JP7234937B2 - スルホン酸エステル化合物及びその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、スルホン酸エステル化合物及びその利用に関する。
有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子には、発光層や電荷注入層として、有機化合物からなる電荷輸送性薄膜が用いられる。特に、正孔注入層は、陽極と、正孔輸送層あるいは発光層との電荷の授受を担い、有機EL素子の低電圧駆動及び高輝度を達成するために重要な機能を果たす。
近年、低分子オリゴアニリン系材料やオリゴチオフェン系材料を有機溶媒に溶解させた均一系溶液からなる電荷輸送性ワニスが見出され、このワニスから得られる正孔注入層を有機EL素子中に挿入することで、下地基板の平坦化効果や、優れた有機EL素子特性が得られることが報告されている(特許文献1~3)。更に、電子受容性物質として1,4-ベンゾジオキサンスルホン酸化合物(特許文献4~6)を使用することで、有機EL素子の駆動電圧を低下し得ることも報告されている。
しかし、スルホン酸化合物は、一般に有機溶媒に対する溶解性が低いため、有機溶液を調製する場合に使用される溶媒が限定されやすく、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の溶解力の高い高極性有機溶媒を使用する必要があった。高極性有機溶媒を含有する有機溶液は、インクジェット塗布装置の一部や、基板上に形成される絶縁膜及び隔壁等の有機構造物にダメージを与えることがある。また、高極性有機溶媒を含有するワニスを長期的に大気暴露すると、吸水によりワニス導電率が経時的に増加し、これによりインクジェット吐出が不安定化するといった課題もある。しかも、スルホン酸化合物は、高極性であるために、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製、分液抽出、及び水洗等の操作による塩類の除去が困難であった。
一方、スルホン酸エステル化合物は、種々の有機溶媒に対する溶解性が高く、加熱や化学的作用等の外的刺激により有機強酸が発生する材料として知られている。加熱によりスルホン酸が発生する化合物の具体例として、スルホン酸シクロヘキシルエステル等が報告されており(非特許文献1)、このスルホン酸エステル化合物は、熱酸増殖剤という概念においても注目されている(特許文献7、非特許文献2)。しかし、特に、芳香族ジスルホン酸エステル等の電子欠乏性の芳香環を有するスルホン酸エステル化合物は、わずかな熱や、水、塩基性物質等との反応による分解が生じやすく、安定性の高いスルホン酸エステル化合物の創出が望まれていた。
特開2002-151272号公報 国際公開第2004/043117号 国際公開第2005/043962号 国際公開第2005/000832号 国際公開第2009/096352号 国際公開第2015/111654号 特開平7-134416号公報 特許第5136795号公報
Chemische Berichte, 90, pp. 585-592 (1957) 機能材料、24巻、pp. 72-82、2004年
本発明者らは、前記問題点を解決するため、高安定性を有するとともに、広範囲の有機溶媒への高溶解性を有するスルホン酸エステル化合物を報告している(特許文献8)。しかし、前記スルホン酸エステル化合物は、従来用いられていたスルホン酸化合物やスルホン酸エステル化合物よりは安定性や有機溶媒への溶解性に優れていたものの、低極性溶媒に溶解させるためには高温で長時間攪拌することを必要とし、また、溶液にした場合に長期間保存すると析出することがあり、有機溶媒への溶解性や安定性に改良の余地があった。
本発明は、前記事情に鑑みなされたものであり、低極性溶媒への溶解性やワニスの安定性に優れ、有機EL素子に適用した場合に優れた素子特性の実現を可能にするスルホン酸エステル化合物、該スルホン酸エステル化合物からなる電子受容性物質前駆体、及びこれを含む電荷輸送性ワニスを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、所定のスルホン酸化合物とグリコールエーテル類又は脂肪族アルコール化合物とから得られるエステルが、従来のスルホン酸エステル化合物に比べて低極性溶媒への溶解性に優れ、更に、溶液にした際の保存安定性にも優れ、電子受容性物質前駆体として機能し得ることを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本発明は、下記スルホン酸エステル化合物及びその利用を提供する。
1.下記式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物。
Figure 0007234937000001
(式中、R1s~R5sは、それぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基であり;
6s~R9sは、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基であり;
10sは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、又は-OR11sであり、R11sは、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基であり;
1は、-O-、-S-又は-NH-であり;
2は、(n+1)価の芳香族基であり;
nは、1≦n≦4を満たす整数である。)
2.R1sが、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基である1のスルホン酸エステル化合物。
3.R2s~R5sが、全てフッ素原子である1又は2のスルホン酸エステル化合物。
4.A2が、ナフタレンから誘導される基である1~3のいずれかのスルホン酸エステル化合物。
5.nが、2である1~4のいずれかのスルホン酸エステル化合物。
6.下記式(1-1)で表されるものである1~5のいずれかのスルホン酸エステル化合物。
Figure 0007234937000002
(式中、R1s~R9s、R11s、A1、A2及びnは、前記と同じ。)
7.下記式(1-2)で表されるものである1~5のいずれかのスルホン酸エステル化合物。
Figure 0007234937000003
(式中、R1s~R6s、R8s、A1、A2及びnは、前記と同じであり、R12sは、直鎖状又は分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基である。)
8.1~7のいずれかのスルホン酸エステル化合物からなる電子受容性物質前駆体。
9.8の電子受容性物質前駆体、電荷輸送性物質及び有機溶媒を含む電荷輸送性ワニス。
10.前記有機溶媒が、低極性有機溶媒である9の電荷輸送性ワニス。
11.前記電荷輸送性物質が、アニリン誘導体である9又は10の電荷輸送性ワニス。
12.9~11のいずれかの電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜。
13.12の電荷輸送性薄膜を備える有機EL素子。
本発明のスルホン酸エステル化合物は、低極性溶媒を含む広範囲の有機溶媒に対して高溶解性を示すため、低極性溶媒を用いたり、高極性溶媒の比率を低下させたりしても電荷輸送性ワニスを調製することができる。また、溶液にした際の保存安定性にも優れる。低極性有機溶媒系の電荷輸送性ワニスは、溶媒耐性が問題となるインクジェット塗布装置にて塗布することができるだけでなく、基板上に絶縁膜や隔壁などの耐溶媒性が問題となる構造物が存在する場合でも用いることができ、その結果、高平坦性を有する非晶質固体薄膜を問題なく作製することができる。
また、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜は、高電荷輸送性を示すため、正孔注入層又は正孔輸送層として使用した場合に有機EL素子の駆動電圧を低下させることができる。この薄膜の高平坦性及び高電荷輸送性を利用して、太陽電池の正孔輸送層、燃料電池用電極、コンデンサ電極保護膜、帯電防止膜への応用も可能である。
[スルホン酸エステル化合物]
本発明のスルホン酸エステル化合物は、下記式(1)で表されるものである。
Figure 0007234937000004
式(1)中、R1s~R5sは、それぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基である。
前記炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
前記炭素数1~10のハロゲン化アルキル基は、炭素数1~10のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であれば、特に限定されない。前記ハロゲン化アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロピル基、4,4,4-トリフルオロブチル基、3,3,4,4,4-ペンタフルオロブチル基、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチル基、1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブチル基等が挙げられる。
前記炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であれば、特に限定されない。その具体例としては、パーフルオロビニル基、パーフルオロ-1-プロペニル基、パーフルオロ-2-プロペニル基、パーフルオロ-1-ブテニル基、パーフルオロ-2-ブテニル基、パーフルオロ-3-ブテニル基等が挙げられる。
これらのうち、R1sとしては、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基等が好ましく、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~4のハロゲン化アルキル基、炭素数2~4のハロゲン化アルケニル基等がより好ましく、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、パーフルオロ-1-プロペニル基、パーフルオロ-2-プロペニル基等がより一層好ましい。また、R2s~R5sとしては、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
式(1)中、R6s~R9sは、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基である。
前記1価脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、ヘキセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましい。
式(1)中、R10sは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、又は-OR11sである。R11sは、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基である。
10sで表される直鎖状又は分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。R10sが1価脂肪族炭化水素基である場合、R10sとしては、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより一層好ましい。
11sで表される炭素数2~20の1価炭化水素基としては、前述した1価脂肪族炭化水素基のうちメチル基以外のもののほか、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基等のアリール基等が挙げられる。これらのうち、R11sとしては、炭素数2~4の直鎖アルキル基又はフェニル基が好ましい。また、前記1価炭化水素基が有していてもよい置換基としては、フルオロ基、炭素数1~4のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
式(1)中、A1は、-O-、-S-又は-NH-であるが、-O-が好ましい。
式(1)中、A2は、(n+1)価の芳香族基である。前記芳香族基は、芳香族化合物の芳香環上から(n+1)個の水素原子を取り除いて得られる基である。前記芳香族化合物としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等が挙げられる。これらのうち、A2としては、ナフタレン又はアントラセンから誘導される基であることが好ましく、ナフタレンから誘導される基であることがより好ましい。
式(1)中、nは、1≦n≦4を満たす整数であるが、2が好ましい。
式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物としては、特に、下記式(1-1)又は(1-2)で表されるものが好ましい。
Figure 0007234937000005
式中、R1s~R9s、R11s、A1、A2及びnは、前記と同じ。R12sは、直鎖状又は分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基であり、その具体例としては、R10sの説明において述べたものと同様のものが挙げられる。
式(1-1)で表されるスルホン酸エステル化合物においては、R6s~R9sのうち、R6s又はR8sが炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、残りが水素原子であることが好ましい。更に、R6sが、炭素数1~3の直鎖アルキル基であり、R7s~R9sが水素原子であることが好ましい。前記炭素数1~3の直鎖アルキル基としては、メチル基が好ましい。また、R11sとしては、炭素数2~4の直鎖アルキル基又はフェニル基が好ましい。
式(1-2)で表されるスルホン酸エステル化合物においては、R6s、R8s及びR12sの炭素数の合計は6以上であることが好ましい。R6s、R8s及びR12sの炭素数の合計の上限は、20以下が好ましく、10以下がより好ましい。この場合、R6sとしては、水素原子が好ましく、R8s及びR12sとしては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。また、R8s及びR12sは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物は低極性溶媒を含む広範囲の溶媒に対して高溶解性を示すため、多種多様な溶媒を使用して溶液の物性を調製することが可能であり、塗布特性が高い。そのため、スルホン酸エステルの状態で塗布し、塗膜の乾燥時又は焼成時にスルホン酸を発生させることが好ましい。スルホン酸エステルからスルホン酸が発生する温度は、室温で安定、かつ焼成温度以下であることが好ましいため、40~260℃がよい。更に、ワニス内での高い安定性と焼成時の脱離の容易性を考慮すると、80~230℃が好ましく、120~180℃がより好ましい。
式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物は、例えば、下記スキームAに示すように、式(1'')で表されるスルホン酸塩化合物とハロゲン化剤とを反応させて、下記式(1')で表されるスルホニルハライド化合物を合成し(以下、工程1ともいう。)、該スルホニルハライド化合物と式(2)で表される化合物とを反応させる(以下、工程2ともいう。)ことで合成することができる。
Figure 0007234937000006
(式中、R1s~R10s、A1、A2及びnは、前記と同じ。M+は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ピリジニウムイオン、4級アンモニウムイオン等の1価のカチオンである。Halは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子である。)
式(1'')で表されるスルホン酸塩化合物は、公知の方法に従って合成することができる。
工程1において使用するハロゲン化剤としては、塩化チオニル、塩化オキサリル、オキシ塩化リン、塩化リン(V)等のハロゲン化剤が挙げられるが、塩化チオニルが好適である。ハロゲン化剤の使用量は、スルホン酸塩化合物に対して1倍モル以上であれば限定されないが、スルホン酸塩化合物に対して質量比で2~10倍量用いることが好ましい。
工程1において使用される反応溶媒としては、ハロゲン化剤と反応しない溶媒が好ましく、クロロホルム、ジクロロエタン、四塩化炭素、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。また、無溶媒でも反応を行うことができ、この場合、反応終了時には均一系溶液となる量以上でハロゲン化剤を用いることが好ましい。また、反応を促進させるため、N,N-ジメチルホルムアミド等の触媒を使用してもよい。反応温度は0~150℃程度とすることができるが、20~100℃、かつ、使用するハロゲン化剤の沸点以下が好ましい。反応終了後、一般的には、減圧濃縮等により得た粗生成物を次工程に用いる。
式(2)で表される化合物のうちR10sが-OR11sであるものとしては、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル等のグリコールエーテル類が挙げられる。式(2)で表される化合物のうちR10sが直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価炭化水素基であるものとしては、2-エチル-1-ヘキサノール、2-ブチル-1-オクタノール、1-オクタノール、3-ノナノール等のアルコール類が挙げられる。
工程2においては、塩基を併用してもよい。使用可能な塩基としては、水素化ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等が挙げられるが、水素化ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミンが好適である。塩基の使用量は、スルホニルハライド化合物(1')に対して1倍モル~溶媒量が好適である。
工程2において使用される反応溶媒としては、各種有機溶媒を用いることができるが、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン、クロロホルム、ピリジンが好適である。反応温度は特に限定されないが、0~80℃が好適である。反応終了後、減圧濃縮、分液抽出、水洗、再沈殿、再結晶、クロマトグラフィー等の常法を用いて後処理、精製し、純粋なスルホン酸エステル化合物を得ることができる。なお、得られた純粋なスルホン酸エステル化合物に熱処理等を施すことで、高純度のスルホン酸化合物に導くこともできる。
また、式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物は、下記スキームBに示すように、式(1''')で表されるスルホン酸化合物から合成することもできる。なお、下記スキームBにおいて、1段階目及び2段階目の反応で使用するハロゲン化剤、式(2)で表される化合物、反応溶媒及びその他の成分は、スキームAにおける工程1及び2と同様のものを使用することができる。
Figure 0007234937000007
(式中、R1s~R10s、A1、A2、n及びHalは、前記と同じ。)
式(1''')で表されるスルホン酸化合物は、例えば、国際公開第2006/025342号に記載された方法に従って合成することができる。
[電子受容性物質前駆体]
式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物は、加熱処理等によりスルホン酸が生じること及びこのスルホン酸化合物が電子受容性を示すことから、酸発生剤や電子受容性物質前駆体として好適に用いることができる。ここで、電子受容性物質は、電子輸送能及び成膜均一性を向上させるために用いられるものであり、電子受容性ドーパントと同義である。
式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物は低極性溶媒を含む広範囲の溶媒に対して高溶解性を示すため、多種多様な溶媒を使用して溶液の物性を調製することが可能であり、塗布特性が高い。そのため、スルホン酸エステルの状態で塗布し、塗膜の乾燥時又は焼成時にスルホン酸を発生させることが好ましい。スルホン酸エステルからスルホン酸が発生する温度は、室温で安定、かつ、焼成温度以下であることが好ましいため、40~260℃がよい。更に、ワニス内での高い安定性と焼成時の脱離の容易性を考慮すると、80~230℃が好ましく、120~180℃がより好ましい。
式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物は、電荷輸送機構の本体である電荷輸送性物質と一緒に有機溶媒に溶解又は分散させることで、電荷輸送性ワニスとすることができる。なお、前記スルホン酸エステル化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[電荷輸送性ワニス]
本発明の電荷輸送性ワニスは、式(1)で表される化合物からなる電子受容性物質前駆体、電荷輸送性物質、及び有機溶媒を含む。なお、本発明において、電荷輸送性とは導電性と同義である。電荷輸送性ワニスとは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、それにより得られる固形膜が電荷輸送性を有するものでもよい。
[電荷輸送性物質]
前記電荷輸送性物質としては、従来有機ELの分野で使用されているものを用いることができ、具体的には、アニリン誘導体、チオフェン誘導体、ピロール誘導体等の電荷輸送性オリゴマーが挙げられる。前記電荷輸送性オリゴマーの分子量は、通常200~8,000であるが、電荷輸送性の高い薄膜を与えるワニスを調製する観点から、好ましくは300以上、より好ましくは400以上、より一層好ましくは500以上であり、平坦性の高い薄膜を与える均一なワニスを調製する観点から、好ましくは6,000以下であり、より好ましくは5,000以下であり、より一層好ましくは4,000以下であり、更に好ましくは3,000以下である。
前記電荷輸送性オリゴマーのうち、有機溶媒への溶解性と得られる薄膜の電荷輸送性のバランスとを考慮すると、アニリン誘導体が好ましい。アニリン誘導体としては、特開2002-151272号公報に記載のオリゴアニリン誘導体、国際公開第2004/105446号に記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2008/032617号に記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2008/032616号に記載のオリゴアニリン化合物、国際公開第2013/042623号に記載のアリールジアミン化合物、国際公開第2015/050253号、国際公開第2016/190326号に記載のアニリン誘導体等が挙げられる。
前記アニリン誘導体としては、例えば下記式(A1)又は(A2)で表される化合物を用いることができる。
Figure 0007234937000008
式(A2)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
前記炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の炭素数1~20の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ビシクロブチル基、ビシクロペンチル基、ビシクロヘキシル基、ビシクロヘプチル基、ビシクロオクチル基、ビシクロノニル基、ビシクロデシル基等の炭素数3~20の環状アルキル基等が挙げられる。
前記炭素数2~20のアルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、ビニル基、n-1-プロペニル基、n-2-プロペニル基、1-メチルビニル基、n-1-ブテニル基、n-2-ブテニル基、n-3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルビニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、n-1-ペンテニル基、n-1-デセニル基、n-1-エイコセニル基等が挙げられる。
前記炭素数2~20のアルキニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、エチニル基、n-1-プロピニル基、n-2-プロピニル基、n-1-ブチニル基、n-2-ブチニル基、n-3-ブチニル基、1-メチル-2-プロピニル基、n-1-ペンチニル基、n-2-ペンチニル基、n-3-ペンチニル基、n-4-ペンチニル基、1-メチル-n-ブチニル基、2-メチル-n-ブチニル基、3-メチル-n-ブチニル基、1,1-ジメチル-n-プロピニル基、n-1-ヘキシニル基、n-1-デシニル基、n-1-ペンタデシニル基、n-1-エイコシニル基等が挙げられる。
前記炭素数6~20のアリール基の具体例としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基等が挙げられる。
前記炭素数2~20のヘテロアリール基の具体例としては、2-チエニル基、3-チエニル基、2-フラニル基、3-フラニル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、4-イソオキサゾリル基、5-イソオキサゾリル基、2-チアゾリル基、4-チアゾリル基、5-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、4-イソチアゾリル基、5-イソチアゾリル基、2-イミダゾリル基、4-イミダゾリル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基等が挙げられる。
これらの中でも、R1及びR2としては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子又はフッ素原子がより一層好ましく、水素原子が最適である。
式(A1)及び(A2)中、Ph1は、式(P1)で表される基である。
Figure 0007234937000009
式中、R3~R6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。これらの具体例としては、前記R1及びR2で説明したものと同様のものが挙げられる。
特に、R3~R6としては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子又はフッ素原子がより一層好ましく、水素原子が最適である。
Ph1として好適な基としては、1,4-フェニレン基等が挙げられるが、これらに限定されない。
式(A1)中、Ar1は、それぞれ独立に、式(B1)~(B11)のいずれかで表される基であるが、特に、式(B1')~(B11')のいずれかで表される基が好ましい。
Figure 0007234937000010
Figure 0007234937000011
式(B1)~(B11)及び式(B1')~(B11')中、R7~R27、R30~R51及びR53~R154は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい、ジフェニルアミノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。R28及びR29は、それぞれ独立に、Z1で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基又は炭素数2~20のヘテロアリール基である。R52は、Z1で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。
1は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はZ2で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基若しくは炭素数2~20のアルキニル基である。Z2は、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はZ3で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。Z3は、ハロゲン原子、ニトロ基又はシアノ基である。
特に、R7~R27、R30~R51及びR53~R154としては、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいジフェニルアミノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基が好ましく、水素原子、フッ素原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、水素原子又はフッ素原子がより一層好ましく、水素原子が最適である。
28及びR29としては、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~14のヘテロアリール基が好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいナフチル基がより好ましく、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましく、フェニル基が更に好ましい。
52としては、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基が好ましく、水素原子、Z1で置換されていてもよいフェニル基、又はZ1で置換されてもよいナフチル基がより好ましく、Z1で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましく、フェニル基が更に好ましい。
式(B10)、(B11)、(B10')及び(B11')中、Ar4は、それぞれ独立に、各々のアリール基が炭素数6~20のアリール基であるジアリールアミノ基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基である。炭素数6~20のアリール基の具体例としては、前記R1及びR2で説明したものと同様のものが挙げられ、前記ジアリールアミノ基の具体例としては、ジフェニルアミノ基、1-ナフチルフェニルアミノ基、ジ(1-ナフチル)アミノ基、1-ナフチル-2-ナフチルアミノ基、ジ(2-ナフチル)アミノ基等が挙げられる。
Ar4としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基、9-フェナントリル基、p-(ジフェニルアミノ)フェニル基、p-(1-ナフチルフェニルアミノ)フェニル基、p-(ジ(1-ナフチル)アミノ)フェニル基、p-(1-ナフチル-2-ナフチルアミノ)フェニル基、p-(ジ(2-ナフチル)アミノ)フェニル基等が好ましく、p-(ジフェニルアミノ)フェニル基がより好ましい。
式(A1)中、Ar2は、それぞれ独立に、式(C1)~(C18)のいずれかで表される基であるが、特に、式(C1'-1)~(C18'-2)のいずれかで表される基が好ましい。なお、下記式中、Ar4は前記と同じであり、DPAはジフェニルアミノ基である。
Figure 0007234937000012
Figure 0007234937000013
式(C16)、(C16'-1)及び(C16'-2)中、R155は、水素原子、Z1で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、又はZ1で置換されていてもよい炭素数2~14のヘテロアリール基である。前記アリール基及びヘテロアリール基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。これらのうち、R155としては、水素原子、Z1で置換されていてもよいフェニル基、Z1で置換されていてもよい1-ナフチル基、Z1で置換されていてもよい2-ナフチル基、Z1で置換されていてもよい2-ピリジル基、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい3-ピリジル基、又はZ1で置換されていてもよい4-ピリジル基が好ましく、Z1で置換されていてもよいフェニル基がより一層好ましく、フェニル基又は(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル)基が更に好ましい。
式(C17)、(C17'-1)及び(C17'-2)中、R156及びR157は、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい炭素数2~14のヘテロアリール基である。前記アリール基及びヘテロアリール基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。これらのうち、R156及びR157としては、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基が好ましく、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよいフェニル基、Z1で置換されていてもよいフェニル基により置換されていてもよい1-ナフチル基、又はZ1で置換されていてもよい2-ナフチル基がより好ましい。
式(A2)中、Ar3は、式(D1)~(D8)のいずれかで表される基であるが、特に(D1')~(D8')のいずれかで表される基が好ましい。
Figure 0007234937000014
Figure 0007234937000015
式(A1)中、pは、1~10の整数であるが、化合物の有機溶媒に対する溶解性を高める観点から、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1又は2がより一層好ましく、1が最適である。式(A2)中、qは、1又は2である。
式(A1)で表されるアニリン誘導体及び式(A2)で表されるアニリン誘導体は、例えば、国際公開第2015/050253号に記載の方法に従って製造することができる。
前記アニリン誘導体としては、下記式(A3)で表されるフッ素原子含有オリゴアニリン誘導体を用いることもできる。
Figure 0007234937000016
式中、R201は、水素原子、又はZ11で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基である。Z11は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基、カルボキシ基、Z12で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基又はZ12で置換されていてもよい炭素数2~20のヘテロアリール基であり、Z12は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基又はカルボキシ基である。
202~R210は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基若しくはシアノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。
前記ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基及び炭素数2~20のヘテロアリール基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
これらのうち、R201としては、フッ素原子含有オリゴアニリン誘導体の有機溶媒への溶解性を考慮すると、水素原子、又はZ11で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基が好ましく、水素原子、又はZ11で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、水素原子が最適である。R201が水素原子である場合、特に優れた電荷輸送性を実現できる。なお、複数のR201は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、これらのうち、R202~R210としては、フッ素原子含有オリゴアニリン誘導体の有機溶媒への溶解性を考慮すると、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、オリゴアニリン誘導体の有機溶媒への溶解性と電荷輸送性とのバランスを考慮すると、水素原子が最適である。なお、複数のR202~R205は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
式(A3)中、ArFは、
シアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基若しくは炭素数1~20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい、炭素数1~20のフルオロアルキル基、炭素数3~20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4~20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2~20のフルオロアルケニル基若しくは炭素数2~20のフルオロアルキニル基;
シアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のフルオロアルキル基若しくは炭素数1~20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数6~20のフルオロアリール基;
炭素数1~20のフルオロアルキル基、炭素数3~20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4~20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2~20のフルオロアルケニル基若しくは炭素数2~20のフルオロアルキニル基で置換されるとともに、シアノ基、ハロゲン原子若しくは炭素数1~20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基(以下、便宜上、置換アリール基ともいう。);
シアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、炭素数1~20のフルオロアルコキシ基、炭素数1~20のフルオロアルキル基、炭素数3~20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4~20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2~20のフルオロアルケニル基若しくは炭素数2~20のフルオロアルキニル基で置換されていてもよい炭素数7~20のフルオロアラルキル基;又は
炭素数1~20のフルオロアルキル基、炭素数3~20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4~20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2~20のフルオロアルケニル基若しくは炭素数2~20のフルオロアルキニル基で置換されるとともに、シアノ基、ハロゲン原子若しくは炭素数1~20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数7~20のアラルキル基(以下、便宜上、置換アラルキル基ともいう。)
である。
前記フルオロアルキル基は、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基であれば特に限定されないが、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、1-フルオロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、1,1,2-トリフルオロエチル基、1,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、1,2,2,2-テトラフルオロエチル基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル基、1-フルオロプロピル基、2-フルオロプロピル基、3-フルオロプロピル基、1,1-ジフルオロプロピル基、1,2-ジフルオロプロピル基、1,3-ジフルオロプロピル基、2,2-ジフルオロプロピル基、2,3-ジフルオロプロピル基、3,3-ジフルオロプロピル基、1,1,2-トリフルオロプロピル基、1,1,3-トリフルオロプロピル基、1,2,3-トリフルオロプロピル基、1,3,3-トリフルオロプロピル基、2,2,3-トリフルオロプロピル基、2,3,3-トリフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1,1,2,2-テトラフルオロプロピル基、1,1,2,3-テトラフルオロプロピル基、1,2,2,3-テトラフルオロプロピル基、1,3,3,3-テトラフルオロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2,3,3,3-テトラフルオロプロピル基、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロピル基、1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基等が挙げられる。
前記フルオロシクロアルキル基は、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたシクロアルキル基であれば特に限定されないが、例えば、1-フルオロシクロプロピル基、2-フルオロシクロプロピル基、2,2-ジフルオロシクロプロピル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロプロピル基、ペンタフルオロシクロプロピル基、2,2-ジフルオロシクロブチル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロブチル基、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロシクロブチル基、ヘプタフルオロシクロブチル基、1-フルオロシクロペンチル基、3-フルオロシクロペンチル基、3,3-ジフルオロシクロペンチル基、3,3,4,4-テトラフルオロシクロペンチル基、ノナフルオロシクロペンチル基、1-フルオロシクロヘキシル基、2-フルオロシクロヘキシル基、4-フルオロシクロヘキシル基、4,4-ジフルオロシクロヘキシル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロヘキシル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロシクロヘキシル基、ウンデカフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。
前記フルオロビシクロアルキル基は、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたビシクロアルキル基であれば特に限定されないが、例えば、3-フルオロビシクロ[1.1.0]ブタン-1-イル基、2,2,4,4-テトラフルオロビシクロ[1.1.0]ブタン-1-イル基、ペンタフルオロビシクロ[1.1.0]ブタン-1-イル基、3-フルオロビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-イル基、2,2,4,4,5-ペンタフルオロビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-イル基、2,2,4,4,5,5-ヘキサフルオロビシクロ[1.1.1]ぺンタン-1-イル基、5-フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン-6-イル基、6-フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン-6-イル基、6,6-ジフルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン-2-イル基、2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロビシクロ[2.2.0]ヘキサン-1-イル基、1-フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、3-フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、4-フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-イル基、5-フルオロビシクロ[3.1.1]ヘプタン-1-イル基、1,3,3,4,5,5,6,6,7,7-デカフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、ウンデカフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-イル基、3-フルオロビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル基、4-フルオロビシクロ[2.2.2]オクタン-1-イル基等が挙げられる。
前記フルオロアルケニル基は、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルケニル基であれば特に限定されないが、例えば、1-フルオロビニル基、2-フルオロビニル基、1,2-ジフルオロビニル基、1,2,2-トリフルオロビニル基、2,3,3-トリフルオロ-1-プロペニル基、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペニル基、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペニル基、ペンタフルオロ-1-プロペニル基、1-フルオロ-2-プロペニル基、1,1-ジフルオロ-2-プロペニル基、2,3-ジフルオロ-2-プロペニル基、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル基、2,3,3-トリフルオロ-2-プロペニル基、1,2,3,3-テトラフルオロ-2-プロペニル基、ペンタフルオロ-2-プロペニル基等が挙げられる。
前記フルオロアルキニル基は、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキニル基であれば特に限定されないが、例えば、フルオロエチニル基、3-フルオロ-1-プロピニル基、3,3-ジフルオロ-1-プロピニル基、3,3,3-トリフルオロ-1-プロピニル基、1-フルオロ-2-プロピニル基、1,1-ジフルオロ-2-プロピニル基等が挙げられる。
前記フルオロアリール基は、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアリール基であれば特に限定されないが、例えば、2-フルオロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-フルオロフェニル基、2,3-ジフルオロフェニル基、2,4-ジフルオロフェニル基、2,5-ジフルオロフェニル基、2,6-ジフルオロフェニル基、3,4-ジフルオロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基、2,3,4-トリフルオロフェニル基、2,3,5-トリフルオロフェニル基、2,3,6-トリフルオロフェニル基、2,4,5-トリフルオロフェニル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基、3,4,5-トリフルオロフェニル基、2,3,4,5-テトラフルオロフェニル基、2,3,4,6-テトラフルオロフェニル基、2,3,5,6-テトラフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2-フルオロ-1-ナフチル基、3-フルオロ-1-ナフチル基、4-フルオロ-1-ナフチル基、6-フルオロ-1-ナフチル基、7-フルオロ-1-ナフチル基、8-フルオロ-1-ナフチル基、4,5-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,7-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,8-ジフルオロ-1-ナフチル基、5,6,7,8-テトラフルオロ-1-ナフチル基、ヘプタフルオロ-1-ナフチル基、1-フルオロ-2-ナフチル基、5-フルオロ-2-ナフチル基、6-フルオロ-2-ナフチル基、7-フルオロ-2-ナフチル基、5,7-ジフルオロ-2-ナフチル基、ヘプタフルオロ-2-ナフチル基等が挙げられる。
前記フルオロアリール基としては、フッ素原子含有オリゴアニリン誘導体の有機溶媒への溶解性、フッ素原子含有オリゴアニリン誘導体の電荷輸送性、フッ素原子含有オリゴアニリン誘導体の原料の入手容易性等のバランスを考慮すると、シアノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のフルオロアルキル基若しくは炭素数1~20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよい、3以上のフッ素原子で置換されたフェニル基が好ましい。
前記フルオロアルコキシ基としては、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルコキシ基であれば特に限定されないが、例えば、フルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、1-フルオロエトキシ基、2-フルオロエトキシ基、1,2-ジフルオロエトキシ基、1,1-ジフルオロエトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、1,1,2-トリフルオロエトキシ基、1,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ基、1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ基、1,1,2,2,2-ペンタフルオロエトキシ基、1-フルオロプロポキシ基、2-フルオロプロポキシ基、3-フルオロプロポキシ基、1,1-ジフルオロプロポキシ基、1,2-ジフルオロプロポキシ基、1,3-ジフルオロプロポキシ基、2,2-ジフルオロプロポキシ基、2,3-ジフルオロプロポキシ基、3,3-ジフルオロプロポキシ基、1,1,2-トリフルオロプロポキシ基、1,1,3-トリフルオロプロポキシ基、1,2,3-トリフルオロプロポキシ基、1,3,3-トリフルオロプロポキシ基、2,2,3-トリフルオロプロポキシ基、2,3,3-トリフルオロプロポキシ基、3,3,3-トリフルオロプロポキシ基、1,1,2,2-テトラフルオロプロポキシ基、1,1,2,3-テトラフルオロプロポキシ基、1,2,2,3-テトラフルオロプロポキシ基、1,3,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、2,3,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロポキシ基、1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロポキシ基、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ基、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロポキシ基、ヘプタフルオロプロポキシ基等が挙げられる。
前記置換アリール基としては、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子が炭素数1~20のフルオロアルキル基、炭素数3~20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4~20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2~20のフルオロアルケニル基又は炭素数2~20のフルオロアルキニル基で置換されたアリール基である限り特に限定されないが、例えば、2-(トリフルオロメチル)フェニル基、3-(トリフルオロメチル)フェニル基、4-(トリフルオロメチル)フェニル基、4-エトキシ-3-(トリフルオロメチル)フェニル基、3-フルオロ-4-トリフルオロメチルフェニル基、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルフェニル基、4-フルオロ-2-トリフルオロメチルフェニル基、2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル基、3-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)フェニル基、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基、2,4,6-トリ(トリフルオロメチル)フェニル基、4-(ペンタフルオロエチル)フェニル基、4-(3,3,3-トリフルオロプロピル)フェニル基、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-トリフルオロメチルフェニル基、4-(パーフルオロビニル)フェニル基、4-(パーフルオロプロペニル)フェニル基、4-(パーフルオロブテニル)フェニル基等が挙げられる。
前記置換アリール基としては、フッ素原子含有オリゴアニリン誘導体の有機溶媒への溶解性、フッ素原子含有オリゴアニリン誘導体の原料の入手容易性等のバランスを考慮すると、炭素数3~20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4~20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2~20のフルオロアルケニル基若しくは炭素数2~20のフルオロアルキニル基で置換されるとともに、シアノ基、ハロゲン原子若しくは炭素数1~20のフルオロアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基(以下、便宜上、置換フェニル基ともいう)が好ましく、1~3個のトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基がより好ましく、p-トリフルオロメチルフェニル基がより一層好ましい。
前記フルオロアラルキル基としては、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアラルキル基である限り特に限定されないが、例えば、2-フルオロベンジル基、3-フルオロベンジル基、4-フルオロベンジル基、2,3-ジフルオロベンジル基、2,4-ジフルオロベンジル基、2,5-ジフルオロベンジル基、2,6-ジフルオロベンジル基、3,4-ジフルオロベンジル基、3,5-ジフルオロベンジル基、2,3,4-トリフルオロベンジル基、2,3,5-トリフルオロベンジル基、2,3,6-トリフルオロベンジル基、2,4,5-トリフルオロベンジル基、2,4,6-トリフルオロベンジル基、2,3,4,5-テトラフルオロベンジル基、2,3,4,6-テトラフルオロベンジル基、2,3,5,6-テトラフルオロベンジル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル基等が挙げられる。
前記置換アラルキル基としては、炭素原子上の少なくとも1個の水素原子が炭素数1~20のフルオロアルキル基、炭素数3~20のフルオロシクロアルキル基、炭素数4~20のフルオロビシクロアルキル基、炭素数2~20のフルオロアルケニル基又は炭素数2~20のフルオロアルキニル基で置換されたアラルキル基である限り特に限定されないが、例えば、2-トリフルオロメチルベンジル基、3-トリフルオロメチルベンジル基、4-トリフルオロメチルベンジル基、2,4-ジ(トリフルオロメチル)ベンジル基、2,5-ジ(トリフルオロメチル)ベンジル基、2,6-ジ(トリフルオロメチル)ベンジル基、3,5-ジ(トリフルオロメチル)ベンジル基、2,4,6-トリ(トリフルオロメチル)ベンジル基等が挙げられる。
これらの中でも、ArFは、前記置換されていてもよい炭素数1~20のフルオロアルキル基、前記置換されていてもよい炭素数6~20のフルオロアリール基又は前記置換アリール基が好ましく、前記置換されていてもよい炭素数6~20のフルオロアリール基又は前記置換アリール基がより好ましく、前記置換されていてもよいフルオロフェニル基又は前記置換フェニル基がより一層好ましく、前記置換されていてもよいトリフルオロフェニル基、前記置換されていてもよいテトラフルオロフェニル基、前記置換されていてもよいペンタフルオロフェニル基又は1~3個のトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基が更に好ましい。
式(A3)中、rは、1~20の整数であるが、フッ素原子含有オリゴアニリン誘導体の溶媒に対する溶解性の観点から、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下がより一層好ましく、4以下が更に好ましい。また、フッ素原子含有オリゴアニリン誘導体の電荷輸送性を高める観点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、溶解性と電荷輸送性のバランスを考慮すると、3が最適である。
式(A3)で表されるフッ素原子含有オリゴアニリン誘導体は、例えば、国際公開第2016/117521号や国際公開第2016/190326号に記載の方法に従って製造することができる。
また、前記アニリン誘導体として、下記式(A4)で表されるアニリン誘導体を用いることもできる。
Figure 0007234937000017
式(A4)中、X1は、-NY1-、-O-、-S-、-(CR307308)L-又は単結合であるが、s又はtが0であるときは、-NY1-である。
式(A4)中、Y1は、それぞれ独立に、水素原子、若しくはZ21で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基若しくは炭素数2~20のアルキニル基、又はZ22で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。
炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~20のアリール基及び炭素数2~20のヘテロアリール基の具体例としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
307及びR308は、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基若しくはカルボキシ基、若しくはZ21で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基若しくは炭素数2~20のアルキニル基、若しくはZ22で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基、又は-NHY2、-NY34、-C(O)Y5、-OY6、-SY7、-SO38、-C(O)OY9、-OC(O)Y10、-C(O)NHY11若しくは-C(O)NY1213基である。
2~Y13は、それぞれ独立に、Z21で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基若しくは炭素数2~20のアルキニル基、又はZ22で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。
21は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基若しくはカルボキシ基、又はZ23で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基である。
22は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基若しくはカルボキシ基、又はZ23で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基若しくは炭素数2~20のアルキニル基である。
23は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基、又はカルボキシ基である。
307、R308及びY2~Y13で表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びヘテロアリール基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
これらの中でも、R307及びR308としては、水素原子又はZ21で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基が好ましく、水素原子又はZ21で置換されていてもよいメチル基がより好ましく、ともに水素原子が最適である。
また、Lは、-(CR307308)-で表される2価の基の数を表し、1~20の整数であるが、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~2がより一層好ましく、1が最適である。なお、Lが2以上である場合、複数のR307は、互いに同一であっても異なっていてもよく、複数のR308も、互いに同一であっても異なっていてもよい。
とりわけ、X1としては、-NY1-又は単結合が好ましい。また、Y1としては、水素原子又はZ21で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基が好ましく、水素原子又はZ21で置換されていてもよいメチル基がより好ましく、水素原子が最適である。
式(A4)中、R301~R306は、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、チオール基、スルホン酸基若しくはカルボキシ基、若しくはZ21で置換されていてもよい、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基若しくは炭素数2~20のアルキニル基、若しくはZ22で置換されていてもよい、炭素数6~20のアリール基若しくは炭素数2~20のヘテロアリール基、又は-NHY2、-NY34、-C(O)Y5、-OY6、-SY7、-SO38、-C(O)OY9、-OC(O)Y10、-C(O)NHY11若しくは-C(O)NY1213である(Y2~Y13は、前記と同じである。)。これらアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基及びヘテロアリール基としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
特に、式(A4)において、R301~R304としては、水素原子、ハロゲン原子、Z21で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、又はZ22で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基が好ましく、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、全て水素原子が最適である。
また、R305及びR306としては、水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、Z21で置換されていてもよい炭素数1~10のアルキル基、Z22で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基、又はZ22で置換されていてもよいジフェニルアミノ基(すなわち、Y3及びY4がZ22で置換されていてもよいフェニル基である-NY34基)が好ましく、水素原子、又はジフェニルアミノ基がより好ましく、同時に水素原子又はジフェニルアミノ基がより一層好ましい。
これらの中でも、R301~R304が水素原子又は炭素数1~10のアルキル基、R305及びR306が水素原子又はジフェニルアミノ基、X1が-NY1-又は単結合、かつY1が水素原子又はメチル基の組み合わせが好ましく、R301~R304が水素原子、R305及びR306が同時に水素原子又はジフェニルアミノ基、X1が-NH-又は単結合の組み合わせがより好ましい。
式(A4)において、s及びtは、それぞれ独立に、0以上の整数であり、1≦s+t≦20を満たすが、得られる薄膜の電荷輸送性とアニリン誘導体の溶解性とのバランスを考慮すると、2≦s+t≦8を満たすことが好ましく、2≦s+t≦6を満たすことがより好ましく、2≦s+t≦4を満たすことがより一層好ましい。
1~Y13及びR301~R308において、Z21は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はZ23で置換されていてもよい炭素数6~20のアリール基が好ましく、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はZ23で置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
22は、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はZ23で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキル基が好ましく、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はZ23で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
23は、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が好ましく、存在しないこと(すなわち、非置換であること)が最適である。
1~Y13及びR301~R308においては、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基の炭素数は、好ましくは10以下であり、より好ましくは6以下であり、より一層好ましくは4以下である。また、アリール基及びヘテロアリール基の炭素数は、好ましくは14以下であり、より好ましくは10以下であり、より一層好ましくは6以下である。
式(A4)で表されるアニリン誘導体は、例えば、Bulletin of Chemical Society of Japan, 67, pp. 1749-1752 (1994)、Synthetic Metals, 84, pp. 119-120 (1997)、Thin Solid Films, 520(24), pp. 7157-7163 (2012)、国際公開第2008/032617号、国際公開第2008/032616号、国際公開第2008/129947号、国際公開第2013/084664号等に記載の方法に従って製造することができる。
式(A4)で表されるアニリン誘導体の具体例として、下記式(A4-1)~(A4-12)で表されるものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、DPAはジフェニルアミノ基であり、Phはフェニル基であり、TPAはp-(ジフェニルアミノ)フェニル基である。
Figure 0007234937000018
Figure 0007234937000019
なお、前記電荷輸送性物質は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
[有機溶媒]
本発明の電荷輸送性ワニスを調製する際に用いられる有機溶媒としては、前記アニリン誘導体及び前記スルホン酸エステル化合物を良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。エステル化されていないスルホン酸化合物を溶解させるためには、少なくとも1種の高極性溶媒を含有させることが必要であるのに対し、前記スルホン酸エステル化合物は溶媒の極性を問わず、溶媒中に溶解することが可能である。本発明において、低極性溶媒とは周波数100kHzでの比誘電率が7未満のものを、高極性溶媒とは周波数100kHzでの比誘電率が7以上のものと定義する。
低極性溶媒としては、例えば、
クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素系溶媒;
トルエン、キシレン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、デシルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;
1-オクタノール、1-ノナノール、1-デカノール等の脂肪族アルコール系溶媒;
テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、4-メトキシトルエン、3-フェノキシトルエン、ジベンジルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒;
安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸イソアミル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、マレイン酸ジブチル、シュウ酸ジブチル、酢酸ヘキシル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒
等が挙げられる。
また、高極性溶媒としては、例えば、
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のアミド系溶媒;
エチルメチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;
アセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等のシアノ系溶媒;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール等の多価アルコール系溶媒;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、3-フェノキシベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等の脂肪族アルコール以外の1価アルコール系溶媒;
ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒
等が挙げられる。これらの溶媒は、用途に応じて、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
なお、電荷輸送性物質は、いずれも前記溶媒に完全に溶解しているか、均一に分散している状態となっていることが好ましく、完全に溶解していることがより好ましい。
電荷輸送性ワニスの調製法としては、特に限定されないが、例えば、電荷輸送性物質、電子受容性物質前駆体等を任意の順で又は同時に溶媒に加える方法が挙げられる。また、有機溶媒が複数ある場合は、まず電荷輸送性物質、電子受容性物質前駆体等を1種の溶媒に溶解させ、そこへ他の溶媒を加えてもよく、複数の有機溶媒の混合溶媒に、電荷輸送性物質、ドーパント等を順次又は同時に溶解させてもよい。
前記電荷輸送性ワニスは、より平坦性の高い薄膜を再現性よく得る観点から、電荷輸送性物質、電子受容性物質前駆体等を有機溶媒に溶解させた後、サブマイクロオーダーのフィルター等を用いてろ過することが望ましい。
本発明のワニス中の固形分濃度は、電荷輸送性物質の析出を抑制しつつ十分な膜厚を確保する観点から、通常0.1~20質量%程度、好ましくは0.5~10質量%である。なお、ここでいう固形分とは、ワニスに含まれる成分のうち溶媒以外の成分を意味する。本発明のワニスの粘度は、通常、25℃で1~50mPa・sである。
また、前記固形分中、電子受容性物質前駆体の含有量は、モル比で、電荷輸送性物質1に対して、好ましくは0.01~20程度、より好ましくは0.05~15程度である。
本発明の電荷輸送性ワニスは、更に有機シラン化合物を含んでもよい。前記有機シラン化合物としては、ジアルコキシシラン化合物、トリアルコキシシラン化合物又はテトラアルコキシシラン化合物が挙げられる。とりわけ、有機シラン化合物としては、ジアルコキシシラン化合物又はトリアルコキシシラン化合物が好ましく、トリアルコキシシラン化合物がより好ましい。有機シラン化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機シラン化合物の含有量は、電荷輸送性物質及びドーパントの総質量に対し、通常0.1~50質量%程度であるが、得られる薄膜の電荷輸送性の低下を抑制し、かつ、正孔輸送層や発光層といった陽極とは反対側に正孔注入層に接するように積層される層への正孔注入能を高めることを考慮すると、好ましくは0.5~40質量%程度、より好ましくは0.8~30質量%程度、より一層好ましくは1~20質量%程度である。
[電荷輸送性薄膜]
本発明の電荷輸送性ワニスを基材上に塗布して乾燥させることで、基材上に電荷輸送性薄膜を形成させることができる。
ワニスの塗布方法としては、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法、スリットコート法等が挙げられるが、これらに限定されない。塗布方法に応じて、ワニスの粘度及び表面張力を調節することが好ましい。
また、本発明のワニスを用いる場合、液膜の乾燥条件も特に限定されないが、例えばホットプレートを用いた加熱焼成がある。通常100~260℃程度の範囲内で1分間~1時間程度の加熱焼成により、乾燥膜が得られる。なお、焼成雰囲気も特に限定されない。
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子の機能層として用いる場合、5~200nmが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
[有機EL素子]
本発明の有機EL素子は、一対の電極を有し、これら電極の間に、前述した本発明の電荷輸送性薄膜を備えるものである。
有機EL素子の代表的な構成としては、下記(a)~(f)が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記構成において、必要に応じて、発光層と陽極の間に電子ブロック層等を、発光層と陰極の間に正孔(ホール)ブロック層等を設けることもできる。また、正孔注入層、正孔輸送層あるいは正孔注入輸送層が電子ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよく、電子注入層、電子輸送層あるいは電子注入輸送層が正孔ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよい。
(a)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(c)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(d)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(f)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極
「正孔注入層」、「正孔輸送層」及び「正孔注入輸送層」とは、発光層と陽極との間に形成される層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「正孔注入輸送層」であり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陽極に近い層が「正孔注入層」であり、それ以外の層が「正孔輸送層」である。特に、正孔注入層及び正孔注入輸送層は、陽極からの正孔受容性だけでなく、それぞれ正孔輸送層及び発光層への正孔注入性にも優れる薄膜が用いられる。
「電子注入層」、「電子輸送層」及び「電子注入輸送層」とは、発光層と陰極との間に形成される層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有するものである。発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「電子注入輸送層」であり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陰極に近い層が「電子注入層」であり、それ以外の層が「電子輸送層」である。
「発光層」とは、発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料とを含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
本発明の電荷輸送性ワニスを用いて有機EL素子を作製する場合の使用材料や作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されない。
使用する電極基板は、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄をあらかじめ行って浄化しておくことが好ましく、例えば、陽極基板では使用直前にUVオゾン処理、酸素-プラズマ処理等の表面処理を行うことが好ましい。ただし、陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理を行わなくともよい。
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。
前述の方法により、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して焼成し、電極上に正孔注入層を作製する。この正孔注入層の上に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極をこの順で設ける。正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層は、用いる材料の特性等に応じて、蒸着法又は塗布法(ウェットプロセス)のいずれかで形成すればよい。
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属やこれらの合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
なお、金属陽極を構成するその他の金属としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、インジウム、スカンジウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ハフニウム、タリウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、チタン、鉛、ビスマスやこれらの合金等が挙げられるが、これらに限定されない。
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー、N,N'-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン(α-NPD)、N,N'-ビス(ナフタレン-2-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン、N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン、N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-9,9-スピロビフルオレン、N,N'-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-9,9-スピロビフルオレン、N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-9,9-ジメチル-フルオレン、N,N'-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-9,9-ジメチル-フルオレン、N,N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-9,9-ジフェニル-フルオレン、N,N'-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-9,9-ジフェニル-フルオレン、N,N'-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-2,2'-ジメチルベンジジン、2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジフェニルアミノ)-9,9-スピロビフルオレン、9,9-ビス[4-(N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノ)フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(N,N-ビス-ナフタレン-2-イル-アミノ)フェニル]-9H-フルオレン、9,9-ビス[4-(N-ナフタレン-1-イル-N-フェニルアミノ)-フェニル]-9H-フルオレン、2,2',7,7'-テトラキス[N-ナフタレニル(フェニル)-アミノ]-9,9-スピロビフルオレン、N,N'-ビス(フェナントレン-9-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン、2,2'-ビス[N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)アミノ]-9,9-スピロビフルオレン、2,2'-ビス(N,N-ジフェニルアミノ)-9,9-スピロビフルオレン、ジ-[4-(N,N-ジ(p-トリル)アミノ)-フェニル]シクロヘキサン、2,2',7,7'-テトラ(N,N-ジ(p-トリル)アミノ)-9,9-スピロビフルオレン、N,N,N',N'-テトラ-ナフタレン-2-イル-ベンジジン、N,N,N',N'-テトラ-(3-メチルフェニル)-3,3'-ジメチルベンジジン、N,N'-ジ(ナフタレニル)-N,N'-ジ(ナフタレン-2-イル)-ベンジジン、N,N,N',N'-テトラ(ナフタレニル)-ベンジジン、N,N'-ジ(ナフタレン-2-イル)-N,N'-ジフェニルベンジジン-1,4-ジアミン、N1,N4-ジフェニル-N1,N4-ジ(m-トリル)ベンゼン-1,4-ジアミン、N2,N2,N6,N6-テトラフェニルナフタレン-2,6-ジアミン、トリス(4-(キノリン-8-イル)フェニル)アミン、2,2'-ビス(3-(N,N-ジ(p-トリル)アミノ)フェニル)ビフェニル、4,4',4''-トリス[3-メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m-MTDATA)、4,4',4''-トリス[1-ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1-TNATA)等のトリアリールアミン類、5,5''-ビス-{4-[ビス(4-メチルフェニル)アミノ]フェニル}-2,2':5',2''-ターチオフェン(BMA-3T)等のオリゴチオフェン類等の正孔輸送性低分子材料等が挙げられる。
発光層を形成する材料としては、トリス(8-キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq3)、ビス(8-キノリノラート)亜鉛(II)(Znq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラート)-4-(p-フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、4,4'-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル、9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン、2-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン、2,7-ビス[9,9-ジ(4-メチルフェニル)-フルオレン-2-イル]-9,9-ジ(4-メチルフェニル)フルオレン、2-メチル-9,10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン、2-(9,9-スピロビフルオレン-2-イル)-9,9-スピロビフルオレン、2,7-ビス(9,9-スピロビフルオレン-2-イル)-9,9-スピロビフルオレン、2-[9,9-ジ(4-メチルフェニル)-フルオレン-2-イル]-9,9-ジ(4-メチルフェニル)フルオレン、2,2'-ジピレニル-9,9-スピロビフルオレン、1,3,5-トリス(ピレン-1-イル)ベンゼン、9,9-ビス[4-(ピレニル)フェニル]-9H-フルオレン、2,2'-ビ(9,10-ジフェニルアントラセン)、2,7-ジピレニル-9,9-スピロビフルオレン、1,4-ジ(ピレン-1-イル)ベンゼン、1,3-ジ(ピレン-1-イル)ベンゼン、6,13-ジ(ビフェニル-4-イル)ペンタセン、3,9-ジ(ナフタレン-2-イル)ペリレン、3,10-ジ(ナフタレン-2-イル)ペリレン、トリス[4-(ピレニル)-フェニル]アミン、10,10'-ジ(ビフェニル-4-イル)-9,9'-ビアントラセン、N,N'-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ジフェニル-[1,1':4',1'':4'',1'''-クォーターフェニル]-4,4'''-ジアミン、4,4'-ジ[10-(ナフタレン-1-イル)アントラセン-9-イル]ビフェニル、ジベンゾ{[f,f']-4,4',7,7'-テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3-cd:1',2',3'-lm]ペリレン、1-(7-(9,9'-ビアントラセン-10-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ピレン、1-(7-(9,9'-ビアントラセン-10-イル)-9,9-ジヘキシル-9H-フルオレン-2-イル)ピレン、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン、4,4',4''-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン、4,4'-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル(CBP)、4,4'-ビス(カルバゾール-9-イル)-2,2'-ジメチルビフェニル、2,7-ビス(カルバゾール-9-イル)-9,9-ジメチルフルオレン、2,2',7,7'-テトラキス(カルバゾール-9-イル)-9,9-スピロビフルオレン、2,7-ビス(カルバゾール-9-イル)-9,9-ジ(p-トリル)フルオレン、9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)-フェニル]フルオレン、2,7-ビス(カルバゾール-9-イル)-9,9-スピロビフルオレン、1,4-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、1,3-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン、ビス(4-N,N-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-4-メチルフェニルメタン、2,7-ビス(カルバゾール-9-イル)-9,9-ジオクチルフルオレン、4,4''-ジ(トリフェニルシリル)-p-ターフェニル、4,4'-ジ(トリフェニルシリル)ビフェニル、9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ビス(トリフェニルシリル)-9H-カルバゾール、9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ジトリチル-9H-カルバゾール、9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ビス(9-(4-メトキシフェニル)-9H-フルオレン-9-イル)-9H-カルバゾール、2,6-ビス(3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)ピリジン、トリフェニル(4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル)シラン、9,9-ジメチル-N,N-ジフェニル-7-(4-(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン、3,5-ビス(3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル)ピリジン、9,9-スピロビフルオレン-2-イル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、9,9'-(5-(トリフェニルシリル)-1,3-フェニレン)ビス(9H-カルバゾール)、3-(2,7-ビス(ジフェニルホスホリル)-9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール、4,4,8,8,12,12-ヘキサ(p-トリル)-4H-8H-12H-12C-アザジベンゾ[cd,mn]ピレン、4,7-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-1,10-フェナントロリン、2,2'-ビス(4-(カルバゾール-9-イル)フェニル)ビフェニル、2,8-ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾ[b,d]チオフェン、ビス(2-メチルフェニル)ジフェニルシラン、ビス[3,5-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジフェニルシラン、3,6-ビス(カルバゾール-9-イル)-9-(2-エチル-ヘキシル)-9H-カルバゾール、3-(ジフェニルホスホリル)-9-(4-(ジフェニルホスホリル)フェニル)-9H-カルバゾール、3,6-ビス[(3,5-ジフェニル)フェニル]-9-フェニルカルバゾール等が挙げられる。これらの材料と発光性ドーパントとを共蒸着することによって、発光層を形成してもよい。
発光性ドーパントとしては、3-(2-ベンゾチアゾリル)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、2,3,6,7-テトラヒドロ-1,1,7,7-テトラメチル-1H,5H,11H-10-(2-ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1gh]クマリン、キナクリドン、N,N'-ジメチル-キナクリドン、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)、ビス(2-フェニルピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(Ir(ppy)2(acac))、トリス[2-(p-トリル)ピリジン]イリジウム(III)(Ir(mppy)3)、9,10-ビス[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]アントラセン、9,10-ビス[フェニル(m-トリル)アミノ]アントラセン、ビス[2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(II)、N10,N10,N10,N10-テトラ(p-トリル)-9,9'-ビアントラセン-10,10'-ジアミン、N10,N10,N10,N10-テトラフェニル-9,9'-ビアントラセン-10,10'-ジアミン、N10,N10-ジフェニル-N10,N10-ジナフタレニル-9,9'-ビアントラセン-10,10'-ジアミン、4,4'-ビス(9-エチル-3-カルバゾビニレン)-1,1'-ビフェニル、ペリレン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン、1,4-ビス[2-(3-N-エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン、4,4'-ビス[4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]ビフェニル、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4'-[(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]スチルベン、ビス[3,5-ジフルオロ-2-(2-ピリジル)フェニル-(2-カルボキシピリジル)]イリジウム(III)、4,4'-ビス[4-(ジフェニルアミノ)スチリル]ビフェニル、ビス(2,4-ジフルオロフェニルピリジナト)テトラキス(1-ピラゾリル)ボレートイリジウム(III)、N,N'-ビス(ナフタレン-2-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-トリス(9,9-ジメチルフルオレニレン)、2,7-ビス{2-[フェニル(m-トリル)アミノ]-9,9-ジメチル-フルオレン-7-イル}-9,9-ジメチル-フルオレン、N-(4-((E)-2-(6((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン-2-イル)ビニル)フェニル)-N-フェニルベンゼンアミン、fac-イリジウム(III)トリス(1-フェニル-3-メチルベンズイミダゾリン-2-イリデン-C,C2)、mer-イリジウム(III)トリス(1-フェニル-3-メチルベンズイミダゾリン-2-イリデン-C,C2)、2,7-ビス[4-(ジフェニルアミノ)スチリル]-9,9-スピロビフルオレン、6-メチル-2-(4-(9-(4-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェニル)アントラセン-10-イル)フェニル)ベンゾ[d]チアゾール、1,4-ジ[4-(N,N-ジフェニル)アミノ]スチリルベンゼン、1,4-ビス(4-(9H-カルバゾール-9-イル)スチリル)ベンゼン、(E)-6-(4-(ジフェニルアミノ)スチリル)-N,N-ジフェニルナフタレン-2-アミン、ビス(2,4-ジフルオロフェニルピリジナト)(5-(ピリジン-2-イル)-1H-テトラゾレート)イリジウム(III)、ビス(3-トリフルオロメチル-5-(2-ピリジル)ピラゾール)((2,4-ジフルオロベンジル)ジフェニルホスフィネート)イリジウム(III)、ビス(3-トリフルオロメチル-5-(2-ピリジル)ピラゾレート)(ベンジルジフェニルホスフィネート)イリジウム(III)、ビス(1-(2,4-ジフルオロベンジル)-3-メチルベンズイミダゾリウム)(3-(トリフルオロメチル)-5-(2-ピリジル)-1,2,4-トリアゾレート)イリジウム(III)、ビス(3-トリフルオロメチル-5-(2-ピリジル)ピラゾレート)(4',6'-ジフルオロフェニルピリジネート)イリジウム(III)、ビス(4',6'-ジフルオロフェニルピリジナト)(3,5-ビス(トリフルオロメチル)-2-(2'-ピリジル)ピロレート)イリジウム(III)、ビス(4',6'-ジフルオロフェニルピリジナト)(3-(トリフルオロメチル)-5-(2-ピリジル)-1,2,4-トリアゾレート)イリジウム(III)、(Z)-6-メシチル-N-(6-メシチルキノリン-2(1H)-イリデン)キノリン-2-アミン-BF2、(E)-2-(2-(4-(ジメチルアミノ)スチリル)-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)マロノニトリル、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-ジュロリジル-9-エニル-4H-ピラン、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(1,1,7,7-テトラメチルジュロリジル-9-エニル)-4H-ピラン、4-(ジシアノメチレン)-2-tert-ブチル-6-(1,1,7,7-テトラメチルジュロリジン-4-イル-ビニル)-4H-ピラン、トリス(ジベンゾイルメタン)フェナントロリンユーロピウム(III)、5,6,11,12-テトラフェニルナフタセン、ビス(2-ベンゾ[b]チオフェン-2-イル-ピリジン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス(1-フェニルイソキノリン)イリジウム(III)、ビス(1-フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[1-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス[2-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[4,4'-ジ-tert-ブチル-(2,2')-ビピリジン]ルテニウム(III)・ビス(ヘキサフルオロホスフェート)、トリス(2-フェニルキノリン)イリジウム(III)、ビス(2-フェニルキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、2,8-ジ-tert-ブチル-5,11-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-6,12-ジフェニルテトラセン、ビス(2-フェニルベンゾチアゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、5,10,15,20-テトラフェニルテトラベンゾポルフィリン白金、オスミウム(II)ビス(3-トリフルオロメチル-5-(2-ピリジン)-ピラゾレート)ジメチルフェニルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3-(トリフルオロメチル)-5-(4-tert-ブチルピリジル)-1,2,4-トリアゾレート)ジフェニルメチルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3-(トリフルオロメチル)-5-(2-ピリジル)-1,2,4-トリアゾール)ジメチルフェニルホスフィン、オスミウム(II)ビス(3-(トリフルオロメチル)-5-(4-tert-ブチルピリジル)-1,2,4-トリアゾレート)ジメチルフェニルホスフィン、ビス[2-(4-n-ヘキシルフェニル)キノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[2-(4-n-ヘキシルフェニル)キノリン]イリジウム(III)、トリス[2-フェニル-4-メチルキノリン]イリジウム(III)、ビス(2-フェニルキノリン)(2-(3-メチルフェニル)ピリジネート)イリジウム(III)、ビス(2-(9,9-ジエチル-フルオレン-2-イル)-1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾラト)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、ビス(2-フェニルピリジン)(3-(ピリジン-2-イル)-2H-クロメン-2-オネート)イリジウム(III)、ビス(2-フェニルキノリン)(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオネート)イリジウム(III)、ビス(フェニルイソキノリン)(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオネート)イリジウム(III)、イリジウム(III)ビス(4-フェニルチエノ[3,2-c]ピリジナト-N,C2)アセチルアセトネート、(E)-2-(2-tert-ブチル-6-(2-(2,6,6-トリメチル-2,4,5,6-テトラヒドロ-1H-ピローロ[3,2,1-ij]キノリン-8-イル)ビニル)-4H-ピラン-4-イリデン)マロノニトリル、ビス(3-トリフルオロメチル-5-(1-イソキノリル)ピラゾレート)(メチルジフェニルホスフィン)ルテニウム、ビス[(4-n-ヘキシルフェニル)イソキノリン](アセチルアセトネート)イリジウム(III)、白金(II)オクタエチルポルフィン、ビス(2-メチルジベンゾ[f,h]キノキサリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)、トリス[(4-n-ヘキシルフェニル)イソキノリン]イリジウム(III)等が挙げられる。
電子輸送層を形成する材料としては、8-ヒドロキシキノリノレート-リチウム、2,2',2''-(1,3,5-ベンジントリル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール)、2-(4-ビフェニル)5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、ビス(2-メチル-8-キノリノレート)-4-(フェニルフェノラト)アルミニウム、1,3-ビス[2-(2,2'-ビピリジン-6-イル)-1,3,4-オキサジアゾ-5-イル]ベンゼン、6,6'-ビス[5-(ビフェニル-4-イル)-1,3,4-オキサジアゾ-2-イル]-2,2'-ビピリジン、3-(4-ビフェニル)-4-フェニル-5-tert-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール、4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、2,7-ビス[2-(2,2'-ビピリジン-6-イル)-1,3,4-オキサジアゾ-5-イル]-9,9-ジメチルフルオレン、1,3-ビス[2-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾ-5-イル]ベンゼン、トリス(2,4,6-トリメチル-3-(ピリジン-3-イル)フェニル)ボラン、1-メチル-2-(4-(ナフタレン-2-イル)フェニル)-1H-イミダゾ[4,5f][1,10]フェナントロリン、2-(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン、フェニル-ジピレニルホスフィンオキサイド、3,3',5,5'-テトラ[(m-ピリジル)-フェン-3-イル]ビフェニル、1,3,5-トリス[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、4,4'-ビス(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)ビフェニル、1,3-ビス[3,5-ジ(ピリジン-3-イル)フェニル]ベンゼン、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ジフェニルビス(4-(ピリジン-3-イル)フェニル)シラン、3,5-ジ(ピレン-1-イル)ピリジン等が挙げられる。
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al2O3)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、三酸化モリブデン(MoO3)、アルミニウム、リチウムアセチルアセトネート(Li(acac))、酢酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム-銀合金、アルミニウム-リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
また、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法のその他の例は、以下のとおりである。
前述した有機EL素子作製方法において、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の真空蒸着操作を行うかわりに、正孔輸送層、発光層を順次形成することによって本発明の電荷輸送性ワニスによって形成される電荷輸送性薄膜を有する有機EL素子を作製することができる。具体的には、陽極基板上に本発明の電荷輸送性ワニスを塗布して前記の方法により正孔注入層を作製し、その上に正孔輸送層、発光層を順次形成し、更に陰極材料を蒸着して有機EL素子とする。
使用する陰極及び陽極材料としては、前述のものと同様のものが使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行うことができる。
正孔輸送層及び発光層の形成方法としては、正孔輸送性高分子材料若しくは発光性高分子材料、又はこれらにドーパントを加えた材料に溶媒を加えて溶解するか、均一に分散し、それぞれ正孔注入層又は正孔輸送層の上に塗布した後、焼成することで成膜する方法が挙げられる。
正孔輸送性高分子材料としては、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N'-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N'-ビス{p-ブチルフェニル}-1,1'-ビフェニレン-4,4-ジアミン)]、ポリ[(9,9-ビス{1'-ペンテン-5'-イル}フルオレニル-2,7-ジイル)-co-(N,N'-ビス{p-ブチルフェニル}-1,4-ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N'-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン]-エンドキャップド ウィズ ポリシルセスキオキサン、ポリ[(9,9-ジジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,4'-(N-(p-ブチルフェニル))ジフェニルアミン)](TFB)等が挙げられる。
発光性高分子材料としては、ポリ(9,9-ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2-メトキシ-5-(2'-エチルヘキソキシ)-1,4-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3-アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
溶媒としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等が挙げられる。溶解又は均一分散法としては、攪拌、加熱攪拌、超音波分散等の方法が挙げられる。
塗布方法としては、特に限定されず、インクジェット法、スプレー法、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられる。なお、塗布は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが好ましい。
焼成方法としては、不活性ガス下又は真空中、オーブン又はホットプレートで加熱する方法が挙げられる。
本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜が正孔注入輸送層である場合の、本発明の有機EL素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。
陽極基板上に正孔注入輸送層を形成し、この正孔注入輸送層の上に、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極をこの順で設ける。発光層、電子輸送層及び電子注入層の形成方法及び具体例としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
陽極材料、発光層、発光性ドーパント、電子輸送層及び電子ブロック層を形成する材料、陰極材料としては、前述したものと同様のものが挙げられる。
なお、電極及び前記各層の間の任意の間に、必要に応じてホールブロック層、電子ブロック層等を設けてもよい。例えば、電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられる。
陽極と陰極及びこれらの間に形成される層を構成する材料は、ボトムエミッション構造、トップエミッション構造のいずれを備える素子を製造するかで異なるため、その点を考慮して、適宜材料を選択する。
通常、ボトムエミッション構造の素子では、基板側に透明陽極が用いられ、基板側から光が取り出されるのに対し、トップエミッション構造の素子では、金属からなる反射陽極が用いられ、基板と反対方向にある透明電極(陰極)側から光が取り出される。そのため、例えば陽極材料について言えば、ボトムエミッション構造の素子を製造する際はITO等の透明陽極を、トップエミッション構造の素子を製造する際はAl/Nd等の反射陽極を、それぞれ用いる。
本発明の有機EL素子は、特性悪化を防ぐため、定法に従い、必要に応じて捕水剤等と共に封止してもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置は、以下のとおりである。
(1)1H-NMR測定:Bruker社製、Ascend 500
(2)LC/MS:Waters社製、ZQ 2000
(3)基板洗浄:長州産業(株)製、基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(4)ワニスの塗布:ミカサ(株)製、スピンコーターMS-A100
(5)膜厚測定:(株)小坂研究所製、微細形状測定機サーフコーダET-4000
(6)HODの作製:長州産業(株)製、多機能蒸着装置システムC-E2L1G1-N
(7)HODの電流-電圧測定:(株)イーエッチシー製、I-V-L測定システム
[1]化合物の合成
[比較例1-1]スルホン酸化合物4FNS-4の合成
国際公開第2015/111654号に記載の方法に従って、下記式で表されるスルホン酸化合物4FNS-4を合成した。
Figure 0007234937000020
[比較例1-2]スルホン酸化合物4FNS-2の合成
国際公開第2009/096352号に記載の方法に従って、下記式で表されるスルホン酸化合物4FNS-2を合成した。
Figure 0007234937000021
[実施例1-1]スルホン酸エステル化合物4FNS-4-PGEEの合成
Figure 0007234937000022
4FNS-4(4.97g、10mmol)に、塩化チオニル(25g)及び触媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(0.4mL)を加え、1時間加熱還流した後、塩化チオニルを留去し、4FNS-4の酸クロリドを含む固体を得た。本化合物はこれ以上精製することなく次工程に使用した。
前記固体にクロロホルム(30mL)及びピリジン(20mL)を加え、0℃にてプロピレングリコールモノエチルエーテル6.24g(60mmol)を加えた。室温まで昇温し、その後1.5時間攪拌した。溶媒を留去した後、水を加え、酢酸エチルにて抽出し、有機層を硫酸ナトリウムにて乾燥させた。ろ過、濃縮後、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製することにより、スルホン酸エステル化合物4FNS-4-PGEE1.32gを白色固体として得た(収率20%(4FNS-4からの2段階収率))。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(500MHz, CDCl3): δ 0.89-0.95(m, 6H), 1.34 and 1.39(a pair of d, J=6.5Hz, 6H), 3.28-3.50(m, 8H), 4.81-4.87(m, 2H), 7.26(s, 1H), 8.22(d, J=9.0Hz, 1H), 8.47(s, 1H), 8.54(d, J=9.0Hz, 1H) , 8.68(s, 1H).
LC/MS (ESI+) m/z; 687 [M+NH4]+
[実施例1-2]スルホン酸エステル化合物4FNS-2-PGEEの合成
Figure 0007234937000023
4FNS-4のかわりに4FNS-2(4.77g、10mmol)を用いた以外は、実施例1-1と同様に合成し、スルホン酸エステル化合物4FNS-2-PGEE1.04gを白色固体として得た(収率16%(4FNS-2からの2段階収率))。1H-NMR及びLC/MSの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(500MHz, CDCl3): δ 0.89-0.95(m, 6H), 1.33 and 1.39(a pair of d, J=6.5Hz, 6H), 3.28-3.50(m, 8H), 4.77-4.89(m, 2H), 7.25(s, 1H), 8.22(d, J=8.8Hz, 1H), 8.45(s, 1H), 8.52(d, J=8.8Hz, 1H), 8.68(s, 1H).
LC/MS (ESI+) m/z; 667 [M+NH4]+
[実施例1-3]スルホン酸エステル化合物4FNS-4-EHの合成
Figure 0007234937000024
プロピレングリコールモノエチルエーテルのかわりに2-エチル-1-ヘキサノールを用いた以外は、実施例1-1と同様に合成し、4FNS-4(4.97g、10mmol)からスルホン酸エステル化合物4FNS-4-EH1.48gを白色固体として得た(収率21%(4FNS-4からの2段階収率))。1H-NMRの測定結果を以下に示す。
1H-NMR(500MHz, CDCl3): δ 0.77-0.84(m, 12H), 1.13-1.39(m, 16H), 1.54-1.62(m, 2H), 3.99-4.05(m, 2H), 4.05-4.11(m, 2H), 7.24(s, 1H), 8.20(d, J=8.9Hz, 1H), 8.45(s, 1H), 8.60(d, J=8.9Hz, 1H), 8.69(s, 1H).
[2]電荷輸送性ワニスの調製及び溶解性の評価
[実施例2-1]電荷輸送性ワニスA1の調製
4FNS-4-PGEE(348mg)及びオリゴアニリン化合物1(178mg)を、3-フェノキシトルエン(3g、比誘電率:2.7)及び安息香酸ブチル(7g、比誘電率:2.5)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4-PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスA1(固形分濃度5質量%)を得た。なお、オリゴアニリン化合物1は、国際公開第2013/084664号記載の方法に従って合成した。
Figure 0007234937000025
[実施例2-2]電荷輸送性ワニスA2の調製
4FNS-4-PGEE(257mg)及びオリゴアニリン化合物2(270mg)を、3-フェノキシトルエン(3g)及び安息香酸ブチル(7g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4-PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスA2(固形分濃度5質量%)を得た。なお、オリゴアニリン化合物2は、国際公開第2015/050253号の合成例18に記載の方法に従って合成した。
Figure 0007234937000026
[実施例2-3]電荷輸送性ワニスA3の調製
4FNS-2-PGEE(253mg)及びオリゴアニリン化合物2(274mg)を、3-フェノキシトルエン(3g)及び安息香酸ブチル(7g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-2-PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスA3(固形分濃度5質量%)を得た。
[実施例2-4]電荷輸送性ワニスA4の調製
4FNS-4-EH(267mg)及びオリゴアニリン化合物2(260mg)を、3-フェノキシトルエン(3g)及び安息香酸ブチル(7g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4-EHは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスA4(固形分濃度5質量%)を得た。
[実施例2-5]電荷輸送性ワニスA5の調製
4FNS-4-EH(357mg)及びオリゴアニリン化合物1(170mg)を、3-フェノキシトルエン(3g)及び安息香酸ブチル(7g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4-EHは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスA5(固形分濃度5質量%)を得た。
[実施例2-6]電荷輸送性ワニスA6の調製
4FNS-2-PGEE(345mg)及びオリゴアニリン化合物1(182mg)を、3-フェノキシトルエン(3g)及び安息香酸ブチル(7g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-2-PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスA6(固形分濃度5質量%)を得た。
[実施例2-7]電荷輸送性ワニスB1の調製
4FNS-4-PGEE(135mg)及びオリゴアニリン化合物1(69mg)を、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3.3g、比誘電率:26.0)、2,3-ブタンジオール(4g、比誘電率:17.0)及びジエチレングリコールモノエチルエーテル(2.7g、比誘電率:7.9)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4-PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスB1(固形分濃度2質量%)を得た。
[実施例2-8]電荷輸送性ワニスB2の調製
4FNS-4-PGEE(100mg)及びオリゴアニリン化合物2(105mg)を、ジエチレングリコール(4g、比誘電率:25.2)及びトリエチレングリコールジメチルエーテル(6g、比誘電率:5.1)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4-PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスB2(固形分濃度2質量%)を得た。
[実施例2-9]電荷輸送性ワニスB3の調製
4FNS-2-PGEE(98mg)及びオリゴアニリン化合物2(106mg)を、ジエチレングリコール(4g)及びトリエチレングリコールジメチルエーテル(6g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-2-PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスB3(固形分濃度2質量%)を得た。
[実施例2-10]電荷輸送性ワニスB4の調製
4FNS-4-EH(103mg)及びオリゴアニリン化合物2(101mg)を、ジエチレングリコール(4g)及びトリエチレングリコールジメチルエーテル(6g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4-EHは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスB4(固形分濃度2質量%)を得た。
[実施例2-11]電荷輸送性ワニスB5の調製
4FNS-4-EH(138mg)及びオリゴアニリン化合物1(66mg)を、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3.3g)、2,3-ブタンジオール(4g)及びジエチレングリコールモノエチルエーテル(2.7g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4-EHは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスB5(固形分濃度2質量%)を得た。
[比較例2-1]
4FNS-4(312mg)及びオリゴアニリン化合物1(215mg)を、3-フェノキシトルエン(3g)及び安息香酸ブチル(7g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、60分間加熱攪拌したが、4FNS-4は全く溶解しなかった。
[比較例2-2]
4FNS-4(218mg)及びオリゴアニリン化合物2(308mg)を、3-フェノキシトルエン(3g)及び安息香酸ブチル(7g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、60分間加熱攪拌したが、4FNS-4は全く溶解しなかった。
[比較例2-3]
4FNS-2(306mg)及びオリゴアニリン化合物1(220mg)を、3-フェノキシトルエン(3g)及び安息香酸ブチル(7g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、60分間加熱攪拌したが、4FNS-2は全く溶解しなかった。
[比較例2-4]
4FNS-2(213mg)及びオリゴアニリン化合物2(313mg)を、3-フェノキシトルエン(3g)及び安息香酸ブチル(7g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、60分間加熱攪拌したが、4FNS-2は全く溶解しなかった。
[比較例2-5]電荷輸送性ワニスC1の調製
4FNS-4(121mg)及びオリゴアニリン化合物1(83mg)を、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3.3g)、2,3-ブタンジオール(4g)及びジエチレングリコールモノエチルエーテル(2.7g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスC1(固形分濃度2質量%)を得た。
[比較例2-6]電荷輸送性ワニスC2の調製
4FNS-4(85mg)及びオリゴアニリン化合物2(120mg)を、ジエチレングリコール(4g)及びトリエチレングリコールジメチルエーテル(6g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスC2(固形分濃度2質量%)を得た。
[比較例2-7]電荷輸送性ワニスC3の調製
4FNS-2(119mg)及びオリゴアニリン化合物1(85mg)を、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(3.3g)、2,3-ブタンジオール(4g)及びジエチレングリコールモノエチルエーテル(2.7g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-2は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスC3(固形分濃度2質量%)を得た。
[比較例2-8]電荷輸送性ワニスC4の調製
4FNS-2(83mg)及びオリゴアニリン化合物2(122mg)を、ジエチレングリコール(4g)及びトリエチレングリコールジメチルエーテル(6g)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-2は完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスC4(固形分濃度2質量%)を得た。
4FNS-4-PGEE、4FNS-2-PGEE及び4FNS-4-EHは、50℃、350rpm、10分間の加熱攪拌条件下で、低極性溶媒である3-フェノキシトルエン及び安息香酸ブチルの混合溶媒に完全に溶解したのに対し、4FNS-4及び4FNS-2は、前記混合溶媒には溶解しなかった。また、高極性溶媒に対しては、4FNS-4-PGEE、4FNS-2-PGEE、4FNS-4-EH、4FNS-4、4FNS-2はいずれも完全に溶解した。すなわち、本発明のようにスルホン酸化合物をエステル化することにより、低極性溶媒及び高極性溶媒のどちらにも可溶となり、溶媒選択性が拡がっていることがわかった。
[3]上層蒸着型ホールオンリー素子(HOD)の作製及び特性評価
以下の実施例及び比較例において、ITO基板としては、ITOが表面上に膜厚150nmでパターニングされた25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にO2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去したものを使用した。
[実施例3-1]
電荷輸送性ワニスA1を、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気下で、120℃で1分間仮焼成をし、次いで230℃で15分間本焼成をし、ITO基板上に40nmの薄膜を形成した。
その上に、蒸着装置(真空度2.0×10-5Pa)を用いてα-NPD及びアルミニウムの薄膜を順次積層し、HODを得た。蒸着は、蒸着レート0.2nm/秒の条件で行った。α-NPD及びアルミニウムの薄膜の膜厚は、それぞれ30nm及び80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、HODは封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。
酸素濃度2ppm以下、露点-85℃以下の窒素雰囲気中で、HODを封止基板の間に収め、封止基板を接着材((株)MORESCO製モレスコモイスチャーカットWB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製HD-071010W-40)をHODと共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長365nm、照射量6,000mJ/cm2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着材を硬化させた。
[実施例3-2]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスA2を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
[実施例3-3]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスA3を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
[実施例3-4]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスA4を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
[実施例3-5]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスA5を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
[実施例3-6]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスA6を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
[実施例3-7]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスB1を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
[実施例3-8]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスB2を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
[実施例3-9]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスB3を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
[実施例3-10]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスB4を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
[実施例3-11]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスB5を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
[比較例3-1]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスC1を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
[比較例3-2]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスC2を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
[比較例3-3]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスC3を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
[比較例3-4]
電荷輸送性ワニスA1のかわりに電荷輸送性ワニスC4を用いた以外は、実施例3-1と同様の方法でHODを作製した。
実施例3-1~3-11及び比較例3-1~3-4で作製した各HODについて、駆動電圧4Vにおける電流密度を測定した。結果を表1~4に示す。
Figure 0007234937000027
Figure 0007234937000028
Figure 0007234937000029
Figure 0007234937000030
表1~4に示したように、本発明のスルホン酸エステル化合物を含む電荷輸送性ワニスは、エステル化していない従来のスルホン酸化合物を含む電荷輸送性ワニスと比べて、高い正孔輸送性を示した。
[4]電荷輸送性ワニスの調製及び保存安定性評価
[実施例4-1]電荷輸送性ワニスDの調製
4FNS-4-PGEE(348mg)及びオリゴアニリン化合物1(178mg)を、3-フェノキシトルエン(5g、比誘電率:2.7)及びテトラリン(5g、比誘電率:2.2)の混合溶媒に加え、50℃、350rpm、10分間加熱攪拌した。これにより、4FNS-4-PGEEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスD(固形分濃度5質量%)を得た。
[比較例4-1]電荷輸送性ワニスEの調製
NSO-2-PGME(384mg)及びオリゴアニリン化合物1(142mg)を、3-フェノキシトルエン(5g)及びテトラリン(5g)の混合溶媒に加え、50℃、400rpm、30分間加熱攪拌したが、溶け残りが生じた。70℃、400rpm、20分間加熱攪拌することで、NSO-2-PGMEは完全に溶媒に溶解した。得られた溶液を孔径0.2μmのPTFE製フィルターを用いて濾過し、電荷輸送性ワニスE(固形分濃度5質量%)を得た。なお、NSO-2-PGMEは、特許文献6に記載された方法に従って合成した。
Figure 0007234937000031
電荷輸送性ワニスD及びEを2℃で冷蔵保存し、保存開始後7日が経過した時点における析出物の有無を目視で観測した。結果を表5に示す。
Figure 0007234937000032
表5に示したように、本発明のスルホン酸エステル化合物を含む電荷輸送性ワニスは、保存安定性に優れていた。

Claims (13)

  1. 下記式(1)で表されるスルホン酸エステル化合物。
    Figure 0007234937000033
    (式中、R1s~R5sは、それぞれ独立に、水素原子、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基であり;
    6s~R9sは、それぞれ独立に、水素原子、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基であり;
    10sは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基、又は-OR11sであり、R11sは、置換されていてもよい炭素数2~20の1価炭化水素基であり;
    1は、-O-、-S-又は-NH-であり;
    2は、ナフタレンから誘導される(n+1)価の芳香族基であり;
    nは、1≦n≦4を満たす整数である。)
  2. 1sが、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、又は炭素数2~10のハロゲン化アルケニル基である請求項1記載のスルホン酸エステル化合物。
  3. 2s ~R 5s が、ハロゲン原子である請求項1又は2記載のスルホン酸エステル化合物。
  4. 2s~R5sが、全てフッ素原子である請求項記載のスルホン酸エステル化合物。
  5. nが、2である請求項1~4のいずれか1項記載のスルホン酸エステル化合物。
  6. 下記式(1-1)で表されるものである請求項1~5のいずれか1項記載のスルホン酸エステル化合物。
    Figure 0007234937000034
    (式中、R1s~R9s、R11s、A1、A2及びnは、前記と同じ。)
  7. 下記式(1-2)で表されるものである請求項1~5のいずれか1項記載のスルホン酸エステル化合物。
    Figure 0007234937000035
    (式中、R1s~R6s、R8s、A1、A2及びnは、前記と同じであり、R12sは、直鎖状又は分岐状の炭素数1~20の1価脂肪族炭化水素基である。)
  8. 請求項1~7のいずれか1項記載のスルホン酸エステル化合物からなる電子受容性物質前駆体。
  9. 請求項8記載の電子受容性物質前駆体、電荷輸送性物質及び有機溶媒を含む電荷輸送性ワニス。
  10. 前記有機溶媒が、低極性有機溶媒である請求項9記載の電荷輸送性ワニス。
  11. 前記電荷輸送性物質が、アニリン誘導体である請求項9又は10記載の電荷輸送性ワニス。
  12. 請求項9~11のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜。
  13. 請求項12記載の電荷輸送性薄膜を備える有機エレクトロルミネッセンス素子。
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