JP2014050945A - ワイヤ電極 - Google Patents

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Abstract

【課題】加工精度と加工速度を両立する黄銅複合ワイヤ電極が望まれている。
【解決手段】本発明のワイヤ電極1は、コア10と、表層20と、隔壁層30とで成る。コア10は、母線を所定の線径に縮径して得た重量比が銅60重量%以上70重量%以下で亜鉛30重量%以上40重量%以下の黄銅で成る。表層20は、5μm以上の厚さのβ相の拡散層で亜鉛濃度がおおよそ45重量%から48重量%の所定の亜鉛濃度のリッチ亜鉛黄銅で成る。表層20は、黄銅の芯線に5μmから20μmの電気亜鉛鍍金を施した素線を水平に張架して所定の一定走行速度で水平方向に直線走行させながら被覆層が亜鉛リッチ黄銅になるまで一定の所定温度雰囲気下に曝して連続的に輻射的に均等に加熱し熱拡散させて実質β相だけの拡散層に変態させた後で所望の線径に伸線加工して形成される。
【選択図】図1

Description

本発明は、ワイヤカットの工具電極として使用されるワイヤ電極に関する。特に、黄銅のワイヤ電極であって、黄銅の芯線に亜鉛鍍金を施した素線を熱拡散させて生成され、黄銅のコアと拡散層の表層とを含む多層構造のワイヤ電極に関する。
ワイヤ電極は、金属で成る線径がφ0.03mm以上φ0.3mm以下の長尺線状のワイヤカットで用いられる工具電極である。ワイヤ電極の材質は、放電加工特性に重要な影響を与える。ワイヤ電極の材質が影響を与える放電加工特性は、具体的に、加工速度と、加工面粗さと、加工形状精度(電極消耗量)である。ただし、特段のことわりがない限り、加工面粗さと加工形状精度を合わせて、単に加工精度という。
ワイヤ電極の外周面の表面粗さは、被加工物の加工面に転写されて、加工面粗さに影響を与える。したがって、ワイヤ電極の表面粗さは、可能な限り小さくされ、外周面が滑らかであることが望ましい。ただし、外周面が滑らかであっても、ワイヤ電極が放電加工に供されると、放電エネルギによって消耗し、表面が荒れて線径が細くなる。そのため、ワイヤ電極は、所定の走行速度で加工間隙に送り出されて、常時未使用の新しい部位が加工間隙に供給されている。
走行するワイヤ電極は、被加工物を挟んで上下に設けられる一対のワイヤガイド間に所定の張力をもって張架されている。ワイヤ電極を位置決めするワイヤガイドは、ワイヤ電極との間に数μmから十数μmの隙間(クリアランス)を設けている。そのため、走行するワイヤ電極の中心位置は、厳密には、ワイヤガイドに対して絶えず僅かに変動している。また、ワイヤ電極は、加工間隙で間欠的に発生する放電の反力の影響を受けている。
その結果、ワイヤ電極は、一対のワイヤガイド間において全体的に中央部分が膨らんで見えるように振動している。振動に因る外形の中脹らみは、放電加工後の加工形状における加工誤差となって現れる。ワイヤ電極の張力を大きくするほど、ワイヤ電極の振動の振幅を小さく抑えることができ、加工誤差をより小さくすることができる。したがって、抗張力の高いワイヤ電極ほど高い加工精度を得ることができると言える。ただし、ワイヤ電極は、常に放電による熱に曝されるので、一定の耐熱性を備えている必要がある。
加工速度は、加工間隙に間欠的に発生する放電一発毎の放電エネルギの大きさと繰返し周波数に依存している。放電エネルギは、放電一発における放電電流の電流密度が高いほど大きく、放電の繰返し周波数は、各放電の間の休止時間が短いほど高くすることができる。したがって、理論的に、ピーク電流値が高くパルス幅が小さい放電電流パルスを供給できる電気伝導度が高いワイヤ電極ほど加工速度を速くすることができる。
しかしながら、放電エネルギが大きいほどワイヤ電極の消耗量が多く線径がより細くなる傾向にあるので、ワイヤ電極に大きい張力を付与した状態で加工速度を上げるために放電エネルギを増大すると、ワイヤ電極が断線する。ワイヤ電極の断線は、加工を中断させて加工時間を余計にかけるので、加工工程における平均加工速度の低下の原因になる。また、ワイヤ電極が断線すると、その弾みでワイヤ電極が被加工物と接触したり、瞬間的に短絡電流が流れたりして、被加工物が傷付いて加工精度の低下の原因になる。
したがって、放電エネルギを増大するときには、ワイヤ電極の張力を緩めることが要求される。一方で、放電エネルギを増大すると、ワイヤ電極が受ける放電の反力の大きさがより大きくなる。そのため、ワイヤ電極の振動の振幅が大きくなる。その結果、加工精度が低下してしまう。
このようなことから、ワイヤ電極には、本質的に、放電の熱に強く抗張力が高いことと、導電性に優れていることとが同時に求められる。放電加工に適する良導電性のワイヤ電極の基礎構造材料になり得る一般的な金属は、銀と銅である。銅は、銀に比べて電気伝導度が劣るが、銀よりも単価が低く、比較的他の金属との相性がよい。また、銅は、必要十分な展延性と柔軟性を有しているので、伸線加工がしやすい。
抵抗力の観点からワイヤ電極を選択するとき、タングステン製のワイヤ電極が有力である。タングステン製のワイヤ電極は、銅に比べて電気伝導度が小さく、曲げに対する復元力が小さく、また、単価が高いが、熱に対して強く抗張力に優れていて消耗量も少ないので、もともと供給される放電エネルギが小さく、相当高い加工精度が要求される放電加工の領域で限定的に使用されることがある。特に、線径がφ0.1mm以下のワイヤ電極に向いている。また、強度が大きい鋼鉄製のワイヤ電極が存在するが、使用用途が極めて限定されるので、詳しい説明を省略する。
不純物を除く銅単体のワイヤ電極が必ずしも銅合金のワイヤ電極に対して優れているというわけではない。総合的にワイヤ電極の基礎構造材料を評価するなら、銅単体よりも、むしろ銅合金のワイヤ電極が優位であることがある。実際に、近年は、専ら銅単体よりは銅合金のワイヤ電極が多く使用されている。特定有害金属に指定されている金属を含むべきではないから、ワイヤ電極の基礎構造材料として適用できる銅合金と言えば、一般に、黄銅(銅亜鉛合金)または白銅(銅ニッケル合金)であろうが、放電加工特性から、殆どの銅合金のワイヤ電極の基礎構造材料は、黄銅であると言っても過言ではない。
ところで、銅または銅合金のワイヤ電極の放電加工特性を向上させるために、従前から銅または銅合金の芯線に銅よりも融点が十分に低い金属を被覆して、銅または銅合金のコアと表層の二層以上の多層構造を有する、いわゆる複合ワイヤ電極が実施されている。とりわけ、加工速度を向上させるためには、黄銅の芯線に亜鉛鍍金を施した後に伸線加工をして形成された複合ワイヤ電極(以下、亜鉛鍍金黄銅複合ワイヤ電極という)が優れていることがよく知られている。
複合ワイヤ電極は、性質の異なる複数の層を有していない構造の黄銅ワイヤ電極(以下、複合ワイヤ電極に対して単層ワイヤ電極という)と比べて、耐熱性および抗張力と導電性とを両立させる上で優位にある。特に、放電加工特性を向上させる場合には、亜鉛鍍金黄銅複合ワイヤ電極が有望である。
亜鉛鍍金黄銅複合ワイヤ電極は、黄銅に比べて溶融温度が十分に低い亜鉛の表層が放電にともなって発生する熱の多くを奪って溶融飛散し、コアを熱から保護するため、加工精度を維持しやすく、しかもより大きい電流密度の放電電流を供給することができる利点がある。その結果、亜鉛鍍金黄銅複合ワイヤ電極では、黄銅単層ワイヤ電極に比べて加工速度が向上する。
しかしながら、鍍金によって黄銅の芯線に被覆された亜鉛の被覆層(亜鉛鍍金層)は、最終的に複合ワイヤ電極のコアとなる素線の芯線に定着しにくい。そのため、伸線加工における線引きによって縮径するときに、表面が荒れて、部分的には被覆層が剥離してしまうことがある。特に、電気亜鉛鍍金では、亜鉛の被覆層をあまり厚くすることができず、ワイヤ電極の標準的な線径であるφ0.2mmまで縮径することが容易ではない。一方、溶融亜鉛鍍金では、均一で表面が滑らかな亜鉛の被覆層を形成することが難しい。また、外周面がワイヤガイドと接触するときに不要な金属微細粉をより多く発生させる。
特許文献1は、黄銅の芯線に亜鉛を被覆した後に熱処理を行なってコアと亜鉛の表層との間に黄銅の拡散層を形成した三層構造の複合ワイヤ電極を開示している。特許文献1の発明によると、拡散層が表層の亜鉛の被覆層を剥離しにくくし、伸線加工を比較的容易に行なうようにすることができる。しかしながら、亜鉛鍍金に特有の表面粗さと消耗量の多さによって、年々高まってきている加工精度に対する要求を満足することが難しくなってきている。
特許文献2は、銅合金の芯線に5μm程度の亜鉛鍍金を施した素線に亜鉛の被覆層を完全に合金化するまで長時間熱拡散を行なって面心立方格子の結晶構造のα相と体心立方格子の結晶構造のβ相で成るαβ混晶の拡散層を放電加工に曝される表層とした亜鉛鍍金黄銅複合ワイヤ電極を開示している。特許文献2の発明のワイヤ電極は、線引きしても破壊されにくい程度の展延性があり、外周面の表面粗さが小さく、消耗量も少なくなるので、加工精度が向上する。ただし、加工速度があまり向上しない。
特許文献3は、純銅の芯線に熱拡散によって表層がβ相になる厚さの亜鉛を被覆した素線を第1温度で熱拡散させた後に第2温度で再度熱拡散させることによってα相のコアとβ相の表層が形成された黄銅複合ワイヤ電極を開示している。特許文献3の発明は、安価に黄銅複合ワイヤ電極を得ることができる。しかしながら、芯線が熱拡散黄銅に変質してしまうとともに、十分な厚さの表層を均一に形成させることが難しく、全体的に亜鉛濃度と態様にばらつきが生じる。そのため、品質が安定せず、放電加工の電気加工条件の選定が難しい。
特許文献4は、銅または銅合金の芯線に亜鉛鍍金を施してから温度上昇速度が毎秒10℃以上で500℃ないし800℃まで上昇させて10秒ないし300秒の間加熱拡散させた後に毎秒10℃以上で冷却し、拡散時間を調整することによって、βγ相、γε相、またはβ相−ε相の拡散層を選択的に表層として形成した亜鉛鍍金黄銅複合ワイヤ電極を開示している。
ε相の拡散層は、原子密度が高い六方最密格子の結晶構造を有する。結晶構造における原子密度が高いほど、放電エネルギの効率が向上することが知られている。具体的に、表層がα相、αβ相、β相、ε相の態様の順に同一の電気エネルギでより大きい放電エネルギを得ることができる。また、表面粗さが向上する。そのため、表層がε相の拡散層の特許文献4の発明のワイヤ電極は、黄銅単層ワイヤ電極に対して、加工精度をあまり低下させずに、加工速度を向上させることができる。
特開昭59−41462号公報 特開平1−127228号公報 特開平9−285918号公報 特開平8−318434号公報
ワイヤ電極の外周面から5μm程度の深さまでは放電加工に供されるので、放電加工特性を十分に得るためには、ε相の拡散層の表層は、5μm以上の厚さが必要である。しかしながら、六方最密格子の結晶構造を有するε相の拡散層は、展延性に乏しく、強固で塑性変形しにくいので、熱拡散後に表層を破壊することなく線引きによって縮径して得ることができる表層の厚さは、2μm前後が限界である。そのため、加工速度が向上するものの、理論上の期待できる加工速度を達成することができない。
芯線が銅または展延性を有する脆くない性質の黄銅であるなら、芯線に変形を吸収させることによって、ε相の拡散層のように硬い表層を破壊せずに素線を縮径することができる可能性がある。しかしながら、芯線の変形量に対して表層の変形量が小さいため、表層の厚さが5μm以上ある場合は、縮径率が大きいと芯線の変形に表層の変形が追従できず、表層がひび割れたり、剥離するおそれが高い。複数回の芯線工程で段階的に少しずつ縮径する場合は、伸線加工に要する時間が相当長くなって、生産性を著しく低下させる。
本発明は、上記課題に鑑みて、伸線加工が比較的容易で、単層黄銅ワイヤ電極と同等以上の加工精度を得ることができるとともに、加工速度をより向上させることができる改良された黄銅複合ワイヤ電極を提供することを主たる目的とする。その他の本発明のワイヤ電極の有利な点は、発明の詳細な説明において、その都度説明する。
本発明のワイヤ電極は、上記課題を解決するために、黄銅で成るコアと、母線を所定の線径に縮径して得た黄銅の芯線に電気亜鉛鍍金を施して生成される亜鉛の被覆層を有する素線を加熱炉中に水平に張架して所定の一定走行速度で水平方向に直線走行させながら被覆層が所定の亜鉛濃度の亜鉛リッチ黄銅になるまで所定の一定温度雰囲気下に曝して連続的に輻射的に均等に加熱し熱拡散させて被覆層を実質β相だけの拡散層に変態させた後に素線を所望の線径に伸線加工することによって形成される5μm以上の厚さを有する表層と、を含んで成る。
このときの亜鉛鍍金前の芯線の線径は、φ0.7μm以上φ1.2μm以下であることが好ましい。また、このときの亜鉛鍍金後の亜鉛の被覆層は、5μm以上20μm以下の厚さであることが好ましい。
また、本発明のワイヤ電極は、好ましくは、加熱が450℃以上650℃以下の範囲の一定温度雰囲気下で行なわれている。望ましくは、加熱が540℃以上600℃以下の範囲の一定温度雰囲気下で行なわれている。また、亜鉛リッチ黄銅の亜鉛濃度が45重量%以上48%重量以下である。
また、本発明のワイヤ電極は、コアが銅60重量%以上70重量%以下で亜鉛30重量%以上40重量%以下の重量比の黄銅で成る。特に、熱拡散中にコアと表層との間に形成される厚さ約1μm以下の隔壁層を含んでなる。
亜鉛を熱拡散させるときに、拡散時間の経過とともに亜鉛の被覆層の態様がα相から、αβ相、β相、ε相の順番に変態していく。拡散過程で拡散層がβ相の態様を維持する時間が極めて短く、熱に直接曝される表面側ほど早くγ相ないしε相を含む拡散層が形成されていく。そのため、素線を加熱して熱拡散させるだけでは、拡散速度にばらつきが生じて、表層にβ相だけの拡散層を所要の厚さで均一に形成させることが困難である。特に、亜鉛の被覆層が厚いと、それだけ拡散時間が長くかかるため、内側の極薄いβ相と外側の厚いε相との二層に分離した拡散層が形成されてしまう。
本発明のワイヤ電極は、熱拡散前の素線における亜鉛の被覆層が電気亜鉛鍍金によって生成されているので、表面荒れを抑えることができ、より滑らかである。特に、電気亜鉛鍍金法では、5μm以上20μm以下の均一の厚さの亜鉛の被覆層を得ることができるので、亜鉛鍍金工程後の熱拡散工程における拡散時間を比較的短くすることができ、放電加工特性の向上に必要十分な厚さの実質β相だけの拡散層の表層をより容易に確実に得ることができる。
そして、亜鉛の被覆層が所定の亜鉛濃度の亜鉛リッチ黄銅の拡散層に変態するまでの時間を目安として、厳密な温度管理がされた所定の一定温度雰囲気下で、素線を一定走行速度で水平方向に直線走行させて亜鉛の被覆層を連続的に輻射的に均等に加熱して拡散させる。そのため、素線の周方向と長さ方向の全域に渡って満遍なく正確に一定時間だけ均等に所定温度の熱が付与される。その結果、ワイヤ電極における放電加工に曝される表層の領域の全てがβ相の拡散層になっている。
したがって、本発明のワイヤ電極は、表層が所定の亜鉛濃度の亜鉛リッチ黄銅で5μm以上の原子密度がα相の面心立方格子の結晶構造よりも高い体心立方格子の結晶構造を有する実質β相だけ拡散層であるので、放電加工の電気加工条件に対応して加工速度が黄銅単層ワイヤ電極に比べて20%ないし30%向上する。また、本発明のワイヤ電極は、厚さが均一で表面粗さが小さく滑らかな表層を有するので、品質が安定し、黄銅単層ワイヤ電極と同等以上の加工精度を得ることができる。また、表層のβ相がε相に比べて展延性を有しているので、走行中に発生する不要な金属微細粉の量が少なく抑えられる。
特に、素線の表層においてβ相への遷移が進んだところで芯線と拡散層との間に数μm以下、通常は約1μm以下の“隔壁層”が形成される。隔壁層は、一定温度雰囲気下で連続的に輻射的に均等に加熱され被覆層の熱拡散が進んで少なくとも亜鉛濃度が45重量%以上48重量%以下の範囲で黄銅化したときには形成されていることが判明した。隔壁層は、拡散層が全体的に厚さ40μm以上で行き渡るようにβ相に変態したあたりで形成されて、拡散過程の途中で芯線と拡散層とを急に分断して拡散速度を低下させる作用を有する。
したがって、隔壁層によって均一にβ相の拡散層が形成されているところで拡散層の亜鉛濃度が低下しにくくなり、β相がγ相ないしε相に移行することが遅れる。そのため、隔壁層を有するワイヤ電極では、コアの特性が保持されているとともに、亜鉛の被覆層が所定の亜鉛濃度の亜鉛リッチ黄銅になった状態で留め置かれている。この間に、直ちに加熱を停止して、素線を空気に晒して冷却しているので、素線の亜鉛の被覆層がβ相の拡散層に固定されている。
隔壁層を有する本発明のワイヤ電極は、拡散作用からコアが保護されるので、母線を鋳造するときの銅と亜鉛の重量配分による特性が失われずに製造されていて、予定されている必要な導電性と、抗張力と、真直性とを兼ね備える。そのため、本発明のワイヤ電極は、生産性に優れ、亜鉛鍍金黄銅複合ワイヤ電極における放電加工特性が改善されており、より安価に提供されることができる。
本発明のワイヤ電極の構造を示す断面図である。 本発明のワイヤ電極の製造プロセスを示すフローチャートである。 電気亜鉛鍍金後の素線の表層を拡散させる加熱炉の概容を示す加熱炉の側面図である。
図1に、本発明のワイヤ電極の構造が断面で示されている。以下に、本発明のワイヤ電極の構造上の特徴を説明する。本発明のワイヤ電極1は、コア10と、表層20と、隔壁層30と、で成る。ただし、隔壁層30は、ワイヤ電極の放電加工特性に直接影響を与えないので、本発明のワイヤ電極は、実質的に、二層構造の黄銅複合ワイヤ電極とみなすことができる。
コア10は、黄銅である。コア10は、具体的に、1重量%未満の不純物を除いて銅と亜鉛の相対的な重量比が銅60重量%以上70重量%以下で亜鉛30重量%以上40重量%以下の黄銅で成る。ワイヤ電極1が成形される前の素線における亜鉛の被覆層は、電気亜鉛鍍金によって生成されているので、コア10の亜鉛濃度が40重量%を超えると、電気鍍金浴槽に芯線を浸浴させたときに芯線が溶解しやすくなり、外形を維持できなくなる。また、亜鉛濃度が30重量%を下回ると、ワイヤ電極1に必要な真直性、いわゆる腰の強さが不足する。望ましいコア10の材質は、おおよそ銅65重量%で亜鉛35重量%の黄銅である。
表層20は、全体が殆ど全て体心立方格子の結晶構造を有するβ相の拡散層である。ただし、本発明のワイヤ電極の作用効果を得ることができる範囲で、表層の拡散層の中にα相もしくはγ相の態様を僅かに含むことが許される。表層20の拡散層は、亜鉛濃度40重量%よりも亜鉛を多く含む、いわゆる亜鉛リッチ黄銅で成る。特に、隔壁層30を有する実施の形態のワイヤ電極1では、望ましくは、表層20の亜鉛濃度が45重量%以上48重量%以下である。したがって、体心立方格子の結晶構造と融点の低い亜鉛の作用によって、加工速度が大幅に向上する。
表層20は、放電加工において放電に曝される少なくとも5μm以上の厚さを有する。表層20は、ワイヤ電極1が成形される前の素線の段階で電気亜鉛鍍金によって5μm以上でおよそ20μm以下の亜鉛の被覆層が均一に生成されていて、被覆層が熱拡散によって厚さが40μm以上80μm以下程度まで拡大し、後の伸線工程において素線が縮径されるときに展延して厚さが5μm以上10μm程度に縮小した拡散層である。したがって、ワイヤ電極1は、安定して期待される放電加工特性を有する。
隔壁層30は、熱拡散工程における熱拡散中に、ワイヤ電極1が生成される前の素線における亜鉛の被覆層からβ相の拡散層への遷移が進んだところで芯線と拡散層との間に形成される。隔壁層30は、厚さが数μmに満たず、通常は1μm以下の薄皮状の層になっている。隔壁層30は、放電に直接曝される5μm以上の厚さを有する表層20の内側にあるので、ワイヤ電極1の放電加工特性に影響を与えない。
隔壁層30は、極めて薄いため、未だ形成される過程と成分および構造について正確に解析されるに至っていたないが、電気亜鉛鍍金で均一に形成された亜鉛の被覆層を有する素線の周方向と長さ方向の全域に渡って満遍なく輻射的に均等に所定温度の熱を一定時間付与するときに形成されるようである。
隔壁層30は、厳密には、電気亜鉛鍍金が施された素線の亜鉛の被覆層の全体が殆ど同じ拡散速度でばらつきなく熱拡散され、ちょうど領域の大半がβ相の拡散層に変態して拡大したところで芯線と拡散層との間に形成されている。このときに、亜鉛の被覆層が黄銅化した拡散層の亜鉛濃度がおおよそ45重量%以上48重量%になっている。隔壁層30は、芯線と拡散層との間を急に分断するため、拡散速度を極端に低下させる。その結果、隔壁層30は、拡散層の亜鉛濃度の低下を遅らせて、β相がγ相ないしε相に変態する速度を遅くする。
したがって、隔壁層30は、線径がφ0.7mm以上φ1.2mm以下の黄銅の芯線の表面に電気亜鉛鍍金を施して形成された厚さが5μm以上20μm程度以下の亜鉛の被覆層を輻射的に加熱して45重量%以上48重量%の亜鉛リッチ黄銅に合金化するときに、実質β相だけの拡散層が40μm以上80μm程度以下に拡大したところで拡散反応を遅らせて亜鉛の銅に対する重量比が銅60重量%以上70重量%以下で亜鉛30重量%以上40重量%以下の黄銅で成る芯線を保護する、という複数の作用を有する。
このように、本発明の複合ワイヤ電極1は、銅60重量%以上70重量%以下で亜鉛30重量%以上40重量%以下の黄銅で成るコア10と、厚さが均一に5μm以上で実質的にβ相だけの亜鉛リッチ黄銅の拡散層である表層20と、を含んでなるので、安定した品質を有し、単層黄銅ワイヤ電極よりも加工速度が大幅に向上し、単層黄銅ワイヤ電極と同等以上の加工精度で、取り扱いやすく、十分な導電性と、抗張力と、真直性を兼ね備えている。そして、拡散層を破壊せずに伸線加工をすることができるので、生産性が大幅に向上し、より安価に提供することができる利益を有する。
次に、本発明のワイヤ電極を製造する方法の一例を具体的に説明する。以下に具体的に示される実施例は、銅65重量%で亜鉛35重量%の黄銅で成るコア10と厚さ5μmで亜鉛濃度46重量%のβ相の拡散層の表層20とを含んでなり、線径がφ0.2mmの複合ワイヤ電極を製造するプロセスである。図2は、本発明のワイヤ電極の製造プロセスをフローチャートで示す。図3には、本発明のワイヤ電極の製造プロセスにおける熱拡散工程で用いられる加熱炉の概容が示されている。
本発明のワイヤ電極を製造するプロセスの第1の工程は、黄銅の母線を生成するために、所定の割合で原材料の銅と亜鉛を溶解炉に投入して溶融させ混合する黄銅生成工程である。具体的に、溶解炉に投入した銅または亜鉛の濃度を測定しながら溶融している銅と亜鉛の混合比が最終的にワイヤ電極1のコア10における所望の重量比になるように、銅板または銅のインゴットと亜鉛の粉体を選択的に溶解炉に投入する。
ワイヤ電極1は、後に詳しく説明されるが、熱拡散工程においてコア10が熱拡散による変質から保護される。そのため、ワイヤ電極1を製造するにあたって、黄銅生成工程において、コア10の黄銅の重量比の変動を想定して銅と亜鉛を混合する必要がなく、コア10に要求される重量比と同じ割合で銅と亜鉛を混合することができる。その結果、ワイヤ電極の製造がより容易であるという利点を有する。また、ワイヤ電極の品質が安定し、製造がより容易であるという利点がある。
第2の工程は、ワイヤ電極1のコア10になる母線を鋳造する母線鋳造工程である。母線は、最終的に要求される所望の混合比で混合され溶融している黄銅を溶解炉から線状に連続的に流し出しながら冷却して生成される。母線は、鋳造における成形が可能な範囲で後の亜鉛鍍金工程における芯線の線径に可能な限り近いφ6mm以上φ10mm以下の線径であるように成形される。線径がφ0.2mmのワイヤ電極1を製造する実施の形態の製造プロセスでは、母線の線径をφ8mmにしている。
第3の工程は、伸線加工によって母線を縮径して亜鉛鍍金工程における芯線を形成する芯線形成工程である。より具体的には、鋳造された母線には、製造にともなって生じる竹のような節目と表面に小さな凹凸があるので、少なくとも2回の伸線加工において複数の内径が異なる線引ダイスに母線を順次通過させて段階的にφ0.7mm以上φ1.2mm以下に縮径すると同時に線径を一定にする。このとき、前の母線鋳造工程で、母線の線径が可能な限り芯線の線径に近い線径にされているので、不必要に伸線加工の回数が増大しない。
芯線形成工程において要求される芯線の線径は、電気亜鉛鍍金法による亜鉛鍍金工程と電気式の加熱炉による熱拡散工程とにおいて均一で所要の厚さの亜鉛の被覆層ないしβ相の拡散層をより容易に得ることができる表面積以内になる大きさであって、最終的にワイヤ電極1を得る素線伸線工程で表層20を破壊することなくφ0.03mm以上φ0.3mm以下の所望の最終線径に縮径することができる大きさである。
具体的には、芯線の線径は、ワイヤ電極1の所望の最終線径の3倍から7倍程度までであって、φ0.7mm以上φ1.2mm以下である。例えば、実施例のφ0.2mmのワイヤ電極1を得るプロセスでは、芯線の線径をφ0.9mmにしている。なお、φ0.1mm以下の極細線を成形する場合は、可能な限り小さい線径にされ、素線伸線工程において必要最小の複数回の線引きによって縮径する。
第4の工程は、芯線形成工程で得た芯線に電気亜鉛鍍金法によって亜鉛鍍金を施す亜鉛鍍金工程である。亜鉛鍍金工程では、鍍金浴槽を挟んで芯線を所定の一定の張力をもって張架し、走行速度を検出して巻取速度を調整することによって芯線を一定の走行速度で走行させる。亜鉛鍍金に使用される亜鉛濃度は、100重量%である。また、亜鉛鍍金厚は、5μm以上20μm以下である。必要に応じて、複数回にわたって鍍金が施される。
本発明のワイヤ電極1の重要な特徴は、外周面から放電加工に供される厚さを超える5μm以上の厚さを有する表層20の全域が実質β相だけの拡散層であることである。熱拡散のプロセスにおいて、β相は、結晶構造が遷移する過程の途中で形成され、存在している時間が短い。このような表層20を均一に得るためには、芯線と亜鉛の被覆層との間が均一なラインで明確に区切られていることが必要である。このような亜鉛の被覆層は、電気亜鉛鍍金法で亜鉛鍍金が施されることによってよりよく得ることができる。
より具体的に、亜鉛鍍金工程では、スプールに貯留されている一巻単位の芯線をペイオフリールに装填し、巻取装置によって巻き取られるように芯線をセットする。均一に亜鉛鍍金を施すために、速度検出器を設けて巻取装置の巻取速度を制御して、芯線を一定の走行速度で走行させ鍍金浴槽の中を通過させる。また、巻取装置の近傍に張力の変動を吸収するダンサ装置を設けて、走行する芯線が急に振動して鍍金ムラが発生することを防止する。
電気亜鉛鍍金法では、均一で表面が滑らかな被覆層を得ることができるが、溶融鍍金法に比べて厚い亜鉛鍍金を施すことが困難である。しかしながら、亜鉛の被覆層が厚すぎると、かえって熱拡散によって被覆層の全域に均一なβ相だけの拡散層を得ることが困難になる。また、β相の拡散層が厚くなりすぎると、拡散層において後の素線伸線加工で要求される十分な展延性が失われる。むしろ、放電加工に供されて放電に曝されるワイヤ電極1の特定の領域がワイヤ電極1の外周面からおよそ5μm程度のところまでであるので、外周面から5μmを超えた内側は、放電加工特性に直接影響を及ぼさない不要な領域であると言える。
このようなことから、β相の拡散層である表層20を有する黄銅複合ワイヤ電極1を得るためには、厚い亜鉛鍍金を施すことよりも、必要十分な厚さで表面がより滑らかである亜鉛鍍金層を均一に得ることが重要である。したがって、電気亜鉛鍍金は、本発明のワイヤ電極の製造に適している。
亜鉛鍍金工程において、電気亜鉛鍍金装置の中を一定の走行速度で走行する芯線は、まずアルカリ電界洗浄浴槽で表面の被覆が除去され、水洗浄装置で表面に残っているアルカリ洗浄液が洗い流された後に、酸性の電気鍍金浴槽の中に導入される。芯線は、常時、一定の走行速度で走行しているので、長い線のどこでも均一に亜鉛鍍金が施される。鍍金浴槽から導出される素線は、温風ヒータで鍍金面が十分に乾燥させられてから、スプールに巻き取られる。
第5の工程は、電気亜鉛鍍金法による亜鉛鍍金後の素線を加熱炉の中で連続的に輻射的に均等に加熱して拡散させる熱拡散工程である。図3に示されるように、熱拡散工程では、5μm以上20μm以下の亜鉛の被覆層を有する素線2を複数のヒータ4を備える電気式の加熱炉3の中に導入する。そして、素線2を加熱炉3の中に水平に張架して所定の一定速度で水平方向に直線走行させながら被覆層が所定の亜鉛濃度の亜鉛リッチ黄銅になるまで所定の一定温度雰囲気下に曝して所定時間だけ連続的に輻射的に加熱する。
加熱炉3の中で素線2を加熱する拡散時間は、電気亜鉛鍍金による厚さ5μm以上20μm以下の亜鉛の被覆層が亜鉛濃度40重量%以上、確実には45重量%以上48重量%以下の亜鉛リッチ黄銅になるまでの時間が目安である。例えば、加熱炉3の全長が約8mであるとき、所要の適切な拡散時間に合わせると、素線2を直線走行させる走行速度は、具体的に、2.8m/min以上3.2m/min以下が適当である。加熱炉3の中は、450℃以上650℃以下の一定温度に保持され、望ましくは、540℃以上600度以下の範囲の一定温度に保たれる。
より具体的には、まず電気亜鉛鍍金によって5μm以上20μm以下の亜鉛の被覆層が形成されたφ0.7mm以上φ1.2mm以下の素線2は、一対のローラ5とローラ6との間で水平に張架されるようにペイオフリール7とスプール8とにセットされる。このとき、一対のローラ5とローラ6およびペイオフリール7とスプール8とによって弛まない程度の一定の張力が与えられる。そして、素線2を電気式の加熱炉3に導入する。
加熱炉3の中には複数のヒータ4が素線2の走行方向に沿って炉床に均一の間隔で並べて配置されており、加熱炉3の中は、すでに所定の一定温度の範囲で保温されている。そして、図示しない速度検出器で素線2の走行速度を検出し、スプール8の回転を制御することによって、素線2を所定の一定の走行速度で水平方向に直線走行させる。加熱炉3の中の温度は、加熱炉3の天井側に満遍なく設けられた複数の熱電対9によって検出される。加熱炉3の中は、全体にわたって厳密に所定の一定温度に保持され続ける。
素線2は、亜鉛の被覆層の全域、言い換えると、外周面全面が均一にちょうど亜鉛濃度が概ね45重量%以上48重量%以下の亜鉛リッチ黄銅化したときに順次加熱炉3の外に導出される。そして、加熱炉3から導出された素線2は、常温の空気に曝されて自然に冷却される。したがって、素線2は、どこの位置でも同じ所定の一定温度で一定時間輻射的に加熱されてから徐々に冷却され、その後に拡散が停止して拡散層が固定される。
素線2を加熱後に冷却するときの空気の温度(大気中温度または室温)は、およそ5℃ないし35℃の常温である。空気の温度は、急激な変化がない限りにおいて5℃ないし35℃の範囲で変動が許容される。加熱炉3の外気に曝して自然に冷却することは、素線2の周方向と長さ方向においてどの位置でも同じように冷却することができるので、品質の安定したワイヤ電極を得る点で有益である。
熱拡散工程では、素線2を加熱炉3の中に導入して水平方向に直線走行させながら厳密に管理された所定の一定温度雰囲気下に曝すようにしているので、加熱炉3における素線2の導入口と導出口において隙間が存在し、加熱炉3の外から常温の空気が流入する。そのため、実施の形態の加熱炉3には、供給口3Aが設けられ、供給口3Aから加熱炉3に窒素ガス3Bを供給して、加熱炉3内の空気を導入口と導出口の隙間からパージさせることによって加熱炉3内の環境を保護するとともに、素線2とヒータ4の表面の酸化を防止するようにしている。
一般的な亜鉛の被覆層の拡散方法では、素線を移動させながら移動されてくる特定の箇所を特定の加熱速度で段階的に直接的に加熱して拡散させる方法(移動方式)と、素線を加熱炉の中に据え置いて特定の加熱速度で所定時間加熱して拡散させる方法(バッチ方式)が知られている。このような従前の拡散方法は、比較的長い拡散時間が要求される熱拡散には有効であり、拡散時間の調整によって相(結晶構造)が異なる複数種類の拡散層を得ることが容易である。しかしながら、所要の厚さを有するβ相だけの拡散層を均一に安定して得ることはできない。
熱拡散工程における本発明のワイヤ電極を得るための条件は、次のとおりである。第1に、素線2は、所定の一定温度に保持されている電気式の加熱炉3の中で所定の一定温度雰囲気下に曝されることによって加熱される。そのため、素線2は、加熱炉3の中で周方向のどの位置においても常に輻射的に均等に加熱され、ばらつきが生じない。
第2に、素線2は、加熱炉3の中で弛まない程度の所定の張力が付与されて水平に張架された状態で水平方向に直線走行される。したがって、素線2が走行方向におけるどの位置においても素線2より下側の炉床に設置されているヒータ4から同じ距離十分に離されることによってヒータ4の熱で直接局部的に加熱されることがない。そのため、素線2が加熱炉3の中で長さ方向のどの位置においても輻射的に均等に加熱され、ばらつきが生じない。
第3に、素線2は、電気式の加熱炉3の中を水平方向に所定の一定の走行速度で直線走行する。そのため、素線2は、厳密に亜鉛の被覆層が所定の亜鉛濃度の亜鉛リッチ黄銅化して40μmないし80μmの拡散層に変わるまでの所定の一定時間だけ連続的に拡散される。その結果、素線2の周方向と長さ方向のどの位置においても同じ拡散時間だけ熱拡散され、所要の厚さを有する実質β相だけの拡散層が確実に形成される。
実施の形態のワイヤ電極1には、極薄い隔壁層30が形成されている。隔壁層30は、熱拡散工程において、素線2が加熱されている間にコア10とβ相の拡散層の表層20との間に形成されることが確認されている。隔壁層30が形成される原因と過程および隔壁層30の成分と構造について正確に解析されるに至っていないが、限定的な加熱条件の下で再現可能に形成されている。
隔壁層30は、素線2の外周面からおよそ40μmないし80μm程度まで亜鉛リッチ黄銅の拡散層が形成されてから、高温の素線2を常温の空気中で自然に冷却している間も拡散が進行することを十分に遅らせている。そのため、素線2を空気中で冷却することができるので、均一な厚さの拡散層を得ることができる点で有利である。
第6の工程は、素線を線引ダイスに通して任意の所望の線径のワイヤ電極を生成する素線伸線工程である。φ0.7mm以上φ1.2mm以下の素線における厚さが5μm以上20μm以下の均一な亜鉛の被覆層の形成と厚さが40μm以上80μm以下程度のβ相の拡散層の生成によって、拡散層を破壊せずに所望の線径まで縮径することができる。ただし、β相の拡散層の黄銅は、α相の拡散層に比べると依然として展延性が低いため、素線の線径と所望の最終線径との差が大きいときは、β相の拡散層の黄銅が有する許容し得る伸び率の限界を超えてコア10が潰れて表層20が破壊されるので、注意が必要である。
以上のとおり、実施例のφ0.2mmのワイヤ電極1は、銅と亜鉛の重量比が65/35の黄銅のコア10と、5μm以上の亜鉛濃度が46重量%の亜鉛リッチ黄銅の実質β相だけの拡散層の表層20と、コア10と表層20との間を仕切る1μm程度の隔壁層30と、でなる。
本発明は、実施の形態のワイヤ電極に限定されるべきではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で同じ構造を有するワイヤ電極を含む。
本発明は、金属加工の技術分野に利用できる。特に、金属を高精度に切断して金型あるいは部品を製造するワイヤカットに適用される。本発明は、ワイヤカットにおいて加工精度に優れ加工速度が向上した改良された工具電極をより安価に提供する。本発明は、金属加工の技術分野の発展に寄与する。
1 ワイヤ電極
10 コア
20 表層(拡散層)
30 隔壁層

Claims (8)

  1. 黄銅で成るコアと、母線を所定の線径に縮径して得た黄銅の芯線に電気亜鉛鍍金を施して生成される亜鉛の被覆層を有する素線を加熱炉中に水平に張架して所定の一定走行速度で水平方向に直線走行させながら前記被覆層が所定の亜鉛濃度の亜鉛リッチ黄銅になるまで所定の一定温度雰囲気下に曝して連続的に輻射的に均等に加熱し熱拡散させて前記被覆層を実質β相だけの拡散層に変態させた後に前記素線を所望の線径に伸線加工することによって形成される5μm以上の厚さを有する表層と、を含んで成るワイヤ電極。
  2. 前記芯線の線径がφ0.7μm以上φ1.2μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ電極。
  3. 前記被覆層の厚さが5μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ電極。
  4. 前記加熱が450℃以上650℃以下の範囲の一定温度雰囲気下で行なわれていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ電極。
  5. 前記加熱が540℃以上600℃以下の範囲の一定温度雰囲気下で行なわれていることを特徴とする請求項4に記載のワイヤ電極。
  6. 前記亜鉛リッチ黄銅の亜鉛濃度が45重量%以上48%重量以下であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ電極。
  7. 前記コアが銅60重量%以上70重量%以下で亜鉛30重量%以上40重量%以下の重量比の黄銅で成る請求項1に記載のワイヤ電極線。
  8. 熱拡散中に前記コアと前記表層との間に形成される厚さ1μm以下の隔壁層を含んでなる請求項1に記載のワイヤ電極。
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