JP2005225922A - A重油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 低温性能に優れており、寒冷地において使用する場合であっても、外燃機器、ディーゼル機器、ガスタービン機器などの燃焼機器が備えるフィルターを閉塞することなく、燃焼機器を安定に運転することが可能なA重油組成物を提供すること。
【解決手段】 曇り点が−10℃以下、目詰まり点が−25℃以下、流動点が−30℃以下、修正目詰まり点が−20℃以下、引火点が60℃以上、10%残留炭素分が0.2〜1.0質量%、セタン指数が40以上であることを特徴とするA重油組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、A重油組成物に関し、詳しくは、寒冷地におけるボイラー、ディーゼル機器、ガスタービン等の燃焼機器などに用いられるA重油組成物に関する
A重油は、ボイラー等の外燃機器燃料や小型漁船、建設機械の陸上輸送用以外のディーゼルエンジン機器燃料、ガスタービン機器燃料として広く用いられている。
A重油を用いる各種燃焼機器には、燃料油中の異物を除去する目的で、燃料系統に目開き5〜250μmのフィルターが設けられている。しかし、このような燃焼機器を冬季に使用すると、A重油から析出したワックスなどにより、フィルターの閉塞が起こりやすくなる。
そこで、かかる現象を回避すべく、A重油について低温流動性などの低温性能を改善するための検討が行われており、灯油留分の増量、脱ろう基材の活用、重質油の配合、残渣油の増量、低温流動性向上剤の添加などの方法が提案されている(例えば、特許文献1、2及び非特許文献1を参照)。
特開平9−333583号公報 特開平7−97581号公報 舶用燃料の科学、野村宏次著、第164〜166頁、1994年
しかし、上述の各方法で得られるA重油はそれぞれ以下の点で改善の余地があり、いずれも寒冷地向けA重油として実用に供し得るには未だ十分とは言えない。
例えば、灯油留分を増量する方法の場合、寒冷地仕様のA重油として充分な低温流動性を得るためには、灯油留分を多量に配合する必要があり、引火点が低くなるため安全上有効ではない。
また、脱ろう基材を活用する方法の場合、脱ろう基材といえども寒冷地で使用するにはワックス量が多いため、低温性能を充分に改善することはできない。
また、重質油の増配合はワックス析出点(曇り点)の悪化につながる。
また、残渣油の増量は燃焼ガス中の煤塵量の増加の原因となり得る。
さらに、低温流動性向上剤の性能は、使用基材との相性によるところが多く、単に添加するだけで寒冷地向けA重油として充分な低温性能を得ることは困難である。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、低温性能に優れており、寒冷地において使用する場合であっても、外燃機器、ディーゼル機器、ガスタービン機器などの燃焼機器が備えるフィルターを閉塞することなく、燃焼機器を安定に運転することが可能なA重油組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、曇り点、目詰まり点、流動点、修正目詰まり点、引火点、10%残留炭素分、セタン指数が特定の条件を満たすA重油組成物を暖房機器の燃料として用いた場合、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のA重油組成物は、曇り点が−10℃以下、目詰まり点が−25℃以下、流動点が−30℃以下、修正目詰まり点が−20℃以下、引火点が60℃以上、10%残留炭素分が0.2〜1.0質量%、セタン指数が40以上であることを特徴とする。
本発明のA重油組成物の水分は300質量ppm以下であることが好ましい。
また、本発明のA重油組成物の蒸留性状に関し、10%留出温度は170〜220℃、50%留出温度は230〜280℃、90%留出温度は280〜350℃であることが好ましい。
本発明のA重油組成物は、重質軽油留分、減圧軽油を脱硫した軽油及び流動接触分解軽油を含有することが好ましい。これにより、低温性能に優れた本発明のA重油組成物を有効に実現することが可能となる。重質軽油留分としては、50%留出温度が330〜390℃、15℃における密度が870〜920kg/mであるものが好ましく、減圧軽油を脱硫した軽油としては、50%留出温度が260〜300℃、15℃における密度が830〜880kg/mであるものが好ましく、流動接触分解軽油としては、50%留出温度が220〜260℃、15℃における密度が870〜900kg/mであるものが好ましい。更に、これらの基材を含有する場合の組成は特に制限されないが、組成物全量を基準として、重質軽油留分が0.5〜7容量%、減圧軽油を脱硫した軽油留分が15容量%以上;流動接触分解軽油留分が10〜45容量%であることが好ましい。
本発明のA重油組成物は、低温流動性向上剤濃度が1000mg/L以下であることが好ましい。
本発明によれば、寒冷地でも外燃機器、ディーゼル機器、ガスタービン機器用フィルターを閉塞することなく機器を安定に運転することが可能なA重油組成物が提供される。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明のA重油組成物は、曇り点が−10℃以下、目詰まり点が−25℃以下、流動点が−30℃以下、修正目詰まり点が−20℃以下、引火点が60℃以上、10%残留炭素分が0.2〜1.0質量%、セタン指数が40以上であることを特徴とする。以下、これらの性状について詳述する。
本発明のA重油組成物の曇り点は、−10℃以下であることが必要であり、−11℃以下であることが好ましく、−12℃以下であることがより好ましい。曇り点が−10℃より高い場合は、寒冷地のタンク内でワックスが析出し、供給されるライン内燃料のワックス量が増え、ライン閉塞が起こりやすくなる。なお、本発明でいう曇り点は、JIS K 2269「原油および石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」により測定される値を意味する。
また、本発明のA重油組成物の目詰まり点は、−25℃以下であることが必要であり、好ましくは−28℃以下、より好ましくは−30℃以下である。目詰まり点が−25℃より高い場合は、寒冷地でのポンプやバーナーのフィルター閉塞が起こりやすくなる。なお、本発明でいう目詰まり点は、JIS K 2288「軽油−目詰まり点試験方法」をA重油に適用して測定される値を意味する。
また、本発明の流動点は、−30℃以下であることが必要であり、好ましくは−33℃以下、より好ましくは−35℃以下である。流動点が−30℃より高い場合は、寒冷地での燃料の流動性が低下し、燃焼機器への供給が滞る。なお、本発明でいう流動点は、JIS K 2269「原油および石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」により測定される値を意味する。
また、本発明の修正目詰まり点は、−20℃以下であることが必要であり、好ましくは−22℃以下、より好ましくは−23℃以下である。修正目詰まり点が−20℃より高い場合は、寒冷地でのポンプやバーナーのフィルター閉塞が起こりやすくなる。なお、本発明でいう修正目詰まり点は、石油学会法 JPI−5S−47−96「A重油の低温流動性試験方法」の解説に記載の修正法4で測定される値を意味する。
また、本発明のA重油組成物の引火点は、取り扱い上の安全性の点から、60℃以上であることが必要であり、好ましくは62℃以上である。なお、本発明でいう引火点とは、JIS K2265「原油及び石油製品−引火点試験方法」のペンスキーマルテン密閉式で測定される値を意味する。
また、本発明のA重油組成物の10%残留炭素分は、0.2〜1.0質量%であることが必要であり、好ましくは0.2〜0.8質量%、より好ましくは0.2〜0.6質量%である。10%残留炭素分が1.0質量%より多い場合は燃焼排ガス中の煤塵量が多くなったり、バーナーが汚れやすくなる。一方10%残留炭素分の下限は、A重油の免税条件上、0.2質量%以上であることが必要である。なお、本発明でいう10%残留炭素分は、JIS K 2270「原油および石油製品−残留炭素分試験方法」により測定される値を意味する。
また、本発明のA重油組成物のセタン指数は、40以上であることが必要であり、好ましくは42以上である。セタン指数がは40未満の場合は、ディーゼルエンジンの着火性が悪化する。なお、本発明でいうセタン指数は、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」により測定される値を意味する。
本発明のA重油組成物は、曇り点、目詰まり点、流動点、修正目詰まり点、引火点、10%残留炭素分、及びセタン指数がそれぞれ上記の条件を満たすものであればよいが、以下の性状を有していることが好ましい。
本発明のA重油組成物の水分は、300質量ppm以下であることが好ましく、250質量ppm以下であることがより好ましく、200質量ppm以下であることが更に好ましい。水分が300質量ppmより多い場合、寒冷地では氷となって析出し、金属腐食やフィルター目詰まりを引き起こす傾向にある。なお、本発明でいう水分とは、JIS K2275「原油及び石油製品−水分試験方法」のカールフィッシャー式容量滴定法で測定される値を意味する。
また、本発明のA重油組成物の蒸留性状に関し、10%留出温度は170〜220℃、50%留出温度は230〜280℃、90%留出温度は280〜350℃であることが好ましい。
A重油組成物の10%留出温度(以下、「T10」という)は、引火点低下による安全性への影響から、170℃以上であることが好ましく、173℃以上であることがより好ましく、175℃以上であることがさらに好ましい。一方、低温性能の点から、T10は、220℃以下であることが好ましく、215℃以下であることがより好ましい。
A重油組成物の50容量%留出温度(以下、「T50」という)は、230℃以上であることが好ましく、235℃以上であることがより好ましい。T50が230℃未満の場合は発熱量が悪化する傾向にある。一方、燃焼性の点から、T50は、280℃以下であることが好ましく、275℃以下であることがより好ましい。
A重油組成物の90%留出温度(以下、「T90」という)は、350℃以下であることが好ましく、345℃以下であることがより好ましく、340℃以下であることがさらに好ましい。終点が350℃を超える場合、寒冷地では気化が進みにくく、完全燃焼し難い傾向にある。また、ワックス含有量が多すぎて低温流動性向上剤の効果が現れにくい。一方、T90は、発熱量の点から、280℃以上であることが好ましく、285℃以上であることがより好ましく、290℃以上であることがさらに好ましい。
さらに、A重油組成物のその他の蒸留性状に関し、初留点は、引火点低下による安全性への影響から150℃以上であることが好ましい。また、95容量%留出温度(以下、「T95」という)は、燃焼性の点から、370℃以下であることが好ましく、360℃以下であることがより好ましい。
なお、本発明でいう初留点、T10、T50、T90及びT95は、それぞれJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」により測定される値を意味する。
また、本発明のA重油組成物を構成する基材に関し、その性状及び含有量は、A重油組成物の曇り点、目詰まり点、流動点、修正目詰まり点、引火点、10%残留炭素分、及びセタン指数がそれぞれ上記の条件を満たせば特に制限されない。好ましい基材としては、重質軽油留分、減圧軽油を脱硫した軽油、流動接触分解軽油が挙げられる。これらの基材は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、本発明のA重油組成物においては、重質軽油留分、減圧軽油を脱硫した軽油、流動接触分解軽油の全てを含有することが特に好ましい。
本発明でいう重質軽油留分とは、常圧蒸留装置で原油を常圧において蒸留して得られる直留重質軽油または脱硫処理した重質軽油留分である。かかる重質軽油留分としては、50%留出温度(T50)が330〜390℃であり、15℃における密度が870〜920Kg/mのものが好ましい。
重質軽油留分の含有量は、低温流動性向上の点から、重質軽油留分は、組成物全量を基準として、0.5容量%以上であることが好ましく、1容量%以上であることがより好ましい。また、重質軽油留分の含有量は、組成物全量を基準として、7容量%以下であることが好ましく、6容量%以下であることがより好ましく、5容量%以下であることがさらに好ましい。重質軽油留分の含有量が7容量%を超えると、ワックス析出温度(曇り点)が高くなり、フィルター閉塞を起こしやすくなる傾向にある。
本発明でいう減圧軽油を脱硫した軽油とは、減圧軽油、直留重質軽油等を原料とし、水素化分解装置から得られる軽油留分である。減圧軽油を脱硫した軽油としては、50%留出温度(T50)が260〜300℃であり、15℃における密度が830〜880Kg/m、引火点が65℃以上のものが好ましい。
減圧軽油を脱硫した軽油の含有量は、組成物全量を基準として、15容量%以上であることが好ましく、18容量%以上であることがより好ましく、20容量%以上であることがさらに好ましい。減圧軽油を脱硫した軽油の含有量が15容量%未満の場合は、直留または脱硫灯油留分の配合量が増え、引火点が問題となるおそれがある。
本発明でいう流動接触分解軽油とは、減圧軽油、水素化分解残油、残油脱硫油等を原料とし、流動接触分解装置から得られる軽油留分である。流動接触分解軽油としては、50%留出温度(T50)が220〜260℃であり、15℃における密度が870〜900Kg/mのものが好ましい。
流動接触分解軽油の含有量は、組成物全量を基準として、10容量%以上であることが好ましく、15容量%以上であることがより好ましく、20容量%以上であることがさらに好ましい。流動接触分解軽油の含有量が10容量%未満の場合は、ワックス主成分であるノルマルパラフィン量が増え、低温性能が悪化する。また、流動接触分解軽油の含有量は、45容量%以下であることが好ましく、42容量%以下であることがより好ましく、40容量%以下であることが更に好ましい。流動接触分解軽油の含有量が45容量%を超えると、セタン指数が問題となるおそれがある。
また、本発明のA重油組成物は、残留炭素分付与用基材として、常圧残油、残油脱硫重油、減圧残油、スラリー油、エキストラクト油等をさらに含有してもよい。これらの残留炭素分付与用基材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上併用して用いることができる。ここで、常圧残油とは、常圧蒸留装置で原油を常圧において蒸留して得られる残油である。残油脱硫重油とは、残油脱硫装置において常圧残油または減圧残油を脱硫したときに得られる重油である。減圧残油とは、減圧蒸留装置で常圧残油を減圧下で蒸留して得られる残油である。スラリー油はとは、流動接触分解装置から得られる残油である。エキストラクト油とは、潤滑油原料用減圧蒸留装置からの留分を、溶剤抽出法により抽出分離したもののうち潤滑油に適さない芳香族成分のことである。
さらに、本発明のA重油組成物は、直留軽油留分またはその脱硫軽油留分、直留灯油留分またはその脱硫灯油留分、水素化分解軽油、残油脱硫軽油留分、水素化脱硫軽油留分または水素化精製軽油留分の抽出によりノルマルパラフィン分を除去した残分である脱ノルマルパラフィン軽油留分等の基材を含有してもよい。
また、本発明のA重油組成物は、低温流動性向上剤をさらに含有することが好ましい。低温流動性向上剤の種類は特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体に代表されるエチレン−不飽和エステル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、アルキルフマレート−不飽和エステル共重合体、アルキルイタコネート−不飽和エステル共重合体等のポリマー型添加剤、油溶性分散型添加剤、フタル酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ酢酸等の酸又はその酸無水物とヒドロカルビル弛緩アミンとの反応生成物からなる極性窒素化合物、アルケニルコハク酸等が挙げられる。これらの低温流動性向上剤は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせてもよい。
低温流動性向上剤の含有量は、1000mg/L以下であることが好ましく、700mg/L以下であることがより好ましく、500mg/L以下であることがさらに好ましい。低温流動性向上剤の含有量を1000mg/Lより多くしても、含有量に見合う低温性能の更なる向上効果が得られない傾向にある。
本発明において、低温流動性向上剤以外の添加剤については特に限定されず、セタン価向上剤、酸化防止剤、安定化剤、分散剤、金属不活性化剤、微生物殺菌剤、助燃剤、帯電防止剤、識別剤、着色剤等を用いることができる。
上述の添加剤(低温流動性向上剤を含む)は、常法に従い合成したものを用いてもよく、また市販の添加剤を用いてもよい。なお、市販されている添加剤は、その添加剤が目的としている効果に寄与する有効成分を適当な溶剤で希釈している場合もある。有効成分が希釈されている市販添加剤を使用する場合には、A重油組成物中の性状が上記の条件を満たすように市販添加剤を添加することが好ましい。
本発明のA重油組成物の硫黄分は特に限定されないが、燃焼排出ガス中の硫黄酸化物抑制、及び機器に装着されている排ガス後処理用触媒の寿命の点から、組成物全量を基準として、1.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましく、0.3質量%以下であることが一層好ましく、0.1質量%以下であることが特に好ましい。本発明でいう硫黄分とは、JIS K 2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」により測定される値を意味する。
また、本発明のA重油組成物の窒素分は特に限定されないが、燃焼排出ガス中の窒素酸化物抑制の点から、組成物全量を基準として、0.03質量%以下であることが好ましい。なお、本発明でいう窒素分とは、JIS K 2609「原油及び石油製品−窒素分試験方法」により測定される値を意味する。
本発明のA重油組成物の15℃における密度は特に限定されないが、発熱量の点から、830Kg/m以上であることが好ましい。なお、本発明でいう15℃における密度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品−密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」で測定される値である。
また、本発明のA重油組成物の動粘度は特に限定しないが、寒冷地でも燃料をタンクから燃焼機器へ問題なく供給し、バーナー燃焼において良好な噴霧・気化を行うという観点から、50℃における動粘度が1.7〜2.5mm/sであることが好ましい。なお、本発明でいう50℃における動粘度とは、JIS K2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法」で測定される値を意味する。
上記構成を有する本発明のA重油組成物は低温性能、燃焼性、安全性等の性能がバランスよく高められたものである。従って、本発明のA重油組成物は、寒冷地において、ボイラー等の外燃機器や小型漁船、建設機械の陸上輸送用以外のディーゼルエンジン機器、ガスタービン機器用燃料組成物として非常に有用である。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1〜7、比較例1〜3]
実施例1〜7及び比較例1〜3においては、それぞれ表1、2に示す基材、並びに低温流動性向上剤A(油溶性分散型添加剤)及び低温流動性向上剤B(エチレン−酢酸ビニル共重合体)を用いて、表3〜5に示す組成を有するA重油組成物を調製した。表1、2には基材の諸性状を、表3〜5にはA重油組成物の諸性状を併せて示した。なお、残留炭素分付与用基材としては、減圧残油を直留軽油で希釈した基材を用いた。
Figure 2005225922
Figure 2005225922
Figure 2005225922
Figure 2005225922
Figure 2005225922
次に、実施例1〜7及び比較例1〜3のA重油組成物について、低温性能評価試験を以下の方法で実施した。
試料容器として、20Lペール缶を用意し、ペール缶の上面に試料吸引管を差し込む穴を設けた。穴の形成位置は、上面の中心と外周上の点とを結ぶ直線の中点とした。一方、試料吸引管として外径10mmの銅管を用意し、その一端をシリコンゴム管を介してフィルター(ネポン株式会社製、コードNo.120267)の入口に接続した。また、フィルターの出口を銅管を介して吸引ポンプに接続した。吸引ポンプは、通油量を1〜10L/hrの範囲内で調節可能なものを用いた。
次に、温度が20〜25℃の試料(A重油組成物)約15Lを上記のペール缶に入れ、ペール缶の上面の穴に試料吸引管付き蓋をした後、ペール缶とフィルターとを低温恒温槽内に収容した。低温恒温槽としては、プログラム温度調節機能を備え、温度制度±0.5℃以内で−30℃以下まで冷却可能な恒温槽を用いた。
ペール缶とフィルターとを低温恒温槽に収容した後、低温恒温槽内を所定の温度プロファイルで冷却し、吸引ポンプを駆動させた。より具体的には、初期温度−2℃で2時間保持した後、吸引ポンプを駆動し、通油量が9.5±0.2L/hrとなるようにポンプ圧力を調節し、冷却速度1℃/hrで所定の温度まで冷却した。その温度で3時間保持し、圧力計で圧力を測定して通油限界を判定した。通油限界の判定は、保持温度で60分間通油中に差圧が33kPa(250mmHg)以下である場合を合格、33kPaを超えた場合を不合格とし、不合格となるまで1℃間隔で保持温度を低くして試験を繰り返した。判定が不合格となった最高温度(目詰まり温度)を低温性能の評価の指標とした。なお、試料は試験ごとに新油に取り替えた。得られた結果を表6に示す。
Figure 2005225922
表6に示したように、実施例1〜7のA重油組成物は、いずれも低温性能に優れており、燃焼性及び安全性も含めて寒冷地向けA重油組成物としての性能を十分に満足していることが確認された。
一方、比較例1〜3のA重油組成物は、低温性能に劣り、寒冷地向けA重油組成物としての性能が不十分であった。

Claims (5)

  1. 曇り点が−10℃以下、目詰まり点が−25℃以下、流動点が−30℃以下、修正目詰まり点が−20℃以下、引火点が60℃以上、10%残留炭素分が0.2〜1.0質量%、セタン指数が40以上であることを特徴とするA重油組成物。
  2. 水分が300質量ppm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のA重油組成物。
  3. 蒸留性状における10%留出温度が170〜220℃、50%留出温度が230〜280℃、90%留出温度が280〜350℃であることを特徴とする、請求項1または2に記載のA重油組成物。
  4. 重質軽油留分、減圧軽油を脱硫した軽油及び流動接触分解軽油を含有することを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のA重油組成物。
  5. 低温流動性向上剤の含有量が1000mg/L以下であることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のA重油組成物。
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