以下、図面を参照して実施形態について説明する。
[ショベルの概要]
最初に、図1、図2を参照して、本実施形態に係るショベル100の概要について説明する。
図1、図2は、それぞれ、本実施形態に係るショベル100の上面図及び側面図である。
本実施形態に係るショベル100は、下部走行体1と、旋回機構2を介して旋回自在に下部走行体1に搭載される上部旋回体3と、アタッチメントATを構成するブーム4、アーム5、及び、バケット6と、キャビン10を備える。
下部走行体1(走行体の一例)は、後述の如く、左右一対のクローラ1C、具体的には、左クローラ1CL及び右クローラ1CRを含む。下部走行体1は、左クローラ1CL及び右クローラ1CRが走行油圧モータ2M(2ML,2MR)でそれぞれ油圧駆動されることにより、ショベル100を走行させる。
上部旋回体3(旋回体の一例)は、旋回油圧モータ2Aで駆動されることにより、下部走行体1に対して旋回する。
ブーム4は、上部旋回体3の前部中央に俯仰可能に枢着され、ブーム4の先端には、アーム5が上下回動可能に枢着され、アーム5の先端には、エンドアタッチメントとしてのバケット6が上下回動可能に枢着される。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。
尚、バケット6は、エンドアタッチメントの一例であり、アーム5の先端には、作業内容等に応じて、バケット6の代わりに、他のエンドアタッチメント、例えば、法面用バケット、浚渫用バケット、ブレーカ等が取り付けられてもよい。
キャビン10は、オペレータが搭乗する運転室であり、上部旋回体3の前部左側に搭載される。
ショベル100は、キャビン10に搭乗するオペレータの操作に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の動作要素(被駆動要素)を駆動する。
また、ショベル100は、キャビン10のオペレータにより操作可能に構成されるのに代えて、或いは、加えて、所定の外部装置(例えば、後述の支援装置200や管理装置300)のオペレータによって遠隔操作が可能に構成されてもよい。この場合、ショベル100は、例えば、後述の空間認識装置70が出力する画像情報(撮像画像)を外部装置に送信する。また、後述するショベル100の表示装置D1に表示される各種の情報画像(例えば、各種設定画面等)は、同様に、外部装置に設けられる表示装置にも表示されてよい。これにより、オペレータは、例えば、外部装置に設けられる表示装置に表示される内容を確認しながら、ショベル100を遠隔操作することができる。そして、ショベル100は、外部装置から受信される、遠隔操作の内容を表す遠隔操作信号に応じて、アクチュエータを動作させ、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の動作要素を駆動してよい。ショベル100が遠隔操作される場合、キャビン10の内部は、無人状態であってもよい。以下、オペレータの操作には、キャビン10のオペレータの操作装置26に対する操作、及び外部装置のオペレータの遠隔操作の少なくとも一方が含まれる前提で説明を進める。
また、ショベル100は、オペレータの操作の内容に依らず、自動で油圧アクチュエータを動作させてもよい。これにより、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の動作要素の少なくとも一部を自動で動作させる機能(以下、「自動運転機能」或いは「マシンコントロール機能」)を実現する。
自動運転機能には、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作に応じて、操作対象の動作要素(油圧アクチュエータ)以外の動作要素(油圧アクチュエータ)を自動で動作させる機能(いわゆる「半自動運機能」)が含まれてよい。また、自動運転機能には、オペレータの操作装置26に対する操作や遠隔操作がない前提で、複数の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の少なくとも一部を自動で動作させる機能(いわゆる「完全自動運転機能」)が含まれてよい。ショベル100において、完全自動運転機能が有効な場合、キャビン10の内部は無人状態であってよい。また、自動運転機能には、ショベル100の周囲の作業者等の人のジェスチャをショベル100が認識し、認識されるジェスチャの内容に応じて、複数の被駆動要素(油圧アクチュエータ)の少なくとも一部を自動で動作させる機能(「ジェスチャ操作機能」)が含まれてよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能やジェスチャ操作機能には、自動運転の対象の動作要素(油圧アクチュエータ)の動作内容が予め規定されるルールに従って自動的に決定される態様が含まれてよい。また、半自動運転機能や完全自動運転機能やジェスチャ操作機能には、ショベル100が自律的に各種の判断を行い、その判断結果に沿って、自律的に自動運転の対象の動作要素(油圧アクチュエータ)の動作内容が決定される態様(いわゆる「自律運転機能」)が含まれてもよい。
[ショベルの構成]
次に、図1、図2に加えて、図3、図4(図4A~図4D)を参照して、ショベル100の構成について説明する。
図3は、本実施形態に係るショベル100の油圧システムの構成の一例を説明する図である。図4A~図4Dは、本実施形態に係るショベル100の油圧システムにおけるアタッチメントAT及び上部旋回体3に関する操作系の構成部分の一例を示す図である。具体的には、図4A~図4Dは、それぞれ、アーム5、ブーム4、バケット6、及び上部旋回体3に関する操作系の構成部分の一例を示す図である。
本実施形態に係るショベル100の油圧システムは、エンジン11と、レギュレータ13と、メインポンプ14と、パイロットポンプ15と、コントロールバルブ17と、操作装置26と、吐出圧センサ28と、操作圧センサ29と、コントローラ30とを含む。また、本実施形態に係るショベル100の油圧システムは、上述の如く、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6のそれぞれを油圧駆動する走行油圧モータ2ML,2MR、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9等の油圧アクチュエータを含む。
エンジン11は、油圧システムのメイン動力源であり、例えば、上部旋回体3の後部に搭載される。具体的には、エンジン11は、コントローラ30による直接或いは間接的な制御下で、予め設定される目標回転数で一定回転し、メインポンプ14及びパイロットポンプ15を駆動する。エンジン11は、例えば、軽油を燃料とするディーゼルエンジンである。
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。例えば、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じて、メインポンプ14の斜板の角度(傾転角)を調節する。レギュレータ13は、後述するメインポンプ14L,14Rのそれぞれに対応するレギュレータ13L,13Rを含む。
メインポンプ14は、例えば、エンジン11と同様、上部旋回体3の後部に搭載され、上述の如く、エンジン11により駆動されることにより、高圧油圧ラインを通じてコントロールバルブ17に作動油を供給する。メインポンプ14は、例えば、可変容量式油圧ポンプであり、コントローラ30による制御下で、上述の如く、レギュレータ13により斜板の傾転角が調節されることでピストンのストローク長が調整され、吐出流量(吐出圧)が制御される。メインポンプ14は、メインポンプ14L,14Rを含む。
パイロットポンプ15は、例えば、上部旋回体3の後部に搭載され、パイロットラインを介して操作装置26にパイロット圧を供給する。パイロットポンプ15は、例えば、固定容量式油圧ポンプであり、上述の如く、エンジン11により駆動される。
コントロールバルブ17は、例えば、上部旋回体3の中央部に搭載され、オペレータによる操作装置26に対する操作や遠隔操作に応じて、油圧駆動系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、上述の如く、高圧油圧ラインを介してメインポンプ14と接続され、メインポンプ14から供給される作動油を、操作装置26に対する操作や遠隔操作の状態に応じて、油圧アクチュエータ(走行油圧モータ2ML,2MR、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9)に選択的に供給する。具体的には、コントロールバルブ17は、メインポンプ14から油圧アクチュエータのそれぞれに供給される作動油の流量と流れる方向を制御する制御弁171~176を含む。制御弁171は、走行油圧モータ2MLに対応する。また、制御弁172は、走行油圧モータ2MRに対応する。また、制御弁173は、旋回油圧モータ2Aに対応し、制御弁174は、バケットシリンダ9に対応する。また、制御弁175は、ブームシリンダ7に対応し、制御弁175L,175Rを含む。制御弁176は、アームシリンダ8に対応し、制御弁176L,176Rを含む。
操作装置26は、キャビン10の操縦席付近に設けられ、オペレータが各種動作要素(下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、バケット6等)の操作を行うための操作入力手段である。換言すれば、操作装置26は、オペレータがそれぞれの動作要素を駆動する油圧アクチュエータ(即ち、走行油圧モータ2ML,2MR、旋回油圧モータ2A、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9等)の操作を行うための操作入力手段である。
図3、図4A~図4Dに示すように、操作装置26は、油圧パイロット式である。操作装置26は、その二次側のパイロットラインを通じて、直接的に、或いは、その二次側のパイロットラインに設けられる後述のシャトル弁32を介して、コントロールバルブ17に接続される。これにより、コントロールバルブ17には、操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に応じたパイロット圧が入力されうる。そのため、コントロールバルブ17は、操作装置26における操作状態に応じて、それぞれの油圧アクチュエータを駆動することができる。
操作装置26は、アタッチメントAT、即ち、ブーム4(ブームシリンダ7)、アーム5(アームシリンダ8)、バケット6(バケットシリンダ9)、並びに、上部旋回体3を操作するための左操作レバー26L及び右操作レバー26Rを含む。また、操作装置26は、下部走行体1を操作するための走行レバー26Dを含み、走行レバー26Dは、左クローラ1CLを操作するための左走行レバー26DLと、右クローラ1CRを操作するための右走行レバー26DRを含む。
左操作レバー26Lは、上部旋回体3の旋回操作とアーム5の操作に用いられる。左操作レバー26Lは、キャビン10内のオペレータから見た前後方向(つまり、上部旋回体3の前後方向)に操作されると、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧(パイロット圧)を二次側のパイロットラインに出力する。また、左操作レバー26Lは、キャビン10内のオペレータから見た左右方向(つまり、上部旋回体3の左右方向)に操作されると、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧(パイロット圧)を二次側のパイロットラインに出力する。
右操作レバー26Rは、ブーム4の操作とバケット6の操作に用いられる。右操作レバー26Rは、キャビン10内のオペレータから見た前後方向に操作されると、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧(パイロット圧)を二次側のパイロットラインに出力する。また、右操作レバー26Rは、左右方向に操作されると、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧(パイロット圧)を二次側のパイロットラインに出力する。
左走行レバー26DLは、上述の如く、左クローラ1CLの操作に用いられ、図示しない左走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。左走行レバー26DLは、キャビン10内のオペレータから見た前後方向に操作されると、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧(パイロット圧)を二次側のパイロットラインに出力する。左走行レバー26DLの前進方向及び後進方向の操作に対応する二次側のパイロットラインは、それぞれ、制御弁171の対応するパイロットポートに直接的に接続される。つまり、走行油圧モータ2MLを駆動する制御弁171のスプール位置には、左走行レバー26DLの操作内容が反映される。
右走行レバー26DRは、上述の如く、右クローラ1CRの操作に用いられ、図示しない右走行ペダルと連動するように構成されていてもよい。右走行レバー26DRは、キャビン10内のオペレータから見た前後方向に操作されると、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用し、レバー操作量に応じた制御圧(パイロット圧)を二次側のパイロットラインに出力する。右走行レバー26DRの前進方向及び後進方向の操作に対応する二次側のパイロットラインは、それぞれ、制御弁172の対応するパイロットポートに直接的に接続される。つまり、走行油圧モータ2MLを駆動する制御弁172のスプール位置には、左走行レバー26DLの操作内容が反映される。
また、操作装置26(左操作レバー26L、右操作レバー26R、左走行レバー26DL、及び右走行レバー26DR)は、パイロット圧を出力する油圧パイロット式ではなく、電気信号(以下、「操作信号」)を出力する電気式であってもよい。この場合、操作装置26からの電気信号(操作信号)は、コントローラ30に入力され、コントローラ30は、入力される電気信号に応じて、コントロールバルブ17内の各制御弁171~176を制御することにより、操作装置26に対する操作内容に応じた、各種油圧アクチュエータの動作を実現する。例えば、コントロールバルブ17内の制御弁171~176は、コントローラ30からの指令により駆動する電磁ソレノイド式スプール弁であってもよい。また、例えば、パイロットポンプ15と各制御弁171~176のパイロットポートとの間には、コントローラ30からの電気信号に応じて動作する油圧制御弁(以下、「操作用制御弁」)が配置されてもよい。操作用制御弁は、例えば、比例弁31であってよく、シャトル弁32は、省略される。この場合、電気式の操作装置26を用いた手動操作が行われると、コントローラ30は、その操作量(例えば、レバー操作量)に対応する電気信号によって、操作用制御弁を制御しパイロット圧を増減させることで、操作装置26に対する操作内容に合わせて、各制御弁171~176を動作させることができる。以下、操作用制御弁は、比例弁31である前提で説明を進める。
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。吐出圧センサ28により検出された吐出圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。吐出圧センサ28は、メインポンプ14L,14Rのそれぞれの吐出圧を検出する吐出圧センサ28L,28Rを含む。
操作圧センサ29は、操作装置26の二次側のパイロット圧、即ち、操作装置26におけるそれぞれの動作要素(即ち、油圧アクチュエータ)の操作状態に対応するパイロット圧を検出する。操作圧センサ29による操作装置26における下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の操作状態に対応するパイロット圧の検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。操作圧センサ29は、操作圧センサ29LA,29LB,29RA,29RB,29DL,29DRを含む。
操作圧センサ29LAは、オペレータによる左操作レバー26Lに対する前後方向の操作内容(例えば、操作方向及び操作量)を、左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインの作動油の圧力(以下、「操作圧」)の形で検出する。
操作圧センサ29LBは、オペレータによる左操作レバー26Lに対する左右方向の操作内容(例えば、操作方向及び操作量)を、左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインの操作圧の形で検出する。
操作圧センサ29RAは、オペレータによる右操作レバー26Rに対する前後方向の操作内容(例えば、操作方向及び操作量)を、右操作レバー26Rの二次側のパイロットラインの操作圧の形で検出する。
操作圧センサ29RBは、オペレータによる右操作レバー26Rに対する左右方向の操作内容(例えば、操作方向及び操作量)を、右操作レバー26Rの二次側のパイロットラインの操作圧の形で検出する。
操作圧センサ29DLは、オペレータによる左走行レバー26DLに対する前後方向の操作内容(例えば、操作方向及び操作量)を、左走行レバー26DLの二次側のパイロットラインの操作圧の形で検出する。
操作圧センサ29DRは、オペレータによる右走行レバー26DRに対する前後方向の操作内容(例えば、操作方向及び操作量)を、右走行レバー26DRの二次側のパイロットラインの操作圧の形で検出する。
尚、操作装置26(左操作レバー26L、右操作レバー26R、左走行レバー26DL、及び右走行レバー26DR)の操作内容は、操作圧センサ29以外のセンサ(例えば、右操作レバー26R、左走行レバー26DL、及び右走行レバー26DRに取り付けられるポテンショメータ等)で検出されてもよい。
コントローラ30(制御装置の一例)は、例えば、キャビン10内に設けられ、ショベル100の駆動制御を行う。コントローラ30は、その機能が任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは、その組み合わせにより実現されてよい。例えば、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、不揮発性の補助記憶装置と、各種入出力インターフェース等を含むマイクロコンピュータを中心に構成される。コントローラ30は、例えば、ROMや不揮発性の補助記憶装置に格納される各種プログラムをCPU上で実行することにより各種機能を実現する。
尚、コントローラ30の機能の一部は、他のコントローラ(制御装置)により実現されてもよい。即ち、コントローラ30の機能は、複数のコントローラにより分散される態様で実現されてもよい。
ここで、図3に示すように、ショベル100の油圧システムにおいて、油圧アクチュエータを駆動する駆動系の油圧システムの部分は、エンジン11により駆動されるメインポンプ14から、センタバイパス油路40やパラレル油路を経て作動油タンクまで作動油を循環させる。
センタバイパス油路40は、センタバイパス油路40L,40Rを含む。
センタバイパス油路40Lは、メインポンプ14Lを起点として、コントロールバルブ17内に配置される制御弁171,173,175L,176Lを順に通過し、作動油タンクに至る。
センタバイパス油路40Rは、メインポンプ14Rを起点として、コントロールバルブ17内に配置される制御弁172,174,175R,176Rを順に通過し、作動油タンクに至る。
制御弁171は、メインポンプ14Lから吐出される作動油を走行油圧モータ2MLへ供給し、且つ、走行油圧モータ2MLが吐出する作動油を作動油タンクに排出させるスプール弁である。
制御弁172は、メインポンプ14Rから吐出される作動油を走行油圧モータ2MRへ供給し、且つ、走行油圧モータ2MRが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
制御弁173は、メインポンプ14Lから吐出される作動油を旋回油圧モータ2Aへ供給し、且つ、旋回油圧モータ2Aが吐出する作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
制御弁174は、メインポンプ14Rから吐出される作動油をバケットシリンダ9へ供給し、且つ、バケットシリンダ9内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
制御弁175L,175Rは、それぞれ、メインポンプ14L,14Rが吐出する作動油をブームシリンダ7へ供給し、且つ、ブームシリンダ7内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
制御弁176L,176Rは、それぞれ、メインポンプ14L,14Rが吐出する作動油をアームシリンダ8へ供給し、且つ、アームシリンダ8内の作動油を作動油タンクへ排出させるスプール弁である。
制御弁171,172,173,174,175L,175R,176L,176Rは、それぞれ、パイロットポートに作用するパイロット圧に応じて、油圧アクチュエータに給排される作動油の流量を調整したり、流れる方向を切り換えたりする。
パラレル油路42は、パラレル油路42L,42Rを含む。
パラレル油路42Lは、センタバイパス油路40Lと並列的に、制御弁171,173,175L,176Lにメインポンプ14Lの作動油を供給する。具体的には、パラレル油路42Lは、制御弁171の上流側でセンタバイパス油路40Lから分岐し、制御弁171,173,175L,176Rのそれぞれに並列してメインポンプ14Lの作動油を供給可能に構成される。これにより、パラレル油路42Lは、制御弁171,173,175Lの何れかによってセンタバイパス油路40Lを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
パラレル油路42Rは、センタバイパス油路40Rと並列的に、制御弁172,174,175R,176Rにメインポンプ14Rの作動油を供給する。具体的には、パラレル油路42Rは、制御弁172の上流側でセンタバイパス油路40Rから分岐し、制御弁172,174,175R,176Rのそれぞれに並列してメインポンプ14Rの作動油を供給可能に構成される。パラレル油路42Rは、制御弁172,174,175Rの何れかによってセンタバイパス油路40Rを通る作動油の流れが制限或いは遮断された場合に、より下流の制御弁に作動油を供給できる。
レギュレータ13L,13Rは、それぞれ、コントローラ30による制御下で、メインポンプ14L、14Rの斜板の傾転角を調節することによって、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節する。
吐出圧センサ28Lは、メインポンプ14Lの吐出圧を検出し、検出された吐出圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。吐出圧センサ28Rについても同様である。これにより、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御することができる。
センタバイパス油路40L,40Rには、最も下流にある制御弁176L,176Rのそれぞれと作動油タンクとの間には、ネガティブコントロール絞り(以下、「ネガコン絞り」)18L,18Rが設けられる。これにより、メインポンプ14L,14Rにより吐出された作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rで制限される。そして、ネガコン絞り18L、18Rは、レギュレータ13L,13Rを制御するための制御圧(以下、「ネガコン圧」)を発生させる。
ネガコン圧センサ19L,19Rは、ネガコン圧を検出し、検出されたネガコン圧に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
コントローラ30は、吐出圧センサ28L,28Rにより検出されるメインポンプ14L,14Rの吐出圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御し、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節してよい。例えば、コントローラ30は、メインポンプ14Lの吐出圧の増大に応じて、レギュレータ13Lを制御し、メインポンプ14Lの斜板傾転角を調節することにより、吐出量を減少させてよい。レギュレータ13Rについても同様である。これにより、コントローラ30は、吐出圧と吐出量との積で表されるメインポンプ14L,14Rの吸収馬力がエンジン11の出力馬力を超えないように、メインポンプ14L,14Rの全馬力制御を行うことができる。
また、コントローラ30は、ネガコン圧センサ19L,19Rにより検出されるネガコン圧に応じて、レギュレータ13L,13Rを制御することにより、メインポンプ14L,14Rの吐出量を調節してよい。例えば、コントローラ30は、ネガコン圧が大きいほどメインポンプ14L,14Rの吐出量を減少させ、ネガコン圧が小さいほどメインポンプ14L,14Rの吐出量を増大させる。
具体的には、ショベル100における油圧アクチュエータが何れも操作されていない待機状態(図3に示す状態)の場合、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油は、センタバイパス油路40L,40Rを通ってネガコン絞り18L、18Rに至る。そして、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rの上流で発生するネガコン圧を増大させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出量を許容最小吐出量まで減少させ、吐出した作動油がセンタバイパス油路40L,40Rを通過する際の圧力損失(ポンピングロス)を抑制する。
一方、何れかの油圧アクチュエータが操作装置26を通じて操作された場合、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油は、操作対象の油圧アクチュエータに対応する制御弁を介して、操作対象の油圧アクチュエータに流れ込む。そして、メインポンプ14L,14Rから吐出される作動油の流れは、ネガコン絞り18L,18Rに至る量を減少或いは消失させ、ネガコン絞り18L,18Rの上流で発生するネガコン圧を低下させる。その結果、コントローラ30は、メインポンプ14L,14Rの吐出量を増大させ、操作対象の油圧アクチュエータに十分な作動油を循環させ、操作対象の油圧アクチュエータを確実に駆動させることができる。
また、図3、図4に示すように、ショベル100の油圧システムにおいて、操作系に関する油圧システム部分は、パイロットポンプ15と、操作装置26(左操作レバー26L、右操作レバー26R、左走行レバー26DL、及び右走行レバー26DR)と、比例弁31と、シャトル弁32と、減圧用比例弁33とを含む。
比例弁31は、パイロットポンプ15とシャトル弁32とを接続するパイロットラインに設けられ、その流路面積(作動油が通流可能な断面積)を変更できるように構成される。比例弁31は、コントローラ30から入力される制御指令に応じて動作する。これにより、コントローラ30は、オペレータにより操作装置26(具体的には、左操作レバー26L、右操作レバー26R)が操作されていない場合であっても、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31及びシャトル弁32を介し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁(具体的には、制御弁173~176)のパイロットポートに供給できる。そのため、コントローラ30は、比例弁31を制御することにより、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能を実現することができる。比例弁31は、比例弁31AL,31AR,31BL,31BR,31CL,31CR,31DL,31DRを含む。
シャトル弁32は、2つの入口ポートと1つの出口ポートを有し、2つの入口ポートに入力されたパイロット圧のうちの高い方のパイロット圧を有する作動油を出口ポートに出力させる。シャトル弁32は、2つの入口ポートのうちの一方が操作装置26に接続され、他方が比例弁31に接続される。シャトル弁32の出口ポートは、パイロットラインを通じて、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートに接続されている。そのため、シャトル弁32は、操作装置26が生成するパイロット圧と比例弁31が生成するパイロット圧のうちの高い方を、対応する制御弁のパイロットポートに作用させることができる。つまり、コントローラ30は、操作装置26から出力される二次側のパイロット圧よりも高いパイロット圧を比例弁31から出力させることにより、オペレータによる操作装置26の操作に依らず、対応する制御弁を制御し、下部走行体1、上部旋回体3、アタッチメントATの動作を制御することができる。シャトル弁32は、シャトル弁32AL,32AR,32BL,32BR,32CL,32CR,32DL,32DRを含む。
減圧用比例弁33は、操作装置26とシャトル弁32とを接続するパイロットラインに設けられる。減圧用比例弁33は、例えば、その流路面積を変更できるように構成される。減圧用比例弁33は、コントローラ30から入力される制御指令に応じて動作する。これにより、コントローラ30は、オペレータにより操作装置26(具体的には、レバー装置26A~26C)が操作されている場合に、操作装置26から出力されるパイロット圧を強制的に減圧させることができる。そのため、コントローラ30は、操作装置26が操作されている場合であっても、操作装置26の操作に対応する油圧アクチュエータの動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、コントローラ30は、例えば、操作装置26が操作されている場合であっても、操作装置26から出力されるパイロット圧を減圧させ、比例弁31から出力されるパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31及び減圧用比例弁33を制御することで、例えば、操作装置26の操作内容とは無関係に、所望のパイロット圧をコントロールバルブ17内の制御弁のパイロットポートに確実に作用させることができる。よって、コントローラ30は、例えば、比例弁31に加えて、減圧用比例弁33を制御することで、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能をより適切に実現することができる。減圧用比例弁33は、後述の如く、減圧用比例弁33AL,33AR,33BL,33BR,33CL,33CR,33DL,33DRを含む。
また、減圧用比例弁33は、切替弁に置換されてもよい。切替弁は、コントローラ30による制御下で、操作装置26とシャトル弁32との間のパイロットラインの連通状態と、非連通状態とを切り替える。
図4Aに示すように、左操作レバー26Lは、オペレータが前後方向に傾倒する態様で、アーム5に対応するアームシリンダ8を操作するために用いられる。つまり、左操作レバー26Lは、前後方向に傾倒される場合、アーム5の動作を操作対象とする。左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、前後方向への操作内容に応じたパイロット圧を二次側に出力する。
シャトル弁32ALは、二つの入口ポートが、それぞれ、アーム5の閉じ方向の操作(以下、「アーム閉じ操作」)に対応する左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインと、比例弁31ALの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが制御弁176Lの右側のパイロットポート及び制御弁176Rの左側のパイロットポートに接続される。
シャトル弁32ARは、二つの入口ポートが、それぞれ、アーム5の開き方向の操作(以下、「アーム開き操作」)に対応する左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインと、比例弁31ARの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが制御弁176Lの左側のパイロットポート及び制御弁176Rの右側のパイロットポートに接続される。
つまり、左操作レバー26Lは、シャトル弁32AL,32ARを介して、前後方向への操作内容に応じたパイロット圧を制御弁176L、176Rのパイロットポートに作用させる。具体的には、左操作レバー26Lは、アーム閉じ操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32ALの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32ALを介して、制御弁176Lの右側のパイロットポートと制御弁176Rの左側のパイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、アーム開き操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32ARの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32ARを介して、制御弁176Lの左側のパイロットポートと制御弁176Rの右側のパイロットポートに作用させる。
比例弁31ALは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31ALは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32ALの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31ALは、シャトル弁32ALを介して、制御弁176Lの右側のパイロットポート及び制御弁176Rの左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
比例弁31ARは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31ARは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32ARの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31ARは、シャトル弁32ARを介して、制御弁176Lの左側のパイロットポート及び制御弁176Rの右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
つまり、比例弁31AL、31ARは、左操作レバー26Lの操作状態に依らず、制御弁176L,176Rを任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
減圧用比例弁33ALは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33ALは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、左操作レバー26Lのアーム閉じ操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33ALは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、左操作レバー26Lのアーム閉じ操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32ALの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33ALは、左操作レバー26Lでアーム閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、アーム閉じ操作に対応するアームシリンダ8の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33ALは、左操作レバー26Lでアーム閉じ操作がされている場合であっても、シャトル弁32ALの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31ALからシャトル弁32ALの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31AL及び減圧用比例弁33ALを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁176L,176Rのアーム閉じ側のパイロットポートに作用させることができる。
減圧用比例弁33ARは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33ARは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、左操作レバー26Lのアーム開き操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33ARは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、左操作レバー26Lのアーム開き操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32ARの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33ARは、左操作レバー26Lでアーム開き操作が行われている場合であっても、必要に応じて、アーム開き操作に対応するアームシリンダ8の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33ARは、左操作レバー26Lでアーム開き操作がされている場合であっても、シャトル弁32ARの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31ARからシャトル弁32ARの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31AR及び減圧用比例弁33ARを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁176L,176Rのアーム開き側のパイロットポートに作用させることができる。
このように、減圧用比例弁33AL,33ARは、左操作レバー26Lの前後方向への操作状態に対応するアームシリンダ8の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33AL,33ARは、シャトル弁32AL,32ARの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を低下させ、比例弁31AL,31ARのパイロット圧がシャトル弁32AL,32ARを通じて確実に制御弁176L,176Rのパイロットポートに作用するように補助することができる。
尚、コントローラ30は、減圧用比例弁33ALを制御する代わりに、比例弁31ARを制御することによって、左操作レバー26Lのアーム閉じ操作に対応するアームシリンダ8の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。例えば、コントローラ30は、左操作レバー26Lでアーム閉じ操作が行われる場合に、比例弁31ARを制御し、比例弁31ARからシャトル弁32ARを介して制御弁176L,176Rのアーム開き側のパイロットポートに所定のパイロット圧を作用させてよい。これにより、左操作レバー26Lからシャトル弁32ALを介して制御弁176L,176Rのアーム閉じ側のパイロットポートに作用するパイロット圧に対抗する形で、制御弁176L,176Rのアーム開き側のパイロットポートにパイロット圧が作用する。そのため、コントローラ30は、制御弁176L,176Rを強制的に中立位置に近づけて、左操作レバー26Lのアーム閉じ操作に対応するアームシリンダ8の動作を抑制させたり停止させたりすることができる。同様に、コントローラ30は、減圧用比例弁33ARを制御する代わりに、比例弁31ALを制御することによって、左操作レバー26Lのアーム開き操作に対応するアームシリンダ8の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。
また、減圧用比例弁33AL,33ARは、それぞれ、切替弁に置換されてもよい。以下、減圧用比例弁33BL,33BR,33CL,33CR,33DL,33DRについても同様であってよい。
減圧用比例弁33ALに対応する切替弁は、アーム閉じ操作に対応する左操作レバー26Lの二次側ポートと、シャトル弁32ALとの間のパイロットラインに設けられ、コントローラ30から入力される制御指令に応じて、当該パイロットラインの連通・非連通を切り替える。例えば、当該切替弁は、通常、当該パイロットラインを連通状態に維持する常開型であり、コントローラ30からの制御指令に応じて、当該パイロットラインを非連通にし、左操作レバー26Lから出力される、アーム閉じ操作に対応する作動油を作動油タンクに排出してよい。
減圧用比例弁33ARに対応する切替弁は、アーム開き操作に対応する左操作レバー26Lの二次側ポートと、シャトル弁32ARとの間のパイロットラインに設けられ、コントローラ30から入力される制御指令に応じて、当該パイロットラインの連通・非連通を切り替える。例えば、当該切替弁は、通常、当該パイロットラインを連通状態に維持する常開型であり、コントローラ30からの制御指令に応じて、当該パイロットラインを非連通にし、左操作レバー26Lから出力される、アーム開き操作に対応する作動油を作動油タンクに排出してよい。
つまり、切替弁は、シャトル弁32AL,32ARに左操作レバー26Lにおけるアーム5の操作に対応するパイロット圧が入力されないようにすることができる。
操作圧センサ29LAは、オペレータによる左操作レバー26Lに対する前後方向への操作内容を圧力(操作圧)の形で検出し、検出された圧力に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、左操作レバー26Lに対する前後方向への操作内容を把握できる。検出対象の左操作レバー26Lに対する前後方向への操作内容には、例えば、操作方向、操作量(操作角度)等が含まれうる。以下、左操作レバー26Lに対する左右方向の操作内容、並びに、右操作レバー26Rに対する前後方向及び左右方向の操作内容についても同様である。
コントローラ30は、オペレータによる左操作レバー26Lに対するアーム閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31AL及びシャトル弁32ALを介して、制御弁176Lの右側のパイロットポート及び制御弁176Rの左側のパイロットポートに供給できる。また、コントローラ30は、オペレータによる左操作レバー26Lに対するアーム開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31AR及びシャトル弁32ARを介して、制御弁176Lの左側のパイロットポート及び制御弁176Rの右側のパイロットポートに供給させることができる。即ち、コントローラ30は、アーム5の開閉動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
また、コントローラ30は、上述の如く、減圧用比例弁33AL,33ARや切替弁を制御し、アーム5の操作に対応する左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインからシャトル弁32AL,32ARに入力されるパイロット圧を相対的に低くすることができる。これにより、コントローラ30は、左操作レバー26Lにおける前後方向の操作内容に対応させる形で、アーム5以外の動作要素(例えば、ブーム4やバケット6)を後述のマスタ要素として動作させ、アーム5をマスタ要素に合わせて動作する後述のスレーブ要素として動作させることができる。
また、例えば、図4Bに示すように、右操作レバー26Rは、オペレータが前後方向に傾倒する態様で、ブーム4に対応するブームシリンダ7を操作するために用いられる。つまり、右操作レバー26Rは、前後方向に傾倒される場合、ブーム4の動作を操作対象とする。右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、前後方向への操作内容に応じたパイロット圧を二次側に出力する。
シャトル弁32BLは、二つの入口ポートが、それぞれ、ブーム4の上げ方向の操作(以下、「ブーム上げ操作」)に対応する右操作レバー26Rの二次側のパイロットラインと、比例弁31BLの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁175Lの右側のパイロットポート及び制御弁175Rの左側のパイロットポートに接続される。
シャトル弁32BRは、二つの入口ポートが、それぞれ、ブーム4の下げ方向の操作(以下、「ブーム下げ操作」)に対応する右操作レバー26Rの二次側のパイロットラインと、比例弁31BRの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁175Rの右側のパイロットポートに接続される。
つまり、右操作レバー26Rは、シャトル弁32BL,32BRを介して、前後方向への操作内容に応じたパイロット圧を制御弁175L,175Rのパイロットポートに作用させる。具体的には、右操作レバー26Rは、ブーム上げ操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32BLの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32BLを介して、制御弁175Lの右側のパイロットポートと制御弁175Rの左側のパイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、ブーム下げ操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32BRの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32BRを介して、制御弁175Rの右側のパイロットポートに作用させる。
比例弁31BLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31BLは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32BLの他方の入口ポートに出力する。これにより、比例弁31BLは、シャトル弁32BLを介して、制御弁175Lの右側のパイロットポート及び制御弁175Rの左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
比例弁31BRは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31BRは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32BRの他方の入口ポートに出力する。これにより、比例弁31BRは、シャトル弁32BRを介して、制御弁175Rの右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
つまり、比例弁31BL,31BRは、右操作レバー26Rの操作状態に依らず、制御弁175L、175Rを任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
減圧用比例弁33BLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33BLは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、右操作レバー26Rのブーム上げ操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33BLは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、右操作レバー26Rのブーム上げ操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32BLの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33BLは、右操作レバー26Rでブーム上げ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、ブーム上げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33BLは、右操作レバー26Rでブーム上げ操作がされている場合であっても、シャトル弁32BLの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31BLからシャトル弁32BLの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31BL及び減圧用比例弁33BLを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁175L,175Rのブーム上げ側のパイロットポートに作用させることができる。
減圧用比例弁33BRは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33BRは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、右操作レバー26Rのブーム下げ操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33BRは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、右操作レバー26Rのブーム下げ操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32BRの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33BRは、右操作レバー26Rでブーム下げ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、ブーム下げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33BRは、右操作レバー26Rでブーム下げ操作がされている場合であっても、シャトル弁32BRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31BRからシャトル弁32BRの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31BR及び減圧用比例弁33BRを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁175L,175Rのブーム下げ側のパイロットポートに作用させることができる。
このように、減圧用比例弁33BL,33BRは、右操作レバー26Rの前後方向への操作状態に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33BL,33BRは、シャトル弁32BL,32BRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を低下させ、比例弁31BL,31BRのパイロット圧がシャトル弁32BL,32BRを通じて確実に制御弁175L,175Rのパイロットポートに作用するように補助することができる。
尚、コントローラ30は、減圧用比例弁33BLを制御する代わりに、比例弁31BRを制御することによって、右操作レバー26Rのブーム上げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。例えば、コントローラ30は、右操作レバー26Rでブーム上げ操作が行われる場合に、比例弁31BRを制御し、比例弁31BRからシャトル弁32BRを介して制御弁175L,175Rのブーム下げ側のパイロットポートに所定のパイロット圧を作用させてよい。これにより、右操作レバー26Rからシャトル弁32BLを介して制御弁175L,175Rのブーム上げ側のパイロットポートに作用するパイロット圧に対抗する形で、制御弁175L,175Rのブーム下げ側のパイロットポートにパイロット圧が作用する。そのため、コントローラ30は、制御弁175L,175Rを強制的に中立位置に近づけて、右操作レバー26Rのブーム上げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を抑制させたり停止させたりすることができる。同様に、コントローラ30は、減圧用比例弁33BRを制御する代わりに、比例弁31BLを制御することによって、右操作レバー26Rのブーム下げ操作に対応するブームシリンダ7の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。
操作圧センサ29RAは、オペレータによる右操作レバー26Rに対する前後方向への操作内容を圧力(操作圧)の形で検出し、検出された圧力に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、右操作レバー26Rに対する前後方向への操作内容を把握できる。
コントローラ30は、オペレータによる右操作レバー26Rに対するブーム上げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31BL及びシャトル弁32BLを介して、制御弁175Lの右側のパイロットポート及び制御弁175Rの左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータによる右操作レバー26Rに対するブーム下げ操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31BR及びシャトル弁32BRを介して、制御弁175Rの右側のパイロットポートに供給できる。即ち、コントローラ30は、ブーム4の上げ下げの動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
図4Cに示すように、右操作レバー26Rは、オペレータが左右方向に傾倒する態様で、バケット6に対応するバケットシリンダ9を操作するために用いられる。つまり、右操作レバー26Rは、左右方向に傾倒される場合、バケット6の動作を操作対象とする。右操作レバー26Rは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、左右方向への操作内容に応じたパイロット圧を二次側に出力する。
シャトル弁32CLは、二つの入口ポートが、それぞれ、バケット6の閉じ方向の操作(以下、「バケット閉じ操作」)に対応する右操作レバー26Rの二次側のパイロットラインと、比例弁31CLの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁174の左側のパイロットポートに接続される。
シャトル弁32CRは、二つの入口ポートが、それぞれ、バケット6の開き方向の操作(以下、「バケット開き操作」)に対応する右操作レバー26Rの二次側のパイロットラインと、比例弁31CRの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁174の右側のパイロットポートに接続される。
つまり、右操作レバー26Rは、シャトル弁32CL,32CRを介して、左右方向への操作内容に応じたパイロット圧を制御弁174のパイロットポートに作用させる。具体的には、右操作レバー26Rは、バケット閉じ操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32CLの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32CLを介して、制御弁174の左側のパイロットポートに作用させる。また、右操作レバー26Rは、バケット開き操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32CRの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32CRを介して、制御弁174の右側のパイロットポートに作用させる。
比例弁31CLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31CLは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32CLの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31CLは、シャトル弁32CLを介して、制御弁174の左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
比例弁31CRは、コントローラ30が出力する制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31CRは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32CRの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31CRは、シャトル弁32CRを介して、制御弁174の右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
つまり、比例弁31CL,31CRは、右操作レバー26Rの操作状態に依らず、制御弁174を任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
減圧用比例弁33CLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33CLは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、右操作レバー26Rのバケット閉じ操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33CLは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、右操作レバー26Rのバケット閉じ操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32CLの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33CLは、右操作レバー26Rでバケット閉じ操作が行われている場合であっても、必要に応じて、バケット閉じ操作に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33CLは、右操作レバー26Rでバケット閉じ操作がされている場合であっても、シャトル弁32CLの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31CLからシャトル弁32CLの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31CL及び減圧用比例弁33CLを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁174のバケット閉じ側のパイロットポートに作用させることができる。
減圧用比例弁33CRは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33CRは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、右操作レバー26Rのバケット開き操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33CRは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、右操作レバー26Rのバケット開き操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32CRの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33CRは、右操作レバー26Rでバケット開き操作が行われている場合であっても、必要に応じて、バケット開き操作に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33CRは、右操作レバー26Rでバケット開き操作がされている場合であっても、シャトル弁32CRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31CRからシャトル弁32CRの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31CR及び減圧用比例弁33CRを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁174のバケット開き側のパイロットポートに作用させることができる。
このように、減圧用比例弁33CL,33CRは、右操作レバー26Rの左右方向への操作状態に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33CL,33CRは、シャトル弁32CL,32CRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を低下させ、比例弁31CL,31CRのパイロット圧がシャトル弁32CL,32CRを通じて確実に制御弁174のパイロットポートに作用するように補助することができる。
尚、コントローラ30は、減圧用比例弁33CLを制御する代わりに、比例弁31CRを制御することによって、右操作レバー26Rのバケット閉じ操作に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。例えば、コントローラ30は、右操作レバー26Rでバケット閉じ操作が行われる場合に、比例弁31CRを制御し、比例弁31CRからシャトル弁32CRを介して制御弁174のバケット開き側のパイロットポートに所定のパイロット圧を作用させてよい。これにより、右操作レバー26Rからシャトル弁32CLを介して制御弁174のバケット閉じ側のパイロットポートに作用するパイロット圧に対抗する形で、制御弁174のバケット開き側のパイロットポートにパイロット圧が作用する。そのため、コントローラ30は、制御弁174を強制的に中立位置に近づけて、右操作レバー26Rのバケット閉じ操作に対応するバケットシリンダ9の動作を抑制させたり停止させたりすることができる。同様に、コントローラ30は、減圧用比例弁33CRを制御する代わりに、比例弁31CLを制御することによって、右操作レバー26Rのバケット開き操作に対応するバケットシリンダ9の動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。
操作圧センサ29RBは、オペレータによる右操作レバー26Rに対する左右方向への操作内容を圧力(操作圧)の形で検出し、検出された圧力に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、右操作レバー26Rの左右方向への操作内容を把握できる。
コントローラ30は、オペレータによる右操作レバー26Rに対するバケット閉じ操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31CL及びシャトル弁32CLを介して、制御弁174の左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータによる右操作レバー26Rに対するバケット開き操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31CR及びシャトル弁32CRを介して、制御弁174の右側のパイロットポートに供給させることができる。即ち、コントローラ30は、バケット6の開閉動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
また、例えば、図4Dに示すように、左操作レバー26Lは、オペレータが左右方向に傾倒する態様で、上部旋回体3(旋回機構2)に対応する旋回油圧モータ2Aを操作するために用いられる。つまり、左操作レバー26Lは、左右方向に傾倒される場合、上部旋回体3の旋回動作を操作対象とする。左操作レバー26Lは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、左右方向への操作内容に応じたパイロット圧を二次側に出力する。
シャトル弁32DLは、二つの入口ポートが、それぞれ、上部旋回体3の左方向の旋回操作(以下、「左旋回操作」)に対応する左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインと、比例弁31DLの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁173の左側のパイロットポートに接続される。
シャトル弁32DRは、二つの入口ポートが、それぞれ、上部旋回体3の右方向の旋回操作(以下、「右旋回操作」)に対応する左操作レバー26Lの二次側のパイロットラインと、比例弁31DRの二次側のパイロットラインとに接続され、出口ポートが、制御弁173の右側のパイロットポートに接続される。
つまり、左操作レバー26Lは、シャトル弁32DL,32DRを介して、左右方向への操作内容に応じたパイロット圧を制御弁173のパイロットポートに作用させる。具体的には、左操作レバー26Lは、左旋回操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32DLの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32DLを介して、制御弁173の左側のパイロットポートに作用させる。また、左操作レバー26Lは、右旋回操作された場合に、操作量に応じたパイロット圧をシャトル弁32DRの一方の入口ポートに出力し、シャトル弁32DRを介して、制御弁173の右側のパイロットポートに作用させる。
比例弁31DLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31DLは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32DLの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31DLは、シャトル弁32DLを介して、制御弁173の左側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
比例弁31DRは、コントローラ30が出力する制御電流に応じて動作する。具体的には、比例弁31DRは、パイロットポンプ15から吐出される作動油を利用して、コントローラ30から入力される制御電流に応じたパイロット圧をシャトル弁32DRの他方のパイロットポートに出力する。これにより、比例弁31DRは、シャトル弁32DRを介して、制御弁173の右側のパイロットポートに作用するパイロット圧を調整することができる。
つまり、比例弁31DL,31DRは、左操作レバー26Lの操作状態に依らず、制御弁173を任意の弁位置で停止できるように、二次側に出力するパイロット圧を調整することができる。
減圧用比例弁33DLは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33DLは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、左操作レバー26Lの左旋回操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33DLは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、左操作レバー26Lの左旋回操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32DLの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33DLは、左操作レバー26Lで左旋回操作が行われている場合であっても、必要に応じて、左旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33DLは、左操作レバー26Lで左旋回操作がされている場合であっても、シャトル弁32DLの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31DLからシャトル弁32DLの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31DL及び減圧用比例弁33DLを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁173の左旋回側のパイロットポートに作用させることができる。
減圧用比例弁33DRは、コントローラ30から入力される制御電流に応じて動作する。具体的には、減圧用比例弁33DRは、コントローラ30からの制御電流が入力されない場合、左操作レバー26Lの右旋回操作に対応するパイロット圧をそのまま二次側に出力する。一方、減圧用比例弁33DRは、コントローラ30からの制御電流が入力される場合、左操作レバー26Lの右旋回操作に対応する二次側のパイロットラインのパイロット圧を制御電流に応じた程度に減圧し、減圧したパイロット圧をシャトル弁32DRの一方の入口ポートに出力する。これにより、減圧用比例弁33DRは、左操作レバー26Lで右旋回操作が行われている場合であっても、必要に応じて、右旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33DRは、左操作レバー26Lで右旋回操作がされている場合であっても、シャトル弁32DRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を、比例弁31DRからシャトル弁32DRの他方の入口ポートに作用するパイロット圧よりも低くすることができる。そのため、コントローラ30は、比例弁31DR及び減圧用比例弁33DRを制御し、所望のパイロット圧を確実に制御弁173の右旋回側のパイロットポートに作用させることができる。
このように、減圧用比例弁33DL,33DRは、左操作レバー26Lの左右方向への操作状態に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりすることができる。また、減圧用比例弁33DL,33DRは、シャトル弁32DL,32DRの一方の入口ポートに作用するパイロット圧を低下させ、比例弁31DL,31DRのパイロット圧がシャトル弁32DL,32DRを通じて確実に制御弁173のパイロットポートに作用するように補助することができる。
尚、コントローラ30は、減圧用比例弁33DLを制御する代わりに、比例弁31DRを制御することによって、左操作レバー26Lの左旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。例えば、コントローラ30は、左操作レバー26Lで左旋回操作が行われる場合に、比例弁31DRを制御し、比例弁31DRからシャトル弁32DRを介して制御弁173の右旋回側のパイロットポートに所定のパイロット圧を作用させてよい。これにより、左操作レバー26Lからシャトル弁32DLを介して制御弁173の左旋回側のパイロットポートに作用するパイロット圧に対抗する形で、制御弁173の右旋回側のパイロットポートにパイロット圧が作用する。そのため、コントローラ30は、制御弁173を強制的に中立位置に近づけて、左操作レバー26Lの左旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を抑制させたり停止させたりすることができる。同様に、コントローラ30は、減圧用比例弁33DRを制御する代わりに、比例弁31DLを制御することによって、左操作レバー26Lの右旋回操作に対応する旋回油圧モータ2Aの動作を強制的に抑制させたり停止させたりしてもよい。
操作圧センサ29LBは、オペレータによる左操作レバー26Lに対する操作状態を圧力として検出し、検出された圧力に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。これにより、コントローラ30は、左操作レバー26Lに対する左右方向への操作内容を把握できる。
コントローラ30は、オペレータによる左操作レバー26Lに対する左旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31DL及びシャトル弁32DLを介して、制御弁173の左側のパイロットポートに供給させることができる。また、コントローラ30は、オペレータによる左操作レバー26Lに対する右旋回操作とは無関係に、パイロットポンプ15から吐出される作動油を、比例弁31DR及びシャトル弁32DRを介して、制御弁173の右側のパイロットポートに供給させることができる。即ち、コントローラ30は、上部旋回体3の左右方向への旋回動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
尚、下部走行体1についても、ブーム4、アーム5、バケット6、及び上部旋回体3と同様に、コントローラ30による自動制御が可能な構成が採用されてもよい。この場合、例えば、左走行レバー26DL及び右走行レバー26DRのそれぞれと、制御弁171,172との間の二次側のパイロットラインには、シャトル弁32が設置されると共に、当該シャトル弁32に接続され、コントローラ30による制御が可能な比例弁31が設置されるとよい。これにより、コントローラ30は、当該比例弁31に制御電流を出力することで、下部走行体1の走行動作を自動制御し、ショベル100の自動運転機能や遠隔操作機能等を実現することができる。
続いて、本実施形態に係るショベル100の制御システムは、コントローラ30と、空間認識装置70と、向き検出装置71と、入力装置72と、測位装置73と、表示装置D1と、音声出力装置D2と、ブーム角度センサS1と、アーム角度センサS2と、バケット角度センサS3と、機体傾斜センサS4と、旋回状態センサS5とを含む。
コントローラ30は、上述の如く、ショベル100に関する制御を行う。
例えば、コントローラ30は、オペレータ等の入力装置72に対する所定操作により予め設定される作業モード等に基づき、目標回転数を設定し、エンジン11を一定回転させる駆動制御を行う。
また、例えば、コントローラ30は、必要に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力し、メインポンプ14の吐出量を変化させる。
また、例えば、コントローラ30は、操作装置26が電気式である場合、上述の如く、比例弁31を制御し、操作装置26の操作内容に応じた油圧アクチュエータの動作を実現してよい。
また、例えば、コントローラ30は、比例弁31を用いて、ショベル100の遠隔操作を実現してよい。具体的には、コントローラ30は、外部装置から受信される遠隔操作信号で指定される遠隔操作の内容に対応する制御指令を比例弁31に出力してよい。そして、比例弁31は、パイロットポンプ15から供給される作動油を用いて、コントローラ30からの制御指令に対応するパイロット圧を出力し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートにそのパイロット圧を作用させてよい。これにより、遠隔操作の内容がコントロールバルブ17の動作に反映され、油圧アクチュエータによって、遠隔操作の内容に沿った各種動作要素(被駆動要素)の動作が実現される。
また、例えば、コントローラ30は、周辺監視機能に関する制御を行う。周辺監視機能では、空間認識装置70で取得される情報に基づき、ショベル100の周囲の所定範囲(以下、「監視範囲」)内への監視対象の物体の進入が監視される。監視範囲内への監視対象の物体の進入の判断処理は、空間認識装置70によって行われてもよいし、空間認識装置70の外部(例えば、コントローラ30)によって行われてもよい。監視対象の物体には、例えば、人、トラック、他の建設機械、電柱、吊り荷、パイロン、建屋等が含まれてよい。
また、例えば、コントローラ30は、物体検出報知機能に関する制御を行う。物体検出報知機能では、周辺監視機能によって、監視範囲内に監視対象の物体が存在すると判断される場合に、キャビン10内のオペレータやショベル100の周囲に対する監視対象の物体の存在が報知される。コントローラ30は、例えば、表示装置D1や音声出力装置D2を用いて、物体検出報知機能を実現してよい。
また、例えば、コントローラ30は、動作制限機能に関する制御を行う。動作制限機能では、例えば、周辺監視機能によって、監視対象内に監視対象の物体が存在すると判断される場合に、ショベル100の動作を制限する。以下、監視対象の物体が人である場合を中心に説明する。
コントローラ30は、例えば、アクチュエータが動作する前において、空間認識装置70の取得情報に基づきショベル100から所定範囲内(監視範囲内)に人等の監視対象の物体が存在すると判断される場合、オペレータが操作装置26を操作しても、アクチュエータを動作不能、或いは、微速状態での動作に制限してよい。具体的には、コントローラ30は、監視範囲内に人が存在すると判断される場合、ゲートロック弁をロック状態にすることでアクチュエータを動作不能にすることができる。電気式の操作装置26の場合には、コントローラ30から操作用比例弁(比例弁31)への信号を無効にすることで、アクチュエータを動作不能にすることができる。他の方式の操作装置26でも、コントローラ30からの制御指令に対応するパイロット圧を出力し、コントロールバルブ17内の対応する制御弁のパイロットポートにそのパイロット圧を作用させる操作用比例弁(比例弁31)が用いられる場合には、同様である。アクチュエータの動作を微速にしたい場合には、コントローラ30から操作用比例弁(比例弁31)への制御信号を相対的に小さいパイロット圧に対応する内容に制限することで、アクチュエータの動作を微速状態にすることができる。このように、検出される監視対象の物体が監視範囲内に存在すると判断されると、操作装置26が操作されてもアクチュエータは駆動されない、或いは、操作装置26への操作入力に対応する動作速度よりも小さい動作速度(微速)で駆動される。更に、オペレータが操作装置26を操作している最中において、監視範囲内に人等の監視対象の物体が存在すると判断される場合には、オペレータの操作に関わらずアクチュエータの動作を停止、或いは、減速させてもよい。具体的には、監視範囲内に人が存在すると判断される場合、ゲートロック弁をロック状態にすることでアクチュエータを停止させてよい。コントローラ30からの制御指令に対応するパイロット圧を出力し、コントロールバルブ内の対応する制御弁のパイロットポートにそのパイロット圧を作用させる操作用比例弁(比例弁31)が用いられる場合には、コントローラ30から操作用比例弁(比例弁31)への信号を無効にする、或いは、操作用比例弁(比例弁31)に減速指令を出力することで、アクチュエータを動作不能、或いは、微速状態の動作に制限することができる。また、検出された監視対象の物体がトラックの場合、アクチュエータの停止或いは減速に関する制御は実施されなくてもよい。例えば、検出されたトラックを回避するようにアクチュエータは制御されてよい。このように、検出された物体の種類が認識され、その認識に基づきアクチュエータは制御されてよい。
空間認識装置70は、ショベル100の周囲の三次元空間に存在する物体を認識し、空間認識装置70或いはショベル100から認識された物体までの距離等の位置関係を測定(演算)するように構成される。空間認識装置70は、例えば、超音波センサ、ミリ波レーダ、単眼カメラ、ステレオカメラ、LIDAR(Light Detecting and Ranging)、距離画像センサ、赤外線センサ等を含みうる。本実施形態では、空間認識装置70は、キャビン10の上面前端に取り付けられた前方認識センサ70F、上部旋回体3の上面後端に取り付けられた後方認識センサ70B、上部旋回体3の上面左端に取り付けられた左方認識センサ70L、及び、上部旋回体3の上面右端に取り付けられた右方認識センサ70Rを含む。また、上部旋回体3の上方の空間に存在する物体を認識する上方認識センサがショベル100に取り付けられていてもよい。
向き検出装置71は、上部旋回体3の向きと下部走行体1の向きとの相対的な関係に関する情報(例えば、下部走行体1に対する上部旋回体3の旋回角度)を検出する。
向き検出装置71は、例えば、下部走行体1に取り付けられた地磁気センサと上部旋回体3に取り付けられた地磁気センサの組み合わせを含んでよい。また、向き検出装置71は、下部走行体1に取り付けられたGNSS受信機と上部旋回体3に取り付けられたGNSS受信機の組み合わせを含んでもよい。また、向き検出装置71は、上部旋回体3の下部走行体1に対する相対的な旋回角度を検出可能なロータリエンコーダ、ロータリポジションセンサ等、つまり、上述の旋回状態センサS5を含んでもよく、例えば、下部走行体1と上部旋回体3との間の相対回転を実現する旋回機構2に関連して設けられるセンタージョイントに取り付けられていてもよい。また、向き検出装置71は、上部旋回体3に取り付けられたカメラを含んでもよい。この場合、向き検出装置71は、上部旋回体3に取り付けられているカメラが撮像した画像(入力画像)に既知の画像処理を施すことにより、入力画像に含まれる下部走行体1の画像を検出する。そして、向き検出装置71は、既知の画像認識技術を用いて、下部走行体1の画像を検出することで、下部走行体1の長手方向を特定し、上部旋回体3の前後軸の方向と下部走行体1の長手方向との間に形成される角度を導出してよい。このとき、上部旋回体3の前後軸の方向は、カメラの取り付け位置から導出されうる。特に、クローラ1Cは上部旋回体3から突出しているため、向き検出装置71は、クローラ1Cの画像を検出することにより、下部走行体1の長手方向を特定することができる。
尚、上部旋回体3が旋回油圧モータ2Aに代えて、電動機で旋回駆動される構成の場合、向き検出装置71は、レゾルバであってよい。
入力装置72は、キャビン10内の着座したオペレータから手が届く範囲に設けられ、オペレータによる各種操作入力を受け付け、操作入力に応じた信号をコントローラ30に出力する。例えば、入力装置72は、各種情報画像を表示する表示装置のディスプレイに実装されるタッチパネルを含みうる。また、例えば、入力装置72は、表示装置D1の周囲に設置されるボタンスイッチ、レバー、トグル等を含みうる。また、入力装置72は、操作装置26に設けられるノブスイッチ(例えば、左操作レバー26Lに設けられるスイッチNS等)を含みうる。入力装置72に対する操作内容に対応する信号は、コントローラ30に取り込まれる。
スイッチNSは、例えば、左操作レバー26Lの先端に設けられた押しボタンスイッチである。オペレータは、スイッチNSを押しながら左操作レバー26Lを操作できる。また、スイッチNSは、右操作レバー26Rに設けられていてもよく、キャビン10内の他の位置に設けられていてもよい。
測位装置73は、上部旋回体3の位置及び向きを測定する。測位装置73は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)コンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを検出し、上部旋回体3の位置及び向きに対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。また、測位装置73の機能のうちの上部旋回体3の向きを検出する機能は、上部旋回体3に取り付けられた方位センサにより代替されてもよい。
表示装置D1は、キャビン10内の着座したオペレータから視認し易い場所に設けられ、コントローラ30による制御下で、各種情報画像を表示する。表示装置D1は、CAN(Controller Area Network)等の車載通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよいし、一対一の専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
音声出力装置D2は、例えば、キャビン10内に設けられ、コントローラ30と接続され、コントローラ30による制御下で、音声を出力する。音声出力装置D2は、例えば、スピーカやブザー等である。音声出力装置D2は、コントローラ30からの音声出力指令に応じて各種情報を音声出力する。
ブーム角度センサS1は、ブーム4に取り付けられ、ブーム4の上部旋回体3に対する俯仰角度(以下、「ブーム角度」)、例えば、側面視において、上部旋回体3の旋回平面に対してブーム4の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。ブーム角度センサS1は、例えば、ロータリエンコーダ、加速度センサ、ジャイロセンサ(角速度センサ)、6軸センサ、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)等を含んでよく、以下、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4についても同様である。ブーム角度センサS1によるブーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
アーム角度センサS2は、アーム5に取り付けられ、アーム5のブーム4に対する回動角度(以下、「アーム角度」)、例えば、側面視において、ブーム4の両端の支点を結ぶ直線に対してアーム5の両端の支点を結ぶ直線が成す角度を検出する。アーム角度センサS2によるアーム角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
バケット角度センサS3は、バケット6に取り付けられ、バケット6のアーム5に対する回動角度(以下、「バケット角度」)、例えば、側面視において、アーム5の両端の支点を結ぶ直線に対してバケット6の支点と先端(刃先)とを結ぶ直線が成す角度を検出する。バケット角度センサS3によるバケット角度に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
機体傾斜センサS4は、水平面に対する機体(例えば、上部旋回体3)の傾斜状態を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、上部旋回体3に取り付けられ、ショベル100(即ち、上部旋回体3)の前後方向及び左右方向の2軸回りの傾斜角度(以下、「前後傾斜角」及び「左右傾斜角」)を検出する。機体傾斜センサS4は、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ(角速度センサ)、6軸センサ、IMU等を含んでよい。機体傾斜センサS4による傾斜角度(前後傾斜角及び左右傾斜角)に対応する検出信号は、コントローラ30に取り込まれる。
旋回状態センサS5は、上部旋回体3に取り付けられ、上部旋回体3の旋回状態に関する検出情報を出力する。旋回状態センサS5は、例えば、上部旋回体3の旋回角速度や旋回角度を検出する。旋回状態センサS5は、例えば、ジャイロセンサ、レゾルバ、ロータリエンコーダ等を含む。
尚、機体傾斜センサS4に3軸回りの角速度を検出可能なジャイロセンサ、6軸センサ、IMU等が含まれる場合、機体傾斜センサS4の検出信号に基づき上部旋回体3の旋回状態(例えば、旋回角速度)が検出されてもよい。この場合、旋回状態センサS5は、省略されうる。
[ショベルのマシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能の概要]
次に、図5を参照して、ショベルのマシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能の概要について説明する。
図5は、ショベル100のマシンガイダンス機能及びマシンコントロール機能に関する構成の一例を示すブロック図である。
コントローラ30は、例えば、オペレータによるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能に関するショベル100の制御を実行する。
コントローラ30は、例えば、目標施工面(設計面の一例)とアタッチメントATの先端部、具体的には、エンドアタッチメントの作業部位との距離等の作業情報を、表示装置D1や音声出力装置D2等を通じて、オペレータに伝える。具体的には、コントローラ30は、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、機体傾斜センサS4、旋回状態センサS5、空間認識装置70、測位装置V1、入力装置72等から情報を取得する。そして、コントローラ30は、例えば、取得した情報に基づき、バケット6と目標施工面との間の距離を算出し、表示装置D1に表示される画像や音声出力装置D2から出力される音声により、算出した距離をオペレータに通知してよい。目標施工面に関するデータは、例えば、オペレータによる入力装置72を通じた設定入力に基づき、或いは、外部(例えば、所定の管理サーバ)からのダウンロードされることにより、内部メモリやコントローラ30に接続される外部記憶装置等に記憶されている。目標施工面に関するデータは、例えば、基準座標系で表現されている。基準座標系は、例えば、世界測地系である。世界測地系は、地球の重心に原点をおき、X軸をグリニッジ子午線と赤道との交点の方向に、Y軸を東経90度の方向に、そして、Z軸を北極の方向にとる三次元直交XYZ座標系である。例えば、オペレータは、施工現場の任意の点を基準点と定め、入力装置72を通じて、基準点との相対的な位置関係により目標施工面を設定してよい。バケット6の作業部位は、例えば、バケット6の爪先、バケット6の背面等である。また、エンドアタッチメントとして、バケット6の代わりに、例えば、ブレーカが採用される場合、ブレーカの先端部が作業部位に相当する。これにより、コントローラ30は、表示装置D1、音声出力装置D2等を通じて、作業情報をオペレータに通知し、オペレータによる操作装置26を通じたショベル100の操作をガイドすることができる。
また、コントローラ30は、例えば、オペレータによるショベル100の手動操作を支援したり、ショベル100を自動的或いは自律的に動作させたりするマシンコントロール機能に関するショベル100の制御を実行する。具体的には、コントローラ30は、アタッチメントの作業部位等に設定される、制御基準となる位置(以下、単に「制御基準」)が辿る軌道である目標軌道を取得するように構成されている。制御基準には、掘削作業や転圧作業等のように、エンドアタッチメントが当接しうる作業対象(例えば、地面や後述するダンプトラックの荷台の土砂)がある場合、エンドアタッチメントの作業部位(例えば、バケット6の爪先や背面等)が設定されてよい。また、制御基準には、後述のブーム上げ旋回動作、排土動作、ブーム下げ旋回動作等のように、エンドアタッチメントが当接しうる作業対象がない動作の場合、当該動作におけるエンドアタッチメントの位置を規定しうる任意の部位(例えば、バケット6の下端部や爪先等)が設定されてよい。例えば、コントローラ30は、内部或いは外部の通信可能な不揮発性記憶装置に記憶されている目標施工面に関するデータに基づき、目標軌道を導き出す。コントローラ30は、空間認識装置70が認識したショベル100の周囲の地形に関する情報に基づき、目標軌道を導き出してもよい。また、コントローラ30は、内部の揮発性記憶装置に一時的に記憶されている姿勢検出装置(例えば、ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、バケット角度センサS3等)の過去の出力からバケット6の爪先等の作業部位の過去の軌跡に関する情報を導き出し、その情報に基づいて目標軌道を導き出してもよい。また、コントローラ30は、アタッチメントの所定部位の現在位置と目標施工面に関するデータとに基づき、目標軌道を導き出してもよい。
コントローラ30は、例えば、オペレータが手動で地面の掘削操作や均し操作等を行っている場合に、目標施工面とバケット6の先端位置、具体的には、バケット6の爪先や背面等の作業部位とが一致するように、ブーム4、アーム5、及び、バケット6の少なくとも一つを自動的に動作させる。具体的には、オペレータがスイッチNSを操作(押し)ながら、左操作レバー26Lにおける前後方向の操作を行うと、コントローラ30は、当該操作に応じて、目標施工面とバケット6の先端位置とが一致するように、ブーム4、アーム5、及び、バケット6の少なくとも一つを自動的に動作させる。より具体的には、コントローラ30は、上述の如く、比例弁31を制御し、ブーム4、アーム5、及び、バケット6のうちの少なくとも一つを自動的に動作させる。これにより、オペレータは、左操作レバー26Lを前後方向に操作するだけで、目標施工面に沿った掘削作業や均し作業等をショベル100に実行させることができる。
また、コントローラ30は、例えば、所定の条件(以下、「ブーム上げ旋回開始条件」)が成立した場合、オペレータによる旋回操作に合わせて、ブーム4の上げ動作等を自動的に行わせ、バケット6を所定の目標軌道に沿って移動させる。ブーム上げ旋回開始条件は、所定の位置に駐車されているダンプトラックに向けてバケット6に収容された土砂等を移動させる作業の開始を示す条件である。例えば、ブーム上げ旋回開始条件は、後述の如く、"マシンコントロール機能が有効な状態、つまり、スイッチNSが押されている状態で、左操作レバー26Lの操作方向が前後方向から左右方向に切り替わったこと"の条件を含んでよい。また、例えば、ブーム上げ旋回開始条件は、"入力装置72に含まれうる、左操作レバー26Lの先端部に設けられる所定のスイッチ(以下、「ブーム上げ旋回開始スイッチ」)が押された状態で、左操作レバー26Lが左方向或いは左方向に操作されること"の条件を含んでもよい。また、例えば、ブーム上げ旋回開始条件は、"アタッチメントによる掘削土量が所定量以上となったこと"の条件を含んでもよい。また、例えば、ブーム上げ旋回開始条件は、"アタッチメントによる所定の距離以上の掘削が完了したこと"を含んでもよい。この場合、コントローラ30は、例えば、空間認識装置70に含まれうる単眼カメラやステレオカメラによる上部旋回体3の前方の画像に基づき、アタッチメントによる掘削土量や掘削距離等を把握できる。つまり、ブーム上げ旋回開始条件は、例えば、掘削動作等のショベル100の一つの動作が完了したかどうかを判断するための条件である。また、ブーム上げ旋回開始条件に、上述のような条件が複数含まれる場合、含まれる複数の条件のうちの何れか一つが成立すると、ブーム上げ旋回開始条件が成立する態様であってもよいし、含まれる複数の条件のうちの二以上の一部又は全部が成立すると、ブーム上げ旋回開始条件が成立する態様であってもよい。以下、後述する排土開始条件、及びブーム下げ旋回開始条件等についても同様である。具体的には、オペレータが左操作レバー26Lを左方向或いは右方向に操作すると、コントローラ30は、当該操作に応じて、目標軌道とバケット6の制御基準となる部位(例えば、バケット6の下端部等)とが一致するように、上部旋回体3、及び、アタッチメントATのうちの少なくともブーム4を自動的に動作させる。より具体的には、コントローラ30は、上述の如く、比例弁31を制御し、上部旋回体3、及び、ブーム4等を自動的に動作させる。これにより、オペレータは、左操作レバー26Lを左右方向に操作するだけで、バケット6に収容された土砂等をダンプトラックまで移動させるブーム上げ旋回動作をショベル100に行わせることができる。
また、コントローラ30は、例えば、所定の条件(以下、「排土開始条件」)が成立した場合、バケット6の開き操作に合わせて、アーム5の開き動作等を自動的に行わせ、ダンプトラックに向けてバケット6に収容されている土砂等を排土させる。排土開始条件は、ダンプトラックにバケット6に収容された土砂等を排出させる作業の開始を示す条件である。例えば、排土開始条件は、後述の如く、"マシンコントロール機能が有効な状態、つまり、スイッチNSが押されている状態で、左操作レバー26Lが左右方向に操作されている状態から右操作レバー26Rが左右方向(具体的には、バケット6の開き操作に対応する左方向)に操作される状態に切り替わること"の条件を含んでよい。また、例えば、排土開始条件は、"入力装置72に含まれうる、右操作レバー26Rの先端部に設けられる所定のスイッチ(以下、「排土開始スイッチ」)が押された状態で、右操作レバー26Rが左方向(バケット6の閉じ操作)或いは右方向(バケット6の開き操作)に操作されること"の条件を含んでもよい。また、例えば、排土開始条件は、"バケット6がダンプトラックの上方の所定の箇所(例えば、目標軌道の終点等)に到達したこと"の条件を含んでもよい。この場合、排土開始条件における"所定の箇所(目標軌道の終点)"は、排土の都度、変更されてもよい。具体的には、オペレータが右操作レバー26Rを右方向に操作すると、コントローラ30は、当該操作に応じて、ダンプトラックの荷台における所定の目標位置にバケット6内の土砂等が排出されるように、バケット6の開き動作、及び、アーム5の開き動作等を行わせる。より具体的には、コントローラ30は、上述の如く、比例弁31を制御し、アーム5及びバケット6等を自動的に動作させる。これにより、オペレータは、右操作レバー26Rを左右方向(具体的には、右方向)に操作するだけで、バケット6に収容された土砂等をダンプトラックの荷台に排土させることができる。
また、コントローラ30は、例えば、所定の条件(以下、「ブーム下げ旋回開始条件」)が成立した場合、オペレータによる旋回操作に合わせて、ブーム4の下げ動作等を自動的に行わせ、バケット6を所定の目標軌道に合わせて移動させる。ブーム下げ旋回開始条件は、ダンプトラックの荷台にバケット6の土砂等を排出させた後に、掘削作業等を行うための元の位置にアタッチメントATを旋回移動させる作業の開始を示す条件である。例えば、ブーム下げ旋回開始条件は、後述の如く、"右操作レバー26Rが左右方向(具体的には、右方向)に操作されている状態から左操作レバー26Lが左右方向に操作される状態に切り替わること"の条件を含んでよい。また、例えば、ブーム下げ旋回開始条件は、"入力装置72に含まれうる、左操作レバー26Lの先端部に設けられる所定のスイッチ(以下、「ブーム下げ旋回開始スイッチ」)が押された状態で、左操作レバー26Lが左方向或いは右方向に操作されること"の条件を含んでもよい。また、例えば、ブーム下げ旋回開始条件は、"バケット6からダンプトラックの荷台に落下する土砂が無くなったこと"の条件を含んでもよい。この場合、コントローラ30は、例えば、空間認識装置70に含まれうる単眼カメラやステレオカメラによる上部旋回体3の前方の画像に基づき、バケット6内の土砂等の量を把握できる。具体的には、オペレータが左操作レバー26Lを左方向或いは右方向に操作すると、コントローラ30は、当該操作に応じて、目標軌道とバケット6の制御基準となる部位とが一致するように、上部旋回体3、及び、アタッチメントATのうちの少なくともブーム4を自動的に動作させる。より具体的には、コントローラ30は、上述の如く、比例弁31を制御し、上部旋回体3、及び、ブーム4等を自動的に動作させる。これにより、オペレータは、左操作レバー26Lを左右方向に操作するだけで、バケット6に収容された土砂等をダンプトラックの荷台に排出させた後に、アタッチメントATを掘削作業等のための元の位置に移動させるブーム下げ旋回動作をショベル100に行わせることができる。
また、コントローラ30は、ショベル100のブーム下げ旋回動作の前に、例えば、所定の条件(以下、「均し動作開始条件」)が成立した場合、オペレータのアタッチメントに関する操作に合わせて、ダンプトラックの荷台に搭載された土砂等を平坦にするための動作(以下、「均し動作」)を自動的に行わせ、バケット6を所定の目標軌道に合わせて移動させてもよい。均し動作開始条件は、ダンプトラックの荷台にバケット6の土砂等を排出させた後に、均し動作の開始を示す条件である。例えば、均し動作開始条件は、"バケット6からダンプトラックの荷台に落下する土砂が無くなったこと"の条件を含んでよい。また、例えば、均し動作開始条件は、"ダンプトラックの荷台の上方にバケット6がある状態で、アーム5に関する操作がされた(つまり、左操作レバー26Lが前後方向に操作された)こと"の条件を含んでもよい。この場合、コントローラ30は、予め規定され、内部の或いは外部の通信可能な不揮発性記憶装置に格納されるダンプトラックの荷台の形状に基づき、目標軌道が生成してよい。
また、コントローラ30は、ショベル100のブーム下げ旋回動作の後に、例えば、所定の条件(以下、「掘削開始条件」)が成立した場合、オペレータのアタッチメントに関する操作に合わせて、掘削動作を自動的に行わせ、バケット6を所定の目標軌道に合わせて移動させてもよい。掘削開始条件は、ショベル100のブーム下げ旋回動作の後に、掘削動作の開始を示す条件である。例えば、掘削開始条件は、"バケット6が目標施工面の上方にある状態で、アーム5に関する操作がされた(つまり、左操作レバー26Lが前後方向に操作された)こと"の条件を含んでよい。
このように、コントローラ30は、所定の条件、つまり、"操作されていなかった操作対象が、所定の操作部(例えば、操作装置26)を通じて、操作開始されたこと"に相当する条件が成立した場合に、操作対象の動作に合わせて、自動的に、ショベル100に所定の動作を行わせ、アタッチメントの所定の部位を目標軌道に合わせて移動させる。
以下、スイッチNSが押し操作された状態で、左操作レバー26L及び右操作レバー26Rの操作が行われた場合に、マシンコントロール機能が有効になる前提で説明を進める。
[ショベルのマシンコントロール機能の一例]
次に、図6~図8を参照して、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の一例について詳細に説明する。
<ショベルのマシンコントロール機能に関する構成>
図6(図6A~図6C)を参照して、ショベル100のマシンコントロール機能の一例に関する詳細な構成について説明する。
図6(図6A~図6C)は、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能に関する詳細な構成の一例を示す機能ブロック図である。具体的には、図6A、図6Bは、ショベル100の半自動運転機能に関する詳細な構成を示す機能ブロック図であり、図6Cは、ショベル100の自律運転機能に関する詳細な構成を示す機能ブロック図である。図6Bに記載される構成部分は、半自動運転機能及び自律運転機能の双方の場合に共通であるため、ショベル100の自律運転機能に対応する当該構成部分の図示を省略し、図6Bを適宜援用してショベル100の自律運転機能について説明する。
図6A、図6Bに示すように、ショベル100の半自動運転機能を実現するコントローラ30は、マシンコントロール機能に関する機能部として、操作内容取得部3001と、目標施工面取得部3002と、目標軌道設定部3003と、現在位置算出部3004と、目標位置算出部3005と、バケット形状取得部3006と、マスタ要素設定部3007と、制御基準設定部3008と、動作指令生成部3009と、パイロット指令生成部3010と、姿勢角算出部3011とを含む。これらの機能部3001~3011は、例えば、スイッチNSが押し操作されている場合、所定の制御周期ごとに、後述する動作を繰り返し実行する。
また、図6B、図6Cに示すように、ショベル100の自律運転機能を実現するコントローラ30は、マシンコントロール機能に関する機能部として、作業内容取得部3001Aと、目標施工面取得部3002と、目標軌道設定部3003と、現在位置算出部3004と、目標位置算出部3005と、バケット形状取得部3006と、マスタ要素設定部3007と、制御基準設定部3008と、動作指令生成部3009と、パイロット指令生成部3010と、姿勢角算出部3011とを含む。これらの機能部3001A,3002~3011は、例えば、自律運転機能が有効な場合、所定の制御周期ごとに、後述する動作を繰り返し実行する。
即ち、コントローラ30は、ショベル100の自律運転機能を実現する場合(図6C)、操作内容取得部3001に代えて、作業内容取得部3001Aを含む点で、ショベル100の半自動運転機能を実現する場合(図6A)と異なる。
操作内容取得部3001は、操作圧センサ29LAから取り込まれる検出信号に基づき、左操作レバー26Lにおける前後方向の傾倒操作に関する操作内容を取得する。例えば、操作内容取得部3001は、操作内容として、操作方向(前方向であるか後方向であるか)と、操作量を取得(算出)する。また、ショベル100が遠隔操作される場合、外部装置から受信される遠隔操作信号の内容に基づき、ショベル100の半自動運転機能が実現されてもよい。この場合、操作内容取得部3001は、外部装置から受信される遠隔操作信号に基づき、遠隔操作に関する操作内容を取得する。
一方、作業内容取得部3001Aは、ショベル100に搭載される通信装置T1を通じて、所定の外部装置(例えば、後述の支援装置200や管理装置300等)からショベル100が実行すべき作業内容に関する情報(以下、「作業内容情報」)を取得する。作業内容情報には、例えば、ショベル100が行う所定の作業の内容、所定の作業を構成する動作の内容、所定の作業に関する動作条件、作業開始のトリガ条件等が含まれる。所定の作業には、例えば、掘削作業、積込作業、整地作業等が含まれてよい。所定の作業を構成する動作には、例えば、所定の作業が掘削作業である場合、掘削動作、ブーム上げ旋回動作、排土動作、及びブーム下げ旋回動作等が含まれる。動作条件には、例えば、所定の作業が掘削作業である場合、掘削深さ、掘削長さ等に関する条件が含まれる。作業内容取得部3001Aは、取得した作業内容情報に基づき、ショベル100の動作要素(アクチュエータに関する操作指令を出力する。
目標施工面取得部3002は、例えば、内部メモリや所定の外部記憶装置等から目標施工面に関するデータを取得する。
目標軌道設定部3003は、目標施工面に関するデータに基づき、アタッチメントATの先端部、具体的には、エンドアタッチメントの制御基準となる所定部位(例えば、バケット6の爪先や背面等)を目標施工面に沿って移動させるためのアタッチメントATの先端部の目標軌道に関する情報を設定する。例えば、目標軌道設定部3003は、目標軌道に関する情報として、ショベル100の機体(上部旋回体3)を基準とする、目標施工面の前後方向への傾斜角度を設定してよい。また、目標軌道には、許容可能な誤差の範囲(以下、「許容誤差範囲」)が設定されていてもよい。この場合、目標軌道に関する情報には、許容誤差範囲に関する情報が含まれてもよい。
現在位置算出部3004は、アタッチメントATにおける制御基準(例えば、バケット6の作業部位としての爪先や背面等)の位置(現在位置)を算出する。具体的には、現在位置算出部3004は、後述する姿勢角算出部3011により算出されるブーム角度θ1、アーム角度θ2、及びバケット角度θ3に基づき、アタッチメントATの制御基準の(現在)位置を算出してよい。
目標位置算出部3005は、ショベル100の半自動運転機能において、に関するオペレータの操作入力(例えば、左操作レバー26Lにおける前後方向の操作)の内容と、設定された目標軌道に関する情報と、アタッチメントATにおける制御基準(作業部位)の現在位置とに基づき、アタッチメントATの先端部(制御基準)の目標位置を算出する。操作内容には、例えば、操作方向及び操作量が含まれる。当該目標位置は、アーム5がオペレータによる操作入力における操作方向及び操作量に応じて動作すると仮定したときに、今回の制御周期中で到達目標とすべき目標軌道(換言すれば、目標施工面)上の位置である。目標位置算出部3005は、例えば、不揮発性の内部メモリ等に予め格納されるマップや演算式等を用いて、アタッチメントATの先端部の目標位置を算出してよい。
また、目標位置算出部3005は、ショベル100の自律運転機能において、作業内容取得部3001Aから入力される操作指令と、設定された目標軌道に関する情報と、アタッチメントATにおける制御基準(作業部位)の現在位置とに基づき、アタッチメントATの先端部(制御基準)の目標位置を算出する。これにより、コントローラ30は、オペレータの操作に依らず、ショベル100を自律制御することができる。
バケット形状取得部3006は、例えば、内部メモリや所定の外部記憶装置等から予め登録されているバケット6の形状に関するデータを取得する。このとき、バケット形状取得部3006は、予め登録される複数の種類のバケット6の形状に関するデータのうち、入力装置72を通じた設定操作により設定されている種類のバケット6の形状に関するデータを取得してよい。
マスタ要素設定部3007は、アタッチメントATを構成する動作要素(これらの動作要素を駆動するアクチュエータ)のうち、オペレータの操作入力或いは操作指令に対応して動作する動作要素(アクチュエータ)(以下、「マスタ要素」)を設定する。以下、オペレータの操作入力あるいは自律運転機能に関する操作指令に合わせて動作する動作要素、及びその動作要素を駆動するアクチュエータを包括的に或いはそれぞれを個別にマスタ要素と称する場合があり、後述のスレーブ要素についても同様である。また、マスタ要素設定部3007は、アタッチメントATのうちのアーム5(アームシリンダ8)以外、つまり、ブーム4(ブームシリンダ7)或いはバケット6(バケットシリンダ9)をマスタ要素に設定する場合、減圧用比例弁33AL,33AR或いは切替弁に対して、パイロットラインを非連通状態にする指令を出力する。これにより、コントローラ30は、左操作レバー26Lにおける前後操作に対応するパイロット圧がシャトル弁32AL,32ARを介して、アーム5を駆動するアームシリンダ8に対応する制御弁176L,176Rに作用させないようにすることができる。マスタ要素設定部3007による具体的なマスタ要素の設定方法については後述する(図7A参照)。
制御基準設定部3008は、アタッチメントATにおける制御基準を設定する。例えば、制御基準設定部3008は、入力装置72を通じたオペレータ等による操作に応じて、アタッチメントATの制御基準を設定してよい。また、例えば、制御基準設定部3008は、所定の条件の成立に応じて、自動的に、アタッチメントATの制御基準を設定変更してもよい。制御基準設定部3008によるアタッチメントATの制御基準の設定方法の詳細については後述する(図7B参照)。
動作指令生成部3009は、アタッチメントATにおける制御基準の目標位置に基づき、ブーム4の動作に関する指令値(以下、「ブーム指令値」)β1r、アーム5の動作に関する指令値(以下、「アーム指令値」)β2r、及びバケット6の動作に関する指令値(「バケット指令値」)β3rを生成する。例えば、ブーム指令値β1r、アーム指令値β2r、及びバケット指令値β3rは、それぞれ、アタッチメントATにおける制御基準が目標位置を実現するために必要なブーム4の角速度(以下、ブーム角速度)、アーム5の角速度(以下、「ブーム角速度」)、及びバケット6の角速度(以下、「バケット角速度」)である。動作指令生成部3009は、マスタ指令値生成部3009Aと、スレーブ指令値生成部3009Bを含む。
尚、ブーム指令値、アーム指令値、及びバケット指令値は、アタッチメントATにおける制御基準が目標位置を実現したときのブーム角度、アーム角度、及びバケット角度であってもよい。また、ブーム指令値、アーム指令値、及びバケット指令値は、アタッチメントATにおける制御基準が目標位置を実現するために必要な角加速度等であってもよい。
マスタ指令値生成部3009Aは、アタッチメントATを構成する動作要素(ブーム4、アーム5、及びバケット6)のうち、マスタ要素の動作に関する指令値(以下、「マスタ指令値」)βmを生成する。マスタ指令値生成部3009Aは、例えば、マスタ要素設定部3007により設定されているマスタ要素がブーム4(ブームシリンダ7)の場合、マスタ指令値βmとして、ブーム指令値β1rを生成し、後述するブームパイロット指令生成部3010Aに向けて出力する。また、マスタ指令値生成部3009Aは、例えば、マスタ要素設定部3007により設定されているマスタ要素がアーム5(アームシリンダ8)の場合、アーム指令値β2rを生成し、アームパイロット指令生成部3010Bに向けて出力する。また、マスタ指令値生成部3009Aは、例えば、マスタ要素設定部3007により設定されているマスタ要素がバケット6(バケットシリンダ9)である場合、マスタ指令値βmとして、バケット指令値β3rを生成し、バケットパイロット指令生成部3010Cに向けて出力する。具体的には、マスタ指令値生成部3009Aは、オペレータの操作或いは操作指令の内容(操作方向及び操作量)に対応するマスタ指令値βmを生成する。例えば、マスタ指令値生成部3009Aは、オペレータの操作或いは操作指令の内容と、ブーム指令値β1r、アーム指令値β2r、及びバケット指令値β3rのそれぞれとの関係を規定する所定のマップや変換式等に基づき、マスタ指令値としてのブーム指令値β1r、アーム指令値β2r、バケット指令値β3rを生成してよい。
尚、ショベル100の半自動運転機能(図6A)について、キャビン10のオペレータによって左操作レバー26Lが操作される場合、マスタ要素がアーム5である場合、マスタ指令値生成部3009Aは、マスタ指令値βm(アーム指令値β2r)を生成しなくてもよい。上述の如く、左操作レバー26Lが前後方向に操作されている場合、その操作内容に対応するパイロット圧がシャトル弁32AL,32ARを介して、アーム5を駆動するアームシリンダ8に対応する制御弁176L,176Rに作用し、アーム5は、マスタ要素として動作することができるからである。
スレーブ指令値生成部3009Bは、アタッチメントATを構成する動作要素のうち、マスタ要素の動作に合わせて(同期して)、アタッチメントATの制御基準が目標施工面に沿って移動するように動作する、スレーブ要素の動作に関する指令値(以下、「スレーブ指令値」)βs1,βs2を生成する。スレーブ指令値生成部3009Bは、例えば、マスタ要素設定部3007によりブーム4がマスタ要素に設定されている場合、スレーブ指令値βs1,βs2として、アーム指令値β2r及びバケット指令値β3rを生成し、それぞれ、アームパイロット指令生成部3010B及びバケットパイロット指令生成部3010Cに向けて出力する。また、スレーブ指令値生成部3009Bは、例えば、マスタ要素設定部3007によりアーム5がマスタ要素に設定されている場合、スレーブ指令値βs1,βs2として、ブーム指令値β1r及びバケット指令値β3rを生成し、それぞれ、ブームパイロット指令生成部3010A及びバケットパイロット指令生成部3010Cに向けて出力する。また、スレーブ指令値生成部3009Bは、マスタ要素設定部3007によりバケット6がマスタ要素に設定されている場合、スレーブ指令値βs1,βs2として、ブーム指令値β1r及びアーム指令値β2rを生成し、それぞれ、ブームパイロット指令生成部3010A及びアームパイロット指令生成部3010Bに向けて出力する。具体的には、スレーブ指令値生成部3009Bは、マスタ指令値βmに対応するマスタ要素の動作に合わせて(同期して)スレーブ要素が動作し、アタッチメントATの制御基準が目標位置を実現できるように(つまり、目標施工面に沿って移動するように)、スレーブ指令値βs1,βs2を生成する。これにより、コントローラ30は、オペレータの操作入力或いは操作指令に対応するアタッチメントATのマスタ要素の動作に合わせて(つまり、同期させて)、アタッチメントATの二つのスレーブ要素を動作させることで、アタッチメントATの制御基準を目標施工面に沿って移動させることができる。つまり、マスタ要素(の油圧アクチュエータ)は、オペレータの操作入力或いは操作指令に対応して動作し、スレーブ要素(の油圧アクチュエータ)は、バケット6の爪先等のアタッチメントATの先端部(制御基準)が目標施工面に沿って移動するように、マスタ要素(の油圧アクチュエータ)の動作に合わせて、その動作が制御される。
パイロット指令生成部3010は、ブーム指令値β1r、アーム指令値β2r、及びバケット指令値β3rに対応するブーム角速度、アーム角速度、及びバケット角速度を実現するための制御弁174~176に作用させるパイロット圧の指令値(以下、「パイロット圧指令値」)を生成する。パイロット指令生成部3010は、ブームパイロット指令生成部3010Aと、アームパイロット指令生成部3010Bと、バケットパイロット指令生成部3010Cを含む。
ブームパイロット指令生成部3010Aは、ブーム指令値β1rと、後述するブーム角度算出部3011Aによる現在のブーム角速度の算出値(測定値)との間の偏差に基づき、ブーム4を駆動するブームシリンダ7に対応する制御弁175L,175Rに作用させるパイロット圧指令値を生成する。そして、ブームパイロット指令生成部3010Aは、生成したパイロット圧指令値に対応する制御電流を比例弁31BL,31BRに出力する。これにより、上述の如く、比例弁31BL,31BRから出力されるパイロット圧指令値に対応するパイロット圧がシャトル弁32BL,32BRを介して、制御弁175L,175Rの対応するパイロットポートに作用する。そして、制御弁175L,175Rの作用により、ブームシリンダ7が動作し、ブーム指令値β1rに対応するブーム角速度を実現するように、ブーム4が動作する。
アームパイロット指令生成部3010Bは、アーム指令値β2rと、後述するアーム角度算出部3011Bによる現在のアーム角速度の算出値(測定値)との間の偏差に基づき、アーム5を駆動するアームシリンダ8に対応する制御弁176L,176Rに作用させるパイロット圧指令値を生成する。そして、アームパイロット指令生成部3010Bは、生成したパイロット圧指令値に対応する制御電流を比例弁31AL,31ARに出力する。これにより、上述の如く、比例弁31AL,31ARから出力されるパイロット圧指令値に対応するパイロット圧がシャトル弁32AL,32ARを介して、制御弁176L,176Rの対応するパイロットポートに作用する。そして、制御弁176L,176Rの作用により、アームシリンダ8が動作し、アーム指令値β2rに対応するアーム角速度を実現するように、アーム5が動作する。
バケットパイロット指令生成部3010Cは、バケット指令値β3rと、後述するバケット角度算出部3011Cによる現在のバケット角速度の算出値(測定値)との間の偏差に基づき、バケット6を駆動するバケットシリンダ9に対応する制御弁174に作用させるパイロット圧指令値を生成する。そして、バケットパイロット指令生成部3010Cは、生成したパイロット圧指令値に対応する制御電流を比例弁31CL,31CRに出力する。これにより、上述の如く、比例弁31CL,31CRから出力されるパイロット圧指令値に対応するパイロット圧がシャトル弁32CL,32CRを介して、制御弁174の対応するパイロットポートに作用する。そして、制御弁174の作用により、バケットシリンダ9が動作し、バケット指令値β3rに対応するバケット角速度を実現するように、バケット6が動作する。
姿勢角算出部3011は、ブーム角度センサS1,アーム角度センサS2、及びバケット角度センサS3の検出信号に基づき、(現在の)ブーム角度、アーム角度、及びバケット角度、並びに、ブーム角速度、アーム角速度、及びバケット角速度を算出(測定)する。姿勢角算出部3011は、ブーム角度算出部3011Aと、アーム角度算出部3011Bと、バケット角度算出部3011Cを含む。
ブーム角度算出部3011Aは、ブーム角度センサS1から取り込まれる検出信号に基づき、ブーム角度及びブーム角速度等を算出(測定)する。これにより、ブームパイロット指令生成部3010Aは、ブーム角度算出部3011Aの測定結果に基づき、ブームシリンダ7の動作に関するフィードバック制御を行うことができる。
アーム角度算出部3011Bは、アーム角度センサS2から取り込まれる検出信号に基づき、アーム角度及びアーム角速度等を算出(測定)する。これにより、アームパイロット指令生成部3010Bは、アーム角度算出部3011Bの測定結果に基づき、アームシリンダ8の動作に関するフィードバック制御を行うことができる。
バケット角度算出部3011Cは、バケット角度センサS3から取り込まれる検出信号に基づき、バケット角度及びバケット角速度等を算出(測定)する。これにより、バケットパイロット指令生成部3010Cは、バケット角度算出部3011Cの測定結果に基づき、バケットシリンダ9の動作に関するフィードバック制御を行うことができる。
<ショベルのマシンコントロール機能に関する処理>
続いて、図7(図7A~図7C)を参照して、ショベル100のマシンコントロール機能の一例に関するコントローラ30の処理フローについて説明する。
図7A~図7Cは、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30によるマシンコントロール機能に関する処理の一例を概略的に示すフローチャートである。具体的には、図7Aは、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30(マスタ要素設定部3007)によるマスタ要素を切り替える制御処理(以下、「マスタ切替処理」)の一例を概略的に示すフローチャートである。図7Bは、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30(制御基準設定部3008)によるアタッチメントATの制御基準を切り替える制御処理(以下、「制御基準切替処理」)の一例を概略的に示すフローチャートである。図7Bは、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30(動作指令生成部3009)による制御基準を目標施工面に沿って移動させる制御処理(以下、「ならい制御処理」)の一例を概略的に示すフローチャートである。
<<マスタ切替処理>>
図7Aのフローチャートは、ショベル100のマシンコントロール機能が有効な場合に、上述の制御周期に対応する処理間隔ごとに、繰り返し実行されてよい。以下、マシンコントロール機能が無効な状態から有効な状態に切り替わると、初期設定(デフォルト)として、マスタ要素にアーム5が設定される前提で説明を進める。
ステップS102にて、マスタ要素設定部3007は、アタッチメントATにおける制御基準(例えば、バケット6の爪先や背面等)の目標施工面に沿った移動に伴い、アタッチメントATの制御基準が目標施工面における角部、大曲率部、或いは、変曲部(以下、総括的に「角部等」)に到達するか否かを判定する。角部は、ショベル100を上面視で見たときの上部旋回体3に対するアタッチメントの延在方向(以下、単に「アタッチメントの延在方向」)において、目標施工面の傾斜が不連続に変化する部分を表す。また、大曲率部は、アタッチメントの延在方向において、目標施工面の曲率が相対的に大きい(具体的には、曲率が所定基準を超えている)部分を表す。また、変曲部は、例えば、アタッチメントの延在方向において、目標施工面の曲がる方向が変化する部分(つまり、アタッチメントATの各リンクにより規定される二次元平面上の変曲点)を表す。例えば、マスタ要素設定部3007は、アタッチメントATの制御基準の現在位置が目標施工面の角部等に到達したか否かを判定してよい。また、マスタ要素設定部3007は、アタッチメントATの制御基準の目標位置が目標施工面の角部等に対応しているか(つまり、アタッチメントATの制御基準が直後に目標施工面の角部等に到達するか否か)を判定してもよい。以下、後述する図7BのステップS202についても同様である。マスタ要素設定部3007は、アタッチメントATの制御基準が角部等に到達する場合、ステップS104に進み、それ以外の場合、ステップS110に進む。
ステップS104にて、マスタ要素設定部3007は、バケット6をマスタ要素に設定し、ステップS106に進む。つまり、コントローラ30は、ステップS104に規定される所定の条件(以下、「角部等到達条件」)が成立した場合、マスタ要素をアーム5からバケット6に切り替える。換言すれば、コントローラ30は、角部等到達条件が成立した場合、オペレータの操作入力或いは操作指令に対応するように、アーム5に対応するアームシリンダ8(第1のアクチュエータの一例)に代えて、バケット6に対応するバケットシリンダ9(第2のアクチュエータの一例)を動作させる。
ステップS106にて、マスタ要素設定部3007は、角部等の先にある目標施工面の部分(以下、「先の目標施工面部分」)にバケット6の姿勢を合わせる動作(以下、「バケット姿勢調整動作」)が終了したか否かを判定する。例えば、マスタ要素設定部3007は、姿勢角算出部3011により算出される現在のブーム角度、アーム角度、バケット角度と、目標施工面に関するデータとに基づき、バケット6の姿勢と、先の目標施工面部分との相対的な姿勢が適切になったか否かを判定してよい。また、マスタ要素設定部3007は、動作指令生成部3009からバケット姿勢調整動作の終了を示す通知を取得することにより、バケット姿勢調整動作が終了したか否かを判定してもよい。後述の図7BのステップS206についても同様である。マスタ要素設定部3007は、バケット姿勢調整動作が終了した場合、ステップS108に進み、終了していない場合、終了するまで待機する(例えば、本ステップの処理を上述の制御周期ごとに繰り返す)。
ステップS108にて、マスタ要素をアーム5に設定し、今回の処理を終了する。
一方、ステップS110にて、マスタ要素設定部3007は、アーム5をマスタ要素として動作させると仮定したときに、ブーム4及びバケット6がアーム5の動作に同期して動作することができるかどうかを判定する。
例えば、マスタ要素設定部3007は、オペレータの操作入力或いは操作指令に対応してアーム5が動作すると仮定したときに、アタッチメントATの制御基準が目標施工面に沿って移動するのに必要なブーム4及びバケット6の角速度(以下、「必要角速度」)や角加速度(以下、「必要角加速度」)等が所定の上限値を超える状態、或いは、超える可能性がある状態であるか否かを判定する。ブーム4及びバケット6には、アタッチメントATの構造上、出力可能な角速度や角加速度の上限値があるからである。ブーム4に関する当該上限値は、例えば、ブーム角度や、ブーム4の動作方向(上げ方向か、下げ方向か)、エンジン11の出力(エンジン11の設定回転数)等の各種パラメータに応じて異なりうる。同様に、バケット6に関する当該上限値は、例えば、バケット角度や、バケット6の動作方向(開き方向か、閉じ方向か)、エンジン11の出力等の各種パラメータに応じて異なりうる。よって、マスタ要素設定部3007は、上述の各種パラメータの現在値に基づき、予め規定されるショベル100のアタッチメントの力学モデル等を用いて、当該上限値を算出してよい。また、マスタ要素設定部3007は、予め規定される、当該上限値と上述の各種パラメータとの関係を示すマップ等を用いて、当該上限値を算出してもよい。そして、マスタ要素設定部3007は、ブーム4及びバケット6に関する必要角速度や必要角加速度と、算出した上限値との比較結果に基づき、ブーム4及びバケット6がアーム5の動作に同期して動作することができるかどうかを判定してよい。
マスタ要素設定部3007は、ブーム4及びバケット6がアーム5の動作に同期して動作することができる場合、ステップS112に進み、ブーム4及びバケット6の少なくとも一方がアーム5の動作に同期して動作することできない場合、ステップS114に進む。
ステップS112にて、マスタ要素設定部3007は、アーム5をマスタ要素に設定し、今回の処理を終了する。
尚、マスタ要素設定部3007は、既に、アーム5がマスタ要素に設定されている場合、その設定状態を維持してもよいし、再度、マスタ要素をアーム5に設定し直してもよい。
一方、ステップS114にて、マスタ要素設定部3007は、アーム5の動作に同期して動作することができない動作要素にブーム4が含まれるか否かを判定する。マスタ要素設定部3007は、アーム5の動作に同期して動作することができない動作要素にブーム4が含まれる場合、ステップS116に進み、含まれない場合(つまり、バケット6だけが同期できない場合)、ステップS118に進む。
ステップS116にて、マスタ要素設定部3007は、ブーム4をマスタ要素に設定し、今回の処理を終了する。
一方、ステップS118にて、マスタ要素設定部3007は、バケット6をマスタ要素に設定し、今回の処理を終了する。
つまり、コントローラ30は、ステップS110に規定される所定の条件(以下、「同期不可条件」)が成立した場合、マスタ要素をアーム5からブーム4或いはバケット6に切り替える。換言すれば、コントローラ30は、同期不可条件が成立した場合、オペレータの操作入力或いは操作指令に対応するように、アーム5に対応するアームシリンダ8(第1のアクチュエータの一例)に代えて、ブーム4に対応するブームシリンダ7(第2のアクチュエータの一例)、或いは、バケット6に対応するバケットシリンダ9(第2のアクチュエータの一例)を動作させる。
<<制御基準切替処理>>
図7Bのフローチャートは、ショベル100のマシンコントロール機能が有効な場合に、上述の制御周期に対応する処理間隔ごとに、繰り返し実行されてよい。以下、マシンコントロール機能が無効な状態から有効な状態に切り替わると、制御基準の初期設定として、入力装置72等を通じて手動等で予め設定されたバケット6の所定部位(例えば、バケット6の作業部位としての爪先や背面等)が設定される前提で説明を進める。
ステップS202にて、制御基準設定部3008は、図7AのステップS102の場合と同様、アタッチメントATにおける制御基準の目標施工面に沿った移動に伴い、アタッチメントATの制御基準が目標施工面における角部等に到達するか否かを判定する。制御基準設定部3008は、アタッチメントATの制御基準が目標施工面の角部等に到達する場合、ステップS204に進み、それ以外の場合、ステップS210に進む。
ステップS204にて、制御基準設定部3008は、バケット6の爪先を制御基準に設定し、ステップS206に進む。つまり、コントローラ30は、角部等到達条件が成立した場合、アタッチメントATの(具体的には、エンドアタッチメントとしてのバケット6の)制御基準を作業部位としての爪先に設定する。
尚、制御基準設定部3008は、既に、バケット6の爪先が制御基準に設定されている場合、その設定状態を維持してもよいし、再度、バケット6の爪先に設定し直してもよい。また、制御基準設定部3008は、アタッチメントATの制御基準が目標施工面における角部等に到達するよりも前、例えば、角部等の周辺と判断可能な位置に到達した場合に、制御基準をバケット6の爪先に設定してもよい。
ステップS206にて、制御基準設定部3008は、図7AのステップS106の場合と同様、バケット姿勢調整動作が終了したか否かを判定する。制御基準設定部3008は、バケット姿勢調整動作が終了した場合、ステップS208に進み、バケット姿勢調整動作が終了していない場合、終了するまで待機する。
ステップS208にて、制御基準設定部3008は、制御基準をバケット6の爪先に設定する前の状態(ステップS204の前の状態)に戻し、今回の処理を終了する。
尚、制御基準設定部3008は、ステップS204の前の段階で設定されている制御基準がバケット6の爪先である場合、その設定状態を維持してもよいし、再度、制御基準をバケット6の爪先に設定し直してもよい。
一方、ステップS210にて、制御基準設定部3008は、オペレータ等によって、入力装置72を通じて、制御基準を固定する設定がなされているか否かを判定する。制御基準設定部3008は、制御基準を固定する設定がなされている場合、ステップS212に進み、制御基準を固定する設定がなされていない場合、ステップS214に進む。
ステップS212にて、制御基準設定部3008は、制御基準を手動で設定された内容(初期設定に相当する内容)に維持し、今回の処理を終了する。
一方、ステップS214にて、制御基準設定部3008は、目標施工面に対してバケット6で掘削すべき残りの土砂等の量(以下、「残り土量」)が所定基準を超えているか否かを判定する。制御基準設定部3008は、残り土量が所定基準を超えている、つまり、残り土量が相対的に多い場合、ステップS216に進み、残り土量が所定基準以下、つまり、残り土量が相対的に少ない場合、ステップS218に進む。
ステップS216にて、制御基準設定部3008は、制御基準をバケット6の作業部位としての爪先に設定し、今回の処理を終了する。
尚、制御基準設定部3008は、既に、制御基準がバケット6の爪先に設定されている場合、その設定状態を維持してもよいし、再度、制御基準をバケット6の爪先に設定し直してもよい。つまり、制御基準設定部3008は、ステップS214に規定する所定の条件(以下、「残土量条件」)が成立した場合、アタッチメントATの(具体的には、エンドアタッチメントとしてのバケット6の)制御基準を作業部位としての爪先に設定する。
一方、ステップS218にて、制御基準設定部3008は、バケット6の作業部位としての背面を制御基準に設定し、今回の処理を終了する。
尚、制御基準設定部3008は、既に、制御基準がバケット6の背面に設定されている場合、その設定状態を維持してもよいし、再度、制御基準をバケット6の背面に設定し直してもよい。
<<ならい制御処理>>
図7Cのフローチャートは、ショベル100のマシンコントロール機能が有効な場合に、上述の制御周期に対応する処理間隔ごとに、繰り返し実行されてよい。
ステップS302にて、動作指令生成部3009は、アタッチメントATの制御基準の目標施工面に沿った移動に伴い、アタッチメントATの制御基準が目標施工面における角部等の周辺に到達したか否かを判定する。例えば、動作指令生成部3009は、アタッチメントATの延出方向において、アタッチメントATの制御基準が目標施工面における角部等からの距離が所定閾値以下になった場合に、角部等の周辺に到達したと判定してよい。動作指令生成部3009は、アタッチメントATの制御基準が目標施工面における角部等の周辺に到達した場合、ステップS304に進み、それ以外の場合、今回の処理を終了する。
ステップS304にて、動作指令生成部3009は、目標施工面に沿うアタッチメントATにおける制御基準の移動速度、つまり、バケット6の移動速度を減速させる。つまり、コントローラ30は、ステップS302に規定する所定の条件(以下、「角部等周辺到達条件」)が成立した場合、エンドアタッチメントとしてのバケット6の移動速度を減速させる。動作指令生成部3009は、例えば、アーム5がマスタ要素である場合、アーム角速度が所定の制限値以下になるように制限することにより、目標施工面に沿うバケット6の移動速度を減速させてよい。このとき、当該制限値は、アタッチメントATの制御基準が角部等に近づくほど、小さくなり、角部等に到達するとゼロになる態様であってよい。この場合、動作指令生成部3009(マスタ指令値生成部3009A)は、オペレータの操作入力或いは操作指令の内容(操作量)に対応するアーム指令値が当該制限値を超えている場合、当該アーム指令値を当該制限値以下に補正(制限)してよい。そして、動作指令生成部3009は、制限(補正)したアーム指令値β2rをアームパイロット指令生成部3010Bに出力すると共に、左操作レバー26Lの前後操作に対応するパイロット圧が制御弁176のパイロットポートに作用しないように減圧用比例弁33AL,33AR或いは切替弁を制御する。これにより、コントローラ30は、アーム角速度を制限値以下に制限させ、アタッチメントATにおける制御基準の目標施工面に沿った移動速度を減速させることができ、且つ、角部等に到達した時点で、当該移動速度をゼロになるようにすることができる。
尚、スレーブ指令値生成部3009Bは、当然の如く、制限値以下に制限されたアーム指令値β2rに対応して、アタッチメントATの制御基準が目標施工面に沿って移動するように、ブーム指令値β1r及びバケット指令値β3rを生成する。以下、ステップS310の場合についても同様である。
ステップS306にて、動作指令生成部3009は、アタッチメントATの制御基準の目標施工面に沿った移動に伴い、アタッチメントATの制御基準が目標施工面における角部等に到達したか否かを判定する。動作指令生成部3009は、アタッチメントATの制御基準が目標施工面に到達した場合、ステップS308に進み、到達していない場合、到達するまで待機する。
ステップS308にて、動作指令生成部3009は、マスタ要素設定部3007及び制御基準設定部3008による設定内容に応じて、バケット6の姿勢を先の目標施工面部分に合わせる動作、つまり、バケット姿勢調整動作をアタッチメントATに行わせる。つまり、コントローラ30は、ステップS306に規定する所定の条件、即ち、角部等到達条件が成立した場合、バケット姿勢調整動作をアタッチメントATに行わせる。アタッチメントATの制御基準が目標施工面における角部等に到達する場合、上述の如く、マスタ要素がバケット6に設定され(図7AのステップS104)、制御基準がバケット6の爪先に設定される(図7BのステップS204)。よって、動作指令生成部3009は、角部等に沿って配置されているバケット6の爪先を基準として、バケット6が回動するように、バケット6の動作に合わせて、ブーム4及びアーム5を動作させる。これにより、コントローラ30は、バケット6の爪先を角部等(例えば、角部の頂点や変曲点等)に合わせた状態で、バケット6の姿勢が先の目標施工面部分に沿った状態になるまで、バケット6の姿勢を回動させることができる。具体的には、マスタ指令値生成部3009Aは、バケット6の回動速度が、オペレータの操作入力或いは操作指令内容(操作量)に対応する角速度になるように、バケット指令値β3rを生成する。そして、スレーブ指令値生成部3009Bは、バケット指令値β3rに対応する角速度でバケット6が回動するときに、バケット6の爪先を目標施工面における角部等に維持させるために必要なブーム4及びアーム5の角速度に対応するブーム指令値β1r及びアーム指令値β2rを生成する。
尚、バケット6の回動方向は、制御基準が元の状態に戻されたとき(図7BのステップS208)に、先の目標施工面部分に対するバケット6の姿勢が、目標施工面に沿ってアタッチメントATの制御基準を移動させるのに適切な状態になるように決定されてよい。
バケット姿勢調整動作が終了すると、ステップS310にて、動作指令生成部3009は、目標施工面に沿うアタッチメントATにおける制御基準の移動速度、つまり、バケット6の移動速度をオペレータの操作入力或いは操作指令の内容(操作量)に対応する速度まで徐々に復帰させる。バケット姿勢調整動作が終了した場合、上述の如く、マスタ要素がアーム5に設定され(図7AのステップS108)、制御基準がバケット6の爪先に設定される前の状態に戻される(図7BのステップS208)。よって、動作指令生成部3009は、例えば、アーム角速度、つまり、アーム指令値β2rが所定の制限値以下になるように制限しつつ、当該制限値を徐々に緩和していく。これにより、コントローラ30は、アタッチメントATにおける制御基準の移動速度を徐々に高めて、オペレータの操作或いは操作指令の内容(操作量)に対応するレベルまで復帰させることができる。具体的には、動作指令生成部3009(マスタ指令値生成部3009A)は、オペレータの操作或いは操作指令の内容に対応するアーム指令値が当該制限値を超えている場合、当該アーム指令値を当該制限値以下に補正(制限)してよい。そして、動作指令生成部3009は、制限(補正)したアーム指令値β2rをアームパイロット指令生成部3010Bに出力すると共に、左操作レバー26Lの前後操作に対応するパイロット圧が制御弁176のパイロットポートに作用しないように減圧用比例弁33AL,33AR或いは切替弁を制御する。これにより、コントローラ30は、アーム角速度を制限値以下に制限させ、アタッチメントATにおける制御基準の目標施工面に沿った移動速度を徐々に増速させることができる。そして、コントローラ30は、最終的に、オペレータの操作入力或いは操作指令の内容(操作量)に対応する移動速度まで復帰させることができる。
<ショベルのマシンコントロール機能に関する作用>
続いて、図8(図8A、図8B)を参照して、比較例に係るショベルと対比しつつ、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能に関する作用、具体的には、図6(図6A~図6C)、及び、図7(図7A~図7C)に示すマシンコントロール機能の作用について説明する。
尚、比較例に係るショベルは、本実施形態に係るショベル100から、少なくとも上述のマスタ要素設定部3007、制御基準設定部3008が省略されている。
<<目標施工面における角部に対するアタッチメントの動作>>
図8A、図8Bは、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の一例に係る作用を説明する図である。具体的には、図8Aは、比較例に係るショベル100のマシンコントロール機能によるアタッチメントATの動作を示す図である。図8Bは、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の一例によるアタッチメントATの動作を示す図である。図8A、図8Bでは、便宜的に、アタッチメントATのうちの先端部、つまり、バケット6だけを示し、アタッチメントATの制御基準が目標施工面SFに沿って、位置P1から位置P4まで移動する様子を表している。
尚、図8Aにおいて、比較例に係るショベルは、アタッチメントATの制御基準をバケット6の作業部位としての背面に設定している。
例えば、図8A、図8Bに示すように、目標施工面SFに、前下がりの斜面部分SF1と、水平部分SF2が含まれる場合、前下がりの斜面部分SF1と水平部分SF2との間に角部CRが形成される。この前提で、斜面部分SF1から水平部分SF2にかけて連続的に掘削作業や均し作業を行う場合を想定する。
図8Aに示すように、比較例に係るショベルでは、マスタ要素がアーム5で固定される。よって、オペレータの操作入力或いは操作指令の内容に応じて、アタッチメントATの所定の制御基準(本例では、バケット6の背面)が目標施工面SFに沿って移動するように、ブーム4及びバケット6の動作が制御される。
この場合、斜面部分SF1に沿って移動中のバケット6は、操作入力或いは操作指令の内容(操作量)に対応するアーム角速度に対応する移動速度で、目標施工面SFの角部CRに接近する(図中の位置P1,P2)。そして、目標施工面SFの角部CRに相当する位置P3に到達しても、アタッチメントATの制御基準(つまり、バケット6の背面)は、オペレータの操作入力や操作指令の操作量に対応する移動速度で目標施工面SFに沿って移動しようとする。そのため、比較例に係るショベルでは、斜面部分SF1から水平部分SF2への傾斜角度の比較的大きな変化に合わせて、バケット6の姿勢(具体的には、バケット6の背面の角度)を水平部分SF2に合わせようとしても、適切に合わせることができない場合が生じうる。例えば、目標施工面への追従性を高めるため、ある程度早いタイミングで、バケット6の姿勢を先の目標施工面部分(水平部分SF2)に合わせようとすると、図8Aに示すように、アタッチメントATの制御基準が目標施工面を超えて、角部を崩すように移動してしまう場合がありうる。また、角部を崩さないように、タイミングをなるべく遅らせて、バケット6の姿勢を先の目標施工面部分(水平部分SF2)に合わせようとすると、角部CRに残土が残ってしまい、角部CRを適切に形成できない場合がありうる。また、通常のマシンコントロール機能では、アーム5の操作に合わせて、ブーム4を動作させることにより、バケット6の背面等の制御基準を目標施工面に沿わせる制御が一般的である。そのため、アーム5、バケット6の重量を支える構造上の理由、及び、ブーム4自体の自重が相対的に大きいことによる理由等により、ブーム4の動作反応(応答性)は、それほど速くならず、そもそも、比較例のショベルでは、傾斜変化が相対的に大きい角部CRのような部位を適切に施工できない可能性が高い。
これに対して、本実施形態では、コントローラ30は、アタッチメントATの制御基準の目標施工面に沿った移動に伴う、当該制御基準と目標施工面との間の相対的な位置関係を考慮して、マスタ要素を切り替える。具体的には、コントローラ30は、アタッチメントATの制御基準が目標施工面の角部等の近傍に位置している場合に、つまり、所定の条件(具体的には、角部等到達条件)が成立した場合に、マスタ要素をバケット6に設定する。つまり、所定の条件が成立した場合、同一の操作部(本例では、左操作レバー26Lにおける前後方向の操作部や外部装置に設けられる遠隔操作用の操作装置の対応する操作部)で操作されている際に、マスタ要素となるアクチュエータが変更される。換言すれば、マスタ要素を切り替える所定の条件は、エンドアタッチメントの目標軌道(或いは、目標施工面)と、制御基準(例えば、エンドアタッチメントの作業部位)との位置関係に基づき設定されてよい。より具体的には、当該所定の条件は、例えば、"エンドアタッチメントの制御基準(例えば、エンドアタッチメントの作業部位)が目標軌道の変曲点から所定距離内に近づいたこと"に相当する。これにより、コントローラ30は、オペレータの操作入力或いは操作指令に対応するように、アーム5を駆動するアームシリンダ8(第1のアクチュエータの一例)の代わりに、バケット6を駆動するバケットシリンダ9(第2のアクチュエータの一例)を動作させることができる。そして、コントローラ30は、バケット6の動作に合わせて、ブーム4及びアーム5、即ち、ブーム4を駆動するブームシリンダ7、及び、アーム5を駆動するアームシリンダ8の動作を制御することができる。より具体的には、図8Bに示すように、バケット6の爪先を制御基準として、バケット6の爪先が角部CR上にある状態を維持したまま、バケット6がその爪先を基準として回動するように、ブーム4及びアーム5を制御し、バケット6の姿勢を自動制御する。これにより、ショベル100は、角部CRを崩すことなく、バケット6の姿勢を先の施工面部分(水平部分SF2)に合わせることができる。また、コントローラ30は、バケット姿勢調整動作が終了すると、マスタ要素をアーム5に設定する。これにより、ショベル100は、アーム5に関する操作或いは操作指令に対応して、角部CRにバケット6の爪先を合わせた状態から次の目標施工面CNの掘削等を開始できるため、角部CRを適切に形成することができる。従って、本実施形態に係るショベル100は、オペレータによる操作や自律運転機能に関する操作指令に応じて、より適切にアタッチメントATの先端部を目標軌道(目標施工面の角部CR)に沿って移動させることができる。
また、本実施形態では、コントローラ30は、アタッチメントATの先端部(つまり、エンドアタッチメントに設定される制御基準)が角部等(角部CR)の近傍に位置している場合、アタッチメントATの制御基準をバケット6の作業部位としての爪先に切り替える。つまり、コントローラ30は、所定の条件(具体的には、角部等到達条件)が成立した場合、アタッチメントATの制御基準をバケット6の爪先に切り替える。これにより、コントローラ30は、図8Bに示すように、バケット6の作業部位としての背面を制御基準として、バケット6の背面を目標施工面SF(斜面部分SF1)に沿って移動させるならい制御を行っている場合でも、角部CRでは、バケット6の爪先を制御基準として、バケット6の姿勢を適切に制御することができる。
また、本実施形態では、コントローラ30は、アタッチメントATの先端部(制御基準)が角部等(角部CR)の周辺に到達した場合、アタッチメントATの制御基準、つまり、エンドアタッチメント(例えば、バケット6)の目標施工面(斜面部分SF1)に沿った移動速度を減速させる(制限する)。つまり、コントローラ30は、所定の条件(具体的には、角部等周辺到達条件)が成立した場合、エンドアタッチメント(バケット6)の移動速度を減速させる。これにより、ショベル100は、バケット6の爪先をより適切に角部CRに合わせることができるため、角部CRをより適切に形成することができる。
また、本実施形態では、コントローラ30は、バケット姿勢調整動作が終了した場合、マスタ要素をアーム5に設定する一方、アタッチメントATの制御基準の目標施工面(水平部分SF2)に沿った移動速度を制限する。そして、コントローラ30は、徐々に、制限を緩和しながら、最終的に、オペレータの操作入力或いは操作指令の内容(操作量)に対応する移動速度まで復帰させる。これにより、アタッチメントATの先端部(制御基準)の移動速度が急に高くなると、角部CRがその影響で崩れてしまう可能性がありうるところ、そのような事態を回避することができる。
<<アタッチメントの同期が取れない場合の動作>>
例えば、アーム5に関する操作態様(例えば、操作速度等)や操作指令の内容によっては、アーム5の動作に合わせて、バケット6の爪先等を目標施工面に沿って移動させるために必要なブーム4、バケット6の動作が、ブーム4、バケット6の動作に関する限界(例えば、角速度や角加速度の上限値)を超えてしまう場合がありうる。
このような状況において、比較例に係るショベルの場合、アーム5の動作に対して、ブーム4は、その動作を合わせられず(同期させられず)、結果として、バケット6の爪先等の軌跡は、目標施工面を超えてしまう場合がありうる。
これに対して、本実施形態では、コントローラ30は、オペレータによる操作内容に応じて動作するアーム5の動作に対して、ブーム4の動作が同期できなくなった、或いは、同期できなくなる可能性がある場合、つまり、所定の条件(具体的には、同期不可条件)が成立した場合、ブーム4をマスタ要素に切り替える。また、バケット6の場合についても同様である。換言すれば、コントローラ30は、アームシリンダ8(第1のアクチュエータの一例)の動作にブームシリンダ7の動作が同期できなくなった、或いは、同期できなくなる可能性がある場合、つまり、同期不可条件が成立した場合に、オペレータの操作入力或いは操作指令に対応するように、ブームシリンダ7(第2のアクチュエータの一例)を動作させる。そして、コントローラ30は、ブームシリンダ7の動作に合わせて、アームシリンダ8及びバケットシリンダ9の動作を制御する。バケット6を駆動するバケットシリンダ9の場合についても同様である。これにより、コントローラ30は、アーム5の動作に同期できない動作要素(ブーム4、バケット6)が存在する場合、その動作要素の動作に合わせて、他の動作要素(スレーブ要素)を動作させるように制御態様を変えることができる。そのため、アタッチメントATは、全体として同期しながら動作し、目標施工面に沿ってその先端部の制御基準を移動させることができる。従って、本実施形態に係るショベル100は、オペレータによる操作や自律運転機能に関する操作指令に応じて、より適切にアタッチメントATの先端部(例えば、制御基準として設定されるバケット6の作業部位としての爪先や背面等)を目標施工面に沿って移動させることができる。
また、例えば、目標施工面の傾斜が相対的に大きくなると、バケット6の爪先等を目標施工面に沿って移動させるために、バケット6の鉛直方向の移動量を大きくする必要がある。つまり、バケット6を水平方向に移動させるためのアーム5の動作よりも、バケット6を鉛直方向に移動させるためのブーム4の動作の方に高い応答性が求められる。そのため、目標施工面の傾斜が相対的に大きい状況では、アーム5に関する操作入力或いは操作指令の操作量に対応するアーム5の動作に合わせて、バケット6の爪先等を目標施工面に沿って移動させるために必要なブーム4の動作が、ブーム4の動作に関する限界を超え易くなる。その結果、アタッチメントATの動作がぎくしゃくし、コントローラ30は、目標施工面に沿ってバケット6をスムーズに移動させることができなくなる可能性がある。
これに対して、本実施形態では、コントローラ30は、上述の如く、オペレータの操作入力或いは自律運転機能に関する操作指令の内容に応じて動作するアーム5の動作に対して、ブーム4の動作が同期できなくなった、或いは、同期できなくなる可能性がある場合に、ブーム4をマスタ要素に設定する。これにより、コントローラ30は、上述の如く、ブーム4の動作に合わせて、アーム5を動作させるように制御態様を変えることができる。そのため、アタッチメントATは、全体として同期しながら動作し、目標施工面に沿ってその先端部の制御基準(作業部位)を移動させることができる。従って、本実施形態に係るショベル100は、目標施工面の傾斜が相対的に大きい場合であっても、オペレータによる操作や自律運転機能に関する操作指令に応じて、より適切にアタッチメントATの先端部(作業部位)を目標施工面に沿って移動させることができる。
尚、本実施形態では、コントローラ30は、目標施工面の傾斜が相対的に大きい場合、ブーム4の動作がアーム5の動作に同期できなくなったことをトリガとして、マスタ要素をブーム4に設定するが、目標施工面の傾斜が相対的に大きいことを直接のトリガにして、マスタ要素をブーム4に設定してもよい。つまり、コントローラ30は、アタッチメントATにおける制御基準が目標施工面における相対的に傾斜角度の大きい(例えば、傾斜角度が所定基準より大きい)急傾斜部に沿って移動している(と判断可能な所定の条件が成立した)場合に、マスタ要素をブーム4に設定してもよい。
[ショベルのマシンコントロール機能の他の例]
次に、図9~図12を参照して、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の他の例について詳細に説明する。
<ショベルのマシンコントロール機能の概要>
まず、図9を参照して、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の概要について説明する。
図9は、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の他の例の概要を説明する図である。具体的には、図9は、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の他の例が対象とする掘削作業の一連の動作工程(作業工程)を示す図である。
本例では、ショベル100は、掘削動作でバケット6内に土砂等を収容した後、ブーム上げ旋回動作を経て、ダンプトラックの荷台の上にバケット6内の土砂等を排土する排土動作を行い、ブーム下げ旋回動作を経て、再度、掘削動作に戻る一連の動作工程を繰り返す。このとき、コントローラ30は、マシンコントロール機能におけるマスタ要素、つまり、オペレータ等による操作入力に対応して動作する動作要素を切り替えながら、当該一連の作業工程を対象としてマシンコントロール機能を実現する。
具体的には、コントローラ30は、掘削動作において、アーム5をマスタ要素に設定する。そして、コントローラ30は、アーム5に関するオペレータの操作入力或いは自律運転機能に関する操作指令に対応するアーム5の動作に合わせて、目標施工面に沿ってアタッチメントATの制御基準(作業部位)が移動するように、ブーム4及びバケット6の動作を制御する。これにより、コントローラ30は、掘削動作に関するマシンコントロール機能を実現することができる。
また、コントローラ30は、ブーム上げ旋回開始条件が成立すると、マスタ要素をアーム5から上部旋回体3(旋回機構2)に切り替える(設定変更する)。そして、コントローラ30は、上部旋回体3に関するオペレータの操作入力或いは自律運転機能に関する操作指令に対応する上部旋回体3の旋回動作に合わせて、アタッチメントATの制御基準(例えば、バケット6の背面)が所定の目標軌道に沿って移動するように、ブーム4等の動作を制御する。このとき、目標軌道は、バケット6が所定の位置に駐車されたダンプトラックの荷台のあおり等に衝突することなく、荷台の上方空間における所定位置に向かうように予め規定される。これにより、コントローラ30は、掘削動作からブーム上げ旋回動作への動作工程の切り替わりに応じて、ブーム上げ旋回動作に関するマシンコントロール機能を実現することができる。
また、コントローラ30は、排土開始条件が成立すると、マスタ要素を上部旋回体3からバケット6に切り替える(設定変更する)。そして、コントローラ30は、バケット6(の開き動作)に関するオペレータの操作入力或いは自律運転機能に関する操作指令に対応するバケット6の開き動作に合わせて、アタッチメントATの制御基準(例えば、バケット6の爪先)が所定の目標軌道に沿って移動するように、アーム5等の動作を制御する。また、コントローラ30は、アーム5(の開き動作)に関するオペレータの操作入力或いは自律運転機能に関する操作指令に対応するアーム5の開き動作に合わせて、バケット6等を制御してもよい。このとき、目標軌道は、ダンプトラックの荷台における所定の目標位置に土砂等が排土されるように予め規定される。また、ダンプトラックの荷台における目標位置は、一連の作業工程において、所定の条件に応じて、可変されてもよい。これにより、コントローラ30は、ブーム上げ旋回動作から排土動作への動作工程の切り替わりに応じて、排土動作に関するマシンコントロール機能を実現することができる。
また、コントローラ30は、ブーム下げ旋回開始条件が成立すると、マスタ要素をバケット6或いはアーム5から上部旋回体3に切り替える(設定変更する)。そして、コントローラ30は、上部旋回体3に関するオペレータの操作入力或いは自律運転機能に関する操作指令に対応する上部旋回体3の旋回動作に合わせて、アタッチメントATの制御基準が所定の目標軌道に沿って移動するように、ブーム4等の動作を制御する。このとき、目標軌道は、バケット6がダンプトラックの荷台の上方空間から当該荷台のあおり等に衝突することなく、掘削動作が行われていた元の作業位置に戻るように予め規定される。これにより、コントローラ30は、排土動作からブーム下げ旋回動作への動作工程の切り替わりに応じて、ブーム下げ旋回動作に関するマシンコントロール機能を実現することができる。
また、コントローラ30は、ブーム下げ旋回動作が終了し、再度、掘削動作が開始されると判断可能な所定の条件(以下、「掘削開始条件」)が成立すると、マスタ要素を上部旋回体3からアーム5に切り替える(設定変更する)。これにより、コントローラ30は、ダンプトラックへの土砂等の積み込みが終了した後、再度、ショベル100を、マシンコントロール機能に基づく掘削動作に復帰させることができる。
<ショベルのマシンコントロール機能に関する構成>
続いて、図10(図10A~図10D)を参照して、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の他の例に関する詳細な構成について説明する。以下、上述したマシンコントロール機能の一例(図6A、図6B参照)と同様又は対応する構成については、同一の符号を付し、異なる部分を中心に説明する。
図10A~図10Dは、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能に関する詳細な構成の他の例を示す機能ブロック図である。具体的には、図10Aは、ショベル100の掘削動作に関するマシンコントロール機能に対応する構成の一部分を示す機能ブロック図である。また、図10Bは、ショベル100のブーム上げ旋回動作及びブーム下げ旋回動作に関するマシンコントロール機能に対応する構成の一部分を示す機能ブロック図である。また、図10Cは、ショベル100の排土動作に関するマシンコントロール機能に対応する構成の一部分を示す機能ブロック図である。また、図10Dは、ショベル100の一連の動作工程に共通する、マシンコントロール機能の構成の他の部分を示す機能ブロック図である。
尚、図10A~図10Cでは、主に、動作指令生成部3009で生成され、出力されるマスタ指令値及びスレーブ指令値の種類が異なり、他の部分は、共通である。また、図10B、図10Cでは、コントローラ30について、それぞれに対応するショベル100の動作工程に関連のない機能ブロックや入力要素については、点線で示されている。
コントローラ30は、上述の一例(図6A、図6B)と同様、マシンコントロール機能に関する機能部として、操作内容取得部3001と、目標施工面取得部3002と、目標軌道設定部3003と、現在位置算出部3004と、目標位置算出部3005と、バケット形状取得部3006と、マスタ要素設定部3007と、制御基準設定部3008と、動作指令生成部3009と、パイロット指令生成部3010と、姿勢角算出部3011を含む。これらの機能部3001~3011は、例えば、スイッチNSが押し操作されている場合、所定の制御周期ごとに、後述する動作を繰り返し実行する。
操作内容取得部3001は、操作圧センサ29LA,29LB,29RBから取り込まれる検出信号に基づき、操作装置26(左操作レバー26L、右操作レバー26R)の操作内容を取得する。例えば、操作内容取得部3001は、操作内容として、左操作レバー26L或いは右操作レバー26Rの操作方向(前方向であるか後方向であるか、或いは、左方向であるか右方向であるか)、操作量を取得(算出)する。また、ショベル100が遠隔操作される場合、外部装置から受信される遠隔操作信号の内容に基づき、ショベル100の半自動運転機能が実現されてもよい。この場合、上述の一例(図6A)の場合と同様、操作内容取得部3001は、外部装置から受信される遠隔操作信号に基づき、遠隔操作に関する操作内容を取得する。
目標軌道設定部3003は、アタッチメントATにおける制御基準の目標軌道に関する情報を設定する。例えば、目標軌道設定部3003は、ショベル100による掘削動作を対象として、目標施工面に沿って移動させるための目標軌道(例えば、上述の如く、ショベル100の機体を基準とする、目標施工面の前後方向への傾斜角度)を設定する。また、目標軌道設定部3003は、ショベル100によるブーム上げ旋回動作を対象として、バケット6を所定位置に駐車されているダンプトラックの荷台の上方空間に向けて移動するような目標軌道を設定する。このとき、目標軌道設定部3003は、例えば、ダンプトラックの位置及びダンプトラックの荷台に関する条件(例えば、あおり部分の高さ等)を想定して予め規定された目標軌道に関するデータを内部メモリ等から読み出してよい。また、目標軌道設定部3003は、例えば、空間認識装置70によるショベル100の周囲の物体の認識結果に基づき、ダンプトラックの位置や荷台に関する条件等を把握し、状況に合わせて、目標軌道を導出してもよい。以下、ショベル100のブーム下げ旋回動作に対応する目標軌道の設定についても同様である。また、目標軌道設定部3003は、ショベル100の排土動作を対象として、ダンプトラックの荷台の所定の目標位置に土砂等を積み込むような目標軌道を設定する。このとき、目標軌道設定部3003は、例えば、ダンプトラックの荷台に関する条件(例えば、荷台の長さ、幅、深さ等の諸元)を想定して予め規定された目標軌道に関するデータを内部メモリから読み出してよい。また、目標軌道設定部3003は、例えば、空間認識装置70によるショベル100の周囲の物体の認識結果に基づき、ダンプトラックの荷台に関する条件を把握し、状況に合わせて、目標軌道を設定してもよい。また、目標軌道設定部3003は、ショベル100によるブーム下げ旋回動作を対象として、バケット6がダンプトラックの荷台の上方空間から元の掘削動作に対応する位置まで戻るような目標軌道を設定する。このとき、目標軌道設定部3003は、例えば、ダンプトラックの位置及びダンプトラックの荷台に関する条件を想定して予め規定された目標軌道に関するデータを内部メモリ等から読み出してよい。また、目標軌道設定部3003は、例えば、空間認識装置70によるショベル100の周囲の物体の認識結果に基づき、ダンプトラックの位置や荷台に関する条件等を把握し、状況に合わせて、目標軌道を導出してもよい。
現在位置算出部3004は、アタッチメントATにおける制御基準(バケット6の爪先等)の位置(現在位置)を算出する。具体的には、現在位置算出部3004は、後述する姿勢角算出部3011により算出されるブーム角度θ1、アーム角度θ2、バケット角度θ3、旋回角度θ4に基づき、アタッチメントATの制御基準の(現在)位置を算出してよい。
目標位置算出部3005は、操作装置26における操作内容(操作方向及び操作量)と、設定された目標軌道に関する情報と、アタッチメントATにおける制御基準の現在位置とに基づき、アタッチメントATの先端部(制御基準)の目標位置を算出する。当該目標位置は、アーム5に関する操作入力におけるアーム5の操作方向及び操作量に応じて動作すると仮定したときに、今回の制御周期中で到達目標とすべき目標施工面(換言すれば、目標軌道)上の位置である。目標位置算出部3005は、例えば、不揮発性の内部メモリ等に予め格納されるマップや演算式等を用いて、アタッチメントATの先端部の目標位置を算出してよい。
マスタ要素設定部3007は、アタッチメントATを構成する動作要素(ブーム4、アーム5、及びバケット6)並びに上部旋回体3(旋回機構2)のうち、オペレータの操作入力に対応して動作する動作要素、つまり、マスタ要素を設定する。
具体的には、マスタ要素設定部3007は、上述の如く、ショベル100による掘削動作を対象として、アーム5をマスタ要素に設定する。また、マスタ要素設定部3007は、ブーム上げ旋回開始条件(第3の条件の一例)が成立した場合、マスタ要素をアーム5から上部旋回体3に切り替える。このとき、ブーム上げ旋回開始条件は、例えば、上述の如く、左操作レバー26L(第1操作部及び第2操作部の一例)が前後方向に操作されている状態から前後方向に操作される状態に切り替わることである。また、ショベル100が遠隔操作される場合、ブーム上げ旋回開始条件は、例えば、遠隔操作信号で指定される遠隔操作の内容がアーム5に関する操作を表している状態から上部旋回体3に関する操作を表している状態に切り替わることであってよい。即ち、ブーム上げ旋回開始条件は、アーム5に関する操作がされる状態から上部旋回体3に関する操作がされる状態に切り替わることであってよい。また、マスタ要素設定部3007は、排土開始条件(第4の条件の一例)が成立した場合、マスタ要素を上部旋回体3からバケット6に切り替える。このとき、排土開始条件は、例えば、上述の如く、左操作レバー26L(第3操作部の一例)が左右方向に操作される状態から右操作レバー26R(第4操作部の一例)が左右方向(具体的には、右方向)に操作される状態に切り替わることである。また、ショベル100が遠隔操作される場合、排土開始条件は、例えば、遠隔操作信号で指定される遠隔操作の内容が上部旋回体3に関する操作を表している状態からバケット6に関する操作(具体的には、開き操作)を表している状態に切り替わることであってよい。即ち、排土開始条件は、上部旋回体3に関する操作が行われる状態からバケット6に関する(開き)操作が行われる状態に切り替わることであってよい。また、マスタ要素設定部3007は、ブーム下げ旋回開始条件が成立した場合、マスタ要素をバケット6から上部旋回体3に切り替える。このとき、ブーム下げ旋回開始条件は、例えば、上述の如く、右操作レバー26Rが左右方向に操作される状態から左操作レバー26Lが左右方向に操作される状態に切り替わることである。また、ショベル100が遠隔操作される場合、ブーム下げ旋回開始条件は、例えば、遠隔操作信号で指定される遠隔操作の内容がバケット6(或いはアーム5)に関する(開き)操作を表している状態から上部旋回体3に関する操作を表している状態に切り替わることであってよい。即ち、ブーム下げ旋回開始条件は、バケット6(或いはアーム5)に関する(開き)操作がされる状態から上部旋回体3に関する操作がされる状態に切り替わることであってよい。また、マスタ要素設定部3007は、掘削開始条件が成立した場合、マスタ要素を上部旋回体3からアーム5に切り替える。このとき、掘削開始条件は、例えば、左操作レバー26Lが左右方向に操作される状態から前後方向に操作される状態に切り替わることである。また、ショベル100が遠隔操作される場合、掘削開始条件は、例えば、遠隔操作信号で指定される遠隔操作の内容が上部旋回体3の操作を表している状態からアーム5に関する操作を表している状態に切り替わることであってよい。即ち、掘削開始条件は、上部旋回体3が操作される状態からアーム5が操作される状態に切り替わることであってよい。マスタ要素設定部3007による具体的なマスタ要素の設定方法については後述する(図11A~図11C参照)。
尚、左操作レバー26Lのうち、前後方向の傾倒操作に対応する部分が第1の操作部の一例に相当し、左右方向の傾倒操作に対応する部分が第2の操作部の一例に相当する。
制御基準設定部3008は、アタッチメントATにおける制御基準を設定する。例えば、制御基準設定部3008は、ショベル100による動作工程の切り替わりに応じて、自動的に、アタッチメントATの制御基準を設定(変更)してもよい。具体的には、制御基準設定部3008は、動作工程ごとに、つまり、掘削動作、ブーム上げ旋回動作、排土動作、ブーム下げ旋回動作のそれぞれに対して予め規定される制御基準を、動作工程の切り替わりに応じて切り替える。このとき、動作工程ごとの制御基準は、予め規定されていてもよいし、入力装置72を通じたオペレータ等による操作に応じて、設定(変更)可能であってもよい。また、制御基準設定部3008は、上述のマスタ要素の切り替え(設定変更)の場合と同様の方法で、動作工程の切り替わりを判定してよい。
動作指令生成部3009は、アタッチメントATにおける制御基準の目標位置に基づき、ブーム4の動作に関する指令値(以下、「ブーム指令値」)β1r、アーム5の動作に関する指令値(以下、「アーム指令値」)β2r、及びバケット6の動作に関する指令値(「バケット指令値」)β3r、及び上部旋回体3の旋回動作に関する指令値(以下、「旋回指令値」)β4rのうちの少なくとも二つを生成する。例えば、ブーム指令値β1r、アーム指令値β2r、バケット指令値β3r、及び旋回指令値β4rは、それぞれ、アタッチメントATにおける制御基準が目標位置を実現するために必要なブーム角速度、アーム角速度、バケット角速度、及び上部旋回体3の旋回角速度である。動作指令生成部3009は、マスタ指令値生成部3009Aと、スレーブ指令値生成部3009Bを含む。
尚、ブーム指令値、アーム指令値、バケット指令値、及び旋回指令値は、アタッチメントATにおける制御基準が目標位置を実現したときのブーム角度、アーム角度、バケット角度、及び旋回角度であってもよい。また、ブーム指令値、アーム指令値、バケット指令値、及び旋回指令値は、アタッチメントATにおける制御基準が目標位置を実現するために必要な角加速度等であってもよい。
マスタ指令値生成部3009Aは、アタッチメントATを構成する動作要素(ブーム4、アーム5、及びバケット6)及び上部旋回体3(旋回機構2)のうち、マスタ要素の動作に関する指令値、つまり、マスタ指令値を生成する。
図10Aに示すように、マスタ指令値生成部3009Aは、例えば、マスタ要素設定部3007により設定されているマスタ要素がアーム5の場合、つまり、ショベル100による掘削動作が行われる場合、マスタ指令値として、アーム指令値β2rを生成し、アームパイロット指令生成部3010Bに向けて出力する。具体的には、マスタ指令値生成部3009Aは、アーム5に関する操作入力の内容(操作方向及び操作量)に対応するアーム指令値β2rを生成する。例えば、マスタ指令値生成部3009Aは、アーム5に関する操作入力の内容と、アーム指令値β2rとの関係を規定する所定のマップや変換式等に基づき、アーム指令値β2rを生成してよい。
また、図10Bに示すように、マスタ指令値生成部3009Aは、例えば、マスタ要素設定部3007により設定されているマスタ要素が上部旋回体3の場合、つまり、ショベル100によるブーム上げ旋回動作或いはブーム下げ旋回動作が行われる場合、マスタ指令値として、旋回指令値β4rを生成し、後述する旋回パイロット指令生成部3010Dに向けて出力する。具体的には、マスタ指令値生成部3009Aは、上部旋回体3に関する操作入力の内容(操作方向及び操作量)に対応する旋回指令値β4rを生成する。例えば、マスタ指令値生成部3009Aは、上部旋回体3に関する操作入力の内容と、旋回指令値β4rとの関係を規定する所定のマップや変換式等に基づき、旋回指令値β4rを生成してよい。
また、図10Cに示すように、マスタ指令値生成部3009Aは、例えば、マスタ要素設定部3007により設定されているマスタ要素がバケット6である場合、つまり、ショベル100による排土動作が行われる場合、マスタ指令値として、バケット指令値β3rを生成し、バケットパイロット指令生成部3010Cに向けて出力する。具体的には、マスタ指令値生成部3009Aは、バケット6に関する操作入力の内容(操作方向及び操作量)に対応するバケット指令値β3rを生成する。例えば、マスタ指令値生成部3009Aは、バケット6に関する操作入力の内容と、バケット指令値β3rとの関係を規定する所定のマップや変換式等に基づき、バケット指令値β3rを生成してよい。
尚、キャビン10のオペレータによって操作装置26が操作される場合、マスタ指令値生成部3009Aは、マスタ指令値を生成しなくてもよい。ショベル100の掘削動作が行われる場合、左操作レバー26Lの前後操作に対応するパイロット圧が、シャトル弁32AL,32ARを介して、アームシリンダ8に対応する制御弁176L,176Rのパイロットポートに作用し、アーム5がマスタ要素として動作しうるからである。また、ショベル100のブーム上げ旋回動作或いはブーム下げ旋回動作が行われる場合、左操作レバー26Lの左右操作に対応するパイロット圧が、シャトル弁32DL,32DRを介して、旋回油圧モータ2Aに対応する制御弁173のパイロットポートに作用し、上部旋回体3がマスタ要素として動作しうるからである。また、ショベル100の排土動作が行われる場合、右操作レバー26Rの左右操作に対応するパイロット圧が、シャトル弁32CL,32CRを介して、バケットシリンダ9に対応する制御弁174に作用し、バケット6がマスタ要素として動作することができるからである。
スレーブ指令値生成部3009Bは、アタッチメントATを構成する動作要素及び上部旋回体3のうちのマスタ要素の動作に合わせて(同期して)、アタッチメントATの制御基準が目標軌道に沿って移動するように動作する動作要素(スレーブ要素)の動作に関する指令値、つまり、スレーブ指令値を生成する。
図10Aに示すように、スレーブ指令値生成部3009Bは、例えば、マスタ要素設定部3007によりアーム5がマスタ要素に設定されている場合、つまり、ショベル100による掘削動作が行われる場合、スレーブ指令値として、ブーム指令値β1r及びバケット指令値β3rを生成する。具体的には、スレーブ指令値生成部3009Bは、アーム5の動作に合わせて(同期して)、ブーム4及びバケット6が動作し、アタッチメントATの制御基準が目標位置を実現できるように(つまり、目標施工面に沿って移動するように)、ブーム指令値β1r及びバケット指令値β3rを生成する。そして、スレーブ指令値生成部3009Bは、ブーム指令値β1r及びバケット指令値β3rを、それぞれ、ブームパイロット指令生成部3010A及びバケットパイロット指令生成部3010Cに出力する。これにより、コントローラ30は、アーム5に関する操作入力に対応するアーム5の動作に合わせて(つまり、同期させて)、ブーム4及びバケット6を動作させることで、アタッチメントATの制御基準を目標施工面に沿って移動させることができる。つまり、アーム5(アームシリンダ8)は、アーム5に関する操作入力に対応して動作し、ブーム4(ブームシリンダ7)及びバケット6(バケットシリンダ9)は、バケット6の爪先等のアタッチメントATの先端部(作業部位)が目標施工面に沿って移動するように、アーム5(アームシリンダ8)の動作に合わせて、その動作が制御される。
また、図10Bに示すように、スレーブ指令値生成部3009Bは、例えば、マスタ要素設定部3007により上部旋回体3がマスタ要素に設定されている場合、つまり、ショベル100によるブーム上げ旋回動作或いはブーム下げ旋回動作が行われる場合、スレーブ指令値として、ブーム指令値β1r、アーム指令値β2r、及びバケット指令値β3rを生成する。具体的には、スレーブ指令値生成部3009Bは、上部旋回体3の旋回動作に合わせて(同期して)、ブーム4、アーム5、及びバケット6が動作し、アタッチメントATの制御基準が目標位置を実現できるように(つまり、目標軌道に沿って移動するように)、ブーム指令値β1r、アーム指令値β2r、及びバケット指令値β3rを生成する。そして、スレーブ指令値生成部3009Bは、ブーム指令値β1r、アーム指令値β2r、及びバケット指令値β3rを、それぞれ、ブームパイロット指令生成部3010A、アームパイロット指令生成部3010B、及びバケットパイロット指令生成部3010Cに出力する。これにより、コントローラ30は、上部旋回体3に関する操作入力に対応する上部旋回体3の旋回動作に合わせて(つまり、同期させて)、ブーム4、アーム5、及びバケット6を動作させることで、アタッチメントATの制御基準を目標軌道に沿って移動させることができる。つまり、上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)は、上部旋回体3に関する操作入力に対応して動作し、ブーム4(ブームシリンダ7)、アーム5(アームシリンダ8)、及びバケット6(バケットシリンダ9)は、バケット6の背面等のアタッチメントATの先端部(作業部位)が目標軌道に沿って移動するように、上部旋回体3(旋回油圧モータ2A)の動作に合わせて、その動作が制御される。
また、図10Cに示すように、スレーブ指令値生成部3009Bは、例えば、マスタ要素設定部3007によりバケット6がマスタ要素に設定されている場合、つまり、ショベル100による排土動作が行われる場合、スレーブ指令値として、アーム指令値β2rを生成する。具体的には、スレーブ指令値生成部3009Bは、バケット6の開き動作に合わせて(同期して)、アーム5が動作し、アタッチメントATの制御基準が目標位置を実現できるように(つまり、目標軌道に沿って移動するように)、アーム指令値β2rを生成する。そして、図10Dに示すように、スレーブ指令値生成部3009Bは、アーム指令値β2rを、それぞれ、ブームパイロット指令生成部3010A、アームパイロット指令生成部3010B、及びバケットパイロット指令生成部3010Cに出力する。これにより、コントローラ30は、バケット6に関する(開き)操作に対応するバケット6の動作に合わせて(つまり、同期させて)、アーム5を動作させることで、アタッチメントATの制御基準を目標軌道に沿って移動させることができる。つまり、バケット6(バケットシリンダ9)は、バケット6に関する操作入力に対応して動作し、アーム5(アームシリンダ8)は、バケット6の爪先等のアタッチメントATの先端部(制御基準)が目標軌道に沿って移動するように、バケット6(バケットシリンダ9)の動作に合わせて、その動作が制御される。
パイロット指令生成部3010は、ブーム指令値β1r、アーム指令値β2r、バケット指令値β3r、及び旋回指令値β4rに対応するブーム角速度、アーム角速度、バケット角速度、及び旋回角速度を実現するための制御弁173~176に作用させるパイロット圧の指令値(以下、「パイロット圧指令値」)を生成する。パイロット指令生成部3010は、ブームパイロット指令生成部3010Aと、アームパイロット指令生成部3010Bと、バケットパイロット指令生成部3010Cと、旋回パイロット指令生成部3010Dを含む。
旋回パイロット指令生成部3010Dは、旋回指令値β4rと、後述する旋回角度算出部3011Dによる現在の上部旋回体3の旋回角速度の算出値(測定値)との間の偏差に基づき、上部旋回体3を旋回駆動する旋回油圧モータ2Aに対応する制御弁173に作用させるパイロット圧指令値を生成する。そして、旋回パイロット指令生成部3010Dは、生成したパイロット圧指令値に対応する制御電流を比例弁31DL,31DRに出力する。これにより、上述の如く、比例弁31DL,31DRから出力されるパイロット圧指令値に対応するパイロット圧がシャトル弁32DL,32DRを介して、制御弁173の対応するパイロットポートに作用する。そして、制御弁173の作用により、旋回油圧モータ2Aが動作し、旋回指令値β4rに対応する旋回角速度を実現するように、上部旋回体3が旋回動作する。
姿勢角算出部3011は、ブーム角度センサS1,アーム角度センサS2、バケット角度センサS3、旋回状態センサS5の検出信号に基づき、(現在の)ブーム角度、アーム角度、バケット角度、及び旋回角度、並びに、ブーム角速度、アーム角速度、バケット角速度、及び旋回角速度を算出(測定)する。姿勢角算出部3011は、ブーム角度算出部3011Aと、アーム角度算出部3011Bと、バケット角度算出部3011Cと、旋回角度算出部3011Dを含む。
旋回角度算出部3011Dは、旋回状態センサS5から取り込まれる検出信号に基づき、旋回角度及び旋回角速度等を算出(測定)する。
<ショベルのマシンコントロール機能に関する処理>
続いて、図11(図11A~図11C)を参照して、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の他の例に関する処理フローについて説明する。
図11A~図11Cは、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30によるマシンコントロール機能に関する処理の他の例、具体的には、マスタ切替処理の他の例を概略的に示すフローチャートである。より具体的には、図11A~図11Cは、それぞれ、マスタ要素がアーム5、上部旋回体3、及びバケット6に設定されている場合、つまり、ショベル100による掘削動作、ブーム上げ旋回動作或いはブーム下げ旋回動作、及び排土動作が行われる場合のマスタ切替処理を示すフローチャートである。以下、図11A~図11Cは、マシンコントロール機能が有効な場合、例えば、スイッチNSが押し操作されている場合に、上述の制御周期ごとに繰り返し実行されてよい。以下、本例では、キャビン10のオペレータによって操作装置26(左操作レバー26L、右操作レバー26R)が操作される場合について説明を行うが、上述の如く、遠隔操作される場合についても同様であってよい。
<<掘削動作時のマスタ切替処理>>
ステップS402にて、マスタ要素設定部3007は、操作圧センサ29LA,29LBの検出信号に基づき、左操作レバー26Lの傾倒方向が前後方向から左右方向に変化したか否かを判定する。マスタ要素設定部3007は、左操作レバー26Lの傾倒方向が前後方向から左右方向に変化した場合、ステップS404に進み、それ以外の場合、今回の処理を終了する。
ステップS404にて、マスタ要素設定部3007は、マスタ要素を上部旋回体3(旋回機構2)に設定する。つまり、マスタ要素設定部3007は、マスタ要素をアーム5から上部旋回体3に切り替えて、今回の処理を終了する。
<<ブーム上げ旋回動作時或いはブーム下げ旋回動作時のマスタ切替処理>>
ステップS502にて、マスタ要素設定部3007は、旋回状態センサS5や操作圧センサ29LBの検出信号に基づき、上部旋回体3が旋回停止したか否かを判定する。マスタ要素設定部3007は、上部旋回体3が旋回停止している場合、ステップS504に進み、旋回停止していない場合、今回の処理を終了する。
ステップS504にて、マスタ要素設定部3007は、操作圧センサ29LB,29RBの検出信号に基づき、左操作レバー26Lが左右操作される状態から右操作レバー26Rが左右方向(具体的には、右方向)に操作される状態に変化したか否かを判定する。マスタ要素設定部3007は、左操作レバー26Lが左右操作される状態から右操作レバー26Rが左右方向(具体的には、右方向)に操作される状態に変化した場合、ステップS506に進み、それ以外の場合、ステップS508に進む。
ステップS506にて、マスタ要素設定部3007は、マスタ要素をバケット6に設定する。つまり、マスタ要素設定部3007は、マスタ要素を上部旋回体3からバケット6に切り替えて、今回の処理を終了する。
一方、ステップS508にて、マスタ要素設定部3007は、操作圧センサ29LA,29LBの検出信号に基づき、左操作レバー26Lが左右操作される状態から前後操作される状態に変化したか否かを判定する。マスタ要素設定部3007は、左操作レバー26Lが左右操作される状態から前後操作される状態に変化した場合、ステップS510に進み、それ以外の場合、今回の処理を終了する。
ステップS510にて、マスタ要素設定部3007は、マスタ要素をアーム5に設定する。つまり、マスタ要素設定部3007は、マスタ要素を上部旋回体3からアーム5に切り替えて、今回の処理を終了する。
尚、マスタ要素設定部3007は、ショベル100がブーム上げ旋回動作中かブーム下げ旋回動作中かを予め判定してもよい。この場合、マスタ要素設定部3007は、マスタ要素の切り替わりの履歴等に基づき、ショベル100がブーム上げ旋回動作中であるか、ブーム下げ旋回動作中であるかを判定できる。そして、マスタ要素設定部3007は、ショベル100がブーム上げ旋回動作中の場合、ステップS508,S510が省略されたフローチャートを実行し、ショベル100がブーム下げ旋回動作中の場合、ステップS504,S506が省略され、ステップS502がYESの場合、ステップS508に進む形に修正されたフローチャートを実行してよい。
<<排土動作時のマスタ切替処理>>
ステップS602にて、マスタ要素設定部3007は、操作圧センサ29LB,29RBの検出信号に基づき、右操作レバー26Rが左右操作される状態から左操作レバー26Lが左右操作される状態に変化したか否かを判定する。マスタ要素設定部3007は、右操作レバー26Rが左右操作される状態から左操作レバーが左右操作される状態に変化した場合、ステップS604に進み、それ以外の場合、今回の処理を終了する。
ステップS604にて、マスタ要素設定部3007は、上部旋回体3をマスタ要素に設定する。つまり、マスタ要素設定部3007は、マスタ要素をバケット6から上部旋回体3に切り替えて、今回の処理を終了する。
<ショベルのマシンコントロール機能に関する作用>
続いて、図12(図12A、図12B)を参照して、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の他の例に関する作用、具体的には、図9~図11に示すマシンコントロール機能の作用について説明する。
図12A、図12Bは、それぞれ、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の他の例の作用を説明する図である。具体的には、図12A,図12Bは、ショベル100の掘削動作、ブーム上げ旋回動作、排土動作、及びブーム下げ旋回動作の一連の動作工程におけるアタッチメントATの動作を示す上面図及び側面図である。
尚、図中における位置P11、位置P12、及び位置P13は、それぞれ、掘削終了位置、ブーム上げ終了位置、及び排土位置を表している。また、位置P13は、排土動作の都度に変化してもよい。例えば、土砂等がダンプトラックの荷台上において、ショベル100に近い側から積み込まれる場合、位置P13は、排土動作の都度、ダンプトラックの荷台における運転席側へ向けて変更される。また、位置P13は、ダンプトラックに土砂等が積み込まれた状態(以下、「積み込み状態」)がショベル100の空間認識装置70(例えば、単眼カメラやステレオカメラ等の撮像装置)を通じて検出されることにより、検出された積み込み状態に応じて、変更されてもよい。具体的には、積み込み状態として、荷台の凹凸の状態が検出され、検出された凹部に対応する位置が位置P13として設定されてもよい。更に、積み込み状態として、排土時におけるダンプトラックの荷台からこぼれが検出されることにより、こぼれの検出に応じて、位置P13が左右方向の何れか、或いは、下方へ変更されもよい。
図12A、図12Bに示すように、本例では、ショベル100は、位置P10から位置P11まで前後方向に掘削動作を行い、土砂を収容したバケット6を、ブーム上げ旋回動作で位置P11からダンプトランクDTのあおりの高さHdよりも高い位置P12まで持ち上げる。その後、ショベル100は、バケット6を開きながら、アーム5を開く排土動作を行い、バケット6を位置P12からダンプトラックDPの荷台の目標位置に対応する位置P13まで移動させ、土砂を目標位置に排土する。そして、ショベル100は、マシンコントロール機能により、ブーム下げ旋回動作で位置P13から(位置P12を経由して)位置P11まで戻り、一連の動作工程の1サイクルを終了する。
通常、オペレータ等は、このような一連の動作工程を操作装置26に対する複合操作を駆使して実現する。そのため、オペレータ等の操作熟練度によっては、その作業性が低下する可能性がある。
これに対して、本実施形態では、上述の一連の動作工程を前提として、コントローラ30は、操作装置26における操作状態に関する所定の条件が成立した場合、マシンコントロール機能におけるマスタ要素を切り替える。本例における当該所定の条件は、操作されていなかった操作対象が、所定の操作部(操作装置26)を通じて、操作開始された場合に相当する。
具体的には、コントローラ30は、左操作レバー26Lが前後操作される状態から左右操作される状態に切り替わることにより、ブーム上げ旋回開始条件が成立すると、上述の如く、マスタ要素をアーム5から上部旋回体3に切り替える。これにより、コントローラ30は、左操作レバー26Lの前後操作に対応して動作するアームシリンダ8(第1のアクチュエータの一例)の動作に合わせるように、ブームシリンダ7(他のアクチュエータの一例)等の動作を制御する状態から、左操作レバー26Lの左右操作に対応して動作する旋回油圧モータ2A(第2のアクチュエータの一例)の動作に合わせるように、ブームシリンダ7等の動作を制御する状態に遷移する。よって、オペレータ等は、上述の如く、左操作レバー26Lの操作方向(傾倒方向)を前後方向から左右方向に切り替えるだけで、マシンコントロール機能によるショベル100の動作工程を掘削動作からブーム上げ旋回動作に移行させることができる。
また、コントローラ30は、左操作レバー26Lが左右操作される状態から右操作レバー26Rが左右操作される状態に切り替わることにより、排土開始条件が成立すると、上述の如く、マスタ要素を上部旋回体3からバケット6に切り替える。これにより、コントローラ30は、左操作レバー26Lの左右操作に対応して動作する旋回油圧モータ2A(第1のアクチュエータの一例)の動作に合わせるように、ブームシリンダ7等(他のアクチュエータの一例)の動作を制御する状態から、右操作レバー26Rの左右操作に対応して動作するバケットシリンダ9(第2のアクチュエータの一例)の動作に合わせるように、アームシリンダ8等の動作を制御する状態に遷移する。よって、オペレータ等は、上述の如く、操作装置26における操作対象を、左操作レバー26Lの左右操作から右操作レバー26Rの左右操作に切り替えるだけで、マシンコントロール機能によるショベル100に動作工程をブーム上げ旋回動作から排土動作に移行させることができる。
また、コントローラ30は、右操作レバー26Rが左右操作される状態から左操作レバー26Lが左右操作される状態に切り替わることにより、ブーム下げ旋回開始条件が成立すると、上述の如く、マスタ要素をバケット6から上部旋回体3に切り替える。これにより、コントローラ30は、右操作レバー26Rの左右操作に対応して動作するバケットシリンダ9(第1のアクチュエータの一例)の動作に合わせるように、アームシリンダ8(他のアクチュエータの一例)等の動作を制御する状態から、左操作レバー26Lの左右操作に対応して動作する旋回油圧モータ2A(第2のアクチュエータの一例)の動作に合わせるように、ブームシリンダ7等の動作を制御する状態に遷移する。よって、オペレータ等は、上述の如く、操作装置26における操作対象を、右操作レバー26Rの左右操作から左操作レバー26Lの左右操作に切り替えるだけで、マシンコントロール機能によるショベル100の動作工程を排土動作からブーム下げ旋回動作に切り替えることができる。
また、コントローラ30は、左操作レバー26Lが左右操作される状態から前後操作される状態に切り替わることにより、掘削開始条件が成立すると、上述の如く、マスタ要素を上部旋回体3からアーム5に切り替える。これにより、コントローラ30は、左操作レバー26Lの左右操作に対応して動作する旋回油圧モータ2Aの動作に合わせるように、ブームシリンダ7(他のアクチュエータの一例)等を制御する状態から、左操作レバー26Lの前後操作に対応して動作するアーム5の動作に合わせるように、ブーム4等の動作を制御する状態に遷移する。よって、オペレータ等は、上述の如く、左操作レバー26Lの操作方向を左右方向から前後方向に切り替えるだけで、マシンコントロール機能によるショベル100の動作工程をブーム下げ旋回動作から掘削動作に復帰させることができる。
つまり、アーム5に関する操作(つまり、左操作レバー26Lの前後操作)によるショベル100の掘削動作は、バケット6が位置P10から位置P11に到達した状態で終了され、その後、旋回操作(つまり、左操作レバー26Lの左右操作)がされると、バケット6が位置P11から位置P13に向かうように、ショベル100のブーム上げ旋回動作が開始される。そして、バケット6が位置P13に到達後、バケット6に関する操作(つまり、右操作レバー26Rの左右操作)がされると、ショベル100の排土動作が開始される。
また、上述の如く、ショベル100のブーム下げ旋回動作の前に、均し動作が加えられてもよい。つまり、コントローラ30は、所定の条件(均し動作開始条件)が成立した場合、オペレータのアタッチメントに関する操作に合わせて、ダンプトラックの荷台に搭載された土砂等を平坦にするための均し動作を自動的に行わせ、バケット6を所定の目標軌道に合わせて移動させてよい。例えば、均し動作開始条件は、上述の如く、"バケット6からダンプトラックの荷台に落下する土砂が無くなったこと"の条件を含んでよい。また、例えば、均し動作開始条件は、上述の如く、"ダンプトラックの荷台の上方にバケット6がある状態で、アーム5に関する操作がされた(つまり、左操作レバー26Lが前後方向に操作された)ことの条件を含んでもよい。この場合、コントローラ30は、上述の如く、ダンプトラックの荷台の形状に基づき、目標軌道が生成してよい。
このように、オペレータ等は、複数の動作要素(アクチュエータ)に対応する複合操作を行うことなく、単一操作の操作対象を所定の条件に沿って切り替えていくだけで、容易に、上述の一連の動作工程をショベル100に行わせることができる。よって、オペレータ等は、その熟練度が低い場合であっても、所定の目標軌道(例えば、図中の位置P1から位置P2を経由して位置P3に至る点線の軌道)に沿って、アタッチメントATの先端部(制御基準)を移動させることができる。換言すれば、本実施形態に係るショベル100は、オペレータによる操作に応じて、より適切にアタッチメントATの先端部を目標軌道(具体的には、一連の動作工程に亘る目標軌道)に沿って移動させることができる。従って、本実施形態に係るショベル100は、上述の一連の動作工程を通じたオペレータ等の操作性を向上させることができると共に、作業性を高めることができる。
[ショベルのマシンコントロール機能の更に他の例]
次に、図13、図14(図14A、図14B)を参照して、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の更に他の例について詳細に説明する。本例では、ショベル100は、自律運転機能に基づき、上述の他の例(図9~図12)と同様の一連の作業を行う。
本例に係るショベル100のマシンコントロール機能に関する構成と上述の他の例の構成(図10A~図10D)との相違点は、上述の一例の半自動運転機能に対応する図6Aに対する自律運転機能に対応する図6Cの相違点と同様である。即ち、本例に係るショベル100のマシンコントロール機能に関する構成は、操作内容取得部3001の機能に代えて、作業内容取得部3001Aの機能が採用される以外、上述の他の例(図10A~図10D)と同様である。そのため、本例では、ショベル100のマシンコントロール機能に関する構成の図示を省略し、図10A~図10Dを適宜援用して説明を行う。
<ショベルのマシンコントロール機能の概要>
まず、図13を参照して、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の更に他の例の概要について説明する。
図13は、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の更に他の例の概要を説明する図である。具体的には、図13は、本実施形態に係るショベル100のマシンコントロール機能の更に他の例が対象とする掘削作業の一連の動作工程(作業工程)を示す図である。
本例では、ショベル100は、上述の図9の場合と同様、掘削動作でバケット6内に土砂等を収容した後、ブーム上げ旋回動作を経て、ダンプトラックの荷台の上にバケット6内の土砂等を排土する排土動作を行い、ブーム下げ旋回動作を経て、再度、掘削動作に戻る一連の動作工程を繰り返す。このとき、コントローラ30は、マシンコントロール機能(自律運転機能)におけるマスタ要素、つまり、操作指令に対応して動作する動作要素を切り替えながら、当該一連の作業工程を対象としてマシンコントロール機能を実現する。
具体的には、コントローラ30は、掘削動作において、アーム5をマスタ要素に設定する。そして、コントローラ30は、操作指令に対応するアーム5の動作に合わせて、目標施工面に沿ってアタッチメントATの制御基準(作業部位)が移動するように、ブーム4及びバケット6の動作を制御する。また、コントローラ30は、掘削動作において、バケット6をマスタ要素に設定してもよい。例えば、掘削長さや掘削深さが相対的に小さい状況もありうるからである。これにより、コントローラ30は、掘削動作に関するマシンコントロール機能を実現することができる。
また、コントローラ30は、アタッチメントATの制御基準(作業部位)が目標軌道上における掘削動作の目標終了位置(以下、「掘削目標終了位置」)に到達すると、マスタ要素をアーム5から上部旋回体3(旋回機構2)に切り替える(設定変更する)。そして、コントローラ30は、操作指令に対応する上部旋回体3の旋回動作に合わせて、アタッチメントATの制御基準(例えば、バケット6の背面等の作業部位)が所定の目標軌道に沿って移動するように、ブーム4等の動作を制御する。このとき、目標軌道は、バケット6が所定の位置に駐車されたダンプトラックの荷台のあおり等に衝突することなく、荷台の上方空間における所定位置に向かうように予め規定されてよい。これにより、コントローラ30は、掘削動作からブーム上げ旋回動作への動作工程の切り替わりに応じて、ブーム上げ旋回動作に関するマシンコントロール機能を実現することができる。
また、コントローラ30は、アタッチメントATの制御基準(作業部位)が目標軌道上におけるブーム上げ旋回動作の終了目標位置(以下、「旋回目標終了位置」)に到達すると、マスタ要素を上部旋回体3からバケット6に切り替える(設定変更する)。そして、コントローラ30は、操作指令に対応するバケット6の開き動作に合わせて、アタッチメントATの制御基準(例えば、バケット6の爪先等の作業部位)が所定の目標軌道に沿って移動するように、アーム5等の動作を制御する。このとき、目標軌道は、ダンプトラックの荷台における所定の目標位置に土砂等が排土されるように予め規定される。ダンプトラックの荷台における目標位置は、一連の作業工程において、所定の条件に応じて、可変されてもよい。また、コントローラ30は、アタッチメントATの制御基準(作業部位)が目標軌道上における旋回目標終了位置に到達すると、マスタ要素を上部旋回体3からアーム5に切り替えてもよい。ダンプトラックに既に積み込まれている土砂の形状によっては、ショベル100の機体から相対的に離れた場所に土砂を排土する必要が生じ得るからである。これにより、コントローラ30は、ブーム上げ旋回動作から排土動作への動作工程の切り替わりに応じて、排土動作に関するマシンコントロール機能を実現することができる。
また、コントローラ30は、アタッチメントATの制御基準(作業部位)が目標軌道上における排土動作の目標終了位置に到達すると、マスタ要素をバケット6から上部旋回体3に切り替える(設定変更する)。そして、コントローラ30は、操作指令に対応する上部旋回体3の旋回動作に合わせて、アタッチメントATの制御基準が所定の目標軌道に沿って移動するように、ブーム4等の動作を制御する。このとき、目標軌道は、バケット6がダンプトラックの荷台の上方空間から当該荷台のあおり等に衝突することなく、掘削動作が行われていた元の作業位置に戻るように予め規定される。これにより、コントローラ30は、排土動作からブーム下げ旋回動作への動作工程の切り替わりに応じて、ブーム下げ旋回動作に関するマシンコントロール機能を実現することができる。
また、コントローラ30は、アタッチメントATの制御基準(作業部位)が目標軌道上におけるブーム下げ旋回動作の目標終了位置、即ち、掘削動作の目標開始位置(以下、「掘削目標開始位置」)に到達すると、マスタ要素を上部旋回体3からアーム5或いはバケット6に切り替える(設定変更する)。これにより、コントローラ30は、ダンプトラックへの土砂等の積み込みが終了した後、再度、ショベル100を、マシンコントロール機能に基づく掘削動作に復帰させることができる。
このように、本例では、コントローラ30は、目標軌道上における現在の動作工程の目標終了位置への到達に合わせて、自律運転機能に基づき生成される操作指令に応じた動作するマスタ要素を切り替えることができる。
<ショベルのマシンコントロール機能に関する処理>
続いて、図14A、図14Bを参照して、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30によるマシンコントロール機能の更に他の例に関する処理フローについて説明する。
図14A、図14Bは、本実施形態に係るショベル100のコントローラ30によるマシンコントロール機能に関する処理の更に他の例、具体的には、マスタ切替処理の更に他の例を概略的に示すフローチャートである。図14A、図14Bのフローチャートは、ショベル100の自律運転機能が有効な場合に、繰り返し実行されてよい。
図14Aに示すように、ステップS702にて、コントローラ30は、アタッチメントATの作業部位(例えば、バケット6の爪先等)が掘削動作の目標軌道上における掘削目標終了位置に到達したか否かを判定する。コントローラ30は、アタッチメントATの作業部位(制御基準)が掘削目標終了位置に到達した場合、ステップS704に進み、到達していない場合、到達するまで本ステップの処理を繰り返す。
ステップS704にて、コントローラ30は、マスタ要素をアーム5から上部旋回体3に切り替える。コントローラ30は、ステップS704の処理が完了すると、ステップS706に進む。
ステップS706にて、コントローラ30は、アタッチメントATの作業部位(例えば、バケット6の背面等)がブーム上げ旋回動作の目標軌道上における旋回目標終了位置に到達したか否かを判定する。コントローラ30は、アタッチメントATの作業部位が旋回目標終了位置に到達している場合、ステップS708に進み、到達していない場合、到達するまで本ステップの処理を繰り返す。
ステップS708にて、コントローラ30は、空間認識装置70の出力に基づき、ダンプトラックの荷台の土砂の形状を判断する。コントローラ30は、ステップS708の処理が完了すると、ステップS710に進む。
ステップS710にて、コントローラ30は、ダンプトラックの荷台におけるショベル100の機体に相対的に近い領域の土砂の量が相対的に少ないか否かを判定する。コントローラ30は、ショベル100の機体に相対的に近い領域の土砂の量が相対的に少ない場合、ステップS712に進み、相対的に少なくない、即ち、相対的に多い場合、ステップS714に進む。
ステップS712にて、コントローラ30は、マスタ要素を上部旋回体3からバケット6に切り替える。これにより、コントローラ30は、操作指令に合わせてバケット6を動作させることで、ダンプトラックの荷台におけるショベル100の機体から相対的に近い領域にバケット6の土砂を排土させることができる。コントローラ30は、ステップS712の処理が完了すると、ステップS716に進む。
一方、ステップS714にて、コントローラ30は、マスタ要素を上部旋回体3からアーム5に切り替える。これにより、コントローラ30は、操作指令に合わせてアーム5を動作させることで、ダンプトラックの荷台におけるショベル100の機体から相対的に離れた領域にバケット6の土砂を排土させることができる。コントローラ30は、ステップS714の処理が完了すると、ステップS716に進む。
図14Bに示すように、ステップS716にて、コントローラ30は、アタッチメントATの作業部位(例えば、バケット6の爪先等)が排土動作の目標軌道上における排土目標終了位置に到達したか否かを判定する。コントローラ30は、アタッチメントATの作業部位が排土目標終了位置に到達している場合、ステップS718に進み、到達していない場合、到達するまで本ステップの処理を繰り返す。
ステップS718にて、コントローラ30は、マスタ要素をバケット6或いはアーム5から上部旋回体3に切り替える。コントローラ30は、ステップS718の処理が完了すると、ステップS720に進む。
ステップS720にて、コントローラ30は、アタッチメントATの作業部位(例えば、バケット6の背面等)がブーム下げ旋回動作の目標軌道上における掘削目標開始位置に到達したか否かを判定する。コントローラ30は、アタッチメントATの作業部位が掘削目標開始位置に到達している場合、ステップS722に進み、到達していない場合、到達するまで本ステップの処理を繰り返す。
ステップS722にて、コントローラ30は、マスタ要素を上部旋回体3からマスタ要素をアーム5に切り替える。コントローラ30は、ステップS722の処理が完了すると、今回の本フローチャートの処理を終了する。
このように、本例では、コントローラ30は、排土動作の開始時に、排土場所(ダンプトラックの荷台)の土砂の形状に基づき、アーム5(アームシリンダ8)及びバケット6(バケットシリンダ9)の何れか一方をマスタ要素として選択する。具体的には、コントローラ30は、ショベル100の機体に相対的に近い領域の土砂が相対的に少ない場合、マスタ要素をバケット6(バケットシリンダ9)に設定し、ショベル100の機体に相対的に近い領域の土砂が相対的に多い場合、マスタ要素をアーム5(アームシリンダ8)に設定する。これにより、ショベル100は、排土動作時に、その排土場所の土砂形状に合わせて、マスタ要素を切り替えることができる。そのため、ショベル100は、マシンコントロール機能(自動運転機能)によって、排土場所のより適切な領域に土砂を排土することができる。
尚、上述のマシンコントロール機能の他の例における排土動作の開始時に、同様の処理が行われてもよい。即ち、コントローラ30は、上述のマシンコントロール機能の他の例における排土動作開始条件が成立した場合に、排土場所の土砂の形状に基づき、アーム5及びバケット6の何れか一方をマスタ要素として選択してもよい。
[ショベル管理システム]
次に、図15を参照して、ショベル管理システムSYSについて説明する。
図15は、ショベル管理システムSYSの一例を示す概略図である。
図15に示すように、ショベル管理システムSYSは、ショベル100と、支援装置200と、管理装置300とを含む。ショベル管理システムSYSは、1台又は複数台のショベル100を管理するシステムである。
ショベル100が取得する情報は、ショベル管理システムSYSを通じ、管理者及び他のショベルのオペレータ等と共有されてもよい。ショベル管理システムSYSを構成するショベル100、支援装置200、及び管理装置300のそれぞれは、1台であってもよく、複数台であってもよい。本例では、ショベル管理システムSYSは、1台のショベル100と、1台の支援装置200と、1台の管理装置300とを含む。
支援装置200は、典型的には携帯端末装置であり、例えば、施工現場にいる作業者等が携帯するラップトップ型のコンピュータ端末、タブレット端末、或いはスマートフォン等である。支援装置200は、ショベル100のオペレータが携帯する携帯端末であってもよい。支援装置200は、固定端末装置であってもよい。
管理装置300は、典型的には固定端末装置であり、例えば、施工現場外の管理センタ等に設置されるサーバコンピュータ(いわゆるクラウドサーバ)である。また、管理装置300は、例えば、施工現場に設定されるエッジサーバであってもよい。また、管理装置300は、可搬性の端末装置(例えば、ラップトップ型のコンピュータ端末、タブレット端末、或いはスマートフォン等の携帯端末)であってもよい。
支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方は、モニタと遠隔操作用の操作装置とを備えていてもよい。この場合、支援装置200や管理装置300を利用するオペレータは、遠隔操作用の操作装置を用いつつ、ショベル100を操作してもよい。遠隔操作用の操作装置は、例えば、近距離無線通信網、携帯電話通信網、又は衛星通信網等の無線通信網を通じ、ショベル100に搭載されているコントローラ30に通信可能に接続される。
また、キャビン10内に設置された表示装置D1に表示される各種情報画像(例えば、ショベル100の周囲の様子を表す画像情報や各種の設定画面等)が、支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方に接続された表示装置で表示されてもよい。ショベル100の周囲の様子を表す画像情報は、空間認識装置70の撮像画像に基づき生成されてよい。これにより、支援装置200を利用する作業者、或いは、管理装置300を利用する管理者等は、ショベル100の周囲の様子を確認しながら、ショベル100の遠隔操作を行ったり、ショベル100に関する各種の設定を行ったりすることができる。
例えば、ショベル管理システムSYSにおいて、ショベル100のコントローラ30は、実行中のマシンコントロール機能に関する情報を支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方に送信してもよい。その際、コントローラ30は、空間認識装置70の出力、及び、単眼カメラが撮像した画像等の少なくとも1つを支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方に送信してもよい。画像は、マシンコントロール機能の実行中に撮像された複数の画像であってもよい。更に、コントローラ30は、マシンコントロール機能の実行中におけるショベル100の動作内容に関するデータ、ショベル100の姿勢に関するデータ、及び掘削アタッチメントの姿勢に関するデータ等の少なくとも1つに関する情報を支援装置200及び管理装置300の少なくとも一方に送信してもよい。支援装置200を利用する作業者、又は、管理装置300を利用する管理者が、マシンコントロール機能を実行中のショベル100に関する情報を入手できるようにするためである。
このように、ショベル管理システムSYSは、マシンコントロール機能の実行中に取得されるショベル100に関する情報を管理者及び他のショベルのオペレータ等と共有できるようにする。
[変形・変更]
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば、上述した実施形態において、ショベル100のマシンコントロール機能の一例と他の例とは組み合わせてもよい。具体的には、上述したマシンコントロール機能の他の例におけるショベル100の掘削動作中に、上述したマシンコントロールの一例におけるマスタ要素の切り替え方法(図7A)が適用されてもよい。
例えば、上述した実施形態及び変形例では、ショベル100は、下部走行体1、上部旋回体3、ブーム4、アーム5、及びバケット6等の各種動作要素を全て油圧駆動する構成であったが、その一部が電気駆動される構成であってもよい。つまり、上述した実施形態で開示される構成等は、ハイブリッドショベルや電動ショベル等に適用されてもよい。
最後に、本願は、2018年11月14日に出願した日本国特許出願2018-214164号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。