JP4847170B2 - 極低温地向け燃料組成物 - Google Patents
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Description
すなわち、極低温地域における低温流動性と複数の用途に対応できるフレキシビリティさ並びに環境対応型燃料としての性能を全て満たすこと、かつ極低温下での燃料性能を保持できること、これらの要件を高水準で同時に達成できる高品質の燃料を設計することは非常に困難であり、これ以外の燃料油として求められている諸性能を十分満たし、また現実的な製造方法の検討を踏まえた例、知見は存在していない。
すなわち、本発明は、初留点が140℃以上200℃以下、蒸留性状の90容量%留出温度が200℃以上300℃以下、芳香族含有量が20容量%以下、直鎖飽和炭化水素含有量が25質量%以上、炭素数10以上15以下の直鎖飽和炭化水素含有量が20質量%以上、硫黄含有量が300質量ppm以下である炭化水素混合物Aを原料油として、工程(1):炭化水素混合物Aを反応温度250℃以上310℃以下、水素圧力5MPa以上10MPa以下、LHSV0.5h−1以上3.0h−1以下、水素/炭化水素容量比が0.15以上0.6以下の条件で、Ni−W、Ni−Mo、Co−Mo、Co−W、またはNi−Co−Moのいずれかを含有する触媒により水素化脱硫処理して炭化水素混合物Bを得る工程、工程(2):炭化水素混合物Bの軽質な部分を1容量%以上40容量%以下の範囲で除去して炭化水素混合物Cを得る工程、工程(3):炭化水素混合物Cを反応温度150℃以上250℃以下、圧力1MPa以上5MPa以下の条件下でゼオライトにより直鎖飽和炭化水素を10容量%以上除去した炭化水素混合物Dを得る工程、を経て得られる炭化水素混合物Dを全燃料組成物に対して80容量%以上含有し、セーボルト色+28以上、15℃における密度が740kg/m3以上840kg/m3以下、蒸留性状の10%留出温度が170℃以上220℃以下、90%留出温度が220℃以上300℃以下、セタン指数45以上、セタン価48以上、引火点45℃以上、反応試験の結果が中性、銅板腐食が1以下、加速酸化試験後の過酸化物価が10質量ppm以下、流動点−60℃以下、硫黄分10質量ppm以下、30℃における動粘度が1.6mm2/s以上5.0mm2/s以下、−30℃における動粘度が30mm2/s以下、水分含有量が0.01容量%以下、10%残油の残留炭素分が0.1質量%以下であることを特徴とする極低温地向け燃料組成物に関する。
なお、本燃料組成物を供給することで作動する機器類、例えば移動用車両、雪上車、船舶、航空機、ヘリコプター、工作用車両、暖房用機器、発電用機器等の種類、用途に対しては、本燃料組成物は何ら制約を加えるものではなく、それらに用いられている動力源及び熱源、例えばディーゼルエンジン、ガスタービン、燃料電池、ジェットエンジン、バーナー、コンロ等の種類に関しても何ら制約を加えるものではない。
硫黄含有量は、JIS K 2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」により測定される値である。
炭化水素混合物Aは上述の所定の性状を有する以外に特に限定は無いが、石油系基材の他に、環境対応型燃料としての排出ガス性能向上の理由から、FT合成基材、動植物油由来の処理油であることが好ましい。
炭素を含有する物質としては、天然ガス、石油液化ガス、メタンガス等の常温で気体となっている炭化水素からなるガス成分や、石油アスファルト、バイオマス、石炭、建材やゴミ等の廃棄物、汚泥、及び通常の方法では処理しがたい重質な原油、非在来型石油資源等を高温に晒すことで得られる混合ガスが一般的であるが、水素及び一酸化炭素を主成分とする混合ガスが得られる限りにおいては、本発明はその原料を限定するものではない。
多孔質担体としては無機酸化物が好ましく用いられる。具体的には、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、ゼオライトなどが挙げられる。
ゼオライトは結晶性アルミノシリケートであり、フォージャサイト、ペンタシル、モルデナイトなどが挙げられ、好ましくはフォージャサイト、ベータ、モルデナイト、特に好ましくはY型、ベータ型が用いられる。なかでも、Y型は超安定化したものが好ましい。
活性金属Aタイプは周期律表第8族金属から選ばれる少なくとも1種類の金属である。好ましくはRu,Rh,Ir,PdおよびPtから選ばれる少なくとも1種類であり、さらに好ましくはPdまたは/およびPtである。活性金属としてはこれらの金属を組み合わせたものでよく、例えば、Pt−Pd,Pt−Rh,Pt−Ru,Ir−Pd,Ir−Rh,Ir−Ru,Pt−Pd−Rh,Pt−Rh−Ru,Ir−Pd−Rh,Ir−Rh−Ruなどがある。これらの金属からなる貴金属系触媒を使う際には、水素気流下において予備還元処理を施した後に用いることができる。一般的には水素を含むガスを流通し、200℃以上の熱を所定の手順に従って与えることにより触媒上の活性金属が還元され、水素化活性を発現することになる。
また活性金属Bタイプとして、周期律表第6A族および第8族金属から選ばれる少なくとも一種類の金属を含有し、望ましくは第6A族および第8族から選択される二種類以上の金属を含有しているものも使用することができる。例えばCo−Mo,Ni−Mo,Ni−Co−Mo,Ni−Wが挙げられ、これらの金属からなる金属硫化物触媒を使う際には予備硫化工程を含む必要がある。
活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の反応温度は、170℃以上320℃以下であることが好ましく、175℃以上300℃以下であることがより好ましく、180℃以上280℃以下であることが更に好ましい。水素化精製における反応温度が320℃を超えると、ナフサ留分へ分解する副反応が増えて中間留分の収率が極度に減少するため好ましくない。また、反応温度が170℃を下回ると、アルコール分が除去しきれずに残存するため好ましくない。
活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の水素圧力は、2MPa以上10MPa以下であることが好ましく、2.5MPa以上8MPa以下であることがより好ましく、3MPa以上7MPa以下であることが更に好ましい。水素圧力は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の液空間速度(LHSV)は、0.1h−1以上2h−1以下であることが好ましく、0.2h−1以上1.5h−1以下であることがより好ましく、0.3h−1以上1.2h−1以下であることが更に好ましい。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので経済的に好ましくない。
活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化精製を行う場合の水素/油比は、100NL/L以上800NL/L以下であることが好ましく、120NL/L以上600NL/L以下であることがより好ましく、150NL/L以上500NL/L以下であることが更に好ましい。水素/油比は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
固体酸性質を有する担体にはアモルファス系と結晶系のゼオライトがある。具体的にはアモルファス系のシリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニアとゼオライトのフォージャサイト型、ベータ型、MFI型、モルデナイト型などがある。好ましくはフォージャサイト型、ベータ型、MFI型、モルデナイト型のゼオライト、より好ましくはY型、ベータ型である。Y型は超安定化したものが好ましい。
活性金属Aタイプとしては主に周期律表第6A族および第8族金属から選ばれる少なくとも1種類の金属である。好ましくはNi、Co、Mo、Pt、PdおよびWから選ばれる少なくとも1種類の金属である。これらの金属からなる貴金属系触媒を使う際には、水素気流下において予備還元処理を施した後に用いることができる。一般的には水素を含むガスを流通し、200℃以上の熱を所定の手順に従って与えることにより触媒上の活性金属が還元され、水素化活性を発現することになる。
また活性金属Bタイプとしてはこれらの金属を組み合わせたものでよく、例えば、Pt−Pd、Co−Mo、Ni−Mo、Ni−W、Ni−Co−Moなどが挙げられる。また、これらの金属からなる触媒を使う際には、予備硫化したのち使用するのが好ましい。
活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の液空間速度(LHSV)は、0.1h−1以上2h−1以下であることが好ましく、0.2h−1以上1.7h―1以下であることがより好ましく、0.3h−1以上1.5h−1以下であることが更に好ましい。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので経済的に好ましくない。
活性金属Bタイプからなる触媒を用いて水素化分解を行う場合の水素/油比は、150NL/L以上2000NL/L以下であることが好ましく、300NL/L以上1700NL/L以下であることがより好ましく、400NL/L以上1500NL/L以下であることが更に好ましい。水素/油比は高いほど水素化反応が促進されるが、一般には経済的に最適点が存在する。
水素化処理装置の反応形式は、固定床方式をとりうる。水素は原料油に対して、向流または並流のいずれの形式をとることもでき、また、複数の反応塔を有し向流、並流を組み合わせた形式のものでもよい。一般的な形式としてはダウンフローであり、気液双並流形式がある。反応塔の中段には反応熱の除去、あるいは水素分圧を上げる目的で水素ガスをクエンチとして注入してもよい。
また、原料油としては250℃以上の留分を含有していることが好ましく、300℃以上の留分を含有していることがより好ましく、360℃以上の留分を含有していることが更に好ましい。沸点が230℃以上の留分を含有していない場合には、製造時にガス分の生成が増加するため液生成物の収率が減少し、ライフサイクル二酸化炭素が増加する恐れがある。
直鎖飽和炭化水素の除去の反応温度は150℃以上250℃以下であり、好ましくは180℃以上200℃以下である。反応温度が150℃未満の場合、十分な直鎖飽和炭化水素の除去速度が得られない。一方、250℃を超えると、直鎖飽和炭化水素の除去効率が低下する。また、この時の圧力は、1MPa以上5MPa以下であり、好ましくは1.5MPa以上3MPa以下である。圧力が1MPa未満であると十分な直鎖飽和炭化水素の除去速度が得られない。一方、5MPaを超えると十分な直鎖飽和炭化水素の除去速度が得られない。直鎖飽和炭化水素の除去に使用するゼオライトは特には限定されないが一般的にはA型ゼオライトが使用され、その中でもモレキュラーシーブ5Aが好ましい。以上の条件で、直鎖飽和炭化水素を10容量%以上、好ましくは20質量%以上抽出除去することが必要である。
また、本発明の極低温地向け燃料組成物は、上記工程(1)〜(3)を経て得られる炭化水素混合物Dを全燃料組成物に対して80〜100容量%、炭素数16以上20以下の直鎖飽和炭化水素化合物含有量の総和が10質量%以下であり、かつ炭素数21以上25以下の直鎖飽和炭化水素化合物含有量の総和が2質量%以下であることを特徴とするFT合成基材を0〜20容量%含有し、以下の特定の性状を有することが好ましい。
また、90%留出温度が220℃に満たないと燃費向上効果が不十分となり、エンジン出力が低下する傾向にあるため、好ましくは225℃以上、より好ましくは230℃以上、さらに好ましくは235℃以上である。一方、90%留出温度が300℃を超えるとPMや微小粒子の排出量が増加する傾向にあるため、好ましくは295℃以下、より好ましくは290℃以下、さらに好ましくは285℃以下である。なお、ここでいう10%留出温度、90%留出温度とは、全てJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法−常圧法」により測定される値を意味する。
なお、ここでいう加速酸化試験後の過酸化物価とは、ASTM D2274−94に準拠して、95℃、酸素バブリング下、16時間の条件で加速酸化試験を実施した後、石油学会規格JPI−5S−46−96に準拠して測定した過酸化物価の値を意味する。本発明の極低温地向け燃料組成物には、過酸化物価を低減するために、酸化防止剤や金属不活性剤等の添加剤を適宜添加することができる。
低温流動性向上剤の種類は特に限定されるものではないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体に代表されるエチレン−不飽和エステル共重合体、アルケニル琥珀酸アミド、ポリエチレングリコールのジベヘン酸エステルなどの線状の化合物、フタル酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ酢酸などの酸又はその酸無水物などとヒドロカルビル置換アミンの反応生成物からなる極性窒素化合物、アルキルフマレートまたはアルキルイタコネート−不飽和エステル共重合体などからなるくし形ポリマーなどの低温流動性向上剤の1種または2種以上が使用できる。また、エチレンとメタクリル酸メチルとの共重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、塩素化メチレン−酢酸ビニル共重合体、不飽和カルボン酸のアルキルエステル重合体、水酸基を有する含窒素化合物と飽和脂肪酸から合成されるエステルもしくはその塩、多価アルコールと飽和脂肪酸から合成されるエステル及びアミド誘導体、ポリオキシアルキレングリコールと飽和脂肪酸から合成されるエステル、多価アルコールまたはその部分エステルのアルキレンオキサイド付加物と飽和脂肪酸から合成されるエステル、塩素化パラフィン/ナフタレン縮合物、アルケニルコハク酸アミド、スルホ安息香酸のアミン塩などから選ばれる1種または2種以上を組み合わせた低温流動性向上剤も使用することができる。この中でも汎用性の点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体系添加剤を好ましく使用することができる。なお、低温流動性向上剤と称して市販されている商品は、低温流動性に寄与する有効成分(活性分)が適当な溶剤で希釈されていることがあるため、こうした市販品を本発明の燃料組成物に添加する場合にあたっては、上記の添加量は、有効成分としての添加量(活性分濃度)を意味している。
カルボン酸系の潤滑性向上剤としては、例えば、リノ−ル酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸及び上記カルボン酸の2種以上の混合物が例示できる。
エステル系の潤滑性向上剤としては、グリセリンのカルボン酸エステルが挙げられる。カルボン酸エステルを構成するカルボン酸は、1種であっても2種以上であってもよく、その具体例としては、リノ−ル酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸等がある。
なお、本発明は極低温地での使用を前提としているため、これらの潤滑性向上剤の脂肪酸構造は不飽和結合を有するものが、低温流動性確保の観点からより好ましい。
その他の添加剤の添加量は任意に決めることができるが、添加剤個々の添加量は、極低温地向け燃料組成物の全量基準でそれぞれ好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。
表1に示す性状を有する原料油を表2に示す工程ごとの条件で反応、処理し、表3に示す極低温地向け燃料組成物を調製した(実施例1〜3)。実施例1、2、3は異なる原料油を異なる条件での各工程処理を行い得られたものである。実施例1は石油系炭化水素に対して芳香族分の開環反応を含んだ高度の水素化精製処理を施し、得られた炭化水素を原料油としたものである。実施例2は天然ガスをFT反応によりワックス及び中間留分化し、これに水素化処理を施して得られた炭化水素を原料油としたものである。実施例3は、パームやしから得られた油分(留分ごとに分離はせず、ホール状態で使用)を水素化精製処理し、不要なアルコール分等を除去した後に得られた炭化水素を原料油としたものである。
実施例4は実施例1の燃料油組成物を製造した後に表1に示した合成燃料基材を配合したものである。なお、配合した合成燃料基材は天然ガスをFT反応によりワックス及び中間留分化し、これに水素化処理を施して得られた炭化水素混合物からなるものであり、比較的異性化反応が進んだ側鎖を有する飽和炭化水素化合物を含有したものである。比較例1はゼオライトに周期律表第6A族及び第8族の金属から選ばれた金属群を担持した触媒下において反応圧力3MPa、反応温度380℃、液空間速度0.8h−1の条件で処理された脱硫脱ロウ基材を灯油留分と混合して製造した組成物であり、比較例2は一般的な水素化精製による製法で軽油留分と灯油留分を製造し、これらを適量配合してJIS特3号軽油相当の低温性能を有する組成物である。
凍結防止剤:2−メトキシエタノール
潤滑性向上剤:リノ−ル酸を主成分とするカルボン酸混合物
低温流動性向上剤:エチレン−酢酸ビニル共重合体
セタン価向上剤:2−エチルヘキシルナイトレ−ト
密度は、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を指す。
動粘度は、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定される動粘度を指す。
引火点はJIS K 2265「原油及び石油製品引火点試験方法」で測定される値を示す。
硫黄分含有量は、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される燃料組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を指す。
蒸留性状は、全てJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」によって測定される値である。
芳香族分含有量は、社団法人石油学会により発行されている石油学会法JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠され測定された芳香族分含有量の容量百分率(容量%)を意味する。
直鎖飽和炭化水素含有量、C10−C15のnP(炭素数10以上15以下の直鎖飽和炭化水素含有量)、C11−C15のnP、C16−C20のnPは前述のGC−FIDを用いて測定される値(質量%)を意味する。
セタン価は、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「7.セタン価試験方法」に準拠して測定されるセタン価を意味する。
流動点は、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」により測定される流動点を指す。
反応試験は、JIS K 2252「石油製品−反応試験方法」により測定される反応を指す。
銅板腐食は、JIS K 2252「石油製品−銅板腐食試験方法」により測定される腐食の分類を指す。
水分は、JIS K 2275「原油及び石油製品−水分試験方法」に記載のカールフィッシャー式電量滴定法により測定される水分を指す。
10%残油の残留炭素分とは、JIS K 2270「原油及び石油製品−残留炭素分試験方法」により測定される10%残油の残留炭素分を意味する。
酸化安定性試験後の過酸化物価(過酸化物価)とは、ASTM D2274−94に準拠して、95℃、酸素バブリング下、16時間の条件で加速酸化した後、石油学会規格JPI−5S−46−96に準拠して測定される値を意味する。
酸化安定性試験後の全不溶解分(全不溶解分)とは、ASTM D2274−94に準拠して、95℃、酸素バブリング下、16時間の条件で加速酸化した後に測定する値を意味する。
導電率とは、JIS K 2276「石油製品−航空燃料油試験方法」に準拠して測定される値を意味する。
潤滑性能およびHFRR摩耗痕径(WS1.4)とは、社団法人石油学会から発行されている石油学会規格JPI−5S−50−98「軽油−潤滑性試験方法」により測定される潤滑性能を指す。
表3から明らかなように、所定の工程を経て製造された基材を用いて本発明で規定する条件で配合した実施例1〜4においては、規定した性状を満足した燃料組成物を容易にかつ確実に得ることができた。一方、上記特定の燃料基材を用いずに燃料組成物を調製した比較例1〜2においては、本発明の目的とする燃料組成物は必ずしも得られない。
−30℃の環境下に静置した芯式石油ストーブ(株式会社コロナ製SX−E261Y、2004年度製、暖房出力:2.56〜2.05kW)に燃料を供試し、通常の着火操作を行った際に、着火時に着火不良、失火、赤火、黒煙、白煙の発生がない場合、かつその後10分間燃焼させた際にも同様の異常燃焼が起きなかった場合を合格(○)とし、異常燃焼が起こった場合は不合格(×)とした。なお、心式ストーブでの燃焼確認試験に係わる試験方法は、JIS S 3031「石油燃焼機器の試験方法通則」に準拠して実施した。
環境温度の制御が可能なシャーシダイナモメータ上で、室温下で、(1)供試ディーゼル自動車の燃料系統を評価燃料でフラッシング(洗浄)、(2)フラッシング燃料の抜き出し、(3)メインフィルタの新品への交換、(4)燃料タンクに評価燃料の規定量(供試車両の燃料タンク容量の1/2)の張り込みを行う。その後、(5)環境温度を室温から−20℃まで急冷し、(6)−20℃で1時間保持した後、(7)1℃/hの冷却速度で所定の温度(−30℃)に達するまで徐冷し、(8)所定の温度で1時間保持した後、エンジンを始動させる。10秒間のクランキングを30秒間隔で2回繰り返しても始動しない場合は測定不能とする。始動できる場合は、アイドリングで30秒間放置し、その後5秒間でアクセルペダルを一杯まで踏み込む操作を5回繰り返し、その際の白煙を透過型測定器で計測する。5回の平均値を算出し、比較例1の結果を100とし、各結果を相対的に比較、定量化した。
下記に示すディーゼルエンジン搭載車両(車両1)を用いて、燃費の測定を行った。試験モードは、図1に示す実走行を模擬した過渡運転モードで行った。スモークの測定は透過型測定器を使用している。各排ガス性能値は比較例1での試験結果を100とし、各結果を相対的に比較、定量化した。なお、車両試験に係わる試験方法は、旧運輸省監修新型自動車審査関係基準集別添27「ディーゼル自動車10・15モード排出ガス測定の技術基準」に準拠している。
(車両諸元):車両1
エンジン種類:インタークーラー付過給直列4気筒ディ−ゼル
排気量 :3L
圧縮比 :18.5
最高出力 :125kW/3400rpm
最高トルク:350Nm/2400rpm
規制適合 :平成9年度排ガス規制適合
車両重量 :1900kg
ミッション:4AT
排ガス後処理装置:酸化触媒
対象となる燃料組成物を−30℃一定で制御できる冷凍庫内に1ヶ月間保管し、保管後の外観確認を行い、沈殿物や濁りが発生した場合は不可(×)とし、外観上異常がなくまた保管後の燃料組成物の上澄み(液面より1cm以内の部分)をサンプリングして流動点測定を行い、保管前と同等の性能が得られた場合を可(○)とする。
Claims (6)
- 初留点が140℃以上200℃以下、蒸留性状の90容量%留出温度が200℃以上300℃以下、芳香族含有量が20容量%以下、直鎖飽和炭化水素含有量が25質量%以上、炭素数10以上15以下の直鎖飽和炭化水素含有量が20質量%以上、硫黄含有量が300質量ppm以下である炭化水素混合物Aを原料油として、下記工程(1)〜(3)を経て得られる炭化水素混合物Dを全燃料組成物に対して80容量%以上含有し、セーボルト色+28以上、15℃における密度が740kg/m3以上840kg/m3以下、蒸留性状の10%留出温度が170℃以上220℃以下、90%留出温度が220℃以上300℃以下、セタン指数45以上、セタン価48以上、引火点45℃以上、反応試験の結果が中性、銅板腐食が1以下、加速酸化試験後の過酸化物価が10質量ppm以下、流動点−60℃以下、硫黄分10質量ppm以下、30℃における動粘度が1.6mm2/s以上5.0mm2/s以下、−30℃における動粘度が30mm2/s以下、水分含有量が0.01容量%以下、10%残油の残留炭素分が0.1質量%以下であることを特徴とする極低温地向け燃料組成物。
工程(1):炭化水素混合物Aを反応温度250℃以上310℃以下、水素圧力5MPa以上10MPa以下、LHSV0.5h−1以上3.0h−1以下、水素/炭化水素容量比が0.15以上0.6以下の条件で、Ni−W、Ni−Mo、Co−Mo、Co−W、またはNi−Co−Moのいずれかを含有する触媒により水素化脱硫処理して炭化水素混合物Bを得る工程
工程(2):炭化水素混合物Bの軽質な部分を1容量%以上40容量%以下の範囲で除去して炭化水素混合物Cを得る工程
工程(3):炭化水素混合物Cを反応温度150℃以上250℃以下、圧力1MPa以上5MPa以下の条件下でゼオライトにより直鎖飽和炭化水素を10容量%以上除去した炭化水素混合物Dを得る工程 - 初留点が140℃以上200℃以下、蒸留性状の90容量%留出温度が200℃以上300℃以下、芳香族含有量が20容量%以下、直鎖飽和炭化水素含有量が25質量%以上、炭素数10以上15以下の直鎖飽和炭化水素含有量が20質量%以上、硫黄含有量が300質量ppm以下である炭化水素混合物Aを原料油として、下記工程(1)〜(3)を経て得られる炭化水素混合物Dを全燃料組成物に対して80〜100容量%、炭素数16以上20以下の直鎖飽和炭化水素化合物含有量の総和が10質量%以下であり、かつ炭素数21以上25以下の直鎖飽和炭化水素化合物含有量の総和が2質量%以下であるFT合成基材を0〜20容量%含有し、セーボルト色+28以上、15℃における密度が740kg/m3以上840kg/m3以下、蒸留性状の10%留出温度が170℃以上220℃以下、90%留出温度が220℃以上300℃以下、セタン指数45以上、セタン価48以上、引火点45℃以上、反応試験の結果が中性、銅板腐食が1以下、加速酸化試験後の過酸化物価が10質量ppm以下、流動点−60℃以下、硫黄分10質量ppm以下、30℃における動粘度が1.6mm2/s以上5.0mm2/s以下、−30℃における動粘度が30mm2/s以下、水分含有量が0.01容量%以下、10%残油の残留炭素分が0.1質量%以下であることを特徴とする極低温地向け燃料組成物。
工程(1):炭化水素混合物Aを反応温度250℃以上310℃以下、水素圧力5MPa以上10MPa以下、LHSV0.5h−1以上3.0h−1以下、水素/炭化水素容量比が0.15以上0.6以下の条件で、Ni−W、Ni−Mo、Co−Mo、Co−W、またはNi−Co−Moのいずれかを含有する触媒により水素化脱硫処理して炭化水素混合物Bを得る工程
工程(2):炭化水素混合物Bの軽質な部分を1容量%以上40容量%以下の範囲で除去して炭化水素混合物Cを得る工程
工程(3):炭化水素混合物Cを反応温度150℃以上250℃以下、圧力1MPa以上5MPa以下の条件下でゼオライトにより直鎖飽和炭化水素を10容量%以上除去した炭化水素混合物Dを得る工程 - 炭化水素混合物AがFT合成基材であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の極低温地向け燃料組成物。
- 炭化水素混合物Aが植物油由来の処理油であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の極低温地向け燃料組成物。
- 凍結防止剤を100質量ppm以上500質量ppm以下添加した請求項1〜4のいずれかに記載の極低温地向け燃料組成物。
- 低温流動性向上剤を活性分濃度で200mg/L以上1000mg/L以下添加し、かつ潤滑性向上剤を活性分濃度で20mg/L以上200mg/L以下添加した請求項1〜5のいずれかに記載の極低温地向け燃料組成物。
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