JP6992607B2 - タンタル酸リチウム基板の製造方法 - Google Patents

タンタル酸リチウム基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、チョクラルスキー法で育成したタンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法に係り、特に、色むら(還元むら)の無い電気的特性に優れたタンタル酸リチウム基板の製造方法に関するものである。
タンタル酸リチウム(以下、LTと略称することがある)結晶は、融点が約1650℃、キュリー温度が約600℃の強誘電体であり、この結晶を用いて製造されたタンタル酸リチウム基板は、主に、携帯電話の送受信用デバイスに用いられる表面弾性波(SAW)フィルター材料として適用されている。
そして、携帯電話の高周波化、各種電子機器の無線LANであるBluetooth(登録商標)(2.45GHz)の普及等により、2GHz前後の周波数領域のSAWフィルターが今後急増すると予測されている。
上記SAWフィルターは、LT等の圧電材料で構成された基板上に、Al、Cu等の金属薄膜で一対の櫛型電極が形成された構造となっており、この櫛型電極がデバイスの特性を左右する重要な役割を担っている。また、上記櫛型電極は、圧電材料上にスパッタリングにより金属薄膜を成膜した後、一対の櫛型パターンを残し、フォトリソグラフ技術により不要な部分をエッチングにより除去することで形成される。
また、上記LT単結晶は、産業的には、主にチョクラルスキー法によって、酸素濃度が数%~20%程度の窒素-酸素混合ガス雰囲気の電気炉中で育成されており、通常、高融点のイリジウム坩堝が用いられ、育成されたLT単結晶は電気炉内で所定の冷却速度で冷却された後、電気炉から取り出して得られている。
育成されたLT結晶は、無色透明若しくは透明度の高い淡黄色を呈している。育成後、結晶の熱応力による残留歪みを取り除くため、融点に近い均熱下で熱処理を行い、更に単一分極とするためのポーリング処理、すなわち、LT結晶を室温からキュリー温度以上の所定温度まで昇温し、結晶に電圧を印加し、電圧を印加したままキュリー温度以下の所定温度まで降温した後、電圧印加を停止して室温まで冷却する一連の処理を行う。ポーリング処理後、結晶の外径を整えるために外周研削されたLT結晶(インゴットと称する)は、スライス、ラップ、ポリッシュ工程等の機械加工を経て基板となる。最終的に得られた基板はほぼ無色透明で、その体積抵抗率はおよそ1014~1015Ω・cm程度である。
ところで、このような従来の方法で得られた基板では、表面弾性波素子(SAWフィルター)製造プロセスにおいて、LT結晶の特性である焦電性のため、プロセスで受ける温度変化によって電荷が基板表面にチャージアップし、これにより生ずる放電が原因となって基板表面に形成した櫛型電極が破壊され、更には基板の割れ等を生じて素子製造プロセスでの歩留まり低下が起きている。
そこで、LT結晶の焦電性による不具合を解消するため、導電率を増大させる技術がいくつか提案されている。例えば、特許文献1では、アルゴン、水、水素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素およびこれ等の組合せから選択されたガスの還元雰囲気でLT基板を熱処理することによりその導電性を増大させる方法が提案され、特許文献2では、20Pa以下の減圧雰囲気でLT基板を熱処理することによりその導電性を増大させる方法が提案されている。また、特許文献3では、基板の状態に加工されたLT結晶をアルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)との混合粉中に埋め込んで熱処理(還元処理)する方法が提案されている。尚、導電性を増大させたLT基板は、酸素空孔が導入されたことにより光吸収を起こすようになる。そして、観察されるLT基板の色調は、透過光では赤褐色系に、反射光では黒色に見えるため、導電性を増大させる還元処理は黒化処理とも呼ばれており、このような色調の変化現象を黒化と呼んでいる。
特開平11-92147号公報(特許請求の範囲、段落0027参照) 特開2004-152870号公報(請求項4、8、段落0014参照) 特許第4063191号公報(実施例3、8参照)
ところで、1250℃程度と融点が比較的低いニオブ酸リチウム基板と異なり、融点が約1650℃と高いタンタル酸リチウム基板に対して特許文献1および特許文献2の方法を適用した場合、LT基板の導電性が十分に増大しないため、焦電性による不具合の改善効果は十分でないという問題があった。
また、近年、表面弾性波素子(SAWフィルター)製造プロセスにおいての歩留まり向上のため、LT結晶の特性である体積抵抗率をより低くしたい要求があり、例えば、LT基板の体積抵抗率を1×109(Ω・cm)以下にしたい要求がある。
そして、基板の状態に加工されたLT結晶をアルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)との混合粉中に埋め込んで熱処理する特許文献3の方法では、Al粉の比率を高くすることで体積抵抗率1×109(Ω・cm)程度のLT基板が得られている(実施例3、8参照)。但し、混合粉中におけるAl粉比率が高くなるに従い、直径1~5mm程度の黒い点(色むらすなわち還元むら)が発生し易くなり、Al粉比率の上昇に伴いその発生率が増加して生産性を悪化させてしまう問題が存在した。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、焦電性による不具合の改善効果が均一で、色むら不良の発生を抑えることができ、かつ、低コストで再現性と生産効率に優れたLT基板の製造方法を提供することにある。
そこで、上記課題を解決するため本発明者等は特許文献3に係る方法の改良を試みた。
まず、特許文献3の方法は、ステンレスで構成された図1に示す容器1内にアルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)を充填し、これ等の混合粉2中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶3を埋め込むと共に、タンタル酸リチウム結晶3が埋め込まれた複数の容器1をアルミニウムで構成された大型容器4に収容し、かつ、この大型容器4を加熱炉(図示せず)内に配置した後、タンタル酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してタンタル酸リチウム基板を製造している。
尚、上記容器1と大型容器4は蓋材で覆われているが密閉容器ではない。
そして、特許文献3の方法では、加熱炉内の雰囲気が真空条件(実施例8参照)あるいは不活性ガスの封止条件(実施例1、3参照)に設定されているため、加熱炉内の熱が一か所に溜まって上記色むら(還元むら)を起こし易い環境になっていることが予想され、特に、混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率が20%重量を超えた場合に色むら発生率が顕著となることが確認された。更に、使用されるアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末の平均粒径が揃っていないため、アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との間に隙間空間が形成され難いことから、通気性が悪いことも色むら(還元むら)発生の一因になっていることが考えられた。すなわち、アルミニウム粉末の平均粒径については、粒径が小さいほど還元力が強くなることは分かっている。しかし、粉塵爆発の危険性を回避する観点から一般的に使用されているアルミニウム粉末の平均粒径は100μm程度に設定されている。これに対し、従来使用されている酸化アルミニウム粉末の平均粒径は50μm程度であるため、アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末間に隙間空間が形成され難いことも色むら(還元むら)発生の一因と考えられた。
そこで、真空条件あるいは不活性ガスの封止条件に設定されていた加熱炉内の雰囲気を大気圧条件に変更し、かつ、加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排する(加熱炉に設けられた給気口から不活性ガスを供給し、加熱炉の排気口から不活性ガスを放出する)と共に、混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率を20重量%以下に設定し、更に、アルミニウム粉末の平均粒径(100μm程度)に合わせて平均粒径が90μm以上の酸化アルミニウム粉末を適用したところ、焦電性による不具合の改善効果が均一で、色むら不良の発生を抑えることができると共に、体積抵抗率が1×109Ω・cm以下のタンタル酸リチウム基板を低コストかつ再現性よく製造できることが確認された。本発明はこのような技術的な分析と技術的確認を経て完成されたものである。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
チョクラルスキー法で育成したタンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法であって、容器内に充填されたアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶を埋め込み、かつ、上記容器を加熱炉内に配置した後、タンタル酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率を20重量%以下に設定し、大気圧雰囲気下の上記加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排すると共に、上記アルミニウム粉末の平均粒径をS(μm)とした場合、酸化アルミニウム粉末の平均粒径が0.9S(μm)~1.2S(μm)の範囲に設定されていることを特徴とするものである。
次に、第2の発明は、
第1の発明に記載のタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
上記アルミニウム粉末の平均粒径Sが100μmであることを特徴とし、
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載のタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率が10重量%であることを特徴とし、
また、第4の発明は、
第1の発明~第3の発明のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
上記不活性ガスがアルゴンガスで、かつ、加熱炉内に連続的に給排されるアルゴンガスの流量が0.5~5L/minであることを特徴とするものである。
本発明方法によれば、混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率が20重量%以下に設定され、大気圧雰囲気下の加熱炉内に不活性ガスが連続的に給排されると共に、アルミニウム粉末の平均粒径をS(μm)とした場合、酸化アルミニウム粉末の平均粒径が0.9S(μm)~1.2S(μm)の範囲に設定されているためアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末間に隙間空間が形成され易くなっている。
そして、大気圧雰囲気下の加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排することで加熱炉内の熱が一か所に溜まり難くなり、更に、アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末間に形成された隙間空間により通気性も改善されるため、色むら(還元むら)の発生が抑制されて電気的特性に優れたタンタル酸リチウム基板を低コストで製造することが可能となる。
特許文献3に係るアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶を埋め込んだ複数のステンレス容器がアルミニウム製大型容器に収容された状態を示す説明図。
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
タンタル酸リチウム(LT)結晶は、結晶内に存在する酸素空孔濃度によって電気伝導度と色が変化する。LT結晶中に酸素空孔が導入されると、チャージバランスをとる必要から一部のTaイオンの価数が5+から4+に変わり、電気伝導性を生じると同時に光吸収を起こす。電気伝導は、キャリアである電子がTa5+イオンとTa4+イオンの間を移動するために生ずると考えられる。結晶の電気伝導度は、単位体積あたりのキャリア数とキャリアの移動度の積で決まる。移動度が同じであれば、電気伝導度は酸素空孔数に比例する。また、光吸収による色変化は、酸素空孔により導入された電子レベルによるものと考えられる。
ところで、LT基板の導電率を高くする場合、酸素分圧が充分に低い不活性ガス中において、LT基板をキュリー温度未満の温度で熱処理してLT基板中に酸素空孔を導入する特許文献1の方法が考えられる。しかし、一般的に市販されているアルゴンガス(通常、酸素分圧は1×10-6atm程度)は、不純物として数ppm以下の酸素が含まれるため、一般的に市販されている不活性ガスを用いた熱処理ではLT基板の導電率を充分に高くすることはできない。
これに対し、アルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)の混合粉中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム(LT)結晶を埋め込み、例えば、不活性ガスの封止条件(実施例1、3参照)下で熱処理する特許文献3に係る方法は、Alの酸化反応によってLT結晶の周辺に存在する不活性ガスの酸素分圧を低下させ、LT結晶に酸素空孔を導入できる条件が得られる。
しかし、体積抵抗率が1×109(Ω・cm)程度のLT基板を特許文献3に係る方法で製造する場合、加熱炉内の雰囲気が真空条件(実施例8参照)あるいは上記不活性ガスの封止条件(実施例1、3参照)に設定されるため、加熱炉内の熱が一か所に溜まって色むら(還元むら)を起こし易くなり、特に、Al粉の比率が20重量%を超えた場合に、LT基板の表面に直径1~5mm程度の黒い点(色むら、すなわち還元むら)が発生する問題が存在した。
この問題を解決するため、本発明者等は、Al粉の比率を増大させることなく、Alの酸化反応によってLT結晶の周辺に存在する不活性ガスの酸素分圧を低下させる方法について検討した。
まず、Alの酸化反応によってLT結晶の周辺に存在する不活性ガスの酸素分圧を低下させるには、Alの酸化反応によってLT結晶から脱離した酸素をAl粉表面に速やかに拡散させることが重要となる。脱離した酸素がLT結晶の周辺に留まった場合、LT結晶周辺の不活性ガスの酸素分圧が上がってLT結晶の還元反応が進み難くなるからである。そこで、脱離した酸素がLT結晶の周辺に留まらないようにするため、アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との間に通気用の隙間空間が形成される改良を試みた。隙間空間を形成することにより、Alの酸化反応によってLT結晶から脱離した酸素をAl粉表面に速やかに拡散できるからである。よって、一般的に使用されている酸化アルミニウム粉末の平均粒径(100μm程度)に合わせ、平均粒径が90μm~120μmの酸化アルミニウム粉末の適用を試みたところ、平均粒径が50μm程度であった従来の酸化アルミニウム粉末を用いた場合に較べて嵩密度が8%程度低くなり、アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との間に隙間空間が形成されることが確認された。そして、上記隙間空間によりLT結晶周辺の通気性が向上するため、Alの酸化反応によってLT結晶から脱離した酸素がLT結晶の周辺に留まらないようになり、この結果、LT結晶の還元反応がより進み易くなる状態を形成することが可能となる。
更に、下記改良も試みた。すなわち、加熱炉内の雰囲気が真空条件(実施例8参照)あるいは不活性ガスの封止条件(実施例1、3参照)とされる特許文献3のこれ等条件に代えて、加熱炉内の雰囲気を大気圧条件に変更し、かつ、不活性ガスを加熱炉内に連続的に給排する(加熱炉に設けられた給気口から不活性ガスを供給し、加熱炉の排気口から不活性ガスを放出する)改良を試みた。この結果、Al粉の比率を20重量%以下に設定しても体積抵抗率が1×109Ω・cm以下のタンタル酸リチウム基板を製造することができ、更に、タンタル酸リチウム基板の表面に生ずる直径1~5mm程度の黒い点(色むら)も回避できることが確認されるに至った。
すなわち、本発明は、チョクラルスキー法で育成したLT結晶を用いてLT基板を製造する方法であって、容器内に充填されたアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板の状態に加工されたLT結晶を埋め込み、かつ、上記容器を加熱炉内に配置した後、LT結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してLT基板を製造する方法において、混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率を20重量%以下とし、大気圧雰囲気下の加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排すると共に、アルミニウム粉末の平均粒径をS(μm)とした場合、酸化アルミニウム粉末の平均粒径が0.9S(μm)~1.2S(μm)の範囲に設定されることを特徴とするものである。
本発明に係るLT基板の製造方法において、基板の状態に加工されたLT結晶をアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末の混合粉中に埋め込んで処理する温度は、350℃~LT結晶のキュリー温度未満(約600℃未満)である。アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末の混合粉は、処理後におけるLT基板の体積抵抗率に影響を与える。アルミニウム粉末の比率を高くすることで、Alの酸化反応が促進されて体積抵抗率を小さくすることができる。例えば、体積抵抗率を1×109(Ω・cm)以下にする場合、特許文献3に係る従前の方法では混合粉中におけるアルミニウム粉末比率が20重量%を超える量に設定する必要があった。しかし、混合粉中におけるアルミニウム粉末比率が20重量%を超えた場合、直径1~5mm程度の上述した黒い点(色むら)の発生が顕著となり、この色むらは、アルミニウム粉末の比率に影響を受け、アルミニウム粉末の比率が上昇するに従い色むらの発生率は高くなる。本発明に係るLT基板の製造方法において、上記色むらの発生を確実に抑制するにはAl粉の比率を20重量%以下にし、好ましくは15%重量以下、より好ましくは10重量%以下にするとよい。
また、加熱炉内に給排する不活性ガスは、一般的に市販されているアルゴンガス(酸素分圧は1×10-6atm程度)や窒素ガス等を適用できる。
尚、加熱炉内に連続的に給排される不活性ガスの流量は、不活性ガスがアルゴンガスである場合、0.5~5L/minであることが好ましい。
そして、本発明に係る製造方法は、加熱炉内を減圧あるいは真空にすることが無く、密閉容器や減圧処理装置を必要としないため、設備コストの削減も図れる。
以下、本発明の実施例について比較例も挙げて具体的に説明するが、本発明の技術範囲は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
[加熱炉の構成]
実施例と比較例で用いられる加熱炉には給気口と排気口が設けられている。また、加熱炉内に配置されるステンレス製容器にはアルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)との混合粉が充填され、かつ、一般的に市販されているアルゴンガス(酸素分圧は1×10-6atm程度)が給気口を介し加熱炉内に連続的に供給されると共に、排気口を介してアルゴンガス(不活性ガス)が加熱炉外へ連続的に排気されて、加熱炉内は大気圧雰囲気下(アルゴンガスの封止条件下にはなっていない)に調整されている。尚、加熱炉内に給排されるアルゴンガスの流量は2L/minに設定されている。
[LT結晶の育成とインゴットの加工等]
コングルエント組成の原料を用い、チョクラルスキー法により、直径4インチであるLT単結晶の育成を行った。育成雰囲気は、酸素濃度約3%の窒素-酸素混合ガスである。得られたLT結晶のインゴットは、透明な淡黄色であった。
LT結晶のインゴットに対し、熱歪み除去のための熱処理と単一分極とするためのポーリング処理を行った後、外周研削、スライス、および研磨を行って42゜RY(Rotated Y axis)の基板の状態に加工されたLT結晶とした。
得られた42゜RYのLT結晶は、無色透明で、体積抵抗率は1×1015Ω・cm、キュリー温度は603℃であった。
[実施例1]
ステンレス製容器に充填された10重量%のアルミニウム粉末(Al粉)と90重量%の酸化アルミニウム粉末(Al23粉)との混合粉中に、基板の状態に加工されたLT結晶を埋め込み、かつ、LT結晶が埋め込まれたステンレス製容器を上記加熱炉内に配置した後、給気口を介し上記アルゴンガスを加熱炉内に供給した。
尚、上記Al粉の平均粒径は100μm、Al23粉の平均粒径は95μmであった。また、上記平均粒径は各粉末をレーザー回折式粒度分布計で測定した値とした。
そして、上記2L/minの流量でアルゴンガスを大気圧雰囲気下の加熱炉内に連続的に給排し、580℃、20時間の熱処理(黒化処理)を行った。
基板の状態に加工された合計200枚のLT結晶について同様の熱処理を行い、処理後のLT基板の体積抵抗率を測定し、かつ、色むらの発生率を調査した。尚、体積抵抗率は、JIS K-6911に準拠した3端子法により測定している。
熱処理(黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は4.0×108Ω・cm程度で(200枚の基板の平均値)、かつ、基板表面の色むらの発生率は2%であった。
これらの結果を以下の表1に示す。
[比較例1]
平均粒径が52μmのAl23粉を用いた以外は実施例1と同様の条件で熱処理(黒化処理)を行った。
熱処理(黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は1.5×109Ω・cm程度で(200枚の基板の平均値)、かつ、基板表面の色むらの発生率は2.5%であった。
これらの結果も表1に示す。
[比較例2]
平均粒径が52μmのAl23粉を用い、かつ、混合粉中のAl粉とAl23粉の比率をAl粉:20重量%、Al23粉:80重量%とした以外は実施例1と同様の条件で熱処理(黒化処理)を行った。
熱処理(黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は7.0×108Ω・cm程度で(200枚の基板の平均値)、かつ、基板表面の色むらの発生率は17.0%であった。
これらの結果も表1に示す。
[実施例2]
平均粒径が110μmのAl23粉を用いた以外は実施例1と同様の条件で熱処理(黒化処理)を行った。
熱処理(黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は4.5×108Ω・cm程度で(200枚の基板の平均値)、かつ、基板表面の色むらの発生率は1.5%であった。
[比較例3]
平均粒径が8μmのAl23粉を用いた以外は実施例1と同様の条件で熱処理(黒化処理)を行った。
熱処理(黒化処理)後における基板表面の色むらの発生率は2.0%であったが、LT基板の体積抵抗率は7.0×109Ω・cm程度で(200枚の基板の平均値)あった。
[実施例3]
平均粒径が95μmのAl23粉を用い、かつ、混合粉中のAl粉とAl23粉の比率をAl粉:15重量%、Al23粉:85重量%とした以外は実施例1と同様の条件で熱処理(黒化処理)を行った。
熱処理(黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は3.5×108Ω・cm程度で(200枚の基板の平均値)、かつ、基板表面の色むらの発生率は4.0%であった。
[実施例4]
平均粒径が95μmのAl23粉を用い、かつ、混合粉中のAl粉、Al23粉の比率をAl粉:20重量%、Al23粉:80重量%とした以外は実施例1と同様の条件で熱処理(黒化処理)を行った。
熱処理(黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は3.0×108Ω・cm程度で(200枚の基板の平均値)、かつ、基板表面の色むらの発生率は12.0%であった。
Figure 0006992607000001
[結 果]
(1)平均粒径100μmのアルミニウム粉末(Al粉)に対して、平均粒径95μm~110μmの酸化アルミニウム粉末(Al23粉)が適用され、かつ、混合粉中におけるAl粉の比率が20重量%以下に設定されると共に、大気圧雰囲気下の加熱炉内にアルゴンガスを連続的に給排する実施例1~4では、色むらの発生率が1.5%~12.0%に抑制され、かつ、LT基板の体積抵抗率が1.0×109(Ω・cm)以下であることが確認される。
(2)他方、平均粒径100μmのAl粉に対し、平均粒径8μmと52μmのAl23粉が適用され、かつ、混合粉中におけるAl粉の比率が10重量%に設定されると共に、大気圧雰囲気下の加熱炉内にアルゴンガスを連続的に給排する比較例1と比較例3では、色むらの発生率が2.0%~2.5%に抑制されている反面、LT基板の体積抵抗率は1.0×109(Ω・cm)を超えており導電性が十分に向上していないことが確認される。
(3)また、平均粒径100μmのAl粉に対し、平均粒径52μmのAl23粉が適用され、かつ、混合粉中におけるAl粉の比率が20重量%に設定されると共に、大気圧雰囲気下の加熱炉内にアルゴンガスを連続的に給排する比較例2においては、LT基板の体積抵抗率が1.0×109(Ω・cm)以下と導電性に優れている反面、色むらの発生率は17.0%と高く、生産性を悪化させていることが確認される。
本発明によれば、色むら(還元むら)の発生が抑制され、かつ、電気的特性に優れたタンタル酸リチウム基板を製造できるため、表面弾性波素子(SAWフィルター)用の基板材料に用いられる産業上の利用可能性を有している。
1 容器
2 混合粉
3 基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶
4 大型容器

Claims (4)

  1. チョクラルスキー法で育成したタンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法であって、容器内に充填されたアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶を埋め込み、かつ、上記容器を加熱炉内に配置した後、タンタル酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
    上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率を20重量%以下に設定し、大気圧雰囲気下の上記加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排すると共に、上記アルミニウム粉末の平均粒径をS(μm)とした場合、酸化アルミニウム粉末の平均粒径が0.9S(μm)~1.2S(μm)の範囲に設定されていることを特徴とするタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  2. 上記アルミニウム粉末の平均粒径Sが100μmであることを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  3. 上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率が10重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  4. 上記不活性ガスがアルゴンガスで、かつ、加熱炉内に連続的に給排されるアルゴンガスの流量が0.5~5L/minであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
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