JP7447537B2 - タンタル酸リチウム基板の製造方法とタンタル酸リチウム基板 - Google Patents

タンタル酸リチウム基板の製造方法とタンタル酸リチウム基板 Download PDF

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本発明は、タンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法に係り、特に、焦電性に起因した素子製造プロセスでの歩留まり低下が抑制され、かつ、素子製造プロセスの露光工程等において素子品質に影響を与えることのないタンタル酸リチウム基板の製造方法とタンタル酸リチウム基板に関するものである。
タンタル酸リチウム(以下、LTと略称することがある)結晶は、融点が約1650℃、キュリー温度が約600℃の強誘電体であり、この結晶を用いて製造されたタンタル酸リチウム基板は、主に、携帯電話の送受信用デバイスに用いられる表面弾性波(SAW)フィルター材料として適用されている。
そして、携帯電話の高周波化、各種電子機器の無線LANであるBluetooth(登録商標)(2.45GHz)の普及等により、2GHz前後の周波数領域のSAWフィルターが今後急増すると予測されている。
上記SAWフィルターは、LT等の圧電材料で構成された基板上に、Al、Cu等の金属薄膜で一対の櫛型電極が形成された構造となっており、この櫛型電極がデバイスの特性を左右する重要な役割を担っている。また、上記櫛型電極は、圧電材料上にスパッタリングにより金属薄膜を成膜した後、露光工程やエッチング工程等を含むフォトリソグラフ技術により一対の櫛型パターンを残して不要な部分を除去することで形成される。
また、上記LT単結晶は、産業的には、主にチョクラルスキー法によって、酸素濃度が数%~20%程度の窒素-酸素混合ガス雰囲気の電気炉中で育成されており、通常、高融点のイリジウム坩堝が用いられ、育成されたLT単結晶は電気炉内で所定の冷却速度で冷却された後、電気炉から取り出して得られている。尚、LT単結晶の育成方法については、上記チョクラルスキー法に限定されず、他の公知の育成方法、例えば、引き下げ法が用いられることもある。
育成されたLT結晶は、無色透明若しくは透明度の高い淡黄色を呈している。育成後、結晶の熱応力による残留歪みを取り除くため、融点に近い均熱下で熱処理を行い、更に単一分極とするためのポーリング処理、すなわち、LT結晶を室温からキュリー温度以上の所定温度まで昇温し、結晶に電圧を印加し、電圧を印加したままキュリー温度以下の所定温度まで降温した後、電圧印加を停止して室温まで冷却する一連の処理を行う。ポーリング処理後、結晶の外径を整えるために外周研削されたLT結晶(インゴットと称する)は、スライス、ラップ、ポリッシュ工程等の機械加工を経て基板となる。最終的に得られた基板はほぼ無色透明で、その体積抵抗率はおよそ1014~1015Ω・cm程度である。
このような従来の方法で得られた基板では、表面弾性波素子(SAWフィルター)製造プロセスにおいて、LT結晶の特性である焦電性のため、プロセスで受ける温度変化によって電荷が基板表面にチャージアップし、これにより生ずる放電が原因となって基板表面に形成した櫛型電極が破壊され、更には基板の割れ等を生じて素子製造プロセスでの歩留まり低下が起きている。
そこで、LT結晶の焦電性による不具合を解消するため、導電率を増大させる技術がいくつか提案されている。例えば、特許文献1では、容器内に充填されたアルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)との混合粉中に基板の状態に加工されたLT結晶(以下、「基板形状のLT結晶」とし、熱処理後の「LT基板」と区別する)を埋め込んで熱処理(還元処理)する方法が提案され、特許文献2では、容器内に充填されたAl粉とAl23粉との混合粉中に基板形状のLT結晶を埋め込み、大気圧雰囲気下の加熱炉内に上記容器を配置した後、加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排しながら熱処理(還元処理)する特許文献1の改良法が提案されている。尚、導電性を増大させたLT基板は、酸素空孔が導入されたことにより光吸収を起こすようになる。そして、観察されるLT基板の色調は、透過光では赤褐色系に、反射光では黒色に見えるため、導電性を増大させる還元処理は黒化処理とも呼ばれており、このような色調の変化現象を黒化と呼んでいる。
特許第4063191号公報 特開2019-112267号公報
ところで、表面弾性波素子(SAWフィルター)の製造分野においては、LT結晶の焦電性に起因した素子製造プロセスでの歩留まり低下を抑制するため、LT基板の体積抵抗率を1×1010Ω・cm~1×1011Ω・cm程度に設定したい要請があり、基板形状のLT結晶をAl粉とAl23粉との混合粉中に埋め込んで熱処理(還元処理)する特許文献1~2の方法により体積抵抗率が1×1010Ω・cm程度のLT基板を製造することが可能となっている。但し、導電性を増大させたLT基板においては、酸素空孔が導入されて光吸収を起こすため、導電性が増大するに従いLT基板の透過率は減少する。
他方、LT基板の上記透過率に関しては、素子製造プロセスにおいてLT基板の透過率が素子品質に影響を与えるため、所定の範囲内に調整される必要がある。
このため、焦電性に起因したLT基板の割れ等を防止することを目指してLT基板の体積抵抗率を闇雲に下げることは好ましくない。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、焦電性に起因した素子製造プロセスでの歩留まり低下が抑制され、かつ、素子製造プロセスの露光工程等において素子品質に影響を与えることのないLT基板の製造方法とLT基板を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明者は、以下のような技術分析を行った。
まず、表面弾性波素子(SAWフィルター)を製造する場合、LT基板の外周縁部から内側5mm程度の部位(領域)は、通常、素子材料として使用しないため、外周縁部から5mm程度内側領域の透過率が他より低く設定されたとしても露光工程等において素子品質に影響を与えることがないことが分かった。また、表面弾性波素子(SAWフィルター)の製造プロセスにおいて焦電性に起因してLT基板の割れ等が起こり易い部位を調べたところ、LT基板の外周部(すなわち、LT基板の外周縁部とその近傍領域)であることが確認され、焦電性に起因したLT基板の割れを防止するにはLT基板における上記外周部の導電性を増大させることが有効であることも分かった。
更に、Al粉とAl23粉との混合粉中に基板形状のLT結晶を複数枚埋め込んで熱処理(還元処理)する上記特許文献1~2の方法において、LT結晶の外周縁部は、LT結晶間に介在する混合粉中のAl粉に加えてLT結晶の外周縁部と容器の内壁間に介在する混合粉中のAl粉の寄与も受けるため、LT結晶の中央部に較べて外周縁部は還元が進んでおり、還元処理後におけるLT基板の外周縁部とその近傍領域の体積抵抗率はLT基板の中央部に較べて低くなっていることが確認された。
そこで、LT結晶の外周縁部に対する混合粉中におけるAl粉の上記寄与を考慮し、焦電性に起因するLT基板の割れが抑制され、露光工程等において素子品質に影響を与えることのないLT基板を製造できるLT結晶の埋め込み条件を調べたところ、以下のような技術的発見をするに至った。すなわち、Al粉とAl23粉との混合粉中に複数枚埋め込まれるLT結晶間の距離をL(mm)、LT結晶の外周縁部と容器内壁間との距離をL1(mm)とした場合、(L1/L)を「1.5を超え3.5以下」の範囲に設定することにより、焦電性に起因するLT基板の割れが抑制され、露光工程等において素子品質に影響を与えることのないLT基板が得られることを見出すに至った。本発明はこのような技術分析により完成されたものである。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
タンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法であって、容器内に充填されたアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶(以下、「基板形状のタンタル酸リチウム結晶」とし、熱処理後の「タンタル酸リチウム基板」と区別する)を埋め込み、かつ、大気圧雰囲気下の加熱炉内に上記容器を配置した後、上記加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排しながらタンタル酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
上記混合粉中に複数枚埋め込まれる基板形状のタンタル酸リチウム結晶間の距離をL(mm)とし、基板形状のタンタル酸リチウム結晶外周縁部と上記容器の内壁間との距離をL1(mm)とした場合、
L1/Lが、1.5を超え3.5以下の範囲を満たすように設定し、
体積抵抗率が1×10 10 Ω・cm~1×10 11 Ω・cm、中央部の波長600nmにおける透過率が40%~60%かつ外周部の波長600nmにおける透過率が中央部の上記透過率より5%以上低いタンタル酸リチウム基板を製造することを特徴とする。
また、第2の発明は、
第1の発明に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
上記L1/Lが2以上3以下の範囲を満たすことを特徴とする。
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
上記混合粉中に複数枚埋め込まれる基板形状のタンタル酸リチウム基板間の距離Lが、0.5mm~10mmの範囲を満たすことを特徴とする。
第4の発明は、
第1の発明~第3の発明のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
上記不活性ガスがアルゴンガスで、かつ、加熱炉内に連続的に給排されるアルゴンガスの流量が0.5~5L/minの範囲を満たすことを特徴とする。
次に、第5の発明は、
タンタル酸リチウム基板において、
素子材料として使用される中央部の波長600nmにおける透過率が40%~60%の範囲で、外周部の波長600nmにおける透過率が中央部の上記透過率より5%以上低いことを特徴とする。
本発明方法によれば、
アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に複数枚埋め込まれる基板形状のタンタル酸リチウム結晶間の距離をL(mm)とし、基板形状のタンタル酸リチウム結晶外周縁部と容器の内壁間との距離をL1(mm)とした場合、L1/Lが、1.5を超え3.5以下の範囲を満たす条件でタンタル酸リチウム結晶が上記混合粉中に埋め込まれている。
このため、タンタル酸リチウム基板の外周縁部とその近傍の体積抵抗率について焦電性に起因した基板の割れが抑制される低いレベル(すなわち、導電率が高いレベル)に設定でき、かつ、素子材料として使用される中央部の透過率についても素子製造プロセスの露光工程等において素子品質に影響を与えないレベルに調整することができる。
従って、焦電性に起因した素子製造プロセスでの歩留まり低下が抑制され、かつ、素子製造プロセスの露光工程等において素子品質に影響を与えることのないタンタル酸リチウム基板を提供できる効果を有する。
アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板形状のタンタル酸リチウム結晶を埋め込んだ複数の容器が大型容器に収容された状態を示す説明図。 上記容器内に充填されたアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に複数枚のタンタル酸リチウム結晶が埋め込まれた状態を示す説明図。
以下、本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、焦電性に起因した表面弾性素子製造プロセスでの歩留まり低下が抑制され、かつ、表面弾性素子製造プロセスの露光工程等において素子品質に影響を与えることのないLT基板の改良に関するものである。
すなわち、表面弾性素子として使用しないLT基板の外周縁部とその近傍の体積抵抗率について、焦電性に起因した基板の割れが抑制される低いレベル(すなわち、導電率が高いレベル)に調整できると共に、表面弾性素子材料として使用するLT基板中央部の透過率について、表面弾性素子製造プロセスの露光工程等において素子品質に影響を与えることのないレベル(例えば、波長600nmにおける透過率が40%~60%)に調整可能なLT基板とその製造方法に関する。
以下、図面を用いて本発明に係るLT基板の製造方法について説明する。
図1はアルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)との混合粉中に基板形状のLT結晶を埋め込んだ複数の容器が大型容器に収容された状態を示す説明図、図2は容器内に充填されたAl粉とAl23粉との混合粉中に複数枚の上記LT結晶が埋め込まれた状態を示す説明図である。
図1に示すように、ステンレス製の容器1内にAl粉とAl23粉との混合粉2を充填し、この混合粉2中に基板形状のLT結晶3を等間隔で複数枚埋め込み、同様にして構成した複数の容器1をまとめて大型容器4の中に収容し、かつ、大型容器4を加熱炉(図示せず)内に配置した後、以下の熱処理(還元処理)を施す。
熱処理(還元処理)時の加熱炉内は、真空雰囲気、不活性ガスで満たされた封止雰囲気、不活性ガスが連続的に給排される大気圧雰囲気等に設定されるが、真空雰囲気や不活性ガスで満たされた封止雰囲気とした場合、加熱炉内の熱分布が一か所に溜まってLT基板に還元ムラを生ずることがある。このため、熱処理(還元処理)時の加熱炉内は、不活性ガスが連続的に給排される大気圧雰囲気とすることが好ましい。大気圧雰囲気とした場合、密閉手段や減圧処理装置等を加熱炉に設ける必要がないため設備コストの削減も図れる。また、不活性ガスとしてはアルゴン、窒素ガス等が使用できる。尚、加熱炉内に連続的に給排する不活性ガスの流量は、不活性ガスがアルゴンである場合、0.5~5L/minであることが好ましい。
そして、大気圧雰囲気の加熱炉内にアルゴン等の不活性ガスを連続的に給排しながら、加熱炉を350℃~LT結晶のキュリー温度(約600℃)未満の温度まで昇温し、所定の時間保持し、その後、室温まで降温させて還元処理を完了する。
上記熱処理(還元処理)により、体積抵抗率が1×1010Ω・cm~1×1011Ω・cm程度、波長600nmにおける透過率が40%~60%であるLT基板が得られる。
[ステンレス製容器1の内径サイズ]
ところで、図2に示すステンレス製容器1の内径サイズを変更することにより、LT結晶3の外周縁部における還元条件を適宜調整することができる。
すなわち、Al粉とAl23粉との混合粉2中に複数枚埋め込まれる基板形状のLT結晶3間の距離をL(mm)、基板形状のLT結晶3外周縁部とステンレス製容器1の内壁間との距離をL1(mm)とした場合、ステンレス製容器1の内径サイズを変更することで、LT結晶3間の上記距離Lに対するLT結晶3外周縁部とステンレス製容器1の内壁間との距離L1の比率、すなわち(L1/L)を任意に調整することができ、これにより、LT結晶3の外周縁部における還元条件を適宜調整することができる。
本発明においては、距離Lに対する距離L1の比率、すなわち(L1/L)が1.5を超え3.5以下の範囲を満たすようにステンレス製容器1の内径サイズとLT結晶3の埋め込み条件を適宜調整することを要する。
ここで、LT結晶3の還元は、LT結晶3周辺の不活性ガス中に含まれる微量の酸素と上記混合粉2中のAl粉との反応によりLT結晶3周辺の酸素分圧が大きく低下することにより起こると考えられている。そして、熱処理(還元処理)時において、LT結晶3の外周縁部は、LT結晶3間に介在する混合粉2中のAl粉に加え、上述したようにLT結晶3の外周縁部と容器1の内壁間に介在する混合粉2中のAl粉の寄与も受けるため、LT結晶3の中央部に較べて酸素分圧の低下が更に大きくなり、これにより外周縁部の還元が更に進んで外周縁部とその近傍領域の体積抵抗率が中央部に較べて低い(すなわち導電率が高い)LT基板を製造することが可能となる。
そして、表面弾性波素子(SAWフィルター)を製造する場合、上述したようにLT基板の外周縁部から内側5mm程度の部位(領域)は素子材料として使用しないため、外周縁部から5mm程度内側までの透過率が他より低く設定(他の部位より体積抵抗率が低いため外周縁部から5mm程度内側までの透過率は低くなっている)されても素子品質に影響を与えることがない。
また、焦電性に起因してLT基板の割れ等が起こり易い部位は、上述したようにLT基板の外周部(LT基板の外周縁部とその近傍領域)であるため、外周縁部とその近傍領域の体積抵抗率を低下させる(すなわち導電率を高くさせる)ことで、焦電性に起因したLT基板の割れも抑制することが可能となる。
但し、上記距離Lに対する距離L1の比率、すなわち(L1/L)が1.5以下の場合、中央部に較べて外周縁部とその近傍領域の体積抵抗率が低い(導電率が高い)LT基板を製造することが難しくなる。他方、上記比率(L1/L)が3.5を超える場合、LT結晶3の外周縁部と容器1の内壁間に介在する混合粉2中のAl粉の寄与が強くなり、この結果、外周縁部から5mm程度内側領域を超えた部位の体積抵抗率も低くなってしまうため、素子材料として使用できる面積が小さくなる不都合を生ずる。このため、上記距離Lに対する距離L1の比率、すなわち(L1/L)は1.5を超え3.5以下の範囲を満たすことが必要で、より好ましくは(L1/L)が2以上3以下であることが望ましい。
また、本発明に係るLT基板の外周縁部とその近傍領域は、中央部に較べその体積抵抗率が低く(導電率が高く)調整されており、これに伴い、LT基板の外周縁部とその近傍領域の波長600nmにおける透過率も中央部に較べて5%以上低下している。しかし、LT基板の外周縁部とその近傍領域は、上述したように素子材料として使用しないため、素子品質に影響を与えることはない。
[基板形状のLT結晶3間の距離L(mm)]
次に、Al粉とAl23粉との混合粉2中に複数枚埋め込まれる基板形状のLT結晶3間の距離L(mm)については、LT結晶間に充填される混合粉の均一性および生産性の観点から0.5mm~10mmがよい。LT結晶間の距離Lが10mmを超えた場合、混合粉中に埋め込まれるLT結晶の枚数が減少するため生産性に劣る不都合があり、また、上記LT結晶間の距離Lが0.5mm未満の場合、混合粉中にLT結晶を埋め込む際、均一に混合粉を均せなくなるため条件のバラツキを生ずる不都合がある。このため、混合粉中に埋め込まれるLT結晶間の距離L(mm)は0.5mm~10mmがよく、好ましくは1.5mm~5mmがよく、より好ましくは2~3mmである。
以下、本発明の実施例について比較例も挙げて具体的に説明するが、本発明の技術範囲は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
[加熱炉の構成]
実施例1~2と比較例で用いられる加熱炉には給気口と排気口が設けられている。また、加熱炉内に配置されるステンレス製容器にはアルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)との混合粉が充填され、かつ、一般的に市販されているアルゴンガス(酸素分圧は1×10-6atm程度)が給気口を介し加熱炉内に連続的に供給されると共に、排気口を介してアルゴンガス(不活性ガス)が加熱炉外へ連続的に排気されて、加熱炉内は大気圧雰囲気下に調整されている。尚、加熱炉内に給排されるアルゴンガスの流量は2L/minに設定されている。
[LT結晶の育成とインゴットの加工等]
コングルエント組成の原料を用い、チョクラルスキー法により、直径4インチであるLT単結晶の育成を行った。育成雰囲気は、酸素濃度約3%の窒素-酸素混合ガスである。得られたLT結晶のインゴットは、透明な淡黄色であった。尚、本実施形態に係るLT基板の製造方法に用いるLT結晶の育成方法については、上記チョクラルスキー法に限定されず、他の公知の育成方法、例えば、引き下げ法を用いてもよい。
LT結晶のインゴットに対し、熱歪み除去のための熱処理と単一分極とするためのポーリング処理を行った後、外周研削、スライス、および研磨を行って42゜RY(Rotated Y axis)の基板の状態に加工されたLT結晶とした。
得られた42゜RYのLT結晶は、無色透明で、体積抵抗率は1×1015Ω・cm、キュリー温度は603℃であった。
[実施例1]
内径が112mmφのステンレス製円筒容器に充填された10重量%のアルミニウム粉末(Al粉)と90重量%の酸化アルミニウム粉末(Al23粉)との混合粉中に、基板の状態に加工された直径100mmφ、厚さ280μmのLT結晶を3mmの間隔で25枚埋め込み、かつ、LT結晶が埋め込まれたステンレス製円筒容器を上記加熱炉内に配置した後、給気口を介し市販されている上記アルゴンガス(酸素分圧は1×10-6atm程度)を加熱炉内に供給した。
上記条件から、LT結晶間距離L(mm)は3.0mm、LT結晶外周縁部と容器内壁間距離L1(mm)は(112mm-100mm)/2=6.0mm、比率(L1/L)は2.0(表1、表2参照)となる。
そして、2L/minの流量で上記アルゴンガスを大気圧雰囲気下の加熱炉内に連続的に給排し、580℃、20時間の熱処理(還元処理)を行った。
熱処理を行った合計25枚のLT結晶について、処理後のLT基板における中央部と外周部の体積抵抗率と透過率をそれぞれ測定した。
更に、体積抵抗率と透過率の測定がなされた各LT基板について、片面ポリッシュを施して、各LT基板の厚さを200μmにした後、270℃に急加熱した際のLT基板の割れ率を調べた。
尚、体積抵抗率はJIS K-6911に準拠した3端子法により測定し、透過率は透過率測定器により測定した。
また、体積抵抗率と透過率は、測定した25枚のLT基板の平均値、加熱による割れ率は、[(割れが発生したLT基板の枚数/25枚のLT基板)×100(%)]として算出した。更に、加熱試験は、焦電性によるLT基板の割れを判断する加速試験とした。
測定した結果を、表1、表2に示す。
[実施例2]
上記ステンレス製円筒容器の内径が118mmφである以外は、実施例1と同一の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理)を行った。
LT結晶外周縁部と容器内壁間距離L1(mm)は(118mm-100mm)/2=9.0mm、比率(L1/L)は3.0(表1、表2参照)となる。
体積抵抗率、透過率、加熱試験の結果を、表1、表2に示す。
[比較例]
上記ステンレス製円筒容器の内径が106mmφである以外は、実施例1と同一の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理)を行った。
LT結晶外周縁部と容器内壁間距離L1(mm)は(106mm-100mm)/2=3.0mm、比率(L1/L)は1.0(表1、表2参照)となる。
体積抵抗率、透過率、加熱試験の結果を、表1、表2に示す。
Figure 0007447537000001
Figure 0007447537000002
[確認]
(1)実施例1
(1-1)LT結晶外周縁部と容器内壁間距離L1(mm)が6.0mmに設定されている実施例1では、比率(L1/L)=6.0/3.0=2.0となり、本発明の「1.5を超え3.5以下」なる条件を満たしている。
(1-2)このため、素子材料として使用するLT基板中央部の体積抵抗率が2.5×1010(Ω・cm)、波長600nmにおける透過率が48%に調整される一方、素子材料として使用しないLT基板外周部の体積抵抗率が1.8×1010(Ω・cm)、波長600nmにおける透過率が39%になっている。
(1-3)すなわち、LT基板外周部の体積抵抗率について、焦電性に起因した基板の割れが抑制される低いレベル(1.8×1010Ω・cm)に設定され、かつ、素子材料として使用する中央部の透過率についても素子製造プロセスの露光工程等において素子品質に影響を与えないレベル(波長600nmにおける透過率が48%)に調整されている。
(1-4)この結果、加熱時の割れ率が2%(表2参照)と低く、焦電性に起因した素子製造プロセスでの歩留まり低下が抑制され、素子製造プロセスの露光工程等において素子品質に影響を与えることのないLT基板であることが確認される。
(2)実施例2
(2-1)LT結晶外周縁部と容器内壁間距離L1(mm)が9.0mmに設定されている実施例2でも、比率(L1/L)=9.0/3.0=3.0となり、本発明の「1.5を超え3.5以下」なる条件を満たしている。
(2-2)このため、素子材料として使用するLT基板中央部の体積抵抗率が2.4×1010(Ω・cm)、波長600nmにおける透過率が47%に調整される一方、素子材料として使用しないLT基板外周部の体積抵抗率が0.8×1010(Ω・cm)、波長600nmにおける透過率が13%になっている。
(2-3)すなわち、LT基板外周部の体積抵抗率について、焦電性に起因した基板の割れが抑制される低いレベル(0.8×1010Ω・cm)に設定され、かつ、素子材料として使用する中央部の透過率についても素子製造プロセスの露光工程等において素子品質に影響を与えないレベル(波長600nmにおける透過率が47%)に調整されている。
(2-4)この結果、加熱時の割れ率が1%(表2参照)と低く、焦電性に起因した素子製造プロセスでの歩留まり低下が抑制され、素子製造プロセスの露光工程等において素子品質に影響を与えることのないLT基板であることが確認される。
(3)比較例
(3-1)LT結晶外周縁部と容器内壁間距離L1(mm)が3.0mmに設定されている比較例では、比率(L1/L)=3.0/3.0=1.0となり、本発明の「1.5を超え3.5以下」なる条件を満たしていない。
(3-2)このため、素子材料として使用するLT基板中央部の体積抵抗率が2.3×1010(Ω・cm)、波長600nmにおける透過率が47%に調整される一方、素子材料として使用しないLT基板外周部の体積抵抗率も2.5×1010(Ω・cm)、波長600nmにおける透過率が48%になっている。
(3-3)すなわち、LT基板外周部の体積抵抗率について、焦電性に起因した基板の割れが抑制される低いレベル(2.5×1010Ω・cm)に設定されていない。
(3-4)この結果、加熱時の割れ率が5%(表2参照)と高く、焦電性に起因した素子製造プロセスでの歩留まり低下を抑制できないことが確認される。
本発明によれば、焦電性に起因した素子製造プロセスでの歩留まり低下が抑制され、素子製造プロセスの露光工程等において素子品質に影響を与えることのないタンタル酸リチウム基板を製造できるため、SAWフィルター用の基板材料に用いられる産業上の利用可能性を有している。
1 ステンレス製容器
2 混合粉
3 基板形状のLT結晶
4 大型容器

Claims (5)

  1. タンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法であって、容器内に充填されたアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶(以下、「基板形状のタンタル酸リチウム結晶」とし、熱処理後の「タンタル酸リチウム基板」と区別する)を埋め込み、かつ、大気圧雰囲気下の加熱炉内に上記容器を配置した後、上記加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排しながらタンタル酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
    上記混合粉中に複数枚埋め込まれる基板形状のタンタル酸リチウム結晶間の距離をL(mm)とし、基板形状のタンタル酸リチウム結晶外周縁部と上記容器の内壁間との距離をL1(mm)とした場合、
    L1/Lが、1.5を超え3.5以下の範囲を満たすように設定し、
    体積抵抗率が1×10 10 Ω・cm~1×10 11 Ω・cm、中央部の波長600nmにおける透過率が40%~60%かつ外周部の波長600nmにおける透過率が中央部の上記透過率より5%以上低いタンタル酸リチウム基板を製造することを特徴とするタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  2. 上記L1/Lが2~3の範囲を満たすことを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  3. 上記混合粉中に複数枚埋め込まれる基板形状のタンタル酸リチウム基板間の距離Lが、0.5mm~10mmの範囲を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  4. 上記不活性ガスがアルゴンガスで、かつ、加熱炉内に連続的に給排されるアルゴンガスの流量が0.5~5L/minの範囲を満たすことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  5. 素子材料として使用される中央部の波長600nmにおける透過率が40%~60%の範囲で、外周部の波長600nmにおける透過率が中央部の上記透過率より5%以上低いことを特徴とするタンタル酸リチウム基板。
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