JP7078530B2 - 内燃機用燃料油組成物 - Google Patents
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Description
このような状況下、内燃機用燃料油組成物には、通常使用時の通油性(以下、「常温通油性能」とも称する。)と、長期貯蔵した後であっても常温通油性能を維持する貯蔵安定性能と、を兼ね備えたろ過性能が求められるようになっており、要求される性能はより厳しくなっている。また、内燃機用に用いられる燃料油組成物には、その使用量の低減による燃費改善のためにより高い発熱量を有すること、更に当然有するべき性能として、硫黄分含有量を少なくすることで環境への負荷を低減する環境性能、着火遅れ等がない燃焼性能が求められている。
(a1)芳香族分含有量が70.0容量%以上
(a2)硫黄分含有量が0.200質量%以下
(a3)90容量%留出温度が330.0℃以下
(a4)15℃における密度が0.9100g/cm3以上
(a5)50℃における動粘度が2.000mm2/s以下
(a6)引火点が60.0℃以上
(1)硫黄分含有量が0.400質量%以下
(2)流動点が15.0℃以下
(3)総発熱量が40,350(kJ/L)以上
(4)50℃における動粘度が5.000mm2/s以上30.00mm2/s以下
(5)CCAIが850以下
(6)実在セジメントが0.05質量%以下
[2]前記接触分解軽油留分が、常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を流動接触分解して得られる軽油留分、並びに該軽油留分を沸点により少なくとも2分画したものの少なくとも一種の留分を含む留分、から選ばれる少なくとも一種の軽油留分である上記[1]に記載の内燃機用燃料油組成物。
[3]更に、直脱重油留分を組成物全量基準の含有量として35.0容量%以上75.0容量%以下で含む上記[1]又は[2]に記載の内燃機用燃料油組成物。
[4]遠心分離装置を含む前処理装置を有するディーゼルエンジンに用いられる上記[1]~[3]のいずれか1に記載の内燃機用燃料油組成物。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、下記(a1)~(a6)をいずれも満足する接触分解軽油留分を、組成物全量基準の含有量として25.0容量%以上65.0容量%以下で含む、下記(1)~(6)をいずれも満足する、内燃機用燃料油組成物である。
(a1)芳香族分含有量が70.0容量%以上
(a2)硫黄分含有量が0.200質量%以下
(a3)90容量%留出温度が330.0℃以下
(a4)15℃における密度が0.9100g/cm3以上
(a5)50℃における動粘度が2.000mm2/s以下
(a6)引火点が60.0℃以上
(1)硫黄分含有量が0.400質量%以下
(2)流動点が15.0℃以下
(3)総発熱量が40,350(kJ/L)以上
(4)50℃における動粘度が5.000mm2/s以上30.00mm2/s以下
(5)CCAIが850以下
(6)実在セジメントが0.05質量%以下
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、以下の(1)~(6)で規定された組成及び性状をいずれも満足する。
(1)硫黄分含有量
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の硫黄分含有量は、0.400質量%以下である。硫黄分含有量が上記範囲内にないと、排ガス中の硫黄酸化物の上昇により腐食が生じる場合があり、環境への負荷が高くなる場合がある。腐食の発生の抑制及び環境負荷の低減を考慮すると、硫黄分含有量は、好ましくは0.398質量%以下、より好ましくは0.350質量%以下、更に好ましくは0.300質量%以下である。また、硫黄分含有量の含有量は少なければ少ないほど好ましく、下限としては特に制限はないが、貯蔵安定性能の向上、潤滑性向上の観点から、通常0.01質量%以上である。
本明細書において、硫黄分含有量は、その含有量に応じて測定方法を選択して測定され、含有量が0.01~5質量%の場合はJIS K 2541-4:2003(原油及び石油製品-硫黄分試験方法- 第4部:放射線式励起法)に準じて測定される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の流動点は、15.0℃以下である。流動点が15.0℃よりも高いと、取扱性が悪くなる。取扱性を向上させる観点から、流動点は、好ましくは12.5℃以下、より好ましくは10.0℃以下、更に好ましくは7.5℃以下である。また下限については、流動点が低ければ低いほど好ましく、特に制限はないが、通常-10.0℃以上程度である。
本明細書において、流動点は、JIS K 2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に準じて測定される値である。ここで、測定に用いる試料としては、燃料油組成物、直脱重油留分の各種基材について、その500mLを常温(10~20℃)で168時間(7日間)放置した後、45℃に加熱する予備処理を行わなかったものを用いることとする。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の総発熱量は、40,350(kJ/L)以上である。総発熱量が上記範囲内にないと、燃費が低下し、燃費改善が難しくなる。より燃費改善を図る観点から、総発熱量は、40,500(kJ/L)以上、より好ましくは40,650(kJ/L)以上、更に好ましくは40,800(kJ/L)以上である。
本明細書において、総発熱量は、燃料油組成物、接触分解軽油留分及びその他軽油留分については、JIS K2279:2003(原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算による推定方法-)に準じて測定し、推定(「6.総発熱量推定方法、6.3 e)1)」に規定される原油、灯油、軽油、A重油及びB重油の場合の計算式により推定)される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の50℃における動粘度は、5.000mm2/s以上30.00mm2/s以下である。50℃における動粘度が上記範囲内にないと、ポンプ及び流量計等の各種機器の仕様範囲に内燃機用燃料油組成物を適合できず、また潤滑性を確保することができず、内燃機用燃料油組成物として使用することができなくなる。
上記各種機器の使用範囲に適合しやすくし、かつ潤滑性を向上させる観点から、50℃における動粘度は、好ましくは6.000mm2/s以上、より好ましくは7.000mm2/s以上であり、上限として好ましくは25.00mm2/s以下、より好ましくは20.00mm2/s以下、更に好ましくは10.00mm2/s以下である。
本明細書において、50℃における動粘度は、JIS K 2283:2000(原油及び石油製品の動粘度試験方法)に準じて測定される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物のCCAIは、850以下である。850より大きいと、燃焼性能の確保が困難となる。燃焼性能の向上の観点から、CCAIは好ましくは845以下、より好ましくは840以下である。
本明細書において、CCAIは、ISO 8217-2012のAnnex F記載の計算式より算出される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の実在セジメントは、0.05質量%以下である。実在セジメントが0.05質量%よりも大きいと、とりわけ燃料油貯蔵後における常温通油性能が得られず、また前処理装置に遠心分離機を有するディーゼルエンジンに用いられる場合は遠心分離機におけるスラッジの排出量が増加して、優れたろ過性能が得られない。ろ過性能を向上させる観点から、内燃機用燃料油組成物の実在セジメントは、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下、更に好ましくは0.02質量%以下である。
本明細書において、実在セジメントは、JPI-5S-60-2000(原油及び石油製品-セジメント試験方法-)に準じて測定される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の15℃における密度は、好ましくは0.9250g/cm3以下、より好ましくは0.9230g/cm3以下、更に好ましくは0.9210g/cm3以下であり、下限として好ましくは0.8500g/cm3以上、より好ましくは0.8600g/cm3以上である。15℃における密度が上記範囲内であると、総発熱量を40,350(kJ/L)以上となりやすく、また貯蔵タンクに保管中にワキシースラッジが分離発生することによる燃料油フィルタの閉塞、また大型船舶のディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンの前に付設されている遠心分離器によるスラッジの分離性能の低減が生じにくくなるので、貯蔵安定性能の向上によりろ過性能が向上する。
本明細書において、15℃における密度は、JIS K 2249-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方- 第1部:振動法)に準じて測定される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、JIS K 2252:1998による石油製品-反応試験の結果が中性であることが好ましい。中性であることにより、本実施形態の内燃機用燃料油組成物が触れる各種機器、例えば、燃料油タンク、配管、ディーゼルエンジン、及び装備しているポンプ等の補機の腐食を防止することができるので、より容易に内燃機の安定運転が可能となる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の引火点は、取り扱い上の安全性の観点から、好ましくは60.0℃以上、より好ましくは75.0℃以上、更に好ましくは95.0℃以上である。
本明細書において、引火点は、JIS K 2265-3:2007(原油及び石油製品-引火点試験方法- 第3部:ペンスキーマルテンス密閉法)に準じて測定される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の残留炭素分は、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.5質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、より更に好ましくは2.5質量%以下であり、下限としては特に制限はないが、通常0.1質量%以上である。残留炭素分が上記範囲内であると、内燃機用燃料油組成物の燃焼性能の維持が容易となり、また燃焼不良による煤発生の低減効果が向上するため、エンジンの安定運転がより容易となる。
本明細書において、残留炭素分は、JIS K 2270-1:2009(原油及び石油製品-残留炭素分の求め方- 第1部:コンラドソン法)に準じて測定される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の水分含有率は、好ましくは0.10容量%以下、より好ましくは0.05容量%以下、更に好ましくは0.01容量%以下である。水分含有率が上記範囲内であると、貯蔵安定性能の低下(アスファルテンと水のエマルジョンによるスラッジ生成)、氷結等を抑制し、フィルタの閉塞を防止することができる。
本明細書において、水分含有率は、JIS K 2275-3:2015(原油及び石油製品-水分の求め方- 第3部:カールフィッシャー式電量滴定法)に準じて測定される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の灰分量は、0.010質量%以下であることが好ましい。灰分量が上記範囲内であると、シリンダー、ノズル等の摩耗をより抑制することができ、排ガスによる環境負荷の低減を図ることができる。
本明細書において、灰分量は、JIS K 2272:1998(原油及び石油製品-灰分及び硫酸灰分試験方法-)に準じて測定される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の銅板腐食は、1以下であることが好ましい。銅板腐食が1以下であれば、燃料油タンク、配管、ディーゼルエンジン、及び装備しているポンプ等の補機の腐食を防止でき、エンジンの安定運転が容易となる。
本明細書において、銅板腐食は、JIS K 2513:2000(石油製品-銅板腐食試験法-)に準じて測定されるものである。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物のアルミニウム含有率は、好ましくは5.0質量ppm以下、より好ましくは3.0質量ppm以下、更に好ましくは1.0質量ppm以下である。アルミニウム含有率が上記範囲内であると、ディーゼルエンジンのシリンダー等の摩耗、ディーゼルエンジンの燃焼室内及び伝熱面へのアルミニウムの付着による伝熱不良が抑制され、エンジンの安定運転がより容易となる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物におけるアルミニウム含有率は、JPI-5S-62-2011(石油製品-金属分試験方法-)に準じて測定される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、下記(a1)~(a6)をいずれも満足する接触分解軽油留分を組成物全量基準の含有量として25.0容量%以上65.0容量%以下で含む。
(a1)芳香族分含有量が70.0容量%以上
(a2)硫黄分含有量が0.200質量%以下
(a3)90容量%留出温度が330.0℃以下
(a4)15℃における密度が0.9100g/cm3以上
(a5)50℃における動粘度が2.000mm2/s以下
(a6)引火点が60.0℃以上
本実施形態において、分画した留分を用いる場合、2~6分画した留分を用いることが好ましく、2~4分画した留分を用いることがより好ましく、2~3分画した留分を用いることが更に好ましい。また、分画した留分を用いる場合、より軽質の留分を用いることが好ましい。
接触分解軽油留分の芳香族分含有量は、70.0容量%以上である。ここで、芳香族分含有量は、1環芳香族分、2環芳香族分及び3環以上の芳香族分の合計含有量のことである。芳香族分含有量が上記範囲内にないと、優れたろ過性能が得られない。より優れたろ過性能を得る観点から、芳香族分含有量は好ましくは75.0容量%以上、より好ましくは80.0容量%以上である。
本明細書において、芳香族分含有量は、JPI-5S-49-2007に規定される、石油製品-炭化水素タイプ試験方法-高速液体クロマトグラフィー法(High Performance Liquid Chromatography法)により測定される値である。
接触分解軽油留分の硫黄分含有量は、0.200質量%以下である。硫黄分含有量が上記範囲内にないと、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の硫黄分含有量を0.400質量%以下としにくくなるため、排ガス中の硫黄酸化物の上昇により腐食が生じる場合があり、環境への負荷が高くなる場合がある。腐食の発生の抑制及び環境負荷の低減を考慮すると、接触分解軽油留分の硫黄分含有量は、好ましくは0.120質量%以下、より好ましくは0.080質量%以下、更に好ましくは0.050質量%以下である。
接触分解軽油留分の90容量%留出温度は、330.0℃以下である。90容量%留出温度が上記範囲内にないと、接触分解軽油留分中のジベンゾチオフェン等の高沸点硫黄化合物の含有量が増加し、硫黄分含有量が0.200質量%を超えることで、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の硫黄分含有量を0.400質量%以下としにくくなる。そのため、排ガス中の硫黄酸化物の上昇により腐食が生じる場合があり、環境への負荷が高くなる場合がある。腐食の発生の抑制及び環境負荷の低減を考慮すると、接触分解軽油留分の90容量%留出温度は、好ましくは320.0℃以下、より好ましくは310.0℃以下、更に好ましくは295.0℃以下である。
接触分解軽油留分の15℃における密度は、0.9100g/cm3以上である。15℃における密度が上記範囲内にないと、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の総発熱量を40,350(kJ/L)以上としにくくなり、より燃費改善を図る観点から、好ましくは0.9110g/cm3以上、より好ましくは0.9120g/cm3以上である。また、燃焼性能、ろ過性能の向上の観点から、上限として好ましくは0.9300g/cm3以下、より好ましくは0.9200g/cm3以下、更に好ましくは0.9150g/cm3以下である。
接触分解軽油留分の50℃における動粘度は、2.000mm2/s以下である。50℃における動粘度が上記範囲内にないと、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の50℃における動粘度を5.000mm2/s以上30.00mm2/s以下としにくくなり、ポンプ及び流量計等の各種機器の仕様範囲に内燃機用燃料油組成物を適合できず、また潤滑性を確保することができず、内燃機用燃料油組成物として使用することができなくなる。上記各種機器の使用範囲に適合しやすくし、かつ潤滑性を向上させる観点から、50℃における動粘度は、好ましくは1.850mm2/s以下、より好ましくは1.750mm2/s以下、更に好ましくは1.600mm2/s以下である。
接触分解軽油留分の引火点は、取り扱い上の安全性の観点から、60.0℃以上である。取り扱い上の安全性の向上の観点から、引火点は、好ましくは65.0℃以上である。
接触分解軽油留分の蒸留性状として、初留点は好ましくは140.0℃以上、より好ましくは150.0℃以上、更に好ましくは165.0℃以上であり、上限として好ましくは200.0℃以下、より好ましくは190.0℃以下、更に好ましくは180.0℃以下である。初留点が上記範囲内であると、取り扱い上の安全性、燃焼性能を向上させることができ、また接触分解軽油の得率を向上させることができる。
また、終点として好ましくは280.0℃以上、より好ましくは290.0℃以上、更に好ましくは300.0℃以上であり、上限として好ましくは340.0℃以下、より好ましくは330.0℃以下、更に好ましくは315.0℃以下である。終点が上記範囲内であると、接触分解軽油の得率を向上させることができ、また本実施形態の内燃機用燃料油組成物の硫黄分含有量を0.400質量%以下としやすくなる。
接触分解軽油留分の流動点は、好ましくは-20.0℃以下、より好ましくは-25.0℃以下、更に好ましくは-30.0℃以下である。流動点が上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の流動点を15.0℃以下としやすくなる。
接触分解軽油留分の総発熱量は、好ましくは40,350(kJ/L)以上であり、より好ましくは40,650(kJ/L)以上である。総発熱量が上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の総発熱量を40,350(kJ/L)以上としやすくなり、燃費改善を図ることができる。
接触分解軽油留分のオレフィン分は、好ましくは10.0容量%以下、より好ましくは5.0容量%以下、更に好ましくは3.5容量%以下である。これらの成分の含有量が上記範囲内にあると、特に貯蔵安定性能が向上する。また、下限については特に制限はなく、小さければ小さいほど好ましく、通常0.1容量%程度である。
本明細書において、オレフィン分含有量は、上記の芳香族分含有量と同じ測定方法により測定される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物中の接触分解軽油留分の組成物全量基準の含有量は、25.0容量%以上65.0容量%以下である。接触分解軽油留分の含有量が25.0容量%未満であると、硫黄分含有量が増加することで環境性能が低下し、65.0容量%を超えるとCCAIが低くなり、燃焼性能が低下する。環境性能及び燃焼性能を向上させる観点から、接触分解軽油留分の含有量は、好ましくは30.0容量%以上、より好ましくは40.0容量%以上であり、上限として好ましくは60.0容量%以下、より好ましくは55.0容量%以下である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、直脱重油留分を含むことが好ましい。直脱重油留分を含むことで、内燃機用燃料油組成物の総発熱量を40,350(kJ/L)以上としやすくなり、燃費改善を図ることができ、また引火点を高くして取り扱い上の安全性を向上させることができる。
直脱重油留分は、常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を直接脱硫装置で脱硫して得られる重油留分のことであり、好ましくは以下(b1)~(b5)の性状及び組成の少なくとも一の性状及び組成を有する留分、より好ましくは以下(b1)~(b5)の性状及び組成の全てを満足する留分である。
直脱重油留分の硫黄分含有量は、好ましくは0.630質量%以下、より好ましくは0.600質量%以下、更に好ましくは0.580質量%以下であり、下限として好ましくは0.510質量%以上、より好ましくは0.530質量%以上である。直脱重油留分の硫黄分含有量が上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の貯蔵安定性能が向上するとともに、硫黄分含有量を0.400質量%以下としやすくなり、腐食の発生の抑制及び環境負荷の低減することができる。
直脱重油留分の総発熱量は、好ましくは40,650(kJ/L)以上、より好ましくは41,000(kJ/L)以上である。直脱重油留分の総発熱量が上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の総発熱量を40,350(kJ/L)以上としやすくなり、燃費改善を図ることができる。
本明細書において、総発熱量は、直脱重油留分及びその他重油留分については、JIS K2279:2003(原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算による推定方法-)に準じて測定し、推定(「6.総発熱量推定方法、6.3 e)1)」に規定されるC重油の場合の計算式により推定)される値である。
直脱重油留分のCCAIは、好ましくは830以下、より好ましくは810以下、更に好ましくは800以下である。直脱重油留分のCCAIが上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物のCCAIを850以下としやすくなり、燃焼性能が向上する。
直脱重油留分の残留炭素分は、好ましくは6.5質量%以下、より好ましくは5.5質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下であり、下限としては特に制限はないが、通常0.1質量%以上である。残留炭素分が上記範囲内であると、内燃機用燃料油組成物の燃焼性能の維持が容易となり、また燃焼不良による煤発生の低減効果が向上するため、エンジンの安定運転がより容易となる。
直脱重油留分の飽和分含有量は、好ましくは20.0質量%以上50.0質量%以下、より好ましくは30.0質量%以上40.0質量%以下であり、芳香族分含有量は好ましくは40.0質量%以上70.0質量%以下、より好ましくは50.0質量%以上60.0質量%以下であり、レジン分含有量は好ましくは3.0質量%以上10.0質量%以下、より好ましくは5.0質量%以上7.0質量%以下、アスファルテン分含有量は好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以上4.0質量%以下である。
直脱重油留分の飽和分含有量、芳香族分含有量、レジン分含有量及びアスファルテン分含有量は、IP-469(国際標準試験方法(IP Test Methods))に規定される、TLC/FID法により測定される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物中の直脱重油留分の組成物全量基準の含有量は、好ましくは35.0容量%以上、より好ましくは40.0容量%以上、更に好ましくは45.0容量%以上であり、上限として好ましくは75.0容量%以下、より好ましくは70.0容量%以下、更に好ましくは60.0容量%以下である。直脱重油留分の含有量が上記範囲内であると、内燃機用燃料油組成物の総発熱量を40,350(kJ/L)以上としやすくなり、燃費改善を図ることができ、また引火点を高くして取り扱い上の安全性を向上させるという直脱重油留分を用いる効果を効率よく得ることが可能となる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、上記接触分解軽油留分の他、直留軽油留分、減圧軽油留分、脱硫軽油留分、脱硫分解軽油留分、直脱軽油留分等の軽油留分を含有することもできる。
・直留軽油留分(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる軽油留分)
・減圧軽油留分(常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる軽油留分)
・脱硫軽油留分(直留軽油留分及び/又は減圧軽油留分を脱硫して得られる軽油留分)
・脱硫分解軽油留分(分解軽油留分を脱硫して得られる軽油留分)
・直脱軽油留分(常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を直接脱硫装置で脱硫処理して得られる軽油留分)
本実施形態で用いられ得る上記のその他の軽油留分が有する性状としては、下記の性状を有していることが好ましい。その他の軽油留分が下記の性状を有することで、優れたろ過性能とともに、高い発熱量を有することで燃費改善に寄与し、また優れた環境性能及び燃焼性能が得られやすくなる。
硫黄分含有量は、好ましくは0.40質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下、更に好ましくは0.10質量%以下である。
総発熱量は、好ましくは38,000(kJ/L)以上、より好ましくは38,100(kJ/L)以上である。
15℃における密度は、好ましくは0.8300g/cm3以上であり、上限として好ましくは0.9350g/cm3以下、より好ましくは0.9000g/cm3以下である。
50℃における動粘度は、好ましくは2.800mm2/s以下、より好ましくは2.750mm2/s以下、下限として好ましくは2.000mm2/s以上、より好ましくは2.500mm2/s以上である。
流動点は、好ましくは-2.5℃以下、より好ましくは-5.0℃以下である。
芳香族分含有量は、好ましくは15.0容量%以上、より好ましくは20.0容量%以上である。
90%容量留出温度は、好ましくは355.0℃以下、より好ましくは345.0℃以下であり、下限として好ましくは325.0℃以上、より好ましくは330.0℃以上である。また、終点は、好ましくは325.0℃以上、より好ましくは345.0℃以上であり、上限として好ましくは380.0℃以下、より好ましくは365.0℃以下である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、上記直脱重油留分の他、C重油、常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油及び分解重油を含有することもできる。
・C重油
・常圧蒸留残渣油(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる残渣油)
・減圧蒸留残渣油(常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる残渣油)
・分解重油(直脱重油留分を流動接触分解して得られる重油分)
本実施形態で用いられ得る上記のその他の重油留分が有する性状としては、下記の性状を有していることが好ましい。その他の重油留分が下記の性状を有することで、優れたろ過性能とともに、高い発熱量を有することで燃費改善に寄与し、また優れた環境性能及び燃焼性能が得られやすくなる。
硫黄分含有量は、1.2質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.6質量%以下が更に好ましい。また下限値としては通常0.51質量%以上である。
芳香族分含有量は、40容量%以上が好ましく、50容量%以上がより好ましく、55容量%以上が更に好ましい。
CCAIは、840以下が好ましく、820以下がより好ましく、810以下が更に好ましい。
15℃における密度は、0.8800g/cm3以上が好ましく、0.9000g/cm3以上がより好ましく、0.9200g/cm3以上が更に好ましく、また上限としては0.9500g/cm3以下が好ましい。
50℃における動粘度は、190.0mm2/s以下が好ましく、160.0mm2/s以下がより好ましく、また下限としては30.00mm2/s以上程度、好ましくは50.00mm2/s以上である。
流動点は、15.0℃以下が好ましく、12.5℃以下がより好ましく、10.0℃以下が更に好ましい。
総発熱量は、40,000(J/mL)以上が好ましく、40,500(J/mL)以上がより好ましく、41,000(J/mL)以上が更に好ましい。
また、残留炭素分は、8.0質量%以下が好ましく、6.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下が更に好ましい。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物には、上記の諸性状を維持しうる範囲で、必要に応じ、各種添加剤として、酸化防止剤、低温流動性向上剤、潤滑性向上剤、セタン価向上剤、燃焼促進剤、清浄剤、スラッジ分散剤、防カビ剤等の各種添加剤を適宜選択して配合することができる。また、軽油引取税の観点よりクマリンを配合してもよい。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、内燃機に用いられ、優れたろ過性能とともに、高い発熱量を有することで燃費改善に寄与し、また優れた環境性能及び燃焼性能を有する燃料油組成物である。そのため、特に船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機に好適に用いられ、中でも遠心分離装置を含む前処理装置を有する大型船舶のディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンに好適に用いられる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、上記接触分解軽油留分、好ましくは直脱重油留分、また必要に応じてその他軽油留分及び重油留分、各種添加剤を、該接触分解軽油留分の含有量を組成物全量基準の含有量として25.0容量%以上65.0容量%以下となるように配合することで、また該直脱重油留分の組成物全量基準の含有量を好ましくは35.0容量%以上75.0容量%以上となるよう配合することにより、製造することができる。
実施例及び比較例で使用した接触分解軽油留分、直脱重油留分、その他軽油留分の各種基材の性状及び組成、実施例及び比較例の燃料油組成物の性状及び組成は以下の方法により測定した。各種基材の性状及び組成を第1表に示す。また、燃料油組成物の性状及び組成を第2表に示す。
・硫黄分含有量:JIS K 2541-4:2003(原油及び石油製品-硫黄分試験方法- 第4部:放射線式励起法)に準じて測定した。
・流動点:接触分解軽油留分、直脱軽油留分、脱硫軽油留分はJIS K2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に準じて測定し、燃料油組成物、直脱重油留分については、その500mLを常温(10~20℃)で168時間(7日間)放置した後、45℃に加熱する予備処理を行わなかったものについて、JIS K2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に準じて測定した。
・総発熱量:接触分解軽油留分、その他軽油留分、及び燃料油組成物については、JIS K2279:2003(原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算による推定方法-)に準じて測定し、推定(「6.総発熱量推定方法、6.3 e)1)」に規定される原油、灯油、軽油、A重油及びB重油の場合の計算式により推定)した。また、直脱重油留分については、JIS K2279:2003(原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算による推定方法-)に準じて測定し、推定(「6.総発熱量推定方法、6.3 e)1)」に規定されるC重油の場合の計算式により推定)した。
・50℃における動粘度:JIS K 2283:2000(原油及び石油製品の動粘度試験方法)に準じて測定した。
・CCAI:ISO 8217-2012のAnnex F記載の計算式より算出した。
・実在セジメント:JPI-5S-60-2000(原油及び石油製品-セジメント試験方法-)に準じて測定した。
・15℃における密度:JIS K 2249-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方- 第1部:振動法)に準じて測定した。
・石油製品反応試験:JIS K 2252:1998による石油製品-反応試験により測定した。
・引火点:JIS K 2265-3:2007(原油及び石油製品-引火点試験方法- 第3部:ペンスキーマルテンス密閉法)に準じて測定した。
・残留炭素分:JIS K 2270-1:2009(原油及び石油製品-残留炭素分の求め方- 第1部:コンラドソン法)に準じて測定した。
・水分含有率:JIS K 2275-3:2015(原油及び石油製品-水分の求め方- 第3部:カールフィッシャー式電量滴定法)に準じて測定した。
・灰分量:JIS K 2272:1998(原油及び石油製品-灰分及び硫酸灰分試験方法-)に準じて測定した。
・銅板腐食:JIS K 2513:2000(石油製品-銅板腐食試験法-)に準じて測定した。
・アルミニウム含有率:JPI-5S-62-2011(石油製品-金属分試験方法-)に準じて測定した。
・芳香族分含有量(1環芳香族分、2環芳香族分及び3環芳香族分)、飽和分含有量及びオレフィン分含有量:接触分解軽油留分等の軽油留分の上記各種成分含有量は、JPI-5S-49-2007に規定される、石油製品-炭化水素タイプ試験方法-高速液体クロマトグラフィー法(High Performance Liquid Chromatography法)により測定した。
・蒸留性状(初留点、終点及び90容量%留出温度):JIS K2254:1998(石油製品-蒸留試験方法-)に準じて測定した。
・飽和分含有量、芳香族分含有量、レジン分含有量及びアスファルテン分含有量:直脱重油留分等の重油留分の上記各種成分含有量は、IP-469(国際標準試験方法(IP Test Methods))に規定される、TLC/FID法により測定した。
以下の1~5の各性能の評価を行い、一番悪い評価を総合評価として評価した。C評価であれば不合格である。各性能の評価を、第2表に示す。
1.環境性能
硫黄分含有量に基づき、以下の基準で評価した。
A:硫黄分含有量が0.300質量%以下
B:硫黄分含有量が0.400質量%以下
C:硫黄分含有量が0.400質量%超
各実施例及び比較例の燃料油組成物について、測定試料を「JIS K2601:1998-原油試験方法- 14.水でい分試験方法 14.2水でい分試験器」(以下、水でい分試験器)で使用される目盛試験管3本に、各々100mLの標線まで採取した。その後、水でい分試験器で使用される遠心分離機を用い、35℃、相対遠心力600の条件で55分間遠心分離を行った。次に、50mLビーカーを3個用意し、遠心分離をかけた目盛試験管3本の試料の上部50mLを、各50mLビーカーに分取した。分取後のビーカーを0.1mg単位で秤量し、秤量した質量をM1(g)とした。そして、65±1℃に保った恒温槽で、分取した試料を15分間加熱した。
Tn=tn/(M/d) (1)
上記式(1)において、nは測定回数であり、3回である。また、Tnはn回目の測定のろ過に要した時間から算出した内燃機用燃料油組成物単位体積当たりのろ過時間(秒/cm3)、tnはn回目の測定のろ過に要した時間(秒)、Mはろ過した内燃機用燃料油組成物の質量(M1-M2)(g)、dは15℃における内燃機用燃料油組成物の密度(g/cm3)である。なお、ろ紙の閉塞によりろ過できなかった場合は、「計算不可」とした。そして、縦軸を内燃機用燃料油組成物単位体積当たりのろ過時間とし、横軸をろ過に要した時間の測定回数としてプロットした点から、最小二乗法で近似直線の傾きを算出し、ろ過時間の傾き(秒/cm3)を算出した。
A:ろ過時間の傾きが0.07(秒/cm3)以下
B:ろ過時間の傾きが0.07(秒/cm3)超0.12(秒/cm3)以下
C:ろ過時間の傾きが0.12(秒/cm3)超
各実施例及び比較例の燃料油組成物3Lを評価試料とし、これを、ブリキ製の4L缶の上部に開放部(直径:32.5mmの円形)を設けて空気の流通を可能にした容器に採取し、90日間、常温で保管した。保管後の評価試料について、上記(ろ過性能(常温通油性能)の評価)と同じ方法で評価を行った。以下の基準で評価して、ろ過性能の評価とした。本評価において、B評価以上であれば合格である。
A:ろ過時間の傾きが0.09(秒/cm3)以下
B:ろ過時間の傾きが0.09(秒/cm3)超0.16(秒/cm3)以下
C:ろ過時間の傾きが0.16(秒/cm3)超
CCAIに基づき、以下の基準で評価した。
A:CCAIが840以下
B:CCAIが850以下
C:CCAIが850超
総発熱量に基づき、以下の基準で評価した。
A:総発熱量が40,800kJ/L以上
B:総発熱量が40,350kJ/L以上
C:総発熱量が40,350kJ/L未満
第1表に示す性状及び組成を有する各種基材を、第2表に示す割合で混合し、実施例1~4、及び比較例1~5の燃料油組成物を作製した。接触分解軽油留分1及び2は、常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を流動接触分解して得られる軽油留分を2分画したもののうち軽質の留分であり、通常軽質LCO(軽質接触分解軽油留分)と称される留分である。
得られた各燃料油組成物について、環境性能、ろ過性能(常温通油性能)、ろ過性能(貯蔵安定性能)、燃焼性能及び燃費性能を上記方法により評価した。その結果を第2表に示す。
第2表に示されるように、本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、環境性能、ろ過性能(常温通油性能及び貯蔵安定性能)、燃焼性能、燃費性能の評価がいずれも良好であり、特に船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機に好適に用いられ、中でも遠心分離装置を含む前処理装置を有する大型船舶のディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンへの使用にも耐えうるものであることが確認された。
一方、特定の接触分解軽油留分を含まない比較例の燃料油組成物は、ろ過性能、燃焼性能、燃費性能のいずれかの性能において劣るものであった。
Claims (4)
- 下記(a1)~(a6)をいずれも満足する接触分解軽油留分を、組成物全量基準の含有量として25.0容量%以上65.0容量%以下で含む、下記(1)~(6)をいずれも満足する内燃機用燃料油組成物。
(a1)芳香族分含有量が70.0容量%以上
(a2)硫黄分含有量が0.200質量%以下
(a3)90容量%留出温度が330.0℃以下
(a4)15℃における密度が0.9100g/cm3以上
(a5)50℃における動粘度が2.000mm2/s以下
(a6)引火点が60.0℃以上
(1)硫黄分含有量が0.400質量%以下
(2)流動点が15.0℃以下
(3)総発熱量が40,350(kJ/L)以上
(4)50℃における動粘度が5.000mm2/s以上30.00mm2/s以下
(5)CCAIが850以下
(6)実在セジメントが0.05質量%以下 - 前記接触分解軽油留分が、常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を流動接触分解して得られる軽油留分、並びに該軽油留分を沸点により少なくとも2分画したものの少なくとも一種の留分を含む留分、から選ばれる少なくとも一種の軽油留分である請求項1に記載の内燃機用燃料油組成物。
- 更に、直脱重油留分を組成物全量基準の含有量として35.0容量%以上75.0容量%以下で含む請求項1又は2に記載の内燃機用燃料油組成物。
- 遠心分離装置を含む前処理装置を有するディーゼルエンジンに用いられる請求項1~3のいずれか1項に記載の内燃機用燃料油組成物。
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