JP7436753B2 - 車両用アクスル装置 - Google Patents

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Description

本開示は、例えばホイールローダ、ホイール式油圧ショベル等のホイール式建設機械に好適に用いられる車両用アクスル装置に関する。
ホイール式建設機械の代表例としては、例えばホイールローダが知られている。ホイールローダは、左右の車輪を駆動するアクスル装置を備えた車体と、車体に取付けられた作業装置とを備えている。車体のアクスル装置には差動機構が設けられ、差動機構は、左右の車輪(駆動輪)に作用する負荷に応じて、駆動源からの駆動トルクを左右のアクスル軸に分配する。
ホイールローダに搭載された差動機構には、通常、差動制限装置(Limited Slip Differential)が設けられている。この差動制限装置は、駆動トルクの大きさに応じて差動機構の動作を制限することにより、ホイールローダの走行性能と旋回性能を両立させる(特許文献1)。このようなトルク比例式の差動制限装置は、駆動トルクが大きくなるのに応じて差動が制限され、駆動トルクが小さくなるのに応じて差動の制限が解除される。従って、トルク比例式の差動制限装置では、駆動トルクの大きさに応じて差動トルク(左右のアクスル軸のトルク差)が一義的に決定される。
ホイールローダは、作業現場の路面状態や作業内容によって走行状態が大きく変化する。このため、舗装路面を走行することを想定し、差動トルクを予め小さく設定した場合には、ホイールローダの駆動輪がスリップを生じ易くなる、という問題がある。一方、差動トルクが予め大きく設定された場合には、旋回走行時に差動機構の動作が適切に行われず、内外輪差を吸収するためのロス(例えば、車輪の摩耗、操舵力の増加、燃費の低下)が大きくなるという問題がある。
このため、ホイールローダ等のホイール式建設機械は、路面状態や走行状態に応じて差動制限装置による差動トルクを適宜に調整できることが望ましい。差動トルクを可変に調整することができる可変式差動制限装置として、差動機構に摩擦クラッチとアクチュエータとを備えたものが知られている(引用文献2)。この可変式差動制限装置は、アクチュエータによって摩擦クラッチを駆動することにより差動機構の動作が制御され、差動トルクを調整することができる。可変式差動制限装置のアクチュエータとしては、モータの駆動力を用いたもの(引用文献3)、電磁石の電磁力を用いたもの(引用文献4)、空気圧によって動作するピストンの押圧力を用いたもの(引用文献5)、液圧によって動作するピストンの押圧力を用いたもの(引用文献6)等が提案されている。また、ホイールローダに搭載されたブームシリンダおよびバケットシリンダに供給される油圧から前後のアクスル軸に分配される駆動トルクを予測し、差動制限装置の動作を制御するものも提案されている(特許文献7)。
特開昭58-149440号公報 米国特許第6620072号明細書 特開2003-184993号公報 特開平8-25995号公報 実開昭61-140242号公報 特開昭63-106140号公報 特開2010-179696号公報
従来技術による可変式差動制限装置を備えた差動機構は、アクスル軸などの差動制限装置の軸(出力軸)に過大な負荷やトルクが作用し、軸の寿命が低下するのを抑えることを目的としている。このため、例えば液圧によって動作するピストンを備えた差動制限装置では、軸に作用する駆動トルクを予測(把握)し、予測した駆動トルクに応じてピストンがクラッチの動作を制御することにより、差動トルクが調整される。
しかし、軸の駆動トルクを予測するためには、種々のセンサや制御装置が必要となり、かつ、予測した駆動トルクに応じてピストンの動作を制御するための油圧制御回路等が必要となる。このため、差動制限装置を含む差動機構のコストが増大してしまうという問題がある。
本発明の目的は、駆動トルクに応じて機械的に差動トルクを調整できるようにした車両用アクスル装置を提供することにある。
本発明は、左右の車輪がそれぞれ取付けられた左右のアクスル軸と、前記左右のアクスル軸を収容する左右のアクスルチューブ間に設けられ、左右方向に貫通する貫通孔を有する隔壁が左右方向の両側にそれぞれ設けられた中空なデファレンシャルボディと、前記デファレンシャルボディの前記左右の隔壁間に設けられ駆動源の回転力を前記左右のアクスル軸に伝達するデファレンシャル機構とからなり、前記デファレンシャル機構は、前記左右の隔壁の前記貫通孔にそれぞれ取付けられた左右のリテーナに回転可能に支持され前記駆動源により回転するデファレンシャルケースと、前記デファレンシャルケース内に設けられ前記デファレンシャルケースと一緒に回転するピニオンギヤと、前記デファレンシャルケース内に設けられ前記ピニオンギヤに噛合する左右のサイドギヤと、前記左右のサイドギヤに接続され前記デファレンシャルケースの回転を前記左右のアクスル軸に伝達する左右の伝達軸とを備えてなる車両用アクスル装置において、前記デファレンシャルケース内には、前記左右のサイドギヤのうち一方のサイドギヤの外周側にスプライン結合された複数の回転ディスクと、前記複数の回転ディスク間に配置され前記デファレンシャルケースに対して回転不能でかつ左右方向に移動可能な複数の非回転ディスクとが設けられ、前記左右のリテーナのうち前記一方のサイドギヤ側に位置する一方のリテーナと前記回転ディスクとの間には、前記回転ディスクを前記非回転ディスクに向けて押圧するプレッシャリングが設けられ、前記一方のリテーナ側には、前記プレッシャリングに荷重を付加することにより前記回転ディスクと前記非回転ディスクとを接触させて前記左右の伝達軸を結合させるアクチュエータが設けられ、前記デファレンシャルケースと前記一方のサイドギヤと前記プレッシャリングとの間には、前記ピニオンギヤと前記一方のサイドギヤとの噛合いによる反力を前記プレッシャリングに伝達し、前記アクチュエータから前記プレッシャリングに付加される荷重を制御するレバー部材が設けられていることを特徴としている。
本発明によれば、駆動トルクに比例してピニオンギヤと一方のサイドギヤとの噛合いによる反力が増大するのを利用し、この噛合い反力をレバー部材を介してプレッシャリングに伝達することができる。これにより、アクチュエータからプレッシャリングに付加される荷重が機械的に低下し、駆動トルクが増大するのに応じて機械的に差動トルクを小さくすることができるので、左右のアクスル軸の寿命を延ばすことができる。
実施形態による車両用アクスル装置を備えたホイールローダを示す左側面図である。 フロントアクスル装置を前方から見た外観斜視図である。 フロントアクスル装置の内部構造を示す断面図である。 図3中のデファレンシャル機構を拡大した断面図である。 図4中の第3ケース、右サイドギヤ、プレッシャリング、ピストン、レバー部材等の要部を拡大して示す要部拡大断面図である。 デファレンシャルケースの第1ケースを単体で示す斜視図である。 デファレンシャルケースの第2ケースを単体で示す斜視図である。 デファレンシャルケースの第3ケースを円筒部側から見た斜視図である。 第3ケースを鍔部側から見た斜視図である。 非回転ディスクを単体で示す斜視図である。 押圧プレートを単体で示す斜視図である。 右リテーナを単体で示す斜視図である。 プレッシャリングを単体で示す斜視図である。 ピストンを大径円筒部側から見た斜視図である。 ピストンを小径円筒部側から見た斜視図である。 レバー部材を単体で示す斜視図である。 右サイドギヤとピニオンギヤとの噛合い反力により右サイドギヤ、レバー部材、プレッシャリング等に作用する荷重を示す断面図である。 デファレンシャルボディの右隔壁に右リテーナを取付ける状態を示す右側面図である。 条件1の場合の差動トルクと出力軸合算トルクとの関係を示す特性線図である。 条件1の場合の出力軸トルクと出力軸合算トルクとの関係を示す特性線図である。 条件2の場合の差動トルクと出力軸合算トルクとの関係を示す特性線図である。 条件2の場合の出力軸トルクと出力軸合算トルクとの関係を示す特性線図である。
以下、車両用アクスル装置の実施形態について、ホイールローダに搭載した場合を例に挙げ、図1ないし図22を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施形態では、ホイールローダの走行方向を前後方向とし、ホイールローダの走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
図1において、ホイールローダ1は、後部車体2と、前部車体3と、後車輪4と、前車輪5と、前部車体3の前側に設けられた作業装置6とを含んで構成されている。前部車体3は、後部車体2の前側に左右方向に揺動可能に連結されている。後車輪4は、後部車体2の左右方向の両側に設けられ、前車輪5は、前部車体3の左右方向の両側に設けられている。
後部車体2には、駆動源となるエンジン7、トルクコンバータ8、トランスミッション9、油圧ポンプ(図示せず)等が搭載されている。トランスミッション9は、前後方向に延びたプロペラ軸9Aを介してリヤアクスル装置11に接続され、プロペラ軸9Bを介してフロントアクスル装置12に接続されている。後部車体2の上側には、オペレータが搭乗するキャブ10が設けられている。
リヤアクスル装置11は、後部車体2の下側に設けられている。リヤアクスル装置11は、左右方向に延びて形成され、リヤアクスル装置11の左右方向の両端部には、後車輪4がそれぞれ取付けられている。
フロントアクスル装置12は、前部車体3の下側に設けられている。フロントアクスル装置12は、リヤアクスル装置11と同様に左右方向に延びて形成され、フロントアクスル装置12の左右方向の両端部には、前車輪5がそれぞれ取付けられている。
リヤアクスル装置11とフロントアクスル装置12とは、プロペラ軸9A,9Bの接続位置が異なっている以外は同様に構成されている。このため、本実施形態では、フロントアクスル装置12の構成について詳細に説明し、リヤアクスル装置11の構成の説明は省略する。
フロントアクスル装置12は、プロペラ軸9Bに接続されることにより左右の前車輪5を回転駆動する。図2、図3に示すように、フロントアクスル装置12は、後述のケーシング13、左アクスル軸19L、右アクスル軸19R、デファレンシャル機構20、左側の遊星歯車減速機構54L、右側の遊星歯車減速機構54R、左側のブレーキ機構58L、右側のブレーキ機構58R等を含んで構成されている。
ケーシング13は、フロントアクスル装置12の外殻を構成している。ケーシング13は、左右方向の中間部に位置する中空なデファレンシャルボディ14と、デファレンシャルボディ14の左側に位置する左アクスルチューブ15Lと、デファレンシャルボディ14の右側に位置する右アクスルチューブ15Rとを備えている。デファレンシャルボディ14の内部には、デファレンシャル機構20、左右のブレーキ機構58L,58Rが収容されている。左アクスルチューブ15L内には、左アクスル軸19Lが回転可能に支持され、右アクスルチューブ15R内には、右アクスル軸19Rが回転可能に支持されている。左右のアクスル軸19L,19Rの先端側には、それぞれ前車輪5が取付けられている。
図2ないし図4に示すように、デファレンシャルボディ14は、左右方向(軸方向)に延びる軸線X-Xを中心とした円筒状の筒体からなっている。デファレンシャルボディ14は、その内部に後述する左隔壁14Bおよび右隔壁14Cが一体形成された1ピース構造を有している。デファレンシャルボディ14の左右方向の両端は、それぞれ開口端14Aとなっている。デファレンシャルボディ14の左側には、左隔壁14Bが一体に設けられ、デファレンシャルボディ14の右側には、右隔壁14Cが一体に設けられている。これら左右の隔壁14B,14Cは、それぞれ開口端14Aより奥まった部位の内周面から径方向内向きに張出している。左右の隔壁14B,14Cには、それぞれ開口端14Aよりも小径な貫通孔14Dが左右方向(軸方向)に貫通して形成されている。
デファレンシャルボディ14の内部は、左右の隔壁14B,14C間に位置するギヤ室14Eと、ギヤ室14Eの左側に配置された左ブレーキ室14Fと、ギヤ室14Eの右側に配置された右ブレーキ室14Gとに仕切られている。ギヤ室14Eにはデファレンシャル機構20が収容され、左ブレーキ室14Fにはブレーキ機構58Lが収容され、右ブレーキ室14Gにはブレーキ機構58Rが収容されている。また、デファレンシャルボディ14の後側(リヤアクスル装置11側)には、トランスミッション9に向けて突出する突出筒14Hが設けられている。突出筒14Hはギヤ室14Eに開口し、突出筒14H内には、後述する入力軸17が回転可能に支持されている。
左アクスルチューブ15Lおよび右アクスルチューブ15Rの基端側は、それぞれ短尺な円筒部15Aとなっている。これら左右の円筒部15Aは、デファレンシャルボディ14の左右方向の両端と等しい外径寸法を有している。左右の円筒部15Aの内部は、それぞれ減速機室15Bとなり、左側の減速機室15B内には遊星歯車減速機構54Lが収容され、右側の減速機室15B内には遊星歯車減速機構54Rが収容されている。左右のアクスルチューブ15L,15Rの先端側は、それぞれ角筒状をなして円筒部15Aから左右方向の外側に延びている。左右のアクスルチューブ15L,15Rの円筒部15Aは、複数のボルト16を用いてデファレンシャルボディ14の開口端14Aに取付けられている。左右のアクスルチューブ15L,15Rは、デファレンシャルボディ14から左右方向へと縮径しつつ延在している。
左右のアクスルチューブ15L,15Rの上面側には、それぞれ矩形状をなすマウント部15Cが円筒部15Aに隣接して設けられている。これら左右のマウント部15Cは、ホイールローダ1の前部車体3に取付けられている。即ち、フロントアクスル装置12は、左右のアクスルチューブ15L,15Rのマウント部15C間にデファレンシャル機構20、左右の遊星歯車減速機構54L,54R、左右のブレーキ機構58L,58Rが設けられたインボードタイプのアクスル装置となっている。なお、リヤアクスル装置11は、アクスルサポート11Aを介して後部車体2に取付けられている(図1参照)。
入力軸17は、デファレンシャルボディ14の突出筒14H内に2個の軸受18A,18Bを介して回転可能に設けられている。入力軸17の一端は突出筒14Hの外部に突出し、この一端には接続フランジ17Aが設けられている。接続フランジ17Aは、プロペラ軸9Bに接続される。入力軸17の他端はデファレンシャルボディ14のギヤ室14E内に突出し、この他端にはベベルギヤからなるドライブピニオン17Bが形成されている。ドライブピニオン17Bは、後述のリングギヤ30に噛合している。
左アクスル軸19Lは、左アクスルチューブ15L内を軸方向に延びて設けられている。右アクスル軸19Rは、右アクスルチューブ15R内を軸方向に延びて設けられている。これら左右のアクスル軸19L,19Rは、軸線X-X上に配置されている。左アクスル軸19Lの基端側は、遊星歯車減速機構54Lのキャリア57にスプライン結合されている。左アクスル軸19Lの先端側は左アクスルチューブ15Lから突出し、その先端部には左側の前車輪5が取付けられている。右アクスル軸19Rの基端側は、遊星歯車減速機構54Rのキャリア57にスプライン結合されている。右アクスル軸19Rの先端側は右アクスルチューブ15Rから突出し、その先端部には右側の前車輪5が取付けられている。
次に、本実施形態によるデファレンシャル機構20について説明する。
デファレンシャル機構20は、デファレンシャルボディ14のギヤ室14E内に設けられている。デファレンシャル機構20は、駆動源となるエンジン7の駆動力(回転力)を左右のアクスル軸19L,19Rを介して左右の前車輪5に分配して伝達する。ここで、デファレンシャル機構20は、状況に応じて一時的にロック状態(デフロック状態)となる差動制限付きのデファレンシャル機構(リミテッドスリップデファレンシャル機構)によって構成されている。このデファレンシャル機構20は、後述するデファレンシャルケース23、リングギヤ30、複数のピニオンギヤ33、左サイドギヤ34、右サイドギヤ35、左伝達軸36、右伝達軸37、複数の回転ディスク38、複数の非回転ディスク39、ピストン46、複数のレバー部材53等を含んで構成されている。
デファレンシャルボディ14を構成する左隔壁14Bの貫通孔14Dには、鍔部21Aを有する円筒状の左リテーナ21が取付けられている。左リテーナ21の鍔部21Aは、ボルト22を用いて左隔壁14Bに固定されている。また、デファレンシャルボディ14を構成する右隔壁14Cの貫通孔14Dには、後述する右リテーナ41が取付けられている。右リテーナ41はボルト22を用いて右隔壁14Cに固定されている。
デファレンシャルケース23は、デファレンシャルボディ14のギヤ室14E内に設けられている。デファレンシャルケース23は、左リテーナ21と右リテーナ41とに、それぞれ軸受24A,24Bを介して軸線X-X上に回転可能に支持されている。デファレンシャルケース23は、デファレンシャル機構20の外殻を形成し、第1ケース25、第2ケース26、第3ケース27によって構成されている。
図4および図6に示すように、第1ケース25は、小径円筒部25Aと大径円筒部25Bとを有する段付円筒体として形成されている。第1ケース25の中心部には、左右方向に貫通する軸挿通孔25Cが形成されている。小径円筒部25Aと大径円筒部25Bとの間には、大径な円板状の鍔部25Dが設けられている。小径円筒部25Aは、軸受24Aを介して左リテーナ21に支持されている。鍔部25Dには、複数のボルト挿通孔25Eが全周に亘って形成されている。大径円筒部25Bの軸方向端面25Fには、複数のねじ穴(雌ねじ穴)25Gが全周に亘って形成されている。また、大径円筒部25Bの軸方向端面25Fには、半円形状の凹部25Hが、90°の角度間隔をもって4個形成されている。
図4および図7に示すように、第2ケース26は、小径円筒部26Aと大径円筒部26Bとを有する中空な段付円筒体として形成されている。小径円筒部26Aは、第1ケース25の大径円筒部25Bと等しい外径寸法および肉厚を有している。小径円筒部26Aには、左右方向に貫通する複数のボルト挿通孔26Cが全周に亘って形成されている。これら複数のボルト挿通孔26Cは、第1ケース25のねじ穴25Gに対応している。小径円筒部26Aの軸方向端面26Dには、半円形状の凹部26Eが、90°の角度間隔をもって4個形成されている。これら複数の凹部26Eは、第1ケース25の凹部25Hに対応している。大径円筒部26Bの軸方向端面26Fには、複数のねじ穴26Gが全周に亘って形成されている。また、軸方向端面26Fには、矩形状をなす浅底の係合凹部26Hが、90°の角度間隔をもって4個形成されている。さらに、大径円筒部26Bの内周面26Kには、軸方向に延びる断面半円形状の凹溝26Lが、均等な角度間隔をもって複数個(例えば4個)形成されている。これら複数の凹溝26Lには、後述する非回転ディスク39の突起部39Aが係合する。
第3ケース27は、第1ケース25とは左右方向の反対側に位置して第2ケース26に取付けられている。図4、図8および図9に示すように、第3ケース27は、円筒部27Aと、円筒部27Aよりも大径な円板状の鍔部27Bとを有している。鍔部27Bは、第2ケース26の大径円筒部26Bよりも僅かに大きな外径寸法を有し、鍔部27Bの外周縁は、第2ケース26の大径円筒部26Bに外周側から嵌合している。第3ケース27の中心部には、軸方向に貫通する軸挿通孔27Cが形成されている。円筒部27Aは、軸受24Bを介して右リテーナ41に支持されている。鍔部27Bには、複数のボルト挿通孔27Dが全周に亘って形成されている。これら複数のボルト挿通孔27Dは、第2ケース26のねじ穴26Gに対応している。また、鍔部27Bには、ボルト挿通孔27Dよりも小径な4個のねじ孔27Eが、90°の角度間隔をもって形成されている。これら4個のねじ孔27Eは、後述するプレッシャリング43のピン挿通孔43Bに対応している。鍔部27Bのうちボルト挿通孔27Dよりも径方向内側に位置する部位には、軸方向に貫通する複数(例えば8個)の矩形孔27Fが形成されている。これら複数の矩形孔27Fには、プレッシャリング43の矩形状突起43Dが移動可能に挿嵌される。矩形孔27Fのうち90°の角度間隔で配置された4個の矩形孔27Fには、円筒部27Aの中心に向けて延びるレバー部材収容溝27Gが連通して形成されている。レバー部材収容溝27G内には、レバー部材53が収容される。
第2ケース26のボルト挿通孔26Cには、ボルト28が挿通される。ボルト28は、第1ケース25のねじ穴25Gに螺着される。これにより、第1ケース25に対して第2ケース26が固定される。このとき、第1ケース25の軸方向端面25Fと第2ケース26(小径円筒部26A)の軸方向端面26Dとが当接する。第1ケース25の凹部25Hと第2ケース26の凹部26Eとの間には、後述するスパイダ32の軸32Aが係止される。また、第3ケース27のボルト挿通孔27Dには、それぞれボルト29が挿通される。ボルト29は、第2ケース26のねじ穴26Gに螺着される。これにより、第2ケース26に対して第3ケース27が固定される。このようにして、第1ケース25、第2ケース26、第3ケース27からなるデファレンシャルケース23が組立てられる。デファレンシャルケース23の内部には、スパイダ32、複数のピニオンギヤ33、左右のサイドギヤ34,35が配置される。
リングギヤ30は、デファレンシャルボディ14のギヤ室14E内でデファレンシャルケース23に取付けられている。リングギヤ30は環状のベベルギヤによって構成されている。リングギヤ30は、第1ケース25のボルト挿通孔25Eに挿通された複数のボルト31により、第1ケース25の鍔部25Dに固定されている。リングギヤ30は、入力軸17のドライブピニオン17Bに噛合している。従って、エンジン7の回転は、トランスミッション9を介して入力軸17に伝達され、ドライブピニオン17Bとリングギヤ30とが噛合することにより、デファレンシャルケース23が回転する。
スパイダ32は、デファレンシャルケース23内に設けられている。スパイダ32は、90°の角度間隔をもって十字状に組合された4本の軸32Aを有している。これら4本の軸32Aの先端側は、デファレンシャルケース23を構成する第1ケース25の凹部25Hと第2ケース26の凹部26Eとの間に挟持されている。従って、スパイダ32は、デファレンシャルケース23と一体に回転する。
複数(4個)のピニオンギヤ33は、スパイダ32に設けられた4本の軸32Aに、それぞれ回転可能に支持されている。4個のピニオンギヤ33は、それぞれベベルギヤからなり、スパイダ32によって一体化されている。ピニオンギヤ33は、デファレンシャルケース23内で左サイドギヤ34および右サイドギヤ35に噛合している。
左サイドギヤ34と右サイドギヤ35は、それぞれデファレンシャルケース23内に設けられている。これら左右のサイドギヤ34,35は、スパイダ32を挟んで左右方向で対をなしている。本実施形態では、右サイドギヤ35が、左右のサイドギヤ34,35のうち一方のサイドギヤを構成している。左右のサイドギヤ34,35は、それぞれベベルギヤからなり、スパイダ32に支持された4個のピニオンギヤ33に噛合している。左サイドギヤ34と第1ケース25との間には、第1ケース25の摩耗を低減するスラストプレート34Aが設けられている。右サイドギヤ35と第3ケース27との間には、第3ケース27の摩耗を低減するスラストプレート35Aが設けられている。また、右サイドギヤ35の外周面には軸スプライン部35Bが形成され、右サイドギヤ35の内周面には穴スプライン部35Cが形成されている。
左伝達軸36は、左サイドギヤ34に接続されている。右伝達軸37は、右サイドギヤ35に接続されている。左伝達軸36および右伝達軸37は、軸線X-X上に対をなして配置されている。左伝達軸36は、デファレンシャルケース23の回転を遊星歯車減速機構54Lを介して左アクスル軸19Lに伝達し、右伝達軸37は、デファレンシャルケース23の回転を遊星歯車減速機構54Rを介して右アクスル軸19Rに伝達する。
左伝達軸36の基端側は、左サイドギヤ34の内周側にスプライン結合されている。左伝達軸36は、デファレンシャルボディ14の左隔壁14Bを通じて左アクスルチューブ15L内へと延びている。左伝達軸36の先端には、遊星歯車減速機構54Lを構成するサンギヤ36Aが一体に形成されている。一方、右伝達軸37の基端側には軸スプライン部37Aが設けられ、軸スプライン部37Aは、右サイドギヤ35の穴スプライン部35Cにスプライン結合されている。右伝達軸37は、デファレンシャルボディ14の右隔壁14Cを通じて右アクスルチューブ15R内へと延び、右伝達軸37の先端には、遊星歯車減速機構54Rを構成するサンギヤ37Bが一体に形成されている。
デファレンシャルケース23を構成する第2ケース26の内周面26Kと、右サイドギヤ35の軸スプライン部35Bとの間には、複数の回転ディスク38と、複数の非回転ディスク39とが設けられている。これら複数の回転ディスク38と複数の非回転ディスク39とは、それぞれ環状の板体からなり、軸方向で交互に重なり合うように配置されている。
回転ディスク38は、内周側が右サイドギヤ35の軸スプライン部35Bにスプライン結合されている。従って、回転ディスク38は、右サイドギヤ35の軸方向に移動可能な状態で、右サイドギヤ35と共にデファレンシャルケース23に対して回転可能となっている。図10に示すように、非回転ディスク39は、外周側に90°の角度間隔をもって径方向外側に突出する4個の半円形状の突起部39Aが形成されている。これら複数の突起部39Aは、第2ケース26の内周面26Kに形成された凹溝26Lにそれぞれ係合している。従って、非回転ディスク39は、デファレンシャルケース23に対して回転不能な状態で、デファレンシャルケース23の軸方向に移動可能に保持されている。
押圧プレート40は、デファレンシャルケース23内に位置して第3ケース27と非回転ディスク39との間に設けられている。図11に示すように、押圧プレート40は環状の板体からなり、押圧プレート40の外周側には、90°の角度間隔をもって径方向外側に突出する4個の半円形突出部40Aが設けられている。これら4個の半円形突出部40Aは、第2ケース26の凹溝26Lに係合している。従って、押圧プレート40は、凹溝26Lに沿って軸方向に移動可能な状態で、デファレンシャルケース23と一体に回転する。また、押圧プレート40の外周側には、半円形突出部40Aとは異なる位置に、90°の角度間隔をもって径方向外側に突出する4個の矩形状突出部40Bが設けられている。これら4個の矩形状突出部40Bは、第2ケース26の係合凹部26Hに係合(当接)することにより、押圧プレート40の回転ディスク38に接近する方向への移動量を規制する。
右リテーナ41は、デファレンシャルボディ14を構成する右隔壁14Cの貫通孔14Dに取付けられている。右リテーナ41は、右サイドギヤ35側に位置する一方のリテーナを構成している。図5および図12に示すように、右リテーナ41は、貫通孔14Dに嵌合する段付き円筒状の円筒部41Aと、円筒部41Aよりも大径な鍔部41Bとを有している。右リテーナ41の鍔部41Bには全周に亘って複数のボルト挿通孔41Cが形成されている。ボルト挿通孔41Cにはボルト22が挿通され、ボルト22はデファレンシャルボディ14の右隔壁14Cに設けられたねじ穴14J(図18参照)に螺着される。これにより、右リテーナ41は、円筒部41Aを貫通孔14Dに嵌合させた状態で右隔壁14Cに取付けられている。
右リテーナ41を構成する円筒部41Aの外周面には、2段の段部を有するピストン収容部41Dが形成されている。ピストン収容部41Dは、軸方向に隣接する大径段部41Eと小径段部41Fとからなり、後述するピストン46が取付けられる。大径段部41Eの外周面には環状溝41Gが設けられ、小径段部41Fの外周面には環状溝41Hが設けられている。これらの環状溝41G,41Hには、それぞれOリング42が取付けられ、ピストン46と右リテーナ41(ピストン収容部41D)との間が液密に封止されている。大径段部41Eと小径段部41Fとの境界部に位置するピストン収容部41Dの端面41Jには、全周溝41Kが形成されている。全周溝41Kは、ピストン46との間に後述の油圧室47を形成し、全周溝41Kの底部には後述するリテーナ側油路51Bが開口している。また、全周溝41Kの底部には、複数(例えば4個)のピン穴41Lが設けられている。これらピン穴41Lは、90°の角度間隔をもって配置され、後述するピン48の一端が嵌合する。さらに、右リテーナ41の内周側にはナット41Mが螺合している。ナット41Mは、第3ケース27の円筒部27Aとの間で軸受24Bを軸方向に与圧している。
プレッシャリング43は、押圧プレート40とピストン46との間に設けられている。プレッシャリング43は、ピストン46によって押圧されることにより軸方向に移動し、押圧プレート40を介して回転ディスク38を非回転ディスク39に向けて押圧する。図4および図13に示すように、プレッシャリング43は、第3ケース27の鍔部27Bよりも小径な外径寸法を有する環状体として形成されている。プレッシャリング43の外周側には、90°の角度間隔をもって径方向外側に突出する4個の突出部43Aが設けられている。これら4個の突出部43Aにはピン挿通孔43Bがそれぞれ形成され、ピン挿通孔43Bは、第3ケース27の鍔部27Bに形成されたねじ孔27Eに対応している。
また、プレッシャリング43のうち第3ケース27と軸方向で対面する端面43Cには、第3ケース27の矩形孔27Fと対応する位置に、複数(例えば8個)の矩形状突起43Dが突設されている。これら複数の矩形状突起43Dは、第3ケース27の矩形孔27Fに挿通され、矩形状突起43Dの先端は、押圧プレート40に当接している。矩形状突起43Dの内周側には、それぞれの内周面を先端から端面43Cに向けて切欠くことにより、段付きのレバー部材収容凹部43Eが形成されている。このレバー部材収容凹部43Eには、レバー部材53が収容される(図5参照)。
4本のピン44は、第3ケース27の鍔部27Bに設けられている。ピン44はねじ部44Aを有し、ねじ部44Aは、鍔部27Bのねじ孔27Eに螺着されている。ピン44は、鍔部27Bから右リテーナ41に向けて軸方向に突出し、プレッシャリング43の突出部43Aに設けられたピン挿通孔43Bに挿通される。また、ピン44の外周には止め輪45が取付けられている。従って、プレッシャリング43は、ピン44にガイドされつつ軸方向に移動し、止め輪45によって軸方向に抜止めされている。
アクチュエータとしてのピストン46は、右リテーナ41のピストン収容部41Dに設けられている。図14および図15に示すように、ピストン46は、大径円筒部46Aと、小径円筒部46Bとを有する段付円筒状に形成されている。大径円筒部46Aと小径円筒部46Bとの境界部の内周側には、径方向内側に張出す環状の内径凸部46Cが設けられている。大径円筒部46Aの外径寸法は、右リテーナ41の円筒部41Aの外径寸法と等しく設定され、大径円筒部46Aの内周面46Dは、右リテーナ41の大径段部41Eの外周面に摺動可能に嵌合している。内径凸部46Cの内周面46Eは、右リテーナ41の小径段部41Fの外周面に摺動可能に嵌合している。
このように、右リテーナ41には、円筒部41Aよりも外径寸法が小さな大径段部41Eおよび小径段部41Fからなるピストン収容部41Dが設けられ、ピストン46は、右リテーナ41のピストン収容部41Dに組付けられる。これにより、ピストン46の大径円筒部46Aの外径寸法は、右リテーナ41の円筒部41Aと等しくなっている。従って、右リテーナ41のピストン収容部41Dにピストン46を組付けた状態で、デファレンシャルボディ14の右隔壁14Cに形成された貫通孔14Dにピストン46を挿通することができる。そして、右リテーナ41を右隔壁14Cに固定することにより、ピストン46を、後述のスラスト軸受49を介してプレッシャリング43に当接させることができる。
ピストン46の内径凸部46Cのうち小径円筒部46B側の端面は、環状の押圧面46Fとなっている。押圧面46Fは、プレッシャリング43の端面を押圧して荷重を付加する。内径凸部46Cのうち押圧面46Fとは反対側(大径円筒部46A側)の端面46Gは、右リテーナ41の端面41Jに当接している。これにより、ピストン46の端面46Gと、右リテーナ41(ピストン収容部41D)の端面41Jに形成された全周溝41Kとの間には、全周に亘って環状の油圧室47が形成されている。従って、油圧室47に圧油が供給されることにより、ピストン46が軸方向に移動し、プレッシャリング43に荷重を付加する。
ピストン46の端面46Gには、4個のピン穴46Hが90°の角度間隔をもって形成されている。これらピン穴46Hは、右リテーナ41の全周溝41Kに形成されたピン穴41Lに対応している。右リテーナ41のピン穴41Lには、ピン48の一端が嵌合し、ピストン46のピン穴46Hには、ピン48の他端が嵌合している。これにより、ピストン46は、右リテーナ41のピストン収容部41Dに対して廻止めされた状態で、軸方向に移動可能となっている。一方、ピストン46の押圧面46Fには、4個のピン穴46Jが90°の角度間隔をもって形成されている。
ピストン46の押圧面46Fとプレッシャリング43との間には、環状のスラスト軸受49が設けられている。スラスト軸受49には4本のピン50が挿通され、ピン50はピストン46のピン穴46Jに嵌合している。これにより、スラスト軸受49は、ピストン46に対して径方向に位置決めされると共に、ピストン46に対して廻止めされている。従って、ピストン46は、スラスト軸受49を介してプレッシャリング43を押圧することにより、プレッシャリング43との間での摩擦が抑えられている。
油路51は、デファレンシャルボディ14の右隔壁14Cと右リテーナ41とに設けられ、油圧室47に対して圧油(液圧)を給排する。油路51は、右隔壁14Cに形成された隔壁側油路51Aと、右リテーナ41に形成されたリテーナ側油路51Bとにより構成されている。油路51(隔壁側油路51A)の流入口は、デファレンシャルボディ14の外周面に開口し、油路51(リテーナ側油路51B)の流出口は、右リテーナ41のピストン収容部41Dの端面41Jに形成された全周溝41Kに開口している。隔壁側油路51Aの流入口には油圧源(図示せず)が接続され、この油圧源から吐出した圧油は、隔壁側油路51A、リテーナ側油路51Bを通じて油圧室47に供給される。
右リテーナ41の鍔部41Bのうちデファレンシャルボディ14の右隔壁14Cに当接する端面には、リテーナ側油路51Bを取囲む環状のシール取付溝41Nが形成されている(図12参照)。シール取付溝41Nには、隔壁側油路51Aとリテーナ側油路51Bとの接続部を取囲むようにOリング51Cが取付けられ、このOリング51Cによって、隔壁側油路51Aとリテーナ側油路51Bとの接続部が液密に封止されている。
エア抜き通路52は、デファレンシャルボディ14の右隔壁14Cと右リテーナ41とに設けられている。エア抜き通路52は、右リテーナ41のピストン収容部41Dにピストン46を組付けるときに、油圧室47内のエアを外部に排出するための通路である。図18に示すように、エア抜き通路52は、右隔壁14Cに形成された隔壁側通路52Aと、右リテーナ41に形成されたリテーナ側通路52Bとにより構成されている。エア抜き通路52(リテーナ側通路52B)の一端は、右リテーナ41のピストン収容部41Dに形成された全周溝41Kの底部に開口している。エア抜き通路52(隔壁側通路52A)の他端は、デファレンシャルボディ14の外周面に開口している。これにより、右リテーナ41のピストン収容部41Dにピストン46を組付けるときには、油圧室47内のエアが、リテーナ側通路52Bおよび隔壁側通路52Aを通じて外部に排出され、ピストン46を円滑に組付けることができる。
右リテーナ41の鍔部41Bのうちデファレンシャルボディ14の右隔壁14Cに当接する端面には、リテーナ側通路52Bを取囲む環状のシール取付溝41Pが形成されている。シール取付溝41Pには、隔壁側通路52Aとリテーナ側通路52Bとの接続部を取囲むようにOリング(図示せず)が取付けられ、このOリングによって隔壁側通路52Aとリテーナ側通路52Bとの接続部が気密に封止されている。また、ピストン46を組付けた後には、隔壁側通路52Aの他端は封止栓(図示せず)によって閉塞される。
次に、本実施形態に用いられるレバー部材53について説明する。
レバー部材53は、デファレンシャルケース23の第3ケース27と右サイドギヤ35とプレッシャリング43との間に、複数個(例えば4個)設けられている。図16に示すように、レバー部材53は、長さ方向の一端部53Aが狭幅となり、長さ方向の他端部53Bが広幅となった台形状の板体として形成されている。レバー部材53は、長さ方向の中間部が山形に屈曲し、この長さ方向の中間部53Cは屈曲形状に応じた凸部となっている。図5および図17に示すように、4個のレバー部材53は、第3ケース27の矩形孔27Fにプレッシャリング43の矩形状突起43Dを組合わせた状態で、第3ケース27のレバー部材収容溝27Gとプレッシャリング43のレバー部材収容凹部43Eとに収容されている。
この状態で、レバー部材53の一端部53Aは、レバー部材収容溝27Gに当接(接触)し、レバー部材53の他端部53Bは、レバー部材収容凹部43Eに当接(接触)している。また、レバー部材53の中間部53Cは、右サイドギヤ35のスラストプレート35Aに当接(接触)している。図17に示すように、レバー部材53の一端部53Aがレバー部材収容溝27Gに当接する部位は第1当接部Fとなり、第1当接部Fは、レバー部材53の支点を構成している。レバー部材53の中間部53Cがスラストプレート35Aに当接する部位は第2当接部Eとなり、第2当接部Eは、レバー部材53の力点を構成している。レバー部材53の他端部53Bがレバー部材収容凹部43Eに当接する部位は第3当接部Aとなり、第3当接部Aは、レバー部材53の作用点を構成している。ここで、軸線X-Xと直交する方向における第1当接部Fと第2当接部Eとの間の距離はLeとなる。一方、軸線X-Xと直交する方向における第1当接部Fと第3当接部Aとの間の距離はLaとなり、距離Laは距離Leよりも大きくなる(La>Le)。レバー部材53の第2当接部Eおよび第3当接部Aは、第1当接部Fを支点として軸線X-X方向に移動可能となっている。
ピストン46は、油圧室47に圧油が供給されることにより、この圧油の圧力に応じた荷重Fpをもってプレッシャリング43を押圧プレート40側に押圧しようとする。一方、右サイドギヤ35とピニオンギヤ33との噛合いによる反力(噛合い反力)により、右サイドギヤ35に対し、ピストン46側への荷重Fmが作用する。これにより、レバー部材53の第2当接部Eには、ピストン46側への荷重Feが作用する。右サイドギヤ35が右伝達軸37に沿って軸方向に移動するときには、穴スプライン部35Cと右伝達軸37の軸スプライン部37Aとの間に摩擦力Fs1もしくはFs2が発生する。従って、レバー部材53の第2当接部Eに作用する荷重Feは、摩擦力の方向、即ち、摩擦力がFs1であるかFs2であるかに応じて変化する。
レバー部材53の第2当接部Eに作用した荷重Feは、レバー部材53(他端部53B)の第3当接部Aに対し、ピストン46側への荷重Faを発生させる。この荷重Faは、レバー部材53の第1当接部Fと第2当接部Eとの間の距離Le、および第1当接部Fと第3当接部Aとの間の距離Laに応じた比率で荷重Feが変換された荷重となる。そして、荷重Faは、ピストン46からプレッシャリング43に作用する荷重Fpとは反対方向に作用する。従って、プレッシャリング43(矩形状突起43D)が、押圧プレート40を介して回転ディスク38を押圧する荷重Fenは、ピストン46からプレッシャリング43に作用する荷重Fpに対し、レバー部材53の第3当接部Aに作用する荷重Fa分だけ低下する。即ち、レバー部材53は、右サイドギヤ35とピニオンギヤ33との噛合い反力をプレッシャリング43に伝達することにより、ピストン46からプレッシャリング43に付加される荷重を制御する。
ここで、ピストン46からプレッシャリング43に作用する荷重Fpが、レバー部材53の第3当接部Aに作用する荷重Faよりも大きい場合には、プレッシャリング43は、押圧プレート40側に変位する。このとき、レバー部材53の第3当接部Aは、押圧プレート40側に変位量Daだけ変位し、レバー部材53の第2当接部Eも、押圧プレート40側に変位量Deだけ変位する。この変位量Deは、レバー部材53の第1当接部Fと第2当接部Eとの間の距離Le、および第1当接部Fと第3当接部Aとの間の距離Laに応じた比率で変位量Daが変換された変位量となる。これにより、右サイドギヤ35は、レバー部材53の第2当接部Eに押圧され、ピニオンギヤ33側に変位量Deだけ変位する。
一方、油圧室47への圧油の供給が停止されると、右サイドギヤ35に作用する荷重Fmにより、レバー部材53の第2当接部Eがピストン46側に押圧される。これにより、レバー部材53の第2当接部Eはピストン46側に変位量Deだけ変位し、右サイドギヤ35も、ピストン46側に変位量Deだけ変位する。これにより、レバー部材53の第3当接部Aは、レバー部材53の第2当接部Eの変位に伴ってピストン46側に変位量Daだけ変位する。このように、右サイドギヤ35は、ピニオンギヤ33との噛合い反力と、ピストン46から付加される荷重とに応じて軸方向への変位を繰返す。
油圧室47に圧油が供給され、ピストン46からプレッシャリング43に対して荷重Fpが作用した場合には、プレッシャリング43(矩形状突起43D)から押圧プレート40に対して荷重Fenが作用する。これにより、回転ディスク38と非回転ディスク39とは、押圧プレート40によって押圧され、第2ケース26とピストン46との間で摩擦接触する。これにより、左アクスル軸19Lと右アクスル軸19Rとのトルク差が、回転ディスク38と非回転ディスク39との摩擦接触によって伝達可能なトルク容量以下である場合には、デファレンシャル機構20がロック状態となる。従って、左サイドギヤ34と右サイドギヤ35とがデファレンシャルケース23と一体に回転し、左アクスル軸19Lと右アクスル軸19Rとに対し、それぞれトルクが伝達される。
一方、油圧室47への圧油の供給が停止された場合には、ピストン46からプレッシャリング43に作用する荷重Fpが0となる。この状態で、入力軸17に駆動トルクが付加された場合には、右サイドギヤ35に対し、ピニオンギヤ33との噛合い反力による荷重Fmが作用する。荷重Fmは、右伝達軸37と右サイドギヤ35との間の摩擦力Fs1もしくはFs2よりも大きくなるように設計されている。このため、スラストプレート35Aからレバー部材53の第2当接部Eに対し、ピストン46側への荷重Feが作用すると共に、レバー部材53の第3当接部Aからプレッシャリング43に対し、ピストン46側への荷重Faが作用する。これにより、ピストン46が、押圧プレート40から離れる方向に移動し、回転ディスク38と非回転ディスク39との摩擦接触が解除される。従って、右サイドギヤ35がデファレンシャルケース23に対して回転可能となり、エンジン7の回転力は、左右の前車輪5と路面との摩擦力の差に応じて、左側の前車輪5と右側の前車輪5とに分配される。
ここで、レバー部材53の第1当接部Fから第3当接部Aまでの距離Laと、レバー部材53の第1当接部Fから第2当接部Eまでの距離Leとにより、レバー部材53のレバー比iLは、下記数1によって定まる。このレバー比iLは、レバー部材53の形状によって一義的に決定され、このレバー比iLに応じて、第2当接部E、第3当接部Aの荷重および変位量を変化させることができる。
Figure 0007436753000001
レバー部材53の一端部53Aは、第1当接部Fにおいて第3ケース27に当接している。レバー部材53の他端部53Bは、第3当接部Aにおいてプレッシャリング43に当接している。レバー部材53の中間部53Cは、第2当接部Eにおいて右サイドギヤ35のスラストプレート35Aに当接している。このため、レバー部材53の第2当接部Eに作用する荷重Feは、荷重Fmと、摩擦力Fs1またはFs2の合力として算出される。
入力軸17の駆動トルクが0(零)の状態で油圧室47に圧油が供給された後、駆動トルクが発生する場合(以下、条件1の場合という)には、摩擦力は、荷重Fmとは反対方向の摩擦力Fs1となるため、荷重Feは下記数2によって算出される。
Figure 0007436753000002
一方、入力軸17の駆動トルクが発生している状態で油圧室47に圧油が供給され、駆動トルクが上昇する場合(以下、条件2の場合という)には、摩擦力は、荷重Fmと同方向の摩擦力Fs2となるため、荷重Feは下記数3によって算出される。
Figure 0007436753000003
このとき、レバー部材53の第3当接部Aからプレッシャリング43に作用する荷重Faは、レバー部材53のレバー比iLと荷重Feとにより、下記数4によって算出される。
Figure 0007436753000004
プレッシャリング43が押圧プレート40を介して回転ディスク38を押圧する荷重Fenは、ピストン46からプレッシャリング43に作用する荷重Fpと、レバー部材53の第3当接部Aからプレッシャリング43に作用する荷重Faとにより、下記数5によって算出される。
Figure 0007436753000005
プレッシャリング43から押圧プレート40に荷重Fenが作用したときに、レバー部材53の第2当接部Eが軸線X-X方向に変位する変位量Deは、レバー部材53の第3当接部Aの変位量Daと、レバー部材53のレバー比iLとにより、下記数6によって算出される。
Figure 0007436753000006
左側の遊星歯車減速機構54Lは、左アクスルチューブ15Lの減速機室15B内に設けられている(図3参照)。遊星歯車減速機構54Lは、左伝達軸36の先端側に一体形成されたサンギヤ36Aと、リングギヤ55と、複数のプラネットギヤ56と、キャリア57とにより構成されている。リングギヤ55は、左アクスルチューブ15L(円筒部15A)の内周側に設けられている。複数のプラネットギヤ56は、キャリア57によって回転可能に支持され、サンギヤ36Aとリングギヤ55とに噛合している。キャリア57は、左アクスル軸19Lにスプライン結合されている。従って、左伝達軸36の回転は、遊星歯車減速機構54Lによって減速された状態で左アクスル軸19Lに伝達される。
右側の遊星歯車減速機構54Rは、右アクスルチューブ15Rの減速機室15B内に設けられている。遊星歯車減速機構54Rは、左側の遊星歯車減速機構54Lと同様に、右伝達軸37の先端側に一体形成されたサンギヤ37Bと、リングギヤ55と、複数のプラネットギヤ56と、キャリア57とにより構成されている。キャリア57は、右アクスル軸19Rにスプライン結合されている。従って、右伝達軸37の回転は、遊星歯車減速機構54Rによって減速された状態で右アクスル軸19Rに伝達される。
左側のブレーキ機構58Lは、デファレンシャルボディ14の左ブレーキ室14F内に設けられている。ブレーキ機構58Lは、例えば湿式多板型のブレーキ機構として構成されている。図4に示すように、ブレーキ機構58Lは、左伝達軸36の外周側にハブ59を介してスプライン結合された複数のブレーキディスク60と、ブレーキプレート61と、ブレーキピストン62とにより構成されている。ブレーキディスク60は左伝達軸36と一体に回転する。ブレーキプレート61は、ブレーキディスク60に対面して配置され、デファレンシャルボディ14に対して非回転状態に保持されている。そして、ブレーキピストン62が、外部からの油圧力によってブレーキプレート61をブレーキディスク60に押付けることにより、左伝達軸36に制動力が付与される。
右側のブレーキ機構58Rは、デファレンシャルボディ14の右ブレーキ室14G内に設けられている。ブレーキ機構58Rは、左側のブレーキ機構58Lと同様に、右伝達軸37の外周側にハブ59を介してスプライン結合された複数のブレーキディスク60と、ブレーキプレート61と、ブレーキピストン62とにより構成されている。そして、ブレーキピストン62が、外部からの油圧力によってブレーキプレート61をブレーキディスク60に押付けることにより、右伝達軸37に制動力が付与される。
本実施形態によるフロントアクスル装置12は上述の如き構成を有するもので、以下、ホイールローダ1の走行時におけるフロントアクスル装置12の作動について説明する。
キャブ10に搭乗したオペレータがエンジン7を作動させると、エンジン7の回転力は、トランスミッション9のプロペラ軸9Bを介して入力軸17に伝達される。入力軸17の回転は、ドライブピニオン17Bからデファレンシャル機構20のリングギヤ30に伝達され、リングギヤ30が取付けられたデファレンシャルケース23が回転する。
デファレンシャルケース23を構成する第1ケース25の凹部25Hと第2ケース26の凹部26Eとの間には、スパイダ32の4本の軸32Aが挟持されている。従って、スパイダ32は、4本の軸32Aによって4個のピニオンギヤ33を支持した状態でデファレンシャルケース23と一緒に回転する。
油圧室47に対し、圧油の供給が停止されている場合には、ピストン46からプレッシャリング43に付加される荷重Fpは0となる。この状態で、入力軸17に駆動トルクが付加された場合には、ピニオンギヤ33と右サイドギヤ35との噛合い反力により、右サイドギヤ35に対してピストン46側への荷重Fmが作用する。荷重Fmは、右伝達軸37と右サイドギヤ35との間の摩擦力Fs1もしくはFs2よりも大きくなるように設計されている。このため、スラストプレート35Aからレバー部材53の第2当接部Eに対し、ピストン46側への荷重Feが作用する。これに伴い、レバー部材53の第3当接部Aからプレッシャリング43に対し、ピストン46側への荷重Faが作用する。これにより、ピストン46が、押圧プレート40から離れる方向に移動し、回転ディスク38と非回転ディスク39とは、互いに非接触の状態を保つ。
従って、デファレンシャルケース23が、ピニオンギヤ33と一緒に回転し、ピニオンギヤ33に噛合する左サイドギヤ34と右サイドギヤ35も回転する。左サイドギヤ34にスプライン結合された左伝達軸36の回転は、遊星歯車減速機構54Lによって減速された状態で左アクスル軸19Lに伝達される。同様に、右サイドギヤ35にスプライン結合された右伝達軸37の回転は、遊星歯車減速機構54Rによって減速された状態で右アクスル軸19Rに伝達される。この結果、左右の前車輪5は同時に回転駆動される。
ホイールローダ1の直進走行時において、左側の前車輪5と路面との間の摩擦力と、右側の前車輪5と路面との間の摩擦力とが等しい場合には、左サイドギヤ34と右サイドギヤ35とがデファレンシャルケース23と一体に回転する。この結果、エンジン7の回転力が左右の前車輪5に均等に伝達され、ホイールローダ1は直進走行することができる。一方、ホイールローダ1の旋回走行時において、左側の前車輪5と路面との間の摩擦力と、右側の前車輪5と路面との間の摩擦力とが異なる場合には、左サイドギヤ34と右サイドギヤ35とは互いに異なる回転数で回転する。これにより、エンジン7の回転力は、左右の前車輪5と路面との間の摩擦力の差に応じて左側の前車輪5と右側の前車輪5に分配され、ホイールローダ1は旋回走行することができる。
ここで、ホイールローダ1の走行時等において、左右の前車輪5が接地する路面状態が異なる場合には、デファレンシャル機構20によって左右の前車輪5の一方が空転してしまうのを回避する必要がある。
この場合には、例えばキャブ10内に設けられたフットペダル、手動スイッチ等(いずれも図示せず)に対する操作、あるいは、左右の前車輪5の空転を実測または予測する演算装置により、デファレンシャル機構20の差動制限が行われる。即ち、油圧源からの圧油が、隔壁側油路51Aおよびリテーナ側油路51Bを通じて油圧室47に供給される。
本実施形態では、入力軸17の駆動トルクが0(零)の状態(停車状態)で油圧室47に圧油が供給された後、駆動トルクが発生する場合(条件1の場合)と、入力軸17の駆動トルクが発生している状態(走行状態)で油圧室47に圧油が供給され、駆動トルクが上昇する場合(条件2の場合)とでは、差動を制限する特性が異なる。
条件1の場合には、右サイドギヤ35に作用する荷重Fmが0、右サイドギヤ35と右伝達軸37との間の摩擦力Fs1が0となる。この状態で、油圧室47に供給される圧油により、ピストン46からプレッシャリング43に荷重Fpが作用する。上記数2、数4、数5により、プレッシャリング43から押圧プレート40に作用する荷重Fenは0より大きくなる(Fen>0)。従って、ピストン46の推力によって、プレッシャリング43が押圧プレート40を押圧する。これにより、回転ディスク38と非回転ディスク39が摩擦接触し、回転ディスク38と非回転ディスク39との間に、荷重Fenに応じたクラッチ伝達トルクが発生する。
このとき、レバー部材53のうちプレッシャリング43に当接する第3当接部Aと、右サイドギヤ35のスラストプレート35Aに当接する第2当接部Eとは、ピニオンギヤ33側に変位する。レバー部材53の第3当接部Aの変位量(即ち、プレッシャリング43の変位量)Daと、レバー部材53の第2当接部Eの変位量(即ち、右サイドギヤ35の変位量)Deとの間には、上記数6の関係が成立する。このように、駆動トルクが0の状態で油圧室47に圧油が供給されることにより、右サイドギヤ35は、変位量Deだけピニオンギヤ33側に変位する。
次に、右サイドギヤ35がピニオンギヤ33側に変位している状態で、入力軸17の駆動トルクが発生した場合(ホイールローダ1が走行した場合)には、右サイドギヤ35に対し、ピニオンギヤ33との噛合い反力による荷重Fmが作用する。この荷重Fmは駆動トルクに比例する。また、荷重Fmによって右サイドギヤ35がピストン46側に変位しようとするので、右サイドギヤ35と右伝達軸37との間には、荷重Fmとは反対方向の摩擦力Fs1が作用する。このため、レバー部材53の第2当接部Eに作用する荷重Feは、上記数2によって算出される。
ここで、荷重Fmは、摩擦力Fs1よりも大きくなるように設計され(Fm>Fs1)、駆動トルクに対して比例関係である。また、ピストン46からプレッシャリング43に作用する荷重Fpは常に一定値である。従って、右サイドギヤ35(スラストプレート35A)からレバー部材53の第2当接部Eに作用する荷重Feは、駆動トルクに比例し、プレッシャリング43から押圧プレート40に作用する荷重Fenは、駆動トルクに反比例する。回転ディスク38と非回転ディスク39との間に発生するクラッチ伝達トルクは、荷重Fenに応じて発生する。従って、駆動トルクの上昇に伴ってトルク容量(クラッチ伝達トルクに左右の遊星歯車減速機構54L,54Rの減速比を乗じた値)は低下する。
一方、条件2の場合には、右サイドギヤ35が、ピニオンギヤ33との噛合い反力による荷重Fmによりピストン46側に位置している状態で、ピストン46からの荷重Fpがプレッシャリング43に作用する。これにより、右サイドギヤ35は、プレッシャリング43に押圧されてピニオンギヤ33側に変位しようとする。このとき、右サイドギヤ35と右伝達軸37との間には、荷重Fmと同じ方向の摩擦力Fs2が作用する。このため、右サイドギヤ35からレバー部材53の第2当接部Eに作用する荷重Feは、上記数3によって算出される。
ここで、荷重Fmは、摩擦力Fs2よりも大きくなるように設計され(Fm>Fs2)、駆動トルクに対して比例関係である。従って、荷重Feは駆動トルクに比例し、荷重Fenは駆動トルクに反比例する。回転ディスク38と非回転ディスク39とによるクラッチ伝達トルクは、荷重Fenに応じて発生するため、駆動トルクの上昇に伴ってトルク容量は低下する。
このように、条件1の場合には、荷重Fmの方向と摩擦力Fs1の方向とが逆向きとなる。この結果、クラッチ伝達トルクは、駆動トルクの上昇に対して緩やかに(鈍感に)低下する。一方、条件2の場合には、荷重Fmの方向と摩擦力Fs2の方向とが同じ向きとなる。この結果、クラッチ伝達トルクは、駆動トルクの上昇に対して速やかに(敏感に)低下する。
図19は、条件1の場合における差動トルクと出力軸合算トルクとの関係を示している。差動トルクは、左アクスル軸19Lと右アクスル軸19Rとのトルク差である。出力軸合算トルクは、左アクスル軸19Lと右アクスル軸19Rとのトルクの合算値である。図19において、短破線の特性線は、荷重Fpによる差動トルクTA1を示し、一点鎖線の特性線は、荷重Fmによる差動トルクTB1を示している。また、二点鎖線の特性線は、摩擦力Fs1による差動トルクTC1を示し、実線の特性線は、差動トルクTD1を示している。また、図19中のC点は、回転ディスク38と非回転ディスク39とにより伝達される最大トルク容量が、出力軸合算トルクと等しくなる点を示している。条件1の場合には、荷重Fpに対して荷重Fmが逆方向、摩擦力Fs1が同じ方向の荷重となる。このため、回転ディスク38と非回転ディスク39とによるトルク容量TV1は、下記数7によって算出され、長破線の特性線によって表わされる。
Figure 0007436753000007
荷重Fpによる差動トルクTA1は、油圧室47に供給される油圧が一定であるため、全域に亘って一定値を保つ。荷重Fmによる差動トルクTB1は、荷重Fmが出力軸合算トルクに比例するため、出力軸合算トルクの上昇と共に増加する。摩擦力Fs1による差動トルクTC1は、C点までは差動トルクの上昇が急であるために傾きが大きく、C点を超えて差動トルクが低下するのに応じて傾きが小さくなる。一方、差動トルクTD1は、出力軸合算トルクがC点以下の領域では、(トルク容量)>(出力軸合算トルク)となるため、差動トルクTD1=(出力軸合算トルク)の関係を保持する。出力軸合算トルクがC点を超える領域では、(トルク容量)<(出力軸合算トルク)となって回転ディスク38と非回転ディスク39とが滑り出す。このため、差動トルクTD1=(トルク容量)となる。即ち、C点以降は、出力軸合算トルクの上昇に伴って荷重Fmが増加するため、トルク容量TV1が低下し、差動トルクTD1も低下する。
図20は、条件1の場合における出力軸トルクと出力軸合算トルクとの関係を示している。図20において、実線の特性線63は、本実施形態のデファレンシャル機構20による大トルク側の出力軸トルクを示し、破線の特性線64は、小トルク側の出力軸トルクを示している。また、一点鎖線の特性線65は、一般的なトルク比例式の差動制限装置を備えたデファレンシャル機構(以下、比較例という)による大トルク側の出力軸トルクを示し、二点破線の特性線66は、小トルク側の出力軸トルクを示している。
本実施形態によるデファレンシャル機構20は、出力軸合算トルクが0からC点(最大トルク容量が出力軸合算トルクと等しくなる点)まではロック状態(デファレンシャルロック状態)となる。このため、出力軸合算トルクが0からC点までは、特性線63で示す出力軸トルク(大トルク側)は出力軸合算トルクと等しくなり、特性線64で示す出力軸トルク(小トルク側)は0となる。一方、出力軸合算トルクがC点を超えると、回転ディスク38と非回転ディスク39とが滑り出すため、特性線63で示す出力軸トルク(大トルク側)の傾きは小さくなる。差動トルクは、C点を超えると徐々に低下するため、出力軸トルク(大トルク側)の傾きが小さくなり、この小さい傾きのまま上昇する。
次に、図21は、条件2の場合における差動トルクと出力軸合算トルクとの関係を示している。図21において、短破線の特性線は、荷重Fpによる差動トルクTA2を示し、一点鎖線の特性線は、荷重Fmによる差動トルクTB2を示している。また、二点鎖線の特性線は、摩擦力Fs2による差動トルクTC2を示し、実線の特性線は、差動トルクTD2を示している。また、図21中のC点は、回転ディスク38と非回転ディスク39とにより伝達される最大トルク容量が、出力軸合算トルクと等しくなる点を示している。条件2の場合には、荷重Fpに対して荷重Fmと摩擦力Fs2とが逆方向の荷重となる。このため、回転ディスク38と非回転ディスク39とによるトルク容量TV2は、下記数8によって算出され、長破線の特性線によって表わされる。
Figure 0007436753000008
条件2の場合には、摩擦力Fs2が荷重Fpに対して逆向きに作用し、差動トルクが小さくなる。従って、条件2の場合には、条件1の場合に比較して最大差動トルクが小さくなり、最大トルク容量が出力軸合算トルクと等しくなるC点も、条件1の場合に比較して小さくなる。出力軸合算トルクがC点を超える領域では、回転ディスク38と非回転ディスク39とが滑り出す。C点以降は、出力軸合算トルクの上昇に伴って荷重Fmが増加するため、トルク容量TV2が低下し、差動トルクTD2も低下する。そして、荷重Fenは、D点を超えるとFen<0となり、油圧室47に油圧が供給されてもピストン46は停止した状態を保つため、差動トルクTD2は0を維持する。
図22は、条件2の場合における出力軸トルクと出力軸合算トルクとの関係を示している。図22において、実線の特性線67は、本実施形態のデファレンシャル機構20による大トルク側の出力軸トルクを示し、破線の特性線68は、小トルク側の出力軸トルクを示している。また、一点鎖線の特性線69は、一般的なトルク比例式の差動制限装置を備えたデファレンシャル機構(以下、比較例という)による大トルク側の出力軸トルクを示し、二点破線の特性線70は、小トルク側の出力軸トルクを示している。
本実施形態によるデファレンシャル機構20は、出力軸合算トルクが0からC点まではロック状態(デファレンシャルロック状態)となる。このため、出力軸合算トルクが0からC点までは、特性線67で示す出力軸トルク(大トルク側)は出力軸合算トルクと等しくなり、特性線68で示す出力軸トルク(小トルク側)は0となる。一方、出力軸合算トルクがC点を超えると、回転ディスク38と非回転ディスク39とが滑り出すため、特性線67で示す出力軸トルク(大トルク側)の傾きは小さくなる。差動トルクは、C点を超えると徐々に低下するため、出力軸トルク(大トルク側)の傾きが小さくなり、この小さい傾きのままD点まで上昇する。そして、差動トルクはD点を超えると0となる。
ここで、図20および図22中の灰色を付した領域では、本実施形態のデファレンシャル機構20は、比較例によるデファレンシャル機構よりも差動トルクが大きい状態となる。従って、デファレンシャル機構20は、駆動トルクが比較的小さい領域、即ち左右のアクスル軸19L,19Rの寿命に大きな影響を及ぼすことが少ない領域では、差動トルクを大きく確保することができる。これにより、図20および図22中の灰色を付した領域では、比較例によるデファレンシャル機構を搭載した車両がスリップを生じる状況においても、本実施形態によるホイールローダ1はスリップを抑え、適正な牽引力を発生することができる。
一方、図20および図22中のハッチングを付した領域では、デファレンシャル機構20は、比較例のデファレンシャル機構よりも差動トルクが小さい状態となる。従って、デファレンシャル機構20は、駆動トルクが比較的大きい領域、即ち左右のアクスル軸19L,19Rの寿命に大きな影響を及ぼす領域では、差動トルクを小さく抑えることができる。ここで、図20および図22中のハッチングを付した領域では、ホイールローダ1は、比較例によるデファレンシャル機構を搭載した車両よりも小さな出力軸トルクでスリップを生じる。しかし、ハッチングを付した領域は、大きな出力軸トルクが発生しており、通常の作業を行うには十分な牽引力を有している。そのため、この領域において差動トルクを小さく抑えることはホイールローダ1の作業において大きな問題とはならない。しかも、デファレンシャル機構20は、比較例によるデファレンシャル機構よりも出力軸トルクが過大となる頻度を下げることができる。この結果、左右のアクスル軸19L,19Rの寿命を延ばすことができる。
このように、本実施形態によるデファレンシャル機構20は、左右のアクスル軸19L,19Rの寿命に大きな影響を及ぼすことが少ない領域(駆動トルクが比較的小さい領域)では、差動トルクを大きく確保することができる。これにより、例えばホイールローダ1が登坂走行するとき、路面の摩擦係数が低い雪道等を走行するときのスリップを抑え、その走行性能を高めることができる。また、例えばホイールローダ1の作業装置6を用いた掘削作業、即ち山積みされた土砂の中に作業装置6を低速で差込むような作業を行う場合の作業性能を高めることができる。さらに、デファレンシャル機構20は、駆動トルクが増大するのに応じて機械的に差動トルクを小さくすることにより、左右のアクスル軸19L,19Rに過大なトルクが作用する頻度を低下させることができる。この結果、左右のアクスル軸19L,19Rの寿命を延ばすことができる。
しかも、本実施形態によるデファレンシャル機構20は、駆動トルクに比例してピニオンギヤ33と右サイドギヤ35との噛合い反力が増大するのを利用し、この噛合い反力をレバー部材53を介してピストン46に伝達する。これにより、ピストン46の推力によってプレッシャリング43から押圧プレート40に作用する荷重Fenを、駆動トルクに反比例して機械的に下げることができる。即ち、デファレンシャル機構20は、駆動トルクが増大するのに応じて機械的に差動トルクを小さくすることにより、左右のアクスル軸19L,19Rの寿命を延ばすことができる。このように、デファレンシャル機構20は、例えば駆動トルクを予測するための各種センサや制御装置、予測した駆動トルクに応じてピストンの推力を調整する油圧制御回路等を用いる必要がないので、コストの上昇を抑えることができる。
また、デファレンシャル機構20は、右サイドギヤ35とピストン46との間にレバー部材53が設けられ、レバー部材53は、第1当接部Fと第3当接部Aとの間の距離Laと、第1当接部Fと第2当接部Eとの間の距離Leとによってレバー比iLが定まる。従って、ピストン46のストローク量(第3当接部Aの変位量)に対し、右サイドギヤ35の移動量(第2当接部Eの変位量)を、レバー部材53のレバー比iLに応じて小さくすることができる。これにより、ピストン46の適度なストロークを確保しつつ、右サイドギヤ35の軸方向の移動量を小さくすることができる。従って、油圧室47に対する圧油の給排に応じて右サイドギヤ35が軸方向に移動したとしても、ピニオンギヤ33と右サイドギヤ35との間のバックラッシの変化量を抑えることができる。この結果、ピニオンギヤ33と右サイドギヤ35とが噛合うときの騒音や振動を抑えると共に、ピニオンギヤ33と右サイドギヤ35との間の伝達効率の低下、ピニオンギヤ33と右サイドギヤ35の寿命の低下を抑えることができる。
さらに、押圧プレート40の外周側には、4個の矩形状突出部40Bが設けられ、この矩形状突出部40Bは、第2ケース26の軸方向端面26Fに設けられた4個の係合凹部26Hに係合している。このため、回転ディスク38および非回転ディスク39が摩耗したとしても、矩形状突出部40Bは、押圧プレート40が必要以上に回転ディスク38側に移動するのを阻止する。これにより、右サイドギヤ35がピニオンギヤ33に接近するのを抑え、右サイドギヤ35とピニオンギヤ33との間に適正なバックラッシを保つことができる。この結果、ピニオンギヤ33と右サイドギヤ35との間の伝達効率の低下、ピニオンギヤ33と右サイドギヤ35の寿命の低下を抑えることができる。
かくして、実施形態による車両用アクスル装置は、左右の前車輪5がそれぞれ取付けられた左右のアクスル軸19L,19Rと、左右のアクスル軸19L,19Rを収容する左右のアクスルチューブ15L,15R間に設けられ、左右方向に貫通する貫通孔14Dを有する隔壁14B,14Cが左右方向の両側にそれぞれ設けられた中空なデファレンシャルボディ14と、デファレンシャルボディ14の左右の隔壁14B,14C間に設けられエンジン7の回転力を左右のアクスル軸19L,19Rに伝達するデファレンシャル機構20とからなり、デファレンシャル機構20は、左右の隔壁14B,14Cの貫通孔14Dにそれぞれ取付けられた左右のリテーナ21,41に回転可能に支持されエンジン7により回転するデファレンシャルケース23と、デファレンシャルケース23内に設けられデファレンシャルケース23と一緒に回転するピニオンギヤ33と、デファレンシャルケース23内に設けられピニオンギヤ33に噛合する左右のサイドギヤ34,35と、左右のサイドギヤ34,35に接続されデファレンシャルケース23の回転を左右のアクスル軸19L,19Rに伝達する左右の伝達軸36,37とを備えている。デファレンシャルケース23内には、左右のサイドギヤ34,35のうち右サイドギヤ35の外周側にスプライン結合された複数の回転ディスク38と、複数の回転ディスク38間に配置されデファレンシャルケース23に対して回転不能でかつ左右方向に移動可能な複数の非回転ディスク39とが設けられ、左右のリテーナ21,41のうち右サイドギヤ35側に位置する右リテーナ41と回転ディスク38との間には、回転ディスク38を非回転ディスク39に向けて押圧するプレッシャリング43が設けられ、右リテーナ41側には、プレッシャリング43に荷重を付加することにより回転ディスク38と非回転ディスク39とを接触させて左右の伝達軸36,37を結合させるピストン46が設けられ、デファレンシャルケース23と右サイドギヤ35とプレッシャリング43との間には、ピニオンギヤ33と右サイドギヤ35との噛合いによる反力をプレッシャリング43に伝達し、ピストン46からプレッシャリング43に付加される荷重を制御するレバー部材53が設けられている。
この構成によれば、駆動トルクに比例してピニオンギヤ33と右サイドギヤ35との噛合い反力が増大するのを利用し、この噛合い反力をレバー部材53を介してプレッシャリング43に伝達することができる。これにより、ピストン46からプレッシャリング43に付加される荷重を、駆動トルクに反比例して機械的に低下させることができる。この結果、駆動トルクが増大するのに応じて機械的に差動トルクを小さくすることができ、デファレンシャル機構20以降に配置された左右のアクスル軸19L,19Rの寿命を延ばすことができる。
実施形態では、レバー部材53は、デファレンシャルケース23に当接する第1当接部Fと、右サイドギヤ35に当接し、ピニオンギヤ33と右サイドギヤ35との噛合いによる反力を受ける第2当接部Eと、プレッシャリング43に当接し、ピニオンギヤ33と右サイドギヤ35との噛合いによる反力を第1当接部Fを支点としてプレッシャリング43に伝達する第3当接部Aとを有している。この構成によれば、ピニオンギヤ33と右サイドギヤ35との噛合い反力が、レバー部材53の力点となる第2当接部Eに作用することにより、レバー部材53の作用点となる第3当接部Aは、第1当接部Fを支点として回動変位する。これにより、レバー部材53は、第1当接部F、第2当接部E、第3当接部Aの位置によって定まるレバー比iLに応じて、噛合い反力をプレッシャリング43に伝達する。従って、レバー部材53のレバー比iLを変更することにより、プレッシャリング43から押圧プレート40を介して回転ディスク38に作用する荷重Fenを適宜に調整することができる。
実施形態では、レバー部材53は、長さ方向の中間部が山形に屈曲した部材により構成され、長さ方向の一端部53Aに第1当接部Fが設けられ、長さ方向の他端部53Bに第3当接部Aが設けられ、長さ方向の中間部53Cに第2当接部Eが設けられている。この構成によれば、山形に屈曲した部材を用いることにより、支点となる第1当接部Fと、力点となる第2当接部Eと、作用点となる第3当接部Aとを有するレバー部材53を容易に形成することができる。また、屈曲部の位置を変えることにより、レバー部材53のレバー比iLを適宜に変更することができる。
実施形態では、デファレンシャルケース23内には、プレッシャリング43と回転ディスク38との間に配置されプレッシャリング43の押圧力を回転ディスク38に伝える押圧プレート40が設けられ、押圧プレート40には、その外周側に突出する矩形状突出部40Bが設けられ、デファレンシャルケース23には、矩形状突出部40Bが係合することにより押圧プレート40の移動量を規制する係合凹部26Hが設けられている。この構成によれば、回転ディスク38および非回転ディスク39が摩耗したとしても、矩形状突出部40Bが係合凹部26Hに係合することにより、押圧プレート40の回転ディスク38側への移動量が制限される。従って、レバー部材53の第3当接部Aの変位量Daが増大するのを抑え、右サイドギヤ35がピニオンギヤ33に必要以上に接近するのを抑えることができる。この結果、右サイドギヤ35とピニオンギヤ33との間に適正なバックラッシを保ち、右サイドギヤ35とピニオンギヤ33の寿命を延ばすことができる。
なお、実施形態では、左右のサイドギヤ34,35のうち右サイドギヤ35の外周側に回転ディスク38をスプライン結合した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば左サイドギヤ34の外周側に回転ディスクをスプライン結合する構成としてもよい。この場合には、左右のリテーナ21,41のうち左リテーナ21と回転ディスク38との間にプレッシャリングが設けられ、左リテーナ21にはピストンが設けられ、デファレンシャルケースと左サイドギヤ34とプレッシャリングとの間にレバー部材が設けられる。
また、実施形態では、台形状をなす板体の長さ方向の中間部を山形に屈曲させることにより、一端部53Aが第1当接部Fとなり、他端部53Bが第3当接部Aとなり、中間部53Cが第2当接部Eとなったレバー部材53を形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば平板状の板体の長さ方向の中間部に突起部を設けることにより、長さ方向の両端部が第1,第3当接部となり、突起部が第2当接部となったレバー部材を形成してもよい。
また、実施形態では、プレッシャリング43に荷重を付加するアクチュエータとして、油圧式のピストン46を用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば水圧、空気圧によって駆動されるピストン、電動モータ、電磁石による励磁力を利用したアクチュエータ等を用いてもよい。
さらに、実施形態では、リヤアクスル装置11およびフロントアクスル装置12を備えた車両としてホイールローダ1を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式ショベル等の他のホイール式建設機械に広く適用することができる。
4 後車輪
5 前車輪
11 リヤアクスル装置
12 フロントアクスル装置
14 デファレンシャルボディ
15L 左アクスルチューブ
15R 右アクスルチューブ
19L 左アクスル軸
19R 右アクスル軸
20 デファレンシャル機構
21 左リテーナ
23 デファレンシャルケース
26 第2ケース
26H 係合凹部
33 ピニオンギヤ
34 左サイドギヤ
35 右サイドギヤ(一方のサイドギヤ)
36 左伝達軸
37 右伝達軸
38 回転ディスク
39 非回転ディスク
40 押圧プレート
40B 矩形状突出部(突出部)
41 右リテーナ(一方のリテーナ)
43 プレッシャリング
46 ピストン(アクチュエータ)
53 レバー部材
53A 一端部
53B 他端部
53C 中間部
F 第1当接部
E 第2当接部
A 第3当接部

Claims (4)

  1. 左右の車輪がそれぞれ取付けられた左右のアクスル軸と、前記左右のアクスル軸を収容する左右のアクスルチューブ間に設けられ、左右方向に貫通する貫通孔を有する隔壁が左右方向の両側にそれぞれ設けられた中空なデファレンシャルボディと、前記デファレンシャルボディの前記左右の隔壁間に設けられ駆動源の回転力を前記左右のアクスル軸に伝達するデファレンシャル機構とからなり、
    前記デファレンシャル機構は、
    前記左右の隔壁の前記貫通孔にそれぞれ取付けられた左右のリテーナに回転可能に支持され前記駆動源により回転するデファレンシャルケースと、
    前記デファレンシャルケース内に設けられ前記デファレンシャルケースと一緒に回転するピニオンギヤと、
    前記デファレンシャルケース内に設けられ前記ピニオンギヤに噛合する左右のサイドギヤと、
    前記左右のサイドギヤに接続され前記デファレンシャルケースの回転を前記左右のアクスル軸に伝達する左右の伝達軸とを備えてなる車両用アクスル装置において、
    前記デファレンシャルケース内には、前記左右のサイドギヤのうち一方のサイドギヤの外周側にスプライン結合された複数の回転ディスクと、前記複数の回転ディスク間に配置され前記デファレンシャルケースに対して回転不能でかつ左右方向に移動可能な複数の非回転ディスクとが設けられ、
    前記左右のリテーナのうち前記一方のサイドギヤ側に位置する一方のリテーナと前記回転ディスクとの間には、前記回転ディスクを前記非回転ディスクに向けて押圧するプレッシャリングが設けられ、
    前記一方のリテーナ側には、前記プレッシャリングに荷重を付加することにより前記回転ディスクと前記非回転ディスクとを接触させて前記左右の伝達軸を結合させるアクチュエータが設けられ、
    前記デファレンシャルケースと前記一方のサイドギヤと前記プレッシャリングとの間には、前記ピニオンギヤと前記一方のサイドギヤとの噛合いによる反力を前記プレッシャリングに伝達し、前記アクチュエータから前記プレッシャリングに付加される荷重を制御するレバー部材が設けられていることを特徴とする車両用アクスル装置。
  2. 前記レバー部材は、前記デファレンシャルケースに当接する第1当接部と、前記一方のサイドギヤに当接し、前記ピニオンギヤと前記一方のサイドギヤとの噛合いによる反力を受ける第2当接部と、前記プレッシャリングに当接し、前記ピニオンギヤと前記一方のサイドギヤとの噛合いによる反力を前記第1当接部を支点として前記プレッシャリングに伝達する第3当接部とを有していることを特徴とする請求項1に記載の車両用アクスル装置。
  3. 前記レバー部材は、長さ方向の中間部が山形に屈曲した部材により構成され、長さ方向の一端部に前記第1当接部が設けられ、長さ方向の他端部に前記第3当接部が設けられ、長さ方向の中間部に前記第2当接部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用アクスル装置。
  4. 前記デファレンシャルケース内には、前記プレッシャリングと前記回転ディスクとの間に配置され前記プレッシャリングの押圧力を前記回転ディスクに伝える押圧プレートが設けられ、
    前記押圧プレートには、その外周側に突出する突出部が設けられ、
    前記デファレンシャルケースには、前記突出部が係合することにより前記押圧プレートの移動量を規制する係合凹部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用アクスル装置。
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