JP7507058B2 - 軽油の低温流動性能の評価方法 - Google Patents

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Description

本発明は、軽油の低温流動性能の評価方法に関する。
軽油の低温流動性能、とりわけ軽油中に含まれるn-パラフィンが低温時に析出することによるフィルタ閉塞の生じやすさ(「低温時のフィルタ通油性能」)を簡易的に評価する試験方法として、JIS K2288:2011(石油製品-軽油-目詰まり点試験方法)が知られている。軽油の低温流動性能は、従来実車又は実車の燃料油組成物系統を模擬したシミュレートテストにより評価していたが、いずれもその評価に長時間を要するものであった。上記の規格は、フィルタの閉塞温度と燃料油組成物の冷却速度及びフィルタの目開きとの間には、一定の関係があるという理論(非特許文献1、2参照)に基づき、350メッシュ(目開き:45μm)のフィルタを用いるCFPP(Cold Filter Plugging Point)試験(以下、「CFPP試験」、「目詰まり点試験」とも称する。)を採用したものである。
CFPP試験は、原理的には、代表的な実車環境である冷却速度0.5℃/hrの環境下での、実車に用いられている代表的な60メッシュ(目開き250μm)のフィルタの閉塞温度(作動限界温度)を、冷却速度を40℃/hrの環境下において350メッシュ(目開き45μm)の試験用フィルタを用いることで再現することができ、冷却速度を速くすることで評価時間を短縮することができるというものである。CFPP試験は、フィルタを用いていることから、低温時のフィルタ通油性能を評価するものといえ、これを低温流動性能の評価とするものである。しかしながら、軽油の低温流動性能を評価するため、CFPP試験を採用していたところ、フィルタの目詰まりに関する問題が一定数生じていた。
石油学会誌,20巻6号(1977年),p.530 J. Inst. Petro.,Vol.52(1966),p.173)
本発明者は、この問題を詳細に検討したところ、通常の軽油に比べてワックス析出率が高い、ワックス析出率が0.35質量%/℃以上である軽油であると、フィルタの目詰まりが生じる傾向の違いが特に顕著であることを見出した。
このような状況下、ワックス析出率が0.35質量%/℃以上であるワックス析出率が高い軽油について、精度高く低温流動性能(フィルタ通油性能)を評価し得る方法の確立が望まれている。
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討の結果、下記の発明により解決できることを見出した。すなわち本発明は、
・JIS K2288:2011(石油製品-軽油-目詰まり点試験方法)に規定される試験方法において、第1冷却浴を規定温度-24±0.5℃に保持する、ワックス析出率が0.35質量%/℃以上である軽油の低温流動性能の評価方法、
を提供するものである。
本発明によれば、ワックス析出率が0.35質量%/℃以上である軽油について、精度高く、かつ短時間で低温流動性能を評価する方法を提供することができる。
シミュレーションテストを行う実験装置を説明するための模式図である。
[軽油の低温流動性の評価方法]
以下、本発明の実施形態(以後、単に「本実施形態」と称する場合がある。)に係る軽油の低温流動性の評価方法について、具体的に説明する。
本実施形態の軽油の低温流動性能の評価方法は、JIS K2288:2011(石油製品-軽油-目詰まり点試験方法)に規定される試験方法において、第1冷却浴を規定温度-24±0.5℃に保持する、ワックス析出率が0.35質量%/℃以上である軽油の低温流動性能の評価方法、である。すなわち、本実施形態の評価方法の評価対象は、ワックス析出率が0.35質量%/℃以上であるという、通常の軽油に比べてワックス析出率が高い軽油である。
既述のように、軽油の低温流動性能を評価するため、CFPP試験を採用していたところ、フィルタの目詰まりに関する問題が一定数生じており、本発明者は、この問題を詳細に検討したところ、通常の軽油に比べてワックス析出率が高い、ワックス析出率が0.35質量%/℃以上である軽油であると、フィルタの目詰まりが生じる傾向の違いが特に顕著であることを見出した。
CFPP試験は、上記非特許文献1、2の知見に基づき確立したものであり、これらの非特許文献に記載される、冷却速度と低温により析出するn-パラフィンの結晶サイズとの関係を有する軽油については、一定の精度をもって評価することは可能である。しかし、軽油中のn-パラフィンの分子量、炭素数分布等により、冷却速度と低温により析出するn-パラフィンの結晶サイズとの関係はかわるため、全ての軽油が上記非特許文献1、2に記載の関係を有するものであるとは限らない。そこで、本発明者は、通常の軽油に比べてワックス析出率が高い、ワックス析出率が0.35質量%/℃以上である軽油は、冷却速度と低温により析出するn-パラフィンの結晶サイズとが非特許文献1、2に記載の関係を有するものでなく、CFPP試験による評価の精度が低下するのではないかと考えるに至った。
JIS K2288:2011には、CFPP試験において採用される冷却浴について、予期目詰まり点に応じて冷却浴の種類及び規定温度が定められており(表1)、予期目詰まり点が-20℃以上である場合は、第1冷却浴を規定温度-34℃±0.5℃に保持し、予期目詰まり点が-21℃~-35℃である場合は、第1冷却浴及び第2冷却浴を規定温度-51℃±1℃に保持し、予期目詰まり点が-36℃以下である場合は、第1冷却浴、第2冷却浴及び第3冷却浴を規定温度-67℃±2℃に保持することが規定されている。本実施形態の評価方法によれば、第1冷却浴を規定温度-24±0.5℃に保持することにより、ワックス析出率が0.35質量%/℃以上と通常の軽油に比べてワックス析出率が高い軽油に限っては、精度が高い低温流動性能に関する評価を獲得することが可能となった。
既述のように、本実施形態の評価方法は、精度が高い低温流動性能に関する評価を行うことを可能とするものである。本明細書において、「精度が高い」ことは、本実施形態の評価方法により得られる「目詰まり点」から、以下の方法により行うシミュレーションテストにより求められる「作業限界温度」を引いた値が0.0℃以上2.0℃以下であることを意味する。本実施形態の評価方法は、「目詰まり点」から「作業限界温度」を引いた値を、2.0℃以下、更には1.5℃以下、1.0℃以下とすることができるため、極めて精度が高い評価結果を得られる。なお、上記の差の下限については0.0℃以上であればよく、0.0℃未満であると実車でのフィルタの目詰まりが生じやすくなるため、好ましくない。
(シミュレーションテスト)
図1に示されるフローを有する実験装置を用いる。常温(10~20℃)にて、試料容器11に試料(軽油)を4Lいれた後、噴射ポンプ及びフィードポンプを起動し、10.0±0.5L/hrの流量で、試料を0.5L流す。次いで、低温恒温槽を常温から、0.5℃/hrの冷却速度で冷却を開始し、所定の温度(1℃単位)で一体型ポンプ(噴射ポンプ及びフィードポンプ)を起動させて、試料を1.0L(流量:10.0±0.5L/hr)を流し、圧力計を読み取る。流量を10.0±0.5L/hrで確保できない場合は、その流量を読み取る。所定の温度ごとに読み取った圧力、流量について、以下の評価基準により評価し、B評価となった温度に1℃を加えた温度を、作動限界温度(℃)とする。
A評価:-40.0kPa以上0.0kPa未満、かつ流量9.5L/hr以上
B評価:-40.0kPa未満、又は流量9.5L/hr未満
シミュレーションテストに用いられる実験装置について、図1を用いて説明する。図1に示される実験装置1は、低温恒温槽内に、測定に供する試料を貯留する試料容器11、フィードポンプ14及び噴射ポンプ13を備える一体型ポンプ、フィードポンプ14に供給する前に設けられるプレフィルタ12、一体型ポンプの回転数を調整するリングコーン15、試料を噴射する噴射ノズル17、低温恒温槽内の温度を測定するための温度計19を備え、噴射された試料を収納する回収容器18を有するものである。
また、圧力計(PI)は、フィードポンプ14の吐出側であって、噴射ポンプ13の手前に設けられ、プレフィルタ12に閉塞があると、大きな負圧を示すものである。
試料容器11に貯留した試料は、燃料ホース20を通り、プレフィルタ12でろ過した後に、一体型ポンプ内のフィードポンプ14から燃料ライン入口16、噴射ポンプ13を経由して噴射ノズル17にて噴射され、回収容器18に回収される。一体型ポンプは、一定流量(10.0±0.5L/hr)で噴射ノズルから噴射するのに必要な圧力を保持するため、リングコーン15(回転速度可変モータ)にて回転速度を必要に応じて調整することができる。
低温恒温槽内の温度が低下により試料中にワックスが析出し、プレフィルタ12が閉塞した場合、圧力計(PI)に表示される圧力は負圧を示すとともに規定の流量が維持できなくなる。本シミュレーションテストでは、圧力の境界を-40.0kPa、流量の境界を10.0±0.5L/hrの最小値である9.5L/hrとし、低温恒温槽内の温度を徐々に下げ、圧力の基準値(-40.0kPa)を下回る、又は流量の基準値(9.5L/hr)を下回る時点をもって、作動が限界に達したとし、これを作動限界温度(℃)とする。この「作動限界温度」は、本実施形態の評価方法により得られる「目詰まり点」に該当し、低温流動性能を示す指標となり、既述のように両者の誤差が小さくなるため、精度が高い評価が可能となる。
上記実験装置において、フィードポンプ14及び噴射ポンプ13を備える一体型ポンプは、エンジン用ポンプ(ディーゼルエンジン「4BA1」(小型トラックエルフ2t車用(いすゞ自動車株式会社製))用ポンプ)等を用いることができ、操作及び調整のしやすさ観点から、リングコーンにて回転数を調整できるタイプを採用することが好ましい。エンジン用ポンプとしては、上記ディーゼルエンジン「4BA1」と同程度の性能を有するものであれば、これに限らず他のエンジン用ポンプを用いることが可能である。
プレフィルタは、32メッシュのプラスチック製の市販品を適宜採用すればよく、例えばフィルタ(「NO5-15759027-0WD(型番)」、いすゞ自動車株式会社製)等の市販品を用いればよい。また、圧力計(PI)は、噴射ノズル17から試料が噴射する際にかかる圧力を示すものであり、負圧から正圧(いずれもゲージ圧)にかけて測定できる圧力計であれば特に制限なく採用可能であり、例えば、-100kPa~294kPa程度の範囲を測定し得るコンパウンドゲージ等を用いればよい。
〔軽油〕
本実施形態の評価方法の対象は、ワックス析出率が0.35質量%/℃以上である軽油である。ワックス析出率は、以下のワックス析出率の測定方法に従い測定される率である。
(ワックス析出率の測定)
試料20gに濾過助剤を200ppm加え、所定の温度(以下の曇り点-2℃、-4℃及び-6℃)まで急冷して30分間保持した後、テフロン(登録商標)フィルタ(目開き10μm)で減圧ろ過した。前記フィルタ上に残った油分をアセトン40mlで4回(計160mL)洗浄し、ノルマルヘキサン300mlでワックス分を溶解し、回収した。次にノルマルヘキサンを蒸発し、除去した後、105~110℃で乾燥したものを秤量し、これをワックス分とした。この操作を試料の曇り点より2℃低い温度(曇り点-2℃)、曇り点より4℃低い温度(曇り点-4℃)及び曇り点より6℃低い温度(曇り点-6℃)の条件で行い、横軸に冷却温度(℃)、縦軸にワックス析出量(質量%)をプロットし、その傾きの絶対値をワックス析出率(質量%/℃)とした。ここで、ワックス析出量(質量%)は、ワックスが実際に析出した量(g)を、上記試料の20gで除した算出値である。
ワックス析出率が高いほど、ワックス析出の温度依存性が高いことを示している。また、曇り点は、JIS K2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)にて測定される温度である。
濾過助剤については、特に制限なく濾過助剤として市販されるものを用いることが可能であり、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系低温流動性向上剤を用いればよい。エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系低温流動性向上剤は、例えば「Infineum R240(型番)」、インフィニアムジャパン社製)等として市販されている。
本明細書において、「軽油」は、JIS K2204:2007に規定される軽油に属するものを意味する。JIS K2204:2007に規定される軽油には、ワックス析出率についての記載はなく、様々なワックス析出率を有する軽油が含まれ得る。本実施形態の評価方法においては、JIS K2204:2007に規定される軽油であって、上記ワックス析出率を有する軽油であれば、特に制限なく本実施形態の評価方法の評価対象とすることができる。
これらの軽油は、例えば、以下の直留軽油、減圧軽油、脱硫軽油、分解軽油、脱硫分解軽油、水素化分解軽油及び直脱軽油等の各種軽油に由来するものであってもよい。このように、本実施形態の評価方法は、ワックス析出率が0.35質量%/℃以上でありさえすれば、様々な種類の軽油に対して採用することが可能である。
・直留軽油(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる軽油留分)
・減圧軽油(常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる軽油留分)
・脱硫軽油(直留軽油留分及び/又は減圧軽油留分を脱硫して得られる軽油留分)
・分解軽油(常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を流動接触分解して得られる軽油留分)
・脱硫分解軽油(分解軽油留分を脱硫して得られる軽油留分)
・水素化分解軽油(直留軽油留分及び/又は減圧軽油留分を水素化分解して得られる軽油留分)
・直脱軽油(常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を直接脱硫装置で脱硫処理して得られる軽油留分)
本実施形態の評価方法の評価対象となる軽油は、低温流動性向上剤を含んでいてもよい。低温流動性向上剤としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル等の界面活性剤、エチレン-酢酸ビニル系共重合体、エチレン-アルキルアクリレート系共重合体等のエチレン共重合体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等の飽和脂肪酸のビニルエステル、塩素化ポリエチレン、ポリアルキルアクリレート、アルケニルこはく酸アミド系化合物等が挙げられ、界面活性剤、エチレン-酢酸ビニル系共重合体が好ましい。最も好ましくは、エチレン-酢酸ビニル系共重合体の低温流動性向上剤である。
低温流動性向上剤を含む場合、その含有量は、組成物全量基準で、100質量ppm以上600質量ppmの範囲内であればよく、好ましくは200質量ppm以上500質量ppm以下である。
また、本実施形態の評価方法の評価対象となる軽油は、上記低温流動性向上剤の他、例えば潤滑性向上剤、酸化防止剤、PM低減剤、NOx低減剤、水抜き剤、セタン価向上剤等の、軽油に汎用される各種添加剤を含んでいてもよい。
これらの各種添加剤を含んでいても、本実施形態の評価方法によれば、精度が高い評価結果を得られる。
(CFPP試験(目詰まり点試験))
本実施形態の評価方法は、評価対象となる軽油をワックス析出率が0.35質量%/℃以上である軽油とし、JIS K2288:2011(石油製品-軽油-目詰まり点試験方法)に規定される試験方法において、冷却浴のうち、第1冷却浴の規定温度をかえることにより、目詰まり点試験方法により測定される目詰まり点が、評価対象となる軽油の実際の目詰まり点(上記シミュレーションテストで得られる作業限界温度)と誤差が少なく、精度の高い評価を可能にする、というものである。よって、本実施形態の評価方法は、JIS K2288:2011に規定されるCFPP試験の改良法と称することもできる。
JIS K2288:2011(石油製品-軽油-目詰まり点試験方法)には、既述のように、予期目詰まり点に応じて所定の冷却浴の種類及び規定温度とすることが規定されている。このように、冷却浴の規定温度の設定は、目詰まり点の測定結果に影響を及ぼすものである。ワックス析出率が0.35質量%/℃以上であるという特定の性状を有する軽油について、従来のCFPP試験では精度の高い評価はできなかったところ、本実施形態の評価方法では、冷却浴の規定温度を室温に近づけることで、精度の高い評価結果が得られることも可能となった。
本実施形態に係る軽油の低温流動性能の評価方法で用いられる冷却浴は、既述のように、第1冷却浴、第2冷却浴及び第3冷却浴を備えており、これらの冷却浴は、試料(軽油)の温度が下がるにつれて、第1冷却浴~第3冷却浴に移動させるようにして用いられる。この点は、JIS K2288:2011(石油製品-軽油-目詰まり点試験方法)に規定される試験方法と同様である。
本実施形態の評価方法において、各冷却浴の規定温度は、第1冷却浴の規定温度-24±0.5℃に保持する以外、他の冷却浴、すなわち第2冷却浴及び第3冷却浴の規定温度は、従来のCFPP試験と同じである。本実施形態の評価対象となるワックス析出率が0.35質量%/℃以上である軽油は、一般には目詰まり点が高いため、通常は第1冷却浴のみを用いれば足りる。
なお、本実施形態の評価方法における試験方法は、上記の特記した事項以外、例えば試験器の構成、当該試験器を構成する各種装置、機器等の詳細仕様、試料の採取及び調性方法その他具体的な試験の手順等ついては、JIS K2288:2011(石油製品-軽油-目詰まり点試験方法)と同じであるため、本明細書での説明は省略する。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
(シミュレーションテスト)
各実施例で用いる試料1~3について、以下の方法によりシミュレーションテストを行い、各試料についての作業限界温度(℃)を測定した。
図1に示されるフローを有する実験装置を準備した。
実験装置において用いた機器等は以下の通りである。
・一体型ポンプ13:エンジン用ポンプ(ディーゼルエンジン「4BA1」(小型トラックエルフ2t車用(いすゞ自動車株式会社製))用ポンプ)
・低温恒温槽:「ETAC FL430N(型番)」(楠本化成株式会社製、±0.5℃で調節可能であり、0.5℃/hrの冷却速度で-40℃~100℃まで調整可能である。また、低温恒温槽(試験室内寸法)はW1000×H1000×D800である。)
・プレフィルタ12:「NO5-15759027-0WD(型番)」(いすゞ自動車株式会社製、32メッシュ、材質:プラスチック)
・リングコーン15:「NS200B(型番)」(日本電産シンポ株式会社製、回転速度可変モータ)
・ホース:自動車用燃料配管(内径:8mm、長さ:150cm)
・圧力計:コンパウンドゲージ(「BA10-123×-0.1~0.3MPa(型番)」、長野計器(株)社製、測定範囲:-100kPa~294kPa)
まず、低温恒温槽内を常温(10~20℃)とし、試料容器11に実施例で用いる軽油を4Lいれた後、一体型ポンプ(噴射ポンプ及びフィードポンプ)を起動し、10.0±0.5L/hrの流量で、試料を0.5L流す。次いで、低温恒温槽を常温から、0.5℃/hrの冷却速度で冷却を開始し、所定の温度(1℃単位)で噴射ポンプ及びフィードポンプを起動させて、試料を1.0L(流量:10.0±0.5L/hr)を流し、圧力計を読み取る。流量を10.0±0.5L/hrで確保できない場合は、その流量を読み取る。所定の温度ごとに読み取った圧力、流量について、以下の評価基準により評価し、B評価となった温度に1℃を加えた温度を、作動限界温度(℃)とする。測定した作業限界温度(℃)は、第2表に示す。
A評価:-40.0kPa以上0.0kPa未満、かつ流量9.5L/hr以上
B評価:-40.0kPa未満、又は流量9.5L/hr未満
(試料の各種性状の測定)
各実施例で用いる試料1~3について、その性状を以下の方法により測定した。目詰まり点については第2表に、その他の性状については第1表に示す。
・15℃における密度:JIS K 2249-1:2011(第1部)に準じて測定した。
・30℃における動粘度:JIS K 2283:2000に準じて測定した。
・硫黄分含有量:JIS K 2541-2:2003(第2部:微量電量滴定式酸化法)に準じて測定した。
・蒸留性状:JIS K 2254:1998に準じて測定した。
・曇り点及び流動点:JIS K 2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に準じて測定した。
・目詰まり点:JIS K2288:2011(石油製品-軽油-目詰まり点試験方法)に準じて測定した(比較例)。
(ワックス析出率の測定)
試料20gに濾過助剤(エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系低温流動性向上剤、「Infineum R240(型番)」、インフィニアムジャパン社製)を200ppm加え、所定の温度(以下の曇り点-2℃、-4℃及び-6℃)まで急冷して30分間保持した後、テフロン(登録商標)フィルタ(目開き10μm)で減圧ろ過した。前記フィルタ上に残った油分をアセトン40mlで4回(計160mL)洗浄し、ノルマルヘキサン300mlでワックス分を溶解し、回収した。次にノルマルヘキサンを蒸発し、除去した後、105~110℃で乾燥したものを秤量し、これをワックス分とした。この操作を試料の曇り点より2℃低い温度(曇り点-2℃)、曇り点より4℃低い温度(曇り点-4℃)及び曇り点より6℃低い温度(曇り点-6℃)の条件で行い、横軸に冷却温度(℃)、縦軸にワックス析出量(質量%)をプロットし、その傾きの絶対値をワックス析出率(質量%/℃)とした。測定したワックス析出率(質量%/℃)を第1表に示す。ここで、ワックス析出量(質量%)は、ワックスが実際に析出した量(g)を、上記試料の20gで除した算出値である。
(実施例1~3)
ワックス析出率が0.35(質量%/℃)以上である軽油1~3に、低温流動性向上剤(エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系低温流動性向上剤、「Infineum R240(型番)」、インフィニアムジャパン社製)を第2表に示される含有量となるように添加したものを、各々試料1~3とした。
JIS K2288:2011(石油製品-軽油-目詰まり点試験方法)に規定される試験方法において、冷却浴のうち、第1冷却浴の規定温度を-24.0±0.5℃に保持した以外は、当該試験方法の手順に従い(「CFPP改良法」と称する。)、試験を行い、目詰まり点を測定した。測定された目詰まり点を第2表に示す。
(比較例1~3)
実施例1~3において、JIS K2288:2011(石油製品-軽油-目詰まり点試験方法)に規定される試験方法(「CFPP法」と称する。)の手順に従った以外は、実施例1~3と同様に試験を行い、各々比較例1~3の目詰まり点を測定した。測定された目詰まり点を第2表に示す。
(精度の評価)
実施例におけるCFPP改良法による目詰まり点、比較例におけるCFPP法による目詰まり点と、上記方法により測定した作業限界温度との差(目詰まり点-作業限界温度)について、以下の基準で評価した。〇であれば精度が高いとし、×であれば精度が低いものとする。
〇:目詰まり点-作動限界温度が0.0℃以上2.0℃以下である。
×:目詰まり点-作動限界温度が0.0℃未満、又は2.0℃超である。
第2表の結果から、実施例1~3においては、目詰まり点と作業限界温度との差(目詰まり点-作業限界温度)は各々0.0℃、1.0℃及び0.0℃と極めて小さく、本実施形態の評価方法(CFPP改良法)は極めて精度が高いことが確認された。
他方、比較例1~3では、目詰まり点と作業限界温度との差(目詰まり点-作業限界温度)は各々-3.0℃、-3.0℃及び-5.0℃と大きく、同じ試料についての評価と比べて精度に劣ることが確認された。
1.実験装置
11.試料容器
12.プレフィルタ
13.噴射ポンプ
14.フィードポンプ
15.リングコーン
16.燃料ライン入口
17.噴射ノズル
18.回収容器
19.温度計
20.燃料ホース
PI.圧力計

Claims (1)

  1. JIS K2288:2011(石油製品-軽油-目詰まり点試験方法)に規定される試験方法において、第1冷却浴を規定温度-24±0.5℃に保持する、ワックス析出率が0.35質量%/℃以上である軽油の低温流動性能の評価方法。
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