JPH06104870B2 - 非晶質薄膜の製造方法 - Google Patents

非晶質薄膜の製造方法

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JPH06104870B2 JP56125800A JP12580081A JPH06104870B2 JP H06104870 B2 JPH06104870 B2 JP H06104870B2 JP 56125800 A JP56125800 A JP 56125800A JP 12580081 A JP12580081 A JP 12580081A JP H06104870 B2 JPH06104870 B2 JP H06104870B2
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Description

【発明の詳細な説明】 本発明はスパッタ蒸着法により作製した高い熱安定性を
示すZr、Ti、Hf等の金属元素を元とした本質的に遷移金
属からなる合金組成で磁歪が小さい非晶質薄膜に関する
ものである。
ある種の金属あるいは合金をスパッタ蒸着することによ
り、原子構造で長範囲規則度のない非晶質構造を得るこ
とができる。この方法により得られた従来の非晶質薄膜
は、主にB、C、Si等の非金属元素を基とする金属−非
金属系合金か、磁気バブルメモリ用磁性材料や光磁気磁
性材料に有用な希土類元素を基とする合金系よりなって
いる。しかし、これらの非晶質合金系は機械的、磁気
的、電気的特性の劣化に影響を与える熱安定性に関し未
だ実用上十分とはいえない。さらにB、C、Si等の非金
属元素を基とする金属−非金属系合金はスパッタ蒸着時
に導入される磁気異方性のため、例えば(Fe0.9Cr0.1
76Si8B16非晶質合金スパツタ膜は、約10Oe(エルステッ
ド)以上の高い保磁力と、100以下の低い透磁率を示し
実用上問題がある。
本発明は、上述の問題点を解消するため、ガラス化元素
として従来の非晶質合金系の構成元素である非金属元素
および希土類元素の少なくとも一部をTi、Zr、Hf、Y等
の金属元素で置き換え、他は主として遷移金属元素を主
成分とする合金となし、スパッタ蒸着法により非晶質合
金薄膜の作製を容易にすると共に熱安定性の改善をはか
ったものであある。さらに、強磁性元素Fe、Ni、Coで磁
歪、飽和磁化の値を調整し、V、Cr、Mn、Nb、Mo、W、
希土類を少量添加して結晶化温度、硬度を向上させるこ
とにより磁歪が小さくて、しかも熱安定性、耐摩耗性の
改善をはかったものである。
本発明は、非晶質薄膜の組成が、一般式 M で示され、MはFe、Ni、Co元素よりなる群から選択され
た少なくとも1種の元素、Tは、Mo、Cr、W、V、Nb、
Ta、Mn、Pd、Pt、Au、Ag、Ru、Os、Rh、Ir、La、Nd、S
m、Eu、Gd、Tb、Dy、Er、Yb、Lu元素よりなる群から選
択された少なくとも1種の元素、Xは、Zr、Ti、Y、Hf
元素よりなる群から選択された少なくとも1種の元素よ
りなり、かつa+b+c=100なる条件下で、0≦b≦9
5、30≦a+b≦95、5≦c≦70を満足する優位的に非
晶質である非晶質薄膜をスパッタ蒸着法によって形成す
る非晶質薄膜の製造方法である。
そして、上記の非晶質薄膜の製造方法において、非晶質
薄膜の組成を示す一般式Mで示される組成の
cが、5≦c≦50であることがより好ましい。
さらに、上記の非晶質薄膜の製造方法において、非晶質
薄膜の組成を示す一般式Mで示される組成の
bおよびcが、1≦b≦20および5≦c≦20であること
が最も好ましい。
本発明の非晶質薄膜の製造方法において、非晶質薄膜の
組成を示す一般式MにおけるT元素の濃度b
が、b>95、X元素の濃度cが、c<5、c>70となる
と、スパッタ蒸着による非晶質薄膜の形成が難しくなる
ので好ましくなく、また、スパッタ蒸着により、より優
位的に非晶質薄膜が得られるX元素の濃度cは、5≦c
≦50の範囲であり、c<5、c>50となると非晶質薄膜
の形成がやや困難となる傾向にある。さらに、磁気特性
に優れた非晶質磁性薄膜が得られるT元素の濃度bおよ
びX元素の濃度cは、それぞれ1≦b≦20および5≦c
≦20の範囲であり、b>20およびc>20の濃度となると
飽和磁化が減少してしまうので好ましくない。
以下に本発明の実施例を挙げ、さらに詳細に説明する。
〈実施例1〉 合金組成がCo79Ti13Zr8、Co84Zr16、Fe90Zr10、Co81Mo7
Sm2Zr10、(Co0.3Fe0.790Ti2Zr8、Fe80Ni10Zr10の母
合金をアーク溶解により作製し、直径50mm、厚さ約1mm
のターゲットを作製した。薄膜作製は二極高周波スパッ
タ装置を用い、約1〜5mTorrのアルゴン圧力下で、ター
ゲットと基板の間隔を5〜10cmとして、厚さ数μm以下
の薄膜を作製した。得られた薄膜のX線ディフラクトメ
ーターによる回折曲線はすべて、なだらかなメインピー
クと二三のサブピークからなる非晶質構造特有の回折曲
線を示し、ほぼ100%の非晶質薄膜が得られていること
が確認された。一方、これらの合金を、従来の液体急冷
法を用いて非晶質合金を作製した場合、得られた試料の
X線回折曲線には、結晶質に特有の鋭い回折線が20〜80
%の割合で見られ、完全な非晶質合金とならず結晶が混
入する場合が多かった。
〈実施例2〉 組成がC85.5Mo5Zr9.5、Co82Mo8.5Zr9.5、Co75.5Mo15Zr
9.5になるように、直径50mmのコバルト円板上にMo、Zr
の小塊を均一に配置した複合ターゲットを用い、実施例
1の条件で同時スパッタ蒸着することにより非晶質薄膜
を作製した。得られた非晶質薄膜の結晶化温度(四端子
法電気抵抗測定により決定)は約500℃と高く、100℃、
100時間の熱処理後でも電気抵抗値はほとんど変らず、
高い熱安定性を示した。また、飽和磁化はMo量が減少
し、Co量が増加すると共に、約60emu/gから100emu/gと
変化し、従来の磁気ヘッド材料に用いられているMnZnフ
ェライトの約2倍の高い値が得られることが分かった。
(なお、飽和磁化が約50emu/g以上の場合には、従来の
フェライトより優れた磁気特性が得られ、このような非
晶質薄膜は、記録ヘッド用磁気コア材に好適である。一
方、これより飽和磁化の低い非晶質薄膜は、スパッタ蒸
着時に導入される磁気異方性が小さいために透磁率が高
く、このような非晶質薄膜は再生ヘッド用磁気コア材に
用いることができる。)これらの膜の保磁力は約1〜5O
eであった。また、磁歪は−8×10-7(半導体歪ゲージ
を用いて測定)と低い値を示した。磁気コア材として、
磁歪の絶対値は好ましくは1×10-6以下、少なくとも3
×10-6以下とすることが必要である。これらの膜を結晶
化温度以上に加熱して得られた結晶質薄膜の磁歪は、い
ずれも−5×10-6よりも大きい負の値を示し、非晶質薄
膜とすることにより磁歪の絶対値を小さくできることが
分かった。
一方、Co85.5Mo5Zr9.5の非晶質薄膜とほぼ同等の飽和磁
化を有する、従来の金属−非金属系非晶質合金である
(Fe0.9Cr0.176Si8B16非晶質合金スパッタ膜は、約10
Oe以上の高い保磁力と、100以下の低い透磁率を示し、
磁気ヘッドに好適な1000以上の値、また少なくとも必要
な300以上の値には満たなかった。
〈実施例3〉 合金組成が(Co0.3Fe0.791Zr9、(Fe0.7Ni0.390Zr
10、Co72Ni16Fe2Zr10、Co85Cr4Ru2Zr9、Co86W5Zr9の直
径50mmの焼結体をターゲットとして用い、実施例1と同
様な製造条件でスパッタ蒸着を行った結果、いずれも非
晶質薄膜を安定して作製することができた。
(Co0.3Fe0.791Zr9、(Fe0.7Ni0.390Zr10の非晶質
薄膜の飽和磁化は、それぞれ160emu/g、120emu/gと高い
値を示した。一方、Co72Ni16Fe2Zr10非晶質薄膜では、
磁歪λがほぼ零(0)、飽和磁化σが110emu/g、保
磁力が0.4Oe、透磁率が1500であり、Co85Cr4Ru2Zr9非晶
質薄膜では、磁歪λがほぼ零(0)、σが96emu/
g、保磁力が0.3Oe、透磁率が2100であり、いずれも高い
飽和磁化と低保磁力、高透磁率をもつ磁歪零(0)材が
得られた。
一方、これらの合金を、従来の液体急冷法を用いて非晶
質合金を作製した結果、20%から50%の割合で完全な非
晶質合金とならず、結晶が混入する場合が見られた。結
晶が混入したCo72Ni16Fe2Zr10合金およびCo85Cr4Ru2Zr9
合金の磁歪定数は零(0)とはならず、それぞれ−8×
10-6および−5×10-6と負の大きな値となった。
〈実施例4〉 組成がCo80Mo9Zr11の母合金をアーク溶解により作製
し、直径50mm、厚さ約1mmのターゲットを作製した。こ
のターゲットを用い、約3mTorrのAr圧力下で、基板面に
平行に50Oe以上の磁場を印加し、基板を回転しながら、
スパッタ蒸着することにより非晶質薄膜を作製した。得
られた非晶質薄膜の磁気特性は膜によってバラツキはあ
るが、その保磁力は0.1Oe以下、透磁率は6100以上の非
常に優れた磁気特性が得られた。このことは、この作製
法により誘導磁気異方性が小さくなったことを示すもの
と思われる。また、この非晶質薄膜の磁歪λは5×10
-7、飽和磁化は70emu/gで、零(0)に近い磁歪と、高
い飽和磁化を示した。
以上の説明から明らかなように、本発明の非晶質薄膜
は、従来の非晶質合金薄膜の合金組成とは異なった新規
な合金組成よりなり、高い熱安定性をもつと共に、磁性
薄膜においてはすぐれた磁気特性、すなわち、低い保磁
力と高い透磁率を示し、磁気コア材等の電気音響変換素
子材料、磁歪素子材料、インバー、エリンバー材料等に
有用に用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佃 康夫 東京都国分寺市東恋ケ窪一丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (72)発明者 工藤 実弘 東京都国分寺市東恋ケ窪一丁目280番地 株式会社日立製作所中央研究所内 (56)参考文献 特開 昭55−145167(JP,A) 特開 昭55−107773(JP,A) 特開 昭54−94428(JP,A) 特開 昭54−122000(JP,A) 特開 昭54−164289(JP,A)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非晶質薄膜の組成が、一般式 M で示され、MはFe、Ni、Co元素よりなる群から選択され
    た少なくとも1種の元素、TはMo、Cr、W、V、Nb、T
    a、Mn、Pd、Pt、Au、Ag、Ru、Os、Rh、Ir、La、Nd、S
    m、Eu、Gd、Tb、Dy、Er、Yb、Lu元素よりなる群から選
    択された少なくとも1種の元素、XはZr、Ti、Y、Hf元
    素よりなる群から選択された少なくとも1種の元素より
    なり、かつa+b+c=100なる条件下で、0≦b≦9
    5、30≦a+b≦95、5≦c≦70を満足する優位的に非
    晶質である非晶質薄膜をスパッタ蒸着法によって作製す
    ることを特徴とする非晶質薄膜の製造方法。
  2. 【請求項2】特許請求の範囲第1項記載の非晶質薄膜の
    製造方法において、非晶質薄膜の組成を示す一般式M
    におけるcが、5≦c≦50であることを特徴と
    する非晶質薄膜の製造方法。
  3. 【請求項3】特許請求の範囲第1項記載の非晶質薄膜の
    製造方法において、非晶質薄膜の組成を示す一般式M
    におけるbおよびcが、1≦b≦20および5≦
    c≦20であることを特徴とする非晶質薄膜の製造方法。
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