JP5154813B2 - 燃料油組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料油組成物に関し、特にディーゼル自動車用の燃料に用いる軽油組成物に関するものであり、冬季において好適に使用される軽油組成物に関する。
従来、軽油の基材としては、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油、原油の常圧蒸留により得られる直留灯油などに、水素化精製処理や水素化脱硫処理を施したものが知られている。また、これらの軽油基材には、必要に応じてセタン価向上剤、清浄剤などの添加剤が配合される。
近年、環境的見地から、ディーゼル自動車においては排出ガス中のPM(粒子状物質)、NOx(窒素酸化物)、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)といった環境汚染物質の排出量の大幅な低減が求められている。このために、エンジンの改良、燃料噴射制御の精密化とともに、酸化触媒、NOx還元触媒、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)等の後処理装置の採用等によるディーゼル自動車の排出ガスのクリーン化が進められている(例えば、非特許文献1参照。)。一方、これらの後処理装置の能力を効果的に発揮し、かつ耐久を維持するため、軽油には硫黄分の一層の低減が求められている(例えば、非特許文献2参照。)。
松尾繁著,「ディーゼルエンジンの現状と将来」,自動車技術,2003年,No.57(1),p.41―46, 「今後の自動車排出ガス低減対策のあり方について」,環境省中央環境審議会大気環境部会,第七次答申,2003年
軽油の低硫黄化を行う場合、脱硫触媒の寿命を確保するためには、直留軽油基材の軽質化、並びに留分範囲を限定する軽質ナロー化が有効である。しかしながらこの基材の軽質ナロー化により、降温時のワックス析出率が増大する。すなわち、温度を下げていった場合に一気にワックスが析出してくるようになる。
また、直留軽油を低硫黄化するためには、一般に高度の水素化精製処理が必要であるが、基材の水素化が進むと、低温流動性は悪化する方向となる。
さらに、低硫黄軽油を製造するためには、比較的硫黄分の高い分解系基材(マイルドハイドロクラッキング装置から得られる軽油留分(MHC−GO)等)の配合が制限されることになる。一般に分解系基材は低温流動性に優れるため、低硫黄化のために軽油への分解系基材の配合量が制限されると、低温流動性は悪化するおそれがある。
ディーゼル自動車においては、後処理装置の機能をより発揮させるため燃料噴射系制御の高精度化が進められている。噴射系が精密になると、燃料中のより細かいゴミを取り除くことが必要となるため、目の細かいフィルターが設けられることになる。このような目の細かいフィルターは、低温時に軽油から析出するワックス分による閉塞を起こし易い。
また、こうした精密な噴射制御を行うディーゼル自動車では、排出ガス対策のために燃料噴射圧の高圧化が図られている。燃料噴射圧の高圧化に伴い、フィルターを通過する燃料速度が増加する。その際、燃料タンク内でワックスが凝集沈降していると、フィルターへ供給される燃料中のワックス濃度は高くなり、低温時に軽油から析出するワックス分によるフィルター閉塞を起こし易くなる。
したがって、低硫黄軽油と、後処理装置を搭載してより精密な噴射制御を行うディーゼル自動車との組み合わせにおける低温でのフィルター閉塞防止には、低温での軽油中のワックス量と燃料タンク内でのワックス凝集沈降状態を制御する必要がある。
JIS K2204「軽油」では、軽油を低温流動性等に基づいて特1号、1号、2号、3号、特3号の5つのグレードに分類しており、その解説に参考として地域別、季節別の使用ガイドラインを設けている。このガイドラインでは、地域別、月別の最低気温が−10℃の場合には、2号軽油を使用するのが望ましいとしている。しかしながら、低硫黄軽油と、後処理装置を搭載してより精密な噴射制御を行うディーゼル自動車との組み合わせにおいては、JISの2号軽油の規格を満足していても、最低気温が−10℃の場合にフィルター閉塞を起こす懸念がある。
一方、ディーゼル自動車が移動体であること、軽油が製造されてからディーゼル自動車に給油され使い切るまでに一般にある程度の期間を有することから、軽油はそれが使用される最低気温における低温流動性を備えていると同時に、それが使用されうるより温度の高い環境下においても実用性能上問題なく使用できることが要求される。
本発明は、特に硫黄分10質量ppm以下の低硫黄軽油において、特にJISのガイドラインの2号軽油を使用するのが望ましい地域、月において、低温におけるワックス析出量が比較的多い燃料油組成物であっても、低温でのフィルター閉塞を起こさないとともに、実用性能や排出ガス浄化性能を満足する燃料油組成物を提供するものである。
本発明者らは、上記目的を達成するために、先ず、ガスクロマトグラフ・飛行時間質量分析計(以下、「GC−TOFMS」と略す。)を用いて軽油の組成を分析し、その組成が低温流動性に及ぼす影響について検討した。その結果、特定の炭素数の範囲においてノルマルパラフィン量および1分岐のイソパラフィン量が特定条件を満たすようにすることによって、燃料油組成物の低温流動性を飛躍的に向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、炭素数21〜30の範囲において、軽油組成物中のノルマルパラフィン量をA(質量%)、1分岐のイソパラフィン量をB(質量%)、芳香族量をC(質量%)としたとき、式1で表す定温性指標Xが−12.6以上−10.1以下であり、芳香族分含有量が6容量%以上25容量%以下、ナフテン分含有量が60質量%以下であることを特徴とする軽油組成物に関する。
X=(3×A+B)×(100−C)÷100−30 (式1)
また、本発明は、硫黄含有量が10質量ppm以下、HFRRのWSD1.4が460μm以下、目詰まり点が−5℃以下、曇り点が0℃以下であることを特徴とする前記記載の軽油組成物に関する。
また、本発明は、引火点が50℃以上、蒸留性状90%留出温度が350℃以下、動粘度(30℃)が2.5mm/s以上、セタン指数45以上、密度が750kg/m以上850kg/m以下、低温流動性向上剤添加量が50mg/L以上500mg/L以下であることを特徴とする前記記載の軽油組成物に関する。
このように、炭素数21〜30の範囲において、ノルマルパラフィン量および1分岐のイソパラフィン量が上記特定の条件を満たすようにすることで、低温流動性を飛躍的に改善することができ、その結果、冬季において好適に使用可能な燃料油組成物を実現することが可能となる。
以上の通り、本発明によれば、低温流動性に優れ、冬季において好適に使用可能な燃料油組成物が提供される。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明の軽油組成物は、炭素数21〜30の範囲において、軽油組成物中のノルマルパラフィン量をA(質量%)、1分岐のイソパラフィン量をB(質量%)、芳香族量をC(質量%)としたとき、式1で表す定温性指標Xが−12.6以上−10.1以下であり、芳香族分含有量が6容量%以上25容量%以下、ナフテン分含有量が60質量%以下であることを特徴とする。
X=(3×A+B)×(100−C)÷100−30 (式1)
ここで、各炭素数におけるノルマルパラフィン量および1分岐のイソパラフィン量は、上述の通りGC−TOFMSを用いて得ることができる。GC−TOFMSにおいては、先ず、試料の構成成分をガスクロマトグラフィーにより分離し、分離された各成分をイオン化する。次いで、イオンに一定の加速電圧を与えたときの飛行速度がイオンの質量によって異なることに基づき、イオンを質量分離し、イオン検出器への到達時間の違いに基づいて質量スペクトルを得る。なお、GC−TOFMSにおけるイオン化法としては、フラグメントイオンの生成を抑制し、ノルマルパラフィン量および1分岐のイソパラフィン量の測定精度をより向上させることができることから、FIイオン化法が好ましい。本発明における測定装置及び測定条件を以下に示す。
(GC部)
装置:HEWLETT PACKARD社製、HP6890 Series GC System & Injector
カラム:Aglient HP-5(30m×0.32mmφ、0.25μm−film)
キャリアガス:He、1.4mL/分(一定流量)
注入口温度:320℃
注入モード:スプリット(スプリット比=1:100)
オーブン温度:50℃にて5分間保持し、5℃/分で昇温し、320℃にて6分間保持する。
注入量:1μL
(TOFMS部)
装置:日本電子社製、JMS−T100GC
対抗電極電圧:10.0kV
イオン化法:FI+(電界イオン化)
GCインターフェース温度:250℃
測定質量範囲:35〜500
そして、上記の測定データに基づき、炭素数が同一である成分ごとに、ノルマルパラフィン量および1分岐のイソパラフィン量を求めることによって、特定の炭素数の範囲におけるノルマルパラフィン量および1分岐のイソパラフィン量を得ることができる。なお、当該パラフィン量は質量スペクトルから直接求めてもよいが、質量スペクトルデータに基づいて、炭素数が同一である成分ごとにガスクロマトグラフィーのリテンションタイムと強度との相関を示すグラフを作成し、そのグラフにおける各成分のピーク面積比からパラフィン量を求めてもよい。
なお、従来の軽油の開発においては、ノルマルパラフィンとイソパラフィンとの比を指標とするに留まっており、イソパラフィンの分岐数に着目してその組成を検討した例はほとんどない。このような従来の技術水準からみて、本発明の燃料油組成物は、軽油低温流動性の指標としてノルマルパラフィン量および1分岐のイソパラフィン量が好適であり、当該パラフィン量を測定する手法としてGC−TOFMSが有用であるという本発明者らの知見に基づいて初めてなされたものである。
本発明の燃料油組成物の芳香族分含有量に関して特に制約はないが、PM等の生成抑制の点から、25容量%以下であることが好ましく、20容量%以下であることがより好ましい。なお、ここでいう芳香族分含有量は、社団法人石油学会により発行されている石油学会誌JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠され測定された、芳香族分含有量の容量百分率(容量%)を意味する。
本発明の燃料油組成物のナフテン分含有量に関して特に制約はないが、PM等の生成抑制の点から、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下がより好ましい。なお、ここでいうナフテン分含有量は、ASTM D2425「 Standard Test Method for Hydrocarbon Types in Middle Distillates by Mass Spectrometry」に準拠して測定されるナフテン分の質量百分率(質量%)を意味する。
本発明の燃料油組成物を構成する基材は、燃料油組成物が上記条件を満たす限りにおいて特に制限されず、石油系軽油基材、石油系灯油基材、合成系軽油基材、合成系灯油基材及び動植物油脂および/または動物油脂由来の基材のうちの1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、2種以上の基材を組み合わせて用いる場合、各基材が単独で上記条件を満たす必要はなく、それらを混合した後の燃料油組成物が上記条件を満たせばよい。
本発明において使用される石油系軽油基材としては、具体的には例えば、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油;常圧蒸留装置から得られる直留重質油や残査油を減圧蒸留装置にかけて得られる減圧軽油;直留軽油又は減圧軽油を水素化精製して得られる水素化精製軽油;直留軽油を又は減圧軽油を通常の水素化精製より苛酷な条件で一段階又は多段階で水素化脱硫して得られる水素化脱硫軽油;上記の種々の軽油基材を水素化分解して得られる水素化分解軽油などが挙げられる。
また、石油系灯油基材としては、具体的には例えば、原油の常圧蒸留装置から得られる直留灯油;常圧蒸留装置から得られる直留重質油や残査油を減圧蒸留装置にかけて得られる減圧灯油;直留灯油又は減圧灯油を水素化精製して得られる水素化精製灯油;直留灯油を又は減圧灯油を通常の水素化精製より苛酷な条件で一段階又は多段階で水素化脱硫して得られる水素化脱硫灯油;上記の種々の灯油基材を水素化分解して得られる水素化分解灯油などが挙げられる。
なお、本発明において、石油系軽油基材又は石油系灯油基材を用いる場合、これらの石油系基材を製造する際の各種処理条件は適宜選定することができる。例えば、水素化脱硫の際の水素分圧は、1MPa以上が好ましく、3MPa以上がより好ましく、5MPa以上が特に好ましい。また、水素分圧の上限は特に制限されないが、反応器の耐圧力性の観点から、10MPa以下が好ましい。また、水素化脱硫の際の反応温度は、300℃以上が好ましく、320℃以上がより好ましく、340℃以上が特に好ましい。また、反応温度の上限は特に制限されないが、反応器の耐熱性の観点から、400℃以下が好ましい。また、水素化脱硫の際の液空間速度は、6h−1以下が好ましく、4h−1以下がより好ましく、2h−1以下が特に好ましい。また、液空間速度の下限は特に制限されないが、偏流の観点から、0.1h−1以上が好ましい。また、上記水素化脱硫に使用される触媒としては、特に限定されるものではないが、Ni、Co、Mo、W、Pd、Ptなどの金属を2〜3種類組み合わせて用いるものを挙げることができる。具体的には、Co−Mo系、Ni−Mo系、Ni−Co−Mo系、Ni−W系等の触媒を好ましく用いることができ、中でも汎用性の点から、Co−Mo系、Ni−Mo系の触媒がより好ましい。
また、「合成系軽油基材」とは、天然ガス、アスファルト分、石炭等を原料とし、これを化学合成させることで得られる軽油基材をいう。化学合成方法としては間接液化法、直接液化法などがあり、代表的な合成手法として、フィッシャー・トロプシュ合成法が挙げられるが、本発明で使用する合成系軽油基材はこれらの製造方法により限定されるものではない。合成系軽油基材は一般に飽和炭化水素類が主成分であり、詳しくはノルマルパラフィン類、イソパラフィン類、ナフテン類から構成されている。すなわち合成系軽油基材は一般に、芳香族分をほとんど含有していない。従って、燃料油組成物の芳香族分含有量を低減する場合には合成系軽油基材を用いることが好ましい。
また、「合成系灯油基材」とは、天然ガス、アスファルト分、石炭等を原料とし、これを化学合成させることで得られる灯油基材をいう。化学合成方法としては間接液化法、直接液化法などがあり、代表的な合成手法として、フィッシャー・トロプシュ合成法が挙げられるが、本発明で使用する合成系灯油基材はこれらの製造方法により限定されるものではない。合成系灯油基材は一般に飽和炭化水素類が主成分であり、詳しくはノルマルパラフィン類、イソパラフィン類、ナフテン類から構成されている。すなわち合成系灯油基材は一般に、芳香族分をほとんど含有していない。従って、燃料油組成物の芳香族分含有量を低減する場合には合成系灯油基材を用いることが好ましい。
また、「動植物油脂および/または動物油脂由来の基材」とは、動植物油脂および/または動物油脂を原料とし、これを脂肪酸アルキルエステル混合物にしたものや、水素化処理することで得られるもののことをいう。
また、本発明の燃料油組成物は上記の軽油基材及び/又は灯油基材のみで構成されてもよいが、必要に応じて低温流動性向上剤を含有することができる。低温流動性向上剤としては、具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体に代表されるエチレン−不飽和エステル共重合体、アルケニルコハク酸アミド、ポリエチレングリコールのジベヘン酸エステルなどの線状の化合物、アルキルフマレートまたはアルキルイタコネート−不飽和エステル共重合体などからなるくし形ポリマーなどの低温流動性向上剤、フタル酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ酢酸などの酸またはその酸無水物などとヒドロカルビル置換アミンなどとの反応生成物などからなる極性窒素化合物を含有する低温流動性向上剤などを挙げることができ、これらの化合物の1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。この中でも汎用性の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体系添加剤、極性窒素化合物を含有する低温流動性向上剤を好ましく使用することができ、ワックス結晶微細化促進および、ワックスの凝集沈降を防止する点で、極性窒素化合物を含有する低温流動性向上剤の使用がさらに好ましい。
低温流動性向上剤の含有量は、組成物全量を基準として、好ましくは50〜500mg/L、より好ましくは100〜300mg/Lである。低温流動性向上剤の含有量が前記下限値未満であると、その添加による低温流動性向上効果が不十分となる傾向にある。また、低温流動性向上剤の含有量が前記上限値を超えても、含有量に見合う低温流動性の更なる向上効果は得られない。
また、本発明の燃料油組成物は、潤滑性向上剤を更に含有することができる。潤滑性向上剤としては、エステル系、カルボン酸系、アルコール系、フェノール系、アミン系等の潤滑性向上剤の1種または2種以上を使用することができる。この中でも、汎用性の観点から、エステル系、カルボン酸系の潤滑性向上剤の使用が好ましい。さらに添加濃度に対する添加効果が飽和に達しにくく、HFRRのWS1.4値をより小さくできる点からはエステル系潤滑性向上剤が好ましく、添加濃度に対する添加効果の初期応答性が高く、潤滑性向上剤の添加量を少なくできる可能性があるという点からはカルボン酸系潤滑性向上剤が好ましい。
エステル系の潤滑性向上剤としては、例えば、グリセリンのカルボン酸エステル等を挙げることができ、具体的には、リノール酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸等のグリセリンエステルを挙げることができ、これらの1種または2種以上を適宜使用することができる。
潤滑性向上剤の含有量は、組成物全量を基準として、好ましくは25〜500mg/L、より好ましくは25〜300mg/L、更に好ましくは25〜200mg/Lである。潤滑性向上剤の含有量が前記下限値未満であると、その添加による潤滑性向上効果が不十分となる傾向にある。また、潤滑性向上剤の含有量が前記上限値を超えても、含有量に見合う低温流動性の更なる向上効果は得られない。
また、本発明の燃料油組成物は、上記の低温流動性向上剤又は潤滑性向上剤以外の添加剤を更に含有してもよい。かかる添加剤としては、アルケニルコハク酸誘導体、カルボン酸のアミン塩等の清浄剤、フェノール系、アミン系等の酸化防止剤、サリチリデン誘導体等の金属不活性化剤、ポリグリコールエーテル等の氷結防止剤、脂肪族アミン、アルケニルコハク酸エステル等の腐食防止剤、アニオン系、カチオン系、両性系界面活性剤等の帯電防止剤、アゾ染料等の着色剤、シリコン系等の消泡剤などを挙げることができる。これらの他の添加剤は、単独または数種類を組み合わせて添加することができる。添加量も適宜選択することができるが、その他の添加剤全量で、燃料油組成物に対して、例えば、0.5質量%以下とすることができ、好ましくは0.2質量%以下である。なお、ここでいう添加量全量とは、添加剤の有効成分としての添加量を意味している。
本発明の燃料油組成物は、各種性能の更なる改善の点から、上記条件に加えて、以下に示す条件を満たすことが好ましい。
本発明の燃料油組成物の硫黄分の含有量は、ディーゼル自動車の排ガス後処理装置の浄化性能を良好に保持できることから、組成物全量を基準として、好ましくは10質量ppm以下であり、より好ましくは5質量ppm以下である。なお、本発明でいう「硫黄分の含有量」とは、JIS K 2541「硫黄分試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
本発明の燃料油組成物の曇り点は、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは−2℃以下、更に好ましくは−5℃以下、特に好ましくは−8℃以下である。曇り点が0℃以下であると、ディーゼル自動車の燃料噴射装置のフィルターにワックスが付着しても当該ワックスを容易に溶解できる傾向にある。なお、本発明でいう「曇り点」とは、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準拠して測定される曇り点を意味する。
本発明の燃料油組成物の徐冷曇り点は、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは−2℃以下、更に好ましくは−5℃以下、特に好ましくは−8℃以下である。徐冷曇り点が0℃以下であると、ディーゼル自動車の燃料噴射装置のフィルターにワックスが付着しても当該ワックスを容易に溶解できる傾向にある。なお、本発明でいう「徐冷曇り点」とは以下のようにして測定される値を意味する。すなわち、底面がアルミニウム面である試料容器に厚さが1.5mmとなるように試料を入れ、容器の底面より3mmの高さから光を照射する。この状態で、上記の曇り点よりも10℃以上高い温度から0.5℃/分で徐冷し、反射光の光量が照射光の7/8以下となる温度(徐冷曇り点)を0.1℃単位で検知する。
本発明の燃料油組成物の流動点は、ディーゼル自動車における燃料ラインでの流動性の確保の観点から、好ましくは−7.5℃以下であり、より好ましくは−10℃以下、更に好ましくは−15℃以下である。なお、本発明でいう「流動点」とは、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準拠して測定される流動点を意味する。
本発明の燃料油組成物のセタン指数は、着火性の観点から、好ましくは45以上であり、より好ましくは50以上、更に好ましくは55以上である。なお、本発明でいう「セタン指数」とは、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」に準拠して測定される値を意味する。
本発明の燃料油組成物の目詰まり点は、ディーゼル自動車の燃料噴射装置に設けられるフィルターの閉塞を抑制できることから、好ましくは−5℃以下であり、より好ましくは−7℃以下、更に好ましくは−8℃以下である。なお、本発明でいう「目詰まり点」とは、JIS K 2288「石油製品−軽油−目詰まり点試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
本発明の燃料油組成物の30℃における動粘度は、好ましくは1.7mm/s以上、より好ましくは2.0mm/s以上、更に好ましくは2.5mm/s以上であり、また、好ましくは5.0mm/s以下、より好ましくは4.5mm/s以下、更に好ましくは4.3mm/s以下である。30℃における動粘度が前記下限値未満であると、ディーゼル自動車において比較的高い温度下で使用された場合に、始動不良が起こりやすくなり、また、アイドリング時のエンジンの回転が不安定化する傾向にある。他方、30℃における動粘度が前記上限値を超えると、排ガス中の黒煙量が増大する傾向にある。なお、本発明でいう「30℃における動粘度」とは、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して測定される値を意味する。
本発明の燃料油組成物の引火点は、取り扱い時の安全性の点から、好ましくは45℃以上であり、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上である。なお、本発明でいう「引火点」とは、JIS K 2265「原油及び石油製品−引火点試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
本発明の燃料油組成物の蒸留性状に関し、その初留点(以下、「IBP」と略す。)は、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、更に好ましくは155℃以上であり、また、好ましくは195℃以下、より好ましくは190℃以下、更に好ましくは180℃以下である。IBPが前記下限値未満であると、一部の軽質留分が気化し、ディーゼル自動車のエンジン内において噴霧範囲が広範囲となることに伴って排出ガス中の未燃の炭化水素量が増大し、その結果、高温時の始動性及びアイドリング時のエンジンの回転の安定性が低下する傾向にある。他方、IBPが前記上限値を超えると、ディーゼル自動車における低温時の始動性及び運転性が低下する傾向にある。
本発明の燃料油組成物の10%留出温度(以下、「T10」と略す。)は、好ましくは165℃以上、より好ましくは170℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、また、好ましくは205℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは190℃以下である。T10が前記下限値未満であると、一部の軽質留分が気化し、ディーゼル自動車のエンジン内において噴霧範囲が広範囲となることに伴って排出ガス中の未年の炭化水素量が増大し、その結果、高温時の始動性及びアイドリング時のエンジンの回転の安定性が低下する傾向にある。他方、T10が前記上限値を超えると、ディーゼル自動車における低温時の始動性及び運転性が低下する傾向にある。
本発明の燃料油組成物の50%留出温度(以下、「T50」と略す。)は、好ましくは200℃以上、より好ましくは205℃以上、更に好ましくは210℃以上であり、また、好ましくは260℃以下、より好ましくは255℃以下、更に好ましくは250℃以下である。T50が前記下限値未満であると、ディーゼル自動車における燃料消費率、エンジン出力、高温時の始動性、アイドリング時のエンジンの回転の安定性が低下する傾向にある。他方、T50が前記上限値を超えると、ディーゼル自動車においてエンジンから排出されるPM(粒子状物質)が増加する傾向にある。
本発明の燃料油組成物の90%留出温度(以下、「T90」と略す。)は、好ましくは265℃以上、より好ましくは270℃以上、更に好ましくは275℃以上であり、また、好ましくは335℃以下、より好ましくは330℃以下、更に好ましくは325℃以下である。T90が前記下限値未満であると、ディーゼル自動車における燃料消費率、高温時の始動性、アイドリング時のエンジンの回転の安定性が低下する傾向にある。また、燃料油組成物が低温流動性向上剤を含有する場合には、低温流動性向上剤による目詰まり点等の改善効果が低下する傾向にある。他方、T90が前記上限値を超えると、ディーゼル自動車においてエンジンから排出されるPMが増加する傾向にある。
本発明の燃料油組成物の終点(以下、「EP」と略す。)は、好ましくは310℃以上、より好ましくは315℃以上、更に好ましくは320℃以上であり、また、好ましくは355℃以下、より好ましくは350℃以下、更に好ましくは345℃以下である。EPが前記下限値未満であると、ディーゼル自動車における燃料消費率、高温時の始動性、アイドリング時のエンジンの回転の安定性が低下する傾向にある。また、燃料油組成物が低温流動性向上剤を含有する場合には、低温流動性向上剤による目詰まり点等の改善効果が低下する傾向にある。他方、EPが前記上限値を超えると、ディーゼル自動車においてエンジンから排出されるPMが増加する傾向にある。
なお、本発明でいう「IBP」、「T10」、「T50」、「T90」及び「EP」とは、それぞれJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法−常圧法」に準拠して測定される値を意味する。
本発明の燃料油組成物の潤滑性に関し、そのHFRRのWS1.4値は、好ましくは500以下、より好ましくは460以下、更に好ましくは420以下、得に好ましくは400以下である。WS1.4値が上記条件を満たすことで、ディーゼル自動車における噴射ポンプ内の潤滑性を十分に確保することができる。なお、本発明でいう「HFRRのWS1.4値」とは、軽油の潤滑性の判断指標であり、社団法人石油学会から発行されている石油学会規格JPI−5S−50−98「軽油−潤滑性試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1〜2及び比較例1〜2の各燃料油組成物について以下の試験を実施した。
[低温実車試験]
環境温度の制御が可能なシャーシダイナモメータ上で、下記のA、Bの2台のディーゼル自動車を用いて低温実車試験を実施した。
(車両A諸元)
最大積載量:2t
エンジンの種類:直列4気筒ディーゼル
エンジンの総排気量:4.3L
燃料噴射ポンプ:列型
適合規格:短期排出ガス規制適合(ベース車両)
排出ガス後処理装置:東京都指定のPM減少装置(カテゴリー4適合)
PM減少装置の使用燃料:低硫黄軽油(硫黄分50質量ppm以下)
(車両B諸元)
エンジンの種類:インタークーラー付き過給直列4気筒ディーゼル
エンジンの総排気量:3.0L
燃料噴射システム:コモンレール方式
適合規格:長期排出ガス規制適合
排出ガス後処理装置:酸化触媒
低温実車試験においては、まず、室温下、ディーゼル自動車の燃料系統を評価燃料(各燃料油組成物)でフラッシングした。フラッシング燃料を抜き出し、メインフィルターを新品に交換した後、燃料タンクに評価燃料の規定量(供試車両の燃料タンクの容量の1/2)の張り込みを行った。その後、環境温度を室温から5℃まで急冷し、5℃で1時間保持した後、1℃/hの冷却速度で−10℃に達するまで徐冷し、−10℃で1時間保持した後で走行試験を開始した。走行試験は、「エンジン始動」、「5分間アイドリング」、「50km/hまで加速」及び「50km/hで1時間走行」で構成され、その巻の運転状況により合否を判定した。具体的には、エンジン始動、アイドリング及び加速に問題がなく、前走行にわたって50km/hでの走行が維持できた場合を良(◎)とした。また、一回目のクランキングではエンジンが始動できなかった場合、並びに走行中一時的に車速が低下したがその後回復した場合など、軽微の不具合を生じたが、走行が継続できた場合を可(○)とした。また、始動不可(10秒間のクランキングを30秒間隔で5回繰り返しても始動しない)、アイドリングストール、エンジン停止などにより走行維持ができなかった場合を不可(×)とした。得られた結果を表1に示す。
Figure 0005154813

Claims (3)

  1. 炭素数21〜30の範囲において、軽油組成物中のノルマルパラフィン量をA(質量%)、1分岐のイソパラフィン量をB(質量%)、芳香族量をC(質量%)としたとき、式1で表す定温性指標Xが−12.6以上−10.1以下であり、芳香族分含有量が6容量%以上25容量%以下、ナフテン分含有量が60質量%以下であることを特徴とする軽油組成物。
    X=(3×A+B)×(100−C)÷100−30 (式1)
  2. 硫黄含有量が10質量ppm以下、HFRRのWSD1.4が460μm以下、目詰まり点が−5℃以下、曇り点が0℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の軽油組成物。
  3. 引火点が50℃以上、蒸留性状90%留出温度が350℃以下、動粘度(30℃)が2.5mm/s以上、セタン指数45以上、密度が750kg/m以上850kg/m以下、低温流動性向上剤添加量が50mg/L以上500mg/L以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の軽油組成物。
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