次に本発明の第1実施形態である継手1について説明する。説明の便宜上「上」及び「下」という表現を用いるが、継手1が使用される状態での上下とは必ずしも一致しない。図1は継手1の斜視図である。継手1は第一部材に埋設される受容部材10と、第二部材に埋設される挿入部材20とを備えている。受容部材10の内部には、受容空間13が設けられ、受容空間13の接合面側は円形の開口部15となっている。挿入部材20は開口部15から受容部材10に挿入され後述する受容部材10の係合部と挿入部材20の係合部が係合し、逆向きに抜け出さないように固定される。
図2は、受容部材10の構造を示す図で、(A)は接合面に垂直な面で切った断面図(以下「縦断面図」という)、(B)は正面図である。受容部材10は、囲繞部11と端部部材12を備え、接合面側の端面が接合面101aと一致するように全体が第一部材101に埋設され、外周面18と端面19は第一部材101に付着している。囲繞部11の形状は、円筒形状であり、軸方向には接合面101aに平行な面で切った断面形状(以下、単に「断面形状」という)が円形で、接合面側が開口し円形の開口部15を形成している受容空間13が設けられている。開口部15の直径は、後述する挿入部材の挿入部の外径よりも大きくする。受容空間13の接合面から遠い側(以下、「奥側」という)の端面は端部部材12により塞がれている。囲繞部11の内面14には、縦断面図における形状が三角形で内面14から突出する係合部16(受容係合部の一例)が設けられている。係合部16は受容部材10の軸方向には間隔をあけずに複数、周方向には全周に亘って設けられている。
なお、受容部材10の外形は挿入部材20を挿入可能な受容空間と係合部を形成することができれば、円筒形以外の形状とすることができる。又、係合部16の縦断面形状は後述の挿入部材20の係合部26と係合させることができれば三角形以外とすることができる。又、係合部16は軸方向に間隔をあけて設けても良く、周方向には断続的に設けても良い。又、係合部16の軸方向の配置範囲は、図2(A)のように囲繞部11の一部だけとしても良いし、全長に亘って配置しても良い。又、係合部16は囲繞部11と一体としても良いし、別体としても良い。
図3は、挿入部材20の構造を示す図で、(A)は縦断面図、(B)は正面図である。挿入部材20は、第二部材102に埋設されている埋設部21と接合面102aから突出している挿入部24とを備えている。埋設部21は、挿入部に一連に設けられる円形断面の支持部22と、支持部22よりも大きい円形断面の頭部23により構成されている。挿入部24は支持部22と同径の円形断面であり、外周面25には縦断面図における形状が三角形で外周面25から突出する係合部26(挿入係合部の一例)が設けられている。係合部26は挿入部24の軸方向には間隔をあけずに受容部材10の係合部16と同数、周方向には全周に亘って設けられている。
なお、係合部26の縦断面形状は受容部材10の係合部16と係合させることができれば三角形以外とすることができる。又、係合部26は軸方向に間隔をあけて設けても良く、周方向には断続的に設けても良い。又、係合部16の数と係合部26の数は異なっていても良い。
受容部材10と挿入部材20の材料は、所望の強度、製造コスト、第一部材と第二部材が使用される環境条件等に応じて種々のものを使用することができ、例えば、金属、合成樹脂、木、紙、ガラス、セラミックス、ゴムなど適宜の材料を用いて適宜の製造方法で形成することが可能である。
次に図4(A)~(C)、図5(A)~(C)を参照して、継手1による部材の接合方法について説明する。ここでは受容部材10が埋設された既設の第一部材101に、挿入部材20が埋設された第二部材102を接合するものとして説明する。
まず図4(A)に示すように、第二部材102を第一部材101の接合面101aと第二部材の接合面102aが平行になり、受容部材10の中心軸と挿入部材20の中心軸がほぼ一致するように配置する。図5(A)は、受容部材10の中心軸と挿入部材20の中心軸を一致させた状態での受容部材10の係合部16と挿入部材20の係合部26の関係を示す図である。係合部16は受容部材10の軸方向(即ち、挿入部材20の引き抜き方向)に垂直な係合面16aと、受容空間13の径が接合面側から奥側に向かって縮径するように傾斜した傾斜面16bとを備えている。係合部26は挿入部24の軸方向(即ち、挿入部材20の引き抜き方向)に垂直な係合面26aと、挿入部24の径が接合面側から奥側に向かって縮径するように傾斜し、傾斜面16bと平行な傾斜面26bとを備えている。係合部16の高さh1と係合部26の高さh2は、それぞれ、受容部材の内面14と挿入部24の外周面25との間隔h4よりも小さく、且つ、挿入部材20の挿入方向と略垂直な方向で干渉量h3だけ重なり合う関係となっている。言い換えると、h1+h2>h4となっている。
この状態から、図4(A)の矢印Aのように、第二部材102を接合面101a、102aに垂直な方向に移動させて、挿入部材20の挿入部24を開口部15から受容部材10の受容空間13に挿入する。図4(B)は、係合部16と係合部26が干渉し始めた状態を示している。又、この状態でのB部の拡大図を図5(B)に示す。傾斜面16aの先端部16cと傾斜面16bの先端部26cとが当接し、係合部26が係合部16を図5(B)の左方向に押圧する。この押圧力とその反力により、係合部16は係合面16aが奥側に傾くように、係合部26は係合面26aが接合面側に傾くように、それぞれ弾性変形する。挿入部材20が更に奥側に進行し、係合部26の頂点26dが係合部16の頂点16dより奥側に進むと干渉が解消し、係合面16aは内面14に垂直に、係合面26aは外周面25に垂直に戻る。このような変形プロセスが起こるように、受容部材10の材質、挿入部材20の材質、係合部16の形状、係合部26の形状等を勘案して干渉量h3を適切に設定する。
なお、係合部16と係合部26を剛性が大きく異なる材料で形成し、実質的に一方のみが変形するようにしても良い。又、干渉が解消した後に係合部16と係合部26の変形が完全に元に戻るとしたが、係合部16の係合面16aと係合部26の係合面26aが係合することを条件に、塑性変形が残るようにしても良い。又、挿入部材20が挿入可能となるために、囲繞部11及び/又は挿入部24が全体として変形するようにして良い。
第一部材101の接合面101aと第二部材102の接合面102aを当接させると、図4(C)のように、対応する位置にある係合部16と係合部26の複数の組がそれぞれ係合し、継手1が形成される。この状態でのC部の拡大図を図5(c)に示す。係合面16aの先端部16eと係合面26aの先端部26eが係合し、非常に大きな引き抜き抵抗を得ることができる。この例のように、係合面を引き抜き方向に対して垂直とすると特に大きな引き抜き抵抗を得ることができる。
継手1によれば、受容部材10が埋設された第一部材101の接合面101aと挿入部材20が埋設された第二部材102の接合面102aが対向するように配置し、両部材を接合面に垂直な方向に相対的に移動し、接合面101aと接合面102aを当接させるだけで容易に第一部材と第二部材を接合することができる。
継手1の受容部材10、挿入部材20は円管と円柱を基本とする単純な形状であり、例えば市販の鋼管、棒鋼等を加工することにより容易に低コストで製造することができる。
次に、継手1を構成する受容部材10と挿入部材20の変形例について説明する。図1~5に示した受容部材10及び挿入部材20と同一の構成要素には、図1~5と同一の符号を付して説明を省略する。これらの変形例は、矛盾の無い限り相互に組み合わせて実施することができる。
受容部材の第1の変形例である受容部材10aについて説明する。受容部材10aは、変形許容部材を備える点が受容部材10と異なっている。図6(A)は挿入部材20が挿入される前の受容部材10aの縦断面図、図6(B)は挿入部材20が挿入された後の受容部材10aの縦断面図である。
受容部材10aには、外周面18の接合面101aから挿入部材20の先端が最終的に達する位置付近に亘って、変形許容部材30が設けられている。この例では、変形許容部材30の形状は、内径が囲繞部11の外径とほぼ等しい円管状である。変形許容部材30の材質は、第一部材101よりも軟質なものとする。例えば、第一部材101がコンクリート製である場合には、合成ゴム等を用いることができる。
図6(A)に示すように、受容部材10aは、全体が第一部材101に埋設され、外周面18及び端面19は、第一部材101に当接し第一部材により拘束されている。そのため、挿入部材20が挿入される前の受容部材10の外径をD1とし、挿入部材20の挿入部24を受容部材10aの受容空間13に挿入した際の受容部材10の外径をD2とする場合、変形許容部材30が配置されていないと、囲繞部11の剛性が小さい場合でも、図4(B)、図5(B)に示したように挿入部材20の係合部26が受容部材10の係合部16を押圧した際の囲繞部11の拡径量(D2-D1)は極めて小さい。
しかし、厚さと材質を適切に選択して剛性を適切に設定した変形許容部材30を配置することにより、図6(B)に示すように、囲繞部11の変形許容部材30を配置した部分は拡径変形することができるようになる。囲繞部11の拡径変形が可能となることにより、干渉量h3(図5(A)参照)を大きくしても、挿入部材20の挿入をスムーズに行うことができる。すなわち、受容部材10aの囲繞部11は、図6(A)に示すように、挿入部材20が挿入される前の外径D1の状態から、挿入部材20が挿入されることにより、図6(B)に示すように、外径D2の状態に拡径変形することができる。図6(A)、(B)では、誇張して描いているが、例えば、受容部材10aの外径D1が数十mm程度の場合、拡径量(D2-D1)は0.1mm程度でも上記の効果が十分得られる。
図7(A)、(B)は変形許容部材の変形例を説明する図である。図7(A)に示すように、変形許容部材32は、変形許容部材30と同様の円管状の部材であるが、中空部33を設けている。受容部材10aに挿入部材20が挿入された際には、中空部33が図7(B)に示すように消失するか或いは縮小して、変形許容部材34は厚みが減少するように変形する。そのため、囲繞部11は図6(B)と同様に拡径変形することができる。中空部33のように変形許容部材32の構成材料が入り込むことができる空間を設けることにより、拡径量をコントロールしやすくなり、又、材料選択の自由度を大きくすることができる。例えば、第一部材101がコンクリート製の場合でも、コンクリートよりも硬度の大きい金属を変形許容部材32の材料として採用することが可能となる。なお、中空部33の形状、個数、配置は図7(A)に示したものと異なっていても良い。
図7(C)、(D)は変形許容部材の他の変形例を説明する図である。図7(C)に示すように、変形許容部材34は、変形許容部材30と同様の円管状の部材であるが、内面36に複数の凸部35を設けている。凸部35の縦断面図における形状は三角形で、その頂点が受容部材10aの外周面18に当接し、内面36と外周面18の間に空間37が形成されている。受容部材10aに挿入部材20が挿入された際には、空間37が図7(D)に示すように消失するか或いは縮小して、変形許容部材34は厚みが減少するように変形する。そのため、囲繞部11は図6(B)と同様に拡径変形することができる。空間37が中空部33と同様に変形許容部材34の構成材料が入り込むことができる空間として機能し、上記の変形許容部材32と同様の効果が得られる。なお、凸部35の形状、個数、配置は図7(C)に示したものと異なっていても良い。
受容部材の第2の変形例である受容部材10bについて説明する。受容部材10bは、囲繞部11と係合部16を別体として構成している点が受容部材10と異なっている。受容部材の材質や寸法によっては、別体とした方が製造が容易となる。図8(A)は受容部材10bの縦断面図、図8(B)は傾斜ワッシャ40の正面図である。
図8(A)に示すように、受容部材11bの受容空間13には、6個の傾斜ワッシャ40が積層されて配置されている。傾斜ワッシャ40は、その外周面が受容空間13の内面14に当接するように、囲繞部11に設けられた凹部11aに固定されている。
図8(B)に示すように、傾斜ワッシャ40は、厚さ方向に貫通する円形の開口部42を有する円環状の部材で、開口部42は、接合面側から奥側に向かって縮径しており、傾斜ワッシャ42の内面は傾斜面41となっている。傾斜ワッシャ40の傾斜面41を含む内側部分が囲繞部11の内面14から突出し、係合部16を形成している。受容部材10bに挿入部材20が挿入されると、図5(B)、(C)に示したものと同様に係合部16と挿入部材20の係合部26が係合し継手1が形成される。
図8(C)、(D)は係合部を形成するためのワッシャの変形例を説明する図である。傾斜ワッシャ43は、傾斜ワッシャ40と同様に傾斜面43aを備えているが、傾斜面43aの傾斜は傾斜面41の傾斜より大きく(開口部の接合面側の径と奥側の径の差が大きく)なっている。又、図8(A)の例に比べて傾斜ワッシャ43の円環部分43bの幅は受容空間の径に対して相対的に大きく、挿入部材20が挿入される前の状態では、図8(C)に示すように、傾斜ワッシャ43は全体が内面14から垂直に突出している。傾斜ワッシャ43の傾斜面43aを含む内周側端部が係合部16を形成している。
挿入部材20が所定の位置まで挿入されると、図8(D)に示すように、傾斜ワッシャ43は内側が奥側に入るように漏斗状に変形する。押圧部材20の係合部26は返し状の形状となっており、係合部16と係合して継手1が形成される。このときの傾斜ワッシャ44の変形は弾性変形であっても塑性変形であっても良いが、弾性変形とした方が、挿入部材20を中心に向かって締め付ける力が働くため好ましい。
図8(E)、(F)は係合部を形成するためのワッシャの他の変形例を説明する図である。ワッシャ44は、内面44aが傾斜していない通常の形状のワッシャである。傾斜ワッシャ43と同様に、挿入部材20が挿入される前の状態では、図8(E)に示すように、ワッシャ44は全体が内面14から垂直に突出している。
挿入部材20が所定の位置まで挿入されると、図8(F)に示すように、ワッシャ44は内側が奥側に入るように漏斗状に変形する。この状態では、内面44aを含む内側端部が係合部16を形成している。挿入部材20の係合部26は二等辺三角形状となっており、係合部16と係合して継手1が形成される。このときのワッシャ44の変形は弾性変形であっても塑性変形であっても良いが、弾性変形とした方が、挿入部材20を中心に向かって締め付ける力が働くため好ましい。
図9、10は、ワッシャ状を成す部材により係合部16を形成した他の変形例を説明する図である。図9の受容部材140の基本的な構造は図1の受容部材10と同様で、円筒状の囲繞部141を備えている。囲繞部141の奥側の端部には一端部142がねじ加工されたアンカー143が螺合されている。アンカー143の外周面にはリブ144が設けられている。図9の挿入部材145は、図1の挿入部材20同様の円柱形を基本とする部材で、受容部材140の受容空間に挿入される挿入部146と該挿入部146に一連に設けられる連接部147を有し、挿入部147の外周には係合部149が設けられている。連接部147の外周面にはリブ148が設けられている。
受容部材140の受容部には複数のワッシャ150又はワッシャ155が積層されて、外周面を囲繞部141の内面に固定されている。ワッシャ150は、図10(A)に示すように、中心側が囲繞部141の奥側に入るように傾斜して形成されて傾斜面151を有している。そして、傾斜面151先端部153が係合部を形成している。ワッシャ150の断面形状は、間隙152を有するC字状となっている。図10(B)に示すワッシャ155のように間隙152の替わりにスリット157を有する形状としても良い。ワッシャ155は、ワッシャ150と同様に傾斜面156を有しその先端部158が係合部となっている。間隙又はスリットを設けることによって、挿入部材145の挿入が容易となる。
図11、12は、図9、10に示した変形例と同様であるがワッシャの形状が異なっている。ワッシャ160は、図10(B)のワッシャ155と同様に傾斜面156を有し、その先端部158が係合部となっている。ワッシャ160は傾斜面156の外周部に囲繞部141の内面に略垂直なフランジ部162が設けられ、フランジ部162の外周が囲繞部141の内面に固定されている。又、ワッシャ160は三個のスリット163を備えている。なお、図11に示す挿入部146と連接部147は、螺着により一体化される別部材として構成され、挿入部146を螺進させるための工具である例えば六角レンチが挿入される孔部149aが挿入部146の先端に設けられている。挿入部146と連接部147は一体に形成して一部材とすることもできる。
図13、14は、図9、10に示した変形例と同様であるがワッシャの形状が異なっている。ワッシャ170は、縦断面における形状がL字状であり、図14に示すように囲繞部141の内面と平行で内面に固定される平行部171と傾斜部172を備えている。又、ワッシャ170は三個のスリット173を備えている。なお、ワッシャ155、160、170におけるスリットの位置と個数は各図と異なっていても良い。
なお、図8(A)~(F)、9~14に示した各変形例では、傾斜ワッシャ又はワッシャの枚数、配置位置、形状は図示のものと異なっていても良い。又、ワッシャ以外の囲繞部11とは別体の部材により係合部16を形成しても良い。例えば、囲繞部11を構成する囲繞体の内部にはめ込む囲繞体とは別体の筒状部材、コイル状部材等により係合部16を形成しても良い。
受容部材の第3の変形例である受容部材10cについて説明する。受容部材10cは、挿入部材20を挿入しやすくするためのガイド部が設けられている点が受容部材10と異なっている。図15は受容部材10cの縦断面図である。
受容部材10cの囲繞部11の開口部側の端部11aは、受容空間13の径が奥側から開口部側に向かって拡径する形状となっており、受容部材10cの開口部側の端部にはガイド部45が形成されている。接合時に第一部材又は第二部材の位置に多少の誤差があっても、挿入部材20の先端がガイド部45の傾斜した内面14aに当接しながら摺動するため、スムーズに挿入部材20を挿入することができる。
受容部材の第4の変形例である受容部材10dについて説明する。受容部材10dは、抜け出し防止機構が設けられている点が受容部材10と異なっている。図16は受容部材10dの縦断面図である。
受容部材10dの外周面18には、抜け出し防止機構として縦断面における断面形状が台形の凸部50が設けられている。凸部50は、外周面18の全周に亘って連続して環状に設けても良いし、不連続に設けても良い。凸部50を設けることによって、受容部材10dは、第一部材との付着に加えて凸部50と第一部材を構成する材料との係合が生じることによって、一層抜け出しにくくなっている。なお、凸部50の形状は例えば三角形、半円形等の台形以外の形状とすることもできる。又、凸部50は、鍛造や切削等によって囲繞部11及び端部部材12と一体に形成しても良いし、別体として溶接、接着等により囲繞部11及び端部部材12に固定しても良い。
受容部材の第5の変形例である受容部材10eについて説明する。受容部材10eは、囲繞部と端部部材を別体としている点が受容部材10と異なっている。図17は受容部材10eの縦断面図である。受容部材の材質や寸法によっては、別体とした方が製造が容易となる。
受容部材10eでは、囲繞部11を例えば鋼管を加工して形成し、その奥側の端部に円板状の端部部材12を接合している。両部材の接合は、溶接、ネジ止め、接着等任意の方法によることができる。端部部材12を接合する前は囲繞部11の両端が開口しているので、係合部16の加工又は取付が容易となる。なお、囲繞部11と端部部材12を三個以上の部品に分割して製造してから組み立てるようにしても良い。
受容部材の第6の変形例である受容部材10fについて説明する。受容部材10fは、外形が受容部材10と異なっている。図18は受容部材10fの斜視図である。
受容部材10fの外形は、直方体状であり、接合面側の端面には円形の開口部15が形成され、内部には図2(A)と同様の円柱状の受容空間が形成されている。挿入部材20の外形が円筒状であっても、このように、受容部材10fの外形は挿入部材20の外形とは相似でない直方体状とすることができる。又、開口部15及び受容空間の断面形状も挿入部材20を挿入できる大きさがあり、係合部を形成することができれば、挿入部材20の断面形状とは相似でない形状とすることができる。
受容部材の第7の変形例である受容部材10g~10jについて説明する。受容部材10g~10jは、第一部材がコンクリート等の流動性材料を固化させて製造されるものであり、棒状又は枡状のアンカーを備えている点が受容部材10と異なっている。アンカーを設けることにより、受容部材の引き抜き抵抗を増大させることができる。
図19(A)に平面図を示す受容部材10gは端部部材12が省略され円筒状の囲繞部11から成っている。内面14の奥側の端部孔12bには雌ネジが形成されている。アンカー60は異形鉄筋等の棒状部材で、その一端60aには雄ネジが形成されている。アンカー60は端面19側から螺合されることにより囲繞部11に固定され、アンカー60の端面60bが受容空間13の端面を形成している。このような形態とすれば、市販の鋼管等と鉄筋等を利用して容易に受容部材を製造することができる。
図19(B)に平面図を示す受容部材10hでは、端面19に二本の直線状のアンカー61を設けている。又、図19(C)に平面図を示す受容部材10iでは、端面19にU字状のアンカー62を設けている。アンカー61、62としては例えば異形鉄筋を用いることができるが、所要の付着力が得られれば、材質、形状、本数、取付位置は、任意に変更することができる。アンカー61、62の端面19への固定としては、溶接の他、ねじ部を設けて螺合しても良い。
図19(D)に平面図、図19(E)に側面図を示す受容部材10jでは、枡形アンカー65を設けている。枡形アンカー65は、平板状の端板66と、端板66の両端に端板66に対して垂直方向に設けられた二枚の側板67で構成されている。側板67の端板66と接続されていない端部が、それぞれ、正方形の板状部材70を介して端面19に接合され、枡形アンカー66と板状部材70によって、上下が開口した空間68が形成されている。受容部材10jは、流動性の材料が注入される前に型枠内に固定され、材料が注入されると空間68にも材料が流入して他の部分と一体に固化する。そのため、側板67の外面69が材料と付着すると共に、端板66が空間68に注入された材料と係合し、一層引き抜き抵抗を増大させることができる。この例では、端板65と側板66を一体としたが、別体に作成してから接合しても良い。又、空間68を形成し、この部分に流入した材料と係合する端板66を備えるものであれば、図19(D)、(E)とは異なる形状とすることができる。枡形アンカー65の材料は、金属、合成樹脂等任意のものを用いることができるが、第一部材の材料と付着し易いものが好ましい。
受容部材の第8の変形例である受容部材10k、10mについて説明する。受容部材10k、10mは、第一部材がコンクリート等の流動性材料を固化させて製造されるものであり、板状のアンカーを備えている点が受容部材10と異なっている。アンカーを設けることにより、受容部材の引き抜き抵抗を増大させることができる。
図20(A)に側面図、図20(B)に平面図を示す受容部材10kは、板状アンカー72を備えている。板状アンカー72は、幅が受容部材10kの外径とほぼ等しい板状部材で、その一端が端面19に接続されている。板状アンカー72の外周面には、リブ73が設けられている。板状アンカー72と端面19との接続は、溶接、接着、ボルト止め等任意の方法によることができる。板状アンカー72の材料は、金属、合成樹脂等任意のものを用いることができるが、第一部材の材料と付着し易いものが好ましい。このような構成とすることにより、板状アンカー72の外周面と第一部材との付着及びリブ73と第一部材との係合によって引き抜き抵抗が増大する。なお、第一部材と係合し引き抜き抵抗を増大させることができれば、リブ73の形状、配置、本数は図20(A)、(B)に示したものとは異なっていても良い。又、付着のみで十分な引き抜き抵抗が得られる場合には、リブ73を省略することもできる。
図20(C)に側面図、図20(D)に平面図を示す受容部材10mは、受容部材10kと同様の板状アンカー75を備えている。板状アンカー75には、厚さ方向に貫通する円形断面の孔部76が複数設けられている。孔部76を設けることにより、付着に加えて孔部76内に流入した材料との係合によって引き抜き抵抗を更に増大させることができる。なお、孔部76の断面形状は円形以外とすることができ、又、配置位置と個数は図20(C)、(D)と異なっていても良い。
受容部材の第9の変形例である受容部材10nについて説明する。受容部材10nは、接合面補強部材を備えている点が受容部材10と異なっている。図21(A)は受容部材10nの縦断面図、図21(B)は受容部材10nの正面図である。
受容部材10nは、接合面補強部材80を備えている。接合面補強部材80は円環形の板状部材で、一方の面81の位置が囲繞部11の接合面側の端面と一致するように、囲繞部11の外周に立設されている。接合面補強部材80を設けることにより、接合面の剛性を高めることができる。接合面の近傍に配置され、接合面の剛性を高めることができれば、接合面補強部材80の材料は金属、合成樹脂等任意のものを用いることができ、形状、配置、枚数も図21(A)、(B)に示したものと異なっても良い。
挿入部材の第1の変形例である挿入部材20a~20dについて説明する。挿入部材20a~20dは、第二部材がコンクリート等の流動性材料を固化させて製造されるものであり、棒状又は枡状のアンカーを備えている点が挿入部材20と異なっている。アンカーを設けることにより、挿入部材の引き抜き抵抗を増大させることができる。
図22(A)に平面図を示す挿入部材20aは、例えば一本の異形鉄筋を加工することにより、埋設部21と挿入部24が一体に形成されている。埋設部21は、頭部23を省略し異形鉄筋をそのまま用いアンカーを兼ねる形状としている。このような形状とすることにより、極めて容易に挿入部材20aを製造することでができる。この例では、埋設部21を直線状としたが、L字状、J字状等に曲げた形状とすることもできる。
図22(B)に平面図を示す挿入部材20bでは、頭部23の端面28に二本の直線状のアンカー90を設けている。又、図22(C)に平面図を示す挿入部材20cでは、端面28にU字状のアンカー91を設けている。アンカー90、91としては例えば異形鉄筋を用いることができるが、所要の付着力が得られれば、材質、形状、本数、取付位置は、任意に変更することができる。アンカー90、91の端面28への固定としては、溶接の他、ねじ部を設けて螺合しても良い。
図22(D)に平面図、図22(E)に側面図を示す挿入部材20dでは、枡形アンカー95を設けている。枡形アンカー95は、平板状の端板96と、端板96の両端に端板96に対して垂直方向に設けられた二枚の側板97で構成されている。側板97の端板96と接続されていない端部が、それぞれ、端面28に接合され、枡形アンカー95と端面28によって、上下が開口した空間98が形成されている。挿入部材20dは、流動性の材料が注入される前に型枠内に固定され、材料が注入されると空間98にも材料が流入して他の部分と一体に固化する。そのため、側板97の外面99が材料と付着すると共に、端板96が空間98に注入された材料と係合し、一層引き抜き抵抗を増大させることができる。この例では、端板96と側板97を一体としたが、別体に作成してから接合しても良い。又、空間98を形成し、この部分に流入した材料と係合する端板96を備えるものであれば、図22(D)、(E)とは異なる形状とすることができる。枡形アンカー95の材料は、金属、合成樹脂等任意のものを用いることができるが、第二部材の材料と付着し易いものが好ましい。
挿入部材の第2の変形例である挿入部材20e、20fについて説明する。挿入部材20e、20fは、第二部材がコンクリート等の流動性材料を固化させて製造されるものであり、板状のアンカーを備えている点が挿入部材20と異なっている。アンカーを設けることにより、挿入部材の引き抜き抵抗を増大させることができる。
図23(A)に側面図、図23(B)に平面図を示す挿入部材20eは、板状アンカー110を備えている。板状アンカー110は、幅が頭部23の幅とほぼ等しい板状部材で、その一端が端面28に接続されている。板状アンカー110の外周面には、リブ111が設けられている。板状アンカー110と端面28との接続は、溶接、接着、ボルト止め等任意の方法によることができる。板状アンカー110の材料は、金属、合成樹脂等任意のものを用いることができるが、第二部材の材料と付着し易いものが好ましい。このような構成とすることにより、板状アンカー110の外周面と第二部材との付着及びリブ111と第二部材との係合によって引き抜き抵抗が増大する。なお、第二部材と係合し引き抜き抵抗を増大させることができれば、リブ111の形状、配置、本数は図23(A)、(B)に示したものとは異なっていても良い。又、付着のみで十分な引き抜き抵抗が得られる場合には、リブ111を省略することもできる。
図23(C)に側面図、図23(D)に平面図を示す挿入部材20fは、挿入部材20eと同様の板状アンカー112を備えている。板状アンカー112には、厚さ方向に貫通する円形断面の孔部113が複数設けられている。孔部113を設けることにより、付着に加えて孔部113内に流入した材料との係合によって引き抜き抵抗を更に増大させることができる。なお、孔部113の断面形状は円形以外とすることができ、又、配置位置と個数は図23(C)、(D)と異なっていても良い。
図23(A)~(D)では、挿入部材が頭部23を備え、板状アンカー110、112を頭部23に接続するものとしたが、頭部23を省略し板状アンカー110、112を支持部22と直接接続し、又は、一体に形成しても良い。又、板状アンカー110、112の平面的な形状は矩形以外の形状とすることができ、厚さも任意である。
受容部材と挿入部材の係合部の形状を図2、3に示した直角三角形以外の形状とした変形例について説明する。
図24(A)に縦断面図を示した例では、受容部材10の係合部120と挿入部材20の係合部122の形状をそれぞれ二等辺三角形としている。係合部120の傾斜した係合面120aと係合部122の傾斜した係合面122aが係合する。係合部を対称な形状とすることにより加工が容易になる。
図24(B)に縦断面図を示した例では、受容部材10の係合部125の形状を二等辺三角形とし、受容部材10の軸方向に間隔をあけて配置している。そして、挿入部材20の係合部126の形状を台形状としている。係合部125の傾斜した係合面125aと係合部126の傾斜した係合面126aが係合する。このように、受容部材10の係合部の形状と挿入部材20の係合部の形状は相違していても良い。
図24(C)に縦断面図を示した例では、受容部材10の係合部127と挿入部材20の係合部129の形状をそれぞれ矩形としている。係合部127の引き抜き方向に対して垂直な係合面127aと係合部129の引き抜き方向に対して垂直な係合面129aが係合する。係合面が引き抜き方向に対して垂直であるため、図5(C)に示した例と同様の大きな引き抜き抵抗を得ることができる。
受容部材と挿入部材の係合部を螺旋状に連続させた変形例について説明する。図25(A)に縦断面図を示す受容部材10pでは、係合部132の断面形状を二等辺三角形とし、螺旋状に連続して形成している。即ち、内面14の一部を雌ネジ状に加工している。図25(B)に縦断面図を示す受容部材20qでは、係合部133の断面形状を二等辺三角形とし、螺旋状に連続して形成している。即ち、外周面25の一部を雄ネジ状に加工している。このように係合部を螺旋状に連続して形成すると、旋盤等により極めて容易に加工を行うことができる。係合部を螺旋状とするのは、受容部材と挿入部材の何れか一方でも良いし、両方でも良い。なお、市販のインサートボルトは、両方の係合部を螺旋状とした場合に該当するようにも見えるが、干渉量h3(図5(A)参照)が間隔h4とほぼ等しく、雄ネジを挿入部材として押し込むことは実際上不可能である。そのため、市販のインサートボルトをそのまま本発明の挿入部材及び受容部材として用いることはできない。
図26に、本発明の継手1(各変形例も含む)を地中にトンネルを構築するシールド工法に適用した例を示す。シールド工法においては、工場等で製作したセグメント201、202を周方向に接合してリング203を製作し、このリング203を軸方向に順次接続してトンネル200を構築する。セグメント202は、最後に接合されるセグメントで、台形状となっている。図20では短い直線で記号的に示したセグメントの軸方向の継手204に本発明を好適に用いることができる。コンクリートのように流動性の材料を型枠に注入して固化させることにより部材を作成する場合には、注入前に挿入部材及び受容部材を所定の位置に固定しておくことにより、簡単に取り付けることができる。
図27に、本発明の継手1(各変形例も含む)を木製の本棚に適用した例を示す。本棚210は、鉛直方向に配置される二枚の側板211の間に、一枚の天板212と複数の棚板213を配置した構造となっている。図27では短い直線で記号的に示した側板211と天板212の継手214及び側板211と棚板213の継手215に本発明を好適に用いることができる。木材等の部材に挿入部材と受容部材を固定する方法としては、例えば、挿入部材又は受容部材を収容できる大きさの切欠を設けて、挿入部材又は受容部材を接着剤等で固定することができる。或いは挿入部材又は受容部材の外周に鬼目ナットを形成して、木材等に打ち込むこともできる。
図28(A)~(C)は、受容部材の変形例を説明する図である。受容部材180は、囲繞体181の内部に筒状体184の収納空間182を設け、収納空間182に収納する筒状体184の内面に係合部を形成している。筒状体184は接合面側から奥側に向かって直線的に拡径した受容空間を形成している。アンカー183は端面側から螺合されることにより囲繞部181に固定され、アンカー183の端面が受容空間の端面を形成している。受容部材180は、このような形状とすることにより、挿入部材が引き抜かれようとしたときに、挿入部材20を中心側に締め付ける力が働くため、引き抜き抵抗が増大する。又、軸方向には一本のスリット187が設けられている。このようなスリットを設けることにより挿入部材の挿入が容易となる。筒状体184は、例えば、板状の部材を円筒状に加工することにより製造することができる。なお、スリット187の替わりに、或いはスリット187に加えて継ぎ目を設けることもできる。
上記の実施形態及び変形例では、受容部材が第一部材に予め埋設され、挿入部材の連接部の一部又は全部が予め第二部材に埋設されるものとして説明したが、挿入部材を第二部材に埋設せずに、両部材の接合面を当接させた状態で第二部材の接合面に対向する端面側から挿入することもできる。以下に、このような実施形態について説明する。
図29(A)に示す例は、受容部材10を第一部材に埋め込まない実施形態である。受容部材10は、図2に示したものと同一の形状である。この実施形態では、受容部材10を被接合部材即ち第一部材103に埋め込まずに、開口部15が形成されている端面を第一部材103の接合面103aと対向する面103cに当接させた状態で、第一部材103の外部に露出して配置している。挿入部材20は図3に示したものと同様の形状であるが、頭部410は薄板状としてある。第一部材103と第二部材104には挿入部材20が貫通可能な孔部103b、104bがそれぞれ設けられている。
この実施形態における接合手順は、まず、図29(A)のように第一部材103と第二部材104を孔部103bと孔部104bの位置が一致するように、且つ、接合面103aと接合面104aが当接するように配置する。受容部材10は、予め第一部材103に固定しておいても良いし、接合時に仮固定するようにしても良い。この状態で挿入部材20を第2部材の接合面と対向する端面104c側から孔部103bと孔部104bを貫通して受容部材10に挿入する。
図29(B)に示す例は、受容部材10を第一部材に予め埋め込んだ実施形態である。受容部材10は、図2に示したものと同一の形状である。この実施形態では、受容部材10を第1実施形態等と同様に第一部材103に埋め込んでいる。挿入部材20は図3に示したものと同様の形状であるが、頭部410は薄板状としてある。第一部材103と第二部材104には挿入部材20が貫通可能な孔部103b、104bがそれぞれ設けられている。この実施形態の接合手順は、図29(A)の場合と同様である。
又、各実施形態の継手を適用する第一部材及び第二部材の材質、形状には限定がなく、接合面同士を当接させて接合する場合であればどのような部材にも適用することができる。第一部材及び第二部材の材質としては、例えば、コンクリート、セラミックス、金属、合成樹脂、木材等に適用することができる。第一部材及び第二部材の形状としては、例えば、板状、柱状、ブロック状等の同種のもの同士或いは異なる種類の部材の接合に適用することができる。又、図20、21に例示したシールドセグメント及び本棚の他にも、プレキャストコンクリート部材一般、家具一般、建材、住宅フレーム材、各種機械等のあらゆる物品に適用することができる。
本発明におけるプレキャストコンクリート製品用の継手部材は、プレキャストによるコンクリート製品である第一部材に埋設される受容部材と、プレキャストによるコンクリート製品である第二部材に埋設される挿入部材とを備える。本発明における継手部材は、主にシールドトンネルセグメントに使用されるプレキャストコンクリート製品を接合するものである。
ここで、図28(A)~(C)に示した受容部材180では、軸方向にスリット187が設けられている筒状体184を受容係合部として囲繞体181の内部の収納空間182に収納したが、受容部材の受容係合部は、周方向に複数体に分割された分割コアからなる係合部と、複数の分割コアを弾発的に押圧することにより係合部を拡径可能に位置規制する弾発部材とを囲繞体の係合部受容空間内に収容設置されているものとすることができる。
次に、分割コアを用いるようにした受容部材について説明する。
図30~図43は、分割コアを用いるようにした受容部材の変形例を説明する図である。
図30は、アンカー330に取り付けられた受容部材300の縦断面図である。受容部材300は、別体に形成された囲繞部310と受容係合部320を備える。
囲繞部310は、奥側の端部に、アンカー330が着脱自在にねじ嵌合されるようになっている。アンカー330は、図31(A)の縦断面図に示すように、雄ねじ加工された一端部331を有する。アンカー330は、端面側から螺合されることにより囲繞部310に固定され、アンカー330の端面331Aが係合部受容空間311の端面を形成している。アンカー330の外周面にはリブ332が設けられている。又、アンカー330の先端部には、受容部材300に挿入される挿入部材340の先端部を収容するための空間を確保するように、凹部333が設けられている。
尚、アンカー330の先端部に凹部333を設ける代わりに、アンカー330の先端部と受容係合部320との間にスリーブ部材を介在させて、スリーブ部材により、挿入部材340の先端部を収容するための空間を確保するようにしても良い。又、スリーブ部材は、受容係合部320と一体とすることもできる。
囲繞部310は、図31(C)の縦断面図に示すように、受容係合部320の外径Daよりも大きな径Dbを有する円柱状の係合部受容空間311を形成する筒体からなり、図31(B)の縦断面図に示す受容係合部320を係合部受容空間311に収納可能に構成される。
囲繞部310は、受容係合部320の外径Daよりも小さく、図32の縦断面図に示す挿入部材340の挿入係合部341Aの外径Dcよりも大きな径Ddの開口部312が形成された内向きフランジ部313が他端に設けられおり、開口部312を介して係合部受容空間311に挿入部材340の挿入係合部341Aを挿入することができるようになっている。
内向きフランジ部313は、囲繞部310の周壁に対して垂直に設けられるが、周壁と連続するコーナー部を直角に立ち上げたコーナー部には応力が集中するので、コーナー部を曲面で連続させることにより、コーナー部に集中する応力を分散させて耐久性の向上を図るようにしている。勿論、これに限らず、内向きフランジ部313をテーパ状に形成して、内周面が略円錐状、或いは漏斗状の形態を成すように構成してもよい。
囲繞部310の開口部312は、螺合により連結されるアンカー330と囲繞部310の軸心位置を中心とする円形に形成されており、挿入される挿入部材340の軸心位置がずれた場合に挿入部材340の先端部を中心方向に案内するための円錐状のガイド面313Aを有している。
又、内向きフランジ部313には、図33に示すように、アンカー330に対して螺合により連結される囲繞部310を螺進させるための工具を挿入可能な係合凹条部315が開口部312から外周に向かって放射状に形成されている。係合凹状部315は、囲繞部310等をコンクリートに埋設する作業時に、型枠内で生コンを流したときに係合凹条部315内に流入するのを防止するために、外周縁まで連通していない溝又は孔とするのがよい。
更に、囲繞部310は、外周面が先端側から後端側に向かって縮径するようにテーパ状に形成される。即ち囲繞部310は、アンカー330側から軸方向に沿って漸次拡径するように形成される。
挿入部材340は、図32示すように、図30に示す受容部材300の挿入部受容空間321B(図34参照)に挿入される挿入部341と、該挿入部341に螺着により一体化される連接部342を有する。挿入部341は、その外周面に軸方向に垂直な係合面と、先端側に向かって縮径するように傾斜した傾斜面が繰り返し形成された係合面部を有する挿入係合部341Aが設けられている。
挿入部341の先端は、 挿入案内用の傾斜面343を有する円錐台形状に加工されており、更に、挿入部材340を螺進させるための工具である例えば六角レンチが挿入される孔部344が先端中央に設けられている。勿論、挿入部341と連接部342は一体に形成して一部材としたり、別体で形成しておいて溶接等によって一体的に設けることもできる。連接部342の外周面にはリブ342Aが設けられている。
受容係合部320は、図34の断面図に示すように、それぞれ断面が扇形状の三個の分割コア321を巻きバネ322により外周側を弾発的に押圧して位置規制することにより一体化した略円筒形状の筒体からなる。勿論、巻きバネ322による弾発的な押圧力は、位置規制された三個の分割コア321が拡径されて相対位置が変化した際にのみ発生するように構成してもよいことは言うまでもない。
この巻きバネ322は、三個の分割コア321を周方向に並べて成る円筒の外径よりも小さな内径の略円筒形状に形成されており、弾発力に抗して拡径された状態で三個の分割コア321が収納配置されることにより、三個の分割コア321に巻設状態に配置される。尚、拡径時にのみ弾発的な付勢力が作用するように構成する場合には、三個の分割コア321の外径と巻きバネ322の外径は、概ね一致する設定としてもよい。
巻きバネ322は、例えば、図35(A)の端面図、図35(B)の側面図に示すように、板状のバネ材を側縁部がオーバラップするように円筒形状に湾曲させてなり、一方の側縁部を内向きに折り曲げた係止片322Aを有している。なお、巻きバネ322は、分割コア321に巻き付けた際に側縁部がオーバラップすると、間隙が異径化してしまう上、分割コア321の外周に作用する押圧力のバランスが悪化する。従って巻きバネ322は、分割コア321に巻き付けた状態では図34に示すように拡径して端部が重ならないようにしてある。
巻きバネ322が巻き付けられた三個の分割コア321は、係止片322Aにより周回り方向に位置規制された状態で外周側が弾発的に押圧され位置規制され、巻きバネ322の弾発力に抗して拡径可能に一体化された略円筒形状の筒体からなる受容係合部320を構成する。
ここで、受容係合部320を構成する三個の分割コア321は、図36(A)の端面図、図36(B)の横断面図に示すように、基本的に中心角が略120°の扇形の断面形状を有するものであって、周方向に円筒が三分割された構成であるが、これに限定されるものではなく、二分割であっても、四以上に分割されていてもよい。なおここでの分割コア321は、係止片322Aの厚みt相当分だけ円周方向の側面が削られている。
係止片322Aの厚みt相当分の削量は、図34に示す受容係合部320では、三個の分割コア321の内の一つだけ削るようにしている。厚みt相当分の削量を等分に分配して三個の分割コア321を全て削ることにより、中心角を一致させるようにしても良い。
板状のバネ材を側縁部を全長に亘って折り曲げた係止片322Aを採用する場合には、三個の分割コア321の内の少なくとも一個の中心角を120°よりも小さくする必要があるが、板状のバネ材の側縁部の全長の一部分を折り曲げた係止片322Aとすれば、係止片322Aによる周回り方向の位置規制機能を確保することができる。この場合、少なくとも一個以上の分割コア321に係止片322Aに対応する溝を形成すればよく、三個の分割コア321の全てを基本的な中心角が120°の扇形の断面形状を有するものとすることができる。勿論、巻きバネ322の周方向の端部の係止片322Aは、必ずしも設ける必要はなく、設けない場合には、巻きバネ322に対する分割コアの配置の位相決めは出来なくなるものの、分割コア321の中心角は120°に設定することも可能である。
巻きバネ322が巻き付けられた三個の分割コア321により構成される円筒形状の筒体からなる受容係合部320は、筒体の内周面が挿入部材340の挿入係合部341の外形に一致する係合面部321Aとなっており、係合面部321Aにより囲繞された収容空間321Bを有する。三個の分割コア321には、筒体の内周面に相当する面に、係合面部321Aとなる、軸方向に垂直な係合面と、接合面側から奥側に向かって縮径するように傾斜した傾斜面が繰り返し形成されている。
囲繞部310は、図30に示すように、係合部受容空間311内に受容係合部320を収納した状態で、アンカー330に対して螺合される。
受容係合部320は、その外径Daよりも大きな径Dbを有する円柱状の係合部収納空間311に収納されることにより、係合部受容空間311内で移動自在即ち偏心自在に配設される。
そして、受容係合部320は、挿入部材340の挿入部341が挿入される開口部320Aに、挿入される挿入部341の軸心と一致するように受容係合部320の軸心を案内するセンタリング案内用の、挿入方向に向かって縮径する案内面を有し、挿入部341の挿入により、挿入部341の軸心と受容係合部320の軸心を自発的に一致させて、挿入部材340の挿入位置誤差を吸収し得るように構成されている。ここで、開口部320Aの案内面は、挿入の向きに沿って縮径する円錐状の傾斜面320Bを成すように設けられているが、特に限定されるものではなく、例えば、湾曲した傾斜を成すものであってもよい。
受容係合部320の開口部320Aに設けられた傾斜面320Bは、囲繞部310の開口部312を介して係合部受容空間311内に挿入される挿入部材340の軸心位置がアンカー330の軸心位置と外れた偏心状態に在る場合に、受容係合部320の開口部320Aへの挿入部材340の先端部の挿入に伴い、受容係合部320を移動させて、挿入部材340が挿入される受容係合部320の開口部位置を挿入部材340の軸心位置と一致させる案内として機能する
又、この受容部材300における受容係合部320は、挿入部材340の挿入により突破可能な防錆フィルム325により全体が被覆されることにより、防錆処理が施されている。
ここで、鉄鋼製の受容係合部320では、空気中の水分が表面と接触すると、水分に溶け込んだ空気と電気的な反応が始まり、徐々に鉄がイオン化して水分中に溶け出していき、その後、イオン化した鉄は水分中の水酸化物イオンと結合して水酸化鉄となって金属の表面に錆として出てくること等により、耐久性が劣化する虞がある。
特に、野ざらしの状態で保管された場合には、錆による劣化が進行する虞があるが、受容係合部320に防錆処理を施しておくことにより、錆による劣化を防止して、本来の耐久性能を確保することができる。
防錆フィルム325により全体を被覆するのではなく、防錆塗料で受容係合部320をコーティングするにようにしてもよく、少なくとも受容係合部320の係合面部321Aに防錆処理を施しておくことにより、錆による受容係合部320の劣化を有効に防止して、本来の耐久性を確保することができる。
なお、囲繞部310の開口部312を閉塞するシーリング部材として、該開口部312の内側及び/又は外側にシール、キャップ等の水分進入を防止する防水部材を配設することで水密性、防水性を確保してもよい。
ここで、挿入部材340は、図37(A)に示すように、アンカー330に螺着により一体化された囲繞部310の内向きフランジ部313に形成されている開口部312に、挿入部341の先端が挿入され、開口部312を介して囲繞部310内の係合部受容空間311に挿入されることにより、図37(B)に示すように、囲繞部310の係合部受容空間311内に収納されている受容係合部320を被覆している防錆フィルム325を突き破って受容係合部320の挿入部受容空間321B内に挿入される。
この受容部材300における受容係合部320は、上述の如く、巻きバネ322が巻き付けられた三個の分割コア321により、巻きバネ322の弾発力に抗して拡径可能に一体化された円筒形状の筒体として構成されているので、挿入部材340の挿入部341の先端が受容係合部320の挿入部受容空間321B内に挿入されることにより拡径する。即ち、上記巻きバネ322の弾発力による弾発的な締め付け力によって位置規制される上記三個の分割コア分割コア321は、挿入部材340の挿入部341の先端が受容係合部320の挿入部受容空間321B内に挿入されると、受容係合部320の係合部側の係合面部が挿入部材340側の係合面部と干渉することにより、上記三個の分割コア321Aは、上記巻きバネ322の弾発力による弾発的な締め付け力に抗して移動して拡径した状態になり、挿入部材340側の係合面部の頂点が上記受容係合部320側の係合面部の頂点を超えると、受容係合部320側の係合面部が挿入部材340側の係合面部との干渉が解除され、上記三個の分割コア321Aは、上記巻きバネ322の弾発力による弾発的な締め付け力弾発力により戻って縮径した状態になる。その結果、図38に示すように、挿入部材340の挿入部341の先端を挿入部受容空間321Bの奥の終端位置まで極めて小さな挿入荷重(例えば、0.3kN以下)によって容易に挿入することができる。
挿入部受容空間321Bの奥の終端位置まで先端が挿入された挿入部材340の挿入部341は、受容係合部320が巻きバネ322の弾発力により外周面が弾発的に位置規制された縮径状態となることにより、その挿入係合部341Aが受容係合部320の係合面部321Aに確実に係合する。
囲繞部310の係合部受容空間311内に収納されている受容係合部320は、挿入部受容空間321B内に挿入部材340の挿入部341の先端が挿入されて防錆フィルム325が破られるまで、防錆フィルム325により被覆されているので、保管期間に錆による劣化を生じることがなく、所定の耐久性を発揮することができる。
又、囲繞部310の内向きフランジ部313に形成されている開口部312は、円錐状のガイド面313Aを有しており、挿入部材340の挿入部341の先端には、先端側が縮径した円錐状の傾斜面343が設けられているので、螺着により連接部342と一体化された挿入部材340の挿入部341の先端をアンカー330に螺着により一体化された囲繞部310の内向きフランジ部313に形成されている開口部312に挿入する際に、挿入部341の軸心が開口部312の中心から外れていた場合には、挿入部材340の挿入部341の先端に設けられた傾斜面343が内向きフランジ部313側の開口部312のガイド面313Aによって案内される。従って、挿入部材340の挿入部341の先端を内向きフランジ部313側の開口部312に容易に挿入することができる。
更に、挿入部材340の挿入部341の先端が内向きフランジ部313側の開口部312を介して挿入される囲繞部310の挿入部受容空間321B内には、受容係合部320が径方向に移動自在即ち偏心自在に設けられており、受容係合部320の開口部320Aに円錐状の傾斜面320Bに設けられているので、受容係合部320の開口部320Aへの挿入部材340の先端部の挿入に伴い、挿入部材340の挿入部341の先端に設けられた傾斜面343によって受容係合部320の開口部320Aに円錐状の傾斜面320Bが案内され、受容係合部320を径方向に自動的に移動させて、挿入部材340が挿入される該受容係合部320の開口部位置を挿入部材340の軸心位置に一致させることができる。
即ち、この受容部材300は、受容係合部320に挿入される挿入部材340の軸心に対して回転対称形状の内周面を有しているので、アンカー330の軸心位置から径方向の何れの向きに外れた状態にあっても、挿入部材340の挿入により、挿入部材340の軸心と受容係合部320の軸心を一致させるセルフセンタリング機能を有する。
挿入部材340は、その軸心S1位置がアンカー330の軸心S2位置と一致する状態で、囲繞部310の開口部312を介して収納空間311内に挿入された場合には、図39に示すように、収納空間311内において周囲に均等な空間を有する位置状態に受容係合部320が自動的に調心された状態で挿入完了となる。挿入完了状態では、受容部材300に挿入された挿入部材340の先端部は、アンカー330の先端部に設けられている凹部333により確保された空間に収容されている。
又、図40(A)や図40(B)に示すように、挿入部材340の軸心S1位置が、アンカー330の軸心S2位置と外れた状態で、囲繞部310の開口部312を介して収納空間311内に挿入された場合には、図41(B)に示すように、挿入された挿入部材340に軸心位置に受容係合部320の開口部位置を一致させ、係合部収納空間311内において周囲に不均等な空間を有する位置状態に受容係合部320が自動的に調心された状態で挿入完了となる。
図40(A)、図40(B)、図41(B)には、紙面上において、挿入部材340の軸心S1位置がアンカー330の軸心S2位置の下側に外れた場合を状態が示されている。
図41(A)には、紙面上において、挿入部材340の軸心S1位置がアンカー330の軸心S2位置の上側に外れた状態で挿入された場合の挿入完了状態が示されている。
従って、囲繞部310の開口を介して収納空間311内に挿入される挿入部材340の軸心S1位置がアンカー330の軸心S2位置と外れた偏心状態に在る場合にも、囲繞部310の係合部受容空間311内に収納されている受容係合部320の挿入部受容空間321B内に挿入部材340を容易に挿入することができる。
ところで、受容部材300における囲繞部310は、内向きフランジ部313に開口部312から外周に亘って放射状に形成された係合凹条部315に工具を係合させ、アンカー330の軸心回りの順方向に囲繞部310を回転させることにより螺進させて、アンカー330に螺合することができる。
又、係合部受容空間311内に受容係合部320を収納した状態で、アンカー330に螺合される囲繞部310は、係合凹条部315に工具を係合させ、アンカー330の軸心回り逆方向に囲繞部310を回転させることにより螺退させてアンカー330から、取り外すこともできる。
そして、この受容部材300の使用時には、係合部受容空間311内に受容係合部320を収納した状態でアンカー330に螺合により連結された囲繞部310がアンカー330と共にプレキャストによるコンクリート体に埋設される。
工事現場や工場等において、受容部材300をアンカー330と共に埋設した後で、囲繞部310の係合部受容空間311内に収納した受容係合部320が破損していた場合や逆向に配設されていた場合等の不具合が発見された場合にも、挿入部材340を挿入するための開口部312を有する内向きフランジ部313は、挿入部材340の挿入完了前であれば、図42に示すように、その外表面は露出されているので、挿入部材340の挿入作業を中止して、受容部材300をアンカー330から取り外して、受容係合部320を交換するなどの対策をとることができる。
しかも、この受容部材300における囲繞部310は、内向きフランジ部313とは反対側の端部の外径よりも該内向きフランジ部313側の端部の外径が大きいテーパ状の外周面310Aを有しているので、埋設後であっても、工具500を用いてアンカー330の軸心回り逆方向に囲繞部310を回転させることにより螺退させて、アンカー330から簡単に取り外すことができる。
このように、囲繞部310は、受容係合部を係合部受容空間311に収納した状態でアンカー330に螺着され埋設された状態で露出される内向きフランジ部313の外側面に、当該囲繞部310を螺退させるための工具500を挿入可能なロック解除用の係合凹部を有し、内向きフランジ部313とは反対側の外径よりも該内向きフランジ部313側の外径が大きいテーパ状の外周面310Aを有することにより、工具500を用いて容易に螺退させることができ、アンカー330に螺着され埋設された状態であってもアンカー330から取り外すことができる。
なお、放射状に形成された係合凹条部315に代えて、内向きフランジ部313の開口部312の回りに同心円上に複数の係合凹条部を半径方向に分散させて設けるようにしてもよい。又、係合凹条部の代わりに溝や丸い穴等の工具に適合した各種形状の凹部を設けるようにしても良い。
図43、図44は、アンカーを備えた受容部材の変形例を説明する図である。図43に示す受容部材400は、別体に形成された囲繞部410と受容係合部420を備える。囲繞部410は、係合部420を収容する係合部受容空間411を形成する筒体からなる。囲繞部410は、奥側の端部に、一端部431がねじ加工されたアンカー430に螺合により着脱自在に連結されるようになっている。アンカー430は、端面側から螺合されることにより囲繞部410に固定され、アンカー430の端面431Aが係合部受容空間411の端面を形成している。
そして、囲繞部410は、挿入部材440が挿入される開口部412が形成された内向きフランジ部413が手前側の端に設けられおり、開口部412に連通する係合部受容空間411に挿入部材440の挿入部441を挿入することができるようになっている。
内向きフランジ部413は、囲繞部410の周壁に対して垂直に設けられるが、周壁と連続するコーナー部を直角に立ち上げたコーナー部には応力が集中するので、コーナー部を曲面で連続させることにより、コーナー部に集中する応力を分散させて耐久性の向上を図るようにしてもよい。
ここで、挿入部材440は、図3に示したものと同様な部材であって、受容部材400の挿入部受容空間421Bに挿入される挿入部441と、挿入部441に続く円形断面の支持部442と、支持部442よりも大きい円形断面の頭部443により構成されている。挿入部441は、支持部442と略同径の円形断面であり、その外周面に軸方向に垂直な係合面と、先端側に向かって縮径するように傾斜した傾斜面が繰り返し形成された係合面部を有する挿入係合部441Aが設けられている。
この受容部材400における受容係合部420は、図44に示すように、テーパ状の外周面を有する係合部421と、係合部421の外周面と一致するテーパ状の内周面を有する筒状体422と、 弾発的に押圧する弾発部材423からなる。
係合部421は、テーパ状の外周面を有する筒状体を軸方向に分割した複数の分割コア421Aにより構成されている。
具体的には、円錐台形状の外形の筒状部材を軸方向に三分割した三個の分割コア421Aからなり、小径外周側端部から大径外周側端部に向かって、挿入部材440が挿入される挿入部受容空間421Bを形成する内周面を係合面部とし、円錐台形状の外形を成すように構成されている。
筒状体422は、外周面が円筒状を成し内周側は、上記係合部421の外周面に一致する円錐台形状の内周面により形成される受容空間422Aに上記係合部421を収容可能に構成される。
弾発部材423は、上記筒状体422の受容空間422Aに収納される上記係合部421の大径外周側端部に配され、上記係合部421を大径外周側の端部側から小径外周側の端部側に向かって弾発的に押圧する。
弾発部材423には、スリット付き皿座金が用いられているが、この限りではない。
受容係合部420は、囲繞部410の係合部受容空間411内に上記筒状体422を収容し、該筒状体422の内周面により形成される受容空間422Aに三個の分割コア421Aを収納配置することにより円錐台形状の外形を有する係合部421を構成し、係合部421の大径外周側の端部側に弾発部材423としてスリット付き皿座金を配置した状態で、上記囲繞部410にアンカー430を開口端面側から螺合することによって、囲繞部410の係合部受容空間411内に設置される。
囲繞部410の係合部受容空間411内に設置された受容係合部420は、係合部受容空間411の端面を形成するアンカー430の端面431Aの周縁部により、弾発部材423としてスリット付き皿座金の周縁部が上記係合部421の大径外周側の端部側から小径外周側の端部側に向かって押圧された状態になり、弾発部材423の弾発力によって、上記係合部421が弾発的に押圧されることにより、上記係合部421の外周面が上記筒状体422の内周面に密着する状態で三個の分割コア421Aが保持されている。
そして、弾発部材423の弾発力によって弾発的に位置規制される三個の分割コア421Aは、上記受容係合部420に挿入部材440が挿入されると、受容係合部420の係合部側の係合面部が挿入部材440側の係合面部と干渉することにより、三個の分割コア421Aは、弾発部材423の弾発力に抗して係合部421の大径外周側の端部側に移動され、係合部421の外周面が筒状体422の内周面に摺接しながら拡径する。
挿入部材440側の係合面部441Aの頂点が受容係合部420側の係合面部421Aの頂点を超えると、受容係合部420側の係合面部421Aが挿入部材440側の係合面部441Aとの干渉が解除され、三個の分割コア421Aは、弾発部材423の弾発力により一斉に係合部420の小径外周側の端部側に戻されて縮径状態となる。
挿入部材440の挿入部441は、その係合面部441Aの頂点が受容係合部420側の係合面部421Aの頂点を次々に超えて、奥まで挿入されて、受容係合部420と連結される。