JP7163176B2 - 内燃機用燃料油組成物 - Google Patents

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  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Description

本発明は、内燃機用燃料油組成物に関する。
JIS K2205:1991の1種重油(以下、「A重油」とも称する。)、とりわけJIS K2205:1991の1種1号重油(以下「低硫黄A重油」とも称する。)は、灯油、軽油等と比べて単位体積当たりの発熱量が高く、燃料油使用量(体積)を低減することができ、またC重油(JIS K2205:1991の3種重油)と比べて硫黄分、窒素分、残留炭素分が少ないことから、船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機の燃料油として、また発電用ボイラ等の外燃機の燃料油として広く使用されている。
船舶用の燃料油としては、ISO8217「Petroleum products-Fuels(class F)-Specification of marine fuels」を満足する燃料油等が知られている。この船舶用の燃料油は、燃料油フィルタの閉塞を生じる場合があるため、該フィルタの閉塞頻度を低減する手法として、潜在セジメント(Total sediment aged、ISO 10307-2)を0.10質量%以下とする手法、実在セジメント(Total sediment by hot filtration、ISO 10307-1)を0.10質量%以下とする手法等が知られている。
また、A重油、低硫黄A重油については、燃料油フィルタの通油性を改善する方法として、例えば、特許文献1~4に記載される手法も知られている。
特開平10-298566号公報 特開2004-091676号公報 特開2001-049269号公報 特開2007-262210号公報
しかしながら、上記の通油性を向上した内燃機用燃料油組成物を用いても、とりわけ大型船舶のディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンに内燃機用燃料油組成物を用いる場合、通常使用時に燃料油フィルタの閉塞頻度が高くなりやすく、船舶内の燃料油タンク等で長期貯蔵した後に使用すると、閉塞頻度はより高くなる傾向にある。そのため、内燃機用燃料油組成物には、通常使用時の通油性(以下、「常温通油性能」とも称する。)と、長期貯蔵した後であっても常温通油性能を維持する貯蔵安定性能と、を兼ね備えたろ過性能が求められるようになっており、要求される性能はより厳しくなっている。
ところで、大型船舶のディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンの用途においては、内燃機用燃料油組成物の使用環境は著しく変化することから、内燃機用燃料油組成物には、その環境の変化に対応することが求められる。中でも着火遅れ等がない着火性能及び安定した燃焼性能(これらをあわせて「燃焼性能」と称することがある。)を有することは重要である。また、寒冷地において加温を要しなくても使用することができる低温流動性能を有すること、更には、近年の環境問題への注目の高まりに伴い、より高い総発熱量とすることでその使用量を低減し、燃費を向上させる燃費性能、また排ガス中の硫黄酸化物濃度を低減することで環境負荷を低減し得る環境性能も求められるようになっている。
しかしながら、従来のA重油やC重油、また上記の通油性を向上した内燃機用燃料油組成物は、ろ過性能、燃焼性能、更には低温流動性能、燃費性能及び環境性能の全てを十分に満足するものとはいえないものであり、これらの性能を同時に満足し得る内燃機用燃料油組成物の開発が望まれている。
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討の結果、下記の発明により解決できることを見出した。すなわち、本発明は、下記の構成を有する内燃機用燃料油組成物を提供するものである。
[1]下記(a)~(a)をいずれも満足する水素化分解重油留分を、組成物全量基準の含有量として5.0容量%以上25.0容量%以下で含む、下記(1)~(5)をいずれも満足する内燃機用燃料油組成物。
(a)飽和分含有量が80.0質量%以上
(a)硫黄分含有量が0.050質量%以下
(a)15℃における密度が0.8250g/cm以上0.8500g/cm以下
(a)CCAIが810以下
(a)50℃における動粘度が5.000mm/s以上20.00mm/s以下
(1)硫黄分含有量が0.400質量%以下
(2)総発熱量が40,200(kJ/L)以上
(3)50℃における動粘度が5.000mm/s以上18.00mm/s以下
(4)CCAIが845以下
(5)実在セジメントが0.05質量%以下
[2]直脱重油留分を組成物全量基準の含有量として25.0容量%以上55.0容量%以下で含む上記[1]に記載の内燃機用燃料油組成物。
[3]分解軽油留分を組成物全量基準の含有量として前記水素化分解重油留分の組成物全量基準の含有量の1.5倍以上5.5倍以下で含む上記[1]又は[2]に記載の内燃機用燃料油組成物。
[4]遠心分離装置を含む前処理装置を有するディーゼルエンジンに用いられる上記[1]~[3]のいずれか1に記載の内燃機用燃料油組成物。
本発明によれば、優れたろ過性能と燃焼性能とともに、低温流動性能、燃費性能及び環境性能に優れる内燃機用燃料油組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施形態(以後、単に「本実施形態」と称する場合がある。)に係る内燃機用燃料油組成物について具体的に説明する。なお、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以下」、「以上」及び「~」に係る数値は任意に組み合わせできる数値であり、また実施例の数値は上限値又は下限値として用いられ得る数値である。
〔内燃機用燃料油組成物〕
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、下記(a)~(a)をいずれも満足する水素化分解重油留分を、組成物全量基準の含有量として5.0容量%以上25.0容量%以下で含む、下記(1)~(5)をいずれも満足する、内燃機用燃料油組成物である。
(a)飽和分含有量が80.0質量%以上
(a)硫黄分含有量が0.050質量%以下
(a)15℃における密度が0.8250g/cm以上0.8500g/cm以下
(a)CCAIが810以下
(a)50℃における動粘度が5.000mm/s以上20.00mm/s以下
(1)硫黄分含有量が0.400質量%以下
(2)総発熱量が40,200(kJ/L)以上
(3)50℃における動粘度が5.000mm/s以上18.00mm/s以下
(4)CCAIが845以下
(5)実在セジメントが0.05質量%以下
(内燃機用燃料油組成物の組成及び性状)
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、以下の(1)~(5)で規定された組成及び性状をいずれも満足する。
(1)硫黄分含有量
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の硫黄分含有量は、0.400質量%以下である。硫黄分含有量が上記範囲内にないと、排ガス中の硫黄酸化物の上昇により腐食が生じ、環境への負荷が高くなり環境性能が低下する場合がある。腐食の発生の抑制及び環境性能の向上を考慮すると、硫黄分含有量は、好ましくは0.380質量%以下、より好ましくは0.360質量%以下である。また、硫黄分含有量の含有量は少なければ少ないほど好ましく、下限としては特に制限はないが、貯蔵安定性能の向上、潤滑性向上の観点から、通常0.01質量%以上である。
本明細書において、硫黄分含有量は、その含有量に応じて測定方法を選択して測定され、含有量が0.01~5質量%の場合はJIS K 2541-4:2003(原油及び石油製品-硫黄分試験方法- 第4部:放射線式励起法)に準じて測定される値である。
(2)総発熱量
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の総発熱量は、40,200(kJ/L)以上である。総発熱量が40,200(kJ/L)未満になると、燃費性能が低下する。燃費性能の向上を図る観点から、総発熱量は、40,350(kJ/L)以上、より好ましくは40,500(kJ/L)以上である。
本明細書において、総発熱量は、燃料油組成物、水素化分解重油留分、分解軽油留分及びその他軽油留分については、JIS K2279:2003(原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算による推定方法-)に準じて測定し、推定(「6.総発熱量推定方法、6.3 e)1)」に規定される原油、灯油、軽油、A重油及びB重油の場合の計算式により推定)される値である。
(3)50℃における動粘度
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の50℃における動粘度は、5.000mm/s以上18.00mm/s以下である。50℃における動粘度が上記範囲内にないと、ポンプ及び流量計等の各種機器の使用範囲に適合しにくくなり、また潤滑性を確保できず、内燃機用燃料油組成物として使用することができなくなる場合がある。
上記各種機器の使用範囲に適合しやすくし、かつ潤滑性を向上させる観点から、50℃における動粘度は、好ましくは6.000mm/s以上、より好ましくは7.000mm/s以上であり、上限として好ましくは15.00mm/s以下、より好ましくは13.00mm/s以下、更に好ましくは12.50mm/s以下である。
本明細書において、50℃における動粘度は、JIS K 2283:2000(原油及び石油製品の動粘度試験方法)に準じて測定される値である。
(4)CCAI:Calculated Carbon Aromaticity Index
本実施形態の内燃機用燃料油組成物のCCAIは、845以下である。845より大きいと、燃焼性能の確保が困難となる。燃焼性能の向上の観点から、CCAIは好ましくは840以下である。
本明細書において、CCAIは、ISO 8217-2012のAnnex F記載の計算式より算出される値である。
(5)実在セジメント
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の実在セジメントは、0.05質量%以下である。実在セジメントが0.05質量%よりも大きいと、とりわけ燃料油貯蔵後における常温通油性能が得られず、また前処理装置に遠心分離機を有するディーゼルエンジンに用いられる場合は遠心分離機におけるスラッジの排出量が増加するため、ろ過性能が低下する。ろ過性能を向上させる観点から、内燃機用燃料油組成物の実在セジメントは、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下、更に好ましくは0.02質量%以下である。
本明細書において、実在セジメントは、JPI-5S-60-2000(原油及び石油製品-セジメント試験方法-)に準じて測定される値である。
また、本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、上記(1)~(5)の性状及び組成に加えて、更に以下(6)~(14)から選ばれる少なくとも1つを満足することが好ましく、特に以下(6)~(14)のいずれも満足することが好ましい。
(6)15℃における密度
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の15℃における密度は、好ましくは0.9230g/cm以下、より好ましくは0.9200g/cm以下、更に好ましくは0.9160g/cm以下であり、下限として好ましくは0.8600g/cm以上、より好ましくは0.8800g/cm以上、更に好ましくは0.9000g/cm以上である。15℃における密度が上記範囲内であると、貯蔵タンクに保管中にワキシースラッジが分離発生することによる燃料油フィルタの閉塞、また大型船舶のディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンの前に付設されている遠心分離器によるスラッジの分離性能が低減しにくくなるので、貯蔵安定性能の向上によりろ過性能が向上し、総発熱量を40,200(kJ/L)以上としやすくなるため燃費性能が向上する。
本明細書において、15℃における密度は、JIS K 2249-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方- 第1部:振動法)に準じて測定される値である。
(7)流動点
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の流動点は、好ましくは15.0℃以下である。流動点が15.0℃以下であると、取扱性を向上させることができる。これと同様の観点から、流動点は、好ましくは12.5℃以下、より好ましくは10.0℃以下、更に好ましくは7.5℃以下である。また下限については、流動点が低ければ低いほど好ましく、特に制限はないが、通常-10.0℃以上程度である。
本明細書において、流動点は、JIS K 2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に準じて測定される値である。ここで、測定に用いる試料としては、燃料油組成物、水素化分解重油留分、直脱重油留分、その他の重油留分については、その500mLを常温(10~20℃)で168時間(7日間)放置した後、45℃に加熱する予備処理を行わなかったものを用いることとする。
(8)引火点
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の引火点は、取扱い上の安全性の観点から、好ましくは60.0℃以上、より好ましくは70.0℃以上、更に好ましくは100.0℃以上、より更に好ましくは105.5℃以上である。
本明細書において、引火点は、JIS K 2265-3:2007(原油及び石油製品-引火点試験方法- 第3部:ペンスキーマルテンス密閉法)に準じて測定される値である。
(9)残留炭素分
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の残留炭素分は、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.2質量%以下、より更に好ましくは2.0質量%以下であり、下限としては特に制限はないが、通常0.1質量%以上である。残留炭素分が上記範囲内であると、内燃機用燃料油組成物の燃焼性能を維持しやすくなり、また燃焼不良による煤発生の低減効果が向上するため、内燃機のより安定した運転が可能となる。
本明細書において、残留炭素分は、燃料油組成物、水素化分解重油留分、直脱重油留分及びその他重油留分については、JIS K 2270-1:2009(原油及び石油製品-残留炭素分の求め方- 第1部:コンラドソン法)に準じて測定される値である。
(10)水分含有率
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の水分含有率は、好ましくは0.10容量%以下、より好ましくは0.05容量%以下、更に好ましくは0.01容量%以下である。水分含有率が上記範囲内であると、貯蔵安定性能の低下(アスファルテンと水のエマルジョンによるスラッジ生成)、氷結等を抑制しやすくなり、フィルタの閉塞を防止することで、ろ過性能が向上する。
本明細書において、水分含有率は、JIS K 2275-3:2015(原油及び石油製品-水分の求め方- 第3部:カールフィッシャー式電量滴定法)に準じて測定される値である。
(11)灰分量
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の灰分量は、0.010質量%以下であることが好ましい。灰分量が上記範囲内であると、シリンダー、ノズル等の摩耗をより抑制することができるので、排ガスによる環境負荷の低減を図り、環境性能を向上させることができる。
本明細書において、灰分量は、JIS K 2272:1998(原油及び石油製品-灰分及び硫酸灰分試験方法-)に準じて測定される値である。
(12)石油製品反応試験
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、JIS K 2252:1998による石油製品-反応試験の結果が中性であることが好ましい。中性であることにより、本実施形態の内燃機用燃料油組成物が触れる各種機器、例えば、燃料油タンク、配管、ディーゼルエンジン、及び装備しているポンプ等の補機の腐食を防止することができるので、より容易に内燃機の安定運転が可能となる。
(13)銅板腐食
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の銅板腐食は、1以下であることが好ましい。銅板腐食が1以下であれば、燃料油タンク、配管、ディーゼルエンジン、及び装備しているポンプ等の補機の腐食を防止できるため、内燃機のより安定した運転が可能となる。
本明細書において、銅板腐食は、JIS K 2513:2000(石油製品-銅板腐食試験法-)に準じて測定されるものである。
(14)アルミニウム含有率
本実施形態の内燃機用燃料油組成物のアルミニウム含有率は、好ましくは5.0質量ppm以下、より好ましくは3.0質量ppm以下、更に好ましくは1.0質量ppm以下である。アルミニウム含有率が上記範囲内であると、ディーゼルエンジンのシリンダー等の摩耗、ディーゼルエンジンの燃焼室内及び伝熱面へのアルミニウムの付着による伝熱不良が抑制されるので、内燃機のより安定した運転が可能となる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物におけるアルミニウム含有率は、JPI-5S-62-2011(石油製品-金属分試験方法-)に準じて測定される値である。
(水素化分解重油留分)
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、下記(a)~(a)をいずれも満足する水素化分解重油留分を組成物全量基準の含有量として5.0容量%以上25.0容量%以下で含む。
(a)飽和分含有量が80.0質量%以上
(a)硫黄分含有量が0.050質量%以下
(a)15℃における密度が0.8250g/cm以上0.8500g/cm以下
(a)CCAIが810以下
(a)50℃における動粘度が5.000mm/s以上20.00mm/s以下
水素化分解重油留分とは、直留軽油留分、減圧軽油留分、減圧留出油留分及び脱れき油留分から選ばれる少なくとも一種の留分を原料油とし、水素化分解処理して得られる重油留分のことをいう。
(水素化分解処理)
上記原料油を水素化分解処理する方法に特に制限はないが、例えば、水素化分解触媒を用いた方法が好ましく挙げられる。水素化分解触媒としては、例えば耐火性酸化物担体に、触媒金属種を担持させたものを用いればよく、上記耐火性酸化物担体に、上記触媒金属種を担持させた触媒前駆体を還元処理した触媒を用いることが好ましい。
耐火性酸化物担体としては、例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、チタニア、マグネシア、酸化亜鉛、結晶性アルミノシリケート(例えば、Y型ゼオライト、βゼオライト、モルデナイト等)、粘土鉱物、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの耐火性酸化物担体は、修飾、安定化処理したものを用いてもよい。
耐火性酸化物担体の形状については、粉体でもよく、円柱、三つ葉、四つ葉等の成形体でもよい。
触媒金属種としては、例えば、周期律表第6族金属、第8族金属、第9族金属及び第10族金属等が好ましく挙げられ、これらの金属種から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
周期律表第6族の触媒金属種としては、好ましくはクロム、モリブデン、タングステン、より好ましくはモリブデン、タングステンである。これらの触媒金属種を担体上に担持するモリブデン化合物としては、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム等が好ましく、タングステン化合物としては、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウム等が好ましい。
周期律表第8、第9族及び10族の活性成分としては、鉄、コバルト、ニッケル等が挙げられ、中でもコバルト、ニッケルが好ましい。これら触媒金属種を担体上に担持するコバルト化合物としては、好ましくは炭酸コバルト、塩基性炭酸コバルト、硝酸コバルト等が挙げられ、ニッケル化合物としては、好ましくは炭酸ニッケル、塩基性炭酸ニッケル、硝酸ニッケル等が挙げられる。
水素化分解処理の諸条件について、水素分圧は好ましくは10MPa以上30MPa以下、より好ましくは13MPa以上22MPa以下であり、水素の供給量は処理する留分1kLあたりで好ましくは500Nm以上1,500Nm以下、より好ましくは800Nm以上1,200Nm以下であり、反応温度は好ましくは340℃以上440℃以下、より好ましくは350℃以上420℃以下であり、液空間速度(LHSV)は好ましくは0.3hr-1以上1.5hr-1以下、より好ましくは0.5hr-1以上1.2hr-1以下である。
以上のようにして水素化分解処理した留分を、固液分離した後、蒸留して、沸点範囲280℃以上の留分を分離したものを、水素化分解重油留分として用いることが好ましい。
次に、水素化分解重油留分が有する性状及び組成について説明する。
(a)飽和分含有量
水素化分解重油留分の飽和分含有量は、80.0質量%以上である。飽和分含有量が80.0質量%未満であると、燃焼性能が低下する場合がある。燃焼性能の向上の観点から、水素化分解重油留分の飽和分含有量は、好ましくは85.0質量%以上、より好ましくは90.0質量%以上である。
本明細書において、水素化分解重油留分、直脱重油留分及びその他重油留分の飽和分含有量、また後述するこれらの留分の芳香族分含有量、レジン分含有量及びアスファルテン分含有量は、IP-469(国際標準試験方法(IP Test Methods))に規定される、TLC/FID法(薄膜クロマトグラフ-水素炎イオン化検出法)により測定される値である。
(a)硫黄分含有量
水素化分解重油留分の硫黄分含有量は、0.050質量%以下である。硫黄分含有量が0.050質量%よりも多いと、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の硫黄分含有量を0.400質量%以下としにくくなるため、排ガス中の硫黄酸化物の上昇により腐食が生じ、環境への負荷が高くなり環境性能が低下する場合がある。腐食の発生の抑制及び環境性能の向上を図る観点から、水素化分解重油留分の硫黄分含有量は、好ましくは0.030質量%以下、より好ましくは0.010質量%以下である。
(a)15℃における密度
水素化分解重油留分の15℃における密度は、0.8250g/cm以上0.8500g/cm以下である。15℃における密度が上記範囲外であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物を貯蔵タンクに保管中にワキシースラッジが分離発生することによる燃料油フィルタの閉塞、また大型船舶のディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンの前に付設されている遠心分離器によるスラッジの分離性能が低減しやすくなる。内燃機用燃料油組成物のろ過性能を向上させて、また燃費性能を向上させる観点から、水素化分解重油留分の15℃における密度は、好ましくは0.8300g/cm以上、より好ましくは0.8350g/cm以上であり、上限として好ましくは0.8475g/cm以下、より好ましくは0.8425g/cm以下である。
(a)CCAI
水素化分解重油留分のCCAIは、810以下である。CCAIが810より大きくなると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物のCCAIを845以下としにくくなり、燃焼性能が低下する。燃焼性能を向上させる観点から、水素化分解重油留分のCCAIは、好ましくは790以下、より好ましくは770以下である。
(a)50℃における動粘度
水素化分解重油留分の50℃における動粘度は、5.000mm/s以上20.00mm/s以下である。動粘度が上記範囲外であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の50℃動粘度を5.000mm/s以上18.00mm/s以下としにくくなるため、ポンプ及び流量計等の各種機器の使用範囲に適合しにくくなり、また潤滑性を確保できず、内燃機用燃料油組成物として使用することができなくなる場合がある。
上記各種機器の使用範囲に適合しやすくし、かつ潤滑性を向上させる観点から、50℃における動粘度は、好ましくは7.000mm/s以上、より好ましくは8.000mm/s以上であり、上限として好ましくは18.00mm/s以下、より好ましくは15.00mm/s以下である。
また、水素化分解重油留分は、上記(a)~(a)の性状及び組成に加えて、更に以下(a)~(a11)から選ばれる少なくとも1つを満足することが好ましく、以下(a)及び(a)を満足することがより好ましく、特に以下(a)~(a11)のいずれも満足することが好ましい。
(a)引火点
水素化分解重油留分の引火点は、取扱い上の安全性の観点から、好ましくは100.0℃以上、より好ましくは150.0℃以上、更に好ましくは200.0℃以上、より更に好ましくは210.0℃以上である。
(a)蒸留性状
水素化分解重油留分の蒸留性状として、初留点は好ましくは250.0℃以上、より好ましくは270.0℃以上、更に好ましくは280.0℃以上、上限として好ましくは350.0℃以下である。初留点が上記範囲内であると、低沸点成分による悪影響が抑制され燃焼性能が向上し、また得率を確保することができる。
また、90%容量留出温度は、好ましくは540.0℃以下、より好ましくは520.0℃以下、更に好ましくは500.0℃以下であり、下限として好ましくは440.0℃以上である。90%容量留出温度が上記範囲内であると、高沸点成分による悪影響が抑制され燃焼性能が向上し、取扱い上の安全性が向上し、エンジンの安定運転が容易となり、また得率を確保することができる。
本明細書において、蒸留性状の初留点及び終点は、JIS K2254:1998(石油製品-蒸留試験方法-)に準じて測定される値である。
(a)総発熱量
水素化分解重油留分の総発熱量は、好ましくは37,500(kJ/L)以上、より好ましくは38,000(kJ/L)以上、更に好ましくは38,250(kJ/L)以上である。総発熱量が上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の総発熱量を40,200(kJ/L)以上としやすくなり、燃費性能が向上する。
(a)流動点
水素化分解重油留分の流動点は、好ましくは45.0℃以下、より好ましくは40.0℃以下、更に好ましくは37.5℃以下である。流動点が上記範囲内であると、取扱性が向上する。また下限については、流動点が低ければ低いほど好ましく、特に制限はないが、通常-10.0℃以上程度である。
(a10)残留炭素分
水素化分解重油留分の残留炭素分は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、より更に好ましくは0.05質量%以下であり、下限としては特に制限はないが、通常0.001質量%以上である。残留炭素分が上記範囲内であると、内燃機用燃料油組成物の燃焼性能を維持しやすくなり、また燃焼不良による煤発生の低減効果が向上するため、内燃機のより安定した運転が可能となる。
(a11)芳香族分含有量、レジン分含有量及びアスファルテン分含有量
水素化分解重油留分の芳香族分含有量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上であり、上限として好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは12.5質量%以下、更に好ましくは10.0質量%以下である。水素化分解重油留分のレジン分は、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下であり、下限としては少なければ少ないほど好ましく、通常0.01質量%以上である。また、水素化分解重油留分のアスファルテン分は、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下であり、下限としては少なければ少ないほど好ましく、通常0.01質量%以上である。
芳香族分含有量、レジン分及びアスファルテン分が上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の使用時にスラッジの発生による燃料油フィルタ閉塞がより抑制されるので、ろ過性能が向上し、また燃焼性能が向上する。
水素化分解重油留分の組成物全量基準の含有量は、5.0容量%以上25.0容量%以下である。含有量が上記範囲内にないと、優れたろ過性能と燃焼性能とともに、優れた低温流動性能及び環境性能が得られにくくなる。これらの性能をより高い次元で両立させる観点から、水素化分解重油留分を組成物全量基準の含有量は、好ましくは7.5容量%以上、より好ましくは8.5容量%以上であり、上限として好ましくは22.5容量%以下、より好ましくは20.0容量%以下、更に好ましくは15.0容量%以下である。
(直脱重油留分)
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、好ましくは直脱重油留分を含む。直脱重油留分を含むことにより、主に本実施形態の内燃機用燃料油組成物の総発熱量を40,200(kJ/L)以上としやすくなるため、燃費性能を向上させることができ、また引火点を高くして取扱い上の安全性を向上させることができる。
直脱重油留分とは、常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を直接脱硫装置で脱硫して得られる重油留分のことであり、以下(b)~(b11)の性状及び組成の少なくとも一の性状及び組成を満足することが好ましく、以下(b)~(b)の性状及び組成を満足することがより好ましく、特に以下(b)~(b11)の全てを満足することが好ましい。
(b)硫黄分含有量
直脱重油留分の硫黄分含有量は、好ましくは0.600質量%以下、より好ましくは0.590質量%以下、更に好ましくは0.580質量%以下であり、下限として好ましくは0.510質量%以上、より好ましくは0.530質量%以上、更に好ましくは0.540質量%以上である。直脱重油留分の硫黄分含有量が上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の貯蔵安定性能の向上によりろ過性能が向上するとともに、硫黄分含有量を0.400質量%以下としやすくなるので、排ガス中の硫黄酸化物を低減させることにより腐食の発生を抑制し、かつ環境性能を向上させることができる。
(b)芳香族分含有量
直脱重油留分の芳香族分含有量は、好ましくは40.0質量%以上、より好ましくは50.0質量%以上であり、上限として好ましくは70.0質量%以下、より好ましくは60.0質量%以下である。芳香族分含有量が上記範囲内であると、スラッジ発生による燃料油フィルタ閉塞がより抑制されるので、ろ過性能が向上し、また燃焼性能が向上する。
(b)CCAI
直脱重油留分のCCAIは、好ましくは840以下、より好ましくは820以下、更に好ましくは810以下である。直脱重油留分のCCAIが上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物のCCAIを850以下としやすくなり、燃焼性能が向上する。
(b)飽和分含有量、レジン分含有量及びアスファルテン分含有量
直脱重油留分の飽和分含有量は、好ましくは20.0質量%以上50.0質量%以下、より好ましくは30.0質量%以上40.0質量%以下であり、レジン分含有量は好ましくは2.0質量%以上10.0質量%以下、より好ましくは3.0質量%以上7.0質量%以下、アスファルテン分含有量は好ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以上4.0質量%以下である。
飽和分が上記範囲内であると燃焼性能が向上し、またレジン分及びアスファルテン分が上記範囲内であると、スラッジの発生による燃料油フィルタ閉塞がより抑制されるので、ろ過性能が向上し、また燃焼性能が向上する。
(b)15℃における密度
直脱重油留分の15℃における密度は、好ましくは0.9350g/cm以下、より好ましくは0.9300g/cm以下であり、下限として好ましくは0.8800g/cm以上、より好ましくは0.9000g/cm以上である。15℃における密度が上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物について、貯蔵タンクに保管中にワキシースラッジが分離発生することによる燃料油フィルタの閉塞、また大型船舶のディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンの前に付設されている遠心分離器によるスラッジの分離性能が低減しやすくなる。また、上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物のろ過性能が向上し、また総発熱量を40,200(kJ/L)以上としやすくなるため燃費性能が向上する。
(b)50℃における動粘度
直脱重油留分の50℃における動粘度は、好ましくは200.0mm/s以下、より好ましくは195.0mm/s以下、更に好ましくは190.0mm/s以下であり、下限については低ければ低いほど好ましいが、通常100.0mm/s以上程度である。50℃における動粘度が上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の50℃における動粘度を5.000mm/s以上18.00mm/s以下としやすくなるため、ポンプ及び流量計等の各種機器の使用範囲に適合しやすくなり、また潤滑性が向上する。
(b)引火点
直脱重油留分の引火点は、取扱い上の安全性の観点から、好ましくは150.0℃以上、より好ましくは160.0℃以上、更に好ましくは175.0℃以上、より更に好ましくは185.0℃以上である。
(b)蒸留性状
直脱重油留分の蒸留性状として、初留点は好ましくは260.0℃以上、より好ましくは280.0℃以上、上限として好ましくは330.0℃以下であり、10%容量留出温度は好ましくは320.0℃以上、より好ましくは340.0℃以上であり、上限として好ましくは380.0℃以下である。初留点及び10%容量留出温度が上記範囲内であると、低沸点成分による悪影響が抑制され燃焼性能が向上し、また得率を確保することができる。
また、50%容量留出温度は、好ましくは470.0℃以上、より好ましくは485.0℃以上であり、上限として好ましくは520.0℃以下である。50%容量留出温度が上記範囲内であると、高沸点成分による悪影響が抑制され燃焼性能が向上し、取扱い上の安全性が向上し、エンジンの安定運転が容易となり、また得率を確保することができる。
(b)総発熱量
直脱重油留分の総発熱量は、好ましくは40,650(kJ/L)以上、より好ましくは41,000(kJ/L)以上である。直脱重油留分の総発熱量が上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の総発熱量を40,200(kJ/L)以上としやすくなり、燃費性能が向上する。
本明細書において、総発熱量は、直脱重油留分及びその他重油留分(上記の水素化分解重油留分を除く。)については、JIS K2279:2003(原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算による推定方法-)に準じて測定し、推定(「6.総発熱量推定方法、6.3 e)1)」に規定されるC重油の場合の計算式により推定)される値である。
(b10)流動点
直脱重油留分の流動点は、好ましくは15.0℃以下、より好ましくは12.5℃以下、更に好ましくは10.0℃以下である。流動点が上記範囲内であると、取扱性が向上する。また下限については、流動点が低ければ低いほど好ましく、特に制限はないが、通常-10.0℃以上程度である。
(b11)残留炭素分
直脱重油留分の残留炭素分は、好ましくは6.5質量%以下、より好ましくは5.5質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下であり、下限としては特に制限はないが、通常0.1質量%以上である。残留炭素分が上記範囲内であると、内燃機用燃料油組成物の燃焼性能を維持しやすくなり、また燃焼不良による煤発生の低減効果が向上するため、内燃機のより安定した運転が可能となる。
(直脱重油留分の含有量)
直脱重油留分の組成物全量基準の含有量は、好ましくは25.0容量%以上、より好ましくは30.0容量%以上、更に好ましくは35.0容量%以上であり、上限として好ましくは55.0容量%以下、より好ましくは50.0容量%以下、更に好ましくは45.0容量%以下である。直脱重油留分の含有量が上記範囲内であると、燃費性能の向上及び取扱い上の安全性の向上という直脱重油留分を用いる効果を効率よく得ることができる。また、他の水素化分解重油留分等との関係により、ろ過性能、燃焼性能、低温流動性能、燃費性能及び環境性能をより高い次元で両立させることができる。
(その他の重油留分)
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、上記水素化分解重油留分、直脱重油留分の他、C重油、常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油及び分解重油を含有することもできる。
・C重油
・常圧蒸留残渣油(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる残渣油)
・減圧蒸留残渣油(常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる残渣油)
・分解重油(直脱重油留分を流動接触分解して得られる重油分)
(その他の重油留分が有する性状)
本実施形態で用いられ得る上記のその他の重油留分が有する性状としては、下記の性状を有していることが好ましい。その他の重油留分が下記の性状を有することで、優れたろ過性能とともに、高い発熱量を有することで燃費性能の向上に寄与し、また優れた環境性能及び燃焼性能が得られやすくなる。
硫黄分含有量は、1.2質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.6質量%以下が更に好ましい。また下限値としては通常0.51質量%以上である。
芳香族分含有量は、40容量%以上が好ましく、50容量%以上がより好ましく、55容量%以上が更に好ましい。
CCAIは、840以下が好ましく、820以下がより好ましく、810以下が更に好ましい。
15℃における密度は、0.8800g/cm以上が好ましく、0.9000g/cm以上がより好ましく、0.9200g/cm以上が更に好ましく、また上限としては0.9500g/cm以下が好ましい。
50℃における動粘度は、190.0mm/s以下が好ましく、160.0mm/s以下がより好ましく、また下限としては30.00mm/s以上程度、好ましくは50.00mm/s以上である。
流動点は、15.0℃以下が好ましく、12.5℃以下がより好ましく、10.0℃以下が更に好ましい。
総発熱量は、40,000(J/mL)以上が好ましく、40,500(J/mL)以上がより好ましく、41,000(J/mL)以上が更に好ましい。
また、残留炭素分は、8.0質量%以下が好ましく、6.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下が更に好ましい。
(分解軽油留分)
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、好ましくは分解軽油留分を含む。分解軽油留分を含むことにより、主にフィルタの閉塞頻度を低減させることでろ過性能を向上させることができる。
分解軽油留分とは、常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を流動接触分解して得られる接触分解軽油留分、並びに該接触分解軽油留分を脱硫処理して得られる脱硫接触分解軽油留分のことである。分解軽油留分は、以下(c)~(c12)の性状及び組成の少なくとも一の性状及び組成を満足することが好ましく、以下(c)~(c)の性状及び組成を満足することがより好ましく、特に以下(c)~(c12)の全てを満足することが好ましい。
(c)15℃における密度
分解軽油留分の15℃における密度は、好ましくは0.9000g/cm以上、より好ましくは0.9100g/cm以上、更に好ましくは0.9120g/cm以上である。15℃における密度が上記範囲内にあると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の総発熱量を40,200(kJ/L)以上としやすくなるため燃費性能が向上する。また、貯蔵タンクに保管中にワキシースラッジが分離発生することによる燃料油フィルタの閉塞、また大型船舶のディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンの前に付設されている遠心分離器によるスラッジの分離性能の低減を抑制し、貯蔵安定性能の向上によりろ過性能を向上させる観点から、上限として好ましくは0.9300g/cm以下、より好ましくは0.9250g/cm以下、更に好ましくは0.9210g/cm以下である。
(c)50℃における動粘度
分解軽油留分の50℃における動粘度は、好ましくは2.000mm/s以下、より好ましくは1.800mm/s以下、更に好ましくは1.700mm/s以下であり、下限として好ましくは1.000mm/s以上である。50℃における動粘度が上記範囲内にあると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の50℃における動粘度を5.000mm/s以上18.00mm/s以下としやすくなるため、ポンプ及び流量計等の各種機器の使用範囲に適合しやすくなり、また潤滑性が向上する。
(c)硫黄分含有量
分解軽油留分の硫黄分含有量は、0.300質量%以下、より好ましくは0.270質量%以下である。硫黄分含有量が上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の硫黄分含有量を0.400質量%以下としやすくなるので、排ガス中の硫黄酸化物を低減させることにより腐食の発生を抑制し、かつ環境性能を向上させることができる。
(c)芳香族分含有量
分解軽油留分の芳香族分含有量は、好ましくは60.0容量%以上、より好ましくは65.0容量%以上である。ここで、芳香族分含有量は、1環芳香族分、2環芳香族分及び3環以上の芳香族分の合計含有量のことである。芳香族分含有量が上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物のスラッジの発生による燃料油フィルタ閉塞がより抑制されるので、ろ過性能が向上し、また燃焼性能が向上する。
本明細書において、分解軽油留分及び後述するその他の軽油留分の芳香族分含有量、飽和分含有量、オレフィン分含有量は、JPI-5S-49-2007に規定される、石油製品-炭化水素タイプ試験方法-高速液体クロマトグラフィー法(High Performance Liquid Chromatography法)により測定される値である。
(c)オレフィン分含有量及び飽和分含有量
分解軽油留分のオレフィン分含有量は、好ましくは12.0容量%以下、より好ましくは10.0容量%以下である。下限としては特に制限はなく、小さければ小さいほど好ましく、通常1.0容量%以上である。また、飽和分含有量は、好ましくは1.0容量%以上、より好ましくは5.0容量%以上であり、上限として好ましくは12.0容量%以下、より好ましくは10.0容量%以下である。これらの成分の含有量が上記範囲内にあると、特にろ過性能及び燃焼性能が向上する。
(c)CCAI
分解軽油留分のCCAIは、好ましくは910以下、より好ましくは900以下である。CCAIが上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物のCCAIを845以下としやすくなるので、燃焼性能が向上する。
(c)引火点
分解軽油留分の引火点は、取扱い上の安全性の向上の観点から、好ましくは65.0℃以上、より好ましくは70.0℃以上、更に好ましくは75.0℃以上である。
(c)蒸留性状
分解軽油留分の蒸留性状として、初留点は好ましくは140.0℃以上、より好ましくは160.0℃以上であり、上限として好ましくは200.0℃以下であり、10%容量留出温度は好ましくは160.0℃以上、より好ましくは180.0℃以上であり、上限として好ましくは215.0℃以下である。初留点及び10%容量留出温度が上記範囲内であると、低沸点成分による悪影響が抑制され燃焼性能が向上し、また得率を確保することができる。
90容量%留出温度は、好ましくは340.0℃以下、より好ましくは325.0℃以下であり、下限として好ましくは300.0℃以上であり、終点として好ましくは365.0℃以下、より好ましくは350.0℃以下であり、下限として好ましくは315.0℃以上である。90%容量留出温度及び終点が上記範囲内であると、高沸点成分による悪影響が抑制され燃焼性能が向上し、取扱い上の安全性が向上し、エンジンの安定運転が容易となり、また得率を確保することができる。
(c)総発熱量
分解軽油留分の総発熱量は、好ましくは40,400(kJ/L)以上であり、より好ましくは40,600(kJ/L)以上、更に好ましくは40,800(kJ/L)以上である。総発熱量が上記範囲内であると、本実施形態の内燃機用燃料油組成物の総発熱量を40,200(kJ/L)以上としやすくなるので、燃費性能が向上する。
(c10)流動点
分解軽油留分の流動点は、好ましくは-20.0℃以下、より好ましくは-25.0℃以下、更に好ましくは-30.0℃以下である。流動点が上記範囲内であると、取扱性を向上させることができる。
(c11)曇り点
分解軽油留分の曇り点は、好ましくは-20.0℃以下、より好ましくは-25.0以下、更に好ましくは-30.0℃以下である。曇り点が上記範囲内であると、低温流動性能が向上する。
本明細書において、曇り点は、JIS K2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに曇り点試験方法)に準じて測定される値である。
(c12)10%残油の残留炭素分
分解軽油留分の10%残油の残留炭素分は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である。10%残油の残留炭素分が上記範囲内であると、内燃機用燃料油組成物の燃焼性能を維持しやすくなり、また燃焼不良による煤発生の低減効果が向上するため、内燃機のより安定した運転が可能となる。
本明細書において、10%残油の残留炭素分は、JIS K 2270-1:2009(原油及び石油製品-残留炭素分の求め方- 第1部:コンラドソン法)に準じ、附属書Aに準拠して調製した10%残油を用いて測定される値である。
(分解軽油留分の含有量)
分解軽油留分の組成物全量基準の含有量は、好ましくは25.0容量%以上、より好ましくは30.0容量%以上、更に好ましくは40.0容量%以上であり、上限として好ましくは65.0容量%以下、より好ましくは60.0容量%以下、更に好ましくは55.0容量%以下である。分解軽油留分の含有量が上記範囲内であると、ろ過性能が向上する。また、他の水素化分解重油留分等との関係により、ろ過性能、燃焼性能、低温流動性能、燃費性能及び環境性能をより高い次元で両立させることができる。
また、分解軽油留分の組成物全量基準の含有量は、前記水素化分解重油留分の組成物全量基準の含有量の好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2.0倍以上、更に好ましくは3.5倍以上、より更に好ましくは4.5倍以上であり、上限として好ましくは6.0倍以下、より好ましくは5.5倍以下である。本割合が上記範囲内であると、ろ過性能、燃焼性能、低温流動性能、燃費性能及び環境性能をより高い次元で両立させることができる
(その他の軽油留分)
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、上記分解軽油留分の他、直留軽油留分、減圧軽油留分、脱硫軽油留分、直脱軽油留分等の軽油留分を含有することもできる。
・直留軽油留分(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる軽油留分)
・減圧軽油留分(常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる軽油留分)
・脱硫軽油留分(直留軽油留分及び/又は減圧軽油留分を脱硫して得られる軽油留分)
・直脱軽油留分(常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を直接脱硫装置で脱硫処理して得られる軽油留分)
(その他の軽油留分が有する性状)
本実施形態で用いられ得る上記のその他の軽油留分が有する性状としては、下記の性状を有していることが好ましい。その他の軽油留分が下記の性状を有することで、優れたろ過性能とともに、高い発熱量を有することで燃費性能の向上に寄与し、また優れた環境性能及び燃焼性能が得られやすくなる。
硫黄分含有量は、好ましくは0.40質量%以下、より好ましくは0.20質量%以下、更に好ましくは0.10質量%以下である。
総発熱量は、好ましくは38,000(kJ/L)以上、より好ましくは38,100(kJ/L)以上である。
15℃における密度は、好ましくは0.8300g/cm以上であり、上限として好ましくは0.9350g/cm以下、より好ましくは0.9000g/cm以下である。
50℃における動粘度は、好ましくは2.800mm/s以下、より好ましくは2.750mm/s以下、下限として好ましくは2.000mm/s以上、より好ましくは2.500mm/s以上である。
流動点は、好ましくは-2.5℃以下、より好ましくは-5.0℃以下である。
芳香族分含有量は、好ましくは15.0容量%以上、より好ましくは20.0容量%以上である。
90%容量留出温度は、好ましくは355.0℃以下、より好ましくは345.0℃以下であり、下限として好ましくは325.0℃以上、より好ましくは330.0℃以上である。また、終点は、好ましくは325.0℃以上、より好ましくは345.0℃以上であり、上限として好ましくは380.0℃以下、より好ましくは365.0℃以下である。
(各種添加剤)
本実施形態の内燃機用燃料油組成物には、上記の諸性状を維持しうる範囲で、必要に応じ、各種添加剤として、酸化防止剤、低温流動性向上剤、潤滑性向上剤、セタン価向上剤、燃焼促進剤、清浄剤、スラッジ分散剤、防カビ剤等の各種添加剤を適宜選択して配合することができる。また、軽油引取税の観点よりクマリンを配合してもよい。
(用途)
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、内燃機に用いられ、優れたろ過性能とともに、高い発熱量を有することで燃費性能の向上に寄与し、また優れた環境性能及び燃焼性能を有する燃料油組成物である。そのため、特に船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機に好適に用いられ、中でも遠心分離装置を含む前処理装置を有する大型船舶のディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンに好適に用いられる。
〔内燃機用燃料油組成物の製造方法〕
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、上記水素化分解重油留分、好ましくは直脱重油留分、分解軽油留分、また必要に応じてその他軽油留分及び重油留分、各種添加剤を、該水素化分解重油留分の含有量を組成物全量基準の含有量として5.0容量%以上25.0容量%以下となるように配合することで、また該直脱重油留分の組成物全量基準の含有量を好ましくは25.0容量%以上55.0容量%以下、該分解軽油留分の組成物全量基準の含有量を該水素化分解重油留分の組成物全量基準の含有量に対して好ましくは1.5倍以上5.5倍以下の範囲となるよう配合することにより、製造することができる。
水素化分解重油留分、好ましく用いられる直脱重油留分、分解軽油留分、必要に応じて用いられるその他軽油留分及び重油留分、また各種添加剤の配合順序は特に制限はなく、例えば、水素化分解重油留分に、直脱重油留分、分解軽油留分、さらにその他軽油留分及び重油留分、各種添加剤を逐次添加して混合してもよいし、各種添加剤を予め混合した後、水素化分解重油留分と、直脱重油留分、分解軽油留分、その他軽油留分及び重油留分と、を混合してもよい。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。なお、各基材の性状は、上記のとおり、下記の方法に従って求めた。
〔性状と組成の測定〕
実施例及び比較例で使用した水素化分解重油留分、直脱重油留分、分解軽油留分及び直脱軽油留分の各種基材の性状及び組成、実施例及び比較例の燃料油組成物の性状及び組成は以下の方法により測定した。各種基材の性状及び組成を第1表に示す。また、燃料油組成物の性状及び組成を第2表に示す。
・硫黄分含有量:JIS K 2541-4:2003(原油及び石油製品-硫黄分試験方法- 第4部:放射線式励起法)に準じて測定した。
・総発熱量:水素化分解重油留分、分解軽油留分、直脱軽油留分及び燃料油組成物については、JIS K2279:2003(原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算による推定方法-)に準じて測定し、推定(「6.総発熱量推定方法、6.3 e)1)」に規定される原油、灯油、軽油、A重油及びB重油の場合の計算式により推定)した。また、直脱重油留分については、JIS K2279:2003(原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算による推定方法-)に準じて測定し、推定(「6.総発熱量推定方法、6.3 e)1)」に規定されるC重油の場合の計算式により推定)した。
・50℃における動粘度:JIS K 2283:2000(原油及び石油製品の動粘度試験方法)に準じて測定した。
・CCAI:ISO 8217-2012のAnnex F記載の計算式より算出した。
・実在セジメント:JPI-5S-60-2000(原油及び石油製品-セジメント試験方法-)に準じて測定した。
・15℃における密度:JIS K 2249-1:2011(原油及び石油製品-密度の求め方- 第1部:振動法)に準じて測定した。
・流動点:分解軽油留分及び直脱軽油留分はJIS K2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に準じて測定し、燃料油組成物、水素化分解重油留分及び直脱重油留分については、その500mLを常温(10~20℃)で168時間(7日間)放置した後、45℃に加熱する予備処理を行わなかったものについて、JIS K2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に準じて測定した。
・引火点:JIS K 2265-3:2007(原油及び石油製品-引火点試験方法- 第3部:ペンスキーマルテンス密閉法)に準じて測定した。
・残留炭素分:燃料油組成物、水素化分解重油留分、直脱重油留分等の重油留分については、JIS K 2270-1:2009(原油及び石油製品-残留炭素分の求め方- 第1部:コンラドソン法)に準じて測定した。
・10%残油の残留炭素分:分解軽油留分、直脱軽油留分等の軽油留分については、JIS K 2270-1:2009(原油及び石油製品-残留炭素分の求め方- 第1部:コンラドソン法)に準じ、附属書Aに準拠して調製した10%残油を用いて測定される値である。
・水分含有率:JIS K 2275-3:2015(原油及び石油製品-水分の求め方- 第3部:カールフィッシャー式電量滴定法)に準じて測定した。
・灰分量:JIS K 2272:1998(原油及び石油製品-灰分及び硫酸灰分試験方法-)に準じて測定した。
・石油製品反応試験:JIS K 2252:1998による石油製品-反応試験により測定した。
・銅板腐食:JIS K 2513:2000(石油製品-銅板腐食試験法-)に準じて測定した。
・アルミニウム含有率:JPI-5S-62-2011(石油製品-金属分試験方法-)に準じて測定した。
・飽和分含有量、芳香族分含有量、レジン分含有量及びアスファルテン分含有量:水素化分解重油留分、直脱重油留分等の重油留分の上記各種成分含有量は、IP-469(国際標準試験方法(IP Test Methods))に規定される、TLC/FID法により測定した。
・芳香族分含有量(1環芳香族分、2環芳香族分及び3環芳香族分)、飽和分含有量及びオレフィン分含有量:分解軽油留分、直脱軽油留分等の軽油留分の上記各種成分含有量は、JPI-5S-49-2007に規定される、石油製品-炭化水素タイプ試験方法-高速液体クロマトグラフィー法(High Performance Liquid Chromatography法)により測定した。
・蒸留性状(初留点、終点、90容量%留出温度等):JIS K2254:1998(石油製品-蒸留試験方法-)に準じて測定した。
・曇り点:JIS K2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに曇り点試験方法)に準じて測定した。
〔性能の評価基準〕
以下の1~6の各性能の評価を行い、一番悪い評価を総合評価として評価した。C評価であれば不合格である。各性能の評価を、第2表に示す。
1.ろ過性能(常温通油性能)
各実施例及び比較例の燃料油組成物について、測定試料を「JIS K2601:1998-原油試験方法- 14.水でい分試験方法 14.2水でい分試験器」(以下、水でい分試験器)で使用される目盛試験管3本に、各々100mLの標線まで採取した。その後、水でい分試験器で使用される遠心分離機を用い、20~30℃、相対遠心力600の条件で55分間遠心分離を行った。次に、50mLビーカーを3個用意し、遠心分離をかけた目盛試験管3本の試料の上部50mLを、各50mLビーカーに分取した。分取後のビーカーを0.1mg単位で秤量し、秤量した質量をM(g)とした。そして、50±1℃に保った恒温槽で、分取した試料を15分間加熱した。
JPI-5S-60-2000の実在セジメント試験方法に定めるろ過装置(以下、ろ過装置)に、細孔20~25μmのろ紙(Whatman No.4(55mmφ))を置いた。ろ紙は、110℃の乾燥機で20分間、予め乾燥させておいた。さらに上部漏斗を重ね、試料の漏れ込みが無いよう固定した。この際、直径28mmの孔を開けたパッキンを重ね、ろ過面の直径を28mmに調節した。その後、減圧瓶の他端には、排気速度12L/分で吸引できる真空ポンプを取り付けた。また、上部漏斗も試料と同様に50±1℃となるよう加熱した。
次に、加熱した試料のうち1つ目を、漏斗内壁に試料がつかないようにろ紙中央に注ぎ込んだ。ろ紙を注ぎ始めてから1分後に真空ポンプを起動させ、ろ過を開始した。ろ過開始時から、試料がろ過されろ紙が全面露出(内径28mmのろ過面部のみでよい)までに要した時間を測定し、測定したろ過に要した時間をt(秒)とした。また、使用後のビーカーを秤量し、秤量した質量をM(g)とした。
次に、真空ポンプ停止後、2つ目、3つ目の試料に対し、上記の1つ目の試料と同じ操作を繰り返し実施した。この間は、試験機取り外しや機器洗浄など、測定条件が変わる動作をしなかった。また、ろ紙の閉塞によって試料がろ過されなくなった場合は、ろ過作業を終了し次工程に進んだ。具体的には、ろ過を開始してから6分経過してもろ過が完了しない場合、ろ過作業を終了した。ろ紙が閉塞した場合は、残試料をトルエンで溶解しピペット等で取り除いた。そして、漏斗及びろ紙をn-ヘプタンで洗浄後、上部漏斗を取り外し、ろ紙の縁を確認した。ろ紙の縁まで着色していたら、試料が漏れているため、再試験を行った。
下記式(1)より、それぞれの測定回数の内燃機用燃料油組成物単位体積当たりのろ過時間を算出した。
=t/(M/d) (1)
上記式(1)において、nは測定回数であり、3回である。また、Tはn回目の測定のろ過に要した時間から算出した内燃機用燃料油組成物単位体積当たりのろ過時間(秒/cm)、tはn回目の測定のろ過に要した時間(秒)、Mはろ過した内燃機用燃料油組成物の質量(M-M)(g)、dは15℃における内燃機用燃料油組成物の密度(g/cm)である。なお、ろ紙の閉塞によりろ過できなかった場合は、「計算不可」とした。そして、縦軸を内燃機用燃料油組成物単位体積当たりのろ過時間とし、横軸をろ過に要した時間の測定回数としてプロットした点から、最小二乗法で近似直線の傾きを算出し、ろ過時間の傾き(秒/cm)を算出した。
以上の方法により算出した「ろ過時間の傾き」について、以下の基準で評価して、ろ過性能の評価とした。本評価において、B評価以上であれば合格である。
A:ろ過時間の傾きが0.07(秒/cm)以下
B:ろ過時間の傾きが0.07(秒/cm)超0.12(秒/cm)以下
C:ろ過時間の傾きが0.12(秒/cm)超
2.ろ過性能(貯蔵安定性能)
各実施例及び比較例の燃料油組成物3Lを評価試料とし、これを、ブリキ製の4L缶の上部に開放部(直径:32.5mmの円形)を設けて空気の流通を可能にした容器に採取し、90日間、常温(10~20℃)で保管した。保管後の評価試料について、上記(ろ過性能(常温通油性能)の評価)と同じ方法で評価を行った。以下の基準で評価して、ろ過性能の評価とした。本評価において、B評価以上であれば合格である。
A:ろ過時間の傾きが0.09(秒/cm)以下
B:ろ過時間の傾きが0.09(秒/cm)超0.16(秒/cm)以下
C:ろ過時間の傾きが0.16(秒/cm)超
3.燃焼性能
CCAIに基づき、以下の基準で評価した。
A:CCAIが838以下
B:CCAIが840以下
C:CCAIが840超
4.低温流動性能
各実施例及び比較例の燃料油組成物500mLを評価試料とし、7日間、常温(10~20℃)で放置した後、45℃に加熱する予備処理を行わず、JIS K 2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に準じて流動点を測定し、以下の基準で評価した。
A:流動点が5.0℃以下
B:流動点が5.0℃超15.0℃以下
C:流動点が15.0℃超
5.燃費性能
総発熱量に基づき、以下の基準で評価した。
A:総発熱量が40,650kJ/L以上
B:総発熱量が40,350kJ/L以上
C:総発熱量が40,350kJ/L未満
6.環境性能
硫黄分含有量に基づき、以下の基準で評価した。
A:硫黄分含有量が0.360質量%以下
B:硫黄分含有量が0.400質量%以下
C:硫黄分含有量が0.400質量%超
〔実施例1~4、比較例1~6〕
第1表に示す性状及び組成を有する各種基材を、第2表に示す割合で混合し、実施例1~4、及び比較例1~6の燃料油組成物を作製した。
得られた各燃料油組成物について、ろ過性能(常温通油性能)、ろ過性能(貯蔵安定性能)、燃焼性能、低温流動性能、燃費性能及び環境性能を上記方法により評価した。その結果を第2表に示す。
Figure 0007163176000001
Figure 0007163176000002
〔性能の評価結果〕
第2表に示されるように、本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、ろ過性能(常温通油性能及び貯蔵安定性能)、燃焼性能、低温流動性能、燃費性能及び環境性能の評価がいずれも良好であり、特に船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機に好適に用いられ、中でも遠心分離装置を含む前処理装置を有する大型船舶のディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンへの使用にも耐えうるものであることが確認された。
一方、特定の水素化分解重油留分を含まない比較例1の燃料油組成物は燃焼性能の点で劣っており、特定の水素化分解重油留分を過剰に含む比較例2及び4の燃料油組成物は燃費性能の点で劣っており、また他の比較例の燃料油組成物のように特定の水素化分解重油留分を特定の含有量で含むものであったとしても、(1)~(5)のいずれかを満足していない組成物は、いずれかの性能において劣るものとなった。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、優れたろ過性能と燃焼性能とともに、低温流動性能、燃費性能及び環境性能に優れており、内燃機関、特に船舶用ディーゼルエンジン等の内燃機に好適に用いられ、中でも遠心分離装置を含む前処理装置を有する大型船舶のディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンに好適に用いられるものである。

Claims (2)

  1. 下記(a)~(a)をいずれも満足する水素化分解重油留分を、組成物全量基準の含有量として5.0容量%以上25.0容量%以下で含む、下記(1)~(5)をいずれも満足し、直脱重油留分を組成物全量基準の含有量として25.0容量%以上55.0容量%以下で含み、分解軽油留分を組成物全量基準の含有量として前記水素化分解重油留分の組成物全量基準の含有量の1.5倍以上5.5倍以下で含む内燃機用燃料油組成物。
    (a)飽和分含有量が80.0質量%以上
    (a)硫黄分含有量が0.050質量%以下
    (a)15℃における密度が0.8250g/cm以上0.8500g/cm以下
    (a)CCAIが810以下
    (a)50℃における動粘度が5.000mm/s以上20.00mm/s以下
    (1)硫黄分含有量が0.400質量%以下
    (2)総発熱量が40,200(kJ/L)以上
    (3)50℃における動粘度が5.000mm/s以上18.00mm/s以下
    (4)CCAIが845以下
    (5)実在セジメントが0.05質量%以下
  2. 遠心分離装置を含む前処理装置を有するディーゼルエンジンに用いられる請求項1に記載の内燃機用燃料油組成物。
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