次に本発明の一実施形態である接合手段1について説明する。説明の便宜上「上」及び「下」という表現を用いるが、接合手段1が使用される状態での上下とは必ずしも一致しない。図1は本発明の一実施形態に係る接合手段1の斜視図である。接合手段1は例えば第一部材(被接合体)に埋設される受容部材10と、例えば第二部材(被接合体)に埋設される挿入部材20とを備えている。本発明の一実施形態に係る接合手段1は、受容部材10と、挿入部材20とを備え、受容部材10は、開口部12と、該開口部12に連通した受容空間11と、該受容空間11を内側面によって囲繞する略筒状を成す外側面を有する囲繞部13と、該内側面に半径方向内側に向かって凸状に設けられる受容側係合条状部14を有し、挿入部材20は、受容空間11に挿入し得る挿入部21と、該挿入部の外面に半径方向外側に向かって凸状に設けられる挿入側係合条状部22を有し、受容空間11に対して挿入部21を挿入すると、受容側係合条状部14と挿入側係合条状部22とが、少なくとも一箇所以上の交差部を作出し、この交差部において該受容側係合条状部14と該挿入側係合条状部22とが、挿入方向に対する直交方向において干渉して弾性変形及び/又は塑性変形することで、受容部材10と挿入部材20が互いに嵌合するように構成される。なお、交差部とは、例えば、受容側係合条状部14と挿入側係合条状部22とが平行以外の角度(0度以外の角度)をもって、当接又は押圧されるような状態で重なっている状態をいう。
図2は、本発明の一実施形態に係る接合手段の受容部材10の構造を示す図で、(A)は側面図、(B)は正面図である。図2(A)に示すように、受容部材10は、接合面側端面15が接合面101aと一致するように全体が第一部材101に埋設されている。また、受容部材10の内部には、受容空間11が形成されている。受容空間11の断面形状は例えば、略円形である。図2(A)、(B)の上下方向の寸法(以下、この方向の寸法を「高さ」又は「厚さ」という)は、受容部材10の挿入方向に沿って略同一であるが、厚さは例えば、接合面101aの位置で最も大きく接合面から離れるのに従って徐々に小さくなっていくようにしても良い。
受容空間11は接合面101aに開口し、断面形状が略円形の開口部12が形成されている。尚、開口部12の形状は、挿入部材20を挿入することができればどのような形状でもよいが、例えば、矩形、多角形であっても良い。勿論、受容部材10の断面形状と、挿入部材20の断面形状は同じであることが好ましいが、挿入部材20が受容部材10に挿入可能であれば特に限定はされない。
図2(A)、(B)に示すように、受容部材10の受容空間11には1以上の受容側係合条状部14が設けられる。また、受容部材10の外形は、受容空間11を形成することができ、所用の強度を得ることができれば、例えば、直方体、多角形柱、円柱形等のどのような形状としても良い。
図3は、本発明の一実施形態に係る接合手段の挿入部材の形状を説明する図である。挿入部材20は、第二部材102に埋設されている埋設部23と接合面102aから突出している挿入部21とを備えている。挿入部材20は、例えば、円筒状の挿入部21及び埋設部23と、埋設部23の一端に埋設部23と垂直に接合された、板状の頭部24により構成されている。そして、挿入部21の外面25には1以上の挿入側係合条状部22が形成されている。
受容部材10及び/又は挿入部材20の材料は、所望の強度、製造コスト、第一部材と第二部材が使用される環境条件等に応じて種々のものを使用することができ、例えば、金属、合成樹脂、木、紙、ガラス、セラミックス、ゴムなど適宜の材料を用いて適宜の製造方法で形成することが可能である。
次に図4(A)〜(C)を参照して、本発明の一実施形態に係る接合手段1による部材の接合方法について説明する。ここでは受容部材10が埋設された既設の第一部材101に、挿入部材20が埋設された第二部材102を接合するものとして説明する。
まず図4(A)に示すように、第二部材102を第一部材101の接合面101aと第二部材の接合面102aが平行になり、受容部材20の中心軸と挿入部材10の中心軸がほぼ一致するように配置する。
この状態から、矢印Aのように、第二部材102を接合面101a、102aに垂直な方向に移動させて、挿入部材20の挿入部21を受容部材10の開口部12から受容部材10の受容空間11内に挿入する。第二部材102を同方向に更に移動すると、挿入部材20の挿入部21の外面25に設けられた1以上の挿入側係合条状部22が、受容部材10の受容空間11に設けられた1以上の受容側係合条状部14と、少なくとも一箇所以上の交差部を作出し、この交差部において該受容側係合条状部14と該挿入側係合条状部22とが、挿入方向に対する直交方向において干渉して弾性変形及び/又は塑性変形していく。
第一部材101の接合面101aと第二部材102の接合面102aを当接させると、図4(C)のように、挿入片21の先端が受容空間11の端面の近傍に到達し、接合手段1が形成される。受容部材10の全ての受容側係合条状部14と挿入部材20の全ての挿入側係合条状部22が少なくとも一箇所以上の交差部を作出し、この交差部において該受容側係合条状部14と該挿入側係合条状部22とが、挿入方向に対する直交方向において干渉して弾性変形及び/又は塑性変形する。そのため、受容部材10と挿入部材20は互いに嵌合し、接合面101a、102aに引張力が作用しても、挿入部21は開口部12から抜け出すことがない。また、この例では、挿入部21の挿入側係合条状部22を含めた外径は、受容部材10の受容側係合条状部14を含めた内径とほぼ等しくしてあるので、挿入側係合条状部22は、ほぼ全長に亘って外面が受容空間11の受容側係合条状部14に密着した状態となる。そのため、引張力に対する抵抗力が更に高くなっている。
接合手段1の配置方向は、縦配置及び横配置の他、接合面の形状や施工条件に応じて任意の方向とすることができる。
接合手段1によれば、受容部材10の受容側係合条状部14と挿入部材20の挿入側係合条状部22が少なくとも一箇所以上の交差部を作出し、この交差部において該受容側係合条状部14と該挿入側係合条状部22とが、挿入方向に対する直交方向において干渉して弾性変形及び/又は塑性変形することで、受容部材10と挿入部材20が互いに嵌合し、引き抜き抵抗をより増加させることができる。
図1〜4に示した、接合手段1の各部の形状は様々に変形することができる。以下に接合手段1の変形例について説明する。各変形例は、矛盾が生じるものでない限り任意に組み合わせて実施することができる。
図5(A)〜(D)は、本発明の一実施形態に係る接合手段の受容側係合条状部の断面形状の変形例を説明する図であり、受容部材の開口部を正面に見たときの図である。受容部材10a、10b、10c、10dの断面形状として、断面視略台形状の受容側係合条状部14a(図5(A))、断面視略矩形状の受容側係合条状部14b(図5(B))、断面視略半円状の受容側係合条状部14c(図5(C))、断面視略三角形状の受容側係合条状部14d(図5(D))等が挙げられる。図示はしないが、挿入部材20における挿入側係合条状部22の断面形状についても同様である。勿論、形成可能な条状部であれば、図5(A)〜(D)に示す断面形状に限定されない。
上記形状の中では、図5(A)の断面視略台形状や図5(B)の断面視略矩形状の条状部を用いることが好ましい。受容側係合条状部14や挿入側係合条状部22にこれらの形状を用いると、受容部材10に挿入部材20を挿入し、受容側係合条状部14と挿入側係合条状部22が少なくとも一箇所以上の交差部を作出し、この交差部において該受容側係合条状部14と該挿入側係合条状部22とが、挿入方向に対する直交方向において干渉して弾性変形及び/又は塑性変形することで、受容部材10と挿入部材20が互いに嵌合された際に交差部が一定以上の面積を有することとなり、交差する部分の面積が比較的少ない断面視略半円状(図5(C))や断面視略三角形状(図5(D))の場合と比べて、弾性変形及び/又は塑性変形による引き抜き抵抗をより増加させることができる。
なお、図5(A)〜(D)においては、等間隔に4本の受容側係合条状部14a、14b、14c、14dが形成されているが、これらの本数、間隔に限定されるわけではない。受容側係合条状部14及び/又は挿入側係合条状部22の本数が増加すれば、受容部材10に挿入部材20を挿入した際の受容側係合条状部14と挿入側係合条状部22との交点や交差面(面積の合計)が増加するため、引き抜き抵抗は増加する。したがって、必要とする抵抗力と条状部形成の製造コスト及び、例えば歪みゲージ等によって検出されたる歪みの度合い等を適宜勘案し、受容側係合条状部14及び/又は挿入側係合条状部22の本数及び間隔を決定すればよい。受容側係合条状部14と挿入側係合条状部22の条状部の断面形状、本数、条状部の間隔は必ずしも同じでなくても良い。
図6(A)〜(D)は、本発明の一実施形態に係る接合手段の受容側係合条状部の変形例を説明する図である。本発明の一実施形態に係る接合手段の受容側係合条状部14eは、図6(A)に示すように受容部材10eの挿入方向に平行な向きに例えば複数本形成される。或いは、図6(B)に示すように、受容側係合条状部14fは、受容部材10fの挿入方向に対して所定の角度(鋭角乃至鈍角)を有し、斜め方向に複数本形成されていても良い。この場合、挿入側係合条状部22に対して例えば鋭角をなして少なくとも一箇所以上の交差部を作出し、この交差部において該受容側係合条状部14と該挿入側係合条状部22とが、挿入方向に対する直交方向において干渉して弾性変形及び/又は塑性変形することで、受容部材10と挿入部材20が互いに嵌合されるため、交差部の面積が垂直に交差する場合よりも大きくなり、弾性変形及び/又は塑性変形による引き抜き抵抗をより増加させることができる。
或いは、図6(C)に示すように、受容側係合条状部14gは、受容部材10gの挿入方向に対して垂直な方向成分をもって複数本形成されていても良い。或いは、図6(D)に示すように、受容側係合条状部14hは、受容部材10hに螺旋状に延在して形成されていても良い。図6(D)のように、螺旋状の条状部を形成する場合には、条状部の本数は1本でも良い。
図7(A)〜(D)は、本発明の一実施形態に係る接合手段の挿入側係合条状部の変形例を説明する図である。本発明の一実施形態に係る接合手段の挿入側係合条状部22aは、図7(A)に示すように挿入部材20aの挿入方向に対して垂直な方向成分をもって例えば複数本形成される。或いは、図7(B)に示すように、挿入側係合条状部22bは、挿入部材20bに螺旋状に延在して形成されていても良い。或いは、図7(C)に示すように、挿入側係合条状部22cは、挿入部材20cの挿入方向に対して平行となるように複数本形成されていても良い。或いは、図7(D)に示すように、挿入側係合条状部22dは、挿入部材20dの挿入方向に対して所定の角度(鋭角乃至鈍角)を有し、斜め方向に複数本形成されていても良い。
このように、受容側係合条状部14及び挿入側係合条状部22は、例えば、それぞれ図6(A)〜(D)及び図7(A)〜(D)から適宜選択される。尚、受容側係合条状部14及び挿入側係合条状部22が何れも螺旋状の場合には、受容側係合条状部14及び挿入側係合条状部22とで螺旋の向きを逆に形成しておくことが好ましい。これにより、挿入部材20を受容部材10に挿入した際に螺旋が交差するため、より抜けにくくなる。受容部材10に挿入部材20を挿入した際に、受容側係合条状部14と挿入側係合条状部22が少なくとも一箇所以上の交差部を作出し、この交差部において該受容側係合条状部14と該挿入側係合条状部22とが、挿入方向に対する直交方向において干渉して弾性変形及び/又は塑性変形することで、受容部材10と挿入部材20が互いに嵌合するものであればどのような組み合わせでもよく、或いは、図6(A)〜(D)や図7(A)〜(D)以外の態様であってもよい。受容側係合条状部14及び挿入側係合条状部22は、例えば、鋳造、射出形成、プレス形成、鍛造、タップ等の器具や装置による形成等により形成される。
図8(A)〜(C)は、本発明の一実施形態に係る接合手段の受容部材の変形例を説明する断面図である。なお、図を簡略化するために、受容側係合条状部14i、14j、14kを図8(A)〜(C)中における受容部材本体16i、16j、16kの内面の上部と下部に示し、それ以外の条状部は省略している。また、図9(A)〜(C)は、本発明の一実施形態に係る接合手段の挿入部材の変形例を説明する断面図であり、図9(B)、(C)は、挿入側係合条状部の部分を拡大した図である。
本発明の一実施形態に係る接合手段の受容部材10iは、図8(A)に示すように、受容部材本体16iの開口部側の端部が外側に拡径するように広がった導入部31を有していてもよい。このような導入部31を有することにより、挿入部材を挿入し易くなる。同様に、本発明の一実施形態に係る接合手段の挿入部材20eは、図9(A)に示すように、挿入部21の先端が略テーパ状となった導入部33を有していてもよい。これにより、挿入部材20e側からも挿入し易くなる。
或いは、本発明の一実施形態に係る接合手段の受容部材10jは、図8(B)に示すように、受容側係合条状部14iの開口部側の端部が外側に拡径するように広がった導入部32を有していてもよい。受容側係合条状部14iの開口部側の端部が外側に拡径することにより、挿入部材の挿入側係合条状部が導入し易くなる。同様に、本発明の一実施形態に係る接合手段の挿入部材20fは、図9(B)に示すように、挿入部21fに設けられた挿入側係合条状部22f1、22f2、22f3のうち、挿入部材20fの先端側の挿入側係合条状部22f1の挿入方向側の端部が略テーパ状となった導入部34を有していてもよい。これにより、挿入部材20f側からも挿入し易くなる。なお、導入部34は他の挿入側係合条状部22f2、22f3に設けられても良い。
或いは、本発明の一実施形態に係る接合手段の受容部材10kは、図8(C)に示すように、受容側係合条状部14kが開口部側の端部に向かって所定の角度θで拡径するように広がっていてもよい。また、このとき、本発明の一実施形態に係る接合手段の挿入部材20gは、図9(C)に示すように、挿入部に設けられた挿入側係合条状部22g1、22g2、22g3の端面35が所定の角度θで挿入部の端部から拡径するように広がっていてもよい。受容側係合条状部14k及び挿入側係合条状部22g1、22g2、22g3をこのような形状とすることで、挿入部材20gを受容部材10kに挿入し易くなるとともに、少なくとも一箇所以上の交差部を作出し、この交差部において該受容側係合条状部と該挿入側係合条状部とが、挿入方向に対する直交方向において干渉して弾性変形及び/又は塑性変形することで、受容部材と挿入部材が互いに嵌合させて、弾性変形及び/又は塑性変形による引き抜き抵抗を増加させることができる。
図10は、本発明の一実施形態に係る接合手段の受容部材の変形例の形状を説明する図である。図10の例も、接合面に開口した受容空間を有し、受容空間の内面に複数の受容側係合条状部を有する点は図2の受容部材10と共通しているが、外面に受容部材自体が第一部材から抜け出すのを防止するための抜け出し防止機構が設けられている。なお、図10においては受容側係合条状部は省略しているが、上述した実施形態の何れかの形態の受容側係合条状部が受容空間の内面に形成されている。
図10は受容部材10mの断面図である。図10に示す受容部材10mは、その外面に、例えば、略台形状の凸部40を複数設けている。凸部40は、外周の全周に亘って連続して環状に設けても良いし、不連続に設けても良い。凸部40を設けることによって、受容部材10mは、第一部材との付着に加えて凸部40と第一部材を構成する材料との係合が生じることによって、一層抜け出しにくくなっている。例えば、凸部40は、断面を二等分した丸鋼や異形鉄筋を受容部材10mの外面に溶接等により接合してもよい。なお、凸部40は、受容部材10mの外面から突出し、第一部材と係合できれば、図10に示したものと形状、数が異なっていても良い。
図11も、本発明の一実施形態に係る接合手段の受容部材の変形例の形状を説明する図である。図11に示す例も、接合面に開口した受容空間を有し、受容空間の内面に複数の受容側係合条状部を有する点は図2の受容部材10と共通しているが、各部を別体に制作してから接合している点が異なっている。受容部材10nの材質によっては、このようにした方が製造が容易になる。
図11は受容部材10nの断面図である。受容部材10nは、本体部材51、蓋部材52を別体としている。すなわち、蓋部材52を本体部材51に接合している。或いは、本体部材51も挿入方向に2分割したものを接合したものであってもよい。受容部材10nにおいては、蓋部材52、本体部材51の相互の接合は、溶接、接着、ボルト止め等任意の方法によることができる。
図12も、本発明の一実施形態に係る接合手段の受容部材の変形例の形状を説明する図である。図12に示す受容部材10oでは、外形を直方体とし、内部に接合面側に開口部12oを有する受容空間を形成している。受容空間の形状は、図2に示したものと同様である。このように、図2に示したものと同様の受容空間を形成することができ、所望の強度を有するものであれば、受容部材10oの外形に制約はなく、例えば、円筒形、立方体、多角柱状等の任意の形状とすることができる。
図13(A)〜(E)も、本発明の一実施形態に係る接合手段の受容部材の変形例の形状を説明する図である。何れの例も、接合面に開口した受容空間を有し、受容空間の内面に複数の受容側係合条状部を有する点は図2の受容部材10と共通しているが、第一部材はコンクリート等の流動性材料を固化させて形成されるものであり、アンカを設けて引き抜き抵抗を増大させている点が異なっている。なお、図13(A)〜(E)においても受容側係合条状部は省略しているが、上述した実施形態の何れかの形態の受容側係合条状部が受容空間の内面に形成されている。
図13(A)に平面図を示す受容部材10pでは、受容部材本体16の端面19側からアンカ60が螺合されている。すなわち、受容部材本体16の端面19側にネジ部18bを設け、同様にアンカ60の一端にもネジ部60aを設けることで、受容部材本体16にアンカ60を螺合することができる。アンカ60には、適宜条状部41を設けても良い。アンカ60の材料は、金属、合成樹脂等任意のものを用いることができる。
図13(B)に平面図を示す受容部材10qでは、受容部材本体16の端面19に二本の直線状のアンカ61を設けている。また、図13(C)に平面図を示す受容部材10rでは、受容部材本体16の端面19にU字状のアンカ62を設けている。アンカ61、62としては例えば異形鉄筋を用いることができるが、所要の付着力が得られれば、材質、形状、本数、取付位置は、任意に変更することができる。また、アンカ61、62には、適宜条状部42、43を設けても良い。アンカ61、62の受容部材本体16の端面19への固定としては、溶接の他、ねじ部を設けて螺合しても良い。
図13(D)に平面図、図13(E)に側面図を示す受容部材10sでは、枡形アンカ65を設けている。枡形アンカ65は、平板状の端板66と、端板66の両端に端板66に対して垂直方向に設けられた二枚の側板67で構成されている。側板67の端板66と接続されていない端部が、それぞれ、奥側部材70の端面に接合され、枡形アンカ65と奥側部材70によって、上下が開口した空間68が形成されている。また、奥側部材70の他端面には受容部材本体16が接合される。受容部材10sは、流動性の材料が注入される前に型枠内に固定され、材料が注入されると空間68にも材料が流入して他の部分と一体に固化する。そのため、側板67の外面が材料と付着すると共に、端板66が空間68に注入された材料と係合し、一層引き抜き抵抗を増大させることができる。この例では、端板66と側板67を一体としたが、別体に作成してから接合しても良い。また、空間68を形成し、この部分に流入した材料と係合する端板66を備えるものであれば、図13(D)、(E)とは異なる形状とすることができる。枡形アンカ65の材料は、金属、合成樹脂等任意のものを用いることができるが、第一部材の材料と付着し易いものが好ましい。
図14(A)〜(D)も、本発明の一実施形態に係る接合手段の受容部材の変形例の形状を説明する図である。何れの例も、接合面に開口した受容空間を有し、受容空間の内面に複数の受容側係合条状部を有する点は図2の受容部材10と共通しているが、奥側部材を兼ねるアンカを備えていることが異なっている。なお、図14(A)〜(D)においても受容側係合条状部は省略しているが、上述した実施形態の何れかの形態の受容側係合条状部が受容空間の内面に形成されている。
図14(A)に側面図、図14(B)に平面図を示す受容部材10tは、板状アンカ72を備えている。板状アンカ72は、その一端19には、受容部材本体16が接続されている。即ち、板状アンカ72の一端は受容部材10tの奥側部材を兼ねている。板状アンカ72と受容部材本体16の接続は、溶接、接着、ボルト止め等任意の方法によることができる。板状アンカ72の材料は、金属、合成樹脂等任意のものを用いることができるが、第一部材の材料と付着し易いものが好ましい。また、板状アンカ72は1以上の条状部73を更に有していることが好ましい。このような構成とすることにより、板状アンカ72の外周面と第一部材との付着によって引き抜き抵抗が増大すると共に、非常に容易にアンカを備えた受容部材を製造することができる。なお、板状アンカ72の平面的な形状は矩形以外の形状とすることができる。
図14(C)に側面図、図14(D)に平面図を示す受容部材10uは、受容部材10tと同様の板状アンカ75を備えている。板状アンカ75には、厚み方向に貫通する円形断面の孔部76が複数設けられている。孔部76を設けることにより、付着に加えて孔部76内に流入した材料との係合によって引き抜き抵抗を更に増大させることができる。なお、孔部76の断面形状は円形以外とすることができ、また、配置位置と個数は図14(C)、(D)と異なっていても良い。なお、板状アンカ75の平面的な形状は矩形以外の形状とすることもできる。
図15(A)、(B)も、本発明の一実施形態に係る接合手段の受容部材の変形例の形状を説明する図である。何れの例も、接合面に開口した受容空間を有し、受容空間の内面に複数の受容側係合条状部を有する点は図2の受容部材10と共通しているが、補強部材を備えている点が異なっている。なお、図15(A)、(B)においても受容側係合条状部は省略しているが、上述した実施形態の何れかの形態の受容側係合条状部が受容空間の内面に形成されている。
図15(A)に断面図を、図15(B)に正面図を示す受容部材10vは、接合面補強部材80を備えている。接合面補強部材80は受容部材10vの本体16vの外径と略同径の孔が中央に空いた円形の板状部材で、一方の面が受容部材10vの端面と一致するように、受容部材10vの外周に立設されている。接合面補強部材80を設けることにより、接合面の剛性を高めることができる。接合面の近傍に配置され、接合面の剛性を高めることができれば、接合面補強部材80の材料は金属、合成樹脂等任意のものを用いることができ、形状、配置、枚数も図15(A)、(B)に示したものと異なっても良い。
図16(A)〜(E)は、本発明の一実施形態に係る接合手段の挿入部材の変形例の形状を説明する図である。図16(B)〜(E)は、挿入部材20が挿入部21、埋設部23及び頭部24により構成されることは図3の挿入部材20と共通するが、第二部材はコンクリート等の流動性材料を固化させて形成されるものであり、アンカを設けて引き抜き抵抗を増大させている点が異なっている。
図16(A)は、頭部24を省略した挿入部材20hである。したがって、挿入部材20hは、挿入部21hと埋設部23hから成り、これにより構成を簡略化することができる。挿入部21h側の条状部22hは上述したように受容部材に挿入されて受容側係合条状部と少なくとも一箇所以上の交差部を作出し、この交差部において該受容側係合条状部と該挿入側係合条状部とが、挿入方向に対する直交方向において干渉して弾性変形及び/又は塑性変形することで、受容部材と挿入部材が互いに嵌合される。一方で、埋設部23h側に1以上の条状部26hを設けることができ、埋設部23h側の条状部26hは、第二部材に埋設されアンカとしての役割を果たす。
図16(B)に平面図を示す挿入部材20iでは、頭部24の埋設部23との接合面とは反対側の端面に二本の直線状のアンカ90を設けている。また、図16(C)に平面図を示す挿入部材20jでは、頭部24の埋設部23との接合面とは反対側の端面にU字状のアンカ91を設けている。アンカ90、91としては例えば異形鉄筋を用いることができるが、所要の付着力が得られれば、材質、形状、本数、取付位置は、任意に変更することができる。アンカ90、91の上記端面への固定としては、溶接の他、ねじ部を設けて螺合しても良い。
図16(D)に平面図、図16(E)に側面図を示す挿入部材20kでは、枡形アンカ95を設けている。枡形アンカ95は、平板状の端板96と、端板96の両端に端板96に対して垂直方向に設けられた二枚の側板97で構成されている。側板97の端板96と接続されていない端部が、それぞれ、頭部24の端面24aに接合され、枡形アンカ95と頭部24によって、上下が開口した空間98が形成されている。挿入部材20kは、流動性の材料が注入される前に型枠内に固定され、材料が注入されると空間98にも材料が流入して他の部分と一体に固化する。そのため、側板97の外面が材料と付着すると共に、端板96が空間98に注入された材料と係合し、一層引き抜き抵抗を増大させることができる。この例では、端板96と側板97を一体としたが、別体に作成してから接合しても良い。また、空間98を形成し、この部分に流入した材料と係合する端板96を備えるものであれば、図16(D)、(E)とは異なる形状とすることができる。枡形アンカ95の材料は、金属、合成樹脂等任意のものを用いることができるが、第二部材の材料と付着し易いものが好ましい。
図17(A)〜(D)は、本発明の一実施形態に係る接合手段の挿入部材の変形例の形状を説明する図である。何れの例でも、図16の挿入部材と同様にアンカを設けているが、アンカを板状としている。
図17(A)に側面図、図17(B)に平面図を示す挿入部材20mは、平面視が略矩形であり、厚さが埋設部23の厚さよりやや大きい板状アンカ110を備えている。板状アンカ110の接合面側の端面は、頭部24の端面に接続されている。板状アンカ110と、頭部24の接続は、溶接、接着、ボルト止め等任意の方法によることができる。板状アンカ110の材料は、金属、合成樹脂等任意のものを用いることができるが、第二部材の材料と付着し易いものが好ましい。また、板状アンカ110は1以上の条状部111を更に有していることが好ましい。このような構成とすることにより、板状アンカ110の外周面と第一部材との付着によって引き抜き抵抗が増大する。
図17(C)に側面図、図17(D)に平面図を示す挿入部材20nは、挿入部材20mと同様の板状アンカ112を備えている。板状アンカ112には、厚み方向に貫通する円形断面の孔部113が複数設けられている。孔部113を設けることにより、付着に加えて孔部113内に流入した材料との係合によって引き抜き抵抗を更に増大させることができる。なお、孔部の断面形状は円形以外とすることができ、また、配置位置と個数は図17(C)、(D)と異なっても良い。
図17(A)〜(D)では、挿入部材が頭部24を備え、板状アンカ110、112を頭部24に接続するものとしたが、頭部24を省略し板状アンカ110、112を埋設部23と直接接続し、又は、一体に形成しても良い。また、板状アンカ110、112の平面的な形状は矩形以外の形状とすることができ、厚さも任意である。以上説明したように、アンカは、例えば、一つ以上の棒状、楔状、枡状、板状、筒状、コイル状、メッシュ状を成すものとすることができる。
図18に、本発明の一実施形態に係る接合手段1(各変形例も含む)を地中にトンネルを構築するシールド工法に適用した例を示す。シールド工法においては、工場等で製作したセグメント201、202を周方向に接合してリング203を製作し、このリング203を挿入方向に順次接続してトンネル200を構築する。セグメント202は、最後に接合されるセグメントで、台形状となっている。図18では短い直線で記号的に示したセグメントの挿入方向の接合手段204に本発明の一実施形態を好適に用いることができる。コンクリートのように流動性の材料を型枠に打設して固化させることにより部材を作成する場合には、打設前に挿入部材又は受容部材を所定の位置に固定しておくことにより、簡単に取り付けることができる。
図19に、本発明の一実施形態に係る接合手段1(各変形例も含む)を木製の本棚に適用した例を示す。本棚210は、鉛直方向に配置される二枚の側板211の間に、1枚の天板212と複数の棚板213を配置した構造となっている。図19では短い直線で記号的に示した側板211と天板212の接合手段214及び側板211と棚板213の接合手段215に本発明の一実施形態を好適に用いることができる。木材等の部材に挿入部材と受容部材を固定する方法としては、例えば、挿入部材又は受容部材を収容できる大きさの切欠を設けて、挿入部材又は受容部材を接着剤等で固定することができる。挿入部材又は受容部材の外周に鬼目ナットを形成して、木材等に打ち込むこともできる。
これまでは、主にコンクリートの接合を例に、受容部材と挿入部材が第一部材及び第二部材に埋設される接合手段について説明したが、本発明の一実施形態に係る接合手段は、受容部材及び/又は挿入部材を第一部材及び第二部材に埋設することなく、ボルト/ナット様の締結手段として用いることもできる。
図20は、受容部材と挿入部材を埋設しない場合の接合手段の構造を示す斜視図である。本発明の一実施形態に係る接合手段についても、上述してきた接合手段と同様に、受容部材310と、挿入部材320とを備え、受容部材310は、開口部と、該開口部に連通した受容空間311と、該受容空間311を内側面によって囲繞する略筒状を成す外側面を有する囲繞部と、該内側面に半径方向内側に向かって凸状に設けられる受容側係合条状部314を有する。また、挿入部材320は、受容空間311に挿入し得る挿入部321と、該挿入部の外面に半径方向外側に向かって凸状に設けられる挿入側係合条状部322を有する。受容部材310及び挿入部材320は上述してきた接合手段で説明した様々な変形例が同様に適用される。
第2の実施形態に係る接合手段では、挿入部材320をボルト様部材とし、受容部材310をナット様部材として、第一部材301及び第二部材302を接合することができる。受容空間311に対して挿入部321を挿入すると、受容側係合条状部314と挿入側係合条状部322とが、少なくとも一箇所以上の交差部を作出し、この交差部において受容側係合条状部314と挿入側係合条状部322とが、挿入方向に対する直交方向において干渉して弾性変形及び/又は塑性変形することで、受容部材310と挿入部材320が互いに嵌合されるのはこれまでと同様であるが、受容部材310と挿入部材320が第一部材301及び第二部材302にそれぞれ埋設されるのではなく、例えば、第一部材301及び第二部材302に設けられた孔305、306に挿入部材320の挿通部323を挿通することで第一部材301と第二部材302を接合することができる。このとき、挿通部323の長さは、第一部材301及び第二部材302の孔305、306の深さの和と略等しくなるようにすることが好ましい。尚、受容部材310の底部316はナットのように貫通孔となっていても良いし、上述してきた例のように有底部となっていても良い。
図21は、受容部材のみを埋設した場合の接合手段の構造を示す図である。このときは、受容部材410が第二部材402に埋設され、第一部材401は、第一部材401に設けられた孔405を介して、挿入部材420の挿入部421及び挿通部423が挿通され、挿入部材420の挿入部421が受容部材410の受容空間411に挿入されて接合されることにより、第一部材401と第二部材402とが接合される。
このように、挿入部材320をボルト様部材とし、受容部材310をナット様部材として用いる場合、図21に示すように、受容部材310の受容空間311の幅w1及び奥行h1が、挿入部材320の挿入部321の幅w1及び長さh1と略等しくなるようにすることが好ましく、更に、第一部材401の孔405の幅w2及び深さh2が、挿入部材420の挿通部423の幅w2及び長さh2と略等しくなるようにすることが好ましい。
尚、図20及び図21の例において、挿入部材420の頭部424は、必ずしも必要ではない。挿入部材の頭部を設けないことにより、第一部材401と第二部材402とを接合した際に挿入部材420側の接合面を例えば面一にすることができる。
上述した何れかの実施形態は、矛盾の無い限り相互に組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の接合手段に係る部品を適用する第一部材及び第二部材の材質、形状には限定がなく、接合面同士を当接させて接合する場合であればどのような部材にも適用することができる。第一部材及び第二部材の材質としては、例えば、コンクリート、金属、合成樹脂、木材等に適用することができる。第一部材及び第二部材の形状としては、例えば、板状、柱状、ブロック状等の同種のもの同士或いは異なる種類の部材の接合に適用することができる。また、図18、19に例示したシールドセグメント及び本棚の他にも、プレキャストコンクリート部材一般、家具一般、建材、住宅フレーム材、各種機械等のあらゆる物品に適用することができる。