液400mlに添加し、以下実施例1と同
様な操作を行ってマイクロスフェアを得た(製剤10の
対照製剤)。
【0033】実験例1 実施例1において作製した固溶体について、粉末X線回
析の測定およびDSC分析を行った。図1に粉末X線回
析パターン図を示す。図1中、Aは本発明の固溶体のパ
ターン、Bは乳酸−グリコール酸コポリマーおよび1−
メチル−4,5−ジヒドロオロチル−ヒスチジル−プロ
リンアミドの物理混合物のパターン、Cは乳酸−グリコ
ール酸コポリマー粉末のパターン、Dは1−メチル−
4,5−ジヒドロオロチル−ヒスチジル−プロリンアミ
ド原末のパターンを示す。図1より、固溶体1の薬物由
来のピークが消失していた。また、DSCより薬物融点
付近のピークが消失しており、固溶体1は無晶化してい
ることが示された。また、実施例1〜4において作製し
た固溶体1〜4を、塩化メチレン(実施例2はクロロホ
ルム)に溶解すると、いずれも澄明となり、少なくとも
1時間以内では薬物は析出してこなかった。これらにつ
いては薬物と生体内分解性ポリマーが固溶体を形成した
ことによる効果と考えられる。実施例5において、作製
した固溶体を、油相とするために塩化メチレンに溶解す
ると澄明にはならなかったが、液は淡青色を呈し、サブ
ミクロンの薬物粒子が生成していることが考えられた。
これは明らかに元の薬物粒子の大きさに比べ、小さい物
であった。製剤1〜5およびそれらの対照製剤の薬物包
含率を高速液体クロマトグラフ法あるいはUVスペクト
ル法にて測定した。結果を表1に示した。
【0034】
【表1】 いずれの製剤も、対照製剤に比べ薬物包含率は高かっ
た。特に、固溶体が形成されたと考えられる製剤1〜4
において顕著な差が認められた。
【0035】次に溶出試験として、製剤2〜4の各マイ
クロスフェア10mgを試験管に取り、等張でpH7.4の
りん酸緩衝液10mlを加え60time/minの振盪をか
け、任意の時間をおいて取出し、活性成分の溶出率を測
定した。結果を図2〜4に示す。いずれの製剤も、対照
製剤に比べ、初期バースト(初期における急激な薬物の
放出)が小さかった。
【0036】実験例2 実施例10と対照例6〜9におけるマイクロスフェアの
薬物包含率と、溶出試験における1日後の溶出率(初期
バースト)を表2に示した。
【表2】 表2 薬物包含率と初期バースト 薬物包含率 初期バースト 製 法 O相の外観 実施例10 78.0% 8.2% 本法(固溶体法) 澄明 対照例 6 57.1% 10.4% 懸濁法 懸濁 対照例 7 67.7% 13.7% エタノール添加法(10%) 懸濁 対照例 8 57.9% 10.1% 〃 (20%) 澄明 対照例 9 50.8% 25.9% 〃 (30%) 澄明 これにより、O相にエタノール等を適当量添加する方法
でも薬物取り込み率を上げることが認められるが、本法
がそれ以上に優れた方法であることが実証された。
【0037】
【発明の効果】本発明の方法によれば徐放性マイクロス
フェア製剤は、水溶性薬物を分子レベルで均質に生体内
分解性ポリマー中に分散させた固溶体を形成した後、こ
の固溶体を油相に溶解し、この油相を水相に分散してO
/W型エマルションを調製し、ついで液中乾燥を行って
得られるものであって、このような水溶性薬物を予めポ
リマー中に分散させた固溶体とし、これをO/W型エマ
ルションとしたのち液中乾燥して調製されたマイクロス
フェア製剤は、薬物包含率が高く、初期バーストが小さ
い特徴を有し、水溶性薬物の持続放出製剤として優れて
いる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られた本発明の固溶体および各
原料の粉末X線パターンを示す。
【図2】 実施例2で得られた本発明の製剤2について
の活性成分の溶出率を示すグラフである。
【図3】 実施例3で得られた本発明の製剤3について
の活性成分の溶出率を示すグラフである。
【図4】 実施例4で得られた本発明の製剤4について
の活性成分の溶出率を示すグラフである。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水溶性薬物を水不溶性の生体内分解性ポ
    リマー中に分子状に分散させてなる固溶体。
  2. 【請求項2】 生体内分解性ポリマーと水溶性薬物を、
    生体内分解性ポリマーおよび水溶性薬物が共に溶解する
    1種または2種以上の溶媒に溶解し、ついで溶媒を留去
    することを特徴とする請求項1に記載の固溶体の製法。
  3. 【請求項3】 さらに溶解補助剤、乳化補助剤および/
    または溶解調節剤を分散させた請求項1に記載の固溶
    体。
  4. 【請求項4】 水溶性薬物と生体内分解性ポリマーを溶
    解せしめた請求項2に記載の溶媒の相に、溶解補助剤、
    乳化補助剤および/または溶解調節剤を溶解または均一
    に分散し、溶媒を留去することを特徴とする請求項3に
    記載の固溶体の製法。
  5. 【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の固溶体
    を、水に溶解せずかつ沸点が100℃以下の有機溶媒中
    に溶解させ、得られる溶液(油相)を、乳化補助剤を含む
    水相に加え撹拌してO/W型エマルションを調製し、つ
    いで液中乾燥させることを特徴とする徐放性マイクロス
    フェア製剤の製法。
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