以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の要件は、適宜組み合わせることが可能である。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
<作業車両の全体構成>
図1は、実施形態に基づく作業車両100の外観図である。
図1に示されるように、作業車両100として、本例においては、おもに油圧ショベルを例に挙げて説明する。
作業車両100は、車両本体1と、油圧により作動する作業機2とを有する。なお、後述するように、作業車両100には掘削制御を実行する制御システム200(図3)が搭載されている。
車両本体1は、旋回体3と、走行装置5とを有する。走行装置5は、一対の履帯5Crを有する。作業車両100は、履帯5Crの回転により走行可能である。なお、走行装置5が車輪(タイヤ)を有していてもよい。
旋回体3は、走行装置5の上に配置され、かつ走行装置5により支持されている。旋回体3は、旋回軸AXを中心として走行装置5に対して旋回可能である。
旋回体3は、運転室4を有する。この運転室4には、オペレータが着座する運転席4Sが設けられる。オペレータは、運転室4において作業車両100を操作可能である。
本例においては、運転席4Sに着座したオペレータを基準として各部の位置関係について説明する。前後方向とは、運転席4Sに着座したオペレータの前後方向をいう。左右方向とは、運転席4Sに着座したオペレータの左右方向をいう。運転席4Sに着座したオペレータに正対する方向を前方向とし、前方向に対向する方向を後方向とする。運転席4Sに着座したオペレータが正面に正対したときの右側、左側をそれぞれ右方向、左方向とする。
旋回体3は、エンジンが収容されるエンジンルーム9と、旋回体3の後部に設けられるカウンタウェイトとを有する。旋回体3において、エンジンルーム9の前方に手すり19が設けられる。エンジンルーム9には、図示しないエンジン及び油圧ポンプなどが配置されている。
作業機2は、旋回体3に支持されている。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8と、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とを有する。ブーム6は旋回体3に接続されている。アーム7はブーム6に接続されている。バケット8はアーム7に接続されている。
ブームシリンダ10は、ブーム6を駆動する。アームシリンダ11は、アーム7を駆動する。バケットシリンダ12は、バケット8を駆動する。ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12のそれぞれは、作動油によって駆動される油圧シリンダである。
ブーム6の基端部は、ブームピン13を介して旋回体3に接続される。アーム7の基端部は、アームピン14を介してブーム6の先端部に接続される。バケット8は、バケットピン15を介してアーム7の先端部に接続される。
ブーム6は、ブームピン13を中心に回転可能である。アーム7は、アームピン14を中心に回転可能である。バケット8は、バケットピン15を中心に回転可能である。
アーム7及びバケット8のそれぞれは、ブーム6の先端側で移動可能な可動部材である。
図2(A)および図2(B)は、実施形態に基づく作業車両100を模式的に説明する図である。図2(A)には、作業車両100の側面図が示される。図2(B)には、作業車両100の背面図が示される。
図2(A)および図2(B)に示されるように、ブーム6の長さL1は、ブームピン13とアームピン14との距離である。アーム7の長さL2は、アームピン14とバケットピン15との距離である。バケット8の長さL3は、バケットピン15とバケット8の刃先8aとの距離である。バケット8は、複数の刃を有し、本例においては、バケット8の先端部を刃先8aと称する。
なお、バケット8は、刃を有していなくてもよい。バケット8の先端部は、ストレート形状の鋼板で形成されていてもよい。
作業車両100は、ブームシリンダストロークセンサ16と、アームシリンダストロークセンサ17と、バケットシリンダストロークセンサ18とを有する。ブームシリンダストロークセンサ16はブームシリンダ10に配置される。アームシリンダストロークセンサ17はアームシリンダ11に配置される。バケットシリンダストロークセンサ18はバケットシリンダ12に配置される。なお、ブームシリンダストロークセンサ16、アームシリンダストロークセンサ17およびバケットシリンダストロークセンサ18は総称してシリンダストロークセンサとも称する。
ブームシリンダストロークセンサ16の検出結果に基づいて、ブームシリンダ10のストローク長さが求められる。アームシリンダストロークセンサ17の検出結果に基づいて、アームシリンダ11のストローク長さが求められる。バケットシリンダストロークセンサ18の検出結果に基づいて、バケットシリンダ12のストローク長さが求められる。
なお、本例においては、ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12のストローク長さをそれぞれブームシリンダ長、アームシリンダ長およびバケットシリンダ長とも称する。また、本例においては、ブームシリンダ長、アームシリンダ長、及びバケットシリンダ長を総称してシリンダ長データLとも称する。なお、角度センサを用いてストローク長さを検出する方式を採用することも可能である。
作業車両100は、作業車両100の位置を検出可能な位置検出装置20を備えている。
位置検出装置20は、アンテナ21と、グローバル座標演算部23と、IMU(Inertial Measurement Unit)24とを有する。
アンテナ21は、たとえばGNSS(Global Navigation Satellite Systems:全地球航法衛星システム)用のアンテナである。アンテナ21は、たとえばRTK-GNSS(Real Time Kinematic-Global Navigation Satellite Systems)用アンテナである。
アンテナ21は、旋回体3に設けられる。本例においては、アンテナ21は、旋回体3の手すり19に設けられる。なお、アンテナ21は、エンジンルーム9の後方向に設けられてもよい。例えば、旋回体3のカウンタウェイトにアンテナ21が設けられてもよい。アンテナ21は、受信した電波(GNSS電波)に応じた信号をグローバル座標演算部23に出力する。
グローバル座標演算部23は、グローバル座標系におけるアンテナ21の設置位置P1を検出する。グローバル座標系は、作業エリアに設置した基準位置Prを元にした3次元座標系(Xg、Yg、Zg)である。本例においては、基準位置Prは、作業エリアに設定された基準杭の先端の位置である。また、ローカル座標系とは、作業車両100を基準とした、(X、Y、Z)で示される3次元座標系である。ローカル座標系の基準位置は、旋回体3の旋回軸(旋回中心)AXに位置する基準位置P2を示すデータである。
本例においては、アンテナ21は、車幅方向に互いに離れるように旋回体3に設けられた第1アンテナ21A及び第2アンテナ21Bを有する。
グローバル座標演算部23は、第1アンテナ21Aの設置位置P1a及び第2アンテナ21Bの設置位置P1bを検出する。グローバル座標演算部23は、グローバル座標で表される基準位置データPを取得する。本例においては、基準位置データPは、旋回体3の旋回軸(旋回中心)AXに位置する基準位置P2を示すデータである。なお、基準位置データPは、設置位置P1を示すデータでもよい。
本例においては、グローバル座標演算部23は、2つの設置位置P1a及び設置位置P1bに基づいて旋回体方位データQを生成する。旋回体方位データQは、設置位置P1aと設置位置P1bとで決定される直線がグローバル座標の基準方位(例えば北)に対してなす角に基づいて決定される。旋回体方位データQは、旋回体3(作業機2)が向いている方位を示す。グローバル座標演算部23は、後述する表示コントローラ28に基準位置データP及び旋回体方位データQを出力する。
IMU24は、旋回体3に設けられる。本例においては、IMU24は、運転室4の下部に配置される。旋回体3において、運転室4の下部に高剛性のフレームが配置される。IMU24は、そのフレーム上に配置される。なお、IMU24は、旋回体3の旋回軸AX(基準位置P2)の側方(右側又は左側)に配置されてもよい。IMU24は、車両本体1の左右方向に傾斜する傾斜角θ4と、車両本体1の前後方向に傾斜する傾斜角θ5とを検出する。
<制御システムの構成>
次に、実施形態に基づく制御システム200の概要について説明する。
図3は、実施形態に基づく制御システム200の構成を示す機能ブロック図である。
図3に示されるように、制御システム200は、作業機2を用いる掘削処理を制御する。本例においては、掘削処理の制御は、ならい制御を有する。
ならい制御は、バケットの刃先が設計地形に沿って移動することによりバケットの刃先に当接する土砂を掻き均し、平らな設計地形に対応する面を作るならい作業を自動制御することを意味し、制限掘削制御とも称される。
ならい制御は、オペレータによるアーム操作があり、バケットの刃先と設計地形との距離および刃先の速度が基準内である場合に実行される。オペレータは、ならい制御中は通常、ブームを下げる方向に常にブームを操作しつつ、アームを操作する。
制御システム200は、ブームシリンダストロークセンサ16と、アームシリンダストロークセンサ17と、バケットシリンダストロークセンサ18と、アンテナ21と、グローバル座標演算部23と、IMU24と、操作装置25と、作業機コントローラ26と、圧力センサ66及び圧力センサ67と、制御弁27と、方向制御弁64と、表示コントローラ28と、表示部29と、センサコントローラ30と、マンマシンインターフェース部32とを有する。
操作装置25は、運転室4に配置される。オペレータにより操作装置25が操作される。操作装置25は、作業機2を駆動するオペレータ操作を受け付ける。本例においては、操作装置25は、パイロット油圧方式の操作装置である。
方向制御弁64により、油圧シリンダに対する作動油の供給量が調整される。方向制御弁64は、第1油圧室および第2油圧室に供給される油によって作動する。なお、本例においては、油圧シリンダ(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)を作動するために、その油圧シリンダに供給される油は作動油とも称される。また、方向制御弁64を作動するためにその方向制御弁64に供給される油はパイロット油と称される。また、パイロット油の圧力はパイロット油圧とも称される。
作動油及びパイロット油は、同一の油圧ポンプから送出されてもよい。例えば、油圧ポンプから送出された作動油の一部が減圧弁で減圧され、その減圧された作動油がパイロット油として使用されてもよい。また、作動油を送出する油圧ポンプ(メイン油圧ポンプ)と、パイロット油を送出する油圧ポンプ(パイロット油圧ポンプ)とが別の油圧ポンプでもよい。
操作装置25は、第1操作レバー25Rと、第2操作レバー25Lとを有する。第1操作レバー25Rは、例えば運転席4Sの右側に配置される。第2操作レバー25Lは、例えば運転席4Sの左側に配置される。第1操作レバー25R及び第2操作レバー25Lでは、前後左右の動作が2軸の動作に対応する。
第1操作レバー25Rにより、ブーム6及びバケット8が操作される。
第1操作レバー25Rの前後方向の操作は、ブーム6の操作に対応し、前後方向の操作に応じてブーム6の下げ動作及び上げ動作が実行される。ブーム6を操作するためにレバー操作され、パイロット油路450にパイロット油が供給された場合に圧力センサ66に発生する検出圧力をMBとする。
第1操作レバー25Rの左右方向の操作は、バケット8の操作に対応し、左右方向の操作に応じてバケット8の掘削動作及び開放動作が実行される。バケット8を操作するためにレバー操作され、パイロット油路450にパイロット油が供給された場合に圧力センサ66に発生する検出圧力をMTとする。
第2操作レバー25Lにより、アーム7及び旋回体3が操作される。
第2操作レバー25Lの前後方向の操作は、アーム7の操作に対応し、前後方向の操作に応じてアーム7の上げ動作及び下げ動作が実行される。アーム7を操作するためにレバー操作され、パイロット油路450にパイロット油が供給された場合に圧力センサ66に発生する検出圧力をMAとする。
第2操作レバー25Lの左右方向の操作は、旋回体3の旋回に対応し、左右方向の操作に応じて旋回体3の右旋回動作及び左旋回動作が実行される。
本例においては、ブーム6の上下方向への動作は、それぞれ上げ動作、下降する動作は下げ動作とも称する。また、アーム7の上下方向への動作は、それぞれダンプ動作、掘削動作とも称する。バケット8の上下方向への動作は、それぞれダンプ動作、掘削動作とも称する。
メイン油圧ポンプから送出され、減圧弁によって減圧されたパイロット油が操作装置25に供給される。操作装置25の操作量に基づいてパイロット油圧が調整される。
パイロット油路450には、圧力センサ66及び圧力センサ67が配置される。圧力センサ66及び圧力センサ67は、パイロット油圧を検出する。圧力センサ66及び圧力センサ67の検出結果は、作業機コントローラ26に出力される。
第1操作レバー25Rは、ブーム6の駆動のために前後方向に操作される。前後方向に関する第1操作レバー25Rの操作量(ブーム操作量)に応じて、ブーム6を駆動するためのブームシリンダ10に供給される作動油の流れ方向および流量が方向制御弁64によって調整される。
第1操作レバー25R(操作部材)は、バケット8の駆動のために左右方向に操作される。左右方向に関する第1操作レバー25Rの操作量(バケット操作量)に応じて、バケット8を駆動するためのバケットシリンダ12に供給される作動油の流れ方向および流量が方向制御弁64によって調整される。
第2操作レバー25L(操作部材)は、アーム7の駆動のために前後方向に操作される。前後方向に関する第2操作レバー25Lの操作量(アーム操作量)に応じて、アーム7を駆動するためのアームシリンダ11に供給される作動油の流れ方向および流量が方向制御弁64によって調整される。
第2操作レバー25Lは、旋回体3の駆動のために左右方向に操作される。左右方向に関する第2操作レバー25Lの操作量に応じて、旋回体3を駆動するための油圧アクチュエータに供給される作動油の流れ方向および流量が方向制御弁64によって調整される。
なお、第1操作レバー25Rの左右方向の操作がブーム6の操作に対応し、前後方向の操作がバケット8の操作に対応してもよい。なお、第2操作レバー25Lの左右方向がアーム7の操作に対応し、前後方向の操作が旋回体3の操作に対応してもよい。
制御弁27は、油圧シリンダ(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)に対する作動油の供給量を調整する。制御弁27は、作業機コントローラ26からの制御信号に基づいて作動する。
マンマシンインターフェース部32は、入力部321と表示部(モニタ)322とを有する。
本例においては、入力部321は、表示部322の周囲に配置される操作ボタンを有する。なお、入力部321はタッチパネルを有していてもよい。マンマシンインターフェース部32を、マルチモニタとも称する。
表示部322は、基本情報として燃料残量および冷却水温度等を表示する。
入力部321は、オペレータによって操作される。入力部321の操作により生成された指令信号は、作業機コントローラ26に出力される。
センサコントローラ30は、ブームシリンダストロークセンサ16の検出結果に基づいて、ブームシリンダ長を算出する。ブームシリンダストロークセンサ16は、周回動作に伴うパルスをセンサコントローラ30に出力する。センサコントローラ30は、ブームシリンダストロークセンサ16から出力されたパルスに基づいて、ブームシリンダ長を算出する。
同様に、センサコントローラ30は、アームシリンダストロークセンサ17の検出結果に基づいて、アームシリンダ長を算出する。センサコントローラ30は、バケットシリンダストロークセンサ18の検出結果に基づいて、バケットシリンダ長を算出する。
センサコントローラ30は、ブームシリンダストロークセンサ16の検出結果に基づいて取得されたブームシリンダ長から、旋回体3の垂直方向に対するブーム6の傾斜角θ1を算出する。
センサコントローラ30は、アームシリンダストロークセンサ17の検出結果に基づいて取得されたアームシリンダ長から、ブーム6に対するアーム7の傾斜角θ2を算出する。
センサコントローラ30は、バケットシリンダストロークセンサ18の検出結果に基づいて取得されたバケットシリンダ長から、アーム7に対するバケット8の刃先8aの傾斜角θ3を算出する。
上記算出結果である傾斜角θ1、θ2、θ3と、基準位置データP、旋回体方位データQ、及びシリンダ長データLに基づいて、作業車両100のブーム6、アーム7およびバケット8の位置を特定することが可能となり、バケット8の3次元位置を示すバケット位置データを生成することが可能である。
なお、ブーム6の傾斜角θ1、アーム7の傾斜角θ2、及びバケット8の傾斜角θ3は、シリンダストロークセンサで検出されなくてもよい。ロータリーエンコーダのような角度検出器でブーム6の傾斜角θ1が検出されてもよい。角度検出器は、旋回体3に対するブーム6の屈曲角度を検出して、傾斜角θ1を検出する。同様に、アーム7の傾斜角θ2がアーム7に取り付けられた角度検出器で検出されてもよい。バケット8の傾斜角θ3がバケット8に取り付けられた角度検出器で検出されてもよい。
<油圧回路の構成>
図4は、実施形態に基づく油圧システムの構成を示す図である。
図4に示されるように、油圧システム300は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12(複数の油圧シリンダ60)と、旋回体3を旋回させる旋回モータ63とを備える。なお、ここで、ブームシリンダ10を油圧シリンダ10(60)とも表記する。他の油圧シリンダについても同様である。
油圧シリンダ60は、図示しないメイン油圧ポンプから供給された作動油によって作動する。旋回モータ63は、油圧モータであり、メイン油圧ポンプから供給された作動油によって作動する。
本例においては、各油圧シリンダ60に対して作動油が流れる方向および流量を制御する方向制御弁64が設けられる。メイン油圧ポンプから供給された作動油は、方向制御弁64を介して、各油圧シリンダ60に供給される。また、旋回モータ63に対して方向制御弁64が設けられる。
各油圧シリンダ60は、キャップ側(ボトム側)油室40Aと、ロッド側(ヘッド側)油室40Bとを有する。
方向制御弁64は、ロッド状のスプールを動かして作動油が流れる方向を切り替えるスプール方式である。スプールが軸方向に移動することにより、キャップ側油室40Aに対する作動油の供給と、ロッド側油室40Bに対する作動油の供給とが切り替わる。また、スプールが軸方向に移動することにより、油圧シリンダ60に対する作動油の供給量(単位時間当たりの供給量)が調整される。油圧シリンダ60に対する作動油の供給量が調整されることにより、シリンダ速度が調整される。シリンダ速度を調整することにより、ブーム6、アーム7およびバケット8の速度が制御される。本例においては、方向制御弁64が、スプールの移動により作業機2を駆動する油圧シリンダ60に対する作動油の供給量を調整可能な調整装置として機能する。
各方向制御弁64には、スプールの移動距離(スプールストローク)を検出するスプールストロークセンサ65が設けられる。スプールストロークセンサ65の検出信号は、作業機コントローラ26に出力される。
各方向制御弁64の駆動は、操作装置25によって調整される。本例においては、操作装置25は、パイロット油圧方式の操作装置である。
メイン油圧ポンプから送出され、減圧弁によって減圧されたパイロット油が操作装置25に供給される。
操作装置25は、パイロット油圧調整弁を有する。操作装置25の操作量に基づいて、パイロット油圧が調整される。パイロット油圧によって、方向制御弁64が駆動される。操作装置25によりパイロット油圧が調整されることによって、軸方向に関するスプールの移動量及び移動速度が調整される。また、操作装置25によりキャップ側油室40Aに対する作動油の供給と、ロッド側油室40Bに対する作動油の供給とが切り替わる。
操作装置25と各方向制御弁64とは、パイロット油路450を介して接続される。本例においては、パイロット油路450に、制御弁27、圧力センサ66、及び圧力センサ67が配置される。
各制御弁27の両側に、パイロット油圧を検出する圧力センサ66及び圧力センサ67が設けられる。本例においては、圧力センサ66は、操作装置25と制御弁27との間の油路451に配置される。圧力センサ67は、制御弁27と方向制御弁64との間の油路452に配置される。圧力センサ66は、制御弁27によって調整される前のパイロット油圧を検出する。圧力センサ67は、制御弁27によって調整されたパイロット油圧を検出する。圧力センサ66及び圧力センサ67の検出結果は、作業機コントローラ26に出力される。
制御弁27は、作業機コントローラ26からの制御信号(EPC電流)に基づいて、パイロット油圧を調整する。制御弁27は、電磁比例制御弁であり、作業機コントローラ26からの制御信号に基づいて制御される。制御弁27は、制御弁27Bと、制御弁27Aとを有する。制御弁27Bは、方向制御弁64の第2受圧室に供給されるパイロット油のパイロット油圧を調整して、方向制御弁64を介してキャップ側油室40Aに供給される作動油の供給量を調整可能である。制御弁27Aは、方向制御弁64の第1受圧室に供給されるパイロット油のパイロット油圧を調整して、方向制御弁64を介してロッド側油室40Bに供給される作動油の供給量を調整可能である。
なお、本例においては、パイロット油路450のうち、操作装置25と制御弁27との間のパイロット油路450は油路(上流油路)451と称される。また、制御弁27と方向制御弁64との間のパイロット油路450は油路(下流油路)452と称される。
パイロット油は、油路452を介して各方向制御弁64に供給される。
油路452は、第1受圧室に接続される油路452Aと、第2受圧室に接続される油路452Bとを有する。
方向制御弁64の第2受圧室に対して、パイロット油が油路452Bを介して供給されると、そのパイロット油圧に応じてスプールが移動する。方向制御弁64を介してキャップ側油室40Aに作動油が供給される。キャップ側油室40Aに対する作動油の供給量は、操作装置25の操作量に応じたスプールの移動量により調整される。
方向制御弁64の第1受圧室に対して、パイロット油が油路452Aを介して供給されると、そのパイロット油圧に応じてスプールが移動する。方向制御弁64を介してロッド側油室40Bに作動油が供給される。ロッド側油室40Bに対する作動油の供給量は、操作装置25の操作量によるスプールの移動量により調整される。
したがって、操作装置25によりパイロット油圧が調整されたパイロット油が方向制御弁64に供給されることにより、軸方向に関するスプールの位置が調整される。
油路451は、油路452Aと操作装置25とを接続する油路451Aと、油路452Bと操作装置25とを接続する油路451Bとを有する。
[操作装置25の操作と油圧システムの動作について]
上述のように、操作装置25の操作により、ブーム6は、下げ動作及び上げ動作の2種類の動作を実行する。
ブーム6の上げ動作が実行されるように操作装置25が操作されることにより、ブームシリンダ10に接続された方向制御弁64に、油路451B及び油路452Bを介して、パイロット油が供給される。
これにより、メイン油圧ポンプからの作動油がブームシリンダ10に供給され、ブーム6の上げ動作が実行される。
ブーム6の下げ動作が実行されるように操作装置25が操作されることにより、ブームシリンダ10に接続された方向制御弁64に、油路451A及び油路452Aを介して、パイロット油が供給される。
これにより、メイン油圧ポンプからの作動油がブームシリンダ10に供給され、ブーム6の下げ動作が実行される。
本例においては、ブームシリンダ10が伸長することにより、ブーム6が上げ動作し、ブームシリンダ10が縮退することにより、ブーム6が下げ動作する。ブームシリンダ10のキャップ側油室40Aに作動油が供給されることにより、ブームシリンダ10が伸長し、ブーム6が上げ動作する。ブームシリンダ10のロッド側油室40Bに作動油が供給されることにより、ブームシリンダ10が縮退し、ブーム6が下げ動作する。
また、操作装置25の操作により、アーム7は、下げ動作及び上げ動作の2種類の動作を実行する。
アーム7の下げ動作が実行されるように操作装置25を操作することにより、アームシリンダ11に接続された方向制御弁64に、油路451B及び油路452Bを介して、パイロット油が供給される。
これにより、メイン油圧ポンプからの作動油がアームシリンダ11に供給され、アーム7の下げ動作が実行される。
アーム7の上げ動作が実行されるように操作装置25を操作することにより、アームシリンダ11に接続された方向制御弁64に、油路451A及び油路452Aを介して、パイロット油が供給される。
これにより、メイン油圧ポンプからの作動油がアームシリンダ11に供給され、アーム7の上げ動作が実行される。
本例においては、アームシリンダ11が伸長することにより、アーム7が下げ動作(掘削動作)し、アームシリンダ11が縮退することにより、アーム7が上げ動作(ダンプ動作)する。アームシリンダ11のキャップ側油室40Aに作動油が供給されることにより、アームシリンダ11が伸長し、アーム7が下げ動作する。アームシリンダ11のロッド側油室40Bに作動油が供給されることにより、アームシリンダ11が縮退し、アーム7が上げ動作する。
また、操作装置25の操作により、バケット8は、下げ動作及び上げ動作の2種類の動作を実行する。
バケット8の下げ動作が実行されるように操作装置25を操作することにより、バケットシリンダ12に接続された方向制御弁64に、油路451B及び油路452Bを介して、パイロット油が供給される。
これにより、メイン油圧ポンプからの作動油がバケットシリンダ12に供給され、バケット8の下げ動作が実行される。
バケット8の上げ動作が実行されるように操作装置25を操作することにより、バケットシリンダ12に接続された方向制御弁64に、油路451A及び油路452Aを介して、パイロット油が供給される。方向制御弁64はパイロット油圧に基づいて作動する。
これにより、メイン油圧ポンプからの作動油がバケットシリンダ12に供給され、バケット8の上げ動作が実行される。
本例においては、バケットシリンダ12が伸長することにより、バケット8が下げ動作(掘削動作)し、バケットシリンダ12が縮退することにより、バケット8が上げ動作(ダンプ動作)する。バケットシリンダ12のキャップ側油室40Aに作動油が供給されることにより、バケットシリンダ12が伸長し、バケット8が下げ動作する。バケットシリンダ12のロッド側油室40Bに作動油が供給されることにより、バケットシリンダ12が縮退し、バケット8が上げ動作する。
また、操作装置25の操作により、旋回体3は、右旋回動作及び左旋回動作の2種類の動作を実行する。
旋回体3の右旋回動作が実行されるように操作装置25が操作されることにより、作動油が旋回モータ63に供給される。旋回体3の左旋回動作が実行されるように操作装置25が操作されることにより、作動油が旋回モータ63に供給される。
[通常制御およびならい制御(制限掘削制御)と油圧システムの動作について]
ならい制御(制限掘削制御)を実行しない、通常制御について説明する。
通常制御の場合、作業機2は、操作装置25の操作量に従って動作する。
具体的には、作業機コントローラ26は、制御弁27を開放する。制御弁27を開放することにより、油路451のパイロット油圧と油路452のパイロット油圧とは等しくなる。制御弁27が開放された状態で、パイロット油圧(PPC圧)は、操作装置25の操作量に基づいて調整される。これにより、方向制御弁64が調整されて、上記で説明したブーム6、アーム7、バケット8の上げ動作および下げ動作を実行することが可能である。
一方、ならい制御(制限掘削制御)について説明する。
ならい制御(制限掘削制御)の場合、作業機2は、操作装置25の操作に基づいて作業機コントローラ26によって制御される。
具体的には、作業機コントローラ26は、制御弁27に制御信号を出力する。油路451は、例えばパイロット油圧調整弁の作用により所定の圧力を有する。
制御弁27は、作業機コントローラ26の制御信号に基づいて作動する。油路451の作動油は、制御弁27を介して、油路452に供給される。したがって、油路452の作動油の圧力は、制御弁27により調整(減圧)することが可能である。
油路452の作動油の圧力が、方向制御弁64に作用する。これにより、方向制御弁64は、制御弁27で制御されたパイロット油圧に基づいて作動する。
たとえば、作業機コントローラ26は、制御弁27A及び制御弁27Bの少なくとも一方に制御信号を出力して、アームシリンダ11に接続された方向制御弁64に対するパイロット油圧を調整することができる。制御弁27Aにより圧力が調整された作動油が方向制御弁64に供給されることにより、スプールは軸方向に関して一方側に移動する。制御弁27Bにより圧力が調整された作動油が方向制御弁64に供給されることにより、スプールは軸方向に関して他方側に移動する。これにより、軸方向に関するスプールの位置が調整される。
また、同様に作業機コントローラ26は、制御弁27A及び制御弁27Bの少なくとも一方に制御信号を出力して、バケットシリンダ12に接続された方向制御弁64に対するパイロット油圧を調整することができる。
また、同様に作業機コントローラ26は、制御弁27A及び制御弁27Bの少なくとも一方に制御信号を出力して、ブームシリンダ10に接続された方向制御弁64に対するパイロット油圧を調整することができる。
さらに、作業機コントローラ26は、制御弁27Cに制御信号を出力して、ブームシリンダ10に接続された方向制御弁64に対するパイロット油圧を調整する。
これにより、作業機コントローラ26は、バケット8の刃先8aが目標設計地形Uに侵入しないように、ブーム6の動きを制御(介入制御)する。
本例において、目標設計地形Uに対する刃先8aの侵入が抑制されるように、ブームシリンダ10に接続された制御弁27に制御信号を出力して、ブーム6の位置を制御することを介入制御と称する。
具体的には、作業機コントローラ26は、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標設計地形Uとバケット8の刃先8aの位置を示すバケット位置データSとに基づいて、目標設計地形Uとバケット8との距離dに応じてバケット8が目標設計地形Uに近づく速度が小さくなるように、ブーム6の速度を制御する。
油圧システム300は、ブーム6の上げ動作に対して介入制御する機構として、油路501,502と、制御弁27Cと、シャトル弁51と、圧力センサ68とを有している。
油路501は、制御弁27Cに接続され、ブームシリンダ10に接続された方向制御弁64に供給されるパイロット油を供給する。
油路501は、制御弁27Cを通過する前のパイロット油が流れる油路501と、制御弁27Cを通過した後のパイロット油が流れる油路502とを有する。油路502は、制御弁27Cとシャトル弁51とに接続され、方向制御弁64と接続された油路452Bにシャトル弁51を介して接続される。
圧力センサ68は、油路501のパイロット油のパイロット油圧を検出する。
制御弁27Cは、介入制御を実行するために作業機コントローラ26から出力された制御信号に基づいて制御される。
シャトル弁51は、2つの入口ポートと、1つの出口ポートとを有する。一方の入口ポートは、油路502と接続される。他方の入口ポートは、油路452Bを介して制御弁27Bと接続される。出口ポートは、油路452Bを介して方向制御弁64と接続される。シャトル弁51は、油路502及び制御弁27Bと接続された油路452Bのうち、パイロット油圧が高い方の油路と、油路452Bとを接続する。
シャトル弁51は、高圧優先形のシャトル弁である。シャトル弁51は、入口ポートの一方に接続された油路502のパイロット油圧と、入口ポートの他方に接続された制御弁27B側の油路452Bのパイロット油圧とを比較し、高圧側の圧力を選択する。シャトル弁51は、油路502のパイロット油圧と、制御弁27B側の油路452Bのパイロット油圧とのうち、高圧側の流路を出口ポートに連通し、当該高圧側の流路を流れるパイロット油を方向制御弁64に供給する。
本例においては、作業機コントローラ26は、介入制御を実行しない場合には、操作装置25の操作によって調整されたパイロット油圧に基づいて方向制御弁64が駆動されるように、制御弁27Bを全開にするとともに、制御弁27Cに対して油路501を閉じるように制御信号を出力する。
また、作業機コントローラ26は、介入制御を実行する場合には、制御弁27Cによって調整されたパイロット油圧に基づいて方向制御弁64が駆動されるように、各制御弁27に対して制御信号を出力する。
例えば、ブーム6の移動を制限する介入制御を実行する場合、作業機コントローラ26は、制御弁27Cによって調整されたパイロット油圧が、操作装置25によって調整されるパイロット油圧よりも高くなるように、制御弁27Cを制御する。これにより、制御弁27Cからのパイロット油がシャトル弁51を介して方向制御弁64に供給される。
<ならい制御>
図5は、実施形態に基づくならい制御(制限掘削制御)が行われている場合の作業機2の動作を模式的に示す図である。
図5に示されるように、ならい制御(制限掘削制御)において、バケット8が設計地形に侵入しないように、ブーム6の上げ動作を含む介入制御が実行される。具体的には、本例においては、操作装置25によるアーム7の掘削操作による掘削において、油圧システム300は、アーム7が下がり、ブーム6が上がるように制御する場合が示されている。
図6は、実施形態に基づくならい制御を実行する制御システム200の構成を示す機能ブロック図である。
図6に示されるように、制御システム200が有する作業機コントローラ26および表示コントローラ28の機能ブロックが示される。
ここでは、主にならい制御(制限掘削制御)によるブーム6の介入制御について主に説明する。上記で説明したように、介入制御は、バケット8の刃先8aが目標設計地形Uに侵入しないように、ブーム6の動きを制御するものである。
具体的には、作業機コントローラ26は、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標設計地形Uとバケット8の刃先8aの位置を示すバケット位置データSとに基づいて、目標設計地形Uとバケット8との距離dを算出する。そして、距離dに応じてバケット8が目標設計地形Uに近づく速度が小さくなるように、ブーム6の介入制御による制御弁27への制御指令CBIを出力する。
まず、作業機コントローラ26は、操作装置25の操作による操作指令に基づくアーム7、バケット8の動作によるバケットの刃先8aの推定速度を算出する。そして、算出結果に基づいてバケット8の刃先8aが目標設計地形Uに侵入しないように、ブーム6の速度を制御するブーム目標速度を算出する。そして、ブーム目標速度でブーム6が動作するように制御弁27への制御指令CBIを出力する。
以下、機能ブロックについて図6を用いて具体的に説明する。
図6に示されるように、表示コントローラ28は、目標施工情報格納部28Aと、バケット位置データ生成部28Bと、目標設計地形データ生成部28Cとを有する。
表示コントローラ28は、センサコントローラ30からの入力を受ける。
センサコントローラ30は、各シリンダストロークセンサ16、17、18の検出結果から各シリンダ長データLおよび傾斜角θ1、θ2、θ3を取得する。また、センサコントローラ30は、IMU24から出力される傾斜角θ4のデータ及び傾斜角θ5のデータを取得する。センサコントローラ30は、シリンダ長データL、傾斜角θ1、θ2、θ3のデータと、傾斜角θ4のデータ、及び傾斜角θ5のデータを、表示コントローラ28に出力する。
上述のように、本例においては、シリンダストロークセンサ16、17、18の検出結果、及びIMU24の検出結果がセンサコントローラ30に出力され、センサコントローラ30が所定の演算処理を行う。
本例においては、センサコントローラ30の機能が、作業機コントローラ26で代用されてもよい。例えば、シリンダストロークセンサ(16、17、18)の検出結果が作業機コントローラ26に出力され、作業機コントローラ26が、シリンダストロークセンサ(16、17、18)の検出結果に基づいて、シリンダ長(ブームシリンダ長、アームシリンダ長、及びバケットシリンダ長)を算出してもよい。IMU24の検出結果が、作業機コントローラ26に出力されてもよい。
グローバル座標演算部23は、基準位置データP及び旋回体方位データQを取得し、表示コントローラ28に出力する。
目標施工情報格納部28Aは、作業エリアの目標形状である立体設計地形を示す目標施工情報(立体設計地形データ)Tを格納している。目標施工情報Tは、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標設計地形(設計地形データ)Uを生成するために必要とされる座標データ及び角度データを有する。目標施工情報Tは、例えば無線通信装置を介して表示コントローラ28に供給されてもよい。
バケット位置データ生成部28Bは、傾斜角θ1、θ2、θ3、θ4、θ5と、基準位置データP、旋回体方位データQ、及びシリンダ長データLに基づいて、バケット8の3次元位置を示すバケット位置データSを生成する。なお、刃先8aの位置情報は、メモリ等の接続式記録装置から転送されてもよい。
本例においては、バケット位置データSは、刃先8aの3次元位置を示すデータである。
目標設計地形データ生成部28Cは、バケット位置データ生成部28Bより取得するバケット位置データSと目標施工情報格納部28Aに格納する後述する目標施工情報Tを用いて、掘削対象の目標形状を示す目標設計地形Uを生成する。
また、目標設計地形データ生成部28Cは、生成した目標設計地形Uに関するデータを表示部29に出力する。これにより、表示部29は、目標設計地形を表示する。
表示部29は、例えばモニタであり、作業車両100の各種の情報を表示する。本例においては、表示部29は、情報化施工用のガイダンスモニタとしてのHMI(Human Machine Interface)モニタを有する。
目標設計地形データ生成部28Cは、作業機コントローラ26に対して目標設計地形Uに関するデータを出力する。また、バケット位置データ生成部28Bは、生成したバケット位置データSを作業機コントローラ26に出力する。
作業機コントローラ26は、推定速度決定部52と、距離取得部53と、目標速度決定部54と、作業機制御部57と、記憶部58とを有する。
作業機コントローラ26は、操作装置25の操作指令(圧力MA、MT)および表示コントローラ28からバケット位置データSおよび目標設計地形Uを取得し、制御弁27への制御指令CBIを出力する。また、作業機コントローラ26は、必要に応じてセンサコントローラ30およびグローバル座標演算部23から演算処理に必要な各種パラメータを取得する。
推定速度決定部52は、アーム7、バケット8の駆動のための操作装置25のレバー操作に対応したアーム推定速度Vc_am、バケット推定速度Vc_bktを算出する。
ここで、アーム推定速度Vc_amは、アームシリンダ11のみが駆動される場合のバケット8の刃先8aの速度である。バケット推定速度Vc_bktは、バケットシリンダ12のみが駆動される場合のバケット8の刃先8aの速度である。
推定速度決定部52は、アーム操作指令(圧力MA)に対応するアーム推定速度Vc_amを算出する。また、同様に推定速度決定部52は、バケット操作指令(圧力MT)に対応するバケット推定速度Vc_bktを算出する。これによりアーム7およびバケット7の各操作指令に対応するバケット8の刃先8aの推定速度を算出することが可能である。
記憶部58は、推定速度決定部52、目標速度決定部54および作業機制御部57が演算処理するための各種テーブル等のデータを格納する。
距離取得部53は、目標設計地形データ生成部28Cから目標設計地形Uのデータを取得する。距離取得部53は、バケット位置データ生成部28Bより取得されるバケット8の刃先8aの位置を示すバケット位置データS及び目標設計地形Uに基づいて、目標設計地形Uに垂直な方向におけるバケット8の刃先8aと目標設計地形Uとの距離dを算出する。
目標速度決定部54は、制限速度テーブルに従ってバケット8が目標設計地形Uに近づく速度が小さくなるように、ブーム6の目標速度Vc_bm_lmtを決定する。
具体的には、目標速度決定部54は、目標設計地形Uとバケット8との距離dと刃先の制限速度との関係を示す制限速度テーブルを用いて、現在の距離dに基づき刃先の制限速度を算出する。そして、刃先の制限速度と、アーム推定速度Vc_amおよびバケット推定速度Vc_bktとの差分を演算することにより、ブーム6の目標速度Vc_bm_lmtを決定する。
なお、制限速度テーブルは、記憶部58に予め記憶(格納)されている。
作業機制御部57は、ブーム目標速度Vc_bm_lmtに従ってブームシリンダ10への制御指令CBIを生成して、ブームシリンダ10に接続された制御弁27に出力する。
これにより、ブームシリンダ10に接続された制御弁27が制御され、ならい制御(制限掘削制御)によるブーム6の介入制御が実行される。
[バケット8の刃先8aと目標設計地形Uとの間の距離dの算出]
図7は、実施形態に基づくバケット8の刃先8aと目標設計地形Uとの間の距離dを取得することを説明する図である。
図7に示されるように、距離取得部53は、刃先8aの位置情報(バケット位置データS)に基づいてバケット8の刃先8aと目標設計地形Uの表面との間の最短となる距離dを算出する。
本例においては、バケット8の刃先8aと目標設計地形Uの表面との間の最短となる距離dに基づいて、ならい制御(制限掘削制御)が実行される。
[目標速度の算出方式]
図8は、実施形態に基づく推定速度決定部52の演算処理を説明する機能ブロック図である。
図8において、推定速度決定部52は、アーム操作指令(圧力MA)に対応するアーム推定速度Vc_amおよびバケット操作指令(圧力MT)に対応するバケット推定速度Vc_bktを算出する。上記したように、アーム推定速度Vc_amは、アームシリンダ11のみが駆動される場合のバケット8の刃先8aの速度である。バケット推定速度Vc_bktは、バケットシリンダ12のみが駆動される場合のバケット8の刃先8aの速度である。
推定速度決定部52は、スプールストローク演算部52Aと、シリンダ速度演算部52Bと、推定速度決定部52Cとを有する。
スプールストローク演算部52Aは、記憶部58に格納されている操作指令(圧力)に従うスプールストロークテーブルに基づいて油圧シリンダ60のスプール80のスプールストローク量を算出する。なお、スプール80を移動するためのパイロット油の圧力はPPC圧力とも称される。
スプール80の移動量は、操作装置25又は制御弁27によって制御される油路452の圧力(パイロット油圧)によって調整される。油路452のパイロット油圧は、スプールを移動するための油路452のパイロット油の圧力であり、操作装置25又は制御弁27によって調整される。したがって、スプールの移動量とPPC圧とは相関する。
シリンダ速度演算部52Bは、算出されたスプールストローク量に従うシリンダ速度テーブルに基づいて油圧シリンダ60のシリンダ速度を算出する。
油圧シリンダ60のシリンダ速度は、メイン油圧ポンプから方向制御弁64を介して供給される単位時間当たりの作動油の供給量に基づいて調整される。方向制御弁64は、移動可能なスプール80を有する。スプール80の移動量に基づいて、油圧シリンダ60に対する単位時間当たりの作動油の供給量が調整される。したがって、シリンダ速度とスプールの移動量(スプールストローク)とは相関する。
推定速度決定部52Cは、算出された油圧シリンダ60のシリンダ速度に従う推定速度テーブルに基づいて推定速度を算出する。
油圧シリンダ60のシリンダ速度に従って作業機2(ブーム6、アーム7、バケット8)が動作するためシリンダ速度と推定速度とは相関する。
上記処理により、推定速度決定部52は、アーム操作指令(圧力MA)に対応するアーム推定速度Vc_amおよびバケット操作指令(圧力MT)に対応するバケット推定速度Vc_bktを算出する。なお、スプールストロークテーブル、シリンダ速度テーブル、推定速度テーブルは、ブーム6、アーム7、バケット8に対してそれぞれ設けられており、実験又はシミュレーションに基づいて求められ、記憶部58に予め記憶されている。
これにより各操作指令に対応するバケット8の刃先8aの推定速度を算出することが可能である。
[ブーム目標速度の算出方式]
ブーム目標速度を算出するにあたり、アーム7及びバケット8の各々の推定速度Vc_am、Vc_bktの目標設計地形Uの表面に垂直な方向の速度成分(垂直速度成分)Vcy_am、Vcy_bktを算出する必要がある。このため、まずは上記垂直速度成分Vcy_am、Vcy_bktを算出する方式について説明する。
図9(A)~図9(C)は、実施形態に基づく上記垂直速度成分Vcy_am、Vcy_bktの算出方式を説明する図である。
図9(A)に示すように、目標速度決定部54は、アーム推定速度Vc_amを、目標設計地形Uの表面に垂直な方向の速度成分(垂直速度成分)Vcy_amと、目標設計地形Uの表面に平行な方向の速度成分(水平速度成分と)Vcx_amとに変換する。
この点で、目標速度決定部54は、センサコントローラ30から取得した傾斜角及び目標設計地形Uなどから、グローバル座標系の垂直軸に対するローカル座標系の垂直軸(旋回体3の旋回軸AX)の傾きと、グローバル座標系の垂直軸に対する目標設計地形Uの表面の垂直方向における傾きとを求める。目標速度決定部54は、これらの傾きからローカル座標系の垂直軸と目標設計地形Uの表面の垂直方向との傾きを表す角度β1を求める。
バケット推定速度Vc_bktについても同様である。
そして、図9(B)に示すように、目標速度決定部54は、ローカル座標系の垂直軸とアーム推定速度Vc_amの方向とのなす角度β2とから、三角関数により、アーム推定速度Vc_amを、ローカル座標系の垂直軸方向の速度成分VL1_amと、水平軸方向の速度成分VL2_amとに変換する。
そして、図9(C)に示すように、目標速度決定部54は、ローカル座標系の垂直軸と目標設計地形Uの表面の垂直方向との傾きβ1から、三角関数により、ローカル座標系の垂直軸方向における速度成分VL1_amと、水平軸方向における速度成分VL2_amとを、目標設計地形Uに対する垂直速度成分Vcy_am及び水平速度成分Vcx_amに変換する。同様にして、目標速度決定部54は、バケット推定速度Vc_bktを、ローカル座標系の垂直軸方向における垂直速度成分Vcy_bkt及び水平速度成分Vcx_bktに変換する。
このようにして、上記垂直速度成分Vcy_am、Vcy_bktが算出される。
さらにブーム目標速度を算出するにあたり、作業機2全体の制限速度が必要となるため、次に作業機2全体の制限速度テーブルについて説明する。
図10は、実施形態に基づくならい制御における作業機2全体の制限速度テーブルの一例を説明する図である。
図10に示されるように、ここでは、縦軸が制限速度Vcy_lmtを表し、横軸が刃先と設計地形との間の距離dを表している。
本例においては、バケット8の刃先8aが目標設計地形Uの表面の外方(作業車両100の作業機2側)に位置している場合の距離dは正の値であり、刃先8aが目標設計地形Uの表面の内方(目標設計地形Uよりも掘削対象の内部側)に位置している場合の距離dは負の値である。刃先8aが目標設計地形Uの表面の上方に位置している場合の距離dは正、刃先8aが目標設計地形Uの表面の下方に位置している場合の距離dは負の値である。
また、刃先8aが目標設計地形Uに対して侵食しない位置にある場合の距離dは正、刃先8aが目標設計地形Uに対して侵食する位置にある場合の距離dは負の値である。
また、刃先8aが目標設計地形U上に位置している場合(刃先8aが目標設計地形Uと接している場合)の距離dは0である。
本例においては、刃先8aが目標設計地形Uの内方から外方に向かう場合の速度を正の値とし、刃先8aが目標設計地形Uの外方から内方に向かう場合の速度を負の値とする。刃先8aが目標設計地形Uの上方に向かう場合の速度を正の値とし、刃先8aが目標設計地形Uの下方に向かう場合の速度を負の値とする。
制限速度情報において、距離dがd1とd2との間である場合の制限速度Vcy_lmtの傾きは、距離dがd1以上又はd2以下の場合の傾きより小さい。d1は0より大きい。d2は0より小さい。
目標設計地形Uの表面付近の操作においては制限速度をより詳細に設定するために、距離dがd1とd2との間である場合の傾きを、距離dがd1以上又はd2以下である場合の傾きよりも小さくする。
距離dがd1以上の場合、制限速度Vcy_lmtは負の値であり、距離dが大きくなるほど制限速度Vcy_lmtの絶対値は大きくなる。
距離dがd1以上の場合、目標設計地形Uより上方において刃先8aが目標設計地形Uの表面から遠いほど、目標設計地形Uの下方へ向かう速度が大きくなり、制限速度Vcy_lmtの絶対値は大きくなる。
距離dが0以下の場合、制限速度Vcy_lmtは正の値であり、距離dが小さくなるほど制限速度Vcy_lmtの絶対値は大きくなる。
バケット8の刃先8aが目標設計地形Uより遠ざかる距離dが0以下の場合、目標設計地形Uより下方において刃先8aが目標設計地形Uから遠いほど、目標設計地形Uの上方へ向かう速度が大きくなり、制限速度Vcy_lmtの絶対値は大きくなる。
距離dが所定値dth1では、制限速度Vcy_lmtは、Vminとなる。所定値dth1は正の値であり、d1より大きい。
距離dが所定値dth1以上では、作業機2の動作の介入制御は行わない。したがって、刃先8aが目標設計地形Uの上方において目標設計地形Uから大きく離れている場合には、作業機2の動作の介入制御は行わない。
距離dが所定値dth1より小さい場合に、作業機2の動作の介入制御が行われる。具体的には、距離dが所定値dth1より小さい場合に、ブーム6の動作の介入制御が行われる。
次に、上記のようにして求めた上記垂直速度成分Vcy_bm、Vcy_am、Vcy_bktと、作業機2全体の制限速度テーブルとを用いて、ブーム目標速度Vc_bm_lmtを算出する方式について説明する。
図11(A)~図11(D)は、実施形態に基づくブーム目標速度Vc_bm_lmtを算出する方式を説明する図である。
図11(A)に示されるように、目標速度決定部54は、上記制限速度テーブルに従って作業機2全体の制限速度Vcy_lmtを算出する。作業機2全体の制限速度Vcy_lmtは、バケット8の刃先8aが目標設計地形Uに接近する方向において許容できる刃先8aの移動速度である。
図11(B)には、アーム推定速度Vc_amの垂直速度成分Vcy_amとバケット推定速度Vc_bktの垂直速度成分Vcy_bktとが示されている。
目標速度決定部54は、図9で説明したように、アーム推定速度Vc_am、バケット推定速度Vc_bktとに基づいてアーム推定速度Vc_amの垂直速度成分Vcy_amとバケット推定速度Vc_bktの垂直速度成分Vcy_bktとを算出することが可能である。
図11(C)には、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtを算出する場合が示されている。具体的には、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtからアーム推定速度Vc_amの垂直速度成分Vcy_amとバケット推定速度Vc_bktの垂直速度成分Vcy_bktとを減算することにより、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtが算出される。
図11(D)には、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtに基づいてブーム目標速度Vc_bm_lmtを算出する場合が示されている。
作業機2全体の制限速度Vcy_lmtが、アーム推定速度の垂直速度成分Vcy_amとバケット推定速度の垂直速度成分Vcy_bktとの和よりも小さい場合には、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtは、ブームが上昇する正の値となる。
ブーム目標速度Vc_bm_lmtが正の値となるため、操作装置25がブーム6を下降させる方向に操作されていても、作業機コントローラ26は介入制御し、ブーム6を上昇させる。このため、目標設計地形Uの侵食の拡大を迅速に抑えることができる。
作業機2全体の制限速度Vcy_lmtが、アーム推定速度の垂直速度成分Vcy_amとバケット推定速度の垂直速度成分Vcy_bktとの和よりも大きい場合には、ブーム6の制限垂直速度成分Vcy_bm_lmtは、ブームが下降する負の値となる。
ブーム目標速度Vc_bm_lmtが負の値となるため、ブーム6が下降する。
[制御指令CBIの生成]
図12は、実施形態に基づく作業機制御部57の構成を示す機能ブロック図である。
図12に示されるように、作業機制御部57は、シリンダ速度算出部262Aと、EPC演算部262Bと、EPC指令部262Cとを有する。
作業機制御部57は、介入制御する場合にブーム目標速度Vc_bm_lmtでブーム6が駆動するように制御弁27に対して制御指令CBIを出力する。
シリンダ速度算出部262Aは、ブーム目標速度Vc_bm_lmtに従う油圧シリンダ60のシリンダ速度を算出する。具体的には、記憶部58に予め格納されているブーム6の動作のみによるバケット8の刃先8aの速度と油圧シリンダ60の速度との関係を示す推定速度テーブルに基づいて、ブーム目標速度Vc_bm_lmtに従う油圧シリンダ60のシリンダ速度を算出する。
EPC演算部262Bは、算出されたシリンダ速度に基づいて、EPC電流値を演算処理する。具体的には、記憶部58に予め格納されている相関データに基づいて演算処理する。
EPC指令部262Cは、EPC演算部262Bで算出されたEPC電流値を制御弁27に出力する。
記憶部58は、油圧シリンダ60のシリンダ速度とスプール80の移動量との関係を示す相関データと、スプール80の移動量と制御弁27によって制御されるPPC圧力との関係を示す相関データと、PPC圧力とEPC演算部262Bから出力される制御信号(EPC電流)との関係を示す相関データとを記憶する。なお、シリンダ速度テーブル、相関データは、実験又はシミュレーションに基づいて求められ、記憶部58に予め記憶されている。
上述したように、油圧シリンダ60のシリンダ速度は、メイン油圧ポンプから方向制御弁64を介して供給される単位時間当たりの作動油の供給量に基づいて調整される。方向制御弁64は、移動可能なスプール80を有する。スプール80の移動量に基づいて、油圧シリンダ60に対する単位時間当たりの作動油の供給量が調整される。したがって、シリンダ速度とスプールの移動量(スプールストローク)は相関する。
スプール80の移動量は、操作装置25又は制御弁27によって制御される油路452の圧力(パイロット油圧)によって調整される。油路452のパイロット油圧は、スプールを移動するための油路452のパイロット油の圧力であり、操作装置25又は制御弁27によって調整される。なお、スプール80を移動するためのパイロット油の圧力をPPC圧力とも称する。したがって、スプールの移動量とPPC圧とは相関する。
制御弁27は、作業機コントローラ26のEPC演算部262Bから出力された制御信号(EPC電流)に基づいて作動する。したがって、PPC圧力とEPC電流とは相関する。
作業機制御部57は、目標速度決定部54で算出されたブーム目標速度Vc_bm_lmtに対応するEPC電流値を算出し、EPC指令部262CからEPC電流を制御指令CBIとして制御弁27に出力する。
これにより、作業機コントローラ26は、介入制御によりバケット8の刃先8aが目標設計地形Uに侵入しないように、ブーム6を制御することが可能である。
また、必要に応じて、作業機コントローラ26は、アーム7及びバケット8を制御する。作業機コントローラ26は、アーム制御指令を制御弁27に送信することによって、アームシリンダ11を制御する。アーム制御指令は、アーム指令速度に応じた電流値を有する。作業機コントローラ26は、バケット制御指令を制御弁27に送信することによって、バケットシリンダ12を制御する。バケット制御指令は、バケット指令速度に応じた電流値を有する。
この場合の演算についても、上述したように、ブーム目標速度Vc_bm_lmtからEPC電流を算出したのと同様の方式に従って、制御弁27を制御する電流値を有するアーム制御指令およびバケット制御指令を制御弁27に出力することが可能である。
図13は、実施形態に基づく作業車両100のならい制御(制限掘削制御)を説明するフロー図である。
図13に示されるように、まず、設計地形を設定する(ステップSA1)。具体的には、表示コントローラ28の目標設計地形データ生成部28Cにより目標設計地形Uを設定する。
次に、刃先と設計地形との距離dを取得する(ステップSA2)。具体的には、距離取得部53は、バケット位置データ生成部28Bからのバケット位置データSに従う刃先8aの位置情報と目標設計地形Uとに基づいてバケット8の刃先8aと目標設計地形Uの表面との間の最短となる距離dを算出する。
次に、推定速度を決定する(ステップSA3)。具体的には、作業機コントローラ26の推定速度決定部52は、アーム推定速度Vc_am、及びバケット推定速度Vc_bktを決定する。アーム推定速度Vc_amは、アームシリンダ11のみが駆動される場合の刃先8aの速度である。バケット推定速度Vc_bktは、バケットシリンダ12のみが駆動される場合の刃先8aの速度である。
アーム推定速度Vc_am、バケット推定速度Vc_bktは、記憶部58に格納されている各種テーブルに従って操作装置25の操作指令(圧力MA、MT)に基づいて算出される。
次に、目標速度を垂直速度成分に変換する(ステップSA4)。具体的には、目標速度決定部54は、図9で説明したようにアーム推定速度Vc_am、バケット推定速度Vc_bktを目標設計地形Uに対する垂直速度成分Vcy_am、Vcy_bktに変換する。
次に、作業機2全体の制限速度Vcy_lmtを算出する(ステップSA5)。具体的には、目標速度決定部54は、距離dに基づいて、制限速度テーブルに従って制限速度Vcy_lmtを算出する。
次に、ブームの目標速度成分Vcy_bm_lmtを決定する(ステップSA6)。具体的には、目標速度決定部54は、図11で説明したように作業機2全体の制限速度Vcy_lmtとアーム推定速度Vc_amとバケット推定速度Vc_bktとからブーム6の目標速度の垂直速度成分(目標垂直速度成分)Vcy_bm_lmtを算出する。
次に、ブームの目標垂直速度成分Vcy_bm_lmtを目標速度Vc_bm_lmtに変換する(ステップSA7)。具体的には、目標速度決定部54は、図11で説明したようにブーム6の目標垂直速度成分Vcy_bm_lmtを、ブーム6の目標速度(ブーム目標速度)Vc_bm_lmtに変換する。
次に、作業機制御部57は、ブーム目標速度Vc_bm_lmtに対応するEPC電流値を算出し、EPC指令部262CからEPC電流を制御指令CBIとして制御弁27に出力する(ステップSA10)。これにより、作業機コントローラ26は、バケット8の刃先8aが目標設計地形Uに侵入しないように、ブーム6を制御することが可能である。
そして、処理を終了する(エンド)。
このように、本例においては、作業機コントローラ26は、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標設計地形Uとバケット8の刃先8aの位置を示すバケット位置データSとに基づいて、目標設計地形Uとバケット8の刃先8aとの距離dに応じてバケット8が目標設計地形Uに近づく相対速度が小さくなるように、ブーム6の速度を制御する。
作業機コントローラ26は、掘削対象の目標形状である設計地形を示す目標設計地形Uとバケット8の刃先8aの位置を示すバケット位置データSとに基づいて、目標設計地形Uとバケット8の刃先8aとの距離dに応じて制限速度を決定し、作業機2が目標設計地形Uに接近する方向の速度が制限速度以下になるように、作業機2を制御する。これによりならい制御(掘削制限制御)が実行され、ブームシリンダの速度調整が行われる。当該方式により、目標設計地形Uに対する刃先8aの位置が制御されて目標設計地形Uに対する刃先8aの侵入を抑制して、設計地形に応じた面を作るならい作業を実行することが可能となる。
[制限速度の調整]
上記したように操作装置25の第2操作レバー25Lを操作してアーム7を操作することにより、バケット8の刃先8aにより設計地形に対応する面を作るならい作業を実行することが可能である。
具体的には、ブーム6の介入制御により、バケット8が設計地形に侵入しないように制御される。この点で、制限速度テーブルに従って目標設計地形Uとバケット8の刃先8aとの距離dに応じてブーム目標速度を算出してブーム6の速度を制御する。
一方で、第2操作レバー25Lのアーム操作が微操作の場合には、アーム操作によるバケット8の刃先8aの動きに対して、介入制御によるブーム6の動作が大きくなる。
このため図14に示されるように、ブーム6の動作がアーム7に対して大きくなるとブーム目標速度の増速、減速が繰り返されて上下の挙動が大きくなるためバケット8の刃先8aが安定せずにハンチングが生じる。
図14においては、バケット8の刃先8aが設計地形以下に位置する場合が示されていて、刃先8aと設計地形との距離dに基づいて増速されたブーム目標速度により設計地形に刃先8aが上昇する。そして、その後、距離dに基づいてブーム目標速度が減速し、その結果アーム7によるバケット8の掘り込みにより刃先8aが下がる。当該アーム7によるバケット8の掘り込みにより刃先8aが下がる区間をブーム上げ減速域とも称する。
そして、再び距離dに基づいて増速されたブーム目標速度により設計地形に刃先8aが上昇する。そして、その後、距離dに基づいてブーム目標速度が減速し、その結果アーム7によるバケット8の掘り込みにより刃先8aが下がる。
当該処理が繰り返される結果、刃先8aのハンチングが生じる。
実施形態においては、第2操作レバー25Lのアーム操作が微操作の場合、ブーム目標速度を調整する方式について説明する。
図15は、実施形態に基づく第2操作レバー25Lの操作量とPPC圧との関係を説明する図である。
図15に示されるように、第2操作レバー25Lの操作量が大きくなるに従ってPPC圧が上昇する場合が示されている。操作量が0付近においてはマージンが設けられていて、ある一定の操作量から線形にPPC圧が上昇する。
そして、本例においては、第2操作レバー25Lの操作量が所定値Xまでの範囲を微操作領域と称する。第2操作レバー25Lの操作量が所定値XのときのPPC圧はYである。また、微操作領域よりも大きい所定値X以上の領域を通常操作領域とも称する。
図16は、実施形態に基づく目標速度決定部54の処理ブロックの概略を説明する図である。
図16に示されるように、目標速度決定部54は、制限速度算出部54Aと、速度判定部54Bと、演算部54Cと、出力調整部54Dと、アーム操作判定部54Eとを含む。
制限速度算出部54Aは、図10で説明した制限速度テーブルを用いた演算処理を実行する。
具体的には、制限速度算出部54Aは、距離取得部53で取得されるバケット8の刃先8aと目標設計地形Uとの距離dに応じた作業機2全体の制限速度Vcy_lmtを、制限速度テーブルに従って算出する。
アーム操作判定部54Eは、第2操作レバー25Lの操作量が所定値X未満であるか否かを判断する。そして、判断結果を速度判定部54Bに出力する。
具体的には、図15で説明したように、アーム操作判定部54Eは、操作装置25の操作指令(圧力MA)に基づいて第2操作レバー25Lの操作量が所定値X未満か否かを判断する。
速度判定部54Bは、第2操作レバー25Lの操作量が所定値X未満であると判断した場合にブーム6の速度が減速となったか否かを判定する。
具体的には、速度判定部54Bは、演算部54Cから出力されるブーム目標速度Vc_bm_lmtの変化に基づいて減速となったか否かを判定する。
速度判定部54Bは、ブーム6の速度が減速となったと判定した場合には、制限速度算出部54で算出された制限速度Vcy_lmtを出力調整部54Dに出力する。
速度判定部54Bは、ブーム6の速度が減速となっていないと判定した場合には、出力調整部54Dをスキップして、制限速度算出部54で算出された制限速度Vcy_lmtを演算部54Cに出力する。
速度判定部54Bは、第2操作レバー25Lの操作量が所定値X未満でないと判断した場合(所定値X以上である場合)に、出力調整部54Dをスキップして、制限速度算出部54で算出された制限速度Vcy_lmtを演算部54Cに出力する。
出力調整部54Dは、制限速度算出部54で算出された制限速度Vcy_lmtへの変化を遅延させる。具体的には、出力調整部54Dは、所定のフィルタ特性を有する一次遅れフィルタを有する。
本例における一次遅れフィルタの所定のフィルタ特性は、バケット8の刃先8aと設計地形との間の距離dに従ってフィルタ周波数fが変更される。フィルタ周波数fは、一次遅れフィルタの応答速度を設定し、フィルタ周波数が高いほど応答速度が速く、フィルタ周波数が低いほど応答速度が遅くなる。
ここで、縦軸がフィルタ周波数fであり、横軸がバケット8の刃先8aと設計地形との間の距離dを表している。
本例においては、バケット8の刃先8aが設計地形よりも上(作業車両100の作業機2側)に位置している場合の距離dは正の値であり、刃先8aが設計地形よりも下に位置している場合の距離dは負の値である。
バケット8の刃先8aが設計地形よりも下に位置している場合(距離d<0)には、フィルタ周波数fは、所定値z以下に設定される。フィルタ周波数fが所定値z以下に設定されることにおり、設計地形よりも上に位置している場合に比べて一次遅れフィルタに入力された制限速度Vcy_lmtの応答速度が遅延する。
一方、バケット8の刃先8aが設計地形よりも上に位置している場合(距離d>0)には、所定値zよりも大きい値に設定される。フィルタ周波数fが所定値zよりも大きい値に設定されることにおり、設計地形よりも下に位置している場合に比べて一次遅れフィルタに入力された制限速度Vcy_lmtの応答速度が速くなり遅延が抑制される。
演算部54Cは、制限速度Vcy_lmtと、アーム推定速度Vc_amから得られるアーム推定速度Vc_amの垂直速度成分Vcy_amと、バケット推定速度Vc_bktから得られるバケット推定速度Vc_bktの垂直速度成分Vcy_bktとに基づいてブーム目標速度Vc_bm_lmtを算出する。
具体的には、図11で説明した方式に従って、ブーム目標速度Vc_bm_lmtを算出する。
そして、作業機制御部57は、目標速度決定部54で決定されたブーム目標速度Vc_bm_lmtに従って制御指令CBIを制御弁27に出力する。
実施形態の作業機コントローラ26の目標速度決定部54は、第2操作レバー25Lを操作した操作量(アーム操作量)が所定量X未満の場合に、ブーム目標速度が減速されたと判定した場合に、減速されていないと判定した場合よりも制限速度Vcy_lmtへの変化を遅延させて、ブーム目標速度を算出する。
具体的には、出力調整部54Dにおいて、ブーム目標速度が減速されたと判定した場合に、減速されていないと判定した場合よりもフィルタ周波数fに基づいて制限速度Vcy_lmtへの変化を遅延させる。
なお、制限速度算出部54A、速度判定部54B、出力調整部54Dは、それぞれ本発明の「制限速度算出部」、「速度判定部」、「調整部」の一例である。また、演算部54Cは、本発明の「ブーム速度決定部」の一例である。
なお、本例における速度判定部54Bは、演算部54Cから出力されるブーム目標速度Vc_bm_lmtの変化に基づいて減速となったか否かを判定する場合について説明したが、特にこれに限られず他の方式を採用しても良い。例えば、EPC指令部262Cから出力されるEPC電流値の変化に基づいて減速と判定した場合には制限速度Vcy_lmtを出力調整部54Dに出力する方式としても良い。また、EPC電流値に限られず油圧シリンダの速度変化あるいはスプールストローク量の変化に基づいて減速と判定することも可能である。
図17は、出力調整部54Dの一次遅れフィルタの特性を説明する図である。
図17に示されるように、本例においては、時刻tAにおいて、ステップ応答で目標値に到達する場合と、時刻tBに目標値に到達する場合が示されている。
したがって、一次遅れフィルタを介することにより、入力された制限速度Vcy_lmtへの到達が遅延させられる。
これにより、出力調整部54Dにおいて、ブーム目標速度が減速される場合のみ、制限速度Vcy_lmtへの変化が遅くなるため介入制御によるブーム6のブーム目標速度の急な減速への変化を抑制することが可能となる。
ブーム目標速度の急な減速を抑制してブームの上げ速度の変化が円滑化されることにより、図14で説明したブーム上げ減速域の距離が短くなる。これにより、ブーム6の上下の挙動が抑制されるためバケット8の刃先8aを安定させてハンチングを抑制することが可能となる。
フィルタ周波数fは、バケット8の刃先8aが設計地形よりも上に位置している場合(距離d>0)には、所定値zよりも大きい値に設定されるため応答速度が速くなり遅延が抑制される。これにより、バケット8の刃先8aが設計地形よりも上に位置している場合には、設計地形に高速に追従する精度の高いならい制御を実行することが可能である。
また、目標速度決定部54の速度判定部54Bは、第2操作レバー25Lを操作した操作量(アーム操作量)が所定量X以上の場合には、出力調整部54Dをスキップして演算部54Cに出力する。したがって、制限速度Vcy_lmtは調整されない。
この場合には、アーム操作によるバケット8の刃先8aの動きは大きいため、介入制御によるブーム6のブーム目標速度は支配的とならないため上下の挙動は大きくならない。したがって、調整せずにブーム目標速度を設定することにより、バケット8の刃先8aが設計地形に追従する精度の高いならい制御を実行することが可能である。
<変形例1>
実施形態の変形例1においては、目標速度決定部54を目標速度決定部54Pに変更する。
図18は、実施形態の変形例1に基づく目標速度決定部54Pの処理ブロックの概略を説明する図である。
目標速度決定部54Pは、目標速度決定部54にさらにタイマ機能を持たせたものである。第2操作レバー25Lを操作してから所定時間、出力調整部54Dにおける調整処理を実行する。当該方式により第2操作レバー25Lによるバケット8の動き出し直後にのみ調整処理を実行することが可能である。上記したように第2操作レバー25Lによるバケット8の動き出し直後は、バケット8の刃先8aが安定しない可能性がある。したがって、動き出し直後の期間のみ出力調整部54Dにおける調整処理を実行し、バケット8の刃先8aが安定する所定期間経過後は、出力調整部54Dにおける調整処理ではなく通常制御する。
図18に示されるように、目標速度決定部54Pは、目標速度決定部54と比較して、さらにタイマ54Fを設けた点とが異なる。その他の点については同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
タイマ54Fは、第2操作レバー25Lを操作した操作時間の入力に基づいて演算する処理を切り替える。
具体的には、タイマ54Fは、第2操作レバー25Lを操作した操作時間が所定時間未満の場合には、出力調整部54Dにおける調整処理を実行し、操作時間が所定時間以上の場合には、出力調整部54Dをスキップして演算部54Cに制限速度を出力する。
したがって、出力調整部54Dは、第2操作レバー25Lを操作した操作量(アーム操作量)が所定量X未満でかつ、ブーム目標速度が減速されたと判定された場合でかつ、操作時間が所定時間未満の場合に、制限速度Vcy_lmtへの変化を遅延させる。出力調整部54Dは、操作時間が所定時間以上の場合あるいは、ブーム目標速度が減速されていないと判定された場合あるいは、第2操作レバー25Lを操作した操作量(アーム操作量)が所定量X以上である場合には、制限速度Vcy_lmtは調整されない。
実施形態の変形例1においては、第2操作レバー25Lを操作した操作時間が所定時間未満の場合にのみ出力調整部54Bにおける調整処理が実行される。
当該方式により、第2操作レバー25Lを操作したアーム操作の動き出し直後の所定時間のみ出力調整部54Bにおける調整処理が実行され、バケット8の刃先8aが安定する所定期間経過後は、出力調整部54Bにおける調整処理ではなく通常制御することが可能である。
これにより、第2操作レバー25Lを操作したアーム操作の動き出し直後の所定時間のみ介入制御によるブーム6のブーム目標速度の急な減速を抑制することが可能となる。ブーム目標速度の急な減速を抑制してブームの上げ速度の変化が円滑化されることにより、ブーム6の上下の挙動が抑制されるためバケット8の刃先8aを安定させてハンチングを抑制することが可能となる。
また、バケット8の刃先8aが安定する所定時間経過後は、通常制御に従ってブーム目標速度を設定することにより効率的な制御が可能であり、バケット8の刃先8aが設計地形に追従する精度の高いならい制御を実行することが可能である。
なお、本例においては、速度判定部54Bの後にタイマ54Fが設けられている構成について説明したが特にこれに限られず、タイマ54Fの後に、速度判定部54Bを設けた構成としても良い。
<変形例2>
実施形態の変形例2においては、目標速度決定部54を目標速度決定部54Qに変更する。
目標速度決定部54Qは、バケット8の種別に従ってフィルタ周波数を調整する。
図19は、実施形態の変形例2に基づく目標速度決定部54Qの処理ブロックの概略を説明する図である。
図19に示されるように、目標速度決定部54Qは、目標速度決定部54と比較して、出力調整部54Bを出力調整部54Hに置換するとともに、さらにバケット種別取得部54Gを設けた点が異なる。その他の点については同様であるのでその詳細な説明については繰り返さない。
バケット種別取得部54Gは、入力データに基づいてバケット8の種別を判断する。本例においては、バケット8が「大」、「小」の2種類の種別を判断する。
バケット8が「大」とはバケット重量が重いことを示す。バケット8が「小」とはバケット重量が軽いことを示す。
バケット種別取得部54Fに入力される入力データは、一例として、作業車両100に対してバケット8を装着した際にオペレータがマンマシンインターフェース部32の入力部321を介して設定するバケット8の種別データに基づくものである。
たとえば、表示部322において表示されるバケット重量設定の画面において、オペレータがバケット8の重量を設定することが可能である。
また、バケット8の重量は、オペレータによって手動で選択されなくても、油圧シリンダ60(ブームシリンダ10、アームシリンダ11、及びバケットシリンダ12)の内部に発生する圧力に基づいて自動的に検知されてもよい。この場合、例えば作業車両100が特定の姿勢で、かつバケット8が宙に浮いている状態で、油圧シリンダ60の内部に発生する圧力が検知される。検知された油圧シリンダ60内部の圧力に基づいて、アーム7に装着されたバケット8の重量を特定することも可能である。入力データとして、バケット種別取得部54Fが当該検知された油圧シリンダ60内部の圧力のデータを受けて、当該データに基づいて判断するようにしても良い。
出力調整部54Hは、バケット種別取得部54Gで取得されたバケット種別に従う調整テーブルに基づいて制限速度Vcy_lmtを調整する。
具体的には、出力調整部54Hは、所定のフィルタ特性を有する一次遅れフィルタを含む。
本例における一次遅れフィルタの所定のフィルタ特性は、特性線T1,T2を有する。
また、バケット8の刃先8aが設計地形よりも下に位置している場合(距離d<0)には、フィルタ周波数fは、所定値z以下に設定される。フィルタ周波数fが所定値z以下に設定されることにおり、一次遅れフィルタに入力された制限速度Vcy_lmtの出力が遅延する。
特性線T1,T2は、バケット8が「大」、「小」の場合にそれぞれ対応して設けられる。ここで、特性線T1,T2は、バケット8の刃先8aが設計地形よりも下に位置している場合(距離d<0)において、特性線T1に従う周波数fの値は、特性線T2に従う周波数fの値よりも小さい。
出力調整部54Hは、バケット種別取得部54Gで取得されたバケット種別に従って特性線T1,T2のいずれか一方を選択する。そして、出力調整部54DH、選択した特性線に基づく周波数fに従って、制限速度Vcy_lmtへの変化を遅延させる。
具体的には、バケット8の刃先8aが設計地形よりも下に位置している場合(距離d<0)には、バケット8が「大」の場合における特性線T1に従う周波数fは、バケット8が「小」の場合における特性線T2に従う周波数fよりも小さい。
したがって、バケット8が「大」の場合の方が、バケット8が「小」の場合よりも、ブーム6のブーム目標速度への変化を遅らせることが可能となる。
バケット8の種別が「大」の場合には、「小」の場合よりもブーム目標速度に従うバケット8の慣性力は大きくなるためバケット8の刃先8aを安定させるためには、ブーム目標速度の減速への変化を遅くすることが好ましい。一方、バケット8の種別が「小」の場合にはバケット8の慣性力は小さくなるため、ブーム目標速度の急な減速への変化をそれほど遅くしなくても良い。
実施形態の変形例2に従う方式によりバケット8の種別に応じて適切にブーム目標速度を調整し、介入制御によるブーム6のブーム目標速度の急な減速への変化を遅らせることが可能となる。ブーム目標速度の急な減速への変化を遅らせることにより、ブーム6の上下の挙動が抑制されるためバケット8の刃先8aを安定させてハンチングを抑制することが可能となる。
なお、本例においては、バケット8の種別として「大」、「小」の2種類の場合について説明したが、特に「大」、「小」に限られず、さらに複数種類のバケット8の種別に従って係数Kの調整テーブルを設けて調整することも可能である。
なお、バケット種別取得部54Gは、本発明の「種別取得部」の一例である。
また、変形例1と組み合わせて、タイマ54Fをさらに設けた構成とすることも可能である。当該構成の場合には、第2操作レバー25Lを操作したアーム操作の動き出し直後の所定時間のみ出力調整部54Hにおける調整処理を実行し、バケット8の刃先8aが安定する所定期間経過後は、出力調整部54Hにおける調整処理ではなく通常制御することが可能である。
なお、本例においては、シリンダ速度とスプールストロークとの関係を示すシリンダ速度テーブルを用いてシリンダ速度を算出する方式について説明したが、記憶部58に、シリンダ速度とPPC圧力(パイロット圧力)との関係を示すシリンダ速度テーブルが記憶され、その相関データを使ってシリンダ速度を算出することも可能である。
なお、本例においては、制御弁27を全開にして、圧力センサ66及び圧力センサ67で圧力を検出し、その検出値に基づいて、圧力センサ66及び圧力センサ67のキャリブレーション行ってもよい。制御弁27を全開にした場合、圧力センサ66と圧力センサ67とは同じ検出値を出力する。制御弁27を全開にした場合において、圧力センサ66と圧力センサ67とが異なる検出値を出力した場合、圧力センサ66の検出値と、圧力センサ67の検出値との関係を示す相関データを求めてもよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、上述の本例においては、操作装置25は、パイロット油圧方式であることとした。操作装置25は、電気レバー方式でもよい。例えば、操作装置25の操作レバーの操作量を検出し、その操作量に応じた電圧値を作業機コントローラ26に出力するポテンショメータ等の操作レバー検出部が設けられてもよい。作業機コントローラ26は、その操作レバー検出部の検出結果に基づいて、制御弁27に制御信号を出力して、パイロット油圧を調整してもよい。本制御は作業機コントローラで行われたが、センサコントローラ30等他のコントローラで行われてもよい。
上記の実施形態では、作業車両の一例として油圧ショベルを挙げているが油圧ショベルに限らず、他の種類の作業車両に本発明が適用されてもよい。
グローバル座標系における油圧ショベルの位置の取得は、GNSSに限らず、他の測位手段によって行われてもよい。従って、刃先8aと設計地形との距離dの取得は、GNSSに限らず、他の測位手段によって行われてもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。