JP4885627B2 - A重油組成物の製造方法 - Google Patents
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小西誠一著,「燃料工学概論」,裳華房,1991年3月,p.136−144
A重油を用いる各種燃焼機器には、燃料油中の異物を除去する目的で、燃料系統に目開き5〜250μmのフィルターが設けられている。しかし、このような燃焼機器を冬季に使用すると、A重油から析出したワックスなどにより、フィルターの閉塞が起こりやすくなる。
さらに近年A重油に使用されるエンジンの高出力化及び低燃費化等に伴い、A重油としては、より高性能化の要望が年々高まっている。これら高性能エンジンの燃料としてA重油を用いた場合、着火性の悪化や、煤の発生が増大するといった燃焼性に関する問題が生じることがある。
しかし、上述の各方法で得られるA重油はそれぞれ次の点で改善の余地があり、いずれもA重油として実用に供し得るには未だ十分とは言えない。すなわち、芳香族分の増配合は燃焼ガス中の煤塵量の増加や着火不良の原因となる。また、低温流動性向上剤の性能は、使用基材との相性によるところが多く、単に添加するだけではA重油として充分な低温性能を得ることは困難である。残留炭素基材の増量は燃焼ガス中の煤塵量の増加の原因となり得るばかりか、他基材との溶解性が悪化し、常温時のスラッジ生成に伴うフィルター通油性が懸念される。
また、低温性能に優れたA重油は、パラフィン量が少なくなり燃焼性が悪くなる場合が多い。このように、低温性能、燃焼性の両方を同時に満たすA重油は得られていない。
すなわち、本発明は、炭素数16から25までの直鎖飽和炭化水素含有量が5質量%以上70質量%以下であり、蒸留性状の10容量%留出温度が100〜300℃のFT合成で製造される軽油留分および/またはFT合成で製造されるFTワックスを水素化分解した軽油および流動接触分解軽油を用いて得られる燃料油組成物に関する。
本発明の燃料油組成物は、構成成分として、[1]炭素数16から25までの直鎖飽和炭化水素含有量が5質量%以上70質量%以下であり、蒸留性状の10容量%留出温度が100〜300℃のFT合成で製造される軽油留分および/またはFT合成で製造されるFTワックスを水素化分解した軽油および[2]流動接触分解軽油を用いることが必要である。
本発明において流動接触分解軽油は、本発明の燃料油組成物の基材として使用する。具体的には、その蒸留性状としては、50容量%留出温度が200〜300℃であることが好ましく、15℃の密度が850〜900kg/m3の範囲であることが好ましい。
本発明における流動接触分解軽油は、芳香族分を50容量%以上含むことが好ましく、60容量%以上含むことがより好ましい。芳香族分がこの範囲に満たない場合には低温流動性および残留炭素用基材や冬季間に添加する流動性向上剤の溶解性が悪化するため好ましくない。
残留炭素基材の種類は特に限定するものではないが、常圧残油、残油脱硫重油、減圧残油、スラリー油、エキストラクト油等が挙げられ、これらを単独、もしくは2種以上併用して用いる。ここで常圧残油とは、常圧蒸留装置で原油を常圧において蒸留して得られる残油である。残油脱硫重油とは、残油脱硫装置において常圧残油または減圧残油を脱硫したときに得られる重油である。減圧残油とは、減圧蒸留装置で常圧残油を減圧下で蒸留して得られる残油である。スラリー油とは、流動接触分解装置から得られる残油である。エキストラクト油とは、潤滑油原料用減圧蒸留装置からの留分を、溶剤抽出法により抽出分離したもののうち潤滑油に適さない芳香族成分のことである。
[セタン指数(C)=0.49083+1.06577(X)−0.0010522(X)2]
[X=97.833(logA)2+2.2088BlogA+0.01247B2−423.51logA−4.7808B+419.59]
A:(9/5)[101.3kPa(760mmHg)における50%留出温度(℃)]+32
B:API度(101.3kPa(760mmHg)における50容量%留出温度(℃)は、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」によって測定し、API度は、JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法及び密度・質量・容量換算表」によって15℃の密度から換算して求める。)
10容量%留出温度(T10): 180〜280℃
50容量%留出温度(T50): 240〜340℃
90容量%留出温度(T90): 280〜380℃
本発明において、上記蒸留性状は、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」に準拠して得られる値を意味している。
表1に示す性状を有する各基材(FT合成で製造される軽油留分および/またはFT合成で製造されるFTワックスを水素化分解した軽油、流動接触分解軽油、直留軽油、常圧残油)を表2の各例に示すような容量比で混合し、実施例1、2及び比較例1〜3のA重油組成物を調製し、これら調製した各組成物の性状を表2に記載した。各試料油(各組成物)について、低温流動性性能評価、燃焼性性能評価を下記の方法により行った。その結果を表3に記した。
試料容器として、20Lペール缶を用意し、ペール缶の上面に試料吸引管を差し込む穴を設けた。穴の形成位置は、上面の中心と外周上の点とを結ぶ直線の中点とした。一方、試料吸引管として外径10mmの銅管を用意し、その一端をシリコンゴム管を介してフィルター(ネポン株式会社製、コードNo.120267)の入口に接続した。また、フィルターの出口を銅管を介して吸引ポンプに接続した。吸引ポンプは、通油量を1〜10L/hrの範囲内で調節可能なものを用いた。
次に、温度が20〜25℃の試料(A重油組成物)約15Lを上記のペール缶に入れ、ペール缶の上面の穴に試料吸引管付き蓋をした後、ペール缶とフィルターとを低温恒温槽内に収容し、ポンプを駆動させ、通油量が9.5±0.2L/hrとなるようにポンプ圧力を調整した。低温恒温槽としては、プログラム温度調節機能を備え、温度制度±0.5℃以内で−30℃以下まで冷却可能な恒温槽を用いた。ペール缶とフィルターとを低温恒温槽に収容した後、低温恒温槽内を所定の温度プロファイルで冷却し、吸引ポンプを駆動させた。より具体的には、試料の曇り点より8℃高い温度から冷却速度1℃/hrで所定の温度まで冷却した。その温度で3時間保持し、圧力計で圧力を測定して通油限界を判定した。通油限界の判定は、保持温度で60分間通油中に差圧が33kPa(250mmHg)以下である場合を合格、33kPaを超えた場合を不合格とし、不合格となるまで1℃間隔で保持温度を低くして試験を繰り返した。判定が不合格となった最高温度(目詰まり温度)を低温性能の評価の指標とした。なお、試料は試験ごとに新油に取り替えた。目詰まり温度が−9℃以下を良好(○)、−8℃以上を不良(×)と判断した。得られた結果を表3に示す。
以下の方法により、着火遅れを測定することにより燃焼性の性能評価を行った。着火遅れは、エンジン性能、排ガスに悪影響を与え、特に近年の高性能エンジンにおけるトラブルの主要原因となる。燃焼室の容積が1リットルである燃料着火性試験機を用い、圧力45バーレル、温度450℃の空気中に燃料を噴射して、噴射から着火するまでの時間を着火遅れ時間として測定した。着火遅れ時間が5ms未満を良好(○)、5ms以上を不良(×)と判断した。得られた結果を表3に示す。
Claims (5)
- 炭素数16から25までの直鎖飽和炭化水素含有量が5質量%以上70質量%以下であり、蒸留性状の10容量%留出温度が100〜300℃のFT合成で製造される軽油留分および/またはFT合成で製造されるFTワックスを水素化分解した軽油および流動接触分解軽油並びに残留炭素基材を配合してなる、10%残留炭素分が0.2質量%以上0.8質量%以下、セタン指数が50以上、50℃における動粘度が20mm 2 /s以下であるA重油組成物の製造方法。
- 50容量%留出温度が150〜350℃のFT合成で製造される軽油留分およびFT合成で製造されるFTワックスを水素化分解した軽油をA重油組成物全量基準で20容量%以上75容量%以下配合することを特徴とする請求項1に記載のA重油組成物の製造方法。
- 飽和分を90容量%以上含むFT合成で製造される軽油留分およびFT合成で製造されるFTワックスを水素化分解した軽油をA重油組成物全量基準で20容量%以上75容量%以下配合することを特徴とする請求項1に記載のA重油組成物の製造方法。
- 50容量%留出温度が200〜300℃の流動接触分解軽油をA重油組成物全量基準で30容量%以上70容量%以下配合することを特徴とする請求項1に記載のA重油組成物の製造方法。
- 芳香族分を50容量%以上含む流動接触分解軽油をA重油組成物全量基準で30容量%以上70容量%以下配合することを特徴とする請求項1に記載のA重油組成物の製造方法。
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