JP2009235300A - 軽油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】硫黄分10質量ppm以下の低硫黄軽油において、JIS2号軽油を使用するのが望ましい地域、月において、低温におけるワックス析出量が比較的多い軽油組成物であっても、低温でのフィルター閉塞を起こさないとともに、実用性能や排出ガス浄化性能を満足する軽油組成物を提供すること。
【解決手段】原油等から精製された水素化精製灯軽油留分と飽和炭化水素を主構成成分とする基材との混合油に、低温流動性向上剤を10mg/L以上1000mg/L以下添加して製造される、密度が750kg/m以上850kg/m以下、90%留出温度が360℃以下、引火点が45℃以上、セタン価が50以上、目詰まり点が−5℃以下、(曇り点−目詰まり点)の値が+5℃以上、硫黄分が10質量ppm以下、であることを特徴とする軽油組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は軽油組成物に関し、詳しくは冬季において好適に使用される軽油組成物に関する。
従来、軽油の基材としては、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油、原油の常圧蒸留により得られる直留灯油などに、水素化精製処理や水素化脱硫処理を施したものが知られている。また、これらの軽油基材には、必要に応じてセタン価向上剤、清浄剤などの添加剤が配合される。
近年、環境的見地から、ディーゼル自動車においては排出ガス中のPM(粒子状物質)、NOx(窒素酸化物)、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)といった環境汚染物質の排出量の大幅な低減が求められている。このために、エンジンの改良、燃料噴射制御の精密化とともに、酸化触媒、NOx還元触媒、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)等の後処理装置の採用等によるディーゼル自動車の排出ガスのクリーン化が進められている(例えば、非特許文献1参照。)。一方、これらの後処理装置の能力を効果的に発揮し、かつ耐久性を維持するため、軽油には硫黄分の一層の低減が求められている(例えば、非特許文献2参照。)。
松尾繁,ディーゼルエンジンの現状と将来,「自動車技術」,2003年,No.57(1),p.41―46, 「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について,環境省中央環境審議会大気環境部会,第七次答申」,2003年
軽油の低硫黄化を行う場合、脱硫触媒の寿命を確保するためには、直留軽油基材の軽質ナロー化が有効である。しかしながらこの基材の軽質ナロー化により、降温時のワックス析出率が増大する。すなわち、温度を下げていった場合に一気にワックスが析出してくるようになる。
また、直留軽油を低硫黄化するためには、一般に高度の水素化精製処理が必要であるが、基材の水素化が進むと、低温流動性は悪化する方向となる。
さらに、低硫黄軽油を製造するためには、比較的硫黄分の高い分解系基材(マイルドハイドロクラッキング装置から得られる軽油留分(MHC−GO)等)の配合が制限されることになる。一般に分解系基材は低温流動性に優れるため、低硫黄化のために軽油への分解系基材の配合量が制限されると、低温流動性は悪化するおそれがある。
ディーゼル自動車においては、後処理装置の機能をより発揮させるため燃料噴射系制御の高精度化が進められている。噴射系が精密になると、燃料中のより細かいゴミを取り除くことが必要となるため、目の細かいフィルターが設けられることになる。このような目の細かいフィルターは、低温時に軽油から析出するワックス分による閉塞を起こし易い。
また、こうした精密な噴射制御を行うディーゼル自動車では、排出ガス対策のために燃料噴射圧の高圧化が図られている。燃料噴射圧の高圧化に伴い、フィルターを通過する燃料量が増加する。その際、燃料タンク内でワックスが凝集沈降していると、フィルターへ供給される燃料中のワックス濃度は高くなり、低温時に軽油から析出するワックス分によるフィルター閉塞を起こし易くなる。
したがって、低硫黄軽油と、後処理装置を搭載してより精密な噴射制御を行うディーゼル自動車との組み合わせにおける低温でのフィルター閉塞防止には、低温での軽油中のワックス量と燃料タンク内でのワックス凝集沈降状態を制御する必要がある。
JIS K2204「軽油」では、軽油を低温流動性等に基づいて特1号、1号、2号、3号、特3号の5つのグレードに分類しており、その解説に参考として地域別、季節別の使用ガイドラインを設けている。このガイドラインでは、地域別、月別の最低気温が−10℃の場合には、2号軽油を使用するのが望ましいとしている。しかしながら、低硫黄軽油と、後処理装置を搭載してより精密な噴射制御を行うディーゼル自動車との組み合わせにおいては、JISの2号軽油の規格を満足していても、最低気温が−10℃の場合にフィルター閉塞を起こす懸念がある。
本発明は、特に硫黄分10質量ppm以下の低硫黄軽油において、特にJISのガイドラインの2号軽油を使用するのが望ましい地域、月において、低温におけるワックス析出量が比較的多い軽油組成物であっても、低温でのフィルター閉塞を起こさないとともに、実用性能や排出ガス浄化性能を満足する軽油組成物を提供するものである。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、原油等から精製された水素化精製灯軽油留分と飽和炭化水素を主構成成分とする基材との混合油に、低温流動性向上剤を10mg/L以上1000mg/L以下添加して製造される、密度が750kg/m以上850kg/m以下、90%留出温度が360℃以下、引火点が45℃以上、セタン価が50以上、目詰まり点が−5℃以下、(曇り点−目詰まり点)の値が+5℃以上、硫黄分が10質量ppm以下であることを特徴とする軽油組成物に関するものである。
また本発明は、前記の飽和炭化水素を主構成成分とする基材中の構成炭化水素中における炭素数16〜30までの総パラフィン量に対するイソパラフィン量の割合(イソパラフィン量/総パラフィン量)が0.20以上0.80以下であることを特徴とする前記の軽油組成物に関するものである。
本発明によれば、飽和炭化水素を主構成成分とする基材を使用した場合でも、低温流動性に優れ、冬季において好適に使用可能な軽油組成物が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の軽油組成物の構成成分としては、原油等から精製された水素化精製灯軽油留分と、飽和炭化水素を主構成成分とする基材が用いられる。
本発明における原油等から精製された水素化精製灯軽油留分としては、以下の石油系軽油基材および石油系灯油基材が挙げられる。
本発明において使用される石油系軽油基材としては、具体的には例えば、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油、常圧蒸留装置から得られる直留重質油や残査油を減圧蒸留装置にかけて得られる減圧軽油を水素化精製して得られる水素化精製軽油;直留軽油を又は減圧軽油を通常の水素化精製より苛酷な条件で一段階又は多段階で水素化脱硫して得られる水素化脱硫軽油;上記の種々の軽油基材を水素化分解して得られる水素化分解軽油などが挙げられる。
また、石油系灯油基材としては、具体的には例えば、原油の常圧蒸留装置から得られる直留灯油、常圧蒸留装置から得られる直留重質油や残査油を減圧蒸留装置にかけて得られる減圧軽油を水素化精製して得られる水素化精製灯油;直留灯油を又は減圧軽油を通常の水素化精製より苛酷な条件で一段階又は多段階で水素化脱硫して得られる水素化脱硫灯油;上記の種々の灯油基材を水素化分解して得られる水素化分解灯油などが挙げられる。
なお、本発明において、これらの石油系軽油基材又は石油系灯油基材を製造する際の各種処理条件は適宜選定することができる。例えば、水素化脱硫の際の水素分圧は、1MPa以上が好ましく、3MPa以上がより好ましく、5MPa以上が特に好ましい。また、水素分圧の上限は特に制限されないが、反応器の耐圧力性の観点から、10MPa以下が好ましい。また、水素化脱硫の際の反応温度は、300℃以上が好ましく、320℃以上がより好ましく、340℃以上が特に好ましい。また、反応温度の上限は特に制限されないが、反応器の耐熱性の観点から、400℃以下が好ましい。また、水素化脱硫の際の液空間速度は、6h−1以下が好ましく、4h−1以下がより好ましく、2h−1以下が特に好ましい。また、液空間速度の下限は特に制限されないが、偏流の観点から、0.1h−1以上が好ましい。また、上記水素化脱硫に使用される触媒としては、特に限定されるものではないが、Ni、Co、Mo、Wなどの金属を2〜3種類組み合わせて用いるものを挙げることができる。具体的には、Co−Mo系、Ni−Mo系、Ni−Co−Mo系、Ni−W系等の触媒を好ましく用いることができ、中でも汎用性の点から、Co−Mo系、Ni−Mo系の触媒がより好ましい。
本発明で使用される飽和炭化水素を主構成成分とする基材としては、合成系軽油基材、合成系灯油基材、動植物油脂水素化処理油などが挙げられる。
本発明において、合成系軽油基材とは、天然ガス、アスファルト分、石炭等を原料とし、これを化学合成させることで得られる軽油基材をいう。化学合成方法としては間接液化法、直接液化法などがあり、代表的な合成手法として、フィッシャー・トロプシュ合成法が挙げられるが、本発明で使用する合成系軽油基材はこれらの製造方法により限定されるものではない。合成系軽油基材は一般に飽和炭化水素類が主成分であり、詳しくはノルマルパラフィン類、イソパラフィン類から構成される。
また本発明において、合成系灯油基材とは、天然ガス、アスファルト分、石炭等を原料とし、これを化学合成させることで得られる灯油基材をいう。化学合成方法としては間接液化法、直接液化法などがあり、代表的な合成手法として、フィッシャー・トロプシュ合成法が挙げられるが、本発明で使用する合成系灯油基材はこれらの製造方法により限定されるものではない。
また本発明において、動植物油脂水素化処理油とは、水素の存在下、動植物油脂および/または動植物油脂由来成分を硫化物系触媒や貴金属系触媒を用いて特定条件下で水素化処理を行った油である。動物油脂および動物油の原料としては、牛脂、牛乳脂質(バター)、豚脂、羊脂、鯨油、魚油、肝油等が挙げられ、植物油脂および植物油原料としては、ココヤシ、パームヤシ、オリーブ、べにばな、菜種(菜の花)、米ぬか、ひまわり、綿実、とうもろこし、大豆、ごま、アマニ等の種子部及びその他の部分が挙げられる。水素化処理条件としては、水素圧力が2〜13MPa、液空間速度が0.1〜3.0h−1、水素/油比が150〜1500NL/Lである条件下で行われることが望ましく、水素圧力が3〜12MPa、液空間速度が0.2〜2.0h−1、水素/油比が200〜1200NL/Lである条件がより望ましく、水素圧力が4〜10.5MPa、液空間速度が0.25〜1.0h−1、水素/油比が300〜1000NL/Lである条件がさらにより望ましい。水素化処理触媒としては、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、ホウ素、チタン及びマグネシウムから選ばれる元素を2種以上含んで構成される多孔性無機酸化物並びに該多孔性無機酸化物に担持された周期律表第6A族及び第8族の元素から選ばれる金属を1種以上含有する硫化物触媒や、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、ホウ素、チタン、マグネシウム及びゼオライトから選ばれる物質より構成される多孔性の無機酸化物並びに該多孔性無機酸化物に担持された周期律表第8族の元素から選ばれる金属を1種以上含有する触媒などが用いられる。
前記飽和炭化水素を主構成成分とする基材中の構成炭化水素中における炭素数16〜30までの総パラフィン量に対するイソパラフィン量の割合(イソパラフィン量/総パラフィン量)は、0.20以上0.80以下であることが好ましい。当該割合は、0.30以上0.75以下であることがより好ましく、0.40以上0.70以下であることがさらに好ましい。イソパラフィン量の割合が0.20未満では、ノルマルパラフィン量が多いために流動性向上剤の核剤が共結晶化することができず、流動性向上剤による析出ワックスの微細化が困難となるため、好ましくなく、イソパラフィン量の割合が0.80を超えると基材としてのセタン価が低下してしまうために製品軽油としての燃焼性が低下し、やはり好ましくない。
本発明において、前記の水素化精製灯軽油留分と飽和炭化水素を主構成成分とする基材の混合割合は特に限定されるものではないが、飽和炭化水素を主構成成分とする基材が、好ましくは5〜95容量%、より好ましくは10〜80容量%、さらに好ましくは20〜70容量%であり、原油等から精製された水素化精製灯軽油留分が、好ましくは95〜5容量%、より好ましくは90〜15容量%、さらに好ましくは80〜30容量%である。上記の範囲から外れる混合割合では、軽油製品化時の好適なセタン価と低温性能、またその他の性状範囲を確保することが困難となる。
上記の混合油には、低温性能を向上させるために低温流動性向上剤が配合される。低温流動性向上剤の種類は特に限定されないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体に代表されるエチレン−不飽和エステル共重合体、アルケニルコハク酸アミド、ポリエチレングリコールのジベヘン酸エステルなどの線状の化合物、アルキルフマレートまたはアルキルイタコネート−不飽和エステル共重合体などからなるくし形ポリマーなどの低温流動性向上剤、フタル酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ酢酸などの酸またはその酸無水物などとヒドロカルビル置換アミンなどとの反応生成物などからなる極性窒素化合物を含有する低温流動性向上剤などを挙げることができ、これらの化合物の1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。この中でも汎用性の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体系添加剤、極性窒素化合物を含有する低温流動性向上剤が好ましく使用することができ、ワックス結晶微細化促進および、ワックスの凝集沈降を防止する点で、極性窒素化合物を含有する低温流動性向上剤の使用がさらに好ましい。
低温流動性向上剤の含有量は、組成物全量を基準として、10〜1000mg/Lであり、好ましくは50〜500mg/L、より好ましくは100〜300mg/Lである。低温流動性向上剤の含有量が前記下限値未満であると、その添加による低温流動性向上効果が不十分となる傾向にある。また、低温流動性向上剤の含有量が前記上限値を超えても、含有量に見合う低温流動性の更なる向上効果は得られない。
本発明の軽油組成物の15℃における密度は、発熱量確保の点から、750kg/m以上であることが好ましく、760kg/m以上がより好ましく、770kg/m以上がさらに好ましい。また、当該密度は、NOx、PMの排出量を低減する点から、850kg/m以下であることが好ましく、845kg/m以下がより好ましく、840kg/m以下がさらに好ましい。なお、ここでいう密度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を意味する。
本発明の軽油組成物の蒸留性状としては、90%留出温度が360℃以下であることが好ましく、より好ましくは340℃以下、更に好ましくは330℃以下である。90%留出温度が前記上限値を超えると、PMや微小粒子の排出量が増加する傾向にある。また、90%留出温度は、好ましくは280℃以上、より好ましくは285℃以上、さらに好ましくは290℃以上、最も好ましくは295℃以上である。90%留出温度が前記下限値に満たないと、燃費向上効果が不十分となり、エンジン出力が低下する傾向にある。
本発明の軽油組成物の引火点は、45℃以上であることが好ましい。引火点が45℃に満たない場合には、安全上の理由により軽油組成物として取り扱うことができない。同様の理由により、引火点は54℃以上であることが好ましく、58℃以上であることがより好ましい。なお、本発明でいう引火点はJIS K 2265「原油及び石油製品引火点
試験方法」で測定される値を示す。
本発明の軽油組成物のセタン価は、50以上であることが好ましく、より好ましくは52以上、更に好ましくは55以上である。セタン価が50に満たない場合には、排出ガス中のNOx、PM及びアルデヒド類の濃度が高くなりやすい。また、排ガス中の黒煙低減の観点から、セタン価は90以下であることが好ましく、88以下であることがより好ましく、85以下であることがさらに好ましい。また本発明の軽油組成物においては、必要に応じてセタン価向上剤を適量配合し、得られる軽油組成物のセタン価を向上させることができる。なお、ここでいうセタン価とは、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「7.セタン価試験方法」に準拠して測定されるセタン価を意味する。
本発明の軽油組成物の目詰まり点(CFPP)は、JIS2号軽油規格である−5℃以下であることが好ましい。さらに、ディーゼル車のプレフィルタ閉塞防止の点から、−6℃以下であることが好ましく、−7℃以下であることがより好ましい。ここで目詰まり点とはJIS K 2288「軽油−目詰まり点試験方法」により測定される目詰まり点を指す。
本発明の軽油組成物の(曇り点−目詰まり点)の値が+5℃以上であることが好ましく、より好ましくは+6℃以上、さらに好ましくは+7℃以上である。(曇り点−目詰まり点)の値が小さい場合、目詰まり点を下げる為に多量の灯油留分を混合する必要がある。灯油留分の混合量が増えると、製品の密度、動粘度が低下し、軽油のJIS規格に抵触する可能性があるとともに、実車性能への悪影響も考えられる。また、灯油留分は冬季には需要が逼迫する為、軽油への灯油留分の混合量を減らせることは、製品化のうえでコストダウンにも繋がる。なお、ここでいう曇り点とは、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」により測定される曇り点を意味する。
本発明の軽油組成物の硫黄分は、エンジンから排出される有害排気成分低減と排ガス後処理装置の性能向上の点から10質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは7質量ppm以下、さらに好ましくは5質量ppm以下、さらにより好ましくは3質量ppm以下、最も好ましくは1質量ppm以下である。なお、ここでいう硫黄分とは、JIS K2541「硫黄分試験方法」により測定される軽油組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を意味する。
また、本発明の軽油組成物は、潤滑性向上剤を更に含有することができる。潤滑性向上剤としては、エステル系、カルボン酸系、アルコール系、フェノール系、アミン系等の潤滑性向上剤の1種または2種以上を使用することができる。この中でも、汎用性の観点から、エステル系、カルボン酸系の潤滑性向上剤の使用が好ましい。さらに添加濃度に対する添加効果が飽和に達しにくく、HFRRのWS1.4値をより小さくできる点からはエステル系潤滑性向上剤が好ましく、添加濃度に対する添加効果の初期応答性が高く、潤滑性向上剤の添加量を少なくできる可能性があるという点からはカルボン酸系潤滑性向上剤が好ましい。
エステル系の潤滑性向上剤としては、例えば、グリセリンのカルボン酸エステル等を挙げることができ、具体的には、リノール酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸等のグリセリンエステルを挙げることができ、これらの1種または2種以上を適宜使用することができる。
潤滑性向上剤の含有量は、組成物全量を基準として、好ましくは25〜500mg/L、より好ましくは25〜300mg/L、更に好ましくは25〜200mg/Lである。潤滑性向上剤の含有量が前記下限値未満であると、その添加による潤滑性向上効果が不十分となる傾向にある。また、潤滑性向上剤の含有量が前記上限値を超えても、含有量に見合う低温流動性の更なる向上効果は得られない。
また、本発明の軽油組成物は、上記の低温流動性向上剤又は潤滑性向上剤以外の添加剤を更に含有してもよい。かかる添加剤としては、アルケニルコハク酸誘導体、カルボン酸のアミン塩等の清浄剤、フェノール系、アミン系等の酸化防止剤、サリチリデン誘導体等の金属不活性化剤、ポリグリコールエーテル等の氷結防止剤、脂肪族アミン、アルケニルコハク酸エステル等の腐食防止剤、アニオン系、カチオン系、両性系界面活性剤等の帯電防止剤、アゾ染料等の着色剤、シリコン系等の消泡剤などを挙げることができる。これらの他の添加剤は、単独または数種類を組み合わせて添加することができる。添加量も適宜選択することができるが、その他の添加剤全量で、軽油組成物に対して、例えば、0.5質量%以下とすることができ、好ましくは0.2質量%以下である。なお、ここでいう添加量全量とは、添加剤の有効成分としての添加量を意味している。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1〜2および比較例1〜3)
表1に示す基材を調合して表2に示す各種軽油組成物を得た。
調合した軽油組成物の調合比率、及びこの調合した軽油組成物に対して、15℃における密度、蒸留性状、引火点、硫黄分、酸素分、曇り点、目詰まり点、(曇り点−目詰まり点)、蒸留性状、セタン価の測定結果を表2に示す。
なお、燃料油の性状は以下の方法により測定した。
密度は、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を指す。
引火点は、JIS K 2265「原油及び石油製品引火点試験方法」で測定される値を示す。
硫黄分は、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される軽油組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を指す。
酸素分は、元素分析法により測定した。
曇り点は、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」により測定される曇り点を意味する。
目詰まり点は、JIS K 2288「軽油−目詰まり点試験方法」により測定される目詰まり点を指す。
蒸留性状は、全てJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」によって測定される値である。
全酸価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」により測定される全酸価を意味する。
セタン価は、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「7.セタン価試験方法」に準拠して測定されるセタン価を意味する。
表2から明らかなように、原油等を精製して得られる水素化精製油と飽和炭化水素を主構成成分とする基材とを混合し、かつ低温流動性向上剤を、それぞれ本発明で規定される範囲内で配合した実施例1、2においては、90%留出温度が360℃以下、引火点45℃以上、セタン価が50以上、目詰まり点−5℃以下、(曇り点−目詰まり点)の値が+5℃以上、硫黄分が10質量ppm以下の軽油組成物を容易にかつ確実に得ることができた。
一方、上記特定の環境低負荷型軽油基材を用いずに軽油組成物を調製した比較例1〜3においては、本発明の目的とする軽油組成物は必ずしも得られない。
次に、実施例1〜2及び比較例1〜3の各軽油組成物について、以下の実車試験を実施した。
[低温実車走行試験]
環境温度の制御が可能なシャーシダイナモメータ上で、下記のA、Bの2台のディーゼル自動車を用いて低温実車試験を実施した。
(車両A諸元)
最大積載量:2t
エンジンの種類:直列4気筒ディーゼル
エンジンの総排気量:4.3L
燃料噴射ポンプ:列型
適合規格:短期排出ガス規制適合(ベース車両)
排出ガス後処理装置:東京都指定のPM減少装置(カテゴリー4適合)
PM減少装置の使用燃料:低硫黄軽油(硫黄分50質量ppm以下)
(車両B諸元)
エンジンの種類:インタークーラー付き過給直列4気筒ディーゼル
エンジンの総排気量:3.0L
燃料噴射システム:コモンレール方式
適合規格:長期排出ガス規制適合
排出ガス後処理装置:酸化触媒
低温実車走行試験においては、まず、室温下、ディーゼル自動車の燃料系統を評価燃料(各軽油組成物)でフラッシングした。フラッシング燃料を抜き出し、メインフィルターを新品に交換した後、燃料タンクに評価燃料の規定量(供試車両の燃料タンクの容量の1/2)の張り込みを行った。その後、環境温度を室温から5℃まで急冷し、5℃で1時間保持した後、1℃/hの冷却速度で−10℃に達するまで徐冷し、−10℃で1時間保持した後で走行試験を開始した。走行試験は、「エンジン始動」、「5分間アイドリング」、「50km/hまで加速」及び「50km/hで1時間走行」で構成され、その巻の運転状況により合否を判定した。具体的には、エンジン始動、アイドリング及び加速に問題がなく、前走行にわたって50km/hでの走行が維持できた場合を良(◎)とした。また、一回目のクランキングではエンジンが始動できなかった場合、並びに走行中一時的に車速が低下したがその後回復した場合など、軽微の不具合を生じたが、走行が継続できた場合を可(○)とした。また、始動不可(10秒間のクランキングを30秒間隔で5回繰り返しても始動しない)、アイドリングストール、エンジン停止などにより走行維持ができなかった場合を不可(×)とした。
[低温始動性試験]
低温時の始動性は、社団法人石油学会製品部会燃料油分科会「ディーゼル車の燃料供給システム調査専門委員会」で検討、提示された「低温シャシによるディーゼル車のフィルタ閉塞性試験マニュアル」に準拠して行った。試験車両には前記ディーゼルエンジン搭載車両1を用い、室温から0℃まで急冷して1時間保持し、−10℃まで1℃/hで徐冷した後、試験法の手順に従い始動性の確認を行った。正常に始動した場合を合格(○)、始動しなかった場合を不合格(×)とした。
得られた結果を表3に示す。
表3から明らかなように、実施例1、2においては良好な実車性能が得られるが、比較例においては必ずしも良好な実車性能は得られない。
Figure 2009235300
Figure 2009235300
Figure 2009235300

Claims (2)

  1. 原油等から精製された水素化精製灯軽油留分と飽和炭化水素を主構成成分とする基材との混合油に、低温流動性向上剤を10mg/L以上1000mg/L以下添加して製造される、密度が750kg/m以上850kg/m以下、90%留出温度が360℃以下、引火点が45℃以上、セタン価が50以上、目詰まり点が−5℃以下、(曇り点−目詰まり点)の値が+5℃以上、硫黄分が10質量ppm以下、であることを特徴とする軽油組成物。
  2. 前記の飽和炭化水素を主構成成分とする基材中の構成炭化水素中における炭素数16〜30までの総パラフィン量に対するイソパラフィン量の割合(イソパラフィン量/総パラフィン量)が0.20以上0.80以下であることを特徴とする請求項1に記載の軽油組成物。


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