JP2005023137A - 軽油組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】硫黄分含有量が8質量ppm以下、1環ナフテン分含有量が10容量%以上、1環芳香族分含有量が20容量%以下、90%留出温度が270℃以上350℃以下、かつ80%留出温度と20%留出温度の差が50℃以上150℃以下の水素化精製油に、特定の脂肪酸アルキルエステルを所定割合配合してなる、体積弾性率が1350MPa以上1550MPa以下、酸化安定性試験後の全不溶解分が2.0mg/100mL以下であることを特徴とするJIS2号軽油規格を満たす軽油組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は硫黄分含有量が少なくかつ脂肪酸アルキルエステルを含有する軽油組成物に関する。より詳しくはエンジンから排出される粒子状物質(PM)及び微小粒子と窒素酸化物を同時に低減し、燃費を向上させ、部材への影響が少なく、低温始動性に優れた軽油組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、軽油の基材としては、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油に水素化精製処理や水素化脱硫処理を施したもの、原油の常圧蒸留装置から得られる直留灯油に水素化精製処理や水素化脱硫処理を施したもの等が知られている。従来の軽油組成物は上記軽油基材及び灯油基材を1種または2種以上配合することにより製造されている。また、これらの軽油組成物には、必要に応じてセタン価向上剤や清浄剤等の添加剤が配合される(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
【非特許文献1】
小西誠一著、「燃料工学概論」、裳華房、1991年3月、p.136−144
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、早急な大気環境改善及び環境負荷低減を目指して、内燃機関用燃料である軽油中の硫黄分含有量及び芳香族分含有量の低減が求められている。また同時に地球温暖化問題に対応するため、一層の燃費向上に貢献しかつ二酸化炭素削減に効果的な燃料性状が求められており、その解決手段の1つとして合成燃料や再生可能エネルギーであるバイオディーゼル燃料(以降BDFとも表記する。)を代替燃料として用いることが検討されている。
【0005】
従来の軽油基材には、芳香族分が最大40容量%程度、平均的には20容量%程度含まれる。また軽油留分には粒子状物質(以降PMとも表記する。)生成能が大きいとされている2環以上の多環芳香族分も数%含まれている。一般に芳香族分は水素化精製処理や水素化脱硫処理では十分に低減できないため、脱芳香族プロセスを導入する必要があるが、既存設備では所望の軽油基材が得られない場合があり、また精製コストが著しく増加してしまう。
なお、一般的に軽油基材よりも灯油基材の方が芳香族分含有量が低い(最大30容量%程度、平均的には15容量%程度含有する。)ため、灯油基材を軽油基材に混合することで、芳香族分含有量を低減することはできる。しかし、単純にこのようにして得られる軽油組成物は、低密度で非常に軽質であり、燃費の悪化や出力の低下を招く原因となる。更には軽油基材と灯油基材との混合により、組成物の動粘度も低下してしまうため、燃料噴射ポンプ等の潤滑面の問題が生じやすくなる。
【0006】
合成燃料は、天然ガス、アスファルト分、石炭等を原料とする合成軽油及び合成灯油として着目されている。これらの燃料基材は芳香族分や硫黄分をほとんど含まないことが特徴である。しかしながら、燃料噴射系で使用している部材への影響を鑑みた場合、このような燃料を使用した場合、特に経年車においては使用しているゴム部材がむしろ収縮し、結果として燃料の漏れ(リーク)を起こしてしまう可能性が示唆されている。また、パラフィン分主体の基材であることから、低温始動時におけるワックス分の析出、低密度に伴う燃費の悪化が懸念されている。
【0007】
これに対し、BDFは植物油を原料にした脂肪酸アルキルエステル混合物が主であり、芳香族分や硫黄分をほとんど含まず、またそれ自身が分子中に酸素を持った含酸素化合物であるため、代替燃料の有力な候補として着目されている。また、植物由来であることから再生可能エネルギーと位置づけられているため、1997年に締結された国際間での二酸化炭素削減プロトコル、いわゆる京都議定書においてはBDF起因の二酸化炭素は排出量として計上されないルールである点も、BDFは政策的なメリットとして有している。
【0008】
しかしながら、含有する脂肪酸アルキルエステルの組成によっては常温で固体であるもの、沸点が極めて重質であるものも存在するため、単純に軽油代替品として使用した場合、低温時の流動性能や未燃炭化水素排出、窒素酸化物排出の悪化を生じてしまう。また、脂肪酸アルキルエステル自体は化学的に安定な物質であるが、これを精製する際の原料である脂肪酸グリセライド、アルキルアルコール及び副生成物であるグリセリン混合物はエンジン部材や燃料噴射系への悪影響が極めて懸念されているものである。そのため、BDFを軽油代替として使用する際には、BDF自体の性状に留意することは当然であるが、それに加えてBDFを全量軽油と置き換えて使用したり、高い配合比で軽油と混合したりすることには問題があり、避けなければならない。
【0009】
従って、有害排気成分、特に粒子状物質(PM)及び微小粒子と窒素酸化物を同時に低減し、燃費を向上させ、部材への影響が少なく、低温始動性に優れた軽油組成物の提供に関しては、既存精製方法だけでの製造や単純に代替燃料と置き換えるだけでは、これらの性能改善を同時に達成することはできない。さらに、これらのエンジン性能は他の燃料性状とも密接に関連するため、これらの要求性能を高水準で同時に達成できる高品質の燃料を設計することは非常に困難であり、なおかつ市販燃料油として求められている諸性能を十分満たし、また現実的な製造方法の検討を踏まえた例、知見は存在していない。
【0010】
本発明は、かかる実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、ディーゼル燃料として用いた場合に、エンジンから排出される粒子状物質(PM)及び微小粒子と窒素酸化物を同時に低減し、燃費を向上させ、部材への影響が少なく、低温始動性に優れた性能を有する軽油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、硫黄分含有量が8質量ppm以下、1環ナフテン分含有量が10容量%以上、1環芳香族分含有量が20容量%以下、90%留出温度が270℃以上350℃以下、かつ80%留出温度と20%留出温度の差が50℃以上150℃以下の水素化精製油に、ミリスチン酸アルキルエステル、パルミチン酸アルキルエステルおよびステアリン酸アルキルエステルから選択される脂肪酸アルキルエステル(A)のいずれか1種以上を含有し、ラウリン酸アルキルエステル、オレイン酸アルキルエステル、リノール酸アルキルエステルおよびリノレン酸アルキルエステルから選択される脂肪酸アルキルエステル(B)のいずれか1種以上を含有し、脂肪酸アルキルエステル(A)の質量含有量の総和/脂肪酸アルキルエステル(B)の質量含有量の総和が0.1以上2.0以下であり、かつ脂肪酸アルキルエステル混合物としての平均分子量が500以下、全酸価1.0mgKOH/g以下、硫黄分含有量5質量ppm以下である脂肪酸アルキルエステル混合物を、以下の式で示す容量割合だけ配合してなる、体積弾性率が1350MPa以上1550MPa以下、酸化安定性試験後の全不溶解分が2.0mg/100mL以下であることを特徴とするJIS2号軽油規格を満たす軽油組成物に関する。
RBDF=(−5×C×FAME+HDS×(2×PA+PN))/100
2≦RBDF≦10
RBDF:BDF指数
C:脂肪酸アルキルエステル(A)の質量含有量の総和/脂肪酸アルキルエステル(B)の質量含有量の総和
FAME:脂肪酸アルキルエステル混合物配合量(容量%)
HDS:水素化精製油配合量(容量%)
PA:水素化精製油中の2環以上の芳香族分含有量(容量%)
PN:水素化精製油中の2環以上のナフテン分含有量(容量%)
【0011】
前記軽油組成物においては、15℃における密度が800kg/m3以上850kg/m3以下であり、セタン価が52以上、HFRR摩耗痕径(WS1.4)が410μm以下であることが好ましい。
また前記軽油組成物においては、植物油を原料とした脂肪酸アルキルエステル混合物を配合し、水分含有量300容量ppm以下であることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、上記の特定の性状を有する水素化精製油と上記特定の性状を有する脂肪酸アルキルエステルを併せて含有する軽油組成物とすることにより、従来の軽油組成物では実現が困難であったエンジンから排出される粒子状物質(PM)及び微小粒子と窒素酸化物を同時に低減し、燃費を向上させ、部材への影響が少なく、低温始動性に優れた性能を有する軽油組成物が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の軽油組成物の構成成分として、硫黄分含有量が8質量ppm以下、1環ナフテン分含有量が10容量%以上、1環芳香族分含有量が20容量%以下、90%留出温度が270℃以上350℃以下、かつ80%留出温度と20%留出温度の差が50℃以上150℃以下の水素化精製油が用いられる。
【0014】
本発明にかかる水素化精製油とは、所定の原料油を水素化処理して得られる低硫黄の軽油留分、灯油留分、若しくはそれらの混合物である。
【0015】
該軽油留分の原料油としては、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油、常圧蒸留装置から得られる直留重質油や残査油を減圧蒸留装置で処理して得られる減圧軽油、減圧重質軽油あるいは脱硫重油を接触分解または水素化分解して得られる接触分解軽油または水素化分解軽油、これらの石油系炭化水素を水素化精製して得られる水素化精製軽油若しくは水素化脱硫軽油等が挙げられる。
【0016】
該石油系炭化水素の水素化精製は、石油精製において一般的な水素化脱硫装置を用いて処理を行うことができる。一般的には、反応温度300〜380℃、水素圧力3〜8MPa、LHSV0.3〜2h−1、水素/油比100〜500NL/Lといった条件で行われる。
水素化精製に用いられる触媒は一般的な水素化脱硫用触媒を適用できる。活性金属としては、通常、周期律表第6A族および第8族金属が好ましく用いられ、例えばCo−Mo,Ni−Mo,Co−W,Ni−Wが挙げられる。担体としてはアルミナを主成分とした多孔質無機酸化物が用いられる。これらの条件、触媒は原料油の性状を満たす限りにおいて特に限定されるものではない。
【0017】
また、本発明の水素化精製油は上述の原料油を水素化触媒の存在下で水素化処理したものを用いることができる。水素化処理条件は、反応温度170〜320℃、水素圧力2〜10MPa、LHSV0.1〜2h−1、水素/油比100〜800NL/Lである。好ましくは反応温度175℃〜300℃、水素圧力2.5〜8MPa、LHSV0.2〜1.5h−1、水素/油比150〜600NL/Lであり、さらに好ましくは反応温度180℃〜280℃、水素圧力3〜7MPa、LHSV0.3〜1.2h−1、水素/油比150〜500NL/Lである。反応温度は低温ほど水素化反応には有利であるが、脱硫反応には好ましくない。水素圧力、水素/油比は高いほど脱硫、水素化反応とも促進されるが、経済的に最適点が存在する。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので不利である
【0018】
原料油を水素化処理する装置はいかなる構成でもよく、反応塔は単独でもまたは複数を組み合わせてもよく、複数の反応塔の間に水素を追加注入してもよく、気液分離操作や硫化水素除去設備を有していてもよい。
水素化処理装置の反応形式は、固定床方式が好ましく採用される。水素は原料油に対して、向流または並流のいずれの形式をとることができ、また、複数の反応塔を有し、向流、並流を組み合わせた形式のものでもよい。一般的な形式としてはダウンフローであり、気液双並流形式が好ましい。反応塔の中段には反応熱の除去、あるいは水素分圧を上げる目的で水素ガスをクエンチとして注入してもよい。
【0019】
水素化処理に用いる触媒は水素化活性金属を多孔質担体に担持したものである。多孔質担体としては無機酸化物が挙げられる。具体的な無機酸化物としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、あるいはゼオライトがあり、本発明ではこのうちチタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、ゼオライトのうち少なくとも1種類とアルミナによって構成されているものがよい。その製造法は特に限定されないが、各元素に対応した各種ゾル、塩化合物などの状態の原料を用いて任意の調製法を採用することができる。さらには一旦シリカアルミナ、シリカジルコニア、アルミナチタニア、シリカチタニア、アルミナボリアなどの複合水酸化物あるいは複合酸化物を調製した後に、アルミナゲルやその他水酸化物の状態あるいは適当な溶液の状態で調製工程の任意の工程で添加して調製してもよい。アルミナと他の酸化物との比率は多孔質担体に対して任意の割合を取り得るが、好ましくはアルミナが90質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0020】
ゼオライトは結晶性アルミノシリケートであり、フォージャサイト、ペンタシル、モルデナイトなどが挙げられ、所定の水熱処理および/または酸処理によって超安定化したもの、あるいはゼオライト中のアルミナ含有量を調整したものを用いることができる。好ましくはフォージャサイト、モルデナイト、特に好ましくはY型、ベータ型が用いられる。Y型は超安定化したものが好ましく、水熱処理により超安定化したゼオライトは本来の20Å以下のミクロ細孔と呼ばれる細孔構造に加え、20〜100Åの範囲に新たな細孔が形成される。水熱処理条件は公知の条件を用いることができる。
【0021】
水素化処理に用いる触媒の活性金属としては周期律表第8族金属から選ばれる少なくとも1種類の金属である。好ましくはRu,Rd,Ir,PdおよびPtから選ばれる少なくとも1種類であり、さらに好ましくはPdまたは/およびPtである。活性金属としてはこれらの金属を組み合わせたものでよく、例えばPt−Pd,Pt−Rh,Pt−Ru,Ir−Pd,Ir−Rh,Ir−Ru,Pt−Pd−Rh,Pt−Rh−Ru,Ir−Pd−Rh,Ir−Rh−Ruなどの組み合わせを採用することができる。金属源としては一般的な無機塩、錯塩化合物を用いることができ、担持方法としては含浸法、イオン交換法など通常の水素化触媒で用いられる担持方法のいずれの方法も用いることができる。また、複数の金属を担持する場合には混合溶液を用いて同時に担持してもよく、または単独溶液を用いて逐次担持してもよい。金属溶液は水溶液でもよく有機溶剤を用いてもよい。
【0022】
金属担持は、構成されている多孔質担体の調製全工程終了後に行ってもよく、多孔質担体調製中間工程における適当な酸化物、複合酸化物、ゼオライトに予め担持した後に更なるゲル調合工程あるいは加熱濃縮、混練を行ってもよい。
活性金属の担持量は特に限定されないが、触媒質量に対し金属量合計で0.1〜10質量%、好ましくは0.15〜5質量%、さらに好ましくは0.2〜3質量%である。
触媒は、水素気流下において予備還元処理を施した後に用いるのが好ましい。一般的には水素を含むガスを流通し、200℃以上の熱を所定の手順に従って与えることにより触媒上の活性金属が還元され、水素化活性を発現することになる。
【0023】
本発明には、軽油留分の水素化精製油以外にも、未精製油及び/又は水素化精製油を原料油とし、水素化触媒の存在下において反応温度220〜350℃、水素圧力1〜6MPa、LHSV0.1〜10h−1、水素/油比10〜300NL/Lで水素化処理することによって得られる硫黄分含有量8質量ppm以下、全芳香族分含有量20容量%以下、2環以上の芳香族分含有量1容量%以下、ナフテン分含有量10容量%以上、沸点範囲140〜300℃である低硫黄な灯油留分を用いることができる。
【0024】
かかる低硫黄な灯油留分は、所定の原料油を水素化処理して得られる灯油留分である。該原料油としては、原油の常圧蒸留により得られる直留灯油が主であるが、水素化分解軽油と共に製造される水素化分解灯油、上記の灯油留分を水素化精製して得られる水素化精製灯油、天然ガス、アスファルト分、石炭等を原料とする合成灯油等が挙げられる。
【0025】
水素化精製油灯油留分としての原料油は、石油精製において石油系炭化水素を一般的な水素化脱硫装置を用いて水素化精製処理することにより得られる。通常、反応温度220〜350℃、水素圧力1〜6MPa、LHSV0.1〜10h−1、水素/油比10〜300NL/Lといった条件で行われる。
触媒としては、一般的な水素化脱硫用触媒を適用できる。活性金属としては、通常、周期律表第6A族および第8族金属が用いられ、例えばCo−Mo,Ni−Mo,Co−W,Ni−Wが挙げられる。担体としてはアルミナを主成分とした多孔質無機酸化物が用いられる。これらの条件、触媒は原料油の性状を満たす限りにおいて特に限定されるものではない。
【0026】
本発明の水素化精製油灯油留分は、上述の原料油を水素化触媒の存在下で水素化処理(脱硫及び精製)したものを用いることができる。
水素化処理条件は、反応温度220〜350℃、水素圧力1〜6MPa、LHSV0.1〜10h−1、水素/油比10〜300NL/Lである。好ましくは反応温度250℃〜340℃、水素圧力2〜5MPa、LHSV1〜10h−1、水素/油比30〜200NL/Lであり、さらに好ましくは反応度270℃〜330℃、水素圧力2〜4MPa、LHSV2〜10h−1、水素/油比50〜200NL/Lである。反応温度は低温ほど水素化反応には有利であるが、脱硫反応には好ましくない。水素圧力、水素/油比は高いほど脱硫、水素化反応とも促進されるが、経済的に最適点が存在する。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので不利である。
【0027】
原料油を水素化処理する装置はいかなる構成でもよく、反応塔は単独でもまたは複数を組み合わせてもよく、複数の反応塔の間に水素を追加注入してもよく、気液分離操作や硫化水素除去設備を有していてもよい。
水素化処理装置の反応形式は、固定床方式が好ましく採用される。水素は原料油に対して、向流または並流のいずれの形式をとることができ、また、複数の反応塔を有し、向流、並流を組み合わせた形式のものでもよい。一般的な形式としてはダウンフローであり、気液双並流形式が好ましい。反応塔の中段には反応熱の除去、あるいは水素分圧を上げる目的で水素ガスをクエンチとして注入してもよい。
【0028】
水素化処理に用いる触媒は水素化活性金属を多孔質担体に担持したものである。多孔質担体としては無機酸化物が挙げられる。具体的な無機酸化物としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、あるいはゼオライトがあり、本発明ではこのうちチタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、ゼオライトのうち少なくとも1種類とアルミナによって構成されているものがよい。その製造法は特に限定されないが、各元素に対応した各種ゾル、塩化合物などの状態の原料を用いて任意の調製法を採用することができる。さらには一旦シリカアルミナ、シリカジルコニア、アルミナチタニア、シリカチタニア、アルミナボリアなどの複合水酸化物あるいは複合酸化物を調製した後に、アルミナゲルやその他水酸化物の状態あるいは適当な溶液の状態で調製工程の任意の工程で添加して調製してもよい。アルミナと他の酸化物との比率は多孔質担体に対して任意の割合を取りうるが、好ましくはアルミナが90質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0029】
ゼオライトは結晶性アルミノシリケートであり、フォージャサイト、ペンタシル、モルデナイトなどが挙げられ、所定の水熱処理および/または酸処理によって超安定化したもの、あるいはゼオライト中のアルミナ含有量を調整したものを用いることができる。好ましくはフォージャサイト、モルデナイト、特に好ましくはY型、ベータ型が用いられる。Y型は超安定化したものが好ましく、水熱処理により超安定化したゼオライトは本来の20Å以下のミクロ細孔と呼ばれる細孔構造に加え、20〜100Åの範囲に新たな細孔が形成される。水熱処理条件は公知の条件を用いることができる。
【0030】
水素化処理に用いる触媒の活性金属としては周期律表第6A族金属から選ばれる少なくとも1種類の金属である。好ましくはMoおよびWから選ばれる少なくとも1種類である。活性金属としては第6A族金属と第8族金属を組み合わせたものでよく、具体的にはMoまたはWと、CoまたはNiの組み合わせであり、例えばCo−Mo、Co−W、Ni−Mo、Ni−W、Co−Ni−Mo、Co−Ni−Wなどの組み合わせを採用することができる。金属源としては一般的な無機塩、錯塩化合物を用いることができ、担持方法としては含浸法、イオン交換法など通常の水素化触媒で用いられる担持方法のいずれの方法も用いることができる。また、複数の金属を担持する場合には混合溶液を用いて同時に担持してもよく、または単独溶液を用いて逐次担持してもよい。金属溶液は水溶液でもよく有機溶剤を用いてもよい。
【0031】
金属担持は、構成されている多孔質担体の調製全工程終了後に行ってもよく、多孔質担体調製中間工程における適当な酸化物、複合酸化物、ゼオライトに予め担持した後に更なるゲル調合工程あるいは加熱濃縮、混練を行ってもよい。
活性金属の担持量は特に限定されないが、触媒質量に対し金属量合計で0.1〜10質量%、好ましくは0.15〜5質量%、さらに好ましくは0.2〜3質量%である。
触媒は、水素気流下において予備還元処理を施した後に用いるのが好ましい。一般的には水素を含むガスを流通し、200℃以上の熱を所定の手順に従って与えることにより触媒上の活性金属が還元され、水素化活性を発現することになる。
【0032】
本発明にかかる水素化精製油は上述の軽油留分及び灯油留分のうち少なくとも1種類を用いて、所定の性状を満たすことが必要である。また、本発明における水素化精製油は、所定の条件を満たす範疇で、複数の軽油留分基材及び灯油留分基材を配合して構成することができる。軽油留分基材としては、水素化精製軽油、水素化脱硫軽油、水素化分解軽油、天然ガス、アスファルト、石炭などを原料にして合成される合成軽油等が挙げられる。灯油留分基材としては、水素化精製灯油、水素化脱硫灯油、水素化分解灯油、天然ガス、アスファルト、石炭などを原料にして合成される合成灯油等が挙げられる。
【0033】
本発明にかかる水素化精製油の硫黄分含有量は、エンジンから排出される有害排気成分低減と排ガス後処理装置の性能向上の点から8質量ppm以下である必要があり、好ましくは7質量ppm以下、より好ましくは6質量ppm以下、さらに好ましくは5質量ppm以下、さらにより好ましくは3質量ppm以下、最も好ましくは1質量ppm以下である。なお、ここでいう硫黄分含有量とは、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される軽油組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を意味する。
【0034】
本発明にかかる水素化精製油の1環ナフテン分含有量は、10容量%以上であることが必要であり、15容量%以上であることが好ましく、20容量%以上であることがより好ましい。水素化精製油の1環ナフテン分含有量が前記の範囲内であると、本発明の軽油組成物において規定される性状をより容易に且つ確実に達成することができ、脂肪酸アルキルエステル混合物との相乗作用が達成できる。なお、ここでいう1環ナフテン分含有量は、ASTM D2786「Standard Test Method for Hydrocarbon Types Analysis of Gas−Oil Saturates Fractions by High Ionizing Voltage Mass Spectrometry」に準拠して測定される1環ナフテン分の容量百分率(容量%)を意味する。
【0035】
本発明にかかる水素化精製油の1環芳香族分含有量は、20容量%以下であること必要であり、17容量%以下であることが好ましく、15容量%以下であることがより好ましく、12容量%以下であることが更に好ましい。水素化精製油の芳香族分含有量が前記の範囲内であると、本発明の軽油組成物において規定される性状をより容易に且つ確実に達成することができ、脂肪酸アルキルエステル混合物との相乗作用が達成できる。なお、ここでいう1環芳香族分含有量は、社団法人石油学会により発行されている石油学会誌JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠され測定された、1環芳香族分含有量の容量百分率(容量%)を意味する。
【0036】
本発明にかかる水素化精製油の90%留出温度(以下、T90とも表記する。)は、過度の蒸留性状の軽質化に伴う運転性能等への悪影響を抑制するために、270℃以上であることが必要であり、好ましくは280℃以上、より好ましくは290℃以上である。また当該T90は、エンジンより排出される粒子状物質(PM)の増加を抑制する点から、350℃以下であることが必要であり、好ましくは340℃以下、より好ましくは330℃以下である。なお、ここでいう90%留出温度とは、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」により測定される値を意味する。
【0037】
本発明にかかる水素化精製油の80%留出温度(以下、T80とも表記する。)と20%留出温度(以下、T20とも表記する)との差は、脂肪酸アルキルエステル混合物との相乗作用を発現させるために、50℃以上であることが必要であり、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることさらに好ましい。同様にしてT80とT20の差は150℃以下であることが必要であり、140℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいう80%留出温度及び20%留出温度とは、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」により測定される値を意味する。
【0038】
本発明においては上述の水素化精製油に特定の脂肪酸アルキルエステル化合物を含有する脂肪酸アルキルエステル混合物を適量配合することが必要である。
脂肪酸アルキルエステル混合物としては、動物脂質部及び植物種子等を原料にして生成される脂肪酸とグリセリンからなるグリセライド化合物(動物油、植物油)を、一般にはアルカリ触媒(ナトリウムメチラート、苛性ソーダ等)のもとでアルキルアルコールと化学反応させ、その後残原料や副生成物であるグリセリン、触媒等を分離、除去して得られる脂肪酸アルキルエステル化合物の混合物が挙げられる。また、本発明においては、他の化学合成手法により得られた脂肪酸アルキルエステル化合物を使用することもできる。
【0039】
動物脂質部の原料としては、牛脂、牛乳脂質(バター)、豚脂、羊脂、鯨油、魚油、肝油等が挙げられるが、後述する植物種子等と比較して雑物が多いため、本発明では、植物油を原料とすることが望ましい。
植物油原料としては、ココヤシ、パームヤシ、オリーブ、べにばな、菜種(菜の花)、米ぬか、ひまわり、綿実、とうもろこし、大豆、ごま等の種子部及びその他の部分が挙げられる。
また、本発明においては、これらの動物油、植物油を民生用、産業用、食用等で使用した廃油も雑物等の除去工程を加えた後に原料とすることができる。
【0040】
これらの原料中に含有されるグリセライド化合物の脂肪酸部分の代表的な組成としては、飽和脂肪酸と称する分子構造中に不飽和結合を有しない脂肪酸である酪酸(C3H7COOH)、カプロン酸(C5H11COOH)、カプリル酸(C7H15COOH)、カプリン酸(C9H19COOH)、ラウリン酸(C11H23COOH)、ミリスチン酸(C13H27COOH)、パルミチン酸(C15H31COOH)、ステアリン酸(C17H35COOH)、及び不飽和結合を1つもしくは複数有する不飽和脂肪酸であるオレイン酸(C17H33COOH)、リノール酸(C17H31COOH)、リノレン酸(C17H29COOH)、リシノレン酸(C17H32(OH)COOH)等が挙げられる。自然界の物質におけるこれら脂肪酸の炭化水素部は一般に直鎖であることが多いが、本発明において本発明で規定する性状を満たす限りで、側鎖を有する構造、すなわち異性体であっても使用することができる。また、不飽和脂肪酸における分子中の不飽和結合の位置も、本発明において本発明で規定する性状を満たす限りで、自然界で一般に存在確認されているものだけでなく、化学合成によって任意の位置に設定されたものも使用することができる。
【0041】
上述の原料油(動物油、植物油)はこれらの脂肪酸を1種または複数種有しており、原料によってその有する脂肪酸類は異なっている。例えば、ココヤシ油はラウリン酸、ミリスチン酸等の飽和脂肪酸を比較的多く有しているが、大豆油はオレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸を多く有している。
【0042】
本発明において、脂肪酸アルキルエステル混合物の生成方法は特に問わないが、代表的な例としては、アルカリ触媒(ナトリウムメチラート、苛性ソーダ等)の存在下で70℃、1時間程度の撹拌を行い、アルキルアルコールと直接反応させてエステル化合物を得る方法(エステル交換反応)や、原料油を高温高圧プロセス(50〜60気圧、250〜260℃、2〜3時間反応、無触媒)で加水分解して脂肪酸とグリセリンに分離し、得られた脂肪酸に酸触媒(硫酸、PTS)の存在下でアルキルアルコールを反応させてエステル化合物を得る方法(エステル化反応)が挙げられる。
【0043】
アルキルアルコール化合物としてはメタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、プロパノール(C3H7OH)、ブタノール(C4H9OH)、ヘキサノール(C5H11OH)等が挙げられ、これらの異性化物も使用することができるが、主として経済性やエステル化した際の性状安定化の観点から、メタノール及びエタノールを使用することが好ましい。
【0044】
上記生成方法によって得られるメチルエステル化合物としては、酪酸メチルエステル(C3H7COOCH3)、カプロン酸メチルエステル(C5H11COOCH3)、カプリル酸メチルエステル(C7H15COOCH3)、カプリン酸メチルエステル(C9H19COOCH3)、ラウリン酸メチルエステル(C11H23COOCH3)、ミリスチン酸メチルエステル(C13H27COOCH3)、パルミチン酸メチルエステル(C15H31COOCH3)、ステアリン酸メチルエステル(C17H35COOCH3)、オレイン酸メチルエステル(C17H33COOCH3)、リノール酸メチルエステル(C17H31COOCH3)、リノレン酸メチルエステル(C1 7H29COOCH3)、リシノレン酸メチルエステル(C17H32(OH)COOCH3)等が、またエチルエステル化合物としては、酪酸エチルエステル(C3H7COOC2H5)、カプロン酸エチルエステル(C5H11COOC2H5)、カプリル酸エチルエステル(C7H15COOC2H5)、カプリン酸エチルエステル(C9H19COOC2H5)、ラウリン酸エチルエステル(C11H23COOC2H5)、ミリスチン酸エチルエステル(C13H27COOC2H5)、パルミチン酸エチルエステル(C15H31COOC2H5)、ステアリン酸エチルエステル(C17H35COOC2H5)、オレイン酸エチルエステル(C17H33COOC2H5)、リノール酸エチルエステル(C17H31COOC2H5)、リノレン酸エチルエステル(C17H29COOC2H5)、リシノレン酸エチルエステル(C17H32(OH)COOC2H5)等が挙げられる。
【0045】
これらの脂肪酸アルキルエステル化合物及び原料の脂肪酸の定量はガスクロマトグラフを用いて行うことができる。分析条件を以下に示すが、遊離脂肪酸型カラム(FFAP)を用いることで、容易にかつ正確にこれらの物質を定量することができる。
カラム:FFAP(φ0.32mm×25m)
キャリアガス:He(26psi)
検出器:FID
インジェクション温度:280℃
検出器温度:300℃
オーブン温度:100〜260℃(10分)
昇温速度:5℃/分
インジェクション量:0.4μL(メタノール溶液)
【0046】
本発明においては、特定の脂肪酸アルキルエステル化合物を少なくとも2種以上有し、かつ所定の性状を満足させた脂肪酸アルキルエステル混合物を水素化精製油に適量配合する必要がある。詳しくは、上述の脂肪酸アルキルエステル化合物のうち、ミリスチン酸アルキルエステル、パルミチン酸アルキルエステルおよびステアリン酸アルキルエステルから選ばれる脂肪酸アルキルエステル化合物(A)のいずれか1種以上を含有しなければならない。また、ラウリン酸アルキルエステル、オレイン酸アルキルエステル、リノール酸アルキルエステルおよびリノレン酸アルキルエステルから選ばれる脂肪酸アルキルエステル化合物(B)のいずれか1種以上を含有しなければならない。また、この際、前述3種の脂肪酸アルキルエステル化合物(A)の質量含有量の総和を、後述4種の脂肪酸アルキルエステル化合物(B)の質量含有量の総和で除した値(C)、すなわち、C=脂肪酸アルキルエステル(A)の質量含有量の総和/脂肪酸アルキルエステル(B)の質量含有量の総和、が0.1以上であることが必要である。この値は脂肪酸アルキルエステル混合物の全体的な特性を表す指標であり、この値が小さいと低温における流動性が悪化してしまう。本軽油組成物はJIS規格2号軽油に相当する性能を有することが必要であるため、この値は0.1以上であることが必要であり、0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.4以上であることがさらに好ましい。また、この値が過度に大きいと排ガス性能が悪化すること、及びJIS規格2号軽油の範疇において流動性改善効果を有するためには、2.0以下であることが必要であり、1.8以下であることが好ましく、1.6以下であることがより好ましく、1.4以下であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明の軽油組成物に配合される脂肪酸アルキルエステル混合物の平均分子量は500以下であることが必要である。平均分子量とは含有する化合物の含有比率と分子量を掛け合わせて加算した平均的な分子量を意味する。この値が過度に大きいと低温時に流動性が悪化する傾向があるため、500以下であることが必要であり、450以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましい。
【0048】
また、本発明の軽油組成物に配合される脂肪酸アルキルエステル混合物の全酸価は1.0mgKOH/g以下であること必要である。全酸価は混合物内の遊離脂肪酸量を示しているため、この値が大きいと酸性化合物による部材への悪影響が懸念される。そのため、全酸価は1.0mgKOH/g以下であることが必要であり、0.9mgKOH/g以下であることが望ましく、0.8mgKOH/g以下であることがより好ましい。ここでいう全酸価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」により測定される全酸価を意味する。
【0049】
本発明の軽油組成物に配合される脂肪酸アルキルエステル混合物の硫黄分含有量は5質量ppm以下であることが必要である。硫黄分が高い場合は、エンジンに装着されている排ガス後処理装置への悪影響が大きく、またエステル化反応上では硫黄分は存在しないことから多成分とのコンタミネーションが考えられるため、硫黄分含有量は5質量ppm以下であることが必要であり、4質量ppm以下であることが好ましく、3質量ppm以下であることがより好ましく、2質量ppm以下であることが更に好ましく、1質量ppm以下であることが最も好ましい。なお、ここでいう硫黄分含有量とは、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される混合物全量基準の硫黄分の質量含有量を意味する。
【0050】
本発明における軽油組成物は、前述の所定の性状を有する水素化精製油と所定の性状を有する脂肪酸アルキルエステル混合物を適量配合することによって得られる。両者の配合比率は、以下の式を満たすものでなければならない。
RBDF=(−5×C×FAME+HDS×(2×PA+PN))/100
2≦RBDF≦10
RBDF:BDF指数
C:脂肪酸アルキルエステル(A)の質量含有量の総和/脂肪酸アルキルエステル(B)の質量含有量の総和
FAME:脂肪酸アルキルエステル混合物配合量(容量%)
HDS:水素化精製油配合量(容量%)
PA:水素化精製油中の2環以上の芳香族分含有量(容量%)
PN:水素化精製油中の2環以上のナフテン分含有量(容量%)
【0051】
ここでRBDFをBDF指数と称する。BDF指数は本発明者らが数多くの実験により見いだした関係式であり、これは以下の内容を表示するものである。
燃料中の2環以上の芳香族化合物(多環芳香族分)がPMや窒素酸化物(NOx)等に悪影響を及ぼすことは周知であるが、重質である2環以上のナフテン化合物(多環ナフテン分)も悪影響の要因となっていることを本発明者らは把握した。同時に低温流動性能への影響等も鑑みた場合、その影響度合いは、多環芳香族分2に対して多環ナフテン分1の割合であった。
これに対し、脂肪酸アルキルエステル混合物は、含酸素化合物であること及び熱分解しやすい構造であることから、PM生成を抑制する効果及び燃焼を改善し、燃費や出力を向上させる効果を有している反面、NOx排出の悪化や低温流動性の悪化を引き起こす要因を有している。これらの現象は、脂肪酸アルキルエステル混合物が有する脂肪酸構造、特定の飽和脂肪酸と特定の不飽和脂肪酸の含有比の影響に大きく起因していることを本発明者らは把握した。また、同時に低温流動性能に関してもこの含有比の影響が大きいものであった。なお、ラウリン酸は飽和脂肪酸であるものの、これらの現象に関しては不飽和脂肪酸と同様の挙動を示すことを本発明者らは見いだしたため、ラウリン酸は不飽和脂肪酸として取り扱い、含有比算出時にも不飽和脂肪酸とラウリン酸の合計で評することにした。
【0052】
上述の多環芳香族分及び多環ナフテン分による影響と脂肪酸アルキルエステル混合物との影響度合いを検討した結果、これらに一次の相関関係があることを本発明者らは見いだした。排ガス性能、燃費性能及び低温流動性能等を鑑みた場合、これら3者の影響度合いは、脂肪酸アルキルエステル混合物:−5×(特定の飽和脂肪酸アルキルエステルの含有量/(不飽和脂肪酸アルキルエステルとラウリン酸アルキルエステルの合計の含有量))、多環芳香族分:2、多環ナフテン分:1という関連を見いだした。すなわち、本関係式は、この比率での製造を行うことで、排ガス性能、燃費性能、低温性能等を同時に向上させる燃料品質を得ることができることを見いだしたものであり、PM、NOx及び燃費性能を同時に改善させることが可能となった。
【0053】
本式が意味するところは、脂肪酸アルキルエステル化合物と多環芳香族化合物および多環ナフテン化合物の排ガス及び燃費に対する影響度合いが大きくかつその方向が逆に働いていることを示すものである。すなわち、含酸素化合物である脂肪酸アルキルエステル化合物はPM改善能を有するもののNOx悪化能、燃費悪化能も有している。対して多環芳香族化合物および多環ナフテン化合物がPM悪化能、若干のNOx悪化能を有するものの燃費改善能を有している。
【0054】
本発明にかかる軽油組成物においては、本発明の軽油組成物において規定される性状及び効果をより容易に且つ確実に達成することができ、脂肪酸アルキルエステル混合物との相乗作用が達成させるため、上式で示されるRBDFは2以上であることが必要であり、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましい。また、同様の理由により、上式で示されるRBDFは10以下であることが必要であり、9以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。
【0055】
なお、本発明において、脂肪酸アルキルエステル混合物配合量は、上述の条件を満たしている限りにおいて制約を受けないが、本発明の性状及び効果を容易にかつ確実に得るためには、3容量%以上が好ましく、5容量%以上がより好ましく、7容量%以上がさらに好ましく、10容量%以上が特に好ましい。同様に脂肪酸アルキルエステル混合物の配合量は50容量%以下が好ましく45容量%以下がより好ましく、40容量%以下がさらに好ましい。脂肪酸アルキルエステル混合物配合量が極めて多い場合は、燃料の酸化安定性等に問題が生じてしまい、所定の効果も発揮できなくなる。
【0056】
本発明の軽油組成物において、体積弾性率は1350MPa以上1550MPa以下である必要がある。
一般に軽油のような圧縮性のある流体に高い圧力を加えた場合、その場の温度、圧力に応じて流体自身が圧縮し、密度(流量あたりの体積)が変化する性質を持つ。この物体の圧縮弾性率を体積弾性率(単位はMPa)と定義している。ディーゼル燃料噴射を想定した場合、燃料流体に対する体積弾性率は、燃料がおかれている雰囲気の温度、圧力と同時に燃料自身の物理特性、組成に応じた一定の割合で変化する。従って、電子制御式燃料噴射ポンプのように、高圧で高精度な噴射特性を持つ噴射系において、設定通りの燃料噴射量や噴射率を維持するためには、体積弾性率が安定した数値を示す燃料が必要である。この値の安定化がNOx、PM及び微小粒子等の低減に繋がる。従って、本発明の軽油組成物では、その体積弾性率は1350MPa以上1550MPa以下であることが必要であり、1370MPa以上1500MPa以下であることが好ましい。
【0057】
なお、体積弾性率は単一の燃料物理特性、組成によって支配されるものではなく、複数の物理特性、組成の影響を複合的に受けた結果として定義されるものであるため、他の物理特性、組成と並行して捉えるべき燃料特性と考えることが、技術的見地から妥当である。
体積弾性率の測定方法には、現時点において決まった公定方法は存在していないが、図1に概要を説明する。温度、圧力変化に伴う容器自体の容積変化が、同じ環境の変化における燃料の容積変化に対して十分小さいことが実証できる材料および構造からなる定容容器の中に測定対象となる燃料を封入する。このとき容器内は測定対象燃料だけで満たされている必要がある。この定容容器に、温度、圧力変化に伴うピストン自体の容積変化が、同じ環境の変化における燃料の容積変化に対して十分小さいことが実証できる材料および構造からなる定容積のピストンを挿入し、容器内容積を変化させる。測定対象の燃料はその圧縮弾性特性に従い圧縮されるため、結果として容器内の圧力が変化することになる。この圧力を測定することにより、体積弾性率を算出している。
【0058】
本発明の軽油組成物においては、貯蔵安定性の点から、酸化安定性試験後の全不溶解分が2.0mg/100mL以下であることが必要であり、1.5mg/100mL以下であることがより好ましく、1.0mg/100mL以下であることがさらに好ましく、0.5mg/100mL以下であることがさらにより好ましい。なお、ここでいう酸化安定性試験とは、ASTM D2274−94に準拠して、95℃、酸素バブリング下、16時間の条件で実施するものである。また、ここでいう酸化安定性試験後の全不溶解分とは、前記酸化安定性試験に準拠して測定される値を意味する。
【0059】
本発明の軽油組成物は、貯蔵安定性、部材への適合性の点から、上記酸化安定性試験後の過酸化物価は、好ましくは10質量ppm以下、より好ましくは5質量ppm以下、さらに好ましくは2質量ppm以下、さらにより好ましくは1質量ppm以下である。なお、ここでいう過酸化物価とは石油学会規格JPI−5S−46−96に準拠して測定される値を意味する。
本発明の軽油組成物には、全不溶解分や過酸化物価を低減するために、酸化防止剤や金属不活性剤等の添加剤を適宜添加することができる。
【0060】
本発明における軽油組成物は、JIS2号軽油規格を満たすものであることが必要である。JIS2号軽油規格とは、JIS K 2204「軽油」に規定された「種類2号」を満足させる規格であり、具体的には引火点50℃以上、90%留出温度350℃以下、流動点−7.5℃以下、目詰まり点(CFPP)−5℃以下、10%残油の残留炭素分0.1質量%以下、セタン指数45以上、30℃における動粘度2.5mm2/s以上、硫黄分0.05質量%以下であることが必要である。また、あわせて本発明における軽油組成物はJIS K 2204−1996解説に示された「軽油使用ガイドライン」で示される2号軽油使用ガイドラインに準じて使用されることが好ましい。
【0061】
本発明の軽油組成物の引火点JIS2号軽油規格である50℃以上を満たす必要がある。引火点が50℃に満たない場合には、安全上の理由により軽油組成物として取り扱うことができない。同様の理由により、引火点は54℃以上であることが好ましく、58℃以上であることがより好ましい。なお、本発明でいう引火点はJIS K 2265「原油及び石油製品引火点試験方法」で測定される値を示す。
【0062】
本発明の軽油組成物のセタン指数はJIS2号軽油規格である45以上を満たす必要がある。セタン指数が45に満たない場合には、排出ガス中のPM、アルデヒド類、あるいはさらにNOxの濃度が高くなる傾向にある。また、同様の理由により、セタン指数は48以上であることが好ましく、51以上であることが最も好ましい。なお、本発明でいうセタン指数とは、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」によって算出される価を意味する。ここで、上記JIS規格におけるセタン指数は、一般的にはセタン価向上剤を添加していない軽油に対して適用されるが、本発明ではセタン価向上剤を添加した軽油組成物についても上記「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」を適用し、当該算出方法により算出される値をセタン指数として表す。
【0063】
本発明の軽油組成物におけるセタン価は、好ましくは52以上であり、より好ましくは54以上であり、さらに好ましくは55以上である。セタン価が52に満たない場合には、排出ガス中のNOx、PM及びアルデヒド類の濃度が高くなりやすい。また、排ガス中の黒煙低減の観点から、セタン価は80以下であることが好ましく、75以下であることがより好ましく、70以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいうセタン価とは、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「7.セタン価試験方法」に準拠して測定されるセタン価を意味する。
【0064】
本発明の軽油組成物においては、必要に応じてセタン価向上剤を適量配合し、得られる軽油組成物のセタン価を向上させることができる。
セタン価向上剤としては、軽油のセタン価向上剤として知られる各種の化合物を任意に使用することができ、例えば、硝酸エステルや有機過酸化物等が挙げられる。これらのセタン価向上剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0065】
本発明においては、上述のセタン価向上剤の中でも硝酸エステルを用いることが好ましい。かかる硝酸エステルには、2−クロロエチルナイトレート、2−エトキシエチルナイトレート、イソプロピルナイトレート、ブチルナイトレート、第一アミルナイトレート、第二アミルナイトレート、イソアミルナイトレート、第一ヘキシルナイトレート、第二ヘキシルナイトレート、n−ヘプチルナイトレート、n−オクチルナイトレート、2−エチルヘキシルナイトレート、シクロヘキシルナイトレート、エチレングリコールジナイトレートなどの種々のナイトレート等が包含されるが、特に、炭素数6〜8のアルキルナイトレートが好ましい。
【0066】
セタン価向上剤の含有量は、組成物全量基準で500質量ppm以上であることが好ましく、600質量ppm以上であることがより好ましく、700質量ppm以上であることがさらに好ましく、800質量ppm以上であることがさらにより好ましく、900質量ppm以上であることが最も好ましい。セタン価向上剤の含有量が500質量ppmに満たない場合は、十分なセタン価向上効果が得られず、ディーゼルエンジン排出ガスのPM、アルデヒド類、さらにはNOxが十分に低減されない傾向にある。また、セタン価向上剤の含有量の上限値は特に限定されないが、軽油組成物全量基準で、1400質量ppm以下であることが好ましく、1250質量ppm以下であることがより好ましく、1100質量ppm以下であることがさらに好ましく、1000質量ppm以下であることが最も好ましい。
【0067】
セタン価向上剤は、常法に従い合成したものを用いてもよく、また、市販品を用いてもよい。なお、セタン価向上剤と称して市販されているものは、セタン価向上に寄与する有効成分(すなわちセタン価向上剤自体)を適当な溶剤で希釈した状態で入手されるのが通例である。このような市販品を使用して本発明の軽油組成物を調製する場合には、軽油組成物中の当該有効成分の含有量が上述の範囲内となることが好ましい。
【0068】
本発明の軽油組成物においては、上記セタン価向上剤以外の添加剤を必要に応じて配合することができ、特に、潤滑性向上剤および/または清浄剤が好ましく配合される。
潤滑性向上剤としては、例えば、カルボン酸系、エステル系、アルコール系およびフェノール系の各潤滑性向上剤の1種又は2種以上が任意に使用可能である。これらの中でも、カルボン酸系及びエステル系の潤滑性向上剤が好ましい。
カルボン酸系の潤滑性向上剤としては、例えば、リノ−ル酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸及び上記カルボン酸の2種以上の混合物が例示できる。
エステル系の潤滑性向上剤としては、グリセリンのカルボン酸エステルが挙げられる。カルボン酸エステルを構成するカルボン酸は、1種であっても2種以上であってもよく、その具体例としては、リノ−ル酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸等がある。
【0069】
潤滑性向上剤の配合量は、HFRR摩耗痕径(WS1.4)が後述の好ましい範囲内であれば特に制限されないが、組成物全量基準で35質量ppm以上であることが好ましく、50質量ppm以上であることがより好ましい。潤滑性向上剤の配合量が前記の範囲内であると、配合された潤滑性向上剤の効能を有効に引き出すことができ、例えば分配型噴射ポンプを搭載したディーゼルエンジンにおいて、運転中のポンプの駆動トルク増を抑制し、ポンプの摩耗を低減させることができる。また、配合量の上限値は、それ以上加えても添加量に見合う効果が得られないことから、組成物全量基準で150質量ppm以下であることが好ましく、105質量ppm以下であることがより好ましい。
【0070】
清浄剤としては、例えば、イミド系化合物;ポリブテニルコハク酸無水物とエチレンポリアミン類とから合成されるポリブテニルコハク酸イミドなどのアルケニルコハク酸イミド;ペンタエリスリトールなどの多価アルコールとポリブテニルコハク酸無水物から合成されるポリブテニルコハク酸エステルなどのコハク酸エステル;ジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ビニルピロリドンなどとアルキルメタクリレートとのコポリマーなどの共重合系ポリマー、カルボン酸とアミンの反応生成物等の無灰清浄剤等が挙げられ、中でもアルケニルコハク酸イミド及びカルボン酸とアミンとの反応生成物が好ましい。これらの清浄剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0071】
アルケニルコハク酸イミドを使用する例としては、分子量1000〜3000程度のアルケニルコハク酸イミドを単独使用する場合と、分子量700〜2000程度のアルケニルコハク酸イミドと分子量10000〜20000程度のアルケニルコハク酸イミドとを混合して使用する場合とがある。
カルボン酸とアミンとの反応生成物を構成するカルボン酸は1種であっても2種以上であってもよく、その具体例としては、炭素数12〜24の脂肪酸および炭素数7〜24の芳香族カルボン酸等が挙げられる。炭素数12〜24の脂肪酸としては、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、炭素数7〜24の芳香族カルボン酸としては、安息香酸、サリチル酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、カルボン酸とアミンとの反応生成物を構成するアミンは、1種であっても2種以上であってもよい。ここで用いられるアミンとしては、オレイルアミンが代表的であるが、これに限定されるものではなく、各種アミンが使用可能である。
【0072】
清浄剤の配合量は特に制限されないが、清浄剤を配合した効果、具体的には、燃料噴射ノズルの閉塞抑制効果を引き出すためには、清浄剤の配合量を組成物全量基準で30質量ppm以上とすることが好ましく、60質量ppm以上とすることがより好ましく、80質量ppm以上とすることがさらに好ましい。30質量ppmに満たない量を添加しても効果が現れない可能性がある。一方、配合量が多すぎても、それに見合う効果が期待できず、逆にディーゼルエンジン排出ガス中のNOx、PM、アルデヒド類等を増加させる恐れがあることから、清浄剤の配合量は300質量ppm以下であることが好ましく、180質量ppm以下であることがより好ましい。
【0073】
なお、先のセタン価向上剤の場合と同様、潤滑性向上剤又は清浄剤と称して市販されているものは、それぞれ潤滑性向上または清浄に寄与する有効成分が適当な溶剤で希釈された状態で入手されるのが通例である。このような市販品を本発明の軽油組成物に配合する際には、軽油組成物中の当該有効成分の含有量が上述の範囲内となることが好ましい。
【0074】
また、本発明における軽油組成物の性能をさらに高める目的で、後述するその他の公知の燃料油添加剤(以下、便宜上「その他の添加剤」という)を単独で、または数種類組み合わせて添加することもできる。その他の添加剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アルケニルコハク酸アミドなどの低温流動性向上剤;フェノール系、アミン系などの酸化防止剤;サリチリデン誘導体などの金属不活性化剤;ポリグリコールエーテルなどの氷結防止剤;脂肪族アミン、アルケニルコハク酸エステルなどの腐食防止剤;アニオン系、カチオン系、両性系界面活性剤などの帯電防止剤;アゾ染料などの着色剤;シリコン系などの消泡剤等が挙げられる。
その他の添加剤の添加量は任意に決めることができるが、添加剤個々の添加量は、軽油組成物全量基準でそれぞれ好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。
【0075】
また、本発明にかかる軽油組成物の15℃における密度は、発熱量確保の点から、800kg/m3以上であることが好ましく、805kg/m3以上がより好ましく、810kg/m3以上がさらに好ましい。また、当該密度は、NOx、PMの排出量を低減する点から、850kg/m3以下であることが好ましく、845kg/m3以下がより好ましく、840kg/m3以下がさらに好ましい。なお、ここでいう密度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を意味する。
【0076】
本発明の軽油組成物は、HFRR摩耗痕径(WS1.4)が好ましくは410μm以下、より好ましくは380μm以下となる潤滑性能を有することが望ましい。HFRR摩耗痕径(WS1.4)が410μmを超える場合は、特に分配型噴射ポンプを搭載したディーゼルエンジンにおいて、運転中のポンプの駆動トルク増、ポンプ各部の摩耗増を引き起こし、排ガス性能、微小粒子性能の悪化のみならずエンジン自体が破壊される恐れがある。また、高圧噴射が可能な電子制御式燃料噴射ポンプにおいても、摺動面等の摩耗が懸念される。
なお、本発明でいうHFRR摩耗痕径(WS1.4)とは、社団法人石油学会から発行されている石油学会規格JPI−5S−50−98「軽油−潤滑性試験方法」により測定される値を意味する。
【0077】
本発明の軽油組成物における硫黄分含有量は、水素化精製油及び脂肪酸アルキルエステル混合物が所定の値を満たしていれば特に制限はないが、環境負荷低減効果を高めるためには8質量ppm以下であることが好ましく、5質量ppm以下がより好ましく、3質量ppm以下がさらに好ましく、1質量ppm以下が更により好ましい。なお、ここでいう硫黄分含有量とは、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される、軽油組成物全量を基準とした硫黄分の含有量を意味する。
【0078】
本発明の軽油組成物における芳香族分含有量は、水素化精製油及び脂肪酸アルキルエステル混合物が所定の値を満たしていれば特に制限はないが、環境負荷低減効果を高め、NOx及びPM低減の観点から、20容量%以下であることが好ましく、より好ましくは15容量%以下、さらに好ましくは10容量%以下である。また、当該芳香族分含有量は3容量%以上である必要があり、好ましくは5容量%以上である。当該芳香族分含有量が3容量%に満たないと、噴射ポンプに使用されている材料への影響が懸念される。
【0079】
本発明の軽油組成物におけるナフテン化合物含有量は、水素化精製油及び脂肪酸アルキルエステル混合物が所定の値を満たしていれば特に制限はないが、環境負荷低減効果を高めるためには、ナフテン化合物含有量は95容量%以下であることが好ましく、90容量%以下であることがより好ましく、85容量%以下であることがさらに好ましく、80容量%以下であることが最も好ましい。また、当該ナフテン化合物含有量は、燃費及び出力改善の面から10容量%以上が必要であり、20容量%以上であることが好ましく、30容量%以上であることがより好ましい。また、本発明でいうナフテン化合物含有量は、ASTM D2786「Standard Test Method for Hydrocarbon Types Analysis of Gas−Oil Saturates Fractions by High Ionizing Voltage Mass Spectrometry」に準拠して測定されるナフテン分の容量百分率(容量%)を意味する。
【0080】
本発明における水分含有量は、燃料タンク等への部材への悪影響、及びエステル化合物の加水分解抑制の観点から、300容量ppm以下であることが好ましく、250容量ppm以下であることがより好ましく、200容量ppm以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいう水分とは、JIS K 2275「水分試験方法(原油及び石油製品)」で規定される水分である。
【0081】
本発明の軽油組成物の目詰まり点(CFPP)は、JIS2号軽油規格である−5℃以下を満たす必要がある。さらに、ディーゼル車のプレフィルタ閉塞防止の点から、−6℃以下であることが好ましく、−7℃以下であることがより好ましい。ここで目詰まり点とはJIS K 2288「軽油−目詰まり点試験方法」により測定される目詰まり点を指す。
【0082】
また、本発明の軽油組成物における流動点は、JIS2号軽油規格である−7.5℃以下を満たす必要がある。さらに、低温始動性ないしは低温運転性の観点、並びに電子制御式燃料噴射ポンプにおける噴射性能維持の観点から、−10℃以下であることが好ましい。ここで流動点とは、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」により測定される流動点を意味する。
【0083】
本発明の軽油組成物における蒸留性状としては、水素化精製油及び脂肪酸アルキルエステル混合物が所定の値を満たし、かつJIS2号軽油規格である90%留出温度350℃以下を満たす必要がある。好ましくは340℃以下、より好ましくは330℃以下である。90%留出温度が前記上限値を超えると、PMや微小粒子の排出量が増加する傾向にある。また、90%留出温度は、好ましくは280℃以上、より好ましくは285℃以上、さらに好ましくは290℃以上、さらにより好ましくは295℃以上、最も好ましくは300℃以上である。90%留出温度が前記下限値に満たないと、燃費向上効果が不十分となり、エンジン出力が低下する傾向にある。10%留出温度には特に制限はないが、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは230℃以下、さらにより好ましくは220℃以下である。10%留出温度が前記上限値を超えると、排ガス性能が悪化する傾向にある。また、10%留出温度は、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。10%留出温度が前記下限値に満たないと、エンジン出力や高温時の始動性が悪化する傾向にある。なお、ここでいう10%留出温度、90%留出温度とは、全てJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」により測定される値を意味する。
【0084】
本発明の軽油組成物の30℃における動粘度は、水素化精製油及び脂肪酸アルキルエステル混合物が所定の値を満たし、かつJIS2号軽油規格である2.5mm2/s以上であることが必要であり、2.7mm2/s以上であることが好ましく、3.0mm2/s以上であることがより好ましい。当該動粘度が2.5mm2/sに満たない場合は、燃料噴射ポンプ側の燃料噴射時期制御が困難となる傾向にあり、またエンジンに搭載された燃料噴射ポンプの各部における潤滑性が損なわれるおそれがある。また、本発明の軽油組成物の30℃における動粘度は5mm2/s以下であることが好ましく、4.7mm2/s以下であることがより好ましく、4.5mm2/s以下であることがさらに好ましい。当該動粘度が5mm2/sを超えると、燃料噴射システム内部の抵抗が増加して噴射系が不安定化し、排出ガス中のNOx、PMの濃度が高くなってしまう。なお、ここでいう動粘度とは、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定される動粘度を意味する。
【0085】
本発明の軽油組成物における10%残油の残留炭素分は、JIS2号軽油規格である0.1質量%以下を満たす必要がある。さらに、微小粒子やPM低減の観点、並びにエンジンに搭載される排ガス後処理装置の性能維持の観点から、0.08質量%以下であることが好ましく、0.06質量%以下であることがより好ましい。なお、ここでいう10%残油の残留炭素分とは、JIS K 2270「原油及び石油製品−残留炭素分試験方法」により測定される10%残油の残留炭素分を意味する。
【0086】
本発明の軽油組成物においては、灰分の含有量が0.01質量%未満であることが好ましい。灰分の含有量が前記上限値を超えると、エンジンでの燃焼過程中に灰分がPMの核となり、PM全体の量及びナノ粒子の量が増加してしまう。また、灰分のまま排出された場合であっても、灰分が排ガス後処理装置に堆積してしまい、後処理装置の性能低下を招いてしまうことがある。さらには、燃料噴射系に対する悪影響も考えられる。
なお、本発明でいう灰分とは、JIS K 2272「原油及び石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」によって測定される値を意味する。
【0087】
また、本発明における軽油組成物における導電率は特に限定されないが、安全性の点から50pS/m以上であることが好ましい。
本発明の軽油組成物には、導電率を改善するために、適宜帯電防止剤等を添加することができる。なお、ここでいう導電率とは、JIS K 2276「石油製品−航空燃料油試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
【0088】
【発明の効果】
以上のように、本発明の軽油組成物は、上記の特定の性状を有する水素化精製油と上記特定の性状を有する脂肪酸アルキルエステル混合物を適量混合し、所定の性状を満足させた軽油組成物とすることにより、従来の軽油組成物では実現が困難であったエンジンから排出される粒子状物質(PM)及び微小粒子と窒素酸化物を同時に低減し、燃費を向上させ、部材への影響が少なく、低温始動性に優れた性能を有することができる。
【0089】
【実施例】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0090】
(実施例1〜6および比較例1)
表1に示す性状を有する水素化精製油および脂肪酸アルキルエステル混合物に、添加剤を配合して表2に示す軽油組成物を調製した(実施例1〜6及び比較例1)。
なお、使用した添加剤は以下のとおりである。
セタン価向上剤:2−エチルヘキシルナイトレ−ト
潤滑性向上剤:リノ−ル酸を主成分とするカルボン酸混合物
清浄剤:オレイン酸を主成分とするカルボン酸混合物とオレイルアミンとの反応生成物
低温流動性向上剤:エチレン−酢酸ビニル共重合体
【0091】
調合した軽油組成物の調合比率、及びこの調合した軽油組成物に対して、15℃における密度、30℃における動粘度、引火点、硫黄分含有量、蒸留性状、セタン価及びセタン指数、流動点、目詰まり点、10%残油の残留炭素分、体積弾性率、灰分、水分、酸化安定性試験後の全不溶解分、過酸化物価、導電率、摩耗痕径を測定した結果を表2に示す。
【0092】
なお、燃料油の性状は以下の方法により測定した。
密度は、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を指す。
動粘度は、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定される動粘度を指す。
硫黄分含有量は、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される軽油組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を指す。
【0093】
蒸留性状は、全てJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」によって測定される値である。
芳香族分含有量及び2環以上の芳香族分含有量は、社団法人石油学会により発行されている石油学会法JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠され測定された芳香族分含有量の容量百分率(容量%)を意味する。
ナフテン化合物含有量は、ASTM D2786「Standard Test Method for Hydrocarbon Types Analysis of Gas−Oil Saturates Fractions by High Ionizing Voltage Mass Spectrometry」に準拠して測定されるナフテン分の容量百分率(容量%)を意味する。
水分は、JIS K 2275「水分試験方法(原油及び石油製品)」で規定される水分を意味する。
引火点はJIS K 2265「原油及び石油製品引火点試験方法」で測定される値を示す。
全酸価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」により測定される全酸価を意味する。
【0094】
セタン指数は、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」によって算出した価を指す。なお、上記JIS規格におけるセタン指数は、セタン価向上剤を添加したものに対しては適用されないが、本発明ではセタン価向上剤を添加したもののセタン指数も、上記「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」によって算出した値を表すものとする。
セタン価は、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「7.セタン価試験方法」に準拠して測定されるセタン価を意味する。
【0095】
潤滑性能およびHFRR摩耗痕径(WS1.4)とは、社団法人石油学会から発行されている石油学会規格JPI−5S−50−98「軽油−潤滑性試験方法」により測定される潤滑性能を指す。
目詰まり点は、JIS K 2288「軽油−目詰まり点試験方法」により測定される目詰まり点を指す。
流動点は、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」により測定される流動点を指す。
10%残油の残留炭素分とは、JIS K 2270「原油及び石油製品−残留炭素分試験方法」により測定される10%残油の残留炭素分を意味する。
灰分は、JIS K 2272「原油及び石油製品の灰分並びに硫酸灰分試験方法」によって測定される値を意味する。
酸化安定性試験後の全不溶解分とは、ASTM D2274−94に準拠して、95℃、酸素バブリング下、16時間の条件で測定される値を意味する。
過酸化物価とは、石油学会規格JPI−5S−46−96に準拠して測定される値を意味する。
導電率とは、JIS K 2276「石油製品−航空燃料油試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
実施例および比較例で使用した軽油組成物は、表2に示すとおり、水素化精製油と脂肪酸アルキルエステル混合物を特定の配合割合で調合したものである。
表2から明らかなように、90%留出温度(T90)、80%留出温度と20%留出温度の差(T80−T20)、硫黄分含有量、1環ナフテン分含有量、1環芳香族分含有量およびエステル係数(C)が、いずれも本発明で規定される範囲内である水素化精製油と脂肪酸アルキルエステル混合物を、本発明で規定される範囲内で配合した実施例1〜6においては、JIS規格2号軽油の性状を満足し、かつ体積弾性率が1350MPa以上1550MPa以下、酸化安定性試験後の全不溶解分が2.0mg/100mL以下である軽油組成物を容易にかつ確実に得ることができた。一方、上記特定の水素化精製油および脂肪酸アルキルエステル混合物を用いずに軽油組成物を調製した比較例1においては、本発明の目的とする軽油組成物は必ずしも得られない。
【0099】
次に実施例1〜6及び比較例1の各軽油組成物を用いて、以下に示す各種試験を行った。全ての試験結果を表3に示す。表3の結果から分かるように、実施例1〜6の軽油組成物は、比較例1の軽油組成物に比べ、PMおよび粒子個数が少なく、窒素酸化物が少なく、燃費が良好であり、低温始動性が良好であり、かつゴム膨潤性能に優れていることが明らかである。
【0100】
なお、車両試験に係わる試験方法は、同別添27「ディーゼル自動車10・15モード排出ガス測定の技術基準」に準拠している。
【0101】
(車両排ガス試験、燃費試験)
下記に示すディーゼルエンジン搭載車両(車両1)を用いて、PM、窒素酸化物及び燃費の測定を行った。PMは全量希釈トンネルにて希釈した排ガスを炭化フッ素被膜ガラス繊維フィルタで捕集し、分析した。試験モードは、図2に示す実走行を模擬した過渡運転モードで行い、排ガス成分は試験モード1kmあたりの排出量として算出し、比較例1の燃料を供試した場合の結果を100として、各結果を相対的に比較、定量化した。燃費は試験モード中に消費した燃料容積流量を燃料温度補正し、重量値に置き換えた値について、比較例1の燃料を供試した場合の結果を100として、各結果を相対的に比較、定量化した。
【0102】
(車両諸元):車両1
エンジン種類:インタークーラー付過給直列4気筒ディ−ゼル
排気量 :3L
圧縮比 :18.5
最高出力 :125kW/3400rpm
最高トルク:350Nm/2400rpm
規制適合 :平成9年度排ガス規制適合
車両重量 :1900kg
ミッション:4AT
排ガス後処理装置:酸化触媒
【0103】
(微小粒子測定)
粒子数の測定の際には、図3に示す走査型モビリティ粒径分析装置を使用し、粒子の粒径ごとに分離と粒子数の検出を行った。すなわち、図3に示した装置において、希釈された排ガスサンプルを通す流路には、その上流から順に、荷電分布制御部a、分級部b、粒子数計測部cが設けられている。希釈された排ガス中の微小粒子は、荷電分布制御部aで平衡荷電分布状態となり、分級部bで粒子それぞれの電気移動度に従い分級(分離)される。そして、粒子数計測部cにおいて、粒径ごとに分離された粒子が計測される。
試験は、排ガス試験と同様に車両1を図2に示す試験モードで運転し、上記装置にて試験期間中に捕集された粒子を、総粒子数と直径100nm以下の粒子(ナノ粒子)とに区分し、比較例1の燃料を供試した場合の結果を100として、各結果を相対的に比較、定量化した。
【0104】
(低温始動性)
車両1を用い、環境温度の制御が可能なシャーシダイナモメータ上で、室温で、▲1▼供試ディーゼル自動車の燃料系統を評価燃料でフラッシング(洗浄)、▲2▼フラッシング燃料の抜き出し、▲3▼メインフィルタの新品への交換、▲4▼燃料タンクに評価燃料の規定量(供試車両の燃料タンク容量の1/2)の張り込みを行う。その後、▲5▼環境温度を室温から5℃まで急冷し、▲6▼5℃で1時間保持した後、▲7▼1℃/hの冷却速度で所定の温度(−6℃)に達するまで徐冷し、▲8▼所定の温度で1時間保持した後、エンジンを始動させる。10秒間のクランキングを30秒間隔で2回繰り返しても始動しない場合は不可(×)、クランキングを2回繰り返す間でエンジンが始動した場合は可(◯)とした。
【0105】
(ゴム膨潤試験)
エンジン部品のO−リング等で使用されているゴム部材に対する影響を確認するため、以下に示す手順で浸せき試験を行った。ゴムを構成している化合物の1つであるアクリロニトリルが結合アクリロニトリル質量中心値として、全体の25%以上35%以下であるニトリルゴム(中ニトリルゴム)を評価対象のゴム部材とし、MIL R6855に準拠して試験燃料を100℃に加熱、保持し、その中に試験ゴム部材を70時間浸せきさせる。評価は70時間後の試験ゴム部材の体積変化で比較、定量化する。判定は試験前後における体積変化率絶対値が±20%以上の場合を不合格(×)とし、±10%以上±20%以内の場合をボーダーライン(△)、±10%以内の場合を合格(○)とする。
【0106】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】軽油組成物の体積弾性率の測定に使用される装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】排ガス試験における試験モードを示す図である。
【図3】粒子数の測定に使用する走査型モビリティ粒径分析装置の概略図である。
【符号の説明】
1 定容容器
2 供給弁
3 排出弁
4 温度センサ
5 圧力センサ
6 ピストン
100 軽油組成物
a 荷電分布制御部
b 分級部
c 粒子数計測部
Claims (3)
- 硫黄分含有量が8質量ppm以下、1環ナフテン分含有量が10容量%以上、1環芳香族分含有量が20容量%以下、90%留出温度が270℃以上350℃以下、かつ80%留出温度と20%留出温度の差が50℃以上150℃以下の水素化精製油に、ミリスチン酸アルキルエステル、パルミチン酸アルキルエステルおよびステアリン酸アルキルエステルから選択される脂肪酸アルキルエステル(A)のいずれか1種以上を含有し、ラウリン酸アルキルエステル、オレイン酸アルキルエステル、リノール酸アルキルエステルおよびリノレン酸アルキルエステルから選択される脂肪酸アルキルエステル(B)のいずれか1種以上を含有し、脂肪酸アルキルエステル(A)の質量含有量の総和/脂肪酸アルキルエステル(B)の質量含有量の総和が0.1以上2.0以下であり、かつ脂肪酸アルキルエステル混合物としての平均分子量が500以下、全酸価1.0mgKOH/g以下、硫黄分含有量5質量ppm以下である脂肪酸アルキルエステル混合物を、以下の式で示す容量割合だけ配合してなる、体積弾性率が1350MPa以上1550MPa以下、酸化安定性試験後の全不溶解分が2.0mg/100mL以下であることを特徴とするJIS2号軽油規格を満たす軽油組成物。
RBDF=(−5×C×FAME+HDS×(2×PA+PN))/100
2≦RBDF≦10
RBDF:BDF指数
C:脂肪酸アルキルエステル(A)の質量含有量の総和/脂肪酸アルキルエステル(B)の質量含有量の総和
FAME:脂肪酸アルキルエステル混合物配合量(容量%)
HDS:水素化精製油配合量(容量%)
PA:水素化精製油中の2環以上の芳香族分含有量(容量%)
PN:水素化精製油中の2環以上のナフテン分含有量(容量%) - 15℃における密度が800kg/m3以上850kg/m3以下であり、セタン価が52以上、HFRR摩耗痕径(WS1.4)が410μm以下であることを特徴とする請求項1記載の軽油組成物。
- 植物油を原料とした脂肪酸アルキルエステル混合物を配合し、水分含有量300容量ppm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の軽油組成物。
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