JP7435146B2 - タンタル酸リチウム基板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、タンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法に係り、特に、色むら(還元むら)の無い電気的特性に優れたタンタル酸リチウム基板の製造方法に関するものである。
タンタル酸リチウム(以下、LTと略称することがある)結晶は、融点が約1650℃、キュリー温度が約600℃の強誘電体であり、この結晶を用いて製造されたタンタル酸リチウム基板は、主に、携帯電話の送受信用デバイスに用いられる表面弾性波(SAW)フィルター材料として適用されている。
そして、携帯電話の高周波化、各種電子機器の無線LANであるBluetooth(登録商標)(2.45GHz)の普及等により、2GHz前後の周波数領域のSAWフィルターが今後急増すると予測されている。
上記SAWフィルターは、LT等の圧電材料で構成された基板上に、Al、Cu等の金属薄膜で一対の櫛型電極が形成された構造となっており、この櫛型電極がデバイスの特性を左右する重要な役割を担っている。また、上記櫛型電極は、圧電材料上にスパッタリングにより金属薄膜を成膜した後、一対の櫛型パターンを残し、フォトリソグラフ技術により不要な部分をエッチングにより除去することで形成される。
また、上記LT結晶は、産業的には、主にチョクラルスキー法によって、酸素濃度が数%~20%程度の窒素-酸素混合ガス雰囲気の電気炉中で育成されており、通常、高融点のイリジウム坩堝が用いられ、育成されたLT結晶は電気炉内で所定の冷却速度で冷却された後、電気炉から取り出して得られている。
育成されたLT結晶は、無色透明若しくは透明度の高い淡黄色を呈している。育成後、結晶の熱応力による残留歪みを取り除くため、融点に近い均熱下で熱処理を行い、更に単一分極とするためのポーリング処理、すなわち、LT結晶を室温からキュリー温度以上の所定温度まで昇温し、結晶に電圧を印加し、電圧を印加したままキュリー温度以下の所定温度まで降温した後、電圧印加を停止して室温まで冷却する一連の処理を行う。ポーリング処理後、結晶の外径を整えるために外周研削されたLT結晶(インゴットと称する)は、スライス、ラップ、ポリッシュ工程等の機械加工を経て基板となる。最終的に得られた基板はほぼ無色透明で、その体積抵抗率はおよそ1014~1015Ω・cm程度である。
このような従来の方法で得られた基板では、表面弾性波素子(SAWフィルター)製造プロセスにおいて、LT結晶の特性である焦電性のため、プロセスで受ける温度変化によって電荷が基板表面にチャージアップし、これにより生ずる放電が原因となって基板表面に形成した櫛型電極が破壊され、更には基板の割れ等を生じて素子製造プロセスでの歩留まり低下が起きている。
そこで、LT結晶の焦電性による不具合を解消するため、導電性を増大させる技術がいくつか提案されている。例えば、特許文献1では、アルゴン、水、水素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素およびこれ等の組合せから選択されたガスの還元雰囲気でLT基板を熱処理することによりその導電性を増大させる方法が提案され、特許文献2では、20Pa以下の減圧雰囲気でLT基板を熱処理することによりその導電性を増大させる方法が提案されている。また、特許文献3では、基板の状態に加工されたLT結晶をアルミニウム粉末(以下、Al粉と略称することがある)と酸化アルミニウム粉末(以下、Al23粉と略称することがある)との混合粉中に埋め込んで熱処理(還元処理)する方法が提案され、特許文献4では、特許文献3で使用されるAl粉の粒径(粉塵爆発の危険性を回避する観点からAl粉の平均粒径は100μm程度に設定されている)と、Al23粉の粒径(平均粒径は50μm程度である)比率に着目し、Al23粉の粒径をAl粉の粒径と同程度にして混合粉の通気性を向上させることにより、従来の条件よりも少ないAl粉の混合比(Al粉混合比)で導電性を増大させる方法が提案されている。
尚、導電性を増大させたLT基板は、酸素空孔が導入されたことにより光吸収を起こすようになる。そして、観察されるLT基板の色調は、透過光では赤褐色系に、反射光では黒色に見えるため、導電性を増大させる還元処理は黒化処理とも呼ばれており、このような色調の変化現象を黒化と呼んでいる。
ところで、1250℃程度と融点が比較的低いニオブ酸リチウム基板と異なり、融点が約1650℃と高いLT基板に対して特許文献1~2の方法を適用した場合、LT基板の導電性が十分に増大しないため、焦電性による不具合の改善効果は十分でないという問題があった。また、近年、表面弾性波素子(SAWフィルター)製造プロセスにおいての歩留まり向上のため、LT結晶の特性である体積抵抗率をより低くしたい要求があり、例えば、LT基板の体積抵抗率を1×109(Ω・cm)以下にしたい要求がある。
Al粉とAl23粉との混合粉中にLT結晶を埋め込んで熱処理する特許文献3の方法では、Al粉混合比(上記したAl粉の混合比、すなわち、Al粉とAl 2 3 粉との混合粉中におけるAl粉の比率を意味する。以下同様)を高くすることにより体積抵抗率1×109(Ω・cm)程度のLT基板が得られている。しかし、Al粉混合比が高くなるに従い、直径1~5mm程度の黒い点(色むら、すなわち還元むら)が発生し易くなり、Al粉混合比の上昇に伴い還元むらの発生率が増加して生産性を悪化させる問題が存在した。
Al23粉の粒径をAl粉の粒径と同程度にして混合粉の通気性を向上させた特許文献4の方法では、従来条件よりも少ないAl粉混合比で導電性を増大させることにより還元むらの発生を回避している。しかし、適用するAl23粉の製造メーカーや品種、製造ロットが異なる場合、効果に差異を生ずるため、特許文献4の方法では、適用するAl23粉の品種やAl23粉の粒径毎に所望とするLT基板の体積抵抗率に合わせたAl粉混合比の合わせ込み試験が必要となる新たな問題が存在した。
そこで、特許文献4に係る問題の発生原因について、本発明者が調査した結果、製造メーカーや品種、製造ロット毎にAl23粉の通気性や水分量に違いがあることを発見するに至り、適用するAl23粉の通気性とAl23粉の水蒸気ガス放出量を事前に計測することで上記問題が解消される特許文献5に係るLT基板の製造方法を既に提案している。
すなわち、特許文献5の方法は、適用するAl23粉の通気性とAl23粉の水蒸気ガス放出量を事前に計測し、計測されたAl23粉の通気性と水蒸気ガス放出量およびAl粉混合比に基づいて所望とする体積抵抗率のLT基板を製造するものであった。
特開平11-92147号公報(特許請求の範囲、段落0027参照) 特開2004-152870号公報(請求項4、8、段落0014参照) 特許第4063191号公報(実施例3、8参照) 特開2019-156655号公報(請求項1、段落0017参照) 特願2020-008772号明細書
ところで、本発明者が提案した特許文献5の方法では、Al23粉の水蒸気ガス放出量を「カールフィッシャー法」により測定している。「カールフィッシャー法」による測定法は、滴定セル内でヨウ化物イオン・二酸化硫黄・アルコールを主成分とする電解液[カールフィッシャー試薬]がメタノールの存在下で水と特異的に反応することを利用して物質中の水分を定量する方法で、特許文献5の方法では、Al23粉を加熱し、Al23粉から放出される水蒸気量を「カールフィッシャー法」で測定し、Al23粉試料の重量から水蒸気量を重量百分率で算出している。
しかし、Al23粉の水蒸気ガス放出量を「カールフィッシャー法」で測定した場合、測定(計測)の分解能はせいぜい0.01重量%程度であるため、Al23粉の製造メーカー間、または同一製造メーカーの品種間、同一品種の製造ロット間の微細なバラつきを把握するには十分でないことが分かった。すなわち、「カールフィッシャー法」で測定したAl23粉の水蒸気ガス放出量が同一であるにも拘わらず、同一条件でLT結晶の還元処理を行った場合に、適用するAl23粉の製造メーカー間、または同一製造メーカーの品種間、同一品種の製造ロット間によってLT基板の体積抵抗率に依然としてバラつきを生じる問題が確認された。
尚、Al23粉の水蒸気ガス放出量を高精度で測定(計測)可能な昇温脱離ガス分析法(TDS法)等を適用することで上記問題は解消されるが、TDS法に使用される計測装置は高額なためLT基板の製造コストを上昇させてしまう別な問題が存在した。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、適用するAl23粉の製造メーカーが異なる場合、あるいは、製造メーカーが同一で品種が異なる場合、同一品種で製造ロットが異なる場合においても、LT基板の製造コストを上昇させることなく所望とする体積抵抗率のLT基板を安定して製造できる方法を提供することにある。
そこで、上記課題を解決するため、本発明者が、既存の製造設備、あるいは、比較的安価な装置を組み合わせた設備を使用して高い分解能の「温度-水蒸気ガス放出量スペクトル」が得られるか検討を行い、以下の技術的知見を得るに至った。
まず、Al23粉を真空中で加熱した際に放出されるガス成分の同定を昇温脱離ガス分析法(TDS法)で行った。TDS法は、一定速度で試料をプログラム昇温加熱した際に試料表面から脱離するガスを質量分析計で検出し、その脱離ガスの定性と発生量を測定する分析法である。その結果、そのほとんどが水蒸気ガスであることが確認された。
次に、実験により「温度-容器内圧力スペクトル」を取得し、上記TDS法で取得できる「温度-水蒸気ガス放出量スペクトル」との比較を試みた。すなわち、Al23粉を真空容器内に配置し、一定の真空条件でAl23粉を加熱するとAl23粉から放出される水蒸気ガスに起因して真空容器内の圧力が一時的に上昇する。このときに取得される上記「温度-容器内圧力スペクトル」が上記TDS法で取得できる「温度-水蒸気ガス放出量スペクトル」とよく一致することを突き止めた。
更に、得られた「温度-容器内圧力スペクトル」とAl23粉をTDS分析して得られた「温度-水蒸気放出量スペクトル」を比較したところ、「温度-容器内圧力スペクトル」と「温度-水蒸気ガス放出量スペクトル」間においてピーク位置(温度)に大きなシフトは見られず、適正な昇温速度で加熱できていることが確認された。尚、水蒸気ガスの放出量が多いピーク温度は140℃、320℃、560℃の3点であった。
そして、真空容器内における圧力上昇は、Al23粉からの水蒸気ガス放出量に起因するため、上記「温度-容器内圧力スペクトル」を下に、実際に還元処理が行われる温度付近の容器内圧力の値を積分して求められる「圧力積分値」は、Al23粉からの水蒸気ガス放出量と読み替えることができる。
すなわち、比較的安価な装置を組み合わせた設備を使用して計測した上記「温度-容器内圧力スペクトル」から算出される「圧力積分値」について、昇温脱離ガス分析法(TDS法)等で計測したAl23粉の水蒸気ガス放出量と同等に扱えるため、上記「圧力積分値」に基づいてAl23粉の製造メーカー間または同一製造メーカーの品種間、同一品種の製造ロット間の微細なバラつきを十分に把握することが可能となる。本発明はこのような技術的分析により完成されたものである。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
タンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法であって、容器内に充填されたアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶を埋め込み、上記容器を加熱炉内に配置した後、大気圧雰囲気下の加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排しながらタンタル酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で還元処理してタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
適用する酸化アルミニウム粉末の通気性を計測する通気性計測工程と、
適用する酸化アルミニウム粉末を真空容器内に配置し、該真空容器を加熱して酸化アルミニウム粉末からの水蒸気ガス放出量に起因する真空容器内の圧力を計測すると共に、所定の温度範囲内で上記圧力の値を積分して圧力積分値を求める圧力計測工程と、
計測された酸化アルミニウム粉末の上記通気性と水蒸気ガス放出量に起因する上記圧力積分値、および、タンタル酸リチウム基板の所望とする体積抵抗率に基づいて上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率を設定するアルミニウム粉末の比率設定工程、
を有することを特徴とする。
第2の発明は、
第1の発明に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
酸化アルミニウム粉末からの水蒸気ガス放出量に起因する圧力の値を積分して圧力積分値を求める上記圧力計測工程における所定の温度範囲が、タンタル酸リチウム結晶における還元処理の温度以下で、酸化アルミニウム粉末からの水蒸気ガス放出量の多いピーク温度を含むことを特徴とする。
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
酸化アルミニウム粉末からの水蒸気ガス放出量に起因する圧力の値を積分して圧力積分値を求める上記圧力計測工程における所定の温度範囲が、[還元処理の温度-100℃]を下限値とし[還元処理の温度]を上限値とすることを特徴とする。
また、第4の発明は、
第1の発明~第3の発明のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率が1~30重量%の範囲に設定されることを特徴とする。
本発明方法によれば、
比較的安価な装置を組み合わせた設備を使用して求められた「温度-容器内圧力スペクトル」から算出される「圧力積分値」について、昇温脱離ガス分析法(TDS法)等で計測した酸化アルミニウム粉末の水蒸気ガス放出量と同等に扱うことができるため、製造メーカー間、または同一製造メーカーの品種間、同一品種の製造ロット間における酸化アルミニウム粉末の水分量の微細なバラつきを「圧力積分値」に基づいて十分に把握することが可能となる。
このため、適用する酸化アルミニウム粉末の製造メーカーが異なる場合、あるいは、同一製造メーカーで品種が異なる場合、同一品種で製造ロットが異なる場合においても、製造コストを上昇させることなく所望とする体積抵抗率のタンタル酸リチウム基板を安定して製造できる効果を有する。
実施例1~3(製造ロットA~C)に係るAl23粉の容器内温度[℃]と容器内圧力[Pa]との関係[温度-容器内圧力スペクトル]を示すグラフ図。 水蒸気ガス放出量に起因する圧力積分値(480~580℃)[Pa]とタンタル酸リチウム基板の体積抵抗率[Ω・cm]との関係を示すグラフ図。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
本発明は、容器内に充填されたAl粉とAl23粉との混合粉中に基板の状態に加工されたLT結晶を埋め込み、容器を加熱炉内に配置した後、大気圧雰囲気下の加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排しながらLT結晶のキュリー温度未満の温度で還元処理してLT基板を製造する従来法を前提とし、適用するAl23粉の通気性と水蒸気ガス放出量を事前に計測し、計測されたAl23粉の通気性と水蒸気ガス放出量およびAl粉混合比に基づいて所望の体積抵抗率を有するLT基板を製造する特許文献5の下記課題を解決する製造方法に関するものである。
すなわち、特許文献5に係る方法では、上述したようにAl23粉の水蒸気ガス放出量を例えば「カールフィッシャー法」で測定し、Al23粉試料の重量から0.0~0.4重量%範囲程度の水蒸気量を測定しているが、測定の分解能はせいぜい0.01重量%程度であるため、Al23粉の製造メーカー間、または同一製造メーカーの品種間、同一品種の製造ロット間の微細なバラつきを把握するには十分でない課題が存在した。
本発明は、既存の製造設備を使用し、あるいは比較的安価な装置を組み合わせた設備を使用し、Al23粉からの水蒸気ガス放出量を上記「カールフィッシャー法」より高い分解能で測定して特許文献5に係る上記課題を解決する方法に関する。
すなわち、本発明は、タンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法であって、容器内に充填されたアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶を埋め込み、上記容器を加熱炉内に配置した後、大気圧雰囲気下の加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排しながらタンタル酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で還元処理してタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
適用する酸化アルミニウム粉末の通気性を計測する通気性計測工程と、
適用する酸化アルミニウム粉末を真空容器内に配置し、該真空容器を加熱して酸化アルミニウム粉末からの水蒸気ガス放出量に起因する真空容器内の圧力を計測すると共に、所定の温度範囲内で上記圧力の値を積分して圧力積分値を求める圧力計測工程と、
計測された酸化アルミニウム粉末の上記通気性と水蒸気ガス放出量に起因する上記圧力積分値、および、タンタル酸リチウム基板の所望とする体積抵抗率に基づいて上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率を設定するアルミニウム粉末の比率設定工程、
を有することを特徴とするものである。
1.圧力計測工程:水蒸気ガス放出量に起因する容器内圧力の測定と測定装置
まず、本発明に係る圧力計測工程について説明する。
Al23粉からの水蒸気ガス放出量に起因する容器内圧力を測定する装置は、試料であるAl23粉が収容される真空容器と、真空容器内を真空にするための真空ポンプと、真空容器を加熱するための加熱部(加熱機器)と、加熱されたAl23粉から発生する水蒸気ガス放出量に起因する圧力を測定する圧力計とで構成されている。
試料であるAl23粉が収容(配置)される真空容器は、特に限定されない。真空容器の材質も特に問わないが、真空ポンプとの組み合わせにより容器内の圧力を100Pa程度まで下げられるものが好ましい。また、真空容器は、加熱部により加熱される。加熱部による加熱方法は特に限定されない。例えば、基板の状態に加工されたLT結晶をAl粉とAl23粉との混合粉中に埋め込んで熱処理する熱処理炉を用いてもよい。特に、真空ポンプを備えた熱処理炉であれば、水蒸気ガス放出量に起因する容器内圧力を測定する装置としてそのまま用いてもよい。加熱温度は、実際に還元処理が行われる温度付近、例えば、LT結晶であればLT結晶のキュリー温度近傍の600℃程度までであり、この温度まで加熱できる容器の材質および加熱部(ヒーター)であることが好ましい。また、加熱部および真空容器の酸化劣化を防止するため、加熱部および真空容器内を不活性ガスで置換する場合のガスの種類は特に問わないが、一般的に不活性ガスとして用いられるN2ガス、Arガス等が好ましい。圧力計は、上記真空度(100Pa程度)を測定可能であれば、特に限定されない。
次に、Al23粉からの水蒸気ガス放出量に起因する容器内圧力を測定する方法について説明する。
まず、試料であるAl23粉を真空容器内に所定量配置する。Al23粉の重量は100g以上とする。Al23粉が100gより少ないと、Al23粉からの水蒸気ガス放出量を正確に測定することができない。
次に、真空容器内を不活性ガス、例えば、N2ガス、Arガス等で置換する。容器内の水分を除去することを目的とするため、上記不活性ガスで置換する前に一度真空引きすることでより効果がある。次いで真空引きをする。真空度は100Pa程度まで下げる。
その後、加熱部により昇温を開始する。この昇温は一定の速度で昇温する。このとき昇温速度が速過ぎると、水蒸気ガスが放出され、真空容器の圧力計が応答するまでのタイムラグが大きくなり、「温度-容器内圧力スペクトル」がシフトしてしまう。このため、真空容器の容量、および、Al23粉の投入量に応じて適宜調整する。例えば、上記昇温速度は5℃~8℃/hrに設定することができる。また、最高加熱温度は実際に還元処理を行う温度とする。
尚、上述したようにAl23粉を真空中で加熱した際に放出されるガス成分の同定を昇温脱離ガス分析法(TDS法)で行った。TDS法は、一定速度で試料をプログラム昇温加熱した際に試料表面から脱離するガスを質量分析計で検出し、その脱離ガスの定性と発生量を測定する分析法である。その結果、そのほとんどが水蒸気ガスであった。また一定の真空条件でAl23粉を加熱すると、Al23粉から放出される水蒸気ガスに起因して真空容器内の圧力が一時的に上昇するが、このときに取得できる「温度-容器内圧力スペクトル」が、TDS法で取得できる「温度-水蒸気ガス放出量スペクトル」とよく一致することを突き止めた。そこで、得られた「温度-容器内圧力スペクトル」とAl23粉をTDS分析しその結果得られた「温度-水蒸気ガス放出量スペクトル」を比較したところ、ピーク位置(温度)に大きなシフトは見られず、適正な昇温速度で加熱できていることが確認できた。水蒸気ガスの放出量が多いピーク温度は上述したように140℃、320℃、560℃の3点であった。
得られた「温度-容器内圧力スペクトル」を下に、実際に還元処理が行われる温度付近の容器内圧力の値を積分して積分値を算出する(以後、「圧力積分値」と呼ぶ)。真空容器内の圧力上昇は、Al23粉からの水蒸気ガス放出量に起因して起こるため、上記「温度-容器内圧力スペクトル」を下に、実際に還元処理が行われる温度付近の容器内圧力の値を積分して求められる「圧力積分値」は、Al23粉からの水蒸気ガス放出量と読み替えることができる。
尚、容器内圧力の値を積分して積分値を算出する温度範囲は、LT結晶における還元処理の温度以下、かつ、水蒸気ガスの放出量は上述した140℃、320℃、560℃等ピーク温度がありこのピーク温度を含むことが好ましい。容器内圧力の値を積分して積分値を算出する温度範囲は[還元処理の温度-100℃]を下限値とし、[還元処理の温度]を上限値とすることがより好ましい。
2.通気性計測工程
Al23粉の通気性は、例えば、セメントの比表面積や粉末度を計測するのに一般的に利用される「ブレーン空気透過装置」を用いることで簡便かつ安価に通気性の数値化(空気透過時間として評価)が図れ、あるいは、粉体の流動性を評価する分析装置(例えば「パウダーレオメータFT4」)を用い、Al23粉からなるセルに一定圧力の空気を流しその圧力損失をAl23粉の通気性として評価することもできる。
[ブレーン空気透過装置]
以下、「ブレーン空気透過装置」を用いてAl23粉の通気性を計測する方法について説明する。
まず、計測装置(ブレーン空気透過装置)における透過セルの内容積とAl23粉の軽装かさ密度の積から透過セルに投入されるAl23粉の重量を算出する。上記軽装かさ密度は「JIS9301-2-3」の方法で測定することが好ましい。
算出された投入量を測り取った当該Al23粉を上記透過セルに投入し、かつ、一定の圧力でAl23粉を押し固めて評価試料を作成した後、該評価試料を空気が透過する時間(空気透過時間)を上記Al23粉の通気性として計測することができる。
そして、空気が透過する時間(空気透過時間)を、Al23粉の通気性を表す数値とすることによりAl23粉の通気性を定量的に評価することが可能となる。
尚、「ブレーン空気透過装置」を用いてAl23粉の通気性を計測する場合、計測されるAl23粉の空気透過時間は2~20秒の範囲に設定するのが好ましい。
3.アルミニウム粉末の比率設定工程
本発明に係るLT基板の製造方法において、基板の状態に加工されたLT結晶をAl粉とAl23粉との混合粉中に埋め込んで処理する。温度は、350℃~LT結晶のキュリー温度未満(約600℃未満)である。Al粉とAl23粉の混合粉は、処理後におけるLT基板の体積抵抗率に影響を与える。Al粉の比率を高くすることで、Alの酸化反応が促進されて体積抵抗率を小さくすることができる。
例えば、体積抵抗率を1×109(Ω・cm)以下にする場合、特許文献3に係る方法では混合粉中のAl粉混合比が20重量%を超える量に設定する必要があった。しかし、混合粉中のAl粉混合比が20重量%を超えた場合、直径1~5mm程度の上述した黒い点(色むら)の発生が確認され、この色むらは、Al粉混合比に影響を受け、Al粉混合比が上昇するに従い色むらの発生率は高くなる。
本発明に係るLT基板の製造方法において、色むらの発生を確実に抑制するにはAl粉混合比を30重量%以下にし、好ましくは15%重量以下、より好ましくは10重量%以下にするとよい。
4.水蒸気ガス放出量に起因する圧力積分値と体積抵抗率
(1)「温度-容器内圧力スペクトル」
Al23粉からの水蒸気ガス放出量に起因する容器内圧力を測定する上記装置を用いて同一製造メーカーの同一品種に係る製造ロットの異なる製造ロットA~製造ロットCに係るAl23粉の容器内温度(℃)と容器内圧力(Pa)との関係、すなわち「温度-容器内圧力スペクトル」を求めたところ、図1に示すグラフ図が得られた。
図1に示すグラフ図から、製造ロットA~製造ロットCに係るいずれのAl23粉においても、140℃、320℃、560℃に水蒸気ガス放出のピーク温度が存在することが確認された。
(2)製造ロットA~製造ロットCに係るAl23粉とLT基板の体積抵抗率の関係
製造ロットA~製造ロットCに係るAl23粉(各Al23粉の通気性はブレーン空気透過装置による空気透過時間が4.5秒)を用い、Al粉混合比を10%と5%に設定してLT結晶の還元処理を行ったところ、水蒸気ガス放出量に起因する圧力積分値(480~580℃)[Pa]とLT基板の体積抵抗率[Ω・cm]との関係を示す図2のグラフ図が得られた。
水蒸気ガス放出量に起因する圧力積分値は、後述する実施例1~3(製造ロットA~C)に係る表1と図2のグラフ図に示されているように製造ロットB>製造ロットA>製造ロットCの順番であった。
これに対し、LT基板の体積抵抗率[Ω・cm]は、実施例1~3(製造ロットA~C)に係る表1と図2のグラフ図に示されているように製造ロットB<製造ロットA<製造ロットCの順番であった。
水蒸気ガス放出量に起因する圧力積分値と体積抵抗率は負の相関にあり、水蒸気ガス放出量に起因する圧力積分値が大きいと体積抵抗率が下がる。すなわち、還元され易くなる傾向にある。これは、Al23粉から水蒸気ガスが放出され、この水蒸気ガスによりAl粉の酸化反応が促進されるためである。
そして、上記「温度-容器内圧力スペクトル」から算出されるAl23粉の「圧力積分値」、ブレーン空気透過装置等で計測されたAl23粉の「通気性」、「Al粉混合比」、および、「LT基板の体積抵抗率」に係る図2の検量線を作成しておくことで、「圧力積分値」を下に、所望とする「LT基板の体積抵抗率」が得られる「Al粉混合比」を事前に設定することが可能となる。
5.大気圧雰囲気下の加熱炉内に給排する不活性ガス等
加熱炉内に給排する不活性ガスは、一般的に市販されている低酸素濃度のアルゴンガス(酸素分圧は1×10-6atm程度)や窒素ガス等を適用できる。
尚、加熱炉内に連続的に給排される不活性ガスの流量は、不活性ガスがアルゴンガスである場合、0.5~5L/minであることが好ましい。
そして、本発明に係る製造方法は、加熱炉内を減圧あるいは真空にすることが無く、密閉容器や減圧処理装置を必要としないため、設備コストの削減も図れる。
本発明に係る基板の製造方法は、LN単結晶についても適用することが可能である。
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明の技術範囲は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
[Al粉とAl23粉の平均粒径]
実施例で適用したAl粉の平均粒径は100μm、製造ロットA~Cに係るAl23粉の平均粒径も100μmである。尚、平均粒径は各粉末をレーザー回折式粒度分布計で測定した値とした。
また、製造ロットA~Cに係るAl23粉の通気性について、ブレーン空気透過装置(関西機器製作所製:KC-3-A)で測定し、各Al23粉の通気性を評価した。
尚、各Al23粉の軽装かさ密度はJIS9301-2-3に記載の方法で測定した。
また、ブレーン空気透過装置における透過セルの内容積とAl23粉の軽装かさ密度の積から透過セルに投入するAl23粉の重量を決定した。
製造ロットA~Cに係るAl23粉の通気性を下記表1に示す。
[加熱炉の構成]
実施例で用いられる加熱炉には給気口と排気口が設けられている。また、加熱炉内に配置されるステンレス製容器にはAl粉とAl23粉との混合粉が充填され、かつ、一般的に市販されているアルゴンガス(酸素分圧は1×10-6atm程度)が給気口を介し加熱炉内に連続的に供給されると共に、排気口を介してアルゴンガス(不活性ガス)が加熱炉外へ連続的に排気されて、加熱炉内は大気圧雰囲気下(アルゴンガスの封止条件下にはなっていない)に調整されている。尚、加熱炉内に給排されるアルゴンガスの流量は2L/minに設定されている。
[LT結晶の育成とインゴットの加工等]
コングルエント組成の原料を用い、チョクラルスキー法により、直径4インチであるLT結晶の育成を行った。育成雰囲気は、酸素濃度約3%の窒素-酸素混合ガスである。得られたLT結晶のインゴットは、透明な淡黄色であった。
LT結晶のインゴットに対し、熱歪み除去のための熱処理と単一分極とするためのポーリング処理を行った後、外周研削、スライス、および研磨を行って42゜RY(Rotated Y axis)の基板の状態に加工されたLT結晶とした。
得られた42゜RYのLT結晶は、無色透明で、体積抵抗率は1×1015Ω・cm、キュリー温度は603℃であった。
[Al23粉に係る水蒸気量の測定]
Al23粉からの水蒸気ガス放出量に起因する容器内圧力を測定する真空容器と加熱機器(加熱部)には管状炉型の雰囲気制御炉を転用した。炉心管の材質はSUS、加熱機器はカンタルヒーターであり、最高650℃まで加熱できるものである。炉心管には真空計(圧力計)とロータリーポンプが接続され、100Paまで真空引きが可能であり、また、不活性ガスとしてArガスを導入することができる。
上記加熱炉(雰囲気制御炉)の中にAl23粉を1kg投入し、下記手順で「温度-容器内圧力スペクトル」を作成した。
まず、加熱炉(雰囲気制御炉)内の圧力を4×100Paまで真空引きした後、炉内をArガスで置換しかつ大気圧まで復圧した。再度、炉内の圧力を4×100Paまで真空引きし、真空引きを継続したまま加熱を開始した。加熱時の昇温速度は7℃/hr.とし、最高加熱温度はLT結晶が還元処理される温度580℃とした。
得られた「温度-容器内圧力スペクトル」を下に「圧力積分値」を算出した。実際の還元処理が580℃で行われることから、560℃の温度ピーク、つまり「480℃~580℃の範囲」における炉内圧力の「圧力積分値」を算出した。
[実施例1]
まず、還元処理に適用するAl23粉を用意し、上述したAl23粉に係る水蒸気量の測定法によりAl23粉からの水蒸気ガス放出量に起因する上記圧力積分値(480~580℃)を算出し、比較のため、カールフィッシャー法による水分量の計測も行った。これ等結果を表1に示す。
還元処理に用いるAl23粉は、同一メーカーの同一品番に係る製造ロット違いの内、「製造ロットA」を使用し、その圧力積分値(480~580℃)は8.0×102Paであった。結果を表1に記載する。また、「製造ロットA」に係るAl23粉の「温度-容器内圧力スペクトル」(すなわち、容器内温度[℃]と容器内圧力[Pa]との関係を示すグラフ図)を図1に示す。
そして、ステンレス製容器に充填された10重量%のAl粉と90重量%のAl23粉(製造ロットA)との混合粉中に、基板の状態に加工されたLT結晶を埋め込み、かつ、LT結晶が埋め込まれたステンレス製容器を上記加熱炉内に配置した後、2L/minの流量でアルゴンガスを大気圧雰囲気下の加熱炉内に連続的に給排し、580℃、20時間の還元処理(黒化処理)を行った。
基板の状態に加工された合計200枚のLT結晶について同様の還元処理を行い、処理後のLT基板の体積抵抗率を測定した。尚、体積抵抗率は、JIS K-6911に準拠した3端子法により測定している。
還元処理(黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は5.8×108Ω・cmであった。結果を表1と図2[図2においては「5.8E+08」と表記している]に示す。尚、色むら(還元むら)は確認されなかった。
[実施例2~3]
実施例1と同様の方法にて、製造ロットの異なるAl23粉(実施例2は「製造ロットB」、実施例3は「製造ロットC」)を用いて還元処理(黒化処理)を行った。
「製造ロットB」と「製造ロットC」に係るAl23粉の「温度-容器内圧力スペクトル」(すなわち、容器内温度[℃]と容器内圧力[Pa]との関係を示すグラフ図)を図1に示す。また、実施例2に係る圧力積分値(480~580℃)は9.4×102Pa、実施例3に係る圧力積分値(480~580℃)は7.8×102Paであった。これ等結果も表1に示す。
また、還元処理(黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は、実施例2が3.9×108Ω・cm、実施例3が6.7×108Ω・cmであった。結果を表1と図2[図2においては「3.9E+08」「6.7E+08」と表記している]に示す。
尚、実施例2~3も色むら(還元むら)は確認されなかった。
[実施例4~6]
実施例1~3に係るAl混合比10.0[%](Al粉10重量%、Al23粉90重量%)に代えて、Al混合比5.0[%](Al粉5重量%、Al23粉95重量%)とした以外は実施例1~3と同様の条件で還元処理(黒化処理)を行った。
実施例4(製造ロットAに係るAl23粉を使用)に係る圧力積分値(480~580℃)は、実施例1と同様、8.0×102Pa、実施例5(製造ロットBに係るAl23粉を使用)に係る圧力積分値(480~580℃)も、実施例2と同様、9.4×102Pa、および、実施例6(製造ロットCに係るAl23粉を使用)に係る圧力積分値(480~580℃)も、実施例3と同様、7.8×102Paである。結果も表1に示す。
また、還元処理(黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は、実施例4が7.1×108Ω・cm、実施例5が4.9×108Ω・cm、および、実施例6が8.2×108Ω・cmであった。結果を表1と図2[図2においては「7.1E+08」「4.9E+08」および「8.2E+08」と表記している]に示す。
尚、実施例4~6も色むら(還元むら)は確認されなかった。
Figure 0007435146000001
[確認1]
表1に示すように「カールフィッシャー法」による水分量の計測では差異が確認できない同一型番のAl23粉であっても、図1に示す「温度-容器内圧力スペクトル」を下に算出された「圧力積分値」を用いて計測すると製造ロットによって水蒸気ガスの放出量が異なることが確認される。
また、図1の「温度-容器内圧力スペクトル」に係るグラフ図から、製造ロットAおよび製造ロットCに係るAl23粉に較べ、製造ロットBに係るAl23粉は、140℃と560℃のピーク強度が高い傾向を示していることが確認される。
尚、各実施例に係る還元処理(黒化処理)を580℃で行ったことから、560℃ピークを含む480℃~580℃間の積分値を水蒸気ガス放出量に起因する圧力積分値(480~580℃)としている。
[確認2]
表1と図2に示される水蒸気ガス放出量に起因する圧力積分値(480~580℃)と体積抵抗率との関係から以下のことが確認される。
まず、水蒸気ガス放出量に起因する圧力積分値(480~580℃)は、製造ロットB(9.4×102Pa)>製造ロットA(8.0×102Pa)>製造ロットC(7.8×102Pa)の順番であった。
これに対し、体積抵抗率は、製造ロットB(実施例2が3.9×108Ω・cm、実施例5が4.9×108Ω・cm)<製造ロットA(実施例1が5.8×108Ω・cm、実施例4が7.1×108Ω・cm)<製造ロットC(実施例3が6.7×108Ω・cm、実施例6が8.2×108Ω・cm)の順番であった。
上記から「水蒸気ガス放出量に起因する圧力積分値」と「体積抵抗率」は負の相関にあり、水蒸気ガス放出量が多いと体積抵抗率が下がる、すなわち、還元されやすくなる傾向にあることが確認された。
更に、混合比を替えることで、同様の傾向があることも確認された。
これ等のことから、Al23粉の通気性が同一である場合、事前にAl23粉の水蒸気ガス放出量に起因する圧力積分値を計測することにより、Al23粉の水分量に合わせ混合粉(Al紛とAl23粉)の比率を調整することでLT基板の所望とする体積抵抗率を得ることが可能となる。
本発明方法によれば、製造メーカー間、または同一製造メーカーの品種間、同一品種の製造ロット間における酸化アルミニウム粉末の水分量の微細なバラつきを「圧力積分値」に基づいて十分に把握できることから、製造コストを上昇させることなく所望とする体積抵抗率のタンタル酸リチウム基板を安定して製造できるため、表面弾性波素子(SAWフィルター)用の基板材料に用いられる産業上の利用可能性を有している。

Claims (4)

  1. タンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法であって、容器内に充填されたアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶を埋め込み、上記容器を加熱炉内に配置した後、大気圧雰囲気下の加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排しながらタンタル酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で還元処理してタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
    適用する酸化アルミニウム粉末の通気性を計測する通気性計測工程と、
    適用する酸化アルミニウム粉末を真空容器内に配置し、該真空容器を加熱して酸化アルミニウム粉末からの水蒸気ガス放出量に起因する真空容器内の圧力を計測すると共に、所定の温度範囲内で上記圧力の値を積分して圧力積分値を求める圧力計測工程と、
    計測された酸化アルミニウム粉末の上記通気性と水蒸気ガス放出量に起因する上記圧力積分値、および、タンタル酸リチウム基板の所望とする体積抵抗率に基づいて上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率を設定するアルミニウム粉末の比率設定工程、
    を有することを特徴とするタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  2. 酸化アルミニウム粉末からの水蒸気ガス放出量に起因する圧力の値を積分して圧力積分値を求める上記圧力計測工程における所定の温度範囲が、タンタル酸リチウム結晶における還元処理の温度以下で、酸化アルミニウム粉末からの水蒸気ガス放出量の多いピーク温度を含むことを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  3. 酸化アルミニウム粉末からの水蒸気ガス放出量に起因する圧力の値を積分して圧力積分値を求める上記圧力計測工程における所定の温度範囲が、[還元処理の温度-100℃]を下限値とし[還元処理の温度]を上限値とすることを特徴とする請求項1または2に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  4. 上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率が1~30重量%の範囲に設定されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
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