JP6506659B2 - 磁気記録用非晶質合金およびスパッタリングターゲット材並びに磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録用非晶質合金およびスパッタリングターゲット材並びに磁気記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、ハードディスクドライブ用熱アシスト磁気記録媒体における非晶質層として用いるCo系非晶質合金およびスパッタリングターゲット材並びに磁気記録媒体に関するものである。
近年、磁気記録技術の進歩は著しく、ドライブの大容量化のために、磁気記録媒体の高記録密度化が進められており、従来普及している垂直磁気記録媒体より更に高記録密度化が実現できる、熱アシスト磁気記録方式が検討されている。
熱アシスト磁気記録方式は、レーザで磁気記録媒体を加熱しながらデータを記録する方式である。磁気記録媒体は高密度化が進むと、磁気的に記録したデータが周囲の熱の影響で消える熱揺らぎの問題が顕著になる。この熱揺らぎの問題を回避するには、記録媒体に用いる磁性材料の保磁力を高める必要がある。しかし、保磁力が高くなり過ぎると、記録が出来なくなる。この問題を解決する方式が熱アシスト磁気記録方式である。
ところで熱アシスト磁気記録方式では磁気記録媒体製造時、特開2014−220029号公報(特許文献1)に示すように、磁性相の規則化を行うため、400〜500℃程度の熱処理を実施する。また、特開2011−146089号公報(特許文献2)に開示された非晶質シード相のように、非晶質が求められている膜もある。この非晶質合金としては増本 健著「アモルファス金属の基礎」オーム社、1982,P94(非特許文献1)に開示されている組成で、800K程度の結晶化温度を示す。
特開2014−220029号公報 特開2011−146089号公報 増本 健著「アモルファス金属の基礎」オーム社、1982,P94
上述したように、特許文献1のように磁性相の規則化のために記録媒体を加熱するにもかかわらず、特許文献2のように非磁性でかつ非晶質が求められる層がある。しかしながら、熱処理温度に対し、十分高い結晶化温度を有する非磁性、非晶質合金がない。
上述したような問題を解消するために、発明者らは鋭意検討した結果、セラミックスによらずCo合金において、Zr,Hf,Tiといった非晶質化促進元素の添加によってアモルファス性を確保し、V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wの添加によって高い結晶化温度を実現し、かつアモルファス性の向上にも寄与した磁気記録用非晶質合金を提供する。
その発明の要旨するところは、
(1)at.%で、Feは2%以下(0を含む)で、かつ下記(A)群の各種元素の1種または2種以上を5〜20%含有し、かつ下記(B)群の各種元素の2種以上を16〜50%含有し、かつ(A)群元素と(B)群元素との和を35超え〜70%とし、残部Coおよび不可避的不純物からなる磁気記録用非磁性非晶質合金。
(A)Ti,Zr,Hf
(B)Cr,Mo,W
(2)前記(1)に記載した磁気記録用軟磁性合金に加え、at.%で下記(C)群の各種元素の1種または2種以上を25%以下含有し、残部Coおよび不可避的不純物からなることを特徴とする磁気記録用非磁性非晶質合金。
(C)V,Nb,Ta
(3)前記(1)または(2)に記載した磁気記録用軟磁性合金に加えて、at.%で下記(D)群の各種元素の1種または2種以上を20at%以下、残部Coおよび不可避的不純物からなることを特徴とする磁気記録用非磁性非晶質合金。
(D)Si、Ge、P、B、C
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1に記載の磁気記録用非磁性非晶質合金を用いたスパッタリングターゲット材。
(5)前記(1)〜(3)のいずれか1に記載の磁気記録用非磁性非晶質合金を用いた磁気記録媒体にある。
以上述べたように、本発明により非磁性で、非晶質性、結晶化温度に優れた熱アシスト磁気記録媒体用軟磁性合金およびそのスパッタリングターゲット材並びに磁気記録媒体を提供できる極めて優れた効果を奏するものである。
以下、本発明に係る成分組成の限定理由を述べる。
Feを2at%以下(0を含む)
Feを2at%を超えて添加すると、A群元素とB群元素を多く添加したときに結晶化が起こるため2at%以下(0を含む)とした。また、Feを多く添加すると磁性をもつようになる。
(A)群元素の1種または2種以上を5〜20%
Ti,Zr,Hfは、Co系合金において、非晶質化(アモルファス化性)を確保するための元素であり、その元素の1種または2種以上の合計含有量が、5%未満ではその効果を十分達成することができない。また、20%を超えると、アモルファス化しないことから、その範囲を5〜20%とした。好ましくは6〜15%とする。さらに好ましくは9〜14%とする。
(B)群元素の2種以上を16〜50%
Cr,Mo,Wは、Co合金において、高い結晶化温度を実現するための元素であり、その元素の2種以上を同時に含むとその効果がよくでる。しかし合計含有量が、16%未満ではA群元素との関係で、その効果は飽和する。また、50%を超えると、アモルファス化しないことから、その範囲を16〜50%とした。好ましくは16〜40%とする。
(A)群元素と(B)群元素との和を35超え〜70%
(A)群元素と(B)群元素との和を35超え〜70%とした理由は、35%未満ではその効果が飽和するためと、磁性を発現するため。また、70%超えるとアモルファス化しないため。
(C)群元素の1種または2種以上を25%以下
V,Nb,Taは、Co合金において、アモルファス化を促進し、高い結晶化温度を実現するための元素であり、その元素の1種または2種以上の合計含有量が、25%を超えると、アモルファス化しないことから、その上限を25%とした。好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下とする。
(D)群元素の1種または2種以上を20%以下
Si、Ge、P、B、Cは、Co合金において、アモルファス性を改善する元素である。しかし、1種または2種以上の合計含有量が20%を超えるとアモルファス化しないことから、その上限を20%とした。なお、Al,Cu,Mnなどの不純物を1000ppmまで含んでもよい。
以下、本発明に係る合金について実施例によって具体的に説明する。
通常、垂直磁気記録媒体における薄膜は、その成分と同じ成分のスパッタリングターゲット材をスパッタし、ガラス基板などの上に成膜し得られる。ここでスパッタにより成膜された薄膜は急冷されている。これに対し、本発明では実施例、比較例の供試材として、単ロール式の液体急冷装置にて作製した急冷薄帯を用いている。これは実際にスパッタにより急冷され成膜された薄膜の、成分による諸特性への影響を、簡易的に液体急冷薄帯により評価したものである。
[急冷薄帯の作製条件]
表1、表2に示す成分組成に秤量した原料30gを径10×40mm程度の水冷銅型にて減圧Ar中でアーク溶解し、急冷薄帯の溶解母材とした。急冷薄帯の作製条件は、単ロール方式で、径15mmの石英管中にてこの溶解母材にセットし、出湯ノズル径を1mmとし、雰囲気気圧61kPa、噴霧差圧69kPa、銅ロール(径300mm)の回転数3000rpm、銅ロールと出湯ノズルのギャップ0.3mmにて出湯した。出湯温度は各溶解母材の溶け落ち直後とした。このようにして作製した急冷薄帯を供試材とし、以下の項目を評価した。
[急冷薄帯の飽和磁束密度の評価]
VSM装置(振動試料型磁力計)にて、印加磁場1200kA/mで測定した。供試材の重量は15mg程度、0.3T以下の飽和磁束密度のものはA、0.3T以上のものはCとした。
[急冷薄帯の構造]
通常、非晶質材料のX線回折パターンを測定すると、回折ピークが見られず、非晶質特有のハローパターンとなる。また、完全な非晶質でない場合は、回折ピークは見られるものの、結晶材料と比較してピーク高さが低くなり、かつハローパターンも見られる。そこで下記の方法にて非晶質性の評価とした。
[非晶質性の評価]
非晶質性の評価としては、ガラス板に両面テープで供試材を貼り付け、X線回折装置にて回折パターンを得た。このとき、測定面は急冷薄帯の銅ロール接触面となるように供試材を貼り付けた。X線源はCu−α線で、スキャンスピード4°/minで測定した。この回折パターンにハローパターンが確認できるものをA、全くハローパターンが見られないものをCとして非晶質性の評価とした。
[急冷薄帯の結晶化温度の評価]
通常、非晶質材料は、加熱に伴い結晶化を起こし、結晶化した温度を結晶化温度と呼ぶ。また、結晶化の際には発熱反応が起きる。結晶化温度は、結晶化に伴い発熱する温度を測定することで評価される。そこで下記の方法にて結晶化温度を評価した。示差走査熱量測定(DSC)により加熱速度0.67Ks-1の条件下で調べた。773K以上873未満の結晶化温度のものについてはB、873K以上の結晶化温度についてはA、773K未満の結晶化温度のものについてはCとした。
表1、2に示すように、No.1〜36は本発明例であり、No.37〜46は比較例である。
表2に示す比較例No.37は(B)群元素の含有量が低く、かつA+B量も少ないために、磁性を有する。比較例No.38は(B)群元素が1種類しかないため、非晶質ではなく、結晶化温度も低い。比較例No.39は(A)群元素が25と高いため非晶質ではなく、結晶化温度も低い。比較例No.40は(A)群元素が3と低いため非晶質ではなく、結晶化温度も低い。比較例No.41は(B)群元素の含有量が多く、非晶質ではなく、結晶化温度も低い。比較例No.42、43は(C)群元素の含有量が多く、非晶質ではなく、結晶化温度も低い。比較例No.44、45は(D)群元素の含有量が多く、非晶質ではなく、結晶化温度も低い。比較例No.46はFeの含有量が多く、非晶質ではなく、結晶化温度も低く、非磁性でない。
次に、スパッタリングターゲット材の製造方法を示す。表1の本発明例No.1、No.10、No.15、No.25、No.30および表2の比較例No.37、No.45に示す7種類の成分組成について、溶解原料を秤量し、減圧Arガス雰囲気の耐火物坩堝内で誘導加熱溶解したあと、坩堝下部の直径8mmのノズルより出湯し、Arガスによりアトマイズした。このガスアトマイズ粉末を原料として、外径220mm、内径210mm、長さ200mmのSC製の缶に脱気装入した。脱気時の真空到達度は約1.3×10-2Paとした。
上記の粉末充填ビレットを1150℃に加熱したあと、径230mmの拘束型コンテナ内に装入し、500MPaの加圧にて成形した。上記の方法で作製した固化成形体を、ワイヤーカット、旋盤加工、平面研磨により、直径180mm、厚さ7mmの円盤状に加工し、スパッタリングターゲット材とした。
これら7種類の成分組成についてスパッタリングターゲット材を用い、ガラス基板上にスパッタ膜を成膜した。スパッタ膜の磁束密度、非晶質性、結晶化温度は、いずれの組成も表1、2と同じ結果となった。
以上述べたように、本発明により特に非磁性、非晶質性(アモルファス性)を確保し、高い結晶化温度に優れた熱アシスト磁気記録媒体用軟磁性合金およびそのスパッタリングターゲット材並びに磁気記録媒体を提供するものである。


特許出願人 山陽特殊製鋼株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊

Claims (6)

  1. at.%で、Feは2%以下(0を含む)で、かつ下記(A)群の各種元素の1種または2種以上を5〜20%含有し、かつ下記(B)群の各種元素の2種以上を16〜50%含有し、かつ(A)群元素と(B)群元素との和を35超え〜70%とし、残部Coおよび不可避的不純物からなる磁気記録用非磁性非晶質合金。
    (A)Ti,Zr,Hf
    (B)Cr,Mo,W
  2. at.%で、Feは2%以下(0を含む)で、下記(A)群の各種元素の1種または2種以上を5〜20%含有し、下記(B)群の各種元素の2種以上を16〜50%含有し、下記(C)群の各種元素の1種または2種以上を1%以上25%以下含有し、かつ(A)群元素と(B)群元素との和を35超え〜70%とし、残部Coおよび不可避的不純物からなることを特徴とする磁気記録用非磁性非晶質合金。
    (A)Ti,Zr,Hf
    (B)Cr,Mo,W
    (C)V,Nb,Ta
  3. at.%で、Feは2%以下(0を含む)で、下記(A)群の各種元素の1種または2種以上を5〜20%含有し、下記(B)群の各種元素の2種以上を16〜50%含有し、下記(D)群の各種元素の1種または2種以上を5%以上20%以下含有し、かつ(A)群元素と(B)群元素との和を35超え〜70%とし、残部Coおよび不可避的不純物からなることを特徴とする磁気記録用非磁性非晶質合金。
    (A)Ti,Zr,Hf
    (B)Cr,Mo,W
    (D)Si、Ge、P、B、C
  4. at.%で、Feは2%以下(0を含む)で、下記(A)群の各種元素の1種または2種以上を5〜20%含有し、下記(B)群の各種元素の2種以上を16〜50%含有し、下記(C)群の各種元素の1種または2種以上を1%以上25%以下含有し、下記(D)群の各種元素の1種または2種以上を5%以上20at%以下含有し、かつ(A)群元素と(B)群元素との和を35超え〜70%とし、残部Coおよび不可避的不純物からなることを特徴とする磁気記録用非磁性非晶質合金。
    (A)Ti,Zr,Hf
    (B)Cr,Mo,W
    (C)V,Nb,Ta
    (D)Si、Ge、P、B、C
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録用非磁性非晶質合金を用いたスパッタリングターゲット材。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁気記録用非磁性非晶質合金を用いた磁気記録媒体。
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