JPH05192821A - 放電加工用電極及びその製造方法 - Google Patents

放電加工用電極及びその製造方法

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JPH05192821A
JPH05192821A JP20577192A JP20577192A JPH05192821A JP H05192821 A JPH05192821 A JP H05192821A JP 20577192 A JP20577192 A JP 20577192A JP 20577192 A JP20577192 A JP 20577192A JP H05192821 A JPH05192821 A JP H05192821A
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    • B23H7/00Processes or apparatus applicable to both electrical discharge machining and electrochemical machining
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 放電加工用の高性能銅合金電極及びその製造
方法を提供する。 【構成】 製造方法は、銅又は銅合金の線の周りにZn
層を形成し、これを二元合金Cu−Znのβ’−β遷移
温度より低い温度で熱処理して、均質β’相からなる外
側層31を形成し、次いで線の表面に存在する酸化物を
選択的に酸洗いした後、100%を超える伸線率で伸線
処理して本発明の電極1を得ることからなる。電極は、
酸化物介在物を含まない均質β’相の合金Cu−Znか
らなる外側金属層3と、薄い接合部32とを有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、仏語でetincel
age erosifとも称する放電加工(elect
roerosion)技術により金属製品の加工、特に
切断を行う機械で使用される銅合金製の線状電極と、こ
の種の電極の製造方法とに関する。
【0002】
【従来の技術】放電加工に使用される線状の金属電極の
製造方法を開示している文献は多数知られている。ちな
みに、この種の加工方法では、一方の電極を構成する線
と、他方の電極を構成する被加工材との間における火花
放電(etincelle)の発生によって金属材料が
欠落する。以下の説明では、通常は金属製品である電気
伝導性製品だけでなくセラミック製品をも放電加工によ
って加工するのに使用される金属線を「電極」と呼ぶ。
【0003】この種の電極が有していなければならない
本質的特性としては下記のものが挙げられる: − 大きな加工電流を得るために必要な大きな電気伝導
率。
【0004】− 加工時に電極を正確に誘導できるよう
に電極に加えることができる引っ張り力を決定する大き
な機械的強度。
【0005】− できるだけ小さい摩耗度。
【0006】− 十分な熱散逸適性。
【0007】− 十分な放電安定性。
【0008】公知の電極には、中央心線と、これを被覆
する外側層とを含んでいるものがある。これら2つの構
成部分の機能を簡単に説明すると、本質的には中央心線
が前記した最初の2つの特性(即ち、大きな電気伝導率
及び大きな機械的強度)をもたらし、外側層が電極の摩
耗をできるだけ小さくすると共に、作動中に熱を十分に
散逸させる。これは、使用条件で蒸発する元素を使用す
ることによって得ることができる。
【0009】例えば仏国特許第2 418 699−B
1号には、銅、黄銅又は鋼鉄であり得る金属の心線を、
亜鉛、カドミウムから選択した蒸発温度の低い金属を5
0%以上含む金属層で被覆したものからなる電極が開示
されている。この電極の製造方法は、外側層を構成する
金属元素を電着によって金属製心線の周りに付着させ、
次いでダイス(filiere)で較正することからな
る。
【0010】欧州特許出願第334 971−A1号に
は、銅又は銅合金の心線と亜鉛の外側層とで構成された
線を下記のステップで処理することからなる電極製造方
法が開示されている: − 前記線の断面を縮小し、 − 酸化雰囲気で、好ましくは454〜902℃の温度
で、拡散用熱処理にかけ、 − 線の断面を縮小し、 − 還元雰囲気で、600〜850℃の温度で、再結晶
用熱処理にかけ、 − 最終的直径を得るために線の断面を縮小する。
【0011】また、欧州特許出願第381 595−A
1号には、亜鉛を含む1つ以上の金属層の冷間堆積物で
銅又は銅合金の心線を被覆することからなり、被覆と心
線との間で金属を拡散させ得る加熱を行う後処理を一切
含まない電極製造方法が開示されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本出願人は、先行技術
の方法及び製品では、製造コストを比較的低く抑えると
共に電極の使用性能を高めることはできないと確認し
た。
【0013】本出願人は特に、より特定的には放電加工
時に大きな放電安定性を得ることができる経済的な方法
を研究した。実際、放電の安定性は、放電加工処理の経
済性と実施される加工の質とにとって重要な要因の1つ
である。即ち、放電の安定性が高いと、電極の耐用期間
が延びると共に、被加工製品の表面の質が改善される。
【0014】本発明の目的は、放電加工で使用するため
の線状電極であって、加工時の放電安定性が大きい線状
電極を提供することにある。本発明の別の目的は、この
種の電極を経済的に製造する方法を提供することにあ
る。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明の放電加工用電極
の製造方法は、銅を含む金属線の周りに亜鉛の外側金属
層を形成し、この金属線を熱処理し、次いでその断面を
縮小する操作を含み、放電加工で使用するのに適してお
り且つより特定的には加工時の放電安定性が高い電極が
経済的に得られるように、 a)製造すべき電極1の直径より大きい直径を有する銅
含有金属線20の周りにZn層30を形成して線10を
形成し、 b)任意に線10を伸線した後、二元合金Cu−Znの
β’−β遷移温度より低い温度で、亜鉛に富んだ層30
がβ’相のCu−Zn層31に変態するのに必要な時間
にわたり、酸化雰囲気下で線10を拡散用熱処理にかけ
て、心線21と層31とからなる線11を形成し、 c)次いで、層31の表面に存在する酸化物粒子を除去
するために、線11の選択的酸洗い(decapag
e)を行い、 d)最後に、酸洗いした線11を100%を越える伸線
率で最終直径まで伸線して、外側層3で被覆された心線
2からなる電極1を得る ことを特徴とする。
【0016】
【実施例】本出願人は、改良された電極1を実現するた
めに研究を重ねるうちに、外側層3、そして場合によっ
ては心線2又は少なくともその一部分が電気伝導率の高
い均質相であると、電気エネルギをより特定的に伝搬す
ることができるという利点が得られることを発見した。
【0017】この場合の「均質相(phase hom
ogene)」とは、1種類の合金が複数の相(ここで
は二元合金Cu−Znの状態図のα相、β相、γ相等)
を混合状態で含んでいないという意味だけでなく、この
場合は通常酸化亜鉛又は酸化銅の粒子である異質の介在
物又は沈積物も含んでいないことを意味する。
【0018】本発明では、本出願人が思いがけずに発見
したように、Cuを含む心線20の周りに付着させたZ
n含量の高い層30から、β’相のCu−Zn合金で形
成された単相層31を得ることができるだけでなく、こ
のようなβ’相を電極1の外側層とした場合の利点が認
識される。
【0019】実際、本出願人は、約100HV(20g
で)というこのβ’相の硬度が、高性能の電極1を得る
上で特に好都合であることを発見した。α相は展性が高
すぎ、γ相は脆弱すぎる。
【0020】このβ’相は更に、大きな伸線率で破損を
伴わずに伸線に耐えるに十分な展性を有すると共に、耐
摩耗性も示す。
【0021】本出願人はまた、改善された性能を有する
電極1を得るためには、本発明の特有の熱処理に、下記
の2つの主要処理を組合わせる必要があることを発見し
た。 1)研磨作用のある粒子(主として酸化物粒子)を除去
するために前記層31の表面を選択的に酸洗いする。こ
れは、次の伸線にとって好都合であり、特に火花放電の
安定性及び被加工製品の品質にとって好ましいものであ
ることが判明した。
【0022】2)大きい伸線率で線11を伸線する。こ
の処理は、経済的利点(ステップa)及びb)は「大」
直径の線について実施される)と、技術的利点(機械的
特性に優れた最終心線2を形成せしめる心線21の冷間
引抜き、心線2と外側層3との間の結合の強化、並びに
大きな均質性と規則性とを有する表面状態)とを有す
る。
【0023】本発明の方法は、これら3つの主要処理を
含む多数の態様に従って実施することができる。
【0024】出発材料たる金属線20は、直径が0.1
〜3mm、好ましくは0.3〜2mmの銅又は銅合金の
線が好ましい。
【0025】心線20用の銅合金としては通常、Znを
15〜36重量%、好ましくは20%を含む黄銅(Cu
Zn20)を選択する。
【0026】銅又は前記銅合金には、Fe、Co、T
i、P、Mg、Cr、Zr、Siから選択した1種類以
上の元素をこれら元素の総重量%が0.1〜1%となる
ように添加し得、及び/又はAl、Sn、Niから選択
した1種類以上の元素を4%に達し得る総重量%で添加
し得る。
【0027】しかしながら、本発明では出発金属線20
として、機械的特性に優れた金属又は合金(鉄、鋼鉄、
タングステン等)の中心部を、電気伝導率の高い銅又は
銅合金の層で被覆したものからなる「複合」線を選択す
ることもできる。但し、これは本発明の好ましい実施態
様ではない。その理由を下に挙げる。
【0028】− 第1に、Cu−Znをベースとする線
の伸線に必要な力は、より「硬質」の線の場合より小さ
い。
【0029】− 第2に、心線2は電気良導体であるこ
とが重要である。
【0030】本発明ではまた伸線率を、伸線の後で線が
冷間引抜き限度のやや内側に存在するように選択する。
これは、選択した最終直径を有する線が、中間焼きなま
し処理を行わなくても、(Cu−Znベースの線でさ
え)優れた機械的特性をもって製造されるようにするた
めである。
【0031】「複合」線であってもなくても、心線20
の周りには任意の公知の方法、例えば電着、溶融亜鉛浴
への浸漬によるデポジション等によって亜鉛を付着させ
る。好ましくは電着を使用する。
【0032】このようにして、厚さ5〜150マイクロ
メートルの層30を備えた線10が得られる。層30の
厚さは線の直径に伴って増加する。例えば、直径1mm
の線10の場合には、この厚さを10〜100マイクロ
メートルにするのが好ましい。この層の厚さはまた、心
線20の組成によっても変化する。この厚さは特に、心
線20のZn濃度に反比例する。本発明では、亜鉛に代
えて、亜鉛濃度の高い合金を付着させ得るが、そのよう
にしても実際的な利益はない。
【0033】本発明の熱処理は、二元合金Cu−Znの
β’−β遷移温度より低い温度で、酸化雰囲気で行う。
前記遷移温度は合金の組成に応じて456〜468℃で
変化する。周知のように、β’−β遷移はCu原子及び
Zn原子の秩序状態(β’)と無秩序状態(β)との間
の遷移に対応し、無秩序状態は秩序状態より高い温度で
得られる。しかしながら本出願人は、Zn原子及びCu
原子の拡散を好ましくはβ−β’遷移温度より低い温度
で行うと、下記のような予期せぬ結果が得られることを
発見した。
【0034】第1に、適当な熱処理時間によって、厚み
全体にわたり均質なβ’相の層31が形成されると共
に、出発線20の組成を有する心線21が形成される。
【0035】第2に、層31と心線21との間の接合部
に、大きなZn濃度勾配に対応する比較的狭い拡散ゾー
ンが観察される(図5b参照)。
【0036】第3に、この温度で拡散した後の加工の結
果は、それよりも高い温度で得られる結果よりも優れて
いる。これは、全く予想できなかったことである。
【0037】但し本発明では、β’−β遷移温度を少し
超えても、幾らかは劣るが依然として許容し得る結果を
得ることができる。前記温度の限界は480℃である。
この温度を超えると、特に層31の多孔率が過度に増加
し、最終的電極1に悪影響を及ぼす。
【0038】好ましくは、銅を含む心線20を再結晶化
すると同時に、心線20の銅原子及び層30のZn原子
の相互拡散を生起させることができるように、酸化雰囲
気の炉で、400〜455℃の温度で熱処理を実施す
る。好ましい温度範囲は450℃±5℃である。熱処理
の時間はZn層30の厚さに依存する。従って、熱処理
の最適時間を決定するには予備試験が必要である。実
際、この時間が短かすぎると、β’相よりZn濃度の高
いγ相を含む複数の相の存在が層31中に観察される。
逆に処理時間が長すぎると、β’相よりZn濃度の低い
α相を含む複数の相の存在が層31中に観察される。
【0039】通常は、層30の厚さが30〜100マイ
クロメートルであれば、熱処理時間は2〜20時間であ
る。層30の厚さが最も薄い場合には処理時間も最も短
くなる。
【0040】このような条件では、完全に再結晶化した
心線21及び外側層31を有する線11が得られる。特
に層31には、粒径10〜500マイクロメートルの極
めて粗大な粒子が形成され、そのため、後で行われる冷
間変形操作(伸線)が容易になる。
【0041】また、出発線の心線が前述の添加元素(F
e、Co、Ti等)を含んでいる場合には、有利なこと
に、本発明の熱処理が添加元素を単独で又は組合わせで
析出させることにより出発心線20の構造的硬化に寄与
し得る。
【0042】熱処理時に形成されたβ’相には、β’−
β遷移温度で45.5〜48.9重量%のZn濃度の組
成が対応する。熱処理時間は、冷却後に線11の層31
がβ’相の均質構造を保持するように選択する。そのた
めには、Cu−Zn状態図のβ’領域を限定する曲線の
向きを考慮して(図2の斜線部分参照)、β’相が4
6.5±0.5%のZn濃度の組成を有するのが好まし
い。
【0043】本発明では、熱処理に次いで、層31の表
面に形成された酸化物粒子を除去するための選択的酸洗
いを行う。この酸洗いは、次の伸線操作と同一のライン
で連続的に実施するのが好ましい。そのためには、線1
1を酸性浴に通す。
【0044】本発明では次いで、100%を超える伸線
率、好ましくは1000%を超える伸線率で、最終直径
が得られるまで伸線処理を行う。その結果、直径が50
〜500マイクロメートル、好ましくは100〜350
マイクロメートルであり、外側層3の厚さが5〜50マ
イクロメートルであり、外側層3と心線2との間に薄い
接合部32を有する線状電極1が得られる。
【0045】本発明の方法は、図3a〜3cに示すよう
に、従来の伸線ラインに容易に且つ経済的に組み込むこ
とができる。Znのデポジションは、図3c及び3bに
それぞれ示すように、伸線パスの始め又は終わりで実施
し得る。これに対し、選択的酸洗い操作は、特にダイス
の摩耗を制限するために、最終伸線パスの始めに実施す
るのが好ましい。従って、直径が極めて小さい電極を製
造する場合は多くの伸線パスを必要とするため、製造工
程は、図3b及び3cに示すようなシーケンスで終わる
ように、且つ最終パスで直径が大幅に縮小されるように
計算する。
【0046】本発明の別の目的は、銅又は銅合金を含む
金属心線2と、これを包囲するZn含有外側層3とを含
み、外側金属層3及び心線2が冷間引抜きされた状態に
あり、外側金属層3が均質β’相のCu−Zn合金から
なり、酸化物介在物を含んでおらず、外側層3と心線2
との間で外側金属層3の厚さ「e」より小さい厚さ「d
e」にわたってZn濃度が連続的に且つ急激に変化して
おり、そのため外側層3と心線2との間に大きな勾配
「d[Zn]/de」を有する接合部32が形成されて
いることを特徴とする放電加工用線状電極1を提供する
ことにある。尚、「d[Zn]」は外側層3のZn濃度
と心線2のZn濃度との差を表し、「de」は接合部3
2の厚さを表す(図5b参照)。
【0047】本発明では、本発明の接合部32を様々に
特徴付けることができる。
【0048】− 第1に、接合部32の亜鉛濃度勾配
(d[Zn]/de)によって特徴付けることができ
る。この勾配は本発明では5〜50重量%/マイクロメ
ートルのZn、好ましくは5〜30重量%/マイクロメ
ートルのZnである。
【0049】− 第2に、外側層3の厚さ「e」と接合
部32の厚さ「de」との比「e/de」によって特徴
付けることができる。この比は本発明では5より大き
く、好ましくは10〜20である。
【0050】これら2つの基準は同一方向で変化するが
同じ性質のものではない。しかしながら、本発明の接合
部を得るには、これら2つの基準の一方(勾配d[Z
n]/de又は比e/de)が満たされるだけで十分で
ある。好ましくは、「d[Zn]/deが5〜50%/
マイクロメートルのZnである」という条件、及び「e
/de」が5である」という条件を両方同時に満たす。
図4は本発明のこれらの基準を実際に記録された通りに
示し、図5bはこれを簡略化して示している。
【0051】金属心線2は好ましくは銅又は銅合金の線
である。銅合金としては通常、15〜36重量%のZn
を含む黄銅、好ましくは20%のZnを含む黄銅(Cu
Zn20)を選択する。心線2の銅又は前記銅合金は、
線を硬化するためにFe、Co、Ti、P、Mg、C
r、Zr及びSiから選択した1種類以上の元素を、こ
れら元素の総重量%が0.1〜1重量%となるように含
み得、及び/又はAl、Sn、Niから選択した1種類
以上の元素を総重量%が4%に達し得るように含み得
る。
【0052】本発明の好ましい実施態様ではないが、可
能な実施態様の1つでは、心線2が、機械的特性に優れ
た金属又は合金(鉄、鋼鉄、タングステン等)の中央心
線を銅又は銅合金の層で被覆したものからなる。
【0053】本発明の外側金属層3はその厚さ全体にわ
たってほぼ一定のZn及びCu濃度を有する(Zn濃度
は約46.5%±1)。この層の厚さは通常、5〜50
マイクロメートルである。
【0054】本発明では、線1の直径が50〜500マ
イクロメートルの場合には、層3の厚さが5〜50マイ
クロメートルであり、接合部32の厚さが0.5〜10
マイクロメートルである。直径100〜350マイクロ
メートルの線1では、接合部32の厚さは1〜5マイク
ロメートルが好ましい。
【0055】金属心線2は40〜450マイクロメート
ルの直径を有し得る。心線2の少なくとも外側部分は銅
又は銅合金からなり、ほぼ一定の組成を有する。合金と
しては、Zn濃度が15〜36重量%の黄銅を選択し得
る。接合部32でのZn濃度の差(d[Zn])は従っ
て10%以上である(外側層3のZn濃度が46%、心
線2か又は外側層3と接触している心線2部分のZn濃
度が36%)。
【0056】本発明の接合部32は、本発明の亜鉛濃度
勾配(d[Zn]/de)が5〜50重量%/マイクロ
メートルのZnであるか、又はe/de比が5〜30で
あると特に有利である。実際、線の各部分が固有の機能
(心線2の場合には機械的耐性及び電気伝導率、外側層
3の場合には耐摩耗性、熱散逸性及び放電安定性)を最
適に遂行できるように、前記勾配(又は比)は大きい方
が有利である。しかしながら一方でこの勾配(又は比)
は、接合部32を形成する心線2及び外側層3の相互浸
透が心線2と外側層3との結合を極めて強力なものとす
るに十分であるように、限定された値を有することが重
要である。
【0057】出発金属線として、伸線パスにかけられた
直径0.85mmの半硬質状態のCuZn20黄銅線を
一巻き選択した。図3bに示すように、伸線ラインの末
端に亜鉛被覆装置を配置して、電着により厚さ30マイ
クロメートルのZn均質層で前記線を被覆した。その結
果、直径0.91mmの線10が一巻得られた。
【0058】次いで、空気雰囲気の炉で6時間(予備試
験に基づいて決定した時間)にわたり450℃±5℃の
温度で一巻きの線10を熱処理した。その結果、直径
0.76mmの心線21と、厚さ0.075mmの層3
1とで構成された線11が一巻き得られた。層31と心
線21との間の接合部の厚さは6マイクロメートルであ
る。
【0059】伸線ラインの前部に酸化物の選択的酸洗い
を行うための酸性浴を配置した後、一巻きの線11を同
一ラインで酸洗い及び伸線にかけて、直径0.21mm
の中央心線2と、厚さ20マイクロメートルの層3と、
厚さ1.7マイクロメートルの接合部32とで構成され
た直径0.25mm(伸線率1325%)の放電加工用
電極1を得た。
【0060】この線の特性は下記の通りである: 電気伝導率:29%IACS 破断荷重(Rm):910MPa 破断伸び:1.5% 外側層3の硬度:100HV(焼きなまし状態、20g
で) 心線2の硬度:75HV(焼きなまし状態、20gで) 得られた線1の断片を分光分析(X線)にかけ且つ光学
電子顕微鏡で調べたところ下記の事項が判明した: − 層3はZn含量46.5%のCu−Znのβ’相か
らなる。
【0061】− 層3は厚さ全体にわたって均質であ
り、酸化物介在物を含んでない。
【0062】− 勾配d[Zn]/deが15重量%/
マイクロメートルのZnに等しく、比e/deが12で
ある。
【0063】本発明で製造した線と市販の線とを放電加
工機にかけて比較した結果、特に放電の安定性に関し
て、本発明の線の方が優れていることが判明した。これ
は、被加工製品の優れた表面特性につながる利点であ
る。
【0064】本発明では、技術的性能と経済的性能とを
バランスよく得ることができる。
【0065】実際本発明は、技術的性能に関しては、合
金Cu−Znの均質なβ’相からなり介在物及び不均質
沈澱物を含まない外側層が形成されるという利点を有す
る。これは、低温(419℃)で溶融するという欠点を
有するZn層か又は複数の相を含むCu−Zn合金層を
形成せしめる方法より技術的に優れている。
【0066】本発明はまた、心線2と層3との間の接合
部32で化学組成が極めて急激に、但し連続的に変化す
るという利点も有する(図5b)。
【0067】最後に挙げた利点は特に重要であり、本発
明ではこれによって、先行技術の状態、即ち図5aに示
すような、心線の表面に亜鉛の単一層をデポジットした
場合の化学組成の不連続性、又は図5cに示すように、
Zn濃度が実質的に線1の全長にわたり大きな厚みにわ
たって連続的に変化している状態とは全く異なる状態が
得られる。
【0068】経済的観点では、本発明の方法が特別な投
資を殆ど必要とせず(亜鉛層デポジット装置5及び酸洗
い装置6のみ)、図3a〜図3cに示すように従来の線
製造方法に問題なく組み込むことができるという点が重
要である。従来の線製造方法は通常中間焼きなましを必
要とし、且つ本発明の方法はこの焼きなまし処理を均質
β’相の生成に使用するため、本発明の方法を実施する
ためのコスト(亜鉛等の材料費は別とする)は通常の伸
線操作のコストとほぼ同じである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の種々のステップを、種々の段階
における線の断面図で示す説明図である。即ち、最初の
ステップで線20の周りにZn層を付着させて、心線2
0と外側層30とを含む線10を得、次のステップで線
10を炉で熱処理して、心線21と外側層31とを含む
線11を得、更に次のステップで線11を酸洗い及び伸
線にかけて、心線2と外側層3とを含む本発明の線1を
形成する。
【図2】Cu−Zn系の状態図(American S
ociety for Metals−1986出版の
“Binary Alloy Phase Diagr
amから引用)を示している。横座標はZnの重量%、
縦座標は温度である。β’層の領域は斜線部分で示され
ている。
【図3a】従来の伸線ラインを簡単に示す説明図であ
り、幾つかのダイス7と中間焼きなまし炉4とが示され
ている。
【図3b】従来の伸線ラインを放電加工用の線1の製造
に適合させたものを簡単に示す説明図であり、Znデポ
ジット装置5が伸線パスの終端に配置されており、酸洗
い装置6が伸線パスの冒頭に配置されている。
【図3c】図3bと類似の説明図であるが、亜鉛デポジ
ット装置が最後から2番目の伸線パスの冒頭に配置され
ている。
【図4】本発明の実施例の線1の径方向(横座標)のZ
n含量(縦座標)の記録を示すグラフである。この図
は、外側層3のZn含量がほぼ一定であり(勿論、信号
のバックグラウンドノイズは考慮しない方がよい)、線
1の外側層3と心線2との接合部で急激に減少すること
を示している(d[Zn]=26.5%、de=1.7
マイクロメートル、e=20マイクロメートル)。
【図5a】熱処理せずに銅の心線の表面に亜鉛を付着さ
せた先行技術の場合の亜鉛濃度の変化(縦座標)を半径
Rの関数として示すグラフである。
【図5b】心線2と層3との間の厚さdeの接合部32
の組成が変化している本発明の場合の亜鉛濃度の変化
(縦座標)を半径Rの関数として示すグラフである。
【図5c】先行技術の熱処理を行って銅の心線の表面に
亜鉛を付着させた場合の亜鉛濃度の変化(縦座標)を半
径Rの関数として示すグラフである。
【符号の説明】
1 線状電極 2、20、21 心線 3、30、31 外側層 32 接合部 5 亜鉛層デポジット装置 6 酸洗い装置
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年8月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項19
【補正方法】変更
【補正内容】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 アンヌ・ボアラン フランス国、27200・ベルノン、リユ・ド ウ・ノルマンデイ、20

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 銅を含む金属線の周りに亜鉛の外側金属
    層を形成し、この金属線を熱処理し、次いでその断面を
    縮小する操作を含み、放電加工で使用するのに適してお
    り且つより特定的には加工時の放電安定性が高い電極を
    経済的に製造するために、 a)製造すべき電極の直径より大きい直径を有する銅含
    有金属線の周りにZn層を形成して線を形成し、 b)前記線を任意に伸線した後、二元合金Cu−Znの
    β’−β遷移温度より低い温度で、亜鉛に富んだ前記Z
    n層がβ’相のCu−Zn層に変態するのに必要な時間
    にわたり、酸化雰囲気下で前記線を拡散用熱処理にかけ
    て、心線とCu−Znのβ’相からなる層とを含む線を
    形成し、 c)次いで、前述のCu−Znのβ’相からなる層の表
    面に存在する酸化物粒子を除去するために、前記線の選
    択的酸洗いを行い、 d)最後に、酸洗いした線を100%を越える伸線率で
    最終直径まで伸線して、外側層で被覆された心線からな
    る電極を得る ことを特徴とする放電加工用電極の製造方法。
  2. 【請求項2】 金属線が銅又は銅合金の線である請求項
    1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記銅合金が、Zn含量15〜36重量
    %の黄銅である請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 好ましくはZn含量20%±2%の黄銅
    を選択する請求項3に記載の方法。
  5. 【請求項5】 金属線が、Fe、Co、Ti、P、M
    g、Cr、Zr、Siから選択した1種類以上の元素を
    これら元素の総重量%が0.1〜1%となるように添加
    した銅又は銅合金で形成されている請求項2から4のい
    ずれか一項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 金属線が、Al、Sn、Niから選択し
    た1種類以上の元素を4%に達し得る総重量%で添加し
    た銅又は銅合金で形成されている請求項2又は5に記載
    の方法。
  7. 【請求項7】 金属線が、機械的特性に優れた金属又は
    合金(鉄、鋼鉄、タングステン等)の中心部を、電気伝
    導率の高い銅又は銅合金の層で被覆したものからなる
    「複合」線である請求項1から6のいずれか一項に記載
    の方法。
  8. 【請求項8】 前記熱処理を400〜455℃で行う請
    求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記熱処理を好ましくは450℃±5℃
    で行う請求項8に記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記熱処理の後で且つ最後の伸線パス
    の前に、酸性媒質中で線の選択的酸洗いを行う請求項1
    から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 【請求項11】 最後の伸線パスの伸線率を好ましくは
    1000%以上とする請求項1から10のいずれか一項
    に記載の方法。
  12. 【請求項12】 銅又は銅合金を含む金属心線と、これ
    を包囲するZn含有外側層とを含み、外側金属層及び心
    線が冷間引抜きされた状態にあり、外側金属層が均質
    β’相のCu−Zn合金からなって酸化物の介在物を含
    んでおらず、外側層と心線との間で外側金属層の厚さよ
    り小さい厚さにわたってZn濃度が連続的に且つ急激に
    変化しており、そのため外側層と心線との間に大きな濃
    度勾配を有する接合部が形成されていることを特徴とす
    る放電加工用電極。
  13. 【請求項13】 外側金属層が、厚さ全体わたってほぼ
    一定である約46.5重量%±1重量%のZn濃度を有
    している請求項12に記載の電極。
  14. 【請求項14】 前記濃度勾配が、5〜50重量%/マ
    イクロメートルのZn、好ましくは5〜30重量%/マ
    イクロメートルのZnである請求項12又は13に記載
    の電極。
  15. 【請求項15】 外側層の厚さ/接合部の厚さの比が5
    より大きく、好ましくは10〜20である請求項12又
    は13に記載の電極。
  16. 【請求項16】 接合部の厚さが0.5〜10マイクロ
    メートル、好ましくは1〜5マイクロメートルである請
    求項12から15のいずれか一項に記載の電極。
  17. 【請求項17】 金属心線が銅又は銅合金の線である請
    求項12から16のいずれか一項に記載の電極。
  18. 【請求項18】 前記銅合金が、Zn含量15〜36重
    量%の黄銅である請求項17に記載の電極。
  19. 【請求項19】 前記黄銅が、好ましくはZn含量20
    重量%±1重量%の黄銅である請求項18に記載の電
    極。
  20. 【請求項20】 金属心線が、Fe、Co、Ti、P、
    Mg、Cr、Zr及びSiから選択した1種類以上の元
    素を総含量0.1〜1重量%で添加した銅又は銅合金で
    形成されている請求項17から19のいずれか一項に記
    載の電極。
  21. 【請求項21】 金属心線が、Al、Sn、Niから選
    択した1種類以上の元素を4重量%に達し得る総含量で
    添加した銅又は銅合金で形成されている請求項17から
    20のいずれか一項に記載の電極。
  22. 【請求項22】 金属心線が、機械的特性に優れた金属
    又は合金(鉄、鋼鉄、タングステン等)の中央心線を銅
    又は銅合金の層で被覆したものからなる請求項12から
    21のいずれか一項に記載の電極。
  23. 【請求項23】 直径が50〜500マイクロメートル
    であり、外側層の厚さが5〜50マイクロメートルであ
    る請求項12から18のいずれか一項に記載の電極。
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