JP6955442B2 - 内燃機用燃料油組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
更に、内燃機用A重油について、燃料油フィルタの通油性を改善する方法として、例えば、特許文献1〜4に記載される手法も知られている。
しかしながら、従来のA重油やC重油、また上記の通油性を向上した内燃機用燃料油組成物は、ろ過性能とともに、取扱容易性能、環境性能及び燃焼性能の全てを十分に満足するものとはいえないものであり、これらの性能を同時に満足し得る内燃機用燃料油組成物の開発が望まれている。
(1)ろ過時間の傾きが0.28以下
(2)15℃における密度が0.925g/cm3以下
(3)総発熱量が40,000(J/mL)以上
(4)50℃における動粘度が3.7mm2/s以上9.9mm2/s以下
(5)流動点が5.0℃以下
(6)組成物全量基準の硫黄分含有量が0.5質量%以下
(7)CCAIが850以下
[2]直留軽油留分、減圧軽油留分、脱硫軽油留分、分解軽油留分、脱硫分解軽油留分及び直脱軽油留分から選ばれる少なくとも一種の軽油留分と、
C重油、常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油、直脱重油及び分解重油から選ばれる少なくとも一種の重油留分と、
を混合する、下記(1)〜(7)をいずれも満足する内燃機用燃料油組成物の製造方法。
(1)ろ過時間の傾きが0.28以下
(2)15℃における密度が0.925g/cm3以下
(3)総発熱量が40,000(J/mL)以上
(4)50℃における動粘度が3.7mm2/s以上9.9mm2/s以下
(5)流動点が5℃以下
(6)組成物全量基準の硫黄分含有量が0.5質量%以下
(7)CCAIが850以下
以下、本発明の実施形態(以後、単に「本実施形態」と称する場合がある。)に係る内燃機用燃料油組成物、及びその製造方法をさらに具体的に説明する。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、下記(1)〜(7)、すなわち(1)ろ過時間の傾きが0.28以下、(2)15℃における密度が0.925g/cm3以下、(3)総発熱量が40,000(J/mL)以上、(4)50℃における動粘度が3.7mm2/s以上9.9mm2/s以下、(5)流動点が5℃以下、(6)組成物全量基準の硫黄分含有量が0.5質量%以下及び(7)CCAIが850以下をいずれも満足する燃料油組成物である。
まず、上記(1)〜(7)の本実施形態に係る内燃機用燃料油組成物の組成及び性状について説明する。
(1)ろ過時間の傾き
本実施形態の内燃機用燃料油組成物のろ過時間の傾きは、燃料油フィルタの閉塞の頻度を効果的に低減できるという観点から、0.28以下であることを要する。ろ過時間の傾きが0.28より大きいと、燃料油フィルタの閉塞が生じやすくなり、優れたろ過性能は得られない。優れたろ過性能を得る観点から、ろ過時間の傾きは、好ましくは0.15以下であり、より好ましくは0.10以下であり、更に好ましくは0.07以下である。
内燃機用燃料油組成物中のセジメント等が原因で燃料油フィルタが閉塞した場合、燃料油フィルタの洗浄が必要となる。よって、燃料油フィルタの閉塞の頻度が低ければ、燃料油フィルタが再び閉塞するまで長期間要することになるが、燃料油フィルタの閉塞の頻度が高いと、燃料油フィルタを洗浄した後、短い期間で燃料油フィルタは再び閉塞するため、該フィルタの洗浄の回数が増加する。
よって、本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、ろ過時間の傾きが上記範囲内であるという、優れたろ過性能を有するため、結果として設備費の増加を抑え、エンジンの安定運転に寄与することができる。
ろ過時間の傾きは、内燃機用燃料油組成物による燃料油フィルタの閉塞性を評価する試験方法によって算出することができる。燃料油フィルタの閉塞性を評価する試験方法は、具体的には、内燃機用燃料油組成物を遠心分離する工程A、遠心分離した内燃機用燃料油組成物の上澄み液を採取する工程B、採取した上澄み液を加熱する工程C、及び加熱した上澄み液の一部をろ紙を用いて吸引ろ過し、ろ過に要した時間を測定する工程Dを含む。
工程Aは、内燃機用燃料油組成物を遠心分離する工程である。例えば、測定試料を「JIS K2601:1998−原油試験方法− 14.水でい分試験方法 14.2水でい分試験器」(以下、単に「水でい分試験器」と称する。)で使用される目盛試験管3本に、各々100mLの標線まで採取する。その後、水でい分試験器で使用される遠心分離器を用い、常温(10〜20℃)、相対遠心力600の条件で55分間遠心分離を行う。
工程Bは、上記A工程により遠心分離した内燃機用燃料油組成物の上澄み液を採取する工程である。例えば、50mLビーカーを3個用意し、遠心分離をかけた目盛試験管3本の試料の上部50mLを、各50mLビーカーに分取する。分取後のビーカーを0.1mg単位で秤量し、秤量した質量をM1(g)とする。
工程Cは、採取した上澄み液を加熱する工程である。具体的には、30±1℃に保った恒温槽で、工程Bで採取した試料を15分間加熱する。
工程Dは、加熱した上澄み液の一部をろ紙を用いて吸引ろ過し、ろ過に要した時間を測定する工程である。具体的には、JPI−5S−60−2000の実在セジメント試験方法に定めるろ過装置(以下、単に「ろ過装置」と称する。)に、細孔20〜25μmのろ紙(Whatman No.4(55mmφ))を置く。ろ紙は、110℃の乾燥機で20分間、予め乾燥させておく。さらに上部漏斗を重ね、試料の漏れ込みがないよう固定する。この際、直径28mmの孔を開けたパッキンを重ねるなどの方法で、ろ過面の直径を28mmに調節する。その後、減圧瓶の他端には、排気速度12L/分で吸引できる真空ポンプを取り付ける。上部漏斗も試料と同様に30±1℃となるように加熱する。
Tn=tn/(M/d) (1)
上記式(1)において、nは測定回数であり、3回以上である。Tnはn回目の測定のろ過に要した時間から算出した内燃機用燃料油組成物単位体積当たりのろ過時間(秒/cm3)、tnはn回目の測定のろ過に要した時間(秒)、Mはろ過した内燃機用燃料油組成物の質量(M1−M2)(g)、dは15℃における内燃機用燃料油組成物の密度(g/cm3)である。なお、ろ紙の閉塞によりろ過できなかった場合は、「計算不可」としてもよい。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の15℃における密度は、0.925g/cm3以下であることを要する。15℃における密度が0.925g/cm3より大きいと、例えば、貯蔵タンクに保管中にワキシースラッジが分離発生し、燃料油フィルタが閉塞する、また大型船舶のディーゼルエンジン等の大型ディーゼルエンジンの前に付設されている遠心分離器によるスラッジの分離性能が低減する等の理由より、エンジンの安定運転が困難となる。スラッジの発生による燃料油フィルタ閉塞を抑制し、また遠心分離器によるスラッジの分離性能の低減を抑制する観点から、15℃における密度は好ましくは0.920g/cm3以下、より好ましくは0.918g/cm3以下である。また、下限については特に制限はないが、通常0.880g/cm3以上、好ましくは0.900g/cm3以上、より好ましくは0.910g/cm3以上である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の15℃における密度は、JIS K 2249−1:2011(原油及び石油製品−密度の求め方−、第1部:振動法)に準じて測定することができる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の総発熱量は、40,000(J/mL)以上であることを要する。総発熱量が40,000(J/mL)未満であると、燃料油組成物の使用量の低減効果が得られず、優れた環境性能が得られない。優れた環境性能を得る観点から、総発熱量は好ましくは40,200(J/mL)以上、より好ましくは40,500(J/mL)以上である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の総発熱量は、JIS K2279:2003(原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法−)に準じて測定し、推定(「6.総発熱量推定方法、6.3 e)1)」に規定されるA重油の場合の計算式により推定)することができる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の50℃における動粘度は、3.70mm2/s以上9.90mm2/s以下であることを要する。50℃における動粘度が9.90mm2/sより大きいと、ろ過性能とともに取扱容易性能が得られない。また、50℃における動粘度が3.70mm2/s未満であると、既存の設備(ポンプ、流量計)等がそのまま使用できずに設備投資が必要となってしまい、また適度な潤滑性が得られず、エンジンの安定運転が困難となる。50℃における動粘度は、ろ過性能及び取扱容易性能の観点、適度な潤滑性を得るという観点から、好ましくは4.20mm2/s以上、より好ましくは4.70mm2/s以上であり、上限として好ましくは8.90mm2/s以下、より好ましくは7.90mm2/s以下である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の50℃における動粘度は、JIS K 2283:2000(原油及び石油製品の動粘度試験方法)に準じて測定することができる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の流動点は、5.0℃以下であることを要する。流動点が5.0℃よりも高くなると、優れた取扱容易性能が得られなくなる。流動点は、より優れた取扱容易性能を得る観点から、好ましくは2.5℃以下、より好ましくは0.0℃以下である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の流動点は、JIS K 2269:1987(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に準じて測定することができる。ここで、測定に用いる試料としては、燃料油組成物500mLを常温(10〜20℃)で168時間(7日間)放置した後、45℃に加熱する予備処理を行わなかったものを用いることとする。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の硫黄分含有量は、組成物全量基準で0.5質量%以下であることを要する。硫黄分含有量が0.5質量%より大きいと、排ガス中の硫黄酸化物による環境負荷を低減できないため優れた環境性能が得られず、また排ガスの酸露点低下による煙道腐食が生じやすくなり、エンジンの安定運転が困難となる。優れた環境性能、エンジンの安定運転の観点から、硫黄分含有量は好ましくは0.45質量%以下、より好ましくは0.40質量%以下、更に好ましくは0.35質量%以下である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の硫黄分含有量は、JIS K 2541−4:2003(原油及び石油製品−硫黄分試験方法− 第4部:放射線式励起法)に準じて測定することができる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物のCCAIは、850以下であることを要する。CCAIが850を超えると、本来燃料油組成物として求められる、燃焼性能(着火遅れ等がない着火性能及び内燃機内において安定して燃焼する燃焼性能)が得られない。より優れた燃焼性能を得る観点から、CCAIは好ましくは848以下である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物のCCAIは、ISO 8217−2012のAnnex F記載の計算式より算出される値である。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、上記(1)〜(7)をいずれも満足するものであることから、優れたろ過性能とともに、取扱容易性能、環境性能及び燃焼性能を有する燃料油組成物である。また、本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、上記(1)〜(7)の性状の他、以下の(8)〜(16)のその他の性状を有していることが好ましい。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、JIS K 2252:1998による石油製品−反応試験の結果が中性であることが好ましい。中性であることにより、燃料油タンク、配管、ディーゼルエンジン、及び装備しているポンプ等の補機の腐食を防止でき、エンジンの安定運転が容易となる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の引火点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上である。引火点が上記範囲のように高くなるほど、取扱い上の安全性が向上し、より優れた取扱容易性能が得られる。また、エンジンの安定運転がより容易となる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の引火点は、JIS K 2265−3:2007(原油及び石油製品−引火点の求め方− 第3部:ペンスキーマルテンス密閉法)に準じて測定することができる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の残留炭素分は、組成物全量基準で、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.6質量%以下、更に好ましくは1.8質量%以下である。残留炭素分が上記範囲内であると、内燃機用燃料油組成物の燃焼性能の維持が容易となり、また燃焼不良による煤発生の低減効果が向上するため、エンジンの安定運転がより容易となる。残留炭素分の下限値としては、税法上の観点から、10%残油の残留炭素分として0.2質量%超であることが好ましい。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の残留炭素分は、JIS K 2270−1:2009(原油及び石油製品−残留炭素分の求め方− 第1部:コンラドソン法)に準じて測定することができる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の水分含有率は、組成物全量基準で、好ましくは0.30容量%以下、より好ましくは0.10容量%以下、更に好ましくは0.05容量%以下、特に好ましくは0.01容量%以下である。水分含有率が上記範囲内であると、貯蔵安定性の低下(アスファルテンと水のエマルジョンによるスラッジ生成)を抑制し、スラッジによる閉塞を防止することができるので、より優れた取扱容易性能が得られる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の水分含有率は、JIS K 2275−3:2015(原油及び石油製品−水分の求め方− 第3部:カールフィッシャー式電量滴定方)に準じて測定することができる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の灰分量は、組成物全量基準で、好ましくは0.050質量%以下、より好ましくは0.030質量%以下、更に好ましくは0.010質量%以下である。灰分量が上記範囲内であると、優れたディーゼルエンジンのシリンダー等の摩耗の抑制性能が得られ、エンジンの安定運転が容易となる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の灰分量は、JIS K 2272:1998(原油及び石油製品−灰分及び硫酸灰分試験方法−)に準じて測定することができる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の銅板腐食は、1以下であることが好ましい。銅板腐食が1以下であれば、燃料油タンク、配管、ディーゼルエンジン、及び装備しているポンプ等の補機の腐食を防止でき、エンジンの安定運転が容易となる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の銅板腐食は、JIS K 2513:2000(石油製品−銅板腐食試験法−)に準じて測定することができる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物のアルミニウム含有量は、組成物全量基準で、好ましくは5.0質量ppm以下、より好ましくは3.0質量ppm以下、更に好ましくは2.0質量ppm以下である。アルミニウム含有量が上記範囲内であると、ディーゼルエンジンのシリンダー等の摩耗、ディーゼルエンジンの燃焼室内及び伝熱面へのアルミニウムの付着による伝熱不良が抑制され、エンジンの安定運転がより容易となる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物のアルミニウム含有量は、JPI−5S−62−2011(石油製品−金属分試験方法−)に準じて測定することができる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の潜在セジメントは、好ましくは0.10質量%以下、より好ましくは0.08質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以下である。潜在セジメントが上記範囲内であると、燃料油貯蔵後の燃料油フィルタの通油性が確保され、より優れたろ過性能及び取扱容易性能が得られる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の潜在セジメントは、JPI−5S−60−2000(原油及び石油製品−セジメント試験方法−)に準じて測定することができる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の実在セジメントは、好ましくは0.10質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、更に好ましくは0.03質量%以下である。実在セジメントが上記範囲内であると、燃料油貯蔵後の燃料油フィルタの通油性が確保され、優れたろ過性能及び取扱容易性能が得られる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の実在セジメントは、JPI−5S−60−2000(原油及び石油製品−セジメント試験方法−)に準じて測定することができる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、以下の各種軽油留分、重油留分を基材として含有することができる。
軽油留分としては、例えば、以下の直留軽油留分、減圧軽油留分、脱硫軽油留分、分解軽油留分、脱硫分解軽油留分及び直脱軽油留分が好ましく挙げられる。これらの留分を用いることにより、上記(1)〜(7)、更には(8)〜(16)の性状、組成が得られやすく、またろ過性能、取扱容易性能、環境性能及び燃焼性能を向上させることができる。これと同様の観点から、分解軽油留分、直脱軽油留分がより好ましく、分解軽油留分が更に好ましい。軽油留分としては、以下の留分を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
・直留軽油留分(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる軽油留分)
・減圧軽油留分(常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる軽油留分)
・脱硫軽油留分(直留軽油留分及び/又は減圧軽油留分を脱硫して得られる軽油留分
・分解軽油留分(常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を流動接触分解して得られる軽油留分)
・脱硫分解軽油留分(分解軽油留分を脱硫して得られる軽油留分)
・直脱軽油留分(常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を直接脱硫装置で脱硫処理して得られる軽油留分)
50℃における動粘度は、2.70mm2/s以下が好ましく、2.30mm2/s以下がより好ましく、2.00mm2/s以下が更に好ましい。50℃における動粘度が上記範囲内であると、特に本実施形態の内燃機用燃料油組成物の50℃における動粘度を3.70mm2/s以上9.90mm2/s以下としやすく、より優れたろ過性能及び取扱容易性能が得られ、また適度な潤滑性も得られる。
硫黄分含有量は、0.40質量%以下が好ましく、軽油留分が分解軽油留分の場合は0.30質量%以下が好ましく、また直脱軽油留分の場合は0.02質量%以下であることが好ましい。硫黄分含有量が上記範囲内であると、特に本実施形態の内燃機用燃料油組成物の硫黄分含有量を0.5質量%以下としやすく、より優れた環境性能が得られ、またエンジンのより安定した運転が可能となる。ここで、軽油留分の硫黄分含有量は、JIS K2541−7:2003(原油及び石油製品−硫黄分試験方法− 第7部:波長分散傾向X線法(検量線法))に準じて測定することができる。
また、流動点は、−5.0℃以下が好ましく、−10.0℃以下がより好ましく、−15.0℃以下が更に好ましい。流動点が上記範囲内であると、特に本実施形態の内燃機用燃料油組成物の流動点を5.0℃以下としやすく、より優れた取扱容易性能が得られる。
なお、軽油留分の15℃における密度、50℃における動粘度及び流動点の各性状は、上記本実施形態の内燃機用燃料油組成物における測定方法と同じである。
重油留分としては、例えば、以下のC重油、常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油、直脱重油及び分解重油が好ましく挙げられる。これらの留分を用いることにより、上記(1)〜(7)、更には(8)〜(16)の性状、組成が得られやすく、またろ過性能、取扱容易性能、環境性能及び燃焼性能を向上させることができる。これと同様の観点から、直脱重油、分解重油がより好ましく、直脱重油が更に好ましい。重油留分としては、以下の留分を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
・C重油
・常圧蒸留残渣油(原油を常圧蒸留装置で常圧蒸留して得られる残渣油)
・減圧蒸留残渣油(常圧蒸留残渣油を減圧蒸留装置で減圧蒸留して得られる残渣油)
・直脱重油(常圧蒸留残渣油及び/又は減圧蒸留残渣油を直接脱硫装置で脱硫して得られる重油)
・分解重油(直脱重油を流動接触分解して得られる重油分)
50℃における動粘度は、190mm2/s以下が好ましく、160mm2/s以下がより好ましく、また下限としては30.0mm2/s以上程度であればよい。50℃における動粘度が上記範囲内であると、特に本実施形態の内燃機用燃料油組成物の50℃における動粘度を3.70mm2/s以上9.90mm2/s以下としやすく、より優れた取扱容易性能が得られる。
硫黄分含有量は、1.20質量%以下が好ましく、1.00質量%以下がより好ましく、0.70質量%以下が更に好ましい。硫黄分含有量が上記範囲内であると、特に本実施形態の内燃機用燃料油組成物の硫黄分含有量を0.5質量%以下としやすく、より優れた環境性能が得られる。
また、流動点は、40.0℃以下が好ましく、30.0℃以下がより好ましく、25.0℃以下が更に好ましい。流動点が上記範囲内であると、特に本実施形態の内燃機用燃料油組成物の流動点を5.0℃以下としやすく、より優れた取扱容易性能が得られる。
なお、重油留分の15℃における密度、50℃における動粘度、硫黄分含有量及び流動点の各性状は、上記本実施形態の内燃機用燃料油組成物における測定方法と同じである。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物には、上述の諸性状を維持しうる範囲で、必要に応じ、流動点降下剤、燃焼促進剤、清浄剤、スラッジ分散剤等の各種添加剤を適宜選択して配合することができる。
本実施形態の内燃機用燃料油組成物の製造方法は、直留軽油留分、減圧軽油留分、脱硫軽油留分、分解軽油留分、脱硫分解軽油留分及び直脱軽油留分から選ばれる少なくとも一種の軽油留分と、C重油、常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油、直脱重油及び分解重油から選ばれる少なくとも一種の重油留分と、を混合する、上記(1)〜(7)をいずれも満足する内燃機用燃料油組成物を製造する方法である。本実施形態の内燃機用燃料油組成物は、例えば、上記の本実施形態の内燃機用燃料油組成物の製造方法によって製造することができる。
本実施形態の製造方法において、各軽油留分、各重油留分、及び(1)〜(7)の組成及び性状は、上記内燃機用燃料油組成物について説明したものと同じである。
各実施例及び比較例で用いた基材、及び各実施例及び比較例の燃料油組成物の性状と組成の評価を、以下の方法により行った。
各実施例及び比較例の油組成物について、測定試料を「JIS K2601:1998−原油試験方法− 14.水でい分試験方法 14.2水でい分試験器」(以下、水でい分試験器)で使用される目盛試験管3本に、各々100mLの標線まで採取した。その後、水でい分試験器で使用される遠心分離機((株)コクサン製、型番:H−215−H−8特)を用い、常温(10〜20℃)、相対遠心力600の条件で55分間遠心分離を行った。次に、50mLビーカーを3個用意し、遠心分離をかけた目盛試験管3本の試料の上部50mLを、各50mLビーカーに分取した。分取後のビーカーを0.1mg単位で秤量し、秤量した質量をM1(g)とした。そして、30±1℃に保った恒温槽で、分取した試料を15分間加熱した。
Tn=tn/(M/d) (1)
上記式(1)において、nは測定回数であり、3回以上である。また、Tnはn回目の測定のろ過に要した時間から算出した内燃機用燃料油組成物単位体積当たりのろ過時間(秒/cm3)、tnはn回目の測定のろ過に要した時間(秒)、Mはろ過した内燃機用燃料油組成物の質量(M1−M2)(g)、dは15℃における内燃機用燃料油組成物の密度(g/cm3)である。なお、ろ紙の閉塞によりろ過できなかった場合は、「計算不可」とした。そして、縦軸を内燃機用燃料油組成物単位体積当たりのろ過時間とし、横軸をろ過に要した時間の測定回数としてプロットした点から、最小二乗法で近似直線の傾きを算出し、ろ過時間の傾きを算出した。
(3)総発熱量:JIS K2279:2003に準じて測定し、推定(「6.総発熱量推定方法、6.3 e)1)」に規定されるA重油の場合の計算式により推定)した。
(4)50℃における動粘度:JIS K 2283:2000に準じて測定した。
(5)流動点:JIS K 2269:1987に準じて測定した。
(6)硫黄分含有量:JIS K 2541−4:2003に準じて測定した。
(7)CCAI:ISO 8217−2012のAnnex F記載の計算式より算出した。
(8)反応試験:JIS K 2252:1998による石油製品−反応試験により測定した。
(9)引火点:JIS K 2265−3:2007に準じて測定した。
(10)残留炭素分:JIS K 2270−1:2009に準じて測定した。
(11)水分含有率:JIS K 2275:1996に準じて測定した。
(12)灰分量:JIS K 2272:1998に準じて測定した。
(13)銅板腐食:JIS K 2513:2000に準じて測定した。
(14)アルミニウム含有量:JPI−5S−62−2011に準じて測定した。
(15)潜在セジメント:JPI−5S−60−2000に準じて測定した。
(16)実在セジメント:JPI−5S−60−2000に準じて測定した。
各実施例及び比較例の内燃機用燃料油組成物について、以下の方法に基づき性能評価を行った。
各実施例及び比較例の内燃機用燃料油組成物に対し、ディーゼルエンジンでの使用を想定して内燃機用燃料油組成物を評価するため、ろ過性能評価の前処理として、遠心分離機により前処理を行った。遠心分離処理には、遠心分離機(三菱化工機(株)製、型番:SELFJECTOR MODEL SJ700)を使用し、処理温度を常温(10〜20℃)にし、燃料油流量(実容量)を680L/時間とした。
A;差圧が0.05MPaに達するまでの時間が4時間以上
B;差圧が0.05MPaに達するまでの時間が2時間以上4時間未満
C;差圧が0.05MPaに達するまでの時間が1時間以上2時間未満
D;差圧が0.05MPaに達するまでの時間が1時間未満
各実施例及び比較例の内燃機用燃料油組成物に対し、上記の方法で50℃における動粘度及び流動点を測定した際の50℃における動粘度の基準(a1〜a3)及び流動点の基準(b1〜b3)に基づく、以下の基準により取扱容易性能を評価した。本実施形態においては、C評価以上であれば合格である。
S;a1かつb1を満足した。
A;a1かつb2、又はa2かつb1を満足した。
B;a1かつb3、a2かつb2、又はa3かつb1を満足した。
C;a2かつb3、又はa3かつb2を満足した。
D;上記S〜C以外となった。
なお、50℃における動粘度の基準(a1〜a3)及び流動点の基準(b1〜b3)は以下の通りである。
(50℃における動粘度の基準(a1〜a3))
a1;50℃における動粘度が4.70mm2/s以上7.90mm2/s以下であった。
a2;50℃における動粘度が4.20mm2/s以上4.70mm2/s未満、又は7.90mm2/s超8.90mm2/s以下であった。
a3;50℃における動粘度が3.70mm2/s以上4.20mm2/s未満、又は8.90mm2/s超9.90mm2/s未満であった。
(流動点の基準(b1〜b3))
b1;流動点が0.0℃以下であった。
b2;流動点が0.0℃超2.5℃以下であった。
b3;流動点が2.5℃超5.0℃以下であった。
各実施例及び比較例の内燃機用燃料油組成物に対し、上記の方法で総発熱量を測定し、以下の基準で評価した。本実施形態においては、C評価以上であれば合格である。
A;総発熱量が40,500J/mL以上であった。
B;総発熱量が40,200J/mL以上40,500J/mL未満であった。
C;総発熱量が40,000J/mL以上40,200J/mL未満であった。
D:総発熱量が40,000J/mL未満であった。
各実施例及び比較例の内燃機用燃料油組成物に対し、上記の方法でCCAIを測定し、以下の基準で評価した。本実施形態においては、A評価以上であれば合格である。
S;CCAIが848以下であった。
A;CCAIが848超850以下であった。
B;CCAIが850超であった。
上記ろ過性能、取扱容易性能、環境性能及び燃焼性能の各評価において、最も低い評価を総合評価とした。各評価の性能について、全て合格評価であれば合格とする。
下記表1及び2に示す性状、組成を有する基材(重油留分及び軽油留分)を表3に示す混合比で混合し、表3に示す性状及び組成の内燃機用燃料油組成物を作製した。得られた各内燃機用燃料油組成物について、上記方法による各性能の評価結果を表3に示す。
一方、ろ過時間の傾きが0.28よりも大きい比較例1及び3の燃料油組成物は、ろ過性能が劣るものであることが確認された。また、密度が0.925g/cm3よりも大きく、かつCCAIが850よりも大きい比較例2の燃料油組成物は燃焼性能が劣るものであり、総発熱量が40,000J/mL未満である比較例4及び5の燃料油組成物はいずれも環境性能が劣るものであることが確認された。
11.燃料タンク
12.ポンプ
14.流量計
15.フィルタ
16.差圧計
Claims (3)
- 軽油留分と、重油留分とを含有し、下記(1)〜(7)をいずれも満足する内燃機用燃料油組成物であって、
前記軽油留分が、直留軽油留分、減圧軽油留分、脱硫軽油留分、分解軽油留分、脱硫分解軽油留分及び直脱軽油留分から選ばれる少なくとも一種の軽油留分であり、
当該軽油留分の15℃における密度が0.840g/cm3以上0.925g/cm3以下、50℃における動粘度は2.00mm2/s以下、硫黄分含有量は0.30質量%以下、流動点は−15.0℃以下であり、
前記重油留分が、直脱重油及び分解重油から選ばれる少なくとも一種の重油留分であり、
当該重油留分の15℃における密度が0.900g/cm3以上1.100g/cm3以下、50℃における動粘度は30.0mm2/s以上190mm2/s以下、硫黄分含有量は1.20質量%以下、流動点は30.0℃以下である、内燃機用燃料油組成物。
(1)ろ過時間の傾きが0.28以下
(2)15℃における密度が0.925g/cm3以下
(3)総発熱量が40,000(J/mL)以上
(4)50℃における動粘度が3.7mm2/s以上9.9mm2/s以下
(5)流動点が5.0℃以下
(6)組成物全量基準の硫黄分含有量が0.5質量%以下
(7)CCAIが850以下 - 遠心分離装置を含む前処理装置を有するディーゼルエンジンに用いられる請求項1に記載の内燃機用燃料油組成物。
- 直留軽油留分、減圧軽油留分、脱硫軽油留分、分解軽油留分、脱硫分解軽油留分及び直脱軽油留分から選ばれる少なくとも一種の軽油留分と、
直脱重油及び分解重油から選ばれる少なくとも一種の重油留分と、
を混合する、下記(1)〜(7)をいずれも満足する内燃機用燃料油組成物の製造方法であって、
前記少なくとも一種の軽油留分の15℃における密度が0.840g/cm3以上0.925g/cm3以下、50℃における動粘度は2.00mm2/s以下、硫黄分含有量は0.30質量%以下、流動点は−15.0℃以下であり、
前記少なくとも一種の重油留分の15℃における密度が0.900g/cm3以上1.100g/cm3以下、50℃における動粘度は30.0mm2/s以上190mm2/s以下、硫黄分含有量は1.20質量%以下、流動点は30.0℃以下である、内燃機用燃料油組成物の製造方法。
(1)ろ過時間の傾きが0.28以下
(2)15℃における密度が0.925g/cm3以下
(3)総発熱量が40,000(J/mL)以上
(4)50℃における動粘度が3.7mm2/s以上9.9mm2/s以下
(5)流動点が5℃以下
(6)組成物全量基準の硫黄分含有量が0.5質量%以下
(7)CCAIが850以下
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