JP5046696B2 - A重油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、A重油組成物に関する。更に詳しくは、近年の外燃機器用ボイラーへ十分な性能を持ち、容量当りの発熱量が高い省燃費で、かつ優れた低温流動性を有し、低温でのフィルター通油性能に優れるJIS1種重油規格を満たすA重油組成物に関する。
従来、A重油組成物の基材としては、原油の常圧蒸留装置から得られる直留灯油又は脱硫処理した灯油、直留軽質軽油又は脱硫処理した軽質軽油、重質軽油、分解装置から得られる軽質サイクル油、直接脱硫装置から得られる直脱軽油などが知られている。従来のA重油組成物は上記基材を1種または2種以上配合し、その他に残留炭素基材として、常圧残油、直脱残油、減圧残油などを1種または2種以上付与することにより製造されている。また、これらのA重油組成物には、必要に応じてセタン価向上剤や低温流動性向上剤等の添加剤が配合される(例えば、非特許文献1参照。)。
小西誠一著,「燃料工学概論」,裳華房,1991年3月,p.136−144
A重油組成物は、ボイラー等の外燃機器燃料、小型漁船や建設機械等のオフロード用ディーゼルエンジン機器燃料、ガスタービン機器燃料などとして広く用いられている。
A重油組成物を用いる各種燃焼機器には、燃料油中の異物を除去する目的で、燃料系統に目開き5〜250μmのフィルターが設けられている。しかし、このような燃焼機器を冬季に使用すると、A重油組成物から析出したワックスなどにより、フィルターの閉塞が起こりやすくなる。
さらに近年A重油組成物に使用されるボイラーやエンジンの高出力化及び低燃費化等に伴い、A重油組成物としては、より高性能化の要望が年々高まっている。これら高性能ボイラーへの燃料としてA重油組成物を用いた場合、着火性の悪化や、煤の発生が増大するといった燃焼性に関する問題が生じることがある。
また、低燃費化の観点より容量当り高い発熱量の燃料への要望が強まっている。
そこで、かかる問題を解決すべく、A重油組成物の低温流動性および燃焼性を改善するための検討が行われており、低温流動性能の改善には芳香族分の増配合、低温流動性向上剤の添加、残渣油の増量などの方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3及び非特許文献2を参照。)。
しかし、上述の各方法で得られるA重油組成物はそれぞれ次の点で改善の余地があり、いずれもA重油組成物として実用に供し得るには未だ十分とは言えない。すなわち、芳香族分の増配合は燃焼ガス中の煤塵量の増加や着火不良の原因となる。また、低温流動性向上剤の性能は、使用基材との相性によるところが多く、単に添加するだけではA重油組成物として充分な低温性能を得ることは困難である。残留炭素基材の増量は燃焼ガス中の煤塵量の増加の原因となり得るばかりか、他基材との溶解性が悪化し、常温時のスラッジ生成に伴うフィルター通油性が懸念される。
低温性能に優れたA重油組成物は、パラフィン量が少なくなり燃焼性が悪くなる場合が多い。また、容量当りの発熱量が高い場合もパラフィン量が少なくなり燃焼性が悪くなる場合が多い。このように、発熱量が高く、低温性能、燃焼性の両方を同時に満たすA重油組成物は得られていない。
特開2000−144152号公報 特開2001−279272号公報 特開2005−194423号公報 野村宏次,「舶用燃料の科学」,成山堂,1994年,p.164−166
JIS1種重油規格を満たすA重油組成物は、ボイラー燃料やオフロード用ディーゼルエンジン燃料として用いられているが、近年A重油組成物に使用されるボイラーの高出力化及び低燃費化等に伴い、A重油組成物としては、容量当りの発熱量が高く、また高性能化の要望が年々高まっている。これら高性能ボイラーの燃料としてA重油組成物を用いた場合、着火性の悪化や、煤の発生が増大してバーナー及び炉内の清掃頻度が増えるといった燃焼性に関する問題が生じることがある。一方、A重油組成物としては、ガソリンや灯油に比べ重質分をより多く含んでいるため、低温時のワックス析出が問題となることがある。低温時におけるワックス析出は、燃料系統中の夾雑物防止用のフィルターを閉塞させ、最悪の場合燃料供給が不可能となる恐れがある。低温時のワックス析出を抑える方法としては、流動性向上剤を添加する方法が一般的であるが、実際の厳しい冬期の使用条件下では充分な効果が発揮できないのが現状である。また、従来は低温時のフィルター目詰まり性の判断に、目詰まり点による試験が用いられてきた。流動性向上剤を添加することにより、低温流動性が改善されるが、この試験方法は試料油の冷却速度が急冷(約40℃/時間)であるため、実際の使用条件下とは大きく異なる。冷却速度が遅ければ遅いほど、析出するワックスが大きくなりフィルターの目詰まりを起こすことが知られており、目詰まり点による評価では不十分であることが分かっている。一般に、容量当りの発熱量が高く、低温性能に優れたA重油組成物は、燃焼性が悪くなる場合が多く、これら全ての性能を同時に満たすA重油組成物が望まれている。
このように、低燃費性、低温性能と燃焼性の全てを同時に満たすA重油組成物は得られていない。本発明の目的は、容量当りの発熱量が高く低燃費性があり、近年の高性能ボイラーの使用に耐え得る、冬期においてワックスによるフィルターの目詰まりを起こさないA重油組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、15℃密度、蒸留性状の初留点温度、90容量%留出温度、95容量%留出温度、50℃における動粘度、飽和分量、CFPP(目詰まり点)を適正化することで、かつ冬期においてワックスによるフィルターの目詰まりを起こさないことを見出し本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、15℃密度886kg/m以上940kg/m以下、蒸留性状の初留点温度180℃以下、90容量%留出温度330℃以下、95容量%留出温度345℃以下、50℃における動粘度2.8mm/s以下、飽和分量25容量%以上65容量%以下、CFPP(目詰まり点)が−20℃以上−3℃以下であることを特徴とするA重油組成物に関する。
また本発明のA重油組成物は、灰分0.02質量%以下、10%残留炭素分0.8質量%以下、セタン指数25以上45以下であることが望ましい。
本発明によれば、容量当りの発熱量が高く、燃焼性が良く、近年の高性能ボイラーへの使用に耐え得る、冬期においてワックスによるフィルターの目詰まりを起こさないA重油組成物が得られる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のA重油組成物は、15℃密度886kg/m以上940kg/m以下、蒸留性状の初留点温度180℃以下、90容量%留出温度330℃以下、95容量%留出温度345℃以下、50℃における動粘度2.8mm/s以下、飽和分量25容量%以上65容量%以下、CFPP(目詰まり点)が−20℃以上−3℃以下であることを特徴とする。
本発明のA重油組成物の15℃密度(15℃における密度)は886kg/m以上940kg/m以下であることが必要である。15℃密度が886kg/m未満の場合は容量当りの発熱量が小さくなり、さらに、冬期においてワックスによるフィルターの目詰まりを起こりやすくなる。また15℃密度が940kg/mより大きい場合は、外燃機器用ボイラーにおいて着火性の悪化や、煤の発生が増大しやすくなる。
本発明において、密度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」に準拠して得られる値を表すものを意味する。
本発明のA重油組成物の蒸留性状の初留点温度は180℃以下であることが必要であり、175℃以下であることが好ましい。初留点温度が180℃より高い場合、外燃機器用ボイラーにおいて着火性の悪化や、煤の発生が増大しやすくなる。
本発明のA重油組成物の蒸留性状の90容量%留出温度は330℃以下であることが必要であり、325℃以下であることが好ましい。90容量%留出温度が330℃より高い場合、外燃機器用ボイラーにおいて着火性の悪化や、煤の発生が増大しやすくなる。
本発明のA重油組成物の蒸留性状の95容量%留出温度は345℃以下であることが必要であり、340℃以下であることが好ましい。95容量%留出温度が345℃より高い場合、外燃機器用ボイラーにおいて着火性の悪化や、煤の発生が増大しやすくなる。
本発明において、蒸留性状とは、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」に準拠して得られる値を意味する。
本発明のA重油組成物の50℃における動粘度は2.8mm/s以下であることが必要であり、2.7mm/s以下であることが好ましく、2.6mm/s以下であることがさらに好ましく、2.5mm/s以下であることが最も好ましい。50℃における動粘度が2.8mm/sより大きい場合は外燃機器用ボイラーにおいて着火性の悪化や、煤の発生が増大しやすくなる。さらに冬期においてワックスによるフィルターの目詰まりを起こりやすくなる。
本発明において、動粘度とは、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して得られる値を意味する。
本発明のA重油組成物の飽和分量は25容量%以上65容量%以下であることが必要であり、30容量%以上60容量%以下であることが好ましい。飽和分量が25容量%未満の場合は外燃機器用ボイラーにおいて着火性の悪化や、煤の発生が増大しやすくなる。また飽和分量が65容量%より大きい場合は容量当りの発熱量が小さくなり、さらに、冬期においてワックスによるフィルターの目詰まりを起こりやすくなる。
本発明において、飽和分量とは、JPI−5S−49−47「炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠して得られる値を意味する。
本発明のA重油組成物の灰分の含有量は0.02質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以下であることがより好ましい。灰分が0.02質量%より多い場合、外燃機器用ボイラーにおいて、煤の発生が増大しやすくなる。
本発明おいて、灰分とは、JIS K 2272「原油及び石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」に準拠して得られる値を意味する。
本発明のA重油組成物の10%残留炭素分は0.8質量%以下であることが好ましく、0.7質量%以下であることがより好ましい。10%残留炭素分が0.8質量%より多い場合、外燃機器用ボイラーにおいて、煤の発生が増大しやすくなり、さらにスラッジによるフィルターの目詰まりを起こりやすくなる。
本発明において10%残留炭素分とは、JIS K 2270「原油及び石油製品−残留炭素分試験方法」により測定される残留炭素分を意味する。
本発明のA重油組成物のセタン指数は25以上45以下であることが好ましく、27以上43以下であることがより好ましい。セタン指数が25未満の場合は外燃機器用ボイラーにおいて着火性の悪化や、煤の発生が増大しやすくなる。またセタン指数が45より大きい場合は容量当りの発熱量が小さくなり、さらに、冬期においてワックスによるフィルターの目詰まりを起こりやすくなる。
本発明において、セタン指数はJIS K 2204−1992「軽油」に準拠して得られた値を表すものを意味している。つまり次の式によって算出する。
[セタン指数(C)=0.49083+1.06577(X)−0.0010522(X)2]
[X=97.833(logA)2+2.2088BlogA+0.01247B2−423.51logA−4.7808B+419.59]
A:(9/5)[101.3kPa(760mmHg)における50容量%留出温度(℃)]+32
B:API度
(101.3kPa(760mmHg)における50容量%留出温度(℃)は、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」によって測定し、API度は、JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」によって15℃の密度から換算して求める。)
本発明のA重油組成物は、JIS1種重油規格を満たすA重油組成物である。JIS1種重油規格とは、JIS K 2205「重油」に規定された「1種」を満足させる規格であり、具体的には引火点60℃以上、流動点5℃以下、残留炭素分4質量%以下、硫黄分2.0質量%以下、水分0.3容量%以下であることが必要である。
本発明のA重油組成物の引火点は、JIS1種重油規格である60℃以上を満たす必要がある。引火点が60℃に満たない場合には、安全上の理由によりA重油組成物として取り扱うことができない。同様の理由により、引火点は61℃以上であることが好ましく、62℃以上であることがより好ましい。
本発明において、引火点とは、JIS K 2265「原油及び石油製品−引火点試験方法」に準拠して得られた値を表すものを意味する。
本発明のA重油組成物の流動点は、JIS1種重油規格である5℃以下を満たす必要がある。さらに、低温流動性の観点から、2.5℃以下であることが好ましい。
本発明において、流動点とは、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」により測定される流動点を意味する。
本発明のA重油組成物における残留炭素分は、JIS1種重油規格である4質量%以下を満たす必要がある。さらに、微小粒子やPM低減の観点、並びにエンジンに搭載される排ガス後処理装置の性能維持の観点から、3質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
本発明において残留炭素分とは、JIS K 2270「原油及び石油製品−残留炭素分試験方法」により測定される残留炭素分を意味する。
本発明のA重油油組成物における硫黄分は、JIS1種重油規格である2質量%以下を満たす必要がある。さらに、微小粒子やPM低減の観点、並びにエンジンに搭載される排ガス後処理装置の性能維持の観点から、1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
本発明において硫黄分とは、JIS K 2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」により測定される残留炭素分を意味する。
本発明のA重油組成物における水分の含有量は、JIS1種重油規格である0.3容量%以下を満たす必要がある。さらに、部材への悪影響の観点から、0.2容量%以下であることが好ましく、0.1容量%以下であることがより好ましい。
本発明において水分とは、JIS K 2275「水分試験方法(原油および石油製品)」によって測定される値を意味する。
本発明のA重油組成物の基材としては、常圧蒸留装置より得られる直留軽油留分またはその脱硫軽油留分、直留灯油留分またはその脱硫灯油留分、水素化分解軽油、水素化分解灯油、残油脱硫軽油留分、水素化脱硫軽油留分または水素化精製軽油留分の抽出によりノルマルパラフィン分を除去した残分である脱ノルマルパラフィン軽油留分、重質軽油留分、減圧軽油を脱硫した軽油、流動接触分解灯油が挙げられる。好ましい基材としては、直留軽油、直留灯油、脱硫灯油、流動接触分解軽油が挙げられ、特に流動接触分解軽油、脱硫灯油を含むことが好ましい。
本発明のA重油組成物には、必要に応じ残留炭素基材が配合される。残留炭素基材の種類は特に限定するものではないが、常圧残油、残油脱硫重油、減圧残油、スラリー油、エキストラクト油等が挙げられ、これらを単独、もしくは2種以上併用して用いる。ここで常圧残油とは、常圧蒸留装置で原油を常圧において蒸留して得られる残油である。残油脱硫重油とは、残油脱硫装置において常圧残油または減圧残油を脱硫したときに得られる重油である。減圧残油とは、減圧蒸留装置で常圧残油を減圧下で蒸留して得られる残油である。スラリー油とは、流動接触分解装置から得られる残油である。エキストラクト油とは、潤滑油原料用減圧蒸留装置からの留分を、溶剤抽出法により抽出分離したもののうち潤滑油に適さない芳香族成分のことである。
本発明のA重油組成物の曇り点については特に制限はないが、燃料系統中の夾雑物阻止用のフィルターを閉塞させる低温時のワックス析出を減少させる点から、7℃以下であることが好ましく、6℃以下であることがより好ましく、5℃以下であることがさらに好ましく、4℃以下であることが最も好ましい。
本発明において、曇り点とは、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準拠して得られた値を表すものを意味している。
本発明のA重油組成物のCFPP(目詰まり点)については特に制限はないが、冬期においてワックスによるフィルター目詰まりの防止の点により優れることから、−3℃以下であることが好ましく、−5℃以下であることがより好ましく、−7℃以下であることが最も好ましい。
本発明において、CFPPとは、JIS K 2288「軽油−目詰まり点試験方法」に準拠して得られた値を表すものを意味している。
本発明のA重油組成物の修正目詰まり点については特に制限はないが、冬期においてワックスによるフィルター目詰まりの防止の点により優れることから、−3℃以下であることが好ましく、−5℃以下であることがより好ましい。修正目詰まり点が−3℃より高い場合は、冬季にポンプやバーナーのフィルター閉塞が起こりやすくなるため好ましくない。なお、
本発明において修正目詰まり点とは、石油学会規格JPI−5S−47−96「A重油の低温流動性試験方法」の解説に記載の修正法4で測定される値を意味する。
本発明のA重油組成物の窒素分については特に制限はないが、排ガス中の有害物質を低減するには、0.02質量%以下であることが好ましく、0.015質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが最も好ましい。
本発明において窒素分とは、JIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」に準拠して得られた値を表すものを意味している。
また、本発明のA重油組成物の蒸留性状の10容量%留出温度および50容量%留出温度については何ら制限はないが、通常は下記性状を満たすものが好ましい。
10容量%留出温度(T10): 180〜280℃
50容量%留出温度(T50): 240〜340℃
また、本発明のA重油組成物には、必要に応じて添加剤を配合することができる。ここでいう添加剤としては、セタン価向上剤、酸化防止剤、安定化剤、分散剤、金属不活性化剤、微生物殺菌剤、助燃剤、帯電防止剤、識別剤、着色剤等の各種添加剤が挙げられ、これら添加剤を適宜加えることができる。これらの中でも、冬期においてワックスによるフィルター目詰まりを防止する効果により優れることから、流動性向上剤を添加することが好ましい。流動性向上剤としては、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリマー型添加剤、油溶性分散剤型添加剤及びアルケルコハク酸等を用いることが出来る。また、流動性向上剤の添加量については何ら制限はないが、A重油組成物全量基準で0.001〜0.1容量%であることが好ましく、0.01〜0.05容量%であることがより好ましい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
[実施例1,2及び比較例1〜3]
表1に示す性状を有する各基材(直留灯油、直留軽油、流動接触分解軽油、残留炭素基材)を表2の各例に示すような容量比で混合し、実施例1、2及び比較例1〜3のA重油組成物を調製した。これらの各組成物の性状を表2に記載した。各試料油(各組成物)について、低温流動性性能評価、燃焼性性能評価を下記の方法により行った。その結果を表3に記した。
(低温流動性性能評価)
試料容器として、20Lペール缶を用意し、ペール缶の上面に試料吸引管を差し込む穴を設けた。穴の形成位置は、上面の中心と外周上の点とを結ぶ直線の中点とした。一方、試料吸引管として外径10mmの銅管を用意し、その一端をシリコンゴム管を介してフィルター(ネポン株式会社製、コードNo.120267)の入口に接続した。また、フィルターの出口を銅管を介して吸引ポンプに接続した。吸引ポンプは、通油量を1〜10L/hrの範囲内で調節可能なものを用いた。
次に、温度が20〜25℃の試料(A重油組成物)約15Lを上記のペール缶に入れ、ペール缶の上面の穴に試料吸引管付き蓋をした後、ペール缶とフィルターとを低温恒温槽内に収容し、ポンプを駆動させ、通油量が9.5±0.2L/hrとなるようにポンプ圧力を調整した。低温恒温槽としては、プログラム温度調節機能を備え、温度制度±0.5℃以内で−30℃以下まで冷却可能な恒温槽を用いた。ペール缶とフィルターとを低温恒温槽に収容した後、低温恒温槽内を所定の温度プロファイルで冷却し、吸引ポンプを駆動させた。より具体的には、試料の曇り点より8℃高い温度から冷却速度1℃/hrで所定の温度まで冷却した。その温度で3時間保持し、圧力計で圧力を測定して通油限界を判定した。通油限界の判定は、保持温度で60分間通油中に差圧が33kPa(250mmHg)以下である場合を合格、33kPaを超えた場合を不合格とし、不合格となるまで1℃間隔で保持温度を低くして試験を繰り返した。判定が不合格となった最高温度(目詰まり温度)を低温性能の評価の指標とした。なお、試料は試験ごとに新油に取り替えた。目詰まり温度が−15℃以下を良好(○)、−14℃以上を不良(×)と判断した。得られた結果を表3に示す。
(燃焼性性能評価)
燃焼速度を測定することにより燃焼性の性能評価を行った。燃焼速度の遅い燃料は外燃機器用ボイラーの排ガスに悪影響を与え、特に近年の高性能ボイラーにおけるトラブルの主要原因となる。
ボイラーの燃焼性は液滴燃焼評価装置を用いて評価した。石英糸の先端に試料を1μml保持し、大気圧、温度750℃の燃焼炉を被せ、試料を燃焼させる。燃焼速度は燃焼時の試料半径の変化量をビデオ解析により求めた。燃焼速度が遅い場合、ボイラー燃焼において煤が発生しやすくなる。燃焼速度が1.0mm/s以上を良好(○)、1.0mm/s未満を不良(×)と判断した。得られた結果を表3に示す。
(省燃費性能評価)
重量当りの発熱量である総発熱量に密度を乗ずることにより容量当りの発熱量を求めた。容量当りの発熱量が高い場合、省燃費性能が高いといえる。容量当りの発熱量が39000J/L以上を良好(○)、39000J/L未満を不良(×)と判断した。得られた結果を表3に示す。
なお、総発熱量はJIS K 2279「原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法」に準拠して得られた値を表すものを意味している。
表3の結果から明らかなように、本発明にかかる実施例1,2のA重油組成物は、いずれも燃焼性、省燃費性能に優れ、近年の高性能ボイラーへ十分な性能を持ち、低温時のフィルター通油性能に優れることが分かる。
Figure 0005046696
Figure 0005046696
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Claims (2)

  1. 15℃密度886kg/m以上940kg/m以下、蒸留性状の初留点温度180℃以下、90容量%留出温度330℃以下、95容量%留出温度345℃以下、50℃における動粘度2.8mm/s以下、飽和分量25容量%以上65容量%以下、CFPP(目詰まり点)が−20℃以上−3℃以下であることを特徴とするA重油組成物。
  2. 灰分0.02質量%以下、10%残留炭素分0.8質量%以下、セタン指数25以上45以下であることを特徴とする請求項1に記載のA重油組成物。
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