JP2017031374A - 内燃機用燃料油組成物 - Google Patents

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貞憲 澤田
Tadanori Sawada
貞憲 澤田
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Abstract

【課題】燃料油フィルタの閉塞頻度を効果的に低減できる内燃機用燃料油組成物を提供する。
【解決手段】本発明の内燃機用燃料油組成物は、(1)内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾きが0.07以下、(2)密度(15℃)が0.861g/cm以上0.880g/cm以下、(3)50℃における動粘度が1.8mm/s以上3.6mm/s以下、(4)10%残油の残留炭素分が内燃機用燃料油組成物全質量に対して0.2質量%よりも大きく0.6質量%以下、(5)水でい分が内燃機用燃料油組成物全容量に対して0.3容量%以下、(6)ドライスラッジが10mg/100mL以下、(7)実在セジメントが0.1質量%以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ディーゼルエンジンおよびガスタービンなどの内燃機に使用される内燃機用燃料油組成物に関するものであり、とくに、JIS K 2205「重油」の1種1号重油および1種2号重油(以下、これらをA重油と呼ぶ)に相当する燃料油組成物のうち、船舶用ディーゼルエンジンに好適に用いられる内燃機用燃料油組成物に関するものである。
A重油は、灯油および軽油に比較して単位体積当りの発熱量が高く、燃料油使用量(体積)を低減することができる。また、A重油は、C重油に比較して硫黄分、窒素分および残留炭素分が少なく環境負荷が小さい。加えて、A重油は、C重油とは異なり、加熱の必要がなく常温で使用可能であり、また、供給安定性にも優れている。このため、A重油は、船舶用ディーゼルエンジンなどの内燃機やボイラーなどの外燃機の燃料油として広く使用されている。
船舶用燃料油としては、ISO8217「Petroleum products −Fuels(class F)− Specification of marine fuels」を満足する燃料油、および、全漁連漁船用燃料油規格(たとえば、非特許文献1参照)を満足する燃料油が知られている。
ISO8217を満足する船舶用燃料油(Distillate marine fuels(Category ISO−F−DMB))は、燃料油フィルタの閉塞頻度を低減するために、Total sediment by hot filtration(試験法;ISO10307−1)が0.1質量%以下である。また、全漁連漁船用燃料油規格では、漁船用A重油の燃料油フィルタの閉塞頻度を低減するために、船舶用燃料油の水でい分が0.3容量%以下であり、かつドライスラッジが10mg/100mL以下である。
また、内燃機用A重油について、燃料油フィルタの通油性を改善する発明として、たとえば、特許文献1〜4に記載されているものが知られている。
特許第3825876号公報 特許第4084619号公報 特許第4577925号公報 特許第4728856号公報
全漁連漁船用石油製品規格委員会幹事会,「事業報告 全漁連漁船用燃料油規格の改定」,海洋水産エンジニアリング,13(110)号,105〜117頁(2013年)
しかしながら、これらの燃料油は、必ずしも燃料油フィルタの通油性が十分であるというわけではない。このため、燃料油フィルタの閉塞頻度をさらに低減することができる燃料油が求められている。そこで、本発明は、燃料油フィルタの閉塞頻度を効果的に低減することができる内燃機用燃料油組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討の結果、0.3容量%以下の水でい分および10mg/100mL以下のドライスラッジ以外に、特定の組成および性状をさらに有する内燃機用燃料油組成物が上記課題を解決することができることを見出した。本発明は、以下の通りである。
[1]下記(1)〜(7)をいずれも満足する内燃機用燃料油組成物。
(1)内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾きが0.07以下
(2)密度(15℃)が0.861g/cm以上0.880g/cm以下
(3)50℃における動粘度が1.8mm/s以上3.6mm/s以下
(4)10%残油の残留炭素分が内燃機用燃料油組成物全質量に対して0.2質量%よりも大きく0.6質量%以下
(5)水でい分が内燃機用燃料油組成物全容量に対して0.3容量%以下
(6)ドライスラッジが10mg/100mL以下
(7)実在セジメントが0.1質量%以下
[2]残留炭素源を含み、残留炭素源が下記(8)〜(11)をいずれも満足する上記[1]に記載の内燃機用燃料油組成物。
(8)ろ過時間の傾きが0.3以下
(9)残留炭素分が前記残留炭素源全質量に対して4質量%以上19質量%以下
(10)潜在セジメントが0.1質量%以下
(11)実在セジメントが0.1質量%以下
本発明によれば、燃料油フィルタの閉塞頻度を効果的に低減できる内燃機用燃料油組成物を提供することができる。
図1は、実施例および比較例の内燃機用燃料油組成物のろ過性能評価に使用したろ過性能評価システムの概略図である。
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
本発明は、下記(1)〜(7)で規定する組成、性状をいずれも満足する内燃機用燃料油組成物(以下、「本発明の油組成物」ということがある)に関する。
本発明の油組成物
(1)内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾きが0.07以下
(2)密度(15℃)が0.861g/cm以上0.880g/cm以下
(3)50℃における動粘度が1.8mm/s以上3.6mm/s以下
(4)10%残油の残留炭素分が内燃機用燃料油組成物全質量に対して0.2質量%よりも大きく0.6質量%以下
(5)水でい分が内燃機用燃料油組成物全容量に対して0.3容量%以下
(6)ドライスラッジが10mg/100mL以下
(7)実在セジメントが0.1質量%以下
[内燃機用燃料油組成物]
(内燃機用燃料油組成物の性状、組成)
本発明の内燃機用燃料油組成物は、以下の(1)〜(7)で規定された組成、性状をいずれも満足する。
(1)内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾き
本発明の油組成物の内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾きは、燃料油フィルタの閉塞の頻度を効果的に低減できるという観点から、0.07以下であり、好ましくは0.04以下であり、より好ましくは0.02以下である。内燃機用燃料油組成物中のセジメントなどが原因で燃料油フィルタが閉塞したとき、燃料油フィルタを洗浄し、燃料油フィルタを解放する。燃料油フィルタの閉塞の頻度が高いと、燃料油フィルタを洗浄した後、短い期間で、燃料油フィルタは再び閉塞する。一方、燃料油フィルタの閉塞の頻度が低い場合、燃料府フィルタが再び閉塞するまで長期間要することになる。内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾きが0.07以下の場合、燃料油フィルタの洗浄から次の洗浄までの期間は、少なくとも3ヶ月であると見積もられる。すなわち、内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾きが0.07以下であれば、少なくとも3ヶ月は、燃料油フィルタを洗浄することなく、ディーゼルエンジンを使用し続けることができる。
次に内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾きの算出方法を説明する。内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾きは以下のように算出する。
(a)500mLビーカーを3個用意し、内燃機用燃料油組成から採取した試料約500mLを各ビーカーに入れる。試料をビーカーに入れた後、各ビーカーを0.1mg単位で秤量する(M)(g)。
(b)細孔20μm以上25μm以下のろ紙(Whatman No.4(55mmφ))を、110℃の乾燥機で20分間乾燥させる。
(c)実在セジメント試験方法(JPI−5S−60)に定めるろ過装置(以下、ろ過装置)に、(b)で乾燥させたろ紙を置く。さらに上部漏斗を重ね、試料の漏れ込みがないよう固定する。この際、直径28mmの孔を開けたパッキンを重ねるなどの方法で、ろ過面の直径を28mmに調節する。その後、減圧瓶の他端には、排気速度12L/分で吸引できる真空ポンプを取り付ける。
(d)上部漏斗、恒温槽および試料を20±5℃に保つ。
(e)1つめの試料を、漏斗内壁に試料がつかないようにろ紙中央に注ぎ込む。ろ紙に注ぎ始めてから1分後に真空ポンプを起動させ、ろ過を開始する。ろ過開始時から、試料がろ過され、ろ紙が全面露出(内径28mmのろ過面部のみでよい)するまでに要した時間を測定する(t)(秒)。そして、使用後のビーカーを秤量する(M)(g)。
(f)真空ポンプ停止後、2つめ、3つめの試料に対し、(e)の操作を繰返し実施する。この間は、試験機取外しや機器洗浄など、測定条件が変わる動作をしない。また、ろ紙の閉塞によって試料がろ過されなくなった場合は、ろ過作業を終了し次工程に進む(目安として2分以上経過してもろ過作業が終了しない場合)。なお、ろ紙が閉塞した場合は、残試料をトルエンで溶解しピペット等で取り除く。
(g)漏斗およびろ紙をn−ヘプタンで洗浄後、上部漏斗を取り外し、ろ紙の縁を確認する。ろ紙の縁まで着色していたら、試料が漏れているため、再試験を行う。
下記式(1)より、内燃機用燃料油組成物単位体積当たりのろ過時間を算出する。
=t/[(M−M)/d] (1)
ここで、Tはn回めの測定(n個めの試料の測定)のろ過に要した時間から算出した内燃機用燃料油組成物単位体積当たりのろ過時間(秒/cm)、tはn回めの測定(n個め試料の測定)のろ過に要した時間(秒)、(M−M)はろ過した内燃機用燃料油組成物の質量(g)、dは15℃における内燃機用燃料油組成物の密度(g/cm)である。なお、ろ紙の閉塞によりろ過できなかった場合は、「計算不可」とする。
縦軸を内燃機用燃料油組成物単位体積当たりのろ過時間とし、横軸をろ過に要した時間の測定回数としてプロットした点から、最小二乗法で算出した近似直線の傾きが、内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾きとなる。
本発明の油組成物のろ過時間の傾きは、従来から知られているフィルタ閉塞物の量を少なくすることだけでなく、フィルタ閉塞物の粒径を大きくすることなどにより制御することができる。たとえば、常温状態での保管により閉塞物を凝集させ粒径を大きくする方法や、ろ過時間の傾きが小さい残留炭素源の使用等がある。
また、ろ過時間の傾きが異なる基材を配合することによっても、本発明の油組成物のろ過時間の傾きを制御することができる。
(2)密度
本発明の油組成物の密度は、ディーゼルエンジンでの燃焼性を確保し、燃焼不良による排ガス中の煤発生を抑制するという観点から、15℃で0.861g/cm以上0.880g/cm以下であり、好ましくは0.865g/cm以上であり、好ましくは0.875g/cm以下である。
本発明の油組成物の密度は、JIS K 2249(原油及び石油製品−密度の求め方−)に準じて測定することができる。
(3)動粘度
本発明の油組成物の動粘度は、燃焼不良による排ガス中の煤発生を抑制するという観点から、50℃で1.8mm/s以上3.6mm/s以下であり、好ましくは1.9mm/s以上であり、より好ましくは2.0mm/s以上であり、好ましくは3.4mm/s以下であり、より好ましくは3.2mm/s以下である。
上記動粘度は、JIS K 2283(原油及び石油製品の動粘度試験方法)に準じて測定することができる。
(4)10%残油の残留炭素分
本発明の油組成物の10%残油の残留炭素分は、ディーゼルエンジンでの燃焼性を確保し、燃焼不良による排ガス中の煤発生を抑制し、スラッジ析出による燃料油フィルタの閉塞を抑制するという観点から、内燃機用燃料油組成物全質量に対して、0.6質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下である。また、税法上の観点から、本発明の油組成物の10%残油の残留炭素分は、内燃機用燃料油組成物全質量に対して0.2質量%よりも大きい。
本発明の油組成物の残留炭素分は、JIS K 2270(原油及び石油製品−残留炭素分試験方法−)に準じて測定することができる。
(5)水でい分
本発明の油組成物の水でい分は、燃料油フィルタの通油性を確保するという観点から、内燃機用燃料油組成物全容量に対して、0.3容量%以下であり、好ましくは0.1容量%以下である。
本発明の油組成物の水でい分は、JIS K 2601(原油試験方法−水でい分試験方法−)に準じて測定することができる。
(6)ドライスラッジ
本発明の油組成物のドライスラッジは、燃料油フィルタの通油性を確保するという観点から、10mg/100mL以下であり、好ましくは5mg/100mL以下であり、より好ましくは3mg/100mL以下である。
本発明の油組成物のドライスラッジは、全漁連A重油ドライスラッジ測定法 Z・G・ST−1010(非特許文献1参照)に準じて測定することができる。
(7)実在セジメント
本発明の油組成物の実在セジメントは、燃料油フィルタの通油性確保の観点から、0.1質量%以下であり、好ましくは0.03質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下である。
本発明の油組成物の実在潜在セジメントは、JPI−5S−60(原油及び石油製品−セジメント試験方法−)に準じて測定することができる。
本発明の油組成物は、下記(12)〜(18)で規定する組成、性状のいずれか1つをさらに満足してもよい。
(12)反応試験
本発明の油組成物は、燃料油タンク、配管、ディーゼルエンジンおよび装備しているポンプなどの補機の腐食を防止する観点から、JIS K 2252による石油製品反応試験の結果が中性であることが好ましい。
(13)引火点
本発明の油組成物の引火点は、取り扱い上の安全性確保の観点から、好ましくは62℃以上である。
上記引火点は、JIS K 2265(原油及び石油製品−引火点試験方法−)に準じて測定することができる。
(14)流動点
本発明の油組成物の流動点は、寒冷地の冬季での使用における配管中の内燃機用燃料油組成物の流動性を確保するという観点から、好ましくは−20℃以下である。
本発明の油組成物の流動点は、JIS K 2269(原油及び石油製品の流動点並びに曇り点試験方法)に準じて測定することができる。
(15)水分含有率
本発明の油組成物中における水分含有率は、貯蔵安定性の低下(アスファルテンと水のエマルジョンによるスラッジ生成)の観点から、本発明の油組成物全容量に対して、好ましくは0.01容量%以下である。
本発明の油組成物中における水分含有率は、JIS K 2275(原油及び石油製品−水分試験方法−)に準じて測定することができる。
(16)灰分量
本発明の油組成物中の灰分量は、ディーゼルエンジンのシリンダーなどの摩耗を抑制するという観点から、本発明の油組成物全質量に対して、好ましくは0.001質量%以下である。
本発明の油組成物中の灰分は、JIS K 2272(原油及び石油製品の灰分ならびに硫酸灰分試験方法)に準じて測定することができる。
(17)硫黄分含有率
本発明の油組成物中の硫黄分含有率は、排ガス中の硫黄酸化物による環境負荷を低減し、排ガスの酸露点低下抑制による煙道腐食を抑制する観点から、本発明の油組成物全質量に対して、好ましくは1質量%以下である。
上記硫黄分含有率は、JIS K 2541(原油及び石油製品−硫黄分試験方法−)に準じて測定することができる。
(18)セタン指数
本発明の油組成物のセタン指数は、ディーゼルエンジンでの燃焼性を確保し、冷態始動時の始動性を確保するという観点から、好ましくは43以上であり、より好ましくは45以上である。また、本発明の油組成物のセタン指数は、燃料油フィルタの通油性を確保するという観点から、好ましくは50以下であり、より好ましくは48以下である。
上記セタン指数は、JIS K 2201−1994に準じて測定することができる。
[基材]
本発明の油組成物は、以下の基材を含有することができる。
灯油留分
直留灯油留分(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる灯油留分)
脱硫灯油留分(直留灯油留分を脱硫して得られる灯油留分)
水素化分解灯油留分(直留軽油留分及び/もしくは減圧軽油留分を水素化分解して得られる灯油留分)
軽油留分
直留軽油留分(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる軽油留分)
減圧軽油留分(常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる軽油留分)
脱硫軽油留分(直留軽油留分を脱硫して得られる軽油留分)
分解軽油留分(常圧蒸留残渣油及び/もしくは減圧蒸留残渣油を流動接触分解して得られる軽油留分)
直脱軽油留分(常圧蒸留残渣油及び/もしくは減圧蒸留残渣油を直接脱硫装置で脱硫処理し得られる軽油留分)
残留炭素源
常圧蒸留残渣油(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる残渣油)
減圧蒸留残渣油(常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる残渣油)
直脱重油(常圧蒸留残渣油及び/もしくは減圧蒸留残渣油を直接脱硫装置で脱硫して得られる重油)
分解重油(直脱重油を流動接触分解して得られる重油分)
C重油(JIS K 2205「重油」の1種、2種、3種重油)
本発明の内燃機用燃料油組成物に用いる残留炭素源は、以下の(8)〜(11)で規定された組成、性状をいずれも満足することが好ましい。
(8)ろ過時間の傾き
本発明の油組成物に用いる残留炭素源のろ過時間の傾きは、燃料油フィルタの閉塞の頻度を効果的に低減できるという観点から、好ましくは0.3以下であり、より好ましくは0.2以下であり、さらに好ましくは0.05以下である。
残留炭素源のろ過時間の傾きは、以下のように算出する。
(a)測定試料を「JIS K 2601原油試験方法 水でい分試験方法 水でい分試験器」(以下、水でい分試験器)で使用される目盛試験管3本に、各々100mLの標線まで採取する。その後、水でい分試験器で使用される遠心分離器を用い、70℃、相対遠心力600の条件で55分間遠心分離を行う。
(b)50mLビーカーを3個用意し、遠心分離をかけた目盛試験管3本の試料の上部50mLを、各50mLビーカーに分取する。分取後のビーカーを0.1mg単位で秤量する(M)(g)。
(c)細孔20μm以上25μm以下のろ紙(Whatman No.4(55mmφ))を110℃の乾燥機で20分間乾燥させる。
(d)JPI−5S−60の実在セジメント試験方法に定めるろ過装置(以下、ろ過装置)に、(c)で乾燥させたろ紙を置く。さらに上部漏斗をその上に重ね、試料の漏れ込みがないよう固定する。この際、直径28mmの孔を開けたパッキンを重ねるなどの方法で、ろ過面の直径を28mmに調節する。その後、減圧瓶の他端に12L/分で排気できる真空ポンプを取り付ける。
(e)上部漏斗を100±1℃となるように加熱する。
(f)100±1℃に保った恒温槽で、(b)で準備した試料を同時に15分間加熱する。
(g)加熱した試料のうち、1つめの試料を、漏斗内壁に試料がつかないようにろ紙中央に注ぎ込む。ろ紙に注ぎ始めてから1分後に真空ポンプを起動させ、ろ過を開始する。ろ過開始時から、試料がろ過され、ろ紙が全面露出(内径28mmのろ過面部のみでよい)するまでに要した時間を測定する(t)(秒)。そして、使用後のビーカーを秤量する(M)(g)。
(h)真空ポンプ停止後、2つめ、3つめの試料に対し、(g)の操作を繰返し実施する。この間は、試験機取外しや機器洗浄など、測定条件が変わる動作をしない。また、ろ紙の閉塞によって試料がろ過されなくなった場合は、ろ過作業を終了し次工程に進む(目安として6分以上経過してもろ過作業が終了しない場合)。なお、ろ紙が閉塞した場合は、残試料をトルエンで溶解しピペット等で取り除く。
(i)漏斗およびろ紙をn−ヘプタンで洗浄後、上部漏斗を取り外し、ろ紙の縁を確認する。ろ紙の縁まで着色していたら、試料が漏れているため、再試験を行う。
下記式(1)より、残留炭素源単位体積当たりのろ過時間を算出する。
=t/[(M−M)/d] (1)
ここで、Tはn回めの測定(n個めの試料の測定)のろ過に要した時間から算出した残留炭素源単位体積当たりのろ過時間(秒/cm)、tはn回めの測定(n個めの試料の測定)のろ過に要した時間(秒)、(M−M)はろ過した残留炭素源の質量(g)、dは15℃における残留炭素源の密度(g/cm)である。なお、ろ紙の閉塞によりろ過できなかった場合は、「計算不可」とする。
縦軸を残留炭素源単位体積当たりのろ過時間とし、横軸をろ過に要した時間の測定回数としてプロットした点から、最小二乗法で算出した近似直線の傾きが、残留炭素源のろ過時間の傾きとなる。
(9)残留炭素分
本発明の油組成物に用いる残留炭素源の残留炭素分は、内燃機用燃料油組成物の燃焼性を維持し、燃料油フィルタの通油性を確保するという観点から、残留炭素源全質量に対して、好ましくは4質量%以上19質量%以下であり、より好ましくは7質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは9質量%以上11質量%以下である。
本発明の油組成物に用いる残留炭素源の残留炭素分は、JIS K 2270(原油及び石油製品−残留炭素分試験方法−)に準じて測定することができる。
(10)潜在セジメント
本発明の油組成物に用いる残留炭素源の潜在セジメントは、燃料油フィルタの通油性確保の観点から、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下である。
本発明の油組成物に用いる残留炭素源の潜在セジメントは、JPI−5S−60(原油及び石油製品−セジメント試験方法−)に準じて測定することができる。
(11)実在セジメント
本発明の油組成物に用いる残留炭素源の実在セジメントは、燃料油フィルタの通油性確保の観点から、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.02質量%以下である。
本発明の油組成物に用いる残留炭素源の実在潜在セジメントは、JPI−5S−60(原油及び石油製品−セジメント試験方法−)に準じて測定することができる。
本発明の油組成物に用いる残留炭素源は、下記(19)および(20)で規定する組成、性状のいずれか1つをさらに満足してもよい。
(19)水分含有率
本発明の油組成物に用いる残留炭素源中における水分含有率は、貯蔵安定性の低下(アスファルテンと水のエマルジョンによるスラッジ生成)の観点から、残留炭素源全容量に対して、好ましくは0.3容量%以下であり、より好ましくは0.1容量%以下である。
本発明の油組成物に用いる残留炭素源中における水分含有率は、JIS K 2275(原油及び石油製品−水分試験方法−)に準じて測定することができる。
(20)灰分量
本発明の油組成物に用いる残留炭素源中の灰分量は、ディーゼルエンジンのシリンダーなどの摩耗を抑制するという観点から、残留炭素源全質量に対して、好ましくは0.05質量%以下であり、より好ましくは0.03質量%以下であり、さらに好ましくは0.02質量%以下である。
本発明の油組成物に用いる残留炭素源中の灰分は、JIS K 2272(原油及び石油製品の灰分ならびに硫酸灰分試験方法)に準じて測定することができる。
(基材の混合割合)
本発明の油組成物の上記組成、性状を満足するように、上記灯油留分および軽油留分を、任意の含有量で含有させることができる。また、上記残留炭素源も、本発明の油組成物の上記組成、性状を満足するように任意の含有量で含有させることができる。しかし、本発明の油組成物の全質量に対する残留炭素源の混合割合は、好ましくは0.1質量%以上1.2質量%以下であり、より好ましくは0.15質量%以上1.00質量%以下であり、さらに好ましくは0.20質量%以上、0.80質量%以下である。
[その他の添加剤]
本発明の油組成物には、上述の諸性状を維持しうる範囲で、必要に応じ、低温流動性向上剤、潤滑性向上剤、セタン価向上剤、燃焼促進剤、清浄剤、スラッジ分散剤、酸化防止剤、防カビ剤などの各種添加剤を適宜選択して配合することができる。また、軽油引取税の観点よりクマリンを配合してもよい。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。なお、各基材の性状は、前述の通り、下記の方法に従って求めた。
[基材の性状と組成の評価]
(i)密度(15℃):JIS K 2249に準じて測定した。
(ii)50℃における動粘度:JIS K 2283に準じて測定した。
(iii)10%残油の残留炭素分:JIS K 2270に準じて測定した。
(iv)水でい分:JIS K 2601に準じて測定した。
(v)ドライスラッジ:全漁連A重油ドライスラッジ測定法 Z・G・ST−1010(非特許文献1参照)に準じて測定した、
(vi)実在セジメント:JPI−5S−60に準じて測定した。
(vii)反応試験:JIS K 2252による石油製品反応試験により測定した。
(viii)引火点:JIS K 2265に準じて測定した。
(ix)流動点:JIS K 2269に準じて測定した。
(x)水分含有率:JIS K 2275に準じて測定した。
(xi)灰分量:JIS K 2272に準じて測定した。
(xii)硫黄分含有率:JIS K 2541に準じて測定した。
(xiii)セタン指数:JIS K 2204−1992に準じて測定した。
(xiv)残留炭素源のろ過時間の傾き:上述の残留炭素源のろ過時間の傾きの算出方法に準じて算出した。
(xv)残留炭素分:JIS K 2270に準拠して測定した。
(xvi)潜在セジメント:JPI−5S−60に準じて測定した。
[内燃機用燃料油組成物の性状と組成の評価]
内燃機用燃料油組成物の下記以外の性状、組成は上記の基材の評価と同様の方法で行った。
(xvii)内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾き:上述の内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾きの算出方法に準じて算出した。
(xviii)内燃機用燃料油組成物のろ過性能評価は以下のように行った。
内燃機用燃料油組成物に対して、図1に示すろ過性能評価システムにより、内燃機用燃料油組成物のろ過性能を評価した。評価システム1は、燃料タンク11、ポンプ12、流量計13、フィルタ14および差圧計15を含む。燃料油タンク11は内燃機用燃料油組成物を約20±5℃の温度に保温しながら貯蔵した。燃料タンク11に貯蔵されている内燃機用燃料油組成物はポンプ12および流量計13を経由してフィルタ14に輸送された。フィルタ14には、フィルタエレメント(SMC(株)製、表面積:420cm/g、公称ろ過度:5μm)を使用した。フィルタ14における内燃機用燃料油組成物の流量は100L/時間であった。フィルタ14の上流側と下流側とで接続している差圧計15は、フィルタ14の入口と出口との間の差圧を測定した。
差圧計15により測定されるフィルタ14の入口と出口との間の差圧が1kPaに達するまでの時間を測定した。フィルタ14の入口と出口との間の差圧が1kPaに達するまでの時間が短い場合、フィルタ14を通過している内燃機用燃料油組成物はフィルタ14に詰まりやすい内燃機用燃料油組成物といえ、ろ過性能の低い内燃機用燃料油組成物であるといえる。一方、フィルタ14の入口と出口との間の差圧が1kPaに達するまでの時間が長い場合、フィルタ14を通過している内燃機用燃料油組成物はフィルタ14に詰まりにくい内燃機用燃料油組成物といえ、ろ過性能の高い内燃機用燃料油組成物といえる。内燃機用燃料油組成物のろ過性能を以下の評価基準により判断した。
◎;差圧が1kPaに達するまでの時間が1200時間以上
○;差圧が1kPaに達するまでの時間が600時間以上1200時間未満
×;差圧が1kPaに達するまでの時間が600時間未満
なお、1200時間は、その内燃機用燃料油組成物を漁船などに実際に使用した場合の約6ヶ月のフィルタエレメントの交換頻度に相当し、600時間は、その内燃機用燃料油組成物を漁船などに実際に使用した場合の約3ヶ月のフィルタエレメントの交換頻度に相当する。
[実施例1〜4および比較例1〜4の内燃機用燃料油組成物の製造]
下記表1に示す性状、組成を有する基材を表2に示す割合で混合して混合基材を作製した。そして、この混合基材と下記表3に示す性状、組成を有する残留炭素源とを下記表4および5に示す割合で配合して、下記表4および5に示す性状の内燃機用燃料油組成物を作製した。
得られた各内燃機用燃料油組成物について、評価結果を表4および5に示す。
表4より明らかなように、本発明の油組成物に包含される実施例1〜4の内燃機用燃料油組成物はいずれもろ過性能が良好であった。一方、表5より明らかなように、比較例1〜4は、水でい分が0.3容量%以下であり、ドライスラッジが10mg/100mL以下であったにもかかわらず、ろ過性能は悪かった。
1 評価システム
11 燃料タンク
12 ポンプ
13 流量計
14 フィルタ
15 差圧計

Claims (2)

  1. 下記(1)〜(7)をいずれも満足する内燃機用燃料油組成物。
    (1)前記内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾きが0.07以下
    (2)密度(15℃)が0.861g/cm以上0.880g/cm以下
    (3)50℃における動粘度が1.8mm/s以上3.6mm/s以下
    (4)10%残油の残留炭素分が前記内燃機用燃料油組成物全質量に対して0.2質量%よりも大きく0.6質量%以下
    (5)水でい分が前記内燃機用燃料油組成物全容量に対して0.3容量%以下
    (6)ドライスラッジが10mg/100mL以下
    (7)実在セジメントが0.1質量%以下
  2. 残留炭素源を含み、
    前記残留炭素源が下記(8)〜(11)をいずれも満足する請求項1に記載の内燃機用燃料油組成物。
    (8)ろ過時間の傾きが0.3以下
    (9)残留炭素分が前記残留炭素源全質量に対して4質量%以上19質量%以下
    (10)潜在セジメントが0.1質量%以下
    (11)実在セジメントが0.1質量%以下
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