JP5030454B2 - 軽油組成物 - Google Patents

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  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Description

本発明は、冬季に使用する軽油組成物に関するものであり、より詳しくはディーゼル燃焼及び予混合圧縮着火燃焼の両者に適する冬季向け軽油組成物に関するものである。
ディーゼル燃焼は、エンジン燃焼室内に噴射した燃料が蒸発し空気と混合して適度な燃料/空気比率の予混合気となりかつ適度な温度条件になった際に着火(予混合燃焼)が始まるとされている。この着火は燃料の蒸留性状等による蒸発性能と、自己着火性能を示すセタン価でその善し悪しを検討している場合が多い。ディーゼル燃焼で更に出力が必要な場合(高負荷域)は、自己着火が起こった後にも燃料を噴射し続ける必要があり、この場合はエンジン燃焼室内部の空気流動等を利用して燃料噴霧を空気雰囲気に拡散させながら燃焼(拡散燃焼)させる必要がある。従って、燃料性状に求められるものは、予混合燃焼を支援する性状と拡散燃焼を支援する性状であるといえる。
これらのディーゼル燃焼から派生した燃焼形態に予混合圧縮着火燃焼があり、その低エミッション性能及び優れた燃費性能から近年注目を受けている。上記ディーゼル燃焼との相違は、燃焼全行程が予混合燃焼であり、拡散燃焼が存在していないことである。しかしながら、上述の通り燃料が有する自己着火性能によって着火が始まってしまうため、特に高負荷域での着火制御が困難であるとされている。そのため、低中負荷のみ予混合圧縮着火燃焼を行い、高負荷域は通常のディーゼル燃焼に切り替える燃焼コンセプトを採用しているエンジンも多い。従って、燃料性状に求められるものは、低負荷域での予混合圧縮着火燃焼を支持する因子と、高負荷域でのディーゼル燃焼を支持する因子の両立であるといえる。
一般に軽油組成物は、基材として、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油に水素化精製処理や水素化脱硫処理を施したもの、原油の常圧蒸留装置から得られる直留灯油に水素化精製処理や水素化脱硫処理を施したものを1種または2種以上配合することにより製造されている。特に、冬場の低温流動性を確保するためには、上記灯油基材と軽油基材の配合比を制御している場合が多く、必要に応じてセタン価向上剤や清浄剤、低温流動性向上剤等の添加剤が配合される(例えば、非特許文献1参照。)。
上述の予混合圧縮着火燃焼向け燃料に関しては、例えば特許文献1に比較的軽質な接触分解軽油を配合し、かつ低セタン価、高密度、高芳香族分含有量を特徴としたディーゼル軽油組成物が開示されている。本文献によれば予混合圧縮着火燃焼用途として優れた低温性能と低NOx、低PM性能を両立できると記載されているが、芳香族分含有量が極めて多いために予混合圧縮着火燃焼のデメリットである未燃燃料分の排出が大きくなることが容易に予想される。また、上述の通り、現在は予混合圧縮着火燃焼と一般のディーゼル燃焼を並行して使用することが多く、本文献の低セタン価、高密度、高芳香族分含有量を特徴とする燃料ではこのような燃焼には全く不適であることは明確である。さらには高芳香族分含有量の影響により、噴射ノズルやEGR(排ガス再循環)制御バルブ等へのすす分、デポジット分の付着も容易に予測されるため、本文献は環境対応燃料としての根本をなしていない。同様に特許文献2、特許文献3、特許文献4では蒸留性状を関数化規定することで予混合圧縮着火燃焼に効果があることを示しているが、上述の通り蒸留性状は燃料の自己着火性を制御する因子を化学的に有しておらず、特に本文献のように早期に燃料を噴射するタイプの予混合圧縮着火燃焼を前提とした場合は、なおさら蒸発特性の影響は小さいと考えられる。また、留分量ではなくT90のような留出量あたりの温度という指標は、燃料の素性を知る目安となりうるものの、絶対的な量的定義ではないため意味をなしてはいない。また、いわゆるセタン価自体は低い値に抑えてあるものの、積極的な着火制御に必要とされる飽和炭化水素化合物の含有量は反面減少する方向にあるため、任意の着火制御はできない燃料であるといえる。従って、これらの定義では自己着火を制御しうる燃料性状とは言い難いことは明確であり、ひいては環境対応燃料の実現には至っていないと考えられる。
また、使用環境を鑑みて、季節ごとに燃料性状を最適化していくことが環境対応型燃料として必要なことである。本発明が範囲とする冬場の使用を前提とした場合、低温流動性に配慮した結果、過度に蒸留性状を軽質化した燃料では噴射ポンプの焼付、キャビテーションダメージや高温再始動性に不具合が生じる可能性が多い。
すなわち、優れた冬季環境下での実用性能と予混合圧縮着火燃焼にも適用できる環境対応性能を同時に有する軽油組成物に求められる要件を高水準で同時に達成できる高品質の燃料を設計することは非常に困難であり、これ以外の燃料油として求められている諸性能を十分満たし、また現実的な製造方法の検討を踏まえた例、知見は存在していない。
特開2006−28493号公報 特開2005−343917号公報 特開2005−343918号公報 特開2005−343919号公報 小西誠一著,「燃料工学概論」,裳華房,1991年3月,p.136−144
本発明はかかる実状に鑑みてなされたものであり、そ本発明目的は、冬季に使用する軽油組成物を提供するものであり、より詳しくはディーゼル燃焼及び予混合圧縮着火燃焼の両者に適する冬季向け軽油組成物を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、FT合成基材を配合した、硫黄分含有量が5質量ppm以下、酸素含有量が100質量ppm以下、体積弾性率が1250MPa以上1450MPa以下、セーボルト色が+22以上、潤滑性能が400μm以下、蒸留性状の初留点が140℃以上、終点が360℃以下であり、かつ各留分範囲に下記(1)〜(3)の特徴を有する、幾何的圧縮比が16以下の過給器及びEGR付きディーゼルエンジンで使用される硫黄分以外の品質項目性状がJIS2号軽油規格を満たす軽油組成物。
(1)200℃未満の留分範囲におけるセタン価が40以上60未満であり、かつ当該留分の全体における容積あたりの構成比率が10容量%以上20容量%未満。
(2)200℃以上280℃未満の留分範囲におけるセタン価が60以上80未満であり、かつ当該留分の全体における容積あたりの構成比率が30容量%以上89容量%以下。
(3)280℃以上の留分範囲におけるセタン価が50以上であり、かつ当該留分の全体における容積あたりの構成比率が1容量%以上60容量%以下。
また、好ましくは加速酸化試験後の過酸化物価が50質量ppm以下、芳香族分が15容量%以下であり、さらに好ましくはFT合成基材の配合比率が20容量%以上であることを特徴とする軽油組成物である。
本発明の意図する所は、着火現象だけでなくその前段階の蒸発現象及び空気との混合現象も考慮した点であり、比較的早期に蒸発する軽質な留分と比較的後期に蒸発する重質な留分とを着火性も含めてバランスさせたことである。これにより、予混合圧縮着火燃焼でも一般のディーゼル燃焼でも最適な着火状態を支援することができる。なお、これらの着火現象は使用するエンジン側の圧縮比や吸気条件への依存度も高いため、本発明においては最も優れた効能を発揮させるため、使用するエンジンの条件にも制限を強いた。
本発明によれば、上記の製造方法、留分規定等により製造された軽油組成物を使用することにより、従来の軽油組成物では実現が困難であった冬季環境下での実用性能と予混合圧縮着火燃焼にも適用できる環境対応性能とを高水準で同時に達成できる高品質の燃料を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の軽油組成物にはFT合成基材を配合する必要がある。FT合成基材は飽和炭化水素化合物から構成されており、これらの配合を制御することで本発明の軽油組成物を容易に製造することができる。FT合成基材の性状は本発明の軽油組成物の性状を満足する限りにおいては特に制約はない。FT合成基材以外の基材については本発明の軽油組成物の性状を満足する限りにおいては特に制約はないが、環境対応性能を十分に発揮させるためには、以下に示す高度に水素化処理を行った石油系基材、動植物由来の処理油等を配合することが好ましい。
FT合成基材とは、水素及び一酸化炭素を主成分とする混合ガス(合成ガスと称する場合もある)に対してフィッシャートロプシュ(FT)反応を適用させて得られるナフサ、灯油、軽油相当の液体留分、およびこれらを水素化精製、水素化分解することによって得られる炭化水素混合物、およびFT反応により液体留分およびFTワックスを生成し、これを水素化精製、水素化分解することにより得られる炭化水素混合物からなる基材のことを示す。
本発明の軽油組成物は、FT合成基材を20容量%以上配合することが好ましい。また、硫黄分や芳香族分といった環境負荷を増加させる頻度を低減し、かつ予混合圧縮着火燃焼に必要となる着火制御をより効果的に行う目的等の理由から、25容量%以上がより好ましく、30容量%以上がさらに好ましく、35容量%以上がさらにより好ましい。
なお、本発明に用いるFT合成基材の性状は、本発明の軽油組成物が所定の性状を有しさえすれば特に限定されるものではないが、本発明の軽油組成物の製造のしやすさの点から、沸点範囲が140〜380℃のFT合成基材の配合が好ましい。
FT合成基材の原料となる混合ガスは、炭素を含有する物質を、酸素および/または水および/または二酸化炭素を酸化剤に用いて酸化し、更に必要に応じて水を用いたシフト反応により所定の水素および一酸化炭素濃度に調整して得られる。
炭素を含有する物質としては、天然ガス、石油液化ガス、メタンガス等の常温で気体となっている炭化水素からなるガス成分や、石油アスファルト、バイオマス、石炭、建材やゴミ等の廃棄物、汚泥、及び通常の方法では処理しがたい重質な原油、非在来型石油資源等を高温に晒すことで得られる混合ガスが一般的であるが、水素及び一酸化炭素を主成分とする混合ガスが得られる限りにおいては、本発明はその原料を限定するものではない。
フィッシャートロプシュ反応には金属触媒が必要である。好ましくは周期律表第8族の金属、例えば、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、ニッケル、鉄等、更に好ましくは第8族第4周期の金属を活性触媒成分として利用する方法である。また、これらの金属を適量混合した金属群を用いることもできる。これらの活性金属はシリカやアルミナ、チタニア、シリカアルミナなどの担体上に担持して得られる触媒の形態で使用することが一般的である。また、これら触媒に上記活性金属に加えて第2金属を組合せて使用することにより、触媒性能を向上させることもできる。第2金属としては、ナトリウム、リチウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の他に、ジルコニウム、ハフニウム、チタニウムなどが挙げられ、一酸化炭素の転化率向上やワックス生成量の指標となる連鎖成長確率(α)の増加など、目的に応じて適宜使用されている。
フィッシャートロプシュ反応は、混合ガスを原料として、液体留分およびFTワックスを生成する合成法である。この合成法を効率的に行うために、一般には混合ガス中の水素と一酸化炭素の比を制御することが好ましい。一酸化炭素に対する水素のモル混合比(水素/一酸化炭素)は1.2以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、1.8以上であることが更により好ましい。また、この比率は3以下であることが好ましく、2.6以下であることがより好ましく、2.2以下であることが更により好ましい。
上記触媒を用いてフィッシャートロプシュ反応を行う場合の反応温度は、180℃以上320℃以下であることが好ましく、200℃以上300℃以下であることがより好ましい。反応温度が180℃未満では一酸化炭素がほとんど反応せず、炭化水素収率が低い傾向にある。また、反応温度が320℃を超えると、メタンなどのガス生成量が増加し、液体留分およびFTワックスの生成効率が低下してしまう。
触媒に対するガス空間速度に特に制限は無いが、500h−1以上4000h−1以下が好ましく、1000h−1以上3000h−1以下がより好ましい。ガス空間速度が500h−1未満では液体燃料の生産性が低下する傾向にあり、また4000h−1を超えると反応温度を高くせざるを得なくなると共にガス生成が大きくなり、目的物の収率が低下してしまう。
反応圧力(一酸化炭素と水素からなる合成ガスの分圧)は特に制限が無いが、0.5MPa以上7MPa以下が好ましく、2MPa以上4MPa以下がより好ましい。反応圧力が0.5MPa未満では液体燃料の収率が低下する傾向にあり、また7MPaを超えると設備投資額が大きくなる傾向にあり、非経済的になる。
FT合成基材は上記FT反応により生成された液体留分およびFTワックスを任意の方法で水素化精製または水素化分解し、目的にあった蒸留性状、組成等に調整することで得られる。水素化精製及び水素化分解は目的に即して選択すればよく、どちらか一方のみまたは両方法の組み合わせ等の選択も本発明の軽油組成物を製造しうる範囲において何ら限定されるものではない。
水素化精製に用いる触媒は水素化活性金属を多孔質担体に担持したものが一般的であるが、同様の効果が得られる触媒であれば本発明はその形態を何ら限定するものではない。
多孔質担体としては無機酸化物が好ましく用いられる。具体的には、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、ゼオライトなどが挙げられる。
ゼオライトは結晶性アルミノシリケートであり、フォージャサイト、ペンタシル、モルデナイトなどが挙げられ、好ましくはフォージャサイト、ベータ、モルデナイト、特に好ましくはY型、ベータ型が用いられる。なかでも、Y型は超安定化したものが好ましい。
活性金属としては以下に示す2つの種類(活性金属Aタイプおよび活性金属Bタイプ)が好ましく用いられる。
活性金属Aタイプは周期律表第8族金属から選ばれる少なくとも1種類の金属である。好ましくはRu、Rh、Ir、PdおよびPtから選ばれる少なくとも1種類であり、さらに好ましくはPdまたは/およびPtである。活性金属としてはこれらの金属を組み合わせたものでよく、例えば、Pt−Pd、Pt−Rh、Pt−Ru、Ir−Pd、Ir−Rh、Ir−Ru、Pt−Pd−Rh、Pt−Rh−Ru、Ir−Pd−Rh、Ir−Rh−Ruなどがある。これらの金属からなる貴金属系触媒を使う際には、水素気流下において予備還元処理を施した後に用いることができる。一般的には水素を含むガスを流通し、200℃以上の熱を所定の手順に従って与えることにより触媒上の活性金属が還元され、水素化活性を発現することになる。
また活性金属Bタイプとして、周期律表第6A族および第8族金属から選ばれる少なくとも一種類の金属を含有し、望ましくは第6A族および第8族から選択される二種類以上の金属を含有しているものも使用することができる。例えばCo−Mo、Ni−Mo、Ni−Co−Mo、Ni−Wが挙げられ、これらの金属からなる金属硫化物触媒を使う際には予備硫化工程を含む必要がある。
金属源としては一般的な無機塩、錯塩化合物を用いることができ、担持方法としては含浸法、イオン交換法など通常の水素化触媒で用いられる担持方法のいずれの方法も用いることができる。また、複数の金属を担持する場合には混合溶液を用いて同時に担持してもよく、または単独溶液を用いて逐次担持してもよい。金属溶液は水溶液でもよく有機溶剤を用いてもよい。
活性金属Aタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の反応温度は、180℃以上400℃以下であることが好ましく、200℃以上370℃以下であることがより好ましく、250℃以上350℃以下であることが更に好ましく、280℃以上350℃以下が更により好ましい。水素化精製における反応温度が370℃を超えると、ナフサ留分へ分解する副反応が増えて中間留分の収率が極度に減少するため好ましくない。また、反応温度が270℃を下回ると、アルコール分が除去しきれずに残存するため好ましくない。
活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の反応温度は、170℃以上320℃以下であることが好ましく、175℃以上300℃以下であることがより好ましく、180℃以上280℃以下であることが更に好ましい。水素化精製における反応温度が320℃を超えると、ナフサ留分へ分解する副反応が増えて中間留分の収率が極度に減少するため好ましくない。また、反応温度が170℃を下回ると、アルコール分が除去しきれずに残存するため好ましくない。
活性金属Aタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の水素圧力は、0.5MPa以上12MPa以下であることが好ましく、1.0MPa以上5.0MPa以下であることがより好ましい。水素圧力は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の水素圧力は、2MPa以上10MPa以下であることが好ましく、2.5MPa以上8MPa以下であることがより好ましく、3MPa以上7MPa以下であることが更に好ましい。水素圧力は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
活性金属Aタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の液空間速度(LHSV)は、0.1h−1以上10.0h−1以下であることが好ましく、0.3h−1以上3.5h−1以下であることがより好ましい。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので経済的に好ましくない。
活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の液空間速度(LHSV)は、0.1h−1以上2h−1以下であることが好ましく、0.2h−1以上1.5h−1以下であることがより好ましく、0.3h−1以上1.2h−1以下であることが更に好ましい。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので経済的に好ましくない。
活性金属Aタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の水素/油比は、50NL/L以上1000NL/L以下であることが好ましく、70NL/L以上800NL/L以下であることがより好ましい。水素/油比は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の水素/油比は、100NL/L以上800NL/L以下であることが好ましく、120NL/L以上600NL/L以下であることがより好ましく、150NL/L以上500NL/L以下であることが更に好ましい。水素/油比は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
水素化分解に用いる触媒は水素化活性金属を固体酸性質を有する担体に担持したものが一般的であるが、同様の効果が得られる触媒であれば本発明はその形態を何ら限定するものではない。
固体酸性質を有する担体にはアモルファス系と結晶系のゼオライトがある。具体的にはアモルファス系のシリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニアとゼオライトのフォージャサイト型、ベータ型、MFI型、モルデナイト型などがある。好ましくはフォージャサイト型、ベータ型、MFI型、モルデナイト型のゼオライト、より好ましくはY型、ベータ型である。Y型は超安定化したものが好ましい。
活性金属としては以下に示す2つの種類(活性金属Aタイプおよび活性金属Bタイプ)が好ましく用いられる。
活性金属Aタイプとしては主に周期律表第6A族および第8族金属から選ばれる少なくとも1種類の金属である。好ましくはNi、Co、Mo、Pt、PdおよびWから選ばれる少なくとも1種類の金属である。これらの金属からなる貴金属系触媒を使う際には、水素気流下において予備還元処理を施した後に用いることができる。一般的には水素を含むガスを流通し、200℃以上の熱を所定の手順に従って与えることにより触媒上の活性金属が還元され、水素化活性を発現することになる。
また活性金属Bタイプとしてはこれらの金属を組み合わせたものでよく、例えば、Pt−Pd、Co−Mo、Ni−Mo、Ni−W、Ni−Co−Moなどが挙げられる。また、これらの金属からなる触媒を使う際には、予備硫化したのち使用するのが好ましい。
金属源としては一般的な無機塩、錯塩化合物を用いることができ、担持方法としては含浸法、イオン交換法など通常の水素化触媒で用いられる担持方法のいずれの方法も用いることができる。また、複数の金属を担持する場合には混合溶液を用いて同時に担持してもよく、または単独溶液を用いて逐次担持してもよい。金属溶液は水溶液でもよく有機溶剤を用いてもよい。
活性金属Aタイプおよび活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の反応温度は、200℃以上450℃以下であることが好ましく、250℃以上430℃以下であることがより好ましく、300℃以上400℃以下であることが更に好ましい。水素化分解における反応温度が450℃を超えると、ナフサ留分へ分解する副反応が増えて中間留分の収率が極度に減少するため好ましくない。一方、200℃未満の場合は触媒の活性が著しく低下するので好ましくない。
活性金属Aタイプおよび活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の水素圧力は、1MPa以上20MPa以下であることが好ましく、4MPa以上16MPa以下であることがより好ましく、6MPa以上13MPa以下であることが更に好ましい。水素圧力は高いほど水素化反応が促進されるが、分解反応はむしろ進行が鈍化し反応温度の上昇で進行を調整する必要が生じるため、転じて触媒寿命の低下に繋がってしまう。そのため、一般に反応温度には経済的な最適点が存在する。
活性金属Aタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の液空間速度(LHSV)は、0.1h−1以上10h−1以下であることが好ましく、0.3h−1以上3.5h−1以下であることがより好ましい。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので経済的に好ましくない。
活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の液空間速度(LHSV)は、0.1h−1以上2h−1以下であることが好ましく、0.2h−1以上1.7h−1以下であることがより好ましく、0.3h−1以上1.5h−1以下であることが更に好ましい。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので経済的に好ましくない。
活性金属Aタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の水素/油比は、50NL/L以上1000NL/L以下であることが好ましく、70NL/L以上800NL/L以下であることがより好ましく、400NL/L以上1500NL/L以下であることが更に好ましい。水素/油比は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の水素/油比は、150NL/L以上2000NL/L以下であることが好ましく、300NL/L以上1700NL/L以下であることがより好ましく、400NL/L以上1500NL/L以下であることが更に好ましい。水素/油比は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
水素化処理する装置はいかなる構成でもよく、反応塔は単独または複数を組み合わせてもよく、複数の反応塔の間に水素を追加注入してもよく、気液分離操作や硫化水素除去設備、水素化生成物を分留し、所望の留分を得るための蒸留塔を有していてもよい。
水素化処理装置の反応形式は、固定床方式をとりうる。水素は原料油に対して、向流または並流のいずれの形式をとることもでき、また、複数の反応塔を有し向流、並流を組み合わせた形式のものでもよい。一般的な形式としてはダウンフローであり、気液双並流形式がある。反応塔の中段には反応熱の除去、あるいは水素分圧を上げる目的で水素ガスをクエンチとして注入してもよい。FT合成基材の原料となる混合ガスは、炭素を含有する物質を、酸素および/または水および/または二酸化炭素を酸化剤に用いて酸化し、更に必要に応じて水を用いたシフト反応により所定の水素および一酸化炭素濃度に調整して得られる。炭素を含有する物質としては、天然ガス、石油液化ガス、メタンガス等の常温で気体となっている炭化水素からなるガス成分や、石油アスファルト、バイオマス、石炭、建材やゴミ等の廃棄物、汚泥、及び通常の方法では処理しがたい重質な原油、非在来型石油資源等を高温に晒すことで得られる混合ガスが一般的であるが、水素及び一酸化炭素を主成分とする混合ガスが得られる限りにおいては、本発明はその原料を限定するものではない。
石油系基材とは、原油を処理することにより得られる炭化水素基材であり、一般には常圧蒸留装置から得られる直留基材、常圧蒸留装置から得られる直留重質油や残査油を減圧蒸留装置で処理して得られる減圧基材、減圧重質基材あるいは脱硫重油を接触分解または水素化分解して得られる接触分解基材または水素化分解基材、これらの石油系炭化水素を水素化精製して得られる水素化精製基材若しくは水素化脱硫基材等が挙げられる。また、原油以外に非在来型石油資源と称される資源、例えばオイルシェル、オイルサンド、オリノコタール等に適切な処理を施し、上述の基材と同等の性能にまで仕上げた基材も石油系基材に準じて使用することができる。
本発明にかかる高度に水素化された石油系基材とは、所定の原料油を水素化精製した後にさらに水素化処理をすることにより得られる灯軽油留分である。原料油としては、原油の常圧蒸留装置から得られる直留灯軽油、常圧蒸留装置から得られる直留重質油や残査油を減圧蒸留装置で処理して得られる減圧灯軽油、脱硫又は未脱硫の減圧灯軽油、減圧重質軽油あるいは脱硫重油を接触分解して得られる接触分解灯軽油を水素化処理して得られる水素化精製灯軽油及び水素化脱硫灯軽油等が挙げられる。
原料油が軽油留分である場合の水素化精製条件は石油精製において一般的な水素化脱硫装置を用いて処理されたものでよい。一般的には反応温度300〜380℃、水素圧力3〜8MPa、LHSV0.3〜2h−1、水素/油比100〜500NL/Lといった条件で行われる。原料油が灯油留分である場合の水素化精製条件は石油精製において一般的な水素化脱硫装置を用いて処理されたものでよい。一般的には反応温度220〜350℃、水素圧力1〜6MPa、LHSV0.1〜10h−1、水素/油比10〜300NL/Lである。好ましくは反応温度250℃〜340℃、水素圧力2〜5MPa、LHSV1〜10h−1、水素/油比30〜200NL/Lであり、さらに好ましくは反応度270℃〜330℃、水素圧力2〜4MPa、LHSV2〜10h−1、水素/油比50〜200NL/Lである。
反応温度は低温ほど水素化反応には有利であるが、脱硫反応には好ましくない。水素圧力、水素/油比は高いほど脱硫、水素化反応とも促進されるが、経済的に最適点が存在する。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので不味である。
これらの水素化精製に用いられる触媒は一般的な水素化脱硫用触媒を適用できる。活性金属としては、通常周期律表第6A族および第8族金属の硫化物であり、例えばCo−Mo、Ni−Mo、Co−W、Ni−Wが挙げられる。担体としてはアルミナを主成分とした多孔質無機酸化物が用いられる。これらの条件、触媒は原料油の性状を満たす限りにおいて特に限定されるものではない。
本発明にかかる原料油は、上述の水素化精製処理により得られ、硫黄分含有量5質量ppm以上10質量ppm以下、沸点範囲130℃以上380℃以下であることが好ましい。原料油の硫黄分、沸点範囲が前記の範囲内であると、以下の高度な水素化処理において規定される性状を容易に且つ確実に達成することができる。
高度な水素化処理は上述の水素化精製灯軽油を原料とし、さらに水素化触媒の存在下で水素化処理することによって得られる。
高度な水素化処理条件は反応温度170〜320℃、水素圧力2〜10MPa、LHSV0.1〜2h−1、水素/油比100〜800NL/Lである。好ましくは反応温度175℃〜300℃、水素圧力2.5〜8MPa、LHSV0.2〜1.5h−1、水素/油比150〜600NL/Lであり、さらに好ましくは反応温度180℃〜280℃、水素圧力3〜7MPa、LHSV0.3〜1.2h−1、水素/油比150〜500NL/Lである。反応温度は低温ほど水素化反応には有利であるが、脱硫反応には好ましくない。水素圧力、水素/油比は高いほど脱硫、水素化反応とも促進されるが、経済的に最適点が存在する。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので不味である
水素化精製された原料油を水素化処理する装置はいかなる構成でもよく、反応塔は単独または複数を組み合わせてもよく、複数の反応塔の間に水素を追加注入してもよく、気液分離操作や硫化水素除去設備を有していてもよい。
本発明の水素化処理装置の反応形式は、固定床方式をとりうる。水素は原料油に対して、向流または並流のいずれの形式をとることもでき、また、複数の反応塔を有し向流、並流を組み合わせた形式のものでもよい。一般的な形式としてはダウンフローであり、気液双並流形式がある。反応塔の中段には反応熱の除去、あるいは水素分圧を上げる目的で水素ガスをクエンチとして注入してもよい。
水素化処理に用いる触媒は水素化活性金属を多孔質担体に担持したものである。多孔質担体としてはアルミナなどの無機酸化物が挙げられる。具体的な無機酸化物としてはアルミナ、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、あるいはゼオライトがあり、本発明ではこのうちチタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、ゼオライトのうち少なくとも1種類とアルミナによって構成されているものがよい。その製造法は特に限定されないが、各元素に対応した各種ゾル、塩化合物などの状態の原料を用いて任意の調製法を採用することができる。さらには一旦シリカアルミナ、シリカジルコニア、アルミナチタニア、シリカチタニア、アルミナボリアなどの複合水酸化物あるいは複合酸化物を調製した後に、アルミナゲルやその他水酸化物の状態あるいは適当な溶液の状態で調製工程の任意の工程で添加して調製してもよい。アルミナと他の酸化物との比率は多孔質担体に対して任意の割合を取りうるが、好ましくはアルミナが90%以下、さらに好ましくは60%以下、より好ましくは40%以下である。
ゼオライトは結晶性アルミノシリケートであり、フォージャサイト、ペンタシル、モルデナイトなどが挙げられ、所定の水熱処理および/または酸処理によって超安定化したもの、あるいはゼオライト中のアルミナ含有量を調整したものを用いることができる。好ましくはフォージャサイト、ベータ、モルデナイト、特に好ましくはY型、ベータ型が用いられる。Y型は超安定化したものが好ましく、水熱処理により超安定化したゼオライトは本来の20Å以下のミクロ細孔と呼ばれる細孔構造に加え、20〜100Åの範囲に新たな細孔が形成される。水熱処理条件は公知の条件を用いることができる。
水素化処理に用いる触媒の活性金属としては第8族金属から選ばれる少なくとも1種類の金属である。好ましくはRu、Rh、Ir、Pd、Ptから選ばれる少なくとも1種類であり、さらに好ましくはPdまたは/およびPtである。活性金属としてはこれらの金属を組み合わせたものでよく、例えばPt−Pd、Pt−Rh、Pt−Ru、Ir−Pd、Ir−Rh、Ir−Ru、Pt−Pd−Rh、Pt−Rh−Ru、Ir−Pd−Rh、Ir−Rh−Ruなどの組み合わせを採用することができる。金属源としては一般的な無機塩、錯塩化合物を用いることができ、担持方法としては含浸法、イオン交換法など通常の水素化触媒で用いられる担持方法のいずれの方法も用いることができる。また、複数の金属を担持する場合には混合溶液を用いて同時に担持してもよく、または単独溶液を用いて逐次担持してもよい。金属溶液は水溶液でもよく有機溶剤を用いてもよい。
金属担持は、構成されている多孔質担体の調製全工程終了後に行ってもよく、多孔質担体調製中間工程における適当な酸化物、複合酸化物、ゼオライトに予め担持した後に更なるゲル調合工程あるいは加熱濃縮、混練をおこなってもよい。
活性金属の担持量は特に限定されないが、触媒質量に対し金属量合計で0.1〜10質量%、好ましくは0.15〜5質量%、さらに好ましくは0.2〜3質量%である。
本発明にある触媒は、水素気流下において予備還元処理を施した後に用いる。一般的には水素を含むガスを流通し、200℃以上の熱を所定の手順に従って与えることにより触媒上の活性金属が還元され、水素化活性を発現することになる。
動植物由来の処理油とは、上述の石油系基材を得る際に適用する化学反応処理を動植物原料から産出、生成される油及び油脂に対して適用することで得られる炭化水素で構成された基材である。より具体的には、動植物油脂および動物油脂由来成分を含有した炭化水素留分を原料油として、周期律表第6A族および第8族から選ばれる少なくとも一種類以上の金属と酸性質を有する無機酸化物を含有する水素化分解触媒と水素加圧下で接触させることを特徴とする含炭化水素混合基材である。動植物由来の処理油の原料油としては、動植物油脂および動物油脂由来成分であることが必要である。本発明における動植物油脂および動植物油脂由来成分とは、天然もしくは人工的に生産、製造される動植物油脂および動植物油脂由来成分を示している。動物油脂および動物油の原料としては、牛脂、牛乳脂質(バター)、豚脂、羊脂、鯨油、魚油、肝油等、植物油脂および植物油原料としては、ココヤシ、パームヤシ、オリーブ、べにばな、菜種(菜の花)、米ぬか、ひまわり、綿実、とうもろこし、大豆、ごま、アマニ等の種子部及びその他の部分が挙げられるが、これ以外の油脂、油であっても使用に問題はない。これらの原料油に関してはその状態が固体、液体であることは問わないが、取り扱いの容易さおよび二酸化炭素吸収能や生産性の高さから植物油脂、植物油を原料とする方が好ましい。また、本発明においては、これらの動物油、植物油を民生用、産業用、食用等で使用した廃油も雑物等の除去工程を加えた後に原料とすることができる。
これらの原料中に含有されるグリセライド化合物の脂肪酸部分の代表的な組成としては、飽和脂肪酸と称する分子構造中に不飽和結合を有しない脂肪酸である酪酸(CCOOH)、カプロン酸(C11COOH)、カプリル酸(C15COOH)、カプリン酸(C19COOH)、ラウリン酸(C1123COOH)、ミリスチン酸(C1327COOH)、パルミチン酸(C1531COOH)、ステアリン酸(C1735COOH)、及び不飽和結合を1つもしくは複数有する不飽和脂肪酸であるオレイン酸(C1733COOH)、リノール酸(C1731COOH)、リノレン酸(C1729COOH)、リシノレン酸(C1732(OH)COOH)等が挙げられる。自然界の物質におけるこれら脂肪酸の炭化水素部は一般に直鎖であることが多いが、本発明において本発明で規定する性状を満たす限りで、側鎖を有する構造、すなわち異性体であっても使用することができる。また、不飽和脂肪酸における分子中の不飽和結合の位置も、本発明において本発明で規定する性状を満たす限りで、自然界で一般に存在確認されているものだけでなく、化学合成によって任意の位置に設定されたものも使用することができる。
上述の原料油(動植物油脂および動植物油脂由来成分)はこれらの脂肪酸を1種または複数種有しており、原料によってその有する脂肪酸類は異なっている。例えば、ココヤシ油はラウリン酸、ミリスチン酸等の飽和脂肪酸を比較的多く有しているが、大豆油はオレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸を多く有している。
また、原料油としては250℃以上の留分を含有していることが好ましく、300℃以上の留分を含有していることがより好ましく、360℃以上の留分を含有していることが更に好ましい。沸点が230℃以上の留分を含有していない場合には、製造時にガス分の生成が増加するため液生成物の収率が減少し、ライフサイクル二酸化炭素が増加する恐れがある。
また、動植物由来の処理油の原料油としては、動植物油脂および動植物油脂由来成分に石油系炭化水素留分を混合しているものを用いてもよい。この場合、石油系炭化水素留分の比率は原料油全体の容量に対して10〜99容量%が望ましく、30〜99容量%がより望ましく、60〜98容量%がさらにより望ましい。石油系炭化水素留分の比率が前記下限値に満たない場合には、副生する水の処理に要する設備が必要となる可能性があり、石油系炭化水素留分の比率が前記上限値を超える場合にはライフサイクル二酸化炭素削減の観点からは好ましくない。
原料油の水素化処理における水素化分解条件としては、水素圧力6〜20MPa、液空間速度(LHSV)0.1〜1.5h−1、水素/油比200〜2000NL/Lといった条件で行われることが望ましく、水素圧力8〜17MPa、液空間速度0.2〜1.1h−1、水素/油比300〜1800NL/Lといった条件がより望ましく、水素圧力10〜16MPa、液空間速度0.3〜0.9h−1、水素/油比350〜1600NL/Lといった条件がさらにより望ましい。これらの条件はいずれも反応活性を左右する因子であり、例えば、水素圧力および水素油比が前記下限値に満たない場合には反応性の低下や急速な活性低下を招く恐れがあり、水素圧力および水素油比が前記上限値を超える場合には圧縮機等の過大な設備投資を要する恐れがある。液空間速度は低いほど反応に有利な傾向にあるが、0.1h−1未満の場合は極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となる傾向にあり、他方、1.5h−1を超えている場合は反応が十分進行しなくなる傾向にある。
本発明の軽油組成物は、幾何的圧縮比が16以下の過給器及びEGR付きディーゼルエンジンで使用される燃料であって、FT合成基材を配合し以下の特定の性状を有することが必要である。
本発明の軽油組成物は、幾何的圧縮比が16以下の過給器及びEGR付きディーゼルエンジンで使用される必要がある。本発明の軽油組成物はJIS2号規格を満たしているので、幾何的圧縮比が16を越え、過給器及びEGR設備を装着していないディーゼルエンジンにおいても使用することは可能であるが、本発明の軽油組成物の目的である環境負荷低減効果を期待できなくなるため好ましくない。
幾何的圧縮比とはエンジンの物理的諸元から算出される圧縮比のことである。一般にはピストンが最も下に位置する状態でのシリンダー内容積Aをピストンが最も上に位置する状態でのシリンダー内容積Bで除した値のことを示し、ディーゼルエンジンにおいては通常12から22くらいの値となっていることが多い。なお、現在の電子制御式ディーゼルエンジンにおいては、吸排気バルブや過給圧の制御によって実質的な圧縮比を変化させることができるが、本発明においては実質的な圧縮比の影響も加味した上で適用範囲を幾何的圧縮比で制限している。
また、本発明の軽油組成物が使用対象とするディーゼルエンジンは過給器及びEGR(排ガス再循環)の装備が適用されていることが必要である。いずれも排出ガス性能及び燃費、出力性能改善のために使用される装備であるが。特に予混合圧縮着火燃焼においては、着火制御の用途として用いられる場合が多く、本発明の軽油組成物もその条件を前提として設計されている。
なお、本発明の軽油組成物を適用するディーゼルエンジンのその他の諸元、用途、使用環境に関しては、本発明は何ら制限を加えるものではない。
本発明の軽油組成物とはFT合成基材を配合した、硫黄分含有量が5質量ppm以下、酸素含有量が100質量ppm以下、体積弾性率が1250MPa以上1450MPa以下、セーボルト色が+22以上、潤滑性能が400μm以下、蒸留性状の初留点が140℃以上、終点が360℃以下であり、かつ各留分範囲に下記(1)〜(3)の特徴を有する、幾何的圧縮比が16以下の過給器及びEGR付きディーゼルエンジンで使用される硫黄分以外の品質項目性状がJIS2号軽油規格を満たす軽油組成物である。
(1)200℃未満の留分範囲におけるセタン価が40以上60未満であり、かつ当該留分の全体における容積あたりの構成比率が10容量%以上20容量%未満。
(2)200℃以上280℃未満の留分範囲におけるセタン価が60以上80未満であり、かつ当該留分の全体における容積あたりの構成比率が30容量%以上89容量%以下。
(3)280℃以上の留分範囲におけるセタン価が50以上であり、かつ当該留分の全体における容積あたりの構成比率が1容量%以上60容量%以下。
本発明の軽油組成物は、別途制約を加えている硫黄分以外の品質項目性状がJIS2号軽油規格を満たすものであることが必要である。JIS2号軽油規格とは、JIS K 2204「軽油」に規定された「種類2号」を満足させる規格であり、具体的には引火点50℃以上、90%留出温度350℃以下、流動点−7.5℃以下、目詰まり点(CFPP)−5℃以下、10%残油の残留炭素分0.1質量%以下、セタン指数45以上、30℃における動粘度2.5mm/s以上、硫黄分0.05質量%以下であることが必要である。また、あわせて本発明における軽油組成物はJIS K 2204−1996解説に示された「軽油使用ガイドライン」で示される2号軽油使用ガイドラインに準じて使用されることが好ましい。
本発明の軽油組成物の硫黄含有量は、エンジンから排出される有害排気成分低減と排ガス後処理装置の性能向上の点から5質量ppm以下であることが必要であり、好ましくは3質量ppm以下、より好ましくは1質量ppm以下である。なお、ここでいう硫黄含有量とは、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される軽油組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を意味する。
本発明の軽油組成物の酸素分含有量は、酸化安定性向上の観点から100質量ppm以下であることが必要であり、好ましくは80質量ppm以下、より好ましくは60質量ppm以下である。なお、酸素分含有量は一般的な元素分析装置で測定することができ、例えば、試料を白金炭素上でCOに転換し、あるいはさらにCOに転換した後に熱伝導度検出器を用いて測定することもできる。
本発明の軽油組成物において、体積弾性率は1250MPa以上1450MPa以下である必要がある。一般に軽油のような圧縮性のある流体に高い圧力を加えた場合、その場の温度、圧力に応じて流体自身が圧縮し、密度(流量あたりの体積)が変化する性質を持つ。この物体の圧縮弾性率を体積弾性率(単位はMPa)と定義している。ディーゼル燃料噴射を想定した場合、燃料流体に対する体積弾性率は、燃料がおかれている雰囲気の温度、圧力と同時に燃料自身の物理特性、組成に応じた一定の割合で変化する。従って、電子制御式燃料噴射ポンプのように、高圧で高精度な噴射特性を持つ噴射系において、設定通りの燃料噴射量や噴射率を維持するためには、体積弾性率が安定した数値を示す燃料が望ましい。従って、本発明の軽油組成物では、その体積弾性率は1250MPa以上1450MPa以下であることが必要であり、1270MPa以上1420MPa以下であることが好ましく、1300MPa以上1400MPa以下であることがより好ましい。
なお、体積弾性率は単一の燃料物理特性、組成によって支配されるものではなく、複数の物理特性、組成の影響を複合的に受けた結果として定義されるものであるため、他の物理特性、組成と並行して捉えるべき燃料特性と考えることが、技術的見地から妥当である。
体積弾性率の測定方法には、現時点において決まった公定方法は存在していないが、図1に概要を説明する。温度、圧力変化に伴う容器自体の容積変化が、同じ環境の変化における燃料の容積変化に対して十分小さいことが実証できる材料および構造からなる定容容器の中に測定対象となる燃料を封入する。このとき容器内は測定対象燃料だけで満たされている必要がある。この定容容器に、温度、圧力変化に伴うピストン自体の容積変化が、同じ環境の変化における燃料の容積変化に対して十分小さいことが実証できる材料および構造からなる定容積のピストンを挿入し、容器内容積を変化させる。測定対象の燃料はその圧縮弾性特性に従い圧縮されるため、結果として容器内の圧力が変化することになる。この圧力を測定することにより、体積弾性率を算出している。
ここで、軽油組成物の体積弾性率の測定方法について具体的に説明する。
図1は体積弾性率測定装置の一例を示す概略構成図である。図1中、定容容器1の上面には定容容器1内に連通するように供給弁2が設けられており、供給弁2の所定の位置には排出弁3が接続されている。また、定容容器1の側面には温度センサ4及び圧力センサ5、定容容器1の下面にはピストン6がそれぞれ定容容器1内に連通するように設けられている。ここで、定容容器1及びピストン6は、雰囲気の温度及び圧力が所定量変化したときに、その容量変化が燃料の体積変化に比べて十分に小さい材料及び構造からなるものである。
図1に示した測定装置を用いる場合、先ず、測定対象である軽油組成物100を供給弁2から定容容器1内に導入し、定容容器1内を軽油組成物で充満させる。次に、ピストン6により定容容器1内の容積を変化させる。このとき、軽油組成物はその圧縮弾性特性に従って圧縮されるので、結果として定容容器1内の圧力が変化することになる。この圧縮工程の際の温度及び圧力を温度センサ4及び圧力センサ5で測定し、得られた測定値に基づいて体積弾性率を算出することができる。
本発明の軽油組成物のセーボルト色は+22以上であることが必要であり、酸化安定性阻害物質除去の点から、+25以上であることが好ましく、+27以上であることがさらに好ましい。なお、ここでいうセーボルト色とは、JIS K 2580「石油製品−色試験方法−セーボルト色試験方法」により測定される値を意味する。
本発明の軽油組成物は、その潤滑性能についてHFRR摩耗痕径(WS1.4)が400μm以下であることが必要である。潤滑性能が低い場合は、特に分配型噴射ポンプを搭載したディーゼルエンジンにおいて、運転中のポンプの駆動トルク増、ポンプ各部の摩耗増を引き起こし、排ガス性能の悪化のみならずエンジン自体が破壊される恐れがある。また、高圧噴射が可能な電子制御式燃料噴射ポンプにおいても、摺動面等の摩耗が懸念されている。従って、本発明の軽油組成物は、その潤滑性能についてHFRR摩耗痕径(WS1.4)が400μm以下であることが必要であり、380μm以下であることが好ましく、360μm以下であることがより好ましい。
ここで潤滑性能およびHFRR摩耗痕径とは、社団法人石油学会から発行されている石油学会規格JPI−5S−50−98「軽油−潤滑性試験方法」により測定される潤滑性能を指す。
本発明の軽油組成物は留分の構成比率とそのセタン価に対して制約が必要である。それぞれの留分が受け持つ役割とその制約事項を以下に記す。
本発明の軽油組成物は冬季での使用を前提としているため、軽質留分(蒸留性状が200℃未満の留分)が多すぎると燃料の発熱量が低下し燃費が悪化してしまう。しかしながらある程度の軽質留分を含有していないと蒸発特性が悪化してしまう。また、蒸発しやすい軽質留分のセタン価が高すぎる場合は空気との十分な混合を経ないうちに自己着火が始まってしまい、予混合燃焼を実現することができない。しかしながら、セタン価が低すぎると自己着火が大幅に遅れる傾向にある。
以上の傾向を鑑み種々の検討を行った結果、蒸留性状が200℃未満の留分範囲におけるセタン価が40以上60未満であり、かつ当該留分の全体における容積あたりの構成比率が10容量%以上20容量%未満であることが必要である。また、当該留分はセタン価が42以上58以下であることが好ましく、44以上56以下であることがより好ましい。全留分に対する構成比率は11容量%以上19.5容量%以下であることが好ましく、12容量%以上19容量%以下であることがより好ましい。
本発明の軽油組成物は中質留分(蒸留性状が200℃以上280℃未満の留分)が中心組成となる。すなわち、上述の通り軽質留分配合量を限定し、燃費の悪化を抑制しつつ蒸発特性を維持するためには当該留分を適当量に制御する必要がある。同様に着火に関しても本留分が支配的であるため、積極的に自己着火させるべく本留分のセタン価はやや高めの設定が好ましい。
以上の傾向を鑑み種々の検討を行った結果、200℃以上280℃未満の留分範囲におけるセタン価が60以上80未満であり、かつ当該留分の全体における容積あたりの構成比率が30容量%以上89容量%以下であることが必要である。また、当該留分はセタン価が62以上78以下であることが好ましく、64以上76以下であることがより好ましい。全留分に対する構成比率は32容量%以上85容量%以下であることが好ましく、35容量%以上80容量%以下であることがより好ましい。
本発明の軽油組成物において重質留分(蒸留性状が280℃以上の留分)は容量あたりの発熱量が大きい留分であるため、出力や燃費を向上させる意味で重要である。ただし、当該留分は燃焼雰囲気条件(温度、圧力、空気との比率等)が適していない場合にすす等を生成してしまう可能性を有している。また、本発明の軽油組成物は冬季での使用を前提としているため、当該留分が多すぎる場合は低温流動性に懸念が生じる可能性がある。上述の軽質、中質留分とのバランスを配慮して配合比を決定する必要がある。また、当該留分は蒸発速度がやや遅く空気との混合時間を十分にとる必要があるため、多くの量を配合することができないものの、その分自己着火性に優れた構成である必要がある。
以上の傾向を鑑み種々の検討を行った結果、280℃以上の留分範囲におけるセタン価が50以上であり、かつ当該留分の全体における容積あたりの構成比率が1容量%以上60容量%以下であることが必要である。また、当該留分はセタン価が52以上であることが好ましく、54以上であることがより好ましい。全留分に対する構成比率は5容量%以上55容量%以下であることが好ましく、10容量%以上50容量%以下であることがより好ましく、15容量%以上45容量%以下であることがさらにより好ましい。
なお、各留分の構成比率及びセタン価の測定は、以下の2通りの方法で実施することができる。
(1)分留精度が目標温度に対して±1℃、残油率1容量%以内である比較的精度の高い分留装置を用いて、当該軽油組成物を初留点〜200℃、200℃〜280℃、280℃〜終点の留分に分割し、各留分の構成比率及びセタン価を測定する。
(2)混合する基材を予め上述の分留装置で各留分に分留しておき、その際に構成比率及びセタン価を測定する。
試験法はJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法−常圧法」により蒸留性状を、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「7.セタン価試験方法」によりセタン価を測定する。
本発明の軽油組成物における蒸留性状としては、上述の各留分における特徴を満たしかつ初留点が140℃以上、終点が360℃以下、JIS2号軽油規格である90%留出温度が350℃以下であることが必要である。
90%留出温度が350℃を超えるとPMや微小粒子の排出量が増加する傾向にあるため、好ましくは345℃以下、より好ましくは340℃以下、さらに好ましくは335℃以下である。また、90%留出温度には下限値の制約はないものの、大幅に低い場合は燃費の悪化や、エンジン出力の低下を誘引してしまうため、好ましくは240℃以上、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは260℃以上である。
また、初留点は140℃以上が必要である。初留点がこれに満たないとエンジン出力や高温時の始動性の悪化を招く可能性がある。そのため、初留点は145℃以上が好ましく、150℃以上がさらに好ましい。終点は360℃以下であることが必要である。終点がこれを越えるとPMや微小粒子の排出量が増加する傾向にある。そのため、終点は368℃以下が好ましく、366℃以下がより好ましい。
10%留出温度に対する制約はないものの、下限値に関してはエンジン出力や燃費の悪化を抑制するため、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。一方、上限値に関しては排ガス性能が悪化を抑制する目的から、好ましくは250℃以下、より好ましくは245℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。
なお、ここでいう初留点、10%留出温度、90%留出温度、終点とは、全てJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法−常圧法」により測定される値を意味する。
本発明の軽油組成物のセタン指数はJIS2号軽油規格である45以上を満たす必要がある。セタン指数が45に満たない場合には、排出ガス中のPM、アルデヒド類、あるいはさらにNOxの濃度が高くなる傾向にある。同様の理由により、セタン指数は47以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましい。また、セタン指数の上限には制約がないものの75を越える場合、加速時におけるすすの排出が悪化する傾向が見られるため、セタン指数は75以下が好ましく、74以下がより好ましく、73以下がさらにより好ましい。なお、本発明でいうセタン指数とは、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」によって算出される価を意味する。ここで、上記JIS規格におけるセタン指数は、一般的にはセタン価向上剤を添加していない軽油に対して適用されるが、本発明ではセタン価向上剤を添加した軽油組成物についても上記「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」を適用し、当該算出方法により算出される値をセタン指数として表す。
本発明の軽油組成物におけるセタン価に関しては上述の各留分における特徴を満たす範囲において特に制約はないが、ディーゼル燃焼時のノック防止、排出ガス中のNOx、PM及びアルデヒド類の排出量抑制の観点から、好ましくは30以上であり、より好ましくは35以上であり、さらに好ましいのは40以上である。また、排ガス中の黒煙低減の観点から、セタン価は70以下であることが好ましく、68以下であることがより好ましく、66以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいうセタン価とは、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「7.セタン価試験方法」に準拠して測定されるセタン価を意味する。
本発明の軽油組成物の引火点はJIS2号軽油規格である50℃以上を満たす必要がある。引火点が50℃に満たない場合には、安全上の観点から好ましくないため、引火点は52℃以上であることが好ましく、54℃以上であることがより好ましい。なお、本発明でいう引火点はJIS K 2265「原油及び石油製品引火点試験方法」で測定される値を示す。
本発明の軽油組成物の目詰まり点はJIS2号軽油規格である−5℃以下を満たす必要がある。さらに、ディーゼル車のプレフィルタ閉塞防止の点、並びに電子制御式燃料噴射ポンプにおける噴射性能維持の観点から、−7℃以下であることが好ましく、−10℃以下であることがより好ましい。ここで目詰まり点とはJIS K 2288「軽油−目詰まり点試験方法」により測定される目詰まり点を意味する。
本発明の軽油組成物の流動点はJIS2号軽油規格である−7.5℃以下を満たす必要がある。さらに、低温始動性確保ないしは低温運転性確保の観点、並びに電子制御式燃料噴射ポンプにおける噴射性能維持の観点から、−10℃以下であることが好ましく、−12.5℃以下であることがより好ましい。ここで流動点とは、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準じて測定される流動点を意味する。
本発明の軽油組成物の30℃における動粘度はJIS2号軽油規格である2.5mm/s以上であることが必要であり、2.55mm/s以上であることが好ましく、2.6mm/s以上であることがより好ましい。当該動粘度が2.5mm/sに満たない場合は、燃料噴射ポンプ側の燃料噴射時期制御が困難となる傾向にあり、またエンジンに搭載された燃料噴射ポンプの各部における潤滑性が損なわれるおそれがある。一方、30℃における動粘度の上限には制限はないが、燃料噴射システム内部の抵抗が増加して噴射系が不安定化し、排出ガス中のNOx、PMの濃度が高くなることを抑制する観点から、5mm/s以下であることが好ましく、4.8mm/s以下であることがより好ましく、4.5mm/s以下であることがさら好ましい。なお、ここでいう動粘度とは、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定される動粘度を意味する。
本発明の軽油組成物の10%残留炭素分はJIS2号軽油規格である0.1質量%以下であることが必要である。さらに、微小粒子やPM低減の観点、並びにエンジンに搭載される排ガス後処理装置の性能維持、スラッジによるフィルター目詰まり防止の点から、0.08質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましい。なお、ここでいう10%残留炭素分とは、JIS K 2270「原油及び石油製品−残留炭素分試験方法」により測定される値を意味する。
本発明の軽油組成物の加速酸化試験(酸化安定性試験)後の過酸化物価は、貯蔵安定性、部材への適合性の点から、50質量ppm以下であることが好ましく、40質量ppm以下であることがより好ましく、30質量ppm以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいう加速酸化試験後の過酸化物価とは、ASTM D2274−94に準拠して、95℃、酸素バブリング下、16時間の条件で加速酸化試験を実施した後、石油学会規格JPI−5S−46−96に準拠して測定した過酸化物価の値を意味する。本発明の軽油組成物には、過酸化物価を低減するために、酸化防止剤や金属不活性剤等の添加剤を適宜添加することができる。
本発明の軽油組成物の芳香族分含有量は、15容量%以下であることが好ましく、14容量%以下であることがより好ましく、13容量%以下であることがさらに好ましく、12容量%以下であることがさらにより好ましい。芳香族分含有量が15容量%以下であると、PM等の生成を抑制しディーゼル燃焼及び予混合圧縮着火燃焼においても環境対応性能を発揮することができ、また本発明の軽油組成物において規定される性状をより容易に且つ確実に達成することができる。なお、ここでいう芳香族分含有量は、社団法人石油学会により発行されている石油学会誌JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠され測定された、芳香族分含有量の容量百分率(容量%)を意味する。
本発明の軽油組成物のナフテン分含有量に関しては特に制約はないが、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。ナフテン分含有量が50質量%以下であると、PM等の生成を抑制しディーゼル燃焼及び予混合圧縮着火燃焼においても環境対応性能を発揮することができ、また本発明の軽油組成物において規定される性状をより容易に且つ確実に達成することができる。なお、ここでいうナフテン分含有量は、ASTM D2425「Standard Test Method for Hydrocarbon Types in Middle Distillates by Mass Spectrometry」に準拠して測定されるナフテン分の質量百分率(質量%)を意味する。
本発明の軽油組成物のノルマルパラフィン含有量(ノルマルパラフィン分)に関しては特に制約はないが、予混合圧縮着火燃焼の着火制御性を容易にする理由から、20質量%以上であることが好ましく、22質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。GC−FIDを用いて測定される値(質量%)である。すなわち、カラムにはメチルシリコンのキャピラリーカラム(ULTRAALLOY−1)、キャリアガスにはヘリウムを、検出器には水素イオン検出器(FID)を用い、カラム長30m、キャリアガス流量1.0mL/min、分割比1:79、試料注入温度360℃、カラム昇温条件140℃→(8℃/min)→355℃、検出器温度360℃の条件で測定された値である。
本発明の軽油組成物の15℃における密度に関しては特に制約はないが、発熱量確保の点から、760kg/m以上であることが好ましく、765kg/m以上がより好ましく、770kg/m以上がさらに好ましい。また、当該密度は、NOx、PMの排出量を低減する点から、840kg/m以下であることが好ましく、835kg/m以下がより好ましく、830kg/m以下がさらに好ましい。なお、ここでいう密度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を意味する。
本発明の軽油組成物のくもり点に関しては特に制約はないが、低温始動性確保ないしは低温運転性確保の観点、並びに電子制御式燃料噴射ポンプにおける噴射性能維持の観点から−3℃以下であることが好ましく、−4℃以下であることがより好ましく、−5℃以下であることがさらに好ましい。ここでくもり点とは、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準じて測定される流動点を意味する。
本発明の軽油組成物の水分含有量に関しては特に制約はないが、低温下での凍結防止やエンジン内部での腐食防止の観点から、100容量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは50容量ppm以下、さらにより好ましくは20容量ppm以下である。なお、ここでいう水分含有量とは、JIS K 2275「原油及び石油製品−水分試験方法−カールフィッシャー式電量滴定法」により測定される値を意味する。
本発明の軽油組成物においては、貯蔵安定性の点から、酸化安定性試験後の全不溶解分が2.0mg/100mL以下であることが好ましく、1.5mg/100mL以下であることがより好ましく、1.0mg/100mL以下であることがさらに好ましく、0.5mg/100mL以下であることがさらにより好ましい。なお、ここでいう酸化安定性試験とは、ASTM D2274−94に準拠して、95℃、酸素バブリング下、16時間の条件で実施するものである。また、ここでいう酸化安定性試験後の全不溶解分とは、前記酸化安定性試験に準拠して測定される値を意味する。
本発明の軽油組成物においては、必要に応じて低温流動性向上剤、潤滑性向上剤、セタン価向上剤、清浄剤等の添加剤を適量配合することができる。
本発明の軽油組成物には、ディーゼル自動車のフィルター閉塞防止の点から低温流動性向上剤を添加することができる。また、その添加量は活性分濃度で200mg/L以上、1000mg/L以下であることが好ましく、300mg/L以上、800mg/L以下であることがより好ましい。
低温流動性向上剤の種類は特に限定されるものではないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体に代表されるエチレン−不飽和エステル共重合体、アルケニル琥珀酸アミド、ポリエチレングリコールのジベヘン酸エステルなどの線状の化合物、フタル酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ酢酸などの酸又はその酸無水物などとヒドロカルビル置換アミンの反応生成物からなる極性窒素化合物、アルキルフマレートまたはアルキルイタコネート−不飽和エステル共重合体などからなるくし形ポリマーなどの低温流動性向上剤の1種または2種以上が使用できる。また、エチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、塩素化メチレン−酢酸ビニル共重合体、不飽和カルボン酸のアルキルエステル重合体、水酸基を有する含窒素化合物と飽和脂肪酸から合成されるエステルもしくはその塩、多価アルコールと飽和脂肪酸から合成されるエステル及びアミド誘導体、ポリオキシアルキレングリコールと飽和脂肪酸から合成されるエステル、多価アルコールまたはその部分エステルのアルキレンオキサイド付加物と飽和脂肪酸から合成されるエステル、塩素化パラフィン/ナフタレン縮合物、アルケニルコハク酸アミド、スルホ安息香酸のアミン塩などから選ばれる1種または2種以上を組み合わせた低温流動性向上剤も使用することができる。この中でも汎用性の点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体系添加剤を好ましく使用することができる。なお、低温流動性向上剤と称して市販されている商品は、低温流動性に寄与する有効成分(活性分)が適当な溶剤で希釈されていることがあるため、こうした市販品を本発明の軽油組成物に添加する場合にあたっては、上記の添加量は、有効成分としての添加量(活性分濃度)を意味している。
本発明の軽油組成物への潤滑性向上剤の添加は、潤滑性能が上述の好ましい範囲に入れば特に制約を受けないが、燃料噴射ポンプの摩耗防止の理由から、添加することが好ましい。また、その添加量は、活性分濃度で20mg/L以上、200mg/L以下であることが好ましく、50mg/L以上、180mg/L以下であることがより好ましい。潤滑性向上剤の添加量が前記の範囲内であると、添加された潤滑性向上剤の効能を有効に引き出すことができ、例えば分配型噴射ポンプを搭載したディーゼルエンジンにおいて、運転中のポンプの駆動トルク増を抑制し、ポンプの摩耗を低減させることができる。
潤滑性向上剤の種類は特に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸系、エステル系、アルコール系およびフェノール系の各潤滑性向上剤の1種又は2種以上が任意に使用可能である。これらの中でも、カルボン酸系及びエステル系の潤滑性向上剤が好ましい。カルボン酸系の潤滑性向上剤としては、例えば、リノ−ル酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸及び上記カルボン酸の2種以上の混合物が例示できる。エステル系の潤滑性向上剤としては、グリセリンのカルボン酸エステルが挙げられる。カルボン酸エステルを構成するカルボン酸は、1種であっても2種以上であってもよく、その具体例としては、リノ−ル酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸等がある。
本発明の軽油組成物においては、必要に応じてセタン価向上剤を適量配合し、得られる軽油組成物のセタン価を向上させることができる。
セタン価向上剤としては、軽油のセタン価向上剤として知られる各種の化合物を任意に使用することができ、例えば、硝酸エステルや有機過酸化物等が挙げられる。これらのセタン価向上剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良いが、上述のセタン価向上剤の中では硝酸エステルを用いることが好ましい。かかる硝酸エステルには、2−クロロエチルナイトレート、2−エトキシエチルナイトレート、イソプロピルナイトレート、ブチルナイトレート、第一アミルナイトレート、第二アミルナイトレート、イソアミルナイトレート、第一ヘキシルナイトレート、第二ヘキシルナイトレート、n−ヘプチルナイトレート、n−オクチルナイトレート、2−エチルヘキシルナイトレート、シクロヘキシルナイトレート、エチレングリコールジナイトレートなどの種々のナイトレート等が包含されるが、特に、炭素数6〜8のアルキルナイトレートが好ましい。
セタン価向上剤の含有量は、組成物全量基準で500mg/L以上であることが好ましく、600mg/L以上であることがより好ましく、700mg/L以上であることがさらに好ましく、800mg/L以上であることがさらにより好ましく、900mg/L以上であることが最も好ましい。セタン価向上剤の含有量が500mg/Lに満たない場合は、十分なセタン価向上効果が得られず、ディーゼルエンジン排出ガスのPM、アルデヒド類、さらにはNOxが十分に低減されない傾向にある。また、セタン価向上剤の含有量の上限値は特に限定されないが、軽油組成物全量基準で、1400mg/L以下であることが好ましく、1250mg/L以下であることがより好ましく、1100mg/L以下であることがさらに好ましく、1000mg/L以下であることが最も好ましい。
セタン価向上剤は、常法に従い合成したものを用いてもよく、また、市販品を用いてもよい。なお、セタン価向上剤と称して市販されているものは、セタン価向上に寄与する有効成分(すなわちセタン価向上剤自体)を適当な溶剤で希釈した状態で入手されるのが通例である。このような市販品を使用して本発明の軽油組成物を調製する場合には、軽油組成物中の当該有効成分の含有量が上述の範囲内となることが好ましい。

本発明の軽油組成物には必要に応じて清浄剤を添加することができる。清浄剤の成分は特に限定されるものではないが、例えば、イミド系化合物;ポリブテニルコハク酸無水物とエチレンポリアミン類とから合成されるポリブテニルコハク酸イミドなどのアルケニルコハク酸イミド;ペンタエリスリトールなどの多価アルコールとポリブテニルコハク酸無水物から合成されるポリブテニルコハク酸エステルなどのコハク酸エステル;ジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ビニルピロリドンなどとアルキルメタクリレートとのコポリマーなどの共重合系ポリマー、カルボン酸とアミンの反応生成物等の無灰清浄剤等が挙げられ、中でもアルケニルコハク酸イミド及びカルボン酸とアミンとの反応生成物が好ましい。これらの清浄剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。アルケニルコハク酸イミドを使用する例としては、分子量1000〜3000程度のアルケニルコハク酸イミドを単独使用する場合と、分子量700〜2000程度のアルケニルコハク酸イミドと分子量10000〜20000程度のアルケニルコハク酸イミドとを混合して使用する場合とがある。カルボン酸とアミンとの反応生成物を構成するカルボン酸は1種であっても2種以上であってもよく、その具体例としては、炭素数12〜24の脂肪酸および炭素数7〜24の芳香族カルボン酸等が挙げられる。炭素数12〜24の脂肪酸としては、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、炭素数7〜24の芳香族カルボン酸としては、安息香酸、サリチル酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、カルボン酸とアミンとの反応生成物を構成するアミンは、1種であっても2種以上であってもよい。ここで用いられるアミンとしては、オレイルアミンが代表的であるが、これに限定されるものではなく、各種アミンが使用可能である。
清浄剤の配合量は特に制限されないが、清浄剤を配合した効果、具体的には、燃料噴射ノズルの閉塞抑制効果を引き出すためには、清浄剤の配合量を組成物全量基準で30mg/L以上とすることが好ましく、60mg/L以上とすることがより好ましく、80mg/L以上とすることがさらに好ましい。30mg/Lに満たない量を添加しても効果が現れない可能性がある。一方、配合量が多すぎても、それに見合う効果が期待できず、逆にディーゼルエンジン排出ガス中のNOx、PM、アルデヒド類等を増加させる恐れがあることから、清浄剤の配合量は300mg/L以下であることが好ましく、180mg/L以下であることがより好ましい。なお、市販の清浄剤は清浄に寄与する有効成分が適当な溶剤で希釈された状態で入手されるのが通例である。このような市販品を本発明の軽油組成物に配合する際には、軽油組成物中の当該有効成分の含有量が上述の範囲内となることが好ましい。
また、本発明における軽油組成物の性能をさらに高める目的で、後述するその他の公知の燃料油添加剤(以下、便宜上「その他の添加剤」という)を単独で、または数種類組み合わせて添加することもできる。その他の添加剤としては、例えば、フェノール系、アミン系などの酸化防止剤;サリチリデン誘導体などの金属不活性化剤;脂肪族アミン、アルケニルコハク酸エステルなどの腐食防止剤;アニオン系、カチオン系、両性系界面活性剤などの帯電防止剤;アゾ染料などの着色剤;シリコン系などの消泡剤;2−メトキシエタノール、イソプロピルアルコール、ポリグリコールエーテルなどの凍結防止剤等が挙げられる。
その他の添加剤の添加量は任意に決めることができるが、添加剤個々の添加量は、軽油組成物全量基準でそれぞれ好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。
以上のように、本発明によれば、上記の製造方法、留分規定等により製造された軽油組成物を使用することにより、従来の軽油組成物では実現が困難であった冬季環境下での実用性能と予混合圧縮着火燃焼にも適用できる環境対応性能とを高水準で同時に達成できる高品質の軽油を提供することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1〜3および比較例1〜3)
表1に示す性状を有する基材を調合して表2に示す軽油組成物を調製した(実施例1〜3および比較例1〜3)。FT合成基材1〜3は天然ガスをFT反応によりワックス及び中間留分化し、これに水素化処理を施して得られた炭化水素混合物であるが、それぞれの反応条件(異性化度)は異なるため、飽和炭化水素含有率が異なる基材となっている。高度水素化処理基材は軽油基材に更に水素化処理を施し、更なる低硫黄化と低芳香族化をはかった炭化水素基材である。動植物由来の処理油はパーム油(ホール成分)を原料として水素化処理を行い、雑成分を取り除いたものである。水素化精製軽油は冬季に使用されている市販の軽油に相当する。高圧縮比用燃料はFT合成基材、水素化精製基材、高度な水素化処理基材等を適切量配合して、高圧縮比ディーゼルエンジン向けに配合したものである。従って、各留分の混合比率及び各留分のセタン価を除けば、他の仕様は本発明の軽油組成物に必要とされる項目を満足している。これらを適量配合または全量使用して、実施例1〜3と比較例1〜3を製造した。
なお、本例で使用した添加剤は以下の通りである。
潤滑性向上剤:リノ−ル酸を主成分とするカルボン酸混合物
清浄剤:アルケニルコハク酸イミド混合物
低温流動性向上剤:エチレン−酢酸ビニル共重合体混合物
調合した軽油組成物の調合比率、及びこの調合した軽油組成物に対して、15℃における密度、30℃における動粘度、引火点、硫黄分含有量、酸素分含有量、蒸留性状、セタン指数、セタン価、芳香族分含有量、ナフテン化合物含有量、体積弾性率、くもり点、目詰まり点、流動点、色相、10%残油の残留炭素分、酸化安定性試験後の全不溶解分および過酸化物価、摩耗痕径、水分を測定した結果を表2に示す。
なお、軽油組成物の性状は以下の方法により測定した。なお、各留分の構成比率及びセタン価に関しては基材調合後に分留し、測定を行っている。
密度は、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を指す。
動粘度は、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定される動粘度を指す。
引火点はJIS K 2265「原油及び石油製品引火点試験方法」で測定される値を示す。
硫黄分含有量(硫黄分)は、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される軽油組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を指す。
酸素分含有量(酸素分)は、試料を白金炭素上でCOに転換し、あるいはさらにCOに転換した後に熱伝導度検出器を用いて測定した値を示す。
蒸留性状は、全てJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」によって測定される値である。E200−Eibp、E280−E200、Eep−E280は、それぞれ蒸留初留点から200℃までの留分の留出量(容量%)、蒸留200℃から280℃まで留分の留出量(容量%)、蒸留280℃から終点までの留分の留出量(容量%)を意味する。
ノルマルパラフィン分は、前述のGC−FIDを用いて測定される値(質量%)を意味する。
芳香族分含有量は、社団法人石油学会により発行されている石油学会法JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠され測定された芳香族分含有量の容量百分率(容量%)を意味する。
ナフテン化合物含有量は、ASTM D2524「Standard Test Method for Hydrocarbon Types in Middle Distillates by Mass Spectrometry」に準拠して測定されるナフテン含有量の質量百百分率(質量%)を意味する。
体積弾性率は、上述の通り、定容容器の中に測定対象となる燃料を封入し、そこに定容積のピストンを挿入した際の容器内の圧力が変化を元に算出した。
くもり点は、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準じて測定されるくもり点を意味する。
目詰まり点は、JIS K 2288「軽油−目詰まり点試験方法」により測定される目詰まり点を意味する。
流動点は、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に準じて測定される流動点を意味する。
セタン指数は、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」によって算出した価を指す。なお、上記JIS規格におけるセタン指数は、セタン価向上剤を添加したものに対しては適用されないが、本発明ではセタン価向上剤を添加したもののセタン指数も、上記「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」によって算出した値を表すものとする。
セタン価は、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「7.セタン価試験方法」に準拠して測定されるセタン価を意味する。
色相(セーボルト)は、JIS K 2580「石油製品−色試験法」に記載されたセーボルト色試験法に準拠して測定されるセーボルト色を意味する。
10%残油の残留炭素分とは、JIS K 2270「原油及び石油製品−残留炭素分試験方法」により測定される10%残油の残留炭素分を意味する。
酸化安定性試験後の過酸化物価(過酸化物価)とは、ASTM D2274−94に準拠して、95℃、酸素バブリング下、16時間の条件で加速酸化した後、石油学会規格JPI−5S−46−96に準拠して測定される値を意味する。
酸化安定性試験後の全不溶解分(全不溶解分)とは、ASTM D2274−94に準拠して、95℃、酸素バブリング下、16時間の条件で加速酸化した後に測定する値を意味する。
潤滑性能およびHFRR摩耗痕径(WS1.4)は、社団法人石油学会から発行されている石油学会規格JPI−5S−50−98「軽油−潤滑性試験方法」により測定した潤滑性能を指す。
水分は、JIS K 2275「原油及び石油製品−水分試験方法」に記載のカールフィッシャー式電量滴定法により測定される水分を指す。
実施例で使用した軽油組成物は、表1、2に示すとおり、FT合成基材を20容量%以上配合して製造されたものである。また、表2から明らかなように、FT合成基材を本発明で規定される範囲内で配合した実施例1〜3においては、規定した性状を満足した軽油組成物を容易にかつ確実に得ることができた。一方、上記特定の軽油基材を用いずに軽油組成物を調製した比較例2、及び比較例1のように特定の基材は用いているものの留分構成比率等が規定性状を満足していない場合には、本発明の目的とする軽油組成物は必ずしも得られない。
次に実施例1〜3及び比較例1〜2の各軽油組成物を用いて、以下に示す各種試験を行った。全ての試験結果を表3に示す。表3の結果からわかるように、実施例1〜3の軽油組成物は、比較例1〜2の軽油組成物に比べ、予混合圧縮着火燃焼時のNOx、Smoke、燃費性能及び有効着火遅れ期間、通常燃焼時のNOx、Smoke、燃費性能、低温始動性で良好な結果が得られており、従来の軽油組成物では実現が困難であった優れた冬季環境下での実用性能と予混合圧縮着火燃焼にも適用できる環境対応性能とを高水準で同時に達成できる高品質の軽油を提供することができる。
(予混合圧縮着火燃焼試験)
下記に示す市販エンジン1をベースとし、その全気筒のピストン形状を変えることで圧縮比を16に改造し、また電子制御コモンレール式燃料噴射ポンプの制御部を一部改良して、噴射時期の制御を可能とした実験用エンジンにて試験を行った。試験は定常条件(1200rpm、25%負荷相当条件(燃料間の投入熱量は一定)、燃料噴射時期:上死点前30゜CA、吸気条件:常温一定)で行い、NOx、Smoke、燃費測定と共に、有効着火遅れ期間の計測を行った。有効着火遅れ期間とは、燃料噴射終了時期から着火開始時期を引いた値であり、この値が正であれば噴射した燃料のほぼ全てが空気と混合する時間を有することになり、予混合燃焼がより効果的に進むことになる。逆に、この値が負になると燃料噴射終了以前に燃焼が開始したことになるため、著しいSmoke発生を伴うような十分な予混合化を経ない燃焼を行ったことになる。燃費は比較例1を100として、各燃料での測定結果を相対値で表記した(数値が小さい方がよい結果を示す)。
なお、エンジン試験に係わる試験方法は、旧運輸省監修新型自動車審査関係基準集別添29「ディーゼル自動車13モード排出ガス測定の技術規準」に準拠している。
(エンジン諸元):市販エンジン1
エンジン種類:過給EGR付き直列6気筒ディ−ゼル
排気量 :1.4L
内径×工程 :73mm×81.4mm
圧縮比 :18.5(着火燃焼試験時に16.0へ改良)
最高出力 :72kW/4000rpm
規制適合 :2002年排ガス規制適合
排出ガス後処理装置:なし
(ディーゼル燃焼試験)
市販エンジン1を圧縮比及び噴射系等の改良無しの状態で使用して、3200rpm−80%負荷相当条件(燃料間の投入熱量は一定)で運転を行い、NOx、Smoke、燃費を測定した。結果は、比較例1の燃料を供試した場合の結果を100として、各結果を相対的に比較して評価した(数値が小さい方がよい結果を示す)。
(低温始動性試験)
上述のエンジン1と同様の圧縮比の改造を施したエンジンを下記車両1に搭載し、環境温度の制御が可能なシャーシダイナモメータ上で、室温で、(1)供試ディーゼル自動車の燃料系統を評価燃料でフラッシング(洗浄)、(2)フラッシング燃料の抜き出し、(3)メインフィルタの新品への交換、(4)燃料タンクに評価燃料の規定量(供試車両の燃料タンク容量の1/2)の張り込みを行う。その後、(5)環境温度を室温から0℃まで急冷し、(6)0℃で1時間保持した後、(7)1℃/hの冷却速度で所定の温度(−10℃)に達するまで徐冷し、(8)所定の温度で1時間保持した後、エンジンを始動させる。10秒間のクランキングを30秒間隔で2回繰り返しても始動しない場合はこの時点で不可(×)とした。また、クランキングを2回繰り返す間でエンジンが始動した場合はそのままアイドリングで3分間保持し、その後15秒かけて車速を60km/hに移行し、そのまま低速運転を行う。速度移行時及び60km/h低速走行を20分継続する際に動作不良(ハンチング、スタンブル、車速低下、エンジン停止等)が見られた場合はその時点で不可(×)とし、最後まで支障なく走行した場合は可(○)とした。
(車両諸元):車両1
エンジン種類:インタークーラー付過給EGR付直列4気筒ディ−ゼル
排気量 :1.4L
内径×工程 :73mm×81.4mm
圧縮比 :18.5(16.0に改良)
最高出力 :72kW/4000rpm
規制適合 :2002年排ガス規制適合
車両重量 :排出ガス
ミッション :5MT
後処理装置 :酸化触媒
Figure 0005030454
Figure 0005030454
Figure 0005030454
軽油組成物の体積弾性率の測定に使用される装置の一例を示す概略構成図である。
符号の説明
1 定容容器
2 供給弁
3 排出弁
4 温度センサ
5 圧力センサ
6 ピストン
100 軽油組成物

Claims (3)

  1. FT合成基材を配合した、硫黄分含有量が5質量ppm以下、酸素含有量が100質量ppm以下、体積弾性率が1250MPa以上1450MPa以下、セーボルト色が+22以上、HFRR摩耗痕径(WS1.4)が400μm以下、蒸留性状の初留点が140℃以上、終点が360℃以下であり、かつ各留分範囲に下記(1)〜(3)の特徴を有する、幾何的圧縮比が16以下の過給器及びEGR付きディーゼルエンジンで使用される硫黄分以外の品質項目性状がJIS2号軽油規格を満たす軽油組成物。
    (1)200℃未満の留分範囲におけるセタン価が44.3以上49.0以下であり、かつ当該留分の全体における容積あたりの構成比率が13.8容量%以上16.0容量%以下
    (2)200℃以上280℃未満の留分範囲におけるセタン価が65.0以上70.8以下であり、かつ当該留分の全体における容積あたりの構成比率が41.1容量%以上55.3容量%以下
    (3)280℃以上の留分範囲におけるセタン価が55.6以上58.6以下であり、かつ当該留分の全体における容積あたりの構成比率が30.9容量%以上42.9容量%以下
  2. 加速酸化試験後の過酸化物価が50質量ppm以下、芳香族分が15容量%以下であることを特徴とする請求項1記載の軽油組成物。
  3. FT合成基材の配合比率が20容量%以上である請求項1記載の軽油組成物。

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