JP4883297B2 - アリールスルホン酸化合物及び電子受容性物質としての利用 - Google Patents

アリールスルホン酸化合物及び電子受容性物質としての利用 Download PDF

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Description

本発明は、アリールスルホン酸化合物、及びこの化合物の電子受容性物質としての利用に関する。この利用としては、アリールスルホン酸化合物からなる電子受容性物質を含むワニス、このワニスを用いてなる電荷輸送性薄膜又はこの電荷輸送性薄膜を用いた有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略す)素子等がある。
有機EL素子、特に低分子系有機EL(以下、OLEDと略す)素子は、イーストマンコダック社によって有機層の極薄膜化、多層化による機能分離が図られ、駆動電圧が大幅に低下する等、その特性は大きく向上した(非特許文献1:アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、米国、1987年、51巻、p.913−915)。
また、ケンブリッジ大によって高分子発光材料を用いた有機EL(以下、PLEDと略す)素子が見出され(非特許文献2:ネイチャー(Nature)、英国、1990年、第347巻、p.539−541)、近年の高分子有機EL素子の特性は、従来のOLED素子に引けを取らないレベルにまで向上している。
上記OLED素子では、正孔注入層として銅フタロシアニン(CuPC)層を設けることによって、駆動電圧の低下や発光効率向上等の初期特性向上、さらには寿命特性向上を実現し得ることが報告されている(非特許文献3:アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、米国、1996年、69巻、p.2160−2162)。
一方、PLED素子では、ポリアニリン系材料(非特許文献4:ネイチャー(Nature)、英国、1992年、第357巻、p.477−479、アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、米国、1994年、64巻、p.1245−1247)や、ポリチオフェン系材料(非特許文献5:アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、米国、1998年、72巻、p.2660−2662)を、正孔輸送層(バッファ層)として用いることで、OLED素子と同様の効果が得られることが報告されている。
さらに、これらの素子の陰極側においては、金属酸化物(非特許文献6:アイイーイーイー・トランサクションズ・オン・エレクトロン・デバイシイズ(IEEE Transactions on Electron Devices)、米国、1997年、44巻、p.1245−1248)、金属ハロゲン化物(非特許文献7:アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、米国、1997年、70巻、p.152−154)、金属錯体(非特許文献8:ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)、1999年、第38巻、p.L1348−1350)などを、電子注入層として用いることで、初期特性が向上することが見出され、これらの電荷注入層、バッファ層は一般的に使用されるようになった。
最近では、低分子オリゴアニリン系材料を用いた有機溶液系の電荷輸送性ワニスが見出され、これを使用して得られる正孔注入層を挿入することによって、優れたEL素子特性を示すことが見出されている(特許文献1:特開2002−151272号公報)。
しかし、OLED素子における一般的な正孔注入材料であるCuPCは凹凸が激しく、他の有機層に微量混入することによって大きく特性を低下させるなどの欠点がある。
また、現在、PLED素子に用いられているポリアニリン系材料、ポリチオフェン系材料は、素子劣化を促進する可能性のある水を溶剤として含むこと、溶剤の選択肢が限られること、材料の凝集や低溶解性によって均一な成膜ができる塗布法が限られることなどの問題点を含んでいる。
さらに、溶解性の高い低分子オリゴアニリン系材料を含む有機溶剤系の電荷輸送性ワニスを用いた場合にも、使用可能な電子受容性ドーパントの種類が限られる、電子受容性ドーパントの耐熱性及び非晶性が低い等の問題が生じる場合がある。低分子量の電荷輸送性物質及び電荷受容性ドーパント物質を含む電荷輸送性ワニス、特に結晶性物質を含むワニスにおいては、一般に高い平坦性を示す成膜が難しい場合がある。
特開2002−151272号公報 アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、米国、1987年、51巻、p.913−915 ネイチャー(Nature)、英国、1990年、第347巻、p.539−541 アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、米国、1996年、69巻、p.2160−2162 ネイチャー(Nature)、英国、1992年、第357巻、p.477−479、 アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、米国、1994年、64巻、p.1245−1247 アプライド・フィジックス・レターズ(Applied Physics Letters)、米国、1998年、72巻、p.2660−2662 アイイーイーイー・トランサクションズ・オン・エレクトロン・デバイシイズ(IEEE Transactions on Electron Devices)、米国、1997年、44巻、p.1245−1248 ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Japanese Journal of Applied Physics)、1999年、第38巻、p.L1348−1350
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高い均一成膜性を実現し、特にOLED素子及びPLED素子に適用することによって、低駆動電圧、高発光効率、長寿命化等の優れたEL素子特性の実現を可能にする、電子受容性物質として好適なアリールスルホン酸化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、式(1)で示されるアリールスルホン酸化合物が、耐熱性が高く、非晶性を示し、しかも、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す)等の有機溶剤に可溶の材料であること、及びこれらのアリールスルホン酸化合物を電荷輸送性ホスト物質と組み合わせると、当該化合物が電荷輸送性ホスト物質の有する電子を受容して電荷輸送性を向上し得るため、OLED素子等の正孔注入層として用いた場合に、低電圧駆動、発光効率の向上を可能にすることを見出した。
さらに、当該化合物を、結晶性の電荷輸送性ホスト物質と組み合わせて使用しても、得られる電荷輸送性薄膜は高い非晶性を示すことを見出した。
したがって、本発明は、下記[1]〜[6]を提供する。
[1] 式(1)で表されることを特徴とするアリールスルホン酸化合物。
Figure 0004883297
〔式中、Xは、Oを表し、
Aは、ナフタレン環又はアントラセン環を表し、
Bは、2〜4価のパーフルオロビフェニル基を表し、
nは、Aに結合するスルホン酸基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であり、
qは、BとXとの結合数を示し、2〜4を満たす整数である。〕
[2] 前記Aがナフタレン環を表す[1]のアリールスルホン酸化合物。
[3] [1]又は[2]のアリールスルホン酸化合物からなる電子受容性物質。
[4] [3]の電子受容性物質、電荷輸送性物質、及び溶剤を含む電荷輸送性ワニス。
[5] [3]の電子受容性物質、及び電荷輸送性物質を含む電荷輸送性薄膜。
[6] [5]の電荷輸送性薄膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明のアリールスルホン酸化合物は、室温で非晶質固体性を示すだけでなく、各種有機溶媒に対する溶解性が高いため、この化合物をドーパントとして含む有機溶剤系の電荷輸送性ワニスを使用することで、非晶質固体薄膜を容易に作製することができる。
また、本発明のアリールスルホン酸化合物を含んで形成された薄膜を、正孔注入層又は正孔輸送層として使用することで、有機EL素子の駆動電圧を低下させ、発光の電流効率を向上させることができる上、均一な発光面を得ることができる。
さらに、本発明のアリールスルホン酸化合物は、従来使用されている水溶液系の電荷輸送性ワニスとは異なり、有機溶剤のみで使用することができ、EL素子内への水分混入による素子劣化を防ぐこともできる。
本発明のアリールスルホン酸化合物を電荷受容性ドーパント物質として含む有機溶剤系の電荷輸送性ワニスは、コンデンサ電極保護膜、帯電防止膜、イオン伝導膜、太陽電池用途及び燃料電池等への応用も可能である。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
式(1)又は式(2)で表されるアリールスルホン酸化合物において、Aは、X及びn個の(SO3H)基以外の置換基を有していてもよいナフタレン環又はアントラセン環を表す。
ここで、X及び(SO3H)基以外の置換基の具体例としては、水酸基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホン基、ハロゲン原子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一価炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビシクロヘキシル基等のビシクロアルキル基;ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1又は2又は3−ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、キシリル基、トリル基、ビフェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルシクロヘキシル基等のアラルキル基等や、これらの一価炭化水素基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、スルホン酸基などで置換されたのが挙げられる。
オルガノオキシ基の具体例としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基などが挙げられ、これらのアルキル基、アルケニル基及びアリール基としては、上記で例示した置換基と同様のものが挙げられる。
オルガノアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、ヘプチルアミノ基、オクチルアミノ基、ノニルアミノ基、デシルアミノ基、ラウリルアミノ基等のアルキルアミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジヘプチルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ジノニルアミノ基、ジデシルアミノ基等のジアルキルアミノ基;シクロヘキシルアミノ基等のジシクロアルキルアミノ基;モルホリノ基などが挙げられる。
オルガノシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基などが挙げられる。
オルガノチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ラウリルチオ基などのアルキルチオ基が挙げられる。
アシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
上記一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基及びアシル基などにおける炭素数は、特に限定されるものではないが、一般に炭素数1〜20、好ましくは1〜8である。
上述の各置換基の中でも、フッ素、スルホン酸基、置換もしくは非置換のオルガノオキシ基、アルキル基、オルガノシリル基がより好ましい。
なお、非置換とは水素原子が結合していることを意味する。また、以上の置換基において、置換基同士が連結されて環状である部分を含んでいてもよい。
Xは、O、S又はNHを表すが、中でもOが好ましい。
Bは、非置換もしくは置換の炭化水素基、1,3,5−トリアジン基、又は非置換もしくは置換の下記式(3)もしくは(4)で示される基を表す。
Figure 0004883297
(式中W1及びW2は、それぞれ独立して、O、S、S(O)基、S(O2)基、又は非置換もしくは置換基が結合したN、Si、P、P(O)基を示す。)
耐久性向上及び電荷輸送性向上を図ることを考慮すると、Bとしては、一つ以上の芳香環を含んでいる2価以上の非置換もしくは置換の炭化水素基、2価もしくは3価の1,3,5−トリアジン基、置換もしくは非置換の2価のジフェニルスルホン基が好ましく、特に、2価もしくは3価の置換もしくは非置換ベンジル基、2価の置換もしくは非置換p−キシリレン基、2価もしくは3価の置換もしくは非置換ナフチル基、2価もしくは3価の1,3,5−トリアジン基、2価の置換もしくは非置換ジフェニルスルホン基、2〜4価のパーフルオロビフェニル基、2価の置換もしくは非置換2,2−ビス((ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロピル基、置換もしくは非置換ポリビニルベンジル基が好適である。
nは、アリール骨格であるAに結合したスルホン酸基数を示し、1≦n≦4であれば特に限定されないが、当該化合物に高電子受容性及び高溶解性を付与することを考慮すると、1又は2であることが好ましい。
qは、BとXとの結合数を示し、1≦qを満たす整数であれば特に限定はないが、2≦qであることが好ましい。
rは、繰り返し単位の数を示し、1≦rを満たす整数であれば特に限定はないが、2≦rであることが好ましい。
式(1)又は式(2)で表されるアリールスルホン酸化合物の製造方法としては、例えば、以下の方法を挙げることができる。
すなわち、下記アリールスルホン酸化合物(5)又は(6)のXH基に対し、上述のBを与える(架橋)試薬を作用させて得ることができる。反応の方法は、特に限定されるものではなく、例えば、一般的な求核置換反応を用いることができる。
Figure 0004883297
このような試薬としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、エステル基、又はアルコキシ基で置換された炭化水素化合物等が挙げられるが、上述のBの説明で述べたとおり、耐熱性、電荷輸送性、又は有機溶剤に対する溶解性等を向上させるという点から、一つ以上の芳香環を含んでいる化合物であることが好ましい。
また、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、エステル基、アルコキシ基等の置換基を2個以上含む炭化水素化合物等を用いると、当該化合物が架橋試薬として作用するため、架橋構造を有する化合物とすることもできる。q個以上の反応性置換基(架橋部)を有する試薬を用いて、式(5)の化合物をq量化する際、試薬の使用量は、式(5)の化合物に対して1/q倍モルが好適である。
アリールスルホン酸化合物(5)又は(6)のXH基と反応させる試薬としては、例えば、ベンズアルデヒド、安息香酸、安息香酸エステル、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、2,4,6−トリメトキシ−1,3,5−トリアジン、ビス(4−フルオロフェニル)スルホン、ビス(4−フルオロ−3−ニトロフェニル)スルホン、パーフルオロビフェニル、2,2−ビス(4−グリシジロキシフェニル)プロパン、ポリ塩化ビニルベンジル等が挙げられる。
アリールスルホン酸化合物(5)又は(6)と上記試薬とを反応させる場合、触媒を用いることもできる。触媒としては、例えば、リチウム、カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、t−ブトキシリチウム、t−ブトキシナトリウム、t−ブトキシカリウム、リチウム−ジイソプロピルアミド、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、リチウムヘキサメチルジシラジド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、酸化バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、イミダゾール等の塩基;塩酸、硫酸、五酸化二リン、塩化アルミニウム(III)、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、二塩化エチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム等の脱水縮合剤などを用いることができ、中でも、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムを用いることが好適である。これらの触媒の使用量は特に制限はないが、式(5)又は式(6)の化合物に対して1.0〜1.5倍モル用いることが好ましい。
反応溶媒は、非プロトン性極性有機溶媒が好ましく、例えば、DMF、DMAc、NMP、DMI、DMSO、THF、ジオキサン等が好適である。アリールスルホン酸化合物は有機溶媒に対する溶解性が低いため、この化合物の溶解能が高く、熱分解性の低い溶媒が好ましいことから、上記溶媒の中でもDMI、NMPが好適である。
反応温度は、通常、−50℃から使用する溶媒の沸点まで可能であるが、0〜140℃の範囲が好ましい。反応時間は、通常、0.1〜100時間である。
反応終了後、反応溶媒の留去、陽イオン交換樹脂によるスルホン酸塩のプロトン化、メタノール等の溶媒による抽出操作、再沈殿操作等により、精製することができる。
なお、本発明の式(1)又は(2)で表されるアリールスルホン酸化合物の別の合成法として、アリール化合物に対し、濃硫酸、発煙硫酸、ハロ硫酸を用いた一般的なスルホン酸化反応によりアリールスルホン酸化合物を得ることができる。
本発明の式(1)で表されるアリールスルホン酸化合物は、さらに架橋基を有する化合物により架橋させ、式(7)で表されるアリールスルホン酸化合物としてもよい。
Figure 0004883297
(式中、A、B、X、n及びqは、上記と同じ意味を示す。Q1は、水素原子、ハロゲン原子、S、S(O)基、S(O2)基、非置換もしくは置換基が結合したN、Si、P、P(O)基、非置換もしくは置換の炭化水素基、1,3,5−トリアジン基、又は置換もしくは非置換の上記式(3)もしくは式(4)で示される基を表し、z1はQ1の価数と等しく、1≦z1を満足する整数である。)
具体的には、レゾルシノール、フロログルシノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、オクタフルオロ−4,4−ビフェノール、(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジオール、4,4’−エチリデンビスフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−シクロペンチリデンビスフェノール、4,4’−(フェニルメチレン)ビスフェノール、4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、4,4’−メチレンビスフェノール、4,4’−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール、4,4’−メチレンビス(2−フルオロフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−フルオロフェノール)、4,4’−[(4−フルオロフェニル)メチレン]ビス(2−フルオロフェノール)、4,4’−[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]ビスフェノール、4,4’−(ジフェニルメチレン)ビスフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−オキシビスフェノール、4,4’−(ジフェニルシリレン)ビスフェノール等を用いて架橋させることが好適である。
さらに、本発明の式(1)で表されるアリールスルホン酸化合物は、架橋基を有する高分子化合物により架橋させ、下記式(8)又は式(9)で表されるアリールスルホン酸化合物とすることもできる。この場合、好適な高分子架橋剤としては、ポリ(4−ヒドロキシスチレン)、ノボラック樹脂等が挙げられる。
Figure 0004883297
(式中、A、B、X、n及びqは、上記と同じ意味を示す。z2は1≦z2を満たす整数であり、z3は0≦z3を満たす整数であり、1≦z2+z3≦10000を満たす。)
Figure 0004883297
(式中、A、B、X、n及びqは、上記と同じ意味を示す。R1〜R3は、それぞれ独立して水素原子、非置換もしくは置換の一価炭化水素基、又はハロゲン原子を示し、Q2は、非置換もしくは置換の2価以上の炭化水素基、2価もしくは3価の1,3,5−トリアジン基、又は置換もしくは非置換の上記式(3)もしくは式(4)で示される基を表し、Q3は、非置換もしくは置換の一価炭化水素基、1,3,5−トリアジン基、又は置換もしくは非置換の上記式(3)もしくは式(4)で示される基を表し、z4は(Q2の価数−1)と等しく、1≦z4を満たす整数であり、t1は1≦t1を満たす整数であり、t2は0≦t2を満たす整数であり、1≦t1+t2≦10000を満たす。)
上記式(1)、(2)及び(6)〜(9)で表されるアリールスルホン酸化合物は、電子受容性を有しており、電子受容性物質として好適に用いることができる。
本発明において、電荷輸送性ワニスとは、電荷輸送機構の本体である電荷輸送性物質と、上記式(1)、(2)及び(6)〜(9)のいずれかで表される電子受容性物質との少なくとも2種の物質を溶剤中に含有するものである。電子受容性物質は、電荷輸送能及び成膜均一性を向上させるために用いられるものであり、電荷受容性ドーパント物質と同義である。
本発明の電荷輸送性ワニスにおいて、これらの物質は、溶剤によって完全に溶解していてもよく、均一に分散していてもよい。
また、電荷輸送性とは、導電性と同義であり、本発明においては正孔輸送性と同義である。電荷輸送性ワニスは、そのもの自体に電荷輸送性があってもよく、ワニスから得られる固体膜に電荷輸送性があってもよい。
本発明に用いられる電荷輸送性物質は、溶剤によって溶解又は均一に分散する電荷輸送性オリゴマー又はポリマーであれば特に限定されないが、一種類の連続した共役単位を持つオリゴマーであるか、相異なる連続した共役単位の組み合わせを持つオリゴマーが望ましい。
共役単位は、電荷を輸送できる原子、芳香環、共役基であれば特に限定されるものではないが、好ましくは、置換もしくは非置換の2〜4価のアニリン基、チオフェン基、フラン基、ピロール基、エチニレン基、ビニレン基、フェニレン基、ナフタレン基、オキサジアゾール基、キノリン基、シロール基、シリコン原子、ピリジン基、フェニレンビニレン基、フルオレン基、カルバゾール基、トリアリールアミン基、金属−もしくは無金属−フタロシアニン基、及び金属−もしくは無金属−ポルフィリン基等が挙げられる。
置換基の具体例としては、それぞれ独立して水素、水酸基、ハロゲン基、アミノ基、シラノール基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、リン酸エステル基、エステル基、チオエステル基、アミド基、ニトロ基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、アシル基、スルホン基等が挙げられ、これらの官能基は、さらにいずれかの官能基で置換されていてもよい。
一価炭化水素基の具体例としては、メチル基,エチル基,n−プロピル基,i−プロピル基,n−ブチル基,i−ブチル基,t−ブチル基,n−ヘキシル基,n−オクチル基,2−エチルヘキシル基,デシル基等のアルキル基、シクロペンチル基,シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビシクロヘキシル基等のビシクロアルキル基、ビニル基,1−プロペニル基,2−プロペニル基,イソプロペニル基,1−メチル−2−プロペニル基,1又は2又は3−ブテニル基,ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基,キシリル基,トリル基,ビフェニル基,ナフチル基等のアリール基、ベンジル基,フェニルエチル基,フェニルシクロヘキシル基等のアラルキル基などや、これらの一価炭化水素基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、水酸基及びアルコキシ基などで置換されたものを例示することができる。
オルガノオキシ基の具体例としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基などが挙げられ、これらのアルキル基、アルケニル基及びアリール基としては、上記で例示した基と同様のものが挙げられる。
オルガノアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基,エチルアミノ基,プロピルアミノ基,ブチルアミノ基,ペンチルアミノ基,ヘキシルアミノ基,ヘプチルアミノ基,オクチルアミノ基,ノニルアミノ基,デシルアミノ基,ラウリルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基,ジエチルアミノ基,ジプロピルアミノ基,ジブチルアミノ基,ジペンチルアミノ基,ジヘキシルアミノ基,ジヘプチルアミノ基,ジオクチルアミノ基,ジノニルアミノ基,ジデシルアミノ基等のジアルキルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のシクロアルキルアミノ基、モルホリノ基などが挙げられる。
オルガノシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基、オクチルジメチルシリル基、デシルジメチルシリル基などが挙げられる。
オルガノチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基、ノニルチオ基、デシルチオ基、ラウリルチオ基などのアルキルチオ基等が挙げられる。
アシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
上記一価炭化水素基、オルガノオキシ基、オルガノアミノ基、オルガノシリル基、オルガノチオ基、及びアシル基などにおける炭素数は特に限定されるものではないが、一般に炭素数1〜20、好ましくは1〜8である。
好ましい置換基として、フッ素、スルホン酸基、置換もしくは非置換のオルガノオキシ基、アルキル基、オルガノシリル基が挙げられる。なお、共役単位が連結して形成される共役鎖は、環状である部分を含んでいてもよい。
電荷輸送性物質の数平均分子量は、溶解性を高めることを考慮すると、5000以下であることが望ましく、低揮発性及び電荷輸送性発現のために分子量200以上であることが望ましい。少なくとも一種類の溶剤に対して高溶解性を示す物質が良く、少なくとも一種類の溶剤に対して高溶解性を示す物質であるならば、数平均分子量5000〜500000であってもよい。
電荷輸送物質としては、特に、特開2002−151272号公報に記載のオリゴアニリン誘導体が好適に用いられる。すなわち、式(10)で表されるオリゴアニリン誘導体が好適である。なお、下記R7〜R14における一価炭化水素基、オルガノオキシ基及びアシル基としては、先に述べた置換基と同様のものが挙げられる。
Figure 0004883297
(式中、R4は、水素原子、一価炭化水素基、又はオルガノオキシ基を示し、R5及びR6は、それぞれ独立して水素原子又は一価炭化水素基を示し、D1及びD2は、それぞれ独立して下記式(11)又は(12)
Figure 0004883297
で表される2価の基であり、R7〜R14は、それぞれ独立して水素、水酸基、一価炭化水素基、オルガノオキシ基、アシル基、又はスルホン酸基を示し、s及びtはそれぞれ独立に1以上の整数で、s+t≦20を満足する。)
さらに、分子内のπ共役系をなるべく拡張させた方が、得られる電荷輸送性薄膜の電荷輸送性が向上することから、特に、式(13)で示されるオリゴアニリン誘導体、又はその酸化体であるキノンジイミン誘導体を用いることが好ましい。なお、式(13)の2つのベンゼン環において、同一の符号を付した置換基は、同時に同一でも、異なっていてもよい。
Figure 0004883297
(式中、R4〜R10、s及びtは、上記と同じ意味を示す。)
式(10)及び(13)において、s+tは、良好な電荷輸送性を発揮させるという点から、4以上であることが好ましく、溶媒に対する溶解性を確保するという点から、16以下であることが好ましい。
さらに、R4が水素原子、かつ、R6がフェニル基である場合、すなわち、式(13)のオリゴアニリン誘導体の両末端がフェニル基で封止されていることが好ましい。
これらの電荷輸送物質は1種類のみを使用してもよく、また2種類以上の物質を組み合わせて使用してもよい。
上記式(13)で示される化合物の具体例としては、フェニルテトラアニリン、フェニルペンタアニリン、テトラアニリン(アニリン4量体)、オクタアニリン(アニリン8量体)等の有機溶媒な可溶なオリゴアニリン誘導体が挙げられる。
さらに、その他の電荷輸送性物質の合成法としては、特に限定されないが、例えば文献、ブレティン・オブ・ケミカル・ソサエティ・オブ・ジャパン(Bulletin of Chemical Society of Japan)、1994年、第67巻、p.1749−1752、シンセティック・メタルズ(Synthetic Metals)、米国、1997年、第84巻、p.119−120に記載されているオリゴアニリン合成法や、例えば文献、ヘテロサイクルズ(Heterocycles)、1987年、第26巻、p.939−942、ヘテロサイクルズ(Heterocycles)、1987年、第26巻、p.1793−1796に記載されているオリゴチオフェン合成法などが挙げられる。
本発明の電荷輸送性ワニスにおいて、電荷輸送性物質及び電荷受容性物質を良好に溶解し得る高溶解性溶剤を、該ワニスに使用する溶剤全体に対して5〜100重量%の割合で使用しても良い。この場合、高溶解性溶剤によって、該ワニスは完全に溶解しているか、均一に分散している状態となっていることが好ましい。
高溶解性溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、水、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、トルエン、メタノール等が挙げられる。
また、本発明の電荷輸送性ワニスは、20℃で10〜200mPa・sの粘度を有し、常圧で沸点50〜300℃の高粘度有機溶剤を、少なくとも一種類含有することが望ましい。さらに、電荷輸送性ワニスは、20℃で50〜150mPa・sの粘度、常圧で沸点150〜250℃の有機溶剤を含有することが好適である。
高粘度有機溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールジクリシジルエーテル、1,3−オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられる。
本発明のワニスに用いられる溶剤全体に対する高粘度有機溶剤の添加割合は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、添加割合は、5〜80質量%とすることができる。
なお、基板に対する濡れ性の向上、溶剤の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、焼成時に膜の平坦性を付与し得るその他の溶剤を、該ワニスに使用する溶剤全体に対して1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%の割合で混合することもできる。
このような溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルカルビトール、ジアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン、乳酸エチル等が挙げられる。
以上で説明した電荷輸送性ワニスを基材上に塗布し、溶剤を蒸発させることによって基材上に電荷輸送性塗膜を形成させることができる。
ワニスの塗布方法としては、特に限定されるものではないが、ディップ法、スピンコート法、スプレー法、インクジェット法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられ、いずれにおいても均一な成膜が可能である。
溶剤の蒸発法としても特に限定されるものではないが、ホットプレートやオーブンを用いて、適切な雰囲気下、即ち、大気、窒素等の不活性ガス、真空中等で蒸発を行い、均一な成膜面を有する膜を得ることが可能である。
焼成温度は、溶剤を蒸発させることができれば特に限定されないが、40〜250℃で行うのが好ましい。より高い均一成膜性を発現させるため、また基材上で反応を進行させるために、2段階以上の温度変化をつけても良い。
塗布及び蒸発操作によって得られる電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子内で電荷注入層として用いる場合、5〜200nmであることが望ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度の変化や塗布時の基板上溶液量変化等の方法がある。
本発明の電荷輸送性ワニスを使用するOLED素子の作製方法、使用材料としては、以下の方法及び材料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
使用する電極基板は、洗剤、アルコール、純水等による液体洗浄を行って予め浄化しておき、陽極基板では、使用直前にオゾン処理、酸素−プラズマ処理等の表面処理を行うことが好ましい。ただし陽極材料が有機物を主成分とする場合、表面処理は行わなくともよい。
正孔輸送性ワニスをOLED素子に使用する場合、例えば、以下の方法を採用すればよい。
すなわち、陽極基板に対して当該正孔輸送性ワニスを用いて上記の膜作製方法により、電極上に正孔輸送性薄膜を作製する。これを真空蒸着装置内に導入し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極金属を順次蒸着してOLED素子とする。この際、発光領域をコントロールするために任意の層間にキャリアブロック層を設けてもよい。
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体や、ポリアニリン類を用いることもできる。
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体(TPD)、(α−ナフチルジフェニルアミン)ダイマー(α−NPD)、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー(Spiro−TAD)等のトリアリールアミン類、4,4’,4”−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)等のスターバーストアミン類、5,5”−ビス−{4−[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’:5’,2”ターチオフェン(BMA−3T)等のオリゴチオフェン類を挙げることができる。
発光層を形成する材料としては、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)(Alq3)、ビス(8−キノリノラート)亜鉛(II)(Znq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(III)(BAlq)、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられる。なお、電子輸送材料又は正孔輸送材料と、発光性ドーパントとを共蒸着することによって発光層を形成してもよい。
電子輸送材料としては、Alq3、BAlq、DPVBi、(2−(4−ビフェニル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)(PBD)、トリアゾール誘導体(TAZ)、バソクプロイン(BCP)、シロール誘導体等が挙げられる。
発光性ドーパントとしては、キナクリドン、ルブレン、クマリン540、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)、(1,10−フェナントロリン)−トリス(4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チエニル)−ブタン−1,3−ジオナート)ユーロピウム(III)(Eu(TTA)3phen)等が挙げられる。
キャリアブロック層を形成する材料としては、PBD、TAZ、及びBCPが挙げられる。
電子注入層としては、酸化リチウム(Li2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al23)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、リチウムキノンノリド(Liq)、リチウムアセチルアセトナート錯体(Li(acac))、酢酸リチウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。
本発明の電荷輸送性ワニスをOLED素子に使用する場合、例えば、以下の方法を採用すればよい。
陰極基板上に当該電子輸送性ワニスを用いて電子輸送性薄膜を作製し、これを真空蒸着装置内に導入し、上記と同様の材料を用いて電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層を形成した後、陽極材料をスパッタリング等の方法により成膜してOLED素子とする。
本発明の電荷輸送性ワニスを用いたPLED素子の作製方法は、例えば、以下の方法が挙げられるが、これに限られるものではない。
上記OLED素子作製において、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の真空蒸着操作を行う代わりに、発光性電荷輸送性高分子層を形成することにより、本発明の電荷輸送性ワニスによって形成される電荷輸送性薄膜を含むPLED素子を作製することができる。
具体的には、陽極基板に対して当該正孔輸送性ワニスを上記の方法により塗布して電極上に正孔輸送性薄膜を作製し、その上部に発光性電荷輸送性高分子層を形成し、さらに、陰極電極を蒸着してPLED素子とする。
あるいは、陰極基板に対して当該電子輸送性ワニスを用い、上記の方法により電極上に電子輸送性薄膜を作製し、その上部に発光性電荷輸送性高分子層を形成し、さらに陽極電極をスパッタリング、蒸着、スピンコート等で作製してPLED素子とする。
陰極及び陽極材料としては、上記OLED素子で例示したものと同様の物質が使用でき、同様の洗浄処理、表面処理を行うことができる。
発光性電荷輸送性高分子層の形成法としては、発光性電荷輸送性高分子材料、又はこれに発光性ドーパントを加えた材料に対して溶剤を加え、溶解又は均一に分散させ、正孔輸送性薄膜を形成した電極基板に塗布した後に、溶剤の蒸発により成膜する方法が挙げられる。
発光性電荷輸送性高分子材料としては、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)などのポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等を挙げることができる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、クロロホルム等を挙げることができ、溶解又は均一分散法としては、攪拌、加熱攪拌、超音波分散等の方法により溶解又は均一に分散する方法が挙げられる。
塗布方法としては、特に限定されるものではないが、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り等が挙げられる。塗布は、窒素、アルゴン等の不活性ガス下で行うことが望ましい。
溶剤の蒸発法としては不活性ガス下又は真空中で、オーブン又はホットプレートで加熱する方法を挙げることができる。
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
下記反応式(14)に従い、ナフタレンジスルホン酸化合物オリゴマー1(以下、NSO−1と略す)を合成した。
Figure 0004883297
すなわち、よく乾燥させた2−ナフトール−6,8−ジスルホン酸二カリウム(東京化成工業(株)製)1.020gに、窒素雰囲気下で、パーフルオロビフェニル449mg、60%水素化ナトリウム161mg、及び無水N,N−ジメチルイミダゾリジノン50mlを順次加え、反応系を窒素置換した後、80℃で43時間攪拌した。
室温まで放冷後、水を加えて反応を停止させ、減圧下、濃縮乾固した。残渣にメタノール5mlを加え、得られた懸濁液をジエチルエーテル100mlに攪拌しながら加えた。室温で1時間攪拌後、析出した固体を濾取し、濾物にメタノール50mlを加え超音波で懸濁させた。不溶の固体を濾過によって除去し、濾液を減圧下濃縮乾固した。残渣に純水3mlを加え溶解し、陽イオン交換樹脂ダウエックス650C(Hタイプ)約2mlを加えて10分間攪拌した後に濾過し、濾液を陽イオン交換樹脂ダウエックス650C(Hタイプ約40ml、留出溶媒:アセトニトリル−水(1:10))を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。
pH1以下の分画を減圧下で濃縮乾固し、イソプロパノールで一回共沸した後、残渣にイソプロパノール2mlを加え、得られた溶液をジエチルエーテル50ml中に攪拌しながら加えた。室温で1時間攪拌後、上澄み液を除去し、残渣を減圧下で乾固して1.043gの黄色粉末を得た(収率86%)。
この黄色粉末をMALDI−TOF−MSにより分析した結果、NSO−1由来と考えられるメインピークが検出された。
MS (MALDI-TOF-MS-): m/z 901 (M-H)-
[実施例2]
下記反応式(15)に従い、ナフタレンジスルホン酸化合物オリゴマー2(以下、NSO−2と略す)を合成した。
Figure 0004883297
すなわち、よく乾燥させた1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製)934mgに、窒素雰囲気下で、パーフルオロビフェニル450mg、60%水素化ナトリウム166mg、及び無水N,N−ジメチルイミダゾリジノン50mlを順次加え、反応系を窒素置換した後、80℃で43時間攪拌した。
室温まで放冷後、水を加えて反応を停止させ、減圧下、濃縮乾固した。残渣にメタノール5mlを加え、得られた懸濁液をジエチルエーテル100mlに攪拌しながら加えた。室温で1時間攪拌後、析出した固体を濾取し、濾物にメタノール25mlを加え超音波で懸濁させた。不溶の固体を濾過によって除去し、濾液を減圧下濃縮乾固した。残渣にメタノール−水(1:2)12mlを加え溶解し、陽イオン交換樹脂ダウエックス650C(Hタイプ)約2mlを加え10分間攪拌した後に濾過し、濾液を陽イオン交換樹脂ダウエックス650C(Hタイプ約40ml、留出溶媒:メタノール−水(1:2))を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。
pH1以下の分画を減圧下で濃縮乾固し、イソプロパノールで一回共沸した後、残渣にイソプロパノール2mlを加え、得られた溶液をジエチルエーテル50ml中に攪拌しながら加えた。室温で1時間攪拌後、上澄み液を除去し、残渣を減圧下で乾固して984mgの黄色粉末を得た(収率81%)。
この黄色粉末をMALDI−TOF−MSにより分析した結果、NSO−2由来と考えられるメインピークが検出された。
MS (MALDI-TOF-MS-): m/z 901 (M-H)-
[合成例1]フェニルテトラアニリンの合成
Figure 0004883297
ブレティン・オブ・ケミカル・ソサエティ・オブ・ジャパン(Bulletin of Chemical Society of Japan)、1994年、第67巻、p.1749−1752に記載されている方法を基に、以下の方法に従いフェニルテトラアニリン(PTA)を得た。
すなわち、p−フェニレンジアミン12.977gを、トルエン2リットルに溶解し、これに脱水縮合剤であるテトラ−n−ブトキシチタン245.05gを加え、70℃で30分間溶解した。その後、p−ヒドロキシジフェニルアミン53.346gを添加し、窒素雰囲気下、反応温度100℃で24時間反応させた。反応終了後、反応液を濾過し、濾物をトルエン、エーテルで順次洗浄した後乾燥して銀色結晶を得た。得られた結晶に対して25質量部のジオキサン、0.2当量のヒドラジン一水和物を加え、反応系内を窒素置換した後、加熱還流して結晶を溶解した。得られた溶液に、トルエンを結晶に対して25質量部加えて溶液を懸濁し、加熱還流後、さらにジオキサンを10質量部加えて加熱還流して溶解し、得られた溶液を熱時濾過した。
濾液から析出した固体を再結晶し、窒素雰囲気下、トルエン−ジオキサン(1:1)、エーテルで順次洗浄した後濾取し、得られた結晶を減圧下、60℃で10時間乾燥した。同様の再結晶操作をもう一度繰り返して白色結晶39.60gを得た(収率75%)。
実施例1及び2で得られたアリールスルホン酸化合物を電子受容性物質として用い、上記式(16)で表されるフェニルテトラアニリン(以下PTAと略す)を電荷輸送性物質として電荷輸送性ワニスを調製した。これらのワニスの調製方法を実施例3及び4に示す。
[実施例3]
実施例1で得られたNSO−1 102mgと、合成例1で得られたPTA 50mgとの混合物に、窒素雰囲気下でN,N−ジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)1.70mlを加えて溶解し、さらに、窒素雰囲気下でエチレングリコール0.49ml及びシクロヘキサノール2.77mlを順次加えて室温で攪拌し、緑色透明のワニスを得た。
[実施例4]
実施例2で得られたNSO−2 102mgと、合成例1で得られたPTA 50mgとの混合物に、窒素雰囲気下でN,N−ジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)1.70mlを加えて溶解し、さらに、窒素雰囲気下でエチレングリコール0.49ml及びシクロヘキサノール2.77mlを順次加えて室温で攪拌し、緑色透明のワニスを得た。
[実施例5,6]
実施例3,4に記載の方法によって得られた各ワニスを、ITO基板上にスピンコートで塗布した後、ホットプレート上で焼成して正孔輸送性薄膜を形成した後、真空蒸着装置内に導入し、α−NPD、Alq3、LiF、Alを順次蒸着した。膜厚は、それぞれ35nm、50nm、0.5nm、100nmとし、それぞれ8×10-4Pa以下の圧力となってから蒸着操作を行った。蒸着レートは、α−NPD及びAlq3では0.35〜0.40nm/s、LiFでは0.015〜0.025nm/s、Alでは0.2〜0.4nm/sとした。蒸着操作間の移動操作は真空中で行った。
[比較例1]
ITOガラス基板を40分間オゾン洗浄した後、真空蒸着装置内に導入し、実施例5に記載の方法と同条件で、α−NPD、Alq3、LiF、Alを順次蒸着した。
[比較例2]
(+)−10−カンファスルホン酸206mgと、合成例1で得られたPTA100mgとの混合物に、DMAc1.87mlを、窒素雰囲気下で加えて溶解し、さらにシクロヘキサノール5.53mlを加えて室温で攪拌し、緑色透明のワニスを得た。
得られたワニスを用い、実施例5に記載の方法によって電荷輸送性薄膜を得た。得られた電荷輸送性薄膜は非晶質固体であった。さらに、実施例5に記載の方法によりOLED素子を作製した。
[比較例3]
PTA1.000g(2.260mmol)に対し、5−スルホサリチル酸二水和物(以下、5−SSAと略す)2.298g(9.039mmol)、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)17.50gを窒素雰囲気下で加えて溶解し、得られた溶液にシクロヘキサノール(c−HexOH、粘度:68mPa・s(20℃))52.50gを加えて撹拌し、ワニスを調製した(固形分濃度4.2質量%)。
得られたワニスをスピンコート法により40分間オゾン洗浄を行ったITOガラス基板上に塗布した後、空気中180℃で2時間焼成し、均一な薄膜を得た。
これを真空蒸着装置内に導入し、α−NPD、Alq3、LiF、Alを順次蒸着した。膜厚は、それぞれ40nm、60nm、0.5nm、100nmとし、それぞれ8×10-4Pa以下の圧力となってから蒸着操作を行った。蒸着レートはLiFを除いて0.3〜0.4nm/sとし、LiFについては0.02〜0.04nm/sとした。なお、蒸着操作間の移動操作は真空中で行った。得られたOLED素子の特性を表2に示す。
上記実施例5,6及び比較例2で使用したワニスの粘度、焼成条件、膜厚、Ip値を表1に、上記実施例5,6及び比較例1〜3で作製したOLED素子の特性を表2に示す。
なお、膜厚、Ip値及び導電率、EL特性、並びに粘度は、下記装置により測定した。
[1]膜厚
表面形状測定装置(DEKTAK3ST、日本真空技術社製)により測定した。
[2]Ip
光電子分光装置(AC−2、理研計器(株)製)により測定した。
[3]EL測定システム:発光量子効率測定装置(EL1003、プレサイスゲージ製)
[4]電圧計(電圧発生源):プログラマブル直流電圧/電流源(R6145、アドバンテスト製)
[5]電流計:デジタルマルチメータ(R6581D、アドバンテスト製)
[6]輝度計:LS−110(ミノルタ製)
[7]粘度計:E型粘度計(ELD−50、東京計器社製)、測定温度:20℃
Figure 0004883297
Figure 0004883297
表2に示されるように、実施例3,4で得られたワニスから作製された正孔輸送性薄膜を備えるOLED素子(実施例5,6)は、この正孔輸送性薄膜を含まないOLED素子と比較して駆動電圧が低下し、電流効率及び最高輝度は上昇していることがわかる。また実施例5,6のOLED素子は、ドーパントとして本発明に規定されるアリールスルホン酸化合物ではなく5−SSAを用いている比較例3の素子と比べても、電流効率及び最高輝度が上昇していることがわかる。なお、実施例5,6で作製したOLED素子の発光面の均一性は良好であり、ダークスポットは認められなかった。

Claims (6)

  1. 式(1)で表されることを特徴とするアリールスルホン酸化合物。
    Figure 0004883297
    〔式中、Xは、Oを表し、
    Aは、ナフタレン環又はアントラセン環を表し、
    Bは、2〜4価のパーフルオロビフェニル基を表し、
    nは、Aに結合するスルホン酸基数を表し、1≦n≦4を満たす整数であり、
    qは、BとXとの結合数を示し、2〜4を満たす整数である。〕
  2. 記Aがナフタレン環を表す請求項1記載のアリールスルホン酸化合物。
  3. 請求項1又は2記載のアリールスルホン酸化合物からなる電子受容性物質。
  4. 請求項3記載の電子受容性物質、電荷輸送性物質、及び溶剤を含む電荷輸送性ワニス。
  5. 請求項3記載の電子受容性物質、及び電荷輸送性物質を含む電荷輸送性薄膜。
  6. 請求項5記載の電荷輸送性薄膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
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