JP7271845B2 - タンタル酸リチウム基板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、タンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法に係り、特に、色むら(還元むら)の無い電気的特性に優れたタンタル酸リチウム基板を安定して製造できるタンタル酸リチウム基板の製造方法に関するものである。
タンタル酸リチウム(以下、LTと略称することがある)結晶は、融点が約1650℃、キュリー温度が約600℃の強誘電体であり、この結晶を用いて製造されたタンタル酸リチウム基板は、主に、携帯電話の送受信用デバイスに用いられる表面弾性波(SAW)フィルター材料として適用されている。
そして、携帯電話の高周波化、各種電子機器の無線LANであるBluetooth(登録商標)(2.45GHz)の普及等により、2GHz前後の周波数領域のSAWフィルターが今後急増すると予測されている。
上記SAWフィルターは、LT等の圧電材料で構成された基板上に、Al、Cu等の金属薄膜で一対の櫛型電極が形成された構造となっており、この櫛型電極がデバイスの特性を左右する重要な役割を担っている。また、上記櫛型電極は、圧電材料上にスパッタリングにより金属薄膜を成膜した後、一対の櫛型パターンを残し、フォトリソグラフ技術により不要な部分をエッチングにより除去することで形成される。
また、上記LT結晶は、産業的には、主にチョクラルスキー法によって、酸素濃度が数%~20%程度の窒素-酸素混合ガス雰囲気の電気炉中で育成されており、通常、高融点のイリジウム坩堝が用いられ、育成されたLT結晶は電気炉内で所定の冷却速度で冷却された後、電気炉から取り出して得られている。
育成されたLT結晶は、無色透明若しくは透明度の高い淡黄色を呈している。育成後、結晶の熱応力による残留歪みを取り除くため、融点に近い均熱下で熱処理を行い、更に単一分極とするためのポーリング処理、すなわち、LT結晶を室温からキュリー温度以上の所定温度まで昇温し、結晶に電圧を印加し、電圧を印加したままキュリー温度以下の所定温度まで降温した後、電圧印加を停止して室温まで冷却する一連の処理を行う。ポーリング処理後、結晶の外径を整えるために外周研削されたLT結晶(インゴットと称する)は、スライス、ラップ、ポリッシュ工程等の機械加工を経て基板となる。最終的に得られた基板はほぼ無色透明で、その体積抵抗率はおよそ1014~1015Ω・cm程度である。
このような従来の方法で得られた基板では、表面弾性波素子(SAWフィルター)製造プロセスにおいて、LT結晶の特性である焦電性のため、プロセスで受ける温度変化によって電荷が基板表面にチャージアップし、これにより生ずる放電が原因となって基板表面に形成した櫛型電極が破壊され、更には基板の割れ等を生じて素子製造プロセスでの歩留まり低下が起きている。
そこで、LT結晶の焦電性による不具合を解消するため、導電率を増大させる技術がいくつか提案されている。例えば、特許文献1では、アルゴン、水、水素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素およびこれ等の組合せから選択されたガスの還元雰囲気で基板の状態に加工されたLT結晶(以下「基板形状のLT結晶」とし、還元処理後のLT基板と区別する)を熱処理(還元処理)してその導電性を増大させる方法が提案され、特許文献2では、基板形状のLT結晶を20Pa以下の減圧雰囲気で熱処理してその導電性を増大させる方法が提案されている。また、特許文献3では、基板形状のLT結晶が収容された処理室内に酸素ポンプを用いて酸素分圧が1×10-22atm以下の不活性ガスを供給しながら熱処理する方法が提案され、特許文献4では、基板形状のLT結晶をアルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)との混合粉中に埋め込んで熱処理する方法が提案されている。尚、導電性を増大させたLT基板は、酸素空孔が導入されたことにより光吸収を起こすようになる。そして、観察されるLT基板の色調は、透過光では赤褐色系に、反射光では黒色に見えるため、導電性を増大させる還元処理は黒化処理とも呼ばれており、このような色調の変化現象を黒化と呼んでいる。
特開平11-92147号公報 特開2004-152870号公報 特許6001261号公報(図3参照) 特許4063191号公報
ところで、融点が1250℃程度と比較的低いニオブ酸リチウム結晶と異なり、融点が約1650℃と高いLT結晶に対して特許文献1および特許文献2の方法を適用した場合、LT基板の導電性が十分に増大しないため、焦電性による不具合を十分に改善でない問題があった。また、LT結晶が収容された処理室内に酸素ポンプを用いて酸素分圧が1×10-22atm以下の不活性ガスを供給しながら熱処理する特許文献3の方法では、10-12~10-11Ω-1・cm-1(特許文献3における図3のグラフ参照)程度の導電率(1011~1012Ω・cm程度の体積抵抗率)は得られるものの、処理室内に供給する不活性ガスの酸素分圧を1×10-22atmにするには、酸化ジルコニウム(ZrO2)等の固体電解質で構成された高価な酸素ポンプを設置する必要があり、かつ、酸素ポンプで調製される不活性ガス量は少量であるため僅かな枚数のLT結晶しか処理できず、生産コストと生産性に劣る問題を有していた。
一方、基板形状のLT結晶をアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に埋め込んで熱処理(還元処理)する特許文献4の方法においては、所望とする体積抵抗率(導電性)が得られると共に、高価な酸素ポンプを設置する必要がないため生産コストにも優れた利点を有している。しかし、所望される体積抵抗率が低くなる(下記参考例1で例示された7.0×108Ω・cm程度)につれて、上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率を高く設定する必要があり、アルミニウム粉末の比率が20質量%以上になった場合、直径1~5mm程度の黒い点(色むら、すなわち還元むら)が発生し易くなり、生産性を悪化させる問題を有していた。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、所望される体積抵抗率が低い(例えば108Ω・cm程度)場合でも、色むら(還元むら)の無い電気的特性に優れたタンタル酸リチウム基板を安定して製造できるタンタル酸リチウム基板の製造方法を提供することにある。
そこで、本発明者は、アルミニウム粉末の比率を20質量%未満に設定しても、熱処理後におけるタンタル酸リチウム基板の体積抵抗率を低く(例えば108Ω・cm程度)調整できる方法を完成させるため鋭意研究を行ったところ、基板形状のタンタル酸リチウム結晶にパラフィン系鉱物油を吸着させることで達成できることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見により完成されたものである。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
タンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法であって、容器内に充填されたアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶を埋め込み、上記容器を加熱炉内に配置した後、タンタル酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
上記基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶をパラフィン系鉱物油の蒸気に曝して該タンタル酸リチウム結晶に上記パラフィン系鉱物油を吸着させた後、該パラフィン系鉱物油が吸着されたタンタル酸リチウム結晶を上記アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に埋め込むことを特徴とする。
第2の発明は、
第1の発明に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
上記パラフィン系鉱物油の40℃における動粘度が、10mm2/S@40℃以上32mm2/S@40℃以下であることを特徴とする。
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
上記基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶に吸着されたパラフィン系鉱物油の炭素量が、1×10-3mol/cm2~1×10-5mol/cm2であることを特徴とする。
第4の発明は、
第1の発明~第3の発明のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率が20質量%未満であることを特徴とする。
第5の発明は、
第1の発明~第4の発明のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
大気圧雰囲気下の上記加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排することを特徴とする。
第6の発明は、
第5の発明に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法において、
上記不活性ガスがアルゴンガスで構成され、加熱炉内に連続的に給排されるアルゴンガスの流量が0.5~5L/minであることを特徴とする。
本発明に係るタンタル酸リチウム基板の製造方法によれば、
基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶にパラフィン系鉱物油を吸着させ、このタンタル酸リチウム結晶をアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に埋め込んでいるため、上記混合粉中に埋め込まれたタンタル酸リチウム結晶が熱処理される際、上記パラフィン系鉱物油が分解して炭素を生成する。
そして、アルミニウム粉末の還元作用と共に生成した炭素の還元作用が加わるため、アルミニウム粉末の比率が20質量%未満に設定されても、タンタル酸リチウム基板の体積抵抗率を低く(例えば108Ω・cm程度)調整でき、色むら(還元むら)の無い電気的特性に優れたタンタル酸リチウム基板を安定して製造することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明は、基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶(基板形状のLT結晶)をアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に埋め込んで熱処理するLT基板の製造方法において、所望される体積抵抗率が低い(例えば108Ω・cm程度)場合においても、直径1~5mm程度の黒い点(還元むら)が発生しないように上記混合粉中に埋め込む前のLT結晶にパラフィン系鉱物油を吸着させたことを特徴とするものである。
以下、本発明に係るLT基板の製造方法について工程毎に説明する。
(A)パラフィン系鉱物油の吸着工程
この工程は、基板形状のLT結晶をパラフィン系鉱物油の蒸気に曝して該LT結晶にパラフィン系鉱物油を吸着させる工程である。尚、鉱物油は、一般に、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖を含む混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものをパラフィン系鉱物油と称している。
そして、本発明に係るパラフィン系鉱物油としては、LT結晶に吸着されることを条件にその種類は任意であり、例えば、40℃における動粘度が10mm2/S@40℃以上32mm2/S@40℃以下のパラフィン系鉱物油を使用することができる。
また、基板形状のLT結晶をパラフィン系鉱物油の蒸気に曝して該LT結晶にパラフィン系鉱物油を吸着させる方法も任意であり、例えば、パラフィン系鉱物油を蒸発させる熱源を有し、蒸発したパラフィン系鉱物油の蒸気にLT結晶を曝して該LT結晶にパラフィン系鉱物油を吸着させる方法が挙げられる。具体的には、四方を板材で囲んだ空間の底部にホットプレート(熱源)を設置し、該ホットプレートにパラフィン系鉱物油を収容すると共に、基板形状のLT結晶をホットプレートの上方側空間に配置した後、ホットプレートを加熱してパラフィン系鉱物油を蒸発させ、パラフィン系鉱物油の蒸気にLT結晶を曝して吸着させる方法が例示される。
また、上記LT結晶におけるパラフィン系鉱物油の吸着量としては、吸着されたパラフィン系鉱物油に含まれる炭素量が1×10-3mol/cm2~1×10-5mol/cm2、好ましくは1×10-4mol/cm2~1×10-5mol/cm2に相当する量である。尚、上記LT結晶にパラフィン系鉱物油を吸着させない場合、熱重量・質量分析装置を用いて測定される炭素は確認されなかった。
尚、下記(C)熱処理工程においてLT結晶が熱処理される際、LT結晶に吸着されたパラフィン系鉱物油は分解されて炭素を生成し、強力な還元剤となる。そして、LT結晶表面にパラフィン系鉱物油が均一に吸着されているため、LT結晶は均一に還元され、上述した還元むらを未然に防止することが可能となる。
(B)アルミニウム粉と酸化アルミニウム粉の混合工程
この工程は、アルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)を混合する工程である。混合するAl粉の比率は20質量%未満が好ましく、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5~15質量%の範囲である。
Al粉の比率を20質量%以上とした場合、得られるLT基板の充分な導電性(体積抵抗率)が達成される反面、Al粉比率の上昇に伴い、直径1~5mm程度の黒い点(色むら不良)の発生率を増加させる傾向が確認され、生産性が悪化してしまう。
そして、本発明においては、Al粉の比率が20質量%未満であっても、上記LT結晶におけるパラフィン系鉱物油の吸着量を適宜調整することにより、LT基板の体積抵抗率を所望とする値に低下させることが可能となる。
(C)LT結晶の熱処理工程
この工程は、アルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)の混合粉中に基板形状のLT結晶を埋め込んで熱処理する工程である。
熱処理温度はLT結晶のキュリー温度未満(約600℃未満)とし、熱処理の雰囲気は、真空条件または不活性ガスの封止条件でよく、あるいは、大気圧雰囲気下で不活性ガスを加熱炉内に連続的に給排する雰囲気でもよい。尚、真空条件または不活性ガスの封止条件とした場合、加熱炉内の熱が一か所に溜まって還元むら(色むら)を起こすことがあるため、熱処理の雰囲気としては、大気圧雰囲気下で不活性ガスを加熱炉内に連続的に給排する雰囲気が好ましい。不活性ガスを加熱炉内に連続的に給排することで、炉内において熱を均一にすることができる。不活性ガスとしては、アルゴンガスや窒素ガス等を使用できる。加熱炉内に連続的に給排される不活性ガスの流量は、不活性ガスがアルゴンガスである場合、0.5~5L/minであることが好ましい。
ところで、基板形状のLT結晶が熱処理される際、上述したようにLT結晶に吸着されたパラフィン系鉱物油が分解して炭素を生成し、強力な還元剤となる。
そして、LT結晶におけるパラフィン系鉱物油の吸着量(すなわち炭素量)が増えるに伴い、得られるLT基板の体積抵抗率は低下する傾向にある。
従って、上記(A)パラフィン系鉱物油の吸着工程におけるパラフィン系鉱物油の吸着量を適宜調整することにより、混合粉中のAl粉比率を従前より低く設定でき、これにより混合粉中のAl粉比率を20質量%以上に設定する必要がなくなることから、直径1~5mm程度の黒い点(色むら不良)の発生を抑制することが可能となる。
以下、本発明の実施例について参考例も挙げて具体的に説明するが、本発明の技術範囲は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
[加熱炉の構成]
実施例と参考例で用いられる加熱炉には給気口と排気口が設けられ、一般的に市販されているアルゴンガス(酸素分圧は1×10-6atm程度)が給気口を介し加熱炉内に連続的に供給されると共に、排気口を介してアルゴンガス(不活性ガス)が加熱炉外へ連続的に排気されて、加熱炉内は大気圧雰囲気下に調整されている。尚、加熱炉内に給排されるアルゴンガスの流量は2L/minに設定されている。
[LT結晶の育成とインゴットの加工等]
コングルエント組成の原料を用い、チョクラルスキー法により、直径が4インチであるLT結晶の育成を行った。育成雰囲気は、酸素濃度約3%の窒素-酸素混合ガスである。得られたLT結晶のインゴットは透明な淡黄色であった。
LT結晶のインゴットに対し、熱歪み除去のための熱処理と単一分極とするためのポーリング処理を行った後、外周研削、スライス、および研磨を行って42゜RY(Rotated Y axis)の基板形状に加工されたLT結晶とした。
得られた42゜RYのLT結晶は、無色透明で、体積抵抗率は1×1015Ω・cm、キュリー温度は603℃であった。
[実施例1]
30cm四方を塩ビ板により囲んで形成した空間の底部にホットプレート(熱源)を設置し、40℃における動粘度が10mm2/S@40℃のパラフィン系鉱物油(コスモ石油ルブリカンツ製 コスモSP10)をホットプレートに収容し、かつ、基板形状のLT結晶をホットプレートの上方側空間に配置した。
そして、ホットプレートを250℃まで加熱してパラフィン系鉱物油を蒸発させ、上記空間内においてLT結晶をパラフィン系鉱物油の蒸気に曝してパラフィン系鉱物油を吸着させた。尚、パラフィン系鉱物油の吸着量は、熱重量・質量分析装置を用い測定されたパラフィン系鉱物油に含まれる炭素量が1×10-5mol/cm2に相当する量であった。
次いで、平均粒径52μmの酸化アルミニウム粉末(Al23粉)を90質量%と平均粒径100μmのアルミニウム粉末(Al粉)を10質量%の割合で混合して混合粉を調製し、該混合粉をステンレス製容器に充填すると共に、Al23粉とAl粉の混合粉中に上記パラフィン系鉱物油が吸着されたLT結晶を埋め込み、かつ、LT結晶が埋め込まれたステンレス製容器を給気口と排気口を有する上記加熱炉内に配置した。尚、平均粒径は、Al23粉とAl粉をそれぞれレーザー回折式粒度分布計で測定した値である。
そして、一般的に市販されているアルゴンガスを流量2L/minの条件で大気圧雰囲気下の上記加熱炉内に給排し、580℃、20時間の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
更に、基板の状態に加工された200枚のLT結晶について同様の熱処理を行い、処理後のLT基板の体積抵抗率を測定し、かつ、色むらの発生率を調査した。
尚、体積抵抗率は、JIS K-6911に準拠した3端子法により測定している。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は9.0×108Ω・cm(200枚の基板の平均値、以下同様)で、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。これ等結果を表1に示す。
[実施例2]
LT結晶に吸着されたパラフィン系鉱物油(動粘度が10mm2/S@40℃のパラフィン系鉱物油)の吸着量について、該パラフィン系鉱物油に含まれる炭素量が1×10-4mol/cm2に相当する量とした以外は実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は5.0×108Ω・cmで、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。
これ等結果を表1に示す。
[実施例3]
30cm四方を塩ビ板により囲んで形成した空間の底部にホットプレート(熱源)を設置し、40℃における動粘度が15mm2/S@40℃のパラフィン系鉱物油(コスモ石油ルブリカンツ製 コスモSP15)をホットプレートに収容し、かつ、基板形状のLT結晶をホットプレートの上方側空間に配置した。
そして、ホットプレートを350℃まで加熱してパラフィン系鉱物油を蒸発させ、空間内においてLT結晶をパラフィン系鉱物油の蒸気に曝してパラフィン系鉱物油(動粘度が15mm2/S@40℃のパラフィン系鉱物油)を吸着させた以外は実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。尚、吸着量は、パラフィン系鉱物油に含まれる炭素量が1×10-5mol/cm2に相当する量であった。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は9.0×108Ω・cmで、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。
これ等結果を表1に示す。
[実施例4]
LT結晶に吸着されたパラフィン系鉱物油(動粘度が15mm2/S@40℃のパラフィン系鉱物油)の吸着量について、該パラフィン系鉱物油に含まれる炭素量が1×10-4mol/cm2に相当する量とした以外は実施例3と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は5.0×108Ω・cmで、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。
これ等結果を表1に示す。
[実施例5]
30cm四方を塩ビ板により囲んで形成した空間の底部にホットプレート(熱源)を設置し、40℃における動粘度が22mm2/S@40℃のパラフィン系鉱物油(コスモ石油ルブリカンツ製 コスモSP22)をホットプレートに収容し、かつ、基板形状のLT結晶をホットプレートの上方側空間に配置した。
そして、ホットプレートを500℃まで加熱してパラフィン系鉱物油を蒸発させ、空間内においてLT結晶をパラフィン系鉱物油の蒸気に曝してパラフィン系鉱物油(動粘度が22mm2/S@40℃のパラフィン系鉱物油)を吸着させた以外は実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。尚、吸着量は、パラフィン系鉱物油に含まれる炭素量が10-5mol/cm2に相当する量であった。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は9.0×108Ω・cmで、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。
[実施例6]
LT結晶に吸着されたパラフィン系鉱物油(動粘度が22mm2/S@40℃のパラフィン系鉱物油)の吸着量について、該パラフィン系鉱物油に含まれる炭素量が10-4mol/cm2に相当する量とした以外は実施例5と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は5.0×108Ω・cmで、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。
これ等結果を表1に示す。
[実施例7]
30cm四方を塩ビ板により囲んで形成した空間の底部にホットプレート(熱源)を設置し、40℃における動粘度が32mm2/S@40℃のパラフィン系鉱物油(コスモ石油ルブリカンツ製 コスモSP32)をホットプレートに収容し、かつ、基板形状のLT結晶をホットプレートの上方側空間に配置した。
そして、ホットプレートを600℃まで加熱してパラフィン系鉱物油を蒸発させ、空間内においてLT結晶をパラフィン系鉱物油の蒸気に曝してパラフィン系鉱物油(動粘度が32mm2/S@40℃のパラフィン系鉱物油)を吸着させた以外は実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。尚、吸着量は、パラフィン系鉱物油に含まれる炭素量が1×10-5mol/cm2に相当する量であった。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は9.0×108Ω・cmで、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。
これ等結果を表1に示す。
[実施例8]
LT結晶に吸着されたパラフィン系鉱物油(動粘度が32mm2/S@40℃のパラフィン系鉱物油)の吸着量について、該パラフィン系鉱物油に含まれる炭素量が10-4mol/cm2に相当する量とした以外は実施例7と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は5.0×108Ω・cmで、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。
これ等結果を表1に示す。
[実施例9]
平均粒径52μmの酸化アルミニウム粉末(Al23粉)を95質量%と平均粒径100μmのアルミニウム粉末(Al粉)を5質量%の割合で混合して混合粉を調製した以外は実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は1.3×109Ω・cmで、色むら発生率は2%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。
これ等結果を表1に示す。
[実施例10]
平均粒径52μmの酸化アルミニウム粉末(Al23粉)を85質量%と平均粒径100μmのアルミニウム粉末(Al粉)を15質量%の割合で混合して混合粉を調製した以外は実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は1.0×108Ω・cmで、色むら発生率は4%であり、電気的特性に優れたLT基板を得ることができた。
これ等結果を表1に示す。
[参考例1]
基板形状のLT結晶にパラフィン系鉱物油を吸着させず、かつ、平均粒径52μmの酸化アルミニウム粉末(Al23粉)を80質量%と平均粒径100μmのアルミニウム粉末(Al粉)を20質量%の割合で混合して混合粉を調製した以外は実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
尚、パラフィン系鉱物油が吸着されていないLT結晶の炭素量について、実施例1と同様、熱重量・質量分析装置で測定したが炭素は確認されなかった。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は7.0×108Ω・cmで電気的特性に優れていたが、色むら発生率が17%であり、直径1~5mm程度の黒い点(色むら不良)が発生した。これ等結果を表1に示す。
[参考例2]
基板形状のLT結晶にパラフィン系鉱物油を吸着させていない点を除き実施例1と同様の条件によりLT結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
尚、パラフィン系鉱物油が吸着されていないLT結晶の炭素量について、参考例1と同様、熱重量・質量分析装置で測定したが炭素は確認されなかった。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLT基板の体積抵抗率は1.5×109Ω・cmであり、Al粉混合割合が5質量%の実施例9と同様の電気的特性を有していたが、色むら発生率は2.5%であり、実施例9より劣っていた。これ等結果を表1に示す。
Figure 0007271845000001
[確 認]
(1)基板形状のLT結晶にパラフィン系鉱物油を吸着させた実施例1~8において、
実施例1(炭素量:1×10-5mol/cm2、体積抵抗率:9.0×108Ω・cm)
実施例2(炭素量:1×10-4mol/cm2、体積抵抗率:5.0×108Ω・cm)
実施例3(炭素量:1×10-5mol/cm2、体積抵抗率:9.0×108Ω・cm)
実施例4(炭素量:1×10-4mol/cm2、体積抵抗率:5.0×108Ω・cm)
実施例5(炭素量:1×10-5mol/cm2、体積抵抗率:9.0×108Ω・cm)
実施例6(炭素量:1×10-4mol/cm2、体積抵抗率:5.0×108Ω・cm)
実施例7(炭素量:1×10-5mol/cm2、体積抵抗率:9.0×108Ω・cm)
実施例8(炭素量:1×10-4mol/cm2、体積抵抗率:5.0×108Ω・cm)
なるデータから、LT結晶に吸着されたパラフィン系鉱物油に含まれる炭素量が多い程、体積抵抗率は小さくなっている。
このことから、LT結晶の還元には該LT結晶に吸着されたパラフィン系鉱物油に含まれる炭素が関与していることが確認される。
(2)また、参考例1(Al粉が20質量%、体積抵抗率:7.0×108Ω・cm)と略同等の体積抵抗率を有する実施例1、3、5、7(体積抵抗率:9.0×108Ω・cm)と、実施例2、4、6、8(体積抵抗率:5.0×108Ω・cm)等から、Al粉の比率が20質量%未満(実施例1~8:10質量%)であっても参考例1と同等の体積抵抗率が得られる。
従って、Al粉の比率を20質量%以上に設定する必要がないため、直径1~5mm程度の黒い点(色むら不良)の発生を抑制できることが確認される。
(3)他方、LT結晶にパラフィン系鉱物油が吸着されておらず、かつ、Al粉の比率が10質量%である参考例2は、LT基板の体積抵抗率が1.5×109Ω・cmと高い数値になっており、体積抵抗率を低く(例えば108Ω・cm程度)するにはAl粉の比率を20質量%以上(参考例1参照)に設定する必要があることも確認される。
本発明方法によれば、所望される体積抵抗率が低い(例えば108Ω・cm程度)場合でも、色むら(還元むら)の無い電気的特性に優れたタンタル酸リチウム基板を製造できるため、表面弾性波素子用の基板材料に用いられるタンタル酸リチウム基板を安定して提供できる産業上の利用可能性を有している。

Claims (6)

  1. タンタル酸リチウム結晶を用いてタンタル酸リチウム基板を製造する方法であって、容器内に充填されたアルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶を埋め込み、上記容器を加熱炉内に配置した後、タンタル酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してタンタル酸リチウム基板を製造する方法において、
    上記基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶をパラフィン系鉱物油の蒸気に曝して該タンタル酸リチウム結晶に上記パラフィン系鉱物油を吸着させた後、該パラフィン系鉱物油が吸着されたタンタル酸リチウム結晶を上記アルミニウム粉末と酸化アルミニウム粉末との混合粉中に埋め込むことを特徴とするタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  2. 上記パラフィン系鉱物油の40℃における動粘度が、10mm2/S@40℃以上32mm2/S@40℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  3. 上記基板の状態に加工されたタンタル酸リチウム結晶に吸着されたパラフィン系鉱物油の炭素量が、1×10-3mol/cm2~1×10-5mol/cm2であることを特徴とする請求項1または2に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  4. 上記混合粉中におけるアルミニウム粉末の比率が20質量%未満であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  5. 大気圧雰囲気下の上記加熱炉内に不活性ガスを連続的に給排することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
  6. 上記不活性ガスがアルゴンガスで構成され、加熱炉内に連続的に給排されるアルゴンガスの流量が0.5~5L/minであることを特徴とする請求項5に記載のタンタル酸リチウム基板の製造方法。
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