JP7099203B2 - タンタル酸リチウム基板の製造方法 - Google Patents

タンタル酸リチウム基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、チョクラルスキー法で育成されたタンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法に係り、特に、電気的特性に優れたタンタル酸リチウム基板を安定して製造できるタンタル酸リチウム基板の製造方法に関するものである。
タンタル酸リチウム(以下、LTと略称することがある)結晶は、融点が約1650℃、キュリー温度が約600℃の強誘電体であり、この結晶を用いて製造されたタンタル酸リチウム基板は、主に、携帯電話の送受信用デバイスに用いられる表面弾性波(SAW)フィルター材料として適用されている。
そして、携帯電話の高周波化、各種電子機器の無線LANであるBluetooth(登録商標)(2.45GHz)の普及等により、2GHz前後の周波数領域のSAWフィルターが今後急増すると予測されている。
上記SAWフィルターは、LT等の圧電材料で構成された基板上に、Al、Cu等の金属薄膜で一対の櫛型電極が形成された構造となっており、この櫛型電極がデバイスの特性を左右する重要な役割を担っている。また、上記櫛型電極は、圧電材料上にスパッタリングにより金属薄膜を成膜した後、一対の櫛型パターンを残し、フォトリソグラフ技術により不要な部分をエッチングにより除去することで形成される。
また、上記LT単結晶は、産業的には、主にチョクラルスキー法によって、酸素濃度が数%~20%程度の窒素-酸素混合ガス雰囲気の電気炉中で育成されており、通常、高融点のイリジウム坩堝が用いられ、育成されたLT単結晶は電気炉内で所定の冷却速度で冷却された後、電気炉から取り出して得られている。
育成されたLT結晶は、無色透明若しくは透明度の高い淡黄色を呈している。育成後、結晶の熱応力による残留歪みを取り除くため、融点に近い均熱下で熱処理を行い、更に単一分極とするためのポーリング処理、すなわち、LT結晶を室温からキュリー温度以上の所定温度まで昇温し、結晶に電圧を印加し、電圧を印加したままキュリー温度以下の所定温度まで降温した後、電圧印加を停止して室温まで冷却する一連の処理を行う。ポーリング処理後、結晶の外径を整えるために外周研削されたLT結晶(インゴットと称する)は、スライス、ラップ、ポリッシュ工程等の機械加工を経て基板となる。最終的に得られた基板はほぼ無色透明で、その体積抵抗率はおよそ1014~1015Ω・cm程度である。
ところで、このような従来の方法で得られた基板では、表面弾性波素子(SAWフィルター)製造プロセスにおいて、LT結晶の特性である焦電性のため、プロセスで受ける温度変化によって電荷が基板表面にチャージアップし、これにより生ずる放電が原因となって基板表面に形成した櫛型電極が破壊され、更には基板の割れ等を生じて素子製造プロセスでの歩留まり低下が起きている。
そこで、LT結晶の焦電性による不具合を解消するため、導電率を増大させる技術がいくつか提案されている。例えば、特許文献1では、アルゴン、水、水素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素およびこれ等の組合せから選択されたガスの還元雰囲気で基板の状態に加工されたLT結晶(以下「基板形状のLT結晶」とし、還元処理後のLT基板と区別する)を熱処理(還元処理)してその導電性を増大させる方法が提案され、特許文献2では、基板形状のLT結晶を20Pa以下の減圧雰囲気で熱処理してその導電性を増大させる方法が提案されている。また、特許文献3では、基板形状のLT結晶が収容された処理室内に酸素ポンプを用いて酸素分圧が1×10-22atm以下の不活性ガスを供給しながら熱処理する方法が提案され、特許文献4では、基板形状のLT結晶をアルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)との混合粉中に埋め込んで熱処理する方法が提案されている。尚、導電性を増大させたLT基板は、酸素空孔が導入されたことにより光吸収を起こすようになる。そして、観察されるLT基板の色調は、透過光では赤褐色系に、反射光では黒色に見えるため、導電性を増大させる還元処理は黒化処理とも呼ばれており、このような色調の変化現象を黒化と呼んでいる。
特開平11-92147号公報 特開2004-152870号公報 特許6001261号公報(図3参照) 特許4063191号公報
ところで、融点が1250℃程度と比較的低いニオブ酸リチウム結晶と異なり、融点が約1650℃と高いタンタル酸リチウム結晶に対して特許文献1および特許文献2の方法を適用した場合、LT基板の導電性が十分に増大しないため、焦電性による不具合を十分に改善でない問題があった。また、LT結晶が収容された処理室内に酸素ポンプを用いて酸素分圧が1×10-22atm以下の不活性ガスを供給しながら熱処理する特許文献3の方法では、10-12~10-11Ω-1・cm-1(特許文献3における図3のグラフ参照)程度の導電率(1011~1012Ω・cm程度の体積抵抗率)は得られるものの、処理室内に供給する不活性ガスの酸素分圧を1×10-22atmにするには、酸化ジルコニウム(ZrO2)等の固体電解質で構成された高価な酸素ポンプを設置する必要があり、かつ、酸素ポンプで調製される不活性ガス量は少量であるため僅かな枚数のLT結晶しか処理できず、生産コストと生産性に劣る問題を有していた。
一方、基板形状のLT結晶をアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に埋め込んで熱処理(還元処理)する特許文献4の方法は、所望とする体積抵抗率(導電性)が得られると共に、高価な酸素ポンプを設置する必要がないため生産コストにも優れた利点を有している。しかし、使用する酸化アルミニウム粉末の製造ロットが異なる場合に熱処理後におけるLT基板の体積抵抗率が変動することがあった。このため、使用する酸化アルミニウム粉末の製造ロットに合わせて混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率を変更し、所望とする体積抵抗率が得られるよう調整する必要があり、かかる調整を要する分、生産効率に劣る問題を有していた。更に、混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率が20質量%以上になった場合、直径1~5mm程度の黒い点(色むら、すなわち還元むら)が発生し易くなり、生産性が悪化する問題を有していた。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、使用する酸化アルミニウム粉末の製造ロットが異なる場合でも、生産性を悪化させることなく電気的特性に優れたタンタル酸リチウム基板を安定して製造できるタンタル酸リチウム基板の製造方法を提供することにある。
そこで、上記課題を解決するため、本発明者は、使用する酸化アルミニウム粉末の製造ロットが異なる場合に、熱処理後におけるLT基板の体積抵抗率が変動してしまう原因について鋭意分析を行った。
その結果、
(1)LT結晶の還元には、アルミニウム粉末による還元作用に加えて酸化アルミニウム粉末に含まれる水分も関与していること、
(2)酸化アルミニウム粉末に含まれる水分量は製造ロット毎に相違していること、
(3)使用する酸化アルミニウム粉末の製造ロットが異なる場合、LT結晶の還元に関与する水分量が相違するためLT基板の体積抵抗率が変動すること、
なる技術的知見を得るに至った。
本発明はこのような技術的分析と知見により完成されたものである。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
チョクラルスキー法で育成されたタンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法であって、容器内に充填されたアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶を埋め込み、かつ、上記容器を加熱炉内に配置した後、タンタル酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
上記酸化アルミニウム粉末が加湿処理されていることを特徴とする。
第2の発明は、
第1の発明に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
上記酸化アルミニウム粉末が、加湿処理前に乾燥処理されていることを特徴とする。
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
加湿処理された酸化アルミニウム粉末の水分量が0.08質量%~0.4質量%であることを特徴とする。
第4の発明は、
第1の発明~第3の発明のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率が20質量%未満であることを特徴とする。
第5の発明は、
第1の発明~第4の発明のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
大気圧雰囲気下の上記加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排することを特徴とする。
また、第6の発明は、
第5の発明に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
上記不活性ガスがアルゴンガスで構成され、加熱炉内に連続的に給排されるアルゴンガスの流量が0.5~5L/minであることを特徴とする。
本発明に係るタンタル酸リチウム基板の製造方法によれば、
酸化アルミニウム粉末が加湿処理されて酸化アルミニウム粉末に含まれる水分量が適宜調整されるため、使用する酸化アルミニウム粉末の製造ロットが異なる場合でもタンタル酸リチウム基板における体積抵抗率の変動を防止することが可能となる。従って、酸化アルミニウム粉末の製造ロットが異なる場合でも生産性を悪化させることなく電気的特性に優れたタンタル酸リチウム基板を安定して製造できる効果を有する。
更に、適宜調整された酸化アルミニウム粉末に含まれる水分の還元作用により、混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率を従前より低く設定することが可能となる。従って、アルミニウム粉末の比率を20質量%以上に設定する必要がないため、直径1~5mm程度の黒い点(色むら不良)の発生を抑制できる効果を有する。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
本発明は、基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶(基板形状のLT結晶)をアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に埋め込んで熱処理するLT基板の製造方法において、使用する酸化アルミニウム粉末の製造ロットが異なる場合においても、処理後におけるLT基板の体積抵抗率が変動しないように上記酸化アルミニウム粉末を加湿処理することを特徴とするものである。
更に、酸化アルミニウム粉末の加湿処理前に乾燥処理を行うことで、製造ロット毎に相違している酸化アルミニウム粉末中に存在する水分を除去し、乾燥工程後の酸化アルミニウム粉末中に存在する水分量をほぼ同一にすることで、その後、所望とする体積抵抗率になるように加湿処理を安定して行うことができる。
以下、本発明に係るLT基板の製造方法について工程毎に説明する。
(A)酸化アルミニウム粉末の乾燥処理工程
この工程は、酸化アルミニウム粉末中に存在する水分を除去する工程であり、酸化アルミニウム粉末をアルミナ製の容器内に入れ、電気炉により300℃~1100℃で10~40時間処理して、水分が除去された酸化アルミニウム粉末を調製する。
電気炉の温度は、300℃以上であれば酸化アルミニウム粉末中に存在する水分を除去できるが、加熱温度を1000℃前後で行うことにより酸化アルミニウム粉末内に含まれる不純物等も除去できるためより好ましい。
加熱時間は、熱処理する酸化アルミニウム粉末の量にもよるが、水分を均一に除去できるよう適宜設定する。
乾燥処理の雰囲気は、大気中若しくは不活性ガス雰囲気であり、不活性ガスとして、アルゴンガス、窒素ガスを使用することができる。
乾燥処理を行うことで、製造ロット毎に相違している酸化アルミニウム粉末中に存在する水分量をほぼ同一量にすることができる。
この乾燥処理により酸化アルミニウム粉末の水分量を0.04質量%以下にすることが可能となる。尚、上記水分量は、カールフィッシャー水分計で測定した値である。
(B)酸化アルミニウム粉末の加湿処理工程
この工程は、乾燥処理により水分が除去された酸化アルミニウム粉末に対して意図的に水分を吸着させるか、あるいは乾燥処理がなされていない酸化アルミニウム粉末に対して意図的に水分を吸着させる工程である。この工程においては、乾燥処理がなされ、あるいは乾燥処理がなされていない酸化アルミニウム粉末をステンレス容器に入れ、恒湿槽等で所定の水分量になるよう調整する。例えば、恒湿槽において、温度30~60℃、湿度70~90%RHの状態で12~60時間処理し、酸化アルミニウム粉末に含まれる水分量を0.08質量%~0.4質量%に調整する。尚、温度、湿度、保持時間等は、酸化アルミニウム粉末の水分量が所定の範囲になるよう適宜設定すればよい。
尚、上記乾燥処理により水分が除去された酸化アルミニウム粉末に対して加湿処理がなされない場合、酸化アルミニウム粉末の水分量は0.04質量%以下であった。水分量が0.04質量%以下である酸化アルミニウム粉末を混合粉に適用してLT結晶を熱処理しても、LT基板の体積抵抗率は7.0×1012Ω・cm程度に過ぎず、不十分であった(下記比較例1参照)。
(C)アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末の混合工程
この工程は、アルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)を混合する工程である。この工程において、(A)乾燥処理工程により水分が除去された酸化アルミニウム粉末に対して、あるいは、水分を除去するための上記乾燥処理が施されていない酸化アルミニウム粉末に対して(B)加湿処理工程で水分を吸着させた酸化アルミニウム粉末(Al23粉)が、アルミニウム粉末(Al粉)と混合される。
混合するAl粉の比率は、20質量%未満が好ましく、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5~15質量%の範囲である。
Al粉の比率を20質量%以上とした場合、LT基板の充分な導電性(体積抵抗率)が達成される反面、Al粉比率の上昇に伴い、直径1~5mm程度の黒い点(色むら不良)の発生率が増加する傾向が確認され、生産性が悪化してしまう。
そして、本発明においては、Al粉の比率が20質量%未満であっても、酸化アルミニウム粉末(Al23粉)に含まれる水分量を適宜調整することにより、LT基板の導電性(体積抵抗率)を向上させることが可能となる。
(D)タンタル酸リチウム基板(LT基板)の熱処理工程
この工程は、アルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)の混合粉中に基板形状のLT結晶を埋め込んで熱処理する工程である。
熱処理温度はLT結晶のキュリー温度未満(約600℃未満)とし、熱処理の雰囲気は、真空条件または不活性ガスの封止条件でよく、あるいは、大気圧雰囲気下で不活性ガスを加熱炉内に連続的に給排する雰囲気でもよい。尚、真空条件または不活性ガスの封止条件とした場合、加熱炉内の熱が一か所に溜まって還元むら(色むら)を起こすことがあるため、熱処理の雰囲気としては、大気圧雰囲気下で不活性ガスを加熱炉内に連続的に給排する雰囲気が好ましい。不活性ガスを加熱炉内に連続的に給排することで、炉内において熱を均一にすることができる。不活性ガスは、アルゴンガスや窒素ガス等を使用できる。加熱炉内に連続的に給排される不活性ガスの流量は、不活性ガスがアルゴンガスである場合、0.5~5L/minであることが好ましい。
ところで、基板形状のLT結晶が熱処理される際、この熱処理により混合粉中の酸化アルミニウム粉末(Al23粉)に適量含まれる水分が水蒸気となり、この水蒸気とアルミニウム粉末(Al粉)が下記反応式に示すように反応して水素を生成し、強力な還元剤となる。
2Al+6H2O→2Al(OH)3+3H2
そして、酸化アルミニウムに含まれている水分量が増えるに伴い、熱処理後のLT基板の体積抵抗率は低下する傾向にある。このため、(B)酸化アルミニウム粉末の加湿処理工程により酸化アルミニウムに含まれている水分量を適宜調整することで、混合粉中における従前のAl粉比率より低く設定できる。従って、Al粉比率について20質量%以上に設定する必要がないため、直径1~5mm程度の黒い点(色むら不良)の発生を抑制することが可能となる。
また、本発明では、酸化アルミニウム粉末を加湿処理して酸化アルミニウム粉末に含まれる水分量が適宜調整されるため、使用する酸化アルミニウム粉末の製造ロットが異なる場合においてもLT基板における体積抵抗率の変動を防止することが可能となる。
更に、酸化アルミニウム粉末の加湿処理前に乾燥処理を行うことで、製造ロット毎に相違している酸化アルミニウム粉末中に存在する水分を除去し、乾燥工程後の酸化アルミニウム粉末中に存在する水分量をほぼ同一にすることで、その後、所望の加湿処理を安定して行うことが可能となり、製造ロットが異なる場合においても所望とする体積抵抗率を有するLT基板を安定して生産することができる。
以下、本発明の実施例について比較例も挙げて具体的に説明するが、本発明の技術範囲は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
[加熱炉の構成]
実施例、比較例、参考例で用いられる加熱炉には給気口と排気口が設けられ、一般的に市販されているアルゴンガス(酸素分圧は1×10-6atm程度)が給気口を介し加熱炉内に連続的に供給されると共に、排気口を介してアルゴンガス(不活性ガス)が加熱炉外へ連続的に排気されて、加熱炉内は大気圧雰囲気下に調整されている。尚、加熱炉内に給排されるアルゴンガスの流量は2L/minに設定されている。
[LT結晶の育成とインゴットの加工等]
コングルエント組成の原料を用い、チョクラルスキー法により、直径4インチであるLT単結晶の育成を行った。育成雰囲気は、酸素濃度約3%の窒素-酸素混合ガスである。得られたLT結晶のインゴットは透明な淡黄色であった。
LT結晶のインゴットに対し、熱歪み除去のための熱処理と単一分極とするためのポーリング処理を行った後、外周研削、スライス、および研磨を行って42゜RY(Rotated Y axis)の基板形状に加工されたLT結晶とした。
得られた42゜RYのLT結晶は、無色透明で、体積抵抗率は1×1015Ω・cm、キュリー温度は603℃であった。
[実施例1]
平均粒径52μmの酸化アルミニウム粉末(Al23粉)1kgを1000℃で20時間乾燥処理し、上記粉末に含まれる水分を除去したAl23粉を得た。尚、上記平均粒径は、酸化アルミニウム粉末をレーザー回折式粒度分布計で測定した値である。
乾燥処理されたAl23粉に対し、恒湿槽温度40℃、湿度85%RHで12時間加湿処理を行ってAl23粉に水分を吸着させた。水分を吸着させたAl23粉の水分量は、カールフィッシャー水分率で0.08質量%であった。
水分を吸着させたAl23粉を90質量%と、平均粒径100μmのアルミニウム粉末(Al粉)を10質量%の割合で混合してAl粉とAl23粉の混合粉を得た。
次いで、上記混合粉をステンレス製容器に充填し、該混合粉中に基板の状態に加工されたLT結晶を埋め込み、かつ、LT結晶が埋め込まれたステンレス製容器を給気口と排気口を有する上記加熱炉内に配置した。
そして、一般的に市販されているアルゴンガスを流量2L/minの条件で大気圧雰囲気下の上記加熱炉内に給排し、580℃、20時間の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
そして、基板の状態に加工された200枚のLT結晶について同様の熱処理を行い、処理後のLT基板の体積抵抗率を測定し、かつ、色むらの発生率を調査した。
尚、体積抵抗率は、JIS K-6911に準拠した3端子法により測定している。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は1.6×109Ω・cm(200枚の基板の平均値、以下同様)で、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。これ等結果を表1に示す。
[実施例2]
乾燥処理されたAl23粉に対し、恒湿槽温度40℃、湿度85%RHで24時間加湿処理を行い、水分を吸着させたAl23粉の水分量を0.15質量%とした以外は実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は8.3×108Ω・cmで、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。
これ等結果を表1に示す。
[実施例3]
乾燥処理されたAl23粉に対し、恒湿槽温度40℃、湿度85%RHで48時間加湿処理を行い、水分を吸着させたAl23粉の水分量を0.25質量%とした以外は実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は6.3×108Ω・cmで、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。
これ等結果を表1に示す。
[実施例4]
乾燥処理されたAl23粉に対し、恒湿槽温度40℃、湿度85%RHで60時間加湿処理を行い、水分を吸着させたAl23粉の水分量を0.4質量%とした以外は実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は3.2×108Ω・cmで、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。但し、加湿処理の時間(60時間)が長くなり、その分、生産効率は若干低下した。
これ等結果を表1に示す。
[実施例5]
水分を吸着させたAl23粉を95質量%とAl粉を5質量%の割合で混合した以外は実施例2と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は1.3×109Ω・cmで、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。
これ等結果を表1に示す。
[実施例6]
水分を吸着させたAl23粉を85質量%とAl粉を15質量%の割合で混合した以外は実施例2と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は6.0×108Ω・cmで、色むら発生率は5%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。
これ等結果を表1に示す。
[比較例1]
乾燥処理されたAl23粉に対し、上記加湿処理が行われていない以外は実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。尚、乾燥処理されたAl23粉の水分量は、カールフィッシャー水分率で0.04質量%であった。
熱処理(還元処理、黒化処理)後における色むら発生率は2%であったが、LT基板の体積抵抗率は7.0×1012Ω・cm程度であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができなかった。これ等結果を表1に示す。
[参考例1]
Al23粉の乾燥処理と加湿処理を実施せず、かつ、Al23粉を80質量%と、Al粉を20質量%の割合で混合した以外は実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
尚、乾燥処理と加湿処理が実施されていないAl23粉の水分量は、カールフィッシャー水分率で0.09質量%であった。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は7.0×108Ω・cmで電気的特性に優れていたが、色むら発生率が17%であり、直径1~5mm程度の黒い点(色むら不良)が発生した。これ等結果を表1に示す。
[参考例2]
Al23粉の乾燥処理と加湿処理を実施しなかった以外は実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
尚、乾燥処理と加湿処理が実施されていないAl23粉の水分量は、カールフィッシャー水分率で0.09質量%であった。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は1.5×109Ω・cmであり、実施例1と同様の電気的特性を有していたが、色むら発生率は2.5%であり、実施例1より劣っていた。これ等結果を表1に示す。
Figure 0007099203000001
[確 認]
(1)混合粉中のアルミニウム粉末(Al粉)が10質量%である実施例1~4において実施例1(Al23粉の水分量:0.08質量%、体積抵抗率:1.6×109Ω・cm)、
実施例2(Al23粉の水分量:0.15質量%、体積抵抗率:8.3×108Ω・cm)、
実施例3(Al23粉の水分量:0.25質量%、体積抵抗率:6.3×108Ω・cm)、
実施例4(Al23粉の水分量:0.40質量%、体積抵抗率:3.2×108Ω・cm)なるデータからAl23粉に吸着された水分量が多い程、体積抵抗率は小さくなっている。
このことから、LT結晶の還元には混合粉中の酸化アルミニウム粉末(Al23粉)に含まれる水分が関与していることが確認される。
(2)また、参考例1(Al粉が20質量%、体積抵抗率:7.0×108Ω・cm)と略同等の体積抵抗率を有する実施例3(体積抵抗率:6.3×108Ω・cm)、実施例4(体積抵抗率:3.2×108Ω・cm)および実施例6(体積抵抗率:6.0×108Ω・cm)から、Al粉の比率が20質量%未満(実施例3:10質量%、実施例4:10質量%、実施例6:15質量%)であっても参考例1と同等の体積抵抗率が得られている。
従って、アルミニウム粉末の比率を20質量%以上に設定する必要がないため、直径1~5mm程度の黒い点(色むら不良)の発生を抑制できることが確認される。
(3)他方、Al23粉に含まれる水分量が参考例1と参考例2(0.09質量%)より少ない比較例1(0.04質量%)においては、LT結晶の還元に関与する水分が少ないため、熱処理後におけるLT基板の体積抵抗率が、熱処理前の1×1015Ω・cmよりは低いが、7.0×1012Ω・cm程度となることも確認される。
本発明方法によれば、酸化アルミニウム粉末の製造ロットが異なる場合でも、熱処理後のタンタル酸リチウム基板における体積抵抗率の変動を防止できるため、表面弾性波素子用の基板材料に用いられるタンタル酸リチウム基板を安定して提供できる産業上の利用可能性を有している。

Claims (6)

  1. チョクラルスキー法で育成されたタンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法であって、容器内に充填されたアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶を埋め込み、かつ、上記容器を加熱炉内に配置した後、タンタル酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
    上記酸化アルミニウム粉末が、加湿処理されていることを特徴とするタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  2. 上記酸化アルミニウム粉末が、加湿処理前に乾燥処理されていることを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  3. 加湿処理された酸化アルミニウム粉末の水分量が0.08質量%~0.4質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  4. 上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率が20質量%未満であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  5. 大気圧雰囲気下の上記加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  6. 上記不活性ガスがアルゴンガスで構成され、加熱炉内に連続的に給排されるアルゴンガスの流量が0.5~5L/minであることを特徴とする請求項5に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
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