JPH0564254B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】 本発明は、無段変速機に使用されてその圧縮に
より動力伝達するＶベルトに関し、詳しくは、プ
ーリの回転によりプライマリプーリからセカンダ
リプーリ側へ押し出されてゆくＶベルトのタイト
側直線部分のコンプライアンス特性を適正化する
ものに関する。

【従来の技術】

この種の無段変速機用Ｖベルトは、第２図ａ，
ｂに示すようにプーリと接触するＶ形の側面を有
するエレメント１０を多数重ねて環状に整列配置
し、それらのエレメント１０，１０，…に可撓性
のリング３０を巻掛けて一体構成し、エレメント
１０，１０，…同士の押付け力（圧縮力）により
動力伝達するようになつている。 また、かかるＶベルトを使用する段変速機１
は、プライマリ軸２側のプライマリプーリ３が固
定プーリ３ａと可動プーリ３ｂを有し、これと平
行配置されたセカンダリ軸４側のセカンダプーリ
５も固定プーリ５ａと可動プーリ５ｂを有する。
そして各固定プーリ３ａ，５ａと可動プーリ３
ｂ，５ｂとは軸方向の反対側に配置され、これに
上述のＶベルト６が巻付けられており、プライマ
リプーリ３およびセカンダリプーリ５に対するＶ
ベルト６の巻付け径の比を変化することで無段変
速するようになつている。 ここで、プライマリプーリ３側のプーリ溝中心
位置ａとセカンダリプーリ５側のプーリ溝中心位
置ｂとに着目すると、上述の構成により変速動作
中のプーリ溝中心位置ａ，ｂの芯ズレ、即ちミス
アライメントαは少ないものになつている。 しかるに、Ｖベルト６の周長およびプライマリ
軸２とセカンダリ軸４との軸間距離が常に一定で
あるため、変速動作時のプライマリプーリ３およ
びセカンダリプーリ５に対するＶベルト６の巻付
け径の変化量と共に、上記プーリ溝中心位置ａ，
ｂのズレ量は１：１に対応しない。即ち、Ｖベル
ト巻付け径の小さい方が巻付け径の変化量と共に
プーリ溝中心位置のズレ量が大きくなり、これに
伴いミスアライメントαを全く零にすることはで
きない。 そしてこのミスアライメントα値は、プライマ
リプーリ３およびセカンダリプーリ５に対するＶ
ベルト６の巻付け径の比、即ち変速比により異な
り、第２図ｃのような特性になる。 従つて、この特性を上下、左右に平行移動して
ミスアライメントαの値を（＋），（−）の両側に
振り分けたり、または実走行で最も使用頻度の多
い変速比の小さいところで零になるように組付け
るのが一般的である。 一方、上記芯ズレのミスアライメントαによ
り、Ｖベルト６においてプーリの回転によりプラ
イマリプーリ３からＶベルト６が押し出されて行
くタイト側直線部分６ａでは、動力伝達の押付け
力によりエレメント１０，１０，…同士が圧縮さ
れながら蛇行することになる。この場合のタイト
側直線部分６ａに存在するエレメント１０の数
は、数十個以上になるので、その累積変位により
必要以上にエレメント１０の中心がズレるのが一
般的である。 このため、可撓性のリング３０の縁がエレメン
ト１０のピラー等に接して耐久性を減じたり、セ
カンダリプーリ５に入るときエレメント１０がそ
のプーリ溝に倣い急激に変位して衝撃荷重を与え
る等の不具合を招く。 このことから、Ｖベルト６のタイト側直線部分
６ａにおいて各エレメント１０，１０，…は、ミ
スアライメントαに応じて無理なくズレ、かつ必
要以上にズレを生じないことが望まれる。 そこで従来、上記ミスアライメント対策に関し
ては、例えば特開昭60−65946号公報の先行技術
がある。ここで、変速比が１の場合においてプラ
イマリプーリのプーリ溝中心位置を、セカンダリ
プーリのプーリ溝中心位置に対してプライマリプ
ーリの可動プーリ側に偏位させ、エレメントのピ
ラー等に対するリングの接触の度合を減じること
が示されている。

【発明が解決しようとする課題】

ところで、前記先行技術のものにあつては、プ
ライマリプーリおよびセカンダリプーリのプーリ
溝中心位置を予めズラしておくので、全体的なミ
スアライメントの値は大きくなり、Ｖベルトのタ
イト側直線部分の蛇行による動力伝達のロス等の
増大を招く。 また、各エレメントがセカンダリプーリ側に入
る際の衝撃による騒音も増す等の問題がある。 本発明は、このような点に鑑みてなされたもの
で、エレメント自体に安定した直進性とミスアラ
イメントに応じた必要な変位性とを付与をできる
ようにした無段変速機用Ｖベルトを提供すること
を目的としている。

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するため、本発明は、プーリと
接触するＶ形の側面を有するボデーにピラーを介
してヘツドを形成した多数のエレメントを備え、
各エレメントをボデーの左右シヨルダ部に巻掛け
た可撓性のリングに沿つて相互に接合するよう整
列させてなる無段変速機用のＶベルトにおいて、
上記各エレメントの一側面には、Ｖベルトのピツ
チラインより外周側に位置して、ボデーの左右シ
ヨルダ部近傍の２箇所とピラーの中央部の１箇所
とヘツドの左右２箇所の合計５箇所に厚肉部を左
右対称的に配置して設け、上記各厚肉部によるエ
レメント相互の変位特性をＶベルトのタイト側直
線部分のコンプライアンス値と略一致させるよう
にしたことを手段としている。 ここで、上記各厚肉部は、左右シヨルダ部近傍
の２箇所の厚肉部の厚さを、ピラーの中央部の１
箇所およびヘツドの左右２箇所の厚肉部の厚さよ
り大きく設定し、かつその縦方向断面形状を中高
形状としたことも手段としている。

【作用】

このような手段を採用した本発明では、エレメ
ントの一側面である例えば正面に左右対称的に配
置して設けられた合計５箇所の厚肉部によるエレ
メント相互の変位特性が、Ｖベルトのタイト側直
線部分のコンプライアンス値と略一致しているの
で、Ｖベルトのタイト側直線部分に存在する各エ
レメントはミスアライメントに応じた分だけ変位
するようになり、各エレメントには安定した直進
性と必要な変位性が付与される。 ここで、左右シヨルダ部近傍の２箇所の厚肉部
の厚さを、ピラーの中央部の１箇所およびヘツド
の左右２箇所の厚肉部の厚さより大きく設定し、
かつその縦方向断面形状を中高形状とした場合、
Ｖベルトのタイト側直線部分で各エレメントは相
互間隔の広い上記左右シヨルダ部近傍の２箇所の
厚肉部で必ず圧接し、この圧肉部の中高形状によ
り各エレメントはピラーの中央部の１箇所および
ヘツドの左右２箇所の厚肉部でも圧接可能とな
る。このため、各エレメントは安定した状態で相
互に圧接するようになる。

【実施例】

以下、本発明の一実施例を添付の図面に基づい
て具体的に説明する。 第１図ａ，ｂにおいてＶベルト６を詳細に説明
する。まずＶベルト６は、複数のエレメント１０
と無端の可撓性のリング３０からなる。 エレメント１０は、Ｖ字形の側面１１を有する
ボデー１２にピラー１３を介してヘツド１４が連
続する形状であり、ヘツド１４の略中心の正面に
突起１５が、後面にホール１６が設けられ、ボデ
ー１２の正面にプーリに沿つて傾動するテーパ１
７が設けられる。 また、ピラー１３の左右にあるボデー１２の中
高形状のシヨルダ部１８にはリング３０，３０が
巻掛けてあり、ヘツド１４の左右のイヤー部１９
でエレメント１０のリング３０に対する離脱を防
止している。 更にピラー１３とヘツド１４とが連続する角部
およびピラー１３とボデー１２とが連続する角部
には、リング３０との接触を防ぐために円弧状に
切欠いたヒレツト２０が形成され、またボデー１
２の下端には、リング３０による押付力の分布を
均一化するための切欠き２１が設けてある。 リング３０は、小さい曲率半径でプーリに巻付
いた際に生じる曲げ応力を低減するため、可撓性
の薄い帯状部材を複数枚重ねたものである。 そこで、エレメント１０を多数、突起１５とホ
ール１６とを係合しながらベルト走行方向に対し
直列に並べて順次重合し、環状に整列する。そし
て各エレメント１０のイヤー部１９とシヨルダ部
１８の間にリング３０を巻掛けて一体化すること
で、Ｖベルト６を構成している。 一方、エレメント１０において、テーパ１７の
開始点がＶベルトのピツチラインＰであり、この
ピツチラインＰより外周側の部分がＶベルトのタ
イト側直線部分で相互に接合される。従つて、エ
レメント１０のピツチラインＰより外周側の平面
度が、Ｖベルト６のタイト側直線部分での安定し
た直進性、ミスアライメントαに基づく軸方向分
力の横力に対する変位に直接影響を与える。 そこで、エレメント１０の正面において、Ｖベ
ルト６のピツチラインＰより外周側のボデー１２
における左右のシヨルダ部１８，１８の近傍２箇
所に左右対称に配置して厚肉部１８ａ，１８ｂを
設ける。またエレメント１０の左右方向中央部に
配置してピラー１３に厚肉部１３ａを設け、さら
にヘツド１４の左右のイヤー部１９，１９にも左
右対称に配置して厚肉部１９ａ，１９ｂを設け
る。そして各厚肉部１８ａ，１８ｂ，１３ａ，１
９ａ，１９ｂの厚さと表面形状により、所定の平
面度を付与する。 ここで、各厚肉部１８ａ，１８ｂ，１３ａ，１
９ａ，１９ｂの厚さの大小とエレメント１０の変
位δの関係を示すと、以下のようになる。すなわ
ち、厚肉部１３ａのみが他の厚肉部１８ａ，１８
ｂ，１９ａ，１９ｂより厚い場合の変位をδ₁、厚
肉部１９ａ，１９ｂのみが他の厚肉部１８ａ，１
８ｂ，１３ａより厚い場合の変位をδ₂、厚肉部１
８ａ，１８ｂのみが他の厚肉部１３ａ，１９ａ，
１９ｂより厚い場合の変位をδ₃とすると、δ₁＞δ₂
＞δ₃となる。 また、厚肉部１８ａ，１８ｂのみが厚い場合
で、その縦方向の断面形状が曲率半径の小さい急
な中高形状である場合の変位をδ_3a、逆に曲率半
径の大きい緩やかな中高形状である場合の変位を
δ_3bとすると、δ_3a＞δ_3bの関係になる。 一方、Ｖベルト６のタイト側直線部分のコンプ
ライアンスに対し、エレメント１０の平面度を一
致させる。即ち、タイト側直線部分の長さに略等
しくして各エレメント１０，１０，…を重ね、エ
レメント１０の押付力によるミスアライメントα
に相当する軸方向分力を求め、この横方向の力を
エレメント列の端部に加えて、コンプライアンス
の値ε／Ｑ（変位／横方向の力）を計測する。そ
して上述の各厚肉部１８ａ，１８ｂ，１３ａ，１
９ａ，１９ｂの厚さと表面形状を調整し、そのコ
ンプライアンスの値を、実際のＶベルト６のタイ
ト側直線部分の全負荷でベルトスピード最大の場
合のコンプライアンスの値と一致するように定め
るのである。 以上の構成では、Ｖベルト６のタイト側直線部
分において、数十個のエレメント１０，１０，…
が一直線上に並んで順次押圧しながらトルク伝達
する場合に、ミスアライメントαに応じて各エレ
メント１０は蛇行するが、Ｖベルト６のピツチラ
インＰより外周側の厚肉部１８ａ，１８ｂ，１３
ａ，１９ａ，１９ｂによる平面度でミスアライメ
ントαに応じた分だけ変位することになる。

【発明の効果】

以上説明したとおり本発明によれば、エレメン
トの一側面である例えば正面に左右対称的に配置
して設けられた合計５箇所の厚肉部によるエレメ
ント相互の変位特性が、Ｖベルトのタイト側直線
部分のコンプライアンス値と略一致しているの
で、Ｖベルトのタイト側直線部分に存在する各エ
レメントはミスアライメントに応じた分だけ変位
するようになり、各エレメントに安定した直進性
と必要な変位性とを付与することができ、Ｖベル
トの振動を軽減し、また耐久性を向上することが
できる。 ここで、左右シヨルダ部近傍の２箇所の厚肉部
の厚さを、ピラーの中央部の１箇所およびヘツド
の左右２箇所の厚肉部の厚さより大きく設定し、
かつその縦方向断面形状を中高形状とした場合、
Ｖベルトのタイト側直線部分で各エレメントは相
互間隔の広い上記左右シヨルダ部近傍の２箇所の
厚肉部で必ず圧接し、この圧肉部の中高形状によ
り各エレメントはピラーの中央部の１箇所および
ヘツドの左右２箇所の厚肉部でも圧接可能とな
る。このため、各エレメントは安定した状態で相
互に圧接するようになり、より安定した直進性を
各エレメントに付与することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明による無段変速機用Ｖベルトの
一実施例を示し、ａはその正面図、ｂはその断面
図、第２図のａはミスアライメントを示す側面
図、ｂは縦断面図、ｃは特性図、ｄはミスアライ
メントを求める図である。 １０……エレメント、１２……ボデー、１３…
…ピラー、１３ａ……厚肉部、１４……ヘツド、
１８……シヨルダ部、１８ａ，１８ｂ……厚肉
部、１９……イヤー部、１９ａ，１９ｂ……厚肉
部、Ｐ……ピツチライン。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ プーリと接触するＶ形の側面を有するボデー
   にピラーを介してヘツドを形成した多数のエレメ
   ントを備え、各エレメントをボデーの左右シヨル
   ダ部に巻掛けた可撓性のリングに沿つて相互に接
   合するよう整列させてなる無段変速機用のＶベル
   トにおいて、 上記各エレメントの一側面には、Ｖベルトのピ
   ツチラインより外周側に位置して、ボデーの左右
   シヨルダ部近傍の２箇所とピラーの中央部の１箇
   所とヘツドの左右２箇所の合計５箇所に厚肉部を
   左右対称的に配置して設け、 上記各厚肉部によるエレメント相互の変位特性
   をＶベルトのタイト側直線部分のコンプライアン
   ス値と略一致させるようにしたことを特徴とする
   無段変速機用Ｖベルト。 ２ 上記各厚肉部は、左右シヨルダ部近傍の２箇
   所の厚肉部の厚さを、ピラーの中央部の１箇所お
   よびヘツドの左右２箇所の厚肉部の厚さより大き
   く設定し、かつその縦方向断面形状を中高形状と
   したことを特徴とする特許請求の範囲第１項記載
   の無段変速機用Ｖベルト。